説明

樹脂組成物、樹脂成形物、無端状ベルト、ベルト張架装置、および画像形成装置

【課題】樹脂と板状粒子との密着性に優れ、耐摩耗性に優れた樹脂成形物、優れた耐摩耗性を有する画像形成装置用の無端状ベルト、並びに長期にわたり画質に優れた画像を得ることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】ポリアミド系樹脂およびポリイミド系樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂の前駆体と、表面金属酸化物処理が施された板状粒子と、を含有することを特徴とする樹脂組成物、該樹脂組成物を加熱することによって無端状に形成されたことを特徴とする画像形成装置用の無端状ベルト、並びに前記無端状ベルトを備えることを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂成形物、無端状ベルト、ベルト張架装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター、複写機、ファクシミリ等の電子写真方式を用いた画像形成装置では、予め帯電された像保持体上に、画像信号を変調したレーザ等により静電潜像を形成した後、帯電されたトナーによりこの静電潜像を現像してトナー画像を形成する。そして、このトナー画像を、中間転写体を介して、あるいは直接記録媒体に静電的に転写し、記録媒体上に定着することにより画像を形成する。
【0003】
この画像形成装置では、上記中間転写体や、上記記録媒体を搬送する搬送装置、定着装置など、様々な部材に無端状ベルト等の樹脂成形物が用いられている。この樹脂成形物の材料としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート等の耐熱性樹脂を用いたものが知られている。
【0004】
上記樹脂成形物中には、性質を調整する目的で様々な添加剤を添加する試みがなされている。例えば、耐熱性樹脂中に、炭素原子を主骨格とし、繊維径が100nm以下で、アスペクト比が5以上である炭素フィブリルを添加した例が示されている(例えば、特許文献1参照)。また、平均外径0.1μm以下でありアスペクト比5以上である炭素フィブリルを分散させた例が示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、ベルトの外周面の表面抵抗率が、内周面の表面抵抗率よりも大きくなるように、導電性無機粉体を分散した例が示されている(例えば、特許文献3参照)。また、ポリイミド樹脂中に無機ウィスカーを含有した例が示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
更に、表面処理を施した添加剤として、アスペクト比が10以下の無機粒子の表面に、炭素を主成分とする導電性物質を被覆した複合粒子を、熱可塑性樹脂中に添加した例が示されている(例えば、特許文献5参照)。更には、2種の添加剤を用いるものとして、鱗片状、繊維状またはアスペクト比が大きい板状の第1の熱伝導性無機粉末と、球状、アスペクト比が小さい板状または無定形状の第2の熱伝導性無機粉末と、を耐熱性樹脂中に分散含有させる例が示されている(例えば、特許文献6参照)。
【特許文献1】特開2002−214928号公報
【特許文献2】特開2003−156902号公報
【特許文献3】特開2002−283368号公報
【特許文献4】特開2004−66703号公報
【特許文献5】特開2006−154062号公報
【特許文献6】特開平9−328610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、樹脂と板状粒子との密着性に優れ、耐摩耗性に優れた樹脂成形物を得ることができる樹脂組成物、および優れた耐摩耗性を有する樹脂成形物を提供することにある。
また、優れた耐摩耗性を有する画像形成装置用の無端状ベルト、周回駆動などに対しても優れた耐摩耗性を得ることができるベルト張架装置、および長期にわたり画質に優れた画像を得ることができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。
すなわち請求項1に係る発明は、ポリアミド系樹脂およびポリイミド系樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂の前駆体と、表面金属酸化物処理が施された板状粒子と、を含有する樹脂組成物である。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の板状粒子の含有量が、前記前駆体100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下の範囲である樹脂組成物である。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の表面金属酸化物処理に用いられる金属酸化物が導電性を有する樹脂組成物である。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の板状粒子が雲母である樹脂組成物である。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の樹脂組成物を加熱することによって形成された樹脂成形物である。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の樹脂組成物を加熱することによって無端状に形成された画像形成装置用の無端状ベルトである。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の無端状ベルトと、前記無端状ベルトを内面側から回転可能に張架する複数の張架部材と、を備える画像形成装置用のベルト張架装置である。
【0015】
請求項8に係る発明は、請求項6に記載の無端状ベルトを備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、表面金属酸化物処理が施されていない場合に比べて、樹脂と板状粒子との密着性に優れ、耐摩耗性に優れた樹脂成形物を得ることができる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、含有量を考慮しない場合に比べて、樹脂と板状粒子との密着性により優れ、耐摩耗性により優れた樹脂成形物が得られると共に、変形追従するための特性である可とう性の低下を防止し樹脂の有する耐屈曲性を良好に維持することができる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、導電性を考慮しない場合に比べて、可とう性に富んだ形状を持つ粒子を選択して充填することができ、樹脂の有する耐屈曲性を良好に維持することができる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、板状粒子の材料を考慮しない場合に比べて、樹脂の有する耐屈曲性を良好に維持することができる。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、優れた耐摩耗性を得ることができる。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、優れた耐摩耗性を得ることができる。
【0022】
請求項7に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、周回駆動などに対しても優れた耐摩耗性を得ることができる。
【0023】
請求項8に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、長期にわたり画質に優れた画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<樹脂組成物>
まず、好ましい態様である第1の実施形態に係る樹脂組成物について説明する。
第1の実施形態に係る樹脂組成物は、少なくともポリアミド系樹脂前駆体またはポリイミド系樹脂前駆体と、表面金属酸化物処理が施された板状粒子と、を含有してなり、またその他の添加剤を添加することができる。
【0025】
上記表面金属酸化物処理が施された板状粒子は、表面に金属酸化物を有していることから、表面活性作用によりポリアミド系樹脂やポリイミド系樹脂との相性がよく、該樹脂との密着性に優れているものと考えられる。そのため、ポリアミド系樹脂前駆体またはポリイミド系樹脂前駆体と、表面金属酸化物処理が施された板状粒子と、を含有する上記樹脂組成物は、樹脂成形物とした際に、良好な密着性による耐摩耗性の向上を図ることができるものと推察される。
尚、該樹脂組成物は、後述の樹脂成形物の製造に用いることができる。
【0026】
(樹脂)
第1の実施形態に係る樹脂組成物は、前述の通り、少なくともポリアミド系樹脂前駆体またはポリイミド系樹脂前駆体を含有する。ポリアミド系樹脂およびポリイミド系樹脂としては、アミド基またはイミド基を有する樹脂であれば特に制限無く用いることができる。具体例としては、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂等が挙げられる。
ここでは、好ましい例としてポリアミドイミド樹脂前駆体について説明する。
【0027】
−ポリアミドイミド樹脂前駆体−
上記第1の実施形態に係る樹脂組成物には、ポリアミド系樹脂およびポリイミド系樹脂から選択される少なくとも1種の前駆体として、ポリアミドイミド樹脂前駆体を用いることができる。
ポリアミドイミド樹脂前駆体としては、一般に酸無水物基を有する3価のカルボン酸成分と、イソシアネートまたはジアミンと、を使用することができる。前記3価のカルボン酸成分としては、トリメリット酸無水物が好ましい。また、該トリメリット酸無水物と、その他のイソシアネート基またはアミノ基と反応する酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体を併用することができる。好ましい構造としては、以下のものが挙げられる。
【0028】
【化1】



【0029】
ここで、Rは水素、炭素数1以上10以下のアルキル基、フェニル基を示し、Xは−CH−、−CO−、−SO−、または−O−を示す。
【0030】
イソシアネートまたはジアミンと、3価のカルボン酸成分との配合割合は、該酸成分のカルボキシル基および酸無水物基の総数に対するイソシアネート基またはアミノ基の総数比が、0.6以上1.4以下となるようにすることが好ましく、0.7以上1.3以下となるようにすることがより好ましく、0.8以上1.2以下となるようにすることが特に好ましい。
ポリアミドイミド樹脂は、イソシアネートを用いる場合、例えば次の製造法で得ることができる。
【0031】
(1) イソシアネート成分とトリカルボン酸成分とを一度に使用し、反応させてポリアミドイミド樹脂を得る方法。
(2) イソシアネート成分の過剰量と酸成分を反応させて末端にイソシアネート基を有するアミドイミドオリゴマーを合成した後、トリカルボン酸成分を追加し反応させてポリアミドイミド樹脂を得る方法。
(3) トリカルボン酸成分の過剰量とイソシアネート成分を反応させて末端にカルボン酸または酸無水物基を有するアミドイミドオリゴマーを合成した後、該酸成分とイソシアネート成分とを追加し反応させてポリアミドイミド樹脂を得る方法。
【0032】
アミンを用いる場合も上記に示したイソシアネートを用いた製造法を適用して得ることができるが、その他にアミンと、酸成分として三塩基酸無水物モノクロライドと、を反応させることにより得ることもできる。
【0033】
用いる溶媒については、溶解性等の点より極性溶媒が好適に挙げられる。極性溶媒としては、N,N−ジアルキルアミド類が好ましく、具体的には、これの低分子量のものであるN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等が挙げられる。これらは単数または複数併用することができる。
【0034】
このようにして得られるポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、10,000以上50,000以下とすることが好ましい。ここで、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリエチレングリコール(PEG)の検量線を用いて換算した値である。
ここで、上記GPCによる数平均分子量の測定方法について具体的に説明する。GPC本体として東ソー社製のHLC−8120GPCを使用し、カラム温度40℃、ポンプ流量0.4mL/分、検出器としてRI(GPC本体に内蔵されている)を用いる。データ処理は、あらかじめ分子量が既知の標準PEGの検量線(分子量1000以上での検量)を用いて、PEG換算分子量より分子量を得る。
使用カラム:SuperAWM−H+SuperAWM−H+SuperAW3000
移動相:10mM LiBr+N−メチルピロリドン
注入量:20μl
サンプル濃度:0.1%(w/w)
【0035】
(表面金属酸化物処理が施された板状粒子)
第1の実施形態に係る樹脂組成物には、前述の通り、表面金属酸化物処理が施された板状粒子(以下「表面処理板状粒子」と称すことがある)が添加される。
【0036】
−板状粒子−
前記表面処理板状粒子に用いられる板状粒子において、「板状」とは、後述する「アスペクト比」によって定義可能な形状値をもつものを指す。
【0037】
上記表面処理板状粒子は、アスペクト比(最大長/厚み)が、10以上200以下であることが好ましく、更には10以上150以下であることがより好ましく、10以上100以下であることが特に好ましい。
また、その厚みは、0.01μm以上2.00μm以下であることが好ましく、更には0.01μm以上1.00μm以下であることがより好ましく、0.01μm以上0.1μm以下であることが特に好ましい。
【0038】
ここで、上記最大長および厚みは以下のようにして測定することができる。TEM観察により表面処理板状粒子の最大長および厚みをそれぞれ10点計測し、更にこの計測範囲を10箇所で計測して、その平均値として算出する。
尚、上記測定方法において、「最大長」とは、粒子の最も長い幅を指し、また、「厚み」とは、上記最大長に対して直交する方向の粒子の厚さの内最も長いものを表す。
本明細書に記載の数値は、上記方法によって測定した値である。
【0039】
また、上記表面処理板状粒子は、その体積平均粒径が0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、更には0.1μm以上15.0μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上10.0μm以下であることが特に好ましい。
ここで、上記体積平均粒径は、以下の方法によって測定することができる。レーザー回析式粒度分布測定装置(LA−700:堀場製作所製)を用いて、分散液となっている状態の試料を固形分で約2gになるように調整し、これにイオン交換水を添加して、約40mlに調整する。これをセルに適当な濃度になるまで投入し、2分待ってセル内の濃度を安定させた後に測定を行う。得られたチャンネルごとの体積平均粒径を、体積平均粒径の小さい方から累積し、累積50%になったところを体積平均粒径とする。
本明細書に記載の体積平均粒径は、上記方法によって測定した値である。
【0040】
上記表面処理板状粒子に用いられる板状粒子としては、特に限定されるわけではないが、雲母が好ましく用いられる。該雲母の具体例としては、フッ素金雲母、カリウム4珪素雲母、ナトリウム4珪素雲母、ナトリウムテニオライト、リチウムテニオライトなどの合成雲母、金雲母、白雲母やセリサイト等の天然雲母等が挙げられる。
【0041】
−表面金属酸化物処理−
上記板状粒子に施される表面金属酸化物処理について説明する。上記表面金属酸化物処理とは、上述の板状粒子表面を金属酸化物で被覆する処理をさす。
用いられる金属酸化物としては、、酸化錫、アンチモンドープされた酸化錫、酸化チタン、酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0042】
また、表面金属酸化物処理を施す際に、金属酸化物として導電性を有するものを用いることにより、上記表面処理板状粒子に導電剤としての機能を付加することができる。これにより、上記第1の実施形態に係る樹脂組成物を用いて作製される樹脂成形物が、導電性を有することを求められる場合、一般的に用いられる導電性フィラー等の導電剤の添加を削減することができる。また併せて、上記導電性フィラー等を充填し過ぎることによって生じる、耐屈曲性の低下や表面粗さの増加等の問題を解決することができる。
尚、上記「導電性」とは体積抵抗率が10Ω・cm未満を意味する。
【0043】
導電性を付与する金属酸化物をしては、アンチモンドープされた酸化錫が好適である。
【0044】
表面処理板状粒子の含有量としては、ポリアミド系樹脂および/またはポリイミド系樹脂(前記樹脂前駆体の固形分)100質量部に対して、固形分で5質量部以上50質量部以下であることが好ましく、10質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、30質量部以上50質量部以下であることが特に好ましい。
【0045】
(その他の添加剤)
第1の実施形態に係る樹脂組成物には種々の添加剤を添加することができる。例えば、上記の構成成分の他にその特性を損なわない限りにおいて、離型剤、帯電防止剤、光安定剤、酸化防止剤、補強剤、軟化剤、発砲剤、染顔料、および無機充填剤等を添加することができる。
また、表面処理板状粒子の金属酸化物として導電性を有するものを用いる場合においても、併せてその他の導電剤を含有することもきる。上記導電剤としては、例えば、電子伝導性の導電剤として、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、黒鉛、炭素繊維等の炭素材料;アルミニウム、マグネシウム等金属粉;金属繊維等の金属材料;表面処理された金属酸化物粉;等を挙げることができる。また、イオン伝導性の導電剤として、過酸化リチウム等のアルカリ金属過酸化物;過塩素酸リチウム等の過塩素酸塩;テトラブチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩;燐酸エステル塩;等を挙げることができる。但し、導電剤としては上記に限定されるものではない。
【0046】
(樹脂組成物の製造方法)
第1の実施形態に係る樹脂組成物は、上記各構成成分をタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機で混合することにより製造することができる。樹脂組成物の製造においては、各構成成分の混合方法、混合の順序は特に限定されるものではない。一般的な方法としては、全構成成分を予めタンブラー、Vブレンダー等で混合し、その混合物を押出機によって溶融混合する方法であるが、構成成分の形状に応じて、前記構成成分中の2種以上の溶融混合物に、残りの構成成分を溶融混合する方法を用いることもできる。
【0047】
<樹脂成形物>
前述のようにして得られた第1の実施形態に係る樹脂組成物を加熱成形することにより、ポリアミド系樹脂またはポリイミド系樹脂と、表面処理板状粒子と、を少なくとも含有する樹脂成形物を作製することができる。該樹脂成形物としては、画像形成装置に用いられる無端状ベルト、ロール部材等が挙げられる。また、画像形成装置以外の用途としては、工業用品等に用いられるクラシックギヤや軸受けなどの摺動部材等が挙げられる。
尚、上記樹脂成形物は、用途、機能等に応じて、材質、形状、大きさ等を設定することができる。
【0048】
−画像形成装置用の無端状ベルト−
次いで、好ましい態様である第2の実施形態に係る画像形成装置用の無端状ベルトについて説明する。該無端状ベルトは、画像形成装置における転写部材(中間転写部材、用紙搬送部材等)、帯電部材、現像部材、定着部材等に用いられる無端状ベルトとして広く使用することができる。
【0049】
(無端状ベルトの製造方法)
第2の実施形態に係る無端状ベルトの製造は、例えば、ブラスト加工され離型剤が予め塗布された円筒状の芯体(以下、円筒状芯体と称する)表面に、前記第1の実施形態に係る樹脂組成物を含んでなる塗布溶液を塗布して、塗膜を形成する塗膜形成工程と、該塗膜を加熱乾燥および加熱反応させて管状体を形成する管状体形成工程と、管状体を前記円筒状芯体から剥離する剥離工程と、を経ることによって行うことができる。また、必要に応じて他の工程を有していてもよい。
【0050】
以下、第2の実施形態に係る無端状ベルトの製造方法を、工程毎に分けて説明する。
(1)塗膜形成工程
塗膜形成工程において、上記塗布溶液を塗布する円筒状芯体の表面は、ブラスト、切削、サンドペーパーがけ等の粗面化方法を用いることにより、算術平均粗さRaで0.2μm以上2μm以下の範囲に粗面化されていることが好ましい。
【0051】
また、円筒状芯体の表面には離型性が付与されていることが好ましい。離型性を付与するには、フッ素系樹脂やシリコーン樹脂で円筒状芯体を被覆する方法や、円筒状芯体表面に離型剤を塗布する方法等を用いることができる。
【0052】
円筒状芯体に塗布溶液を塗布する方法としては、円筒状芯体を塗布溶液に浸漬して上昇させる(引き上げる)浸漬塗布法、その際に環状体により膜厚を制御する環状塗布法、円筒状芯体を回転させながら表面に塗布溶液を吐出する流し塗り(フローコーティング)法、その際にブレードで皮膜をメタリングするブレード塗布法など、公知の方法が採用できる。尚、上記「円筒状芯体表面に塗布する」とは、円筒状芯体の表面に層を有する場合は、その層の表面に塗布することをいう。また、「円筒状芯体を上昇」とは、塗布時の液面との相対関係であり、「円筒状芯体を停止し、塗布液面を下降」させる場合を含む。
上記塗布方法の中でも、流し塗り(フローコーティング)法およびブレード塗布法がより好ましい。
【0053】
(2)管状体形成工程
この工程においては、前記塗膜を加熱乾燥および加熱反応させて、円筒状芯体表面に管状体を形成する。なお、該管状体とは、塗膜から溶剤を除去し加熱反応させた膜を意味する。
【0054】
まず、管状体形成工程において、塗膜中に存在する溶剤を除去する目的で、静置しても塗膜が変形しない程度の加熱乾燥を行う。加熱条件としては、例えばポリアミドイミド樹脂を用いる場合であれば、100℃以上180℃以下の温度範囲で15分間以上60分間以下であることが好ましい。また、例えばポリイミド樹脂を用いる場合であれば、120℃以上200℃以下の温度範囲で60分間以上であることが好ましい。
上記温度範囲の中でも、温度が高いほど加熱時間は短くてよい。また、加熱することに加え、風を当てることも有効である。加熱は、段階的に温度を上昇させても、定速度で温度を上昇させてもよい。
【0055】
なお、上記加熱乾燥は、塗膜中に20質量%以上50質量%以下の溶剤を残留させておくことが好ましい。
【0056】
塗膜を加熱乾燥させてから加熱反応までは、連続的に行えばよいが、途中で一旦、温度を低下させてもよい。ここで、「温度を低下させる」とは、加熱乾燥により加熱された状態となっている塗膜を、円筒状芯体ごと冷却し、温度を低下させることをいう。温度を低下させることは、溶剤を除去する加熱乾燥装置と塗膜を加熱反応させる加熱反応装置とが異なっている場合に有効である。
前記加熱乾燥装置と加熱反応装置とが一体である場合には、一旦温度を低下させることは不要である。
【0057】
管状体形成工程において、上述の加熱乾燥の後、塗膜を加熱反応(焼成)させることで、管状体を形成することができる。加熱反応(焼成)の際の加熱条件としては、例えばポリアミドイミド樹脂を用いる場合であれば、200℃以上280℃以下の温度範囲で60分間以上180分間以下であることが好ましい。また、例えばポリイミド樹脂を用いる場合であれば、300℃以上400℃以下の温度範囲で100分間以上240分間以下であることが好ましい。
加熱反応の際には、加熱の最終温度に達する前に可能な限り残留溶剤を除去することが好ましく、具体的には、加熱前に150℃以上250℃以下の温度範囲で30分間以上100分間以下加熱乾燥して残留溶剤を除去し、続けて、温度を段階的、または定速度で徐々に上昇させて加熱し、管状体形成することが好ましい。
【0058】
(3)剥離工程
加熱反応(焼成)後、円筒状芯体を冷却し、形成された管状体を剥離する本工程を経ることで、第2の実施形態に係る無端状ベルトを得ることができる。
円筒状芯体には、予め離型剤が塗布されているので、管状体の内周面と円筒状芯体の外周面とが直接接することはなく、円筒状芯体から管状体を容易に剥離して画像形成装置用の無端状ベルトを得ることができる。
【0059】
なお、抜き取られた無端状ベルトには、その両端の不要部分を切断する工程、さらには、穴あけ(パンチング)加工、リブ付け加工等を施す工程を設けることができる。
【0060】
(表面抵抗率)
前記第2の実施形態に係る画像形成装置用の無端状ベルトを、転写部材(中間転写部材、用紙搬送部材等)、帯電部材、現像部材等として用いる場合、導電性を有することが求められる。具体的には、無端状ベルトの表面抵抗率が1.0×10Ω/□以上1.0×1015Ω/□以下であることが好ましく、1.0×1010Ω/□以上1.0×1015Ω/□以下であることがより好ましい。
尚、表面抵抗率の制御は、前述の通り、第1の実施形態に係る樹脂組成物中における表面処理板状粒子として導電性を有するものを用いること、更にはそれに加えてその他の導電剤を添加することによって行うことができる。
【0061】
上記表面抵抗率の測定は、図1に示す円形電極を用いて測定することができ、本明細書に記載の値は下記方法によって測定したものである。
図1は、表面抵抗を測定する円形電極の一例を示す概略平面図(a)及び概略断面図(b)である。図1に示す円形電極は、第一電圧印加電極Aと板状絶縁体Bとを備える。第一電圧印加電極Aは、円柱状電極部Cと、該円柱状電極部Cの外径より大きい内径を有し、かつ円柱状電極部Cを一定の間隔で囲む円筒上のリング状電極部Dとを備える。第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと板状絶縁体Bとの間に測定対象となる無端状ベルトTを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cとリング状電極部Dとの間に電圧V(V)を印可したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式(1)により、無端状ベルトTの表面抵抗率ρs(Ω/□)を算出することができる。
式(1)ρs=π×(D+d)/(D−d)×(100(V)/I)
ここで、上記式(1)中、d(mm)は円柱状電極部Cの外径を、D(mm)はリング状電極部Dの内径を示す。なお、前記表面抵抗率の測定は22℃、55%RHの環境で行った。
【0062】
<画像形成装置>
次いで、好ましい態様である第3の実施形態に係る画像形成装置について、以下に図面を用いて詳細に説明する。
図2に示す画像形成装置80は、像保持体30の表面に、BK(ブラック)トナーにより現像を行うための現像装置44、Y(イエロー)トナーにより現像を行うための現像装置38、M(マゼンタ)トナーにより現像を行うための現像装置40、C(シアン)トナーにより現像を行うための現像装置42を有し、また、これら現像装置の下流側(像保持体30の駆動方向(矢印F)の下流側)の像保持体30表面に中間転写体10が接している。中間転写体10は、その内面側に以下の順序で反時計回りに設けられた、支持ロール48、支持ロール50、バックアップローラ56および支持ロール54により張架され、画像形成装置用のベルト張架装置90を形成している。
また、像保持体30の中間転写体10を挟んで対向する位置には導電性ローラ52が設けられ、一次転写部を形成している(前記「導電性」とは体積抵抗率が10Ω・cm未満を意味する)。また、前記バックアップローラ56には圧接して回転する電極ローラ58が設けられており、バックアップローラ56の中間転写体10を挟んで対向する位置には転写電極であるバイアスローラ34が設けられ、二次転写部を形成している。前記バイアスローラ34には、クリーニングブレード70が接触配置されている。二次転写部に供給される記録媒体68は記録媒体貯留部36に貯留され、記録媒体貯留部36に貯留されている記録媒体68をピックアップしてフィードローラ64の設置位置へ案内するためのピックアップローラ66を備えている。また、中間転写体10表面におけるバイアスローラ34の下流側(中間転写体10の駆動方向(矢印G)の下流側)には記録媒体68を剥離するための剥離爪62、更に下流には残留トナーを除去するためのベルトクリーナー46が、何れも接離可能に配置されている。
尚、図2に示す画像形成装置80は、中間転写体10として、前述の第2の実施形態に係る無端状ベルトが用いられている。
【0063】
次いで、上記画像形成装置80の動作について説明する。
画像形成装置80において、像保持体30は矢印F方向に回転され、図示しない帯電装置によりその表面が帯電される。帯電された像保持体30上が、図示しないレーザ書込み装置等の画像書込装置によって走査露光され、第一色(例えばBK)の静電潜像が像保持体30上に形成される。この静電潜像は現像装置44によって現像されて可視化されたトナー像Tが像保持体30上に形成される。トナー像Tが、像保持体30の回転により導電性ローラ52の配置された一次転写部に到ると、導電性ローラ52によりトナー像Tに逆極性の電界が作用され、トナー像Tが静電的に中間転写体10に吸着されつつ中間転写体10の矢印G方向の回転により一次転写される。
【0064】
以下、上記に記載の動作によって、第2色のトナー像、第3色のトナー像、第4色のトナー像が順次像保持体30上に形成された後に、中間転写体10において重ね合わせられて、多色トナー像が形成される。尚、この際に用いられるトナーは一成分系のものでもよいし二成分系のものでもよい。
【0065】
中間転写体10に転写された多色トナー像は、中間転写体10の回転によってバイアスローラ34が設置された二次転写部に到る。
【0066】
記録媒体68は、記録媒体貯留部36からピックアップローラ66により一枚ずつ取り出され、フィードローラ64により中間転写体10とバイアスローラ34とに挟まれた二次転写部に所定のタイミングで給送される。給送された記録媒体68には、バイアスローラ34およびバックアップローラ56による圧接搬送と中間転写体10の回転により、中間転写体10に保持された多色トナー像が転写される。
【0067】
多色トナー像の転写は、バイアスローラ34と中間転写体10とを介して対向配置されたバックアップローラ56に圧接されている電極ローラ58に多色トナー像の極性と同極性の転写電圧を印加することにより、多色トナー像を記録媒体68へ静電反発により転写する。以上のようにして、記録媒体68上に画像を形成することができる。
【0068】
多色トナー像が転写された記録媒体68は、剥離爪62により中間転写体10から剥離され、図示しない定着装置に搬送され、加圧/加熱処理で多色トナー像を固定して永久画像とされる。尚、多色トナー像の記録媒体68への転写が終了した中間転写体10は、ベルトクリーナー46により残留トナーが除去される。また、バイアスローラ34には、ポリウレタン製のクリーニングブレード70が接触するように設けられており、転写により付着したトナー粒子や紙紛等の異物が除去される。
【0069】
単色画像の転写の場合、一次転写されたトナー像Tをそのまま二次転写して定着装置に搬送するが、複数色の重ね合わせによる多色画像の転写の場合、各色のトナー像が一次転写部で正確に重なり合うように中間転写体10と像保持体30との回転を同期させて各色のトナー像がずれないように中間転写体10の回転および像保持体30の回転が制御される。
【0070】
ここでは、一時転写を繰り返すカラー画像形成装置80について説明したが、前述の第2の実施形態に係る無端状ベルトは、この他の態様の画像形成装置にも用いることができる。例えば、現像装置内に単色のトナーを収容する通常のモノカラー画像形成装置や、各色の現像装置を備えた複数の像保持体を中間転写体上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。尚、以下において「部」は「質量部」を表す。
【0072】
[無端状ベルトの実施例]
<実施例1>
−無端状ベルト1の作製−
まず、導電性を有する板状粒子として、表面をアンチモンドープ酸化錫で処理した板状マイカ(メルクジャパン社製:ミナテック40CM、アスペクト比100、厚み0.04μm、体積平均粒径4μm)を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)100部に対して20部加えホモジナイザーを用いて5000rpm/20分間攪拌混合させ、表面処理板状マイカ溶液1を得た。次いで、NMPに溶解されているポリアミドイミドワニス(東洋紡社製:バイロマックス16NN、固形分15質量%)に前記表面処理板状マイカ溶液1を、ポリアミドイミドワニスの固形分量100部に対して表面処理板状マイカの固形分量が20部となるように加え、遠心混合機(キーエンス社製)にて30分間攪拌混合を行い、表面処理板状マイカ含有ポリアミドイミドワニス1を得た。
【0073】
次いで、無端状ベルト製造用の円筒状芯体を準備した。中空構造で厚さ4mmのアルミ製円筒部材を用い、表面にブラスト処理を施して表面粗さRa=0.5μmとした。次いで、表面にシリコーン樹脂製の離型剤(信越化学社製:SEPA−COAT)をスプレー塗布し、320℃にて60分間焼成処理し、離型層を形成して、円筒状芯体を作製した。
【0074】
得られた表面処理板状マイカ含有ポリアミドイミドワニス1を、フローコーティング方式によって上記円筒状芯体に塗布し、乾燥炉に移して120℃にて20分間乾燥させ、その後250℃まで60分間加熱焼成、30分間250℃にて温度保持した後に40℃まで冷却させ、円筒状芯体と形成された無端状の膜の隙間にエアーを吹き込むことによって無端状膜を脱型し、所定の幅にカットして、厚さ82μmの無端状ベルト1を得た。該無端状ベルト1の表面抵抗率は9.0×1012Ω/□であった。
【0075】
[評価]
−引張弾性率−
得られた無端状ベルト1を、JIS−K7113(2002年)に基づき、引張試験機(東洋精機社製、商品名:ストログラフ)にて、サンプル幅5mm、チャック間距離50mm、引張速度10mm/分で、引張試験を実施し、引張弾性率(Mpa)を測定した。
【0076】
−耐屈曲性−
JIS−P8115(2002年)に基づき、上記無端状ベルト1をサンプル幅13.5mm、サンプル長さ150mmにカットし、荷重1kgfにて屈曲試験を実施し、耐屈曲性(回数)を評価した。
【0077】
−実機耐久性−
上記無端状ベルト1を、DocuCenterColor−400CP(富士ゼロックス社製)の転写ベルトとして組み込み、最大で500k枚までの用紙走行試験を実施した。得られた画像を評価し、画像不良が発生した時点でのベルトの状態を確認し、破断等が発生している場合にはそこで試験を終了した。
【0078】
−スラスト磨耗試験−
上記無端状ベルト1から、50mm×50mmの試験フィルムを切り出し、金属(S45C材)からなるドーナツ型圧接子を、下記条件にて加重を掛けつつ回転させて摺動させる。試験前後の試験フィルムの質量を測定して磨耗量(mg)を算出した。摩耗量が少ないほど耐磨耗性に優れている。
ドーナツ型圧接子の外径25mm、内径22mm、径差3mm、表面粗さ1μm
回転数400rpm、加重2kgf、時間15分
【0079】
<実施例2>
表面処理板状マイカ溶液1の添加量を、ポリアミドイミドワニスの固形分量100部に対して表面処理板状マイカの固形分量が10部となるように変更した以外は、実施例1に記載の方法により無端状ベルト2を作製した。該無端状ベルト2の表面抵抗率は1.0×1014Ω/□であった。また実施例1に記載の評価を行った。
【0080】
<実施例3>
表面処理板状マイカ溶液1の添加量を、ポリアミドイミドワニスの固形分量100部に対して表面処理板状マイカの固形分量が50部となるように変更した以外は、実施例1に記載の方法により無端状ベルト3を作製した。該無端状ベルト3の表面抵抗率は5.5×1010Ω/□であった。また実施例1に記載の評価を行った。
【0081】
<実施例4>
表面処理板状マイカ溶液1の添加量を、ポリアミドイミドワニスの固形分量100部に対して表面処理板状マイカの固形分量が55.0部となるように変更した以外は、実施例1に記載の方法により無端状ベルト4を作製した。該無端状ベルト4の表面抵抗率は8.8×10Ω/□であった。また実施例1に記載の評価を行った。
【0082】
<実施例5>
表面処理板状マイカ溶液1の添加量を、ポリアミドイミドワニスの固形分量100部に対して表面処理板状マイカの固形分量が4.0部となるように変更した以外は、実施例1に記載の方法により無端状ベルト5を作製した。該無端状ベルト5の表面抵抗率は5.1×1015Ω/□であった。また実施例1に記載の評価を行った。
【0083】
<実施例6>
導電性を有する板状粒子(表面をアンチモンドープ酸化錫で処理した板状マイカ)に替えて、導電性を有しない板状粒子として、表面を酸化チタンで処理した板状マイカ(メルクジャパン社製、商品名:イリオジン、アスペクト比80、厚み0.10μm、体積平均粒径7μm)を用い、ポリアミドイミドワニスの固形分量100部に対して表面を酸化チタンで処理した板状マイカの固形分量が20部となるように加えた。また、導電剤として、カーボンブラック(電気化学工業社製、商品名:デンカブラック)を、ポリアミドイミドワニスの固形分量100部に対して、固形分量が20部となるように加えた以外は、実施例1に記載の方法により無端状ベルト6を作製した。該無端状ベルト6の表面抵抗率は3.5×1012Ω/□であった。また実施例1に記載の評価を行った。
【0084】
<比較例1>
表面処理板状マイカ溶液1を添加せず、且つ導電剤としてカーボンブラック(電気化学工業社製、商品名:デンカブラック)を、ポリアミドイミドワニスの固形分量100部に対して、固形分量が20部となるように加えた以外は、実施例1に記載の方法により無端状ベルト7を作製した。該無端状ベルト7の表面抵抗率は8.8×1011Ω/□であった。また実施例1に記載の評価を行った。
【0085】
<比較例2>
導電性を有する板状粒子(表面をアンチモンドープ酸化錫で処理した板状マイカ)に替えて、導電性を有しないマイカ(コープケミカル社製、商品名:ミクロマイカ、アスペクト比30、厚み0.06μm、体積平均粒径2μm)を用い、且つ導電剤として、カーボンブラック(電気化学工業社製、商品名:デンカブラック)を、ポリアミドイミドワニスの固形分量100部に対して、固形分量が20部となるように加えた以外は、実施例1に記載の方法により無端状ベルト8を作製した。該無端状ベルト8の表面抵抗率は5.8×1012Ω/□であった。また実施例1に記載の評価を行った。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
以下に、本発明の好ましい態様を示す。まず、本発明の樹脂組成物は、
<1> ポリアミド系樹脂およびポリイミド系樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂の前駆体と、表面金属酸化物処理が施された板状粒子と、を含有する樹脂組成物である。該構成とすることにより、表面金属酸化物処理が施されていない場合に比べて、樹脂と板状粒子との密着性に優れ、耐摩耗性に優れた樹脂成形物を得ることができる。
<2> 前記板状粒子の含有量が、前記前駆体100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下の範囲である前記<1>に記載の樹脂組成物である。該構成とすることにより、含有量を考慮しない場合に比べて、樹脂と板状粒子との密着性により優れ、耐摩耗性により優れた樹脂成形物が得られると共に、変形追従するための特性である可とう性の低下を防止し樹脂の有する耐屈曲性を良好に維持することができる。
<3> 前記表面金属酸化物処理に用いられる金属が導電性を有する前記<1>または<2>に記載の樹脂組成物である。該構成とすることにより、導電性を考慮しない場合に比べて、可とう性に富んだ形状を持つ粒子を選択して充填することができ、樹脂の有する耐屈曲性を良好に維持することができる。
<4> 前記板状粒子が雲母である前記<1>〜<3>の何れか1項に記載の樹脂組成物である。該構成とすることにより、板状粒子の材料を考慮しない場合に比べて、雲母自体が可とう性にとんだ性質を有し、樹脂の有する耐屈曲性を良好に維持することができる。
【0089】
また、本発明の樹脂成形物は、
<5> 前記<1>〜<4>の何れか1項に記載の樹脂組成物を加熱することによって形成された樹脂成形物である。該構成とすることにより、本構成を有しない場合に比べて、優れた耐摩耗性を得ることができる。
【0090】
また、本発明の画像形成装置用の無端状ベルトは、
<6> 前記<1>〜<4>の何れか1項に記載の樹脂組成物を加熱することによって無端状に形成された画像形成装置用の無端状ベルトである。該構成とすることにより、本構成を有しない場合に比べて、優れた耐摩耗性を得ることができる。
<7> 表面抵抗率が1.0×10Ω/□以上1.0×1015Ω/□以下である前記<6>に記載の画像形成装置用の無端状ベルトである。該構成とすることにより、表面抵抗率を考慮しない場合に比べて、優れた導電性を付与することができる。
【0091】
また、本発明のベルト張架装置は、
<8> 前記<6>または<7>に記載の無端状ベルトと、前記無端状ベルトを内面側から回転可能に張架する複数の張架部材と、を備える画像形成装置用のベルト張架装置である。該構成とすることにより、本構成を有しない場合に比べて、周回駆動などに対しても優れた耐摩耗性を得ることができる。
【0092】
また、本発明の画像形成装置は、
<9> 前記<6>または<7>に記載の無端状ベルトを備える画像形成装置である。該構成とすることにより、本構成を有しない場合に比べて、長期にわたり画質に優れた画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】表面抵抗率を測定する円形電極の一例を示す概略平面図(a)及び概略断面図(b)である。
【図2】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0094】
10 中間転写体
30 像保持体
34 バイアスローラ
36 記録媒体貯留部
38、40、42、44 現像装置
46 ベルトクリーナー
48、50、54 支持ロール
52 導電性ローラ
56 バックアップローラ
58 電極ローラ
62 剥離爪
64 フィードローラ
66 ピックアップローラ
68 記録媒体
70 クリーニングブレード
80 画像形成装置
90 ベルト張架装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系樹脂およびポリイミド系樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂の前駆体と、表面金属酸化物処理が施された板状粒子と、を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記板状粒子の含有量が、前記前駆体100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記表面金属酸化物処理に用いられる金属酸化物が導電性を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記板状粒子が雲母であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の樹脂組成物を加熱することによって形成されたことを特徴とする樹脂成形物。
【請求項6】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の樹脂組成物を加熱することによって無端状に形成されたことを特徴とする画像形成装置用の無端状ベルト。
【請求項7】
請求項6に記載の無端状ベルトと、前記無端状ベルトを内面側から回転可能に張架する複数の張架部材と、を備えることを特徴とする画像形成装置用のベルト張架装置。
【請求項8】
請求項6に記載の無端状ベルトを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−108133(P2009−108133A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279269(P2007−279269)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】