洗浄装置及び方法、洗浄装置を有する露光装置
【課題】微粒子の除去率を高め、露光装置のスループットを維持し、被洗浄面の損傷を低減する洗浄装置及び方法、並びに洗浄装置を有する露光装置を提供する。
【解決手段】真空環境下に配置されたレチクル2のパターンを投影光学系5を介してウエハ1に露光すると共に、真空環境下でレーザー光Lをレチクル2に照射することによってレチクル2を洗浄する洗浄装置を有する露光装置100において、洗浄装置は、レーザー光Lをレチクル2のパターン面2aに対して1°以上45°以下の範囲の角度で照射する照射手段を有し、前記照射手段が、レーザー光Lのパターン面2aに対する入射角度を前記範囲内に維持した状態で、レーザー光Lをパターン面2aの法線周りの入射方向が互いに異なる複数の入射方向から入射させることを特徴とする露光装置100を提供する。
【解決手段】真空環境下に配置されたレチクル2のパターンを投影光学系5を介してウエハ1に露光すると共に、真空環境下でレーザー光Lをレチクル2に照射することによってレチクル2を洗浄する洗浄装置を有する露光装置100において、洗浄装置は、レーザー光Lをレチクル2のパターン面2aに対して1°以上45°以下の範囲の角度で照射する照射手段を有し、前記照射手段が、レーザー光Lのパターン面2aに対する入射角度を前記範囲内に維持した状態で、レーザー光Lをパターン面2aの法線周りの入射方向が互いに異なる複数の入射方向から入射させることを特徴とする露光装置100を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置及び方法、洗浄装置を有する露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原版(マスク又はレチクル、以下、「レチクル」という。)パターンを投影光学系によって基板(ウエハ)を露光する投影露光装置は従来から使用されており、高解像度な露光装置が益々要求されている。かかる要請に応える一手段として露光光の短波長化が効果的である。そこで、近年では紫外線よりも波長が短い10nm乃至20nm程度の波長の極紫外(Extreme Ultraviolet:EUV)光を用いたEUV露光装置が提案されている。
【0003】
EUV光の波長域においては物質による光の吸収率が高くなるため、EUV露光装置は屈折部材を使用しない反射光学系を一般に用いる。このため、屈折光学系に使用されるペリクルをレチクルに搭載することができなくなり、レチクルパターン面は剥き出しとなる。ここで、「ペリクル」とは、レチクルパターン面を覆う透過率の高い薄膜であり、微粒子(パーティクル)がパターン面に付着することを防止する。微粒子は、レチクルを駆動する駆動部や残留気体からもたらされる。レチクルパターン面に微粒子が付着すると転写不良(欠陥)を引き起こすため、微粒子をレチクルパターン面から除去する必要がある。
【0004】
そこで、特許文献1及び2は、パルスレーザー光を照射して微粒子を除去する方法が提案されている。
【0005】
その他の従来技術としては特許文献3がある。
【特許文献1】特開2000−088999号公報(段落0041、0044、0045)
【特許文献2】特開2003−224067号公報(段落0038、0050、0051)
【特許文献3】特開2006−114650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2は、レーザー光の照射角度をブルースター角以下の角度で被洗浄面に照射している。しかし、被洗浄面に対して垂直付近の入射角度では、一般に、金属表面の反射率が低下し、レーザー光の吸収は大きくなるため、被洗浄面の損傷が大きくなる。このため、斜入射光を被洗浄面に導入することが考えられるが、レチクルパターンには凹凸があるため、レーザー光がレチクルパターンの凸部に阻まれて凹部にある微粒子に届かない場合がある。特に、特許文献2においては、レーザー光の入射角度が場所ごとに変わるため、かかる問題が顕著である。
【0007】
更に、特許文献1及び2は、洗浄時にガスを真空室に導入することを提案している。しかし、ガスを導入して圧力を上げると、レチクル面から離脱した微粒子がガスによる流体抵抗で減速してレチクル面に再付着するため、除去率が低下する。また、ガスを導入すればEUV露光装置の真空室の真空環境を破壊して露光装置のスループットを低下させる。
【0008】
また、レチクルをレチクルステージに保持するレチクルチャックやウエハをウエハステージに保持するウエハチャックにも微粒子が付着してレチクルやウエハを保持する際の平坦度を低下させる場合がある。これらのチャックは、レチクルのようなパターンがないものの、ガスの導入や垂直入射による問題は依然として存在する。
【0009】
本発明は、微粒子の除去率を高め、露光装置のスループットを維持し、被洗浄面の損傷を低減する洗浄装置及び方法、並びに洗浄装置を有する露光装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面としての露光装置は、真空環境下に配置された原版のパターンを投影光学系を介して基板に露光すると共に、真空環境下でレーザー光を前記原版に照射することによって前記原版を洗浄する洗浄装置を有する露光装置において、前記洗浄装置は、前記レーザー光を前記原版のパターンが形成された面に対して1°以上45°以下の範囲の角度で照射する照射手段を有し、前記照射手段が、前記レーザー光の前記パターンが形成された面に対する入射角度を前記範囲内に維持した状態で、前記レーザー光を前記パターン面の法線周りの入射方向が互いに異なる複数の入射方向から入射させることを特徴とする。
【0011】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、微粒子の除去率を高め、露光装置のスループットを維持し、被洗浄面の損傷を低減する洗浄装置及び方法、並びに洗浄装置を有する露光装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1を参照して、EUV露光装置100について説明する。ここで、図1は、露光装置100の概略ブロック図である。露光装置100は、EUV光を用いてステップ・アンド・スキャン方式でレチクル2のパターンをウエハ1に露光する投影露光装置である。露光装置100は、図示しない照明装置と、レチクルステージ3と、投影光学系5と、ウエハステージ27とを真空室内(4a−4c)に有する。また、露光装置100は、後述するように、洗浄装置を更に有する。
【0014】
EUV光は、5nm乃至20nmの波長(例えば、波長13.4nm)を有する。EUV光は、大気に対する透過率が低く、残留する高分子有機ガスとの反応によりコンタミを生成してしまうため、少なくとも、EUV光が通る光路中(即ち、光学系全体)は真空環境(10E−5乃至−7Pa)に維持される。
【0015】
照明装置は、投影光学系5の円弧状の視野に対する円弧状のEUV光によりレチクル2を照明し、EUV光源部と、照明光学系とを有する。EUV光源部は、レーザープラズマ光源や放電プラズマ光源を用いる。照明光学系は、集光ミラー、オプティカルインテグレーター、アパーチャを有する。
【0016】
レチクル2は、反射型レチクルで、レチクルステージ3に支持及び走査方向(第1方向)に駆動される。レチクル2から発せられた回折光は、投影光学系5で反射されてウエハ1上に投影される。レチクル2とウエハ1とは光学的に共役の関係に配置される。露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の露光装置であるため、レチクル2とウエハ1を同期走査することによりレチクルパターンをウエハ1上に縮小投影する。
【0017】
レチクルステージ3は、レチクルチャック(原版チャック)7を介してレチクル2を支持して後述する駆動部84に接続されている。レチクルステージ3は駆動部84によって少なくとも走査方向(Y方向)に移動可能に構成されている。但し、別の実施例ではその他の方向(X方向、Z軸周りの回転方向など)にも更に移動可能に構成されている。
【0018】
レチクルチャック7は、平面矯正するための静電チャックであり、静電吸着力によってレチクル2を吸着及び保持する。レチクルチャック7はレチクルステージ3に設置されている(一体的に設けられている、或いは支持されている)。レチクル2は、パターンがパターン領域30に形成されたパターン面2aが図1において下側又は投影光学系5側となるようにレチクルチャック7に保持される。
【0019】
投影光学系5は、複数の多層膜ミラーを用いて、レチクルパターンの像を像面にあるウエハ1上に縮小投影する。複数のミラーの枚数は、4枚乃至6枚程度である。少ない枚数のミラーで広い露光領域を実現するには、光軸から一定の距離だけ離れた細い円弧状の領域(リングフィールド)だけを用いて、レチクル2とウエハ1を同時に走査して広い面積を転写する。
【0020】
ウエハ1は、別の実施形態では液晶基板その他の基板(被露光体)を広く含む。ウエハ1には、フォトレジストが塗布されている。ウエハステージ27は、ウエハチャック(基板チャック)6を介してウエハ1を支持して6軸方向に駆動する。ウエハチャック6は静電チャックであり、静電吸着力によってウエハ1を吸着及び保持する。
【0021】
レチクルステージ3とウエハステージ27のxy位置は不図示のレーザー干渉計によって監視されている。レチクルステージ3とウエハステージ27の走査速度の間には、Vr/Vw=βの関係が成立するように同期制御される。ここで、投影光学系5の縮小倍率を1/βとし、レチクルステージの走査速度をVr、ウエハステージ27の走査速度をVwとする。
【0022】
真空室(真空チャンバ)は、レチクルステージ空間4a、投影光学系空間4b及びウエハステージ空間4cを含む。なお、本出願では、真空室はこれらの空間の一又は複数を指す場合がある。
【0023】
レチクルステージ空間4aは、レチクル2、レチクルステージ3、レチクルチャック7を収納する。レチクルステージ空間4aには真空排気装置10aと測定装置70aが設けられる。真空排気装置10aは、独立してレチクルステージ空間4aを露光に必要な10-5Pa乃至10-7Paの真空度まで排気することができる。測定装置70aは、レチクルステージ空間4aの真空度を測定する。測定装置70aが測定する真空度の範囲は10-7Pa乃至100Paの範囲であり、真空計や圧力計を組み合わせて構成することができる。100Paの測定が必要なのは、後述するように、本実施例の洗浄装置で使用するからである。但し、別の実施例では、測定装置70aは少なくとも露光に必要な10-5Pa乃至10-7Paが測定できれば足りる。この範囲で洗浄しても微粒子の除去率は高いからである。
【0024】
投影光学系空間4bは投影光学系5を収納する。投影光学系空間4bには真空排気装置10bと測定装置70bが設けられる。投影光学系空間4bには真空排気装置10bと測定装置70bが設けられる。真空排気装置10bは、独立して投影光学系空間4bを排気する。測定装置70bは、投影光学系空間4bの真空度を測定する。測定装置70bが測定する真空度の範囲は測定装置70aと同じ範囲であってもよいが、少なくとも露光に必要な10-5Pa乃至10-7Paが測定できれば足りる。
【0025】
ウエハステージ空間4cはウエハ1、ウエハチャック6、ウエハステージ27を収納する。ウエハステージ空間4cには真空排気装置10cと測定装置70cが設けられる。真空排気装置10cは、独立してウエハステージ空間4cを排気する。測定装置70cは、ウエハステージ空間4cの真空度を測定する。測定装置70aが測定する真空度の範囲は10-7Pa乃至100Paの範囲であり、真空計や圧力計を組み合わせて構成することができる。100Paの測定が必要なのは、後述するように、本実施例の洗浄装置で使用するからである。但し、別の実施例では、測定装置70cは少なくとも露光に必要な10-5Pa乃至10-7Paが測定できれば足りる。この範囲で洗浄しても微粒子の除去率は高いからである。
【0026】
レチクルステージ空間4aと投影光学系空間4bとの間はゲートバルブ16aによって仕切られ、投影光学系空間4bとウエハステージ空間4cの間はゲートバルブ16bによって仕切られている。
【0027】
15はウエハロードロック室であり、8はウエハロードロック室15とウエハステージ空間4cとの間でウエハ1を搬入及び搬出する搬送ハンドである。10eはウエハロードロック室15の真空排気装置である。11aはウエハロードロック室15に設けられた露光装置100側のゲートバルブ、11bはウエハロードロック室15に設けられたウエハ交換室14側のゲートバルブである。14はウエハ1を大気圧下で一時保管するウエハ交換室であり、13はウエハ交換室14とウエハロードロック室15との間でウエハ1を搬入及び搬出する搬送ハンドである。
【0028】
26はレチクルロードロック室であり、22はレチクルロードロック室26とレチクルステージ空間4aとの間でレチクル2を搬入及び搬出する搬送ハンドである。10dはレチクルロードロック室26の真空排気装置である。12aはレチクルロードロック室26に設けられた露光装置100側ゲートバルブ、12bはレチクルロードロック室26に設けられたレチクル交換室19側ゲートバルブである。19はレチクルを大気圧下で一時保管するレチクル交換室であり、18はレチクル交換室19とレチクルロードロック室26との間でレチクルを搬入及び搬出する搬送ハンドである。
【0029】
洗浄装置は、真空室(レチクルステージ空間4a)にガスを導入することなく真空室(レチクルステージ空間4a)内でレチクル2を洗浄する。洗浄装置は、照射手段と、走査手段と、減衰器42又はミラー24と、変更手段(照射手段の一部)と、測定装置70a乃至70cと、制御部60とを有する。但し、測定装置70a乃至70cと制御部60は露光装置100に備わっているものを転用することができる。図2は、図1に示す洗浄装置の部分拡大断面図である。
【0030】
照射手段は、レチクル2を洗浄するためのレーザー光Lのレチクル2とのなす角度を1°以上45°以下の範囲(角度範囲内)の角度でレチクル2に照射する。照射手段は、パルスレーザー21と、図示しないビーム整形系と、レーザー光導入窓20と、斜入射照明手段とを有する。
【0031】
なお、本発明では、レーザー光を被洗浄面に照射する際、レーザーの入射角度、または照射角度は、レーザー光と被洗浄表面(レチクルのパターン面、パターンが形成された面)とのなす角度と定義する。このパターン面に対するレーザー光の入射角度は、1度以上45度以下、好ましくは5度(10度)以上35度(25度)以下の範囲内である。ここで、原版のパターン面の法線と入射するレーザー光との角度のことを入射角度(入射角)と称しても構わない。但し、その場合の入射角度の範囲は前述の範囲と逆となるため、45度以上89度以下、より好ましくは55度(65度)以上85度(80度)以下の範囲内である。
【0032】
また、レーザー光の入射方向とは、被洗浄表面の法線の回転方向における方向(法線周りの方向、法線を中心とした回転方向)、即ち、レチクルの法線方向から見た時にレーザーが入射する方向と定義する。入射方向を更に言い換えると、レーザー光の光路を被洗浄表面(レチクル面)の法線方向に投影した時のレーザー光の光路の方向としても良い。ここで、この入射方向が互いに異なる2つのレーザー光線を同時、或いは異なるタイミングでパターンに対して入射させることが本実施例の最も重要な点である。このように構成することによって、パターン面をよりきれいに洗浄することができる。尚、この際の複数の互いに異なる入射方向のうち第1の入射方向は、走査型露光装置の(原版の)走査方向(第1方向)と平行であり、第2の入射方向は、その走査方向と垂直とすることが望ましい。更に詳細に言えば、互いに異なる複数の入射方向のうち第1の入射方向は、パターン面の法線と走査方向とを含む第1平面と平行である。また、互いに異なる複数の入射方向のうち第2の入射方向は、パターン面の法線を含み、第1平面と垂直な第2平面と平行である。勿論、この他に第1、2の入射方向とは非平行な第3の入射方向、第4の入射方向(法線周りの回転方向)を設け、それぞれの方向からレーザー光を入射させても良い。
【0033】
パルスレーザー21はレーザー光Lを照射する、ArFレーザー(波長193nm)、KrFレーザー(波長248nm)、YAGレーザー(波長266nm、他)、フェムト秒レーザー(波長266nm、他)などを使用することができる。但し、本発明は露光光であるEUV光を使用することを妨げるものではない。
【0034】
ビーム整形系は、レーザー光Lのビーム形状を整形する。
【0035】
レーザー光導入窓20は、真空室(レチクルステージ空間4a)の隔壁に設けられ、レーザー光Lを透過するガラス又は石英などの、入射波長に対して吸収の少ない光透過材料から構成される。
【0036】
斜入射照明手段は、レーザー光Lを1°以上45°以下の範囲の入射角度でレチクル2に導光する手段である。即ち、レーザー光Lの、レチクル2のパターン面2aに対する入射角度θは1°≦θ≦45°を満足する。
【0037】
斜入射照明手段は、パルスレーザー21の光軸をレチクル2のパターン面2aに対して上記範囲に設定することによって構成されてもよい。
【0038】
しかし、本実施例では、パルスレーザー21が射出するレーザー光Lの光軸はレチクル2のパターン面2aと平行に設定し、レーザー光導入窓20を経たレーザー光Lを偏向する偏向する角度可変な折り曲げミラー23を設けている。折り曲げミラー23は、図1の紙面に直交するX方向に延び、レチクル2のパターン面2aの図1のX方向の長さをカバーするのに十分な反射領域を有する。折り曲げミラー23は、レーザー光Lを図1の下方から右斜め上方に偏向する。折り曲げミラー23は駆動部82によって6軸方向に駆動され、そのX軸周りの傾斜角度は駆動部82を制御する制御部60によって制御可能である。
【0039】
走査手段は、レーザー光Lをレチクル2のパターン面2aの全面で走査する。走査手段は、レーザー光LをX方向に延びるラインとして構成してY方向に一次元的に走査してもよいし、レーザー光Lのパターン面2a上のスポットを二次元的に走査してもよい。
【0040】
本実施例の走査手段はX方向に走査するX方向走査手段とY方向走査手段を有する。
【0041】
X方向走査手段は、ポリゴンミラー40とfθレンズ41とを有する。ポリゴンミラー40は、パルスレーザー21から射出したレーザー光LをX方向に走査し、ポリゴンミラー40は駆動部80によってXY平面において回転駆動される。なお、ポリゴンミラー40の代わりにガルバノミラーを使用してもよい。fθレンズ41は、入射角θに比例した像高Yをもち、焦点距離をfとするとY=fθとなる。特に、本発明では、レーザーのレチクルに対する照射角度を一定にする必要があるため、fθレンズ41から射出したレーザー光は入射角θが変化しても、平行光を維持するようなテレセントリックfθレンズが望ましい。
【0042】
Y方向走査手段は、Y方向(走査方向)に移動するレチクルステージ3を有する。レチクルステージ3は上述したように駆動部84によって6軸方向に駆動される。
【0043】
なお、本実施例とは異なり、パルスレーザー21が二次元的にレーザー光Lをレチクルパターン面2aに対して走査する走査機構を設けてもよい。
【0044】
減衰器42は、レチクル2によって反射されたレーザー光Lを減衰させるレーザー光出力減衰器である。これにより、レチクル2で反射したレーザー光Lが、露光装置100の他の部材に照射されることを防止することができる。本実施例では、減衰器42のレーザー光Lの入射部は減衰器42内で発生した微粒子が飛散しないようにガラス窓で覆われている。また、本実施例の減衰器42は、真空室(レチクルステージ空間4a)内に設けられているが、減衰器42は真空室(レチクルステージ空間4a)の外部に設けられてもよい。この場合、レーザー光Lは、図示しない透過窓を介して真空室の外に導出してそこで減衰される。
【0045】
減衰器42の代わりに折り返しミラー24を挿入してもよい。この場合、折り返しミラー24は図示しない駆動部に接続されて駆動可能に構成され、駆動部は制御部60によって制御される。
【0046】
図3は、図2の変形例を示す概略断面図である。図3において、実線は、パルスレーザー21から真空室(レチクルステージ空間4a)に導入され、レチクル2のパターン面2aで反射され、折り返しミラー24に到達したレーザー光L1を示している。破線は、折り返しミラー24で反射され、再度、レチクル2のパターン面2aに入射するレーザー光L2を示している。
【0047】
図4は、レチクル2のパターン面2aに付着した一の微粒子P近傍の概略断面図である。レーザー光L1の入射角度θ1は1°≦θ1≦45°を満足し、レーザー光L2の入射角度θ2は1°≦θ2≦45°を満足するようにミラー24の角度を調整している。このように、折り返しミラー(反射ミラー)24は、レチクル2の照射位置で反射されたレーザー光Lを、前記照射位置やその近傍のパターン面に戻す。その際、戻って来たレーザー光はパターン面に対して1°以上45°以下の角度(絶対値)をなすように入射させる。この際、折り返しミラー(反射ミラー)24は、元の照射位置にレーザー光を戻すことが望ましいが、その限りでは無く、若干照射位置とは異なる位置にレーザー光を戻しても構わない。
【0048】
以下、図5を参照して、レチクル2のパターン面2aに照射されるレーザー光L1及びL2のタイミングについて説明をする。ここで、図5は、レーザー光L1及びL2のタイミングを説明するためのグラフである。図5において、横軸は時間であり、縦軸はレーザー光の照射強度である。また、実線はレチクル2のパターン面2aに最初に照射されるレーザー光L1のプロファイルを表し、破線は折り返しミラー24により反射してレチクル2に再照射されるレーザー光L2のプロファイルを表している。
【0049】
パルスレーザー21がQスイッチYAGレーザーを使用する場合、パルス時間幅Δτは約7ns程度である。レーザー光L2は、レチクル2、及びミラー24の表面の吸収により、照射強度は弱くなっている。ただし、パルス時間幅Δτは一定に維持されたままである。レーザー光L1及びL2のタイミングのずれΔτ’は、仮に光路長差を1mとすると、3ns程度となる。
【0050】
折り返しミラー24により、パターン面2aに付着した微粒子Pに180°異なる2つの方向から、nsオーダーの時間差をもったレーザー光を照射することができる。このため、レーザー光L1のみでは、完全に除去できなかったパーティクルでも、レーザー光L2により除去できるため、除去率は向上する。
【0051】
変更手段は、レーザー光Lのレチクル2のパターン面2aに対する入射角度を上述した1°以上45°以下の範囲内に維持した状態で(本実施例では入射角度を同一に維持した状態で)レーザー光Lの入射方向を変更する。変更手段は、以下に説明するように、様々な構成を採用することができる。
【0052】
ある実施例では、変更手段は、レチクル2を面内で回転することができるレチクルステージ3によって構成される。図6の上図はレチクルステージ3の初期位置にある状態を示す上面図であり、図6の下図はレチクルステージ3が図6の上図に示す位置から90°回転した状態を示す上面図である。上述のように、レチクルステージ3は駆動部84によってY軸と回転軸方向に駆動可能に構成されており、制御部60が駆動部84によるレチクルステージ3の回転を制御する。
【0053】
別の実施例では、変更手段は、図7に示すように、レチクルステージ3からレチクル2を取り出して異なる姿勢でレチクルステージ3に装着するロボットハンド22から構成される。ここで、図7は、ロボットハンド22を示す上面図である。本実施例のロボットハンド22は、レチクル2を90°回転した姿勢でレチクルチャック7に装着する。また、図7において、46はレチクル2をレチクルステージ空間4a内で交換するためのレチクルチェンジャー、47はレチクル回転ステージである。
【0054】
レチクル回転ステージ47は駆動部88により、XY平面上で図7の矢印に示すように、90°回転可能に構成されている。ロボットハンド22は、レチクル2の把持部22a、アーム部22b及び22c、基部22dを有する。ロボットハンド22は、駆動部90によって、アーム部22b及び22cの伸縮やアーム部22b及び22cの基部22dの周りの回転が駆動され、かかる駆動は制御部60によって制御される。
【0055】
ロボットハンド22を用いて、レチクルステージ3から外されたレチクル2をレチクル回転ステージ47に配置し、任意の角度(本実施例では90°)だけ回転することが可能である。ロボットハンド22は、これら4つのユニット、即ち、レチクルロードロック室26、レチクルチェンジャー46、レチクルステージ3、レチクル回転ステージ47の間でレチクル2は搬送可能に構成されている。本実施例により、レチクルステージ3は、θの回転軸を設ける必要が無くなり、レチクルステージ3の構成を簡略化できるという利点を有する。
【0056】
更に別の実施例では、変更手段は、レーザー光Lの光路に挿脱可能に構成され、レーザー光を偏向する偏向素子を含む引き回し光学系から構成される。図8の45は光路を切り替えるミラー(偏向素子、プリズムや回折格子等のように光路を折り曲げる光学素子と置き換えても良い)を示している。ここで、図8は、切り替えミラー(偏向素子)45を有する変更手段の概略上面図である。切り替えミラー(偏向素子)45は、駆動部86によってパルスレーザー21から射出されるレーザー光Lの光路に挿入及び退避可能に構成されている。駆動部86による駆動は制御部60によって制御される。
【0057】
なお、切り替えミラー45は、ビームスプリッター、あるいはハーフミラーであっても良い。この場合、ビームスプリッター、ハーフミラーによってレーザー光が複数のレーザー光(部分レーザー光)に分割され、それぞれを互いに異なる入射方向からレチクルに入射させる。好ましくは、レチクルを駆動する方向(走査方向)と平行な入射方向とそれと垂直な入射方向の少なくとも2つの入射方向を含む複数の入射方向から部分レーザー光をレチクルに入射させると良い。勿論、この場合には光路を時間的に切り替える必要はない。レチクルステージ3を固定したまま、レチクル全面を異なる方向からレーザー走査することが可能である。これは、走査光学系40a,41aと、その駆動部80a、及び走査光学系40b、41bと、その駆動部80bを、同時に用いることにより達成可能である。
【0058】
図8においては、入射方向が変更される前の斜入射照明手段は折り曲げミラー23aから構成され、入射方向が変更された後の斜入射照明手段は折り曲げミラー23bから構成される。この場合、折り曲げミラー23a及び23bはそれぞれ駆動部82a及び82bによって駆動される。また、入射方向が変更される前の走査手段はポリゴンミラー40aとfθレンズ41aから構成され、入射方向が変更された後の走査手段はポリゴンミラー40bとfθレンズ41bから構成される。
【0059】
更に別の実施例では、図9に示すように、レーザー光Lを分割するビームスプリッター48を含む引き回し光学系から構成される。ここで、図9は、ビームスプリッター48を有する概略上面図である。この場合、変更手段は必要なくなり、レーザー光Lを異なる直交方向から同時に照射する。斜入射照明手段は、折り曲げミラー23a、23bとなり、同時に駆動部82a、82bによって駆動される。レチクル全面を走査する手段は、レチクルステージ3、もしくは後述するクリーニングステージ28のX,Y方向の2軸移動機構を用いる。
【0060】
制御部60は、ゲートバルブ11a、11b、12a、12b、16a、16bの開閉状態、測定装置70a乃至70cの測定結果、露光装置100の動作状態を含む各種情報を取得する。かかる情報に基づいて、制御部60は、真空排気装置10a乃至10eによる排気、パルスレーザー21による照射、駆動部80乃至90による駆動を制御(許容)する。なお、「駆動部80乃至90」としているが、変更手段に対応する駆動部が選択されることはいうまでもない。
【0061】
以下、図10乃至図15を参照して、露光装置100の動作について説明する。ここで、図10は、露光装置100の動作を説明するためのフローチャートである。
【0062】
まず、露光の前工程として、レチクル2のパターン面2aを洗浄し(ステップ1100)、レチクルチャック7を洗浄し(ステップ1200)、ウエハチャック6を洗浄する(ステップ1300)。その後、露光が行われる(ステップ1400)。また、制御部60は保守が必要かどうかを、例えば、所定枚数のウエハ1の露光が終了したかどうかによって判断する(ステップ1500)。制御部60は、保守が必要であると判断した場合にはステップ1100に帰還し、保守が不要であると判断した場合にはステップ1400を継続する。
【0063】
以下、図11を参照して、ステップ1100の詳細を説明する。ここで、図11は、図10に示すステップ1100の詳細を説明するためのフローチャートである。まず、制御部60は、測定装置70aによる真空室(空間4a及至4c)の測定結果を取得して、レチクルステージ空間4aの真空度が100Pa以下であるかどうかを判断する(ステップ1104)。通常レチクルステージ空間4a(或いはレチクルを洗浄する空間)は10-5Pa乃至10-7Paの圧力領域であり、高くても100Pa以下であることが望ましい。もしレチクルを洗浄する空間(レチクルステージ空間でも可)の気圧が100Paより高い場合は、装置が異常であると判断する。その場合、クリーニング動作を強制終了する(ステップ1102)。尚、本実施例においては、レチクルを洗浄する際には、レチクルは真空環境下(気圧100Pa以下)に置かれているものとする。勿論、レチクルは露光される際にも真空環境下(100Pa以下)であることが望ましい。また、ウエハ等の基板(被露光体、被露光基板)も同様に真空環境下(100Pa以下)に置かれていることが望ましく、もし真空環境下に置かれていない場合には、露光装置を停止する手段を設けても良い。 制御部60は、レチクルステージ空間4aの真空度が100Pa以下であると判断した場合には(ステップ1104)、レチクル2をレチクルステージ空間4aに搬送し、レチクルチャック7を介してレチクルステージ3に装着する(ステップ1106)。
【0064】
次に、制御部60は、パルスレーザー21によるレーザー光Lの照射を開始する(ステップ1108)。また、制御部60は、駆動部80(又は80a)を介してポリゴンミラー40(又は40a)と駆動部84を介してレチクルステージ3を駆動して、レーザー光Lでレチクル2のパターン面2aを走査する(ステップ1110)。
【0065】
走査においては、ポリゴンミラー40をXY平面で回転してX方向にレーザー光Lを偏向すると共にレチクルステージ3を一定速度でY方向に移動させる。これにより、レチクル2のパターン面2aの全面を洗浄することができる。図14は、この状態を示す概略平面図である。レチクル2のパターン領域30が被洗浄領域である。50はレーザー光Lの照射領域で、本実施例では、一辺Wの正方形形状を有している。照射領域50から走査が開始され、51で1走査が完了し、次の走査が開始し、これを繰返す。本実施例では、レチクルステージ3の移動と、レーザー光Lの走査は同期して行われ、レチクル2は常に一定速度で移動するが、1走査毎にステップ移動してもよい。レーザー光Lの走査速度、照射領域50、発振周波数、洗浄に必要な照射パルス数等は、例えば、特許文献3に開示された設定を使用することができる。
【0066】
本発明者らは、被洗浄面に付着した微粒子Pをレーザー光Lで除去する場合、レーザー光Lを被洗浄面に垂直入射させるよりも斜入射させるほうが効率的に微粒子Pを除去できることを実験的に発見した。図15(a)は被洗浄面であるレチクル2のパターン面2aにある微粒子Pにレーザー光Lが垂直入射する状態を示す概略断面図である。図15(b)はレチクル2のパターン面2aにある微粒子Pにレーザー光Lが垂直入射する状態を示す概略断面図である。
【0067】
レーザー光Lよる微粒子除去の機構は明確にはなっていないが、(1)パルス照射時の微粒子Pと被洗浄基板の瞬時の熱膨張、(2)光圧力作用、及び、(3)光化学的作用、の組み合わせであると予想される。特に無機微粒子Pでは、(1)と(2)の要因の影響が大きい。
【0068】
従って、垂直入射光の場合、熱膨張により、微粒子Pは被洗浄面から離脱する方向に力が作用するが、同時に光圧力作用により微粒子Pは被洗浄面に押し付けられる方向に力が作用する。そのため、微粒子Pの離脱力としては100%有効には作用していない。
【0069】
一方、斜入射光の場合は、微粒子Pに入射する直接光と、被洗浄面を反射する反射光が組み合わさって微粒子Pにレーザー光Lが照射される。従って、熱膨張による微粒子Pが被洗浄面から離脱する力も垂直入射の時よりも大きくなる。また、その場合の光圧力は、被洗浄面に微粒子Pを押し付けるような方向ではなく、その接線方向の力が大きく作用する。以上の機構により、斜入射光の方が微粒子Pの除去率が高くなる。
【0070】
本発明者らは、実験により、レーザー入射角度を、表面に対して垂直入射(θ=90°)の状態から、徐々にこの角度θを小さくしていくと除去率は向上するが、45°以下にすると特に効果的に除去率が向上することを発見した。そのため、本実施例では、レーザー光の入射角度θを1°以上45°以下の範囲に設定している。
【0071】
また、斜入射光の被洗浄面に照射されるエネルギーEは、垂直入射光のエネルギーE0に対してE=E0/sinθの関係となる。θが小さくなるにつれて被洗浄面に到達する単位面積あたりのエネルギーが小さくなるため、被洗浄面の損傷が小さくなる。このように、レーザー光Lの入射角度を垂直入射(θ=90°)よりも小さくすることで被洗浄面の損傷なく微粒子Pの除去率を向上することができる。
【0072】
次に、本発明者らは、被洗浄面から微粒子Pをレーザー光で除去する場合、大気圧環境で微粒子Pを除去するよりも真空環境で除去する方が効率的であることを実験的に発見した。
【0073】
大気圧中では、微粒子Pがレーザー光によって被洗浄面から一旦離れてもガス分子の流体抵抗により運動エネルギーを一瞬のうちに失い、ファンデアワールス力、あるいは微粒子Pが帯電している場合は静電気力により、再付着する。
【0074】
一方、真空環境では、微粒子Pの挙動は、ガス分子との不連続な衝突となる。従って、微粒子Pが被洗浄面から離れると流体抵抗は作用しないため、そのままオープンスペースに解放されて除去される。このような機構が作用することにより、真空中における微粒子Pの除去率が向上すると考えられる。
【0075】
本発明者らは、ファンデアワールス力により付着しているパーティクルがレーザー光の照射により被洗浄面から離脱する加速度を見積もった。図16は、被洗浄面から離脱し到達する距離をシミュレーションにより計算した結果である。図16において、横軸は圧力[Pa]であり、縦軸は規格化した距離である。
【0076】
このように、真空度が100Paよりも大きくなると、微粒子Pの離脱距離は0、即ち、微粒子Pは離脱してもすぐさま再付着する。しかし、真空度が100Pa以下では離脱距離が次第に大きくなり、10Pa程度では、完全に被照明面から離れ、再付着なく除去される。このため、本実施例では、微粒子Pは再付着なく効果的に除去するために、被洗浄面の環境を真空度100Pa以下、好ましくは、10Pa以下に設定している。
【0077】
ラインアンドスペースパターンが形成されたパターン面2aは凹部2bと凸部2cを有するため、パターン面2aを斜入射照明する場合には微粒子Pがある位置を考慮する必要がある。図17は、微粒子Pがラインアンドスペースパターンを有するパターン面2aの凹部2bと凸部2cのそれぞれに存在する場合の拡大断面図である。同図では、凹部2bの表面(ボトム)に存在するパターンを微粒子P1とし、凸部2cの表面(トップ)に存在するパターンを微粒子P2として区別している。
【0078】
入射角度が1°以上45°以下のレーザー光Lはいかなる入射方向を有していても微粒子P2に到達して容易に除去可能である。しかし、微粒子P1に対しては、パターンのアスペクト比とレーザー光Lの入射方向によってはレーザー光Lが到達しない場合があり、この場合には、微粒子P1を除去できなくなる。
【0079】
図18は、典型的な4種類のラインアンドスペースパターンLS1乃至LS4を示す概略平面図である。通常は、Y方向に延びるラインアンドスペースパターンLS1と、X方向に延びるラインアンドスペースパターンLS2の組み合わせからパターン面2aのパターンは構成されている。Y方向にレーザー光Lの入射方向を合わせればレーザー光Lが遮られることなくラインアンドスペースパターンLS1のボトムにある微粒子P1に到達することができる。また、X方向にレーザー光Lの入射方向を合わせればレーザー光Lが遮られることなくラインアンドスペースパターンLS2のボトムにある微粒子P1に到達することができる。このため、本実施例では直交する二方向(XY方向)にレーザー光Lを走査することによってLS1及びLS2を有するパターン面2aから微粒子P1及びP2を効率的に除去している。
【0080】
但し、本発明は、パターン面2aがX軸に対して45°の角度を有して延びるラインアンドスペースパターンLS3やY軸に対して45°の角度を有して延びるラインアンドスペースパターンLS4にも適用可能である。この場合は、レーザー光Lをこれらのパターンが延びる方向に走査すればよい。
【0081】
更に、走査する方向は直交する方向に限定されない。例えば、パターンが延びる方向が一種類であれば、その方向のみを走査すればよい。例えば、パターン面2aがLS1のみを有すれば、Y方向のみを走査すればよい。また、パターン面2aがLS1とLS3のみを有すれば、Y方向とX軸に対して45°の方向のみを走査すればよい。
【0082】
以下、XY方向にレーザー光Lを走査する場合について説明する。図6上図は、レチクル2をレチクルステージ3に搭載したレチクルパターン面2aの概略平面図である。まず、制御部60はパルスレーザー21を制御して−Y方向からレーザー光Lをレチクル2のパターン面2aのパターン領域30に照射する。また、制御部60は駆動部80を制御してポリゴンミラー40によってレーザー光LをX方向に走査する。これに同期して、制御部60は駆動部84を制御してレチクルステージ3をY方向に移動させ、パターン領域30の全面を走査する。これにより、ラインアンドスペースパターンLS1から微粒子P1及びP2を除去する。他のパターンに付着している微粒子P2もこの時に除去可能である。
【0083】
制御部60は、走査が終了したと判断したら(ステップ1112)、変更手段によって入射方向を調節する(ステップ1114)。図6においては、変更手段は90°回転可能なレチクルステージ3であるから、制御部60は駆動部84を介して駆動することによって図6の上図の状態から下図の状態にレチクルステージ3を回転する。その後、同様に走査を開始する。制御部60は走査が終了したと判断したらレチクル2の洗浄を終了する(ステップ1116)。これにより、ラインアンドスペースパターンLS2から微粒子P1を除去することができる。
【0084】
ステップ1114において、図7に示す変更手段の場合には以下のようになる。即ち、制御部60は、駆動部90を制御して、ロボットハンド22でレチクル2をレチクルステージ3から取り出してレチクル回転ステージ47に搭載する。その後、制御部60は駆動部88を制御してレチクル回転ステージ47を90°回転する。次に、制御部60は、駆動部90を制御して、ロボットハンド22でレチクル2をレチクル回転ステージ47から取り出してレチクルステージ3に搭載する。この場合には、レチクルステージ3はY方向にのみ移動可能に構成されればよい。
【0085】
図8に示す変更手段の場合には以下のようになる。即ち、制御部60は、図8の上図に示すように、最初は、偏向ミラー45をレーザー光Lの光路から退避させる。そして、制御部60はパルスレーザー21を制御して−Y方向からレーザー光Lをレチクル2のパターン面2aのパターン領域30に照射する。また、制御部60は駆動部80aを制御してポリゴンミラー40aによってレーザー光LをX方向に走査する。これに同期して、制御部60は駆動部84を制御してレチクルステージ3をY方向に移動させ、パターン領域30の全面を走査する。これにより、ラインアンドスペースパターンLS1から微粒子P1及びP2を除去することができる。他のパターンに付着している微粒子P2もこの時に除去可能である。
【0086】
次に、制御部60は、走査が終了したと判断したら(ステップ1112)、図8の下図に示すように、駆動部86を制御してレーザー光Lの光路に偏向ミラー45を挿入する。これにより、レーザー光Lの入射方向を調節することができる(ステップ1114)。その後、制御部60は、図8の下図に示すように、制御部60はパルスレーザー21を制御して+X方向からレーザー光Lをレチクル2のパターン面2aのパターン領域30に照射する。また、制御部60は駆動部80bを制御してポリゴンミラー40bによってレーザー光LをY方向に走査する。これに同期して、制御部60は駆動部84を制御してレチクルステージ3をX方向に移動させ、パターン領域30の全面を走査する。制御部60は走査が終了したと判断したらレチクル2の洗浄を終了する(ステップ1116)。これにより、ラインアンドスペースパターンLS2から微粒子P1を除去することができる。
【0087】
図9に示す変更手段の場合には以下のようになる。即ち、制御部60は、パルスレーザー21を制御して−Y方向と+X方向からレーザー光Lをレチクル2のパターン面2aのパターン領域30に照射する。この場合、2本に分割されたレーザー光Lを照射領域50に同時に照射することが可能となる。複数の入射方向から同時にレーザー光Lを照射するので、レーザー光の入射方向を変更するステップ1114は不要となる。そして、レチクルステージ3、もしくは後述するクリーニングステージ28の2軸移動機能を用いることで、レチクル2のパターン領域30の全面を洗浄することができる。このように異なる方向からレーザー光を同時に照射可能とすることで、レーザー光の入射方向に伸びたラインアンドスペースパターンのボトムに微粒子P1が付着していても除去可能となる。
【0088】
再び、図10に戻って、次に、レチクルチャック7の洗浄を行う(ステップ1200)。図12は、図10に示すステップ1200の詳細を説明するためのフローチャートである。レチクルチャック7はパターンを有しないからその洗浄においてはレーザー光Lの入射方向を変更する必要がない。それ以外は、レチクル2の洗浄と同様である。
【0089】
即ち、制御部60は、測定装置70aの測定結果を取得して、レチクルステージ空間4aの真空度が100Pa以下であるかどうかを判断する(ステップ1204)。通常レチクルステージ空間4aは10-5Pa乃至10-7Paの圧力領域であり、100Pa以上の場合は、装置が異常であるとして、クリーニング動作を強制終了する(ステップ1202)。制御部60は、レチクルステージ空間4aの真空度が100Pa以下であると判断した場合には(ステップ1204)、パルスレーザー21によるレーザー光Lの照射を開始する(ステップ1206)。また、制御部60は、駆動部80を介してポリゴンミラー40と駆動部84を介してレチクルステージ3を駆動して、レーザー光Lでレチクルチャック7を走査する(ステップ1208)。制御部60は、走査が終了したと判断したら処理を終了する(ステップ1210)。
【0090】
再び、図10に戻って、次に、ウエハチャック6の洗浄を行う(ステップ1300)。図13は、図10に示すステップ1300の詳細を説明するためのフローチャートである。ウエハチャック6はパターンを有しないからその洗浄においてはレーザー光Lの入射方向を変更する必要がない。それ以外は、レチクル2の洗浄と同様である。
【0091】
即ち、制御部60は、測定装置70cの測定結果を取得して、ウエハステージ空間4cの真空度が100Pa以下であるかどうかを判断する(ステップ1304)。通常ウエハステージ空間4cは10-5Pa乃至10-7Paの圧力領域であり、100Pa以上の場合は、装置が異常であるとして、クリーニング動作を強制終了する(ステップ1302)。
【0092】
制御部60は、ウエハステージ空間4cの真空度が100Pa以下であると判断した場合には(ステップ1304)、パルスレーザー21によるレーザー光Lの照射を開始する(ステップ1306)。また、制御部60は、駆動部80を介してポリゴンミラー40と駆動部84を介してレチクルステージ3を駆動して、レーザー光Lでウエハチャック6を走査する(ステップ1308)。制御部60は、走査が終了したと判断したら処理を終了する(ステップ1310)。
【0093】
図19は、レチクルチャック7とウエハチャック6を洗浄する場合の露光装置100の構成を示す概略断面図である。図19において、図1と同一の部材には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0094】
図19においては、レーザー光は、各チャック7及び6に1°以上45°以下の入射角度で照射される。20はレーザー導入窓、23は折り曲げミラーであり、それぞれはレチクル2の洗浄に使用されるものを転用することができる。同様にして、20aはレーザー窓、23aは偏向ミラーであり、それぞれはウエハチャック6の洗浄に用いられる。
【0095】
チャック7及び6は微粒子Pの挟み込みが問題となる。そのため、チャック表面は、通常接触面積を減らすため、接触部がピン形状になっている。ピンの先端に微粒子Pが付着すると微粒子Pをレチクル2又はウエハ1との間に挟み込むことになる。レチクルチャック7に微粒子Pが付着すると物体面が傾く。ウエハチャック6に微粒子Pが付着すると光学系の焦点深度に影響を及ぼす。しかし、ボトムに微粒子Pが付着しても問題はないのでレーザー光Lの入射方向を変更する必要はない。チャック洗浄を行う場合の他の構成要件、シーケンスに関しては、特願2006−331585を適用することもできる。
【0096】
図20は、レチクルステージ3とは別のステージ28でレチクル2を洗浄する露光装置100の構成を示す概略断面図である。図20において、図1と同一の部材には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。なお、図20は、レチクルロードロック室26、ウエハロードロック室15等の搬送系は省略している。ステージ28はレチクルステージ3とは異なる洗浄専用のステージである。レチクル2の洗浄はステージ28で行われる。この場合の変更手段は、図6乃至9においてレチクルステージ3がステージ28に置換される以外は同様である。
【0097】
上述の実施例は、EUV露光装置100内の洗浄対象にレーザー洗浄する場合を示したが、本発明はEUV露光装置内で洗浄しなくともよい。例えば、EUV露光装置とは全く独立したユニットを洗浄装置として使用してもよい。
【0098】
次に、図21及び図22を参照して、露光装置100を利用したデバイス製造方法の実施例を説明する。図21は、半導体デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、あるいは液晶パネルやCCD等)の製造を説明するためのフローチャートである。ステップ1(回路設計)では、半導体デバイスの回路設計を行う。ステップ2(レチクル製作)では、設計した回路パターンを形成したレチクル2を製作する。一方、ステップ3(ウエハ製造)では、シリコン等の材料を用いてウエハ1を製造する。ステップ4(ウエハプロセス)は、前工程と呼ばれ、レチクル2とウエハ1を用いてリソグラフィ技術によってウエハ1上に実際の回路を形成する。次のステップ5(組み立て)は後工程と呼ばれ、ステップ4によって作製されたウエハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ6(検査)では、ステップ5で作製された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これが出荷(ステップ7)される。
【0099】
図22は、図21のステップ4のウエハプロセスの詳細なフローチャートである。ステップ11(酸化)では、ウエハ1の表面を酸化させる。ステップ12(CVD)では、ウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ13(電極形成)では、ウエハ1上に電極を蒸着等によって形成する。ステップ14(イオン打ち込み)ではウエハ1にイオンを打ち込む。ステップ15(レジスト処理)ではウエハ1に感光材を塗布する。ステップ16(露光)では、露光装置100によってレチクルパターンをウエハ1に露光する。ステップ17(現像)では露光したウエハ1を現像する。ステップ18(エッチング)では、現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ19(レジスト剥離)では、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行うことによって、ウエハ1上に多重に回路パターンが形成される。本実施例の製造方法を用いれば、洗浄装置により転写不良が減少するので、従来よりも高品位なデバイス(半導体素子、LCD素子、撮像素子(CCDなど)、薄膜磁気ヘッドなど)を製造することができる。また、このように、露光装置100を使用するデバイス製造方法、並びに結果物(中間、最終生成物)としてのデバイスも本発明の一側面を構成する。
【0100】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の一実施例の露光装置の概略ブロック図である。
【図2】図1に示す露光装置の洗浄装置の部分拡大断面図である。
【図3】図2に示す洗浄装置の変形例の部分拡大断面図である。
【図4】図3に示すレチクルのパターン面の部分拡大断面図である。
【図5】図3に示す洗浄装置の効果を説明するためのグラフである。
【図6】図1に示す洗浄装置に適用可能な変更手段の一実施例の概略ブロック図である。
【図7】図6に示す変更手段の変形例の概略ブロック図である。
【図8】図6に示す変更手段の別の変形例の概略ブロック図である。
【図9】図6に示す変更手段の更に別の変形例の概略ブロック図である。
【図10】図1に示す露光装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】図10に示すステップ1100の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図12】図10に示すステップ1200の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図13】図10に示すステップ1300の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図14】図11に示す走査ステップ1110を説明するための概略平面図である。
【図15】図15(a)及び図15(b)は、それぞれ、垂直入射光と斜入射光の微粒子除去効果を説明するための概略断面図である。
【図16】真空度と微粒子の除去の効果を説明するためのグラフである。
【図17】斜入射光によりパターン面に形成された微粒子を除去する際の問題を説明するための概略断面図である。
【図18】図1に示すレチクルのパターン面に形成可能な様々なラインアンドスペースパターンを示す概略平面図である。
【図19】図1に示す露光装置の変形例の概略ブロック図である。
【図20】図10に示すステップ1200及び1300の露光装置を示す概略ブロック図である。
【図21】図1に示す露光装置を利用するデバイス製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図22】図21に示すステップ4の詳細なフローチャートである。
【符号の説明】
【0102】
1 ウエハ(基板)
2 レチクル(原版)
3 レチクルステージ
6 ウエハチャック
7 レチクルチャック
27 ウエハステージ
23−23b 入射角度可変ミラー
24 ビーム折り返しミラー
42 ビーム減衰器
20 パルスレーザー光源
40−40b レーザー走査部
41−41b fθレンズ
60 制御部
70a−70c 測定装置
100 露光装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置及び方法、洗浄装置を有する露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原版(マスク又はレチクル、以下、「レチクル」という。)パターンを投影光学系によって基板(ウエハ)を露光する投影露光装置は従来から使用されており、高解像度な露光装置が益々要求されている。かかる要請に応える一手段として露光光の短波長化が効果的である。そこで、近年では紫外線よりも波長が短い10nm乃至20nm程度の波長の極紫外(Extreme Ultraviolet:EUV)光を用いたEUV露光装置が提案されている。
【0003】
EUV光の波長域においては物質による光の吸収率が高くなるため、EUV露光装置は屈折部材を使用しない反射光学系を一般に用いる。このため、屈折光学系に使用されるペリクルをレチクルに搭載することができなくなり、レチクルパターン面は剥き出しとなる。ここで、「ペリクル」とは、レチクルパターン面を覆う透過率の高い薄膜であり、微粒子(パーティクル)がパターン面に付着することを防止する。微粒子は、レチクルを駆動する駆動部や残留気体からもたらされる。レチクルパターン面に微粒子が付着すると転写不良(欠陥)を引き起こすため、微粒子をレチクルパターン面から除去する必要がある。
【0004】
そこで、特許文献1及び2は、パルスレーザー光を照射して微粒子を除去する方法が提案されている。
【0005】
その他の従来技術としては特許文献3がある。
【特許文献1】特開2000−088999号公報(段落0041、0044、0045)
【特許文献2】特開2003−224067号公報(段落0038、0050、0051)
【特許文献3】特開2006−114650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2は、レーザー光の照射角度をブルースター角以下の角度で被洗浄面に照射している。しかし、被洗浄面に対して垂直付近の入射角度では、一般に、金属表面の反射率が低下し、レーザー光の吸収は大きくなるため、被洗浄面の損傷が大きくなる。このため、斜入射光を被洗浄面に導入することが考えられるが、レチクルパターンには凹凸があるため、レーザー光がレチクルパターンの凸部に阻まれて凹部にある微粒子に届かない場合がある。特に、特許文献2においては、レーザー光の入射角度が場所ごとに変わるため、かかる問題が顕著である。
【0007】
更に、特許文献1及び2は、洗浄時にガスを真空室に導入することを提案している。しかし、ガスを導入して圧力を上げると、レチクル面から離脱した微粒子がガスによる流体抵抗で減速してレチクル面に再付着するため、除去率が低下する。また、ガスを導入すればEUV露光装置の真空室の真空環境を破壊して露光装置のスループットを低下させる。
【0008】
また、レチクルをレチクルステージに保持するレチクルチャックやウエハをウエハステージに保持するウエハチャックにも微粒子が付着してレチクルやウエハを保持する際の平坦度を低下させる場合がある。これらのチャックは、レチクルのようなパターンがないものの、ガスの導入や垂直入射による問題は依然として存在する。
【0009】
本発明は、微粒子の除去率を高め、露光装置のスループットを維持し、被洗浄面の損傷を低減する洗浄装置及び方法、並びに洗浄装置を有する露光装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面としての露光装置は、真空環境下に配置された原版のパターンを投影光学系を介して基板に露光すると共に、真空環境下でレーザー光を前記原版に照射することによって前記原版を洗浄する洗浄装置を有する露光装置において、前記洗浄装置は、前記レーザー光を前記原版のパターンが形成された面に対して1°以上45°以下の範囲の角度で照射する照射手段を有し、前記照射手段が、前記レーザー光の前記パターンが形成された面に対する入射角度を前記範囲内に維持した状態で、前記レーザー光を前記パターン面の法線周りの入射方向が互いに異なる複数の入射方向から入射させることを特徴とする。
【0011】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、微粒子の除去率を高め、露光装置のスループットを維持し、被洗浄面の損傷を低減する洗浄装置及び方法、並びに洗浄装置を有する露光装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1を参照して、EUV露光装置100について説明する。ここで、図1は、露光装置100の概略ブロック図である。露光装置100は、EUV光を用いてステップ・アンド・スキャン方式でレチクル2のパターンをウエハ1に露光する投影露光装置である。露光装置100は、図示しない照明装置と、レチクルステージ3と、投影光学系5と、ウエハステージ27とを真空室内(4a−4c)に有する。また、露光装置100は、後述するように、洗浄装置を更に有する。
【0014】
EUV光は、5nm乃至20nmの波長(例えば、波長13.4nm)を有する。EUV光は、大気に対する透過率が低く、残留する高分子有機ガスとの反応によりコンタミを生成してしまうため、少なくとも、EUV光が通る光路中(即ち、光学系全体)は真空環境(10E−5乃至−7Pa)に維持される。
【0015】
照明装置は、投影光学系5の円弧状の視野に対する円弧状のEUV光によりレチクル2を照明し、EUV光源部と、照明光学系とを有する。EUV光源部は、レーザープラズマ光源や放電プラズマ光源を用いる。照明光学系は、集光ミラー、オプティカルインテグレーター、アパーチャを有する。
【0016】
レチクル2は、反射型レチクルで、レチクルステージ3に支持及び走査方向(第1方向)に駆動される。レチクル2から発せられた回折光は、投影光学系5で反射されてウエハ1上に投影される。レチクル2とウエハ1とは光学的に共役の関係に配置される。露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の露光装置であるため、レチクル2とウエハ1を同期走査することによりレチクルパターンをウエハ1上に縮小投影する。
【0017】
レチクルステージ3は、レチクルチャック(原版チャック)7を介してレチクル2を支持して後述する駆動部84に接続されている。レチクルステージ3は駆動部84によって少なくとも走査方向(Y方向)に移動可能に構成されている。但し、別の実施例ではその他の方向(X方向、Z軸周りの回転方向など)にも更に移動可能に構成されている。
【0018】
レチクルチャック7は、平面矯正するための静電チャックであり、静電吸着力によってレチクル2を吸着及び保持する。レチクルチャック7はレチクルステージ3に設置されている(一体的に設けられている、或いは支持されている)。レチクル2は、パターンがパターン領域30に形成されたパターン面2aが図1において下側又は投影光学系5側となるようにレチクルチャック7に保持される。
【0019】
投影光学系5は、複数の多層膜ミラーを用いて、レチクルパターンの像を像面にあるウエハ1上に縮小投影する。複数のミラーの枚数は、4枚乃至6枚程度である。少ない枚数のミラーで広い露光領域を実現するには、光軸から一定の距離だけ離れた細い円弧状の領域(リングフィールド)だけを用いて、レチクル2とウエハ1を同時に走査して広い面積を転写する。
【0020】
ウエハ1は、別の実施形態では液晶基板その他の基板(被露光体)を広く含む。ウエハ1には、フォトレジストが塗布されている。ウエハステージ27は、ウエハチャック(基板チャック)6を介してウエハ1を支持して6軸方向に駆動する。ウエハチャック6は静電チャックであり、静電吸着力によってウエハ1を吸着及び保持する。
【0021】
レチクルステージ3とウエハステージ27のxy位置は不図示のレーザー干渉計によって監視されている。レチクルステージ3とウエハステージ27の走査速度の間には、Vr/Vw=βの関係が成立するように同期制御される。ここで、投影光学系5の縮小倍率を1/βとし、レチクルステージの走査速度をVr、ウエハステージ27の走査速度をVwとする。
【0022】
真空室(真空チャンバ)は、レチクルステージ空間4a、投影光学系空間4b及びウエハステージ空間4cを含む。なお、本出願では、真空室はこれらの空間の一又は複数を指す場合がある。
【0023】
レチクルステージ空間4aは、レチクル2、レチクルステージ3、レチクルチャック7を収納する。レチクルステージ空間4aには真空排気装置10aと測定装置70aが設けられる。真空排気装置10aは、独立してレチクルステージ空間4aを露光に必要な10-5Pa乃至10-7Paの真空度まで排気することができる。測定装置70aは、レチクルステージ空間4aの真空度を測定する。測定装置70aが測定する真空度の範囲は10-7Pa乃至100Paの範囲であり、真空計や圧力計を組み合わせて構成することができる。100Paの測定が必要なのは、後述するように、本実施例の洗浄装置で使用するからである。但し、別の実施例では、測定装置70aは少なくとも露光に必要な10-5Pa乃至10-7Paが測定できれば足りる。この範囲で洗浄しても微粒子の除去率は高いからである。
【0024】
投影光学系空間4bは投影光学系5を収納する。投影光学系空間4bには真空排気装置10bと測定装置70bが設けられる。投影光学系空間4bには真空排気装置10bと測定装置70bが設けられる。真空排気装置10bは、独立して投影光学系空間4bを排気する。測定装置70bは、投影光学系空間4bの真空度を測定する。測定装置70bが測定する真空度の範囲は測定装置70aと同じ範囲であってもよいが、少なくとも露光に必要な10-5Pa乃至10-7Paが測定できれば足りる。
【0025】
ウエハステージ空間4cはウエハ1、ウエハチャック6、ウエハステージ27を収納する。ウエハステージ空間4cには真空排気装置10cと測定装置70cが設けられる。真空排気装置10cは、独立してウエハステージ空間4cを排気する。測定装置70cは、ウエハステージ空間4cの真空度を測定する。測定装置70aが測定する真空度の範囲は10-7Pa乃至100Paの範囲であり、真空計や圧力計を組み合わせて構成することができる。100Paの測定が必要なのは、後述するように、本実施例の洗浄装置で使用するからである。但し、別の実施例では、測定装置70cは少なくとも露光に必要な10-5Pa乃至10-7Paが測定できれば足りる。この範囲で洗浄しても微粒子の除去率は高いからである。
【0026】
レチクルステージ空間4aと投影光学系空間4bとの間はゲートバルブ16aによって仕切られ、投影光学系空間4bとウエハステージ空間4cの間はゲートバルブ16bによって仕切られている。
【0027】
15はウエハロードロック室であり、8はウエハロードロック室15とウエハステージ空間4cとの間でウエハ1を搬入及び搬出する搬送ハンドである。10eはウエハロードロック室15の真空排気装置である。11aはウエハロードロック室15に設けられた露光装置100側のゲートバルブ、11bはウエハロードロック室15に設けられたウエハ交換室14側のゲートバルブである。14はウエハ1を大気圧下で一時保管するウエハ交換室であり、13はウエハ交換室14とウエハロードロック室15との間でウエハ1を搬入及び搬出する搬送ハンドである。
【0028】
26はレチクルロードロック室であり、22はレチクルロードロック室26とレチクルステージ空間4aとの間でレチクル2を搬入及び搬出する搬送ハンドである。10dはレチクルロードロック室26の真空排気装置である。12aはレチクルロードロック室26に設けられた露光装置100側ゲートバルブ、12bはレチクルロードロック室26に設けられたレチクル交換室19側ゲートバルブである。19はレチクルを大気圧下で一時保管するレチクル交換室であり、18はレチクル交換室19とレチクルロードロック室26との間でレチクルを搬入及び搬出する搬送ハンドである。
【0029】
洗浄装置は、真空室(レチクルステージ空間4a)にガスを導入することなく真空室(レチクルステージ空間4a)内でレチクル2を洗浄する。洗浄装置は、照射手段と、走査手段と、減衰器42又はミラー24と、変更手段(照射手段の一部)と、測定装置70a乃至70cと、制御部60とを有する。但し、測定装置70a乃至70cと制御部60は露光装置100に備わっているものを転用することができる。図2は、図1に示す洗浄装置の部分拡大断面図である。
【0030】
照射手段は、レチクル2を洗浄するためのレーザー光Lのレチクル2とのなす角度を1°以上45°以下の範囲(角度範囲内)の角度でレチクル2に照射する。照射手段は、パルスレーザー21と、図示しないビーム整形系と、レーザー光導入窓20と、斜入射照明手段とを有する。
【0031】
なお、本発明では、レーザー光を被洗浄面に照射する際、レーザーの入射角度、または照射角度は、レーザー光と被洗浄表面(レチクルのパターン面、パターンが形成された面)とのなす角度と定義する。このパターン面に対するレーザー光の入射角度は、1度以上45度以下、好ましくは5度(10度)以上35度(25度)以下の範囲内である。ここで、原版のパターン面の法線と入射するレーザー光との角度のことを入射角度(入射角)と称しても構わない。但し、その場合の入射角度の範囲は前述の範囲と逆となるため、45度以上89度以下、より好ましくは55度(65度)以上85度(80度)以下の範囲内である。
【0032】
また、レーザー光の入射方向とは、被洗浄表面の法線の回転方向における方向(法線周りの方向、法線を中心とした回転方向)、即ち、レチクルの法線方向から見た時にレーザーが入射する方向と定義する。入射方向を更に言い換えると、レーザー光の光路を被洗浄表面(レチクル面)の法線方向に投影した時のレーザー光の光路の方向としても良い。ここで、この入射方向が互いに異なる2つのレーザー光線を同時、或いは異なるタイミングでパターンに対して入射させることが本実施例の最も重要な点である。このように構成することによって、パターン面をよりきれいに洗浄することができる。尚、この際の複数の互いに異なる入射方向のうち第1の入射方向は、走査型露光装置の(原版の)走査方向(第1方向)と平行であり、第2の入射方向は、その走査方向と垂直とすることが望ましい。更に詳細に言えば、互いに異なる複数の入射方向のうち第1の入射方向は、パターン面の法線と走査方向とを含む第1平面と平行である。また、互いに異なる複数の入射方向のうち第2の入射方向は、パターン面の法線を含み、第1平面と垂直な第2平面と平行である。勿論、この他に第1、2の入射方向とは非平行な第3の入射方向、第4の入射方向(法線周りの回転方向)を設け、それぞれの方向からレーザー光を入射させても良い。
【0033】
パルスレーザー21はレーザー光Lを照射する、ArFレーザー(波長193nm)、KrFレーザー(波長248nm)、YAGレーザー(波長266nm、他)、フェムト秒レーザー(波長266nm、他)などを使用することができる。但し、本発明は露光光であるEUV光を使用することを妨げるものではない。
【0034】
ビーム整形系は、レーザー光Lのビーム形状を整形する。
【0035】
レーザー光導入窓20は、真空室(レチクルステージ空間4a)の隔壁に設けられ、レーザー光Lを透過するガラス又は石英などの、入射波長に対して吸収の少ない光透過材料から構成される。
【0036】
斜入射照明手段は、レーザー光Lを1°以上45°以下の範囲の入射角度でレチクル2に導光する手段である。即ち、レーザー光Lの、レチクル2のパターン面2aに対する入射角度θは1°≦θ≦45°を満足する。
【0037】
斜入射照明手段は、パルスレーザー21の光軸をレチクル2のパターン面2aに対して上記範囲に設定することによって構成されてもよい。
【0038】
しかし、本実施例では、パルスレーザー21が射出するレーザー光Lの光軸はレチクル2のパターン面2aと平行に設定し、レーザー光導入窓20を経たレーザー光Lを偏向する偏向する角度可変な折り曲げミラー23を設けている。折り曲げミラー23は、図1の紙面に直交するX方向に延び、レチクル2のパターン面2aの図1のX方向の長さをカバーするのに十分な反射領域を有する。折り曲げミラー23は、レーザー光Lを図1の下方から右斜め上方に偏向する。折り曲げミラー23は駆動部82によって6軸方向に駆動され、そのX軸周りの傾斜角度は駆動部82を制御する制御部60によって制御可能である。
【0039】
走査手段は、レーザー光Lをレチクル2のパターン面2aの全面で走査する。走査手段は、レーザー光LをX方向に延びるラインとして構成してY方向に一次元的に走査してもよいし、レーザー光Lのパターン面2a上のスポットを二次元的に走査してもよい。
【0040】
本実施例の走査手段はX方向に走査するX方向走査手段とY方向走査手段を有する。
【0041】
X方向走査手段は、ポリゴンミラー40とfθレンズ41とを有する。ポリゴンミラー40は、パルスレーザー21から射出したレーザー光LをX方向に走査し、ポリゴンミラー40は駆動部80によってXY平面において回転駆動される。なお、ポリゴンミラー40の代わりにガルバノミラーを使用してもよい。fθレンズ41は、入射角θに比例した像高Yをもち、焦点距離をfとするとY=fθとなる。特に、本発明では、レーザーのレチクルに対する照射角度を一定にする必要があるため、fθレンズ41から射出したレーザー光は入射角θが変化しても、平行光を維持するようなテレセントリックfθレンズが望ましい。
【0042】
Y方向走査手段は、Y方向(走査方向)に移動するレチクルステージ3を有する。レチクルステージ3は上述したように駆動部84によって6軸方向に駆動される。
【0043】
なお、本実施例とは異なり、パルスレーザー21が二次元的にレーザー光Lをレチクルパターン面2aに対して走査する走査機構を設けてもよい。
【0044】
減衰器42は、レチクル2によって反射されたレーザー光Lを減衰させるレーザー光出力減衰器である。これにより、レチクル2で反射したレーザー光Lが、露光装置100の他の部材に照射されることを防止することができる。本実施例では、減衰器42のレーザー光Lの入射部は減衰器42内で発生した微粒子が飛散しないようにガラス窓で覆われている。また、本実施例の減衰器42は、真空室(レチクルステージ空間4a)内に設けられているが、減衰器42は真空室(レチクルステージ空間4a)の外部に設けられてもよい。この場合、レーザー光Lは、図示しない透過窓を介して真空室の外に導出してそこで減衰される。
【0045】
減衰器42の代わりに折り返しミラー24を挿入してもよい。この場合、折り返しミラー24は図示しない駆動部に接続されて駆動可能に構成され、駆動部は制御部60によって制御される。
【0046】
図3は、図2の変形例を示す概略断面図である。図3において、実線は、パルスレーザー21から真空室(レチクルステージ空間4a)に導入され、レチクル2のパターン面2aで反射され、折り返しミラー24に到達したレーザー光L1を示している。破線は、折り返しミラー24で反射され、再度、レチクル2のパターン面2aに入射するレーザー光L2を示している。
【0047】
図4は、レチクル2のパターン面2aに付着した一の微粒子P近傍の概略断面図である。レーザー光L1の入射角度θ1は1°≦θ1≦45°を満足し、レーザー光L2の入射角度θ2は1°≦θ2≦45°を満足するようにミラー24の角度を調整している。このように、折り返しミラー(反射ミラー)24は、レチクル2の照射位置で反射されたレーザー光Lを、前記照射位置やその近傍のパターン面に戻す。その際、戻って来たレーザー光はパターン面に対して1°以上45°以下の角度(絶対値)をなすように入射させる。この際、折り返しミラー(反射ミラー)24は、元の照射位置にレーザー光を戻すことが望ましいが、その限りでは無く、若干照射位置とは異なる位置にレーザー光を戻しても構わない。
【0048】
以下、図5を参照して、レチクル2のパターン面2aに照射されるレーザー光L1及びL2のタイミングについて説明をする。ここで、図5は、レーザー光L1及びL2のタイミングを説明するためのグラフである。図5において、横軸は時間であり、縦軸はレーザー光の照射強度である。また、実線はレチクル2のパターン面2aに最初に照射されるレーザー光L1のプロファイルを表し、破線は折り返しミラー24により反射してレチクル2に再照射されるレーザー光L2のプロファイルを表している。
【0049】
パルスレーザー21がQスイッチYAGレーザーを使用する場合、パルス時間幅Δτは約7ns程度である。レーザー光L2は、レチクル2、及びミラー24の表面の吸収により、照射強度は弱くなっている。ただし、パルス時間幅Δτは一定に維持されたままである。レーザー光L1及びL2のタイミングのずれΔτ’は、仮に光路長差を1mとすると、3ns程度となる。
【0050】
折り返しミラー24により、パターン面2aに付着した微粒子Pに180°異なる2つの方向から、nsオーダーの時間差をもったレーザー光を照射することができる。このため、レーザー光L1のみでは、完全に除去できなかったパーティクルでも、レーザー光L2により除去できるため、除去率は向上する。
【0051】
変更手段は、レーザー光Lのレチクル2のパターン面2aに対する入射角度を上述した1°以上45°以下の範囲内に維持した状態で(本実施例では入射角度を同一に維持した状態で)レーザー光Lの入射方向を変更する。変更手段は、以下に説明するように、様々な構成を採用することができる。
【0052】
ある実施例では、変更手段は、レチクル2を面内で回転することができるレチクルステージ3によって構成される。図6の上図はレチクルステージ3の初期位置にある状態を示す上面図であり、図6の下図はレチクルステージ3が図6の上図に示す位置から90°回転した状態を示す上面図である。上述のように、レチクルステージ3は駆動部84によってY軸と回転軸方向に駆動可能に構成されており、制御部60が駆動部84によるレチクルステージ3の回転を制御する。
【0053】
別の実施例では、変更手段は、図7に示すように、レチクルステージ3からレチクル2を取り出して異なる姿勢でレチクルステージ3に装着するロボットハンド22から構成される。ここで、図7は、ロボットハンド22を示す上面図である。本実施例のロボットハンド22は、レチクル2を90°回転した姿勢でレチクルチャック7に装着する。また、図7において、46はレチクル2をレチクルステージ空間4a内で交換するためのレチクルチェンジャー、47はレチクル回転ステージである。
【0054】
レチクル回転ステージ47は駆動部88により、XY平面上で図7の矢印に示すように、90°回転可能に構成されている。ロボットハンド22は、レチクル2の把持部22a、アーム部22b及び22c、基部22dを有する。ロボットハンド22は、駆動部90によって、アーム部22b及び22cの伸縮やアーム部22b及び22cの基部22dの周りの回転が駆動され、かかる駆動は制御部60によって制御される。
【0055】
ロボットハンド22を用いて、レチクルステージ3から外されたレチクル2をレチクル回転ステージ47に配置し、任意の角度(本実施例では90°)だけ回転することが可能である。ロボットハンド22は、これら4つのユニット、即ち、レチクルロードロック室26、レチクルチェンジャー46、レチクルステージ3、レチクル回転ステージ47の間でレチクル2は搬送可能に構成されている。本実施例により、レチクルステージ3は、θの回転軸を設ける必要が無くなり、レチクルステージ3の構成を簡略化できるという利点を有する。
【0056】
更に別の実施例では、変更手段は、レーザー光Lの光路に挿脱可能に構成され、レーザー光を偏向する偏向素子を含む引き回し光学系から構成される。図8の45は光路を切り替えるミラー(偏向素子、プリズムや回折格子等のように光路を折り曲げる光学素子と置き換えても良い)を示している。ここで、図8は、切り替えミラー(偏向素子)45を有する変更手段の概略上面図である。切り替えミラー(偏向素子)45は、駆動部86によってパルスレーザー21から射出されるレーザー光Lの光路に挿入及び退避可能に構成されている。駆動部86による駆動は制御部60によって制御される。
【0057】
なお、切り替えミラー45は、ビームスプリッター、あるいはハーフミラーであっても良い。この場合、ビームスプリッター、ハーフミラーによってレーザー光が複数のレーザー光(部分レーザー光)に分割され、それぞれを互いに異なる入射方向からレチクルに入射させる。好ましくは、レチクルを駆動する方向(走査方向)と平行な入射方向とそれと垂直な入射方向の少なくとも2つの入射方向を含む複数の入射方向から部分レーザー光をレチクルに入射させると良い。勿論、この場合には光路を時間的に切り替える必要はない。レチクルステージ3を固定したまま、レチクル全面を異なる方向からレーザー走査することが可能である。これは、走査光学系40a,41aと、その駆動部80a、及び走査光学系40b、41bと、その駆動部80bを、同時に用いることにより達成可能である。
【0058】
図8においては、入射方向が変更される前の斜入射照明手段は折り曲げミラー23aから構成され、入射方向が変更された後の斜入射照明手段は折り曲げミラー23bから構成される。この場合、折り曲げミラー23a及び23bはそれぞれ駆動部82a及び82bによって駆動される。また、入射方向が変更される前の走査手段はポリゴンミラー40aとfθレンズ41aから構成され、入射方向が変更された後の走査手段はポリゴンミラー40bとfθレンズ41bから構成される。
【0059】
更に別の実施例では、図9に示すように、レーザー光Lを分割するビームスプリッター48を含む引き回し光学系から構成される。ここで、図9は、ビームスプリッター48を有する概略上面図である。この場合、変更手段は必要なくなり、レーザー光Lを異なる直交方向から同時に照射する。斜入射照明手段は、折り曲げミラー23a、23bとなり、同時に駆動部82a、82bによって駆動される。レチクル全面を走査する手段は、レチクルステージ3、もしくは後述するクリーニングステージ28のX,Y方向の2軸移動機構を用いる。
【0060】
制御部60は、ゲートバルブ11a、11b、12a、12b、16a、16bの開閉状態、測定装置70a乃至70cの測定結果、露光装置100の動作状態を含む各種情報を取得する。かかる情報に基づいて、制御部60は、真空排気装置10a乃至10eによる排気、パルスレーザー21による照射、駆動部80乃至90による駆動を制御(許容)する。なお、「駆動部80乃至90」としているが、変更手段に対応する駆動部が選択されることはいうまでもない。
【0061】
以下、図10乃至図15を参照して、露光装置100の動作について説明する。ここで、図10は、露光装置100の動作を説明するためのフローチャートである。
【0062】
まず、露光の前工程として、レチクル2のパターン面2aを洗浄し(ステップ1100)、レチクルチャック7を洗浄し(ステップ1200)、ウエハチャック6を洗浄する(ステップ1300)。その後、露光が行われる(ステップ1400)。また、制御部60は保守が必要かどうかを、例えば、所定枚数のウエハ1の露光が終了したかどうかによって判断する(ステップ1500)。制御部60は、保守が必要であると判断した場合にはステップ1100に帰還し、保守が不要であると判断した場合にはステップ1400を継続する。
【0063】
以下、図11を参照して、ステップ1100の詳細を説明する。ここで、図11は、図10に示すステップ1100の詳細を説明するためのフローチャートである。まず、制御部60は、測定装置70aによる真空室(空間4a及至4c)の測定結果を取得して、レチクルステージ空間4aの真空度が100Pa以下であるかどうかを判断する(ステップ1104)。通常レチクルステージ空間4a(或いはレチクルを洗浄する空間)は10-5Pa乃至10-7Paの圧力領域であり、高くても100Pa以下であることが望ましい。もしレチクルを洗浄する空間(レチクルステージ空間でも可)の気圧が100Paより高い場合は、装置が異常であると判断する。その場合、クリーニング動作を強制終了する(ステップ1102)。尚、本実施例においては、レチクルを洗浄する際には、レチクルは真空環境下(気圧100Pa以下)に置かれているものとする。勿論、レチクルは露光される際にも真空環境下(100Pa以下)であることが望ましい。また、ウエハ等の基板(被露光体、被露光基板)も同様に真空環境下(100Pa以下)に置かれていることが望ましく、もし真空環境下に置かれていない場合には、露光装置を停止する手段を設けても良い。 制御部60は、レチクルステージ空間4aの真空度が100Pa以下であると判断した場合には(ステップ1104)、レチクル2をレチクルステージ空間4aに搬送し、レチクルチャック7を介してレチクルステージ3に装着する(ステップ1106)。
【0064】
次に、制御部60は、パルスレーザー21によるレーザー光Lの照射を開始する(ステップ1108)。また、制御部60は、駆動部80(又は80a)を介してポリゴンミラー40(又は40a)と駆動部84を介してレチクルステージ3を駆動して、レーザー光Lでレチクル2のパターン面2aを走査する(ステップ1110)。
【0065】
走査においては、ポリゴンミラー40をXY平面で回転してX方向にレーザー光Lを偏向すると共にレチクルステージ3を一定速度でY方向に移動させる。これにより、レチクル2のパターン面2aの全面を洗浄することができる。図14は、この状態を示す概略平面図である。レチクル2のパターン領域30が被洗浄領域である。50はレーザー光Lの照射領域で、本実施例では、一辺Wの正方形形状を有している。照射領域50から走査が開始され、51で1走査が完了し、次の走査が開始し、これを繰返す。本実施例では、レチクルステージ3の移動と、レーザー光Lの走査は同期して行われ、レチクル2は常に一定速度で移動するが、1走査毎にステップ移動してもよい。レーザー光Lの走査速度、照射領域50、発振周波数、洗浄に必要な照射パルス数等は、例えば、特許文献3に開示された設定を使用することができる。
【0066】
本発明者らは、被洗浄面に付着した微粒子Pをレーザー光Lで除去する場合、レーザー光Lを被洗浄面に垂直入射させるよりも斜入射させるほうが効率的に微粒子Pを除去できることを実験的に発見した。図15(a)は被洗浄面であるレチクル2のパターン面2aにある微粒子Pにレーザー光Lが垂直入射する状態を示す概略断面図である。図15(b)はレチクル2のパターン面2aにある微粒子Pにレーザー光Lが垂直入射する状態を示す概略断面図である。
【0067】
レーザー光Lよる微粒子除去の機構は明確にはなっていないが、(1)パルス照射時の微粒子Pと被洗浄基板の瞬時の熱膨張、(2)光圧力作用、及び、(3)光化学的作用、の組み合わせであると予想される。特に無機微粒子Pでは、(1)と(2)の要因の影響が大きい。
【0068】
従って、垂直入射光の場合、熱膨張により、微粒子Pは被洗浄面から離脱する方向に力が作用するが、同時に光圧力作用により微粒子Pは被洗浄面に押し付けられる方向に力が作用する。そのため、微粒子Pの離脱力としては100%有効には作用していない。
【0069】
一方、斜入射光の場合は、微粒子Pに入射する直接光と、被洗浄面を反射する反射光が組み合わさって微粒子Pにレーザー光Lが照射される。従って、熱膨張による微粒子Pが被洗浄面から離脱する力も垂直入射の時よりも大きくなる。また、その場合の光圧力は、被洗浄面に微粒子Pを押し付けるような方向ではなく、その接線方向の力が大きく作用する。以上の機構により、斜入射光の方が微粒子Pの除去率が高くなる。
【0070】
本発明者らは、実験により、レーザー入射角度を、表面に対して垂直入射(θ=90°)の状態から、徐々にこの角度θを小さくしていくと除去率は向上するが、45°以下にすると特に効果的に除去率が向上することを発見した。そのため、本実施例では、レーザー光の入射角度θを1°以上45°以下の範囲に設定している。
【0071】
また、斜入射光の被洗浄面に照射されるエネルギーEは、垂直入射光のエネルギーE0に対してE=E0/sinθの関係となる。θが小さくなるにつれて被洗浄面に到達する単位面積あたりのエネルギーが小さくなるため、被洗浄面の損傷が小さくなる。このように、レーザー光Lの入射角度を垂直入射(θ=90°)よりも小さくすることで被洗浄面の損傷なく微粒子Pの除去率を向上することができる。
【0072】
次に、本発明者らは、被洗浄面から微粒子Pをレーザー光で除去する場合、大気圧環境で微粒子Pを除去するよりも真空環境で除去する方が効率的であることを実験的に発見した。
【0073】
大気圧中では、微粒子Pがレーザー光によって被洗浄面から一旦離れてもガス分子の流体抵抗により運動エネルギーを一瞬のうちに失い、ファンデアワールス力、あるいは微粒子Pが帯電している場合は静電気力により、再付着する。
【0074】
一方、真空環境では、微粒子Pの挙動は、ガス分子との不連続な衝突となる。従って、微粒子Pが被洗浄面から離れると流体抵抗は作用しないため、そのままオープンスペースに解放されて除去される。このような機構が作用することにより、真空中における微粒子Pの除去率が向上すると考えられる。
【0075】
本発明者らは、ファンデアワールス力により付着しているパーティクルがレーザー光の照射により被洗浄面から離脱する加速度を見積もった。図16は、被洗浄面から離脱し到達する距離をシミュレーションにより計算した結果である。図16において、横軸は圧力[Pa]であり、縦軸は規格化した距離である。
【0076】
このように、真空度が100Paよりも大きくなると、微粒子Pの離脱距離は0、即ち、微粒子Pは離脱してもすぐさま再付着する。しかし、真空度が100Pa以下では離脱距離が次第に大きくなり、10Pa程度では、完全に被照明面から離れ、再付着なく除去される。このため、本実施例では、微粒子Pは再付着なく効果的に除去するために、被洗浄面の環境を真空度100Pa以下、好ましくは、10Pa以下に設定している。
【0077】
ラインアンドスペースパターンが形成されたパターン面2aは凹部2bと凸部2cを有するため、パターン面2aを斜入射照明する場合には微粒子Pがある位置を考慮する必要がある。図17は、微粒子Pがラインアンドスペースパターンを有するパターン面2aの凹部2bと凸部2cのそれぞれに存在する場合の拡大断面図である。同図では、凹部2bの表面(ボトム)に存在するパターンを微粒子P1とし、凸部2cの表面(トップ)に存在するパターンを微粒子P2として区別している。
【0078】
入射角度が1°以上45°以下のレーザー光Lはいかなる入射方向を有していても微粒子P2に到達して容易に除去可能である。しかし、微粒子P1に対しては、パターンのアスペクト比とレーザー光Lの入射方向によってはレーザー光Lが到達しない場合があり、この場合には、微粒子P1を除去できなくなる。
【0079】
図18は、典型的な4種類のラインアンドスペースパターンLS1乃至LS4を示す概略平面図である。通常は、Y方向に延びるラインアンドスペースパターンLS1と、X方向に延びるラインアンドスペースパターンLS2の組み合わせからパターン面2aのパターンは構成されている。Y方向にレーザー光Lの入射方向を合わせればレーザー光Lが遮られることなくラインアンドスペースパターンLS1のボトムにある微粒子P1に到達することができる。また、X方向にレーザー光Lの入射方向を合わせればレーザー光Lが遮られることなくラインアンドスペースパターンLS2のボトムにある微粒子P1に到達することができる。このため、本実施例では直交する二方向(XY方向)にレーザー光Lを走査することによってLS1及びLS2を有するパターン面2aから微粒子P1及びP2を効率的に除去している。
【0080】
但し、本発明は、パターン面2aがX軸に対して45°の角度を有して延びるラインアンドスペースパターンLS3やY軸に対して45°の角度を有して延びるラインアンドスペースパターンLS4にも適用可能である。この場合は、レーザー光Lをこれらのパターンが延びる方向に走査すればよい。
【0081】
更に、走査する方向は直交する方向に限定されない。例えば、パターンが延びる方向が一種類であれば、その方向のみを走査すればよい。例えば、パターン面2aがLS1のみを有すれば、Y方向のみを走査すればよい。また、パターン面2aがLS1とLS3のみを有すれば、Y方向とX軸に対して45°の方向のみを走査すればよい。
【0082】
以下、XY方向にレーザー光Lを走査する場合について説明する。図6上図は、レチクル2をレチクルステージ3に搭載したレチクルパターン面2aの概略平面図である。まず、制御部60はパルスレーザー21を制御して−Y方向からレーザー光Lをレチクル2のパターン面2aのパターン領域30に照射する。また、制御部60は駆動部80を制御してポリゴンミラー40によってレーザー光LをX方向に走査する。これに同期して、制御部60は駆動部84を制御してレチクルステージ3をY方向に移動させ、パターン領域30の全面を走査する。これにより、ラインアンドスペースパターンLS1から微粒子P1及びP2を除去する。他のパターンに付着している微粒子P2もこの時に除去可能である。
【0083】
制御部60は、走査が終了したと判断したら(ステップ1112)、変更手段によって入射方向を調節する(ステップ1114)。図6においては、変更手段は90°回転可能なレチクルステージ3であるから、制御部60は駆動部84を介して駆動することによって図6の上図の状態から下図の状態にレチクルステージ3を回転する。その後、同様に走査を開始する。制御部60は走査が終了したと判断したらレチクル2の洗浄を終了する(ステップ1116)。これにより、ラインアンドスペースパターンLS2から微粒子P1を除去することができる。
【0084】
ステップ1114において、図7に示す変更手段の場合には以下のようになる。即ち、制御部60は、駆動部90を制御して、ロボットハンド22でレチクル2をレチクルステージ3から取り出してレチクル回転ステージ47に搭載する。その後、制御部60は駆動部88を制御してレチクル回転ステージ47を90°回転する。次に、制御部60は、駆動部90を制御して、ロボットハンド22でレチクル2をレチクル回転ステージ47から取り出してレチクルステージ3に搭載する。この場合には、レチクルステージ3はY方向にのみ移動可能に構成されればよい。
【0085】
図8に示す変更手段の場合には以下のようになる。即ち、制御部60は、図8の上図に示すように、最初は、偏向ミラー45をレーザー光Lの光路から退避させる。そして、制御部60はパルスレーザー21を制御して−Y方向からレーザー光Lをレチクル2のパターン面2aのパターン領域30に照射する。また、制御部60は駆動部80aを制御してポリゴンミラー40aによってレーザー光LをX方向に走査する。これに同期して、制御部60は駆動部84を制御してレチクルステージ3をY方向に移動させ、パターン領域30の全面を走査する。これにより、ラインアンドスペースパターンLS1から微粒子P1及びP2を除去することができる。他のパターンに付着している微粒子P2もこの時に除去可能である。
【0086】
次に、制御部60は、走査が終了したと判断したら(ステップ1112)、図8の下図に示すように、駆動部86を制御してレーザー光Lの光路に偏向ミラー45を挿入する。これにより、レーザー光Lの入射方向を調節することができる(ステップ1114)。その後、制御部60は、図8の下図に示すように、制御部60はパルスレーザー21を制御して+X方向からレーザー光Lをレチクル2のパターン面2aのパターン領域30に照射する。また、制御部60は駆動部80bを制御してポリゴンミラー40bによってレーザー光LをY方向に走査する。これに同期して、制御部60は駆動部84を制御してレチクルステージ3をX方向に移動させ、パターン領域30の全面を走査する。制御部60は走査が終了したと判断したらレチクル2の洗浄を終了する(ステップ1116)。これにより、ラインアンドスペースパターンLS2から微粒子P1を除去することができる。
【0087】
図9に示す変更手段の場合には以下のようになる。即ち、制御部60は、パルスレーザー21を制御して−Y方向と+X方向からレーザー光Lをレチクル2のパターン面2aのパターン領域30に照射する。この場合、2本に分割されたレーザー光Lを照射領域50に同時に照射することが可能となる。複数の入射方向から同時にレーザー光Lを照射するので、レーザー光の入射方向を変更するステップ1114は不要となる。そして、レチクルステージ3、もしくは後述するクリーニングステージ28の2軸移動機能を用いることで、レチクル2のパターン領域30の全面を洗浄することができる。このように異なる方向からレーザー光を同時に照射可能とすることで、レーザー光の入射方向に伸びたラインアンドスペースパターンのボトムに微粒子P1が付着していても除去可能となる。
【0088】
再び、図10に戻って、次に、レチクルチャック7の洗浄を行う(ステップ1200)。図12は、図10に示すステップ1200の詳細を説明するためのフローチャートである。レチクルチャック7はパターンを有しないからその洗浄においてはレーザー光Lの入射方向を変更する必要がない。それ以外は、レチクル2の洗浄と同様である。
【0089】
即ち、制御部60は、測定装置70aの測定結果を取得して、レチクルステージ空間4aの真空度が100Pa以下であるかどうかを判断する(ステップ1204)。通常レチクルステージ空間4aは10-5Pa乃至10-7Paの圧力領域であり、100Pa以上の場合は、装置が異常であるとして、クリーニング動作を強制終了する(ステップ1202)。制御部60は、レチクルステージ空間4aの真空度が100Pa以下であると判断した場合には(ステップ1204)、パルスレーザー21によるレーザー光Lの照射を開始する(ステップ1206)。また、制御部60は、駆動部80を介してポリゴンミラー40と駆動部84を介してレチクルステージ3を駆動して、レーザー光Lでレチクルチャック7を走査する(ステップ1208)。制御部60は、走査が終了したと判断したら処理を終了する(ステップ1210)。
【0090】
再び、図10に戻って、次に、ウエハチャック6の洗浄を行う(ステップ1300)。図13は、図10に示すステップ1300の詳細を説明するためのフローチャートである。ウエハチャック6はパターンを有しないからその洗浄においてはレーザー光Lの入射方向を変更する必要がない。それ以外は、レチクル2の洗浄と同様である。
【0091】
即ち、制御部60は、測定装置70cの測定結果を取得して、ウエハステージ空間4cの真空度が100Pa以下であるかどうかを判断する(ステップ1304)。通常ウエハステージ空間4cは10-5Pa乃至10-7Paの圧力領域であり、100Pa以上の場合は、装置が異常であるとして、クリーニング動作を強制終了する(ステップ1302)。
【0092】
制御部60は、ウエハステージ空間4cの真空度が100Pa以下であると判断した場合には(ステップ1304)、パルスレーザー21によるレーザー光Lの照射を開始する(ステップ1306)。また、制御部60は、駆動部80を介してポリゴンミラー40と駆動部84を介してレチクルステージ3を駆動して、レーザー光Lでウエハチャック6を走査する(ステップ1308)。制御部60は、走査が終了したと判断したら処理を終了する(ステップ1310)。
【0093】
図19は、レチクルチャック7とウエハチャック6を洗浄する場合の露光装置100の構成を示す概略断面図である。図19において、図1と同一の部材には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0094】
図19においては、レーザー光は、各チャック7及び6に1°以上45°以下の入射角度で照射される。20はレーザー導入窓、23は折り曲げミラーであり、それぞれはレチクル2の洗浄に使用されるものを転用することができる。同様にして、20aはレーザー窓、23aは偏向ミラーであり、それぞれはウエハチャック6の洗浄に用いられる。
【0095】
チャック7及び6は微粒子Pの挟み込みが問題となる。そのため、チャック表面は、通常接触面積を減らすため、接触部がピン形状になっている。ピンの先端に微粒子Pが付着すると微粒子Pをレチクル2又はウエハ1との間に挟み込むことになる。レチクルチャック7に微粒子Pが付着すると物体面が傾く。ウエハチャック6に微粒子Pが付着すると光学系の焦点深度に影響を及ぼす。しかし、ボトムに微粒子Pが付着しても問題はないのでレーザー光Lの入射方向を変更する必要はない。チャック洗浄を行う場合の他の構成要件、シーケンスに関しては、特願2006−331585を適用することもできる。
【0096】
図20は、レチクルステージ3とは別のステージ28でレチクル2を洗浄する露光装置100の構成を示す概略断面図である。図20において、図1と同一の部材には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。なお、図20は、レチクルロードロック室26、ウエハロードロック室15等の搬送系は省略している。ステージ28はレチクルステージ3とは異なる洗浄専用のステージである。レチクル2の洗浄はステージ28で行われる。この場合の変更手段は、図6乃至9においてレチクルステージ3がステージ28に置換される以外は同様である。
【0097】
上述の実施例は、EUV露光装置100内の洗浄対象にレーザー洗浄する場合を示したが、本発明はEUV露光装置内で洗浄しなくともよい。例えば、EUV露光装置とは全く独立したユニットを洗浄装置として使用してもよい。
【0098】
次に、図21及び図22を参照して、露光装置100を利用したデバイス製造方法の実施例を説明する。図21は、半導体デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、あるいは液晶パネルやCCD等)の製造を説明するためのフローチャートである。ステップ1(回路設計)では、半導体デバイスの回路設計を行う。ステップ2(レチクル製作)では、設計した回路パターンを形成したレチクル2を製作する。一方、ステップ3(ウエハ製造)では、シリコン等の材料を用いてウエハ1を製造する。ステップ4(ウエハプロセス)は、前工程と呼ばれ、レチクル2とウエハ1を用いてリソグラフィ技術によってウエハ1上に実際の回路を形成する。次のステップ5(組み立て)は後工程と呼ばれ、ステップ4によって作製されたウエハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ6(検査)では、ステップ5で作製された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これが出荷(ステップ7)される。
【0099】
図22は、図21のステップ4のウエハプロセスの詳細なフローチャートである。ステップ11(酸化)では、ウエハ1の表面を酸化させる。ステップ12(CVD)では、ウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ13(電極形成)では、ウエハ1上に電極を蒸着等によって形成する。ステップ14(イオン打ち込み)ではウエハ1にイオンを打ち込む。ステップ15(レジスト処理)ではウエハ1に感光材を塗布する。ステップ16(露光)では、露光装置100によってレチクルパターンをウエハ1に露光する。ステップ17(現像)では露光したウエハ1を現像する。ステップ18(エッチング)では、現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ19(レジスト剥離)では、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行うことによって、ウエハ1上に多重に回路パターンが形成される。本実施例の製造方法を用いれば、洗浄装置により転写不良が減少するので、従来よりも高品位なデバイス(半導体素子、LCD素子、撮像素子(CCDなど)、薄膜磁気ヘッドなど)を製造することができる。また、このように、露光装置100を使用するデバイス製造方法、並びに結果物(中間、最終生成物)としてのデバイスも本発明の一側面を構成する。
【0100】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の一実施例の露光装置の概略ブロック図である。
【図2】図1に示す露光装置の洗浄装置の部分拡大断面図である。
【図3】図2に示す洗浄装置の変形例の部分拡大断面図である。
【図4】図3に示すレチクルのパターン面の部分拡大断面図である。
【図5】図3に示す洗浄装置の効果を説明するためのグラフである。
【図6】図1に示す洗浄装置に適用可能な変更手段の一実施例の概略ブロック図である。
【図7】図6に示す変更手段の変形例の概略ブロック図である。
【図8】図6に示す変更手段の別の変形例の概略ブロック図である。
【図9】図6に示す変更手段の更に別の変形例の概略ブロック図である。
【図10】図1に示す露光装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】図10に示すステップ1100の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図12】図10に示すステップ1200の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図13】図10に示すステップ1300の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図14】図11に示す走査ステップ1110を説明するための概略平面図である。
【図15】図15(a)及び図15(b)は、それぞれ、垂直入射光と斜入射光の微粒子除去効果を説明するための概略断面図である。
【図16】真空度と微粒子の除去の効果を説明するためのグラフである。
【図17】斜入射光によりパターン面に形成された微粒子を除去する際の問題を説明するための概略断面図である。
【図18】図1に示すレチクルのパターン面に形成可能な様々なラインアンドスペースパターンを示す概略平面図である。
【図19】図1に示す露光装置の変形例の概略ブロック図である。
【図20】図10に示すステップ1200及び1300の露光装置を示す概略ブロック図である。
【図21】図1に示す露光装置を利用するデバイス製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図22】図21に示すステップ4の詳細なフローチャートである。
【符号の説明】
【0102】
1 ウエハ(基板)
2 レチクル(原版)
3 レチクルステージ
6 ウエハチャック
7 レチクルチャック
27 ウエハステージ
23−23b 入射角度可変ミラー
24 ビーム折り返しミラー
42 ビーム減衰器
20 パルスレーザー光源
40−40b レーザー走査部
41−41b fθレンズ
60 制御部
70a−70c 測定装置
100 露光装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空環境下に配置された原版のパターンを投影光学系を介して基板に露光すると共に、真空環境下でレーザー光を前記原版に照射することによって前記原版を洗浄する洗浄装置を有する露光装置において、
前記洗浄装置は、前記レーザー光を前記原版のパターンが形成された面に対して1°以上45°以下の範囲の角度で照射する照射手段を有し、
前記照射手段が、前記レーザー光の前記パターンが形成された面に対する入射角度を前記範囲内に維持した状態で、前記レーザー光を前記パターン面の法線周りの入射方向が互いに異なる複数の入射方向から入射させることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記露光装置は、前記原版を第1方向に駆動しながら、前記原版のパターンを前記基板に露光し、
前記互いに異なる複数の入射方向のうち第1の入射方向が、前記第1方向と平行であり、
前記互いに異なる複数の入射方向のうち前記第1の入射方向とは異なる第2の入射方向が、前記第1方向と垂直であることを特徴とする請求項1記載の露光装置。
【請求項3】
前記原版を洗浄する際の気圧が100Pa以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の露光装置。
【請求項4】
前記照射手段は、前記原版を支持すると共に前記原版を面内で回転可能なステージ、又は、前記原版を支持するステージから前記原版を取り出して異なる姿勢で前記ステージに装着するロボットハンドを有し、
前記照射手段は、前記原版のパターン面の法線に関する回転方向に前記原版を回転させることによって前記入射方向を切り換えることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項5】
前記照射手段は、前記レーザー光の光路に挿脱可能に構成された偏向素子を有し、
前記偏向素子の前記レーザー光の光路への挿脱を切り換えることにより、前記レーザー光の前記パターン面に対する入射方向を切り換えることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記照射手段は、前記レーザー光を分割するビームスプリッターを有しており、
前記ビームスプリッターで分割された複数の部分レーザー光を、互いに異なる入射方向から前記パターン面に入射させることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の露光装置。
【請求項7】
前記洗浄装置は、前記原版によって反射された前記レーザー光を減衰させる減衰器を更に有することを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一項記載の露光装置。
【請求項8】
前記照射手段が、前記パターン面の照射位置で反射された前記レーザー光を反射して、前記パターン面に対して1°以上45°以下の角度をなすように前記パターン面に入射させる反射ミラーを有することを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか一項記載の露光装置。
【請求項9】
真空環境下で原版のパターンを投影光学系を介して基板に露光する露光装置に使用され、真空環境下で前記原版を洗浄する洗浄装置において、
前記原版を洗浄するためのレーザー光を前記原版のパターンが形成された面に対して1°以上45°以下の範囲の角度で照射する照射手段を有し、
前記照射手段は、前記レーザー光の前記パターンに対する入射角度を前記範囲内に維持した状態で、前記レーザー光を前記パターン面の法線周りの入射方向が互いに異なる複数の入射方向から入射させることを特徴とする洗浄装置。
【請求項10】
真空環境下で原版のパターンを投影光学系を介して基板に露光する露光装置に使用され、真空環境下で前記原版を洗浄する洗浄方法において、
前記原版が配置された空間の真空度が100Pa以下であるかどうかを判断するステップと、
前記判断ステップが、前記真空度が100Pa以下であると判断した場合に、前記原版を洗浄するためのレーザー光を前記原版のパターンが形成された面に対して1°以上45°以下の範囲の角度で照射するステップと、
前記レーザー光で前記原版の前記パターンが形成された面を走査するステップと、
前記照射手段が、前記レーザー光の前記パターンに対する入射角度を前記範囲内に維持した状態で、前記レーザー光を前記パターン面の法線周りの入射方向が互いに異なる複数の入射方向から入射させるステップとを有することを特徴とする洗浄方法。
【請求項11】
請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載の露光装置を使用して基板を露光するステップと、
露光された基板を現像するステップとを有するステップと、
を有することを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項12】
真空環境下で原版チャックによって保持された原版のパターンを投影光学系を介して基板チャックによって保持された基板に露光すると共に、真空環境下で前記原版チャック及び前記基板チャックの少なくとも一方を洗浄する洗浄装置を有する露光装置において、
前記洗浄装置は、
前記原版を洗浄するためのレーザー光を前記原版のパターンが形成された面に対して1°以上45°以下の範囲の角度で前記原版に照射する照射手段と、
前記原版が配置された空間の真空度を測定する測定装置と、
前記測定装置が測定した前記真空度が100Pa以下であるかどうかを判断し、前記真空度が100Pa以下であると判断した場合に前記照射手段による前記レーザー光の照射を許容する制御部と、を有することを特徴とする露光装置。
【請求項1】
真空環境下に配置された原版のパターンを投影光学系を介して基板に露光すると共に、真空環境下でレーザー光を前記原版に照射することによって前記原版を洗浄する洗浄装置を有する露光装置において、
前記洗浄装置は、前記レーザー光を前記原版のパターンが形成された面に対して1°以上45°以下の範囲の角度で照射する照射手段を有し、
前記照射手段が、前記レーザー光の前記パターンが形成された面に対する入射角度を前記範囲内に維持した状態で、前記レーザー光を前記パターン面の法線周りの入射方向が互いに異なる複数の入射方向から入射させることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記露光装置は、前記原版を第1方向に駆動しながら、前記原版のパターンを前記基板に露光し、
前記互いに異なる複数の入射方向のうち第1の入射方向が、前記第1方向と平行であり、
前記互いに異なる複数の入射方向のうち前記第1の入射方向とは異なる第2の入射方向が、前記第1方向と垂直であることを特徴とする請求項1記載の露光装置。
【請求項3】
前記原版を洗浄する際の気圧が100Pa以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の露光装置。
【請求項4】
前記照射手段は、前記原版を支持すると共に前記原版を面内で回転可能なステージ、又は、前記原版を支持するステージから前記原版を取り出して異なる姿勢で前記ステージに装着するロボットハンドを有し、
前記照射手段は、前記原版のパターン面の法線に関する回転方向に前記原版を回転させることによって前記入射方向を切り換えることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項5】
前記照射手段は、前記レーザー光の光路に挿脱可能に構成された偏向素子を有し、
前記偏向素子の前記レーザー光の光路への挿脱を切り換えることにより、前記レーザー光の前記パターン面に対する入射方向を切り換えることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記照射手段は、前記レーザー光を分割するビームスプリッターを有しており、
前記ビームスプリッターで分割された複数の部分レーザー光を、互いに異なる入射方向から前記パターン面に入射させることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の露光装置。
【請求項7】
前記洗浄装置は、前記原版によって反射された前記レーザー光を減衰させる減衰器を更に有することを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一項記載の露光装置。
【請求項8】
前記照射手段が、前記パターン面の照射位置で反射された前記レーザー光を反射して、前記パターン面に対して1°以上45°以下の角度をなすように前記パターン面に入射させる反射ミラーを有することを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか一項記載の露光装置。
【請求項9】
真空環境下で原版のパターンを投影光学系を介して基板に露光する露光装置に使用され、真空環境下で前記原版を洗浄する洗浄装置において、
前記原版を洗浄するためのレーザー光を前記原版のパターンが形成された面に対して1°以上45°以下の範囲の角度で照射する照射手段を有し、
前記照射手段は、前記レーザー光の前記パターンに対する入射角度を前記範囲内に維持した状態で、前記レーザー光を前記パターン面の法線周りの入射方向が互いに異なる複数の入射方向から入射させることを特徴とする洗浄装置。
【請求項10】
真空環境下で原版のパターンを投影光学系を介して基板に露光する露光装置に使用され、真空環境下で前記原版を洗浄する洗浄方法において、
前記原版が配置された空間の真空度が100Pa以下であるかどうかを判断するステップと、
前記判断ステップが、前記真空度が100Pa以下であると判断した場合に、前記原版を洗浄するためのレーザー光を前記原版のパターンが形成された面に対して1°以上45°以下の範囲の角度で照射するステップと、
前記レーザー光で前記原版の前記パターンが形成された面を走査するステップと、
前記照射手段が、前記レーザー光の前記パターンに対する入射角度を前記範囲内に維持した状態で、前記レーザー光を前記パターン面の法線周りの入射方向が互いに異なる複数の入射方向から入射させるステップとを有することを特徴とする洗浄方法。
【請求項11】
請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載の露光装置を使用して基板を露光するステップと、
露光された基板を現像するステップとを有するステップと、
を有することを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項12】
真空環境下で原版チャックによって保持された原版のパターンを投影光学系を介して基板チャックによって保持された基板に露光すると共に、真空環境下で前記原版チャック及び前記基板チャックの少なくとも一方を洗浄する洗浄装置を有する露光装置において、
前記洗浄装置は、
前記原版を洗浄するためのレーザー光を前記原版のパターンが形成された面に対して1°以上45°以下の範囲の角度で前記原版に照射する照射手段と、
前記原版が配置された空間の真空度を測定する測定装置と、
前記測定装置が測定した前記真空度が100Pa以下であるかどうかを判断し、前記真空度が100Pa以下であると判断した場合に前記照射手段による前記レーザー光の照射を許容する制御部と、を有することを特徴とする露光装置。
【図6】
【図22】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
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【図3】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2008−300683(P2008−300683A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146024(P2007−146024)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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