説明

流体制御装置と圧力調節弁と制御方法

【課題】
高圧流体を大流量の条件下で調節弁を用いて急激に減圧すると、気体の膨張により流体自身の温度が急激に低下し、調節弁の下流部の温度が氷点下になる可能性がある。気体中に水分が含まれている場合、縮流部である弁孔の弁座−弁体−弁座間隙の流路表面で水分が凍りつき、弁体の動きを妨げ、流体制御に支障をきたすことがある。これにより、気体の脈動、調節弁の異常振動、弁座のエロージョン、騒音等を引き起こし、気体供給システムの健全な運転の維持は困難となる。流体圧力の制御機器では弁座付近の縮流部が氷結しても流体制御を可能とすることが重要である。
【解決手段】
制御対象の流体流路に沿って、遮断弁(2)と、調節弁(3)と、圧力センサー(4)とを一体化して設け、該圧力センサー(4)の検出圧力信号をもとに、遮断弁(2)と、調節弁(3)とを自動制御することを特徴とする流体制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プラントや液晶製造プラントなどを代表とする高圧ガス利用施設で用いられる。流体を利用する燃料電池の燃料供給装置や、分析装置や、医療機器にも使用される。特に、流体の圧力と流量の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体製造装置や液晶製造装置などに用いられる様々な流体、特に高圧流体は、まず減圧弁によって圧力が制御され、その後、流量計によって製造装置への流量が制御される。また、流量計は通常1MPa(パスカル)以下の低圧条件下で使用されるので、高圧ボンベを直接つないで流量計を高圧条件下で使用することはできない。
【0003】
通常、ガスボンベに収容されているガスの圧力は、そのまま利用するには圧力が高すぎる。また、ガス圧力は周囲温度、ガス残量等の要因により大きく変動する。そのため、ガスを利用するガス供給設備では、供給ガス圧力制御機器が利用されている。一般的に、この制御機器は圧力変化をダイヤフラムで検知し、ダイヤフラムの偏位に連動して動く調節弁を持ち、供給ガスの入口圧力が変動しても出口圧力が一定となるよう調節弁を作動させて、所定の出口ガス圧力を得るようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−318683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、ボンベ等に封入されている高圧流体は流体圧力制御機器内の自力式減圧弁によって減圧され、流体利用設備に供給される。しかし、従来使用されている自力式減圧弁では、上流側圧力の変化や流量変化によって調圧精度が低下する。特に流量変化が大きく大流量になると共にその傾向が著しく、調圧されるべき下流側圧力は数十パーセント変化してしまう。また、流体が気体の場合、大流量の条件下で急激に減圧すると、気体の膨張により流体自身の温度が急激に低下し、減圧弁の下流部の温度が氷点下になる可能性がある。特に、流路の最小断面積部となる弁座付近の縮流部で、流体温度が最低となる場合が多い。気体中に水分が含まれている場合、縮流部である弁孔の弁座−弁体−弁座間隙の流路表面で水分が凍りつき、弁体の動きを妨げる。自力式減圧弁の駆動力では弁体を動かすことができなくなり、流体制御に支障をきたすことがある。特に、樹脂製の弁座を用いている場合、弁座が凍りつくと、弁座に損傷を及ぼす可能性がある。弁座が損傷を受けると、弁座でのガス漏洩量が多くなり、その結果、下流側配管の圧力が上昇するので、下流の機器を危険に晒すことになる。自力式減圧弁に遮断機能が備わっていないことも一つの問題である。また、制御しようとする気体が液化しやすい条件の場合、減圧弁縮流部の低温領域で気体が液化する場合が多い。これにより、気体の脈動、減圧弁の異常振動、弁座のエロージョン、騒音等を引き起こし、気体供給システムの健全な運転の維持は困難となる。従来、このような低温により引き起こされる問題に対して、弁の外表面にヒーターを設置し、温度制御装置を介して加熱する等の処置が取られてきた。大流量用の場合、弁が非常に大型になり高価になると共に、低温対策のためにヒーターや温度制御装置を用意しなければならないという経済的な問題もある。さらに、従来半導体製造装置用に使用される自力式減圧弁の構造においては、同目的の遮断弁の構造に比して、流路とならないむだな空間が多く、ガス置換特性が悪く残留成分が残り易い、反応生成物やパーティクル等を捕獲し易い等の問題がある。
【0005】
流体圧力制御機器では、上流側圧力の変化や流量変化に対して下流圧力を設定圧力の通りに一定に維持する、制御対象の流体流路の最小断面積部となる弁座付近の縮流部を氷結させない、例え弁座付近の縮流部で氷結が起きても制御不能に陥らない、半導体製造装置用の用途にも十分に対応できる等の工夫が極めて重要である。それらを満足する流体圧力制御装置を安価で提供することも重要な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した、制御対象の流体流路に沿って、遮断弁と、調節弁と、圧力センサーとを設け、該圧力センサーの検出圧力信号をもとに、遮断弁と、調節弁とを自動制御することを特徴とする流体制御装置。
請求項2に記載した、請求項1で、遮断弁と、調節弁と、圧力センサーとを一体化した構造を特徴とする流体制御装置。
請求項3に記載した、制御対象の流体流路に沿って、遮断弁と、調節弁と、調節弁の下流に配置された温度センサーと、加熱ヒーターと、圧力センサーとを設け、該圧力センサーの検出圧力信号をもとに、遮断弁と、調節弁とを自動制御すると同時に、該温度センサーの信号をもとに加熱ヒーターの発熱量を自動制御して下流に配置された機器が結露温度以下の低温に晒されるのを防止することを特徴とする流体制御装置。
請求項4に記載した、請求項3で、遮断弁と、調節弁と、調節弁の下流に配置された温度センサーと、加熱ヒーターと、圧力センサーとを一体化した構造の流体制御装置。
請求項5に記載した、調節弁の上流あるいは下流、あるいは上流と下流にオリフィス機構を配したことを特徴とする流体制御装置。
【0007】
請求項6に記載した、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5いずれかの調節弁のベローズ部にパージおよびベント流路を設けることを特徴とする流体制御装置。
請求項7に記載した、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6のいずれかで、調節弁の下流側にフィルターを配置することを特徴とする流体制御装置。
請求項8に記載した、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7のいずれかで、圧力センサーが遮断弁と調節弁の間に追加配置されることを特徴とする流体制御装置。
請求項9に記載した、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8のいずれかで、調節弁駆動部に均等配置された複数の駆動軸付勢手段、ゴム製ダイヤフラムを備え、正作動多段式としたことを特徴とする流体制御装置。
請求項10に記載した、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8のいずれかで、調節弁駆動部に均等配置された複数の駆動軸付勢手段、ゴム製ダイヤフラムを備え、逆作動多段式としたことを特徴とする流体制御装置。
【0008】
請求項11に記載した、弁座と弁体との間隙流路を調整して流体を制御する調節弁において、弁座と弁体の間隙流路で形成される流路制御部を多段式とし、下流側の流路制御部の流路断面積が上流側の流路制御部の流路断面積よりも大きいことを特徴とする調節弁。
請求項12に記載した、弁座と弁体との間隙流路を調整して流体を制御する調節弁において、弁座とガスケットとを一体化した構造を特徴とする調節弁。
【0009】
請求項13に記載した、流体制御装置の流体流路に沿って設けた流量計の流量測定結果と、同様に流体制御装置の流体流路に沿って配置した圧力計の圧力測定結果とを、電気信号として前記流体制御装置のコントローラーにフィードバックすることを特徴とする流体の制御方法。
【0010】
請求項14に記載した、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9、請求項10のいずれかで、メタルダイヤフラムを用いた遮断弁と、ベローズシールを用いた調節弁とで構成したことにより、流体の滞留を最小にする構造を有し、なおかつ、流体が接触する流路全面が鏡面研磨されていることを特徴とする流体制御装置。
【発明の効果】
【0011】
請求項1、2、3、4の発明によれば、流体圧力制御装置が電気機械式自動制御機構を備えることにより、一次側(流体供給側)の流体圧力や供給流体の流量の増減に依存しないで、二次側(流体需要側)の圧力を常に一定に保つことができる。また、制御装置において、圧力センサーを最上流側に配置すれば、流体需要側の圧力制御だけでなく、流体供給側の圧力制御も可能となる。さらに、制御装置の弁箱は一体型でもよいが、遮断弁と調節弁を備える弁箱と圧力センサーを備える流路に分割し、ガスケットを介して連結して使用してもよい。通常、圧力センサーの感圧部は圧力センサーの継手接続部よりも遠ざけて設計されているため、その内部流路は袋小路となっていることが多い。継手接続時に、ガスケット近傍の部材が歪んでその影響を受け易いからである。弁箱と圧力センサー流路を分離型とすれば、圧力センサーを圧力センサー流路に設置した後でも圧力センサーの校正は容易であり、また、圧力センサーを圧力センサー流路に設置したまま交換することが可能となる。これにより、圧力センサーの感圧部を圧力センサーの継手接続部に近づけて設計することができるため、内部流路の袋小路となる部分は最小となりガス置換特性が改善する。
【0012】
また、請求項1、2の発明によれば、遮断弁を調節弁の上流側に配置する場合、調節弁の上下流の差圧が遮断弁のものに比して高差圧となるため、調節弁が低温に晒されても、遮断弁は低温に晒されることがなく、流体供給システムにおいて流体遮断機能を健全に維持することができる。しかも、調節弁が低温に晒さらされても、自力式減圧弁と比較して強力な電気機械駆動力を持たせることにより、例え弁体が凍りついても容易に弁体を動かして流体を制御することが可能である。そのうえ、調節弁の弁座に金属製の弁座のみを用いれば、流量特性劣化と弁座部遮断時の流体漏れ量を最小限に保つことが可能である。
【0013】
請求項2、3の発明によれば、本発明の流体圧力の制御装置の下流部分がいったん低温状態に晒されても、熱電対等の温度センサーと電熱線等のヒーターによる温度調節機能を備えることにより、流体縮流部等の温度低下部を加熱して、低温状態での不具合を回避することができる。特に、下流に配置された機器を低温から守ることが可能になる。また、新たに温度制御装置を用意する必要がなく、経済的である。
【0014】
また、請求項2、4の発明によれば、流体制御装置が小型化でき、流体制御装置の設置場所の自由度が高まる。
【0015】
請求項5の発明によれば、調節弁の上下流にオリフィスを配置し、調節弁にかかる流体差圧を軽減してオリフィス部にも差圧を分配させる多段減圧機構を備えることにより、調節弁の流体縮流部における急激な圧力降下・温度降下を抑制し、流体縮流部での流体中の水分の凍結、流体の液化によるトラブルを回避することができる。
【0016】
請求項6の発明によれば、調節弁にベローズシールを用いる場合、その部分は流体の袋小路となるため、ガス置換特性が悪化する。ベローズシール部に、パージ(purge)およびベント(vent)流路を設けることにより、ガス置換特性(高速化、高純度化)を改善することができる。
【0017】
調節弁は弁体と弁孔の間隙面積を調節することによって流量を調節する。その構造上、どうしても微少な磨耗異物が発生する。請求項7の発明によれば、調節弁の下流にフィルターを配置することにより、調節弁等で発生する異物の流体需要側への流入を防止できる。
【0018】
請求項8の発明によれば、遮断弁と調節弁の間にも圧力センサー備えることにより、調節弁での正確な流量特性の測定が可能となり、また、本発明の流体圧力の制御機器の遮断弁と調節弁のいずれかの弁座部にリークが発生した場合、どちらの弁座部でリークが発生しているか同定可能になり、装置異常の自己診断手段として利用できる。また、高圧流体等はボンベによって供給されることが多く、ボンベに詰められた高圧流体の残圧監視手段としても使用可能である。
【0019】
請求項9の発明によれば、調節弁に正作動多段式の駆動部を備えることにより、駆動部形状がコンパクトになり、かつ、高出力で駆動部操作用の流体室の圧力変化を小さなヒステリシス差で調節弁の弁開度に変換でき、高圧流体の高精度な制御ができる。また、電源遮断あるいは駆動部操作流体圧力が消失した場合、弁体が全開となり、上流圧力を開放する場合に有効である。
【0020】
請求項10の発明によれば、調節弁に逆作動多段式の駆動部を備えることにより、駆動部形状がコンパクトになり、かつ、高出力で駆動部操作用の流体室の圧力変化を小さなヒステリシス差で調節弁の弁開度に変換でき、高圧流体の高精度な制御ができる。また、電源遮断あるいは駆動部操作流体圧力が消失した場合、弁体が全閉となり、上流圧力を遮断する場合に有効である。
【0021】
請求項11の発明によれば、調節弁の流路制御部が多段式となっているので、請求項3の発明と同様に、調節弁にかかる流体差圧を複数に分割し、一つ当たりの差圧を軽減させる多段減圧機構を備えているので、調節弁の流体縮流部における急激な圧力降下・温度降下を抑制し、流体縮流部での流体中の水分の凍結、流体の液化によるトラブルを回避することができる。
【0022】
請求項12の発明によれば、弁座とガスケットとを一体化しているので、小型で、気密性に優れた調節弁が実現できる。また、少なくとも弁体に接触する弁座の表面に高価で耐摩耗性の有るコバルト基合金(Co−Cr−W合金:例えばステライト(登録商標))を少量だけ溶接して用いることができ、ステンレス等の一般金属材料製、合成樹脂製の弁座を使用する場合に比して、弁座の劣化が少なく、調節弁の流量制御特性の劣化を少なくできる。
【0023】
請求項13の発明によれば、主に圧力制御を行い、流量計が予めコントローラーにて設定された値を超えた場合、流量を制限する、あるいは逆に、設定された値を下回った場合、流量を増やすというように、圧力制御と共に流量の制御がある程度可能となる。また、主に流量制御を行い、流体圧力が予めコントローラーにて設定された値を超えた場合、圧力が低下するように流量を制限する、あるいは逆に、設定された値を下回った場合、圧力が増加するように流量を増やすというように、流量制御と共に圧力に関してもある程度の制御が可能となる。
【0024】
請求項14の発明によれば、メタルダイヤフラムを用いた遮断弁と、ベローズシールを用いた調節弁とで構成したことにより、流体の滞留を最小にする構造を有し、なおかつ、流体が接触する流路全面が鏡面研磨されているので、ガス残留成分、反応生成物、パーティクル等が流路内に残らず、半導体製造装置用として最適な流体制御装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明はその趣旨をはずれない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
図1は第1の実施例である請求項2の流体制御装置の構成概念図である。制御対象の流体流路に沿って、遮断弁(2)と、調節弁(3)と、圧力センサー(4)とを一体化して設け、該圧力センサー(4)の圧力検出信号をもとに、遮断弁(2)と、調節弁(3)とをコントローラ(9)の指示により自動制御することを特徴とする。
【0027】
図1において、高圧ガスボンベ等に収容された高圧流体は流体流入口(1)から流体制御装置に流入して、遮断弁(2)、調節弁(3)、圧力センサー(4)各部の流路を経由して、所定の圧力に減圧されて、流体流出口(5)から流出する。流体の流路を理解しやすいように、流体流入口(1)、遮断弁(2)、調節弁(3)、圧力センサー(4)、流体流出口(5)の主要部は断面図で示している。
【0028】
所望の流体流出口(5)圧力はコントローラー(9)で初期設定する。まず、圧力センサー(4)が流体流出口(5)の圧力を測定してコントローラー(9)に測定値を伝達する。圧力センサー(4)の測定値と流体流出口(5)の圧力設定値との偏差に応じて、コントローラー(9)は電磁弁(7)と電気空気圧(以下電空と略記する)変換機(8)に、制御プログラムにより演算された電気制御信号を送出する。制御信号を受け取った電磁弁(7)により機械的に遮断弁(2)が開口され、次に電空変換機(8)で電気制御信号が空気圧変化に変換されて圧力調節弁駆動部(6)に入力され、調節弁(3)の弁体(3A)を機械的に上下に移動させ、流体流出口(5)で所望の圧力が得られるように、弁体(3A)と弁座(3B)との間隙がフィードバック制御により自動調節される。
【実施例2】
【0029】
図2は第2の実施例である請求項4の流体制御装置の構成概念図である。制御対象の流体流路に沿って、遮断弁(22)と、調節弁(23)と、調節弁の下流に配置された温度センサー(29)と、加熱ヒーター(28)と、圧力センサー(24)とを一体化して設け、該圧力センサー(24)の圧力検出信号をもとに、遮断弁(22)と、調節弁(23)とを自動制御すると同時に、該温度センサー(29)の信号をもとに加熱ヒーター(28)の発熱量を自動制御することを特徴とする。温度センサー(29)の温度検出点を流体の流路中に置いても良い。
図2は、図1に示す制御装置に温度センサー(29)と、加熱ヒーター(28)とを追加配置した構造を有す。調節弁近傍の温度を温度センサー(29)で計測して、調節弁の下流が結露温度以下の低温に晒されるのを防止するように、加熱ヒーター(28)の発熱量を自動制御する構造を有している。
【実施例3】
【0030】
図3は第3の実施例である請求項5の流体制御装置の動作を説明するための構成概念図である。調節弁の上流あるいは下流、あるいは上流下流にオリフィス機構を配したことを特徴とする。
図3に示すように、調節弁(33)の上下流にオリフィス(38、39)を配置し、調節弁(33)にかかる流体差圧を軽減してオリフィス部にも差圧を分配させる多段減圧機構を備えることにより、調節弁の流体縮流部における急激な圧力降下・温度降下を抑制している。
【実施例4】
【0031】
図4に、第4の実施例である請求項6の調節弁(43)のベローズ部(41)とベントおよびパージ流路(42)の断面を図示している。置換流体のベントおよびパージ口(44、45)を利用してベローズ部で停滞している流体を排気する。
調節弁にベローズシールを用いる場合、調節弁の弁体と弁座が形成する間隙を通り抜けて流入した流体の一部は袋小路になっているベローズ部で停滞するため、ガス置換特性が悪化する。この部分に、パージおよびベント流路を設けることにより、ガス置換特性を改善することができる。
【実施例5】
【0032】
図5に、第5の実施例である調節弁(53)の下流側にフィルター(58)を配置することを特徴とする請求項7の流体制御装置の概念図を示す。流体の流路を見易くする目的で主要部は断面図で示している。調節弁(53)で圧力が調節された流体はフィルター(58)で異物が除去されて流体流出口(55)から流体需要側に送り出される。
【実施例6】
【0033】
図6に、第6の実施例である圧力センサー(64B)が遮断弁(62)と調節弁(63)の間に追加配置されることを特徴とする請求項8の流体制御装置の概念図を示す。流体の流路を見易くする目的で主要部は断面図で示している。
遮断弁(62)と調節弁(63)との間にも圧力センサー(64B)を備え、調節弁(63)の上流の圧力を測定して、正確な流量特性の測定を可能とした。また、本発明の流体圧力の制御機器の遮断弁と調節弁のいずれかの弁座部にリークが発生した場合、どちらの弁座部でリークが発生しているか同定可能になり、装置異常の自己診断手段として利用できる。そのほか、高圧流体等はボンベによって供給されることが多く、ボンベに詰められた高圧流体の残圧監視手段としても圧力センサー(64B)は使用可能である。
【実施例7】
【0034】
図7に、第7の実施例である調節弁駆動部を正作動2段式としたことを特徴とする請求項9の流体制御装置の調節弁駆動部の断面図を示す。均等配置された複数の駆動軸付勢手段、ゴム製ダイヤフラム(72A、72B)、複数の制御空気室(73A、73B)で構成されている。本図では、空気圧を機械力に変換するダイヤフラムが2枚ある2段式調節弁駆動部を示すが、ダイヤフラムを3枚以上にしても良い。調節弁駆動部を多段式として、駆動部形状がコンパクトになり、かつ、高出力を実現できる。また、均等配置された複数の駆動軸付勢手段、ゴム製ダイヤフラムを備えることにより、流体室の圧力変化を小さなヒステリシス差で調節弁の弁開度に変換でき、高圧流体の高精度な制御ができる。
【0035】
電空変換器(図示せず)で生成された自動制御信号である空気が制御空気取り入れ口(71)を経由して制御空気室(73A、73B)を行き来して、ダイヤフラム(72A、72B)を空気圧により上下させる。それに伴い、ダイヤフラム(72A、72B)に固定されている調節弁駆動軸(75)が上下する。調節弁駆動軸は弁体(図示せず)と連結しているので、弁体と弁座(図示せず)との間隙が自動調節される。本実施例ではダイヤフラム(72A、72B)を空気圧により上下させているが、空気の代わりに、炭酸ガスや窒素ガス等の不活性ガスを使用してもよい。
【実施例8】
【0036】
図8に、第8の実施例である調節弁駆動部を逆作動2段式としたことを特徴とする請求項10の流体制御装置の調節弁駆動部の断面図を示す。均等配置された複数の駆動軸付勢手段、ゴム製ダイヤフラム(82A、82B)、複数の制御空気室(83A、83B)で構成されている。本図では説明を簡単にするために、空気圧を機械力に変換するダイヤフラムを2枚有す2段式調節弁駆動部を示すが、ダイヤフラムを3枚以上にしても良い。調節弁駆動部を多段式として、駆動部形状がコンパクトになり、かつ、高出力を実現できる。また、均等配置された複数の駆動軸付勢手段、ゴム製ダイヤフラムを備えることにより、流体室の圧力変化を小さなヒステリシス差で調節弁の弁開度に変換でき、高圧流体の高精度な制御ができる。
【0037】
電空変換器(図示せず)で生成された制御信号である空気が制御空気取り入れ口(81)を経由して制御空気室(83A、83B)を行き来して、ダイヤフラム(82A、82B)を空気圧により上下させる。それに伴い、ダイヤフラム(82A、82B)に固定されている調節弁駆動軸(85)が上下する。調節弁駆動軸(85)は弁体(図示せず)と連結しているので、弁体と弁座(図示せず)との間隙が自動調節される。空気の代わりに、炭酸ガスや窒素ガス等の不活性ガスを使用してもよい。
【実施例9】
【0038】
請求項11の流路制御部を2段式とした調節弁の実施例を以下に説明する。説明を簡単にするために調節弁の流路制御部を2段式とした調節弁の流路制御部の主要断面図を図9Aと図9Bに示すが、段数は3段以上でもよい。
【0039】
図9Aでは弁座保持具に弁座とガスケットが一体化(96)しているのに対して、図9Bではガスケットを一体化した構造の弁座保持具(96B)に合成樹脂あるいは金属性の弁座(97)が取り付けられている。その他の構造は図9Aと図9Bは同一である。
【0040】
流体流入口(91)から流入した流体は流体縮流部である第一段目流路制御部(G1)と第二段目流路制御部(G2)で減圧されて流体流出口(92)に流出する。第二段目流路制御部(G2)の流路断面積を第一段目流路制御部(G1)の流路断面積より大きくして、第一段目流路制御部(G1)でより大きく減圧して、第二段目流路制御部(G2)で急激に減圧しない工夫を施している。流体が気体の場合、減圧と共に気体の体積は膨張するので、特に、この構造は気体に対して有効である。
【0041】
流路制御部を一段式としたとき、流体縮流部とその前後で流体の流速と圧力と温度がどのように変化するかを図10Aで模式的に示す。流路制御部を三段式としたときは、流体縮流部とその前後で流体の流速と圧力と温度とは図10Bのように変化する。この図から、流路制御部の段数を多くすると、流体の流速と圧力と温度の急激な変化を防止できることが理解できる。
【0042】
本実施例で、請求項12の弁座とガスケットとを一体化(96)した調節弁を用いると、弁座に高価で耐摩耗性の有るステライト(登録商標)等のコバルト、クロム、タングステンなどからなる合金を少量だけ溶着して用いることができ、ステンレス等の一般金属材料製、合成樹脂製の弁座を使用する場合に比して、弁座の劣化が少なく、調節弁の流量制御特性の劣化を少なくできる。
【実施例10】
【0043】
流体制御装置の下流に設けた流量計(15)の流量測定結果と、前記流体制御装置の調節弁(13)の下流に配置した圧力計(14)の圧力測定結果とを、電気信号として前記流体制御装置のコントローラー(19)にフィードバックすることを特徴とする請求項13に記載した流体流量の制御方法を示す概念図を図11に示す。
【0044】
圧力計(14)の圧力測定結果をコントローラー(19)にフィードバックして圧力制御を行い、流体需要側に設置した流量計(15)で測定された流量が、予めコントローラー(19)にて設定された範囲から外れた場合、流量を監視しているコントローラー(19)が調節弁(13)の開度を調節して流量を制限、増加することが可能である。
【0045】
また、流量計(15)の流量測定結果をコントローラー(19)にフィードバックして流量制御を行い、流体圧力が予めコントローラー(19)にて設定された範囲から外れた場合、コントローラー(19)が調節弁(13)の開度を調節して、圧力に関してもある程度の制御が可能である。
【実施例11】
【0046】
請求項14に記載した、メタルダイヤフラムを用いた遮断弁と、ベローズシールを用いた調節弁とで構成したことにより、流体の滞留を最小にする構造を有し、なおかつ、流体が接触する流路全面が鏡面研磨されていることを特徴とする流体制御装置について、図6を用いて説明する。
【0047】
図6にベローズ上端部のガスケットシール部の断面図を示すように、流体の滞留を最小にする構造を有すベローズシールを用い、かつ流路全壁面を鏡面研磨仕上げしている。鏡面研磨後の面粗度は中心線平均粗さが0.1μm以下であることが望ましい。
【0048】
流体が接触する流路全面が流体の滞留を最小にする構造を有し、かつ流路全壁面を鏡面研磨仕上げしているので、ガス残留成分、反応生成物、パーティクル等が流路内に残らず、半導体製造装置用として最適な流体制御装置を提供できる。
[窒素ガス供給システムの運転特性]
請求項1の制御装置を用いた窒素ガス供給システムの概念図を図12に示す。高圧窒素ガスボンベに収容された液体窒素が本発明の流体制御装置により減圧されて窒素ガスの需要側(本図では流量計側)に供給される。圧力調節弁の下流で、流量調節弁の上流にあたる流路には窒素ガスを一時的に蓄えるためのガスタンク(容量6.7リッター)が配置されている。
【0049】
図13に図12の窒素ガス供給システムの運転特性の実測値を示す。ガスタンクの下流に配置された流量調節弁の弁開度を急激に変化させると、ガスタンク圧力は急激に低下あるいは増加しようとする。それに対抗して、ガスタンク圧力の変化を抑制して一定に保つように本発明の流体制御装置が作動する。また、どの流量レンジでもガスタンク圧力がほぼ一定に保たれているのが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1の実施例である流体制御装置の構成概念図
【図2】第2の実施例である流体制御装置の構成概念図
【図3】第3の実施例である流体制御装置の構成概念図
【図4】調節弁のベローズ部に設けたパージおよびベント部近傍の断面図
【図5】調節弁下流側にフィルターを配置することを特徴とする流体制御装置の構成概念図
【図6】圧力センサーが遮断弁と調節弁の間に追加配置されたことを特徴とする流体制御装置の構成概念図
【図7】調節弁駆動部を正作動多段式としたことを特徴とする流体制御装置の構成概念図
【図8】調節弁駆動部を逆作動多段式としたことを特徴とする流体制御装置の構成概念図
【図9A】2段式流路制御部を有する、弁座と弁座保持具とガスケットとを一体化した構造の調節弁
【図9B】2段式流路制御部を有する、弁座がガスケットを一体化した弁座保持具と独立した構造の調節弁
【図10A】流路制御部が1段構造の調節弁の圧力、温度、流量変化を示す模式図
【図10B】流路制御部が3段構造の調節弁の圧力、温度、流量変化を示す模式図
【図11】請求項11に記載した流体流量の制御方法を示す概念図
【図12】本発明の流体制御装置を用いた窒素ガス供給システムの概念図
【図13】本発明の流体制御装置を用いた窒素ガス供給システムの運転特性(実測値)
【符号の説明】
【0051】
1、21、31、51、61、91……………………流体流入口
2、12、22、32、52、62 …………………遮断弁
3、13、23、33、43、53、63 …………調節弁
3A、23A、33A …………………………………弁体
3B、23B、33B …………………………………弁座
4、14、24、34、54、64A、64B………圧力センサー
5、25、35、55、65、92……………………流体流出口
6、26、36、46、56、66、70、80 …調節弁駆動部
7、17 …………………………………………………電磁弁
8、18 …………………………………………………電空変換器
9、19 …………………………………………………コントローラー
15 ………………………………………………………流量計
28 ………………………………………………………加熱ヒーター
29 ………………………………………………………温度センサー
38、39 ………………………………………………オリフィス
41 ………………………………………………………ベローズ
42 ………………………………………………………ベントおよびパージ流路
44、45 ………………………………………………ベントおよびパージ口
47 ………………………………………………………ボンネット
58 ………………………………………………………フィルター
71、81 ………………………………………………制御空気取り入れ口
72A、72B、82A、82B ……………………ダイヤフラム
73A、73B、83A、83B ……………………制御空気室
74A、74B、84A、84B ……………………通気孔
75、85 ………………………………………………調節弁駆動軸
96 …………………………弁座とガスケットが一体化した構造の弁座保持具
96B ………………………弁座が弁座保持具から独立した構造のガスケット一体形弁座保持具
97 ………………………………………………………弁座
98 ………………………………………………………弁体
G1 ………………………………………………………第一段目流路制御部
G2 ………………………………………………………第二段目流路制御部
S ………………………………………………………ボンネットとベローズの間の間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象の流体流路に沿って、遮断弁と、調節弁と、圧力センサーとを設け、該圧力センサーの検出圧力信号をもとに、遮断弁と、調節弁とを自動制御することを特徴とする流体制御装置。
【請求項2】
請求項1で、遮断弁と、調節弁と、圧力センサーとを一体化した構造を特徴とする流体制御装置。
【請求項3】
制御対象の流体流路に沿って、遮断弁と、調節弁と、調節弁の下流に配置された温度センサーと、加熱ヒーターと、圧力センサーとを設け、該圧力センサーの検出圧力信号をもとに、遮断弁と、調節弁とを自動制御すると同時に、該温度センサーの信号をもとに加熱ヒーターの発熱量を自動制御して下流に配置された機器が結露温度以下の低温に晒されるのを防止することを特徴とする流体制御装置。
【請求項4】
請求項3で、遮断弁と、調節弁と、調節弁の下流に配置された温度センサーと、加熱ヒーターと、圧力センサーとを一体化した構造の流体制御装置。
【請求項5】
調節弁の上流あるいは下流、あるいは上流と下流にオリフィス機構を配したことを特徴とする流体制御装置。
【請求項6】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5いずれかの調節弁のベローズ部にパージおよびベント流路を設けることを特徴とする流体制御装置。
【請求項7】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6のいずれかで、調節弁の下流側にフィルターを配置することを特徴とする流体制御装置。
【請求項8】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7のいずれかで、圧力センサーが遮断弁と調節弁の間に追加配置されることを特徴とする流体制御装置。
【請求項9】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8のいずれかで、調節弁駆動部に均等配置された複数の駆動軸付勢手段、ゴム製ダイヤフラムを備え、正作動多段式としたことを特徴とする流体制御装置。
【請求項10】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8のいずれかで、調節弁駆動部に均等配置された複数の駆動軸付勢手段、ゴム製ダイヤフラムを備え、逆作動多段式としたことを特徴とする流体制御装置。
【請求項11】
弁座と弁体との間隙流路を調整して流体を制御する調節弁において、弁座と弁体の間隙流路で形成される流路制御部を多段式とし、下流側の流路制御部の流路断面積が上流側の流路制御部の流路断面積よりも大きいことを特徴とする調節弁。
【請求項12】
弁座と弁体との間隙流路を調整して流体を制御する調節弁において、弁座とガスケットとを一体化した構造を特徴とする調節弁。
【請求項13】
流体制御装置の流体流路に沿って設けた流量計の流量測定結果と、同様に流体制御装置の流体流路に沿って配置した圧力計の圧力測定結果とを、電気信号として前記流体制御装置のコントローラーにフィードバックすることを特徴とする流体の制御方法。
【請求項14】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9、請求項10のいずれかで、メタルダイヤフラムを用いた遮断弁と、ベローズシールを用いた調節弁とで構成したことにより、流体の滞留を最小にする構造を有し、なおかつ、流体が接触する流路全面が鏡面研磨されていることを特徴とする流体制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−133829(P2007−133829A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328878(P2005−328878)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(504429987)株式会社ハムレット・モトヤマ・ジャパン (7)
【Fターム(参考)】