説明

樹脂成形体及びその製造方法

【課題】脂肪族ポリエステルと難燃剤とフィラーとを含む成形材料を直接成形法により成形するに際し、得られる樹脂成形体における燃焼痕の発生を十分に抑制することが可能な樹脂成形体の製造方法、並びに該製造方法により得られる樹脂成形体を提供すること。
【解決手段】難燃剤又はフィラーの一方と粉末状の脂肪族ポリエステルとを混合し、その混合物と、難燃剤又はフィラーの他方あるいは難燃剤又はフィラーの他方と粉末状の脂肪族ポリエステルとを更に混合し、得られた混合物を直接成形法により成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化、石油枯渇、廃棄物問題に代表される環境問題への取組み、持続型循環社会構築の考え方から、植物由来のバイオマス材料の開発が盛んになされている。例えばポリ乳酸は、石油を一切使用せず穀物などから製造されるバイオマス材料として注目されている。
【0003】
ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルは、一般的に、硬くて脆い、耐熱性や難燃性が低いなどの課題を有し、バイオマス材料単独で使用することは困難である。そのため、脂肪族ポリエステルを成形する際には、フィラーや難燃剤等の添加剤を併用するのが一般的である。
【0004】
従来の成形方法としては、脂肪族ポリエステルとフィラーや難燃剤等の添加剤とを混練してペレット状のコンパウンドとし(コンパウンド工程)、そのコンパウンドを乾燥させた後で射出成形する方法が知られている。しかし、コンパウンドは成形原料としての取り扱いが容易であるものの、生産性やコストの点から改善の余地がある。
【0005】
そこで、コンパウンド工程を経ずに、各成分を撹拌混合することにより得られた混合粉を、直接、成形機へ投入して成形する直接成形法が検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開平7−305228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の直接成形法の場合、得られる樹脂成形体に燃焼痕(「焼け」とも呼ばれる)が発生し、樹脂成形体の外観や品質が損なわれやすい。そのため、直接成形法はバイオマス材料の成形方法としては不適であると考えられており、燃焼痕が発生しにくいコンパウンドを使用する方法が採用されているのが実情である。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、脂肪族ポリエステルと難燃剤とフィラーとを含む成形材料を直接成形法により成形するに際し、得られる樹脂成形体における燃焼痕の発生を十分に抑制することが可能な樹脂成形体の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記製造方法により得られる樹脂成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、難燃剤又はフィラーの一方と粉末状の脂肪族ポリエステルとを混合する第1の工程と、第1の工程で得られた混合物と難燃剤又はフィラーの他方とを混合し、得られた混合物を直接成形法により成形する第2の工程と、を備えることを特徴とする樹脂成形体の製造方法(以下、便宜的に「第1の製造方法」という。)を提供する。
【0009】
上記第1の製造方法によれば、難燃剤又はフィラーの一方と粉末状の脂肪族ポリエステルとを混合した後、その混合物と難燃剤又はフィラーの他方とをさらに混合して直接成形法による成形に供することで、燃焼痕の発生が十分に抑制されるため、良好な外観を有する樹脂成形体を得ることができる。また、上記第1の製造方法によれば、得られる樹脂成形体の耐衝撃強度、面衝撃強度、難燃性などの特性を十分に向上させることができる。さらに、上記第1の製造方法は、直接成形法を利用したものであるため、生産性やコストの点でも有用である。
【0010】
また、本発明は、難燃剤又はフィラーの一方と粉末状の脂肪族ポリエステルとを混合する第3の工程と、難燃剤又はフィラーの他方と粉末状の脂肪族ポリエステルとを混合する第4工程と、第3の工程で得られた混合物と前記第4の工程で得られた混合物とを混合し、得られた混合物を直接成形法により成形する第5の工程と、を備えることを特徴とする樹脂成形体の製造方法(以下、便宜的に「第2の製造方法」という。)を提供する。
【0011】
上記第2の製造方法によれば、難燃剤及びフィラーをそれぞれ別個に粉末状の脂肪族ポリエステルと混合した後、両混合物をさらに混合して直接成形法による成形に供することで、燃焼痕の発生が十分に抑制されるため、良好な外観を有する樹脂成形体を得ることができる。また、上記第2の製造方法によれば、得られる樹脂成形体の耐衝撃強度、面衝撃強度、難燃性などの特性を十分に向上させることができる。さらに、上記第1の製造方法は、直接成形法を利用したものであるため、生産性やコストの点でも有用である。
【0012】
なお、第1及び第2の製造方法による燃焼痕の抑制効果は、従来の直接成形法における燃焼痕の発生が難燃剤とフィラーとの相互作用に起因するものであり、粉末状の脂肪族ポリエステルと難燃剤とフィラーとを上記特定の順序で混合することによって、粉末状の脂肪族ポリエステルが難燃剤とフィラーとの相互作用を弱める緩衝材として機能し得るという本発明者の知見に基づくものである。そして、燃焼痕が発生しにくいとされるコンパウンドを使用する従来の成形方法よりも、上記第1及び第2の製造方法の方が燃焼痕の抑制効果の点で優れていることを本発明者は確認している。このことから、コンパウンドを使用すると燃焼痕が発生しにくいのは成形時に空気の巻き込みが起こりにくいためであると考えられるが、空気の巻き込みよりも難燃剤とフィラーとの相互作用の方が燃焼痕の発生に強く影響するものと推察される。
【0013】
上記第1の製造方法に係る第1の工程並びに上記第2の製造方法に係る第3及び第4の工程において、脂肪族ポリエステルはそれぞれポリ乳酸であることが好ましい。
【0014】
また、上記第1の製造方法に係る第1及び第2の工程並びに上記第2の製造方法に係る第3及び第4の工程において、難燃剤はそれぞれリン系難燃剤であることが好ましい。
【0015】
また、上記第1の製造方法に係る第1の工程並びに上記第2の製造方法に係る第3及び第4の工程において、脂肪族ポリエステルの体積平均粒径はそれぞれ0.5mm以下であることが好ましい。
【0016】
また、上記第1の製造方法に係る第1及び第2の工程並びに上記第2の製造方法に係る第3及び第4の工程において、フィラーはそれぞれ長さ0.1〜10mm、太さ0.1μm〜1mmの形状を有することが好ましい。なお、ここでいう「太さ」とは、フィラーの延伸方向に垂直な断面の最大径を意味する。
【0017】
また、上記第1の製造方法に係る第1及び第2の工程並びに上記第2の製造方法に係る第3及び第4の工程において、難燃剤の体積平均粒径はそれぞれ0.1〜100μmであることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、上記第1又は第2の製造方法により得られることを特徴とする樹脂成形体を提供する。
【0019】
本発明の樹脂成形体は、上記第1又は第2の製造方法により得られるものであるため、燃焼痕の発生が十分に抑制されており、外観や品質に優れる。また、本発明の樹脂成形体は、直接成形法を利用して得られるものであるため、生産性やコストの点でも有用である。
【0020】
また、本発明は、上記本発明の樹脂成形体が一部又は全部に用いられたことを特徴とする筐体を提供する。
【0021】
本発明の筐体は、上記本発明の樹脂成形体を含んで構成されているため、外観や品質に優れており、また、生産性やコストの点でも有用である。
【発明の効果】
【0022】
以上の通り、本発明によれば、脂肪族ポリエステルと難燃剤とフィラーとを含む成形材料を直接成形法により成形するに際し、得られる樹脂成形体における燃焼痕の発生を十分に抑制することが可能な樹脂成形体の製造方法が提供される。また、本発明によれば、燃焼痕の発生が十分に抑制されており、外観や品質に優れる樹脂成形体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0024】
本発明の樹脂成形体の製造方法においては、粉末状の脂肪族ポリエステルと難燃剤とフィラーとが下記(A)、(B)又は(C)のいずれかの混合順序で混合される。(A)及び(B)は上記第1の製造方法に対応する混合工程であり、(C)は上記第2の製造方法に対応する混合工程である。
(A)難燃剤と粉末状の脂肪族ポリエステルとを混合して混合物(A−1)を得た後、混合物(A−1)とフィラーとをさらに混合する。
(B)フィラーと粉末状の脂肪族ポリエステルとを混合して混合物(B−1)を得た後、混合物(B−1)と難燃剤とをさらに混合する。
(C)難燃剤と粉末状の脂肪族ポリエステルと混合して混合物(C−1)を得、その一方で、フィラーと粉末状の脂肪族ポリエステルとを混合して混合物(C−2)を得、その後、混合物(C−1)と混合物(C−2)とをさらに混合する。
【0025】
脂肪族ポリエステルとしては、具体的には、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートなどが挙げられ、中でもポリ乳酸が好ましい。
【0026】
脂肪族ポリエステルとしては粉末状のものを用いることが重要であり、脂肪族ポリエステルがペレット状である場合には、好ましくは乾式粉砕により、ペレットを粉砕して粉末状とする必要がある。なお、上記(A)、(B)、(C)において、粉末状の脂肪族ポリエステルの代わりにペレット状の脂肪族ポリエステル(コンパウンド)を用いた場合、燃焼痕の発生を十分に抑制することができず、さらに、耐衝撃強度、面衝撃強度などの特性が不十分となりやすい。
【0027】
乾式粉砕機の具体例としては、ジョークラッシャー、ロールミル、カッターミル、ハンマーミル、アトマイザー、ボールミル、遊星ボールミル、シングルトラックジェットミル、ジェットオーミル、磨砕機などが挙げられる。脂肪族ポリエステルの体積平均粒径は0.5mm以下であることが好ましく、0.01〜0.3mmであることがより好ましい。
【0028】
また、難燃剤としては、具体的には、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤などが挙げられる。
【0029】
臭素系難燃剤としては、具体的には、デカブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモベンゼン、1,1−スルホニル[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)]ベンゼン、ポリジブロモフェニレンオキサイド、テトラブロムビスフェノール−S、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、トリブロモフェニルアリルエーテル、トリブロモネオペンチルアルコール、ブロム化ポリスチレン、ブロム化ポリエチレン、テトラブロムビスフェノール−A、テトラブロムビスフェノール−A誘導体、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマーまたはポリマー、テトラブロムビスフェノール−A−カーボネートオリゴマーまたはポリマー、ブロム化フェノールノボラックエポキシなどのブロム化エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2−ヒドロキシジエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモシクロオクタン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ジブロモネオペンチルグリコール、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、N,N’−エチレン−ビス−テトラブロモフタルイミドなどが挙げられる。これらの中でも、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマー、テトラブロムビスフェノール−A−カーボネートオリゴマー、ブロム化エポキシ樹脂が好ましい。
【0030】
また、塩素系難燃剤としては、具体的には、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、パークロロシクロペンタデカン、テトラクロロ無水フタル酸などが挙げられる。
【0031】
また、リン系難燃剤としては、具体的には、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、リン酸塩、ポリリン酸塩などの有機リン系化合物や、赤リンが挙げられる。
【0032】
リン酸エステルの具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。
【0033】
また、縮合リン酸エステルとしては、芳香族縮合リン酸エステルを好適に使用することができる。芳香族縮合リン酸エステルの具体例としては、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェートならびにこれらの縮合物などの縮合リン酸エステルを挙げることができる。また、縮合リン酸エステルとして、大八化学社製PX−200、PX−201、PX−202、CR−733S、CR−741、CR747などの市販品を用いてもよい。
【0034】
また、リン酸塩及びポリリン酸塩としては、リン酸又はポリリン酸と、周期律表IA族〜IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミンとの塩が挙げられる。より具体的には、金属塩としてリチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、鉄(II)塩、鉄(III)塩、アルミニウム塩など、脂肪族アミン塩としてメチルアミン塩、エチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、エチレンジアミン塩、ピペラジン塩など、芳香族アミン塩としてピリジン塩、トリアジン塩、メラミン塩、アンモニウム塩などがそれぞれ例示される。
【0035】
また、リン系難燃剤としては、上記の他、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート)などの含ハロゲンリン酸エステル、リン原子と窒素原子が二重結合で結ばれた構造を有するホスファゼン化合物、リン酸エステルアミドなどが挙げられる。
【0036】
また、赤リンとしては、未処理の赤リンのみでなく、熱硬化性樹脂被膜、金属水酸化物被膜及び金属メッキ被膜から選ばれる1種以上の化合物被膜により処理された赤リンを好ましく使用することができる。熱硬化性樹脂被膜の熱硬化性樹脂としては、赤リンを被膜できる樹脂であれば特に制限はなく、例えば、フェノール−ホルマリン系樹脂、尿素−ホルマリン系樹脂、メラミン−ホルマリン系樹脂、アルキッド系樹脂などが挙げられる。金属水酸化物被膜の金属水酸化物としては、赤リンを被膜できる樹脂であれば特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタンなどを挙げることができる。金属メッキ被膜の金属としては、赤リンを被膜できる樹脂であれば特に制限はなく、Fe、Ni、Co、Cu、Zn、Mn、Ti、Zr、Alまたはこれらの合金などが挙げられる。さらに、これらの被膜は2種以上組み合わせて、あるいは2種以上に積層されていてもよい。
【0037】
上記リン系難燃剤の中でも、縮合リン酸エステル、ポリリン酸塩、赤リンが好ましく、縮合リン酸エステル、ポリリン酸塩が特に好ましく、縮合リン酸エステルがさらに好ましく、芳香族縮合リン酸エステルが特に好ましい。
【0038】
また、窒素系難燃剤としては、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミド、芳香族アミド、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、尿素、チオ尿素などが挙げられる。なお、ここでは、上記リン系難燃剤で例示したようなポリリン酸アンモニウムなど含窒素リン系難燃剤は窒素化合物系難燃剤には含まれないものとする。
【0039】
脂肪族アミンとしては、エチルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロオクタンなどが挙げられる。
【0040】
芳香族アミンとしては、アニリン、フェニレンジアミンなどを挙げることができる。含窒素複素環化合物としては、尿酸、アデニン、グアニン、2,6−ジアミノプリン、2,4,6−トリアミノピリジン、トリアジン化合物などが挙げられる。
【0041】
含窒素複素環化合物としては、トリアジン骨格を有する含窒素複素環化合物などが挙げられ、より具体的には、トリアジン、メラミン、ベンゾグアナミン、メチルグアナミン、シアヌル酸、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、トリメチルトリアジン、トリフェニルトリアジン、アメリン、アメリド、チオシアヌル酸、ジアミノメルカプトトリアジン、ジアミノメチルトリアジン、ジアミノフェニルトリアジン、ジアミノイソプロポキシトリアジンなどが挙げられる。
【0042】
シアン化合物としては、ジシアンジアミドなどを挙げることができる。脂肪族アミドとしては、N,N−ジメチルアセトアミドなどを挙げることができる。
【0043】
芳香族アミドとしては、N,N−ジフェニルアセトアミドなどを挙げることができる。
【0044】
メラミンシアヌレートまたはメラミンイソシアヌレートとしては、シアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン化合物との付加物が好ましく、通常は1対1(モル比)、場合により1対2(モル比)の組成を有する付加物を挙げることができる。また、公知の方法で製造されるが、例えば、メラミンとシアヌール酸またはイソシアヌール酸の混合物を水スラリーとし、良く混合して両者の塩を微粒子状に形成させた後、このスラリーを濾過、乾燥後に一般には粉末状で得られる。また、上記の塩は完全に純粋である必要は無く、多少未反応のメラミンないしシアヌール酸、イソシアヌール酸が残存していても良い。また、樹脂に配合される前の平均粒径は、成形品の難燃性、機械的強度、表面性の点から100〜0.01μmが好ましく、更に好ましくは80〜1μmである。
【0045】
窒素化合物系難燃剤の中では、含窒素複素環化合物が好ましく、中でもトリアジン化合物が好ましく、さらにメラミンシアヌレートが好ましい。
【0046】
なお、上記窒素化合物系難燃剤の脂肪族ポリエステルへの分散性が低い場合には、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの分散剤や公知の表面処理剤などを併用してもよい。
【0047】
また、シリコーン系難燃剤としては、シリコーン樹脂、シリコーンオイルを挙げることができる。
【0048】
シリコーン樹脂としては、SiO、RSiO3/2、RSiO、RSiO1/2の構造単位を組み合わせてできる三次元網状構造を有する樹脂などが挙げられる。ここで、Rはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、ベンジル基等の芳香族基、または上記置換基にビニル基を含有した置換基を示す。
【0049】
また、シリコーンオイルとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサンの側鎖あるいは末端の少なくとも1つのメチル基が水素元素、アルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、クロロアルキル基、アルキル高級アルコールエステル基、アルコール基、アラルキル基、ビニル基及びトリフロロメチル基から選ばれる少なくとも1つの基により変性された変性ポリシロキサン、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0050】
また、その他の無機系難燃剤としては、上記の他、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、メタスズ酸、酸化スズ、酸化スズ塩、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化第一錫、酸化第二スズ、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アンモニウム、オクタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸の金属塩、タングステンとメタロイドとの複合酸化物酸、スルファミン酸アンモニウム、臭化アンモニウム、ジルコニウム系化合物、グアニジン系化合物、フッ素系化合物、黒鉛、膨潤性黒鉛などを挙げることができる。これらの中では、水酸化マグネシウム、フッ素系化合物、膨潤性黒鉛が好ましい。
【0051】
上記難燃剤は、1種を単独で用いてもよく、または、2種以上を併用してもよい。
【0052】
上記難燃剤の中では、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤およびその他の無機系難燃剤から選択される1種又は2種以上を用いることが好ましく、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤およびその他の無機系難燃剤から選択される2種以上を組み合わせて用いることがさらに好ましく、リン系難燃剤と他の難燃剤とを併用することが特に好ましい。リン系難燃剤と他の難燃剤とを併用する場合、リン系難燃剤100質量部に対して、他の難燃剤を1〜100質量部用いることが好ましく、リン系難燃剤よりも他の難燃剤を少なくするとより高い難燃効果が得られるので一層好ましい。
【0053】
また、リン系難燃剤と併用する窒素系難燃剤としては含窒素複素環化合物が好ましく、中でもトリアジン化合物が好ましく、さらにメラミンシアヌレートが好ましい。また、リン系難燃剤と併用するシリコーン系難燃剤としてはシリコーン樹脂が好ましい。また、リン系難燃剤と併用するその他の無機系難燃剤としてはホウ酸亜鉛または膨潤性黒鉛が好ましい。
【0054】
さらに、リン系難燃剤と窒素系難燃剤とを併用する場合、縮合リン酸エステルと窒素系難燃剤とを併用するか、又は、ポリリン酸塩と窒素系難燃剤を併用することが特に好ましい。この場合、窒素系難燃剤を縮合リン酸エステルやポリリン酸塩よりも少ない量で用いることが難燃効果が高く好ましい。
【0055】
難燃剤の量は、脂肪族ポリエステル100質量部に対して、0.5〜100質量部であることが好ましく、さらに1〜80質量部であることがより好ましい。なお、ここでいう難燃剤の量とは、最終的に得られる脂肪族ポリエステルの量に対する難燃剤の量であり、上記(C)の場合は、混合物(C−1)に含まれる脂肪族ポリエステルと混合物(C−2)に含まれる脂肪族ポリエステルとの合計量に対する難燃剤の量を意味する。
【0056】
また、フィラーとしては、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、マイカ、モンモリロナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリカ、酸化チタン、カーボンブラックなどが挙げられる。これらの中でも、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムが好ましい。フィラーは1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
フィラーの形状は、特に制限されないが、その長さは好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは0.3〜5mmである。また、フィラーの太さ(延伸方向に垂直な断面の最大径)は、好ましくは0.1μm〜1mm、より好ましくは0.5μm〜0.5mmである。
【0058】
フィラーの量は、脂肪族ポリエステル100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、さらに5〜20質量部であることがより好ましい。なお、ここでいうフィラーの量とは、最終的に得られる脂肪族ポリエステルの量に対するフィラーの量であり、上記(C)の場合は、混合物(C−1)に含まれる脂肪族ポリエステルと混合物(C−2)に含まれる脂肪族ポリエステルとの合計量に対するフィラーの量を意味する。
【0059】
なお、本発明の樹脂成形体の製造方法に係る上記第1の製造方法においては、上記(A)又は(B)に示したように、脂肪族ポリエステルに対して、難燃剤又はフィラーのいずれを先に混合してもよいが、難燃剤の相溶性の点から、上記(A)、すなわち、難燃剤と脂肪族ポリエステルとを混合した後、その混合物にフィラーを更に混合することが好ましい。
【0060】
また、直接成形法による成形に供される混合物は、粉末状の脂肪族ポリエステルと難燃剤とフィラーとからなるものであってもよいが、上記成分以外に相溶化剤、耐候剤、酸化防止剤、加水分解防止剤などの添加剤を更に含有してもよい。難燃剤及びフィラー以外の添加剤の量は、燃焼痕の抑制効果が阻害されなければ特に制限されないが、樹脂100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましい。
【0061】
このように、混合工程(A)、(B)又は(C)を経て得られる、粉末状の脂肪族ポリエステルと、難燃剤と、フィラーと、必要に応じて添加される添加剤と、を含有する混合物を、直接成形法により成形することにより、燃焼痕の発生が十分に抑制された樹脂成形体を得ることができる。
【0062】
なお、本実施形態においては、予め難燃剤又はフィラーの一方と粉末状の脂肪族ポリエステルとの混合物と難燃剤又はフィラーの他方との混合物を調製してもよく、また、難燃剤又はフィラーの一方と粉末状の脂肪族ポリエステルとの混合物と、難燃剤又はフィラーの他方とを、それぞれ直接成形機に投入して直接成形機内で混合してもよい。
【0063】
また、成形方法は、コンパウンド工程を経ない直接成形法によるものであれば特に制限されず、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形などの成形方法が使用可能であり、中でも、直接成形法による射出成形が好ましい。
【0064】
成形条件は、燃焼痕の抑制効果が得られれば特に制限されないが、例えば射出成形の場合、射出温度は160〜230℃、金型温度は20〜140℃が好ましい。
【0065】
本発明の樹脂成形体の製造方法によって得られる樹脂成形体は、燃焼痕の発生が十分に抑制されたものであり、外観及び品質に優れるため、事務機器、家電製品、容器などの用途に好適に用いることができる。より具体的には、家電製品や事務機器などの筐体、各種部品など、ラッピングフィルム、CD−ROMやDVDなどの収納ケース、食器類、食品トレイ、飲料ボトル、薬品ラップ材などであり、中でも、プリンター、複写機、ファックスなどの筐体に代表される事務機器筐体に好適である。
【0066】
本発明の筐体は、その全部が本発明の樹脂成形体で構成されていてもよいが、面衝撃強度等の性能が求められる部分が本発明の樹脂成形体で構成されていれば、他の部分は本発明の樹脂成形体以外の樹脂成形体で構成されていてもよい。具体的には、プリンター、複写機、ファックスなどのケーシングにおけるフロントカバー、リアカバー、給紙トレイ、プラテンなどは本発明の樹脂成形体で構成されていることが好ましい。一方、内装カバーなどは、本発明の樹脂成形体又はそれ以外の樹脂成形体のいずれで構成されていてもよい。
【0067】
図1は、本発明の樹脂成形体の一実施形態に係る筐体及び事務機器部品を備える画像形成装置を、前側から見た外観斜視図である。図1の画像形成装置100は、本体装置110の前面にフロントカバー120a,120bを備えている。これらのフロントカバー120a,120bは、ユーザーが装置内にアクセスできるよう開閉可能となっている。これにより、ユーザーは、トナーが消耗したときにトナーを補充したり、消耗したプロセスカートリッジを交換したり、装置内でジャムが発生したときに詰まった用紙を取り除いたりすることができる。図1には、フロントカバー120a,120bが開かれた状態の装置が示されている。
【0068】
本体装置110の上面には、用紙サイズや部数等の画像形成に関わる諸条件がユーザーからの操作によって入力される操作パネル130、及び、読み取られる原稿が配置されるコピーガラス132が設けられている。また、本体装置110は、その上部に、コピーガラス132上に原稿を自動的に搬送することができる自動原稿搬送装置134を備えている。更に、本体装置110は、コピーガラス132上に配置された原稿画像を走査して、その原稿画像を表わす画像データを得る画像読取装置を備えている。この画像読取装置によって得られた画像データは、制御部を介して画像形成ユニットに送られる。なお、画像読取装置及び制御部は、本体装置110の一部を構成する筐体150の内部に収容されている。また、画像形成ユニットは、着脱可能なプロセスカートリッジ142として筐体150に備えられている。プロセスカートリッジ142の着脱は、操作レバー144を回すことによって可能となる。
【0069】
本体装置110の筐体150には、トナー収容部146が取り付けられており、トナー供給口148からトナーを補充することができる。トナー収容部146に収容されたトナーは現像装置に供給されるようになっている。
【0070】
一方、本体装置110の下部には、用紙収納カセット140a,140b,140cが備えられている。また、本体装置110には、一対のローラで構成される搬送ローラが装置内に複数個配列されることによって、用紙収納カセットの用紙が上部にある画像形成ユニットまで搬送される搬送経路が形成されている。なお、各用紙収納カセットの用紙は、搬送経路の端部近傍に配置された用紙取出し機構によって1枚ずつ取り出されて、搬送経路へと送り出される。また、本体装置110の側面には、手差しの用紙トレイ136が備えられており、ここからも用紙を供給することができる。
【0071】
画像形成ユニットによって画像が形成された用紙は、本体装置110の一部を構成する筐体152によって支持された相互に当接する2個の定着ロールの間に順次移送された後、本体装置110の外部に排紙される。本体装置110には、用紙トレイ136が設けられている側と反対側に排出トレイ138が複数備えられており、これらのトレイに画像形成後の用紙が排出される。
【0072】
画像形成装置100において、フロントカバー120a,120bは、開閉時の応力及び衝撃、画像形成時の振動、画像形成装置内で発生する熱などの負荷を多く受ける。また、プロセスカートリッジ142は、着脱の衝撃、画像形成時の振動、画像形成装置内で発生する熱などの負荷を多く受ける。また、筐体150及び筐体152は、画像形成時の振動、画像形成装置内で発生する熱などの負荷を多く受ける。そのため、本発明の樹脂成形体は、画像形成装置100のフロントカバー120a,120b、プロセスカートリッジ142の外装、筐体150、及び筐体152として用いられるのが好適である。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0074】
(実施例1)
ペレット状ポリ乳酸(三井化学製、レイシアH100)をジェットミル(セイシン製)に投入、乾式粉砕し、体積平均粒径0.5mm以下の粉末状のポリ乳酸を得た。このポリ乳酸100質量部と、難燃剤(ポリリン酸メラミン、三和ケミカル社製、MPP−A、体積平均粒径10μm)15質量部とを、乾式紛体混合機ロッキングミキサー(愛知電機製)にて混合し、混合物を得た。
【0075】
このようにして得られたポリ乳酸と難燃剤との混合物100質量部と、フィラー(日東紡社製、CS3PE−941S、長さ3mm、太さ0.1mm)15質量部とを、射出成形機(日精樹脂製、EX50)を用いて射出温度190℃、金型温度70℃で射出成形し、ISO多目的ダンベル試験片及び平板成形体(150mm×150mm、厚さ3mm)を得た。得られたISOダンベル試験片及び平板成形体の外観を目視にて観察したところ、燃焼痕は認められなかった。
【0076】
次に、ISOダンベル試験片を用い、デジタル衝撃強度測定装置(東洋精機製、DG−C)にてシャルピー耐衝撃強度を測定した。また、平板成形体を用いて、面衝撃強度測定装置(弘栄機械製、ME−1)にて、接触面積900mm、落下速度100mm/minの条件で面衝撃強度を測定した。また、ISOダンベル試験片からUL試験片を切り出し、難燃性試験(UL94−V燃焼試験)を実施した。得られた結果を表1に示す。なお、UL94−V燃焼試験は、JIS Z2391に規定する垂直燃焼試験であり、表1では、難燃グレードを難燃性の高い順にV−0、V−1、V−2として示した。
【0077】
(実施例2)
ペレット状ポリ乳酸(三井化学製、レイシアH100)をジェットミル(セイシン製)に投入、乾式粉砕し、体積平均粒径0.5mm以下の粉末状のポリ乳酸を得た。このポリ乳酸100質量部と、フィラー(日東紡社製、CS3PE−941S、長さ3mm、太さ0.1mm)10質量部とを、乾式紛体混合機ロッキングミキサー(愛知電機製)にて混合し、混合物を得た。
【0078】
このようにして得られたポリ乳酸とフィラーとの混合物100質量部と、難燃剤(ポリリン酸メラミン、三和ケミカル社製、MPP−A、体積平均粒径5μm)12.5質量部とを、射出成形機(日精樹脂製、EX50)を用いて射出温度190℃、金型温度70℃で射出成形し、ISO多目的ダンベル試験片及び平板成形体(150mm×150mm、厚さ3mm)を得た。得られたISOダンベル試験片及び平板成形体の外観を目視にて観察したところ、燃焼痕は認められなかった。
【0079】
このようにして得られたISOダンベル試験片及び平板成形体について、実施例1と同様にして、シャルピー耐衝撃強度及び面衝撃強度の測定並びに難燃性試験を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0080】
(実施例3)
ペレット状ポリ乳酸(三井化学製、レイシアH100)をジェットミル(セイシン製)に投入、乾式粉砕し、体積平均粒径0.5mm以下の粉末状のポリ乳酸を得た。
【0081】
次に、上記の粉末状のポリ乳酸100質量部とフィラー(日東紡社製、CS3PE−941S、長さ3mm、太さ0.1mm)20質量部とを、乾式紛体混合機ロッキングミキサー(愛知電機製)にて混合し、混合物(3−A)を得た。
【0082】
また、上記の粉末状のポリ乳酸100質量部と難燃剤(ポリリン酸メラミン、三和ケミカル社製、MPP−A、体積平均粒径5μm)7.5質量部とを、ロッキングミキサーにて混合し、混合物(3−B)を得た。
【0083】
さらに、混合物(3−A)100質量部と混合物(3−B)100質量部とをロッキングミキサーにて混合し、得られた混合物を、射出成形機(日精樹脂製、EX50)を用いて射出温度190℃、金型温度70℃で射出成形し、ISO多目的ダンベル試験片及び平板成形体(150mm×150mm、厚さ3mm)を得た。得られたISOダンベル試験片及び平板成形体の外観を目視にて観察したところ、燃焼痕は認められなかった。
【0084】
このようにして得られたISOダンベル試験片及び平板成形体について、実施例1と同様にして、シャルピー耐衝撃強度及び面衝撃強度の測定並びに難燃性試験を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0085】
(比較例1)
ペレット状ポリ乳酸(三井化学製、レイシアH100)をジェットミル(セイシン製)に投入、乾式粉砕し、体積平均粒径0.5mm以下の粉末状のポリ乳酸を得た。このポリ乳酸100質量部と、フィラー(日東紡社製、CS3PE−941S、長さ3mm、太さ0.1mm)15質量部と、難燃剤(ポリリン酸メラミン、三和ケミカル社製、MPP−A、体積平均粒径5μm)20質量部とを、乾式紛体混合機ロッキングミキサー(愛知電機製)にて混合し、混合物を得た。得られた混合物を、射出成形機(日精樹脂製、EX50)を用いて射出温度190℃、金型温度70℃で射出成形し、ISO多目的ダンベル試験片及び平板成形体(150mm×150mm、厚さ3mm)を得た。得られたISOダンベル試験片及び平板成形体の外観を目視にて観察したところ、燃焼痕が認められた。
【0086】
このようにして得られたISOダンベル試験片及び平板成形体について、実施例1と同様にして、シャルピー耐衝撃強度及び面衝撃強度の測定並びに難燃性試験を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0087】
(比較例2)
ペレット状ポリ乳酸(三井化学製、レイシアH100)100質量部と、フィラー(日東紡社製、CS3PE−941S、長さ3mm、太さ0.1mm)10質量部と、難燃剤(ポリリン酸メラミン、三和ケミカル社製、MPP−A、体積平均粒径5μm)15質量部とを、射出成形機(日精樹脂製、EX50)に投入し、射出温度190℃、金型温度70℃で射出成形し、ISO多目的ダンベル試験片及び平板成形体(150mm×150mm、厚さ3mm)を得た。得られたISOダンベル試験片及び平板成形体の外観を目視にて観察したところ、燃焼痕が認められた。
【0088】
このようにして得られたISOダンベル試験片及び平板成形体について、実施例1と同様にして、シャルピー耐衝撃強度及び面衝撃強度の測定並びに難燃性試験を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0089】
(比較例3)
ペレット状ポリ乳酸(三井化学製、レイシアH100)100質量部と、難燃剤(ポリリン酸メラミン、三和ケミカル社製、MPP−A、体積平均粒径5μm)10質量部とを乾式紛体混合した。得られた混合物80質量部とフィラー(日東紡社製、CS3PE−941S、長さ3mm、太さ0.1mm)20質量部とを射出成形機(日精樹脂製、EX50)に投入し、射出温度190℃、金型温度70℃で直接射出成形し、射出成形機(日精樹脂製、EX50)に投入し、射出温度190℃、金型温度70℃で射出成形し、ISO多目的ダンベル試験片及び平板成形体(150mm×150mm、厚さ3mm)を得た。得られたISOダンベル試験片及び平板成形体の外観を目視にて観察したところ、燃焼痕が認められた。
【0090】
このようにして得られたISOダンベル試験片及び平板成形体について、実施例1と同様にして、シャルピー耐衝撃強度及び面衝撃強度の測定並びに難燃性試験を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
(実施例4〜6)
実施例4〜6においては、それぞれ実施例1〜3と同様にして、射出成形機(日精樹脂製、EX50)を用いて射出温度190℃、金型温度70℃で射出成形し、カラー複写機(富士ゼロックス社製、DocuCenter500)のフロントカバーを作製した。得られたフロントカバーの外観を目視にて観察したところ、いずれも燃焼痕は認められなかった。
【0093】
また、実施例4〜6で得られたフロントカバーについて、実施例1〜3と同様にして面衝撃強度を測定した。また、フロントカバーからISO多目的ダンベル試験片及びUL試験片を切り出し、シャルピー耐衝撃強度の測定及び難燃性試験(UL94―V燃焼試験)を実施した。その結果、実施例4〜6で得られたフロントカバーは、それぞれ実施例1〜3のISOダンベル試験片又は平板成形体と同様の耐衝撃強度、面衝撃強度及び難燃性を有していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の樹脂成形体の一実施形態に係る筐体及び事務機器部品を備える画像形成装置を示す外観斜視図である。
【符号の説明】
【0095】
100…画像形成装置、110…本体装置、120a、120b…フロントカバー、130…操作パネル、132…コピーガラス、134…自動原稿搬送装置、136…用紙トレイ、140a〜140c…用紙収納カセット、142…プロセスカートリッジ、144…操作レバー、146…トナー収容部、148…トナー供給口、150、152…筐体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃剤又はフィラーの一方と粉末状の脂肪族ポリエステルとを混合する第1の工程と、
前記第1の工程で得られた混合物と前記難燃剤又は前記フィラーの他方とを混合し、得られた混合物を直接成形法により成形する第2の工程と、
を備えることを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
難燃剤又はフィラーの一方と粉末状の脂肪族ポリエステルとを混合する第3の工程と、
前記難燃剤又は前記フィラーの他方と粉末状の脂肪族ポリエステルとを混合する第4工程と、
前記第3の工程で得られた混合物と前記第4の工程で得られた混合物とを混合し、得られた混合物を直接成形法により成形する第5の工程と、
を備えることを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂成形体の製造方法により得られることを特徴とする樹脂成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2008−50443(P2008−50443A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226951(P2006−226951)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】