説明

流体噴射装置の調整方法及び流体噴射装置の製造方法

【課題】バンディングの影響を排し、適切に駆動電圧を調整できるようにする。
【解決手段】第1指令階調値による第1バンディングテストパターンと第2指令階調値による第2バンディングテストパターンに基づいてバンディングの発生度合いの少ない方の指令階調値である最適指令階調値を特定することと、第1電圧変化量でヘッドを駆動したときの最適指令階調値による第1濃度取得用パターンと、第2電圧変化量でヘッドを駆動したときの最適指令階調値による第2濃度取得用パターンと、を形成することと、第1濃度取得用パターンの濃度と第2濃度取得用パターンの濃度とを測定することと、測定した第1濃度取得用パターンの濃度と第2濃度取得用パターンの濃度とに基づいて、目標濃度に対応するヘッドの電圧変化量を求め、ヘッドに印加される電圧変化量を調整することと、を含む流体噴射装置の調整方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置の調整方法及び流体噴射装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタに固定された複数のヘッドの下に媒体を搬送させ、ヘッドから流体を噴射することによって印刷を行うラインヘッド型のプリンタが開発されている。
このようなプリンタで用いられるヘッドは、ヘッド毎に最適な駆動波形及び駆動電圧が異なり、これらはヘッド毎に調整する必要がある。ヘッド毎に最適な駆動波形及び駆動電圧の設定方法としては、特許文献1に示すような方法がある。また特許文献2に示すような方法におり、濃度補正処理を行う方法もある。
【0003】
ところが、これらの手法によってもヘッド毎の出力のばらつきが大きい場合には、適切に駆動電圧等を調整しきれない場合があった。このような問題を解決するための一手法として、複数の駆動電圧を印加したときにおけるテストパターンの濃度を求め、これらのテストパターンが基準の濃度となるように駆動電圧を調整することで、複数のヘッドが出力する濃度をほぼ均一にする方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−240127号公報
【特許文献2】特会2006−264069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スジ状の濃度むら(バンディング)が発生している場合には、適切にその濃度を取得することが困難な場合がある。よって、バンディングが最も発生していない状況下で濃度を取得して駆動電圧を調整することが望ましい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、バンディングの影響を排し、適切に駆動電圧を調整できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
印加される電圧変化量に応じた大きさの流体を噴射するヘッドを有し、指令階調値に応じた濃度の画像を形成する流体噴射装置の調整方法であって、
前記ヘッドから前記流体を噴射して、第1指令階調値による第1バンディングテストパターンと第2指令階調値による第2バンディングテストパターンとを形成することと、
前記第1バンディングテストパターンと前記第2バンディングテストパターンに基づいてバンディングの発生度合いの少ない方の指令階調値である最適指令階調値を特定することと、
第1電圧変化量で前記ヘッドを駆動したときの前記最適指令階調値による第1濃度取得用パターンと、第2電圧変化量で前記ヘッドを駆動したときの最適指令階調値による第2濃度取得用パターンと、を形成することと、
前記第1濃度取得用パターンの濃度と前記第2濃度取得用パターンの濃度とを測定することと、
測定した前記第1濃度取得用パターンの濃度と前記第2濃度取得用パターンの濃度とに基づいて、目標濃度に対応する前記ヘッドの電圧変化量を求め、前記ヘッドに印加される電圧変化量を調整することと、
を含む流体噴射装置の調整方法である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】用語の説明図である。
【図2】印刷システム100の構成を示すブロック図である。
【図3】プリンタ1の搬送処理とドット形成処理を説明するための斜視図である。
【図4】ヘッドユニット40における複数のヘッドの配列の説明図である。
【図5】ヘッドの構造を説明する図である。
【図6】駆動信号を説明する図である。
【図7】ヘッド配置とドット形成の様子の説明図である。
【図8】プリンタドライバによる処理の説明図である。
【図9】本実施形態におけるプリンタ1の調整方法を説明するフローチャートである。
【図10】指令階調値決定処理のフローチャートである。
【図11】複数の指令階調値でバンディングテストパターンが印刷されたときの様子を説明する図である。
【図12】インク色毎の各指令階調値に対応するバンディング指数を示す図である。
【図13】本実施形態における駆動電圧設定処理について説明するためのフローチャートである。
【図14】第1濃度取得用パターンと第2濃度取得用パターンが形成された様子を示す図である。
【図15】求められた各ヘッドの各インク色についての駆動電圧毎の平均濃度を示す表である。
【図16】各インク色の基準濃度を示す表である。
【図17】求められた一次式の係数a、bを示す表である。
【図18】各ヘッドのインク色毎の適正駆動電圧を示す表である。
【図19】各ヘッドの適正駆動電圧を示す表である。
【図20】複数のサイズのドットを形成可能なときの駆動信号の一例を示す図である。
【図21】経過時間と濃度との関係を示すグラフである。
【図22】図22Aは、理想的にドットが形成されたときの様子の説明図であり、濃度むらが発生したときの説明図であり、図22Bは、濃度むらが発生したときの説明図であり、図22Cは、濃度むらの発生が抑制された様子を示す図である。
【図23】補正値取得処理の流れを示す図である。
【図24】補正用パターンCPの説明図である。
【図25】指令階調値がSa、Sb、ScのサブパターンCSPについてラスタライン毎の算出濃度を示すグラフである。
【図26】図26Aは、第iラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbを算出する手順についての説明図であり、図26Bは、第jラスタラインについて指令階調値Sbを補正知るための濃度補正値Hbを算出する手順についての説明図である。
【図27】メモリ63に記憶された補正値テーブルを示す図である。
【図28】ユーザ下でプリンタドライバが行う印刷処理のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
印加される電圧変化量に応じた大きさの流体を噴射するヘッドを有し、指令階調値に応じた濃度の画像を形成する流体噴射装置の調整方法であって、
前記ヘッドから前記流体を噴射して、第1指令階調値による第1バンディングテストパターンと第2指令階調値による第2バンディングテストパターンとを形成することと、
前記第1バンディングテストパターンと前記第2バンディングテストパターンに基づいてバンディングの発生度合いの少ない方の指令階調値である最適指令階調値を特定することと、
第1電圧変化量で前記ヘッドを駆動したときの前記最適指令階調値による第1濃度取得用パターンと、第2電圧変化量で前記ヘッドを駆動したときの最適指令階調値による第2濃度取得用パターンと、を形成することと、
前記第1濃度取得用パターンの濃度と前記第2濃度取得用パターンの濃度とを測定することと、
測定した前記第1濃度取得用パターンの濃度と前記第2濃度取得用パターンの濃度とに基づいて、目標濃度に対応する前記ヘッドの電圧変化量を求め、前記ヘッドに印加される電圧変化量を調整することと、
を含む流体噴射装置の調整方法。
このようにすることで、バンディングの影響を排し、適切に駆動電圧を調整できるようにすることができる。
【0011】
かかる流体噴射装置の調整方法であって、前記第1指令階調値による第1バンディングテストパターンと前記第2指令階調値による第2バンディングテストパターンとを複数のヘッドで形成して、それぞれの平均値を用いて前記バンディングの発生度合いの少ない方の指令階調値である最適指令階調値を特定することが望ましい。
このようにすることによって、より正確に最適指令階調値を特定することができる。
【0012】
また、前記第1指令階調値による第1バンディングテストパターンと前記第2指令階調値による第2バンディングテストパターンは1つのヘッドにより形成されることとしてもよい。
このようにすることによって、バンディングテストパターンを形成するための流体の使用量を少なくすることができる。
【0013】
また、前記第1指令階調値による第1バンディングテストパターンと前記第2指令階調値による第2バンディングテストパターンの他に、さらに複数の指令階調値によるバンディングテストパターンを形成し、最もバンディングの発生度合いの少ない指令階調値である最適指令階調値を特定することが望ましい。
このようにすることによって、より適切な最適指令階調値を特定することができる。
【0014】
また、前記第1バンディングテストパターンと前記第2バンディングテストパターンの読み取りデータに視覚周波数感度関数を含む式を適用し求められた指標値に基づいて、前記最適指令階調値を特定することが望ましい。
このようにすることによって、適切に最適指令階調値を特定することができる。
【0015】
また、前記電圧変化量は、ヘッドに印加される駆動信号に含まれる駆動パルスの振幅であることが望ましい。
このようにすることによって、ヘッドに印加される電圧を調整することができる。
【0016】
また、前記媒体の搬送方向に並ぶ画素からなる画素列毎の濃度補正を行うための補正用パターンを前記媒体に形成することと、前記補正用パターンに基づいて、前記画素列毎の濃度を補正するための濃度補正値を求めることと、を、さらに含み、前記濃度補正値は、形成された前記補正用パターンの濃度が前記画素列毎に測定され、測定された前記画素列毎の濃度に基づいて求められることが望ましい。
このようにすることによって、濃度補正を行ってバンディングの発生を抑制することができる。
【0017】
印加される電圧変化量に応じた大きさの流体を噴射するヘッドを有し、指令階調値に応じた濃度の画像を形成する流体噴射装置の調整方法であって、
前記ヘッドから前記流体を噴射して、第1指令階調値による第1バンディングテストパターンと第2指令階調値による第2バンディングテストパターンとを形成することと、
前記第1バンディングテストパターンと前記第2バンディングテストパターンに基づいてバンディングの発生度合いの少ない方の指令階調値である最適指令階調値を特定することと、
第1電圧変化量で前記ヘッドを駆動したときの前記最適指令階調値による第1濃度取得用パターンと、第2電圧変化量で前記ヘッドを駆動したときの最適指令階調値による第2濃度取得用パターンと、を形成することと、
前記第1濃度取得用パターンの濃度と前記第2濃度取得用パターンの濃度とを測定することと、
測定した前記第1濃度取得用パターンの濃度と前記第2濃度取得用パターンの濃度とに基づいて、目標濃度に対応する前記ヘッドの電圧変化量を求め、前記ヘッドに印加される電圧変化量を調整することと、
を含む流体噴射装置の製造方法。
このようにすることで、バンディングの影響を排し、適切に駆動電圧を調整した流体噴射装置を提供することができるようになる。
【0018】
===実施形態===
<用語の説明>
まず、本実施形態を説明する際に用いられる用語の意味を説明する。
図1は、用語の説明図である。
【0019】
「印刷画像」とは、用紙上に印刷された画像である。インクジェットプリンタの印刷画像は、用紙上に形成された無数のドットから構成されている。
「ドットライン」とは、ヘッドと用紙とが相対移動する方向(移動方向)に並ぶドットの列である。後述の実施形態のようなラインプリンタの場合、「ドットライン」は、用紙の搬送方向に並ぶドットの列を意味する。一方、キャリッジに搭載されたヘッドによって印刷するシリアルプリンタの場合、「ドットライン」は、キャリッジの移動方向に並ぶドットの列を意味する。移動方向と垂直な方向に多数のドットラインが並ぶことによって、印刷画像が構成されることになる。図に示すように、n番目の位置にあるドットラインのことを「第nドットライン」と呼ぶ。
【0020】
「画像データ」とは、2次元画像を示すデータである。後述する実施形態では、256階調の画像データや、2階調の画像データや、4階調の画像データなどがある。また、画像データは、後述する印刷解像度へ変換前の画像データを指すことも、変換後の画像データを指すこともある。
【0021】
「印刷画像データ」とは、画像を用紙に印刷するときに用いられる画像データである。プリンタが2階調でドットの形成を制御する場合、2階調の印刷画像データは、各画素におけるドットの有無を示すことになる。また、プリンタが4階調でドットの形成(大ドット・中ドット・小ドット・ドット無し)を制御する場合、4階調の印刷画像データは、印刷画像を構成するドットの形成状態を示すことになる。
【0022】
「読取画像データ」とは、スキャナによって読み取られた画像データである。
【0023】
「画素」とは、画像を構成する最小単位である。この画素が2次元的に配置されることによって画像が構成される。
【0024】
「画素列」とは、画像データ上において所定方向に並ぶ画素の列である。図に示すように、n番目の画素列のことを「第n画素列」と呼ぶ。
【0025】
「画素データ」とは、画素の階調値を示すデータである。後述する実施形態において、ハーフトーン処理前であれば256階調などの多階調のデータを示す。また、ハーフトーン処理後の2階調の印刷画像データの場合、各画素データは、1ビットデータになり、ある画素のドットの有無を示すことになる。また、ハーフトーン処理後の4階調の印刷画像データの場合、各画素データは、2ビットデータになり、ある画素のドット形成状態(大ドット・中ドット・小ドット・ドット無し)を示すことになる。
【0026】
「画素領域」とは、画像データ上の画素に対応した用紙上の領域である。例えば、印刷画像データの解像度が360×360dpiの場合、「画素領域」は、1辺が1/360インチの正方形状の領域になり、用紙上の画素である。
【0027】
「列領域」とは、画素列に対応した用紙上の領域であり、用紙上の画素列である。例えば、印刷画像データの解像度が360×360dpiの場合、列領域は、1/360インチ幅の細長い領域になる。「列領域」は、印刷画像データ上の画素列に対応した用紙上の領域を意味する場合もあるし、読取画像データ上の画素列に対応した用紙上の領域を意味する場合もある。図中の右下には、前者の場合の列領域が示されている。前者の場合の「列領域」は、ドットラインの形成目標位置でもある。正確に列領域にドットラインが形成される場合、そのドットラインはラスタラインに相当する。後者の場合の「列領域」は、読取画像データ上の画素列が読み取られた用紙上の測定位置(測定範囲)でもあり、言い換えると、画素列の示す画像(画像片)が存在する用紙上の位置でもある。図に示すように、n番目の位置にある列領域のことを「第n列領域」と呼ぶ。第n列領域は第nドットラインの形成目標位置になる。
【0028】
「画像片」とは、画像の一部分を意味する。画像データ上において、ある画素列の示す画像は、画像データの示す画像の「画像片」になる。また、印刷画像において、あるラスタラインによって表される画像は、印刷画像の「画像片」になる。また、印刷画像において、ある列領域での発色によって表される画像も、印刷画像の「画像片」に該当する。
【0029】
ところで、図1の右下には、画素領域とドットとの位置関係が示されている。ヘッドの製造誤差の影響によって第2ドットラインが第2列領域からズレた結果、第2列領域の濃度が淡くなる。また、第4列領域では、ヘッドの製造誤差の影響によってドットが小さくなった結果、第4列領域の濃度が淡くなる。このような濃度むらや濃度むら補正方法を説明する必要があるため、本実施形態では、「ドットライン」、「画素列」、「列領域」等の意味や関係を上記の内容に沿って説明している。
但し、「画像データ」や「画素」等の一般的な用語の意味は、上記の説明だけでなく、通常の技術常識に沿って適宜解釈して良い。
【0030】
また、以下の説明において、階調値が高いときに濃度が高く、階調値が低いときに濃度が低いものとして説明を行う。また、説明中、濃度が高い場合は明度が低い場合に対応する。
【0031】
<印刷システムについて>
図2は、印刷システム100の構成を示すブロック図である。本実施形態の印刷システム100は、図2に示すように、プリンタ1と、コンピュータ110と、スキャナ120とを有するシステムである。
【0032】
プリンタ1は、流体としてのインクを媒体に噴射して該媒体に画像を形成(印刷)する流体噴射装置であり、本実施形態ではカラーインクジェットプリンタである。プリンタ1は、用紙、布、フィルムシート等の複数種の媒体に画像を印刷することが可能である。なおプリンタ1の構成については後述する。
【0033】
コンピュータ110は、インターフェース111と、CPU112と、メモリ113を有する。インターフェース111は、プリンタ1及びスキャナ120との間でデータの受け渡しを行う。CPU112は、コンピュータ110の全体的な制御を行うものであり、当該コンピュータ110にインストールされた各種プログラムを実行する。メモリ113は、各種のプログラムや各種のデータを記憶する。コンピュータ110にインストールされたプログラムの中には、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換するためのプリンタドライバや、スキャナ120を制御するためのスキャナドライバがある。そしてコンピュータ110は、プリンタドライバによって生成された印刷データをプリンタ1に出力する。
【0034】
スキャナ120は、スキャナコントローラ125と、読取キャリッジ121とを有する。スキャナコントローラ125は、インターフェース122、CPU123、及びメモリ124を有する。インターフェース122は、コンピュータ110との間で通信を行う。CPU123は、スキャナ120の全体的な制御を行う。例えば読取キャリッジ121を制御する。メモリ124は、コンピュータプログラム等を記憶する。読取キャリッジ121は、例えばR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)に対応する不図示の3つのセンサ(CCDなど)を有する。
【0035】
以上の構成により、スキャナ120は、不図示の原稿台に置かれた原稿に光を照射し、その反射光を読取キャリッジ121の各センサにより検出し、前記原稿の画像を読み取って、当該画像の色情報を取得する。そして、インターフェース122を介してコンピュータ110のスキャナドライバに向けて画像の色情報を示すデータ(読取データ)を送信する。
【0036】
<プリンタの構成>
図3は、プリンタ1の搬送処理とドット形成処理を説明するための斜視図である。ここでは、図2のブロック図も参照しつつプリンタの構成について説明する。
【0037】
プリンタ1は、搬送ユニット20、ヘッドユニット40、検出器群50、及びコントローラ60を有する。コントローラ60は、コンピュータ110と接続するためのインターフェース61、演算装置であるCPU62、記憶部に相当するメモリ63、及び、各ユニットを制御するためのユニット制御回路64を含む。
【0038】
外部装置であるコンピュータ110から印刷データを受信したプリンタ1は、コントローラ60によって各ユニット(搬送ユニット20、ヘッドユニット40)を制御する。コントローラ60は、コンピュータ110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、用紙に画像を印刷する。プリンタ1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラ60に出力する。コントローラ60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0039】
搬送ユニット20は、媒体(例えば、用紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット20は、上流側ローラ22A及び下流側ローラ22Bと、ベルト24とを有する。不図示の搬送モータが回転すると、上流側ローラ22A及び下流側ローラ22Bが回転し、ベルト24が回転する。給紙された用紙Sは、ベルト24によって、印刷可能な領域(ヘッドと対向する領域)まで搬送される。ベルト24が用紙Sを搬送することによって、用紙Sがヘッドユニット40に対して搬送方向に移動する。印刷可能な領域を通過した用紙Sは、ベルト24によって外部へ排紙される。なお、搬送中の用紙Sは、ベルト24に静電吸着又はバキューム吸着されている。
【0040】
ヘッドユニット40は、用紙Sにインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット40は、搬送中の用紙Sに対してインクを吐出することによって、用紙Sにドットを形成し、画像を用紙Sに印刷する。本実施形態のプリンタ1はラインプリンタであり、ヘッドユニット40は紙幅分のドットを一度に形成することができる。
【0041】
駆動信号生成回路70は、ピエゾ素子PZTに印加するための駆動信号を生成する。本実施形態では、第1ヘッド41A〜第6ヘッド41Fの6つのヘッドが用いられ、各ヘッドにはそれぞれ別の駆動信号が供給される。そして、1つの駆動信号は供給されるヘッドの全てのノズル列で共通の駆動信号として用いられる。
駆動信号生成回路70は、6つの駆動信号COM1〜COM6を生成して出力する。また、各駆動信号の駆動パルスはそれぞれ振幅などのパラメータの設定ができるようになっている。
【0042】
図4は、ヘッドユニット40における複数のヘッドの配列の説明図である。図に示すように、紙幅方向に沿って、複数のヘッド41が千鳥列状に並んでいる。尚、ここでは、下面からしか見ることができないノズル列を説明の容易のために上部から観察可能に図示している。
【0043】
各ヘッドには、不図示であるが、ブラックインクノズル列NK、シアンインクノズル列NC、マゼンタインクノズル列NM、及び、イエローインクノズル列NYが形成されている。各ノズル列は、インクを吐出するノズルを複数個(ここでは、360個)備えている。各ノズル列の複数のノズルは、紙幅方向に沿って、一定のノズルピッチ(ここでは、360dpi)で並んでいる。また、各ヘッド間におけるノズル同士は、端部の8つのノズル同士が搬送方向について重なるように、言い換えると、紙幅方向を軸とした座標について同じ座標になるように並んでいる。
【0044】
図5は、ヘッドの構造を説明する図である。本実施形態では、第1ヘッド41A〜第6ヘッド41Fが設けられている。これらの構造は、全てほぼ共通であるので、ここでは、第1ヘッド41Aの構造について説明する。図には、ノズルNz、ピエゾ素子PZT、インク供給路402、ノズル連通路404、及び、弾性板406が示されている。
【0045】
インク供給路402には、不図示のインクタンクからインク滴が供給される。そして、これらのインク滴等は、ノズル連通路404に供給される。ピエゾ素子PZTには、後述する駆動信号の駆動パルスが印加される。駆動パルスが印加されると、駆動パルスの信号に従ってピエゾ素子PZTが伸縮し、弾性板406を振動させる。そして、駆動パルスの振幅に対応する量のインク滴がノズルNzから吐出されるようになっている。
【0046】
図6は、駆動信号を説明する図である。本実施形態では、ヘッドが6個設けられているため、駆動信号も第1駆動信号COM1〜第6駆動信号COM6が出力される。尚、後述する駆動電圧設定処理において、第1駆動信号COM1〜第6駆動信号COM6における第2駆動パルスPS2の振幅が若干異なることになるものの、形状はほぼ同じであるので、ここでは第1駆動信号COM1を例に駆動信号の説明を行う。
【0047】
第1駆動信号COM1は、繰り返し周期Tごとに繰り返し生成される。繰り返し周期である期間Tは、用紙Sが1画素領域分搬送される間の期間に対応する。例えば、搬送方向の印刷解像度が360dpiの場合、期間Tは、用紙Sが1/360インチ搬送されるための期間に相当する。そして、印刷データに含まれる画素データに基づいて、期間Tに含まれる各区間の駆動パルスPS1又はPS2がピエゾ素子PZTに印加されることによって、1つの画素領域内にドットが形成されたり、ドットが形成されないようにすることができる。
【0048】
第1駆動信号COM1は、繰り返し周期における区間T1で生成される第1駆動パルスPS1と、第2駆動パルスPS3を有する。第1駆動パルスPS1は、微振動パルスであり、ノズルのインク面(インクメニスカス)を微振動させるための駆動パルスである。このパルスが印加される場合には、ノズルからインクは噴射されない。一方、第2駆動パルスPS2は、インク噴射用のパルスであり、ノズルからインクを噴射させるための駆動パルスである。このパルスが印加される場合には、ノズルからインクが噴射される。
【0049】
図には、第2駆動パルスPS2の振幅としてVhが示されている。この振幅を大きくすると、大きなサイズのインク滴が噴射されることになり、振幅を小さくすると小さなサイズのインク滴が噴射されることになる。よって、後述する手法により、この振幅を補正して設定することにより、所望のサイズのインク滴を噴射することができる。そして、所望の濃度の印刷を行うことができるようになっている。尚、以下の説明において、このようにインクを噴射するための駆動パルスの振幅Vhは「電圧変化量」に相当し、ここでは説明の容易のために駆動電圧Vhと呼ぶ。
【0050】
図7は、ヘッド配置とドット形成の様子の説明図である。ここでは、説明の簡略化のため、ヘッドユニット40における2個のヘッド(第1ヘッド41A、第2ヘッド41B)のみが示されている。また、説明の簡略化のため、各ヘッドにはブラックインクノズル列NKだけが設けられているものとする。以下の説明において、搬送方向のことを「x方向」と呼び、紙幅方向のことを「y方向」と呼ぶことがある。
【0051】
各ヘッドのブラックインクノズル列は、1/360インチ間隔で紙幅方向(y方向)に並ぶノズルから構成されている。各ノズルについて、図中の上から順にノズルの番号が付されている。
【0052】
なお、搬送中の用紙Sに対して各ノズルから断続的にインク滴が吐出されることによって、各ノズルは、用紙に対応するドットラインを形成する。例えば、ノズル♯1は第1ドットラインを用紙上に形成する。各ドットラインは、搬送方向(x方向)に沿って形成される。
【0053】
第1ヘッド41Aのブラックインクノズル列NKのノズル#353〜#360と、第2ヘッド41Bのブラックインクノズル列NKのノズル#1〜#8は、搬送方向について一致するように配置されている。そして、第1ヘッド41Aの#363〜#356は、第353ドットライン〜第356ドットラインを形成し、第2ヘッド41Aの#5〜#8は、第357ドットライン〜第360ドットラインを形成する。このようにして、重複するノズルについてドットラインを形成するノズルが予め決められている。つまり、継ぎ目ノズルにおいて、ドットを形成するノズルとドットを形成しないノズルが予め決められている。
【0054】
<プリンタドライバによる処理>
図8は、プリンタドライバによる処理の説明図である。以下、プリンタドライバによる処理について、図を参照しながら説明する。
【0055】
印刷画像データは、図に示すように、プリンタドライバによって解像度変換処理(S102)、色変換処理(S104)、ハーフトーン処理(S106)、及び、ラスタライズ処理(S108)が実行されることにより生成される。
【0056】
先ず、解像度変換処理では、アプリケーションプログラムの実行により得られたRGB画像データの解像度が、指定された画質に対応する印刷解像度に変換される。次に、色変換処理では、解像度が変換されたRGB画像データがCMYK画像データに変換される。ここで、CMYK画像データとは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及び、ブラック(K)の色別の画像データを意味する。そして、CMYK画像データを構成する複数の画素データは、それぞれ256段階の階調値で表される。この階調値は、RGB画像データに基づいて定められるものであり、以下、「指令階調値」ともいう。また、指令階調値をパーセンテージで表したものを「デューティ」とする。
【0057】
次に、ハーフトーン処理では、画像データを構成する画素データが示す多段階の階調値が、プリンタ1で表現可能な少段階のドット階調値に変換される。ここでは、画素データが示す256段階の階調値が、2段階のドット階調値に変換される。具体的には、ドット階調値[00]に対応するドットなし、ドット階調値[01]に対応するドットありの2段階に変換される。
【0058】
尚、複数のサイズのドットを形成可能な場合には、例えば、ドット階調値[00]に対応するドットなし、ドット階調値[01]に対応する小ドットの形成、ドット階調値[10]に対応する中ドットの形成、及び、ドット階調値[11]に対応する大ドットの形成の4段階に変換されることとしてもよい。
【0059】
その後、各ドットのサイズについてドット生成率が決められた上で、ディザ法等を利用して、プリンタ1がドットを分散して形成するように画素データが作成される。
【0060】
次に、ラスタライズ処理では、ハーフトーン処理で得られた画像データに関し、各ドットのデータが、プリンタ1に転送すべきデータ順に変更される。そして、ラスタライズ処理されたデータは、印刷データの一部として送信される。
【0061】
図9は、本実施形態におけるプリンタ1の調整方法を説明するフローチャートである。本実施形態では、まず最初に指令階調値決定処理(S202)が行われる。指令階調値決定処理は、後に、濃度取得用パターンを印刷するに際して用いられる指令階調値を決定するための処理である。
【0062】
図10は、指令階調値決定処理のフローチャートである。指令階調値決定処理では、最初に、複数の指令階調値でバンディングテストパターンが印刷される(S302)。
【0063】
図11は、複数の指令階調値でバンディングテストパターンが印刷されたときの様子を説明する概略図である。図には、図には、第1ヘッド41A〜第6ヘッド41Fが示されている。ここでも、ノズル列の位置が分かるように、本来上部からは視認できないノズル列を視認できるように示している。また、図には、バンディングテストパターンBTが示されている。
【0064】
バンディングテストパターンBTは、5つの指令階調値を用いて各インク色毎に形成される。図には、第1指令階調値D1〜第5指令階調値D5によって5枚の用紙にバンディングテストパターンBTが形成されていることが示されている。本実施形態では、第1指令階調値D1は、100%デューティに相当する指令階調値(255)である。また、第2指令階調値D2は、75%デューティに相当する指令階調値(191)である。また、第3指令階調値D3は、50%デューティに相当する指令階調値(128)である。また、第4指令階調値D4は、25%デューティに相当する指令階調値(64)である。また、第5指令階調値D5は、10%デューティに相当する指令階調値(26)である。
【0065】
図11には、スキャンされデータとして取り込まれる矩形領域として、K1〜K6、C1〜C6、M1〜M6、Y1〜Y6が示されている。符号のアルファベットが矩形領域のインク色を示すものであり、アルファベットの後に示された数字が、パターンを形成したヘッドの番号を示すものである。例えば、第1ノズル列41Aが形成したブラックのバンディングテストパターンの矩形領域には、K1の符号が付されている。
【0066】
バンディングテストパターンBTは、用紙Sが搬送方向に搬送させられつつ、最初にイエローインクノズル列NYからインクが噴射されることによりY1〜Y6を含むテストパターンが形成される。次に、マゼンタインクノズル列NMからインクが噴射されることによりM1〜M6を含むテストパターンが形成される。次に、シアンインクノズル列NCからインクが噴射されることによりC1〜C6を含むテストパターンが形成される。次に、ブラックインクノズル列NKからインクが噴射されることによりK1〜K6を含むテストパターンが形成される。
【0067】
次に、これらのバンディングテストパターンがスキャナ120によってスキャンされる(S304)。スキャンされた結果、各矩形領域の各座標に対応したRGB値が取得される。
【0068】
次に、得られた各座標のRGB値に基づいてバンディング指標値が求められる(S306)。バンディング指標値は、以下の式によって求められる。

バンディング指標値=5.80PBanding0.091−5.0
ここで、

具体的な視覚周波数感度関数VTFは、以下に示すDooleyのVTFを用いて求めることができる。

上式では、軸上の成分を抽出するフィルタを用いているが、適切な数値が得られる場合にはFcut_yは用いずに、

を用いることとしてもよい。
【0069】
上式において、fx及びfyは、各座標におけるL値である。すなわち、上記のようにスキャナで各座標毎のRGB値が得られているが、これらのRGB値は各座標毎にL空間に変換され、そのL値が用いられることになる。
【0070】
このようにすることによって、各矩形領域におけるバンディング指数を得ることができる。本実施形態では、バンディング指数の平均値がその指令階調値におけるバンディング指数とされる。例えば、ブラックKの第1指令階調値D1におけるバンディング指数は、第1指令階調値D1にて形成した矩形領域K1〜K6のバンディング指数の平均値である。
【0071】
図12は、インク色毎の各指令階調値に対応するバンディング指数を示す図である。尚、本図に示されるデータは一例であるため、使用される媒体によっては異なるバンディング指数が得られることがある。
【0072】
次に、最適な指令階調値が選択される(S308)。バンディング指数は、人間の視覚において、バンディングの目立ちやすさを示す指数である。すなわち、この指数が小さいほど、人間の目から見てバンディングが目立ちにくいといえる。そのため、本実施形態では、最適な指令階調値として、色毎に最も小さいバンディング指数値が選択されることになる。
【0073】
図12を参照すると、ブラックKでは第2指令階調値D2(デューティ75%)が最適な指令階調値となり、シアンCでは、第3指令階調値D3(デューティ50%)が最適な指令階調値となり、マゼンタMでは、第1指令階調値D1(デューティ100%)が最適な指令階調値となり、イエローYでは、第1指令階調値D1(デューティ100%)が最適な指令階調値となる。
【0074】
以上で指令階調値決定処理が完了となるが、このようにして選択されたインク色毎の最適な指令階調値は、次の駆動電圧設定処理(S204)において使用されることとなる。
【0075】
尚、ここでは、複数のヘッドでバンディングテストパターンBTを形成し、バンディング指標値の平均値を求めることにより対応するインク色のバンディング指標値としたが、1つのヘッドでバンディングテストパターンBTを形成してバンディング指標値を求めることとしてもよい。また、ここでは、5種類の指令階調値によりバンディングテストパターンBTを形成したが、これよりも多くの指令階調値でバンディングテストパターンBTを形成してもよいし、2つの指令階調値でバンディングテストパターンBTを形成してもよい。
【0076】
また、ここでは、バンディング指標値を用いて最適な指令階調値を求めることとしたが、バンディング指標値を用いず、調整者の視覚により、最もバンディングが生じていないバンディングテストパターンを識別し、対応する指令階調値を最適な指令階調値として特定してもよい。
【0077】
次に、駆動電圧設定処理(S204)を説明する。
図13は、本実施形態における駆動電圧設定処理について説明するためのフローチャートである。本実施形態では、第1ヘッド41A〜第6ヘッド41Fが用いられているが、説明の容易のために、用いられるデータに関しては、第1ヘッド41A〜第3ヘッド41Cの3つにヘッドの数を減らして説明を進める。
【0078】
まず、駆動電圧設定処理において、駆動電圧をVh1(ここでは、22V)に設定したときの第1濃度取得用パターンと、駆動電圧をVh2(ここでは、25V)に設定したときの第2濃度取得用パターンが形成される(S402)。
【0079】
図14は、第1濃度取得用パターンと第2濃度取得用パターンが形成された様子を示す図である。ここでも、各濃度取得用パターンにおいて、スキャンされデータとして取り込まれる矩形領域として、K1〜K6、C1〜C6、M1〜M6、Y1〜Y6が示されている。
【0080】
これらの濃度取得用パターンを形成するとき、前述の指令階調値決定処理において選択された最適な指令階調値が用いられる。すなわち、ブラックKについては、第2指令階調値D2(75%デューティ)となるように指令階調値が設定され、それぞれの濃度取得用パターンが形成される。また、シアンCについては、第3指令階調値D3(50%デューティ)となるように指令階調値が設定され、それぞれの濃度取得用パターンが形成される。また、マゼンタMについては、第1指令階調値D1(100%デューティ)となるように指令階調値が設定され、それぞれの濃度取得用パターンが形成される。また、イエローYについては、第1指令階調値D1(100%デューティ)となるように指令階調値が設定され、それぞれの濃度取得用パターンが形成される。
【0081】
このようにすることによって、インク色毎に指令階調値は最適なものが用いられ、駆動電圧をVh1(ここでは、22V)に設定したときにおけるテストパターンが1枚の用紙に印刷され、さらに、駆動電圧をVh2(ここでは25V)に設定したときにおけるテストパターンがもう一枚の用紙に印刷される。
【0082】
次に、印刷された濃度取得用パターンのスキャナによる読み取りが行われる(S404)。読み取りは、駆動電圧をVh1にしたときの第1濃度取得用パターンと、駆動電圧をVh2にしたときの第2濃度取得用パターンの2枚について行われる。そして、各矩形領域について、ヘッド毎及びインク色毎にRGB値が取得される。
【0083】
次に、駆動電圧毎、及び、インク色毎の平均濃度が求められる(S406)。
前述のように、スキャナ120がテストパターンを読み取ることによって、RGB値を得ることができていた。ここでは、YMCK色空間の濃度を取得する必要があるため、RGBからYMCKへの色変換処理を行うことになる。変換式は、以下に示すような一般的な変換式が用いられる。

Y=(1−B/255−Kf)/(1−Kf)*255
M=(1−G/255−Kf)/(1−Kf)*255
C=(1−R/255−Kf)/(1−Kf)*255
K=Kf*255
但し、Kf=Min(1−R/255,1−G/255,1−B/255)
Minは、括弧内の最小値を返す関数
【0084】
このようにすることで、各画素領域における256階調の濃度値を得ることができる。尚、これ以外の変換式が用いられることとしてもよい。
【0085】
このようにすることで、濃度として各画素領域におけるY値、M値、C値、K値が求められることになるが、各インク色の矩形領域については対応するインク色の濃度のみが参照されることになる。例えば、矩形領域K1では上式で求められたブラックKの濃度のみが参照され、イエローY、マゼンタM、及び、シアンMの濃度値は無視される。
【0086】
各画素領域における濃度が得られると、駆動電圧毎、及び、インク色毎の平均濃度が求められる。ここで平均濃度は、図8における破線で囲われた各矩形領域における平均の濃度である。本実施形態では、測色にスキャナ120を用いているため、画素領域単位での輝度値を得ることができているが、ここでは破線の矩形で囲われた矩形領域の平均値を求めることによって、得られる濃度値の信頼性を高めている。
【0087】
具体的には、例えば、駆動電圧Vhが22Vのときにおける矩形領域K1(第1ヘッド41Aによるブラック)の平均濃度が求められる。平均濃度は、K1内の全ての画素領域のブラックKの濃度の平均を求めることにより行われる。
【0088】
このような平均濃度の算出が、K1〜K3、C1〜C3、M1〜M3、Y1〜Y3のそれぞれについて、駆動電圧が22Vのときと25Vのときに関して行われる。
【0089】
図15は、求められた各ヘッドの各インク色についての駆動電圧毎の平均濃度を示す表である。図には、駆動電圧Vh1、Vh2に対する各ヘッドのインク色毎の平均濃度が示されている。ここでは、前述の通り、説明の容易のために第1ヘッド41A〜第3ヘッド41Cについて求められている。表を参照すると、駆動電圧が低いとき(Vh1)では駆動電圧が高いとき(Vh2)よりも濃度値が低くなっていることが示されている。
【0090】
次に、各ヘッドのインク色毎の適正駆動電圧が求められる(S408)。適正駆動電圧は、各ヘッドの各インク色について、基準となる濃度を出力するために必要な駆動電圧を示すものである。このような適正駆動電圧を求めるために、各インク色の基準濃度が予め求められている。基準濃度は、カラー印刷を行うに際し、各インク色の発色が考慮されバランスのよいカラー印刷を行うために要求される仕様に応じて予め決められるものである。
【0091】
図16は、各インク色の基準濃度を示す表である。このように、使用されるインク色毎に適切な基準濃度の値が決められている。プリンタ1では、このような基準濃度となる印刷を適切に行うことができることにより、所望のカラー印刷が実現できるような仕様になっている。
【0092】
基準濃度となるような駆動電圧を求めることによって適正駆動電圧を求めることができるが、ここでは、既に得られた2つの駆動電圧Vh1とVh2における濃度を線形補間し、この線形補間した濃度値から適正駆動電圧を求める。
【0093】
線形補間した線分の式は、一次式(y=ax+b)によって得られる。一次式の係数a、及び、bは、各駆動電圧Vh1、Vh2をxとしたときの各濃度をyとして代入したときの2つの1次方程式を連立させることにより求めることができる。
【0094】
図17は、求められた一次式の係数a、bを示す表である。表には、各インク色の各ヘッドの係数a及びbが示されている。この表によると、例えば、第1ヘッド41Aのインク色がブラックKについての一次式は、y=4.21x+5.03ということになる。
【0095】
次に、求められた一次式から、各バンドのインク色毎の適正駆動電圧が求められる。適正駆動電圧は、一次式のyに基準濃度値を代入してx値を求めることで得ることができる。たとえば、前述のように、インク色がブラックKのときの第1バンドの一次式は、y=4.21x+50.3であったので、yにブラックKの基準濃度80.39を代入してx値を求めると、適正駆動電圧23.85が得られる。同様にして、各インク色の各バンドの適正駆動電圧を求めることができる。
【0096】
図18は、各ヘッドのインク色毎の適正駆動電圧を示す表である。各ヘッドは個体差によって、同じ駆動電圧を印加したとしても異なる濃度を出力するため、このようにヘッド毎の適正駆動電圧も若干異なることとなる。
【0097】
次に、ヘッド毎の適正駆動電圧の平均値を求める。例えば第1ヘッドの場合、第1ヘッドのブラックKの適正駆動電圧23.85、シアンの適正駆動電圧23.57、マゼンタの適正駆動電圧23.18、及び、イエローの適正駆動電圧23.58の平均値を求めることになる。
図19は、各ヘッドの適正駆動電圧を示す表である。このようにして得られたヘッド毎の電圧がヘッド毎に設定される。各ヘッドについて、そのヘッドの全インク色の適正駆動電圧の平均値を駆動電圧に設定しているのは、ヘッド単位で駆動信号が供給されるからである。例えば、第1ヘッド41Aには、第1駆動信号COM1が供給され、この第1駆動信号COM1は、イエローインクノズル列NY、マゼンタインクノズル列NM、シアンインクノズル列NC、及び、ブラックインクノズル列NKに共通で使用される。そのため、これらのインク色の適正駆動電圧の平均を求めることで、いずれのインク色に対してもほぼ適切な駆動電圧となるようにして、ヘッド間の濃度差を減らしている。
【0098】
ところで、ここでは、形成されるドットのサイズは1つであったが、複数サイズのドットを形成できるようにして、各指令階調値に対応するバンディングテストパターン及び濃度取得用パターンを形成することとしてもよい。
【0099】
図20は、複数のサイズのドットを形成可能なときの駆動信号の一例を示す図である。ここでも、第1駆動信号COM1’〜第6駆動信号COM6’が出力され、各駆動信号は対応するヘッドに供給されるものとする。前述と同様に、駆動パルスの振幅は駆動信号間で若干異なるものの、各駆動信号の形状はほぼ同様であるので、第1駆動信号COM1’について説明を行う。
【0100】
第1駆動信号COM1’は、中ドットを形成するための第1駆動パルスPS1’と、インクメニスカスを微振動させるための第2駆動信号PS2’と、大ドットを形成するための第3駆動パルスPS3’と、小ドットを形成するための第4駆動パルスPS4’を含んでいる。そして、ノズルからインクを噴射させないときには、第2駆動パルスPS2’のみがピエゾ素子PZTに印加される。また、ノズルから小ドットを形成するためのインクを噴射するときには、第4駆動パルスPS4’のみがピエゾ素子PZTに印加される。また、ノズルから中ドットを形成するためのインクを噴射するときには、第1駆動パルスPS1’のみがピエゾ素子PZTに印加される。また、ノズルから大ドットを形成するためのインクを噴射するときには、第3駆動パルスPS3’がピエゾ素子PZTに印加される。
【0101】
図には、第1駆動パルスPS1’の駆動電圧Vhmと、第3駆動パルスPS3’の駆動電圧Vhlと、第4駆動パルスPS4’の駆動電圧Vhsとが示されているが、これらの大小関係は、Vhl>Vhm>Vhsとなっている。つまり、駆動電圧が大きいほど大きなドットを形成可能となっている。
【0102】
図21は、経過時間と濃度との関係を示すグラフである。本来、濃度を測色する際にはインクを十分に乾燥させた後に測色を行う必要がある。しかしながら、図に示すように、使用されるインクによっては、媒体にドットが形成されてから時間の経過と共に濃度が上昇する場合がある。インクを十分に乾燥させてから濃度の測色を行うこととしてもよいが、このようにすると、測色までに待ち時間を要することになる。
【0103】
よって、このような場合には、図に示されるような経過時間と濃度との関係を予め取得しておくこととしてもよい。そして、テストパターンが印刷されてから濃度が計測されるまでの時間と、計測された濃度と、に基づいて、本来計測されるべき濃度を取得することとしてもよい。
【0104】
このようにすることで、ヘッド間の濃度差を減らすことができるが、上述のようにヘッド毎の全インク色の適正駆動電圧の平均値をそのヘッドの適正電圧として設定しているため、極めて少ない量ではあるが、濃度差が生じる場合が起こりうる。このような濃度差はヘッド単位で生ずることから、搬送方向に並ぶ画素領域からなる列領域単位での濃度補正が行われれば、さらにヘッド間の濃度差を減らすことができる。以下に、搬送方向に並ぶ画素領域からなる列領域単位で濃度補正を行う方法について説明する。
【0105】
<濃度むらについて>
図22Aは、理想的にドットが形成されたときの様子の説明図である。理想的にドットが形成されるとは、画素領域の中心位置にインク滴が着弾し、そのインク滴が用紙S上に広がって、画素領域にドットが形成されることである。各ドットが各画素領域に正確に形成されると、ドットライン(搬送方向にドットが並んだドット列)が列領域に正確に形成される。
【0106】
図22Bは、濃度むらが発生したときの説明図である。2番目の列領域に形成されたドットラインは、ノズルから吐出されたインク滴の飛行方向のばらつきにより、3番目の列領域側に寄って形成されている。その結果、2番目の列領域は淡くなり、3列目の列領域は濃くなる。また、5番目の列領域に吐出されたインク滴のインク量は規定のインク量よりも少なく、5番目の列領域に形成されるドットが小さくなっている。その結果、5列目の列領域は淡くなる。
【0107】
このように濃淡の違うラスタラインからなる印刷画像を巨視的に見ると、搬送方向に沿う縞状の濃度むらが視認される。この濃度むらは、印刷画像の画質を低下させる原因となる。
【0108】
以上のような濃度むらを抑制するための方策としては、画像データの階調値(指令階調値)を補正することが考えられる。つまり、濃く(淡く)視認され易い列領域に対しては、淡く(濃く)形成されるように、その列領域を構成する単位領域に対応する画素の階調値を補正すればよい。このため、ラスタライン毎に画像データの階調値を補正する濃度補正値Hを算出することになる。この濃度補正値Hは、プリンタ1の濃度むら特性を反映した値である。
【0109】
図22Cは、濃度むらの発生が抑制された様子を示す図である。ラスタライン毎の濃度補正値Hが算出されていれば、ハーフトーン処理の実行に際してプリンタドライバによって、その濃度補正値Hに基づいてラスタライン毎に画素データの階調値を補正する処理が行われる。この補正処理により補正された階調値で各ドットラインが形成されると、対応するラスタラインの濃度が補正される結果、図22Cに示すように、印刷画像における濃度むらの発生が抑制されることになる。
【0110】
例えば、図22C中では、淡く視認される2番目と5番目の列領域のドット生成率が高くなり、濃く視認される3番目の列領域のドット生成率が低くなるように、各列領域に対応する画素の画素データの階調値が補正される。このように、各列領域のラスタラインのドット生成率が変更され、列領域の画像片の濃度が補正されて、印刷画像全体の濃度むらが抑制される。
【0111】
<濃度補正値Hの算出について>
次に、ラスタライン毎の濃度補正値Hを算出する処理(以下、補正値取得処理ともいう)について概説する。補正値取得処理は、例えば、プリンタ1の製造工場の検査ラインにおいて、補正値算出システムの下で行われる。補正値算出システムとは、プリンタ1の濃度むら特性に応じた濃度補正値Hを算出するためのシステムであり、上記の印刷システム100と同様の構成である。つまり、補正値算出システムは、プリンタ1、コンピュータ110、及び、スキャナ120(便宜上、印刷システム100の場合と同一の符号にて表記する)を有する。
【0112】
プリンタ1は、補正値取得処理の対象機器であり、該プリンタ1を用いて濃度むらがない画像を印刷するためには、前記補正値取得処理において該プリンタ1用の濃度補正値Hを算出することになる。検査ラインに置かれたコンピュータ110には、該コンピュータ110が補正値取得処理を実行するための補正値算出プログラムがインストールされている。
【0113】
<補正値取得処理について>
図23は、補正値取得処理の流れを示す図である。多色印刷が可能なプリンタ1を対象とする場合、各インク色についての補正値取得処理は同様の手順により実施される。以下の説明では、一のインク色(例えば、ブラック)についての補正値取得処理について説明する。
【0114】
先ず、コンピュータ110が印刷データをプリンタ1に送信し、プリンタ1が補正用パターンCPを用紙Sに形成する(S502)。
【0115】
図24は補正用パターンCPの説明図である。この補正用パターンCPは、図24に示すように、5種類の濃度のサブパターンCSPで形成される。
【0116】
各サブパターンCSPは、帯状パターンであり、搬送方向に沿うラスタラインが紙幅方向に複数並ぶことにより構成される。また、各サブパターンCSPは、それぞれ一定の階調値(指令階調値)の画像データから生成されたものであり、図24に示すように、左のサブパターンCSPから順に濃度が濃くなっている。具体的には、左から15%、30%、45%、60%。85%の濃度のサブパターンとなっている。以下、濃度15%のサブパターンCSPの指令階調値をSa、濃度30%のサブパターンCSPの指令階調値をSb、濃度45%のサブパターンCSPの指令階調値をSc、濃度60のサブパターンCSPの指令階調値をSd、そして、濃度85%のサブパターンCSPの指令階調値をSeと表記する。そして、例えば、指令階調値Saにて形成されたサブパターンCSPを、図22に示すように、CSP(1)と表記する。同様に、指令階調値Sb、Sc、Sd、Seにて形成されたサブパターンCSPを、それぞれCSP(2)、CSP(3)、CSP(4)、CSP(5)と表記する。
【0117】
次に、検査者は補正用パターンCPが形成された用紙Sをスキャナ120にセットする。そして、コンピュータ110は、スキャナ120に補正用パターンCPを読み取らせ、その結果を取得する(S504)。スキャナ120は、前述したようにR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)に対応する3つのセンサを有しており、補正用パターンCPに光を照射し、その反射光を各センサによって検出する。なお、コンピュータ110は、補正用パターンを読み取った画像データ上において、搬送方向に相当する方向に画素が並んだ画素列数と、補正用パターンを構成するラスタライン数(列領域数)が、同数になるように調整する。つまり、スキャナ120にて読み取った画素列と列領域を一対一で対応させる。そして、ある列領域と対応する画素列の各画素が示す読取階調値の平均値を、その列領域の読取階調値とする。
【0118】
次に、コンピュータ110は、スキャナ120によって取得された読取階調値に基づいて、各サブパターンCSPのラスタライン毎(換言すると列領域毎)の濃度を算出する(S506)。以下、読取階調値に基づいて算出された濃度のことを算出濃度ともいう。
【0119】
図25は、指令階調値がSa、Sb、ScのサブパターンCSPについてラスタライン毎の算出濃度を示すグラフである。図25の横軸は、ラスタラインの位置を示し、縦軸は、算出濃度の大きさを示している。図25に示すように、各サブパターンCSPは、それぞれ同一の指令階調値で形成されたにも関わらずラスタライン毎に濃淡が生じている。このラスタラインの濃淡差が、印刷画像の濃度むらの原因である。
【0120】
次に、コンピュータ110は、ラスタライン毎の濃度補正値Hを算出する(S508)。なお、濃度補正値Hは、指令階調毎に算出される。以下、指令階調Sa、Sb、Sc、Sd、Seについて算出された濃度補正値HのことをそれぞれHa、Hb、Hc、Hd、Heとする。濃度補正値Hの算出手順を説明するために、指令階調値SbのサブパターンCSP(2)のラスタライン毎の算出濃度が一定になるように指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbを算出する手順を例に挙げて説明する。当該手順では、例えば、指令階調値SbのサブパターンCSP(2)における全ラスタラインの算出濃度の平均値Dbtを、指令階調値Sbの目標濃度として定める。図25において、この目標濃度Dbtよりも算出濃度が淡い第iラスタラインでは、指令階調値Sbを濃くする方へ補正すれば良い。一方、目標濃度Dbtよりも算出濃度が濃い第jラスタラインでは、指令階調値Sbを淡くする方へ補正すればよい。
【0121】
図26Aは第iラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbを算出する手順についての説明図である。また図26Bは、第jラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbを算出する手順についての説明図である。図26A及び図26Bの横軸は指令階調値の大きさを示し、縦軸は算出濃度を示している。
【0122】
第iラスタラインの指令階調値Sbに対する濃度補正値Hbは、図26Aに示す指令階調値SbのサブパターンCSP(2)における第iラスタラインの算出濃度Db、及び、指令階調値ScのサブパターンCSP(3)における第iラスタラインの算出濃度Dc、に基づいて算出される。より具体的には、指令階調値SbのサブパターンCSP(2)では、第iラスタラインの算出濃度Dbが目標濃度Dbtよりも小さくなっている。換言すると、第iラスタラインの濃度は平均濃度よりも淡くなっている。仮に、第iラスタラインの算出濃度Dbが目標濃度Dbtと等しくなるように該第iラスタラインを形成したいのであれば、該第iラスタラインに対応する画素データの階調値、すなわち、指令階調値Sbを、図26Aに示すように、第iラスタラインにおける指令階調値及び算出濃度の対応関係(Sb,Db)、(Sc,Dc)から直線近似を用いて、下記式(1)により算出される目標指令階調値Sbtまで補正すればよい。
Sbt=Sb+(Sc−Sb)×{(Dbt−Db)/(Dc−Db)} (1)
【0123】
そして、指令階調値Sbと目標指令階調値Sbtから、下記式(2)により、第iラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hが求められる。
Hb=ΔS/Sb=(Sbt−Sb)/Sb (2)
【0124】
一方、第jラスタラインの指令階調値Sbに対する濃度補正値Hbは、図26Bに示す指令階調値SbのサブパターンCSP(2)における第jラスタラインの算出濃度Db、及び、指令階調値SaのサブパターンCSP(1)における第jラスタラインの算出濃度Da、に基づいて算出される。具体的には、指令階調値SbのサブパターンCSP(2)では、第jラスタラインの算出濃度Dbが目標濃度Dbtよりも大きくなっている。仮に、第jラスタラインの算出濃度Dbが目標濃度Dbtと等しくなるように該第jラスタラインを形成したいのであれば、該第jラスタラインの指令階調値Sbを、図26Bに示すように、第jラスタラインにおける指令階調値及び算出濃度の対応関係(Sa,Da)、(Sb,Db)から直線近似を用いて、下記式(3)により算出される目標指令階調値Sbtまで補正すればよい。
Sbt=Sb+(Sb−Sa)×{(Dbt−Db)/(Db−Da)} (3)
【0125】
そして、上記式(2)により、第jラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbが求められる。
【0126】
以上のようにして、コンピュータ110は、ラスタライン毎に、指令階調値Sbに対する濃度補正値Hbを算出する。同様に、指令階調値Sa、Sc、Sd、Seに対する濃度補正値Ha、Hc、Hd、Heを、それぞれラスタライン毎に算出する。また、他のインク色についても、ラスタライン毎に、指令階調値Sa〜Seの各々に対する濃度補正値Ha〜Heを算出する。
【0127】
その後、コンピュータ110は、濃度補正値Hのデータをプリンタ1に送信し、プリンタ1のメモリ63に記憶させる(S510)。
【0128】
図27は、メモリ63に記憶された補正値テーブルを示す図である。この結果、プリンタ1のメモリ63には、図27に図示された、ラスタライン毎に5つの指令階調値Sa〜Seの各々に対する濃度補正値Ha〜Heをまとめた補正値テーブルが作成される。
【0129】
また、図27に示すように、補正値テーブルはインク色別に作成される。この結果、CMYK4色分の補正値テーブルが形成される。この補正値テーブルは、プリンタ1を用いて画像を印刷する際に、当該画像の画像データを構成する各ラスタラインの階調値を補正するためにプリンタドライバによって参照される。
【0130】
本実施形態では、用紙上の画素列に対応するラスタラインごとに濃度を測定し、測定した濃度に基づいて階調値を補正するための補正値を求めている。このようにすることで、ラスタライン毎に濃度補正を行うことができる。そして、用紙上の色むらの発生を抑制することができる。
【0131】
<印刷処理>
図28は、ユーザ下でプリンタドライバが行う印刷処理のフロー図である。プリンタ1を購入したユーザは、プリンタ1に同梱されているCD−ROMに記憶されたプリンタドライバ(若しくは、プリンタ製造会社のホームページからダウンロードしたプリンタドライバ)を、コンピュータにインストールする。このプリンタドライバには、図中の各処理をコンピュータに実行させるためのコードを備えている。また、ユーザは、コンピュータにプリンタ1を接続する。
【0132】
まず、プリンタドライバは、プリンタ1のメモリに記憶されている補正値テーブル(図27参照)を、プリンタ1から取得する(S602)。
【0133】
ユーザがアプリケーションプログラム上から印刷を指示したとき、プリンタドライバが呼び出され、印刷対象となる画像データ(印刷画像データ)をアプリケーションプログラムから受け取り、その印刷画像データに対して解像度変換処理を行う(S604)。解像度変換処理とは、画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、用紙に印刷する際の解像度(印刷解像度)に変換する処理である。ここでは、印刷解像度は360×360dpiであり、解像度変換処理後の各画素データは、RGB色空間により表される256階調のデータである。
【0134】
次に、プリンタドライバは、色変換処理を行う(S606)。色変換処理とは、プリンタ1のインク色の色空間に合わせて画像データを変換する処理である。ここでは、RGB色空間の画像データ(256階調)が、CMYK色空間の画像データ(256階調)に変換される。
【0135】
これにより、256階調のCMYK色空間の画像データが得られる。なお、以下の説明では、説明の簡略化のため、CMYK色空間の画像データのうちの、ブラック平面の画像データについて説明する。
【0136】
次に、プリンタドライバは、濃度むら補正処理を行う(S608)。濃度むら補正処理は、用紙上の画素列(ラスタラインに対応)ごとの補正値に基づいて、各画素列に属する画素データの階調値をそれぞれ補正する処理である。
【0137】
例えば、ユーザのコンピュータ110のプリンタドライバは、各画素データの階調値(以下、補正前の階調値をSinとする)を、その画素データが対応するラスタラインの濃度補正値Hに基づいて補正する(以下、補正後の階調値をSoutとする)。
【0138】
具体的には、あるラスタラインの階調値Sinが指令階調値Sa、Sb、Sc、Sd、Seの何れかと同じであれば、コンピュータ110のメモリに記憶されている濃度補正値Hをそのまま用いることができる。例えば画素データの階調値Sin=Sbであれば、補正後の階調値Soutは次式によって求められる。
Sout=Sb×(1+Hb)
【0139】
一方、画素データの階調値が指令階調値Sa、Sb、Sc、Sd、Seと異なる場合、その周囲の指令階調値の濃度補正値を用いた補間に基づいて補正値を算出する。例えば指令階調値Sinが指令階調値Sbと指令階調値Scとの間の場合、指令階調値Sbの濃度補正値Hb、及び指令階調値Scの濃度補正値Hcを用いた線形補間により求めた補正値をH´とすると、指令階調値Sinの補正後の階調値Soutは次式によって求められる。
Sout=Sin×(1+H´)
【0140】
このようにして、濃度補正処理が行なわれる。
濃度むら補正処理の後、プリンタドライバは、ハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理とは、高階調数のデータを、低階調数のデータに変換する処理である。ここでは、256階調の印刷画像データが、プリンタ1の表現可能な2階調の印刷画像データに変換される。ハーフトーン処理方法としてディザ法などが知られており、本実施形態もこのようなハーフトーン処理を行う。
【0141】
本実施形態において、プリンタドライバは、濃度むら補正処理された画素データに対して、ハーフトーン処理を行うことになる。この結果、濃く視認されやすい部分の画素データの階調値は低くなるように補正されているので、その部分のドット生成率は低くなる。逆に、淡く視認されやすい部分ではドット生成率が高くなる。
【0142】
次に、プリンタドライバは、ラスタライズ処理を行う(S612)。ラスタライズ処理は、印刷画像データ上の画素データの並び順を、プリンタ1に転送すべきデータ順に変更する処理である。その後、プリンタドライバは、プリンタ1を制御するための制御データを画素データに付加することによって印刷データを生成し(S614)、その印刷データをプリンタ1に送信する(S616)。
【0143】
プリンタ1は、受信した印刷データに従って、印刷動作を行う。具体的には、プリンタ1のコントローラ60は、受信した印刷データの制御データに従って搬送ユニット20などを制御し、印刷データの画素データに従ってヘッドユニット40を制御して各ノズルからインクを吐出する。このようにして生成された印刷データに基づいてプリンタ1が印刷処理を行えば、各ラスタラインのドット生成率が変更され、用紙上の列領域の画像片の濃度が補正されて、印刷画像の濃度むらが抑制される。
【0144】
===その他の実施の形態===
上述の実施形態では、流体噴射装置としてプリンタ1が説明されていたが、これに限られるものではなくインク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具現化することもできる。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、気体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の装置に、上述の実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
【0145】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0146】
<ヘッドについて>
前述の実施形態のようにインクを噴射させる方法としては、圧電素子を用いてインクを噴射することとすることができる。しかし、液体を噴射する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【符号の説明】
【0147】
1 プリンタ、20 搬送ユニット、
22A 上流側ローラ、22B 下流側ローラ、
24 ベルト、40ヘッドユニット、
41A 第1ヘッド、41B 第2ヘッド、41C 第3ヘッド、
41D 第4ヘッド、41E 第5ヘッド、41F 第6ヘッド、
50 検出器群、60 コントローラ、61 インターフェース、
62 CPU、63 メモリ、64 ユニット制御回路、
70 駆動信号生成回路、
110 コンピュータ、111 インターフェース、
112 CPU、113 メモリ、
120 スキャナ、121 読取キャリッジ、122 インターフェース、
123 CPU、124 メモリ、125 スキャナコントローラ、
CP 補正用パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加される電圧変化量に応じた大きさの流体を噴射するヘッドを有し、指令階調値に応じた濃度の画像を形成する流体噴射装置の調整方法であって、
前記ヘッドから前記流体を噴射して、第1指令階調値による第1バンディングテストパターンと第2指令階調値による第2バンディングテストパターンとを形成することと、
前記第1バンディングテストパターンと前記第2バンディングテストパターンに基づいてバンディングの発生度合いの少ない方の指令階調値である最適指令階調値を特定することと、
第1電圧変化量で前記ヘッドを駆動したときの前記最適指令階調値による第1濃度取得用パターンと、第2電圧変化量で前記ヘッドを駆動したときの最適指令階調値による第2濃度取得用パターンと、を形成することと、
前記第1濃度取得用パターンの濃度と前記第2濃度取得用パターンの濃度とを測定することと、
測定した前記第1濃度取得用パターンの濃度と前記第2濃度取得用パターンの濃度とに基づいて、目標濃度に対応する前記ヘッドの電圧変化量を求め、前記ヘッドに印加される電圧変化量を調整することと、
を含む流体噴射装置の調整方法。
【請求項2】
前記第1指令階調値による第1バンディングテストパターンと前記第2指令階調値による第2バンディングテストパターンとを複数のヘッドで形成して、それぞれの平均値を用いて前記バンディングの発生度合いの少ない方の指令階調値である最適指令階調値を特定する、請求項1に記載の流体噴射装置の調整方法。
【請求項3】
前記第1指令階調値による第1バンディングテストパターンと前記第2指令階調値による第2バンディングテストパターンは1つのヘッドにより形成される、請求項1に記載の流体噴射装置の調整方法。
【請求項4】
前記第1指令階調値による第1バンディングテストパターンと前記第2指令階調値による第2バンディングテストパターンの他に、さらに複数の指令階調値によるバンディングテストパターンを形成し、最もバンディングの発生度合いの少ない指令階調値である最適指令階調値を特定する、請求項1〜3のいずれかに記載の流体噴射装置の調整方法。
【請求項5】
前記第1バンディングテストパターンと前記第2バンディングテストパターンの読み取りデータに視覚周波数感度関数を含む式を適用し求められた指標値に基づいて、前記最適指令階調値を特定する、請求項1〜4のいずれかに記載の流体噴射装置の調整方法。
【請求項6】
前記電圧変化量は、ヘッドに印加される駆動信号に含まれる駆動パルスの振幅である、請求項1〜5のいずれかに記載の流体噴射装置の調整方法。
【請求項7】
前記媒体の搬送方向に並ぶ画素からなる画素列毎の濃度補正を行うための補正用パターンを前記媒体に形成することと、
前記補正用パターンに基づいて、前記画素列毎の濃度を補正するための濃度補正値を求めることと、
を、さらに含み、前記濃度補正値は、形成された前記補正用パターンの濃度が前記画素列毎に測定され、測定された前記画素列毎の濃度に基づいて求められる、請求項1〜6のいずれかに記載の流体噴射装置の調整方法。
【請求項8】
印加される電圧変化量に応じた大きさの流体を噴射するヘッドを有し、指令階調値に応じた濃度の画像を形成する流体噴射装置の調整方法であって、
前記ヘッドから前記流体を噴射して、第1指令階調値による第1バンディングテストパターンと第2指令階調値による第2バンディングテストパターンとを形成することと、
前記第1バンディングテストパターンと前記第2バンディングテストパターンに基づいてバンディングの発生度合いの少ない方の指令階調値である最適指令階調値を特定することと、
第1電圧変化量で前記ヘッドを駆動したときの前記最適指令階調値による第1濃度取得用パターンと、第2電圧変化量で前記ヘッドを駆動したときの最適指令階調値による第2濃度取得用パターンと、を形成することと、
前記第1濃度取得用パターンの濃度と前記第2濃度取得用パターンの濃度とを測定することと、
測定した前記第1濃度取得用パターンの濃度と前記第2濃度取得用パターンの濃度とに基づいて、目標濃度に対応する前記ヘッドの電圧変化量を求め、前記ヘッドに印加される電圧変化量を調整することと、
を含む流体噴射装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図11】
image rotate

【図14】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2011−240526(P2011−240526A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112410(P2010−112410)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】