説明

欠陥検査方法および欠陥検出装置

【課題】被検査物が複雑な形状である場合でも、精度よく欠陥検出をすることができる欠陥検方法および欠陥検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】欠陥検出方法は、被検査物を撮像し、撮像画像データを取得する撮像工程ST1と、エッジ検出工程ST3と、頂点検出工程ST4と、基準検出工程ST6と、欠陥検出工程ST9とを備える。基準検出工程ST6はエッジ追跡方向に沿って順に各頂点のエッジ回転方向を検出した際に、エッジ回転方向の向きが変化する頂点の直前の頂点を基準点として設定し、エッジ追跡方向に沿う基準点間のエッジに対し、後段の基準点におけるエッジ回転方向を基準回転方向として設定し、欠陥検出工程ST9は基準点間のエッジを追跡し、エッジ回転方向が、基準回転方向と異なる点を欠陥点として検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置を使用し構造面を撮像して、その撮像画像より欠陥を検出する欠陥検出方法および欠陥検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エリアカメラなどの撮像装置を用いて構造面を撮影し、その撮影画像上にある構造の形状欠陥、あるいは構造に接する異物を検出する方法として、予め用意してあった良品パターンと被検査物とを重ね合わせることで欠陥を検出するパターンマッチング法が知られている。しかしながら、被検査物の形状が例えば温度などにより変化する場合など、被検査物の形状が一意に定まらない場合には、パターンに合致しない形状を全て欠陥として検出してしまうおそれがあり、誤検出の原因となる。
これに対して、被検査物の外周エッジを追跡し、欠陥を検出する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の欠陥検出方法では、被検査物を撮像し、その撮像画像を所定輝度値に対して2値化した二値化画像を生成する。そして、この二値化画像に対してエッジ追跡を行い、エッジの座標3点のなす角を特徴量として算出し、その特徴量から欠陥を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−43325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のような欠陥検出方法では、被検査物の形状が複雑な場合、例えば一部に多くの頂点が存在する場合などでは、3点間の座標が頻繁に変化してしまい、実際は欠陥のない良品であったとしても、3点間のなす角が大きくなる場合があり、誤検出の原因となるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、被検査物が複雑な形状である場合でも、精度よく欠陥検出をすることができる欠陥検方法および欠陥検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の欠陥検出方法は、被検査物を撮像し、その撮像画像データに基づいて、欠陥を検出する欠陥検出方法であって、被検査物を撮像し、撮像画像データを取得する撮像工程と、前記撮像画像データに基づいて、前記被検査物の構造外周であるエッジを検出するエッジ検出工程と、2つの直線状の前記エッジ間に形成される頂点を検出する頂点検出工程と、前記エッジに沿う一方向をエッジ追跡方向として設定するエッジ追跡方向設定工程と、エッジ追跡方向に沿って前記エッジを追跡して、前記頂点において、前記エッジ追跡方向の前段の前記エッジである第一エッジに対する、前記エッジ追跡方向に後段の前記エッジである第二エッジの角度を検出し、第一エッジに対する第二エッジの回転方向であるエッジ回転方向を検出するエッジ回転方向検出工程と、前記エッジ追跡方向に沿って順に各頂点の前記エッジ回転方向を検出した際に、前記エッジ回転方向の向きが変化する頂点の直前の頂点を基準点として設定するとともに、前記エッジ追跡方向に沿う前記基準点間の前記エッジに対して、後段の前記基準点におけるエッジ回転方向を基準回転方向として設定する基準検出工程と、前記基準点間のエッジを、前記エッジ追跡方向に沿って追跡し、前記エッジ回転方向が、前記基準回転方向と異なる点を欠陥点として検出する欠陥検出工程と、を具備したことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、エッジ検出工程において、撮像画像に基づいて被検査物のエッジを検出し、頂点検出工程でエッジ上の頂点を検出する。また、エッジ追跡方向設定工程で、検出したエッジに沿う一方向をエッジ追跡方向として設定し、エッジ回転方向検出工程において、各頂点の回転方向を検出する。
ここで、頂点の回転方向とは、次のように定義する。すなわち、頂点を挟むエッジのうち、エッジ追跡方向に沿う前段の部分を第一エッジ、後段の部分を第二エッジとした際、第二エッジが第一エッジに対して回転する方向を頂点の回転方向とする。
そして、基準検出工程では、エッジ追跡方向に沿って、頂点のエッジ回転方向を順次検出し、エッジ回転方向の向きが変化する頂点が検出されると、エッジ追跡方向に対してこの検出された頂点の直前の頂点を基準点として設定する。また、この基準検出工程では、基準点間を結ぶエッジに対して、エッジ追跡方向に沿う後段の基準点のエッジ回転方向を基準回転方向として設定する。
そして、欠陥検出工程では、基準点間のエッジ上の各点において、エッジ回転方向が基準回転方向と異なる点を検出し、この点を欠陥として検出する。
すなわち、エッジ追跡方向に沿ってエッジ回転方向が同一である頂点が並ぶと、これらの頂点間を結ぶエッジ上では、基準回転方向がエッジ回転方向となる。したがって、エッジ追跡方向に沿って各点の回転方向を検出した際、頂点のエッジ回転方向と異なる方向を有する点を欠陥として検出することができる。このような欠陥検出方法では、狭範囲に複数の頂点が点在していたとしても、エッジ上の各点の回転方向により欠陥を検出するため、精度よく欠陥を検出することができる。したがって、被検査物が複雑な形状である場合でも、精度よく欠陥検出をすることができる。
【0009】
本発明の欠陥検出方法は、前記エッジ検出工程は、前記撮像画像データの各画素の輝度値を、所定閾値に対して二値化した二値化画像を生成し、前記基準検出工程は、二値化画像に対して、前記基準点となる頂点を含む所定画素範囲を基準点走査領域として設定する領域設定工程と、この基準点走査領域に対して、所定の走査方向を設定する走査方向設定工程と、前記基準点等差領域内における前記頂点の先端方向の一方端から順に、走査方向に沿う輝度値変化量を演算し、前記輝度値変化量が始めて所定閾値以上となる点を検出し、この検出点を基準点として設定する基準点設定工程と、を有することが好ましい。
【0010】
この発明によれば、エッジ検出工程では、撮像画像に対して所定閾値に対して二値化画像を生成し、基準点設定工程では、この二値化画像に設定した基準点走査領域に対して、所定の走査方向に沿う輝度変化を検査し、輝度変化が見られる最初の画素を基準点として設定する。これにより、基準点の正確な位置を検出することができ、欠陥検出工程においてこの正確な基準点位置の間のエッジに沿って欠陥検出を実施でき、欠陥検出の精度を向上させることができる。
【0011】
本発明の欠陥検出方法は、前記欠陥検出工程は、前記エッジ上の第一検査対象点およびこの第一検査対象点から所定画素だけ離れた第二検査対象点の傾きと、前記エッジ追跡方向に沿って前記第一検査対象点および前記第二検査対象点を所定画素分だけ移動させた際の前記傾きとに基づいて、角度変化量を算出し、前記基準回転方向を正方向として、前記角度変化量が負方向に所定の欠陥閾値以上となる点を欠陥点として検出することが好ましい。
【0012】
この発明によれば、欠陥検出工程では、第一検査対象点および第二検査対象点の傾きと、第一検査対象点および第二検査対象点を所定画素分移動させた際の傾きとに基づいて角度変化量を算出する。そして、基準回転方向を正方向とし、角度変化量が負方向に所定閾値以上となる点を欠陥点として検出している。
一般に、エッジ上に欠陥や異物の付着がある場合、エッジ上に凸状部または凹状部が形成される。このような凸状部、凹状部上の点では回転方向が、基準回転方向とは逆方向となる点が生じるため、各点の角度変化量を検出することで欠陥や異物を容易に検出することができる。
【0013】
本発明の欠陥検出装置は、被検査物を撮像し、その撮像画像データに基づいて、欠陥を検出する欠陥検出装置であって、被検査物を撮像し、撮像画像データを取得する撮像手段と、前記撮像画像データに基づいて、前記被検査物の構造外周であるエッジを検出するエッジ検出手段と、2つの直線状の前記エッジ間に形成される頂点を検出する頂点検出手段と、前記エッジに沿う一方向をエッジ追跡方向として設定するエッジ追跡方向設定手段と、エッジ追跡方向に沿って前記エッジを追跡して、前記頂点において、前記エッジ追跡方向の前段の前記エッジである第一エッジに対する、前記エッジ追跡方向に後段の前記エッジである第二エッジの角度を検出し、第一エッジに対する第二エッジの回転方向であるエッジ回転方向を検出するエッジ回転方向検出手段と、前記エッジ追跡方向に沿って順に各頂点の前記エッジ回転方向を検出した際に、前記エッジ回転方向の向きが変化する頂点の直前の頂点を基準点として設定するとともに、前記エッジ追跡方向に沿う前記基準点間の前記エッジに対して、後段の前記基準点におけるエッジ回転方向を基準回転方向として設定する基準検出手段と、前記基準点間のエッジを、前記エッジ追跡方向に沿って追跡し、前記エッジ回転方向が、前記基準回転方向と異なる点を欠陥点として検出する欠陥検出手段と、を具備したことを特徴とする。
【0014】
この欠陥検出装置においても、上記発明と同様に、エッジ追跡方向に沿うエッジ上の各点の回転方向に基づいて欠陥として検出するため、狭範囲に複数の頂点が点在していたとしても、精度よく欠陥を検出することができる。したがって、被検査物が複雑な形状である場合でも、精度よく欠陥検出をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態による欠陥検出装置である検査制御装置の構成図。
【図2】CCDカメラにより撮像された撮像画像データの一例を示す図。
【図3】図2の撮像画像データの二値化画像を示す図。
【図4】図2の撮像画像データのエッジを強調したエッジ画像を示す図。
【図5】エッジ回転方向の定義、およびエッジ方向設定手段によるエッジ回転方向の設定手順を説明する図。
【図6】本実施の形態の欠陥検出動作のフローチャート。
【図7】頂点検出工程における頂点検出処理を説明する説明図。
【図8】基準検出工程における基準点設定処理を説明する説明図。
【図9】基準検出工程における基準点の座標位置検出を説明する説明図。
【図10】欠陥検出工程を説明する説明図。
【図11】図10において、エッジ上の一部の拡大図。
【図12】欠陥検出画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態による欠陥検出装置である検査制御装置の構成図である。
本実施の形態の欠陥検出装置10は、フレキシブル基板や、液晶パネル(TFTパネル)、半導体ウエハーなどの被検査物1の欠陥や、付着した異物などを検出するものである。被検査物1は、XYステージ2上に載置され、平面的に移動可能に構成されている。
欠陥検出装置10は、顕微鏡3、CCDカメラ4、検査制御装置5、および表示装置6を備えている。
【0017】
顕微鏡3は、被検査物1を拡大してCCDカメラ4で撮影するために設けられており、被検査物1の欠陥を検出するために十分な倍率を有するものが用いられている。
CCDカメラ4は、顕微鏡3を介して被検査物1を撮影する撮像手段である。
検査制御装置5は、CCDカメラ4を制御し、被検査物1を検出する画像処理手段である。表示装置6は、検査制御装置5に接続された液晶ディスプレイなどの表示装置である。
【0018】
検査制御装置5は、画像入力手段50と、角度変化検出手段51と、欠陥抽出手段52と、欠陥検出手段53とから構成されている。
【0019】
画像入力手段50には、図2に示すようなCCDカメラ4で撮像された取込画像の撮像データ19が入力される。ここで、図2は、CCDカメラ4により撮像された撮像画像データの一例を示す図である。画像入力手段50は、この入力された画像データを、図示しない記憶手段に記憶する。すなわち、画像入力手段50によってCCDカメラ4を用いて検査対象を撮像する画像取得工程(撮像工程)が実施される。
【0020】
角度変化検出手段51は、取得した画像データの画像エッジ部分に対して角度変化の検出を行う角度変化検出工程を実施する。この角度変化検出手段51は、二値化画像生成手段511と、エッジ検出手段512と、頂点検出手段513と、エッジ方向設定手段514と、基準検出手段515と、エッジ追跡手段516とを備えている。なお、エッジ追跡手段516と、欠陥抽出手段52と、欠陥検出手段53とにより、本発明の欠陥検出手段が構成される。
【0021】
二値化画像生成手段511は、画像入力手段50に入力された画像データに基づいて、二値化画像を生成する二値化画像生成処理を実施する。
すなわち、二値化画像生成手段511は、図3に示されるように撮像画像の画像データを背景色、前景色の2色にわける。図3は、図2の撮像画像データの二値化画像を示す図である。
具体的には、二値化画像生成手段511は、撮像画像の各画素の輝度値を予め設定された閾値以上か否かにより分類する。本実施形態では、前記閾値以上の輝度値を有する画素の輝度値を例えば255(白色)に設定し、前記閾値未満の輝度値を有する画素の輝度値を例えば0(黒色)として設定した二値化画像7を生成する。
【0022】
図4は、図2の撮像画像データのエッジを強調したエッジ画像を示す図である。
エッジ検出手段512は、撮像画像または二値化画像7に基づいて、エッジを強調した図4に示すようなエッジ画像8を作成する処理を実施するここで、エッジとは、被検査物1の外周形状に沿うラインである。
具体的には、エッジ検出手段512は、例えば微分値計算によりエッジ検出を行い、検出されたエッジを線で表したエッジ画像8を作成する。
【0023】
頂点検出手段513は、被検査物1の頂点12を特定する。本実施の形態の欠陥検出装置は、工場などで製造されるウエハーや、液晶パネルなど、予め形状データが設計時点で明確となっている対象を、被検査物1とするものであり、被検査物1において、どの位置に頂点12が設けられるかの大凡の位置は、頂点予測データとして例えば記憶手段に記憶されている。この頂点予測データとしては、例えば、図4に示すように、頂点12が形成される範囲を示すマスクデータとしての頂点予測データ81であればよい。この場合、頂点検出手段513は、この頂点予測データ81を読み込むことで、予め頂点が存在する範囲を把握し、この範囲内の頂点12を全て検出する。
また、頂点予測データ81として、さらに詳細な頂点の予測領域、例えば図9に示す走査領域9が記録されているデータであってもよい。
【0024】
エッジ方向設定手段514は、エッジ追跡方向11(図8、9参照)を設定し、このエッジ追跡方向11に基づいてエッジ回転方向を検出する。ここで、エッジ方向設定手段514により設定されるエッジ追跡方向11としては、エッジに沿う一方向であればいずれの方向であってもよい。
図5は、エッジ回転方向の定義、およびエッジ方向設定手段によるエッジ回転方向の設定手順を説明する図である。
ここで、本発明で述べるエッジ回転方向を以下のように定義する。すなわち、図5において、頂点12を挟む一対のエッジ13のうち、エッジ追跡方向11の前段のエッジ13を第一エッジ13A、エッジ追跡方向11の後段のエッジ13を第二エッジ13Bとする。また、第一エッジ13Aのエッジ追跡方向11に沿う直線方向をx軸正方向、頂点12を原点O、原点Oにおけるx軸に直交する方向をy軸とした座標系を設定する。そして、この座標系において、第二エッジ13Bが第一象限および第二象限内に位置する場合、エッジ回転方向を反時計周り方向と定義し、第二エッジ13Bが第三象限および第四象限内に位置する場合、エッジ回転方向を時計回り方向とする。
エッジ方向設定手段514は、先に設定したエッジ追跡方向に沿って各頂点12における第二エッジ13Bの位置を順に検査し、第一エッジ13Aおよび頂点12に対する、第二エッジ13Bの位置を検出することで、各頂点12におけるエッジ回転方向を検出する。
【0025】
基準検出手段515は、後述のエッジ追跡処理における始点および終点となる頂点、すなわち、基準点を設定する。また、基準検出手段515は、検出された基準点間のエッジ13に対する基準回転方向を設定する。
【0026】
具体的には、図8に示されるように、基準検出手段515は、エッジ追跡方向11に沿って順に頂点12のエッジ回転方向を認識する。そして、基準検出手段515は、エッジ回転方向が変化する頂点12を検出すると、その直前の頂点12を基準点18として検出する。例えば、エッジ追跡方向に沿って、エッジ回転方向が時計回り方向である頂点A,B,Cが連続して検出され、その後、頂点Dにおいて、エッジ回転方向が反時計回り方向であると検出された場合、この頂点Dの直前の頂点Cを基準点18として設定する。
【0027】
また、基準検出手段515は、設定した基準点18の正確な位置座標を検出する。すなわち、先に検出された頂点12は、エッジ回転方向を検出するために簡易的に検出されたものであり、その正確な位置座標が検出されたものではない。一方、エッジ13に沿って欠陥検出を実施する際には、各基準点18の位置座標をより詳細に設定する必要がある。
このために、基準検出手段515は、まず、基準点18を含む大凡の基準点領域を設定し、この基準点領域内を所定の走査方向に沿って走査し、走査方向に沿う輝度変化点を認識することで、基準点の正確な座標位置を検出する。なお、この基準点18の座標位置の詳細な検出方法については、後述する。
【0028】
そして、基準検出手段515は、設定された基準点18間を結ぶエッジ13における基準回転方向を設定する。具体的には、基準検出手段515は、基準点18間を結ぶエッジ13に対して、エッジ追跡方向11の後段側基準点18におけるエッジ回転方向を基準回転方向として設定する。
【0029】
エッジ追跡手段516は、基準検出手段515によって設定された基準点18間をエッジ追跡方向に沿って追跡し、エッジ上の各点における角度変化量を算出する。
具体的には、エッジ追跡手段516は、エッジ13上の第一検査対象点とこの検査対象点から一定の距離だけ離れた第二検査対象点との角度を計算する。また、エッジ追跡手段516は、第一検査対象点および第二検査対象点をエッジ追跡方向に沿って1画素ずつずらして順次これら2点の角度を算出する。
【0030】
欠陥抽出手段52は、角度変化検出手段51のエッジ追跡手段516により算出された角度変化量に基づいて、欠陥候補を抽出する。具体的には、欠陥抽出手段52は、角度変化量が所定の閾値範囲から外れたものを、欠陥候補として抽出する。
【0031】
欠陥検出手段53は、欠陥抽出手段52により抽出された欠陥候補が欠陥に該当するかどうかを判断する欠陥検出処理を行う。具体的には、欠陥検出手段53は、欠陥候補点における角度変化方向が基準回転方向と逆方向である場合に、欠陥として判別する。
【0032】
[欠陥検出装置の動作]
次に、本発明の欠陥検出装置10の動作について、図面に基づいて説明する。
図6は、この実施形態の欠陥検出装置10の動作を説明するためのフローチャートである。図6に示す動作は、検査制御装置5上で実行されるプログラムにより実行されている。
【0033】
まず、被検査物1がXYステージ2にセットされると、検査制御装置5の画像入力手段50は、被検査物1の画像をCCDカメラ4で撮影し、図2に示すような撮像データ19の画像を取り込む画像取得処理を実施する(ステップST1:撮像工程)。このとき撮像データは、図示しないA/D変換器により、例えば、4096階調(12ビット)のデジタルデータとして、検査制御装置5に取り込まれる。
【0034】
次に、二値化画像生成手段511は、取得された撮像データ19に対して、背景色と前景色に分離する二値化画像を生成する(ステップST2:二値化画像生成工程)。具体的には、この二値化画像生成工程では、二値化画像生成手段511は、撮像データ19の各画素の輝度値を検出し、これらの輝度値が閾値以上であれば「1」、閾値未満であれば「0」を設定する。そして、二値化画像生成手段511は、「1」が設定された画素の輝度値を最大輝度値(例えば255)に設定し、「0」が設定された画素の輝度値を最小輝度値(例えば0)に設定した二値化画像7を生成する。
【0035】
次に、エッジ検出手段512は、撮像データ19および二値化画像7に基づいて、図4に示すようなエッジ画像8を生成するエッジ検出工程を実施する(ステップST3)。このエッジ検出工程では、微分値計算によりエッジを検出し、検出されたエッジ13を白線で表示したエッジ画像8を作成する処理である。すなわち、図2で示されるような撮像画像を図4に示すようなエッジ13のみを線で強調した表示画像を作成する。
なお、本実施形態では、エッジを白線で強調するエッジ画像8を生成する例を示すが、エッジを例えば黒線など、他色にて表示する画像であってもよい。
【0036】
次に、頂点検出手段513は、エッジ検出工程で取得した画像に対して頂点12を検出する頂点検出工程を実施する(ステップST4)。
この頂点検出工程では、頂点検出手段513は、エッジ画像8内における頂点12の大凡の位置を検出する。これには、上記したように、予め記憶手段に記憶されている頂点予測データ81を用いて、頂点12の位置を絞り込み、図7に示すように、頂点12を検出する頂点検出処理を実施する。
【0037】
そして、この頂点検出手段513の後、エッジ方向設定手段514は、エッジ追跡方向11およびエッジ回転方向を設定する(ステップST5:本発明のエッジ回転方向設定工程に対応するエッジ方向設定工程)。
【0038】
この後、基準検出手段515は、エッジ追跡処理における始点および終点となる頂点、すなわち、基準点を設定するとともに、終点のエッジ回転方向を基準回転方向として設定する(ステップST6)。
【0039】
具体的には、基準検出工程では、図8に示すように、エッジ追跡方向11に沿って順次頂点12のエッジ回転方向を検出し、このエッジ回転方向の向きが逆向きとなる頂点12を検出すると、その直前の頂点12を基準点18として設定する。
次に、基準検出手段515は、検出した基準点18の座標位置を検出する。これには、図9に示すように、基準検出手段515は、まず、基準点18を含む基準点走査領域20を設定する(領域設定工程)。そして、基準検出手段515は、エッジ13と、基準点走査領域20の領域境界線21との交点をL1,L2として検出し(エッジ追跡方向11に沿ってL1,L2の順)、これらの点L1,L2を結ぶ仮想線分lを引く。そして、基準検出手段515は、この仮想線分lに沿う方向、例えばL1からL2に向かう方向を走査方向として設定する(走査方向設定工程)。
また、基準検出手段515は、仮想線分lに直交する線(例えば仮想線分lの垂直二等分線r)と、基準点走査領域20の領域境界線21との交差点をR1、R2とする。そして、基準検出手段515は、これらの点R1,R2のうち、頂点の先端方向、すなわち、仮想線分lより、エッジの2直線の交点が設けられる側の点R1を通り、走査方向に平行する直線上の輝度値を検出し、頂点検出処理を実施する(基準点設定工程)。
この頂点検出では、基準検出手段515は、基準点走査領域20に存在する基準点18のエッジ回転方向に応じて、二値化画像の輝度変化点を検出する。本実施の形態では、被検査物1の構造形状内が低輝度(例えば輝度値0)、背景が高輝度(例えば輝度値255)である二値化画像が生成されるが、この場合、例えば図9の左下拡大図に示すように、エッジ回転方向が時計回り方向である場合、基準検出手段515は、走査方向に沿って輝度値が低輝度から高輝度になる変化点があるか否かを検出する。ここで、変化点が検出されない場合は、基準検出手段515は、仮想線分lに直交する線rに沿って、走査対象を、R1より1画素だけR2側に移動させ、上記と同様に、走査方向に沿って輝度値の変化点を検出する。以下、基準検出手段515は、輝度値の変化点が検出されるまで上記走査を実施する。そして、輝度値の変化点が検出されると、その変化点を基準点18とし、その位置座標を計測する。
【0040】
基準検出工程では、上述のように、基準検出手段515は、基準点18間を結ぶエッジに対して、エッジ追跡方向11の後段側の基準点18のエッジ回転方向を基準回転方向として設定する。
【0041】
この後、エッジ追跡手段516は、基準検出手段515によって設定された基準点18間をエッジ追跡方向に沿って追跡し、エッジ上の各点における角度変化量を算出する(ステップST7)
ここで、角度変化量の算出方法について、図10および図11に基づいて説明する。図10は、エッジ追跡工程を説明するためのエッジ画像の拡大図であり、図11は、図10における一部領域Aをさらに画素単位で拡大した図である。
エッジ追跡手段516は、まず、エッジ上の第一検査対象点P(i)と、この第一検査対象点P(i)から所定画素だけ離れた第二検査対象点P(i−d)と、を認識し、これら第一検査対象点P(i)と第二検査対象点P(i−d)の傾きを算出する。次に、エッジ追跡手段516は、第一検査対象点P(i)および第二検査対象点P(i−d)を1画素だけずらし、その傾きを算出する。そして、エッジ追跡手段516は、これらの傾きから次式(1)に基づいて、角度変化量θ(i)を算出する。
【0042】
【数1】

【0043】
次に、欠陥抽出手段52は欠陥を抽出する欠陥候補抽出工程(ステップST8)を実施する。この欠陥候補抽出工程では、エッジ13上の各点において、角度変化量θ(i)の絶対値が所定閾値以上となる点を欠陥候補として検出する。すなわち、検査対象物は、検査時の温度などの環境要因や、その他の要因により、膨張縮小など、僅かに変形する場合があり、これらの変形を欠陥と検出すると、良品である検査物に対しても欠陥であると誤検出してしまうおそれがある。これにより、エッジ13に略沿う位置に配置される点は、欠陥として検出されない。
【0044】
次に、欠陥検出手段53は、欠陥抽出手段52で抽出された欠陥候補から欠陥を判別する工程を実施する(ステップST9)。なお、ステップST7からステップST9の各工程により本発明の欠陥検出工程が実施される。
例えば、図10および図11の例では、エッジ13の基準回転方向は反時計周り方向となる。一方、図11に示すように、点P(i)において、ステップST8で角度変化量の絶対値が閾値以上となるので、欠陥候補として検出される。欠陥検出手段53は、欠陥候補であるこの点P(i)が、欠陥であるか否かを判別する。ここで、欠陥検出手段53は、この画素P(i)における角度変化方向を検出し、基準回転方向と反対方向であれば欠陥として検出する。例えば、図11に示す例では、基準回転方向が反時計回り方向であるため、図11において矢印S1方向が正方向となり、矢印S2方向が負方向となる。したがって、欠陥検出手段53は、矢印S2方向に角度変化方向を有する点P(i)を欠陥として検出する。
また、欠陥検出手段53は、検出した欠陥を適宜読み出し可能に図示されない記憶部に記憶する。なお、欠陥検出手段53は、上記のように検出された欠陥を、例えば、図12のように表示した欠陥位置表示画像を生成してもよい。
【0045】
[本実施の形態の作用効果]
上述したように、上記実施の形態の欠陥検出装置10では、撮像工程で、カメラ4により、被検査物1を撮像し、エッジ検出工程において、エッジ検出手段512により、検査対象物の撮像画像からエッジを検出し、頂点検出工程において、頂点検出手段513により、検出したエッジ上の頂点12を検出する。そして、エッジ方向設定工程において、エッジ方向設定手段514は、エッジに沿う一方向をエッジ追跡方向11として設定し、このエッジ追跡方向11に沿って頂点12のエッジ回転方向を検出する。この後、基準検出工程により、基準検出手段515は、エッジ追跡方向11に沿って頂点12のエッジ回転方向を順次検出し、エッジ回転方向の向きが変化する頂点12の直前の頂点12を基準点18として設定し、この基準点18間のエッジ13の基準回転方向を設定する。
そして、欠陥検出工程では、エッジ13上の各点において、エッジ回転方向が基準回転方向と反対方向となる点を欠陥として検出している。
このような構成および欠陥検出方法では、エッジ13を、基準点18により分割することで、エッジ回転方向が基準回転方向である複数のエッジに分割することができる。したがって、これらの分割されたエッジ13において、各点の基準回転方向と一致するか否かを判断することで、容易に、かつ精度よく各点に対する欠陥の有無を判別することができる。よって、各点毎に欠陥であるか否かを判断できるため、狭い範囲に複数の頂点が集まる場合でも、影響を受けることなく、被検査物が複雑な形状である場合でも、精度よく欠陥検出を実施することができる。
【0046】
また、基準検出工程では、基準点18が含まれると予想される範囲を、基準点走査領域20として設定し、頂点12を挟む第一エッジ13Aおよび第二エッジ13Bと領域境界線21との交点L1,L2間を結ぶ仮想線分lを設定する。そして、仮想線分lの垂直二等分線rが領域境界線21と接する点をR1,R2とし、仮想線分lより頂点12側に配置される点R1から仮想線分lと平行する走査方向に沿って、点R1から点R2に向かって輝度変化を検出する。そして、この輝度変化において、初めて異なる輝度値が現れると、この点を基準点18の正確な位置として設定する。
このため、基準点18の位置を正確に設定することができるため、欠陥検出工程におけるエッジ追跡処理における始点および終点の位置座標を正確に設定することができる。したがって、欠陥検出精度をより向上させることができる。
【0047】
欠陥検出工程では、第一検査対象点P(i)および第二検査対象点P(i−d)の傾きと、第一検査対象点および第二検査対象点を所定画素分移動させた際の傾きとに基づいて角度変化量θ(i)を算出する。そして、基準回転方向を正方向とし、角度変化量が負方向に所定閾値以上となる点を欠陥点として検出している。
一般に、エッジ上に欠陥や異物の付着がある場合、エッジ上に凸状部または凹状部が形成される。このような凸状部、凹状部上の点では回転方向が、基準回転方向とは逆方向となる点が生じるため、各点の角度変化量を検出することで欠陥や異物を容易に検出することができる。
【0048】
本実施形態では、二値化画像およびエッジ画像を生成し、これら2画像を用いて欠陥検出を行っている。このため、基準点の座標を正確に把握することができ、検査の精度が向上する。
【0049】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、以上説明した実施の形態に限定されず、本発明の目的を達せられる範囲で種々の改良、変形が可能である。
【0050】
例えば、前記実施形態では、図4に示されるように、頂点予測データ81がエッジ画像に対して帯状に延びていたが、この形に限らず、楕円形などでも良い。また、各頂点が存在すると予測される範囲を記録した各頂点予測データを用いてもよい。
【0051】
また、前記実施形態は、角度変化量θ(i)が、予め決められた閾値以上のものを欠陥候補として抽出し、さらに、この欠陥候補のうち頂点の回転方向が異なるものを欠陥として検出していたが、これに限定されない。例えば、回転方向が異なるものを欠陥候補として抽出し、角度変化量θ(i)が閾値以上のものを欠陥として検出してもよい。
【0052】
さらに、二値化画像7およびエッジ画像8を用いて、欠陥検出を実施したが、例えばエッジ画像8のみにより欠陥検出を実施してもよい。この場合、頂点検出工程において、検出した頂点の座標位置を検出すればよい。
【0053】
さらに、撮像画像または二値化画像に基づいてエッジ画像を生成していたが、これに限定されない。例えば、エッジ画像を生成した後に、二値化画像を生成してもよい。
【0054】
以上、本発明を実施するための最良の構成について具体的に説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、当業者が様々な変形および改良を加えることができるものである。
【符号の説明】
【0055】
1…被検査物、50…画像入力手段、51…角度変化検出手段、52…欠陥抽出手段、53…欠陥検出手段、511…二値化画像生成手段、512…エッジ検出手段、513…頂点検出手段、514…エッジ方向設定手段、515…基準検出手段、516…エッジ追跡手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を撮像し、その撮像画像データに基づいて、欠陥を検出する欠陥検出方法であって、
被検査物を撮像し、撮像画像データを取得する撮像工程と、
前記撮像画像データに基づいて、前記被検査物の構造外周であるエッジを検出するエッジ検出工程と、
2つの直線状の前記エッジ間に形成される頂点を検出する頂点検出工程と、
前記エッジに沿う一方向をエッジ追跡方向として設定するエッジ追跡方向設定工程と、
エッジ追跡方向に沿って前記エッジを追跡して、前記頂点において、前記エッジ追跡方向の前段の前記エッジである第一エッジに対する、前記エッジ追跡方向に後段の前記エッジである第二エッジの角度を検出し、第一エッジに対する第二エッジの回転方向であるエッジ回転方向を検出するエッジ回転方向検出工程と、
前記エッジ追跡方向に沿って順に各頂点の前記エッジ回転方向を検出した際に、前記エッジ回転方向の向きが変化する頂点の直前の頂点を基準点として設定するとともに、前記エッジ追跡方向に沿う前記基準点間の前記エッジに対して、後段の前記基準点におけるエッジ回転方向を基準回転方向として設定する基準検出工程と、
前記基準点間のエッジを、前記エッジ追跡方向に沿って追跡し、前記エッジ回転方向が、前記基準回転方向と異なる点を欠陥点として検出する欠陥検出工程と、
を具備したことを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の欠陥検出方法であって、
前記エッジ検出工程は、前記撮像画像データの各画素の輝度値を、所定閾値に対して二値化した二値化画像を生成し、
前記基準検出工程は、
二値化画像に対して、前記基準点となる頂点を含む所定画素範囲を基準点走査領域として設定する領域設定工程と、この基準点走査領域に対して、所定の走査方向を設定する走査方向設定工程と、前記基準点等差領域内における前記頂点の先端方向の一方端から順に、走査方向に沿う輝度値変化量を演算し、前記輝度値変化量が始めて所定閾値以上となる点を検出し、この検出点を基準点として設定する基準点設定工程と、を有する
ことを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の欠陥検出方法であって、
前記欠陥検出工程は、前記エッジ上の第一検査対象点およびこの第一検査対象点から所定画素だけ離れた第二検査対象点の傾きと、前記エッジ追跡方向に沿って前記第一検査対象点および前記第二検査対象点を所定画素分だけ移動させた際の前記傾きとに基づいて、角度変化量を算出し、前記基準回転方向を正方向として、前記角度変化量が負方向に所定の欠陥閾値以上となる点を欠陥点として検出する
ことを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項4】
被検査物を撮像し、その撮像画像データに基づいて、欠陥を検出する欠陥検出装置であって、
被検査物を撮像し、撮像画像データを取得する撮像手段と、
前記撮像画像データに基づいて、前記被検査物の構造外周であるエッジを検出するエッジ検出手段と、
2つの直線状の前記エッジ間に形成される頂点を検出する頂点検出手段と、
前記エッジに沿う一方向をエッジ追跡方向として設定するエッジ追跡方向設定手段と、
エッジ追跡方向に沿って前記エッジを追跡して、前記頂点において、前記エッジ追跡方向の前段の前記エッジである第一エッジに対する、前記エッジ追跡方向に後段の前記エッジである第二エッジの角度を検出し、第一エッジに対する第二エッジの回転方向であるエッジ回転方向を検出するエッジ回転方向検出手段と、
前記エッジ追跡方向に沿って順に各頂点の前記エッジ回転方向を検出した際に、前記エッジ回転方向の向きが変化する頂点の直前の頂点を基準点として設定するとともに、前記エッジ追跡方向に沿う前記基準点間の前記エッジに対して、後段の前記基準点におけるエッジ回転方向を基準回転方向として設定する基準検出手段と、
前記基準点間のエッジを、前記エッジ追跡方向に沿って追跡し、前記エッジ回転方向が、前記基準回転方向と異なる点を欠陥点として検出する欠陥検出手段と、
を具備したことを特徴とする欠陥検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−243209(P2010−243209A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89437(P2009−89437)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】