説明

波長可変干渉フィルター、光モジュール、及び電子機器

【課題】省電力化が可能な波長可変干渉フィルター、光モジュール、及び電子機器を提供する。
【解決手段】波長可変干渉フィルター5は、固定反射膜54及び固定電極561が設けられた固定基板51と、固定基板51に対向し、可動反射膜55及び可動電極562が設けられた可動基板52と、を具備し、固定電極561及び可動電極562は、それぞれ透光性を有し、フィルター平面視において、固定反射膜54及び可動反射膜55が設けられた光干渉領域Ar2を含む駆動領域Ar1を覆って設けられ、固定反射膜54は、固定電極561を介して固定基板51に設けられ、可動反射膜55は、可動電極562を介して可動基板52に設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変干渉フィルター、この波長可変干渉フィルターを備える光モジュール、及びこの光モジュールを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の基板の互いに対向する面に、それぞれ反射膜を所定のギャップを介して対向配置した波長可変干渉フィルターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の波長可変干渉フィルターでは、2枚の光学基板の相対する面にそれぞれ反射層を設け、更に、これらの光学基板の相対する面で、反射層の径外側に容量電極を設けている。この波長可変干渉フィルターでは、互いに対向する容量電極が静電アクチュエーターとして作用し、これらの容量電極間に電圧を印加することで、静電引力により反射層間のギャップを変動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−277758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電極間に作用する静電引力は、互いに対向する電極の面積に比例して大きくなる。一方、上記特許文献1に記載の波長可変干渉フィルターでは、反射層の外周縁よりも径外側に設けられた容量電極間で静電引力を作用させる構成であるため、反射膜が設けられる位置では、静電引力が作用しない。このため、電極間に印加する電圧を大きくして静電引力を稼ぐ必要があり、消費電力が増大するという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、省電力化が可能な波長可変干渉フィルター、光モジュール、及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の波長可変干渉フィルターは、第一基板と、前記第一基板に対向する第二基板と、前記第一基板に設けられた第一反射膜と、前記第二基板に設けられ、前記第一反射膜と所定の大きさの反射膜間ギャップを介して対向する第二反射膜と、前記第一基板に設けられた第一電極と、前記第二基板に設けられ、前記第一電極と所定の大きさの電極間ギャップを介して対向する第二電極と、を具備し、前記第一電極及び前記第二電極は、それぞれ透光性を有し、前記第一基板または前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記第一反射膜及び前記第二反射膜が互いに対向して設けられた光干渉領域の内外に亘り、当該光干渉領域を覆って設けられ、前記第一反射膜は、前記第一電極を介して前記第一基板に設けられ、前記第二反射膜は、前記第二電極を介して前記第二基板に設けられたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第一電極及び第二電極は、ぞれぞれ、第一反射膜及び第二反射膜が設けられる光干渉領域の内外に亘って、光干渉領域を覆う状態に設けられている。つまり、本発明では、第一基板または第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、第一電極及び第二電極は、第一反射膜及び第二反射膜と重なる光干渉領域と、当該光干渉領域の外側の領域とに亘る領域(駆動領域)に設けられている。このような第一電極及び第二電極では、透光性を有しているため、第一反射膜及び第二反射膜からの光の入射・射出を阻害することがない。そして、光干渉領域を含む駆動領域に設けられた第一電極及び第二電極により、光干渉領域内においても基板間に静電引力を作用させることができる。したがって、例えば、第一電極及び第二電極が、光干渉領域の外側の径外側領域のみに設けられる従来の構成に比べて、第一電極及び第二電極の互いに対向する面の面積を増大させることができ、より大きい静電引力を電極間(基板間)に作用させることができる。これにより、従来よりも小さい電力で反射膜間ギャップの寸法を変動させることができ、省電力化を図ることができる。
【0009】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記第一基板は、前記第二基板に対向する平坦な第一面を有し、前記第二基板は、前記第一基板に対向する平坦な第二面を有し、前記第一電極は、前記第一面に設けられ、前記第二電極は、前記第二面に設けられることが好ましい。
本発明では、第一基板は、第二基板に対向する平坦な第一面を有し、第二基板は、第一面に対向する平坦な第二面を有する。そして、第一電極は、第一基板の第一面に設けられ、第二電極は、第二基板の第二面に設けられている。したがって、これらの第一電極及び第二電極がそれぞれ平坦面に設けられることとなり、第一電極及び第二電極の間の電極間ギャップの寸法は、位置によらず一様な寸法に維持される。このため、第一電極及び第二電極の間に電圧を印加した場合、電極間ギャップにおいて、静電引力のムラが生じず、第一反射膜及び第二反射膜を平行に維持した状態で、反射膜間ギャップの寸法を変動させることができる。
【0010】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記第一反射膜は、均一厚み寸法を有する支持層を介して前記第一電極に設けられることが好ましい。
本発明では、第一反射膜は、第一電極に支持層を介して設けられる。このような構成では、電極間ギャップは、少なくとも支持層の厚み寸法分、反射膜間ギャップよりも大きく形成される。つまり、反射膜間ギャップを極めて0に近い値に設定した場合でも、電極間ギャップの寸法を、少なくとも支持層の厚み寸法以上確保できる。したがって、反射膜間ギャップの寸法を小さくした場合でも、第一電極及び第二電極間に作用する静電引力を容易に制御することができ、静電引力が急激に大きくなって反射膜同士が接触してしまう不都合を回避することができる。
【0011】
本発明の波長可変干渉フィルターは、前記支持層は、絶縁性を有し、前記第一電極の第二基板に対向する面全体を覆うことが好ましい。
本発明によれば、絶縁性を有する支持層により、第一電極の第二電極に対向する面の全体を覆うことで、第一電極及び第二電極間の放電等による電流リークを防止でき、精度よく反射膜間ギャップの寸法を所望値に設定することができる。
【0012】
本発明の光モジュールは、上述のような波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターにより取り出される光を検出する検出部と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、光モジュールは、上述のような波長可変干渉フィルターを備えている。ここで、波長可変干渉フィルターは、上述したような作用効果を奏し、省電力化を図ることができるので、このような波長可変干渉フィルターを備えた光モジュールにおいても、省電力化を図ることができる。
【0013】
本発明の電子機器は、上述の光モジュールを備えることを特徴とする。
本発明によれば、電子機器は、上述した波長可変干渉フィルターを有する光モジュールを備えるので、電子機器においても省電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る第一実施形態の測色装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの平面図。
【図3】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの断面図。
【図4】第二実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す断面図。
【図5】第三実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す断面図。
【図6】他の実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す断面図。
【図7】更に他の実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す断面図。
【図8】本発明の電子機器の他の例であるガス検出装置の概略図。
【図9】図8のガス検出装置のブロック図。
【図10】本発明の電子機器の他の例である食物分析装置の構成を示すブロック図。
【図11】本発明の電子機器の他の例である分光カメラの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。
〔1.測色装置の概略構成〕
図1は、本実施形態の測色装置1(電子機器)の概略構成を示すブロック図である。
測色装置1は、図1に示すように、検査対象Aに光を射出する光源装置2と、測色センサー3(光モジュール)と、測色装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備える。そして、この測色装置1は、光源装置2から射出される光を検査対象Aにて反射させ、反射された検査対象光を測色センサー3にて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度、すなわち検査対象Aの色を分析して測定する装置である。
【0016】
〔2.光源装置の構成〕
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図1には1つのみ記載)を備え、検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれてもよく、この場合、光源装置2は、光源21から射出された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから検査対象Aに向かって射出する。なお、本実施形態では、光源装置2を備える測色装置1を例示するが、例えば検査対象Aが液晶パネルなどの発光部材である場合、光源装置2が設けられない構成としてもよい。
【0017】
〔3.測色センサーの構成〕
測色センサー3は、図1に示すように、波長可変干渉フィルター5と、波長可変干渉フィルター5を透過する光を受光する検出部31と、波長可変干渉フィルター5で透過させる光の波長を可変する電圧制御部32とを備える。また、測色センサー3は、波長可変干渉フィルター5に対向する位置に、検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。そして、この測色センサー3は、波長可変干渉フィルター5により、入射光学レンズから入射した検査対象光のうち、所定波長の光を分光し、分光した光を検出部31にて受光する。
検出部31は、複数の光電交換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、検出部31は、制御装置4に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
【0018】
(3−1.波長可変干渉フィルターの構成)
図2は、波長可変干渉フィルター5の概略構成を示す平面図であり、図3は、波長可変干渉フィルター5の概略構成を示す断面図である。
波長可変干渉フィルター5は、図2に示すように、平面正方形状の板状の光学部材である。この波長可変干渉フィルター5は、図3に示すように、本発明の第二基板である固定基板51、および本発明の第一基板である可動基板52を備えている。これらの固定基板51及び可動基板52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成されている。そして、これらの固定基板51及び可動基板52は、外周部近傍に形成される第一接合部523、第二接合部513が、例えばシロキサンを主成分とするプラズマ重合膜などにより構成された接合膜53により接合されることで、一体的に構成されている。
【0019】
固定基板51には、本発明の第二反射膜を構成する固定反射膜54が設けられ、可動基板52には、本発明の第一反射膜を構成する可動反射膜55が設けられている。ここで、固定反射膜54は、固定基板51の可動基板52に対向する面に、本発明の第二電極である固定電極561を介して設けられ、可動反射膜55は、可動基板52の固定基板51に対向する面に、本発明の第一電極である可動電極562を介して固定されている。また、これらの固定反射膜54および可動反射膜55は、反射膜間ギャップG1を介して対向配置されている。
波長可変干渉フィルター5には、固定反射膜54および可動反射膜55の間の反射膜間ギャップG1の寸法を調整するのに用いられる静電アクチュエーター56が設けられている。この静電アクチュエーター56は、固定基板51側に設けられる前述の固定電極561と、可動基板52側に設けられる前述の可動電極562とを備えている。ここで、固定電極561及び可動電極562は、それぞれ固定基板51及び可動基板562の基板表面に直接設けられる構成であってもよく、他の膜部材を介して設けられる構成であってもよい。
また、波長可変干渉フィルター5を固定基板51(可動基板52)の基板厚み方向から見た図2に示すような平面視において、固定基板51及び可動基板52の平面中心点Oは、固定反射膜54及び可動反射膜55の中心点と一致し、かつ後述する可動部521の中心点と一致する。ここで、固定基板51または可動基板52の基板厚み方向から見た平面視、つまり、固定基板51、接合膜53、及び可動基板52の積層方向から波長可変干渉フィルター5を見た平面視を、フィルター平面視とする。
【0020】
(3−1−1.固定基板の構成)
固定基板51は、厚みが例えば500μmに形成されるガラス基材である。具体的には、図3に示すように、固定基板51は、可動基板52に対向する平坦な固定対向面51A(本発明の第二面を構成)を有する。このような固定対向面51Aは、例えば、研削、研磨削等により、表面粗さRaが5nm以下となる光学面に形成されている。
また、この固定基板51は、可動基板52に対して厚み寸法が大きく形成されており、固定電極561および可動電極562間に電圧を印加した際の静電引力や、固定電極561の内部応力による固定基板51の撓みはない。
【0021】
固定基板51の固定対向面51Aには、平面中心点Oを中心とした半径R2の光干渉領域Ar2を含む半径R1の円領域(駆動領域Ar1)に固定電極561が形成されている。なお、本実施形態では、固定電極561が円形状の駆動領域Ar1に設けられる構成としたが、この駆動領域Ar1としては、円形状の外周部の一部が欠ける構成や、一部にスリットが形成されるなどして分断される構成であってもよく、さらには、円形に限られず矩形状に形成されるものであってもよい。
また、固定基板51の固定対向面51Aには、固定電極561の外周縁から延出する固定引出電極563が形成されている。具体的には、この固定引出電極563は、固定電極561の外周縁のうち頂点C1に最も近接する位置から、頂点C1まで延出形成されている。そして、固定引出電極563の先端部(固定基板51の頂点C1に位置する部分)は、電圧制御部32に接続される固定電極パッド563Pを構成する。
更に、固定基板51には、頂点C3の位置に、固定電極561とは絶縁された第一対向電極581が設けられている。また、これらの第一対向電極581先端部は、電圧制御部32に接続される第一対向電極パッド581Pを構成する。
これらの固定電極561及び固定引出電極563は、透光性の導電膜(例えばITO:Indium Tin Oxide)により形成されており、波長可変干渉フィルター5に導入された光や、固定反射膜54,可動反射膜55間で多重干渉により取り出された光を透過させる。
【0022】
そして、この固定電極561上には、平面中心点Oを中心とした半径R2(R2<R1)の円領域(光干渉領域Ar2)に円形の固定反射膜54が設けられている。なお、光干渉領域Ar2は、円形状に形成される例を示すが、これに限定されず、上記駆動領域Ar1と同様に、例えば矩形状に形成される構成であってもよい。
この固定反射膜54としては、金属膜により形成されるものであってもよく、誘電体多層膜により形成されるものであってもよく、さらには、誘電多層膜上にAg合金が形成される構成などとしてもよい。金属単層膜としては、例えばAgや、Ag合金の単層膜を用いることができ、誘電体多層膜の場合は、例えば高屈折層をTiO、低屈折層をSiOとした誘電体多層膜を用いることができる。なお、固定反射膜54として、金属合金を用いる場合、固定電極561と固定反射膜54とが接触することで、固定反射膜54に帯電した電荷を固定電極561に逃がすこともできる。
一方、固定電極561と導電性の固定反射膜54が接触する場合、固定反射膜54が駆動電極として機能し、固定反射膜54と可動電極562との間で静電引力が発生することも考えられる。この場合、駆動領域Ar1における光干渉領域Ar2と、当該光干渉領域Ar2以外の外側領域とで、電極間の距離が固定反射膜54の厚み寸法分だけ差が生じ、光干渉領域Ar2と外側領域で作用する静電引力も異なる大きさとなることが考えられる。しかしながら、固定電極561は、それぞれ、固定基板51の平坦な固定対向面51Aに設けられる膜であり、固定反射膜54は、均一膜厚の固定電極561上に形成される膜であるため、光干渉領域Ar2内で作用する静電引力にムラが生じず、駆動領域Ar1における光干渉領域Ar2以外の外側領域で作用する静電引力にもムラが生じない。したがって、固定電極561、可動電極562間に電圧印可した際に、可動部521が傾斜するなどの不都合がなく、正確に反射膜間ギャップG1の寸法を制御することができる。
なお、固定反射膜54と固定電極561との間に、別途絶縁層を設ける構成などとしてもよい。この場合では、駆動領域Ar1内において、光干渉領域Ar2においても、光干渉領域Ar2の外側領域においても、一様な静電引力を作用させることができる。
【0023】
また、固定基板51には、可動基板52とは反対側の面において、固定反射膜54に対応する位置に反射防止膜が形成されていてもよい。このような反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成することができ、固定基板51の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させることができる。
【0024】
(3−1−2.可動基板の構成)
可動基板52は、厚みが例えば200μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成されている。
具体的には、可動基板52は、図2に示すようなフィルター平面視において、平面中心点Oを中心とした円形の可動部521と、可動部521と同軸であり可動部521を保持する保持部522と、を備えている。
また、可動基板52には、図2に示すように、固定基板51の各頂点C1,C3に対応して、切欠部524が形成されており、波長可変干渉フィルター5を可動基板52側から見た面に固定電極パッド563P、及び第一対向電極パッド581Pが露出する。
【0025】
可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、可動基板52の厚み寸法と同一寸法である200μmに形成されている。この可動部521は、フィルター平面視において、少なくとも固定電極561の外周縁の径寸法よりも大きい径寸法に形成されている。つまり、可動部521は、フィルター平面視において、半径R1以上の円形状に形成されている。
なお、固定基板51と同様に、可動部521の固定基板51とは反対側の面には、反射防止膜が形成されていてもよい。このような反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成することができ、可動基板52の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させることができる。
【0026】
そして、可動部521の固定基板51に対向する面は、固定対向面51Aに平行で、平坦な可動対向面52A(本発明の第一面を構成)となる。このような可動対向面52Aは、上述した固定対向面51Aと同様、例えば研削、研磨等により、表面粗さRaが5nm以下となる光学面に形成されている。この可動対向面52Aには、固定電極561と電極間ギャップG2を介して対向する可動電極562が設けられている。
【0027】
可動電極562は、固定電極561と同様に、例えばITO等の透光性の導電膜により形成され、フィルター平面視において、駆動領域Ar1に設けられている。
また、可動基板52には、可動電極562の外周縁から延出する可動引出電極564が設けられている。この可動引出電極564は、可動電極562と同様に透光性の導電膜により形成され、可動電極562の頂点C3に最も近接する位置から、頂点C3に向かって延出する。そして、この可動引出電極564は、可動基板52の外周縁の近傍において、例えばAgペースト等の導電性部材58により、固定基板51の頂点C3の位置に形成された第一対向電極581(第一対向電極パッド581P)に電気的に接続される。
【0028】
そして、可動電極562の固定電極561に対向する面のうち、フィルター平面視において、光干渉領域Ar2領域と重なる位置には、可動反射膜55が設けられている。この可動反射膜55は、上述した固定反射膜54と同一の構成、同一径寸法の反射膜が用いられている。すなわち、可動反射膜55は、光干渉領域Ar2を覆って設けられている。
【0029】
保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイアフラムであり、例えば厚み寸法が50μmに形成され、可動部521よりも厚み方向に対する剛性が小さく形成されている。
このため、保持部522は可動部521よりも撓みやすく、僅かな静電引力により固定基板51側に撓ませることが可能となる。この際、可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく、剛性が大きくなるため、静電引力により可動基板52を撓ませる力が作用した場合でも、可動部521の撓みはほぼなく、可動部521に形成された可動反射膜55の撓みも防止できる。
なお、本実施形態では、ダイアフラム状の保持部522を例示するが、これに限定されず、例えば、平面中心点Oを中心として、等角度間隔で配置された梁状の保持部が設けられる構成などとしてもよい。
【0030】
(3−2.電圧制御手段の構成)
電圧制御部32は、固定電極パッド563P、及び第一対向電極パッド581Pに接続され、制御装置4からの入力される制御信号に基づいて、これらの固定電極パッド563P及び第一対向電極パッド581Pを所定の電位に設定し、静電アクチュエーター56に電圧を印加して駆動させる。
【0031】
〔4.制御装置の構成〕
制御装置4は、測色装置1の全体動作を制御する。
この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41、測色センサー制御部42、および本発明の分析処理部を構成する測色処理部43などを備えて構成されている。
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3に出力する。これにより、測色センサー3の電圧制御部32は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長のみを透過させるよう、静電アクチュエーター56への印加電圧を設定する。
測色処理部43は、検出部31により検出された受光量から、検査対象Aの色度を分析する。
【0032】
〔5.実施形態の作用効果〕
本実施形態の波長可変干渉フィルター5では、固定基板51の光干渉領域Ar2を含む駆動領域Ar1上に固定電極561が設けられ、可動基板52の光干渉領域Ar2を含む駆動領域Ar1上に可動電極562が設けられ、これらの固定電極561及び可動電極562の光干渉領域Ar2にそれぞれ固定反射膜54及び可動反射膜55が設けられている。このため、静電アクチュエーター56に電圧を印加することで、光干渉領域Ar2内を含む駆動領域Ar1の全体に静電引力が作用し、小さい電力でより大きい静電引力を固定基板51,可動基板52間に作用させることができる。したがって、波長可変干渉フィルター5における省電力化を図れ、測色センサー3や測色装置1における省電力にも貢献できる。
【0033】
また、波長可変干渉フィルター5では、固定基板51の平坦な固定対向面51A上に固定電極561が設けられ、可動基板52の平坦な可動対向面52A上に可動電極562が設けられている。
このような波長可変干渉フィルター5では、平坦な固定対向面51A上及び可動対向面52A上に固定電極561及び可動電極562を形成する構成であるため、例えばエッチング等により基板を加工して反射膜間ギャップG1の寸法と電極間ギャップG2の寸法とを異ならせる構成に比べて、固定電極561及び可動電極562間の電極間ギャップG2にバラつきがなく、静電引力のムラが発生しない。このため、固定反射膜54及び可動反射膜55が平行に維持された状態で可動部521を固定基板51側に移動させて反射膜間ギャップG1の寸法を変化させることができ、所望の波長の光を精度よく取り出すことができる。
また、固定基板51に対してエッチング処理を実施する必要がなく、例えば平坦な固定対向面51Aを有するガラス基材(母材)を、そのまま利用することができる。このため、製造工程を簡略化できるとともに、製造コストの低減を図ることができる。
【0034】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について、図面に基づいて説明する。
上述した第一実施形態では、可動反射膜55は、可動電極562上に直接設けられている。これに対して、第二実施形態では、可動反射膜55は、可動電極561上に支持層を介して設けられる。この点で、第二実施形態は第一実施形態と相違する。なお、以降の説明にあたり、第一実施形態と同様の構成については、同符号を付し、その説明を省略または簡略する。
【0035】
図4は、第二実施形態における波長可変干渉フィルター5Aの概略構成を示す断面図である。
図4に示すように、波長可変干渉フィルター5Aは、固定基板51と可動基板52とを備えている。
固定基板51の固定対向面51Aには、駆動領域Ar1に固定電極561が設けられ、この固定電極561の可動基板52に対向する面には、光干渉領域Ar2に固定反射膜54が設けられている。
【0036】
可動基板52の可動対向面52Aには、駆動領域Ar1に可動電極562が設けられ、この可動電極562の固定基板51に対向する面には、図4に示すように、均一な膜厚を有する支持層57が設けられている。この支持層57は、可動電極562の固定電極561に対向する面のうち、少なくとも光干渉領域Ar2を覆って形成されている。この支持層57としては、透光性を有する素材により形成されている。また、支持層57は、絶縁性を有することが好ましい。このような素材としては、例えばSiOや、TiO等を用いることができる。
【0037】
この支持層57の固定基板51に対向する面は平坦、かつ可動対向面52Aと平行な平面(反射膜固定面57A)であり、本発明の第三面を構成する。
そして、この支持層57の反射膜固定面57A上には、フィルター平面視において、光干渉領域Ar2領域と重なる位置に可動反射膜55が設けられている。
【0038】
ここで、可動反射膜55は、可動電極562上に設けられた支持層57の反射膜固定面57A上に設けられる構成であるため、可動電極562の表面より固定基板51側に位置して形成されることとなる。したがって、固定電極561及び可動電極562の間の電極間ギャップG2は、可動反射膜55及び固定反射膜54の間の反射膜間ギャップG1の寸法よりも大きくなる。このような構成では、反射膜間ギャップG1の変動可能量を大きくすることができ、波長可変干渉フィルター5により分光可能な波長域を広域化することができる。つまり、電極間ギャップG2の寸法が反射膜間ギャップG1の寸法よりも小さくなる場合、反射膜間ギャップG1の初期寸法をg10とし、電極間ギャップG2の初期寸法をg20とすると、反射膜間ギャップG1の変動可能範囲gは、(g10−g20)<g≦g10となる。これに対して、電極間ギャップG2の寸法が反射膜間ギャップG1の寸法よりも大きくなる場合では、反射膜間ギャップG1の変動可能範囲gは、0<g≦g10となり、反射膜間ギャップG1の設定値の幅を広げることができる。
【0039】
(第二実施形態の作用効果)
上述したような第二実施形態の波長可変干渉フィルター5Aでは、上記第一実施形態の波長可変干渉フィルター5の効果に加え、次のような効果を奏する。
すなわち、波長可変干渉フィルター5Aは、可動基板52の可動電極562上に支持層57が形成され、この支持層57の反射膜固定面57A上に可動反射膜55が形成されている。このため、支持層57の厚み寸法分だけ、電極間ギャップG2の寸法を反射膜間ギャップG1の寸法より大きくでき、反射膜間ギャップG1の寸法の変動可能量を大きくできる。したがって、測色装置1の測定可能波長域を広域化することができる。また、固定電極561,可動電極562間での静電引力の制御が容易となり、反射膜間ギャップG1の寸法をより精度よく、所望の目標値に設定することができる。したがって、波長可変干渉フィルター5の分解能の低下を阻止でき、かつ測色センサー3において所望の波長の光の光量を正確に測定することができ、かつ測色装置1において検査対象Aの正確な色度を測定することができる。
【0040】
また、支持層57は、例えばSiOやTiO等の絶縁性を有する素材により、構成されている。このため、可動反射膜55と可動電極562とが絶縁されるため、可動電極562に電圧を印加した際に可動反射膜55に電荷が移動することがなく、固定反射膜54及び可動反射膜55間での静電引力の発生を防止できる。
また、固定電極561と固定反射膜54との間に絶縁層を介在させる構成としてもよく、この場合、固定反射膜54や可動反射膜55が金属膜であっても、これらの固定反射膜54及び可動反射膜55間で作用する静電引力を考慮する必要がなく、固定電極561及び可動電極562間への電圧により電極間ギャップG2の寸法を所望の値に設定することができる。
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について、図面に基づいて説明する。
上記第二実施形態では、支持層57は、可動電極562上の光干渉領域Ar2に形成される構成としたが、第三実施形態では、支持層は可動電極の全面を覆って形成される。この点で、本実施形態は、第二実施形態と相違する。
【0041】
図5は、第三実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す断面図である。なお、以降の説明に当たり、第一及び第二実施形態と同様の構成については同符号を付し、その説明を省略または簡略する。
【0042】
波長可変干渉フィルター5Bは、第一及び第二実施形態の波長可変干渉フィルター5,5Aと同様に、平坦な固定対向面51Aを有する固定基板51、及び平坦な可動対向面52Aを有する可動基板52を備えている。そして、固定基板51の固定対向面51A上には、フィルター平面視において、光干渉領域Ar2を含む駆動領域Ar1に固定電極561が設けられ、この固定電極561の可動基板52に対向する面における光干渉領域Ar2に固定反射膜54が設けられている。
また、可動基板52の可動対向面52Aには、フィルター平面視において、光干渉領域Ar2を含む駆動領域Ar1に可動電極562が設けられ、この可動電極562の固定基板51に対向する面全体、すなわち駆動領域Ar1に絶縁性を有する支持層57が設けられている。そして、この支持層57の可動基板52に対向する面のうち、光干渉領域Ar2に反射膜間ギャップG1を介して固定反射膜54に対向する可動反射膜55が設けられている。つまり、支持層57は、フィルター平面視において、固定反射膜54及び可動反射膜55が設けられる光干渉領域Ar2を含む、駆動領域Ar1の全体を覆って形成されている。
【0043】
このような構成の波長可変干渉フィルター5Bでは、可動電極562の固定電極561全体に絶縁性を有する支持層57が設けられている。このため、固定電極561及び可動電極562間での放電等によりリークを防止することができ、静電アクチュエーター56の制御をより容易に実施することができ、精度よく反射膜間ギャップG1の寸法を調整することができる。
【0044】
[実施形態の変形]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上記第二及び第三実施形態では、第一基板として可動基板52を例示し、可動基板52の可動対向面52Aに支持層57が設けられる構成を示したが、図6に示す波長可変干渉フィルター5Cのような構成としてもよい。
すなわち、本発明の第一基板を固定基板51とし、固定基板51の固定対向面51A上に支持層57が形成され、支持層57の可動基板52に対向する面上に固定反射膜54が形成される構成としてもよい。このような構成であっても、固定反射膜54及び可動反射膜55が設けられる光干渉領域Ar2を含む駆動領域Ar1に固定電極561及び可動電極562が設けられ、静電アクチュエーター56による静電引力を大きくでき、省電力化を促進できる。また、電極間ギャップG2の寸法を反射膜間ギャップG1より大きくするために、固定基板51や可動基板52にエッチング等により凹部を形成する必要がなく、固定電極561及び可動電極562を平坦面に形成することができ、波長可変干渉フィルター5Cの分解能の低下を防止できる。
さらには、固定基板51の固定対向面51A及び可動基板52の可動対向面52Aの双方に支持層57が設けられ、固定対向面51A上の支持層に固定反射膜54が設けられ、可動対向面52A上の支持層に可動反射膜55が設けられる構成などとしてもよい。この場合、上述のように、絶縁性の支持層57を用いることで、固定反射膜54及び可動反射膜55がそれぞれ固定電極561及び可動電極562と導通されないため、固定反射膜54及び可動反射膜55間での静電引力発生を防止できる。
【0045】
また、互いに対向する一対の電極(固定電極561及び可動電極562)により静電アクチュエーター56が構成される例を示したが、図7に示すように、複数の電極により静電アクチュエーター56が形成される構成としてもよい。
図7に示す例では、波長可変干渉フィルター5Dには、可動基板52の可動対向面52Aのうち、平面中心点から半径R3(R2<R3<R1)の円領域である第一駆動領域Ar3に内側可動電極562Aが設けられる。また、可動対向面52Aのうち、第一駆動領域Ar3よりも径外側に設けられ、平面中心点から半径R3の内周縁、平面中心点から半径R1の外周縁を有する円環状領域である第二駆動領域Ar4に外側可動電極562Bが設けられる。
このような構成でも、光干渉領域Ar2内で静電引力を作用させることができるので、上記実施形態と同様の作用効果をえることができる。また、波長可変干渉フィルター5Dでは、内側可動電極562A及び固定電極561間に印加する電圧と、外側可動電極562B及び固定電極561間において印加する電圧とを異ならせることで、内側可動電極562A及び固定電極561間で作用させる静電引力と、外側可動電極562B及び固定電極561間で作用させる静電引力とを変えることができる。これにより、可動部521の変位量をより精度よく制御することができ、反射膜間ギャップG1の寸法をより細かく、かつ精度よく設定することができる。
【0046】
そして、上記実施形態では、可動電極52の可動対向面52Aに可動電極562が設けられる支持層構成を例示したが、これに限定されない。例えば、可動部521の固定基板51に対向する可動対向面52Aに、可動反射膜55が設けられ、可動部521の可動対向面52Aとは反対側の面に駆動領域Ar1を覆う可動電極562が設けられる構成としてもよい。この場合であっても、光干渉領域Ar2を含む駆動領域Ar1内全体に静電引力を作用させることができ、かつ、電極間ギャップG2が反射膜間ギャップG1より大きくなるため、反射膜間ギャップG1の変動可能領域を大きくでき、測定対象となる波長域を広域化できる。また、可動電極562が外部に露出する構成であるため、可動電極562に接続された可動引出電極564を直接電圧制御部32に結線されたリード線等を接続することができる。したがって、固定基板51に第一対向電極581や導電性部材58を設ける必要がなく、構成を簡単にできる。
【0047】
本発明の電子機器として、測色装置1を例示したが、その他、様々な分野により本発明の波長可変干渉フィルター、光モジュール、電子機器を用いることができる。
例えば、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムとして用いることができる。このようなシステムとしては、例えば、本発明の波長可変干渉フィルターを用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器などのガス検出装置を例示できる。
このようなガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0048】
図8は、波長可変干渉フィルターを備えたガス検出装置の一例を示す概略図である。
図9は、図8のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、図8に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、および排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、波長可変干渉フィルター5、および受光素子137(検出部)等を含む検出装置(光モジュール)と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ110側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッター135Bと、レンズ135C,レンズ135D,レンズ135Eと、により構成されている。なお、波長可変干渉フィルター5を用いる構成を例示するが、上述した波長可変干渉フィルター5A,5B,5C,5Dを用いる構成としてもよい。
また、図9に示すように、ガス検出装置100の表面には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部139が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
さらに、ガス検出装置100の制御部138は、図9に示すように、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、波長可変干渉フィルター5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、および排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。
【0049】
次に、上記のようなガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0050】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光を射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。
【0051】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、およびレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光が波長可変干渉フィルター5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146を制御し、波長可変干渉フィルター5に印加する電圧を調整し、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光を波長可変干渉フィルター5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0052】
なお、上記図8及び図9において、ラマン散乱光を波長可変干渉フィルター5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光モジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置を本発明の電子機器とする。このような構成でも、本発明の波長可変干渉フィルターを用いてガスの成分を検出することができる。
【0053】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
以下に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0054】
図10は、波長可変干渉フィルター5を利用した電子機器の一例である食物分析装置の概略構成を示す図である。なお、ここでは波長可変干渉フィルター5を用いているが、波長可変干渉フィルター5A,5B,5C,5Dを用いる構成としてもよい。
この食物分析装置200は、図10に示すように、検出器210(光モジュール)と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光する波長可変干渉フィルター5と、分光された光を検出する撮像部213(検出部)と、を備えている。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさ制御を実施する光源制御部221と、波長可変干渉フィルター5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224と、記憶部225と、を備えている。
【0055】
この食物分析装置200は、システムを駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通って波長可変干渉フィルター5に入射する。波長可変干渉フィルター5は電圧制御部222の制御により所望の波長を分光可能な電圧が印加されており、分光された光が、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御して波長可変干渉フィルター5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0056】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、およびその含有量を求める。また、得られた食物成分および含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。さらに、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、さらには、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、上述のようにした得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0057】
また、図10において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる。また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
さらには、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0058】
さらには、本発明の波長可変干渉フィルター、光モジュール、電子機器としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光モジュールに設けられた波長可変干渉フィルターにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光モジュールを備えた電子機器により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
【0059】
また、電子機器としては、本発明の波長可変干渉フィルターにより光を分光することで、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機などにも適用できる。このような分光カメラの一例として、波長可変干渉フィルターを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図11は、分光カメラの概略構成を示す模式図である。分光カメラ300は、図11に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部330(検出部)とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部330に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、図11に示すように、対物レンズ321、結像レンズ322、及びこれらのレンズ間に設けられた波長可変干渉フィルター5を備えて構成されている。
撮像部330は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、波長可変干渉フィルター5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。
【0060】
さらには、本発明の波長可変干渉フィルターをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを波長可変干渉フィルターで分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明の波長可変干渉フィルターを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管や指紋、網膜、虹彩などの認証装置にも適用できる。
【0061】
さらには、光モジュールおよび電子機器を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、波長可変干渉フィルターにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0062】
上記に示すように、本発明の波長可変干渉フィルター、光モジュール、および電子機器は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明の波長可変干渉フィルターは、上述のように、1デバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光モジュールや電子機器の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用の光学デバイスとして好適に用いることができる。
【0063】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【符号の説明】
【0064】
1…測色装置(電子機器)、3…測色センサー(光モジュール)、5,5A,5B,5C,5D…波長可変干渉フィルター、31…検出部、51…固定基板(第二基板)、51A…固定対向面(第二面)、52…可動基板(第一基板)、52A…可動対向面(第一面)、54…固定反射膜(第二反射膜)、55…可動反射膜(第一反射膜)、57…支持層、57A…反射膜固定面(第三面)、100…ガス検出装置(電子機器)、200…食物分析装置(電子機器)、210…検出器(光モジュール)、300…分光カメラ(電子機器)、561…固定電極(第二電極)、562…可動電極(第一電極)、Ar1…有効領域、G1…反射膜間ギャップ、G2…電極間ギャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板と、
前記第一基板に対向する第二基板と、
前記第一基板に設けられた第一反射膜と、
前記第二基板に設けられ、前記第一反射膜と所定の大きさの反射膜間ギャップを介して対向する第二反射膜と、
前記第一基板に設けられた第一電極と、
前記第二基板に設けられ、前記第一電極と所定の大きさの電極間ギャップを介して対向する第二電極と、を具備し、
前記第一電極及び前記第二電極は、それぞれ透光性を有し、前記第一基板または前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記第一反射膜及び前記第二反射膜が互いに対向して設けられた光干渉領域の内外に亘り、当該光干渉領域を覆って設けられ、
前記第一反射膜は、前記第一電極を介して前記第一基板に設けられ、
前記第二反射膜は、前記第二電極を介して前記第二基板に設けられた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第一基板は、前記第二基板に対向する平坦な第一面を有し、
前記第二基板は、前記第一基板に対向する平坦な第二面を有し、
前記第一電極は、前記第一面に設けられ、
前記第二電極は、前記第二面に設けられる
ことを特徴とした波長可変干渉フィルター。
【請求項3】
請求項2に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第一反射膜は、均一厚み寸法を有する支持層を介して前記第一電極に設けられる
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項4】
請求項3に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記支持層は、絶縁性を有し、前記第一電極の第二基板に対向する面全体を覆う
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターと、
前記波長可変干渉フィルターにより取り出される光を検出する検出部と、
を備えたことを特徴とする光モジュール。
【請求項6】
請求項5の記載の光モジュールを備えた
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−226122(P2012−226122A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93781(P2011−93781)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】