説明

構造部材の保護層

本発明は、高温時の腐食及び酸化から構造部材を保護する保護層に関する。この保護層は、重量%にて0.5〜2%のレニウム、24〜26%のコバルト、15〜21%のクロム、9〜11.5%のアルミニウム、0.05〜0.7%のイットリウム及び/又はスカンジウムと希土類の元素とを含む群からの少なくとも1つの等価金属、0〜1%のルテニウム、残りニッケル並びに製造に由来する不純物からなる。本発明による保護層は、クロム−レニウム析出物により殆ど脆弱化を示すことはない。従って本発明は、腐食及び酸化時に耐高温性に優れ、十分に長期安定性であり、更に高温時のガスタービン内に予想される機械的応力に格別良好に適合する保護及びその製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温時の腐食及び酸化から構造部材を保護する請求項1に記載の保護層に関する。この構造部材は、特に請求項6に記載のガスタービンの構造部材である。更に本発明は請求項7に記載の保護層の製造方法にも関する。
【0002】
本発明は、特にニッケル又はコバルトベースの超合金製構造部材の保護層に関する。
【0003】
金属製構造部材の耐食性及び/又は耐酸化性を高める保護層は、従来技術から多数公知である。これら保護層の大部分はMCrAlXの総称で知られており、式中Mは鉄、コバルト及びニッケルを含む群からの少なくとも1つの元素及び他の主成分としてのクロム、アルミニウム及びX=イットリウムから成る。ここで後者は全て又は一部スカンジウム及び希土類の群からの等価元素と置換可能である。
【0004】
この種の代表的な被覆は米国特許第4005989号及び同第4034142号明細書から公知である。
【0005】
更に、欧州特許出願公開第0194392号明細書から、種々の用途に他の元素を混和した上記の種類の保護層の特殊な組成が多数公知である。それによると選択的に添加可能な多くの他の元素の他に、元素のレニウムも10重量%迄の量で添加することを記載している。しかし殆ど特定されない広範に予想される添加物の故に、例えば高い入口温度で比較的長期にわたる運転を要するガスタービンの案内翼及び回転翼に生じるような特殊な状況に、上述した保護層は何れも適していない。
【0006】
レニウムを含む保護層も、米国特許第5154885号、欧州特許出願公開第0412397号および独国特許出願公開第69401260号明細書や国際公開第91/02108号パンフレットから公知である。これら文献から、レニウムの作用について推測される開示内容は、本発明の開示に全面的に組込むものとする。
【0007】
欧州特許出願公開第1306454号明細書も、ニッケル、コバルト、クロム、アルミニウム、レニウム及びイットリウムから成る保護層を開示する。但しニッケル及びコバルトの分量についての記載は存在しない。
【0008】
米国特許第6346134号明細書は、20〜35重量%のクロムと、5〜15重量%のアルミニウムと、ハフニウム、レニウム、ランタン又はタンタルの添加成分と、4〜6重量%の高含有量のイットリウムを含むMCrAlY層を開示している。
【0009】
米国特許第6280857号明細書は、ニッケルをベースとし、コバルト、クロム及びアルミニウムと、必要に応じ更にレニウム並びに不可欠分のイットリウム及びケイ素を添加した高温保護層を開示している。
【0010】
ガスタービンの熱的に高負荷される構造部材上に、保護層を被着する実施形態は、欧州特許第025375491号明細書から公知である。
【0011】
定置ガスタービンにおいても、航空機のエンジンにおいても、入口温度はガスタービンで達成可能な熱力学的効率にとって重要な特性値であり、従って入口温度を上昇させる努力は、ガスタービンの専門分野に極めて重要である。熱的に高負荷される案内翼及び回転翼等の構造部材の基本物質として特別に改良された合金の使用、特に単結晶の超合金の使用により、明らかに1000℃を越える入口温度が可能になる。従来技術においては、定置ガスタービンの場合950℃及びそれ以上の入口温度が、また航空機のエンジンの場合1100℃或いはそれ以上の温度が可能になっている。
【0012】
単結晶基板を有するタービン翼の製造例は、国際公開第91/01433号パンフレットから公知であるが、構造が複雑になってしまう問題がある。
【0013】
高負荷される構造部材用にこれ迄開発されてきた基本材料の物理的負荷能力が、予想される入口温度の更なる上昇に関して十分に問題がないのに対して、酸化及び腐食に関して十分な安定性を達成するには、保護層に頼らざるを得ない。ほぼ1000℃程度の温度の煙道ガスにより予想される腐食環境下で、保護層は特に該層と基本材料との間の機械的相互作用に対し保護層の十分な化学的安定性の他に、十分に良好な機械的特性を持たねばならない。特に保護層は酸化及び腐食作用を受ける箇所となるので、場合により起こり得る基本材料の変形に対応し、亀裂を形成しないため十分に延性でなければならない。この場合、酸化及び腐食に対する保護層の安定性を典型的に改善できるアルミニウムやクロム等の元素を増量すると、保護層の延性が低下し、従って機械的負荷時にガスタービン内に通常生ずる力学的破壊、特に亀裂の発生に配慮せねばならない。保護層の延性が、元素のクロム及びアルミニウムにより減少する例は従来技術から公知である。
【0014】
国際公開第01/09403号パンフレットから、同様にレニウムを含む基板用超合金が公知である。同文献は、レニウムにより形成された金属間相が、超合金の長期安定性を低下させると述べている。この低下は、ルテニウムの添加により緩和可能である。
【0015】
それ故本発明は、高温時の耐腐食及び耐酸化性に優れ、十分に長期安定性であり、更に特に高温時のガスタービン内に予想される機械的応力に格別良好に適合する保護層を提供することを課題とする。
【0016】
この課題は、請求項1の保護層及び請求項7の保護層の製造方法により解決される。
【0017】
従属請求項には他の有利な処置法を列挙してある。またそれら従属請求項に記載の処置法を互いに有利に組合せることも可能である。
【0018】
特に本発明は、保護層が該層内及び保護層と基本材料との移行範囲内に、脆性のクロム−レニウム析出物を生ずるという知見に基づく。使用時、時間及び温度と共に増加する脆性相は、運転中にその後の層に剥離を伴う、特に際立った縦方向の亀裂を層内に生じ、かつ基本材料の界面層内にも生じる。基本材料から層中に拡散浸入し、又は炉内での熱処理中に表面を経て層中に拡散侵入する炭素との相互作用により、Cr−Re析出物の脆弱性が付加的に増大する。クロムとレニウム相の酸化により、亀裂形成も更に助長される。
【0019】
その際、熱及び機械的特性を決定するコバルトの作用も重要である。
【0020】
本発明のもう1つの課題は、腐食及び酸化に対する保護機能を高めた構造部材を提供することにある。
【0021】
この課題もまた、請求項6に記載の構造部材、特に高温時の腐食と酸化から保護する前記の保護層を有するガスタービン又は蒸気タービンの構造部材により解決される。
【0022】
本発明を図面に基づき以下に詳述する。
【0023】
本発明に基づく保護層7(図1)は、高温時の腐食及び酸化から構造部材を保護するため、主に以下に記載する元素(重量%)を含有する。
0.5〜2% レニウム
15〜21% クロム
24〜26% コバルト
9〜11.5% アルミニウム
0.05〜0.7% イットリウム及び/又はスカンジウムと希土類の元素とを含む群からの少なくとも1つの等価金属、および
残部 ニッケル並びに製造に由来する不純物(NiCoCrAlY)。
その際脆性相の形成を阻止しつつ、元素レニウムの有利な作用を利用する。
【0024】
個々の元素の分量は、元素のレニウムに関して観察されるそれらの作用に対して特に適合するよう決定される。それらの分量が、クロム−レニウム析出物を形成しないことを確認できれば、保護層の使用中に脆性相は生じず、これは、クロムの分量を少なくするばかりでなく、脆性相の形成に対するアルミニウムの作用を配慮し、アルミニウムの分量を厳密に調節して、その寿命を改善し、延長するように行われる。コバルト含有量を24〜26%に選ぶと、驚くほど明確かつ望外に保護層7の熱的、機械的特性を改善できる。コバルト含有量を局限して選択することで、合金の熱膨張係数にピーク値をもたらす合金のγ’相の発生及び更なる形成を極めて良好に抑制できる。さもないと、このピーク値は保護層7を有する構造部材の高温加熱時(タービンの運転中)又は他の温度変動時に、保護層7と基板の間に高い機械的応力を生ずることになる。これは、本発明により選択したコバルト含有量により少なくとも著しく低下できる。
【0025】
特に比較的高度の機械的特性下に否定的に作用する脆性相の低下と相互に作用し合って、選択したコバルト含有量による機械的応力の緩和により、機械的特性を改善できる。 この合金への所望のβ相の形成も、本発明に従うコバルト含有量で特に助成できる。その際レニウムを1〜1.8%、クロムを16〜18%、アルミニウムを9.5〜11%そしてイットリウムを0.3〜0.5%に設定すると有利である。
【0026】
この保護層は耐食性が良好で、酸化に対し特に優れた安定性を示し、かつ特に延性特性にも優れる。従ってこの保護層は、入口温度が更に高いガスタービン内での使用に特に適する。該層は使用中に脆弱化するクロム−レニウム析出物を殆ど示さないことから、運転中に殆ど脆化することがない。超合金は、クロム−レニウム析出物を示さないか、最大で6体積%のクロム−レニウム析出物を示す。
【0027】
その際レニウムの含有量を約1.5%、クロムの含有量を約17%、アルミニウムの含有量を約10%、コバルトの含有量を約25%及びイットリウムの含有量を約0.3%とすると特に有利である。大量生産時は一定の変動が不可避故、0.2〜0.3%又は0.2〜0.4%のイットリウム含有量で使用するとよく、同様に良好な特性が得られる。
【0028】
同様に、析出物を形成し、そのため脆弱化を起す溶射粉末中の微量元素は、重要な役目をする。それら粉末は例えばプラズマ溶射(APS、LPPS、VPS・・・)により施され、その他の方法(PV(D)、CVD・・・)も同様に考慮に値する。溶射粉末中の微量元素は合計して特に0.5%以下であり、次に記載するように幾つかの元素、即ち、炭素(250ppm未満)、酸素(400ppm未満)、窒素(100ppm未満)、水素(50ppm未満)に分割するとよい。
【0029】
上記の保護層は、超合金に対する接着仲介層の役目もする。
【0030】
この層上に更なる層、特にセラミック断熱層を施すことも可能である。
【0031】
この構造部材の場合、保護層はニッケル又はコバルト基の超合金から成る基板上に施すとよい。
基板として特に下記の組成が考慮の対象となる(重量%):
0.03〜0.05% 炭素
18〜19% クロム
12〜15% コバルト
3〜6% モリブデン
1〜1.5% タングステン
2〜2.5% アルミニウム
3〜5% チタン
選択的に微量のタンタル、ニオブ、ホウ素及び/又はジルコン、および
残部 ニッケル。
このような材料は、鍛造合金としてUdimet520及びUdimet720の商品名のものが公知である。
【0032】
構造部材のもう1つの基板として、以下に記載の組成も考慮の対象となる(重量%)。
0.1〜0.15% 炭素
18〜22% クロム
18〜19% コバルト
0〜2% タングステン
0〜4% モリブデン
0〜1.5% タンタル
0〜1% ニオブ
1〜3% アルミニウム
2〜4% チタン
0〜0.75% ハフニウム
選択的に微量のホウ素及び/又はジルコニウム、および
残部 ニッケル。
この種の組成は鋳造合金としてGTD222、IN939、IN6203及びUdimet500の商品名で公知である。
【0033】
この構造部材の基板のもう1つの例は下記の組成を有する(重量%)。
0.07〜0.1% 炭素
12〜16% クロム
8〜10% コバルト
1.5〜2% モリブデン
2.5〜4% タングステン
1.5〜5% タンタル
0〜1% ニオブ
3〜4% アルミニウム
3.5〜5% チタン
0〜0.1% ジルコニウム
0〜1% ハフニウム
選択的に微量のホウ素、および
残部 ニッケル。
この種の組成は鋳造合金としてPWA1483SX、IN738LC、GTD111、IN792CC及びIN792DSの商品名のものが公知である。IN738LCの材料は特に好適と考えられる。
【0034】
この構造部材の別の基板として下記の組成が考えられる(重量%)。
約0.25% 炭素
24〜30% クロム
10〜11% ニッケル
7〜8% タングステン
0〜4% タンタル
0〜0.3% アルミニウム
0〜0.3% チタン
0〜0.6% ジルコニウム
選択的に微量のホウ素、および
残部 コバルト。
この種の組成は鋳造合金としてFSX414、X45、ECY768及びMAR−M−509の商品名のものが公知である。この構造部材上の保護層の厚さを約100〜300μmに調整するとよい。
【0035】
上記保護層は、材料温度が約950℃程度、特に航空機のタービンで約1100℃程度の煙道ガスが衝突する際の腐食及び酸化から構造部材を保護するのに好適である。
【0036】
従って本発明に基づく保護層は、ガスタービンの構造部材、特にガスタービンの案内翼、回転翼又はガスタービン設備のタービンの手前又はタービン内で熱ガスが衝突する他の構成部材の保護に適する。この層は外被層(保護層はその外側層である)として或いは接着被膜(保護層はその中間層である)として使用可能である。
【0037】
図1は構造部材としての層組織1を示す。該層組織1は基板4からなっている。この基板4は金属及び/又はセラミックであってもよい。特に、例えばタービンの回転翼120(図2)又は案内翼130(図3、5)、燃焼室の内張り(図4)並びに蒸気又はガスタービン設備100(図5)の他のケーシング部分のようなタービンの構造部材では、基板4はニッケル、コバルト又は鉄基の超合金からなる。上記基板4上に、本発明による保護層7が載っている。該層7を、LPPS(低圧プラズマスプレイ)により被着するとよい。この層は、外側層又は中間層として使用可能である。後者の場合、この保護層7上にセラミック断熱層10が載っている。この層7は新しく製造した構造部材及び再研磨した構造部材上に被着できる。再研磨とは、構造部材を使用した後、場合によっては層(断熱層)を剥離し、腐食及び酸化物を、例えば酸処理(酸剥離)により除去することを意味する。場合によっては更に亀裂の修復も行う。基板13が極めて高価であることから、その後にこの種の構造部材を再被覆するとよい。
【0038】
図2は、周期的に負荷を加えた負荷試料の実験結果をグラフで示す。その際試料を一定の機械的、周期的負荷(振動負荷)及び周期的熱負荷に曝す(TMFテスト)。
【0039】
図2は、本発明に基づく組成を有する試料のテスト結果と、米国特許第5154885号、同第5273712号又は同第5268238号明細書に基づく組成を持つ従来技術による層のテスト結果を示すグラフである。
【0040】
これら実験は、延性0.51%の延びに調整して行った。
【0041】
層を商品名PWA1484(Pratt & Whitney社製合金)より成る基板上に施した。
【0042】
図2は、サイクル数に対し、水平方向に測定した亀裂の長さを示す。従来技術による層は、700回のサイクル数で亀裂を生じており、本発明に基づく層の場合よりも亀裂が極めて急速に成長したことが解る。本願に基づく層の場合、900回弱の負荷サイクル数で初めて亀裂が生じ、しかも従来技術に基づく層の場合より極めて小さい。サイクル数に対する亀裂の成長も、明らかに僅かである。これは本発明による層の卓越性を示す。
【0043】
図3は例としてガスタービン設備100の(部分縦断面図)を示す。ガスタービン設備100は、内部に回転軸102の周りを回転するように配置されたタービンの羽根車とも呼ばれるロータ103を有する。該ロータ103に沿って順次吸気ケーシング104、圧縮機105、例えば円環状の複数の同軸に配置されたバーナ107、タービン108及び排ガスケーシング109が続いている。環状燃焼室106は、例えば環状の熱ガス溝111と連通している。そこに例えば順次連結された4つのタービン段112がタービン108を形成している。各タービン段112は2個の環状翼からなる。作動ガス113の流動方向に、案内翼115の熱ガス溝111内に回転翼120により構成された列125が続いている。
【0044】
その際案内翼130は静翼143の内側ケーシング138に固定され、それに反して回転翼120は、例えばタービン円板133により列125をなしてロータ103に取り付けられる。このロータ103に発電機又は作動機械が連結されている(図示せず)。
【0045】
ガスタービン100の運転時、圧縮装置105により吸気ケーシング104を経て空気135が吸引され、圧縮される。圧縮装置105のタービン側の末端に準備された圧縮空気がバーナ107に流入し、そこで燃料と混合される。この混合物は燃焼室110内で作動ガス113を生成しつつ燃焼する。そこから作動ガス113は熱ガス溝111に沿って案内翼130及び回転翼120に流れる。ロータ103を駆動し、かつロータに連結された作動機械を駆動すべく、作動ガスは回転翼120に衝撃を伝えつつ膨張する。
【0046】
ガスタービン設備100の運転中、高温の作動ガス113に曝される構造部材は、熱負荷の影響下にある。作動ガス113の流動方向から見て第1のタービン段112の案内翼130と回転翼120は、環状燃焼室106を内張りする熱シールドを除けば最も強く熱負荷される。当該部分の高温に耐えるべく、そこを冷却剤で冷却する。同様に基板は、方向性組織構造を持ち、即ちそれらは単結晶(SX組織)であるか、縦方向の粒子(DS組織構造)のみを持つ。材料として、鉄、ニッケル又はコバルト基の超合金が適する。
【0047】
例えば欧州特許第1204776号、同第1306454号、同第1319729号明細書、国際公開第99/67435号又は同第00/44949号パンフレットから公知の超合金を使用する。該超合金の組成及びそれらの利点に関し、当該文献の開示内容を本明細書に援用する。
【0048】
翼120、130は、腐食及び酸化に対し本発明によるMCrAlXから成る保護層7を有し(式中Mは鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)の群の少なくとも1つの元素を表し、Xはイットリウム(Y)、ケイ素(Si)及び/又は希土類の元素の少なくとも1つを表す)及び/又は熱に対し断熱層を有する。断熱層は例えばZrO2、Y24−ZrO2からなる。該断熱層は非安定化であるか、酸化イットリウム及び/又は酸化カルシウム及び/又は酸化マグネシウムで一部又は完全に安定化されている。例えば電子ビーム蒸着(EB−PVD)等の適切な被覆法で柱状晶粒子が断熱層中に形成される。
【0049】
案内翼130はタービン108の内側ケーシング138の方を向いた案内翼の支脚(図示せず)と、該案内翼の支脚に対向する案内翼の頭部を持つ。該案内翼の頭部はロータ103の方を向いており、固定子143の固定リング140に固定されている。
【0050】
図4は層組織1を有するガスタービンの燃焼室110を示す。該燃焼室110は、例えば円周方向にタービン軸102の廻りに配置された多数のバーナ107が共通の燃焼室空間内に開口した所謂環状の燃焼室として形成されている。そのためタービン軸102の廻りに配置された燃焼室110は、その全体で環状をなしている。
【0051】
高効率を達成すべく、燃焼室110は約1000〜1600℃の比較的高温の作動ガスMの温度に曝される。材料にとり不都合な作動パラメータの場合でも、比較的長期の作動持続時間を可能にすべく、燃焼室壁面153は、作動ガスMに面する側に熱遮蔽要素の内張り155を備える。各熱遮蔽要素155は作動ガスの側に、特に耐熱性の保護層、又は高温に耐える材料で製造され、図1に示す保護層7を備える。更に燃焼室110の内部の高温に対し、熱遮蔽素子155又は抑制素子として冷却システムを有している。
【0052】
燃焼室壁面の材料と被覆は、タービン翼120、130に類似のものであってよい。
【0053】
燃焼室110は、特に熱防御素子155の減損を検出すべく設計してある。そのため燃焼室壁面153と熱防御素子155の間に、複数の温度センサ158を配置している。
【0054】
図5は、本発明による保護層7を含む層組織1を持つタービン翼120、130を斜視図で示す。翼120、130は縦軸121に沿って延びている。該翼120、130は、縦軸に沿って順に、固定部分400、それに隣接する翼台403並びに翼のブレード部分406を持つ。特に翼のブレード部分406には、保護層7又は図1に基づく層組織1が形成されている。
【0055】
固定部分400内に、回転翼120、130を回転軸に固定する役目をする翼の支脚183が形成されている。支脚183は、ハンマーヘッド状を成している。他の形態、例えば樹木状であってもよい。従来の翼120、130では、回転翼120、130の全部分400、403、406に塊状の金属材料が使用されてきた。この場合には、回転翼120、130は鋳造、鍛造、フライス削り又はそれらを組合せた方法で製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明による層組織の概略切断面図。
【図2】本発明と、従来技術のタービンの回転翼の負荷テストの比較を示す図。
【図3】ガスタービン設備の部分的縦断面図。
【図4】本発明によるタービン翼の遠近図。
【図5】本発明による保護層のある相組織から成るタービン翼の遠近図。
【符号の説明】
【0057】
1 層組織、4 基板、7 保護層、10 断熱層、13 外側セラミック層、100 ガスタービン、102 回転軸、104 吸気ケーシング、105 圧縮機、106、110 環状燃焼室、107 バーナ、108 タービン、109 排ガスケーシング、111 熱ガス溝、112 タービン段、113 作動ガス、115 案内翼列、120 回転翼、130 案内翼、133 タービン円板、135 空気、138 内側ケーシング、140 固定リング、143 静翼、153 燃焼室壁面、155 熱防御素子の内張り、158 温度センサ183 翼の支脚、400 翼の固定部分、403 翼台、406 ブレード部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温時の腐食及び酸化から構造部材を保護する保護層において、下記の組成(重量%)から成る高温時の腐食及び酸化から構造部材を保護する保護層。
0.5〜2% レニウム
15〜21% クロム
24〜26% コバルト
9〜11.5% アルミニウム
0.05〜0.7% イットリウム及び/又はスカンジウムと、希土類の元素とを含む群からの少なくとも1つの等価金属
0〜1% ルテニウム、および
残部 ニッケル並びに製造に由来する不純物。
【請求項2】
前記保護層が、
1〜1.8% レニウム
16〜18% クロム
9.5〜11% アルミニウム、および
0.3〜0.5% イットリウム及び/又はスカンジウムと希土類の元素とを含む群からの少なくとも1つの等価金属を含む請求項1記載の保護層。
【請求項3】
前記保護層が、
1.5% レニウム
17% クロム
25% コバルト、および
0.4% イットリウム及び/又はスカンジウムと希土類の元素とを含む群からの1つの等価金属を含む請求項1又は2記載の保護層。
【請求項4】
最大限6体積%のクロムとレニウムの析出物を含む請求項1から3の1つに記載の保護層。
【請求項5】
上に断熱層が施されたことを特徴とする請求項1から4の1つに記載の保護層。
【請求項6】
ガスタービンの高温時の腐食及び酸化から保護する保護層を有する請求項1から4の1つに記載の構造部材。
【請求項7】
0.5%以下の微量元素を含む粉末を使用することを特徴とする請求項1記載の保護層の製造方法。
【請求項8】
前記粉末の炭素含有量が250ppm以下であることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記粉末の酸素含有量が400ppm以下であることを特徴とする請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
前記粉末の窒素含有量が100ppm以下であることを特徴とする請求項7から9の1つに記載の方法。
【請求項11】
前記粉末の水素含有量が50ppm以下であることを特徴とする請求項7から10の1つに記載の方法。
【請求項12】
前記粉末を溶射することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項13】
前記粉末を蒸発させることを特徴とする請求項7記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−508455(P2007−508455A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534607(P2006−534607)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010025
【国際公開番号】WO2005/042802
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】