樹脂封止方法及び樹脂封止装置
【課題】 型閉めの際に封止用樹脂に空気の巻き込みを防止することができる樹脂封止方法及び樹脂封止装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 上金型及び下金型を有する金型を用い、前記下金型に形成された凹部に封止用樹脂を充填する一方、前記上金型に電子部品をセットし、前記金型の型閉めにより前記電子部品の樹脂封止を行う樹脂封止方法において、真空下で、かつ、前記封止用樹脂への気泡の巻き込みを回避できるような低速で型閉めを行うことを特徴とする樹脂封止方法を提供する。
【解決手段】 上金型及び下金型を有する金型を用い、前記下金型に形成された凹部に封止用樹脂を充填する一方、前記上金型に電子部品をセットし、前記金型の型閉めにより前記電子部品の樹脂封止を行う樹脂封止方法において、真空下で、かつ、前記封止用樹脂への気泡の巻き込みを回避できるような低速で型閉めを行うことを特徴とする樹脂封止方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オプトデバイスなどのパッケージ成形で採用される樹脂封止方法及び樹脂封止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パッケージ成形においては、樹脂封止用の金型を開いた状態にし、その下金型の樹脂充填用の凹部に樹脂を充填し、半導体素子が搭載されたリードフレーム等の基体を上金型にセットし、型閉めを行うようにしている。
【0003】
しかしながら、従来の樹脂封止方法では、常圧下において型閉めを行っていたので、型閉めによって上金型の半導体素子を下金型の凹部に充填された封止用樹脂に浸漬するときに、型閉め時の気流の発生によって封止用樹脂に空気が巻き込まれて気泡(ボイド)が発生してパッケージ成形品の品質を低下させるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、型閉めの際に封止用樹脂に空気の巻き込みを防止することができる樹脂封止方法及び樹脂封止装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねて完成されたものである。
1.上金型及び下金型を有する金型を用い、前記下金型に形成された凹部に封止用樹脂を充填する一方、前記上金型に電子部品をセットし、前記金型の型閉めにより前記電子部品の樹脂封止を行う樹脂封止方法において、真空下で、かつ、前記封止用樹脂への気泡の巻き込みを回避できるような低速で型閉めを行うことを特徴とする樹脂封止方法を提供する。
2.型閉め速度は約0.01〜約5.00mm/secであることを特徴とする前記1に記載の樹脂封止方法を提供する。
3.真空下で、前記下金型の凹部に前記封止用樹脂を充填して型閉めすることを特徴とする前記1又は2に記載の樹脂封止方法を提供する。
4.前記金型を型閉めした状態で大気に開放して前記封止用樹脂を熱硬化させることを特徴とする前記1から3のいずれかに記載の樹脂封止方法を提供する。
5.上金型及び下金型を有し、型閉めによって電子部品を樹脂封止するための金型と、前記金型の型開閉手段と、前記金型を収容する前記真空チャンバーと、封止用樹脂への気泡の巻き込みを回避できるような低速で型閉めが行われるように前記型開閉手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする樹脂封止装置を提供する。
6.前記下金型に形成された凹部に封止用樹脂を充填する充填装置と、該充填装置を収容する真空チャンバーと、を備えたことを特徴とする前記5に記載の樹脂封止装置を提供する。
7.前記下金型を搬送するための搬送手段を配設し、搬入用真空チャンバー、前記充填装置を収容する充填用真空チャンバー及び前記型開閉手段を収容する型閉め用真空チャンバーを、前記下金型の搬送の下流側に向けてその順に連続して配設し、先行する前記下金型を、前記搬入用真空チャンバーを経て前記充填用真空チャンバー内に搬送して該チャンバー内で前記下金型の凹部に封止用樹脂を充填した後に、前記型閉め用真空チャンバーに搬送して該チャンバー内で型閉めを行い、且つ、型閉めされた状態のまま前記金型を前記型閉め用真空チャンバーから熱硬化装置に搬送する一方、後行する前記下金型を、前記搬入用真空チャンバーに搬送して該チャンバー内に真空状態で待機させ、待機後は後行の前記下金型を前記搬入真空チャンバーから真空状態の前記充填用真空チャンバーに搬入するように制御する制御手段を備えたことを特徴とする前記6に記載の樹脂封止装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、真空下で、かつ、前記封止用樹脂への気泡の巻き込みを回避できるような低速で型閉めを行うので、型閉めの際の気流発生を抑えることができて封止用樹脂に空気が巻き込まれるのを防ぐことができ、パッケージ成形品の品質を向上させることができる。
【0007】
また、真空下で前記下金型の凹部に前記封止用樹脂を充填すれば、金型への樹脂充填時における気泡の巻き込みを防止することができる。
【0008】
また、前記金型を型閉めした状態で大気に開放して前記封止用樹脂を熱硬化させれば、封止用樹脂の金型成形後の未硬化状態での気泡の巻き込みを防止することができる。また、真空下にもかかわらず巻き込まれた気泡を大気に戻すことによって電子部品に影響が出ない程度に極小化できる。
【0009】
更に、前記下金型を搬送するための搬送手段を配設し、搬入用真空チャンバー、前記充填装置を収容する充填用真空チャンバー及び前記型開閉手段を収容する型閉め用真空チャンバーを、前記下金型の搬送の下流側に向けてその順に連続して配設し、先行する前記下金型を、前記搬入用真空チャンバーを経て前記充填用真空チャンバー内に搬送して該チャンバー内で前記下金型の凹部に封止用樹脂を充填した後に、前記型閉め用真空チャンバーに搬送して該チャンバー内で型閉めを行い、且つ、型閉めされた状態のまま前記金型を前記型閉め用真空チャンバーから熱硬化装置に搬送する一方、後行する前記下金型を、前記搬入用真空チャンバーに搬送して該チャンバー内に真空状態で待機させ、待機後は後行の前記下金型を前記搬入真空チャンバーから真空状態の前記充填用真空チャンバーに搬入するように制御する制御手段を備えれば、搬入真空チャンバーを用いて下金型を次々と真空チャンバーに投入することができ、生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る樹脂封止方法及び樹脂封止装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1乃至図8は樹脂封止装置及びそれを用いた樹脂封止方法を示す概略図である。図9は封止用樹脂Rの充填動作を示し、図10は型閉め動作を示す。
【0011】
樹脂封止装置は、金型1と、樹脂充填装置2と、型開閉手段3と、搬入用真空チャンバーC1と、充填用真空チャンバーC2と、型閉め用真空チャンバーC3と、金型1を搬送する搬送手段6と、図外の真空発生手段と、これらを総括的に制御する図外の制御手段と、を備えている。
【0012】
金型1は、上金型11と、封止用樹脂Rを充填するための凹部13を有する下金型12とを備え、下金型12の凹部13に封止用樹脂Rを充填し、図10のように上金型11に電子部品Aをセットし、金型1の型閉めによりパッケージ成形を行うものである。なお、電子部品Aは、半導体A1が搭載された基体A2(リードフレーム、実装基板、ケース付きリードフレーム等)である。
【0013】
搬入用真空チャンバーC1、充填用真空チャンバーC2及び型閉め用真空チャンバーC3は、下金型12の搬送の下流側に向けてその順に連続して配設され、搬入用及び型閉め用の真空チャンバーC1,C3と充填用真空チャンバーC2との間にはゲートバルブV2,V3が設けられ、搬入用及び型閉め用の真空チャンバーC1,C3には外部と通ずるためのゲートバルブV1,V4が設けられ、真空チャンバーC1,C3及び充填用真空チャンバーC2はそれぞれ図外の開閉バルブ付きの導管を介して前記真空発生装置に接続されている。
【0014】
充填用真空チャンバーC2内には充填装置2が収容され、型閉め用真空チャンバー内には型開閉手段3が収容されている。
【0015】
型開閉手段3は、型開閉シリンダー31によって上金型11を昇降させるものであって、上金型11を着脱自在に保持するチャッキング機構部32を備えている。
【0016】
充填装置2は、図9のように下金型12の凹部13に封止用樹脂Rを充填するものであって、定位置に保持される孔部21を有する孔版22と、孔版22上には図外の駆動手段にて往復動するスキージ23と、スキージ23の上方に配設される図外の樹脂供給管と、下金型12の昇降テーブル24を備えている。なお、孔版22の厚みは0.1〜3.0mmであり、好ましくは0.2〜1.0mmである。一方、下金型12の厚みは0.5〜250mmである。
【0017】
図11のように搬送手段6はベルトコンベアにより構成されている。
【0018】
前記制御手段は、型開閉手段3に対しては上金型11が低速で降下して型閉めが行われるように型開閉シリンダー31を制御する。型閉め速度は、例えば約0.01〜約5.00mm/secに設定されて封止用樹脂Rへの気泡の巻き込みが回避されるようになっている。なお、下金型12を低速上昇させて型閉めを行うようにしても良い。
【0019】
次に、以上のように構成される樹脂封止装置を用いた樹脂封止方法について説明する。
(1)まず、図1のように搬入用真空チャンバーC1のゲートバルブV1を開いて搬送手段6によって下金型12を搬入用真空チャンバーC1内へ導入する。
(2)次に、図2のようにゲートバルブV1,V2,V3を閉じ、上記真空発生装置を作動させて搬入用真空チャンバーC1及び充填用真空チャンバーC2内を同等の真空圧にする。その後、図3のようにゲートバルブV2を開けて下金型12を充填用真空チャンバーC2内へ搬送し、図4のように下金型12の凹部13が孔版22の孔部21の真下に位置するように昇降テーブル24上にセットした後、昇降テーブル24を上昇させて下金型12を孔版22に接触させると共に、下金型12の凹部13と孔版22の孔部21とを合致させる。
(3)次に、図9のように充填装置のスキージ23の作動により孔版22の孔部21を通じて下金型12の凹部13内に封止用樹脂Rを充填する。
【0020】
一方、樹脂充填中に、図5のようにゲートバルブV1を開いて後行する下金型12A(12)を搬入用真空チャンバーC1内に搬入し、搬入完了後に図6のようにゲートバルブV1を閉じて搬入用真空チャンバーC1内を真空化させ、樹脂充填が完了した先行する下金型12が昇降テーブル24によって降下させるまでの間、下金型12を搬入用真空チャンバーC1内に待機させる。
(4)そして、すべての真空チャンバーC1,C2,C3は同じ真空レベルになったときに、図7のようにゲートバルブV2,V3を開いて先行の下金型12を型閉め用真空チャンバーC3内に、後行の下金型12A(12)を充填用真空チャンバーC2内にそれぞれ搬送する。
(5)次に、型閉め用真空チャンバーC3内において、上金型11を上述のように低速で降下させて型閉めによるパッケージ成形を行う。なお、上金型11には予め電子部品Aがねじ等の固着具4で固定されている。
【0021】
電子部品Aが固定された上金型11は、手作業によって型閉め用真空チャンバーC3内のチャッキング機構部32の上昇位置(チャック位置)にセットされて該チャッキング機構部32で保持されるが、ベルトコンベア等の搬送手段でチャック位置まで搬送するようにしても良い。なお、上金型11をセットするときには、ゲートバルブV3が閉じられて充填用真空チャンバーC2の真空状態が保持される一方、開かれたゲートバルブV4から型閉め用真空チャンバーC3内に上金型11が搬入される。
(6)型閉め完了は、図8のようにゲートバルブV1,V4を開いて搬入及び型閉め用真空チャンバーC1,C3内を大気圧に戻し、型閉めされた状態の金型1は搬送手段6によって型閉め用真空チャンバーC3から図外の乾燥機に向けて搬送される。その一方、充填用真空チャンバーC2内の後行する下金型12A(12)を昇降テーブル24にセットして上述のように下金型12の凹部13内に封止用樹脂Rを充填し、搬入用真空チャンバーC1内には更に後行する下金型12B(12)が搬入される。
【0022】
前記乾燥機では、金型1内の封止用樹脂Rを熱硬化させ、その後、金型1を開いて該金型1からパッケージ成形品を取り出す。
【0023】
なお、真空チャンバーC1,C2,C3内の真空の度合い(絶対圧力)を0,01〜60.0KPaの範囲に設定し、かつ、その範囲内で樹脂の粘度状態に応じて変更するのが好ましい。
このように下金型12の凹部13への封止用樹脂Rの充填から金型1の型閉めまでを真空下で行い、且つ、低速で型閉めを行うので、封止用樹脂Rへの空気の巻き込みを防止することができる。しかも、搬入用真空チャンバーC1を用いて下金型12を次々と真空チャンバーC2,C3に投入することができるので、タクトタイムが短くなって生産性を向上させることができる。
【0024】
なお、下金型12の凹部13への樹脂充填は、図13のようにディスペンサー5を用いて行っても良い。
パッケージ成形品の形状としては、例えば円柱型(直径:0.5〜30.0mm、高さ:0.3〜100.0mm)、砲弾型(直径:0.5〜30.0mm、高さ:0.3〜100.0mm)、直方体及び立方体(長さ:0.5〜300.0mm、高さ:0.3〜100.0mm)等がある。
【0025】
図12はパッケージ成形品の形状に合わせて形成された下金型12の凹部13の形状を示す断面図であり、図(a)乃至(f)は立方体・直方体、楕円ドーム形、半球状、砲弾形、円錐形、円柱形の凹部13を示す。
【0026】
SMDのようにリードフレームA1の下面にも凸部A3がある電子部品Aを樹脂封止する場合には、図14のように該電子部品が取り付けられる上金型11の下面に該凸部A3の逃げのための彫り込み部11aが形成された金型1を用いる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の樹脂封止装置の実施形態を用いた樹脂封止工程を示す概略図である。
【図2】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図3】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図4】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図5】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図6】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図7】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図8】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図9】封止用樹脂の充填動作を示す説明図である。
【図10】型閉め動作を示す説明図である。
【図11】搬送手段を示す概略図である。
【図12】(a)〜(f)は同実施形態の下金型の断面図である。
【図13】(a)(b)はディスペンサーによる下金型の凹部への樹脂充填動作を示す概略図である。
【図14】他の形態の金型を用いた封止用樹脂の充填動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
A 電子部品
R 封止用樹脂
1 金型
11 上金型
12 下金型
13 凹部
2 樹脂充填装置
3 型開閉手段
C1 搬入用真空チャンバー
C2 充填用真空チャンバー
C3 型閉め用真空チャンバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、オプトデバイスなどのパッケージ成形で採用される樹脂封止方法及び樹脂封止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パッケージ成形においては、樹脂封止用の金型を開いた状態にし、その下金型の樹脂充填用の凹部に樹脂を充填し、半導体素子が搭載されたリードフレーム等の基体を上金型にセットし、型閉めを行うようにしている。
【0003】
しかしながら、従来の樹脂封止方法では、常圧下において型閉めを行っていたので、型閉めによって上金型の半導体素子を下金型の凹部に充填された封止用樹脂に浸漬するときに、型閉め時の気流の発生によって封止用樹脂に空気が巻き込まれて気泡(ボイド)が発生してパッケージ成形品の品質を低下させるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、型閉めの際に封止用樹脂に空気の巻き込みを防止することができる樹脂封止方法及び樹脂封止装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねて完成されたものである。
1.上金型及び下金型を有する金型を用い、前記下金型に形成された凹部に封止用樹脂を充填する一方、前記上金型に電子部品をセットし、前記金型の型閉めにより前記電子部品の樹脂封止を行う樹脂封止方法において、真空下で、かつ、前記封止用樹脂への気泡の巻き込みを回避できるような低速で型閉めを行うことを特徴とする樹脂封止方法を提供する。
2.型閉め速度は約0.01〜約5.00mm/secであることを特徴とする前記1に記載の樹脂封止方法を提供する。
3.真空下で、前記下金型の凹部に前記封止用樹脂を充填して型閉めすることを特徴とする前記1又は2に記載の樹脂封止方法を提供する。
4.前記金型を型閉めした状態で大気に開放して前記封止用樹脂を熱硬化させることを特徴とする前記1から3のいずれかに記載の樹脂封止方法を提供する。
5.上金型及び下金型を有し、型閉めによって電子部品を樹脂封止するための金型と、前記金型の型開閉手段と、前記金型を収容する前記真空チャンバーと、封止用樹脂への気泡の巻き込みを回避できるような低速で型閉めが行われるように前記型開閉手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする樹脂封止装置を提供する。
6.前記下金型に形成された凹部に封止用樹脂を充填する充填装置と、該充填装置を収容する真空チャンバーと、を備えたことを特徴とする前記5に記載の樹脂封止装置を提供する。
7.前記下金型を搬送するための搬送手段を配設し、搬入用真空チャンバー、前記充填装置を収容する充填用真空チャンバー及び前記型開閉手段を収容する型閉め用真空チャンバーを、前記下金型の搬送の下流側に向けてその順に連続して配設し、先行する前記下金型を、前記搬入用真空チャンバーを経て前記充填用真空チャンバー内に搬送して該チャンバー内で前記下金型の凹部に封止用樹脂を充填した後に、前記型閉め用真空チャンバーに搬送して該チャンバー内で型閉めを行い、且つ、型閉めされた状態のまま前記金型を前記型閉め用真空チャンバーから熱硬化装置に搬送する一方、後行する前記下金型を、前記搬入用真空チャンバーに搬送して該チャンバー内に真空状態で待機させ、待機後は後行の前記下金型を前記搬入真空チャンバーから真空状態の前記充填用真空チャンバーに搬入するように制御する制御手段を備えたことを特徴とする前記6に記載の樹脂封止装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、真空下で、かつ、前記封止用樹脂への気泡の巻き込みを回避できるような低速で型閉めを行うので、型閉めの際の気流発生を抑えることができて封止用樹脂に空気が巻き込まれるのを防ぐことができ、パッケージ成形品の品質を向上させることができる。
【0007】
また、真空下で前記下金型の凹部に前記封止用樹脂を充填すれば、金型への樹脂充填時における気泡の巻き込みを防止することができる。
【0008】
また、前記金型を型閉めした状態で大気に開放して前記封止用樹脂を熱硬化させれば、封止用樹脂の金型成形後の未硬化状態での気泡の巻き込みを防止することができる。また、真空下にもかかわらず巻き込まれた気泡を大気に戻すことによって電子部品に影響が出ない程度に極小化できる。
【0009】
更に、前記下金型を搬送するための搬送手段を配設し、搬入用真空チャンバー、前記充填装置を収容する充填用真空チャンバー及び前記型開閉手段を収容する型閉め用真空チャンバーを、前記下金型の搬送の下流側に向けてその順に連続して配設し、先行する前記下金型を、前記搬入用真空チャンバーを経て前記充填用真空チャンバー内に搬送して該チャンバー内で前記下金型の凹部に封止用樹脂を充填した後に、前記型閉め用真空チャンバーに搬送して該チャンバー内で型閉めを行い、且つ、型閉めされた状態のまま前記金型を前記型閉め用真空チャンバーから熱硬化装置に搬送する一方、後行する前記下金型を、前記搬入用真空チャンバーに搬送して該チャンバー内に真空状態で待機させ、待機後は後行の前記下金型を前記搬入真空チャンバーから真空状態の前記充填用真空チャンバーに搬入するように制御する制御手段を備えれば、搬入真空チャンバーを用いて下金型を次々と真空チャンバーに投入することができ、生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る樹脂封止方法及び樹脂封止装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1乃至図8は樹脂封止装置及びそれを用いた樹脂封止方法を示す概略図である。図9は封止用樹脂Rの充填動作を示し、図10は型閉め動作を示す。
【0011】
樹脂封止装置は、金型1と、樹脂充填装置2と、型開閉手段3と、搬入用真空チャンバーC1と、充填用真空チャンバーC2と、型閉め用真空チャンバーC3と、金型1を搬送する搬送手段6と、図外の真空発生手段と、これらを総括的に制御する図外の制御手段と、を備えている。
【0012】
金型1は、上金型11と、封止用樹脂Rを充填するための凹部13を有する下金型12とを備え、下金型12の凹部13に封止用樹脂Rを充填し、図10のように上金型11に電子部品Aをセットし、金型1の型閉めによりパッケージ成形を行うものである。なお、電子部品Aは、半導体A1が搭載された基体A2(リードフレーム、実装基板、ケース付きリードフレーム等)である。
【0013】
搬入用真空チャンバーC1、充填用真空チャンバーC2及び型閉め用真空チャンバーC3は、下金型12の搬送の下流側に向けてその順に連続して配設され、搬入用及び型閉め用の真空チャンバーC1,C3と充填用真空チャンバーC2との間にはゲートバルブV2,V3が設けられ、搬入用及び型閉め用の真空チャンバーC1,C3には外部と通ずるためのゲートバルブV1,V4が設けられ、真空チャンバーC1,C3及び充填用真空チャンバーC2はそれぞれ図外の開閉バルブ付きの導管を介して前記真空発生装置に接続されている。
【0014】
充填用真空チャンバーC2内には充填装置2が収容され、型閉め用真空チャンバー内には型開閉手段3が収容されている。
【0015】
型開閉手段3は、型開閉シリンダー31によって上金型11を昇降させるものであって、上金型11を着脱自在に保持するチャッキング機構部32を備えている。
【0016】
充填装置2は、図9のように下金型12の凹部13に封止用樹脂Rを充填するものであって、定位置に保持される孔部21を有する孔版22と、孔版22上には図外の駆動手段にて往復動するスキージ23と、スキージ23の上方に配設される図外の樹脂供給管と、下金型12の昇降テーブル24を備えている。なお、孔版22の厚みは0.1〜3.0mmであり、好ましくは0.2〜1.0mmである。一方、下金型12の厚みは0.5〜250mmである。
【0017】
図11のように搬送手段6はベルトコンベアにより構成されている。
【0018】
前記制御手段は、型開閉手段3に対しては上金型11が低速で降下して型閉めが行われるように型開閉シリンダー31を制御する。型閉め速度は、例えば約0.01〜約5.00mm/secに設定されて封止用樹脂Rへの気泡の巻き込みが回避されるようになっている。なお、下金型12を低速上昇させて型閉めを行うようにしても良い。
【0019】
次に、以上のように構成される樹脂封止装置を用いた樹脂封止方法について説明する。
(1)まず、図1のように搬入用真空チャンバーC1のゲートバルブV1を開いて搬送手段6によって下金型12を搬入用真空チャンバーC1内へ導入する。
(2)次に、図2のようにゲートバルブV1,V2,V3を閉じ、上記真空発生装置を作動させて搬入用真空チャンバーC1及び充填用真空チャンバーC2内を同等の真空圧にする。その後、図3のようにゲートバルブV2を開けて下金型12を充填用真空チャンバーC2内へ搬送し、図4のように下金型12の凹部13が孔版22の孔部21の真下に位置するように昇降テーブル24上にセットした後、昇降テーブル24を上昇させて下金型12を孔版22に接触させると共に、下金型12の凹部13と孔版22の孔部21とを合致させる。
(3)次に、図9のように充填装置のスキージ23の作動により孔版22の孔部21を通じて下金型12の凹部13内に封止用樹脂Rを充填する。
【0020】
一方、樹脂充填中に、図5のようにゲートバルブV1を開いて後行する下金型12A(12)を搬入用真空チャンバーC1内に搬入し、搬入完了後に図6のようにゲートバルブV1を閉じて搬入用真空チャンバーC1内を真空化させ、樹脂充填が完了した先行する下金型12が昇降テーブル24によって降下させるまでの間、下金型12を搬入用真空チャンバーC1内に待機させる。
(4)そして、すべての真空チャンバーC1,C2,C3は同じ真空レベルになったときに、図7のようにゲートバルブV2,V3を開いて先行の下金型12を型閉め用真空チャンバーC3内に、後行の下金型12A(12)を充填用真空チャンバーC2内にそれぞれ搬送する。
(5)次に、型閉め用真空チャンバーC3内において、上金型11を上述のように低速で降下させて型閉めによるパッケージ成形を行う。なお、上金型11には予め電子部品Aがねじ等の固着具4で固定されている。
【0021】
電子部品Aが固定された上金型11は、手作業によって型閉め用真空チャンバーC3内のチャッキング機構部32の上昇位置(チャック位置)にセットされて該チャッキング機構部32で保持されるが、ベルトコンベア等の搬送手段でチャック位置まで搬送するようにしても良い。なお、上金型11をセットするときには、ゲートバルブV3が閉じられて充填用真空チャンバーC2の真空状態が保持される一方、開かれたゲートバルブV4から型閉め用真空チャンバーC3内に上金型11が搬入される。
(6)型閉め完了は、図8のようにゲートバルブV1,V4を開いて搬入及び型閉め用真空チャンバーC1,C3内を大気圧に戻し、型閉めされた状態の金型1は搬送手段6によって型閉め用真空チャンバーC3から図外の乾燥機に向けて搬送される。その一方、充填用真空チャンバーC2内の後行する下金型12A(12)を昇降テーブル24にセットして上述のように下金型12の凹部13内に封止用樹脂Rを充填し、搬入用真空チャンバーC1内には更に後行する下金型12B(12)が搬入される。
【0022】
前記乾燥機では、金型1内の封止用樹脂Rを熱硬化させ、その後、金型1を開いて該金型1からパッケージ成形品を取り出す。
【0023】
なお、真空チャンバーC1,C2,C3内の真空の度合い(絶対圧力)を0,01〜60.0KPaの範囲に設定し、かつ、その範囲内で樹脂の粘度状態に応じて変更するのが好ましい。
このように下金型12の凹部13への封止用樹脂Rの充填から金型1の型閉めまでを真空下で行い、且つ、低速で型閉めを行うので、封止用樹脂Rへの空気の巻き込みを防止することができる。しかも、搬入用真空チャンバーC1を用いて下金型12を次々と真空チャンバーC2,C3に投入することができるので、タクトタイムが短くなって生産性を向上させることができる。
【0024】
なお、下金型12の凹部13への樹脂充填は、図13のようにディスペンサー5を用いて行っても良い。
パッケージ成形品の形状としては、例えば円柱型(直径:0.5〜30.0mm、高さ:0.3〜100.0mm)、砲弾型(直径:0.5〜30.0mm、高さ:0.3〜100.0mm)、直方体及び立方体(長さ:0.5〜300.0mm、高さ:0.3〜100.0mm)等がある。
【0025】
図12はパッケージ成形品の形状に合わせて形成された下金型12の凹部13の形状を示す断面図であり、図(a)乃至(f)は立方体・直方体、楕円ドーム形、半球状、砲弾形、円錐形、円柱形の凹部13を示す。
【0026】
SMDのようにリードフレームA1の下面にも凸部A3がある電子部品Aを樹脂封止する場合には、図14のように該電子部品が取り付けられる上金型11の下面に該凸部A3の逃げのための彫り込み部11aが形成された金型1を用いる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の樹脂封止装置の実施形態を用いた樹脂封止工程を示す概略図である。
【図2】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図3】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図4】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図5】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図6】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図7】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図8】同樹脂封止工程を示す概略図である。
【図9】封止用樹脂の充填動作を示す説明図である。
【図10】型閉め動作を示す説明図である。
【図11】搬送手段を示す概略図である。
【図12】(a)〜(f)は同実施形態の下金型の断面図である。
【図13】(a)(b)はディスペンサーによる下金型の凹部への樹脂充填動作を示す概略図である。
【図14】他の形態の金型を用いた封止用樹脂の充填動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
A 電子部品
R 封止用樹脂
1 金型
11 上金型
12 下金型
13 凹部
2 樹脂充填装置
3 型開閉手段
C1 搬入用真空チャンバー
C2 充填用真空チャンバー
C3 型閉め用真空チャンバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上金型及び下金型を有する金型を用い、前記下金型に形成された凹部に封止用樹脂を充填する一方、前記上金型に電子部品をセットし、前記金型の型閉めにより前記電子部品の樹脂封止を行う樹脂封止方法において、
真空下で、かつ、前記封止用樹脂への気泡の巻き込みを回避できるような低速で型閉めを行うことを特徴とする樹脂封止方法。
【請求項2】
型閉め速度は約0.01〜約5.00mm/secであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂封止方法。
【請求項3】
真空下で、前記下金型の凹部に前記封止用樹脂を充填して型閉めすることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂封止方法。
【請求項4】
前記金型を型閉めした状態で大気に開放して前記封止用樹脂を熱硬化させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の樹脂封止方法。
【請求項5】
上金型及び下金型を有し、型閉めによって電子部品を樹脂封止するための金型と、
前記金型の型開閉手段と、
前記金型を収容する前記真空チャンバーと、
封止用樹脂への気泡の巻き込みを回避できるような低速で型閉めが行われるように前記型開閉手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項6】
前記下金型に形成された凹部に封止用樹脂を充填する充填装置と、
該充填装置を収容する真空チャンバーと、
を備えたことを特徴とする請求項5に記載の樹脂封止装置。
【請求項7】
前記下金型を搬送するための搬送手段を配設し、
搬入用真空チャンバー、前記充填装置を収容する充填用真空チャンバー及び前記型開閉手段を収容する型閉め用真空チャンバーを、前記下金型の搬送の下流側に向けてその順に連続して配設し、
先行する前記下金型を、前記搬入用真空チャンバーを経て前記充填用真空チャンバー内に搬送して該チャンバー内で前記下金型の凹部に封止用樹脂を充填した後に、前記型閉め用真空チャンバーに搬送して該チャンバー内で型閉めを行い、且つ、型閉めされた状態のまま前記金型を前記型閉め用真空チャンバーから熱硬化装置に搬送する一方、後行する前記下金型を、前記搬入用真空チャンバーに搬送して該チャンバー内に真空状態で待機させ、待機後は後行の前記下金型を前記搬入真空チャンバーから真空状態の前記充填用真空チャンバーに搬入するように制御する制御手段を備えたことを特徴とする請求項6に記載の樹脂封止装置。
【請求項1】
上金型及び下金型を有する金型を用い、前記下金型に形成された凹部に封止用樹脂を充填する一方、前記上金型に電子部品をセットし、前記金型の型閉めにより前記電子部品の樹脂封止を行う樹脂封止方法において、
真空下で、かつ、前記封止用樹脂への気泡の巻き込みを回避できるような低速で型閉めを行うことを特徴とする樹脂封止方法。
【請求項2】
型閉め速度は約0.01〜約5.00mm/secであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂封止方法。
【請求項3】
真空下で、前記下金型の凹部に前記封止用樹脂を充填して型閉めすることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂封止方法。
【請求項4】
前記金型を型閉めした状態で大気に開放して前記封止用樹脂を熱硬化させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の樹脂封止方法。
【請求項5】
上金型及び下金型を有し、型閉めによって電子部品を樹脂封止するための金型と、
前記金型の型開閉手段と、
前記金型を収容する前記真空チャンバーと、
封止用樹脂への気泡の巻き込みを回避できるような低速で型閉めが行われるように前記型開閉手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項6】
前記下金型に形成された凹部に封止用樹脂を充填する充填装置と、
該充填装置を収容する真空チャンバーと、
を備えたことを特徴とする請求項5に記載の樹脂封止装置。
【請求項7】
前記下金型を搬送するための搬送手段を配設し、
搬入用真空チャンバー、前記充填装置を収容する充填用真空チャンバー及び前記型開閉手段を収容する型閉め用真空チャンバーを、前記下金型の搬送の下流側に向けてその順に連続して配設し、
先行する前記下金型を、前記搬入用真空チャンバーを経て前記充填用真空チャンバー内に搬送して該チャンバー内で前記下金型の凹部に封止用樹脂を充填した後に、前記型閉め用真空チャンバーに搬送して該チャンバー内で型閉めを行い、且つ、型閉めされた状態のまま前記金型を前記型閉め用真空チャンバーから熱硬化装置に搬送する一方、後行する前記下金型を、前記搬入用真空チャンバーに搬送して該チャンバー内に真空状態で待機させ、待機後は後行の前記下金型を前記搬入真空チャンバーから真空状態の前記充填用真空チャンバーに搬入するように制御する制御手段を備えたことを特徴とする請求項6に記載の樹脂封止装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−344894(P2006−344894A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171133(P2005−171133)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(391003624)サンユレック株式会社 (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(391003624)サンユレック株式会社 (28)
【Fターム(参考)】
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