水晶振動子、水晶ユニット、水晶発振器と携帯機器および水晶振動子と水晶ユニットの各製造方法
【課題】水晶振動子、水晶ユニットとそれらの製造方法、及び水晶発振器と携帯機器を提供する。
【解決手段】水晶音叉基部354aと第1水晶音叉腕352aと第2水晶音叉腕353aを備えて構成される音叉型屈曲水晶振動子351aで、第1水晶音叉腕の内側側面は第2水晶音叉腕の内側側面に対向し、第1側面と、第2側面355e,356eを介して第1側面に接続された第3側面355a,356aを備えた溝が、第1、第2水晶音叉腕の各主面に形成され、該溝は、音叉腕長さ方向で第4側面に対向する第5側面を備え、第1側面の他端部は第5側面の一端部に接続され、第3側面の他端部は第4側面の一端部に接続され、該溝の外側端部から水晶音叉腕の外側端部までの該溝の幅方向距離を部分幅で定義すると、該溝の溝幅はその部分幅より大きく、所定の関係にて、該溝の長さ寸法と、音叉型屈曲水晶振動子の全長寸法が決定されている。
【解決手段】水晶音叉基部354aと第1水晶音叉腕352aと第2水晶音叉腕353aを備えて構成される音叉型屈曲水晶振動子351aで、第1水晶音叉腕の内側側面は第2水晶音叉腕の内側側面に対向し、第1側面と、第2側面355e,356eを介して第1側面に接続された第3側面355a,356aを備えた溝が、第1、第2水晶音叉腕の各主面に形成され、該溝は、音叉腕長さ方向で第4側面に対向する第5側面を備え、第1側面の他端部は第5側面の一端部に接続され、第3側面の他端部は第4側面の一端部に接続され、該溝の外側端部から水晶音叉腕の外側端部までの該溝の幅方向距離を部分幅で定義すると、該溝の溝幅はその部分幅より大きく、所定の関係にて、該溝の長さ寸法と、音叉型屈曲水晶振動子の全長寸法が決定されている。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音叉型屈曲水晶振動子を収納した水晶ユニットとその製造方法に関する。特に、小型化、高精度化、耐衝撃性、低廉化の要求の強い携帯機器用の基準信号源として最適な新電極形成を備えた水晶ユニットとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図17(a)および(b)は従来の音叉型屈曲水晶振動子100を収納した水晶ユニット101の、蓋を省略した状態での正面図および、蓋付きの状態での側面図である。音叉型屈曲水晶振動子100は音叉腕102,103と音叉基部104を具えて構成されている。音叉基部104はケース105の固定部106に接着剤107,108等によって固定されている。又、固定部106には電極109,110が配置されていて、2電極端子を構成している。更に、ケース105と蓋111は金属112を介して接合されている。従来の水晶ユニットはこのように構成されているが、水晶ユニットを小さくしようとすると水晶振動子も小型化が要求される。
【0003】
小型の水晶振動子を得るために、例えば、特許文献1と特許文献3では、音叉型屈曲水晶振動子の音叉腕に溝を設け、且つ、電極構成について開示されている。更に、特許文献1では、振動子形状と溝を同時に形成すること、また、特許文献3では、振動片の溝部を別工程で形成することが記載されている。
【特許文献1】特開昭56−65517
【特許文献2】国際公開第00/44092
【特許文献3】2000−223992
【特許文献4】2001−221638
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
音叉型屈曲水晶振動子では、電界成分Exが大きいほど等価直列抵抗R1が小さくなり、品質係数Q値が大きくなる。しかしながら、従来から使用されている音叉型屈曲水晶振動子は、各音叉腕の表裏側面の4面に電極を配置している。そのために電界が直線的に働かず、かかる音叉型屈曲水晶振動子を小型化させると、電界成分Exが小さくなってしまい、基本波モード振動の等価直列抵抗R1が大きくなり、品質係数Q値が小さくなるなどの課題が残されていた。
【0005】
又、例えば、特許文献1と特許文献2では音叉腕に溝を設け、且つ、溝の構成と電極構成について開示している。特許文献4では電界方向が示されている。しかしながら、本発明の音叉型屈曲水晶振動子の溝の構成、寸法と振動モード並びに等価直列抵抗R1、R2との関係、及び2電極端子と電極配置との関係について記載されていない。更に、本発明の水晶ユニットとその製造方法についても全く開示されていない。このようなことから、小型の水晶ユニットを実現するには超小型で、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値が高くなるような新形状で、電気機械変換効率の良い電極配置とその構成を備える音叉型屈曲水晶振動子とそれを備えた水晶ユニットとその製造方法とが所望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の方法で従来の課題を有利に解決した水晶振動子、水晶ユニットとそれらの製造方法と、水晶発振器と携帯機器を提供することを目的とするものである。
【0007】
本発明の水晶振動子の第1の態様は、水晶音叉基部と前記水晶音叉基部に接続された少なくとも第1水晶音叉腕と第2水晶音叉腕を備えて構成される音叉型屈曲水晶振動子で、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各々は、第1主面とその第1主面に対抗する第2主面と、内側側面とその内側側面に対抗する外側側面とを有し、前記第1水晶音叉腕の内側側面は前記第2水晶音叉腕の内側側面に対向していて、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の内側側面に電極が配置され、前記第1水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性と前記第2水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性が異なるように各電極が配置され、第1側面と、第2側面を介して前記第1側面に接続された第3側面を備えた溝が、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成され、前記第1側面と前記第3側面の各側面は水晶音叉腕の長さ方向に延在し、かつ、内側側面に対抗していて、前記第1側面の一端部は前記第2側面の一端部に接続され、前記第3側面の一端部は前記第2側面の他端に接続されていて、さらに、前記溝は、水晶音叉腕の長さ方向において第4側面に対向する第5側面を備え、前記第1側面の他端部は前記第5側面の一端部に接続され、前記第3側面の他端部は前記第4側面の一端部に接続され、前記第1側面と前記第2側面と前記第3側面の内、前記第1側面と前記第3側面の各側面のみが、内側側面に対抗していて、前記溝の外側端部から前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の対応する水晶音叉腕の外側端部まで測定された前記溝の幅方向の距離を部分幅で定義すると、前記溝の溝幅は前記部分幅より大きくなるように前記溝は形成されていて、前記音叉型屈曲水晶振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が、前記音叉型屈曲水晶振動子の2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さくなるように、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の長さ寸法と、前記音叉型屈曲水晶振動子の全長の寸法が決定されている水晶振動子である。
本発明の水晶振動子の第2の態様は、水晶音叉基部と前記水晶音叉基部に接続された少なくとも第1水晶音叉腕と第2水晶音叉腕を備えて構成される音叉型屈曲水晶振動子で、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各々は、第1主面とその第1主面に対抗する第2主面と、内側側面とその内側側面に対抗する外側側面とを有し、前記第1水晶音叉腕の内側側面は前記第2水晶音叉腕の内側側面に対向していて、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の内側側面に電極が配置され、前記第1水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性と前記第2水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性が異なるように各電極が配置され、第1側面と、第2側面を介して前記第1側面に接続された第3側面を備えた溝が、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成され、前記第1側面と前記第3側面の各側面は水晶音叉腕の長さ方向に延在し、前記第1側面は内側側面に対抗し、かつ、前記第3側面は外側側面に対抗していて、前記溝の外側端部から前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の対応する水晶音叉腕の外側端部まで測定された前記溝の幅方向の距離を部分幅で定義すると、前記溝の溝幅は前記部分幅より大きく、前記溝の長さは前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の長さに対して0.4から0.7の範囲内にあって、前記音叉型屈曲水晶振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が、前記音叉型屈曲水晶振動子の2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さくなるように、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の長さ寸法と、前記音叉型屈曲水晶振動子の全長の寸法が決定されている水晶振動子である。本発明の水晶ユニットの第1の態様は、第1の態様または第2の態様に記載の水晶振動子と、蓋とケースとを備えた水晶ユニットで、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝は四角形と異なる多角形で、前記溝の溝幅と前記溝を備えた水晶音叉腕の腕幅との比が、0.35から0.85の範囲内にあり、前記音叉型屈曲水晶振動子は前記ケースの固定部に固定され、かつ、前記蓋が前記ケースに接続されている水晶ユニットである。本発明の水晶発振器の第1の態様は、第1の態様に記載の水晶ユニットと、増幅器と、コンデンサと、抵抗素子とを備えて構成される水晶発振器で、第1電極端子を形成するために、前記第1水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の前記第1側面と前記第3側面の各側面に配置された電極は、前記第2水晶音叉腕の前記内側側面と前記外側側面の各側面に配置された電極に接続され、第2電極端子を形成するために、前記第2水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の前記第1側面と前記第3側面の各側面に配置された電極は、前記第1水晶音叉腕の前記内側側面と前記外側側面の各側面に配置された電極に接続されていて、前記第1電極端子を形成した第1電極は前記ケースの固定部に配置された第1電極に接続され、かつ、前記ケースの固定部に配置された前記第1電極は前記ケースの裏面の一端部に配置された第1電極に接続され、前記第2電極端子を形成した第2電極は前記ケースの固定部に配置された第2電極に接続され、かつ、前記ケースの固定部に配置された前記第2電極は前記ケースの裏面の他端部に配置された第2電極に接続されていて、前記ケースは貫通穴を有し、前記音叉型屈曲水晶振動子は前記ケースの固定部に導電性接着剤あるいは半田によって固定され、前記ケースの貫通穴を真空中で封止するために、低融点ガラスあるいは金属が前記ケースの貫通穴に配置されている水晶発振器である。
本発明の携帯機器の第1の態様は、第1の態様または第2の態様に記載の水晶振動子と、あるいは、第1の態様に記載の水晶ユニットと、あるいは、第1の態様に記載の水晶発振器を備えて構成されている携帯機器である。
【0008】
本発明の水晶振動子の製造方法の第1の態様は、水晶音叉基部と前記水晶音叉基部に接続された少なくとも第1水晶音叉腕と第2水晶音叉腕を備えて構成される音叉型屈曲水晶振動子の製造方法で、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各々は、第1主面とその第1主面に対抗する第2主面と、内側側面とその内側側面に対抗する外側側面とを有し、前記第1水晶音叉腕の内側側面は前記第2水晶音叉腕の内側側面に対向していて、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の内側側面に電極が配置され、前記第1水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性と前記第2水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性が異なるように各電極を配置する工程と、第1側面と、第2側面を介して前記第1側面に接続された第3側面を備えた溝が、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成され、前記第1側面と前記第3側面の各側面は水晶音叉腕の長さ方向に延在し、かつ、内側側面に対抗していて、前記第1側面の一端部は前記第2側面の一端部に接続され、前記第3側面の一端部は前記第2側面の他端に接続されていて、さらに、前記溝は、水晶音叉腕の長さ方向において第4側面に対向する第5側面を備え、前記第1側面の他端部は前記第5側面の一端部に接続され、前記第3側面の他端部は前記第4側面の一端部に接続され、前記第1水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の前記第1側面と前記第3側面の各側面のみが、前記第1水晶音叉腕の内側側面に対抗し、前記第2水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の前記第1側面と前記第3側面の各側面のみが、前記第2水晶音叉腕の内側側面に対抗するように、前記溝を形成する工程と、前記音叉型屈曲水晶振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が、前記音叉型屈曲水晶振動子の2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さくなるように、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の長さ寸法と、前記音叉型屈曲水晶振動子の全長の寸法を決定する工程と、を含む水晶振動子の製造方法である。
本発明の水晶振動子の製造方法の第2の態様は、水晶音叉基部と前記水晶音叉基部に接続された少なくとも第1水晶音叉腕と第2水晶音叉腕を備えて構成される音叉型屈曲水晶振動子の製造方法で、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各々は、第1主面とその第1主面に対抗する第2主面と、内側側面とその内側側面に対抗する外側側面とを有し、前記第1水晶音叉腕の内側側面は前記第2水晶音叉腕の内側側面に対向していて、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の内側側面に電極が配置され、前記第1水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性と前記第2水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性が異なるように各電極を配置する工程と、第1側面と、第2側面を介して前記第1側面に接続された第3側面を備えた溝が、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成され、前記第1側面と前記第3側面の各側面は水晶音叉腕の長さ方向に延在し、前記第1側面は内側側面に対抗し、かつ、前記第3側面は外側側面に対抗していて、前記溝の長さは前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の長さに対して0.4から0.7の範囲内にあるように、前記溝を形成する工程と、前記音叉型屈曲水晶振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が、前記音叉型屈曲水晶振動子の2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さくなるように、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の長さ寸法と、前記音叉型屈曲水晶振動子の全長の寸法を決定する工程と、を含む水晶振動子の製造方法である。
本発明の水晶ユニットの第1の態様は、第1の態様または第2の態様に記載の水晶振動子の製造方法と、前記音叉型屈曲水晶振動子をケースの固定部に固定する工程と、蓋を前記ケースに接続する工程とを含み、前記溝を形成する工程は、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝は四角形と異なる多角形で、前記溝の外側端部から前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の対応する水晶音叉腕の外側端部まで測定された前記溝の幅方向の距離を部分幅で定義すると、前記溝の溝幅は前記部分幅より大きく、前記溝の溝幅と前記溝を備えた水晶音叉腕の腕幅との比が、0.35から0.85の範囲内にあるように、多角形の形状と各寸法を備えた溝を形成する工程を含む水晶ユニットの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明は水晶振動子、水晶ユニットとそれらの製造方法で、音叉腕の側面の電極およびそれに対抗する異極の電極を持つ新しい形状と電極構成を有する音叉型屈曲水晶振動子、即ち、例えば、音叉腕の中立線を挟んだ中央部に溝を設け、且つその溝に電極を配置した音叉型屈曲水晶振動子を採用することにより、電気的諸特性に優れた超小型の水晶ユニットを提供することができる。
【0010】
加えて、音叉腕の上下面に各々1個の溝が設けられ、設けられた溝の長さは、等価直列抵抗R1の小さな振動子を得るために、音叉腕の長さに対して0.4から0.7の範囲内にあるので、本発明の水晶ユニットに搭載される音叉型屈曲水晶振動子は、等価直列抵抗R1が小さくなり、品質係数Q値の高い超小型の音叉型屈曲水晶振動子を得ることができる。
【0011】
更に、例えば、音叉腕の厚みtに対する溝の厚みt1は0.05から0.79の範囲内にあり、その溝に電極を配置し、その電極に対抗して極性の異なる電極が配置されているので、振動子の小型化が極めて容易に行えると同時に、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Qの高い超小型の音叉型屈曲水晶振動子が得られる。その結果、超小型の水晶ユニットと水晶発振器を得ることができる。
【0012】
又、音叉腕に溝を有する前記音叉型屈曲水晶振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さい音叉型屈曲水晶振動子を備えた水晶ユニットを備えて水晶発振器が構成されるので、2次高調波モード振動を抑えた基本波モードで振動する信頼性の極めて高い水晶発振器が実現できる。
【0013】
更に、本発明で用いられる新形状と新電極構成を有する音叉型屈曲水晶振動子の製造方法を提供することにより、超小型で、品質に優れた、安価な水晶振動子を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態を実施例によって図面に基づき具体的に述べる。
【0015】
図1(a)および(b)は本発明の水晶ユニットの第1実施例の、蓋を省略した状態での正面図および、蓋付きの状態での側面図である。この実施例の水晶ユニット1はケース2と音叉型屈曲水晶振動子3と蓋19とを具えて構成されている。又、音叉型屈曲水晶振動子3は音叉腕4,5と音叉基部6とを具えて構成されていて、音叉基部6はケース2に設けられた固定部7に導電性接着剤8,9又は半田によって固定されている。更に、音叉腕4,5には溝10,11が設けられ、本実施例では、音叉腕に設けられた溝は音叉基部6にまで延在している。なお、本実施例及びその他の実施例の水晶ユニットの、ケース内に収納される音叉型屈曲水晶振動子の詳細については図2から図15で詳細に説明される。
【0016】
又、固定部7には電極12,13が配置されていて、音叉基部6に配置された互いに異極となる電極にそれぞれ接続されている。即ち、2電極端子を構成している。更に、固定部7の電極12にはケース2の裏面の一方の端部にまで延在して配置され電極14と同極になるように構成される。これに対して、固定部7の電極13はケース2の裏面の他方の端部にまで延在して配置され電極15と同極になるように構成されている。又、ケース2と蓋19は接合部材16を介して接合されている。
【0017】
なお、本実施例では、電極14と電極15とはケース2の互いに反対に位置する端部に設けられているが、電極14,15はケースの裏面の任意の位置に設けても良い。又、このケース2の裏面の電極構成は以下に述べられる実施例のケースについても適用されるものである。
【0018】
更に、本実施例ではケース2に真空中で封止するための穴17が設けられていて、封止部材18で封止されている。又、本実施例では、ケースの材料としてセラミックス又はガラス、蓋の材料としてはガラス又は金属、又、ケースと蓋を接合する接合部材としては低融点ガラス又は半田を含む金属を用い、更に、ケースの穴を封止する封止部材としては同様に低融点ガラス又は半田を含む金属が用いられる。
【0019】
又、本実施例では、ケース2に真空中で封止するための穴17が設けられているが、ケース2には真空封止用の穴17を設けないで、ケースと蓋とを接合部材を介して真空中で直接封止しても良い。なお、本実施例のケースと蓋との構成は以下に述べられる他の実施例のケースと蓋にも適用されるものである。
【0020】
図2は、ケース2に収納されて、そのケースとそれを封止する蓋3とともに本実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子21の外観図とその座標系を示すものである。座標系O、電気軸x、機械軸y、光軸zからなりO−xyzを構成している。本実施例の音叉型屈曲水晶振動子21は音叉腕22と音叉腕23と音叉基部24とから成り、音叉腕22と音叉腕23とは音叉基部24に接続されている。更に、音叉腕22の上面には中立線を挟んで溝25が設けられ、又、音叉腕23の上面には音叉腕22と同様に溝31が設けられている。なお、図2では音叉型屈曲水晶振動子21に配置された電極を省略して示し、角度θは、x軸廻りの回転角であり、通常、0〜10°の範囲で選ばれる。
【0021】
図3は図2の音叉型屈曲水晶振動子21の断面図を示し、図4は図2の音叉型屈曲水晶振動子21の上面図を示す。ここでは、図2中の、音叉腕22のA−A′断面図を、図3において紙面の右側に示し、又、図2中の、音叉腕23のB−B′断面図を図3において紙面の左側に示す。音叉腕22の上下面には中立線37(図4参照)を挟んで溝25,26が設けられている。更に、溝25には電極27が、溝26には電極28が配置され、その側面には電極29,30が配置されていて、電極27,28と電極29,30とは異電極となるように構成されている。更に詳述するならば、各音叉腕の上下面の幅方向には各々2個の段差部が音叉腕の長さ方向に沿って設けられ、前記2個の段差部には同極となる電極が配置され、前記各電極と対抗する側面に配置された電極は極性が異なるように構成されている。と同時に、音叉腕22の溝25,26と電極27,28と側面の電極29,30とは音叉基部24にまで延在して設けられている。
【0022】
音叉腕23の上下面にも音叉腕22と同様に中立線38(図4参照)を挟んで溝31,32が設けられている。そして、溝31には電極33が、溝32には電極34が配置されている。更に、その側面には電極35,36が配置されていて、電極33,34と電極35,36とは互いに異電極となるように構成されている。と同時に、音叉腕23の溝31,32と電極33,34と側面の電極35,36とは音叉基部24にまで延在して設けられている。又、音叉腕22と音叉腕23との電極は図3に示すように接続されて、2電極端子構造C−C′を形成する。今、電極端子C−C′間に直流電圧を印加すると、音叉腕22と音叉腕23とには電界Exが各矢印方向に働く。この電界Exは音叉腕内で電極に垂直に、すなわち直線的に働くので、電界Exが大きくなり、歪の発生が大きくなる。その結果、音叉型屈曲水晶振動子21を小型化した場合でも損失等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い音叉型屈曲水晶振動子が得られる。
【0023】
図4では溝25,31の配置及び寸法などを詳述する。すなわち、この実施例の音叉型屈曲水晶振動子21には音叉腕22の中立線37を挟むようにして溝25が設けられ、他方の音叉腕23にも中立線38を挟んで溝31が設けられている。そして、それら溝25および溝31の幅W2は、中立線37と中立線38とを挟んだ寸法とすることが好ましい。この理由は、屈曲モードを引き起こすとき、音叉腕22,23の振動を容易にすることができるからである。これにより、等価直列抵抗R1を小さくすることができ、品質係数Q値の高い振動子を実現できる。
【0024】
更に、音叉腕22,23の全幅WはW=W1+W2+W3で与えられ、通常はW1=W3となるように
溝幅W2と音叉腕幅Wとの比(W2/W)が0.35〜0.85となるように形成される。このように形成することにより、音叉腕の中立線37と中立線38を基点とする慣性モーメントが大きくなる。即ち、電気機械変換効率が良くなるので、等価直列抵抗R1の小さい、Q値の高い、しかも容量比の小さい音叉型屈曲水晶振動子を得ることができる。
【0025】
これに対して、溝25および溝31の長さl1については、溝25,31が、音叉腕22,23から長さl2の音叉基部24にまで延在し、その音叉基部24に延在する溝の長さがl3となるような寸法とされている。それ故、音叉腕22、23に設けられた溝の長さは、l0=(l1−l3)で与えられ、等価直列抵抗R1の小さな振動子を得るために、音叉腕の長さに対して0.4〜0.7の範囲内の値を有する。更に、音叉基部の歪量を大きくして、R1を小さくし、且つ、支持、固定によるエネルギー漏れのない振動子を得るには音叉基部の溝の長さl3と音叉基部の長さl2との比が0.04〜0.78の範囲内の値になるように溝25,31が構成される。なお、本実施例では、溝の長さl3の側面全部に電極が配置されているが、側面の電極が溝の長さl3より短く配置されている時には、l3は電極の長さと同じ長さとする。また、音叉型屈曲水晶振動子21の全長lは要求される周波数や収納容器の大きさなどから決定される。と同時に、基本波モードで振動する良好な音叉型屈曲水晶振動子を得るためには、以下で説明するように、溝の長さl1と全長lとの間には密接な関係が存在する。
【0026】
すなわち、音叉腕22,23又は音叉腕22,23と音叉基部24とに設けられた溝の長さl1と音叉型屈曲水晶振動子21の全長lとの比(l1/l)が0.2〜0.68の範囲内の値となるように溝の長さを設定している。このように形成する理由は、不要振動である2次高調波振動(基本波周波数の約6.3倍の周波数)を抑圧することができるからである。それ故、基本波モードで容易に振動する良好な音叉型屈曲水晶振動子が実現できる。さらに詳述するならば、基本波モードで振動する音叉型屈曲水晶振動子の等価直列抵抗R1が2次高調波振動での等価直列抵抗R2より小さくなる。即ち、R1<R2となり、増幅器(CMOSインバータ),コンデンサ,抵抗,本実施例の水晶ユニット等から成る水晶発振器において、振動子が基本波モードで容易に振動する良好な水晶発振器が実現できる。
【0027】
更に、図示されていないが、本実施例の音叉型屈曲水晶振動子21は厚さtの振動子で、溝の厚みt1を有している。本実施例では、溝の厚みt1と音叉腕又は音叉腕と音叉基部の厚みtとの比(t1/t)が0.05〜0.79の範囲内の値となるように溝が形成されている。このように形成することにより、音叉腕又は音叉腕と音叉基部の溝の側面電極とそれに対抗する側面の電極との間の電界Exが大きくなる。即ち、電気機械変換効率の良い、等価直列抵抗R1の小さい振動子が得られる。
【0028】
また、この実施例では、音叉基部24は、図4中、振動子21の長さl2の下側部分全体とされ、又、音叉腕22及び音叉腕23は、図4中、振動子21の長さl2の部分から上側の部分全体とされている。本実施例では音叉の叉部は矩形をしているが、本発明は前記形状に限定されるものではなく、音叉の叉部がU字型をしていてもよい。この場合も、矩形の形状と同じように、音叉腕と音叉基部との寸法の関係は前記関係と同じである。更に、本実施例では、音叉基部の溝と側面とに電極を配置しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、音叉基部の溝の側面に配置された電極(側面電極)に対しx軸方向(幅方向)に隣接する、溝の側面電極と極性の異なる少なくとも1個の電極を音叉基部の面上に配置しても良い。例えば、音叉基部の溝と溝との間に、隣接する溝の側面電極と極性の異なる2個の電極(例えば、図4に仮想線で示す電極25a,31a)を面上に、又は4個の電極を上下面に配置しても良い。この場合、厚み方向の対抗電極は同極となるように構成される。このように構成することにより、音叉基部の歪量が大きくなるので、等価直列抵抗R1の小さい音叉型屈曲水晶振動子を得ることができる。
【0029】
図5は、図1に示すケース2に収納されて、そのケースとそれを封止する図1に示す蓋3とともに本発明の第2実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子69の外観図とその座標系を示すものである。この実施例の音叉型屈曲水晶振動子69では、先に述べた第1実施例における音叉型屈曲水晶振動子21と同様に、音叉腕70と音叉腕76とに、溝71と溝77とがそれぞれ設けられると共に、音叉基部90には、溝82と溝86とが溝71と溝77との間に設けられている。
【0030】
図6は、図5の音叉型屈曲水晶振動子69の音叉基部90のD−D′断面図を示す。図6では図5の水晶振動子の音叉基部90の断面形状並びに電極配置について詳述する。音叉腕70と連結する音叉基部90には溝71,72が設けられている。同様に、音叉腕76と連結する音叉基部90には溝77,78が設けられている。更に、溝71と溝77との間には溝82と溝86とが設けられている。又、溝72と溝78との間には溝83と溝87とが設けられている。そして、溝71と溝72とには電極73,74が、溝82と溝83とには電極84,85が、溝86と溝87とには電極88,89が、溝77と溝78とには電極79,80が配置され、音叉基部90の両側面には電極75,81が配置されている。
【0031】
更に、電極75,79,80,84,85は一方の同極に、電極73,74,81,88,89は他方の同極になるように配置されていて、2電極端子構造E−E′を構成する。即ち、z軸方向に対抗する溝の電極は同極に、且つ、x軸方向に隣接する電極は異極になるように構成されている。又、図示しないが音叉腕70,76には第1実施例の音叉型屈曲水晶振動子21(図3参照)と同じ様に電極が配置されている。今、2電極端子E−E′に直流電圧を印加(E端子に正、E′端子に負)すると電界Exは図6に示した矢印のように働く。電界Exは水晶振動子の側面と溝内の側面とに配置された電極により電極に垂直に、即ち、直線的に引き出されるので、電界Exが大きくなり、その結果、発生する歪の量も大きくなる。従って、音叉型屈曲水晶振動子を小型化させた場合でも、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い音叉型屈曲水晶振動子が得られる。
【0032】
図7は図5の音叉型屈曲水晶振動子69の上面図を示すものである。図7では溝71,77の配置について特に詳述する。音叉腕70の中立線91を挟むようにして溝71が設けられている。他方の音叉腕76も中立線92を挟むようにして溝77が設けられている。更に、本実施例の音叉型屈曲水晶振動子69では、音叉基部90の、溝71と溝77との間に挟まれた部分にも溝82と溝86とが設けられている。それら溝71,77及び溝82,86を設けたことで、水晶振動子69には、先に述べたように、電界Exが図6に示した矢印のように働き、電界Exは水晶振動子の側面と溝内の側面とに配置された電極により電極に垂直に、即ち、直線的に引き出されるので、電界Exが大きくなり、その結果、発生する歪の量も大きくなる。このように、本実施例の音叉型水晶振動子69の形状と電極構成とは、音叉型水晶振動子を小型化した場合でも電気的諸特性に優れた、即ち、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い水晶振動子を実現できる。尚、幅寸法W=W1+W2+W3と長さ寸法l1,l2,l3と厚み寸法t,t1とについては先に述べた第1実施例と同様の寸法条件とすることが望ましく、これらの寸法条件は、既に図4の説明の際に詳述したので、ここでは省略する。
【0033】
図8は、図1に示すケース2に収納されて、そのケースとそれを封止する図1に示す蓋3とともに本発明の第3実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子300の外観図とその座標系を示すものである。そして、図9は、図8の振動子300の上面図であり、又、図10は、図9の音叉型屈曲水晶振動子300のI−I′断面の形状を示す断面図である。図8に示すように、振動子300の座標系は水晶の結晶軸であるx軸(電気軸)廻りに回転角θ度回転されている。そして、水晶の結晶軸であるy軸(機械軸)およびZ軸(光軸)の回転後の新軸はそれぞれy′軸又はz′軸とされており、かかる角度θは通常0°〜10°の範囲内の角度に設定される。この音叉型屈曲水晶振動子300は、音叉腕301と音叉腕302と音叉基部303とを具えて構成された、厚さtを有するものである。さらに、音叉腕301には段差が設けられて、上面部301aと中面部301bとの間に段差部(上面部301aの内側面)304が形成され、その中面部301bおよび段差部304は音叉基部303にまで延在している。又、音叉腕302の上面にも音叉腕301と同様に図9及び図10に示すように中面部302bおよび段差部305が形成されている。そして、音叉基部303にも、上面部303a,中面部303b及び段差部306が形成されている。
【0034】
即ち、図9に示すように、この振動子300の音叉腕301には幅方向の任意の位置に段差部304が、一方、音叉腕302には幅方向の任意の位置に段差部305が、それぞれ音叉基部303にまで延在して設けられ、それら段差部304及び段差部305は、音叉基部303の段差部306にそれぞれ接続されている。又、音叉腕の側面と段差部との間の寸法は音叉腕幅Wの半分以下が好ましい。このように寸法を構成することにより、電界Exを大きくすることができる。その結果、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い音叉型屈曲水晶振動子を得ることができる。
【0035】
さらに、図10に示すように、音叉腕301の下面にも上面と同様に段差が設けられて、下面部301cと中面部301dとの間に段差部307が形成され、その段差部307は音叉基部303にまで延在している。ここで、上面の段差部304は、音叉腕301の内側に向き、また、下面の段差部307は、音叉腕301の外側に向いている。そして、段差部304には電極308が、中面部301bにはその電極308に連なる電極309が配置されている。一方、段差部307には電極310が、中面部301dにはその電極310に連なる電極311が配置されている。また、音叉腕301の、段差部304に配置された電極308に対抗する側面(音叉腕301の上面部301aの外側面)には電極312が配置され、段差部307に配置された電極310に対抗する側面(音叉腕301の下面部301cの内側面)には電極313が配置されている。
【0036】
このように電極を配置することにより、電界Exは電極308と電極312間及び電極310と電極313間でそれら電極に垂直に働く。これと同様に音叉腕302にも、音叉腕301と左右対称に段差が設けられて各電極が配置されている。即ち、音叉腕302の、上面と下面とには段差部305,314,上面部302a及び中面部302bが設けられ、段差部305には電極315が、中面部302bにはその電極315に連なる電極316が配置されている。又、段差部314には電極317が、中面部302dにはその電極317に連なる電極318が配置されている。更に、音叉腕302の、電極315に対抗する側面(音叉腕302の上面部302aの外側面)には電極319が、電極317に対抗する側面(音叉腕302の中面部302bの内側面)には電極320が配置されている。更に、電極構成について詳述すると、電極308,309,310,311,319,320は一方の同極に、電極312,313,315,316,317,318は他方の同極にされて2電極端子K−K′を構成している。
【0037】
今、電極端子K−K′に交番電圧を印加すると、電界Exは図10の実線と点線との矢印で示すように電極間に垂直かつ交互に働き、屈曲振動を容易に引き起こすことができる。この結果、損失等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い音叉型屈曲水晶振動子が得られる。
【0038】
なお、本実施例では、段差部は音叉腕から音叉基部にまで延在して設けられているが、音叉腕にのみ設けても良く、又は、音叉基部にのみ設けても良い。更に、音叉基部303にまで延在している下面の段差部307と段差部314との間に溝を設け、溝の側面の電極と対抗する電極とが異極となるように構成しても同様の効果が得られる。
【0039】
図11は、図1に示すケース2に収納されて、そのケースとそれを封止する図1に示す蓋3とともに本発明の第4実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子321の外観図とその座標系を示すものである。そして、図12は、図11の振動子321の上面図であり、又、図13は、図12の音叉型屈曲水晶振動子321のJ−J′断面の形状を示す断面図である。なお、本実施例の座標系は図8に示す座標系と同じである。ここでの音叉型屈曲水晶振動子321は、音叉腕322と音叉腕323と音叉基部324とを具えて構成され、厚みtを有している。
【0040】
さらに、音叉腕322には段差が設けられて、図11及び図13に示すように、上面部322a,中面部322b,中面部322d及び下面部322cが形成されるとともに、段差部(上面部322aの内側面)325が形成され、その中面部322bおよび段差部325は音叉基部324にまで延在している。又、音叉腕323の上面にも音叉腕322と同様に図12及び図13に示すように中面部323bおよび段差部326が形成されている。そして、音叉基部324にも、上面部324a,中面部324bおよび下面部324c(図示されていない)及び段差部327が形成されている。
【0041】
即ち、図12と図13に示すように、音叉腕322および音叉腕323には段差部325と段差部326が設けられ、それら段差部325,326は、音叉基部324にまで延在し、段差部327に接続されている。さらに、音叉腕322の上面には段差部325と下面には段差部328とが設けられ、又、音叉腕323の上面には段差部326と下面には段差部329とが設けられている。
【0042】
ここで、上面の段差部325および下面の段差部328は音叉腕322の内側に向き、上面の段差部326および下面の段差部329は音叉腕323の内側に向いている。段差部325には電極330が、中面部322bにはその電極330に連なる電極331が配置され、又、段差部328には電極332が、中面部322dにはその電極332に連なる電極333が配置される。更に、音叉腕322の内側面には電極334が、音叉腕322の外側面には電極335が配置されている。これにより、電極330および電極332に対抗するように異極の電極335が配置されることとなる。
【0043】
かかる音叉腕322と同様に、音叉腕323にも音叉腕322と左右対称に段差が設けられて各電極が配置されている。即ち、音叉腕323には、段差部326,329,上面部323a,中面部323b,中面部323d及び下面部323cが設けられ、段差部326には電極336が、中面部323bにはその電極336に連なる電極337が配置される一方、段差部329には電極338が、中面部323dにはその電極338に連なる電極339が配置されている。又、音叉腕323の内側面には電極340が、音叉腕323の外側面には電極341が配置されることから、電極336および電極338に対抗するように異極の電極341が配置された構成となる。さらに、図13に示すように、電極330,331,332,333,340,341は一方の同極に、電極334,335,336,337,338,339は他方の同極にされ、2電極端子L−L′を構成する。
【0044】
今、2電極端子L−L′に交番電圧を印加すると、電界Exは図13の実線と点線との矢印で示すように電極間に垂直かつ交互に働き、屈曲振動を容易に引き起こすことができる。この結果、損失等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い音叉型屈曲水晶振動子が得られる。なお、本実施例では、音叉腕322,323の内側に中面部322b,322d,323b,323dを設けているが、音叉腕322,323の外側に中面部を設けても同様の効果を有する。
【0045】
又、本実施例では、中面部のある音叉腕の内側の両側面に電極334と電極340とが配置されているが、これらの電極は配置しなくとも良く、又は、各中面部の電極と同極になるように配置しても良く、前記効果と同様の効果を有する。
【0046】
図14は、図1に示すケース2に収納されて、そのケースとそれを封止する図1に示す蓋3とともに本発明の第5実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子351の上面図である。音叉腕352と音叉腕353との上下面には、幅方向の任意の位置に各々1個の段差部が設けられている(下面の段差部は図示されていない)。図14では上面の段差部355と段差部356とが設けられている。更に、本実施例では、音叉腕352,353の外側に中面部355b,356bが設けられている。図示されていないが、中面部355d,356dは裏面にも設けられていて、段差部355と段差部356とは音叉基部354にまで延在して設けられている。また、音叉腕の電極配置については、図13と同じ様に配置されている。
【0047】
図15は、図1に示すケース2に収納されて、そのケースとそれを封止する図1に示す蓋3とともに本発明の第6実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子351aの上面図である。音叉腕352aと音叉腕353aとの上下面には、幅方向の任意の位置に段差部が音叉腕の長さ方向に延在して設けられている(下面の段差部は図示されていない)。図15では上面の段差部355aと段差部356aとが設けられていて、段差部355a,356aとは、音叉腕352a,353aの長さ方向に1個の階段部355eと階段部356eとを有するように設けられている。更に詳述するならば、音叉腕の上下面には、幅方向の任意の位置に各々1個の段差部が設けられ、その段差部が音叉腕の長さ方向に1個延在して設けられ、前記段差部は音叉腕の長さ方向に1個の階段部を有している。ここで、「幅方向の任意の位置に1個の段差部」には、幅方向に厚みの異なる、いわゆる階段部を有する形状をも含むものである。なお、音叉型屈曲水晶振動子の音叉腕の上下面の少なくとも1面には幅方向の任意の位置に1個の段差部が設けられ、その段差部が音叉腕の長さ方向に少なくとも1個延在している構成であれば、本実施例の構成に限らず、後述する本実施例の効果と同様の効果を得ることができる。
【0048】
更に、本実施例では、音叉腕352a,353aの外側に中面部355b、356bが設けられている。図示されていないが、中面部355d,356dは裏面にも設けられていて、本実施例では段差部355aと段差部356aとは音叉基部354aにまで延在して設けられているが、音叉腕にのみ設けても良い。また、音叉腕の電極配置については、図13と同じ様に配置されている。
【0049】
なお、本実施例では、音叉腕の長さ方向に1個の階段部が設けられているが、2個以上の複数個の階段部を設けても良い。又、前記段差部は音叉腕の長さ方向に分割されていても良い。更に、本実施例の段差部及び階段部の構成は第3実施例〜第5実施例の音叉型屈曲水晶振動子にも適用できる。
【0050】
次に、本発明の水晶ユニットの製造方法の実施例について、図面に記載の工程に従って述べる。図16は上記実施例の水晶ユニットを製造するための、本発明の製造方法の一実施例の工程図である。記号S−1からS−12は工程の番号を示す。まず、S−1では水晶ウエハ40(断面図で示す)が準備される。次に、S−2ではその水晶ウエハ40の上面と下面に金属膜(例えば金)41が蒸着又はスパッタリングにより形成される。更に、S−3では前記金属膜41の上にレジスト42が塗布される。そして、フォトリソ工程により、それら金属膜41とレジスト42とが音叉形状を残して除去された後、エッチング加工により、S−4で示される音叉腕43,44と音叉基部45とを具えた音叉形状が形成される。なお、図16では1個の音叉形状の形成について示したが、同様にして、1枚の水晶ウエハ上に多数個の音叉形状が形成される。
【0051】
次に、S−2とS−3の工程で示したと同様の金属膜とレジストがS−4の音叉形状に塗布されて、フォトリソ工程とエッチング加工により、S−5で示される音叉腕43および音叉腕44に溝46,47,48,49が形成される。更に、S−5に金属膜とレジストが塗布されて、フォトリソ工程により極性が異なる電極がS−6で示されるように形成される。
【0052】
即ち、音叉腕43の側面に配置された電極50,53と音叉腕44の溝48,49に配置された電極55,56は同極となるように接続形成される。同様に、音叉腕43の溝46、47に配置された電極51,52と音叉腕44の側面に配置された電極54,57は同極となるように接続形成される。更に詳述するならば、溝の側面(段差部)と対抗する音叉腕の側面に互いに異なる極性を有する電極が配置されているので、音叉腕は逆相で屈曲振動をする。
【0053】
本実施例では、S−3の工程から音叉形状を形成し、その後、音叉腕に溝を形成しているが、本発明は前記実施例に限定されるものではなくて、S−3の工程からまず溝を形成し、その後に音叉形状を形成しても良い。又は、音叉形状と溝を同時に形成しても良い。更に、S−4からS−5の工程で音叉腕と音叉基部とに溝を形成しても良い。又、本実施例では溝を形成しているが、溝の代わりに、段差部と中面部とを形成しても良い。
【0054】
次の工程は矢印で示されるAとBの2つの方法がある。Aはケースに穴がない場合で、Bは穴がある場合である。まずAの工程では形成された音叉型屈曲水晶振動子60の音叉基部45がS−7で示されるように、ケース58の固定部59に導電性接着剤61又は半田にて固定される。次に、S−8では水晶振動子60の周波数がレーザ62又は蒸着にて所要の値に調整され、最後に、S−9で示すように、ケース58と蓋63とが低融点ガラス64又は半田などの金属を介して接合される。この場合はケース58は真空封止用の穴を持たないので、接合は真空中で行われる。図示されていないが、更に、周波数の偏差を小さくするために、S−9の後にレーザで周波数調整をしても良い。
【0055】
次にBの工程では、S−10で音叉型屈曲水晶振動子60の音叉基部45がケース65の固定部59に導電性接着剤61又は半田にて固定される。次に、S−8と同じ様にして周波数調整が行われ、更に、S−11では、ケース65と蓋63がS−9と同じ方法で接合される。更に、真空中で周波数調整が行われ、最後に、S−12では、ケース65に設けられた穴67が真空中で低融点ガラスや半田などの金属66を用いて封止される。このように、本実施例では、S−10の工程の後とS−11の工程の後とに周波数調整が行われるが、少なくともどちらか一方の工程の後に周波数調整をしても良い。又、Aの工程と同じように、周波数の偏差を小さくするために、S−12の後にレーザーで周波数調整をしても良い。
【0056】
本実施例では、1個の音叉型屈曲水晶振動子を具える水晶ユニットの製造方法について説明したが、2個以上(複数個)の振動子を具える水晶ユニットの場合も同じ工程で製造される。即ち、S−3の工程から接続部を介して音叉基部で接続される2個以上(複数個)の音叉形状を形成し(S−4)、更に、S−5では両音叉腕に溝又は両音叉腕と両音叉基部とに溝を形成し、S−6では各音叉型屈曲水晶振動子は逆相で振動するように、更に、両音叉型屈曲水晶振動子の電極は両振動子が電気的に並列になるように配置され、A工程(S−7〜S−9)又はB工程(S−10〜S−12)にて形成される。更に、周波数の偏差を小さくするために、S−9又はS−12の後にレーザで両振動子の周波数調整を行っても良い。
【0057】
上記方法で製造された本発明の水晶ユニットは、超小型で、品質に優れた、安価な水晶ユニットを実現することができる。と同時に、上記水晶ユニットを備えた水晶発振器が高品質で実現できる。
【0058】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものではなく、例えば、上記第2実施例の水晶ユニットにおける音叉型屈曲水晶振動子では、その音叉腕に設ける溝が音叉基部にまで延在して形成され、前記音叉基部に設けられた溝と溝との間に更に溝が設けられて、かかる構成の溝の電極構成について述べているが、音叉基部の溝と連なる音叉腕の溝及び音叉腕の側面にも上記第1実施例の水晶ユニットにおける音叉型屈曲水晶振動子と同様に電極が配置されている。
【0059】
更に、本発明の第3実施例〜第6実施例では音叉腕の上下面の幅方向の任意の位置に各々1個の段差部を音叉腕の長さ方向に直線になるように設け、段差部と音叉腕の側面に電極が対抗して配置されていて、前記対抗電極は互いに極性が異なるように構成されている音叉型屈曲水晶振動子を示しているが、段差部は音叉腕の長さ方向に曲線になるように設けても良い。同時に、音叉腕が逆相で振動するように電極は構成される。更に、本発明の上記実施例では溝を音叉腕、又は音叉腕と音叉基部とに設けているが、溝の代わりに穴を設けても良い。
【0060】
又、上記第1実施例〜第2実施例では、音叉型屈曲水晶振動子に溝として2個の対向する段差部(段差部4個)がその端部で接続されるような構成の形状(上面図で四角形)が示されているが、本発明に適用できる溝の形状はこれに限定されるものではない。即ち、本発明に適用できる溝の形状は、少なくとも2個の段差部からなる形状を有するものを含むものであり、音叉腕又は音叉基部の長さ方向に延在する段差部を有する、例えば三角形以上の多角形のような形状や円弧を含む形状をも包含するものである。と同時に、長さ方向に対向する段差部の片方の端部同士が段差部を介して接続されている形状をも溝として包含するものである。
【0061】
更に、上記実施例では、音叉基部と固定部とを導電性接着剤又は半田によって固定されているが、本発明はこれに限定されるものでなく、音叉基部とケースの固定部とに配置された金属同士を原子間結合による固定法を用いても良い。
【0062】
又、上記実施例の音叉型屈曲水晶振動子は音叉腕2本から構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、音叉腕が3本以上であっても良い。上記実施例の水晶振動子は化学的エッチング法を用いて形成される。
【0063】
以上述べたように、本発明の水晶振動子と水晶ユニットとそれらの製造方法によれば、さらに次の如き著しい効果が得られる。
(1)音叉腕の中立線を挟んで溝を設けることにより、電界が垂直に働く。その結果、電気機械変換効率が良くなるので、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い音叉型屈曲水晶振動子とそれを収納した水晶ユニットが得られる。
(2)等価直列抵抗R1の小さい超小型の音叉型屈曲水晶振動子が搭載されるので、超小型の水晶ユニットが高品質で実現できる。
(3)音叉型屈曲水晶振動子の音叉寸法と溝との関係を示すことにより、2次高調波振動を抑えた基本波モードで振動する、しかも、等価直列抵抗R1の小さい超小型の音叉型屈曲水晶振動子を得ることができるので、超小型の水晶ユニットが高品質で得られる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の水晶振動子と水晶ユニットと水晶発振器は超小型で、高い周波数安定性を有するので、特に、超小型で、高い周波数安定性を必要とする携帯機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】(a)および(b)は本発明の水晶ユニットの第1実施例の、蓋を省略した状態での正面図および、蓋付きの状態での側面図である。
【図2】上記第1実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子の外観図とその座標系である。
【図3】図2の音叉腕のA−A′断面図とB−B′断面図である。
【図4】図2に示す音叉型屈曲水晶振動子の上面図である。
【図5】本発明の第2実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子の概観図とその座標系である。
【図6】図5の音叉型屈曲水晶振動子の音叉基部のD−D′断面図である。
【図7】図5の音叉型屈曲水晶振動子の上面図である。
【図8】本発明の第3実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子の概観図とその座標系である。
【図9】図8に示す音叉型屈曲水晶振動子の上面図である。
【図10】図9の音叉腕のI−I′断面の形状を示す断面図である。
【図11】本発明の第4実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子の外観図とその座標系である。
【図12】図11に示す音叉型屈曲水晶振動子の上面図である。
【図13】図12の音叉腕のJ−J′断面の形状を示す断面図である。
【図14】本発明の第5実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子の上面図である。
【図15】本発明の第6実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子の上面図である。
【図16】本発明の水晶ユニットの製造方法の一実施例の工程図である。
【図17】(a)および(b)は従来の水晶ユニットの、蓋を省略した状態での正面図および、蓋付きの状態での側面図である。
【符号の説明】
【0066】
4,5,22,23,43,44 音叉腕
6,24,45,90,104,116,148,156 音叉基部
7,59,106 固定部
W 音叉腕の全幅、W1、W3 音叉腕の部分幅
W2 溝幅
l1 溝の長さ、l2 音叉基部の長さ
t 振動子の厚み、t1 溝の厚み
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音叉型屈曲水晶振動子を収納した水晶ユニットとその製造方法に関する。特に、小型化、高精度化、耐衝撃性、低廉化の要求の強い携帯機器用の基準信号源として最適な新電極形成を備えた水晶ユニットとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図17(a)および(b)は従来の音叉型屈曲水晶振動子100を収納した水晶ユニット101の、蓋を省略した状態での正面図および、蓋付きの状態での側面図である。音叉型屈曲水晶振動子100は音叉腕102,103と音叉基部104を具えて構成されている。音叉基部104はケース105の固定部106に接着剤107,108等によって固定されている。又、固定部106には電極109,110が配置されていて、2電極端子を構成している。更に、ケース105と蓋111は金属112を介して接合されている。従来の水晶ユニットはこのように構成されているが、水晶ユニットを小さくしようとすると水晶振動子も小型化が要求される。
【0003】
小型の水晶振動子を得るために、例えば、特許文献1と特許文献3では、音叉型屈曲水晶振動子の音叉腕に溝を設け、且つ、電極構成について開示されている。更に、特許文献1では、振動子形状と溝を同時に形成すること、また、特許文献3では、振動片の溝部を別工程で形成することが記載されている。
【特許文献1】特開昭56−65517
【特許文献2】国際公開第00/44092
【特許文献3】2000−223992
【特許文献4】2001−221638
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
音叉型屈曲水晶振動子では、電界成分Exが大きいほど等価直列抵抗R1が小さくなり、品質係数Q値が大きくなる。しかしながら、従来から使用されている音叉型屈曲水晶振動子は、各音叉腕の表裏側面の4面に電極を配置している。そのために電界が直線的に働かず、かかる音叉型屈曲水晶振動子を小型化させると、電界成分Exが小さくなってしまい、基本波モード振動の等価直列抵抗R1が大きくなり、品質係数Q値が小さくなるなどの課題が残されていた。
【0005】
又、例えば、特許文献1と特許文献2では音叉腕に溝を設け、且つ、溝の構成と電極構成について開示している。特許文献4では電界方向が示されている。しかしながら、本発明の音叉型屈曲水晶振動子の溝の構成、寸法と振動モード並びに等価直列抵抗R1、R2との関係、及び2電極端子と電極配置との関係について記載されていない。更に、本発明の水晶ユニットとその製造方法についても全く開示されていない。このようなことから、小型の水晶ユニットを実現するには超小型で、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値が高くなるような新形状で、電気機械変換効率の良い電極配置とその構成を備える音叉型屈曲水晶振動子とそれを備えた水晶ユニットとその製造方法とが所望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の方法で従来の課題を有利に解決した水晶振動子、水晶ユニットとそれらの製造方法と、水晶発振器と携帯機器を提供することを目的とするものである。
【0007】
本発明の水晶振動子の第1の態様は、水晶音叉基部と前記水晶音叉基部に接続された少なくとも第1水晶音叉腕と第2水晶音叉腕を備えて構成される音叉型屈曲水晶振動子で、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各々は、第1主面とその第1主面に対抗する第2主面と、内側側面とその内側側面に対抗する外側側面とを有し、前記第1水晶音叉腕の内側側面は前記第2水晶音叉腕の内側側面に対向していて、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の内側側面に電極が配置され、前記第1水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性と前記第2水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性が異なるように各電極が配置され、第1側面と、第2側面を介して前記第1側面に接続された第3側面を備えた溝が、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成され、前記第1側面と前記第3側面の各側面は水晶音叉腕の長さ方向に延在し、かつ、内側側面に対抗していて、前記第1側面の一端部は前記第2側面の一端部に接続され、前記第3側面の一端部は前記第2側面の他端に接続されていて、さらに、前記溝は、水晶音叉腕の長さ方向において第4側面に対向する第5側面を備え、前記第1側面の他端部は前記第5側面の一端部に接続され、前記第3側面の他端部は前記第4側面の一端部に接続され、前記第1側面と前記第2側面と前記第3側面の内、前記第1側面と前記第3側面の各側面のみが、内側側面に対抗していて、前記溝の外側端部から前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の対応する水晶音叉腕の外側端部まで測定された前記溝の幅方向の距離を部分幅で定義すると、前記溝の溝幅は前記部分幅より大きくなるように前記溝は形成されていて、前記音叉型屈曲水晶振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が、前記音叉型屈曲水晶振動子の2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さくなるように、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の長さ寸法と、前記音叉型屈曲水晶振動子の全長の寸法が決定されている水晶振動子である。
本発明の水晶振動子の第2の態様は、水晶音叉基部と前記水晶音叉基部に接続された少なくとも第1水晶音叉腕と第2水晶音叉腕を備えて構成される音叉型屈曲水晶振動子で、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各々は、第1主面とその第1主面に対抗する第2主面と、内側側面とその内側側面に対抗する外側側面とを有し、前記第1水晶音叉腕の内側側面は前記第2水晶音叉腕の内側側面に対向していて、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の内側側面に電極が配置され、前記第1水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性と前記第2水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性が異なるように各電極が配置され、第1側面と、第2側面を介して前記第1側面に接続された第3側面を備えた溝が、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成され、前記第1側面と前記第3側面の各側面は水晶音叉腕の長さ方向に延在し、前記第1側面は内側側面に対抗し、かつ、前記第3側面は外側側面に対抗していて、前記溝の外側端部から前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の対応する水晶音叉腕の外側端部まで測定された前記溝の幅方向の距離を部分幅で定義すると、前記溝の溝幅は前記部分幅より大きく、前記溝の長さは前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の長さに対して0.4から0.7の範囲内にあって、前記音叉型屈曲水晶振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が、前記音叉型屈曲水晶振動子の2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さくなるように、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の長さ寸法と、前記音叉型屈曲水晶振動子の全長の寸法が決定されている水晶振動子である。本発明の水晶ユニットの第1の態様は、第1の態様または第2の態様に記載の水晶振動子と、蓋とケースとを備えた水晶ユニットで、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝は四角形と異なる多角形で、前記溝の溝幅と前記溝を備えた水晶音叉腕の腕幅との比が、0.35から0.85の範囲内にあり、前記音叉型屈曲水晶振動子は前記ケースの固定部に固定され、かつ、前記蓋が前記ケースに接続されている水晶ユニットである。本発明の水晶発振器の第1の態様は、第1の態様に記載の水晶ユニットと、増幅器と、コンデンサと、抵抗素子とを備えて構成される水晶発振器で、第1電極端子を形成するために、前記第1水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の前記第1側面と前記第3側面の各側面に配置された電極は、前記第2水晶音叉腕の前記内側側面と前記外側側面の各側面に配置された電極に接続され、第2電極端子を形成するために、前記第2水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の前記第1側面と前記第3側面の各側面に配置された電極は、前記第1水晶音叉腕の前記内側側面と前記外側側面の各側面に配置された電極に接続されていて、前記第1電極端子を形成した第1電極は前記ケースの固定部に配置された第1電極に接続され、かつ、前記ケースの固定部に配置された前記第1電極は前記ケースの裏面の一端部に配置された第1電極に接続され、前記第2電極端子を形成した第2電極は前記ケースの固定部に配置された第2電極に接続され、かつ、前記ケースの固定部に配置された前記第2電極は前記ケースの裏面の他端部に配置された第2電極に接続されていて、前記ケースは貫通穴を有し、前記音叉型屈曲水晶振動子は前記ケースの固定部に導電性接着剤あるいは半田によって固定され、前記ケースの貫通穴を真空中で封止するために、低融点ガラスあるいは金属が前記ケースの貫通穴に配置されている水晶発振器である。
本発明の携帯機器の第1の態様は、第1の態様または第2の態様に記載の水晶振動子と、あるいは、第1の態様に記載の水晶ユニットと、あるいは、第1の態様に記載の水晶発振器を備えて構成されている携帯機器である。
【0008】
本発明の水晶振動子の製造方法の第1の態様は、水晶音叉基部と前記水晶音叉基部に接続された少なくとも第1水晶音叉腕と第2水晶音叉腕を備えて構成される音叉型屈曲水晶振動子の製造方法で、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各々は、第1主面とその第1主面に対抗する第2主面と、内側側面とその内側側面に対抗する外側側面とを有し、前記第1水晶音叉腕の内側側面は前記第2水晶音叉腕の内側側面に対向していて、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の内側側面に電極が配置され、前記第1水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性と前記第2水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性が異なるように各電極を配置する工程と、第1側面と、第2側面を介して前記第1側面に接続された第3側面を備えた溝が、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成され、前記第1側面と前記第3側面の各側面は水晶音叉腕の長さ方向に延在し、かつ、内側側面に対抗していて、前記第1側面の一端部は前記第2側面の一端部に接続され、前記第3側面の一端部は前記第2側面の他端に接続されていて、さらに、前記溝は、水晶音叉腕の長さ方向において第4側面に対向する第5側面を備え、前記第1側面の他端部は前記第5側面の一端部に接続され、前記第3側面の他端部は前記第4側面の一端部に接続され、前記第1水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の前記第1側面と前記第3側面の各側面のみが、前記第1水晶音叉腕の内側側面に対抗し、前記第2水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の前記第1側面と前記第3側面の各側面のみが、前記第2水晶音叉腕の内側側面に対抗するように、前記溝を形成する工程と、前記音叉型屈曲水晶振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が、前記音叉型屈曲水晶振動子の2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さくなるように、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の長さ寸法と、前記音叉型屈曲水晶振動子の全長の寸法を決定する工程と、を含む水晶振動子の製造方法である。
本発明の水晶振動子の製造方法の第2の態様は、水晶音叉基部と前記水晶音叉基部に接続された少なくとも第1水晶音叉腕と第2水晶音叉腕を備えて構成される音叉型屈曲水晶振動子の製造方法で、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各々は、第1主面とその第1主面に対抗する第2主面と、内側側面とその内側側面に対抗する外側側面とを有し、前記第1水晶音叉腕の内側側面は前記第2水晶音叉腕の内側側面に対向していて、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の内側側面に電極が配置され、前記第1水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性と前記第2水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性が異なるように各電極を配置する工程と、第1側面と、第2側面を介して前記第1側面に接続された第3側面を備えた溝が、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成され、前記第1側面と前記第3側面の各側面は水晶音叉腕の長さ方向に延在し、前記第1側面は内側側面に対抗し、かつ、前記第3側面は外側側面に対抗していて、前記溝の長さは前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の長さに対して0.4から0.7の範囲内にあるように、前記溝を形成する工程と、前記音叉型屈曲水晶振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が、前記音叉型屈曲水晶振動子の2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さくなるように、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の長さ寸法と、前記音叉型屈曲水晶振動子の全長の寸法を決定する工程と、を含む水晶振動子の製造方法である。
本発明の水晶ユニットの第1の態様は、第1の態様または第2の態様に記載の水晶振動子の製造方法と、前記音叉型屈曲水晶振動子をケースの固定部に固定する工程と、蓋を前記ケースに接続する工程とを含み、前記溝を形成する工程は、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝は四角形と異なる多角形で、前記溝の外側端部から前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の対応する水晶音叉腕の外側端部まで測定された前記溝の幅方向の距離を部分幅で定義すると、前記溝の溝幅は前記部分幅より大きく、前記溝の溝幅と前記溝を備えた水晶音叉腕の腕幅との比が、0.35から0.85の範囲内にあるように、多角形の形状と各寸法を備えた溝を形成する工程を含む水晶ユニットの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明は水晶振動子、水晶ユニットとそれらの製造方法で、音叉腕の側面の電極およびそれに対抗する異極の電極を持つ新しい形状と電極構成を有する音叉型屈曲水晶振動子、即ち、例えば、音叉腕の中立線を挟んだ中央部に溝を設け、且つその溝に電極を配置した音叉型屈曲水晶振動子を採用することにより、電気的諸特性に優れた超小型の水晶ユニットを提供することができる。
【0010】
加えて、音叉腕の上下面に各々1個の溝が設けられ、設けられた溝の長さは、等価直列抵抗R1の小さな振動子を得るために、音叉腕の長さに対して0.4から0.7の範囲内にあるので、本発明の水晶ユニットに搭載される音叉型屈曲水晶振動子は、等価直列抵抗R1が小さくなり、品質係数Q値の高い超小型の音叉型屈曲水晶振動子を得ることができる。
【0011】
更に、例えば、音叉腕の厚みtに対する溝の厚みt1は0.05から0.79の範囲内にあり、その溝に電極を配置し、その電極に対抗して極性の異なる電極が配置されているので、振動子の小型化が極めて容易に行えると同時に、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Qの高い超小型の音叉型屈曲水晶振動子が得られる。その結果、超小型の水晶ユニットと水晶発振器を得ることができる。
【0012】
又、音叉腕に溝を有する前記音叉型屈曲水晶振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さい音叉型屈曲水晶振動子を備えた水晶ユニットを備えて水晶発振器が構成されるので、2次高調波モード振動を抑えた基本波モードで振動する信頼性の極めて高い水晶発振器が実現できる。
【0013】
更に、本発明で用いられる新形状と新電極構成を有する音叉型屈曲水晶振動子の製造方法を提供することにより、超小型で、品質に優れた、安価な水晶振動子を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態を実施例によって図面に基づき具体的に述べる。
【0015】
図1(a)および(b)は本発明の水晶ユニットの第1実施例の、蓋を省略した状態での正面図および、蓋付きの状態での側面図である。この実施例の水晶ユニット1はケース2と音叉型屈曲水晶振動子3と蓋19とを具えて構成されている。又、音叉型屈曲水晶振動子3は音叉腕4,5と音叉基部6とを具えて構成されていて、音叉基部6はケース2に設けられた固定部7に導電性接着剤8,9又は半田によって固定されている。更に、音叉腕4,5には溝10,11が設けられ、本実施例では、音叉腕に設けられた溝は音叉基部6にまで延在している。なお、本実施例及びその他の実施例の水晶ユニットの、ケース内に収納される音叉型屈曲水晶振動子の詳細については図2から図15で詳細に説明される。
【0016】
又、固定部7には電極12,13が配置されていて、音叉基部6に配置された互いに異極となる電極にそれぞれ接続されている。即ち、2電極端子を構成している。更に、固定部7の電極12にはケース2の裏面の一方の端部にまで延在して配置され電極14と同極になるように構成される。これに対して、固定部7の電極13はケース2の裏面の他方の端部にまで延在して配置され電極15と同極になるように構成されている。又、ケース2と蓋19は接合部材16を介して接合されている。
【0017】
なお、本実施例では、電極14と電極15とはケース2の互いに反対に位置する端部に設けられているが、電極14,15はケースの裏面の任意の位置に設けても良い。又、このケース2の裏面の電極構成は以下に述べられる実施例のケースについても適用されるものである。
【0018】
更に、本実施例ではケース2に真空中で封止するための穴17が設けられていて、封止部材18で封止されている。又、本実施例では、ケースの材料としてセラミックス又はガラス、蓋の材料としてはガラス又は金属、又、ケースと蓋を接合する接合部材としては低融点ガラス又は半田を含む金属を用い、更に、ケースの穴を封止する封止部材としては同様に低融点ガラス又は半田を含む金属が用いられる。
【0019】
又、本実施例では、ケース2に真空中で封止するための穴17が設けられているが、ケース2には真空封止用の穴17を設けないで、ケースと蓋とを接合部材を介して真空中で直接封止しても良い。なお、本実施例のケースと蓋との構成は以下に述べられる他の実施例のケースと蓋にも適用されるものである。
【0020】
図2は、ケース2に収納されて、そのケースとそれを封止する蓋3とともに本実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子21の外観図とその座標系を示すものである。座標系O、電気軸x、機械軸y、光軸zからなりO−xyzを構成している。本実施例の音叉型屈曲水晶振動子21は音叉腕22と音叉腕23と音叉基部24とから成り、音叉腕22と音叉腕23とは音叉基部24に接続されている。更に、音叉腕22の上面には中立線を挟んで溝25が設けられ、又、音叉腕23の上面には音叉腕22と同様に溝31が設けられている。なお、図2では音叉型屈曲水晶振動子21に配置された電極を省略して示し、角度θは、x軸廻りの回転角であり、通常、0〜10°の範囲で選ばれる。
【0021】
図3は図2の音叉型屈曲水晶振動子21の断面図を示し、図4は図2の音叉型屈曲水晶振動子21の上面図を示す。ここでは、図2中の、音叉腕22のA−A′断面図を、図3において紙面の右側に示し、又、図2中の、音叉腕23のB−B′断面図を図3において紙面の左側に示す。音叉腕22の上下面には中立線37(図4参照)を挟んで溝25,26が設けられている。更に、溝25には電極27が、溝26には電極28が配置され、その側面には電極29,30が配置されていて、電極27,28と電極29,30とは異電極となるように構成されている。更に詳述するならば、各音叉腕の上下面の幅方向には各々2個の段差部が音叉腕の長さ方向に沿って設けられ、前記2個の段差部には同極となる電極が配置され、前記各電極と対抗する側面に配置された電極は極性が異なるように構成されている。と同時に、音叉腕22の溝25,26と電極27,28と側面の電極29,30とは音叉基部24にまで延在して設けられている。
【0022】
音叉腕23の上下面にも音叉腕22と同様に中立線38(図4参照)を挟んで溝31,32が設けられている。そして、溝31には電極33が、溝32には電極34が配置されている。更に、その側面には電極35,36が配置されていて、電極33,34と電極35,36とは互いに異電極となるように構成されている。と同時に、音叉腕23の溝31,32と電極33,34と側面の電極35,36とは音叉基部24にまで延在して設けられている。又、音叉腕22と音叉腕23との電極は図3に示すように接続されて、2電極端子構造C−C′を形成する。今、電極端子C−C′間に直流電圧を印加すると、音叉腕22と音叉腕23とには電界Exが各矢印方向に働く。この電界Exは音叉腕内で電極に垂直に、すなわち直線的に働くので、電界Exが大きくなり、歪の発生が大きくなる。その結果、音叉型屈曲水晶振動子21を小型化した場合でも損失等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い音叉型屈曲水晶振動子が得られる。
【0023】
図4では溝25,31の配置及び寸法などを詳述する。すなわち、この実施例の音叉型屈曲水晶振動子21には音叉腕22の中立線37を挟むようにして溝25が設けられ、他方の音叉腕23にも中立線38を挟んで溝31が設けられている。そして、それら溝25および溝31の幅W2は、中立線37と中立線38とを挟んだ寸法とすることが好ましい。この理由は、屈曲モードを引き起こすとき、音叉腕22,23の振動を容易にすることができるからである。これにより、等価直列抵抗R1を小さくすることができ、品質係数Q値の高い振動子を実現できる。
【0024】
更に、音叉腕22,23の全幅WはW=W1+W2+W3で与えられ、通常はW1=W3となるように
溝幅W2と音叉腕幅Wとの比(W2/W)が0.35〜0.85となるように形成される。このように形成することにより、音叉腕の中立線37と中立線38を基点とする慣性モーメントが大きくなる。即ち、電気機械変換効率が良くなるので、等価直列抵抗R1の小さい、Q値の高い、しかも容量比の小さい音叉型屈曲水晶振動子を得ることができる。
【0025】
これに対して、溝25および溝31の長さl1については、溝25,31が、音叉腕22,23から長さl2の音叉基部24にまで延在し、その音叉基部24に延在する溝の長さがl3となるような寸法とされている。それ故、音叉腕22、23に設けられた溝の長さは、l0=(l1−l3)で与えられ、等価直列抵抗R1の小さな振動子を得るために、音叉腕の長さに対して0.4〜0.7の範囲内の値を有する。更に、音叉基部の歪量を大きくして、R1を小さくし、且つ、支持、固定によるエネルギー漏れのない振動子を得るには音叉基部の溝の長さl3と音叉基部の長さl2との比が0.04〜0.78の範囲内の値になるように溝25,31が構成される。なお、本実施例では、溝の長さl3の側面全部に電極が配置されているが、側面の電極が溝の長さl3より短く配置されている時には、l3は電極の長さと同じ長さとする。また、音叉型屈曲水晶振動子21の全長lは要求される周波数や収納容器の大きさなどから決定される。と同時に、基本波モードで振動する良好な音叉型屈曲水晶振動子を得るためには、以下で説明するように、溝の長さl1と全長lとの間には密接な関係が存在する。
【0026】
すなわち、音叉腕22,23又は音叉腕22,23と音叉基部24とに設けられた溝の長さl1と音叉型屈曲水晶振動子21の全長lとの比(l1/l)が0.2〜0.68の範囲内の値となるように溝の長さを設定している。このように形成する理由は、不要振動である2次高調波振動(基本波周波数の約6.3倍の周波数)を抑圧することができるからである。それ故、基本波モードで容易に振動する良好な音叉型屈曲水晶振動子が実現できる。さらに詳述するならば、基本波モードで振動する音叉型屈曲水晶振動子の等価直列抵抗R1が2次高調波振動での等価直列抵抗R2より小さくなる。即ち、R1<R2となり、増幅器(CMOSインバータ),コンデンサ,抵抗,本実施例の水晶ユニット等から成る水晶発振器において、振動子が基本波モードで容易に振動する良好な水晶発振器が実現できる。
【0027】
更に、図示されていないが、本実施例の音叉型屈曲水晶振動子21は厚さtの振動子で、溝の厚みt1を有している。本実施例では、溝の厚みt1と音叉腕又は音叉腕と音叉基部の厚みtとの比(t1/t)が0.05〜0.79の範囲内の値となるように溝が形成されている。このように形成することにより、音叉腕又は音叉腕と音叉基部の溝の側面電極とそれに対抗する側面の電極との間の電界Exが大きくなる。即ち、電気機械変換効率の良い、等価直列抵抗R1の小さい振動子が得られる。
【0028】
また、この実施例では、音叉基部24は、図4中、振動子21の長さl2の下側部分全体とされ、又、音叉腕22及び音叉腕23は、図4中、振動子21の長さl2の部分から上側の部分全体とされている。本実施例では音叉の叉部は矩形をしているが、本発明は前記形状に限定されるものではなく、音叉の叉部がU字型をしていてもよい。この場合も、矩形の形状と同じように、音叉腕と音叉基部との寸法の関係は前記関係と同じである。更に、本実施例では、音叉基部の溝と側面とに電極を配置しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、音叉基部の溝の側面に配置された電極(側面電極)に対しx軸方向(幅方向)に隣接する、溝の側面電極と極性の異なる少なくとも1個の電極を音叉基部の面上に配置しても良い。例えば、音叉基部の溝と溝との間に、隣接する溝の側面電極と極性の異なる2個の電極(例えば、図4に仮想線で示す電極25a,31a)を面上に、又は4個の電極を上下面に配置しても良い。この場合、厚み方向の対抗電極は同極となるように構成される。このように構成することにより、音叉基部の歪量が大きくなるので、等価直列抵抗R1の小さい音叉型屈曲水晶振動子を得ることができる。
【0029】
図5は、図1に示すケース2に収納されて、そのケースとそれを封止する図1に示す蓋3とともに本発明の第2実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子69の外観図とその座標系を示すものである。この実施例の音叉型屈曲水晶振動子69では、先に述べた第1実施例における音叉型屈曲水晶振動子21と同様に、音叉腕70と音叉腕76とに、溝71と溝77とがそれぞれ設けられると共に、音叉基部90には、溝82と溝86とが溝71と溝77との間に設けられている。
【0030】
図6は、図5の音叉型屈曲水晶振動子69の音叉基部90のD−D′断面図を示す。図6では図5の水晶振動子の音叉基部90の断面形状並びに電極配置について詳述する。音叉腕70と連結する音叉基部90には溝71,72が設けられている。同様に、音叉腕76と連結する音叉基部90には溝77,78が設けられている。更に、溝71と溝77との間には溝82と溝86とが設けられている。又、溝72と溝78との間には溝83と溝87とが設けられている。そして、溝71と溝72とには電極73,74が、溝82と溝83とには電極84,85が、溝86と溝87とには電極88,89が、溝77と溝78とには電極79,80が配置され、音叉基部90の両側面には電極75,81が配置されている。
【0031】
更に、電極75,79,80,84,85は一方の同極に、電極73,74,81,88,89は他方の同極になるように配置されていて、2電極端子構造E−E′を構成する。即ち、z軸方向に対抗する溝の電極は同極に、且つ、x軸方向に隣接する電極は異極になるように構成されている。又、図示しないが音叉腕70,76には第1実施例の音叉型屈曲水晶振動子21(図3参照)と同じ様に電極が配置されている。今、2電極端子E−E′に直流電圧を印加(E端子に正、E′端子に負)すると電界Exは図6に示した矢印のように働く。電界Exは水晶振動子の側面と溝内の側面とに配置された電極により電極に垂直に、即ち、直線的に引き出されるので、電界Exが大きくなり、その結果、発生する歪の量も大きくなる。従って、音叉型屈曲水晶振動子を小型化させた場合でも、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い音叉型屈曲水晶振動子が得られる。
【0032】
図7は図5の音叉型屈曲水晶振動子69の上面図を示すものである。図7では溝71,77の配置について特に詳述する。音叉腕70の中立線91を挟むようにして溝71が設けられている。他方の音叉腕76も中立線92を挟むようにして溝77が設けられている。更に、本実施例の音叉型屈曲水晶振動子69では、音叉基部90の、溝71と溝77との間に挟まれた部分にも溝82と溝86とが設けられている。それら溝71,77及び溝82,86を設けたことで、水晶振動子69には、先に述べたように、電界Exが図6に示した矢印のように働き、電界Exは水晶振動子の側面と溝内の側面とに配置された電極により電極に垂直に、即ち、直線的に引き出されるので、電界Exが大きくなり、その結果、発生する歪の量も大きくなる。このように、本実施例の音叉型水晶振動子69の形状と電極構成とは、音叉型水晶振動子を小型化した場合でも電気的諸特性に優れた、即ち、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い水晶振動子を実現できる。尚、幅寸法W=W1+W2+W3と長さ寸法l1,l2,l3と厚み寸法t,t1とについては先に述べた第1実施例と同様の寸法条件とすることが望ましく、これらの寸法条件は、既に図4の説明の際に詳述したので、ここでは省略する。
【0033】
図8は、図1に示すケース2に収納されて、そのケースとそれを封止する図1に示す蓋3とともに本発明の第3実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子300の外観図とその座標系を示すものである。そして、図9は、図8の振動子300の上面図であり、又、図10は、図9の音叉型屈曲水晶振動子300のI−I′断面の形状を示す断面図である。図8に示すように、振動子300の座標系は水晶の結晶軸であるx軸(電気軸)廻りに回転角θ度回転されている。そして、水晶の結晶軸であるy軸(機械軸)およびZ軸(光軸)の回転後の新軸はそれぞれy′軸又はz′軸とされており、かかる角度θは通常0°〜10°の範囲内の角度に設定される。この音叉型屈曲水晶振動子300は、音叉腕301と音叉腕302と音叉基部303とを具えて構成された、厚さtを有するものである。さらに、音叉腕301には段差が設けられて、上面部301aと中面部301bとの間に段差部(上面部301aの内側面)304が形成され、その中面部301bおよび段差部304は音叉基部303にまで延在している。又、音叉腕302の上面にも音叉腕301と同様に図9及び図10に示すように中面部302bおよび段差部305が形成されている。そして、音叉基部303にも、上面部303a,中面部303b及び段差部306が形成されている。
【0034】
即ち、図9に示すように、この振動子300の音叉腕301には幅方向の任意の位置に段差部304が、一方、音叉腕302には幅方向の任意の位置に段差部305が、それぞれ音叉基部303にまで延在して設けられ、それら段差部304及び段差部305は、音叉基部303の段差部306にそれぞれ接続されている。又、音叉腕の側面と段差部との間の寸法は音叉腕幅Wの半分以下が好ましい。このように寸法を構成することにより、電界Exを大きくすることができる。その結果、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い音叉型屈曲水晶振動子を得ることができる。
【0035】
さらに、図10に示すように、音叉腕301の下面にも上面と同様に段差が設けられて、下面部301cと中面部301dとの間に段差部307が形成され、その段差部307は音叉基部303にまで延在している。ここで、上面の段差部304は、音叉腕301の内側に向き、また、下面の段差部307は、音叉腕301の外側に向いている。そして、段差部304には電極308が、中面部301bにはその電極308に連なる電極309が配置されている。一方、段差部307には電極310が、中面部301dにはその電極310に連なる電極311が配置されている。また、音叉腕301の、段差部304に配置された電極308に対抗する側面(音叉腕301の上面部301aの外側面)には電極312が配置され、段差部307に配置された電極310に対抗する側面(音叉腕301の下面部301cの内側面)には電極313が配置されている。
【0036】
このように電極を配置することにより、電界Exは電極308と電極312間及び電極310と電極313間でそれら電極に垂直に働く。これと同様に音叉腕302にも、音叉腕301と左右対称に段差が設けられて各電極が配置されている。即ち、音叉腕302の、上面と下面とには段差部305,314,上面部302a及び中面部302bが設けられ、段差部305には電極315が、中面部302bにはその電極315に連なる電極316が配置されている。又、段差部314には電極317が、中面部302dにはその電極317に連なる電極318が配置されている。更に、音叉腕302の、電極315に対抗する側面(音叉腕302の上面部302aの外側面)には電極319が、電極317に対抗する側面(音叉腕302の中面部302bの内側面)には電極320が配置されている。更に、電極構成について詳述すると、電極308,309,310,311,319,320は一方の同極に、電極312,313,315,316,317,318は他方の同極にされて2電極端子K−K′を構成している。
【0037】
今、電極端子K−K′に交番電圧を印加すると、電界Exは図10の実線と点線との矢印で示すように電極間に垂直かつ交互に働き、屈曲振動を容易に引き起こすことができる。この結果、損失等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い音叉型屈曲水晶振動子が得られる。
【0038】
なお、本実施例では、段差部は音叉腕から音叉基部にまで延在して設けられているが、音叉腕にのみ設けても良く、又は、音叉基部にのみ設けても良い。更に、音叉基部303にまで延在している下面の段差部307と段差部314との間に溝を設け、溝の側面の電極と対抗する電極とが異極となるように構成しても同様の効果が得られる。
【0039】
図11は、図1に示すケース2に収納されて、そのケースとそれを封止する図1に示す蓋3とともに本発明の第4実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子321の外観図とその座標系を示すものである。そして、図12は、図11の振動子321の上面図であり、又、図13は、図12の音叉型屈曲水晶振動子321のJ−J′断面の形状を示す断面図である。なお、本実施例の座標系は図8に示す座標系と同じである。ここでの音叉型屈曲水晶振動子321は、音叉腕322と音叉腕323と音叉基部324とを具えて構成され、厚みtを有している。
【0040】
さらに、音叉腕322には段差が設けられて、図11及び図13に示すように、上面部322a,中面部322b,中面部322d及び下面部322cが形成されるとともに、段差部(上面部322aの内側面)325が形成され、その中面部322bおよび段差部325は音叉基部324にまで延在している。又、音叉腕323の上面にも音叉腕322と同様に図12及び図13に示すように中面部323bおよび段差部326が形成されている。そして、音叉基部324にも、上面部324a,中面部324bおよび下面部324c(図示されていない)及び段差部327が形成されている。
【0041】
即ち、図12と図13に示すように、音叉腕322および音叉腕323には段差部325と段差部326が設けられ、それら段差部325,326は、音叉基部324にまで延在し、段差部327に接続されている。さらに、音叉腕322の上面には段差部325と下面には段差部328とが設けられ、又、音叉腕323の上面には段差部326と下面には段差部329とが設けられている。
【0042】
ここで、上面の段差部325および下面の段差部328は音叉腕322の内側に向き、上面の段差部326および下面の段差部329は音叉腕323の内側に向いている。段差部325には電極330が、中面部322bにはその電極330に連なる電極331が配置され、又、段差部328には電極332が、中面部322dにはその電極332に連なる電極333が配置される。更に、音叉腕322の内側面には電極334が、音叉腕322の外側面には電極335が配置されている。これにより、電極330および電極332に対抗するように異極の電極335が配置されることとなる。
【0043】
かかる音叉腕322と同様に、音叉腕323にも音叉腕322と左右対称に段差が設けられて各電極が配置されている。即ち、音叉腕323には、段差部326,329,上面部323a,中面部323b,中面部323d及び下面部323cが設けられ、段差部326には電極336が、中面部323bにはその電極336に連なる電極337が配置される一方、段差部329には電極338が、中面部323dにはその電極338に連なる電極339が配置されている。又、音叉腕323の内側面には電極340が、音叉腕323の外側面には電極341が配置されることから、電極336および電極338に対抗するように異極の電極341が配置された構成となる。さらに、図13に示すように、電極330,331,332,333,340,341は一方の同極に、電極334,335,336,337,338,339は他方の同極にされ、2電極端子L−L′を構成する。
【0044】
今、2電極端子L−L′に交番電圧を印加すると、電界Exは図13の実線と点線との矢印で示すように電極間に垂直かつ交互に働き、屈曲振動を容易に引き起こすことができる。この結果、損失等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い音叉型屈曲水晶振動子が得られる。なお、本実施例では、音叉腕322,323の内側に中面部322b,322d,323b,323dを設けているが、音叉腕322,323の外側に中面部を設けても同様の効果を有する。
【0045】
又、本実施例では、中面部のある音叉腕の内側の両側面に電極334と電極340とが配置されているが、これらの電極は配置しなくとも良く、又は、各中面部の電極と同極になるように配置しても良く、前記効果と同様の効果を有する。
【0046】
図14は、図1に示すケース2に収納されて、そのケースとそれを封止する図1に示す蓋3とともに本発明の第5実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子351の上面図である。音叉腕352と音叉腕353との上下面には、幅方向の任意の位置に各々1個の段差部が設けられている(下面の段差部は図示されていない)。図14では上面の段差部355と段差部356とが設けられている。更に、本実施例では、音叉腕352,353の外側に中面部355b,356bが設けられている。図示されていないが、中面部355d,356dは裏面にも設けられていて、段差部355と段差部356とは音叉基部354にまで延在して設けられている。また、音叉腕の電極配置については、図13と同じ様に配置されている。
【0047】
図15は、図1に示すケース2に収納されて、そのケースとそれを封止する図1に示す蓋3とともに本発明の第6実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子351aの上面図である。音叉腕352aと音叉腕353aとの上下面には、幅方向の任意の位置に段差部が音叉腕の長さ方向に延在して設けられている(下面の段差部は図示されていない)。図15では上面の段差部355aと段差部356aとが設けられていて、段差部355a,356aとは、音叉腕352a,353aの長さ方向に1個の階段部355eと階段部356eとを有するように設けられている。更に詳述するならば、音叉腕の上下面には、幅方向の任意の位置に各々1個の段差部が設けられ、その段差部が音叉腕の長さ方向に1個延在して設けられ、前記段差部は音叉腕の長さ方向に1個の階段部を有している。ここで、「幅方向の任意の位置に1個の段差部」には、幅方向に厚みの異なる、いわゆる階段部を有する形状をも含むものである。なお、音叉型屈曲水晶振動子の音叉腕の上下面の少なくとも1面には幅方向の任意の位置に1個の段差部が設けられ、その段差部が音叉腕の長さ方向に少なくとも1個延在している構成であれば、本実施例の構成に限らず、後述する本実施例の効果と同様の効果を得ることができる。
【0048】
更に、本実施例では、音叉腕352a,353aの外側に中面部355b、356bが設けられている。図示されていないが、中面部355d,356dは裏面にも設けられていて、本実施例では段差部355aと段差部356aとは音叉基部354aにまで延在して設けられているが、音叉腕にのみ設けても良い。また、音叉腕の電極配置については、図13と同じ様に配置されている。
【0049】
なお、本実施例では、音叉腕の長さ方向に1個の階段部が設けられているが、2個以上の複数個の階段部を設けても良い。又、前記段差部は音叉腕の長さ方向に分割されていても良い。更に、本実施例の段差部及び階段部の構成は第3実施例〜第5実施例の音叉型屈曲水晶振動子にも適用できる。
【0050】
次に、本発明の水晶ユニットの製造方法の実施例について、図面に記載の工程に従って述べる。図16は上記実施例の水晶ユニットを製造するための、本発明の製造方法の一実施例の工程図である。記号S−1からS−12は工程の番号を示す。まず、S−1では水晶ウエハ40(断面図で示す)が準備される。次に、S−2ではその水晶ウエハ40の上面と下面に金属膜(例えば金)41が蒸着又はスパッタリングにより形成される。更に、S−3では前記金属膜41の上にレジスト42が塗布される。そして、フォトリソ工程により、それら金属膜41とレジスト42とが音叉形状を残して除去された後、エッチング加工により、S−4で示される音叉腕43,44と音叉基部45とを具えた音叉形状が形成される。なお、図16では1個の音叉形状の形成について示したが、同様にして、1枚の水晶ウエハ上に多数個の音叉形状が形成される。
【0051】
次に、S−2とS−3の工程で示したと同様の金属膜とレジストがS−4の音叉形状に塗布されて、フォトリソ工程とエッチング加工により、S−5で示される音叉腕43および音叉腕44に溝46,47,48,49が形成される。更に、S−5に金属膜とレジストが塗布されて、フォトリソ工程により極性が異なる電極がS−6で示されるように形成される。
【0052】
即ち、音叉腕43の側面に配置された電極50,53と音叉腕44の溝48,49に配置された電極55,56は同極となるように接続形成される。同様に、音叉腕43の溝46、47に配置された電極51,52と音叉腕44の側面に配置された電極54,57は同極となるように接続形成される。更に詳述するならば、溝の側面(段差部)と対抗する音叉腕の側面に互いに異なる極性を有する電極が配置されているので、音叉腕は逆相で屈曲振動をする。
【0053】
本実施例では、S−3の工程から音叉形状を形成し、その後、音叉腕に溝を形成しているが、本発明は前記実施例に限定されるものではなくて、S−3の工程からまず溝を形成し、その後に音叉形状を形成しても良い。又は、音叉形状と溝を同時に形成しても良い。更に、S−4からS−5の工程で音叉腕と音叉基部とに溝を形成しても良い。又、本実施例では溝を形成しているが、溝の代わりに、段差部と中面部とを形成しても良い。
【0054】
次の工程は矢印で示されるAとBの2つの方法がある。Aはケースに穴がない場合で、Bは穴がある場合である。まずAの工程では形成された音叉型屈曲水晶振動子60の音叉基部45がS−7で示されるように、ケース58の固定部59に導電性接着剤61又は半田にて固定される。次に、S−8では水晶振動子60の周波数がレーザ62又は蒸着にて所要の値に調整され、最後に、S−9で示すように、ケース58と蓋63とが低融点ガラス64又は半田などの金属を介して接合される。この場合はケース58は真空封止用の穴を持たないので、接合は真空中で行われる。図示されていないが、更に、周波数の偏差を小さくするために、S−9の後にレーザで周波数調整をしても良い。
【0055】
次にBの工程では、S−10で音叉型屈曲水晶振動子60の音叉基部45がケース65の固定部59に導電性接着剤61又は半田にて固定される。次に、S−8と同じ様にして周波数調整が行われ、更に、S−11では、ケース65と蓋63がS−9と同じ方法で接合される。更に、真空中で周波数調整が行われ、最後に、S−12では、ケース65に設けられた穴67が真空中で低融点ガラスや半田などの金属66を用いて封止される。このように、本実施例では、S−10の工程の後とS−11の工程の後とに周波数調整が行われるが、少なくともどちらか一方の工程の後に周波数調整をしても良い。又、Aの工程と同じように、周波数の偏差を小さくするために、S−12の後にレーザーで周波数調整をしても良い。
【0056】
本実施例では、1個の音叉型屈曲水晶振動子を具える水晶ユニットの製造方法について説明したが、2個以上(複数個)の振動子を具える水晶ユニットの場合も同じ工程で製造される。即ち、S−3の工程から接続部を介して音叉基部で接続される2個以上(複数個)の音叉形状を形成し(S−4)、更に、S−5では両音叉腕に溝又は両音叉腕と両音叉基部とに溝を形成し、S−6では各音叉型屈曲水晶振動子は逆相で振動するように、更に、両音叉型屈曲水晶振動子の電極は両振動子が電気的に並列になるように配置され、A工程(S−7〜S−9)又はB工程(S−10〜S−12)にて形成される。更に、周波数の偏差を小さくするために、S−9又はS−12の後にレーザで両振動子の周波数調整を行っても良い。
【0057】
上記方法で製造された本発明の水晶ユニットは、超小型で、品質に優れた、安価な水晶ユニットを実現することができる。と同時に、上記水晶ユニットを備えた水晶発振器が高品質で実現できる。
【0058】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものではなく、例えば、上記第2実施例の水晶ユニットにおける音叉型屈曲水晶振動子では、その音叉腕に設ける溝が音叉基部にまで延在して形成され、前記音叉基部に設けられた溝と溝との間に更に溝が設けられて、かかる構成の溝の電極構成について述べているが、音叉基部の溝と連なる音叉腕の溝及び音叉腕の側面にも上記第1実施例の水晶ユニットにおける音叉型屈曲水晶振動子と同様に電極が配置されている。
【0059】
更に、本発明の第3実施例〜第6実施例では音叉腕の上下面の幅方向の任意の位置に各々1個の段差部を音叉腕の長さ方向に直線になるように設け、段差部と音叉腕の側面に電極が対抗して配置されていて、前記対抗電極は互いに極性が異なるように構成されている音叉型屈曲水晶振動子を示しているが、段差部は音叉腕の長さ方向に曲線になるように設けても良い。同時に、音叉腕が逆相で振動するように電極は構成される。更に、本発明の上記実施例では溝を音叉腕、又は音叉腕と音叉基部とに設けているが、溝の代わりに穴を設けても良い。
【0060】
又、上記第1実施例〜第2実施例では、音叉型屈曲水晶振動子に溝として2個の対向する段差部(段差部4個)がその端部で接続されるような構成の形状(上面図で四角形)が示されているが、本発明に適用できる溝の形状はこれに限定されるものではない。即ち、本発明に適用できる溝の形状は、少なくとも2個の段差部からなる形状を有するものを含むものであり、音叉腕又は音叉基部の長さ方向に延在する段差部を有する、例えば三角形以上の多角形のような形状や円弧を含む形状をも包含するものである。と同時に、長さ方向に対向する段差部の片方の端部同士が段差部を介して接続されている形状をも溝として包含するものである。
【0061】
更に、上記実施例では、音叉基部と固定部とを導電性接着剤又は半田によって固定されているが、本発明はこれに限定されるものでなく、音叉基部とケースの固定部とに配置された金属同士を原子間結合による固定法を用いても良い。
【0062】
又、上記実施例の音叉型屈曲水晶振動子は音叉腕2本から構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、音叉腕が3本以上であっても良い。上記実施例の水晶振動子は化学的エッチング法を用いて形成される。
【0063】
以上述べたように、本発明の水晶振動子と水晶ユニットとそれらの製造方法によれば、さらに次の如き著しい効果が得られる。
(1)音叉腕の中立線を挟んで溝を設けることにより、電界が垂直に働く。その結果、電気機械変換効率が良くなるので、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い音叉型屈曲水晶振動子とそれを収納した水晶ユニットが得られる。
(2)等価直列抵抗R1の小さい超小型の音叉型屈曲水晶振動子が搭載されるので、超小型の水晶ユニットが高品質で実現できる。
(3)音叉型屈曲水晶振動子の音叉寸法と溝との関係を示すことにより、2次高調波振動を抑えた基本波モードで振動する、しかも、等価直列抵抗R1の小さい超小型の音叉型屈曲水晶振動子を得ることができるので、超小型の水晶ユニットが高品質で得られる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の水晶振動子と水晶ユニットと水晶発振器は超小型で、高い周波数安定性を有するので、特に、超小型で、高い周波数安定性を必要とする携帯機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】(a)および(b)は本発明の水晶ユニットの第1実施例の、蓋を省略した状態での正面図および、蓋付きの状態での側面図である。
【図2】上記第1実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子の外観図とその座標系である。
【図3】図2の音叉腕のA−A′断面図とB−B′断面図である。
【図4】図2に示す音叉型屈曲水晶振動子の上面図である。
【図5】本発明の第2実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子の概観図とその座標系である。
【図6】図5の音叉型屈曲水晶振動子の音叉基部のD−D′断面図である。
【図7】図5の音叉型屈曲水晶振動子の上面図である。
【図8】本発明の第3実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子の概観図とその座標系である。
【図9】図8に示す音叉型屈曲水晶振動子の上面図である。
【図10】図9の音叉腕のI−I′断面の形状を示す断面図である。
【図11】本発明の第4実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子の外観図とその座標系である。
【図12】図11に示す音叉型屈曲水晶振動子の上面図である。
【図13】図12の音叉腕のJ−J′断面の形状を示す断面図である。
【図14】本発明の第5実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子の上面図である。
【図15】本発明の第6実施例の水晶ユニットを構成する音叉型屈曲水晶振動子の上面図である。
【図16】本発明の水晶ユニットの製造方法の一実施例の工程図である。
【図17】(a)および(b)は従来の水晶ユニットの、蓋を省略した状態での正面図および、蓋付きの状態での側面図である。
【符号の説明】
【0066】
4,5,22,23,43,44 音叉腕
6,24,45,90,104,116,148,156 音叉基部
7,59,106 固定部
W 音叉腕の全幅、W1、W3 音叉腕の部分幅
W2 溝幅
l1 溝の長さ、l2 音叉基部の長さ
t 振動子の厚み、t1 溝の厚み
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶音叉基部と前記水晶音叉基部に接続された少なくとも第1水晶音叉腕と第2水晶音叉腕を備えて構成される音叉型屈曲水晶振動子で、
前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各々は、第1主面とその第1主面に対抗する第2主面と、内側側面とその内側側面に対抗する外側側面とを有し、前記第1水晶音叉腕の内側側面は前記第2水晶音叉腕の内側側面に対向していて、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の内側側面に電極が配置され、前記第1水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性と前記第2水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性が異なるように各電極が配置され、
第1側面と、第2側面を介して前記第1側面に接続された第3側面を備えた溝が、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成され、前記第1側面と前記第3側面の各側面は水晶音叉腕の長さ方向に延在し、かつ、内側側面に対抗していて、前記第1側面の一端部は前記第2側面の一端部に接続され、前記第3側面の一端部は前記第2側面の他端に接続されていて、さらに、前記溝は、水晶音叉腕の長さ方向において第4側面に対向する第5側面を備え、前記第1側面の他端部は前記第5側面の一端部に接続され、前記第3側面の他端部は前記第4側面の一端部に接続され、前記第1側面と前記第2側面と前記第3側面の内、前記第1側面と前記第3側面の各側面のみが、内側側面に対抗していて、前記溝の外側端部から前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の対応する水晶音叉腕の外側端部まで測定された前記溝の幅方向の距離を部分幅で定義すると、前記溝の溝幅は前記部分幅より大きくなるように前記溝は形成されていて、
前記音叉型屈曲水晶振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が、前記音叉型屈曲水晶振動子の2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さくなるように、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の長さ寸法と、前記音叉型屈曲水晶振動子の全長の寸法が決定されていることを特徴とする水晶振動子。
【請求項2】
水晶音叉基部と前記水晶音叉基部に接続された少なくとも第1水晶音叉腕と第2水晶音叉腕を備えて構成される音叉型屈曲水晶振動子で、
前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各々は、第1主面とその第1主面に対抗する第2主面と、内側側面とその内側側面に対抗する外側側面とを有し、前記第1水晶音叉腕の内側側面は前記第2水晶音叉腕の内側側面に対向していて、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の内側側面に電極が配置され、前記第1水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性と前記第2水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性が異なるように各電極が配置され、
第1側面と、第2側面を介して前記第1側面に接続された第3側面を備えた溝が、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成され、前記第1側面と前記第3側面の各側面は水晶音叉腕の長さ方向に延在し、前記第1側面は内側側面に対抗し、かつ、前記第3側面は外側側面に対抗していて、前記溝の外側端部から前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の対応する水晶音叉腕の外側端部まで測定された前記溝の幅方向の距離を部分幅で定義すると、前記溝の溝幅は前記部分幅より大きく、前記溝の長さは前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の長さに対して0.4から0.7の範囲内にあって、
前記音叉型屈曲水晶振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が、前記音叉型屈曲水晶振動子の2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さくなるように、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の長さ寸法と、前記音叉型屈曲水晶振動子の全長の寸法が決定されていることを特徴とする水晶振動子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の水晶振動子と、蓋とケースとを備えた水晶ユニットで、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝は四角形と異なる多角形で、前記溝の溝幅と前記溝を備えた水晶音叉腕の腕幅との比が、0.35から0.85の範囲内にあり、前記音叉型屈曲水晶振動子は前記ケースの固定部に固定され、かつ、前記蓋が前記ケースに接続されていることを特徴とする水晶ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の水晶ユニットと、増幅器と、コンデンサと、抵抗素子とを備えて構成される水晶発振器で、第1電極端子を形成するために、前記第1水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の前記第1側面と前記第3側面の各側面に配置された電極は、前記第2水晶音叉腕の前記内側側面と前記外側側面の各側面に配置された電極に接続され、第2電極端子を形成するために、前記第2水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の前記第1側面と前記第3側面の各側面に配置された電極は、前記第1水晶音叉腕の前記内側側面と前記外側側面の各側面に配置された電極に接続されていて、前記第1電極端子を形成した第1電極は前記ケースの固定部に配置された第1電極に接続され、かつ、前記ケースの固定部に配置された前記第1電極は前記ケースの裏面の一端部に配置された第1電極に接続され、前記第2電極端子を形成した第2電極は前記ケースの固定部に配置された第2電極に接続され、かつ、前記ケースの固定部に配置された前記第2電極は前記ケースの裏面の他端部に配置された第2電極に接続されていて、前記ケースは貫通穴を有し、前記音叉型屈曲水晶振動子は前記ケースの固定部に導電性接着剤あるいは半田によって固定され、前記ケースの貫通穴を真空中で封止するために、低融点ガラスあるいは金属が前記ケースの貫通穴に配置されていることを特徴とする水晶発振器。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の水晶振動子と、あるいは、請求項3に記載の水晶ユニットと、あるいは、請求項4に記載の水晶発振器を備えて構成されていることを特徴とする携帯機器。
【請求項6】
水晶音叉基部と前記水晶音叉基部に接続された少なくとも第1水晶音叉腕と第2水晶音叉腕を備えて構成される音叉型屈曲水晶振動子の製造方法で、
前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各々は、第1主面とその第1主面に対抗する第2主面と、内側側面とその内側側面に対抗する外側側面とを有し、前記第1水晶音叉腕の内側側面は前記第2水晶音叉腕の内側側面に対向していて、
前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の内側側面に電極が配置され、前記第1水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性と前記第2水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性が異なるように各電極を配置する工程と、
第1側面と、第2側面を介して前記第1側面に接続された第3側面を備えた溝が、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成され、前記第1側面と前記第3側面の各側面は水晶音叉腕の長さ方向に延在し、かつ、内側側面に対抗していて、前記第1側面の一端部は前記第2側面の一端部に接続され、前記第3側面の一端部は前記第2側面の他端に接続されていて、さらに、前記溝は、水晶音叉腕の長さ方向において第4側面に対向する第5側面を備え、前記第1側面の他端部は前記第5側面の一端部に接続され、前記第3側面の他端部は前記第4側面の一端部に接続され、前記第1水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の前記第1側面と前記第3側面の各側面のみが、前記第1水晶音叉腕の内側側面に対抗し、前記第2水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の前記第1側面と前記第3側面の各側面のみが、前記第2水晶音叉腕の内側側面に対抗するように、前記溝を形成する工程と、
前記音叉型屈曲水晶振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が、前記音叉型屈曲水晶振動子の2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さくなるように、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の長さ寸法と、前記音叉型屈曲水晶振動子の全長の寸法を決定する工程と、を含むことを特徴とする水晶振動子の製造方法。
【請求項7】
水晶音叉基部と前記水晶音叉基部に接続された少なくとも第1水晶音叉腕と第2水晶音叉腕を備えて構成される音叉型屈曲水晶振動子の製造方法で、
前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各々は、第1主面とその第1主面に対抗する第2主面と、内側側面とその内側側面に対抗する外側側面とを有し、前記第1水晶音叉腕の内側側面は前記第2水晶音叉腕の内側側面に対向していて、
前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の内側側面に電極が配置され、前記第1水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性と前記第2水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性が異なるように各電極を配置する工程と、
第1側面と、第2側面を介して前記第1側面に接続された第3側面を備えた溝が、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成され、前記第1側面と前記第3側面の各側面は水晶音叉腕の長さ方向に延在し、前記第1側面は内側側面に対抗し、かつ、前記第3側面は外側側面に対抗していて、前記溝の長さは前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の長さに対して0.4から0.7の範囲内にあるように、前記溝を形成する工程と、
前記音叉型屈曲水晶振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が、前記音叉型屈曲水晶振動子の2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さくなるように、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の長さ寸法と、前記音叉型屈曲水晶振動子の全長の寸法を決定する工程と、を含むことを特徴とする水晶振動子の製造方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の水晶振動子の製造方法と、前記音叉型屈曲水晶振動子をケースの固定部に固定する工程と、蓋を前記ケースに接続する工程とを含み、前記溝を形成する工程は、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝は四角形と異なる多角形で、前記溝の外側端部から前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の対応する水晶音叉腕の外側端部まで測定された前記溝の幅方向の距離を部分幅で定義すると、前記溝の溝幅は前記部分幅より大きく、前記溝の溝幅と前記溝を備えた水晶音叉腕の腕幅との比が、0.35から0.85の範囲内にあるように、多角形の形状と各寸法を備えた溝を形成する工程を含むことを特徴とする水晶ユニットの製造方法。
【請求項1】
水晶音叉基部と前記水晶音叉基部に接続された少なくとも第1水晶音叉腕と第2水晶音叉腕を備えて構成される音叉型屈曲水晶振動子で、
前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各々は、第1主面とその第1主面に対抗する第2主面と、内側側面とその内側側面に対抗する外側側面とを有し、前記第1水晶音叉腕の内側側面は前記第2水晶音叉腕の内側側面に対向していて、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の内側側面に電極が配置され、前記第1水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性と前記第2水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性が異なるように各電極が配置され、
第1側面と、第2側面を介して前記第1側面に接続された第3側面を備えた溝が、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成され、前記第1側面と前記第3側面の各側面は水晶音叉腕の長さ方向に延在し、かつ、内側側面に対抗していて、前記第1側面の一端部は前記第2側面の一端部に接続され、前記第3側面の一端部は前記第2側面の他端に接続されていて、さらに、前記溝は、水晶音叉腕の長さ方向において第4側面に対向する第5側面を備え、前記第1側面の他端部は前記第5側面の一端部に接続され、前記第3側面の他端部は前記第4側面の一端部に接続され、前記第1側面と前記第2側面と前記第3側面の内、前記第1側面と前記第3側面の各側面のみが、内側側面に対抗していて、前記溝の外側端部から前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の対応する水晶音叉腕の外側端部まで測定された前記溝の幅方向の距離を部分幅で定義すると、前記溝の溝幅は前記部分幅より大きくなるように前記溝は形成されていて、
前記音叉型屈曲水晶振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が、前記音叉型屈曲水晶振動子の2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さくなるように、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の長さ寸法と、前記音叉型屈曲水晶振動子の全長の寸法が決定されていることを特徴とする水晶振動子。
【請求項2】
水晶音叉基部と前記水晶音叉基部に接続された少なくとも第1水晶音叉腕と第2水晶音叉腕を備えて構成される音叉型屈曲水晶振動子で、
前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各々は、第1主面とその第1主面に対抗する第2主面と、内側側面とその内側側面に対抗する外側側面とを有し、前記第1水晶音叉腕の内側側面は前記第2水晶音叉腕の内側側面に対向していて、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の内側側面に電極が配置され、前記第1水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性と前記第2水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性が異なるように各電極が配置され、
第1側面と、第2側面を介して前記第1側面に接続された第3側面を備えた溝が、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成され、前記第1側面と前記第3側面の各側面は水晶音叉腕の長さ方向に延在し、前記第1側面は内側側面に対抗し、かつ、前記第3側面は外側側面に対抗していて、前記溝の外側端部から前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の対応する水晶音叉腕の外側端部まで測定された前記溝の幅方向の距離を部分幅で定義すると、前記溝の溝幅は前記部分幅より大きく、前記溝の長さは前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の長さに対して0.4から0.7の範囲内にあって、
前記音叉型屈曲水晶振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が、前記音叉型屈曲水晶振動子の2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さくなるように、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の長さ寸法と、前記音叉型屈曲水晶振動子の全長の寸法が決定されていることを特徴とする水晶振動子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の水晶振動子と、蓋とケースとを備えた水晶ユニットで、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝は四角形と異なる多角形で、前記溝の溝幅と前記溝を備えた水晶音叉腕の腕幅との比が、0.35から0.85の範囲内にあり、前記音叉型屈曲水晶振動子は前記ケースの固定部に固定され、かつ、前記蓋が前記ケースに接続されていることを特徴とする水晶ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の水晶ユニットと、増幅器と、コンデンサと、抵抗素子とを備えて構成される水晶発振器で、第1電極端子を形成するために、前記第1水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の前記第1側面と前記第3側面の各側面に配置された電極は、前記第2水晶音叉腕の前記内側側面と前記外側側面の各側面に配置された電極に接続され、第2電極端子を形成するために、前記第2水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の前記第1側面と前記第3側面の各側面に配置された電極は、前記第1水晶音叉腕の前記内側側面と前記外側側面の各側面に配置された電極に接続されていて、前記第1電極端子を形成した第1電極は前記ケースの固定部に配置された第1電極に接続され、かつ、前記ケースの固定部に配置された前記第1電極は前記ケースの裏面の一端部に配置された第1電極に接続され、前記第2電極端子を形成した第2電極は前記ケースの固定部に配置された第2電極に接続され、かつ、前記ケースの固定部に配置された前記第2電極は前記ケースの裏面の他端部に配置された第2電極に接続されていて、前記ケースは貫通穴を有し、前記音叉型屈曲水晶振動子は前記ケースの固定部に導電性接着剤あるいは半田によって固定され、前記ケースの貫通穴を真空中で封止するために、低融点ガラスあるいは金属が前記ケースの貫通穴に配置されていることを特徴とする水晶発振器。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の水晶振動子と、あるいは、請求項3に記載の水晶ユニットと、あるいは、請求項4に記載の水晶発振器を備えて構成されていることを特徴とする携帯機器。
【請求項6】
水晶音叉基部と前記水晶音叉基部に接続された少なくとも第1水晶音叉腕と第2水晶音叉腕を備えて構成される音叉型屈曲水晶振動子の製造方法で、
前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各々は、第1主面とその第1主面に対抗する第2主面と、内側側面とその内側側面に対抗する外側側面とを有し、前記第1水晶音叉腕の内側側面は前記第2水晶音叉腕の内側側面に対向していて、
前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の内側側面に電極が配置され、前記第1水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性と前記第2水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性が異なるように各電極を配置する工程と、
第1側面と、第2側面を介して前記第1側面に接続された第3側面を備えた溝が、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成され、前記第1側面と前記第3側面の各側面は水晶音叉腕の長さ方向に延在し、かつ、内側側面に対抗していて、前記第1側面の一端部は前記第2側面の一端部に接続され、前記第3側面の一端部は前記第2側面の他端に接続されていて、さらに、前記溝は、水晶音叉腕の長さ方向において第4側面に対向する第5側面を備え、前記第1側面の他端部は前記第5側面の一端部に接続され、前記第3側面の他端部は前記第4側面の一端部に接続され、前記第1水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の前記第1側面と前記第3側面の各側面のみが、前記第1水晶音叉腕の内側側面に対抗し、前記第2水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の前記第1側面と前記第3側面の各側面のみが、前記第2水晶音叉腕の内側側面に対抗するように、前記溝を形成する工程と、
前記音叉型屈曲水晶振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が、前記音叉型屈曲水晶振動子の2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さくなるように、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の長さ寸法と、前記音叉型屈曲水晶振動子の全長の寸法を決定する工程と、を含むことを特徴とする水晶振動子の製造方法。
【請求項7】
水晶音叉基部と前記水晶音叉基部に接続された少なくとも第1水晶音叉腕と第2水晶音叉腕を備えて構成される音叉型屈曲水晶振動子の製造方法で、
前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各々は、第1主面とその第1主面に対抗する第2主面と、内側側面とその内側側面に対抗する外側側面とを有し、前記第1水晶音叉腕の内側側面は前記第2水晶音叉腕の内側側面に対向していて、
前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の内側側面に電極が配置され、前記第1水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性と前記第2水晶音叉腕の内側側面に配置された電極の電気的極性が異なるように各電極を配置する工程と、
第1側面と、第2側面を介して前記第1側面に接続された第3側面を備えた溝が、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成され、前記第1側面と前記第3側面の各側面は水晶音叉腕の長さ方向に延在し、前記第1側面は内側側面に対抗し、かつ、前記第3側面は外側側面に対抗していて、前記溝の長さは前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の長さに対して0.4から0.7の範囲内にあるように、前記溝を形成する工程と、
前記音叉型屈曲水晶振動子の基本波モード振動の等価直列抵抗R1が、前記音叉型屈曲水晶振動子の2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2より小さくなるように、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝の長さ寸法と、前記音叉型屈曲水晶振動子の全長の寸法を決定する工程と、を含むことを特徴とする水晶振動子の製造方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の水晶振動子の製造方法と、前記音叉型屈曲水晶振動子をケースの固定部に固定する工程と、蓋を前記ケースに接続する工程とを含み、前記溝を形成する工程は、前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の各水晶音叉腕の第1主面と第2主面の各主面に形成された前記溝は四角形と異なる多角形で、前記溝の外側端部から前記第1水晶音叉腕と前記第2水晶音叉腕の対応する水晶音叉腕の外側端部まで測定された前記溝の幅方向の距離を部分幅で定義すると、前記溝の溝幅は前記部分幅より大きく、前記溝の溝幅と前記溝を備えた水晶音叉腕の腕幅との比が、0.35から0.85の範囲内にあるように、多角形の形状と各寸法を備えた溝を形成する工程を含むことを特徴とする水晶ユニットの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−54946(P2012−54946A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208062(P2011−208062)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【分割の表示】特願2008−116257(P2008−116257)の分割
【原出願日】平成14年3月6日(2002.3.6)
【出願人】(500505197)有限会社ピエデック技術研究所 (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【分割の表示】特願2008−116257(P2008−116257)の分割
【原出願日】平成14年3月6日(2002.3.6)
【出願人】(500505197)有限会社ピエデック技術研究所 (29)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]