説明

気密パッケージおよびその製造方法。

【課題】低融点ガラス等のロウ材に由来する揮発ガス及び接合層からの副次的なガス放散等の影響を受けない気密パッケージのベース本体とカバー蓋体の接合局部溶融手段を利用してコストパフォーマンスを改善し高真空度が維持できる気密パッケージを提供する。
【解決手段】光透過性の材料カバー蓋体17とベース本体11との接合封止において、両者の周辺部の所定接合面のみに短パルスレーザを照射し、この接合面の周辺部位を局部溶解させ、同時に気密封止する。また、互いに同一の透明材料からなるカバー蓋体およびベース本体の所定の接合面のみに短パルスレーザを照射し、該接合面の周辺部位を局部溶解させて気密的に封着する事により、カバー蓋体とベース本体を接合すると同時に気密封止も完了させ、製造工程数を少なくしてコストを軽減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短パルスレーザを利用する気密パッケージおよびその製造方法に関し、特に、接合部位を短パルスレーザの局部的溶融により処理した気密パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品には種々様々なパッケージが用いられている。例えば、腕時計を初めとして各種の電子機器に時計機能源や信号処理の周波数制御等を司る受動素子として内蔵される水晶振動子に用いられる気密端子パッケージがある。近年、特に電子機器の小型化・軽量化の要求に伴い、表面実装型の気密パッケージを採用した音叉型水晶振動子が開発されている。このような表面実装型気密パッケージには、従来、特許文献1に開示されるように、底部に貫通孔を備えた積層セラミック製ベース本体に、圧電振動片を片持ち式に固定して内部に収容し、このベース本体の開放された上端面に、低融点ガラス等のロウ材を介して、ガラスなど光透過性の材料で形成されたカバー蓋体を接合し、次いで外部からカバー蓋体を透過させたレーザ光を照射し、パッケージ内にマウントした圧電振動片の周波数を調整した後、真空中で貫通孔に封止材を充填して気密封止したパッケージがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−060470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の表面実装型の気密パッケージは、ベース本体とカバー蓋体とを低融点ガラスまたは金属ロウなどのロウ材を用いて接合していたため、溶融接合の際にロウ材からの分解ガス等の揮発成分の発生が避けられず、ベース本体とカバー蓋体を接合した後、圧電振動子を収めたパッケージ全体を再び真空の高温炉中で、貫通孔に充填したロウ材を溶融させ封止を完成させる必要があった。また、従来工法では、圧電振動子をパッケージごと360℃以上の高温に曝すため、熱ストレスによって圧電振動子が周波数変動を起こすなど、圧電振動子の製品特性にも悪影響を及ぼしていた。このため、圧電振動片を固着したベース本体とカバー蓋体を一旦接合した後、レーザで圧電振動片の周波数調整を行い、もう一度パッケージ内部を真空引きしながらベース本体底部に設けた貫通孔を封止して気密封止を完了させる必要があり余分な工数を必要としていた。さらに、従来、パッケージ高温処理の際にロウ材から発生する分解ガスやこれらガス成分を包蔵するロウ接部分からの2次的なガス放散等の影響により、長期間パッケージ内を高真空に保持させることが不可能であった。
【0005】
したがって、本発明の目的は、接合部位からガスが発生しないパッケージ構成およびその製造方法を提供し、一度の接合工程でカバー蓋体とベース本体とを溶融接合すると同時に真空封止を完了でき、封止に必要な工程を削減してコスト面の欠点を解消する新規かつ改良された気密パッケージ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、光透過性の材料で形成されたカバー蓋体と光透過性の材料で形成されたベース本体とを接合封止してなる気密パッケージにおいて、カバー蓋体およびベース本体の所定接合部位のみに短パルスレーザを照射し、この接合周辺を局部溶融させると同時に該気密パッケージを気密封止した新規で改良された気密パッケージが提供される。すなわち、同一の透明材料からなるカバー蓋体およびベース本体を互いに当接させた接合部位のみに短パルスレーザを照射し、該接合周辺を部分溶融させて気密封止した気密パッケージが提供される。従って、カバー蓋体とベース本体を接合すると同時に気密封止も完了させることができ、工程数を少なくして製造コストを軽減する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、カバー蓋体およびベース本体の接合部位のみに短パルスレーザを照射し、この接合周辺を局部溶融させてカバー蓋体とベース本体を封止するため、高温の炉中を通す必要が無く高温処理によって圧電振動素子に悪影響を及ぼすことがない。このため目的とする圧電振動素子によっては、搭載後の圧電振動子に周波数調整を施すことなくパッケージングを完了させ、そのまま使用することも可能となる。しかも、ベース本体とカバー蓋体が、同一部材から成るため、熱膨張係数に差がなく、冷熱衝撃に対して強い気密パッケージが得られる。さらに、ロウ材を用いないため、パッケージ内部への材料からのガス放出を抑えた高真空の気密パッケージを容易に提供することができる。低融点ガラス等のロウ材に由来する揮発ガス及び接合層からの副次的なガス放散等の影響を受けない気密パッケージのベース本体とカバー蓋体の接合局部溶融手段を利用してコストパフォーマンスを改善し、高真空度が維持できる気密パッケージを提供する。
【0008】
また、高温の炉中を通さずにカバー蓋体とベース本体を接合すると同時に気密封止も完了させることができるので、圧電振動子に対する熱ストレスを最小限に抑えることができ、周波数変動を少なくして調整程度を低減するとともに、必要な部材および工程数を減らして製造コストを軽減する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る実施例1の気密パッケージ10であり、(a)はその平面図を示し、(b)は(a)のD−D線に沿った断面図を示し、(c)はその部品部材を分解した斜視図を示す。(なお、カバー蓋体は、ベース本体との接合部位を除く透明部位の図示を省略している。以下、図3〜図6も同様。)
【図2】本発明に係る気密パッケージの製造工程を示す図である。
【図3】図1に示す気密パッケージの変形例であり、(a)はその平面図を示し、(b)はその断面図を示す。
【図4】本発明に係る実施例2の気密パッケージ30であり、(a)はその平面図を示し、(b)は(a)のD−D線に沿った断面図を示す。
【図5】本発明に係る実施例3の気密パッケージ40であり、(a)はその平面図を示し、(b)は(a)のD−D線に沿った断面図を示す。
【図6】本発明に係る実施例の変形例2である気密パッケージ50の形状を示し、(a)はその平面図を示し、(b)はその断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によれば、光透過性部材のベース本体に光透過性部材のカバー蓋体を当接接合して中空スペースを形成し、この中空スペース内に圧電振動子を収容配置する気密パッケージにおいて、ベース本体とカバー蓋体の接合は、短パルスレーザを利用した局部的溶融による接合部位を設け、ベース本体とカバー蓋体が形成する中空スペースを真空または不活性ガス充填し、気密封止したことを特徴とする気密パッケージが提供される。ここで、短パルスレーザは、パルス幅100×10−12秒以下の短パルスレーザを当接部分の周辺に収束照射し、接合部位のみを局部的に溶融させ、ベース本体とカバー蓋体とを互いに溶融接合したことを特徴とする。また、ベース本体またはカバー蓋体には、少なくともそのいずれか一方に、中空スペースとなるくぼみが形成され、ベース本体には圧電振動子に接続する貫通電極部を設けたことを特徴とする気密パッケージを提供する。すなわち、電極部を設けた光透過性部材のベース本体と、このベース本体に接合して所定の中空スペースを形成配置する光透過性部材のカバー蓋体と、中空スペース内でベース本体の電極部に接続装着する圧電振動子とを備える気密パッケージにおいて、ベース本体とカバー蓋体の接合は互いにそれぞれの周辺部位で当接され、短パルスレーザの照射による局部的溶融部位を設け、ベース本体とカバー蓋体とが形成する中空スペースを密閉された高真空とする気密パッケージが提供される。なお、短パルスレーザを照射する局部的溶融部位は、ベース本体とカバー蓋体との接合部位のみであって、ベース本体とカバー蓋体とを互いに溶融接合するものであり、少なくとも、両者の一方に、貫通電極を設けた光透過性ガラス部材とした気密パッケージも提供される。それにより、従来用いられていた低融点ガラス等ロウ材に由来する揮発ガスおよびロウ接部からの副次的なガス放散の影響を受けず、コストパフォーマンスを改善し高真空度が維持できる気密パッケージを提供する。
【0011】
本発明の別の観点によると、電極部を設けた光透過性部材のベース本体に光透過性部材のカバー蓋体を接合して所定のキャビティ部を形成し、このキャビティ部で圧電振動子をベース本体の電極部に接続装着する気密パッケージの製造方法であって、選択された光透過性基板に導電材を敷設してベース本体を準備する電極形成工程と、ベース本体に形成した電極部に圧電振動子を接続しベース本体の所定位置に配置する部品組立工程と、部品組立後のベース本体の所定位置にカバー蓋体を被せるパッケージ配置工程と、所定位置に配置されたベース本体とカバー蓋体とを真空または不活性ガス中に置きそれぞれの周辺部位を局部溶融する封着加熱工程と、真空中の加熱で溶融接合したパッケージ気密検査工程とを含み、前記封着加熱工程は短パルスレーザを照射して前記周辺部位を加熱し溶融結合させることを特徴とする気密パッケージの製造方法が提示される。このように電極部を有した光透過性部材からなるベース本体と、電極部に固着した圧電振動子と、光透過性部材からなるカバー蓋体とを備え、ベース本体とカバー蓋体との内部に圧電振動素子を気密封止する気密パッケージが完成され、ベース本体とカバー蓋体とを短パルスレーザを用いた局部溶融手段で接合することによって作業効率を高め、ローコストで製作され、高気密性のキャビティ部に圧電振動子を気密封止した気密パッケージが提供される。換言すると、光透過性部材からなるベース本体とカバー蓋体が形成する中空スペースに圧電振動子を配置する気密パッケージの製造方法であって、光透過性基板に導電材を敷設して所定位置に電極部を設けるベース本体の予備処理工程、圧電振動子を電極部に接続する素子組立工程、ベース本体とカバー蓋体との合体で中空スペースを形成するパッケージ組立工程、パッケージ組立のベース本体とカバー蓋体を真空または不活性ガス中に配置して両者が当接する部分の周辺を局部的に溶融して接合部位にする封着工程、および封着されたパッケージの気密状態を調べる検査工程を含み、前記封着工程の接合部位は短パルスレーザを照射して当接部分の周辺を加熱溶融して気密封着させることを特徴とする気密パッケージの製造方法を開示する。この場合に、短パルスレーザは、パルス幅100×10−12秒(100ピコ秒)以下の短パルスレーザを前記当接部分の周辺に収束照射し、前記接合部位のみを局部的に溶融させることを特徴とする。
【0012】
本発明の気密パッケージは、金属製電極部を有したガラス等からなる光透過性ベース本体と、この電極部の上に固着した水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等からなる圧電振動子と、前記ガラス等からなる光透過性カバー蓋体とを備え、ベース本体とカバー蓋体とを接触させた接合部位のみに、真空中または、窒素、ヘリウムおよびアルゴンなどの不活性ガス中でパルス幅100×10−12秒(100ピコ秒)以下の短パルスレーザを照射し、該接合部位を局部溶融させることによって、ベース本体とカバー蓋体とを接合して圧電素子を気密封止する。このため、パッケージ内部に固着された圧電振動子が過熱することなく封止を完了することができ、目的とする圧電振動素子によっては、搭載後の圧電振動子に周波数調整を施すことなくパッケージングを完了させ、そのまま使用することも可能となる。しかもベース本体とカバー蓋体は、同一部材から成るため熱膨張係数に差がなく、冷熱衝撃に対して強い気密パッケージが得られる。さらに、封止にロウ材を用いないので、ロウ材からの放出ガスの影響を受けない高真空の気密パッケージが容易に得られる。具体的には、ヘリウムリークディテクタの測定において、1×10−9〜1×10−12Pa・m/sec.以下の高度な気密性を具備した気密パッケージが可能となる。
【0013】
本発明によると、例えば、ガラス製ベース本体は、ホウ珪酸ガラスや石英などの光透過性部材からなり、内側底部に一対の電極部を所定の間隔を隔てて設け、圧電振動子を電極部に固着して収容する中空スペースを形成している。この電極部は、外部と接続される導出電極を通して駆動電圧を供給できるように成っている。電極部表面には、導電性接着材またはハンダ材などからなる導電材が形成され、この導電材の上に圧電振動子の基部が固着されて電気接続される。圧電振動子を固着したガラス製ベース本体は、真空中でホウ珪酸ガラスや石英などのガラス製カバー蓋体を被せる。そして、ガラス製ベース本体とガラス製カバー蓋体が接触する接合部位のみに、パルス幅100×10−12秒以下の短パルスレーザを集束照射して、ベース本体とカバー蓋体の接合部分同士を局部溶融させて、圧電振動子を気密封止した気密パッケージが形成される。ここで、上記のガラス製ベース本体は、W(タングステン)材またはW合金、Fe−Ni合金、コバール合金等の耐熱金属材からなる一対の貫通電極を有する貫通電極付きガラス基板に変形でき、また、上記のガラス製カバー蓋体は、板状に限定されず板状からキャップ状に蓋体形状を変形できる。
【実施例】
【0014】
本発明の実施例1の気密パッケージ10は、図1に示すように、透明なガラス製ベース本体11内に水晶片からなる音叉型圧電振動子12を収容している。ガラス製ベース本体11は、ホウ珪酸ガラスからなり、内側に電極部13,14を有して圧電振動子を収容する中空スペースを形成している。この中空スペースの底部には、一端にAuおよびNiめっきが施された電極部13,14が所定の間隔を隔てて形成されている。この電極部13,14は、図示しないが外部と接続される導出電極を通して駆動電圧を供給するように成っている。この電極13,14の表面には、ハンダからなる導電材15,16が形成されており、この導電材15,16の上に音叉型圧電振動子12の基部が固着されて電気接続される。音叉型圧電振動子12を収容したガラス製ベース本体11は、真空中で容器上端の開口端面にホウ珪酸ガラスからなる透明平板状のガラス製カバー蓋体17を被せる。そして、開口端面とガラス製カバー蓋体17が接触する接合部位18のみに、周波数1MHz、波長1064nm、レーザーパワー1W、パルス幅100×10−12秒(100ピコ秒)の短パルスレーザを集束照射して、ベース本体11とカバー蓋体17の接合部位18同士を局部溶融させて、カバー蓋体17を気密封止した気密パッケージ10が形成される。この気密パッケージ10は、ヘリウムリークディテクタの測定において、1×10−12Pa・m/sec.以下の高度な気密性を有するとともに、気密封止にロウ材などの封止材を必要としないため、パッケージ内部への封止材からのガス放出が無い高真空の気密パッケージ10が実現できる。その後必要に応じて、実施例1の気密パッケージ10は公知のレーザ周波数調整手段により、ベース本体11又はカバー蓋体17を透過するレーザ光を用いて、パッケージ内部に収容した圧電振動子12の振動周波数を目的の周波数に精密調整する。なお、実施例1の気密パッケージ10は、図3に示す変形例の気密パッケージ20のように、ガラス製ベース本体21は、内側底部に段付きのキャビティ部29を設けて、内部に取り付けた音叉型圧電振動子22とベース本体21の内側底部が、振動時に互いに接触して干渉しないように変形しても良い。
【0015】
本発明の実施例2の気密パッケージ30は、図4に示すように、表面にAuおよびNiめっき材からなる一対の平面電極部33,34を有する平面電極付き透明ガラス基板からなるベース本体31と、この平面電極部33,34にハンダ材35,36で固着した水晶片からなる音叉型圧電振動子32と、キャップ状のガラス製カバー蓋体37を有する。ベース本体31は、ホウ珪酸ガラスの光透過性部材からなり、基板表面には圧電振動子を固着した平面電極部33,34が所定の間隔を隔てて形成されている。平面電極部33,34の表面には、ハンダからなる導電材35,36が形成されており、この導電材35,36の上に音叉型圧電振動子32の基部が固着されて電気接続され、図示しないが外部と接続された導出電極を通して駆動電圧の供給が可能と成っている。さらに、音叉型圧電振動子32を固着したベース本体31は、真空中で音叉型圧電振動子32を覆うようにして、ホウ珪酸ガラスからなるキャップ状のカバー蓋体37を被せ、キャップ状カバー蓋体37とベース本体31との間に音叉型圧電振動子32を収容した中空スペースを形成する。そして、基板表面とガラス製カバー蓋体37が接触する接合部位38のみに、周波数1MHz、波長1064nm、レーザーパワー1W、パルス幅10×10−12秒(10ピコ秒)の短パルスレーザを集束照射して、ベース本体31とカバー蓋体37の接合部位38同士を局部溶融させて、カバー蓋体37を気密封止した気密パッケージ30が形成される。この気密パッケージ30は、ヘリウムリークディテクタの測定において、1×10−12Pa・m/sec.以下の高度な気密性を有するとともに、気密封止にロウ材などの封止材を必要としないため、パッケージ内部への封止材料からガス放出が無い高真空の気密パッケージ30が実現できる。その後、必要に応じて実施例2の気密パッケージ30は、公知のレーザ周波数調整手段により、ベース本体31又はカバー蓋体37を透過するレーザ光を用いて、パッケージ内部に収容した圧電振動子32の振動周波数を目的の周波数に精密調整する。
【0016】
本発明の実施例3の気密パッケージ40は、図5に示すように、貫通電極付きガラス基板からなるベース本体41の表面に水晶片からなる音叉型圧電振動子42を固着させる。ベース本体41は、ホウ珪酸ガラスの光透過性部材からなり、基板表面には、耐熱金属材のFe−Niからなる貫通電極部43,44が所定の間隔を隔てて植設されている。この貫通電極部43,44を通してパッケージ外部から駆動電圧が音叉型圧電振動子42に供給されるように成っている。パッケージ内の貫通電極43,44端面には、バンプ状のはんだ材からなる導電材45,46が形成されており、この導電材45,46上に音叉型圧電振動子42の基部が固着されて電気接続される。さらに、真空中でベース本体41に固着した音叉型圧電振動子42を覆うようにして、キャップ状のホウ珪酸ガラス製カバー蓋体47を被せ、キャップ状カバー蓋体47とベース本体41との間に音叉型圧電振動子42を収容した中空スペースを形成する。そして、基板表面とガラス製カバー蓋体47が接触する接合部位48のみに、周波数1MHz、波長1064nm、レーザーパワー1W、パルス幅10×10−12秒(10ピコ秒)の短パルスレーザを集束照射して、ベース本体41とカバー蓋体47の接合部位48同士を局部溶融させて、カバー蓋体47を気密封止した気密パッケージ40が形成される。この気密パッケージ40は、ヘリウムリークディテクタの測定において、1×10−12Pa・m/sec.以下の高度な気密性を有するとともに、気密封止にロウ材などの封止材を必要としないため、パッケージ内部への封止材料からガス放出が無い高真空の気密パッケージ40が実現できる。その後、必要に応じて実施例3の気密パッケージ40は、公知のレーザ周波数調整手段により、ベース本体41又はカバー蓋体47を透過するレーザ光を用いて、パッケージ内部に収容した圧電振動子42の振動周波数を目的の周波数に精密調整する。
【0017】
なお、上述した各実施例のパッケージは、図6に示す変形例2の気密パッケージ50のように、キャップ状のガラス製ベース本体51とキャップ状のガラス製カバー蓋体57を用いて、ベース本体51とカバー蓋体57との間に音叉型圧電振動子52を収容する中空スペースを形成したパッケージ形状に変形しても良い。気密パッケージ50の詳細については、各実施例と共通するので省略する。
【0018】
パッケージ内部に固着されている圧電振動子は、各実施例に記載の水晶振動子に変えて、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等からなる圧電素子を使用することが可能である。また、容器ベース本体とカバー蓋体とを接合するため用いる封止用短パルスレーザは、パルス幅100×10−12秒(100ピコ秒)以下の短パルスレーザであればよく、例えば、フェムト秒オーダーの短パルスレーザも使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、高度な気密性を必要とする高信頼性気密パッケージに有効である。
【符号の説明】
【0020】
10,20,30,40,50・・・気密パッケージ、
11,21,31,41,51・・・ベース本体、
12,22,32,42,52・・・圧電振動子、
13,14,23,24,33,34,53,54・・・電極部、
43,44・・・貫通電極部、
15,16,25,26,35,36,45,46,55,56・・・導電材、
17,27,37,47,57・・・カバー蓋体、
18,28,38,48,58・・・接合部位、
29・・・中空スペース(キャビティ部)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性部材のベース本体に光透過性部材のカバー蓋体を当接接合して中空スペースを形成し、この中空スペースに圧電振動子を収容配置する気密パッケージにおいて、前記ベース本体と前記カバー蓋体の接合は、短パルスレーザを利用した局部的溶融による接合部位を設け、前記ベース本体と前記カバー蓋体が形成する前記中空スペースを真空または不活性ガス充填し、気密封止したことを特徴とする気密パッケージ。
【請求項2】
前記短パルスレーザは、パルス幅100×10−12秒以下の短パルスレーザを前記当接部分の周辺に収束照射し、前記接合部位のみを局部的に溶融させ、前記ベース本体と前記カバー蓋体とを互いに溶融接合したことを特徴とする請求項1に記載の気密パッケージ。
【請求項3】
前記ベース本体またはカバー蓋体には、少なくともそのいずれか一方に、前記中空スペースとなるくぼみが形成されたことを特徴とする請求項1に記載の気密パッケージ。
【請求項4】
前記ベース本体には前記圧電振動子に接続する貫通電極部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の気密パッケージ。
【請求項5】
光透過性部材からなるベース本体とカバー蓋体とを当接接合して中空スペースを形成しこの中空スペースに圧電振動子を配置する気密パッケージの製造方法であって、光透過性基板の所定位置に導電材を敷設して電極部を設けるベース本体を予備処理する準備工程、圧電振動子を前記電極部に接続し所定位置に配置する素子組立工程、カバー蓋体をベース本体に被せて中空スペースを形成するパッケージ組立工程、パッケージ組立用の当接配置したベース本体とカバー蓋体を真空または不活性ガス中に配置して当接部分周辺を局部的に溶融して接合部位にする封着工程を含み、前記接合部位が短パルスレーザによる当接部分の局部照射でその周辺を加熱溶融して気密的に封着することを特徴とする気密パッケージの製造方法。
【請求項6】
前記接合部位は、封着工程後のパッケージにおいて、その気密状態を調べる検査工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の気密パッケージの製造方法。
【請求項7】
前記短パルスレーザは、パルス幅100×10−12秒以下の短パルスレーザを前記当接部分の周辺に収束照射し、前記接合部位のみを局部的に溶融させることを特徴とする請求項5に記載の気密パッケージの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−38727(P2013−38727A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175474(P2011−175474)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(300078431)エヌイーシー ショット コンポーネンツ株式会社 (75)
【Fターム(参考)】