説明

流体制御弁装置

【課題】高精度な駆動を長期に亘り維持可能な流体制御弁装置を提供する。
【解決手段】ハウジング20は、流体通路200および弁座部242を有している。弁部材30の当接部32は、軸部31の一端に設けられ、弁座部242から離間または当接することで流体通路200の流体の流れを許容または遮断する。可動コア40は、軸部31の他端に軸部31と同軸に設けられている。固定コア50は、筒部(第1筒部51、第2筒部52および第3筒部53)、および、軸部31の軸方向の途中と摺接可能で、かつ、弁部材30を軸方向に往復移動可能に支持するシール部37を有している。コイル60は、電力が供給されることにより可動コア40および固定コア50に磁気回路を形成することで可動コア40を弁部材30の開弁方向に吸引する。可動コア40は、軸方向の途中から両端へ向かうに従い外径が小さくなるよう形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁駆動の流体制御弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弁部材に取り付けられた可動コアを磁気吸引力により吸引することで弁部材を開弁する流体制御弁装置が知られている。特許文献1に開示された流体制御弁装置では、可動コアは、円筒状に形成され、弁部材の一端に設けられている。また、可動コアの径方向外側に設けられた固定コアは、弁部材を軸方向に往復移動可能に支持する支持部を有している。支持部は、弁部材の軸方向の途中と摺接可能である。また、可動コアの外壁と固定コアの内壁とのクリアランスを小さくするため、可動コアの外壁または固定コアの内壁の少なくとも一方にめっきが施されている。
【0003】
ところで、特許文献1の流体制御弁装置を例えば内燃機関に設置および固定する場合、内燃機関の運転時の振動に伴い流体制御弁装置全体が振動する。この振動が継続すると、弁部材と一体の可動コアが、支持部を支点とし、自転しながら回転軸が円を描くように振れる運動、すなわち歳差運動(「すりこぎ運動」ともいう)をすることがある。可動コアが歳差運動をするとき、可動コアの端部の外壁のうち一部(角部)のみが固定コアの内壁に摺接しながら移動する。このとき、可動コアと固定コアとの当接面積は小さいため、可動コアの外壁には大きな面圧が作用する。特に弁部材が閉弁しているときは、支持部と可動コアとの距離が開弁時よりも大きいため、可動コアの外壁にはより大きな面圧が作用することとなる。そのため、可動コアの外壁、または、当該外壁に施されためっきの局所的な摩耗が促進されるおそれがある。
【0004】
また、特許文献1の流体制御弁装置では、可動コアの外壁と固定コアの内壁とのクリアランスが小さく設定されているため、可動コアの作動等により生じた摩耗粉が前記クリアランスに詰まりやすい。摩耗粉がクリアランスに詰まると、可動コアの作動不良や放熱性の悪化を招くおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−340216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高精度な駆動を長期に亘り維持可能な流体制御弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、ハウジングと弁部材と可動コアと固定コアとコイルとを備えている。ハウジングは、流体が流れる流体通路を有し、当該流体通路の途中に弁座部を形成している。弁部材は、軸部および当接部を有する。当接部は、軸部の一端に設けられ、ハウジングの弁座部に当接可能である。弁部材は、当接部が弁座部から離間し開弁することで流体通路の流体の流れを許容し、当接部が弁座部に当接し閉弁することで流体通路の流体の流れを遮断する。可動コアは、弁部材の軸部の他端に軸部と同軸に設けられている。固定コアは、可動コアの径方向外側に設けられる筒部、および、弁部材の軸部の軸方向の途中と摺接可能で、かつ、弁部材を軸方向に往復移動可能に支持する支持部を有している。コイルは、固定コアの筒部の径方向外側に設けられ、電力が供給されることにより可動コアおよび固定コアに磁気回路を形成することで可動コアを弁部材の開弁方向に吸引する。
【0008】
そして、本発明では、可動コアは、軸方向の途中から両端へ向かうに従い外径が小さくなるよう形成されている。これにより、可動コアの外壁と固定コアの内壁との間に形成されるクリアランスを、可動コアの軸方向の途中から両端へ向かうに従い大きくすることができる。そのため、流体制御弁装置が例えば振動体に設置および固定される場合において、振動体の振動により可動コアが歳差運動をしたとしても、可動コアの外壁が固定コアの内壁に衝突あるいは当接することが抑制される。また、可動コアの歳差運動により仮に可動コアの外壁が固定コアの内壁に衝突あるいは当接したとしても、このときの可動コアと固定コアとの当接面積は大きいため可動コアの外壁に作用する面圧を小さくすることができる。これにより、可動コアの衝突時の衝撃音の発生を抑制することができるとともに、可動コアの外壁の局所的な摩耗を低減することができる。
【0009】
また、上述のように、可動コアの外壁と固定コアの内壁との間のクリアランスは、可動コアの軸方向の途中から両端へ向かうに従い大きくなるよう形成されている。そのため、可動コアの作動等により生じた摩耗粉が前記クリアランスに詰まることが抑制される。これにより、可動コアの作動不良や放熱性の悪化を抑制することができる。
したがって、流体制御弁装置の高精度な駆動を長期に亘り維持することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、可動コアは、弁部材の軸部に接続する底部を有する有底筒状に形成されている。すなわち、可動コアは、中央部がくり抜かれた形状に形成され、質量が低減されている。これにより、可動コアが固定コアに摺接しながら歳差運動をする場合の可動コアと固定コアとの間のPV値(可動コアが固定コアから受ける面圧Pと可動コアの回転速度Vとの積)を小さくすることができる。その結果、可動コアの外壁の摩耗を低減する効果をより高めることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、可動コアの外壁には、フッ素樹脂によるコーティング、または、めっきが施されている。これにより、可動コアの外壁の摩耗をより低減することができる。
また、フッ素樹脂によるコーティング、または、めっきの膜厚を適宜調整することにより、可動コアの外壁と固定コアの内壁との間のクリアランスを小さくできる。そのため、可動コアが固定コアに衝突した場合の衝撃音の発生をより抑制することができる。さらに、可動コアの径方向に作用するサイドフォース(磁気吸引力)を低減することができるため、可動コアの応答性を高めることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、可動コアまたは固定コアの一方は、他方側へ突出する突出部を有している。また、可動コアまたは固定コアの他方は、前記突出部を収容するとともに固定コアまたは可動コアの軸方向に延びるようにして形成される溝を有している。この構成では、前記突出部が前記溝に係止されることにより、可動コアが回転することが防止される。したがって、可動コアが固定コアに摺接しながら回転することに起因する可動コアの外壁の摩耗を防ぐことができる。
【0013】
請求項5に記載の発明では、ハウジングは、振動体に固定される被固定部を有している。前記被固定部は、可動コアの軸を含む仮想平面でハウジングを分断した場合の片側の領域に設けられている。つまり、ハウジングの被固定部が振動体に固定されたとき、流体制御弁装置は、可動コアの軸から所定の距離離れた特定の箇所を振動体によって片持ち支持された状態となる。この状態では、振動体の振動が流体制御弁装置に伝達したとき、流体制御弁装置が可動コアの軸方向に振動するため、可動コアが歳差運動することが抑制される。したがって、可動コアが固定コアに摺接しながら回転することに起因する可動コアの外壁の摩耗をより低減することができる。
【0014】
請求項6に記載の発明では、前記振動体は内燃機関である。本発明は、流体制御弁装置の具体的な固定先(設置箇所)を例示するものである。上述のように本発明では、可動コアが歳差運動し固定コアに摺接しながら回転することに起因する可動コアの外壁の摩耗を抑制可能である。よって、本発明は、内燃機関に設置する流体制御弁装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態による流体制御弁装置を示す断面図。
【図2】本発明の第1実施形態による流体制御弁装置の可動コアを示す断面図。
【図3】本発明の第1実施形態による流体制御弁装置の可動コア近傍を示す断面図であって、(A)は流体制御弁装置が振動していないときの図、(B)は流体制御弁装置が振動しているときの図。
【図4】(A)は本発明の第1実施形態による流体制御弁装置の第2ハウジングを示す平面図、(B)は(A)の矢印B方向から見た図。
【図5】(A)は本発明の第2実施形態による流体制御弁装置の可動コア近傍を示す断面図、(B)は(A)のB−B線断面図。
【図6】(A)は本発明の第3実施形態による流体制御弁装置の第2ハウジングを示す平面図、(B)は(A)の矢印B方向から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による流体制御弁装置、および、その一部を図1〜4に示す。
【0017】
流体制御弁装置10は、例えば車両の内燃機関(以下、「エンジン」という)に設置および固定される。流体制御弁装置10は、エンジンからの排気が流れる排気通路に、流体としての空気を送り込むことにより、エンジン始動直後の排気中の未燃成分を燃焼させて排気の温度を上昇させ、排気浄化の触媒を素早く加熱して活性化させるのに用いられる。ここで、流体制御弁装置10は、排気通路に送り込む空気の断続を制御するよう作動する。なお、流体制御弁装置10が設置および固定されるエンジンは、運転中、振動する。よって、エンジンは、特許請求の範囲における「振動体」に対応する。
【0018】
図1に示すように、流体制御弁装置10は、ハウジング20、弁部材30、可動コア40、固定コア50およびコイル60等を備えている。
ハウジング20は、例えば金属により形成されている。ハウジング20は、第1ハウジング21と第2ハウジング22とからなる。第1ハウジング21は、有底筒状に形成され、略円筒状の筒部23、当該筒部23の一端を塞ぐ底部24、および、筒部23の底部24近傍から径方向外側へ延びる通路筒部25を有している。通路筒部25の内側の空間(以下、「内側空間」という)251は、筒部23の内側空間231に連通している。底部24には、内側空間231と、底部24の筒部23とは反対側と、を連通する穴241が形成されている。底部24の筒部23とは反対側の面の、穴241の外周には、環状の弁座部242が形成されている。
【0019】
第2ハウジング22は、図1および4に示すように、有底箱状に形成されている。第2ハウジング22は、筒状の側壁26、および、当該側壁26の一端を塞ぐ底部27を有している。第2ハウジング22は、側壁26の底部27とは反対側の端部開口が、第1ハウジング21の底部24側の面に当接するよう第1ハウジング21に接合している。第1ハウジング21と第2ハウジング22とは、ボルト101により締結されている。
【0020】
図4に示すように、第2ハウジング22は、本実施形態では、3つの被固定部28を有している。被固定部28は、側壁26または底部27から延びるようにして形成されている。3つの被固定部28は、図4(A)に示すように、可動コア40の軸Axを含む仮想平面PLで第2ハウジング22を分断した場合、一方(片側)の領域に1つ、他方の領域に2つとなるよう設けられている。被固定部28は、3つのボルト102により、エンジンの一部を構成する部材103に固定される。これにより、流体制御弁装置10はエンジンに設置および固定される。
【0021】
図1に示すように、第2ハウジング22の側壁26には、側壁26の内側空間261と側壁26の外側とを連通する穴262が形成されている。これにより、通路筒部25の筒部23とは反対側の端部開口252は、内側空間251、内側空間231、穴241および内側空間261を経由して穴262に連通している。
【0022】
第1ハウジング21の内側空間231には、後述する固定コア50が収容されている。これにより、ハウジング20と固定コア50との間に流体通路200が形成されている。流体通路200は、端部開口252、内側空間251、内側空間231の一部、穴241、内側空間261および穴262を含む。空気等の流体は、流体通路200の端部開口252と穴262との間を流通可能である。
また、第2ハウジング22の穴262には図示しない配管の一端が接続され、当該配管の他端は図示しない排気管に接続される。これにより、流体制御弁装置10の流体通路200は、配管内の通路を経由して排気通路に連通する。
【0023】
弁部材30は、軸部31および当接部32を有している。軸部31は、例えば金属により棒状に形成されている。軸部31は、大径部33、小径部34および加締め部35を軸方向にこの順で有している。小径部34は、大径部33より外径が小さく形成されている。これにより、小径部34と大径部33との間に段差部が形成されている。
【0024】
当接部32は、軸部31の一端、すなわち大径部33の小径部34とは反対側の端部に設けられている。当接部32は、円板部36およびシール部37からなる。円板部36は、軸部31の一端から径方向外側へ略円板状に拡がるよう軸部31と一体に形成されている。シール部37は、例えばゴムにより環状に形成され、円板部36の外縁部を覆うようにして設けられている。弁部材30は、当接部32のシール部37がハウジング20の弁座部242に当接可能なよう筒部23の内側に設けられている。
上記構成により、弁部材30は、当接部32(シール部37)が弁座部242から離間し開弁することで流体通路200の流体の流れを許容し、当接部32が弁座部242に当接し閉弁することで流体通路200の流体の流れを遮断することが可能である。
【0025】
なお、本実施形態では、第1ハウジング21と第2ハウジング22との間に逆止弁部70が設けられている。逆止弁部70は、板部材71、逆止弁72および規制部材73等を有している。板部材71は、第1ハウジング21と第2ハウジング22との間に挟み込まれるようにして設けられている。板部材71は、例えば金属により形成され、第2ハウジング22の側壁26の底部27とは反対側の開口を塞いでいる。板部材71は、自身を板厚方向に貫く穴75を中央部に有している。逆止弁72は、金属により薄板状に形成されている。逆止弁72は、板部材71の穴75を、底部27側から塞ぐようにして設けられている。規制部材73は、金属により板状に形成され、逆止弁72の底部27側に設けられている。逆止弁72および規制部材73は、外縁部の所定の箇所をボルト74により板部材71に固定されている。これにより、逆止弁72は、底部27とは反対側の圧力が高まると、変形することにより穴75を開く(開弁する)。一方、逆止弁72は、底部27側の圧力が高まると、穴75を塞ぐ(閉弁する)。規制部材73は、逆止弁72が開弁するときの過剰な変形を規制する。この構成により、逆止弁部70は、流体通路200において端部開口252から穴262側へ向かう流体の流れを許容し、穴262から端部開口252側へ向かう流体の流れを遮断する。
【0026】
可動コア40は、磁性材により形成されている。可動コア40は、本実施形態では、有底筒状に形成されている。すなわち、可動コア40は、中央部がくり抜かれた形状に形成され、質量が低減されている。可動コア40は、略円筒状の筒部41、および、当該筒部41の一端を塞ぐ底部42を有している。底部42には、可動コア40の軸を中心とする穴43が形成されている。
【0027】
可動コア40は、底部42の穴43に弁部材30の小径部34が挿通されるようにして、軸部31の他端に設けられている。ここで、可動コア40の底部42は、小径部34と大径部33との間の段差部に係止されている。可動コア40の当接部32とは反対側には、板部材11が設けられている。板部材11は、中央に形成された穴に弁部材30の加締め部35が挿通されるとともに、可動コア40の筒部41の底部42とは反対側の端面に当接している。この状態で加締め部35が加締められることにより、可動コア40は、大径部33(段差部)と板部材11との間に保持された状態となる。
【0028】
固定コア50は、第1筒部51、第2筒部52、第3筒部53および板部54等を有している。第1筒部51、第2筒部52、第3筒部53および板部54は、磁性材により形成されている。第2筒部52は、第1筒部51と第3筒部53とを接続している。第2筒部52は、第1筒部51および第3筒部53よりも肉厚が小さく形成されている。ここで、第1筒部51、第2筒部52および第3筒部53は、特許請求の範囲における「筒部」に対応している。
【0029】
板部54は、第3筒部53の第2筒部52とは反対側の端部を塞ぐとともに、当該端部から径方向外側へ拡がるようにして形成されている。板部54の中央には穴56が形成され、当該穴56に環状のシール部材57が設けられている。
弁部材30は、軸部31がシール部材57の内側に挿通されるようにして筒部23の内側に設けられている。シール部材57の内縁部は、弁部材30の大径部33の外壁に当接している。そのため、弁部材30は、大径部33がシール部材57と摺接しながら軸方向に往復移動可能である。弁部材30が往復移動するとき、固定コア50の板部54は、シール部材57を介して弁部材30を支持している。すなわち、板部54およびシール部材57は、特許請求の範囲における「支持部」に対応している。なお、シール部材57により、流体通路200内の異物等が第1筒部51、第2筒部52および第3筒部53の内側に侵入することが防止される。
【0030】
板部54と可動コア40との間には、シール部材57と当接するようにして樹脂製の筒部材12が設けられている。筒部材12の内側には、弁部材30の大径部33が挿通されている。また、板部54と可動コア40との間には、筒部材12と可動コア40とに当接するようにして付勢部材13が設けられている。付勢部材13は、コイルスプリングであり、内側に筒部材12および大径部33が挿通されている。付勢部材13は、可動コア40を弁部材30の閉弁方向に付勢している。
【0031】
コイル60は、樹脂製のボビン61と巻線62とからなり、固定コア50の第1筒部51、第2筒部52および第3筒部53の径方向外側に設けられている。固定コア50およびコイル60の径方向外側には、磁性部材により形成されたヨーク14が設けられている。ヨーク14は、コイル60を覆うようにして設けられ、端部が第1筒部51および板部54に当接している。
【0032】
コイル60には、図示しない電子制御ユニット(以下、「ECU」という)の指令により電力が供給される。巻線62に接続するターミナル15を経由してコイル60に電力が供給されると、コイル60の周囲に磁場が生じ、可動コア40、固定コア50およびヨーク14に磁気回路が形成されることで磁気吸引力が発生する。これにより、可動コア40は、付勢部材13の付勢力に抗して弁部材30の開弁方向に吸引される。可動コア40が弁部材30の開弁方向に吸引されて移動すると、弁部材30の当接部32が弁座部242から離間し開弁する。開弁時、コイル60への電力の供給が停止されると上記磁気吸引力が消滅し、可動コア40は、付勢部材13の付勢力により弁部材30の閉弁方向に移動する。これにより、弁部材30の当接部32が弁座部242に当接し閉弁する。このように、ECUは、コイル60へ供給する電力を調節することにより、弁部材30の開弁および閉弁に関する作動を制御可能である。
【0033】
なお、コイル60に電力が供給されていないとき、すなわち閉弁状態のとき、可動コア40は、概ね第1筒部51および第2筒部52の内側に位置している。また、コイル60に電力が供給されることで可動コア40が弁部材30の開弁方向に移動すると、可動コア40は、筒部材12に当接する。これにより、可動コア40および弁部材30の開弁方向への過剰な移動が規制される。よって、本実施形態では、閉弁状態のときの可動コア40と筒部材12との距離が弁部材30の最大リフト量である。
【0034】
次に、可動コア40について、より詳細に説明する。
図2に示すように、可動コア40は、外壁としての第1テーパ面44および第2テーパ面45を有している。第1テーパ面44は、可動コア40の軸方向の途中(図2に示す位置M)から底部42とは反対側へ向かうに従い軸Axに対し傾斜して近づくようテーパ状に形成されている。一方、第2テーパ面45は、可動コア40の軸方向の途中(位置M)から底部42側へ向かうに従い軸Axに対し傾斜して近づくようテーパ状に形成されている。すなわち、可動コア40は、軸方向の途中(位置M)から両端へ向かうに従い外径が小さくなるよう形成されている。つまり、可動コア40の外径は、第1テーパ面44と第2テーパ面45との境界に対応する位置Mが最大である。なお、本実施形態では、位置Mは、可動コア40の軸方向の両端面の略中間に設定されている。このように、可動コア40は、外形が略そろばん型に形成されている。
【0035】
上記構成の可動コア40を固定コア50の内側に配置すると、図3(A)に示すように、可動コア40の外壁と固定コア50の内壁との間に形成されるクリアランスは、可動コア40の軸方向の途中から両端へ向かうに従い大きくなる。すなわち、第1テーパ面44と固定コア50の内壁との間のクリアランスCL1は、可動コア40の軸方向の途中から板部材11側へ向かうに従い大きくなるよう形成される。また、第2テーパ面45と固定コア50の内壁との間のクリアランスCL2は、可動コア40の軸方向の途中から底部42側へ向かうに従い大きくなるよう形成される。
また、本実施形態では、可動コア40の外壁には、フッ素樹脂によるコーティングが所定の膜厚で施されている。
【0036】
次に、流体制御弁装置10がエンジンに設置および固定された状態での可動コア40の挙動について、図3に基づき説明する。
図3(A)はエンジンが運転していないときの可動コア40の状態を示し、図3(B)はエンジンが運転しているときの可動コア40の状態を示している。なお、図3(A)および(B)に示す状態のとき、コイル60には電力は供給されておらず、弁部材30は閉弁している。
【0037】
エンジンが運転していないとき、エンジンは振動しないため、エンジンに設置された流体制御弁装置10も振動しない。よって、このとき、可動コア40は、軸が固定コア50の軸と概ね一致し静止した状態である(図3(A)参照)。
エンジンが運転しているとき、エンジンが振動するため、エンジンに設置された流体制御弁装置10も振動する。この振動が継続すると、弁部材30と一体の可動コア40が、シール部57(「支持部」)を支点とし、自転しながら回転軸(軸Ax)が円を描くように振れる運動、すなわち歳差運動をする場合がある。本実施形態では、可動コア40は、外形が略そろばん型に形成されているため、歳差運動をするとき、第1テーパ面44(位置Mから一方の端部にかけて)および第2テーパ面45(位置Mから他方の端部にかけて)が固定コア50の内壁に摺接しながら移動する(図3(B)参照)。このとき、可動コア40と固定コア50との当接面積は比較的大きいため、可動コア40の外壁(第1テーパ面44および第2テーパ面45)に作用する面圧は小さい。
【0038】
以上説明したように、本実施形態では、可動コア40は、軸方向の途中(位置M)から両端へ向かうに従い外径が小さくなるよう形成されている。これにより、可動コア40の外壁(第1テーパ面44および第2テーパ面45)と固定コア50の内壁との間に形成されるクリアランス(CL1、CL2)を、可動コア40の軸方向の途中から両端へ向かうに従い大きくすることができる。そのため、流体制御弁装置10が例えば振動体としてのエンジンに設置および固定される場合において、エンジンの振動により可動コア40が歳差運動をしたとしても、可動コア40の外壁が固定コア50の内壁に衝突あるいは当接することが抑制される。また、可動コア40の歳差運動により仮に可動コア40の外壁が固定コア50の内壁に衝突あるいは当接したとしても、このときの可動コア40と固定コア50との当接面積は大きいため可動コア40の外壁に作用する面圧を小さくすることができる。これにより、可動コア40の衝突時の衝撃音の発生を抑制することができるとともに、可動コア40の外壁の局所的な摩耗を低減することができる。
【0039】
また、上述のように、可動コア40の外壁と固定コア50の内壁との間のクリアランス(CL1、CL2)は、可動コア40の軸方向の途中から両端へ向かうに従い大きくなるよう形成されている。そのため、可動コア40の作動等により生じた摩耗粉が前記クリアランス(CL1、CL2)に詰まることが抑制される。これにより、可動コア40の作動不良や放熱性の悪化を抑制することができる。
したがって、流体制御弁装置10の高精度な駆動を長期に亘り維持することができる。
【0040】
また、本実施形態では、可動コア40は、弁部材30の軸部31に接続する底部42を有する有底筒状に形成されている。すなわち、可動コア40は、中央部がくり抜かれた形状に形成され、質量が低減されている。これにより、可動コア40が固定コア50に摺接しながら歳差運動をする場合の可動コア40と固定コア50との間のPV値(可動コア40が固定コア50から受ける面圧Pと可動コア40の回転速度Vとの積)を小さくすることができる。その結果、可動コア40の外壁の摩耗を低減する効果をより高めることができる。
また、本実施形態では、可動コア40の外壁には、フッ素樹脂によるコーティングが施されている。これにより、可動コア40の外壁の摩耗をより低減することができる。
【0041】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による流体制御弁装置の一部を図5に示す。第2実施形態では、可動コアに設けられる板部材および固定コアの内壁の形状が第1実施形態と異なる。
【0042】
図5(A)および(B)に示すように、第2実施形態では、板部材11は、径方向外側へ突出する突出部16を有している。一方、固定コア50の第1筒部51の第2筒部とは反対側端部の内壁には、第1筒部51の軸方向に延びる溝55が形成されている。溝55は、板部材11の突出部16を収容可能に形成されている。すなわち、可動コア40は、固定コア50側へ突出する突出部16を有している。
【0043】
この構成では、可動コア40は、突出部16が溝55に収容された状態で、板部材11とともに軸方向へ往復移動可能である。また、突出部16が溝55に係止されることにより、可動コア40は、回転(自転)することが防止される。すなわち、突出部16および溝55は、可動コア40の回り止めとして機能する。
第2実施形態では、上述した構成以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0044】
以上説明したように、本実施形態では、可動コア40は、固定コア50側へ突出する突出部16を有している。また、固定コア50は、突出部16を収容するとともに固定コア50の軸方向に延びるようにして形成される溝55を有している。この構成では、突出部16が溝55に係止されることにより、可動コア40が回転することが防止される。したがって、可動コア40が固定コア50に摺接しながら回転することに起因する可動コア40の外壁の摩耗を防ぐことができる。
【0045】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による流体制御弁装置の一部を図6に示す。第3実施形態では、第2ハウジングの形状が第1実施形態と異なる。
【0046】
図6に示すように、第3実施形態では、第2ハウジング82は、2つの被固定部88を有している。2つの被固定部88は、図6(A)に示すように、可動コア40の軸Axを含む仮想平面PLで第2ハウジング82を分断した場合の片側の領域に設けられている。被固定部88は、2つのボルト104により、エンジンの一部を構成する部材105に固定される。これにより、流体制御弁装置はエンジンに設置および固定される。また、第2ハウジング82の穴862には図示しない配管の一端が接続され、当該配管の他端は図示しない排気管に接続される。
第3実施形態では、上述した構成以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0047】
以上説明したように、本実施形態では、第2ハウジング82は、エンジンに固定される被固定部88を2つ有している。被固定部88は、側壁86に形成されている。被固定部88は、可動コア40の軸Axを含む仮想平面PLで第2ハウジング82を分断した場合の片側の領域に設けられている。つまり、第2ハウジング82の被固定部88がエンジンに固定されたとき、流体制御弁装置は、可動コア40の軸Axから所定の距離離れた特定の箇所をエンジンによって片持ち支持された状態となる。この状態では、エンジンの振動が流体制御弁装置に伝達したとき、流体制御弁装置が可動コア40の軸方向に振動するため、可動コア40が歳差運動することが抑制される。したがって、可動コア40が固定コア50に摺接しながら回転することに起因する可動コア40の外壁の摩耗をより低減することができる。
【0048】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせた構成としてもよい。すなわち、可動コア側に突出部が形成され、固定コア側に前記突出部を収容する溝が形成され、第2ハウジングが2つの被固定部(可動コアの軸を含む仮想平面で第2ハウジングを分断した場合の片側の領域に配置)を有する構成である。
【0049】
また、本発明の他の実施形態では、固定コア側に突出部を形成し、可動コア側に前記突出部を収容する溝を形成することにより、可動コアの回り止めを構成することとしてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、可動コアの第1テーパ面および第2テーパ面の軸方向の長さは、それぞれどのように設定されていてもよい。また、可動コアの軸に対する第1テーパ面および第2テーパ面の傾斜角度も、それぞれどのように設定されていてもよい。また、可動コアは、第1テーパ面と第2テーパ面との境界部分を面取りした形状としてもよい。さらに、第1テーパ面および第2テーパ面は、可動コアの軸を含む仮想平面による断面の形状が、軸方向へ向かうに従い湾曲するよう形成されていてもよい。すなわち、可動コアは、外形が略樽型に形成されていてもよい。
【0050】
上述の実施形態では、可動コアが有底筒状に形成される例、すなわち中央部がくり抜かれたような形状に形成される例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、可動コアは、外形が上述のように略そろばん型または略樽型に形成されていれば、中実の略円筒状に形成されていてもよい。
また、上述の実施形態では、可動コアの外壁に、フッ素樹脂によるコーティングを施す例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、可動コアの外壁に、フッ素樹脂によるコーティングの代わりにめっきを施すこととしてもよい。
【0051】
また、フッ素樹脂によるコーティング、または、めっきの膜厚を適宜調整することにより、可動コアの外壁と固定コアの内壁との間のクリアランスをより小さくしてもよい。この場合、可動コアが固定コアに衝突した場合の衝撃音の発生をより抑制することができる。さらに、この場合、可動コアの径方向に作用するサイドフォース(磁気吸引力)を低減することができるため、可動コアの応答性を高めることができる。
また、本発明の他の実施形態では、可動コアの外壁には、フッ素樹脂によるコーティング、または、めっきのいずれも施さない構成としてもよい。
【0052】
本発明の流体制御弁装置は、エンジンに限らず、どのような部材、装置または場所に設置および固定してもよい。また、本発明の流体制御弁装置は、空気に限らず、他の流体(液体等)の流れを制御するのに用いてもよい。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 ・・・・流体制御弁装置
20 ・・・・ハウジング
242 ・・・弁座部
30 ・・・・弁部材
31 ・・・・軸部
32 ・・・・当接部
40 ・・・・可動コア
50 ・・・・固定コア
51 ・・・・第1筒部(筒部)
52 ・・・・第2筒部(筒部)
53 ・・・・第3筒部(筒部)
54 ・・・・板部(支持部)
57 ・・・・シール部(支持部)
60 ・・・・コイル
200 ・・・流体通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる流体通路を有し、当該流体通路の途中に弁座部を形成するハウジングと、
軸部、および、当該軸部の一端に設けられ前記弁座部に当接可能な当接部を有し、前記当接部が前記弁座部から離間し開弁することで前記流体通路の流体の流れを許容し、前記当接部が前記弁座部に当接し閉弁することで前記流体通路の流体の流れを遮断する弁部材と、
前記軸部の他端に前記軸部と同軸に設けられる可動コアと、
前記可動コアの径方向外側に設けられる筒部、および、前記軸部の軸方向の途中と摺接可能で、かつ、前記弁部材を軸方向に往復移動可能に支持する支持部を有する固定コアと、
前記筒部の径方向外側に設けられ、電力が供給されることにより前記可動コアおよび前記固定コアに磁気回路を形成することで前記可動コアを前記弁部材の開弁方向に吸引するコイルと、を備え、
前記可動コアは、軸方向の途中から両端へ向かうに従い外径が小さくなるよう形成されていることを特徴とする流体制御弁装置。
【請求項2】
前記可動コアは、前記軸部に接続する底部を有する有底筒状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体制御弁装置。
【請求項3】
前記可動コアの外壁には、フッ素樹脂によるコーティング、または、めっきが施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の流体制御弁装置。
【請求項4】
前記可動コアまたは前記固定コアの一方は、他方側へ突出する突出部を有し、
前記可動コアまたは前記固定コアの他方は、前記突出部を収容するとともに前記固定コアまたは前記可動コアの軸方向に延びるようにして形成される溝を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の流体制御弁装置。
【請求項5】
前記ハウジングは、振動体に固定される被固定部を有し、
前記被固定部は、前記可動コアの軸を含む仮想平面で前記ハウジングを分断した場合の片側の領域に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の流体制御弁装置。
【請求項6】
前記振動体は、内燃機関であることを特徴とする請求項5に記載の流体制御弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−197836(P2012−197836A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61418(P2011−61418)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】