説明

検査装置および検査方法

【課題】視差生成部材の設置状態を定量化すること。
【解決手段】本発明の検査装置は、スリット状の開口部を備える視差生成部材と、前記視差生成部材のスリット状の開口部に対応する明暗模様を保持する保持手段と、前記視差生成部材を通して前記明暗模様の明暗の状態を検出し、検出した明暗の状態に基づき、前記明暗模様と前記視差生成部材との角度を算出する算出手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、右目と左目に映る画像に視差を生じさせる視差生成部材の設置状態を検査するための検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体表示装置の一例として、表示装置の前面に、列方向(縦方向)に伸びるスリット状の開口部が行方向(横方向)に等間隔で配列された視差生成部材を配置し、この視差生成部材を通して表示装置の画像を見せることで、右目と左目に映る画像に視差を生じさせる仕組みのものがある(特許文献1)。この時、右目と左目に映る画像が、ある立体を右目と左目で同時に見た時の右目と左目のそれぞれの画像に相当するならば、人はこの画像を立体として認識する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−166221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した立体表示装置においては、表示装置(表示装置が表示している画像)と視差生成部材とは平行の状態でなければならない。
【0005】
しかし、これまでは、表示装置と視差生成部材との角度のズレを検査する方法が存在していなかったため、視差生成部材の設置状態は、人の目を用いて目視で判断することが多く、定量化することができないという課題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上述した課題を解決し、視差生成部材の設置状態を定量化することができる検査装置および検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の検査装置は、
スリット状の開口部を備える視差生成部材と、
前記視差生成部材のスリット状の開口部に対応する明暗模様を保持する保持手段と、
前記視差生成部材を通して前記明暗模様の明暗の状態を検出し、検出した明暗の状態に基づき、前記明暗模様と前記視差生成部材との角度を算出する算出手段と、を有する。
【0008】
本発明の検査方法は、
検査装置が行う検査方法であって、
視差生成部材のスリット状の開口部に対応する明暗模様を保持手段が保持する保持ステップと、
前記視差生成部材を通して前記明暗模様の明暗の状態を検出する検出ステップと、
前記検出した明暗の状態に基づき、前記明暗模様と前記視差生成部材との角度を算出する算出ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、視差生成部材の設置状態を、明暗模様の明暗の状態に基づき、明暗模様と視差生成部材との角度という定量値として算出できるという効果が得られる。
【0010】
また、明暗模様と視差生成部材との角度を算出できるため、その角度の分だけ、視差生成部材を傾けることで、明暗模様と視差生成部材との角度を適正値にすることができ、角度調整を迅速に行うことができるという効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に適用される立体表示装置の一例を示す図である。
【図2】図1に示した立体表示装置において、人の右目に映る画像を完全な黒の状態にする様子を示す図である。
【図3】図1に示した表示装置と視差生成部材との角度を説明する図である。
【図4】本発明の検査装置に係る検査パターンの一例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態の検査装置の全体構成の一例を示す図である。
【図6】図5に示した測定機の構成の一例を示すブロック図である。
【図7】図5に示した検査装置において、表示装置と視差生成部材との角度が適正である場合に、測定機で撮影される画像の一例を示す図である。
【図8】図5に示した検査装置において、表示装置と視差生成部材との角度にズレがある場合に、測定機で撮影される画像の一例を示す図である。
【図9】図5に示した検査装置において、表示装置と視差生成部材との角度のズレがさらに大きい場合に、測定機で撮影される画像の一例を示す図である。
【図10】図5に示した検査装置の一連の動作を説明するフローチャートである。
【図11】図10に示したステップS5〜S7の処理を説明する図である。
【図12】図10に示したステップS8の処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)本発明の概念
まず、本発明の基本的な概念について説明する。
【0013】
図1に示す立体表示装置10は、表示装置11の前面に、列方向(縦方向)に伸びるスリット状の開口部が行方向(横方向)に等間隔で配列された視差生成部材12を配置し、視差生成部材12を通して表示装置11の画像を見せることで、右目と左目に映る画像に視差を生じさせる。この時、右目と左目に映る画像が、ある立体を右目と左目で同時に見た時の右目と左目のそれぞれの画像に相当するならば、人はこの画像を立体として認識する。
【0014】
表示装置11は、縞状模様(明暗模様)を保持する本発明の保持手段の一例であり、例えば、TN(Twisted Nematic)液晶パネルで構成される。
【0015】
視差生成部材12は、機械的または電気的にON/OFFでき、ON時に、上述のスリット状の開口部が配列された画像を表示するものであり、例えば、TN(Twisted Nematic)液晶パネルで構成される。
【0016】
図1に示した立体表示装置10は、表示装置11と視差生成部材12との物理的な位置関係から、画像が立体に見える場所や距離が、一意に決まることが知られている。
【0017】
今、図2に示すように、表示装置11に、右目の視点に黒だけが見えるような画像を表示すると、視差生成部材12が遮る部分と、画面に表示された黒い画像が重なり、右目の視点からは画面全体が黒表示となった状態に見える。
【0018】
この時、表示装置11の黒い画像以外の部分を視差生成部材12が完全に遮るならば、右目に映る画像は完全な黒の状態となる。しかし、図3に示すように、表示装置11(表示装置11が表示している画像)と視差生成部材12との角度αにズレがある場合には、完全な黒にはならない。
【0019】
そこで、人の両目のうち片側の目の位置に相当する部分に、画像を撮影する機能を有する測定機20(図5参照)を設置し、表示装置11と視差生成部材12との角度αが適正である場合には測定機20に黒だけが映るような検査パターンを考える。
【0020】
立体表示装置10の視点が単一である場合、検査パターンは、図4に示すように、黒、白の画像が行方向(横方向)に交互に並んだ縞状模様(明暗模様)となり、この縞状模様の黒の画像の部分が視差生成部材12のスリット状の開口部に対応している。
【0021】
この検査パターンを表示装置11に表示させ、測定機20で撮影すると、表示装置11と視差生成部材12との角度αにズレがある場合には、白の画像が並ぶ列方向(縦方向)において、白と黒の画像が周期的に現れる模様が発生する。
【0022】
この時、黒の画像が現れる周期は、角度αに応じて変化するため、この周期を測定することで角度αを算出することができる。したがって、視差生成部材12の設置状態を、表示装置11と視差生成部材12との角度という定量値として算出することができる。
(2)本発明の実施形態
次に、本発明の実施形態について説明する。
(2−1)本発明の実施形態の構成
図5は、本実施形態の検査装置の全体像を示している。
【0023】
図5に示すように、立体表示装置10の画面中央から垂直に、かつ、画面中央に対して人の両目のうち片側の目に相当する位置・角度に、測定機20を固定している。
【0024】
また、図6に示すように、測定機20は、視差生成部材12を通して表示装置11の画面に表示される縞状模様の画像を撮影する撮影部21と、撮影部21が撮影した縞状模様の明暗の状態を検出し、検出した明暗の状態に基づき、表示装置11と視差生成部材12との角度αを算出する算出部22と、記憶部23と、を有している。
【0025】
表示装置11に、図4に示すような検査パターンを表示させ、視差生成部材12をONにした状態で、測定機20の撮影部21で検査パターンを撮影する。表示装置11と視差生成部材12との角度αが適正である場合には、測定機20で撮影された画像は、図7に示すように、白い画像を完全に覆った状態となる。
【0026】
しかし、表示装置11と視差生成部材12との角度αにズレがあると、図8に示すように、白い画像を完全に隠していない部分が生じる。この時、白が並ぶ列方向(縦方向)において、白(白い画像が隠れている比率が低い部分)と黒(白い画像が隠れている比率が高い部分)が周期的に現れる模様が発生する。
【0027】
また、表示装置11と視差生成部材12との角度αがさらに大きくなると、図9に示すように、白と黒が現れる周期の幅が狭まる。このことから、上述した角度αと周期の幅には相関関係があることが分かる。
【0028】
そこで、測定機20においては、算出部22は、撮影部21が撮影した縞状模様の画像を画像処理して、縞状模様の明暗の状態を検出し、検出した明暗の状態に基づき、白が並ぶ列方向(縦方向)において黒が現れる周期の幅を算出する。
【0029】
その一例として、撮影画像全体の平均輝度を求め、平均輝度の値を閾値として撮影画像を2値化する。その2値化画像から、白が並ぶ列方向(縦方向)において、白から黒に変化するエッジを2箇所検出し、そのエッジの間隔を1周期分の幅とする。
(2−2)本発明の実施形態の動作
図10は、本実施形態の検査装置の一連の動作を説明するフローチャートである。
【0030】
図10に示すように、まず、立体表示装置10を治具に取り付け、表示装置11に検査パターンを表示させる(ステップS1)。
【0031】
次に、視差生成部材12をONする(ステップS2)。
【0032】
次に、測定機20において、撮影部21は、視差生成部材12を通して表示装置11の画面全体を撮影し、算出部22は、撮影した画像P1を記憶部23に記憶する(ステップS3)。
【0033】
次に、算出部22は、画像P1の面内の輝度の最大値と最小値を検出し、その差が予め定めた値以下になっているか判定する(ステップS4)。
【0034】
ステップS4において、予め定めた値以下である場合には、画像P1の面内には白い画像がないと考えられるため、算出部22は、視差生成部材12は表示装置11との角度αが適正な良品であると判定し、処理を終了する。
【0035】
一方、ステップS4において、予め定めた値を越えている場合には、画像P1の面内には白い画像があると考えられるため、算出部22は、画像P1の画面全体の平均輝度L1を算出し、記憶部23に記憶する(ステップS5)。
【0036】
次に、算出部22は、画像P1を、平均輝度L1の値を閾値として2値化し画像P2とする(ステップS6)。
【0037】
次に、算出部22は、画像P2中から、白が並ぶ列方向(縦方向)において、白から黒に切り替わるエッジを2箇所検出し、そのエッジの間隔を、黒が現れる周期の幅W1とする(ステップS7)。
【0038】
以上のステップS5〜S7の画像処理の流れを図示したものが図11である。
【0039】
すると、この時、図12に示す通り、表示装置11の画面において、列方向(縦方向)に黒が現れる周期の幅W1と、行方向(横方向)に黒が現れる周期の幅W2と、の間には、tanα=W2/W1の関係がある。なお、W2は、図4の縞状模様において、行方向(横方向)に黒または白が現れる周期の幅として予め決められた値となる。
【0040】
このことから、算出部22は、表示装置11と視差生成部材12との角度αを、tan-1(W2/W1)と一意に算出できる(ステップS8)。
【0041】
したがって、その角度αの分だけ、視差生成部材12を傾けることで(ステップS9)、視差生成部材12の角度αを適正値にすることができる。
(3)本発明の他の実施形態
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0042】
例えば、本発明は、次のような構成に変更してもよい。
(3−1)上記実施形態においては、検査パターンを黒・白で規定したが、白と黒とを入れ替えても良い。
【0043】
すなわち、上記実施形態においては、視差生成部材12のスリット状の開口部に縞状模様の黒の画像の部分を対応させたが、本発明はこれに限定されず、縞状模様の白の画像の部分を視差生成部材12のスリット状の開口部に対応させてもよい。
【0044】
また、縞状模様の白または黒の画像のどちらを視差生成部材12のスリット状の開口部に対応させる場合にも、白の画像が並ぶ列方向(縦方向)において、白と黒の画像が現れる周期の幅を算出してもよいし、黒の画像が並ぶ列方向(縦方向)において、白と黒の画像が現れる周期の幅を算出してもよい。
(3−2)上記実施形態においては、検査パターンを黒・白で規定したが、本発明はこれに限定されず、画像の色度、色温度および色座標などの色情報を基に検査パターンの明暗の状態を検出してもよい。この場合、検査パターンは黒・白に限定されない。
(3−3)上記実施形態においては、視差生成部材12は、機械的または電気的に、ON/OFFできるようなものとして記述したが、本発明はこれに限定されず、常にONしているものでもよい。
(3−4)上記実施形態においては、立体表示装置10の視点を単一として記述したが、本発明はこれに限定されず、複数点あるものであってもよい。この場合、それに応じた検査パターンとすればよい。
(3−5)上記実施形態においては、立体表示装置10を、液晶パネルで構成するものとして記述したが、本発明はこれに限定されず、有機EL(Electro-Luminescence)、プラズマディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)などで構成してもよい。
(3−6)上記実施形態においては、視差生成部材12において、画面の行方向(横方向)に沿って等間隔でスリット状の開口部を配列するものとして記述したが、本発明はこれに限定されず、スリット状の開口部を1つだけ配列し、この1つの開口部を通して見える画像を用いて、角度αを算出してもよい。
(3−7)上記実施形態においては、白が並ぶ1列分の画像を用いて、角度αを算出するものとして記述したが、本発明はこれに限定されず、複数列分の画像をそれぞれ用いて、角度を算出し、その平均値または最大値を角度αとしてもよい。この場合、視差生成部材12の製造誤差を考慮した検査を行うことができる。
(3−8)上記実施形態においては、角度αを1回だけ算出するものとして記述したが、本発明はこれに限定されず、角度αを定期的に算出してもよい。この場合、視差生成部材12の劣化を推定することができる。
(3−9)上記実施形態においては、表示装置11と視差生成部材12とが同一の装置(立体表示装置10)に設けられているものとして記述したが、本発明はこれに限定されず、表示装置11と視差生成部材12とが異なる装置に設けられていてもよい。
(3−10)上記実施形態においては、表示装置11が図4のような縞状模様を表示するものとして記述したが、本発明はこれに限定されず、縞状模様は固定的に設けられていてもよい。すなわち、縞状模様は保持手段に保持されるものであればよい。
【符号の説明】
【0045】
10 立体表示装置
11 表示装置
12 視差生成部材
20 測定機
21 撮影部
22 算出部
23 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリット状の開口部を備える視差生成部材と、
前記視差生成部材のスリット状の開口部に対応する明暗模様を保持する保持手段と、
前記視差生成部材を通して前記明暗模様の明暗の状態を検出し、検出した明暗の状態に基づき、前記明暗模様と前記視差生成部材との角度を算出する算出手段と、を有する検査装置。
【請求項2】
前記明暗模様は、
黒、白の画像が行方向に交互に並んだ縞状模様であり、当該縞状模様の黒または白の画像の部分が前記視差生成部材のスリット状の開口部に対応しており、
前記算出手段は、
前記縞状模様の黒または白の画像が並ぶ列方向において、黒または白が現れる周期の幅を算出し、算出した周期の幅を用いて、前記角度を算出する、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記算出手段は、
前記縞状模様の黒または白の画像が並ぶ複数列分の列方向のそれぞれにおいて、前記角度を算出し、その平均値または最大値を算出する、請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記算出手段は、
前記縞状模様の黒または白の画像が並ぶ列方向において、前記角度を定期的に算出する、請求項2に記載の検査装置。
【請求項5】
検査装置が行う検査方法であって、
視差生成部材のスリット状の開口部に対応する明暗模様を保持手段が保持する保持ステップと、
前記視差生成部材を通して前記明暗模様の明暗の状態を検出する検出ステップと、
前記検出した明暗の状態に基づき、前記明暗模様と前記視差生成部材との角度を算出する算出ステップと、を有する検査方法。
【請求項6】
前記明暗模様は、
黒、白の画像が行方向に交互に並んだ縞状模様であり、当該縞状模様の黒または白の画像の部分が前記視差生成部材のスリット状の開口部に対応しており、
前記算出ステップでは、
前記縞状模様の黒または白の画像が並ぶ列方向において、黒または白が現れる周期の幅を算出し、算出した周期の幅を用いて、前記角度を算出する、請求項5に記載の検査方法。
【請求項7】
前記算出ステップでは、
前記縞状模様の黒または白の画像が並ぶ複数列分の列方向のそれぞれにおいて、前記角度を算出し、その平均値または最大値を算出する、請求項6に記載の検査方法。
【請求項8】
前記算出ステップでは、
前記縞状模様の黒または白の画像が並ぶ列方向において、前記角度を定期的に算出する、請求項6に記載の検査方法。

【図4】
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【図6】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−173394(P2012−173394A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33176(P2011−33176)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】