説明

気密モジュール、及び該気密モジュールの排気方法

【課題】スループットを低下させることなく、基板の主面に形成されたパターンが倒れることを防止することができる気密モジュールを提供する。
【解決手段】基板処理システムのロード・ロックモジュール5は、移載アーム31と、チャンバ32と、ロード・ロックモジュール排気系34とを有し、チャンバ32内には、チャンバ32内に搬入されたウエハWの主面と対向するように板状部材36が配置され、ウエハWの主面の直上にはウエハW及び板状部材36により、チャンバ32の残部分から隔離された排気流路が画成され、該排気流路の断面積はチャンバ32の残部分の断面積よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密モジュール、及び該気密モジュールの排気方法に関し、特に、所定の処理が施されて主面にパターンが形成された基板が搬入されるチャンバを備えた気密モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
基板としてのウエハに所定の処理、例えばプラズマ処理を施す基板処理システムは、ウエハを収容してプラズマ処理を施すプロセスモジュールと、該プロセスモジュールへウエハを搬入すると共に当該プロセスモジュールから処理済みのウエハを搬出するロード・ロックモジュールと、複数枚のウエハを収容する容器からウエハを取り出してロード・ロックモジュールに受け渡すローダーモジュールとを備える。
【0003】
通常、基板処理システムのロード・ロックモジュールは、ウエハを受け入れるチャンバを有し、大気圧下でウエハを受け入れ、チャンバ内を所定の圧力まで真空排気した後、プロセスモジュール側のゲートを開いて、プロセスモジュールにウエハを搬入し、プラズマ処理が終了すると、プロセスモジュールから処理済みのウエハを搬出し、プロセスモジュール側のゲートを閉めて、チャンバ内を大気圧に戻し、ウエハをローダーモジュールに搬出する、という機能を有する(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−128578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したロード・ロックモジュールでは、プラズマ処理が施されて主面にパターンが形成されたウエハを大気圧下で受け入れた後、チャンバ内を真空排気すると、ウエハの主面に形成されたパターンが倒れることがあった。
【0005】
パターン倒れの発生メカニズムとしては、図8に示すように、真空排気時にチャンバ内のパターンP間に存在する気体分子mがパターンPに衝突して、当該衝突する気体分子mの運動量によってパターンPが倒れることが考えられている。
【0006】
ウエハの主面におけるパターン倒れの発生は、該ウエハから製造される半導体デバイスにおいて短絡等の不具合を引き起こし、最終的に製造される半導体デバイスの歩留まりを低下させる。
【0007】
従来、これに対応して、ロード・ロックモジュールでは、真空排気時の排気速度を低下させることによりチャンバ内の気体分子の運動量を低下させてパターン倒れを防止しているが、真空排気時の排気速度を低下させると、所望の真空度に達するまでに長時間を要するため、基板処理システムのスループットが著しく低下するという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、スループットを低下させることなく、基板の主面に形成されたパターンが倒れることを防止することができる気密モジュール、及び該気密モジュールの排気方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の気密モジュールは、所定の処理が施されて主面にパターンが形成された基板が搬入されるチャンバを備える気密モジュールにおいて、前記搬入された基板の前記主面に対向するように配置された板状部材を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の気密モジュールは、請求項1記載の気密モジュールにおいて、前記板状部材は前記主面との間隔が5mm以下となるように配置されることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の気密モジュールは、請求項1又は2記載の気密モジュールにおいて、前記板状部材はメッシュ構造体又はポーラス構造体であることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の気密モジュールは、請求項1又は2記載の気密モジュールにおいて、前記板状部材にはスリット加工が施されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の気密モジュールは、請求項1又は2記載の気密モジュールにおいて、前記板状部材は該板状部材を貫通する複数の孔を有することを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の気密モジュールは、請求項5記載の気密モジュールにおいて、前記複数の孔は前記主面に対して垂直方向に形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の気密モジュールは、請求項5又は6記載の気密モジュールにおいて、前記主面に対向するように配置され且つ前記チャンバ内を排気する排気装置を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の気密モジュールは、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の気密モジュールにおいて、前記チャンバ内に軽元素ガスを供給するガス供給装置を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の気密モジュールは、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の気密モジュールにおいて、前記板状部材と前記主面とを離間させる離間装置を備えることを特徴とする。
【0018】
上記目的を達成するために、請求項10記載の気密モジュールは、所定の処理が施されて主面にパターンが形成された基板が搬入されるチャンバを備える気密モジュールにおいて、前記搬入された基板の前記主面に対向する前記チャンバを画成する部材に向けて当該基板をリフトする基板リフト装置を備えることを特徴とする。
【0019】
上記目的を達成するために、請求項11記載の気密モジュールの排気方法は、所定の処理が施されて主面にパターンが形成された基板が搬入されるチャンバを備える気密モジュールの排気方法において、前記搬入された基板の前記主面に対向するように前記チャンバ内に板状部材を配置する配置ステップと、前記チャンバ内を排気する排気ステップとを有することを特徴とする。
【0020】
請求項12記載の気密モジュールの排気方法は、請求項11記載の気密モジュールの排気方法において、前記排気ステップに先立って、前記チャンバ内を低真空まで排気する低真空排気ステップと、前記低真空まで排気されたチャンバ内に軽元素ガスを供給するガス供給ステップとを有することを特徴とする。
【0021】
上記目的を達成するために、請求項13記載の気密モジュールの排気方法は、所定の処理が施されて主面にパターンが形成された基板が搬入されるチャンバを備える気密モジュールの排気方法において、前記搬入された基板の前記主面に対向する前記チャンバを画成する部材に向けて当該基板をリフトする基板リフトステップと、前記チャンバ内を排気する排気ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載の気密モジュール及び請求項11記載の気密モジュールの排気方法によれば、基板の主面に対向するように板状部材が配置されるので、基板の主面の直上に基板及び板状部材によってチャンバの残部分から隔離された排気流路が画成される。該排気流路の断面積はチャンバの残部分の断面積よりも小さいので、排気流路のコンダクタンスをチャンバの残部分のコンダクタンスよりも小さくすることができる。その結果、真空排気時において基板の主面の直上の気体分子、すなわち基板の主面に形成されたパターン間に存在する気体分子の運動量が低下するので、当該気体分子の衝突によって当該パターンは倒れることがない。また、チャンバ内において基板の主面の直上の排気流量は相対的に微量であるため、上記排気流路のコンダクタンスの変化は、チャンバ内全体の排気流のコンダクタンスに影響を及ぼさない。その結果、真空排気時の排気時間は長くならない。したがって、基板処理システムのスループットを低下させることなく、基板の主面に形成されたパターンが倒れることを防止することができる。
【0023】
請求項2記載の気密モジュールによれば、板状部材は基板の主面との間隔が5mm以下となるように配置されるので、基板と板状部材によって画成される排気流路のコンダクタンスをパターン倒れを防止できるコンダクタンスに確実にすることができ、もって、基板の主面に形成されたパターンが倒れることを確実に防止することができる。
【0024】
請求項3記載の気密モジュールによれば、板状部材はメッシュ構造体又はポーラス構造体であるので、基板と板状部材によって画成される排気流路のコンダクタンスが必要以上に小さくなることを防止することができ、もって、チャンバ内の真空排気を迅速に行うことができる。
【0025】
請求項4記載の気密モジュールによれば、板状部材にはスリット加工が施されているので、基板と板状部材によって画成される排気流路のコンダクタンスが必要以上に小さくなることを防止することができ、もって、チャンバ内の真空排気を迅速に行うことができる。
【0026】
請求項5記載の気密モジュールによれば、板状部材は該板状部材を貫通する複数の孔を有するので、基板の主面の直上における気体はその一部が複数の孔を通過して排気される。したがって、真空排気時に当該気体の一部は、基板の主面から板状部材へ向けて流れる、すなわち、主面に形成されたパターンに対してほぼ平行に流れる。これにより、一部の気体分子の該パターンへの衝突を防止することができ、もって、パターン倒れを確実に防止することができる。
【0027】
請求項6記載の気密モジュールによれば、板状部材を貫通する複数の孔は基板の主面に対して垂直方向に形成されるので、真空排気時に当該複数の孔を通過する気体を、確実に、主面に形成されたパターンに対して平行に流すことができる。
【0028】
請求項7記載の気密モジュールによれば、チャンバ内を排気する排気装置が基板の主面に対向するように配置されるので、真空排気時に当該複数の孔を通過する気体を、さらに確実に、主面に形成されたパターンに対して平行に流すことができる。
【0029】
請求項8記載の気密モジュールによれば、チャンバ内に軽元素ガスを供給するので、チャンバ内の気体を軽元素ガスに置換することができる。その結果、真空排気時において基板の主面の直上の気体分子、すなわち基板の主面に形成されたパターン間に存在する気体分子の運動量を低下させることができ、もって、基板の主面に形成されたパターンが倒れるのを確実に防止することができる。
【0030】
請求項9記載の気密モジュールによれば、板状部材と基板の主面とを離間させるので、基板と板状部材によって画成される排気流路のコンダクタンスを制御することができる。さらに、真空排気時におけるチャンバ内の圧力に応じて板状部材の離間量を制御することにより、真空排気時におけるチャンバ内の圧力に応じて当該排気流路のコンダクタンスを適切に制御することができる。
【0031】
請求項10記載の気密モジュール及び請求項13記載の気密モジュールの排気方法によれば、基板が該基板の主面に対向するチャンバを画成する部材に向けてリフトされる。このとき、基板の主面の直上には基板及びチャンバを画成する部材により、チャンバの残部分から隔離された排気流路が画成される。該排気流路の断面積はチャンバの残部分の断面積よりも小さいので、排気流路のコンダクタンスをチャンバの残部分のコンダクタンスよりも小さくすることができる。これにより、上述した請求項1記載の気密モジュール及び請求項11記載の気密モジュールの排気方法と同様の効果を実現することができる。
【0032】
請求項12記載の気密モジュールの排気方法によれば、チャンバ内が低真空まで排気され、チャンバ内に軽元素ガスが供給されるので、チャンバ内の気体が軽元素ガスに置換される。その結果、真空排気時において基板の主面の直上の気体分子、すなわち基板の主面に形成されたパターン間に存在する気体分子の運動量を低下させることができ、もって、基板の主面に形成されたパターンが倒れるのを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0034】
まず、本発明の実施の形態に係る気密モジュールを備えた基板処理システムについて説明する。
【0035】
図1は、本実施の形態に係る気密モジュールを備えた基板処理システムの構成を概略的に示す断面図である。
【0036】
図1において、基板処理システム1は、基板としての半導体用ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)に対して枚葉毎に成膜処理、拡散処理、エッチング処理等の各種プラズマ処理を施すプロセスモジュール2と、所定枚数のウエハWを格納するウエハカセット3からウエハWを取り出すローダーモジュール4と、該ローダーモジュール4及びプロセスモジュール2の間に配置され、ローダーモジュール4からプロセスモジュール2、若しくはプロセスモジュール2からローダーモジュール4へウエハWを搬送するロード・ロックモジュール5(気密モジュール)とを備える。
【0037】
プロセスモジュール2及びロード・ロックモジュール5はゲートバルブ6を介して接続され、ロード・ロックモジュール5及びローダーモジュール4はゲートバルブ7を介して接続される。また、ロード・ロックモジュール5の内部及びローダーモジュール4の内部は、途中に開閉自在なバルブ8が配置された連通管9によって連通する。
【0038】
プロセスモジュール2は、金属製、例えば、アルミニウム又はステンレス鋼製の円筒型チャンバ10を有し、該チャンバ10内に、例えば、直径が300mmのウエハWを載置する載置台としての円柱状のサセプタ11が配置されている。
【0039】
チャンバ10の側壁とサセプタ11との間には、後述の処理空間Sのガスをチャンバ10の外へ排出する流路として機能する排気路12が形成される。この排気路12の途中には環状の排気プレート13が配置され、排気路12の排気プレート13より下流の空間であるマニホールド14は、可変式バタフライバルブである自動圧力制御弁(Adaptive Pressure Control Valve)(以下、「APCバルブ」という。)15に連通する。APCバルブ15は真空引き用の排気ポンプであるターボ分子ポンプ(以下、「TMP」という。)16に接続される。ここで、排気プレート13は処理空間Sにおいて発生したプラズマがマニホールド14に流出するのを防止する。APCバルブ15はチャンバ10内の圧力制御を行い、TMP16はチャンバ10内をほぼ真空状態になるまで減圧する。
【0040】
サセプタ11には高周波電源17が整合器18を介して接続されており、高周波電源17は高周波電力をサセプタ11に供給する。これにより、サセプタ11は下部電極として機能する。また、整合器18は、サセプタ11からの高周波電力の反射を低減して該高周波電力のサセプタ11への供給効率を最大にする。
【0041】
サセプタ11には、ウエハWをクーロン力又はジョンソン・ラーベック(Johnsen-Rahbek)力によって吸着するための電極板(図示しない)が配置されている。これにより、ウエハWはサセプタ11の上面に吸着保持される。また、サセプタ11の上部にはシリコン(Si)等から成る円環状のフォーカスリング19が配置され、該フォーカスリング19はサセプタ11及び後述のシャワーヘッド20の間の処理空間Sにおいて発生したプラズマをウエハWに向けて収束させる。
【0042】
また、サセプタ11の内部には、環状の冷媒室(図示しない)が設けられている。この冷媒室には、所定温度の冷媒、例えば、冷却水が循環供給され、当該冷媒の温度によってサセプタ11上のウエハWの処理温度が調整される。なお、ウエハW及びサセプタ11の間にはヘリウムガスが供給され、該ヘリウムガスはウエハWの熱をサセプタ11へ伝熱する。
【0043】
チャンバ10の天井部には円板状のシャワーヘッド20が配置されている。シャワーヘッド20には高周波電源21が整合器22を介して接続されており、高周波電源21は高周波電力をシャワーヘッド20に供給する。これにより、シャワーヘッド20は上部電極として機能する。なお、整合器22の機能は整合器18の機能と同じである。
【0044】
また、シャワーヘッド20には処理ガス、例えば、CF系のガス及び他の種のガスの混合ガスを供給する処理ガス導入管23が接続され、シャワーヘッド20は処理ガス導入管23から供給された処理ガスを処理空間Sに導入する。
【0045】
このプロセスモジュール2のチャンバ10内における処理空間Sでは、高周波電力を供給されたサセプタ11及びシャワーヘッド20が処理空間Sに高周波電力を印加し、処理空間Sおいて処理ガスから高密度のプラズマを発生させる。発生したプラズマは、フォーカスリング19によってウエハWの表面に収束され、例えば、ウエハWの表面を物理的又は化学的にエッチングする。
【0046】
ローダーモジュール4は、ウエハカセット3を載置するウエハカセット載置台24及び搬送室25を有する。ウエハカセット3は、例えば、25枚のウエハWを等ピッチで多段に載置して収容する。搬送室25は、直方体状の箱状物であり、内部においてウエハWを搬送するスカラタイプの搬送アーム26を有する。
【0047】
搬送アーム26は、屈伸可能に構成された多関節状の搬送アーム腕部27と、該搬送アーム腕部27の先端に取り付けられたピック28とを有し、該ピック28はウエハWを直接的に載置するように構成されている。搬送アーム26は旋回自在に構成され、且つ搬送アーム腕部27によって屈曲自在であるため、ピック28に載置したウエハWを、ウエハカセット3及びロード・ロックモジュール5の間において自在に搬送することができる。
【0048】
また、搬送室25の天井部には搬送室25内へ空気を流入する流入管29が接続されており、搬送室25の底部には搬送室25内の空気を流出する流出管30が接続されている。このため、搬送室25内では、搬送室25の天井部から流入された空気が搬送室25の底部から流出する。したがって、搬送室25内に流入された空気はダウンフローを形成する。
【0049】
ロード・ロックモジュール5は、屈伸及び旋回自在に構成された移載アーム31が配置されたチャンバ32と、該チャンバ32内にパージガスとしての窒素(N)ガス等の不活性ガス及び置換ガスとしてのヘリウム(He)ガス等の軽元素ガスを供給するガス供給系33(ガス供給装置)と、チャンバ32内を真空排気するロード・ロックモジュール排気系34とを有する。ここで、移載アーム31は複数の腕部からなるスカラタイプの搬送アームであり、その先端に取り付けられたピック35を有する。該ピック35はウエハWを直接的に載置するように構成されている。また、チャンバ32内には、板状部材36が配置されている。該板状部材36は、該チャンバ32の真空排気の間、チャンバ32内の一箇所においてウエハWを載置し続けるピック35と対向する。すなわち、板状部材36はチャンバ32内に搬入されたウエハWの主面と対向するように配置されている。
【0050】
板状部材36の大きさはウエハWの大きさとほぼ同じであり、板状部材36とウエハWの主面が対向する際、板状部材36はウエハWのほぼ全面を覆う。このとき、ウエハWの主面の直上にはウエハW及び板状部材36により、チャンバ32の残部分から隔離された排気流路が画成される。
【0051】
ウエハWがローダーモジュール4からプロセスモジュール2へ搬送される場合、ゲートバルブ7が開いたとき、移載アーム31は搬送室25内の搬送アーム26からウエハWを大気圧下で受け取り、ゲートバルブ7を閉めてチャンバ32内を所定の圧力まで真空排気した後、ゲートバルブ6が開いたとき、移載アーム31はプロセスモジュール2のチャンバ10内へ進入し、サセプタ11上にウエハWを載置する。また、ウエハWがプロセスモジュール2からローダーモジュール4へ搬送される場合、ゲートバルブ6が開いたとき、移載アーム31はプロセスモジュール2のチャンバ10内へ進入し、サセプタ11からウエハWを受け取り、ゲートバルブ6を閉めてチャンバ32内を大気圧に戻した後、ゲートバルブ7が開いたとき、移載アーム31は搬送室25内の搬送アーム26へウエハWを引き渡す。
【0052】
なお、基板処理システム1を構成するプロセスモジュール2、ローダーモジュール4及びロード・ロックモジュール5の各構成要素の動作は、基板処理システム1が備える制御装置としてのコンピュータ(図示しない)や、基板処理システム1に接続された制御装置としての外部サーバ(図示しない)等によって制御される。
【0053】
以下、本実施の形態に係る気密モジュールであるロード・ロックモジュールの排気方法について説明する。
【0054】
図2は、本実施の形態に係る気密モジュールであるロード・ロックモジュールの排気方法としての排気処理を説明するための図である。なお、本排気処理は、例えば上記各種プラズマ処理が施されて主面にパターンが形成されたウエハWをローダーモジュール4からプロセスモジュール2へ搬送する場合において、チャンバ32内に当該ウエハWを大気圧下で受け入れた後に実行される。
【0055】
図2において、まず、ロード・ロックモジュール5の移載アーム31は、搬送室25内の搬送アーム26からウエハWを大気圧下で受け取り、ウエハWをチャンバ32内に搬入し、チャンバ32内において当該ウエハWの主面を板状部材36と対向させる。そして、ロード・ロックモジュール排気系34は、チャンバ32内を真空排気する。
【0056】
図3は、ロード・ロックモジュールにおけるチャンバの真空排気における、チャンバ内の圧力と排気時間との関係を示すグラフである。
【0057】
図3のグラフにおいて、破線BはウエハW及び板状部材36によって画成される排気通路における圧力遷移を示し、実線Aはチャンバ32の残部分における圧力遷移を示す。
【0058】
チャンバ32の残部分のコンダクタンスは大きいため、チャンバ32の残部分では真空排気の初期段階で圧力が急激に低下するが、ウエハW及び板状部材36によって画成される排気通路では、該排気通路のコンダクタンスがチャンバ32の残部分のコンダクタンスよりも小さいため、圧力が徐々に低下する。すなわち、上記排気通路では排気速度を低下させることができ、該排気通路における気体分子の運動量を低下させることができる。
【0059】
本排気処理によれば、ウエハWの主面に対向するように板状部材36が配置されるので、ウエハWの主面の直上にウエハW及び板状部材36によってチャンバ32の残部分から隔離された排気流路が画成される。該排気流路の断面積はチャンバ32の残部分の断面積よりも小さいので、排気流路のコンダクタンス(ウエハWの主面の直上におけるコンダクタンス(以下、「直上コンダクタンス」という。))をチャンバ32の残部分のコンダクタンスよりも小さくすることができる。その結果、真空排気時においてウエハWの主面の直上の気体分子、すなわちウエハWの主面に形成されたパターン間に存在する気体分子の運動量が低下するので、当該気体分子の衝突によって当該パターンは倒れることがない。また、チャンバ32内においてウエハWの主面の直上の排気流量は相対的に微量であるため、直上コンダクタンスの変化は、チャンバ32内全体の排気流のコンダクタンスに影響を及ぼさない。その結果、真空排気時の排気時間は長くならない。したがって、基板処理システム1のスループットを低下させることなく、ウエハWの主面に形成されたパターンが倒れることを防止することができる。
【0060】
なお、パターン倒れを防止するためには、直上コンダクタンスを板状部材36を配置しない場合のコンダクタンスと比較して1/10以下にするのがよいことが本発明者によって確認されている。具体的には、ウエハWと板状部材36によって画成される排気流路における排気流方向に沿う長さ(図2中における左右方向の長さ)を379mmとし、チャンバ32の気体の流れ方向に直角な方向に沿う長さ(図2中における奥行き方向の長さ)を309mmとし、チャンバ32内に搬入されたウエハWの主面と該主面に対向するチャンバ32の天井との間隔を15.7mmとすると、パターン倒れを防止できるコンダクタンスを実現するためには、板状部材36をウエハWの主面との間隔が5mm以下となるように配置するのがよいことが確認されている。
【0061】
また、上述した板状部材36は、メッシュ構造体やポーラス構造体であってもよく、スリット加工が施されていてもよい。この場合、直上コンダクタンスが必要以上に小さくなることを防止することができ、もって、チャンバ32内の真空排気を迅速に行うことができる。
【0062】
また、上述した板状部材36は該板状部材36を貫通する複数の孔(図示しない)を有してもよい。この場合、ウエハWの主面の直上における気体はその一部が複数の孔を通過して排気されるので、当該気体の一部は真空排気時に基板の主面から板状部材へ向けて流れる、すなわち、主面に形成されたパターンに対してほぼ平行に流れる。これにより、複数の孔を通過して排気されるパターン間に存在する気体分子の該パターンへの衝突を防止することができ、もって、パターン倒れを確実に防止することができる。
【0063】
また、上述した板状部材39を貫通する複数の孔のそれぞれは、当該板状部材39に対向して配置されるウエハWの主面に対して垂直方向に形成されるのが好ましい。この場合、真空排気時に当該複数の孔を通過する気体を、確実に、主面に形成されたパターンに対して平行に流すことができる。
【0064】
また、チャンバ32内を真空排気すると、チャンバ内でパーティクルが巻き上がる虞があり、当該巻き上がったパーティクルがウエハWの主面に飛来する虞があるが、ロード・ロックモジュール5では、板状部材36がウエハWの主面に対向するように配置されるため、ウエハWの主面に飛来するパーティクルは板状部材36によって進路を阻まれ、ウエハWの主面に到達することがない。したがって、ウエハWから製造される半導体デバイスの歩留まりを向上させることができる。
【0065】
図4は、本実施の形態に係る気密モジュールであるロード・ロックモジュールの排気方法としての排気処理の変形例を説明するための工程図である。
【0066】
まず、ロード・ロックモジュール5の移載アーム31は、搬送室25内の搬送アーム26からウエハWを大気圧下で受け取り、ウエハWをチャンバ32内に搬入し、チャンバ32内において当該ウエハWの主面を板状部材36と対向させる。そして、ロード・ロックモジュール排気系34は、チャンバ32内を低真空まで排気する(図4(A))。
【0067】
次いで、ガス供給系33は、低真空まで排気されたチャンバ32内に軽元素ガスであるヘリウムガスを供給する(図4(B))。
【0068】
そして、ロード・ロックモジュール排気系34は、チャンバ32内を真空排気する(図4(C))。
【0069】
本排気処理の変形例によれば、ウエハWの主面に対向するように板状部材36が配置されるので、上述した図2の排気処理と同様の効果を実現することができる。さらに、低真空まで排気された時点で、チャンバ32内に軽元素ガスであるヘリウムガスが供給されるので、チャンバ32内の気体が軽元素ガスであるヘリウムガスに置換される。その結果、真空排気時においてウエハWの主面の直上の気体分子、すなわちウエハWの主面に形成されたパターン間に存在する気体分子の運動量をさらに低下させることができ、もって、ウエハWの主面に形成されたパターンが倒れるのを確実に防止することができる。また、気体分子の運動量の低下を目的としない場合、すなわち、ヘリウムガスとの置換前と同等の運動量を維持してもよい場合には、排気速度を向上させてもよく、これにより、基板処理システム1のスループットを向上させることができる。
【0070】
なお、本排気処理の変形例によれば、チャンバ32内の気体を軽元素ガスであるヘリウムガスに置換することにより、ウエハWの主面に形成されたパターン間に存在する気体分子の運動量を低下させることができるので、例えば、板状部材36を配置しなくても、或る程度パターン倒れを防止することができる。
【0071】
図5は、本実施の形態に係る気密モジュールであるロード・ロックモジュールの変形例の排気方法としての排気処理を説明するための図である。なお、本排気処理は、上述した図2の排気処理と同様の手順で実行される。
【0072】
図5において、ロード・ロックモジュール37は、チャンバ32の上方に配置され且つ当該チャンバ32内を排気するロード・ロックモジュール排気系38(排気装置)を有し、チャンバ32内にはピック35のウエハ載置面に対向するように板状部材39が配置されており、この板状部材39は該板状部材39を貫通する複数の孔40を有する。ロード・ロックモジュール37の移載アーム31は、搬送室25内の搬送アーム26からウエハWを大気圧下で受け取り、ウエハWをチャンバ32内に搬入し、チャンバ32内において当該ウエハWの主面を板状部材39と対向させる。そして、ロード・ロックモジュール排気系38は、チャンバ32内を上方から真空排気する。
【0073】
本排気処理によれば、ウエハWの主面に対向するように板状部材39が配置されるので、上述した図2の排気処理と同様の効果を実現することができる。さらに、板状部材39は該板状部材39を貫通する複数の孔40を有しており、チャンバ32内の気体は上方から真空排気されるので、ウエハWの主面の直上における気体はそのほとんどが複数の孔40を通過して排気される。その結果、真空排気時においてウエハWの主面の直上における気体の流れ方向を当該主面に形成されたパターンに対して略平行方向にすることができる。これにより、パターン間に存在する気体分子の当該パターンへの衝突を防止することができ、もって、パターンが倒れることを確実に防止することができる。
【0074】
また、上述した板状部材39を貫通する複数の孔40のそれぞれは、当該板状部材39に対向して配置されるウエハWの主面に対して垂直方向に形成されるのが好ましい。この場合、真空排気時においてウエハWの主面の直上における気体の流れ方向を確実に当該主面に形成されたパターンに対して平行方向にすることができる。
【0075】
また、ウエハWの主面に対して垂直方向に形成された複数の孔40を有する板状部材がチャンバ32内の空間を横断するように配置され、該板状部材がチャンバ32内の空間を2つの空間に分割するようにチャンバ32の上方に配置されてもよい。この場合においても、真空排気時において2つの空間に分割されたチャンバ32内の空間における下方の空間、すなわちウエハWが搬入される空間における全ての気体の流れ方向をウエハWの主面に形成されたパターンに対して略平行方向にすることができる。
【0076】
また、図5の排気処理では、ロード・ロックモジュール排気系38がチャンバ32の上方に配置されたが、チャンバ32内に搬入されたウエハWの主面が上方に向いていない、例えば下方に向いているときは、ウエハWの主面に対向するように、すなわちチャンバ32の下方にロード・ロックモジュール排気系38を配置する。これにより、上述した図5の排気処理と同様の効果を実現することができる。
【0077】
また、上述した各排気処理を実行するロード・ロックモジュール5(37)は、図6に示すように、板状部材36(39)とウエハWの主面とを離間させる離間装置(図示しない)を備えてもよい。この場合、当該離間装置は真空排気時におけるチャンバ32内の圧力に応じて板状部材36(39)とウエハWの主面との離間量を制御する。これにより、真空排気時におけるチャンバ32内の圧力に応じて直上コンダクタンスを適切に制御することができる。具体的には、チャンバ32内の圧力が低下するほど板状部材36(39)とウエハWの主面とを離間させる。これにより、ウエハWと板状部材36(39)によって画成される排気通路のコンダクタンスを徐々に大きくすることができ、もって、チャンバ32内の真空排気を迅速に行うことができる。
【0078】
また、ロード・ロックモジュール5(37)ではチャンバ32内に、先端にピック42が取り付けられた移載アーム41を配置してもよい。ピック42は、該ピック42に載置したウエハWをリフトする複数のリフトピン43(基板リフト装置)を有する。ロード・ロックモジュール40の移載アーム41は、搬送室25内の搬送アーム26からウエハWを大気圧下で受け取り、移載アーム41がウエハWをチャンバ32内に搬入した後、ピック42の複数のリフトピン43はウエハWを該ウエハWの主面に対向するチャンバ32を画成する部材、すなわちチャンバ32の天井に向けてリフトする。このとき、ウエハWの主面の直上にはウエハW及びチャンバ32の天井により、チャンバ32の残部分から隔離された排気流路が画成される。該排気流路の断面積はチャンバ32の残部分の断面積よりも小さいので、直上コンダクタンスを小さくすることができ、もって、上述した図2の排気処理と同様の効果を実現することができる。
【0079】
本発明は気密モジュールであるロード・ロックモジュールに適用されたが、適用可能な気密モジュールはこれに限られず、パターンが形成されたウエハが搬入されるチャンバを有するモジュールや装置であれば本発明は適用可能である。
【0080】
また、上述した実施の形態では、基板が半導体用ウエハであったが、基板はこれに限られず、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やFPD(Flat Panel Display)等のガラス基板であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施の形態に係る気密モジュールを備えた基板処理システムの構成を概略的に示す断面図である。
【図2】本実施の形態に係る気密モジュールであるロード・ロックモジュールの排気方法としての排気処理を説明するための図である。
【図3】ロード・ロックモジュールにおけるチャンバの真空排気における、チャンバ内の圧力と排気時間との関係を示すグラフである。
【図4】本実施の形態に係る気密モジュールであるロード・ロックモジュールの排気方法としての排気処理の変形例を説明するための工程図である。
【図5】本実施の形態に係る気密モジュールであるロード・ロックモジュールの変形例の排気方法としての排気処理を説明するための図である。
【図6】本実施の形態に係る気密モジュールであるロード・ロックモジュールが離間装置を備えた場合を説明するための図である。
【図7】本実施の形態に係る気密モジュールであるロード・ロックモジュールの変形例を説明するための図である。
【図8】真空排気時における基板の主面に形成されたパターン倒れを説明するための図である。
【符号の説明】
【0082】
m 気体分子
P パターン
S 処理空間
W ウエハ
1 基板処理システム
5,37 ロード・ロックモジュール
31,41 移載アーム
32 チャンバ
33 ガス供給系
34,38 ロード・ロックモジュール排気系
36,39 板状部材
40 孔
43 リフトピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の処理が施されて主面にパターンが形成された基板が搬入されるチャンバを備える気密モジュールにおいて、
前記搬入された基板の前記主面に対向するように配置された板状部材を備えることを特徴とする気密モジュール。
【請求項2】
前記板状部材は前記主面との間隔が5mm以下となるように配置されることを特徴とする請求項1記載の気密モジュール。
【請求項3】
前記板状部材はメッシュ構造体又はポーラス構造体であることを特徴とする請求項1又は2記載の気密モジュール。
【請求項4】
前記板状部材にはスリット加工が施されていることを特徴とする請求項1又は2記載の気密モジュール。
【請求項5】
前記板状部材は該板状部材を貫通する複数の孔を有することを特徴とする請求項1又は2記載の気密モジュール。
【請求項6】
前記複数の孔は前記主面に対して垂直方向に形成されることを特徴とする請求項5記載の気密モジュール。
【請求項7】
前記主面に対向するように配置され且つ前記チャンバ内を排気する排気装置を備えることを特徴とする請求項5又は6記載の気密モジュール。
【請求項8】
前記チャンバ内に軽元素ガスを供給するガス供給装置を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の気密モジュール。
【請求項9】
前記板状部材と前記主面とを離間させる離間装置を備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の気密モジュール。
【請求項10】
所定の処理が施されて主面にパターンが形成された基板が搬入されるチャンバを備える気密モジュールにおいて、
前記搬入された基板の前記主面に対向する前記チャンバを画成する部材に向けて当該基板をリフトする基板リフト装置を備えることを特徴とする気密モジュール。
【請求項11】
所定の処理が施されて主面にパターンが形成された基板が搬入されるチャンバを備える気密モジュールの排気方法において、
前記搬入された基板の前記主面に対向するように前記チャンバ内に板状部材を配置する配置ステップと、
前記チャンバ内を排気する排気ステップとを有することを特徴とする排気方法。
【請求項12】
前記排気ステップに先立って、前記チャンバ内を低真空まで排気する低真空排気ステップと、前記低真空まで排気されたチャンバ内に軽元素ガスを供給するガス供給ステップとを有することを特徴とする請求項11記載の排気方法。
【請求項13】
所定の処理が施されて主面にパターンが形成された基板が搬入されるチャンバを備える気密モジュールの排気方法において、
前記搬入された基板の前記主面に対向する前記チャンバを画成する部材に向けて当該基板をリフトする基板リフトステップと、
前記チャンバ内を排気する排気ステップとを有することを特徴とする排気方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−32913(P2009−32913A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195588(P2007−195588)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】