説明

樹脂組成物、カバーレイフィルム、および金属張積層板。

【課題】高屈曲性と耐折性を両立するハロゲンフリーのフレキシブルプリント回路板用の樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】フレキシブルプリント回路板に用いる樹脂組成物であって、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、アミン系硬化剤と、活性エステル基を有する硬化剤と、を併用することを特長とし、また、前記エポキシ樹脂は、実質的にハロゲンを含有していないこと、また、前記エポキシ樹脂と、前記硬化剤の含有比率が、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量1に対する前記硬化剤の当量比が0.7以上、1.2以下である樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント回路板に用いる樹脂組成物、カバーレイフィルムおよび金属張積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント回路板は薄く、軽く、屈曲性に優れることから、特に携帯電話、PDA、液晶ドライバーモジュールを始めとしてモバイル機器を中心に利用されているが、近年、これら電子機器の高性能化、小型化に伴いフレキシブルプリント回路板への配線の微細化、高密度実装化、耐屈曲性などがますます要求されてきている。
【0003】
例えば、折畳み式の携帯電話に使用されるフレキシブルプリント回路板は、ヒンジ部分が常に屈曲されており、高屈曲性が求められる。
一方、ヒンジ部以外の筐体部分に対しては、フレキシブルプリント回路板を細かく折りたたんで筐体へ組み込む要求があり、折りたたみ性(耐折性)が求められている。
【0004】
また、小型デジタル機器は高機能化に伴い、それに使われるフレキシブルプリント回路板は、片面、両面板から多層板になったり、電磁波シールド材や補強板を貼着したり、実装部品点数が多くなるため複数回の実装を行なったり、と繰り返し熱履歴を受けるため複数回の耐熱履歴性が求められている。
【0005】
また、環境対応問題より鉛フリーはんだを用いる実装要求があり、これまでのはんだに比べ15〜20℃実装温度が高くなり、これに伴い高耐熱性、高寸法安定性が求められている。
【0006】
さらに、難燃剤としてもハロゲンを含まないことが要求されている。これまでは難燃剤は臭素化エポキシ樹脂を使用するのが一般的であったが(例えば特許文献1、2)、燃焼時にダイオキシンの発生が懸念されるため、ハロゲンフリー材料が求められている。
【0007】
このように、屈曲性(樹脂の硬さ)と耐折性(樹脂の柔らかさ)という相反する特性の両立、また、耐熱性、耐熱履歴性、寸法安定性、ハロゲンフリーという多種様々な特性をすべて兼ね備えたフレキシブルプリント回路板の要求があるものの、すべての特性を兼ね備えたフレキシブルプリント回路板はないのが実情であった。
【特許文献1】特開平4−197746号公報
【特許文献2】特開平3−028285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高屈曲性と耐折性を両立するハロゲンフリーのフレキシブルプリント回路板用の樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、フレキシブルプリント回路板に用いる樹脂組成物であって、エポキシ樹脂と、ポリアミン化合物と、活性エステル基を有する樹脂とを含有することを特徴とする樹脂組成物が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、上記樹脂組成物を樹脂フィルムに塗工し乾燥して得られるカバーレイフィルムが提供される。
さらに、本発明によれば、上記樹脂組成物を樹脂フィルムに塗工し、金属箔と積層接着することにより得られるフレキシブルプリント回路板用の金属張積層板が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高屈曲性と耐折性を両立するハロゲンフリーのフレキシブルプリント回路板用の樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の樹脂組成物、カバーレイフィルムおよび金属張積層板について詳細に説明する。
【0013】
本発明の樹脂組成物は、ポリイミドフィルムなどの樹脂フィルムの片面にワニスとして塗布、乾燥して接着剤層とし、カバーレイフィルムとして用いたり、樹脂フィルムの片面あるいは両面にワニスとして塗布、乾燥して接着剤層とし、金属箔を積層した後、接着剤層を加熱硬化することでフレキシブルプリント回路板用の金属張積層板として用いることができる。
【0014】
以下、本発明の樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0015】
本発明に係る樹脂組成物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含む。架橋反応をおこすために分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するものであれば、どの様なエポキシ樹脂でもよく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、各々単独で使用し得られるほか、必要により2種類以上の任意の組合せ併用しても構わない。
特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は分子構造の水酸基による分子間結合で密着性に優れている。ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の15重量%以上、55 重量%以下が好ましく、25重量%以上、45重量%以下がより好ましい。含有量がこの範囲内にあると耐熱性を損なうことなく、ハンドリング性を得ることができる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、特に限定はされないが、低粘度であるものが好ましく、さらに耐熱性を有していればより好ましい。
【0016】
硬化剤としてはエポキシ樹脂を硬化させるアミン系化合物と、活性エステル基を有する化合物が好ましい。アミン系硬化剤としては、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソフォロンジアミン、ノルボルネンジアミンなどが挙げられる。これらの中で、ジアミノジフェニルスルホンが好ましく用いられる。特に限定されないが、樹脂組成物全体の1重量%以上、30重量%以下が好ましく、4重量%以上、20重量%以下がより好ましい。含有量がこの範囲内にあるとポリイミド等の基材フィルムに対して優れた密着性を得ることができる。
活性エステル基を有する硬化剤を使用する場合は活性エステル当量が100以上、500以下のものが好ましい。当量がこの範囲内にあると耐熱性、屈曲性にくわえ、密着性も良好となる。特に限定されないが、樹脂組成物全体の1重量%以上、35 重量%以下が好ましく、4重量%以上、30重量%以下がより好ましい。含有量がこの範囲内にあると密着性を落とさずに柔軟性を得ることができる。
エステル基はカルボン酸化合物とフェノールとの縮合反応により得られるが特に本発明で用いられる反応性エステル基は硬化時に架橋できるように多価芳香族カルボン酸と多価フェノールの縮合反応からなる芳香族系エステル化合物が好ましい。例えばコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸などの多価芳香族カルボン酸とハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールフタリンなどの多価フェノール類からなる芳香族系エステル化合物などを挙げることができる。
【0017】
前記硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂のエポキシ当量1に対し、該硬化剤の当量比が0.7以上1.2以下の範囲とすることが好ましい。この範囲内では、反応が十分に進み柔軟性を落とさずに密着性と耐熱性の効果を得ることができる。より好ましい配合量は、エポキシ樹脂のエポキシ当量1に対して該硬化剤の当量比は0.8以上1.0以下である。
【0018】
前記硬化剤の当量比は、ポリアミン化合物と、活性エステル基を有する樹脂の当量比が(0.2:0.8)〜(0.9:0.1)の範囲であることが好ましい。この範囲内では、ガラス転移温度を低くすることなく柔軟性、密着性、耐熱性を得ることができる。より好ましい当量比は、ポリアミン化合物と、活性エステル基を有する樹脂の当量比が(0.4:0.6)〜(0.8:0.2)である。
【0019】
本発明に係る樹脂組成物は、リン系化合物を含むことが好ましい。リン系化合物としては、モノマー型リン酸エステル、縮合型リン酸エステル、重合型リン酸エステル、リン酸エステルアミド等が挙げられる。これらの中で、リン酸エステルアミドが好ましく用いられる。リン酸エステルアミドは、ハロゲンを含まない難燃剤として有効である。一般的なリン化合物であるリン酸エステルと比べ加水分解性が小さいことから耐吸湿半田耐熱性が向上し、耐マイグレーション性(絶縁信頼性)が低下しない特長がある。
リン酸エステルアミドのリン含有量は、2%以上、15%以下が好ましい。リン含有量がこの範囲内であれば、主剤の特性を大きく損なわずに難燃性を付与できる。
リン酸エステルアミドの含有量は、樹脂組成物全体の10重量%以上、40重量%以下が好ましい。20重量%以上、30重量%以下がより好ましい。含有量がこの範囲内にあると耐熱性を損なわずに難燃性を付与できる。
【0020】
カルボキシル基含有ゴムは、アクロニトリル−ブタジエン系のゴムやアクロニトリル−エチレン系のゴムが好ましい。カルボキシル基含有ゴムの含有量は10重量%以上、20重量%以下が好ましい。含有量がこの範囲内にあると耐熱性を損なわずに密着性と柔軟性を得られる。
また、カルボキシル基含有ゴムのムーニー粘度は20以下であることが好ましく、10以上、20以下がより好ましい。含有量がこの範囲内にあるとプレス成型時に不必要な部分への染み出しが抑えられ、一方で回路間の埋込み成型性を両立できる。
また、 カルボキシル基含有ゴムのイオン性不純物は100ppm以下であることが望ましい。不純物量がこの範囲内にあると絶縁信頼性が良好である。イオン性不純物としては、例えば塩素イオン、硫酸イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどが挙げられる。
【0021】
本発明の樹脂組成物は、無機フィラーを含むことが好ましい。これにより、耐熱性向上と弾性率向上および難燃性を向上させることが出来る。無機フィラーとしては、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、マイカ、タルク、ホワイトカーボンなどが好ましい。これらの中で、水酸化アルミニウムがより好ましい。
無機フィラーの、平均粒子径は特に限定されないが、0.1μm以上、10μm以下であることが好ましい。平均粒子径がこの範囲内にあると良好なワニス粘度が得られる。
樹脂組成物中の無機フィラーの含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体に対して、10重量%以上、40重量%以下が好ましく、20重量%以上、30重量%以下がより好ましい。含有量がこの範囲内にあると耐折性を落とさずに耐ヒンジ性と耐熱性の効果を得ることができ、更に限定した範囲内にあると、耐屈曲性の効果に必要な弾性率を得られる。
【0022】
本発明の樹脂組成物は、上記以外の成分を含んでいても良い。たとえば、銅はくやプリント回路板との密着力の向上、耐湿性の向上のためにエポキシシラン等のシランカップリング剤あるいはチタネート系カップリング剤、消泡剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0023】
次に、本発明に係るカバーレイフィルムについて説明する。
【0024】
本発明のカバーレイフィルムは、上記の樹脂組成物を所定の溶剤に、所定の濃度で溶解したワニスを樹脂フィルムに塗工後80℃以上150℃以下の乾燥を行って作製する。乾燥後の樹脂組成物の厚みについては、用途によって10μm以上100μm以下の範囲になるように塗工する。カバーレイフィルムの場合は乾燥後にその樹脂組成物面にポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレンなどのフィルムを異物混入防止などの理由で離型フィルムとして使用してもよい。
【0025】
ワニスに用いられる溶剤としては、樹脂組成物に対し良好な溶解性を持つものを選択することが好ましい。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、メタノール、エタノール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセロソルブ、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのうち一種または二種以上の混合系を使用することが可能である。
【0026】
樹脂フィルムとしては、例えばポリイミド樹脂フィルム、ポリエーテルイミド樹脂フィルム、ポリアミドイミド樹脂フィルム等のポリイミド系樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム等のポリアミド系樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム等のポリエステル系樹脂フィルムが挙げられる。このうち、弾性率と耐熱性を向上させる観点から、特にポリイミド系樹脂フィルムが好ましく用いられる。
【0027】
樹脂フィルムの厚さは、特に限定されないが、5μm以上50μm以下が好ましく、特に5μm以上25μm以下が好ましい。厚さがこの範囲内であると、特に屈曲性に優れる。
【0028】
溶剤としては、樹脂組成物に対し良好な溶解性を持つものを選択しなければならない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、キシレン、メシチレン、n−ヘキサン、メタノール、エタノール、エチルセルソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどを一種または二種以上の混合系を使用することが可能である。
【0029】
次に本発明に係わる、金属張積層板について説明する。
【0030】
本発明の金属張積層板は、基材の片面または両面にワニスを塗工し乾燥後、熱圧着ロールなどによって金属箔を樹脂組成物面に積層して作製される。
前記金属箔を構成する金属としては、例えば銅および銅系合金、アルミおよびアルミ系合金、鉄および鉄系合金等が挙げられ、銅がより好ましい。
また、基材としては、絶縁性フィルムなどが挙げられ、樹脂フィルムとしては、例えばポリイミド樹脂フィルム、ポリエーテルイミド樹脂フィルム、ポリアミドイミド樹脂フィルム等のポリイミド系樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム等のポリアミド系樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム等のポリエステル系樹脂フィルムが挙げられる。このうち、弾性率と耐熱性を向上させる観点から、特にポリイミド系樹脂フィルムが好ましく用いられる。
【0031】
ワニスに用いる溶剤としては、前述したカバーレイフィルムに用いた溶剤と同様のものを適宜選択すればよい。
【0032】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
樹脂組成分としてビスフェノールA型エポキシ樹脂43重量部(エポキシ当量185、大日本インキ工業製)、硬化剤としてジアミノジフェニルスルホン(三井化学製 3,3−DAS)を4重量部と活性エステル当量が220の反応性エステル基をもつ樹脂(エピクロンEXB-9451大日本インキ工業製)を29重量部、1分子中に10%のリンを含有するリン酸エステルアミドが20重量部、ムーニ粘度48、イオン性不純物400ppmのカルボキシル基含有ゴム(日本ゼオン製、ニポール1072J )が15重量部、およびシランカップリング剤0.5重量部をMEK及びブチルセロソルブとの混合溶剤に樹脂固形分が50%となるように溶解した。
この配合物ワニスを厚み25μmのポリイミドフィルムの片面に樹脂組成物の厚みが乾燥後、10μmとなるようにコンマロールコーターで塗工、120℃5分+150℃5分で乾燥し、次いで圧延銅箔(福田金属箔工業製 18μm厚)を150℃で熱ロールによってラミネート後、反対面にも同様にワニスを塗工、乾燥、圧延銅箔をラミネートした。このものを180℃1時間硬化してフレキシブルプリント回路板用の銅張積層板を得た。
これを通常の回路作成工程(穴あけ、メッキ、DFRラミネート、露光・現像、エッチング、DFR剥離)にて所定の回路作成を行った。
さらには同配合物ワニスを厚み12.5μmのポリイミドフィルムの片面に樹脂組成物の厚みが乾燥後、25μmとなるようにコンマロールコーターで塗工、120℃5分+150℃5分で乾燥しカバーレイフィルムを得た。このカバーレイフィルムの所定位置に開孔部を設け、先に作成した評価用基板の両面の所定位置に160℃1時間の真空プレスにて貼り付けて評価用のフレキシブルプリント回路板を作成した。
【0034】
(実施例2)
実施例1の、ジアミノジフェニルスルホンを18重量部と反応性エステル基をもつ樹脂を4重量部になるように配合した以外は実施例1と同様にして、フレキシブルプリント回路板用の銅張積層板とカバーレイフィルムを得て、評価用のフレキシブルプリント回路板を作製した。
【0035】
(実施例3)
実施例1の、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を25重量部になるように配合した以外は実施例1と同様にして、フレキシブルプリント回路板用の銅張積層板とカバーレイフィルムを得て、評価用のフレキシブルプリント回路板を作製した。
【0036】
(実施例4)
実施例2の、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を25重量部になるように配合した以外は実施例1と同様にして、フレキシブルプリント回路板用の銅張積層板とカバーレイフィルムを得て、評価用のフレキシブルプリント回路板を作製した。
【0037】
(実施例5)
樹脂成分としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を34重量部、硬化剤としてジアミノジフェニルスルホンを12重量部、反応性エステル基をもつ樹脂を15重量部、無機フィラーとして水酸化アルミ(平均粒子径1μm 日本軽金属社製B1403)を25重量部添加して混錬機で分散させ、1分子中に10%のリンを含有するリン酸エステルアミドが20重量部、ムーニ粘度48、イオン性不純物400ppmのカルボキシル基含有ゴム(日本ゼオン製、ニポール1072J )が15重量部、 シランカップリング剤0.5重量部を、MEK及びブチルセロソルブとの混合溶剤に樹脂固形分が50%となるように溶解した。
以下、この配合物ワニスを実施例1と同様にしてフレキシブルプリント回路板用の銅張積層板とカバーレイフィルムを得て、評価用のフレキシブルプリント回路板を作成した。
【0038】
(実施例6)
樹脂組成分としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を45重量部、ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂(エポキシ当量291、日本化薬製NC−3000)38重量部、硬化剤としてジアミノジフェニルスルホン(三井化学製 3,3−DAS)を16重量部と活性エステル当量が220の反応性エステル基をもつ樹脂(エピクロンEXB-9451大日本インキ工業製)を29重量部、リン酸エステルアミドが20重量部、カルボキシル基含有ゴム(日本ゼオン製、ニポール1072J )が15重量部、 およびシランカップリング剤0.5重量部をMEK及びブチルセロソルブとの混合溶剤に樹脂固形分が50%となるように溶解した。
以下、この配合物ワニスを実施例1と同様にしてフレキシブルプリント回路板用の銅張積層板とカバーレイフィルムを得て、評価用のフレキシブルプリント回路板を作成した。
【0039】
(実施例7)
樹脂組成分としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を34重量部、ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂(エポキシ当量291、日本化薬製NC−3000)54重量部、硬化剤としてジアミノジフェニルスルホン(三井化学製 3,3−DAS)を16重量部と活性エステル当量が220の反応性エステル基をもつ樹脂(エピクロンEXB-9451大日本インキ工業製)を29重量部、リン酸エステルアミドが20重量部、カルボキシル基含有ゴム(日本ゼオン製、ニポール1072J )が15重量部、 およびシランカップリング剤0.5重量部をMEK及びブチルセロソルブとの混合溶剤に樹脂固形分が50%となるように溶解した。
以下、この配合物ワニスを実施例1と同様にしてフレキシブルプリント回路板用の銅張積層板とカバーレイフィルムを得て、評価用のフレキシブルプリント回路板を作成した。
【0040】
(比較例1)
樹脂組成分としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を33重量部、2種類の硬化剤を、ジアミノジフェニルスルホン単独で20重量部配合した以外は実施例1と同様にして、フレキシブルプリント回路板用の銅張積層板とカバーレイフィルムを得て、評価用のフレキシブルプリント回路板を作製した。
【0041】
(比較例2)
比較例1の、硬化剤として反応性エステル基をもつ樹脂単独で36重量部配合した以外は実施例1と同様にして、フレキシブルプリント回路板用の銅張積層板とカバーレイフィルムを得て、評価用のフレキシブルプリント回路板を作製した。
【0042】
(比較例3)
比較例1の、硬化剤をノボラックフェノール樹脂(住友ベークライト製PR−53647)単独で16量部配合した以外は実施例1と同様にして、フレキシブルプリント回路板用の銅張積層板とカバーレイフィルムを得て、評価用のフレキシブルプリント回路板を作製した。
【0043】
このようにして得られたフレキシブル回路板を打ち抜き性、成形性、吸湿半田耐熱性、密着性、電気絶縁性、屈曲性、難燃性を評価した。
【0044】
【表1】

【0045】
○打ち抜き性:積層前にカバーレイフィルムをビクより打ち抜いて、その端面を観察して、粉落ちの無いものを○、粉落ちが発生したものを×とした。
○成形性:測定用端子を露出させるために打ち抜いたカバーレイフィルム端部からの最大染み出し量が0.1mm以下で回路間などの埋め込み不良によるボイドの発生の有無を確認して無かったものを○とした。
○吸湿半田耐熱性:JIS規格C5016−10.3に順ずる。フクレ、剥がれのなかったものを○とした。
○密着力:JIS規格C5016−8.1に順ずる。密着力が1.0N/mm以上を◎、0.6N/mm以上1.0N/mm未満を○、0.4N/mm以上0.6N/mm未満を△、0.4N/mm未満を×とした。
○電気絶縁性:L/S=40μm/40μm各5本の櫛型パターンを用い、初期状態および65℃90%50V1000時間処理後の絶縁抵抗値を測定した。初期値、処理後共に絶縁抵抗値が1010以上あったものを○とした。
○屈曲性:IPC法に準じる。R=2mm、1000rpm、ストローク15mmで屈曲回数が1千万回以上のものを◎、500万回以上1千万回未満のものを○、10万回以上500万回未満のものを△、10万回に満たなかったものを×とした。
○耐折性:幅1cmに回路幅及び回路間幅をそれぞれ100μmとした両面板を回路に対して直交方向に180°折り曲げては開き、再度同じ部位を折り曲げては開く。これを繰返し行い、導通抵抗値の変化率が初期値に比べ1%未満を◎、1%以上5%未満を○、5%以上10%未満を△、10%以上を×とした。
*難燃性:UL法に準拠して評価を行った。V−0もしくはVTM−0を◎、V−1もしくはVTM−1を○、それ以下を×とした。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルプリント回路板に用いる樹脂組成物であって、
1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、
アミン系硬化剤と、
活性エステル基を有する硬化剤と、
を併用することを特長とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂は、実質的にハロゲンを含有していない請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂と、前記硬化剤の含有比率が、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量1に対する前記硬化剤の当量比が0.7以上、1.2以下である請求項1ないし2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記請求項3に記載の硬化剤の当量比に対して、アミン系硬化剤と、活性エステル基を有する樹脂の当量比が(0.2:0.8)〜(0.9:0.1)である請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
リン系化合物をさらに含む請求項1ないし4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記リン系化合物のリン含有率が2%以上、15%以下である請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
カルボキシル基含有ゴムをさらに含む請求項1ないし6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記カルボキシル基含有ゴムのムーニー粘度が10以上、80以下である請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記カルボキシル基含有ゴムのイオン性不純物が100ppm以下である請求項7または8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
無機フィラーをさらに含む請求項1ないし9のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記無機フィラーの平均粒子径が0.1μm以上、10μm以下である請求項10に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の樹脂組成物から得られる樹脂フィルム。
【請求項13】
請求項12に記載の樹脂フィルムを、被覆フィルムに積層したカバーレイフィルム。
【請求項14】
請求項12に記載の樹脂フィルムを、基材または金属箔に積層したのち、金属箔または基材と積層接着したフレキシブルプリント回路板用の金属張積層板。


【公開番号】特開2007−211143(P2007−211143A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32813(P2006−32813)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】