説明

水力発電装置

【課題】バイパス流路を開閉する弁機構が滑らかに開閉動作を行うことのできる水力発電装置を提供すること。
【解決手段】水力発電装置1において、バイパス用の開口部38を隔壁219に形成し、この開口部38に対しては、隔壁219から突出する筒部217を軸部902が貫通する弁体90を備えた弁機構9を構成する。この弁機構9においては、筒部217と軸部902とにより構成された支持機構99では、弁体90の移動に伴って筒部217と軸部902との相対位置が変化しても、筒部217と軸部902との嵌め合い寸法が長いままであるので、弁体90がいずれの位置にあっても弁体90を安定した状態で支持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水などを利用して発電を行う水力発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛇口の下方位置に手を差し出したとき、それをセンサが感知すると、蛇口から水を自動的に流すように構成した自動水栓装置が普及しつつある。また、水道水の流路の途中位置に小型の水力発電装置を設けるとともに、この水力発電装置によって得た電力を蓄え、この電力を自動水栓装置のセンサ回路などに供給する装置も案出されている。
【0003】
このような水力発電装置において、水車室に供給される水量が増大すると、水車の回転速度が高くなりすぎてがたつくなどの問題点がある。そこで、発電用水車が配置された水車室を備えた発電用の第1の流路と、水車室に対して並列に構成されたバイパス用の第2の流路とを構成し、弁機構によって、流体圧が上昇したときに第2の流路を閉状態から開状態に切り換えることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような弁機構は、例えば、図9に示すように、バイパス用の第2の流路を構成する開口部38″を備えた隔壁219″と、開口部38″を開閉するための弁体90″と、この弁体90″に形成された穴98″に先端側に嵌ることにより弁体90″を隔壁219″に接近する方向および離間方向に変位可能に支持する軸部97″と、流体圧に抗して開口部38″を閉鎖する方向に弁体を付勢するコイルバネ95″とによって構成できる。
【特許文献1】特開2003−129930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図9に示すような弁機構では、弁体90″が開口部38″を塞いでいる状態で軸部97″が弁体90″の穴98″に浅く嵌っているだけであるため、弁体90″に傾きが発生しやすく、このような傾きが発生すると、開口部38″を滑らかに開閉できなくなるという問題点がある。
【0006】
以上の問題に鑑みて、本発明の課題は、バイパス流路を開閉する弁機構が滑らかに開閉動作を行うことのできる水力発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、発電用水車が配置された水車室を備えた発電用の第1の流路と、前記水車室に対して並列に構成されたバイパス用の第2の流路と、流体圧が上昇したときに前記第2の流路を閉状態から開状態に切り換える弁機構とを有する水力発電装置において、前記弁機構は、前記第2の流路を構成する開口部を備えた隔壁と、前記開口部を開閉するための弁体と、該弁体を前記隔壁に接近する方向および離間方向に変位可能に支持する支持機構と、流体圧に抗して前記開口部を閉鎖する方向に前記弁体を付勢する付勢部材とを備え、前記支持機構は、前記弁体および前記隔壁のうちの一方側に形成された軸部と、当該軸部との相対的な位置が変化したときでも当該軸部との間の支持寸法が一定の受け部とを備えていることを特徴とする。本発明において、前記受け部は、例えば、前記軸部が貫通する筒部である。
【0008】
本発明では、弁体に対する支持機構は、軸部と、この軸部が貫通する筒部などの受け部とによって構成されているため、支持寸法が長い。このため、弁体を安定した姿勢で支持することができる。また、支持機構では、弁体の移動にともなって軸部と受け部の相対位置が変化しても、支持寸法が変わらず、長いままであるので、弁体がいずれの位置にあっても弁体を安定した状態で支持でき、かつ、弁体は滑らかに移動する。それ故、設定した流体圧に応じて、バイパス用の流路を滑らかに開閉することができる。
【0009】
本発明において、前記開口部は、前記隔壁に対する前記受け部あるいは前記軸部の形成位置の周りに形成されている。
【0010】
本発明において、前記軸部は前記弁体に形成され、前記受け部は、前記隔壁の両面のうち、前記第2の流路における上流側に位置する面から突出している構成を採用することができる。また、前記受け部は前記弁体に形成され、前記軸部は、前記隔壁の両面のうち、前記第2の流路における下流側に位置する面から突出している構成を採用してもよい。
【0011】
本発明において、前記弁体の前記隔壁との当接面、および前記隔壁の前記弁体との当接面のうちの一方の当接面は、フッ素系ゴムあるいはフッ素系樹脂からなるシール部材で構成され、当該シール部材の表面には微細な凹凸が付与されていることが望ましい。このように構成すると、シール部材として化学的に安定なフッ素系ゴムあるいはフッ素系樹脂を用いた場合でも、弁体が隔壁に密着したまま離れなくなるという事態を回避できる。
【0012】
本発明では、前記弁体の前記隔壁との当接面、および前記隔壁の前記弁体との当接面のうちの他方の当接面は、平滑面で構成されていることが好ましい。弁体と隔壁とが密着したまま離れなくなるという事態を回避できれば、他方側の当接面については平滑面で形成できるので、流体の漏れを確実に防止することができる。
【0013】
本発明において、前記付勢部材はコイルバネであり、前記軸部の先端部には、前記コイルの一方端を支持する止め具の位置決め部が形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、弁体に対する支持機構は、軸部と、この軸部が貫通する筒部などの受け部とによって構成されているため、支持寸法が長い。このため、弁体を安定した姿勢で支持することができる。また、支持機構では、弁体の移動にともなって軸部と受け部の相対位置が変化しても、支持寸法が変わらず、長いままであるので、弁体がいずれの位置にあっても弁体を安定した状態で支持でき、かつ、弁体は滑らかに移動する。それ故、設定した流体圧に応じて、バイパス用の流路を滑らかに開閉することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した水力発電装置について説明する。
【0016】
(全体構成)
図1(a)、(b)は、本発明を適用した水力発電装置の平面図、およびA−A′断面図である。なお、図1において、A−A′線は、射出口の形成位置を通らないが、図1(b)の左部分には、射出口についても図示してある。
【0017】
図1(a)、(b)に示す水力発電装置1は、水道水の流路の途中位置などに配置される小型の水力発電装置であり、この水力発電装置1によって得た電力を蓄え、この電力を自動水栓装置のセンサ回路などに供給する用途などに用いられる。本形態の水力発電装置1は、後述する流路を構成する樹脂製の本体ケース21、この本体ケース21の上面を覆うカバー23、このカバー23を覆うステンレス製のカップ状の仕切り板25と、この仕切り板25のフランジ部との間にステータ部6を挟む環状ケース27と、環状ケース27の上方に被さる樹脂製の上ケース29とを有しており、上ケース29および仕切り板25はネジにより本体ケース21に固定されている。また、本体ケース21の底面にはEPDM製のシール281が重ねられ、仕切り板25と本体ケース21との間には、ゴム製のOリング282が配置されている。
【0018】
本体ケース21には、相対向する側面で開口する流体入口31および流体出口32を備えており、流体入口31から流体出口32に向かう第1の流路110の途中位置には、本体ケース21とカバー23とにより、後述する注水部が構成され、本体ケース21と仕切り板25との間に水車室35が構成されている。水車室35では、下端部および上端部が各々、本体ケース21および仕切り板25の軸固定穴に圧入固定された支軸4が直立しており、支軸4には、円筒状の発電用水車5が回転可能に支持されている。支軸4には、樹脂製のスリーブ45が嵌められており、発電用水車5は、支軸4のうち、スリーブ45から露出している上半部で支持されている。なお、発電用水車5は、支軸4に装着されたワッシャなどにより上下方向への変位が防止されている。
【0019】
発電用水車5において仕切り板25の円筒部251内に位置する上半部には、外周面に円筒状の永久磁石55が固着されている。また、仕切り板25の円筒部251の周りには環状のステータ組61、62が配置されており、永久磁石55およびステータ部6によって発電部が構成されている。
【0020】
ステータ部6は、軸線方向に重ねて配置された2つの相のステータ組61、62で構成されている。2つのステータ組61、62のいずれにおいても、外ステータコア、コイルボビンに巻回されたコイル、および内ステータコアが重ねられた構造を有しており、コイルボビンの内周に沿って、外ステータコアの極歯と内ステータコアの極歯が交互に並んでいる。また、コイルの巻き始め部分および巻き終わり部分は、端子台66の端子67およびワイヤー68を介してコネクタ69に接続されている。なお、上ケース29には、端子台66を覆うフード部291が形成されており、ステータ部6に水が浸入するのを防止する構造になっている。
【0021】
また、本形態の水力発電装置1には、流体入口31から流入した水が水車室35を通らずに流体出口32に向かうバイパス用の第2の流路120が形成されており、この第2の流路120には、図6を参照して後述する弁機構9が構成されている。
【0022】
(注水部の構成)
図2は、図1に示す水力発電装置に用いた本体ケースの構成を示す平面図である。図3(a)、(b)、(c)は、それぞれ、図1に示す水力発電装置に用いたカバーの構成を示す平面図、正面図および底面図である。図4(a)、(b)、(c)は、それぞれ、図1に示す水力発電装置に用いることの可能な別のカバーの構成を示す平面図、正面図および底面図である。
【0023】
図1および図2に示すように、本形態の水力発電装置1において、本体ケース21では、流体入口31に対向するように隔壁219が起立しており、その上方には、水車室35の周りに環状流路33が形成されている。ここで、環状流路33は、底面、内周面、外周面、および上面が各々、本体ケース21の環状の仕切り壁211、本体ケース21の環状の内側垂直壁212、本体ケース21の環状の外側垂直壁213、および図3に示すカバー23により規定されている。また、内側垂直壁212には、周方向の4箇所に射出口34を構成するための切り欠きが形成されている。さらに、環状流路33内の一部には、傾斜面330(図2中の斜線部)が形成されている。
【0024】
これに対して、図3(a)、(b)、(c)に示すように、カバー23はリング状を成し、カバー23のリング部230の下面のうち、図2に示す本体ケース21の4つの射出口34に対応する部分には、4つの射出口34に嵌って射出口34の各々の開口面積を調整するリブ231(突起)が形成されている。また、リブ231にテーパ231aを設けることで、その突出寸法が調節されている。従って、本体ケース21の上面にカバー23を被せると、環状流路33から発電用水車5の羽根57に向けて水を高速噴射する4つの射出口34が構成される。
【0025】
なお、図4に示すような、リング部230にリブを形成しない構成のカバー23′を用いてもよい。このように、リブの形状が異なるカバーを用途に応じて付け替えることにより、射出口34から射出される水の量を調整することができる。
【0026】
(発電用水車5の構成)
図5(a)、(b)、(c)は、図1に示す水力発電装置に用いた発電用水車を第1のラジアル軸受側からみたときの斜視図、この発電用水車を第2のラジアル軸受側からみたときの平面図、およびB−B′断面図である。
【0027】
図5(a)、(b)、(c)に示すように、本形態の水力発電装置1において、発電用水車5は、外周面から複数枚の羽根57が等角度間隔で張り出す円筒体50と、この円筒体50の貫通穴501の一方側端部(本体ケース21が位置する下方側)に位置する円筒状の第1のラジアル軸受51と、貫通穴501の他方側端部(仕切り板25の円筒部251が位置する上方側)に位置する円筒状の第2のラジアル軸受52とを備えており、第1のラジアル軸受51の軸穴510、および第2のラジアル軸受52の軸穴520に対して、図1(b)に示す支軸4が嵌ることにより、発電用水車5は支軸4の周りで回転可能に支持されている。円筒体50は、羽根57が形成された下端部は大径である一方、上半部は小径であり、この小径部分に円筒状の永久磁石55が固定されている。
【0028】
本形態において、発電用水車5は、複数枚の羽根57が各々、軸線方向において第2のラジアル軸受52側に位置する第1の羽根571と、第1のラジアル軸受51側に位置する第2の羽根572とに2分割されており、第2の羽根572の外周端は、円筒体50の軸線方向と平行な円筒板部58により連結されている。ここで、円筒板部58の外端面は、第1の羽根571の外周端と同一の半径距離の位置にある。
【0029】
このように構成した発電用水車5に対しては、図5(b)、(c)に示すように、4つの射出口34が発電用水車5の周りに等角度間隔に形成されている。また、4つの射出口34は、第1の羽根571および円筒板部58の双方に跨る方向に向かって開口しており、図5(c)に矢印L1、L2で示すように、4つの射出口34は各々、第1の羽根571と円筒板部58とに跨って水を射出するように構成されている。すなわち、射出口34から射出された水の一部は、矢印L1で示すように、第1の羽根571に直接、ぶつかる一方、射出口34から射出された水の残りは、円筒板部58の外周面にぶつかるようになっている。ここで、注水部に形成した射出口34の数と羽根57の枚数とは、素の関係にあり、一方が他方の整数倍となる条件を避けてある。例えば、本形態では、射出口34は4つであるのに対して、羽根57の枚数は7枚である。
【0030】
(発電動作)
このように構成した水力発電装置1において、流体入口31から流れ込んだ水は、隔壁にぶつかって上方の環状流路33に流れ込んだ後、4つの射出口34から発電用水車5の羽根57に向けて射出される。その結果、発電用水車5が回転し、それに伴い、永久磁石55も回転することにより、ステータ部6のコイルに誘起電圧が発生する。発電用水車5を回し終えた水は、下方に落下し、そこから流体出口32を経て排出される。また、ステータ部6で発生した誘起電圧は、コネクタ69を介して外部の回路に導かれ、この回路で直流に変換された後、整流され電池に充電される。
【0031】
(バイパス用の第2の流路および弁機構9の構成)
図6(a)、(b)はそれぞれ、図1(b)に示す弁機構9の構成を示す拡大図、および図6(a)において隔壁219を流体入口側から見たときの説明図である。
【0032】
図1および図6(a)に示すように、本形態における水力発電装置1には、流体入口31から流入した水が水車室35を通らずに流体出口32に向かうバイパス用の第2の流路120が形成されている。すなわち、流体入口31に対向する隔壁219には流体出口32に向けて窪んだ凹部219aが形成されており、この凹部219aの底部には、図6(b)に示すように、周方向に並んだ開口部38が流体入口31と流体出口32とを連通可能に形成されている。
【0033】
また、開口部38に対しては弁機構9が構成されており、弁機構9は、流体圧が低いときには開口部38(第2の流路)を閉鎖しておき、流体圧が上昇したときに開口部38(第2の流路)を閉状態から開状態に切り換える。このような弁機構9を構成するにあたって、本形態では、隔壁219には、第2の流路120における上流側の面に、凹部219aの底部から流体入口31側に向けて突出する円筒状の筒部217(受け部)が形成されており、この筒部217の周りに4つの開口部38が配置されている。また、弁機構9は弁体90を備えており、この弁体90は、隔壁219の裏面側(第2の流路120における下流側/流体出口32の側)に重なる弁部901と、弁部901の中央から流体入口31の側に突出した丸棒状の軸部902とを備えており、軸部902は筒部217を貫通している。このようにして、弁機構9では、軸部902と筒部217とによって、弁体90に対する支持機構99が構成されている。
【0034】
ここで、弁部901において隔壁219の裏面側に当接する部分には、フッ素系ゴムあるいはフッ素系樹脂製のシール部材96が貼られている。また、シール部材96の表面には微細な凹凸が付与されており、このような凹凸は、シール部材96に対するブラスト処理、あるいはシール部材96を成形する際の金型に対するブラスト処理により形成することができる。また、隔壁219において、シール部材96と当接する面は、平滑面で構成されている。
【0035】
また、弁体90において、軸部902の先端部には、その基端側より小径の突起903が形成され、この突起903より形成された段部905には、プッシュナット91によりワッシャ92が固定されている。また、軸部902の周りにはコイルバネ95が装着されており、コイルバネ95は、ワッシャ92と隔壁219の筒部217の周りの部分とによって両端部が各々支持され、圧縮された状態にある。
【0036】
このように構成した弁機構9では、弁体90がコイルバネ95によって流体入口31に向けて付勢されているので、弁部901がシール部材96を介して隔壁219に当接している。このため、流体入口31から流入した水の圧力が低い場合には、開口部38は閉鎖されている。但し、流体入口31から流入した水の圧力が高くなってワッシャ92および弁部901がコイルバネ95の付勢力よりも大きな水圧を受けると、弁体90は、コイルバネ95の付勢力に抗して流体入口32の側に変位し、弁部901が隔壁219の裏面側から離間するので、バイパス用の開口部38は開放される。それ故、流体入口31から流入した水の圧力が低い場合には、流入した水の全てが環状流路33を介して水車室35に導かれ、発電に寄与する一方、流体入口31から流入した水の圧力が高い場合には、流入した水の一部がバイパス用の開口部38を通ってそのまま流体出口32に向かう。それ故、発電用水車5の回転速度が高くなりすぎてがたつくなどの問題を回避できる。
【0037】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の水力発電装置1においてバイパス用の第2の流路120に構成した弁機構9では、弁体90に対する支持機構99が、隔壁219から流体入口31に向けて延びた筒部217と、弁体90から流体入口31に向けて突出して筒部217を貫通する軸部902とを備えているため、嵌め合い寸法(支持寸法)が長い。このため、弁体90を安定した姿勢で支持することができる。また、軸部902は筒部217を貫通しているため、弁体90の移動に伴って筒部217と軸部902との相対位置が変化しても、筒部217と軸部902との嵌め合い寸法が長いままであるので、弁体90がいずれの位置にあっても弁体を安定した状態で支持でき、かつ、弁体90は滑らかに移動する。それ故、設定した流体圧に応じて、バイパス用の第2の流路120を滑らかに開閉することができる。
【0038】
また、隔壁219には、流体出口32に向けて窪んだ凹部219aが形成されており、この凹部219aの底部に開口部38が形成されている。この凹部219aにより、流体入口31から流入する水を、開口部38を塞ぐ弁部901に対して垂直に作用させることができる。それ故、弁体90やコイルバネ95のブレを抑えることができる。
【0039】
さらに、隔壁219の弁部901との当接面を平滑面で構成する一方、弁部901において隔壁219と当接する箇所には、フッ素ゴム製あるいはフッ素樹脂製のシール部材96を介在させている。このため、流体入口31から供給される水の流体圧が所定圧未満の時は、シール部材96で弁部901と開口部38を確実に塞いだ状態にできる。しかも、シール部材96の表面には微細な凹凸を付与してシール部材96の表面粗さを最適化してあるため、流体入口31から供給される水の流体圧が所定圧以上になったとき、シール部材96は、隔壁219に吸着せず、スムーズに離間する。それ故、バイパス用の第2の流路120を滑らかに開閉することができる。
【0040】
さらにまた、軸部902の先端部にワッシャ92の位置を規定する段部905が形成されているため、コイルバネ95を所定の長さ寸法の状態で軸部902に装着することができる。それ故、弁体90が開き始める荷重(始動荷重)を適切に設定することができるため、これにより弁体90は適切に作動する。
【0041】
(流量と発電用水車の回転数との関係の評価結果)
図7を用いてさらに本形態の効果を説明する。図7は、図1に示す水力発電装置が有する発電用水車に注がれる流量と、その時の発電用水車の回転数との関係を示すグラフである。
【0042】
図7では、水力発電装置において、バイパスが無い(第2の流路を形成しない)もの、本形態を適用した弁機構9におけるコイルバネ95の始動荷重をそれぞれ、175gr、215gr、220gr、225gr、280grに設定したものを順に線I〜VIによって、それぞれの水力発電装置が有する発電用水車に注がれる流量と、その時の発電用水車の回転数との関係をグラフに示している。図7に示すように、水力発電装置において、発電用水車に注がれる流量が10L/minから25L/minへと変化すると、バイパスの無いものでは(線Iで示す結果)、発電用水車の回転数が流量に比例して増加するのに対して、本形態を適用した弁機構9を有するものでは(線I〜VIで示す結果)、発電用水車に注がれる流量が10L/minから25L/minへと変化しても、発電用水車の回転数は3000〜4000rpm近傍で安定している。それ故、本発明を適用した弁機構9によれば、閉状態から開状態の切り換え動作を滑らかに行うことができ、水車室35に供給される水の量を常に一定に保つことができることが分かる。よって、本発明によれば、発電用水車5の回転ノイズなどの発生を防止することができる。
【0043】
(弁機構9の変形例)
図8は、本発明に係る弁機構の変形例を示す説明図である。上記実施の形態で構成した弁機構9の支持機構99では、隔壁219の方に筒部217を形成し、弁体90の方に軸部902を形成したが、図8に示すように、隔壁219′において第2の流路120における下流側の面に軸部902′を形成し、弁体90′の方に筒部217′(受け部)を形成してもよい。この場合も、軸部902′に形成した段部905′とプッシュナット91′によりワッシャ92′を位置決めし、ワッシャ92′と弁部901′との間にコイルバネ95′を配置すればよい。
【0044】
また、図6および図8に示す例では、弁体90にシール部材96を取り付けたが、隔壁219において弁体90と当接する部分にフッ素ゴム製あるいはフッ素樹脂製のシール部材96を取り付けてもよい。この場合も、シール部材96の表面にはブラスト処理を施してシール部材96の表面粗さを最適化することが好ましい。
【0045】
さらに、上記形態では、弁機構9の支持機構99を構成するにあたって、軸部902、902′が貫通する筒部217、217′を受け部としたが、軸部902、902′との相対的な位置が変化したときでも軸部902、902′との間の支持寸法が一定の受け部であれば、軸部の周りを部分的に支持する構成、例えば、軸部の周りを複数箇所で支持する構成や、溝と突条部とが係合した構成などを採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(a)、(b)は、本発明を適用した水力発電装置の平面図、およびA−A′断面図である。
【図2】図1に示す水力発電装置に用いた本体ケースの構成を示す平面図である。
【図3】(a)、(b)、(c)は、図1に示す水力発電装置に用いたカバーの構成を示す平面図、正面図、および底面図である。
【図4】(a)、(b)、(c)は、図1に示す水力発電装置に用いることの可能なカバーの構成を示す平面図、正面図および底面図である。
【図5】(a)、(b)、(c)は、図1に示す水力発電装置に用いた発電用水車を第1のラジアル軸受側からみたときの斜視図、この発電用水車を第2のラジアル軸受側からみたときの平面図、およびB−B′断面図である。
【図6】(a)、(b)は、図1(b)に示す弁機構の構成を示す拡大図、および隔壁を流体入口側から見たときの説明図である。
【図7】図1に示す水力発電装置が有する発電用水車に注がれる流量と、その時の発電用水車の回転数との関係を示すグラフである。
【図8】図1に示す水力発電装置に使用可能な別の弁機構の構成を示す構成図である。
【図9】従来の水力発電装置に用いられる弁体の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 水力発電装置
5 発電用水車
9 弁機構
21 本体ケース
23 カバー
31 流体入口
32 流体出口
35 水車室
38 開口部
90 弁体
95 コイルバネ
96 シール部材
99 支持機構
901 弁部
902 軸部
110 第1の流路
120 第2の流路
217 筒部(受け部)
219 隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電用水車が配置された水車室を備えた発電用の第1の流路と、前記水車室に対して並列に構成されたバイパス用の第2の流路と、流体圧が上昇したときに前記第2の流路を閉状態から開状態に切り換える弁機構とを有する水力発電装置において、
前記弁機構は、前記第2の流路を構成する開口部を備えた隔壁と、前記開口部を開閉するための弁体と、該弁体を前記隔壁に接近する方向および離間方向に変位可能に支持する支持機構と、流体圧に抗して前記開口部を閉鎖する方向に前記弁体を付勢する付勢部材とを備え、
前記支持機構は、前記弁体および前記隔壁のうちの一方側に形成された軸部と、当該軸部との相対的な位置が変化したときでも当該軸部との間の支持寸法が一定の受け部とを備えていることを特徴とする水力発電装置。
【請求項2】
請求項1において、前記受け部は、前記軸部が貫通する筒部であることを特徴とする水力発電装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記開口部は、前記隔壁に対する前記受け部あるいは前記軸部の形成位置の周りに形成されていることを特徴とする水力発電装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記軸部は前記弁体に形成され、
前記受け部は、前記隔壁の両面のうち、前記第2の流路における上流側に位置する面から突出していることを特徴とする水力発電装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記受け部は前記弁体に形成され、
前記軸部は、前記隔壁の両面のうち、前記第2の流路における下流側に位置する面から突出していることを特徴とする水力発電装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記弁体の前記隔壁との当接面、および前記隔壁の前記弁体との当接面のうちの一方の当接面は、フッ素系ゴムあるいはフッ素系樹脂からなるシール部材で構成され、
当該シール部材の表面には微細な凹凸が付与されていることを特徴とする水力発電装置。
【請求項7】
請求項6において、前記弁体の前記隔壁との当接面、および前記隔壁の前記弁体との当接面のうちの他方の当接面は、平滑面で構成されていることを特徴とする水力発電装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、前記付勢部材はコイルバネであり、
前記軸部の先端部には、前記コイルの一方端を支持する止め具の位置決め部が形成されていることを特徴とする水力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−321809(P2007−321809A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150092(P2006−150092)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】