説明

液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び圧電素子並びに圧電材料

【課題】鉛を含有しない強誘電体からなる圧電素子を有する液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び圧電素子並びに圧電材料を提供する。
【解決手段】ノズル開口21に連通する圧力発生室12と、第1電極60と、前記第1電極上に形成された圧電体層70と、前記圧電体層上に形成された第2電極80とを備えた圧電素子300と、を具備し、前記圧電体層は、Bi、La、Fe及びMnを含むペロブスカイト型複合酸化物からなり、強誘電体である液体噴射ヘッドIとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口に連通する圧力発生室に圧力変化を生じさせる第1電極、圧電体層及び第2電極からなる圧電素子を具備する液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び圧電素子並びに圧電材料に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドに用いられる圧電素子としては、電気的機械変換機能を呈する圧電材料、例えば、結晶化した誘電材料からなる圧電体層を、2つの電極で挟んで構成されたものがある。このような圧電素子は、例えば撓み振動モードのアクチュエーター装置として液体噴射ヘッドに搭載される。液体噴射ヘッドの代表例としては、例えば、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴として吐出させるインクジェット式記録ヘッドがある。このようなインクジェット式記録ヘッドに搭載される圧電素子は、例えば、振動板の表面全体に亘って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィー法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものがある。
【0003】
このような圧電素子に用いられる圧電材料には高い圧電特性(歪み量)が求められており、代表例として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が挙げられる(特許文献1参照)。このPZTは強誘電体であり、分極方向を一方向に揃えることで歪み量が印加電圧に対して直線的に変化する。したがって、歪み量の制御が容易になるため、吐出させる液滴サイズ等も容易になり、アクチュエーター装置として好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−223404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したチタン酸ジルコン酸鉛には鉛が含まれており、環境問題の観点から、鉛を含有しない圧電材料が求められている。なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに限定されず、他の圧電素子においても同様に存在する。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑み、鉛を含有しない強誘電体からなる圧電素子を有する液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び圧電素子並びに圧電材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の態様は、ノズル開口に連通する圧力発生室と、第1電極と、前記第1電極上に形成された圧電体層と、前記圧電体層上に形成された第2電極と、を備えた圧電素子と、を具備し、前記圧電体層は、Bi、La、Fe及びMnを含むペロブスカイト型複合酸化物からなり、強誘電体であることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、Bi、La、Fe及びMnを含むペロブスカイト型複合酸化物であって、強誘電体である圧電材料を用いることにより、鉛を含有せず歪み量の制御が容易となり、例えば、吐出する液滴サイズの制御が容易な圧電素子を有する液体噴射ヘッドとすることができる。
【0008】
また、本発明の液体噴射ヘッドは、ノズル開口に連通する圧力発生室と、第1電極と、前記第1電極上に形成された圧電体層と、前記圧電体層上に形成された第2電極と、を備えた圧電素子と、を具備し、前記圧電体層は、下記一般式(1)で表される複合酸化物を含むことを特徴とする。これによれば、下記一般式(1)で表される複合酸化物は強誘電体なので、鉛を含有せず且つ歪み量の制御が容易な圧電素子を有する液体噴射ヘッドとすることができる。
(Bi1-x,Lax)(Fe1-y,Mny)O3 (1)
(0.10≦x≦0.20,0.01≦y≦0.09)
【0009】
そして、上記一般式(1)において、0.17≦x≦0.20であることが好ましく、更に好ましくは、0.19≦x≦0.20である。これによれば、反強誘電相と強誘電相を同時に示す組成であるため、歪み量の大きな圧電素子とすることができる。
【0010】
また、上記一般式(1)において、0.01≦y≦0.05であることが好ましい。これによれば、絶縁性に優れリークによる絶縁破壊が防止された液体噴射ヘッドとなる。
【0011】
前記圧電体層は、粉末X線回折パターンにおいて、強誘電性を示す相に帰属される回折ピークと、反強誘電性を示す相に帰属される回折ピークが同時に観測されることが好ましい。これによれば、反強誘電相と強誘電相を同時に示すため、歪み量の大きな圧電素子とすることができる。
【0012】
また、前記圧電体層は、粉末X線回折パターンにおいて45<2θ<50°にABO3型構造由来の回折ピークが観測され、前記ABO3型構造由来の回折ピークにおける強誘電性を示す相に帰属される回折ピークの面積強度AFと反強誘電性を示す相に帰属される回折ピークの面積強度AAFとの比AAF/AFが、0.1以上であることが好ましい。これによれば、より確実に歪み量の大きな圧電素子とすることができる。
【0013】
本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。かかる態様では、鉛を含有せず且つ歪み量の制御が容易な圧電素子を有する液体噴射ヘッドを具備するため、環境に悪影響を与えず且つ吐出特性に優れた液体噴射装置となる。
【0014】
また、本発明の他の態様は、圧電体層と、前記圧電体層に設けられた複数の電極と、を具備した圧電素子であって、前記圧電体層は、Bi、La、Fe及びMnを含むペロブスカイト型複合酸化物からなり、強誘電体であることを特徴とする圧電素子にある。かかる態様では、Bi、La、Fe及びMnを含むペロブスカイト型複合酸化物であって、強誘電体である圧電材料を用いることにより、鉛を含有せず且つ歪み量の制御が容易な圧電素子とすることができる。
【0015】
また、本発明の圧電素子は、圧電体層と、前記圧電体層に設けられた複数の電極とを具備した圧電素子であって、前記圧電体層が、下記一般式(1)で表される複合酸化物を含むことを特徴とする。これによれば、下記一般式(1)で表される複合酸化物は強誘電体なので、鉛を含有せず且つ歪み量の制御が容易な圧電素子とすることができる。
(Bi1-x,Lax)(Fe1-y,Mny)O3 (1)
(0.10≦x≦0.20,0.01≦y≦0.09)
【0016】
本発明の他の態様は、Bi、La、Fe及びMnを含むペロブスカイト型複合酸化物であって、強誘電体であることを特徴とする。これによれば、鉛を含有せず且つ歪み量の制御が容易な圧電材料を提供することができる。
【0017】
また、本発明の圧電材料は、下記一般式(1)で表されるペロブスカイト型複合酸化物からなることを特徴とする。これによれば、下記一般式(1)で表されるペロブスカイト型複合酸化物は強誘電体なので、鉛を含有せず且つ歪み量の制御が容易な圧電材料を提供することができる。
(Bi1-x,Lax)(Fe1-y,Mny)O3 (1)
(0.10≦x≦0.20,0.01≦y≦0.09)
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。
【図3】実施例1のP−V曲線を表す図である。
【図4】実施例2のP−V曲線を表す図である。
【図5】実施例3のP−V曲線を表す図である。
【図6】実施例4のP−V曲線を表す図である。
【図7】実施例5のP−V曲線を表す図である。
【図8】実施例6のP−V曲線を表す図である。
【図9】実施例7のP−V曲線を表す図である。
【図10】実施例8のP−V曲線を表す図である。
【図11】実施例9のP−V曲線を表す図である。
【図12】実施例10のP−V曲線を表す図である。
【図13】実施例11のP−V曲線を表す図である。
【図14】比較例1のP−V曲線を表す図である。
【図15】比較例2のP−V曲線を表す図である。
【図16】比較例3のP−V曲線を表す図である。
【図17】比較例4のP−V曲線を表す図である。
【図18】試験例2のX線回折パターンを表す図である。
【図19】試験例2のX線回折パターンを表す要部拡大図である。
【図20】試験例2のX線回折パターンを表す図である。
【図21】実施例4のS−V曲線を表す図である。
【図22】実施例11のS−V曲線を表す図である。
【図23】比較例3のS−V曲線を表す図である。
【図24】実施例5のS−V曲線を表す図である。
【図25】実施例6のS−V曲線を表す図である。
【図26】実施例9のS−V曲線を表す図である。
【図27】本発明の一実施形態に係る記録装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、本実施形態の流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなり、その一方の面には二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
【0021】
流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板のリザーバー部31と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバーの一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。なお、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。本実施形態では、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられていることになる。
【0022】
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
【0023】
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、酸化ジルコニウム等からなる絶縁体膜55が形成されている。
【0024】
さらに、この絶縁体膜55上には、第1電極60と、厚さが2μm以下、好ましくは0.3〜1.5μmの薄膜の圧電体層70と、第2電極80とが、積層形成されて、圧電素子300を構成している。なお、圧電素子300と絶縁体膜55の密着性を向上させる等のために、絶縁体膜55と圧電素子300との間に酸化チタンからなる層を設けるようにしてもよい。ここで、圧電素子300は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、第1電極60を圧電素子300の共通電極とし、第2電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエーター装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び第1電極60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
【0025】
そして、本実施形態においては、圧電体層70は、Bi、La、Fe及びMnを含むペロブスカイト型複合酸化物であって強誘電体である。具体的には、例えば下記一般式(1)で表されるABO3型の複合酸化物である。なお、後述する実施例に示すが、下記一般式(1)で表されるABO3型の複合酸化物は、強誘電体である。
(Bi1-x,Lax)(Fe1-y,Mny)O3 (1)
(0.10≦x≦0.20,0.01≦y≦0.09)
【0026】
なお、ABO3型構造、すなわち、ペロブスカイト構造のAサイトは酸素が12配位しており、また、Bサイトは酸素が6配位して8面体(オクタヘドロン)をつくっている。そして、AサイトにBi及びLaが、BサイトにFe及びMnが位置している。
【0027】
このように、Bi、La、Fe及びMnを含むABO3型の複合酸化物であって強誘電体であるものを圧電体層とすると、鉛を含有せず且つ歪み量の制御が容易で吐出するインク滴サイズ等を容易に制御できる圧電素子となる。なお、後述する実施例及び比較例で示すが、Bi、La、Fe及びMnを含むABO3型の複合酸化物は、その組成比によって、強誘電体となったり、反強誘電体となったりするものである。
【0028】
ここで、自発分極が互い違いに並んでいる物質である反強誘電体、すなわち、電界誘起相転移を示すものを圧電体層とした場合、一定印加電圧以上で電界誘起相転移を示し、大きな歪を発現するため、強誘電体を超える大きな歪を得ることが可能であるが、一定電圧以下では駆動せず、歪み量も電圧に対して直線的に変化しない。なお、電界誘起相転移とは、電場によって起こる相転移であり、反強誘電相から強誘電相への相転移や、強誘電相から反強誘電相への相転移を意味する。そして、強誘電相とは、分極軸が同一方向に並んでいる状態であり、反強誘電相とは分極軸が互い違いに並んでいる状態である。例えば、反強誘電相から強誘電相への相転移は、反強誘電相の互い違いに並んでいる分極軸が180度回転することにより分極軸が同一方向になって強誘電相になることであり、このような電界誘起相転移によって格子が膨張又は伸縮して生じる歪みが、電界誘起相転移により生じる電界誘起相転移歪みである。このような電界誘起相転移を示すものが反強誘電体であり、換言すると、電場のない状態では分極軸が互い違いに並んでおり、電場により分極軸が回転して同一方向に並ぶものが反強誘電体である。このような反強誘電体は、反強誘電体の分極量Pと電圧Vの関係を示すP−V曲線において、正の電界方向と負の電界方向で2つのヒステリシスループ形状を持つダブルヒステリシスとなる。そして、分極量が急激に変化している領域が、強誘電相から反強誘電相への相転移や、強誘電相から反強誘電相への相転移している箇所である。
【0029】
一方、強誘電体は、反強誘電体のようにP−V曲線がダブルヒステリシスとはならず、分極方向を一方向に揃えることで歪み量が印加電圧に対して直線的に変化する。したがって、歪み量の制御が容易なので吐出させる液滴サイズ等も容易であり、微振動を発生させる小振幅振動及び大きな排除体積を発生させる大振幅振動の両者を一つの圧電素子により発生させることができる。
【0030】
そして、圧電体層70は、粉末X線回折測定した際、該回折パターンにおいて、強誘電性を示す相(強誘電相)に帰属される回折ピークと、反強誘電性を示す相(反強誘電相)に帰属される回折ピークが同時に観測されることが好ましく、さらに好ましくは、45°<2θ<50°にABO3型構造由来の回折ピークが観測され、該ABO3型構造由来の回折ピークにおける強誘電性を示す相に帰属される回折ピークの面積強度AFと反強誘電性を示す相に帰属される回折ピークの面積強度AAFとの比AAF/AFが、0.1以上である。このように、強誘電性を示す相に帰属される回折ピークと、反強誘電性を示す相に帰属される回折ピークが同時に観測される、すなわち、反強誘電相と強誘電相の組成相境界(M.P.B.)である圧電体層70とすると、歪み量の大きな圧電素子とすることができる。
【0031】
また、圧電体層70は、上記一般式(1)において、0.17≦x≦0.20であることが好ましく、更に好ましくは、0.19≦x≦0.20である。この範囲では、後述する実施例に示すが、粉末X線回折測定した際に、強誘電性を示す相(強誘電相)に帰属される回折ピークと、反強誘電性を示す相(反強誘電相)に帰属される回折ピークが同時に観測され反強誘電相と強誘電相を同時に示す。したがって、反強誘電相と強誘電相のM.P.B.であるため、歪み量の大きな圧電素子とすることができる。また、0.01≦y≦0.05であると、リーク特性にも優れる。
【0032】
このような圧電素子300を流路形成基板10上に形成する方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法で製造することができる。まず、シリコンウェハーである流路形成基板用ウェハーの表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン(SiO2)等からなる二酸化シリコン膜を形成する。次いで、弾性膜50(二酸化シリコン膜)上に、酸化ジルコニウム等からなる絶縁体膜55を形成する。
【0033】
次に、絶縁体膜55上に、必要に応じて酸化チタンからなる層を設けた後、白金やイリジウム等からなる第1電極60をスパッタリング法等により全面に形成した後パターニングする。
【0034】
次いで、圧電体層70を積層する。圧電体層70の製造方法は特に限定されないが、例えば、有機金属化合物を溶媒に溶解・分散した溶液を塗布乾燥し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、MOD(Metal−Organic Decomposition)法を用いて圧電体層70を形成できる。なお、圧電体層70の製造方法は、MOD法に限定されず、例えば、ゾル−ゲル法や、レーザアブレーション法、スパッタリング法、パルス・レーザー・デポジション法(PLD法)、CVD法、エアロゾル・デポジション法などを用いてもよい。
【0035】
例えば、第1電極60上に、有機金属化合物、具体的には、ビスマス、ランタン、鉄、マンガンを含有する有機金属化合物を、目的とする組成比になる割合で含むゾルやMOD溶液(前駆体溶液)をスピンコート法などを用いて、塗布して圧電体前駆体膜を形成する(塗布工程)。
【0036】
塗布する前駆体溶液は、ビスマス、ランタン、鉄、マンガンをそれぞれ含む有機金属化合物を、各金属が所望のモル比となるように混合し、該混合物をアルコールなどの有機溶媒を用いて溶解または分散させたものである。ビスマス、ランタン、鉄、マンガンをそれぞれ含む有機金属化合物としては、例えば、金属アルコキシド、有機酸塩、βジケトン錯体などを用いることができる。ビスマスを含む有機金属化合物としては、例えば2−エチルヘキサン酸ビスマスなどが挙げられる。ランタンを含む有機金属化合物としては、2−エチルヘキサン酸ランタンなどが挙げられる。鉄を含む有機金属化合物としては、例えば2−エチルヘキサン酸鉄などが挙げられる。マンガンを含む有機金属化合物としては、例えば2−エチルヘキサン酸マンガンなどが挙げられる。
【0037】
次いで、この圧電体前駆体膜を所定温度に加熱して一定時間乾燥させる(乾燥工程)。次に、乾燥した圧電体前駆体膜を所定温度に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。なお、ここで言う脱脂とは、圧電体前駆体膜に含まれる有機成分を、例えば、NO2、CO2、H2O等として離脱させることである。
【0038】
次に、圧電体前駆体膜を所定温度、例えば600〜700℃程度に加熱して一定時間保持することによって結晶化させ、圧電体膜を形成する(焼成工程)。なお、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程で用いられる加熱装置としては、例えば、赤外線ランプの照射により加熱するRTA(Rapid Thermal Annealing)装置やホットプレート等が挙げられる。
【0039】
なお、上述した塗布工程、乾燥工程及び脱脂工程や、塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程を所望の膜厚等に応じて複数回繰り返すことにより、複数層の圧電体膜からなる圧電体層を形成してもよい。
【0040】
圧電体層70を形成した後は、圧電体層70上に、例えば、白金等の金属からなる第2電極80を積層し、圧電体層70及び第2電極80を同時にパターニングして圧電素子300を形成する。
【0041】
その後、必要に応じて、600℃〜700℃の温度域でポストアニールを行ってもよい。これにより、圧電体層70と第1電極60や第2電極80との良好な界面を形成することができ、かつ、圧電体層70の結晶性を改善することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
まず、(100)に配向したシリコン基板の表面に熱酸化により膜厚400nmの二酸化シリコン膜を形成した。次に、二酸化シリコン膜上にRFスパッタ法により膜厚40nmのチタン膜を形成し、熱酸化することで酸化チタン膜を形成した。次に、酸化チタン膜上にイオンスパッタと蒸着法の2段階で膜厚150nmの白金膜形成し、(111)に配向した第1電極60とした。
【0044】
次いで、第1電極60上に圧電体層をスピンコート法により形成した。その手法は以下のとおりである。まず、2−エチルヘキサン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸ランタン、2−エチルヘキサン酸鉄、2−エチルヘキサン酸マンガンのキシレンおよびオクタン溶液を所定の割合で混合して、前駆体溶液を調製した。そしてこの前駆体溶液を酸化チタン膜及び第1電極が形成された上記基板上に滴下し、1500rpmで基板を回転させて圧電体前駆体膜を形成した(塗布工程)。次に350℃で3分間乾燥・脱脂を行った(乾燥及び脱脂工程)。この塗布工程・乾燥及び脱脂工程を3回繰り返した後に、Rapid Thermal Annealing(RTA)で650℃、1分間焼成を行った(焼成工程)。この塗布工程・乾燥及び脱脂工程を3回繰り返した後に一括して焼成する焼成工程を行う工程を4回繰り返し、RTAで650℃、10分間焼成を行うことで、計12回の塗布により全体で厚さ350nmの圧電体層70を形成した。
【0045】
その後、圧電体層70上に、第2電極80としてDCスパッタ法により膜厚100nmの白金膜を形成した後、RTAを用いて650℃、10分間焼成を行うことで、x=0.10、y=0.03の上記一般式(1)で表されるABO3型の複合酸化物を圧電体層70とする圧電素子300を形成した。
【0046】
(実施例2〜11及び比較例1〜7)
2−エチルヘキサン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸ランタン、2−エチルヘキサン酸鉄、2−エチルヘキサン酸マンガンのキシレンおよびオクタン溶液の混合割合を変更し、表1に示すx及びyの上記一般式(1)で表される複合酸化物を圧電体層70とした以外は、実施例1と同様にして、圧電素子300を形成した。なお、実施例5,6及び9については、(110)に配向したシリコン基板の表面に熱酸化により膜厚1030nmの二酸化シリコン膜を形成し、その表面にDCスパッタ法により酸化ジルコニウム400nm、チタン20nm、および白金130nmをそれぞれ積層することで、(111)配向した白金電極とした。ただし、基板の配向及び酸化チタン膜の有無は、圧電体層70の特性に影響を与えないものである。
【0047】
【表1】

【0048】
(試験例1)
実施例1〜11及び比較例1〜7の各圧電素子300について、東陽テクニカ社製「FCE−1A」で、φ=400μmの電極パターンを使用し、周波数1kHz、25V又は30Vの三角波を印加して、P(分極量)−V(電圧)の関係を求めた。結果をそれぞれ図3〜17に示す。なお、比較例5〜7はリークが大きすぎて測定することができず、圧電材料としては使用できないものであった。
【0049】
図3〜13に示すように、実施例1〜11では、強誘電体に特徴的なヒステリシスループ形状が観測された。したがって、実施例1〜11は、歪み量が印加電圧に対して直線的に変化するため、歪み量の制御が容易である。
【0050】
一方、上記一般式(1)において0.10≦x≦0.20,0.01≦y≦0.09の範囲外である比較例1〜3は、図14〜16に示すように反強誘電体に特徴的な正の電界方向と負の電界方向で2つのヒステリシスループ形状を持つダブルヒステリシスが観測されたため反強誘電体であり、比較例4は図17に示すように常誘電体であり、また、比較例5〜7は上述したようにリークが大きすぎで圧電材料としては使用できないものであり、いずれの比較例も強誘電体ではないことが分かった。
【0051】
また、上記一般式(1)において0.01≦y≦0.05の範囲内である実施例1〜2及び4〜11では、特にリーク特性に優れていることが分かった。
【0052】
(試験例2)
実施例1〜11及び比較例1〜7の圧電素子300について、Bruker AXS社製の「D8 Discover」を用い、X線源にCuKα線を使用し、室温で粉末X線回折パターンを求めた。その結果、実施例1〜11及び比較例1〜7すべてにおいて、ABO3由来の回折ピーク、基板であるSi由来のピーク、Pt(111)由来のピーク、およびPt(111)のCuKβ線の回折に由来するピークが観測された。以上の結果から、実施例1〜11及び比較例1〜7の圧電体層はABO3型構造を形成していることがわかる。結果の一例として、実施例4、11及び比較例2〜3を図18及び図19に、実施例5、6及び9を図20に示す。なお、図19は図18の拡大図である。
【0053】
そして、図18及び19に示すように、実施例4は2θ=46.1°近傍に回折ピークを持つのに対し、比較例2及び3は2θ=46.5°近傍に回折ピークを持ち、実施例11はその両方の回折ピークが混在している。前述のP−Eヒステリシス形状より、比較例2及び3は反強誘電体であり、実施例4は強誘電体であるので、2θ=46.5°の回折ピークは反強誘電性を示す相に、2θ=46.1°の回折ピークは強誘電性を示す相に由来する回折ピークに帰属される。以上のことから、実施例11は強誘電体に起因する構造と反強誘電体に起因する構造の両者が共存する組成相境界(M.P.B.)であることがわかる。基板とABO3以外のピークは観測されず、異相は存在しないことが分かる。
【0054】
また、図20に示すように、2θ=45〜48°において、(Bi1-x,Lax)(Fe1-y,Mny)O3およびSiのピークが観測され、いずれの実施例においても強度比こそ異なるものの、強誘電性を示す相と反強誘電性を示す相の回折ピークが共存した回折パターンが得られた。
【0055】
したがって、XRDの結果から、(Bi1-x,Lax)(Fe1-y,Mny)O3で0.17≦x≦0.20のものは、反強誘電相と強誘電相のM.P.B.であることがわかった。
【0056】
また、図20に示す回折パターンを、Bruker製X線構造解析ソフトであるTopas2.1にてピークフィッティングを行うことで、強誘電性を示す相由来の回折ピークの面積強度(AF)および反強誘電性を示す相由来の回折ピークの面積強度(AAF)を算出した。ピーク関数はPearsonIVを使用し、装置および結晶性に依存する半値半幅(FWHM)は強誘電体由来のピークと反強誘電体由来のピークで同一の値を使用した。この結果、実施例5ではAAF/AF=0.1、実施例6ではAAF/AF=0.5、実施例9ではAAF/AF=0.9であった。
【0057】
(試験例3)
実施例1〜11及び比較例1〜7の各圧電素子300について、アグザクト社製の変位測定装置(DBLI)を用い室温で、φ=500μmの電極パターンを使用し、周波数1kHzの電圧を印加して、電界誘起歪―電界強度の関係を求めた。結果の一例として、実施例4,11及び比較例3について図21〜23に、実施例5、6及び9については図24〜26に示す。
【0058】
図21〜23に示すように、+30Vにおける変位量は、実施例4においては1.10nm、実施例11においては1.43nm、比較例3においては1.72nmであった。試験例3において、実施例11は図19に示すように反強誘電相と強誘電相のM.P.B.であり、それを反映し歪み量においても1.3倍の電界誘起歪が得られた。これは膜厚で規格化した歪率に換算すると0.36%であり、実用化されているPZTの歪率に匹敵する非常に大きな値である。また、実施例4及び11では、+30Vから−7Vの範囲で強誘電体に特徴的な直線的な電界誘起歪の電圧応答が観測された。
【0059】
そして、比較例3は実施例11と比較し、1.2倍の電界誘起歪が観測された。しかしながら、比較例3は反強誘電体であり、それを反映し0Vから+10Vの範囲でほとんど電界誘起歪を示さず、+10Vから0Vの範囲で電界誘起歪の電圧応答の折れ曲がりが観測された。
【0060】
以上の結果から、(Bi1-x,Lax)(Fe1-y,Mny)O3では、反強誘電体がもっとも大きな電界誘起歪を示すが、強誘電体の(Bi1-x,Lax)(Fe1-y,Mny)O3、すなわち、0.10≦x≦0.20,0.01≦y≦0.09の範囲内では、強誘電相に起因する構造と反強誘電相に起因する構造の両者が共存する組成相境界(M.P.B.)に近づく、すなわち、0.17≦x≦0.20、さらには0.19≦x≦0.20となるにつれ、PZTの歪率に匹敵する大きな電界誘起歪を示すとともに、反強誘電体では示さない電圧に対する歪み量が良好な直線性を示すことがわかった。
【0061】
また、図26に示すように、実施例9において30Vにおける変位量が1.44nmと最も良好な値を示した。それに加え、図24及び25に示すように、実施例5及び6においても実施例9に対し変位低下が10%未満に抑えられている。このことから、反強誘電体の組成に近づけることで変位量は増加するが、少なくともAAF/AF=0.1であるx=0.78の組成においても、AAF/AF=0.9であるx=0.20の90%以上の変位量を示した。このことから、少なくともXRDにてAAF/AF>0.1程度の強度比が観測される組成であれば、AAF/AF=0.9の組成と遜色ない圧電性を示すことがわかった。
【0062】
このような圧電素子300の個別電極である各第2電極80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、絶縁体膜55上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
【0063】
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第1電極60、絶縁体膜55及びリード電極90上には、リザーバー100の少なくとも一部を構成するリザーバー部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このリザーバー部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバー100を構成している。また、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、リザーバー部31のみをリザーバーとしてもよい。さらに、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50、絶縁体膜55等)にリザーバーと各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
【0064】
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
【0065】
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
【0066】
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
【0067】
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
【0068】
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってリザーバー部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のリザーバー100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバー100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0069】
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIでは、図示しない外部のインク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、リザーバー100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、第1電極60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
【0070】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、金属元素として、Bi、La、Fe及びMnのみを含有するABO3型の複合酸化物について記載したが、Bi、La、Fe及びMnを含むABO3型の複合酸化物であればよく、圧電特性を良好にする等のために、他の金属を添加してもよい。
【0071】
また、上述した実施形態では、流路形成基板10として、シリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、SOI基板、ガラス等の材料を用いるようにしてもよい。
【0072】
さらに、上述した実施形態では、基板(流路形成基板10)上に第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を順次積層した圧電素子300を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子にも本発明を適用することができる。
【0073】
また、これら実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図27は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0074】
図27に示すインクジェット式記録装置IIにおいて、インクジェット式記録ヘッドIを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0075】
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0076】
なお、上述した実施形態1では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【0077】
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載される圧電素子に限られず、超音波発信機等の超音波デバイス、超音波モーター、圧力センサー、強誘電体メモリー等の圧電素子にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 II インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、
14 インク供給路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 リザーバー部、 32 圧電素子保持部、 40 コンプライアンス基板、
60 第1電極、 70 圧電体層、 80 第2電極、 90 リード電極、 100 リザーバー、 120 駆動回路、 121 接続配線、 300 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル開口に連通する圧力発生室と、
第1電極と、前記第1電極上に形成された圧電体層と、前記圧電体層上に形成された第2電極と、を備えた圧電素子と、を具備し、
前記圧電体層は、Bi、La、Fe及びMnを含むペロブスカイト型複合酸化物からなり、強誘電体であることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
ノズル開口に連通する圧力発生室と、
第1電極と、前記第1電極上に形成された圧電体層と、前記圧電体層上に形成された第2電極と、を備えた圧電素子と、を具備し、
前記圧電体層は、下記一般式(1)で表される複合酸化物を含むことを特徴とする液体噴射ヘッド。
(Bi1-x,Lax)(Fe1-y,Mny)O3 (1)
(0.10≦x≦0.20,0.01≦y≦0.09)
【請求項3】
0.17≦x≦0.20であることを特徴とする請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
0.19≦x≦0.20であることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
0.01≦y≦0.05であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記圧電体層は、粉末X線回折パターンにおいて、強誘電性を示す相に帰属される回折ピークと、反強誘電性を示す相に帰属される回折ピークが同時に観測されることを特徴とする請求項1〜5いずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記圧電体層は、粉末X線回折パターンにおいて45<2θ<50°にABO3型構造由来の回折ピークが観測され、前記ABO3型構造由来の回折ピークにおける強誘電性を示す相に帰属される回折ピークの面積強度AFと反強誘電性を示す相に帰属される回折ピークの面積強度AAFとの比AAF/AFが、0.1以上であることを特徴とする請求項1〜6いずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載する液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項9】
圧電体層と、前記圧電体層に設けられた複数の電極と、を具備した圧電素子であって、
前記圧電体層は、Bi、La、Fe及びMnを含むペロブスカイト型複合酸化物からなり、強誘電体であることを特徴とする圧電素子。
【請求項10】
圧電体層と、前記圧電体層に設けられた複数の電極とを具備した圧電素子であって、
前記圧電体層が、下記一般式(1)で表される複合酸化物を含むことを特徴とする圧電素子。
(Bi1-x,Lax)(Fe1-y,Mny)O3 (1)
(0.10≦x≦0.20,0.01≦y≦0.09)
【請求項11】
Bi、La、Fe及びMnを含むペロブスカイト型複合酸化物であって、強誘電体であることを特徴とする圧電材料。
【請求項12】
下記一般式(1)で表されるペロブスカイト型複合酸化物からなることを特徴とする圧電材料。
(Bi1-x,Lax)(Fe1-y,Mny)O3 (1)
(0.10≦x≦0.20,0.01≦y≦0.09)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−93295(P2011−93295A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52428(P2010−52428)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【分割の表示】特願2009−252445(P2009−252445)の分割
【原出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】