説明

歪みゲージ及び基板

【課題】電子部品の実装プロセスを利用して基板に実装可能な歪みゲージを提供する。
【解決手段】歪みゲージ1Aは、ゲージ部21と電極20a,20bを有したゲージ層2と、ゲージ層2の歪みに追従する軟性を有すると共に、はんだ付けで要求される温度に対する耐熱性を有し、ゲージ層2の上面全体を被覆する軟性耐熱材料層3と、ゲージ層2の電極20a,20bを露出させて、ゲージ層2の下面を被覆する熱接着樹脂層4とを備え、基板に形成された配線パターンに電極20a,20bが接続されると共に、熱接着樹脂層で基板に接着されて基板に実装され、配線パターンを通して、基板の歪みに応じた信号が出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の歪みを測定する歪みゲージ及び歪みゲージが実装された基板に関する。詳しくは、歪みゲージを電子部品の実装プロセスを利用して基板に実装可能とすることで、手作業による貼り付け工程を不要とするものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品が実装される基板の歪みを測定する歪みゲージは、手作業での貼り付けを前提としており、貼り付け位置による測定値のばらつきの発生を抑えるため、歪みゲージの基板への貼り付け工程では、高度なスキルが要求される。
【0003】
図16は、従来の手貼り方式による歪みゲージで発生する貼り付け工程での課題を示す説明図である。
【0004】
携帯電話や可搬型のゲーム機器等、モバイル製品内部に組み込まれた高密度実装の基板110の歪み測定を行う場合、基板110上の大型の電子部品111やその他の部品によって、歪みゲージ113の貼り付け位置が大きく制限されたり、更なる貼り付けスキルが要求される。
【0005】
また、設置される歪みゲージ113の数が多くなると、製品筐体120内部でのリード線113aの配線取り回しが困難になり、また、リード線113aの噛み込みや測定中の断線が発生し易く、運用に支障が生じる場合がある。
【0006】
このため、測定までの準備が大変で効率が悪く、測定技術者と測定箇所が限られてしまい、構造解析が困難となっている。
【0007】
一方、チップ部品と同一形状の歪みゲージを基板に実装して、歪みを検出できるようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、基板に歪みゲージを内蔵した技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2001−196721号公報
【特許文献2】特開2001−015882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、基板に実装される従来の歪みゲージでは、検出された歪み信号を歪みゲージの電極から直接取り出しており、配線について考慮されていない。また、チップ型の歪みゲージを基板に実装することによる、測定歪みに対する影響も考慮されていない。更に、歪みゲージを内蔵した基板では、基板の製造コストが高くなる。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、電子部品の実装プロセスを利用して基板に実装可能な歪みゲージ及び歪みゲージを備えた基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため、本発明の歪みゲージは、抵抗体及び抵抗体の歪みによる信号を出力する電極を有したゲージ層と、ゲージ層の歪みに追従する軟性を有すると共に、はんだ付けで要求される温度に対する耐熱性を有し、ゲージ層の上面全体を被覆する保護層と、ゲージ層の電極を露出させて、ゲージ層の下面を被覆する接着層とを備え、基板に形成された配線パターンにゲージ層の電極が接続されると共に、接着層で基板に接着されて基板に実装され、配線パターンを通して、基板の歪みに応じた信号が出力されることを特徴とする。
【0012】
本発明の歪みゲージでは、電子部品の実装プロセスを利用して予め基板に実装され、手作業により歪みゲージを基板に貼り付けて行く工程は不要である。
【0013】
また、歪みゲージで検出された歪み信号は、基板に形成された配線パターンで取り出され、歪みゲージからリード線を引き出す必要がない。
【0014】
また、本発明の基板は、歪みゲージが実装される基板であって、歪みゲージは、抵抗体及び抵抗体の歪みによる信号を出力する電極を有したゲージ層と、ゲージ層の歪みに追従する軟性を有すると共に、はんだ付けで要求される温度に対する耐熱性を有し、ゲージ層の上面全体を被覆する保護層と、ゲージ層の電極を露出させて、ゲージ層の下面を被覆する接着層とを備え、歪みゲージの実装位置に、歪みゲージの電極と接続される電極パターンを有した配線パターンと、単数または複数の歪みゲージに対応して形成される配線パターンと接続されるコネクタとを備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の基板では、電子部品の実装プロセスを利用して歪みゲージが予め実装され、手作業により歪みゲージを貼り付けて行く工程は不要である。
【0016】
また、歪みゲージで検出された歪み信号は、コネクタにケーブルを接続することで取り出され、歪みゲージからリード線を引き出して配線作業を行う必要がない。
【発明の効果】
【0017】
本発明の歪みゲージによれば、ゲージ層の上面に保護層を備えることで、電子部品の実装プロセスを利用して基板に実装することができる。また、保護層は、ゲージ層の歪みに追従する軟性を有するので、測定歪みの影響を抑えることができる。更に、検出された歪み信号は、基板に形成された配線パターンから取り出されるので、実装される歪みゲージの数によらず、信号の取り出しが容易に行なえる。
【0018】
本発明の基板によれば、上述した歪みゲージを備えることで、電子部品の実装プロセスを利用して歪みゲージを実装することができる。また、基板自体に歪みゲージのパターンを形成する場合と比較して、安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の歪みゲージ及び基板の実施の形態について説明する。
【0020】
<本実施の形態の歪みゲージの構成例>
図1は、本実施の形態の歪みゲージの一例を示す斜視図で、図1(a)は、本実施の形態の歪みゲージの全体斜視図、図1(b)は、本実施の形態の歪みゲージの分解斜視図である。また、図2は、本実施の形態の歪みゲージを構成するゲージ層の詳細を示す平面図である。
【0021】
本実施の形態の歪みゲージ1Aは、ゲージ層2と、ゲージ層2の上面に貼り付けられる軟性耐熱材料層3と、ゲージ層2の下面に貼り付けられる熱接着樹脂層4を備える。
【0022】
ゲージ層2は、図2に示すように、一対の電極20a,20bと、電極20aと電極20bとの間に所定のパターンで抵抗体が形成されるゲージ部21を備える。ゲージ層2は、例えば銅(Cu)−ニッケル(Ni)箔で構成され、ゲージ部21に生じた歪みが電気抵抗の変化として検出される。
【0023】
軟性耐熱材料層3は保護層の一例で、ゲージ層2の上面全体を被覆する形状を有し、歪みゲージ1Aを吸着する実装機ノズルによるゲージ層2の損傷防止と、歪みゲージ1Aを基板にはんだ付けするリフロー炉での飛散防止と、歪みゲージ1Aを実装機に供給する搬送用テープへの収納性の向上と、搬送用テープからの静電気による吸着エラー防止のために設けられる。
【0024】
すなわち、電子部品を基板に装着する工程で使用される汎用の実装機では、電子部品を吸着する実装機ノズルは主に金属性である。一方、歪みゲージ1Aのゲージ層2は、薄い金属箔で形成されている。
【0025】
このため、汎用の実装機を利用して歪みゲージ1Aを基板に装着する場合、実装機ノズルで歪みゲージ1Aの吸着を行う際にゲージ層2を損傷しないように、ゲージ層2の上面に軟性耐熱材料層3が貼り付けられ、歪みゲージ1Aの上面にゲージ層2が露出しないように被覆される。
【0026】
また、熱風式のリフロー炉を利用して歪みゲージを基板にはんだ付けする際に、通常リフロー炉ではんだ付けされる電子部品と比較して歪みゲージの自重が軽いと、熱風で歪みゲージが飛散する可能性がある。
【0027】
このため、ゲージ層2の上面に貼り付けられる軟性耐熱材料層3によって、歪みゲージ1Aにリフロー炉での熱風で飛散しないような適度な自重を持たせる。
【0028】
更に、歪みゲージ1Aの基板への装着に実装機を使用するためには、搬送用テープを使用して歪みゲージ1Aを供給する必要がある。
【0029】
図3は、歪みゲージ1Aの供給に使用される搬送用テープの一例を示す斜視図である。搬送用テープ200には、電子部品の場合と同様に歪みゲージ1Aが収納されるエンボス(凹部)201が形成されているが、歪みゲージ1Aが極端に薄い構成であると、エンボス201の深さが極端に浅い搬送用テープを使用しなければならず、汎用性に欠ける。
【0030】
このため、ゲージ層2の上面に貼り付けられる軟性耐熱材料層3によって、歪みゲージ1Aの厚さを、電子部品の供給で使用される搬送用テープのエンボス深さに合わせて増やし、歪みゲージ1Aの供給に、汎用の搬送用テープ200を使用できるようにする。
【0031】
また、搬送用テープ200からカバーテープ202を剥がした際の剥離帯電による歪みゲージ1Aの吸着不良が、軟性耐熱材料層3を備えることによる歪みゲージ1Aの自重増加と、搬送用テープ200のエンボス深さを確保することにより防止される。
【0032】
軟性耐熱材料層3は、歪みゲージ1Aを基板にはんだ付けする際のリフロー炉での熱に耐える耐熱性と、基板の歪み測定時にゲージ層2を歪みに追従させるための軟性を有する材料、例えばポリイミド材で構成される。軟性耐熱材料層3の弾性係数は、0.1〜3.3GPa程度とし、また、軟性耐熱材料層3の厚さは、上述した諸条件を満たすために約0.2mm程度とした。
【0033】
熱接着樹脂層4は接着層の一例え、ゲージ層2の電極20aと電極20bを露出させて、ゲージ部21の下面を被覆する形状を有し、歪みゲージ1Aにおいて、基板にはんだ付けされる電極20aと電極20b以外の箇所を、基板に接着固定する。熱接着樹脂層4の厚さは、約0.1mmとした。
【0034】
熱接着樹脂層4は、歪みゲージ1Aを基板にはんだ付けする際のリフロー炉での熱で軟化し、冷却時に固化して基板との接着が行われる。このため、冷却時の収縮が少なくなるように、熱膨張率が低いことが望ましい。
【0035】
<本実施の形態の歪みゲージの製造工程例>
図4は、本実施の形態の歪みゲージの製造方法の一例を示す工程図であり、次に、本実施の形態の歪みゲージ1Aの製造工程の一例について説明する。
【0036】
まず、図4(a)に示すように、例えばポリイミド材で構成される軟性耐熱材料層3に、ゲージ層2を構成する銅(Cu)−ニッケル(Ni)箔22を貼り合わせる。次に、図4(b)に示すように、銅−ニッケル箔22を所定のパターンでエッチングして、ゲージ部21を切り出す。
【0037】
次に、図4(c)に示すように、銅−ニッケル箔22の下面でゲージ部21の形成位置に、熱接着樹脂層4を貼り付ける。そして、図4(d)に示すように、軟性耐熱材料層3に銅−ニッケル箔22が貼り付けられ、ゲージ部21が切り出されると共に、熱接着樹脂層4が貼り付けられたシートを、破線Cで示す位置をダイシングにより切断することで個片分割して、図1に示す歪みゲージ1Aが完成する。
【0038】
<本実施の形態の基板の構成例>
図5は、本実施の形態の基板の一例を示す平面図であり、次に、本実施の形態の歪みゲージ1Aが実装されて、歪みが測定される基板の一例について説明する。
【0039】
本実施の形態の基板10は、測定対象となる製品の基板と同様の配置でIC(integrated circuit)等の電子部品11が実装されると共に、基板上の測定対象箇所に歪みゲージ1Aが実装される。
【0040】
基板10は、歪みゲージ1Aの実装箇所には、図1に示す歪みゲージ1Aの電極20a,20bが電気的に接続される図示しない電極パターン(ランド)が形成される。
【0041】
また、基板10は、複数の歪みゲージ1Aで検出された歪み信号を、1箇所から取り出すためのコネクタ12と、歪みゲージ1Aとコネクタ12を電気的に接続する配線パターン13を備える。
【0042】
配線パターン13は、基板10の歪みを測定する際に影響を及ぼさない形状及び配置で、基板10に金属箔のパターンを形成して構成され、基板10では、図示しない測定機器の信号入力用のケーブル14がコネクタ12に接続されることで、複数個所の歪みゲージ1Aで検出された歪み信号が取り出される。これにより、基板10では、個々の歪みゲージ1Aからリード線を引き出して、図示しない測定機器と接続する必要がない。
【0043】
<本実施の形態の歪みゲージの実装工程例>
図6は、本実施の形態の歪みゲージの基板への実装方法の一例を示す工程図であり、次に、本実施の形態の歪みゲージ1Aの実装工程の一例について説明する。
【0044】
まず、図6(a)に示すように、基板10において、歪みゲージ1Aの実装箇所に形成された図示しない電極パターンに、はんだ印刷機ではんだ15を印刷する。
【0045】
次に、図6(b)に示すように、実装機の実装機ノズル50で歪みゲージ1Aを吸着して保持し、保持している歪みゲージ1Aの電極20a,20bの位置を、基板10上に印刷されたはんだ15に合わせて、歪みゲージ1Aを基板10に装着する。
【0046】
次に、図6(c)に示すように、歪みゲージ1Aが装着された基板10をリフロー炉等で加熱して、基板10に印刷されたはんだ15を溶解させると共に、歪みゲージ1Aに貼り付けられた熱接着樹脂層4を軟化させる。
【0047】
そして、加熱された基板10を冷却することで、はんだ15を硬化させ、歪みゲージ1Aの電極20a及び電極20bと、基板10の図示しない電極パターンをはんだで接合する。
【0048】
また、加熱された基板10を冷却することで、熱接着樹脂層4を固化させ、歪みゲージ1Aと基板10を接着する。
【0049】
ここで、実装機を利用して歪みゲージ1Aを基板10に装着する工程では、歪みゲージ1Aは、図3に示すような搬送用テープ200のエンボス201に収納されて、実装機に供給される。
【0050】
搬送用テープ200に収納されて歪みゲージ1Aが供給される実装機は、搬送用テープ200からカバーテープ202を剥がし、搬送用テープ200に収納されている歪みゲージ1Aを、実装機ノズル50で吸着して取り出す。
【0051】
このとき、搬送用テープ200からカバーテープ202を剥がした際の剥離帯電による歪みゲージ1Aの吸着不良が、軟性耐熱材料層3を備えることによる歪みゲージ1Aの自重増加と、搬送用テープ200のエンボス深さを確保することにより防止され、汎用の実装機を利用して、確実に搬送用テープ200から取り出すことができる。
【0052】
また、歪みゲージ1Aは、軟性耐熱材料層3を備えることで、ゲージ層2が露出しないように上面が被覆され、実装機ノズル50で歪みゲージ1Aの吸着を行う際に、実装機ノズル50が接触することによるゲージ層2の損傷が防止される。
【0053】
更に、歪みゲージ1Aは、軟性耐熱材料層3を備えることで適度な自重があり、リフロー炉を利用して歪みゲージ1Aを基板10にはんだ付けする工程で、歪みゲージ1Aが熱風で飛散することが防止される。
【0054】
また、歪みゲージ1Aのはんだ付け時に、はんだ15の表面張力の影響で歪みゲージ1Aと基板10との間に僅かな隙間が生じるが、熱接着樹脂層4を備えることで隙間が埋められると共に、歪みゲージ1Aと基板10の接着が行われ、基板10の歪みを歪みゲージ1Aに伝達するための接触した状態が確保される。
【0055】
<本実施の形態の歪みゲージの応力シミュレーション>
本実施の形態の歪みゲージ1Aでは、図1に示すように、ゲージ層2の上面に軟性耐熱材料層3が貼り付けられている。この軟性耐熱材料層3を貼り付けることによる測定歪みに及ぼす影響を、以下の条件で応力シミュレーションを行って検証した。
【0056】
(1−1)検証条件
図7は、応力シミュレーションの検証条件を示す説明図である。歪みゲージ1Aにおいて、ゲージ層2に軟性耐熱材料層3を貼り付けたことによる測定ゆがみに及ぼす影響を、軟性耐熱材料層3の厚さtとヤング率を変えた場合における歪み減衰率を求めてシミュレーションした。
【0057】
ここで、応力シミュレーションの試料としての歪みゲージ1Aでは、軟性耐熱材料層3の厚さtは、t=0.1〜0.3mmの範囲とすると共に、ヤング率は0.1〜3.3GPaの範囲とした。
【0058】
歪みゲージ1Aにおけるゲージ層2は、銅−ニッケル合金で構成され、厚さtはt=6μm、ヤング率は120GPaである。また、歪みゲージ1Aにおいて、軟性耐熱材料層3とゲージ層2の間にゲージポリイミド層30が設けられており、ゲージポリイミド層30の厚さtはt=7μm、ヤング率3.3GPaである。更に、基板10は、厚さtはt=1.0mm、ヤング率は25GPaである。
【0059】
図8は、歪みゲージの歪み率を示すコンター図で、歪み率を示す等値線を模式的に示している。図8で、基板10をピン60で0.3mm突き上げたときにおける、歪みゲージ1Aの長手方向の歪み率を比較する。ここで、突き上げ高さと歪み率はほぼ比例していることがわかる。
【0060】
図9は、応力シミュレーションで得たデータを示し、図9(a)は、軟性耐熱材料層3の厚みとヤング率を変えて求めた歪みゲージ1Aの歪み値を示し、図9(b)は、軟性耐熱材料層3の厚みとヤング率を変えて求めた歪みゲージ1Aの歪み減衰率を示す。
【0061】
また、図10は、歪み減衰率の変化を示すグラフで、軟性耐熱材料層3の厚さと歪み減衰率の関係を示す。
【0062】
ここで、図9(a)では、軟性耐熱材料層3を設けていない状態で歪み値が7395(με)となる力を加えたときに、軟性耐熱材料層3の厚さを変えた場合の歪み値を示し、図9(b)及び図10では、軟性耐熱材料層3を設けていない状態で歪み値が7395(με)となる力を加えたときの歪み減衰率を0(%)として、軟性耐熱材料層3の厚さを変えた場合の歪み減衰率を示す。
【0063】
(1−2)検証結果
歪みゲージ1Aでは、ゲージ層2の上面に軟性耐熱材料層3を貼り付けることにより、ゲージ層2が拘束されて伸縮し難くなることで、軟性耐熱材料層3を設けていない状態で発生し得る実際の歪みに対して、測定歪みが減衰する。
【0064】
但し、その減衰率は、図9及び図10に示すように、軟性耐熱材料層3の厚さに比例し、また、軟性耐熱材料層3のヤング率に比例することが判る。
【0065】
これにより、図9(b)及び図10で求められた実際の歪みに対する減衰率を把握しておけば、基板の歪みの測定に実使用上問題ないことがわかる。
【0066】
<本実施の形態の歪みゲージ及び基板の作用効果例>
(2−1)歪みゲージを実装型としたことによる測定箇所の制限の回避
本実施の形態の歪みゲージ1Aでは、測定の対象とする基板に予め実装される形態で使用されるので、従来の手貼り方式を採用している歪みゲージに比較して、物理的な測定箇所の制限が回避される。
【0067】
図11は、測定箇所の制限が回避される構成の具体例を示す基板の側面図である。基板110に電子部品111が実装され、電子部品111がシールドケース112で覆われている構成で、シールドケース112に覆われた内部の歪みを測定する場合を考える。
【0068】
図12は、従来の歪みゲージで測定箇所が制限される理由を示す基板の側面図である。シールドケース112に覆われた箇所の内部の歪みを測定するためには、シールドケース112の内部に歪みゲージ113を設置する必要がある。しかし、従来の手貼り方式を採用している歪みゲージ113では、シールドケース112が作業の障害となり、シールドケース112の内部に歪みゲージ113を貼り付けることができず、測定が不可能であった。
【0069】
図13は、シールドケースの内部に歪みゲージを実装する実装方法の一例を示す工程図であり、本発明を適用することで、シールドケースの内部に予め歪みゲージを実装して、シールドケース内部の歪みを測定することが可能となる。
【0070】
すなわち、図13(a)に示すように、歪み測定用に所定のパターンで作成された基板10に、歪みゲージ1Aを含む小型のチップ部品を実装する。ここで、歪みゲージ1Aの実装工程では、上述したように、歪みゲージ1Aが基板10に電気的に接続され、基板10に形成された図示しない配線パターンを通して、歪み信号の取り出しが可能なる。
【0071】
次に、図13(b)に示すように、大型の電子部品111を基板10に実装する。そして、図13(c)に示すように、電子部品111を覆うシールドケース112を基板10に実装する。このとき、電子部品111の近傍に実装される所定の歪みゲージ1Aも、シールドケース112で覆う。
【0072】
このように、歪みゲージ1Aが、シールドケース112の内部に実装されるが、歪みゲージ1Aで検出される歪み信号は、基板10に形成された配線パターンを通して取り出しが可能であるので、シールドケース112に覆われた箇所の内部の歪みを測定することが可能となる。
【0073】
(2−2)歪みゲージを実装型としたことによる実装作業のスキルレス化
本実施の形態の歪みゲージ1Aでは、電子部品の実装で使用される実装機とリフロー炉を利用して基板に実装されることで、従来の手貼り方式を採用している歪みゲージに比較して、歪みゲージの装着に関するスキルレス化が図られる。
【0074】
図14は、従来の手貼り方式による歪みゲージで発生する貼り付け工程での課題を示す説明図である。
【0075】
従来の手貼り方式による歪みゲージ113では、図14(a)に示すように、例えば基板110に形成された位置合わせマーク114と、歪みゲージ113に形成された位置合わせマーク115の位置を、手作業で合わせて、歪みゲージ113を基板110に貼り付ける必要がある。
【0076】
歪みゲージ113が、図14(b)に示すように位置ずれした状態で基板110に貼り付けられると、歪み測定に誤差が生じる可能性があり、図14(a)に示すような正確な貼り付けが要求される。しかし、歪みゲージ113は、数mm角程度の小型の部品であるので、図14(a)に示すように、正確な貼り付けを行うためには、高度なスキルが必要とされる。
【0077】
また、図14(c)に示すように、大型の電子部品111の間に歪みゲージ113を貼り付ける場合、部品の間隔が歪みゲージ113の大きさに対して狭い状態、例えば部品の間隔Lが約2mm以下というような状態がある。このような狭い間隔の中に正確に位置合わせをして歪みゲージ113を貼り付ける作業は、難易度が高く、一層高度なスキルが必要とされる。
【0078】
図15は、本実施の形態の歪みゲージが位置合わせされる実装工程を示す動作説明図である。
【0079】
本実施の形態の歪みゲージ1Aは、実装機を利用して基板10に装着されるので、正確な位置合わせが可能である。また、歪みゲージ1Aが予め基板10に実装されるので、例えば、大型の電子部品の実装の前に、歪みゲージ1Aを実装することが可能で、狭い間隔の中に歪みゲージ1Aを実装する工程を無くすこともできる。
【0080】
更に、図15(a)に示すように、実装機で歪みゲージ1Aを基板10に装着する際に、基板10に形成された電極パターン16に対する位置がずれていても、電極パターン16に印刷されたはんだが、上述した実装工程におけるリフロー炉での加熱で溶解すると、図15(b)に示すように、はんだのセルフアライメントで歪みゲージ1Aの位置が合わせられる。
【0081】
これにより、歪みゲージ1Aの実装に、高度なスキルは必要なく、かつ、正確な位置合わせが可能で、基板の歪みの測定を正確に行うことができる。
【0082】
(2−3)歪みゲージを実装型としたことによる配線のスキルレス化
本実施の形態の歪みゲージ1Aでは、基板に形成された配線パターンを利用して信号を取り出すことで、従来の手貼り方式を採用している歪みゲージに比較して、歪みゲージに接続される配線の取り回しに関するスキルレス化が図られる。
【0083】
従来の手貼り方式を採用している歪みゲージ113では、図16に示すように、個々の歪みゲージ113からリード線113aを引き出す必要があり、歪みゲージ113の数が増えてくると、リード線113aの取り回しが困難になる。
【0084】
これに対して、本実施の形態の歪みゲージ1Aでは、図5に示すように、基板10に形成された配線パターン13を利用して信号を取り出し、かつ、基板10に、各配線パターン13と接続されるコネクタ12を備えることで、複数の歪みゲージ1Aで検出された歪み信号を、まとめて1箇所のコネクタ12から取り出すことができる。
【0085】
これにより、実装される歪みゲージ1Aの数が増えても、歪みゲージ1Aからの歪み信号の取り出しは、基板10に接続される1本のケーブル14で済み、配線の取り回し作業のスキルレス化が可能である。
【0086】
また、基板10が製品筐体17に収納されているような場合でも、コネクタ12へのケーブル14の接続で歪み信号を取り出すことができることから、より実使用に近い状態で、歪みの測定が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、可搬型の機器等で使用される小型で高密度実装の基板における歪み測定に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本実施の形態の歪みゲージの一例を示す斜視図である。
【図2】本実施の形態の歪みゲージを構成するゲージ層の詳細を示す平面図である。
【図3】歪みゲージの供給に使用される搬送用テープの一例を示す斜視図である。
【図4】本実施の形態の歪みゲージの製造方法の一例を示す工程図である。
【図5】本実施の形態の基板の一例を示す平面図である。
【図6】本実施の形態の歪みゲージの基板への実装方法の一例を示す工程図である。
【図7】応力シミュレーションの検証条件を示す説明図である。
【図8】歪みゲージの歪み率を示すコンター図である。
【図9】応力シミュレーションで得たデータ
【図10】歪み減衰率の変化を示すグラフである。
【図11】測定箇所の制限が回避される構成の具体例を示す基板の側面図である。
【図12】従来の歪みゲージで測定箇所が制限される理由を示す基板の側面図である。
【図13】シールドケースの内部に歪みゲージを実装する実装方法の一例を示す工程図である。
【図14】従来の手貼り方式による歪みゲージで発生する貼り付け工程での課題を示す説明図である。
【図15】本実施の形態の歪みゲージが位置合わせされる実装工程を示す動作説明図である。
【図16】従来の手貼り方式による歪みゲージで発生する配線工程での課題を示す説明図である。
【符号の説明】
【0089】
1A・・・歪みゲージ、2・・・ゲージ層、3・・・軟性耐熱材料層、4・・・熱接着樹脂層、10・・・基板、12・・・コネクタ、13・・・配線パターン、20a,20b・・・電極、21・・・ゲージ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗体及び前記抵抗体の歪みによる信号を出力する電極を有したゲージ層と、
前記ゲージ層の歪みに追従する軟性を有すると共に、はんだ付けで要求される温度に対する耐熱性を有し、前記ゲージ層の上面全体を被覆する保護層と、
前記ゲージ層の前記電極を露出させて、前記ゲージ層の下面を被覆する接着層とを備え、
基板に形成された配線パターンに前記ゲージ層の前記電極が接続されると共に、前記接着層で前記基板に接着されて、前記基板に実装され、前記配線パターンを通して、前記基板の歪みに応じた信号が出力される
ことを特徴とする歪みゲージ。
【請求項2】
前記電極の位置に合わせて前記基板に形成され、前記配線パターンと接続される電極パターンにはんだが塗布され、前記基板への実装工程で溶解させたはんだの表面張力によるセルフアライメントで、前記基板に対する位置が合わせられる
ことを特徴とする請求項1記載の歪みゲージ。
【請求項3】
電子部品を前記基板に装着する実装機を利用して、前記基板に位置合わせされて装着される
ことを特徴とする請求項2記載の歪みゲージ。
【請求項4】
電子部品を前記実装機に供給する搬送用テープに収納された形態で提供される
ことを特徴とする請求項3記載の歪みゲージ。
【請求項5】
前記保護層を備えることによる前記ゲージ層の歪みの減衰率に応じて歪みが測定される
ことを特徴とする請求項1記載の歪みゲージ。
【請求項6】
歪みゲージが実装される基板であって、
前記歪みゲージは、
抵抗体及び抵抗体の歪みによる信号を出力する電極を有したゲージ層と、
前記ゲージ層の歪みに追従する軟性を有すると共に、はんだ付けで要求される温度に対する耐熱性を有し、前記ゲージ層の上面全体を被覆する保護層と、
前記ゲージ層の前記電極を露出させて、前記ゲージ層の下面を被覆する接着層とを備え、
前記歪みゲージの実装位置に、前記歪みゲージの前記電極と接続される電極パターンを有した配線パターンと、
単数または複数の前記歪みゲージに対応して形成される前記配線パターンと接続されるコネクタとを備えた
ことを特徴とする基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−130001(P2009−130001A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300952(P2007−300952)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】