説明

気相成長装置

【課題】原料ガス導入方向とサセプタ回転導入方向とを同一方向としたときのパージガスや原料ガスの流量を一定に保つことができる自公転型の気相成長装置を提供する。
【解決手段】円盤状のサセプタを支持して回転させる中空駆動軸12の内部に原料ガス供給管20を同軸に配置し、中空駆動軸と原料ガス供給管との間にパージガス流路21を形成するとともに、パージガス流路からフローチャンネル18の外周方向にパージガスを導入するパージガス導入ノズルにおけるガス導入路19cをサセプタの上面に対して平行な方向で、かつ、上下寸法を一定に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長装置に関し、詳しくは、基板を自公転させながら基板面に薄膜、特に窒化物系化合物半導体薄膜を気相成長させる自公転型の気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一度に多数枚の基板に気相成長させる気相成長装置として、公転サセプタの外周部周方向に複数の自転サセプタを配置し、該自転サセプタの外周部に軸受と外歯車とを設け、反応容器(チャンバ)内面に設けた固定内歯車と前記外歯車とを噛み合わせることによって成膜中の基板を自公転させる自公転型気相成長装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、サセプタを回転させながら気相成長を行う装置として、原料ガス導入方向とサセプタ回転導入方向とを同一方向としたシリコンエピタキシャル装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−266121号公報
【特許文献2】実開昭49−140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の窒化物系化合物半導体薄膜を製造する際に用いる原料ガスは、例えば有機金属とアンモニアは反応性が高いため、両者を混合させると粒子を容易に生成する。したがって、原料の有機金属ガスとアンモニアガスとは、反応炉(気相成長室)への導入時に混合する必要がある。一方、特許文献2に記載の構造では、放射状に原料ガスを導入する際に、基板表面に近い穴から噴出する原料ガスのみが膜の成長に寄与し、それより上方の穴から噴出する原料ガスは膜の成長に寄与することはなく、原料ガスの無駄となっていた。
【0005】
また、特許文献2に記載されているように、回転導入とガス導入とを同一方向にする場合は、回転用受台の中空の回転軸の中にガス導入管を挿入した二重管構造を採用せざるを得ないが、このような二重管構造を採用した場合には、回転軸の内周面とガス導入管の外周面との間の空間から気相成長室内に不純物が浸入したり、逆に気相成長室から原料ガスが外部に漏出したりすることを防止するためのパージガスを常時流しておく必要がある。
【0006】
しかし、回転する回転軸と固定されているガス導入管とを正確に同軸に配置して保持することは極めて困難であり、両者の同軸性が損なわれると、前記空間の断面積が周方向で異なってしまうため、気相成長室内に流入するパージガスの流量が気相成長室の周方向で差を生じることになる。
【0007】
この点、特許文献2に記載されているような従来のシリコンエピタキシャル装置では、パージガスの僅かな流量差はほとんど問題にならないが、例えば、前述の窒化物系化合物半導体薄膜を気相成長させる場合は、パージガスの僅かな流量差が成膜に大きな影響を与えてしまう。さらに、複数の原料ガスを気相成長室に導入するときに混合させる場合は、気相成長室導入時における各原料ガスの流量が一定に保たれていることが必要になる。
【0008】
そこで本発明は、原料ガス導入方向とサセプタ回転導入方向とを同一方向としたときのパージガスや原料ガスの流量を一定に保つことができる自公転型の気相成長装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の気相成長装置は、チャンバー内に、中空駆動軸に支持されて回転可能に設けられた円盤状のサセプタと、該サセプタの外周部周方向にそれぞれ回転可能に設けられた複数の外歯車部材と、該外歯車部材に噛合する内歯車を備えたリング状の固定内歯車部材と、前記外歯車部材にそれぞれ保持された基板を加熱する加熱手段と、前記基板の表面に平行な方向に原料ガスを導くフローチャンネルと、該フローチャンネルの中心部から外周方向にガスを導入するノズルと、該ノズルに原料ガスを供給する原料ガス供給管とを備え、該原料ガス供給管を前記中空駆動軸の内部に同軸に配置した気相成長装置において、前記中空駆動軸の内周面と前記原料ガス供給管との間に、前記フローチャンネルの方向にパージガスを流すパージガス流路を形成し、該パージガス流路からフローチャンネルの外周方向にパージガスを導入するパージガス導入ノズルを前記サセプタの上面に対して平行な方向で、かつ、上下寸法を一定に形成したことを特徴としている。
【0010】
さらに、本発明の気相成長装置は、前記ノズルが、前記原料ガス供給管の上端からフローチャンネルの外周方向に屈曲して円盤状に突設され、該原料ガスノズルの先端部のガス流路の上下寸法が、原料ガスノズルの基部側のガス流路の上下寸法よりも小さく形成され、上下寸法が小さくなったノズル先端部の長さが、ノズル基部側のガス流路の上下寸法の1.5倍以上の長さを有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の気相成長装置によれば、パージガス導入ノズルをサセプタの上面に対して平行な方向にフローチャンネル内に円盤状に突出させているので、中空駆動軸と原料ガス供給管とに軸ずれが生じてパージガス流路を流れるパージガスの流量が周方向で不均一になったとしても、パージガス導入ノズルの部分でサセプタ周方向に均一な流量に補正してフローチャンネル内に導入することができる。また、原料ガス導入ノズルの先端部の上下寸法を小さくすることにより、原料ガス供給管から原料ガス導入ノズルを介してフローチャンネル内に導入する原料ガスの流量を均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の気相成長装置の一形態例を示す断面正面図である。
【図2】同じく要部の断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本形態例に示す気相成長装置は、チャンバー11内に、中心部に形成した円形開口13aの部分を中空駆動軸12の上端に支持されて回転可能に設けられた円盤状のサセプタ13と、該サセプタ13の外周部周方向にそれぞれ回転可能に設けられた複数の外歯車部材(自転サセプタ)14と、該外歯車部材14に噛合する内歯車を備えたリング状の固定内歯車部材15と、前記外歯車部材14の上面にそれぞれ保持された基板16を加熱する加熱手段17と、前記基板16の表面に平行な方向に原料ガスを導くフローチャンネル18と、該フローチャンネル18の中心部から外周方向に原料ガスやパージガスを導入するノズル19と、該ノズル19に原料ガスを供給する原料ガス供給管20とを配置している。
【0014】
チャンバー11は、下部固定側部材11aと、該下部固定側部材11aに対して昇降可能に設けられた上部昇降側部材11bとで形成され、フローチャンネル18も天板18aが上方に移動可能に形成されている。また、固定内歯車部材15は下方に移動可能に形成されている。成膜を終えた基板16を新たな基板16に交換する際には、チャンバー11の上部昇降側部材11bとフローチャンネル18の天板18aとを上昇させるとともに、固定内歯車部材15を下降させた状態で、基板16を保持した外歯車部材14を含むサセプタ13の全体をチャンバー11から取り出して行う。
【0015】
前記原料ガス供給管20は、前記中空駆動軸12の内部に同軸に配置されており、中空駆動軸12の内周面と原料ガス供給管20の外周面との間にはパージガス流路21が形成されている。本形態例示す原料ガス供給管20は、多重管構造を有しており、中心の流路20aに第1の原料ガス、中間の流路20bに第2の原料ガスがそれぞれ供給され、外周側の流路20cには温度調整流体を流通させている。
【0016】
前記ノズル19は、原料ガス供給管20の上端からフローチャンネル18の外周方向に屈曲して円盤状に突設された上下三段のガス導入路19a,19b,19cを有している。上段のガス導入路19aは、原料ガス供給管20の中心の流路20aから供給される第1の原料ガスをフローチャンネル18内に導入するための第1の原料ガス導入ノズルとなり、中段のガス導入路19bは、原料ガス供給管20の中間の流路20bから供給される第2の原料ガスをフローチャンネル18内に導入するための第2の原料ガス導入ノズルとなり、下段のガス導入路19cは、パージガス流路21からのパージガスをフローチャンネル18内に導入するためのパージガス導入ノズルとなっている。
【0017】
ノズル19の基部が配置されているフローチャンネル18の中央部は、天板18aが上方にオフセットしており、フローチャンネル18の中央部の上下寸法Aは、基板16が配置されるフローチャンネル18の本体部分(中央部以外の部分)の上下寸法Bより大きくなっている。また、前記ノズル19における上段のガス導入路19aは、該ガス導入路19aの基部側の上下寸法Cに対して先端側の上下寸法Dが小さく形成され、さらに、ノズル先端側の上下寸法Dが小さく形成された部分の長さ寸法Eは、前記ガス導入路19aの基部側の上下寸法Cの1.5倍以上に形成されている。ガス導入路19aをこのように形成することにより、ノズル中心から放射状に拡がって流れ、ノズル先端から基板方向に供給する第1の原料ガスの流れを円滑にすることができ、各基板面に均一に原料ガスを供給することができる。
【0018】
なお、長さ寸法Eは、ノズル先端から基板16までの距離に応じて任意に設定することが可能であるが、加熱手段17によって高温状態となっている基板16やフローチャンネル18の本体部分からの放射熱によってノズル先端が高温に加熱されると原料ガスが分解するおそれがあり、また、ノズル先端が基板16に近すぎるとノズル19の先端から流出した各ガスが十分に混合せずに基板16の上面部分に到達して薄膜形成に不都合を来すおそれがあるため、フローチャンネル18の前記上下寸法Bやサセプタ13の直径及び円形開口13aの直径、基板16の直径及び処理枚数などの条件に応じて前記上下寸法Cの1.5倍以上に設定すればよい。
【0019】
一方、前記ノズル19における下段のガス導入路19cは、サセプタ13の上面に対して平行な方向で、かつ、ガス導入路19cの上下寸法が一定になるように形成されており、先端は前記各ガス導入路19a、19bの各ノズル先端と同じ位置に設定されている。したがって、第1の原料ガス、第2の原料ガス及びパージガスは、ノズル19の先端から三層流となってフローチャンネル18内に導入され、基板16の近傍で各ガスが適度に混合した流れとなって基板16の上面部分に到達し、所定の反応が進行して基板面に所定の薄膜が形成される。
【0020】
このとき、原料ガス供給管20と中空駆動軸12とが偏心した状態になっていると、パージガス流路21の周方向の断面積が異なるため、ノズル19に至るパージガスの流量が周方向で異なってしまう。このため、例えば、前記特許文献1に記載されているように、フローチャンネルの中心にガスを単に導入した場合は、フローチャンネルの周方向でガス流量及びガス流速が異なってくるため、基板面に形成される薄膜の成長速度に影響を与え、均一な薄膜形成が行えなくなるおそれがある。
【0021】
これに対し、ノズル19のガス導入路19cを、前述のように、サセプタ13の上面に対して平行な方向で、かつ、ガス導入路19cの上下寸法が一定になるように形成することにより、ガス導入路19cの流路抵抗によって周方向におけるパージガスの流量及び流速を平均化することができ、基板方向に均一にパージガスを流すことができる。これにより、原料ガスとの混合を均一化することができ、基板面に形成される薄膜の成長速度を平均化することができ、均一な薄膜形成を行うことができる。
【0022】
このように、パージガスや原料ガスの流量を一定に保つことができ、これらのガスを所定の状態で均一に混合して基板部分に供給することができるので、反応性が高い原料ガス、例えば、有機金属とアンモニアとを原料ガスとして用いる窒化物系化合物半導体薄膜を効率よく安定して製造することができ、原料ガスの無駄もなくなり、製造コストの低減にも寄与することができる。
【0023】
なお、中段のガス導入路19bや下段のガス導入路19cを、上段の原料ガス導入路19aと同じ構造とすることもできる。また、原料ガスの種類は1種類でもよく、3種類以上であってもよい。
【符号の説明】
【0024】
11…チャンバー、11a…下部固定側部材、11b…上部昇降側部材、12…中空駆動軸、13…サセプタ、13a…円形開口、14…外歯車部材(自転サセプタ)、15…固定内歯車部材、16…基板、17…加熱手段、18…フローチャンネル、18a…天板、19…ノズル、19a…上段の原料ガス導入路、19b…中段のガス導入路、19c…下段のガス導入路、20…原料ガス供給管、20a…中心の流路、20b…中間の流路、20c…外周側の流路、21…パージガス流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバー内に、中空駆動軸に支持されて回転可能に設けられた円盤状のサセプタと、該サセプタの外周部周方向にそれぞれ回転可能に設けられた複数の外歯車部材と、該外歯車部材に噛合する内歯車を備えたリング状の固定内歯車部材と、前記外歯車部材にそれぞれ保持された基板を加熱する加熱手段と、前記基板の表面に平行な方向に原料ガスを導くフローチャンネルと、該フローチャンネルの中心部から外周方向にガスを導入するノズルと、該ノズルに原料ガスを供給する原料ガス供給管とを備え、該原料ガス供給管を前記中空駆動軸の内部に同軸に配置した気相成長装置において、前記中空駆動軸の内周面と前記原料ガス供給管との間に、前記フローチャンネルの方向にパージガスを流すパージガス流路を形成し、該パージガス流路からフローチャンネルの外周方向にパージガスを導入するパージガス導入ノズルを前記サセプタの上面に対して平行な方向で、かつ、上下寸法を一定に形成したことを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
前記ノズルは、前記原料ガス供給管の上端からフローチャンネルの外周方向に屈曲して円盤状に突設され、該原料ガスノズルの先端部のガス流路の上下寸法が、原料ガスノズルの基部側のガス流路の上下寸法よりも小さく形成され、上下寸法が小さくなったノズル先端部の長さが、ノズル基部側のガス流路の上下寸法の1.5倍以上の長さを有していることを特徴とする請求項1記載の気相成長装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−23519(P2011−23519A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166831(P2009−166831)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(509054005)大陽日酸イー・エム・シー株式会社 (13)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】