説明

樹脂組成物

【課題】 硬化物の誘電正接が低く、かつ加速環境試験後の導体との密着強度が優れた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
(A)エポキシ樹脂、(B)シアネートエステル樹脂、(C)活性エステル硬化剤、及び(D)硬化促進剤を含有することを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層プリント配線板等の絶縁層形成に好適な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピューターや情報通信機器は近年ますます高性能・高機能化し、大量のデータを高速で処理する為に、扱う信号が高周波化する傾向にある。特に携帯電話や衛星放送に使用される電波の周波数領域はGHz帯の高周波領域のものが使用されており、高周波数化による伝送損失を抑制するため、高周波領域で使用する有機絶縁材料として、比誘電率及び誘電正接が低い材料が望まれていた。多層プリント配線板の絶縁層に使用する樹脂組成物としては、シアネートエステル樹脂を含有する樹脂組成物が誘電特性に優れた絶縁層を形成できることが知られており、例えば、特許文献1、2には、シアネートエステル樹脂、エポキシ樹脂等を含有する多層プリント配線板用の樹脂組成物が開示されているが、その誘電正接の低さは必ずしも十分と言えるものでは無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2003/099952号パンフレット
【特許文献2】国際公開2008/044766号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、多層プリント配線板の絶縁層形成に好適な樹脂組成物であって、絶縁層の誘電正接が低く、高温高湿下での環境試験前後で導体層と絶縁層の密着性をより安定的に保つことができる、樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、(A)エポキシ樹脂、(B)シアネートエステル樹脂、(C)活性エステル硬化剤、及び(D)硬化促進剤を含有する樹脂組成物が、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は以下の内容を含むものである。
【0006】
[1](A)エポキシ樹脂、(B)シアネートエステル樹脂、(C)活性エステル硬化剤及び(D)硬化促進剤を含有することを特徴とする樹脂組成物。
[2](D)硬化促進剤が、金属系硬化促進剤及び、アミン系硬化促進剤、及びイミダゾール系硬化促進剤から選ばれた1種以上である上記[1]記載の樹脂組成物。
[3](D)硬化促進剤が、コバルト 、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、及びスズから選択される1種以上の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩からなる金属系硬化促進剤である、上記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]樹脂組成物の不揮発分を100質量%とした場合、(A)エポキシ樹脂の含有量が5〜60質量%、(B)シアネートエステル樹脂の含有量が5〜50質量%、(C)活性エステル硬化剤の含有量が2〜20質量%である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5](D)硬化促進剤が金属系硬化促進剤を含み、樹脂組成物の不揮発分を100質量%とした場合、該金属系硬化促進剤に基づく金属の含有量が25〜500ppmである上記[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6](D)硬化促進剤がアミン系硬化促進剤及び/又はイミダゾール系硬化促進剤を含み、樹脂組成物の不揮発分を100質量%とした場合、該アミン系硬化促進剤及び/又はイミダゾール系硬化促進剤の含有量が0.05〜3質量%である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]シアネートエステル基とエポキシ基との比率が1:0.4〜1:2、エステル基とエポキシ基との比率が1:2〜1:20である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]さらに(E)無機充填材を含有する上記[1]〜[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]無機充填材がタルク及びシリカである上記[8]記載の樹脂組成物。
[10]樹脂組成物の不揮発分を100質量%とした場合、タルクとシリカの含有量の合計が35質量%〜70質量%であり、かつ、タルクの含有量が5質量%〜20質量%である上記[9]記載の樹脂組成物。
[11]さらに(F) ビニルベンジル化合物を含有する、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[12]樹脂組成物の不揮発分を100質量%とした場合、(F)ビニルベンジル化合物の含有量が2〜50質量%である、上記[11]記載の樹脂組成物。
[13]さらに(G)ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、及びポリエステル樹脂から選択される1種以上の高分子化合物を含有する、上記[1]〜[12]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[14]樹脂組成物の不揮発分を100質量%とした場合、(G)高分子化合物の含有量が1〜20質量%である、上記[13]記載の樹脂組成物。
[15]
誘電正接特性が0.004〜0.009であり、環境試験前後の密着強度低下率が0%〜59%であることを特徴とする、上記[1]〜[14]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[16]上記[1]〜[15]のいずれかに記載の樹脂組成物が支持体上に層形成された接着フィルム。
[17]上記[1]〜[15]のいずれかに記載の樹脂組成物がシート状補強基材中に含浸されたプリプレグ。
[18]上記[1]〜[15]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物により絶縁層が形成された多層プリント配線板。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、多層プリント配線板の絶縁層形成に好適な樹脂組成物であって、樹脂組成物により形成される絶縁層が、低誘電正接であり、加速環境試験後における絶縁層と導体層の密着性が優れた樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)シアネートエステル樹脂、(C)活性エステル硬化剤及び(D)硬化促進剤を含有することを特徴とする樹脂組成物である。
【0009】
[(A)エポキシ樹脂]
本発明において使用されるエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができる。エポキシ樹脂は1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。エポキシ樹脂としては、耐熱性、絶縁信頼性、金属膜との密着性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、特に下記一般式(1)で表されるナフトール型エポキシ樹脂が好ましい。
【0010】
【化1】

【0011】
(式(1)中、nは平均値として1〜6の数を示し、Xはグリシジル基又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、炭化水素基/グリシジル基の比率は0.05〜2.0である。)エポキシ樹脂中の平均値としての炭化水素基とグリシジル基の比率は、炭化水素基/グリシジル基=0.05〜2.0の範囲であり、好ましくは0.1〜1.0の範囲である。Xが炭素数1〜8の炭化水素基を示す場合の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、プロパルギル基、ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。式(1)で表されるナフトールエポキシ樹脂は特開2006−160868記載の公知の樹脂であり、該公報記載の製法に従って製造することができる。
【0012】
市販されているエポキシ樹脂としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」(液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、DIC(株)製「HP4032」、「HP4032D](ナフタレン型2官能エポキシ樹脂)、DIC(株)製「HP4700」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、東都化成(株)製「ESN−475V」「ESN−185V」(ナフトール型エポキシ樹脂)、ダイセル化学工業(株)製「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)、日本化薬(株)製「NC3000H」、「NC3000L」、「NC3100」、「NC3000」、「NC3000FH−75M」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX4000」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX8800」(アントラセン骨格含有型エポキシ樹脂)などが挙げられる。
【0013】
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、好ましくは5〜60質量%であり、より好ましくは10〜50質量%である。エポキシ樹脂の含有量が少なすぎると、下地導体層との密着強度が低下する傾向にあるし、エポキシ樹脂の含有量が多すぎると、相対的にシアネートエステル樹脂の含有量が減少するため、誘電正接が増大する傾向にある。
【0014】
[(B)シアネートエステル樹脂]
本発明において使用されるシアネートエステル樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、ノボラック型(フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型など)シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型など)シアネートエステル樹脂、及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。シアネートエステル樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、好ましくは500〜
4500であり、より好ましくは600〜3000である。
【0015】
シアネートエステル樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニ
ル)チオエーテル、ビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ジシクロペンタジエン構造含有フェノール樹脂等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル樹脂は1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
市販されているシアネートエステル樹脂としては、下式(2)で表されるフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製、PT30、シアネート当量124)、下式(3)で表されるビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー(ロンザジャパン(株)製、BA230、シアネート当量232)、下式(4)で表されるジシクロペンタジエン構造含有シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製、DT−4000、DT−7000)等が挙げられる。
【0017】
【化2】

[式(2)中、nは平均値として任意の数(好ましくは0〜20)を示す。]
【0018】
【化3】

【化4】

(式(4)中、nは平均値として0〜5の数を表す。)
【0019】
樹脂組成物中のシアネートエステル樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、好ましくは5〜50質量%であり、より好ましくは7〜40質量%であり、更に好ましくは10〜30質量%である。シアネートエステル樹脂の含有量が少なすぎると、耐熱性が低下する傾向、誘電正接が増加する傾向にある。シアネートエステル樹脂の含有量が多すぎると、下地導体層と絶縁層の密着強度が低下する傾向にある。
【0020】
シアネートエステル樹脂のシアネート当量と、エポキシ樹脂のエポキシ当量との比は、好ましくは1:0.4〜1:2であり、より好ましくは1:0.5〜1:1.5であり、更に好ましくは1:0.6〜1:1.1である。当量比が1:0.4よりも少ない場合は、下地導体層と絶縁層の密着強度が低化する傾向があり、当量比が1:2よりも多い場合は、誘電正接が上昇する傾向にある。
【0021】
[(C)活性エステル硬化剤]
本発明において使用される活性エステル硬化剤は、フェノールエステル化合物、チオフェノールエステル化合物、N−ヒドロキシアミンエステル化合物、複素環ヒドロキシ化合物のエステル化化合物等の反応活性の高いエステル基を有し、エポキシ樹脂の硬化作用を有するものをいう。特に、1分子中に2個以上のフェノール性ヒドロキシ基を有する化合物とカルボン酸誘導体からなるフェノールエステル化合物が好ましく、このようなフェノールエステル化合物は例えば、1分子中に2個以上のフェノール性ヒドロキシ基を有する硬化剤とエステル化剤を反応させる方法、多官能性カルボン酸と芳香族多価ヒドロキシ化
合物を重縮合させ、該カルボキシ基を芳香族モノヒドロキシ化合物でエステル化する方法により製造することができる。例えば、特開2004−2277460号公報に記載の活性エステル硬化剤を使用することができる。活性エステル硬化剤は異なる種類のものを、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
市販されている活性エステル硬化剤としては、EXB9460−65T(DIC(株)製、活性基当量223)、DC808(ジャパンエポキシレジン(株)製、活性基当量149)、YLH1026(ジャパンエポキシレジン(株)製、活性基当量200)、YLH1030(ジャパンエポキシレジン(株)製、活性基当量201)、YLH1048(ジャパンエポキシレジン(株)製、活性基当量245)、等が挙げられる。
【0023】
樹脂組成物中の活性エステル硬化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、活性エステル硬化剤の含有量の上限値は、硬化が遅く硬化時間が長くなることや機械特性が低下することを防止するという観点から、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、20質量%が好ましく、19質量%がより好ましく、18質量%が更に好ましく、17質量%が更に一層好ましく、16質量%が殊更好ましく、15質量%が特に好ましい。一方、活性エステル硬化剤の含有量の下限値は、誘電正接が増加するのを防止するという観点から、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、1質量%が好ましく、2質量%がより好ましく、3質量%が更に好ましい。
【0024】
活性エステル硬化剤の当量とエポキシ樹脂のエポキシ基との比率は好ましくは1:2〜1:20であり、より好ましくは1:3〜1:18であり、更に好ましくは1:3〜1:16である。当量比が1:2よりも少ない場合は、未反応の活性エステルが残存し、機械特性が低下する傾向にあり、当量比が1:20よりも多い場合は、誘電正接が増加する傾向にある。
【0025】
[(D)硬化促進剤]
本発明において使用される硬化促進剤は、金属系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられる。硬化促進剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
金属系硬化促進剤としては、コバルト 、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体などが挙げられる。有機金属塩としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。金属系硬化促進剤としては、硬化性、溶剤溶解性の観点から、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、亜鉛(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛、鉄(III)アセチルアセトナートが好ましく、特にコバルト(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛が好ましい。金属系硬化促進剤は1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
金属系硬化促進剤の添加量は、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、金属系硬化促進剤に基づく金属の含有量が25〜500ppm、より好ましくは40〜200ppmとなる範囲で添加するのが好ましい。25ppm未満であると、低粗度の絶縁層表面への密着性に優れる導体層の形成が困難となる傾向にあり、500ppmを超えると、樹脂組成物の保存安定性、絶縁性が低下する傾向となる。
【0028】
イミダゾール系硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、 1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。
【0029】
アミン系硬化促進剤としては、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン(以下、DBUと略記する。)などのアミン化合物などが挙げられる。
【0030】
イミダゾール系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等の金属系硬化促進剤以外の硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、0.05〜3質量%の範囲であるのが好ましく、0.1〜2質量%の範囲であるのがより好ましい。0.05質量%未満であると、下地導体層との密着強度が低下する傾向にあり、3質量%を超えると硬化物の誘電正接が大きくなる傾向となる。金属系硬化促進剤とそれ以外の硬化促進剤(イミダゾール系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等)を組み合わせて用いる場合の含有量は、金属系硬化促進剤とそれ以外の硬化促進剤(イミダゾール系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等)をそれぞれ上記範囲内とするのが好ましい。
【0031】
本発明の樹脂組成物は(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分を含み、絶縁層の誘電正接が低く、導体層と絶縁樹脂の密着性をより安定的に保つことができる。
【0032】
本発明の樹脂組成物の誘電正接は、後述する<誘電正接の測定及び評価>に記載の測定方法により把握することができる。
【0033】
本発明の樹脂組成物の誘電正接の上限値は、0.009が好ましく、0.0089がより好ましく、0.0087が更に好ましく、0.0085が更に一層好ましく、0,0083が殊更好ましく、0.0081が特に好ましい。本発明の樹脂組成物の誘電正接の下限値は、0.0072が好ましく、0.0070がより好ましく、0.0065が更に好ましく、0.006が更に一層好ましく、0.005が殊更好ましく、0.004が特に好ましい。
【0034】
本発明の樹脂組成物の環境試験前後の密着強度は、後述する<CZ処理銅箔と樹脂組成物間の密着強度の測定及び評価>に記載の測定方法により把握することができる。
【0035】
本発明の樹脂組成物の環境試験前後の密着強度低下率の上限値は、59%が好ましく、45%がより好ましく、36%が更に好ましく、33%が更に一層好ましく、30%が殊更好ましく、25%が特に好ましい。本発明の樹脂組成物の密着強度低下率の下限値は、17%が好ましく、13%がより好ましく、10%が更に好ましく、5%が更に一層好ましく、1%が殊更好ましく、0%が特に好ましい。
【0036】
[(E)無機充填材]
本発明の樹脂組成物には、当該樹脂組成物から得られる絶縁層の熱膨張率をさらに低下させるために無機充填材を含有させる事ができる。無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。なかでも、導体層と絶縁層の密着性向上の観点から、シリカ、タルクが好ましい。無機充填材は1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機充填材の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、絶縁層への微細配線形成の観点から、5μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましく、2.5μm以下が更に好ましく、1.3μm以下が更に一層好ましく、1μm以下が殊更好ましく、0.7μm以下が特に好ましい。なお、無機充填材の平均粒子径が小さくなりすぎると、エポキシ樹脂組成物を樹脂ワニスとした場合に、ワニスの粘度が上昇し、取り扱い性が低下する傾向にあるため、平均粒子径は0.05μm以上であるのが好ましく、0.1μm以上であるのがより好ましく、0.5μm以上であるのが更に好ましい。
【0037】
無機充填材の添加量の上限値は、硬化物が脆くなるのを防止し、樹脂組成物の密着強度が低下するのを防止するという観点から、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、70質量%が好ましく、67質量%がより好ましく、64質量%が更に好ましく、61質量%が更に一層好ましい。一方、無機充填材の添加量の下限値は、絶縁層の熱膨張率を低くするという観点から、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、35質量%が更に好ましく、40質量%が更に一層好ましく、42質量%が殊更好ましく、44質量%が特に好ましく、46質量%がとりわけ好ましい。
【0038】
本発明の樹脂組成物において、加速環境試験後の銅配線からなる導体層と絶縁層との密着性がさらに向上するという観点から、無機充填材としてタルクを使用することが好ましい。一方、十分な密着性を維持し、また絶縁層の熱膨張率を下げる比較的大量のタルクが必要となるため、樹脂組成物の溶融粘度が高くなりすぎてラミネートに適さなくなるということを防止するために、シリカを組み合わせて用いる事がより好ましい。タルクとシリカを組み合わせて用いることにより、導体層の密着性、低熱膨張率、ラミネート性のバランスがとれた良好な絶縁層が形成可能となる。
【0039】
本発明において使用されるタルクは、特に限定されず、各種タルクが使用でき、焼成タルクを用いてもよい。タルクの平均粒子径の上限値は、微細配線化、絶縁信頼性の観点から、5μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましく、2.5μm以下が更に好ましく、1.3μm以下が更に一層好ましく、1μm以下が殊更好ましく、0.7μm以下が特に好ましい。一方、タルクの平均粒子径の下限値は、樹脂の粘度が高くなりすぎ、微細配線間に樹脂が埋め込まれにくくなるのを防止するという観点から、0.05μm以上であるのが好ましく、0.1μm以上であるのがより好ましく、0.5μm以上であるのが更に好ましい。
【0040】
市販されているタルクとしては、日本タルク(株)製D―600(平均粒子径0.6μm)、D−800(平均粒子径0.8μm)、D−1000(平均粒子径1.0μm)、SG−95S(平均粒子径1.2μm)、FG−15(平均粒子径1.2μm)、SG−95(平均粒子径2.5μm)、P−8(平均粒子径3.3μm)、P−6(平均粒子径4.0μm)、P−4(平均粒子径4.5μm)、P−3(平均粒子径5.0μm)、P−2(平均粒子径7.0μm)、L−1(平均粒子径5.0μm)、K−1(平均粒子径8.0μm)、L−G(平均粒子径5.0μm)などが挙げられる。
【0041】
本発明において使用されるシリカは、特には限定されず、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ等の各種シリカが用いられ、特に球状の溶融シリカが好ましい。シリカの平均粒子径は特に限定されないが微細配線化の形成を可能とし、絶縁信頼性を向上させるという観点から、平均粒子径は5μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましく、2.5μm以下が更に好ましく、1.3μm以下が更に一層好ましく、1μm以下が殊更好ましい。一方、シリカの平均粒子径の下限値は、平均粒子径が小さすぎると、樹脂の粘度が高くなりすぎ、微細配線間に樹脂が埋め込まれにくくなるのを防止するという観点から、0.05μm以上であるのが好ましく、0.1μm以上であるのがより好ましく、0.5μm以上であるのが更に好ましい。
【0042】
タルク及びシリカを併用する場合、タルク及びシリカの合計配合量の上限値は、回路基板へのラミネート性が悪化するのを防止するという観点から、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、70質量%が好ましく、68質量%がより好ましく、66質量%が更に好ましく、64質量%が更に一層好ましく、62質量%が殊更好ましく、61質量%が特に好ましい。一方、タルク及びシリカの合計配合量の下限値は、絶縁層の熱膨張率を低くするという観点から、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、35質量%が更に好ましく、40質量%が更に一層好ましく、42質量%が殊更好ましく、44質量%が特に好ましく、46質量%がとりわけ好ましい。
【0043】
そして、タルク及びシリカを併用する場合、タルクの配合量の上限値は、回路基板へのラミネート性が悪化するのを防止するという観点から、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、20質量%が好ましく、19質量%がより好ましく、18質量%が更に好ましく、17質量%が更に一層好ましく、16質量%が殊更好ましく、15質量%が特に好ましい。一方、タルクの配合量の下限値は、環境試験後の導体層と絶縁層の密着強度が低下するのを防止するという観点から、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、5質量%が好ましく、6質量%がより好ましく、7質量%が更に好ましく、8質量%が更に一層好ましく、9質量%が殊更好ましく、10質量%が特に好ましい。
【0044】
本発明における無機充填材は、エポキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等の表面処理剤で表面処理してその耐湿性を向上させたものが好ましい。表面処理剤は1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。表面処理剤としては、アミノプロピルメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)アミノプロビルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤、メルカトプロピルトリメトキシシラン、メルカトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等のシラン系カップリング剤、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメテルシクロトリシラザン等のオルガノシラザン化合
物、ブチルチタネートダイマー、チタンオクチレングリコレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビスラクテート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート等のチタネート系カップリング剤等が挙げられる。
【0045】
タルク、シリカを含む無機充填材の平均粒子径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒子径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製 LA−500等を使用することができる。
【0046】
[(F)ビニルベンジル化合物]
本発明の樹脂組成物には、当該樹脂組成物から得られる絶縁層の誘電正接をさらに低下させるためにビニルベンジル化合物を含有させる事ができる。本発明において使用される硬化性ポリビニルベンジル化合物は、分子内に2以上のビニルベンジル基を有する化合物であり、例えば、インデン化合物を、(i)ビニルベンジルハライドとアルカリ存在下に反応させる方法、(ii)ビニルベンジルハライド及び炭素数2〜20のジハロメチル化合物とアルカリ存在下に反応させる方法、もしくは(iii)フルオレン化合物、ビニルベンジルハライド及び炭素数2〜20のジハロメチル化合物とアルカリ存在下に反応させる方法(特開2003−277440号公報参照)、又は(iv)フルオレン化合物及びビニルベンジルハライドをアルカリ存在下に反応させる方法(国際公開02/083610号パンフレット)等により製造することができる。硬化性ポリビニルベンジル化合物は、低誘電正接という観点から分子内にヘテロ原子を含まないものが好ましい。
【0047】
樹脂組成物中の硬化性ポリビニルベンジル化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物の不揮発分を100質量%とした場合、好ましくは2〜50質量%であり、より好ましくは5〜25質量%である。硬化性ポリビニルベンジル化合物の含有量が少なすぎると、誘電正接が増加する傾向にある。一方、硬化性ポリビニルベンジル化合物の含有量が多すぎると、密着性が低下する傾向にある。
【0048】
インデン化合物としては例えば以下の式(5)で表されるインデン化合物が挙げられる。
【化5】

式(5)中、Rは、同一又は異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基)及びチオアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5のチオアルコキシ基)からなる群より選択される1つの基を示し(または2以上のRが一体となって環を形成していてもよい)、pは0〜4の整数を示す。環を形成する場合としては、5〜8員のシクロアルキル環、ベンゼン環等の環が縮環した構造を挙げることができる。
【0049】
フルオレン化合物としては、以下の式(6)で表されるフルオレン化合物が挙げられる。
【化6】

式(6)中、Rは、同一又は異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基)及びチオアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5のチオアルコキシ基)からなる群より選択される1つの基を示し(または2以上のRが一体となって環を形成していてもよい)、mは0〜4の整数を示す。環を形成する場合としては、5〜8員のシクロアルキル環、ベンゼン環等の環が縮環した構造を挙げることができる。
【0050】
ビニルベンジルハライドとしては、上記で記載したものが挙げられる。また炭素数2〜20のジハロメチル化合物としては、例えば、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジブロモエタン、1,3−ジクロロプロパン、1,3−ジブロモプロパン、1,4−ジクロロブタン、1,4−ジブロモブタン等のアルキレンジハライド、o−キシリレンジクロライド、o−キシリレンジブロマイド、m−キシリレンジクロライド、m−キシリレンジブロマイド、p−キシリレンジクロライド、p−キシリレンジブロマイド、4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(クロロメチル)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(クロロメチル)ジフェニルスルフィド、2,6−ビス(ブロモメチル)ナフタレン、1,8−ビス(ブロモメチル)ナフタレン、1,4−ビス(クロロメチル)ナフタレン等のジハロメチル化合物を挙げることができる。
【0051】
アルカリとしては、例えば、ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0052】
このような硬化性ポリビニルベンジル化合物は、特開2003−277440号公報、国際公開02/083610号パンフレットの記載に従って容易に製造することができる。
【0053】
好ましい硬化性ポリビニルベンジル化合物としては、以下の式(7)で表されるものを挙げることができる。
【0054】
【化7】

式(7)中、Rは炭素数2〜20の2価の有機基を示し、Rは、同一又は異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基)及びチオアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5のチオアルコキシ基)からなる群より選択される1つの基を示し(または2以上のRが一体となって環を形成していてもよい)、mは0〜4の整数を示し、nは平均値として0〜20の数を示す。環を形成する場合としては、5〜8員のシクロアルキル環、ベンゼン環等の環が縮環した構造を挙げることができる。
【0055】
特に好ましい硬化性ポリビニルベンジル化合物としては、以下の式(8)で表されるものを挙げることができる。
【化8】

(式(8)中、Rは炭素数2〜20の2価の有機基(好ましくはアルキル基)、nは平均値として0〜20の数を示す)
【0056】
市場で入手可能なものとしては昭和高分子(株)製のポリビニルベンジル樹脂V−5000X(硬化物のTg154℃、比誘電率2.63、誘電正接0.0016)、V−6000X(硬化物のTg136℃、比誘電率2.59、誘電正接0.0013)などが挙げられる。
【0057】
本発明における硬化性ポリビニルベンジル化合物は、硬化性ポリビニルベンジルエーテル化合物であっても良い。例えば、1分子中に2個以上のヒドロキシベンジル基を有する化合物(ポリフェノール化合物)をビニルベンジルハライドとアルカリ存在下に反応させることによって得ることが出来る(特開平9−31006号公報、特開2001−181383号公報参照)。
【0058】
ポリフェノール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、フェノールノボラック樹脂、フェノールとベンズアルデヒドの縮合物、ザイロック(Xylok)型フェノール樹脂等が挙げられる。これら化合物の芳香環はアルキル基、ハロゲンなどで置換されていてもよい。
【0059】
ビニルベンジルハライドとしては、p−ビニルベンジルクロライド、m−ビニルベンジルクロライド及びこれらの任意の混合物等が挙げられる。
【0060】
代表的なポリビニルベンジルエーテル化合物としては、以下の式(9)で表されるものを挙げることができる(特開平9−31006号公報、特開2001−181383号公報等参照)。
【0061】
【化9】

式(9)中、Rはメチル基又はエチル基、Rは水素原子又は1〜10の炭化水素基、Rは水素原子又はビニルベンジル基(但し、水素原子とビニルベンジル基のモル比は60:40〜0:100の範囲である)、nは平均値として2〜4の数を表す。
【0062】
これらポリビニルベンジルエーテル化合物は特開平9−31006号公報、特開2001−181383号公報の記載に従って容易に製造することができる。
【0063】
市場で入手可能なものとしては昭和高分子(株)製V−1000X(硬化物のTg160℃、比誘電率2.7、誘電正接0.0045)、V−1100X(硬化物のTg171℃、比誘電率2.56、誘電正接0.0038)などが挙げられる。
【0064】
これらポリビニルベンジル化合物は1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
[(G)高分子化合物]
本発明の樹脂組成物は、さらに特定の高分子化合物(G)を含有させることで、硬化物の機械強度や接着フィルムの形態で使用する場合のフィルム成型能を向上させることが可能である。このような高分子化合物としては、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂を挙げることができる。高分子化合物は1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。高分子化合物としては、特にポリビニルア
セタール樹脂、フェノキシ樹脂が好ましい。
【0066】
ポリビニルアセタール樹脂としては、特にポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製、電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製エスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。フェノキシ樹脂の具体例としては東都化成(株)製FX280、FX293、ジャパンエポキシレジン(株)製YX8100、YX6954、YL6974、YL7482、YL7553、YL6794、YL7213、YL7290等が挙げられる。ポリビニルアセタール樹脂はガラス転移温度が80℃以上のものが特に好ましい。ここでいう「ガラス転移温度」はJIS K 7197に記載の方法に従って決定される。なお、ガラス転移温度が分解温度よりも高く、実際にはガラス転移温度が観測されない場合には、分解温度を本発明におけるガラス転移温度とみなすことができる。なお、分解温度とは、JIS K 7120に記載の方法に従って測定したときの質量減少率が5%となる温度で定義される。
【0067】
高分子化合物の重量平均分子量は5000〜200000の範囲であるのが好ましく、10000〜150000の範囲であるのがより好ましく、15000〜100000の範囲であるのが更に好ましく、20000〜80000の範囲であるのが更に一層好ましい。この範囲よりも小さいとフィルム成型能や機械強度向上の効果が十分発揮されない傾向にあり、この範囲よりも大きいとシアネートエステル樹脂及びエポキシ樹脂との相溶性が低下し、絶縁層表面の粗化処理後の粗度が増大する傾向にある。
【0068】
なお本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0069】
樹脂組成物中の高分子化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.5〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。高分子化合物の含有量が少なすぎるとフィルム成型能や機械強度向上の効果が発揮されにくい傾向にあり、多すぎると粗化工程後の絶縁層表面の粗度が増大する傾向にある。
【0070】
[ゴム粒子]
本発明の樹脂組成物には、メッキ密着性向上の観点から、ゴム粒子をさらに含有することができる。本発明において使用され得るゴム粒子は、例えば、当該樹脂組成物のワニスを調製する際に使用する有機溶剤にも溶解せず、必須成分であるシアネートエステル樹脂やエポキシ樹脂などとも相溶しないものである。従って、該ゴム粒子は、本発明の樹脂組成物のワニス中では分散状態で存在する。このようなゴム粒子は、一般には、ゴム成分の分子量を有機溶剤や樹脂に溶解しないレベルまで大きくし、粒子状とすることで調製される。
【0071】
本発明で使用され得るゴム粒子の好ましい例としては、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。コアシェル型ゴム粒子は、コア層とシェル層とを有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、又は外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、中間層がゴム状ポリマーで構成され、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のものなどが挙げられる。ガラス層は、例えば、メタクリル酸メチルの重合物などで構成され、
ゴム状ポリマー層は、例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)などで構成される。ゴム粒子は1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N(商品名、ガンツ化成(株)製)、メタブレンKW−4426(商品名、三菱レイヨン(株)製)が挙げられる。架橋アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER−91(平均粒子径0.5μm、JSR(株)製)などが挙げられる。架橋スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK−500(平均粒子径0.5μm、JSR(株)製)などが挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A(平均粒子径0.1μm)、W450A(平均粒子径0.2μm)(三菱レイヨン(株)製)を挙げることができる。
【0072】
配合するゴム粒子の平均粒子径は、好ましくは0.005〜1μmの範囲であり、より好ましくは0.2〜0.6μmの範囲である。本発明で使用されるゴム粒子の平均粒子径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。例えば、適当な有機溶剤にゴム粒子を超音波などにより均一に分散させ、濃厚系粒径アナライザー(FPAR−1000;大塚電子(株)製)を用いて、ゴム粒子の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒子径とすることで測定することができる。
【0073】
ゴム粒子の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1〜10質量%であり、より好ましくは2〜5質量%である。
【0074】
[難燃剤]
本発明の樹脂組成物は、難燃性向上の観点から、難燃剤をさらに含有することができる。難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。有機リン系難燃剤としては、三光(株)製のHCA、HCA−HQ、HCA−NQ等のフェナントレン型リン化合物、昭和高分子(株)製のHFB−2006M等のリン含有ベンゾオキサジン化合物、味の素ファインテクノ(株)製のレオフォス30、50、65、90、110、TPP、RPD、BAPP、CPD、TCP、TXP、TBP、TOP、KP140、TIBP、北興化学工業(
株)製のPPQ、クラリアント(株)製のOP930、大八化学(株)製のPX200等のリン酸エステル化合物、東都化成(株)製のFX289、FX305等のリン含有エポキシ樹脂、東都化成(株)製のERF001等のリン含有フェノキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン(株)製のYL7613等のリン含有エポキシ樹脂等が挙げられる。有機系窒素含有リン化合物としては、四国化成工業(株)製のSP670、SP703等のリン酸エステルミド化合物、大塚化学(株)社製のSPB100、SPE100、(株)伏見製作所製FP−series等のホスファゼン化合物等が挙げられる。金属水酸化物として
は、宇部マテリアルズ(株)製のUD65、UD650、UD653等の水酸化マグネシウム、巴工業(株)社製のB−30、B−325、B−315、B−308、B−303、UFH−20等の水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0075】
[他の成分]
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて他の成分を配合することができる。他の成分としては、例えば、シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の有機充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シラン系カップリング剤等の密着性付与剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤等を挙げることができる。
【0076】
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、必要により溶媒等を添加し、回転ミキサーなどを用いて混合する方法などが挙げられる。
【0077】
本発明の樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、接着フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、回路基板、ソルダーレジスト、アンダ−フィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。なかでも、多層プリント配線板の製造において絶縁層を形成するために好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物は、ワニス状態で回路基板に塗布して絶縁層を形成することもできるが、工業的には一般に、接着フィルム、プリプレグ等のシート状積層材料の形態で用いるのが好ましい。樹脂組成物の軟化点は、シート状積層材料のラミネート性の観点から40〜150℃が好ましい。
【0078】
[接着フィルム]
本発明の接着フィルムは、当業者に公知の方法、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーターなどを用いて、支持体に塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0079】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。有機溶剤は1種又は2種以上を組みわせて用いてもよい。
【0080】
乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層への有機溶剤の含有量が通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。ワニス中の有機溶剤量、有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスを50〜150℃で3〜10分程度乾燥させることにより、樹脂組成物層が形成される。
【0081】
接着フィルムにおいて形成される樹脂組成物層の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層は10〜100μmの厚さを有するのが好ましい。
【0082】
支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィンのフィルム、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルのフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルムなどの各種プラスチックフィルムが挙げられる。また離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを使用してもよい。支持体及び後述する保護フィルムには、マッド処理、コロナ処理等の表面処理が施してあってもよい。また、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等の離型剤で離型処理が施してあっ
てもよい。
【0083】
支持体の厚さは特に限定されないが、10〜150μmが好ましく、25〜50μmがより好ましい。
【0084】
樹脂組成物層の支持体が密着していない面には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、1〜40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。接着フィルムは、ロール状に巻きとって貯蔵することもできる。
【0085】
[接着フィルムを用いた多層プリント配線板]
上記のようにして製造した接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造することができる。その方法の一例を次に説明する。
【0086】
まず、接着フィルムを、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面又は両面にラミネートする。回路基板に用いられる基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものをいう。また導体層と絶縁層とを交互に積層してなる多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっているものも、ここでいう回路基板に含
まれる。なお導体層表面には、黒化処理、銅エッチング等により予め粗化処理が施されていてもよい。
【0087】
上記ラミネートにおいて、接着フィルムが保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、必要に応じて接着フィルム及び回路基板をプレヒートし、接着フィルムを加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。本発明の接着フィルムにおいては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。ラミネートの条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネートの方法は、バッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。
【0088】
真空ラミネートは、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製バキュームアップリケーター、(株)名機製作所製真空加圧式ラミネーター、(株)日立インダストリイズ製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0089】
また、減圧下、加熱及び加圧を行う積層工程は、一般の真空ホットプレス機を用いて行うことも可能である。例えば、加熱されたSUS板等の金属板を支持体層側からプレスすることにより行うことができる。
【0090】
プレス条件は、減圧度を通常1×10−2 MPa以下、好ましくは1×10−3 MPa以下の減圧下とする。加熱及び加圧は、1段階で行うことも出来るが、樹脂のしみだしを制御する観点から2段階以上に条件を分けて行うのが好ましい。例えば、1段階目のプレスを、温度が70〜150℃、圧力が1〜15kgf/cm2 の範囲、2段階目のプレスを、温度が150〜200℃、圧力が1〜40kgf/cm2 の範囲で行うのが好ましい。各段階の時間は30〜120分で行うのが好ましい。市販されている真空ホットプレス機としては、例えば、MNPC−V−750−5−200(株)名機製作所製)、VH1−1603(北川精機(株)製)等が挙げられる。
【0091】
接着フィルムを回路基板にラミネートした後、室温付近に冷却してから、支持体を剥離する場合は剥離し、樹脂組成物を熱硬化することにより回路基板に絶縁層を形成することができる。熱硬化の条件は、樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150℃〜220℃で20分〜180分、より好ましくは160℃〜200℃で30〜120分の範囲で選択される。
【0092】
絶縁層を形成した後、硬化前に支持体を剥離しなかった場合は、ここで剥離する。次いで必要により、回路基板上に形成された絶縁層に穴開けを行ってビアホール、スルーホールを形成する。穴あけは、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけが最も一般的な方法である。
【0093】
次いで、乾式メッキ又は湿式メッキにより絶縁層上に導体層を形成する。乾式メッキとしては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の方法を使用することができる。湿式メッキの場合は、まず、硬化した樹脂組成物層(絶縁層)の表面を、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤で粗化処理し、凸凹のアンカーを形成する。酸化剤としては、特に過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等の水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ性過マンガン酸水溶液)が好ましく用いられる。次いで、無電解メッキと
電解メッキとを組み合わせた方法で導体層を形成する。また導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。その後のパターン形成の方法として、例えば、当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。
【0094】
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、本発明の樹脂組成物を繊維からなるシート状補強基材にホットメルト法又はソルベント法により含浸させ、加熱して半硬化させることにより製造することができる。すなわち、本発明の樹脂組成物が繊維からなるシート状補強基材に含浸した状態となるプリプレグとすることができる。繊維からなるシート状補強基材としては、例えば、ガラスクロスやアラミド繊維等のプリプレグ用繊維として常用されている繊維からなるものを用いることができる。
【0095】
ホットメルト法は、樹脂を、有機溶剤に溶解することなく、該樹脂との剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングし、それをシート状補強基材にラミネートする、あるいは樹脂を、有機溶剤に溶解することなく、ダイコーターによりシート状補強基材に直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。またソルベント法は、接着フィルムと同様にして樹脂を有機溶剤に溶解して樹脂ワニスを調製し、このワニスにシート状補強基材を浸漬し、樹脂ワニスをシート状補強基材に含浸させ、その後乾燥させる方法である。
【0096】
[プリプレグを用いた多層プリント配線板]
上記のようにして製造したプリプレグを用いて多層プリント配線板を製造することができる。その方法の一例を次に説明する。回路基板に本発明のプリプレグを1枚あるいは必要により数枚重ね、離型フィルムを介して金属プレートで挟み、加圧・加熱条件下でプレス積層する。加圧・加熱条件は、好ましくは、圧力が5〜40kgf/cm(49×10〜392×10N/m)、温度が120〜200℃で20〜100分である。また接着フィルムと同様に、プリプレグを真空ラミネート法により回路基板にラミネートした後、加熱硬化することも可能である。その後、上記で記載した方法と同様にして、硬化したプリプレグ表面を粗化した後、導体層をメッキにより形成して多層プリント配線板を製造することができる。
【実施例】
【0097】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0098】
<実施例1>
ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230S75」、シアネート当量232、不揮発分75質量%のメチルエチルケトン(以下MEKと略す)溶液)13質量部、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30」、シアネート当量124)を9質量部、MEK10部と共に攪拌混合し、ナフトール型エポキシ樹脂として東都化成(株)製「ESN−475V」(前記一般式(1)で表されるエポキシ当量340の不揮発分65質量%のMEK溶液)40質量部、さらに液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」、エポキシ当量185)3質量部、リン含有エポキシ樹脂(東都化成(株)製「FX289EK75」、エポキシ当量306の不揮発分75質量%のMEK溶液)8質量部、活性エステル硬化剤(DIC(株)製「EXB9460−65T」、活性基当量223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)10質量部、フェノキシ樹脂溶液(ジャパンエポキシレジン(株)製「YX−6954」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンとの混合溶液)6質量部、硬化促進剤としてイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体(ジャパンエポキシレジン(株)製「jERcure P200H50」、不揮発分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)0.3質量部、コバルト(II)アセチルアセトナート(東京化成(株)製)の3質量%のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液4質量部、及び球形シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.5μm)85質量部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、熱硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。
樹脂組成物の不揮発分中、エポキシ樹脂24質量%、シアネートエステル樹脂13質量%、活性エステル硬化剤4質量%、イミダゾール系硬化促進剤0.1質量%、金属系硬化促進剤として添加した金属(コバルト)49ppm、高分子化合物1質量%、無機充填材58質量%となる。
次に、かかる樹脂組成物ワニスをポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm、以下PETフィルムと略す)上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが40μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布し、80〜120℃(平均100℃)で6分間乾燥した(樹脂組成物層中の残留溶媒量:1.5質量%)。次いで、樹脂組成物層の表面に厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながらロール状に巻き取った。ロール状の接着フィルムを幅507mmにスリットし、507×336mmサイズのシート状の接着フィルムを得た。
【0099】
<実施例2>
ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230S75」、シアネート当量232、不揮発分75質量%のメチルエチルケトン(以下MEKと略す)溶液)13質量部、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30」、シアネート当量124)を9質量部、MEK10部と共に攪拌混合し、ナフトール型エポキシ樹脂として東都化成(株)製「ESN−475V」(前記一般式(1)で表されるエポキシ当量340の不揮発分65質量%のMEK溶液)40質量部、さらに液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキ
シレジン(株)製「jER828EL」、エポキシ当量185)3質量部、リン含有エポキシ樹脂(東都化成(株)製「FX289EK75」、エポキシ当量306の不揮発分75質量%のMEK溶液)8質量部、活性エステル硬化剤(DIC(株)製「EXB9460−65T」、活性基当量223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)10質量部、フェノキシ樹脂溶液(ジャパンエポキシレジン(株)製「YX−6954」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンとの混合溶液)6質量部、硬化促進剤としてグアニジン化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体(ジシアンジアミド15質量部(ジャパンエポキシレジン(株)製「jERcure DICY7」)とビスフェノールA型エポキシ樹脂30質量部(ジャパンエポキシレジン(株)製「jER 828US」とを1−メトキシプロパノール溶液55質量部中で100℃、2時間反応させた不揮発分45質量%の溶液)を1.5質量部、コバルト(II)アセチルアセトナート(東京化成(株)製)の3質量%のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液4質量部、及び球形シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.5μm)85質量部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、熱硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。
樹脂組成物の不揮発分中、エポキシ樹脂24質量%、シアネートエステル樹脂13質量%、活性エステル硬化剤4質量%、アミン系硬化促進剤0.1質量%、金属系硬化促進剤に由来する金属(コバルト)49ppm、高分子化合物1質量%、無機充填材58質量%となる。
次に、かかる樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0100】
<実施例3>
ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「DT−4000」、シアネート当量140、不揮発分85質量%のトルエン溶液)15質量部、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30」、シアネート当量124)を4.5質量部、MEK10部と共に攪拌混合し、ナフトール型エポキシ樹脂として東都化成(株)製「ESN−475V」(エポキシ当量340の不揮発分65質量%のMEK溶液)15質量部にビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)10質量部をシクロヘキサノン20質量部と共に加熱溶解させた後、ナフタレン型2官能エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032SS」エポキシ当量145)3質量部、リン含有エポキシ樹脂(東都化成(株)製「FX289EK75」、エポキシ当量306の不揮発分75質量%のMEK溶液)10質量部、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量328の不揮発分75質量%のMEK溶液、日本化薬(株)製「NC3000FH−75M」)4質量部、活性エステル硬化剤(DIC(株)製「EXB9460−65T」、活性基当量223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)10質量部、ビニルベンジル化合物(昭和高分子(株)製「V5000X」、不揮発分65質量%のトルエン溶液)10質量部を添加した。そこへ、ポリビニルブチラール樹脂溶液(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS-1」)を固形分15%のシクロヘキサノンとMEKの1:1溶液)10部を混合し、さらに硬化促進剤としてイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体(ジャパンエポキシレジン(株)製「jERcure P200H50」)0.5質量部、ナフテン酸亜鉛(II)(東京化成(株)製、亜鉛含有量8%のミネラルスピリット溶液)の3質量%のシクロヘキサノン溶液3質量部、及び球形シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.5μm)85質量部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、熱硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。
樹脂組成物の不揮発分中、エポキシ樹脂22質量%、シアネートエステル樹脂11質量%、活性エステル硬化剤4質量%、ビニルベンジル化合物4質量%、イミダゾール系硬化促進剤0.17質量%、金属系硬化促進剤に由来する金属(亜鉛)48ppm、高分子化合物1質量%、無機充填材57質量%となる。
次に、かかる樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0101】
<実施例4>
ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「DT−4000」、シアネート当量140、不揮発分85質量%のトルエン溶液)15.3質量部、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230S75」、シアネート当量232、不揮発分75質量%のメチルエチルケトン(以下MEKと略す)溶液)12質量部を共に攪拌混合し、さらに液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」、エポキシ当量185)8質量部、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「N
C3000L」)15部をシクロヘキサノン20部と共に加熱溶解させた後、リン含有エポキシ樹脂(東都化成(株)製「FX289EK75」、エポキシ当量306の不揮発分75質量%のMEK溶液)15質量部、活性エステル硬化剤(DIC(株)製「EXB9460−65T」、活性基当量223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)20質量部、ビニルベンジル化合物(昭和高分子(株)製「V5000X」、不揮発分65質量%のトルエン溶液)5質量部、フェノキシ樹脂溶液(ジャパンエポキシレジン(株)製「YX−6954」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンとの混合溶液)6質
量部を添加した。硬化促進剤としてイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体(ジャパンエポキシレジン(株)製「jERcure P200H50」)0.5質量部、4−ジメチルアミノピリジン(東京化成(株)製)0.1質量部、ナフテン酸亜鉛(II)(東京化成(株)製、亜鉛含有量8%のミネラルスピリット溶液)の3質量%のシクロヘキサノン溶液4.5質量部、及び球形シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.5μm)85質量部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、熱硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。
樹脂組成物の不揮発分中、エポキシ樹脂21質量%、シアネートエステル樹脂15質量%、活性エステル硬化剤8質量%、ビニルベンジル化合物2質量%、イミダゾール系硬化促進剤0.15質量%、金属系硬化促進剤に由来する金属(亜鉛)44ppm、高分子化合物1質量%、無機充填材53質量%となる。
次に、かかる樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0102】
<実施例5>
ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230S75」、シアネート当量232、不揮発分75質量%のメチルエチルケトン(以下MEKと略す)溶液)13質量部、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30」、シアネート当量124)を9質量部、MEK10質量部と共に攪拌混合し、ナフトール型エポキシ樹脂として東都化成(株)製「ESN−475V」(前記一般式(1)で表されるエポキシ当量340の不揮発分65質量%のMEK溶液)40質量部、さらに液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」、エポキシ当量185)3質量部、リン含有エポキシ樹脂(東都化成(株)製「FX289EK75」、エポキシ当量306の不揮発分75質量%のMEK溶液)8質量部、活性エステル硬化剤(DIC(株)製「EXB9460−65T」、活性基当量223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)10質量部、フェノキシ樹脂溶液(ジャパンエポキシレジン(株)製「YX−6954BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンとの混合溶液)6質量部、硬化促進剤としてイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体(ジャパンエポキシレジン(株)製「jERcure P200H50」、不揮発分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)0.3質量部、コバルト(II)アセチルアセトナート(東京化成(株)製)の1質量%のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液4質量部、球形シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.5μm)74質量部及び、タルク(日本タルク(株)製「D800」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.8μm)11質量部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、熱硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。
樹脂組成物の不揮発分中、エポキシ樹脂24質量%、シアネートエステル樹脂13質量%、活性エステル硬化剤4質量%、イミダゾール系硬化促進剤0.1質量%、金属系硬化促進剤に由来する金属(コバルト)49ppm、高分子化合物1質量%、無機充填材58質量%となる。
次に、かかる樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0103】
<実施例6>
ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「DT−4000」、シアネート当量140、不揮発分85質量%のトルエン溶液)15質量部、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30」、シアネート当量124)を4.5質量部、MEK10部と共に攪拌混合し、ナフトール型エポキシ樹脂として東都化成(株)製「ESN−475V」(エポキシ当量340の不揮発分65質量%のMEK溶液)15質量部にビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)10部をシクロヘキサノン2
0部と共に加熱溶解させた後、ナフタレン型2官能エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032SS」エポキシ当量145)3質量部、リン含有エポキシ樹脂(東都化成(株)製「FX289EK75」、エポキシ当量306の不揮発分75質量%のMEK溶液)10質量部、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量328の不揮発分75質量%のMEK溶液、日本化薬(株)製「NC3000FH−75M」)4質量部、活性エステル硬化剤(DIC(株)製「EXB9460−65T」、活性基当量223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)10質量部、ビニルベンジル化合物(昭和高分子(株)製「V5
000X」、不揮発分65質量%のトルエン溶液)10質量部を添加した。そこへ、ポリビニルブチラール樹脂溶液(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS-1」)を固形分15%のシクロヘキサノンとMEKの1:1溶液)10部を混合し、さらに硬化促進剤としてイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体(ジャパンエポキシレジン(株)製「jERcure P200H50」)0.5質量部、ナフテン酸亜鉛(II)(東京化成(株)製、亜鉛含有量8%のミネラルスピリット溶液)の3質量%のシクロヘキサノン溶液3質量部、球形シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.5μm)74質量部及び、タルク(日本タルク(株)製「D800」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.8μm)11質量部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、熱硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。
樹脂組成物の不揮発分中、エポキシ樹脂22質量%、シアネートエステル樹脂11質量%、活性エステル硬化剤4質量%、ビニルベンジル化合物4質量%、イミダゾール系硬化促進剤0.17質量%、金属系硬化促進剤に由来する金属(亜鉛)48ppm、高分子化合物1質量%、無機充填材57質量%となる。
次に、かかる樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0104】
<実施例7>
ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「DT−4000」、シアネート当量140、不揮発分85質量%のトルエン溶液)15.3質量部、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230S75」、シアネート当量232、不揮発分75質量%のメチルエチルケトン(以下MEKと略す)溶液)12質量部を共に攪拌混合し、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)15質量部をシクロヘキサノン20質量部と共に加熱溶解させた後、リン含有エポキシ樹脂(東都化成(株)製「FX289EK75」、エポキシ当量306の不揮発分75質量%のMEK溶液)15質量部、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」、エポキシ当量185)8質量部、活性エステル硬化剤(DIC(株)製「EXB9460−65T」、活性基当量223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)20質量部、ビニルベンジル化合物(昭和高分子(株)製「V5000X」、不揮発分65質量%のトルエン溶液)5質量部、フェノキシ樹脂溶液(ジャパンエポキシレジン(株)製「YX−6954」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンとの混合溶液)6質量部を添加した。硬化促進剤としてイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体(ジャパンエポキシレジン(株)製「jERcure P200H50」)0.5質量部、4−ジメチルアミノピリジン(東京化成(株)製)0.1質量部、ナフテン酸亜鉛(II)(東京化成(株)製、亜鉛含有量8%のミネラルスピリット溶液)の3質量%のシクロヘキサノン溶液4.5質量部、及び球形シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.5μm)74質量部及び、タルク(日本タルク(株)製「D800」をアミノシランを表面処理したもの、平均粒子径0.8μm)11質量部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、熱硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。
脂組成物の不揮発分中、エポキシ樹脂21質量%、シアネートエステル樹脂15質量%、活性エステル硬化剤8質量%、ビニルベンジル化合物2質量%、イミダゾール系硬化促進剤0.15質量%、金属系硬化促進剤に由来する金属(亜鉛)44ppm、高分子化合物1質量%、無機充填材53質量%となる。
次に、かかる樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0105】
<実施例8>
ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「DT−4000」、シアネート当量140、不揮発分85質量%のトルエン溶液)11質量部、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230S75」、シアネート当量232、不揮発分75質量%のメチルエチルケトン(以下MEKと略す)溶液)30質量部を共に攪拌混合し、ナフトール型エポキシ樹脂として東都化成(株)製「ESN−475V」(エポキシ当量340の不揮発分65質量%のMEK溶液)25質量部にビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製
「NC3000L」)10部をシクロヘキサノン20部と共に加熱溶解させた後、ナフタレン型2官能エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032SS」エポキシ当量145)3質量部、活性エステル硬化剤(DIC(株)製「EXB9460−65T」、活性基当量223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)10部、フェノキシ樹脂溶液(ジャパンエポキシレジン(株)製「YX−6954BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンとの混合溶液)6質量部、硬化促進剤としてイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体(ジャパンエポキシレジン(株)製「jERcure P200H50」、不揮発分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)0.5質量部、ナフテン酸亜鉛(II)(東京化成(株)製、亜鉛含有量8%のミネラルスピリット溶液)の3質量%のシクロヘキサノン溶液3質量部、及び球形シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.5μm)97質量部及び、タルク(日本タルク(株)製「D800」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.8μm)13質量部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、熱硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。
樹脂組成物の不揮発分中、エポキシ樹脂16質量%、シアネートエステル樹脂18質量%、活性エステル硬化剤4質量%、ビニルベンジル化合物0質量%、イミダゾール系硬化促進剤0.14質量%、金属系硬化促進剤に由来する金属(亜鉛)40ppm、高分子化合物1質量%、無機充填材61質量%となる。
次に、かかる樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0106】
<比較例1>
実施例1において、活性エステル硬化剤(DIC(株)製EXB9460−65T、活性基当量223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)を添加しない熱硬化性樹脂組成物及び球形シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.5μm)77質量部を混合し、樹脂組成物の不揮発分中、無機充填材が実施例1と同量(58質量%)となるように調製した。かかる樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0107】
<比較例2>
実施例3において、活性エステル硬化剤(DIC(株)製EXB9460−65T、活性基当量223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)を添加しない熱硬化性樹脂組成物及び球形シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.5μm)77質量部を混合し、樹脂組成物の不揮発分中、無機充填材が実施例3と同量(57質量%)となるように調製した。かかる樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0108】
<密着強度低下率の測定及び評価>
(1)積層板の下地処理
内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板[銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.3mm、松下電工(株)製R5715ES]の両面をメック(株)製メックエッチボンドCZ8100に浸漬して銅表面の粗化処理を行った(Ra値=1μm)。
(2)接着フィルムのラミネート
実施例及び比較例で作成した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP-500(名機(株)製商品名)を用いて、積層板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaでプレスすることにより行った。
(3)銅箔の下地処理
三井金属鉱山(株)製3EC−III(電界銅箔、35μm)の光沢面をメック(株)製メックエッチボンドCZ−8100に浸漬して銅表面に粗化処理(Ra値=1μm)を行った。この銅箔をCZ銅箔という。
(4)銅箔のラミネートと絶縁層形成
上記(2)においてラミネートされた接着フィルムからPETフィルムを剥離し、(3)のCZ銅箔の処理面を樹脂組成物層側にし、(2)と同様の条件で、銅箔を、回路基板両面に形成された樹脂組成物層上にラミネートした。そして、190℃、90分の硬化条件で樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成することで、サンプルを作製した。
(5)銅箔引き剥がし強さ(密着強度)の測定
銅表面に1μmの粗化処理がされた銅箔を用いて作製された上記(4)記載のサンプル510×340mmを150×30mmの小片に切断した。小片の銅箔部分に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをカッターを用いていれて、銅箔の一端を剥がしてつかみ具(株式会社ティー・エス・イー、オートコム型試験機 AC−50C−SL)で掴み、インストロン万能試験機を用いて、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重をJIS C6481に準拠して測定し、「環境試験前のCZ銅箔との密着強度」とした。
(6)高温高湿下での銅箔引き剥がし強さ(密着強度)の測定
上記(4)のサンプルに対して、130℃で85%RHの環境下で、100時間放置するHAST試験(highly accelerated temperature and humidity Stress Test)を実施した。その後室温に戻し、上記(5)と同様にして測定し、「環境試験後のCZ銅箔との密着強度」とした。
(7)密着強度低下率算出方法とその評価
「(環境試験前のCZ銅箔との密着強度―環境試験後のCZ銅箔との密着強度)/環境試験前のCZ銅箔との密着強度×100」の値を密着強度低下率(%)として算出した。密着強度低下率が60%以上の場合を「×」とし、60%未満40%以上の場合を「△」とし、40%未満30%以上の場合を「○」とし、30%未満20%以上の場合を「◎」とし、20%未満の場合を「◎◎」とした。
【0109】
<誘電正接の測定及び評価>
実施例及び比較例において、支持体にフッ素樹脂系離型剤(ETFE)処理したPET(三菱樹脂(株)製「フルオロージュRL50KSE」を用いた以外は同様にして、実施例1〜8、比較例1、2と同じ樹脂組成物層を有する接着フィルムを得た。得られた接着フィルムを190℃で90分間加熱することで熱硬化させ、支持体を剥離することによりシート状の硬化物を得た。その硬化物を長さ80mm、幅2mmに切り出し評価サンプルとした。この評価サンプルについてアジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies)社製HP8362B装置を用い空洞共振摂動法により測定周波数
5.8GHz、測定温度23℃にて誘電正接を測定した。誘電正接の値が0.0075以下の場合を「◎」とし、0.0075より大きく0.0085以下の場合を「○」とし、0.0085より大きく0.0090以下の場合を「△」とし、0.0090より大きい場合を「×」と評価した。
【0110】
<熱膨張率CTE(coefficient of thermal expansion)の測定及び評価>
実施例、比較例において、支持体にETFE処理したPET(三菱樹脂(株)製「フルオロージュRL50KSE」を用いた以外は同様にして、各実施例、比較例と同じ樹脂組成物層を有する接着フィルムを得た。得られた接着フィルムを190℃で90分間加熱することで熱硬化させ、支持体を剥離することによりシート状の硬化物を得た。その硬化物を、幅5mm、長さ15mmの試験片に切断し、熱機械分析装置Thermo Plus TMA8310((株)リガク製)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における25℃から150℃までの平均線熱膨張率(ppm)を算出した。CTEの値が40ppm以下の場合は「○」と評価した。
【0111】
結果を表1に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
表1の結果から、実施例1、2、3、4で得られた接着フィルムにより形成された絶縁層は、誘電正接が低く、また環境試験後のCZ銅箔との密着性の低下が抑制されている。一方、活性エステル硬化剤を含まない比較例1、2は、同様の組成で活性エステル硬化剤を含む実施例1と比較して誘電正接が高く、環境試験後のCZ銅箔との密着性も大きく低下している。また実施例5〜8は、活性エステル硬化剤の使用に加え、無機充填材としてシリカとタルクを配合しているため、シリカのみの実施例1〜4よりも、さらにCZ銅箔との密着性低下が改善され、密着強度低下率が非常に低いレベルに抑制されている。
【産業上の利用可能性】
【0114】
樹脂組成物により形成される絶縁層が、低誘電正接であり、加速環境試験後における絶縁層と導体層の密着性が優れた、樹脂組成物、接着フィルム、プリプレグ、多層プリント配線板を提供できるようになった。更にこれらを搭載した、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ、テレビ、等の電気製品や、自動二輪車、自動車、電車、船舶、航空機、等の乗物も提供できるようになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)シアネートエステル樹脂、(C)活性エステル硬化剤及び(D)硬化促進剤を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
(D)硬化促進剤が、金属系硬化促進剤及び、アミン系硬化促進剤、及びイミダゾール系硬化促進剤から選ばれた1種以上である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(D)硬化促進剤が、コバルト 、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、及びスズから選択される1種以上の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩からなる金属系硬化促進剤である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、(A)エポキシ樹脂の含有量が5〜60質量%、(B)シアネートエステル樹脂の含有量が5〜50質量%、(C)活性エステル硬化剤の含有量が2〜20質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(D)硬化促進剤が金属系硬化促進剤を含み、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、該金属系硬化促進剤に基づく金属の含有量が25〜500ppmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(D)硬化促進剤がアミン系硬化促進剤及び/又はイミダゾール系硬化促進剤を含み、樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、該アミン系硬化促進剤及び/又はイミダゾール系硬化促進剤の含有量が0.05〜3質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
シアネートエステル基とエポキシ基との比率が1:0.4〜1:2、エステル基とエポキシ基との比率が1:2〜1:20である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
さらに(E)無機充填材を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
無機充填材がタルク及びシリカである請求項8記載の樹脂組成物。
【請求項10】
樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、タルクとシリカの含有量の合計が35質量%〜70質量%であり、かつ、タルクの含有量が5質量%〜20質量%である請求項9記載の樹脂組成物。
【請求項11】
さらに(F) ビニルベンジル化合物を含有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、(F)ビニルベンジル化合物の含有量が2〜50質量%である、請求項11記載の樹脂組成物。
【請求項13】
さらに(G)ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、及びポリエステル樹脂から選択される1種以上の高分子化合物を含有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、(G)高分子化合物の含有量が1〜20質量%である、請求項13記載の樹脂組成物。
【請求項15】
誘電正接特性が0.004〜0.009であり、環境試験前後の密着強度低下率が0%〜59%であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の樹脂組成物が支持体上に層形成された接着フィルム。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の樹脂組成物がシート状補強基材中に含浸されたプリプレグ。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物により絶縁層が形成された多層プリント配線板。

【公開番号】特開2010−285594(P2010−285594A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33901(P2010−33901)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】