説明

標識ターゲットを検出するシステムおよび方法

【課題】標識材料を含む試料を高速で撮像する走査システムおよび方法、特に、ポリマー配列アレイ、例えばオリゴヌクレオチドアレイを走査するシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】基板の表面上のマークされた領域を検出するシステムは、励起放射源と、該励起放射源からの放射を該基板の該表面の選択領域上にフォーカシングさせる焦点システムであって、フォーカスされたスポット径に対する走査フィールド径の比が約2000より大きく且つ開口数が約0.2よりも大きい対物レンズを含むフォーカシングシステムと、該基板の該表面にわたって少なくとも5画像ライン/秒の速度で該フォーカスされた励起放射を走査する放射指向システムと、 該励起放射に応答して該基板の該表面からの発光を検出する検出器であって、該対物レンズが該発光を受けて該発光を該検出器に伝送する、検出器と、 該検出された発光の量を、該発光が発せられた該基板の該表面上の位置の関数として記録するデータ取得システムを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1996年5月16日出願の暫定米国特許出願第60/017,203号(弁理士登録番号16528X-018900)の正規の出願である。特許出願の完全な開示は、本明細書においてすべての目的のために参考として援用されている。本出願はまた、譲受人が同じである、1994年9月9日出願の同時係属米国特許出願第08/301,051号、現在は米国特許第5,578,832号、および1994年2月10日出願の米国特許出願第08/195,889号(それぞれ弁理士登録番号16528X-003800および16528X-00600)に関連する。これらの特許出願の完全な開示は本明細書においてすべての目的のために参考として援用されている。
【発明の背景】
【0002】
本発明は一般に撮像分野に関する。詳しくは、本発明は、標識材料を含む試料を高速で撮像する走査システムおよび方法、特に、ポリマー配列アレイ、例えばオリゴヌクレオチドアレイを走査するシステムおよび方法を提供する。
【0003】
共焦顕微鏡などの、標識マーカーを含む試料を撮像する方法およびシステムは市販されている。共焦顕微鏡は、一般に、試験片上の照明スポットと共焦であるピンホールを用いて、焦面内の物体から反射または発光される光以外の光を排除する。このように焦点ずれの光を排除することにより、顕微鏡が、様々な異なる焦点位置での一連の光スライスを収集し組み合わせて、試験片の二次元または三次元表示を生成することが可能になる。
【0004】
いくつかの走査顕微鏡は、サーボ搭載ミラーを含む検流計などの放射方向システムを用いて、基板を横断するレーザスポットを高速に走査する。これらの顕微鏡は比較的高い走査速度を有する(例えば、約30ライン/秒以上)が、一般には、基板上の配列材料アレイを撮像するなどのいくつかの適用で必要とされる解像度および視界の両方を実現しない。実際において、検流計に基づく共焦顕微鏡の視界は解像度にほぼ比例する。例えば、0.25μmの解像度を有する典型的な40×顕微鏡の対物レンズは、視野サイズが僅か約500μmである。従って、従来の検流計に基づく共焦顕微鏡は、高い解像度および大きな視界の両方を必要とする適用にとっては不十分である。
【背景技術】
【0005】
米国特許第5,143,854号(Pirrungら)、PCT国際公開第92/10092号、および米国特許出願第08/195,889号(弁理士登録番号16528X-006000)に記載されたものなどの走査共焦顕微鏡システムもまた既知である。これらの特許出願は本明細書においてすべての目的のために参考として援用されている。これらの走査システムは光学トレインを含み、光学トレインは、単色または多色光源を、その焦面の直径約5ミクロン(μm)のスポットに向ける。場合によっては、光子カウンタが光に応答して装置からの発光を検出する。光子カウンタによって収集されたデータは、画像の1つの画素またはデータポイントを表す。この後、並進ステージが装置を次の位置に移動させると、光は別の画素を走査する。
【0006】
開示されているように、これらの走査共焦顕微鏡システムは、適切な対物レンズを用いることによって高い解像度を、および適切な並進ステージ(translation stage)を用いることによって広い視界を提供する。しかし、これらの並進ステージに基づく共焦顕微鏡は、システムのスループットを犠牲にすることによって、高い解像度および視界を得る。例えば、米国特許第5,143,854号(Pirrungら)および米国特許出願第08/143,312号に開示されたものなどの先端製造技術を用いた配列材料アレイは、約105の配列密度を有し得る。これらの特許出願は本明細書においてすべての目的のために参考として援用されている。各配列に対して36個の画素が必要であるとすると、画像を獲得するためにかかる時間は、少なくとも10分を超える。
【特許文献1】米国特許第5,143,854号
【特許文献2】PCT国際公開第92/10092号
【特許文献3】米国特許出願第08/195,889号
【0007】
上記の理由により、試料を撮像する改良された方法およびシステムが望まれる。
【発明の要旨】
【0008】
本発明は、基板表面上のマークされた領域を検出するシステム、方法および装置を提供する。具体的には、本発明は、基板を走査して、高感度および高解像度のイメージを高速に得るための方法および装置を提供する。本発明の共焦走査顕微鏡は、組合せ化学(combinatorial chemistry)および遺伝分析の分野に見られるような材料の高密度アレイを撮像するために、検流計(galvanometer)を利用した走査顕微鏡の高走査速度を、十分に高い解像度、感度および十分に大きい視野と組み合わせる。
【0009】
1つの局面において、本発明は、基板の表面上の標識された領域を検出するシステムを提供する。このシステムは、励起放射源と、基板の表面上の複数の領域に励起放射をフォーカスさせる焦点光学系とを備えている。フォーカスした励起放射を基板の表面にわたって直線的に走査させるために、放射指向システムも設けられる。励起放射に応答して基板表面からの発光を検出するように検出器が配置され、データ取得システムは、検出された発光の量を、発光が検出された基板の表面上の位置の関数として記録する。
【0010】
実施形態の1つにおいて、焦点光学系は、フォーカスされたスポット径に対する走査フィールド径の比が2000より大きい、好ましくは3000より大きい、より好ましくは4000より大きい対物レンズを備えている。これにより、この顕微鏡は、例えば、長さ約14mmの平坦なフィールド内の所与の点において直径約3ミクロンのスポットにレーザービームをフォーカスさせることができる。さらに、対物レンズは、少なくとも0.2の開口数、好ましくは0.25の開口数を有し、これは、基板上の蛍光標識された領域を検出するのに十分な感度を提供する。
【0011】
好ましくは、放射指向システムは、基板の表面にわたって励起放射を走査させる検流計ミラーを備える。対物レンズは、好ましくは検流計ミラーの旋回位置またはその近傍に位置する外部入射瞳(external entrance pupil)を有する。通常、ミラーは、少なくとも7.5Hz、好ましくは少なくとも20Hz、より好ましくは少なくとも30Hzの周波数で振動する。このようにすれば、約5画像ライン/秒、好ましくは少なくとも10画像ライン/秒、より好ましくは少なくとも約30画像ライン/秒の速度で、レーザースポットを基板にわたって走査させることができる。これにより、Pirrungが開示するポリマーアレイ基板(polymer array substrate)のような高密度基板を顕微鏡で高速に走査することが可能になる。ミラーが、単方向に(例えば、鋸歯状波で)または双方向に(例えば、対称三角波で)走査し得ることに留意されたい。後者の場合、検流計の周波数は概して、画像ライン/秒でデータ取得速度の約半分である。従って、5画像ライン/秒で走査するために、後者の場合の検流計の周波数は7.5Hz未満であり得る。
【0012】
別の実施形態の1つにおいて、本発明は、基板の表面上の蛍光領域を検出するシステムをも提供する。このシステムは、励起放射源と、励起放射を基板の表面上で直径10μm未満、好ましくは5μm未満、より好ましくは約3μmのフォーカスされたスポットにフォーカスさせる第1の焦点光学系とを備えている。振動または往復放射指向システムは、基板の表面にわたって直線的にスポットを走査させ、焦点移動距離は少なくとも10mm、好ましくは約14mmである。実施形態の1つにおいて、光学トレインは、基板の表面から発光された蛍光を、同表面から反射した励起放射から分離する。基板の表面を焦点光学系の焦点面に自動的に配置するオートフォーカスシステムをさらに設けてもよい。
【0013】
本発明は、上記システムを用いて基板を走査する方法をも提供する。例えば、1つの局面において、本発明は、それぞれ異なる既知の位置において基板の表面上に固定化された複数の異なるポリマーシーケンスを有するポリマーアレイを走査し、これにより、アレイ上のどのポリマーシーケンスが蛍光標的分子と結合しているかを特定する方法を提供する。この方法は、励起放射源を基板の表面上にフォーカスさせる工程と、基板の表面にわたって少なくとも5画像ライン/秒の速度で励起放射を走査させる工程とを包含する。励起放射に応答して基板の表面から蛍光発光を集光する。これらの蛍光発光は、基板の表面上の位置の関数として記録する。基板上での位置が、蛍光標的分子と結合したアレイ上のポリマーシーケンスを示す。
【0014】
本願明細書の残りの部分および添付の図面を参照することによって、本願発明の性質および利点のさらなる理解が得られ得る。
【好適な実施形態】
【0015】
目次
I.定義
II.総論
a.はじめに
b.撮像システムの概観
III.撮像システムの1つの実施形態の詳細な記述
a.検出装置
b.データ獲得
IV.撮像システムの第2の実施形態の詳細な説明
【0016】
I.定義
以下の用語は、本明細書で使用される場合には以下の一般的な意味を有するように意図される。
【0017】
1.相補:プローブ分子およびそのターゲットの相互作用する表面が位相的に和合または整合することを意味する。従って、ターゲットおよびそのプローブは相補であると、さらに接触表面特性は互いに相補であると記述され得る。
【0018】
2.プローブ:プローブとは、特定のターゲットによって認識される表面固定分子である。本発明によって調査され得るプローブの例としては、細胞膜レセプタにとっての作用薬と拮抗薬、毒素と毒液、ウィルスのエピトープ、ホルモン(例えば、オピオイドペプチド、ステロイドなど)、ホルモンレセプタ、ペプチド、酵素、酵素基板、コファクター、薬剤、レクチン、糖、オリゴヌクレオチド、核酸、オリゴ糖、タンパク質、およびモノクローナル抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
3.ターゲット:所定のプローブに対してアフィニティを有する分子。ターゲットは天然または人造の分子であり得る。また、ターゲットは、それらの不変状態で、または他の種との凝集体として用いられ得る。ターゲットは、直接または特定の結合物質を介して結合部材に、共有結合によってまたは共有結合以外の結合によって接着され得る。本発明によって用いられ得るターゲットの例としては、抗体、細胞膜レセプタ、特定の抗原決定基(ウィルス、細胞または他の材料の)と反応するモノクローナル抗体および抗血清、薬剤、ポリヌクレオチド、核酸、ペプチド、コファクター、レクチン、糖、多糖、細胞、細胞膜、および細胞小器官が含まれるが、これらに限定されない。ターゲットは、当該分野では抗プローブと呼ばれることもある。本明細書ではターゲットという用語が用いられるが、意味の違いは意図されない。2つの高分子が分子認識により結合されて錯体を形成するとき「プローブターゲット対」が形成される。
【0020】
II.概論
A.はじめに
本発明は、基板を走査して高感度および高解像度の画像を高速で得る方法および装置を提供する。本発明は、広い範囲の用途を有し、特に、100mm2に対して2または3μm2などの、大きな領域内から微視的な領域の定量研究を必要とする場合にも使用され得る。例えば、本発明は、組織学(組織化学的に染色された、および免疫学的に蛍光染色された画像の研究)、または蛍光原位置ハイブリダイゼーションの分野において適用され得る。1つの適用では、本発明は、本明細書で述べるように、支持体上に製造されたプローブ配列アレイを撮像するために使用される。
高解像度の走査システムおよび方法は、微視的、巨視的を問わず、電子産業界、例えば半導体および微細製造業界で、微細製造の電子部品、例えばマイクロプロセッサ、マイクロ回路などを走査するために、日常的に使用されている。しかし、このような走査はまた、化学および遺伝子分析を組み合わせた分野で非常に有用である。特に、高解像度の走査方法および装置は、ポリマーアレイの適用において使用され得る。これらのポリマーアレイは、一般に、典型的には平坦な基板の表面に結合される多くの異なるポリマー配列よりなる。
【0021】
ポリマー配列が形成される基板は、微粒子、鎖、沈殿物、ゲル、シート、管、球体、容器、毛細管、パッド、スライス、膜、プレート、スライドなどとして存在する、広い範囲の生物学的、非生物学的、有機または無機の材料、もしくはこれらのいずれかの組み合わせにより構成され得る。基板は、ディスク、四角形、球体、円形などのいかなる都合の良い形状であってもよい。基板は、好ましくは平坦であるが、様々な他の表面形状をとり得る。例えば、基板は、試料を載置する隆起または陥没領域を含み得る。基板およびその表面は、好ましくは、試料を載置させる部分に剛直な支持体を形成する。基板およびその表面はまた、適切な光吸収特性を提供するように選択され得る。例えば、基板は、重合化されたラングミュア−ブロジェット膜、機能化ガラス、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO2、SiN4、改変シリコン、もしくは様々なゲル、または(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフルオライド、ポリスチレン、ポリカーボネートまたはこれらの組み合わせなどのポリマーのうちのいずれかであり得る。他の基板材料は、本開示を検討することにより当業者であれば容易に明らかとなり得る。1つの好適な実施形態では、基板は平坦なガラスまたはシリカである。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、基板の表面は周知の方法を用いてエッチングされ、所望の表面特性を提供する。例えば、トレンチ、V形溝、メサ構造などを形成することにより、衝突する光の焦点内に合成領域をもっと密に配置させ得る。表面はまた、反射「鏡」構造を備えて、表面から集光される発光を最大限にすることができる。
【0023】
固体基板の表面は、常にそうであるとは限らないが、通常は、基板と同じ材料よりなる。従って、表面は幅広い種類の材料、例えば、ポリマー、プラスチック、樹脂、多糖、シリカ、またはシリカベースの材料、炭素、金属、無機ガラス、膜、または上記の基板材料のいずれかにより構成され得る。1つの実施形態では、表面は光学的に透明で、シリカ表面で見られるような、表面Si−OH機能性を有し得る。
【0024】
これらのアレイは、典型的には、異なるポリマー配列の各々の基が、基板表面上の異なる公知のロケーションにおいて結合することを可能にする様式で調製される。これらのアレイを合成する基本的方法は、以前に述べられている。例えば、光照射による合成方法を用いてポリマーアレイを合成する方法は、参考のためここに全体を援用する、Pirrungらの米国特許第5,143,854号およびFodorらの米国特許第5,405,783号に記載されている。さらに、これらのアレイを合成する機械的な方法は、例えば、参考のためここに全体を援用するWinklerらの米国特許第5,384,261号に記載されている。これらの基本的方法を用いると、フォトリソグラフィー技術と製造技術との組み合わせにより、例えば、各プローブ配列(「フィーチャー(feature)」)が支持体上の非常に小さい領域(「部位」)を占めることが可能になり得る。いくつかの実施形態において、このフィーチャー部位は、数ミクロンまたはさらに単一の分子と同じ程度に小さいことがあり得る。例えば、約105〜106のフィーチャーが、僅か12.8mm2の領域内で製造され得る。このようなプローブ配列は、Very Large Scale Immobilized Polymer Synthesis(VLSIPSTM)として公知のタイプであり得る。説明を容易にするために、本発明に用いられるアレイを、異なるオリゴヌクレオチド配列を有するアレイとして説明する。しかし、様々な異なるポリマーアレイのタイプが、本発明の装置に同等に適用可能であることは容易に理解されるべきである。さらに、本発明のスキャナは、非蛍光表面を走査するために反射モードにおいても使用され得る。
【0025】
ポリマーアレイを用いるこれらの適用において、このようなアレイは、モノマーの基準セットを含む、与えられた長さの全ヌクレオチド配列を有する状態で調製され得る。例えば、4つのヌクレオチドの基準セットを含む、全ての可能性のある長さnの配列を含むオリゴヌクレオチドのアレイは、表面上に4nまでのオリゴヌクレオチドを含む。8merまたは10merのオリゴヌクレオチドのアレイの場合、このようなアレイは、それぞれ約65,536および1,048,576以上の異なるオリゴヌクレオチドを含み得る。概して、全ての可能性のある長さnのポリマーを有するアレイを生成することが望まれる場合、Pirrungの米国特許第5,143,854号に記載されているように、単純なバイナリマスキングストラテジーが用いられ得る。
【0026】
交互マスキングストラテジーは、ポリマー配列のサブセット、すなわち、モノマーの与えられた配列を有するポリマーを含むが、各位置において、モノマーの基準セットの各メンバーにより体系的に置換され得る、プローブのアレイを生成し得る。オリゴヌクレオチドプローブの場合、与えられた公知の核酸セグメントに相補的であり且つ核酸セグメントの長さに亘る範囲のプローブを横たえる又は「タイル」するために、これらの交互合成ストラテジーが用いられ得る。タイリングストラテジーは、プローブ基の各々の配列内の1以上の個々の位置を、ヌクレオチドの基準セットの各メンバーに置換することをも含む。これらの位置は、「インテロゲーション位置」と呼ばれる。標的核酸のハイブリダイゼーションパターンを読み取ることにより、配列中に突然変異があるか否か及びその位置が決定され得、さらに、インテロゲーション位置内にいずれの塩基が含まれているかを同定することにより特定の突然変異は何であるかが決定され得る。タイリング方法およびストラテジーは、すべての目的のために参考のためここに全体を援用するPCT国際出願公開第95/11995号にかなり詳細に記載されている。
【0027】
タイルされたアレイは、公知のオリゴヌクレオチド配列または「標的」内の突然変異を同定するなどの様々な適用に用いられ得る。特に、アレイ上のプローブは、公知の核酸配列に相補的なサブ配列を有するが、その配列内の少なくとも1つの位置は他の3つのヌクレオチドにより体系的に置換されている。例えば、参考のためここに全体を援用する米国特許第5,527,681号を参照のこと。
【0028】
概して、配列情報が望まれるサンプル核酸は、アレイに接触する。この「標的」配列は、典型的には、蛍光部分、すなわち、フルオロセインまたはローダミンなどの検出可能基によって標識される。標的の、アレイへのハイブリダイゼーションに従うと、蛍光に関してアレイの表面を走査することにより、標的配列が結合するアレイの位置が検出され得る。
【0029】
表面は、典型的には、励起放射を表面に向けて標的内の蛍光標識基を活性化することにより走査される。蛍光標識基は、この結果、蛍光応答放射を発する。蛍光応答放射は、検出されて、蛍光が元々起こった領域に割り当てられる。蛍光が元々起こった位置を知ることにより、標的が結合する配列が同定され得る。
【0030】
用語「フィーチャー」は、本明細書において概して、異なるポリマー配列を含む別々の領域を定義するために用いられるが、概して、基板の表面上の任意の要素、例えば、領域または構造などを意味する。典型的には、本明細書に記載する走査系を用いて走査する基板は、小さいフィーチャーサイズを有し、その結果、基板表面上に高いフィーチャー密度を有する。例えば、個々のフィーチャーは、典型的には、少なくとも1つの、100μm以下、好適には50μm以下、より好適には約20μm以下の長さまたは幅を有する。従って、複数のポリマー配列を表面上に有する基板を用いる実施形態の場合、異なるポリマー配列の各々は、典型的には、実質的に単一のフィーチャー内に含まれる。
【0031】
プローブアレイは、広範囲の適用を有する。例えば、プローブアレイは、特に、個々のDNAの後天的または先天的突然変異のいずれによるものであれ、遺伝的疾患を検出するように設計され得る。これらは、すでに参考のため援用している米国特許第出願シリアルナンバー08/143,312号に記載されているように、嚢胞性線維症、糖尿病および筋ジストロフィーなどの遺伝的疾患、並びに、癌(いくつかの癌に関連するP53遺伝子)などの後天的疾患を含む。
【0032】
遺伝的突然変異は、ハイブリダイゼーションによる配列決定として知られる方法によって検出され得る。ハイブリダイゼーションによる配列決定を行う際、配列決定すべき1以上の標的を含む溶液(すなわち、患者からのサンプル)がプローブアレイに接触する。標的は、相補的プローブ配列を結合またはハイブリダイズする。概して標的は、蛍光マーカー、放射性同位元素、酵素、または他のタイプのマーカーにより標識される。従って、標的が相補的プローブとハイブリダイズするロケーションは、マーカーを見つけることにより同定され得る。ハイブリダイゼーションが起こるロケーションに基づき、標的配列に関する情報が抽出され得る。突然変異の存在は、標的配列を野生型と比較することにより決定され得る。
【0033】
標的とプローブとの相互作用は、動力学および熱力学の面で特徴づけられ得る。従って、アレイが標識された標的の溶液に接している間にアレイをインテロゲートすることが必要である。その結果、検出系は、表面結合標的と溶液支持標的とを識別する能力を有した非常に選択的なものでなければならない。さらに、定量分析を行うために、高密度容量のプローブ配列は、系が各フィーチャー部位を識別する能力を有することを必要とする。
【0034】
B.撮像システムの概要
本発明の装置は概して、基板の表面に亘って活性化放射ビームまたはスポットを迅速に掃引する走査装置を用いる。装置はさらに、励起放射を基板の表面上において、基板上に高解像のフィーチャーを提供するに十分小さくフォーカスさせ、同時に広い走査フィールドを提供する焦点光学系を含む。標識が照射されたときにサンプル上の標識によって発された電磁放射を検出することにより、像が得られる。1つの実施形態において、蛍光発光が焦点光学系によって収集され検出されることによって、基板表面上に蛍光の像が形成される。好適な局面において、本発明の装置はさらに、共焦検出系を用いることにより、励起放射の焦点の面の上方または下方の構造から不要な信号を減少または排除し、さらに自動焦点系を用いることにより基板表面上の活性化放射と表面からの発光放射との両方をフォーカスさせる。概して、励起放射および応答発光は、異なる波長を有する。望まれない発光の検出を阻止するために、標識の発光帯内に対する高透過率と励起波長内に対する低透過率とを有するフィルタが用いられ得る。これらは概して、背景ノイズの潜在的源として、焦点のずれた平面からの発光または散乱励起照射を含む。
【0035】
動作において、本発明の装置は、1以上の励起放射源を含む。典型的には、これらの源は、固定化された又は静止した点光源、例えば、アルゴン、ヘリウム−ネオン、ダイオード、色素、チタンサファイア、周波数倍増ダイオードポンプNd:YAG、およびクリプトンなどのレーザである。典型的には、励起源は、可視スペクトル内の励起波長でサンプルを照射するが、適用(すなわち、マーカーおよび/またはサンプルのタイプ)によっては他の波長(すなわち、近紫外線または近赤外線スペクトル)が用いられ得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、用いられた標識の種類の吸収極大およびその近傍の波長を有する電磁放射で励起される。このような波長で標識を励起させることにより、最大数の光子の放出が行われる。例えば、フルオロセイン(488nmの吸収極大)が標識として用いられた場合、約488nmの波長を有する励起放射が標識からの最も強い発光を誘導する。
【0036】
マルチ標識スキームが用いられた場合、様々な候補標識の吸収極大の平均値に近似する波長が用いられ得る。あるいは、各々が、特定の標識の収集極大に対応する波長を用いる、複数の励起が行われ得る。表Iは、様々なタイプの蛍光体およびその対応する吸収極大の例を示す。
【表1】

【0037】
点光源からの励起放射は、基板の表面に亘って前後に迅速に励起放射ビームを走査する可動放射方向系に向けられる。励起放射の掃引モーションを生成するために、様々な装置が用いられ得る。例えば、この掃引様式の励起放射を方向付けるために、共振スキャナまたは回転ポリゴンが用いられ得る。しかし概して、走査系としては検流計装置が好適である。本明細書において、用語「検流計」は、ミラーを、典型的には90度未満である制限された所定の範囲に亘って発振または回転させるサーボモータを用いる装置を意味する。これは、検流計ミラーから反射する、迅速に掃引するまたはラスタするビームを生成する。上記ビームは次いで、走査すべき基板の表面に向けられて表面を掃引する。典型的には、検流計ミラーに向けられた及び検流計ミラーから反射した放射を方向づける、フォーカスする、またはフィルタリングすることを補助するために、活性化源と検流計ミラーとの間に光学トレインが用いられ得る。
【0038】
典型的には、本発明の装置およびシステムにおいて用いられる検流計は、典型的には約7.5Hzより大きく、好ましくは約20Hzより大きく、より好ましくは30Hzより大きい発振周波数で、基板表面を横切って走査スポットを掃射する。この周波数により、少なくとも約20ライン/秒の速度、好ましくは約5画像ライン/秒、好ましくは少なくとも約10画像ライン/秒、より好ましくは少なくとも約30画像ライン/秒で、スポットは典型的に基板を横切って走査され得る。ミラーは単方向(例えば鋸歯状波によって)または双方向(例えば対称形三角波によって)で走査し得ることに留意せよ。後者の場合、検流計の周波数は一般に、画像ライン/秒でのデータ取得速度のおよそ半分になる。従って、5画像ライン/秒を走査するための後者の場合の検流計の周波数は、7.5Hzより低くなり得る。次に、活性化放射を焦点光学系を通すことにより、ターゲット配列を検査するために用いられている掃引ビームをアレイ表面にフォーカスさせる。またこれらの同じ焦点光学系により、基板表面から発光された蛍光を後の検出のために集光する。
【0039】
対物レンズを好ましくは、広い走査フィールドを可能にしながら高解像度(フォーカスされたスポットサイズによって決定される)を得られるように選択する。「フォーカスされたスポットサイズ」とは、1/e2強度ポイントでの基板の表面上におけるフォーカスされた活性化スポットの直径によって規定される。「走査フィールド」とは、フォーカスされた活性化ビームすなわち「スポット」の、掃引ビームの移動方向に平行な1次元での移動距離として定義される。本発明の共焦システムにより一般に、約10μm以下、好ましくは約5μm以下、より好ましくは約3μm以下の直径を有するフォーカスされたスポットサイズが得られる。また、これらのシステムは、活性化ビームの掃射の方向に平行な次元が通常約10mmより大きくより好ましくは約14mmより大きい、走査フィールドを有している。
【0040】
説明を簡単にするために、解像度および実効走査フィールドの組み合わせ測定値を、被写体の実効視野のサイズの、スキャナからのフォーカスされたスポットのサイズに対する比として与える。
【0041】
例えば、2mmの走査フィールドおよび10μmのフォーカスされたスポットサイズを有するスキャナは、比が200(2mm/0.010mm)である。14mmの実効走査フィールドおよび3μmのフォーカスされたスポットサイズを有するスキャナは、比が4666である。一般に、本発明の走査システムは、視野サイズのフォーカスされたスポットサイズに対する比が通常少なくとも約2000であり、好ましくは約3000より大きく、より好ましくは約4000よりも大きい。「走査フィールド」は一般に、検流計ミラーが基板を横切ってレーザスポットを走査する方向を指すことに留意されたい。並進ステージは基板を走査方向に直交する方向に移動させ、この方向は14mmより大きくてもよい。
【0042】
本発明の一実施態様において、開口数が少なくとも約0.2の対物レンズを設けることにより、高蛍光回収効率が達成される。特に好適な局面において、開口数は少なくとも約0.25である。これは約F/2.5からF/2のF数に相当する。
【0043】
走査フィールドサイズを犠牲にすることなく小さいスポットサイズを提供することに加え、本走査システムの焦点光学系は、テレセントリックな対物レンズを含んでいてもよい。これにより、活性化ビームが走査表面に対してその表面に実質的に正規方向の角度で入射することを可能にする。すなわちレンズ軸に対して入力ビームがレンズのどこを通って伝播するかに関わらない。「実質的に正規方向」とは、約0°、例えば0°から5°、好ましくは0°から2°の間の入射角を意味する。
【0044】
基板表面を横切って活性化放射スポットが掃引されるにつれ、活性化放射は、表面に残存している蛍光基、例えば表面に結合しているものを活性化する。活性基は応答放射あるいは発光を発し、これが次に対物レンズによって集光され、サーボ設置ミラーを介して光学トレインを通って戻される。蛍光の検出の際の反射された励起放射による悪影響を回避するために、ダイクロイックミラーまたはビームスプリッタを光学トレイン中に設けてもよい。これらのダイクロイックビームスプリッタまたはミラーは、励起放射の波長における放射に対して反射性である一方、応答放射の波長における放射に対しては透過性である。例えば、アルゴンレーザをポイントエネルギー源として用いる場合、典型的には約488nmの波長を有する活性化放射を発生する。一方、活性化されたフルオレセイン部分から発せられる蛍光は典型的には約515から545nmの間の波長を有する。従って、515nmより大きい波長を有する光は透過する一方でこれより短い波長を有する光を反射するようなダイクロイックミラーを設けてもよい。これにより、基板表面から発された励起放射が、基板表面から発せられた応答放射から効果的に分離される。同様に、追加的なダイクロイックミラーを用いて、異なる応答放射波長を有する標識基からの信号を分離することにより、複数の蛍光インジケータの同時検出を可能にし、複数のターゲット配列を有する単一のアレイの同時検査を可能にしてもよい。具体的には、第1のターゲット配列を例えばフルオレセインなどの短い波長の蛍光標識で標識し、第2のターゲット配列を、例えばカーボシアニン色素など(例えばCY3)の550から600nmの範囲の応答放射を発する長い波長の蛍光標識で標識してもよい。これらのターゲットの各々からの応答放射を分離し、追加的なダイクロイックビームスプリッタおよび検出器を加えることによって個々に検出し得る。
【0045】
応答放射の反射された励起放射からの分離の後、掃引あるいは蛍光を例えば,光電子増倍管などの検出器に向けることにより応答放射のレベルを測定し、その放射が発生した基板上の位置の関数としてこのレベルを記録する。典型的には、応答放射は、共焦ピンホールなどの空間的フィルタを介して検出器上にフォーカスされる。そのような空間的フィルタは、励起放射の焦点平面上または下の構造物からの不要な信号を減少または除去する。また装置は追加的に、ダイクロイックミラーと検出器との間にバンドパスフィルタを有することにより、検出器に伝達される放射の波長をさらに狭めてもよい。
【0046】
上述のように、反射された励起放射は一般的に、本明細書に記載した装置内のオートフォーカスシステムにおいて用いられ得る。特に、反射された励起放射は、例えばフォトダイオードなどの、別の空間的フィルタ(すなわち共焦ピンホール)の後ろに好ましくは位置する検出器に向けられてもよい。
【0047】
基板表面は、例えば基板が載置された並進ステージなどを用いて、対物レンズに近づくあるいは遠ざかるように移動させられ得る。基板が焦点から外れると、フォトダイオードに接触する反射された励起放射の量が減少する。基板が再び焦点に戻るにつれ、この量は増加し、基板が焦点に合ったときに最大値に達する。オートフォーカスシステムの制御は一般に適切にプログラムされたコンピュータによって与えられる。そのようなコンピュータは、フォトダイオードからの入力に応じて最大値に達するまで並進ステージを移動させる。一般にこのコンピュータは、蛍光検出器または光電子増倍管からの入力を受け取ってコンパイルし記憧することにより蛍光出力をアレイ上の位置の関数として(典型的には数学表現または走査イメージとして)生成するコンピュータと、同一のコンピュータである。蛍光走査装置に用いられるオートフォーカス共焦システムの例が、1994年2月10日出願の本願と共譲渡に係り同時係属中の米国特許出願シリアルナンバー08/195,889に一般的に記載されている。この出願の開示全体を本願において参考のために援用する。これらのオートフォーカスシステムは一般に、例えばガラス基板のウェット側(wet side)などの弱反射性表面から反射された光を、例えばガラス基板のドライ側(dry side)などの強反射性表面の近傍においてもフォーカシングすることを可能にすると同時に、平滑ガラスなどのフィーチャーのない表面上にもフォーカシングすることが可能である。
【0048】
III.撮像システムの一実施態様の詳細な説明
A.検出装置
図1は、本発明に基づく撮像システム100を示す光学ブロック図である。典型的には、撮像システム100は、蛍光標識されたDNAまたはRNAが結合したオリゴヌクレオチドプローブアレイの像を得るために用いられる。また、ウェハまたはマスク検査あるいはポリペプチドその他のポリマーアレイ、電気泳動ゲル、あるいは生物学的標本の撮像など、他のアプリケーションにおいても使用され得る。図1に示すように、レーザ102からの励起放射ビーム(例えば488nm光)が、ビームスプリッタ104により部分的に反射されかつ部分的に透過される。ビームの反射された部分は、フォトディテクタ131(オプションである)に入射する。フォトディテクタ131は典型的には、レーザ出力モニタとして用いられるフォトダイオードである。ビームのうちビームスプリッタ104を透過した部分はダイクロイックビームスプリッタ106および108によって反射され、レンズ111および112を透過する。レンズ111および112は、レーザ102から発せられたビームを拡大し、基板表面から得られたコリメートされた蛍光を縮小(demagnify)するためのテレスコープを提供する。一実施態様例において、レンズ111の焦点距離は20mmであり、レンズ112の焦点距離は80mmである。その他の焦点距離および焦点距離比を用いてもよいが、システム性能(共焦性、解像度など)に影響を及ぼす場合がある。拡大されたレーザビームはミラー114によって反射されてレンズ116によってフォーカスされる(以下により詳細に説明する)。
【0049】
典型的には18mm×28mmの八角形または楕円形であるミラー114は、典型的には数ヘルツまたは数10ヘルツで発振(すなわち走査)する、検流計ミラーである。好適な局面において、検流計ミラーは7.5Hzより高い周波数、好ましくは約20Hz、より好ましくは約30Hzで発振する。検流計の代わりに、共鳴スキャナまたは回転多角形ミラーを用いてもよい。典型的には、撮像システム100は、サンプルを直交方向に移動させながらレーザビームを1次元で走査することにより、2次元領域のイメージを得る。
【0050】
理想的には、サンプル118は、問題とする平面(例えば標識されたターゲット分子が結合している表面)がレーザ光がフォーカスされる平面内に位置するように、位置される。サンプル118から再出射された光はレンズ116によって回収され、ミラー114により反射され、レンズ112および111を透過する。再出射光は蛍光、燐光、鏡面反射、拡散反射、ラマン散乱などからなり得る。555nmより大きい波長を有する再出射光は、ダイクロイックビームスプリッタ108を通過し、レンズ134によってピンホール136上にフォーカスされる。515から555nmの波長を有する再出射光は、ビームスプリッタ108によって反射され、ダイクロイックビームスプリッタ106を通過し、レンズ120によってピンホール122上にフォーカスされる。ピンホール136および122を透過した光はそれぞれフィルタ138および124に入射する。これらのフィルタを透過する光はそれぞれフォトディテクタ140および126に入射する。フィルタ138は、555から607nmの波長を有する光を透過し、フィルタ124は515から545nmの波長を有する光を透過する。515nm未満の波長を有する再出射光はビームスプリッタ108および106によって反射され、ビームスプリッタ104によって部分的に反射される。ビームスプリッタ104によって反射された光はレンズ132によってピンホール128上にフォーカスされる。ピンホール128を透過した光はフォトディテクタ130に入射する。
【0051】
ピンホール136、122および128は、通常、共焦のピンホールである。
具体的には、レーザビームが集束されるサンプル118上の位置から発せられる戻り光は、最大限ピンホールを透過するのに対して、他の位置から発せられる光はピンホールを透過しない。レンズ134、120および132は、好ましくは、50mmの焦点距離を有する。ピンホール136および122は、好ましくは、100ミクロンの直径を有し、ピンホール128は、好ましくは、50ミクロンの直径を有する。他のレンズの焦点距離およびピンホール直径も使用可能であるが、システムの性能(共焦性、調整不良に対する感度など)に影響し得る。
【0052】
レンズ116が横方向の色(lateral color)に対して十分に補正されない場合、ピンホール136および122に集束される戻り光は、ミラー114が走査される間、横方向に(ピンホールの面にわたって)移動し得る。この場合、円形よりはむしろ楕円または長方形のピンホールを用いるか、またはピンホールの代わりにスリットを用いることが有利であり得る。例えば、本スキャナにおけるレンズ116は、走査フィールドの縁部において約3ミクロンの横方向の色を有する。この結果、戻り光は、ピンホールにわたって約40ミクロンだけ横方向に移動し得る。この場合のピンホール136および122の妥当な大きさは、約75ミクロン×約125ミクロンであり得る。
【0053】
光検出器140および126は、通常、光電子倍増器であり、典型的には、蛍光などの比較的弱い信号の検出を目的としている。フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、フォトランジスタ、真空フォトダイオード、光電子倍増管、および他の光検出器を含む様々な光検出器が使用され得る。
【0054】
通常、光検出器130は、走査前または走査中のサンプルへのビームの集束を助けるのに使用される。光検出器130に到達する反射レーザ光の量は、レーザビームがサンプル118の表面に集束されるときに最大となる。集束は、手動またはコンピュータの制御下で電動化された並進ステージによってなされ得る。大抵の場合、サンプル118は、液体が充填されたフローセル(図2を参照)に設けられたガラススライドであり、目的の表面は、ガラスの第2表面、即ち、ガラスと液体との界面である。通常、この表面からの反射は、ガラスの第1表面、即ち、ガラスと空気との界面からの反射よりもはるかに弱いが、システムは、十分に共焦であるため、2つの表面からの反射ピークは十分に分離される。
【0055】
上記のシステムは、フルオレセインおよびフィコエリトリンなどの染料で標識された標的からの蛍光の検出に特に有用である。他の染料(ローダミン、カルボシアニンなど)も使用され得るが、レーザ102、ビームスプリッタ108および106、ならびにフィルタ138および124は、染料の吸収および放射スペクトルに応じて変更される必要があり得る。
【0056】
場合によっては、標的分子は、レーザ光を散乱させが蛍光を発しない粒子または非常に大きな分子で標識され得る。これらの場合、四方に散乱した光を検出し、鏡のように反射したレーザ光を検出しないことが所望され得る。ビームスプリッタ104とレンズ132との間に環状の開口部が配置され得る。環の内径が適切に選択される場合、この開口部は、鏡のように反射したレーザ光を阻止するが、四方に散乱したレーザ光を透過させ、この透過した光は光検出器130によって検出され得る。
【0057】
対物レンズ116は、多数の仕様に合致するように設計され、例えば、Special Optics、Part No.55−S30−15(Wharton、NJ)から入手され得る。対物レンズは、ガルバノメータ(または共鳴スキャナ、回転ポリゴンなど)、即ち、レンズの外部にあり、ガルバノメータミラーのピボット位置またはピボット位置付近に配置される入射ひとみを用いて使用可能である。レンズは、1/e2強度点で、3ミクロン未満の直径を有するスポットに、488nmの波長を有するTEM00モードレーザビームを集束させることも可能であり、14mm未満の直径を有するフラットフィールド内の任意の点においてこれを行うことができればよい。
【0058】
対物レンズ116は、2°のテレセントリック内にある。即ち、透過レーザビームは、レンズの光学軸に対して2°以内で平行であればよい。(レンズがテレセントリックまたはテレセントリックに近くない場合、フィールドの縁部付近から鏡のように反射された光は、レンズを透過しないので、検出されない。)さらに、レンズ116は、F/数が、f/2未満(即ち、開口数が、0.25未満)となり、フィールドの縁部でも口径食が起こらないように設計された。(F/数は、レンズの光収集能力の測定値であり、レンズが弱い信号の検出に用いられる場合に重要である)。対物レンズ116は、488nmと600nmとの間の波長を有し、入射ひとみを埋める多色性ビームを、10ミクロン未満の直径を有するスポットに集束することが可能であり、14mm未満の直径を有するフラットフィールド内の任意の点においてこれを行うことが可能である。
【0059】
対物レンズ116は、好ましくは、約30mmの焦点距離を有する。異なる焦点距離を有するが、上記の仕様に合致するレンズは、容易に設計され得、本明細書に記載する目的のために受け入れ可能であり得る。レンズ116は、レンズの焦点距離に対する入射ビームの直径の比が、約0.21未満となるとき、488nmのレーザビームを回折が限定されたスポットに集束し得る。即ち、直径6.2mmのビームを直径3ミクロンのスポットに集束させ得る。より大きな焦点スポットが所望される場合には、入射ビームの直径は、レンズ111および112の焦点距離の比を変更することによって、またはレーザ102とビームスプリッタ104との間のビームを縮小することによって、小さくされ得る。
【0060】
レンズ116は、3ミクロンの解像度および0.25の開口数で、14mmのフィールドを撮像することができるように設計された。しかし、この設計は、例えば、6ミクロンの解像度および0.25の開口数で、28mmのフィールドを撮像するために(または、場合によっては、レンズは、非常に大きく、高価になるが、60ミクロンの解像度および0.25の開口数で、280mmのフィールドを撮像するために)容易に拡大され得る。この拡大は、レンズ116のすべての素子の厚さ、直径、および曲率半径を単に増加させることによって行われる。
【0061】
同様に、スキャナ全体は、より広い面積を撮像するために、レンズの直径および焦点距離、ピンホールの直径、ならびにミラーの直径をすべて同じファクタで増加させることによって拡大され得る。
【0062】
B.データ収集
図3に示すように、撮像システム300は、ガルバノメータ306(ミラー114が取り付けられている)およびGeneral Scanning Inc.(Watertown、MA)から入手できるガルバノメータ駆動盤305を有する。ガルバノメータ306は、モデルM2Tである。他の適切なガルバノメータおよび駆動盤は、例えば、Cambridge Technology Inc.(Watertown、MA)から入手できる。駆動盤305への入力は、コンピュータ302内のISAスロットに設けられた任意の波長生成器304(Keithley Metrabyte Model PCIP−AWFG、Taunton、MA)からの電圧波形である。駆動盤305の回路は、常に、ガルバノメータ306を、波形生成器304によって命令される角度位置(所望の角度位置は、波形電圧に線形に関連する)に付勢する。波形生成器304は、プログラムされた後、コンピュータ302によってさらに干渉されずに、無限に波形を生成し得る。使用される波形は、通常、鋸歯状波形であり、例えば、波形周期が33.3ミリ秒である場合、電圧は、25ミリ秒間線形に上昇(ramp up)し、この間、レーザビームがフィールドわたって通過している間にデータが得られ、次の8.3ミリ秒間で、電圧は、初期の値に戻り、レーザビームはたどり直す。正弦波または対称三角波などの他の波形も使用され得る。PCIP−AWFG波形生成器を必要としない波形生成の様々な方法が公知である。
【0063】
光電子倍増器320および321ならびにフォトダイオード322からの電流は、トランスインピーダンス増幅器または負荷抵抗器、その後好ましくは電圧増幅器によって電圧に変換される。これを目的とした簡単なオペアンプは周知である。次に、電圧は、フィルタ310、311、および312、例えば、プログラム可能な4極ベッセルフィルタ(Frequency Devices model 824L8L−6、Haverhill、MA)によってローパス濾過される。フィルタカットオフ周波数は、400Hzステップにおいて400Hzから102.4kHzにディジタルでプログラム可能であり、コンピュータ302に設けられているディジタル入力−出力盤314(Computer Boards Inc.model CIO−DIO24、Mansfield、MA)によって設定される。同様のディジタルI/O盤は、他のいくつかの製造業者より入手可能である。フィルタカットオフ周波数は、ステップ入力に応答する各フィルタの出力立ち上げ時間が、A/D変換の間の時間にほぼ等しくなるように設定される。例えば、A/D変換が、6マイクロ秒の間隔である場合、カットオフ周波数は、66kHzに設定される。様々な他のタイプのフィルタ(異なる転送機能を有するより多くの極またはより少ない極を備えたフィルタ(例えば、Butterworth)、固定周波数フィルタ、または簡単なRCフィルタ)が代わりに用いられ得る。
【0064】
フィルタ出力は、データ収集盤308(Computer Boards Inc.model CIO−DAS16/330)において、12ビット、330kHzのアナログ−ディジタル変換器によってディジタル化される。同様のデータ収集盤は、他のいくつかの製造業者より入手可能である。ディジタル化されたデータは、通常、中間調画像の形態でコンピュータ302によって表示され、コンピュータのハードディスクに書き込まれ、次のデータ分析に用いられる。データ収集盤308における内部クロックがA/D変換をトリガするために用いられる場合、得られる画像は、わずかに湾曲し得る。時間的に等間隔のA/D変換は、空間的に等間隔ではない。即ち、サンプル118にわたるレーザビームの速度は、必ずしも一定ではない。これは、一部には、レンズ116が、理想的なf−シータレンズではないため、および一部には、駆動盤305およびガルバノメータ306による挙動が理想的ではないためである。従って、A/D変換は、好ましくは、アナログ出力チャネルに加えてディジタル出力チャネルを有する波形生成器304によってトリガされる。波形生成器304が適切にプログラムされ、そのディジタル出力パルスが適切な間隔を置いて生成される場合、画像の湾曲は防止され得る。
【0065】
通常、4096のA/D変換は、走査線毎に行われ、ユーザが、1走査線当たり4096未満の画素を必要とする場合、A/D変換は、ソフトウェアによって2以上のグループに分けられる。例えば、走査線の長さが14mmの場合、レーザビームは、1つのA/D変換と次のA/D変換との間に3.4ミクロン移動する。例えば、ユーザが、13.6ミクロンの画素サイズを選択する場合、ソフトウェアは、各画素に対して4のA/D変換からの数宇を加算する。ソフトウェアの1つのバージョンでは、走査線毎に8192のA/D変換が可能である。走査線毎により多くのA/D変換を行うことの有用性は、画素サイズが、レーザスポットサイズよりも小さくなるにつれて減少する。
【0066】
並進ステージ332(通常、2軸または3軸のセットのステージ)は、インデクサ330によって制御される。並進には、走査軸(サンプルの面に平行で、レーザスポットの移動方向に垂直)および焦点軸(レンズ116の光学軸に平行)の2軸が通常用いられる。これらの2軸に直交する第3の軸も所望され得る。コンピュータ302は、例えば、RS−232インターフェースを用いて、コマンドをインデクサ330に送信し、インデクサ330から並進ステージの状態に関する情報を受信する。GPIBまたはISAインターフェースなどの他のインターフェースを用いてコンピュータ302と通信するインデクサを代わりに用いることもできる。並進ステージの速度は、サンプル118が走査線毎に移動する距離が、所望の画素サイズと等しくなるように設定される。
【0067】
ソフトウェアにより、ユーザが、走査される面積の大きさ、画素サイズ、走査速度、およびどの出力(光電子増倍管の出力、フォトダイオードの出力、またはその組み合わせのいずれか)をデジタル化するか、などの様々な走査パラメータを制御することが可能となる。デフォルトパラメータは、走査面積が14mm×14mm、画素サイズが10.2ミクロン、および走査速度が30ライン/秒である。これらのパラメータでは、画像は、1365×1365個の画素を含み、約45秒で得ることができる。これらのパラメータは通常、ユーザが約100μm×100μmのフィーチャーを有する12.8mm×12.8mmのオリゴヌクレオチドアレイを撮像する必要がある場合に適切である。他の環境では、他の走査パラメータが適切である。このソフトウェアのソースコードは付録Aに示されており、これを、本明細書において、あらゆる目的のために参考として援用する。
【0068】
例えば、フィーチャーが400μm×400μmである場合、ユーザは、27.2ミクロンの画素サイズを選択し得る。この場合、14mm×14mmの面積の画像は、512×512個の画素を含み、約17秒で得ることができる。一方、フィーチャーが30μm×30μmである場合、ユーザは、3.4ミクロンの画素サイズを選択し得る。この場合、14mm×14mmの面積の画像は、4096×4096個の画素を含み、約2分16秒で得ることができる。適切な信号対雑音比を有する画像が約30ライン/秒の走査速度で得られない場合、ユーザは、走査速度を例えば7.5ライン/秒に低減することを選択し得る(走査時間を4倍にすると、1画素当たりに検出される光子数も約4倍になるため、多くの場合、信号対雑音比が約2倍になる)。
【0069】
走査面積は、上記の14mm×14mmの寸法と異なっていてもよく、正方形でなくてもよい。例えば、ソフトウェアのオプションにより、ユーザが、必要であれば、1ミクロンという小さい画素サイズで、走査線の長さを例えば4mmまたはそれ以下まで短くすることが可能となり得、1走査当たりの走査本数を、他の走査パラメータとは独立して設定することが可能となり得る。検流計による走査方向では、1走査で、レンズ116の視野よりも大きい領域、例えば14mmよりも大きい領域をカバーできない。しかし、システムは、直交方向の幅が数インチの領域をカバーすることができる(並進ステージの移動の長さによってのみ制限される)。他のソフトウェアのオプションにより、ユーザが、任意の所望の走査時間間隔で、チップを自動的に数回走査させることが可能となり(ある特定の動力学的実験に有用である)、また、ウェハ上の幾つかの異なるチップを自動的に走査させることが可能となる(ダイシングおよび実装の前のウェハ検査に有用である)。別のオプションにより、ユーザが、2つの異なる出力ファイルフォーマット間、即ち、「生」データを1画素当たり2バイトセーブするフォーマットと、「スケールされた」データを1画素当たり1バイトセーブするスペース節約フォーマットとの間で選択することが可能となる。スケールされたデータ値は、生データ値の平方根に正比例する。スケールされたデータから生データに戻すためのルックアップテーブルは、ファイルのヘッダに格納される。
【0070】
図2を参照して、以下に、サンプル118をフローセル内に保持するためのシステムおよび方法を説明する。本発明がフローセルに限定されないことは、明らかに理解されるはずである。例えば、サンプル118は、使い捨てプラスチックパッケージに接着されたダイシングチップなどの実装されたチップの一部分であってもよい。実装されたチップのより完全な説明は、1995年6月7日出願の、同一譲受人に譲受される同時係属中の米国出願連続番号第08/485,452号において見ることができる。本明細書において、上記出願の開示全体をあらゆる目的のために参考として援用する。
【0071】
示されるように、撮像システム100は、サンプルを含む支持体430を表面431上に保持するための本体422をさらに含む。幾つかの実施形態では、支持体は、顕微鏡のスライド、またはサンプルを保持するために適切な任意の表面であってもよい。本体422は、応用によっては、キャビティ423を有するフローセルであってもよい。フローセルは、例えば、ターゲットとプローブとの反応を検出するために用いられ得る。幾つかの実施形態では、キャビティの底部は、入射光の散乱を最小にするよう、光吸収材料を含み得る。
【0072】
フローセルを使用する実施形態では、表面431は、本体422と結合され(mate)、キャビティ423を封止する役割を果たす。フローセルおよび基板は、1つ以上のガスケットを用いて封止するために、結合され得る。ある実施形態では、基板は、ポンプ452によって発生される真空圧によって本体と結合される。あるいは、フローセルは、2つの同心のガスケットを備え、その間の空間は、基板とガスケットとの結合を確実にするために真空に保持される。あるいは、基板は、ねじ、クリップまたは他の装着技術を用いて取り付けられてもよい。
【0073】
フローセルと結合されたとき、キャビティは、サンプルを囲む。キャビティは、入口421および出口420を含む。入口421を通して、流体がキャビティ内に導入される。この流体は、幾つかの実施形態では、蛍光で標識されたターゲットを含む。ポンプ453は、入口421および出口420を通して流体をキャビティ内外に循環させて、再循環させるかまたは処分する。このポンプ453は、Eldex Laboratories製造のモデルNo.B-120-Sであってもよい。あるいは、注射器、気体圧、または他の流体移動装置を用いて、流体をキャビティ内におよびキャビティ内で流してもよい。
【0074】
あるいは、ポンプ453を、キャビティ内で流体を撹拌および循環させる撹拌システムと置き換えてもよい。流体を撹拌すると、プローブとターゲットとの間のインキュベーション時間が短縮される。これは、動力学で最良に説明することができる。空乏層として知られている薄い層は、プローブサンプルの上に配置される。ターゲットが表面に移動し、プローブ配列と結合するため、この層からは、実質的にターゲットがなくなる。しかしながら、有限拡散係数のため、さらなるターゲットが空乏層に流入することが妨げられる。その結果、インキュベーション時間は大幅に増加する。撹拌システムを用いて空乏層を溶解することにより、表面に、結合のためのさらなるターゲットが与えられる。超音波放射および/または熱、ホルダーの振盪、磁気ビーズ、または他の撹拌技術を用いてもよい。
【0075】
幾つかの実施形態では、フローセルは、フローセルを所望の温度に維持するための温度制御装置450を備える。プローブ/ターゲットの相互作用は温度に敏感であるため、フローセル内の温度を制御することができれば、最適な温度でハイブリダイゼーションを行うことができるようになる。温度制御装置450は、循環浴、冷却空気循環装置、抵抗加熱器、もしくはペルティエ装置(熱電冷却器)を含んでいてもよく、または他の温度制御装置が実現されてもよい。
【0076】
上記のように、フローセルは、基板を集光オプティクスの光軸に垂直に維持するような向きにされる。ある実施形態によれば、フローセル422は、フローセルを光路に直交する方向に移動させる並進ステージ424に装着され得る。フローセルは、ポンプ452によって発生される真空圧で並進ステージに結合され得る。あるいは、ねじ、クリップおよび他の装着技術を用いて、フローセルを並進ステージに結合してもよい。
【0077】
IV.撮像システムの別の実施形態の詳細な説明
撮像システム400の第2の実施形態の光学ブロック図が、図4に示される。示されるように、撮像システム400は、図1に示されるシステムと共通の構成要素を含む。このスキャナーでは、レンズ116は、無限共役比(conjugate ratio)ではなく有限共役比で使用されるように意図されるため、レンズ112は省略される。このスキャナーは、ピンホール401を1つしか使用せず、戻り光はすべて、このピンホール401を通過してから、様々なダイクロイックビームスプリッタによって分離される。このスキャナーは、2つの追加のダイクロイックビームスプリッタ、スペクトルフィルタおよび光電子倍増管を有するため、2チャネル蛍光走査ではなく、4チャネル蛍光走査に使用することができる。
【0078】
以前の実施形態で説明したように、レーザ102からの励起放射、例えば、488nmの光のビームは、ビームスプリッタ104により、その一部分が反射され、一部分が透過される。ビームのうちの反射された部分は、光検出器131(オプション)に当たる。この光検出器131は、典型的には、レーザパワーモニタとして用いられるフォトダイオードである。ビームのうちビームスプリッタ104を透過した部分は、ダイクロイックビームスプリッタ106によって反射され、レンズ111を透過し、ピンホール401に集束され、入射瞳レンズ116で所望の径に拡大される。
【0079】
上記のように、励起放射のビームは、レンズ116によって集束され、検流計ミラー114によりサンプル118を走査する。サンプル118からの戻り光はレンズ116により集光され、ミラー114により反射され、共焦ピンホール401に集束される。ピンホール401を透過する光は、レンズ111により平行光にされる。515nm未満の波長を有する戻り光は、ビームスプリッタ106により反射され、その一部分がビームスプリッタ104により反射される。ビームスプリッタ104によって反射された光は、光検出器130に当たる。515よりも大きい波長を有する戻り光は、ビームスプリッタ106を透過し、その波長に応じて、4つのチャネル402、404、406および408のうちの1つに送られる。例えば、撮像システム300は、515と545との間の波長を有する戻り光がダイクロイックビームスプリッタ410により反射され、フィルタ412を通過して光検出器414に当たるように構成され得る。545nmと570nmとの間の波長を有する戻り光は、例えば、ダイクロイックビームスプリッタ416により反射され得る。この場合、この光は、フィルタ418を通過して光検出器420に当たる。同様に、ビームスプリッタ422は、570nmと595nmとの間の波長を有する戻り光を反射してこの光がフィルタ423を通過して光検出器426に当たるように構成される。595nmよりも大きい波長を有する戻り光は、ビームスプリッタ422を透過し、フィルタ425を通過して光検出器424に当たる。
【0080】
以下の実施例により、本発明についてさらに説明する。この実施例は、単に本発明の例示的局面を説明するためのものであって、本発明の限定として意図されるものではない。
【実施例】
【0081】
ヒトミトコンドリアゲノム全体のためのタイリングアレイ(tiling array)を設計した。M.Cheeらによる「Accessing genetic information with high-density DNA arrays」、Science、vol.274、pp.610-614(1996)を参照されたい。アレイは、134,688個の異なるプローブ配列を含み、各プローブ配列は、別個の35μmのフィーチャーを占有した。アレイ全体の寸法は、1.28cm×1.28cmであった。長領域(long range)PCRおよびRNAポリメラーゼプロモータによりタグが付けられたプライマーを用いて、ゲノムDNAサンプルから直接、mtDNAの16.3kbのフラグメントを増幅させた。PCRアンプリコン(amplicon)からのインビトロ転写により、標識が付けられた16.3kbのRNAターゲットを調製し、これをアレイにハイブリダイズした。
【0082】
上記のような走査システムを用いてアレイを走査し、4096×4096個の画素の画像を得た。各画素は3.4μmを表す。3分未満でアレイ全体が走査された。このアレイの走査画像をクローズアップしたものが、図5に示される。示される走査画像は、12.8mm×12.8mmアレイの14mm×14mm画像の1.5mm×1.5mmのセグメントをカバーしている。
【0083】
以上、本発明を、発明を分かりやすくし、発明が理解されるように幾らか詳細に説明してきたが、この開示を読めば、本発明の真の範囲から逸脱することなく、その形態および詳細について様々な変更を加えることが可能であることが、当業者に明らかであろう。本願で引用されたすべての刊行物および特許出願については、個々の刊行物または特許出願が個々に本明細書に示されているものとして、あらゆる目的のために、本明細書においてその全体を参考として引用する。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、本発明の走査システムの1つの実施形態の概略図である。
【図2】図2は、基板が載置されるフローセルを含む走査システムの1つの実施形態を示す。
【図3】図3は、本発明の走査システムからのデータを制御および記録するコンピュータベースのシステムの概略図である。
【図4】図4は、本発明の走査システムの代替実施形態の概略図である。
【図5】図5は、本発明の走査システムを用いて生成された走査画像の拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面上のマークされた領域を検出するシステムであって、 励起放射源と、 該励起放射源からの放射を該基板の該表面の選択領域上にフォーカシングさせる焦点システムであって、フォーカスされたスポット径に対する走査フィールド径の比が約2000より大きく且つ開口数が約0.2よりも大きい対物レンズを含むフォーカシングシステムと、 該基板の該表面にわたって少なくとも5画像ライン/秒の速度で該フォーカスされた励起放射を走査する放射指向システム(radiation direction system)と、 該励起放射に応答して該基板の該表面からの発光を検出する検出器であって、該対物レンズが該発光を受けて該発光を該検出器に伝送する、検出器と、 該検出された発光の量を、該発光が発せられた該基板の該表面上の位置の関数として記録するデータ取得システム(data acquisition system)と、を備えた、システム。
【請求項2】
前記フォーカシングシステムのフォーカスされたスポット径に対する走査フィールド径の比は3000より大きい、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記フォーカシングシステムのフォーカスされたスポット径に対する走査フィールド径の比は4000より大きい、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記フォーカシングシステムは、前記励起放射を直径約10μm未満のスポットにフォーカスさせる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記フォーカシングシステムは、前記励起放射を前記基板の前記表面上において直径約5μm未満のスポットにフォーカスさせる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記フォーカシングシステムは、前記励起放射を前記基板の前記表面上において直径約3μmのスポットにフォーカスさせる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記走査フィールド径は約10mmより大きい、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記走査フィールド径は約14mmである、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記開口数は約0.25より大きい、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記フォーカシングシステムはアクロマチックである、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記放射指向システムは、前記基板にわたって少なくとも10画像ライン/秒の速度でスポットを走査させ得る、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記放射指向システムは、前記基板にわたって少なくとも30画像ライン/秒の速度でスポットを走査させ得る、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記放射指向システムは角振動ミラー(angularly oscillating mirror)または回転多面ミラー(rotating polyhedral mirror)を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記基板が搭載される並進ステージをさらに備え、該並進ステージは前記対物レンズの光学軸に垂直な少なくとも1つの寸法方向(dimension)に可動である、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記基板の前記表面を前記フォーカシングシステムの焦点面に配置するオートフォーカスシステムをさらに備えた、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記基板が搭載される並進ステージをさらに備え、該並進ステージは前記フォーカシングシステムの光学軸に平行な少なくとも1つの寸法方向および該フォーカシングシステムの該光学軸に垂直な少なくとも1つの寸法方向に可動である、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
集光システムをさらに備え、該集光システムは、 前記基板の前記表面から発光された蛍光を集光し、該基板の該表面から反射した励起放射を集光する集光光学系と、 該発光された蛍光を該基板の該表面から反射した励起放射から分離し、該蛍光を共焦ピンホールを通してフォーカスさせる分離光学系(separation optics)と、 該蛍光に応答して、該共焦ピンホールを通ってフォーカスした該蛍光の量を記録するレコーダと、を備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記基板の前記表面は、該表面上にある複数の異なる既知の位置において、複数の互いに異なるポリマーシーケンス(polymer sequences)を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記異なるポリマーシーケンスのそれぞれは、幅または長さ寸法の少なくとも一方が約50μm未満であるフィーチャー内に含まれる、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
信号を処理および格納して、これにより、サンプルの2次元画像を生成するプロセッサをさらに備えた、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
サンプルが載った少なくとも第1の表面を有する前記基板を固定化する本体をさらに備え、該本体は、 搭載面と、 該搭載面内のキャビティ(cavity)であって、該第1の表面が該搭載面に結合して該キャビティを封止し、該サンプルは該キャビティと流体連通しており(in fluid communication)、該キャビティは光吸収材料を含む底面を有する、キャビティと、 該キャビティと連通した入口および出口であって、該サンプルに接触するために該キャビティ内へと流れる流体は該入口を通って流れ、該キャビティから流出する流体は該出口を通って流れる、入口および出口と、 該キャビティ内の温度を制御する温度制御装置と、を備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記温度制御装置は熱電冷却器を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
基板の表面上のマークされた領域を検出するシステムであって、 励起放射源と、 該励起放射を該基板の該表面上で直径5μm未満のスポットにフォーカスさせる第1の焦点光学系であって、対物レンズを含む焦点光学系と、 該スポットを該基板の該表面にわたって直線的に走査させる往復放射指向システムであって、該スポットの移動距離は少なくとも10mmである、往復放射指向システムと、 該基板の該表面からの発光を該基板の該表面から反射した該励起放射から分離する光学トレインであって、該対物レンズを含む光学トレインと、 該基板の該表面を該第1の焦点光学系の焦点面に自動的に配置するオートフォーカスシステムと、を備えた、システム。
【請求項24】
前記光学トレインは、前記基板の前記表面から発光された蛍光を該基板の該表面から反射した前記励起放射から分離するダイクロイックビームスプリッタを含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記オートフォーカスシステムは、 前記基板の前記表面から反射した前記励起放射を共焦ピンホールを通してフォトダイオード上にフォーカシングする第2の焦点光学系と、 該基板が搭載される並進ステージであって、該基板を該第1の焦点光学系の焦点面へと動かすために、該第1の焦点光学系の光学軸に平行な方向に可動である並進ステージと、を備えている、請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
前記励起放射に応答して前記基板の前記表面からの発光を検出する検出器と、該検出された発光量を、該発光が発せられた該基板の該表面上の位置の関数として記録するデータ取得システムとをさらに備えた、請求項23に記載のシステム。
【請求項27】
それぞれ異なる既知のロケーションにおいて基板の表面上に固定化された複数の異なるポリマーシーケンスを有するポリマーアレイを走査し、これにより、該アレイ上のどのポリマーシーケンスが標的分子と結合しているかを特定する方法であって、 対物レンズを用いて励起放射源を該基板の該表面上にフォーカスさせる工程と、 該基板の該表面にわたって少なくとも約5画像ライン/秒の速度で該励起放射を走査させる工程と、 該対物レンズを用いて、該励起放射に応答して該基板の該表面からの発光を集光する工程と、 該基板の該表面上の位置の関数として該発光を記録する工程であって、該位置が標的分子と結合した該アレイ上の該ポリマーシーケンスを示す、工程と、を包含する、方法。
【請求項28】
前記ポリマーアレイは、異なる既知のロケーションにおいて前記基板の前記表面上に固定化された複数の異なるオリゴヌクレオチドシーケンスを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記励起放射源を直径約3μmのスポットにフォーカスさせる工程と、前記基板上で少なくとも14mmにわたって直線方向に該スポットを走査させる工程とをさらに包含する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記基板を本体上に固定化する工程と、 第1の波長を有する電磁放射源からの励起放射で該基板上の前記サンプルを励起する工程と、 該励起放射に応答して第2の波長を有する応答放射を検出する工程であって、該応答放射は前記複数の領域の画像を表す、工程と、 該サンプル上の次の複数の領域を励起する工程と、 該応答放射を処理および格納して、これにより、該サンプルの2次元画像を生成する工程と、 該サンプルを該励起放射の焦点面にオートフォーカスする工程と、をさらに包含する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記本体は上にキャビティのある搭載面を備え、前記基板は、前記サンプルが前記反応チャンバと流体連通するように該搭載面上に固定化され、該反応チャンバは、該反応チャンバ内におよび該反応チャンバを通して、流体を流すための入口および出口を備えている、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記本体は、前記キャビティ内の温度を制御するための温度制御装置をさらに備えている、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記励起放射を前記基板の前記表面にわたって少なくとも約10画像ライン/秒の速度で走査させる、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記励起放射を前記基板の前記表面にわたって少なくとも約30画像ライン/秒の速度で走査させる、請求項27に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の所定場所に配置されたポリマーシーケンスと合成された標識ターゲットを検出するシステムであって、
蛍光標識されたターゲットを含む流体が流れるキャビティを形成する、本体と該本体と組み合わされる基板を有し、上記基板は上記流体に接触する内面に上記ポリマーシーケンスと合成された標識ターゲットを支持しているフローセルと、
励起放射源と、
対物レンズを有し、上記励起放射源からの放射を上記基板の内面に直径5μm以下のスポットで焦点合わせする焦点光学系と、
上記スポットを上記基板の内面上で走査させる手段を備えたシステム。
【請求項2】
基板上の所定場所に配置されたポリマーシーケンスと合成された標識ターゲットを検出する方法であって、
蛍光標識されたターゲットを含む流体が流れるキャビティを形成する、本体と該本体と組み合わされる基板を有し、上記基板は上記流体に接触する内面に上記ポリマーシーケンスと合成された標識ターゲットを支持しているフローセルを用意する工程と、
励起放射源からの放射を上記基板の内面に直径5μm以下のスポットで焦点合わせする工程と、
上記スポットを上記基板の内面上で走査させる工程を備えた方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−258821(P2006−258821A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115493(P2006−115493)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【分割の表示】特願平9−541141の分割
【原出願日】平成9年5月15日(1997.5.15)
【出願人】(597087217)アフィメトリックス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】