説明

液体噴射装置、及び液体噴射装置のメンテナンス方法

【課題】インクジェットヘッドのインク噴射面とメンテナンス部との距離合わせを精度良く、遠隔で行い得る液体噴射装置、及び液体噴射装置のメンテナンス方法を提供する。
【解決手段】インクジェットヘッド1のメンテナンスを行う複数のメンテナンス部を備えたメンテナンスユニット5と、インクジェットヘッド1又はメンテナンスユニット5を一体に取り付けた昇降移動自在かつ少なくとも複数のメンテナンス部の対向位置にインクジェットヘッド1のインク噴射面4を平行移動自在の3次元移動部材3と、インク噴射面4と各メンテナンス部との高さ方向の距離を間接的に計測する距離センサ2と、距離センサ2によるインク噴射面4と各メンテナンス部との高さ方向の距離の間接的な計測値から、3次元移動部材3における、インク噴射面4をメンテナンスするための昇降移動量を決定し、3次元移動部材3を昇降移動させるメンテナンス位置設定部とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印刷物に対して、着色等を行う液体噴射装置に関し、さらに詳しくは、インクジェットヘッドをメンテナンスする複数のメンテナンス機構を有する液体噴射装置、及び液体噴射装置のメンテナンス方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドを搭載して、インク等の液体を噴射して被印刷物に対して処理を行う液体噴射装置においては、近年、液体噴射装置を液晶テレビのカラーフィルター製作に使用する等、生産装置として利用されることが多くなっている。
【0003】
上記液体噴射装置は、インクを噴射させる構成上、特にインクジェットヘッドの噴射ノズルが設けられているノズル面であるインク噴射面がインクの飛沫や染み出しによって汚染されてくる。このようなインク噴射面の汚染は、インク噴射時の噴射方向のずれとして現れる。また、この汚染インクが乾燥するとインク噴射面に固着してしまい、除去することが非常に困難になり、定常的なインク噴射時の噴射方向のずれが起こると共に、固着箇所にさらに汚染インクが付着していき、噴射することすら困難な状況に陥ってしまう。
【0004】
このため、液体噴射装置においては、インクジェットヘッドを定期的又は噴射処理前に清掃するいわゆるメンテナンス動作が行われている。
【0005】
このメンテナンス動作は、専用のメンテナンスユニットにて行われる。メンテナンスユニットは、噴射面を清掃するワイプ部、噴射ノズルを保湿保管し、かつ噴射ノズルから増粘インクを吸い出すキャップ部等複数のメンテナンス部で構成されている。
【0006】
そして、インクジェットヘッドのメンテナンス動作では、各々のメンテナンス部とインクジェットヘッドとを対向させて、インクジェットヘッドをメンテナンス可能な所定の間隔に設定して行われる。
【0007】
ここで、メンテナンス動作を行うときには、インクジェットヘッドとメンテナンス部との水平方向及び間隔の位置合わせが必要である。通常、インクジェットヘッドとメンテナンス部との水平方向の位置合わせは、初期設置時に目視確認で位置調整しておく。また、間隔の位置合わせについては、例えば、特許文献1では、図16(a),(b)に示すように、インクジェットヘッド101の高さを被噴射物であるプラテン102との間隔D1に合わせて調整した際に、図示しないキャップ部との間隔D2が変化してしまうことに対応して、高さ変更レバー103の回転位置に合わせてキャップ動作における間隔D2を調整する方法が提案されている。尚、高さ変更レバー103の回転角度は、回転角度に比例する電圧を検出する図示しない電圧検出手段により把握できるようになっている。
【特許文献1】特開平10−86480号公報(平成10年4月7日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来のインクジェットヘッドとメンテナンス部との水平方向及び間隔の位置合わせ方法において、水平方向に関する位置合わせについては、例えばキャッピングゴムがインクジェットヘッドのノズル穴が塞がれていればよく、初期設置時に目視確認で位置調整しておけば、インクジェットヘッド等を交換したとしても再度調整が必要になるものではない。
【0009】
しかしながら、インクジェットヘッドとメンテナンス部との間隔については、非常に繊細な調整、管理が要求される。
【0010】
例えば、メンテナンス部の一つである、インクジェットヘッドのインク噴射面を払拭清掃するためのワイピングブレードを備えたワイプ部に関して言えば、以下の問題が生じる。
【0011】
すなわち、インク噴射面を摺接して清掃するワイピングブレードのインク噴射面に対する接触圧は間隔によって変化するため、間隔が狭すぎると接触圧が高くなってしまい、インク噴射面に対して過剰な力で摺接することとなってしまい、ノズル面への傷付きや撥水膜等ノズル面の表面処理劣化が発生してしまう。逆に、間隔が広すぎると接触圧が低くなってしまい、ノズル面に対するワイピングブレードの当接不良となってしまい、ノズル面の清掃が不完全なものになってしまう。
【0012】
また、例えば、メンテナンス部の一つである、インク噴射穴を押し付けて密閉するためのキャップ部に関して言えば、インク噴射面とキャッピングゴムとの押し当て量が大きすぎるとキャッピング時のキャッピングゴムの変形量が大きくなり、ノズルへの押圧が大きくなってしまい、インク噴射穴へのエア浸入により、インクが噴射できないことが起こってしまう。逆に、押し当て量が小さいと、キャッピング不良により、ノズルを密閉できずに乾燥を促進させてしまうという問題が生じてしまう。
【0013】
尚、前述した特許文献1の技術では、実際にインク噴射面の高さを計測して合わせ込む方法ではないので、上述したような課題が生じてしまう。また、目視確認においても微細な調整を各個人の見た目に頼ることになるので、誤差を生じてしまう。
【0014】
また、生産設備用途の液体噴射装置では、インクジェットヘッドは定期的に交換される消耗品になることが多いが、交換の度に、装置内に入り込み、確認することはスペース上及び安全上問題になることが多い。
【0015】
これらの問題は、昨今の生産設備用途の液体噴射装置において特に懸念されることである。具体的には、液晶パネル用のスペーサ剤を始めとする固体材料を用いた場合に、ワイピングブレード接触圧不良によってノズルへの傷付きや拭き残しが発生することになると共に、高価なインクを使用するためにより、キャップ押し当て不良によるエア浸入によって、それに対する回復メンテナンスが必要となり、不必要なインクを使用して製造コストを増大させてしまうことになる。また、上記回復メンテナンスの実施による生産処理の処理タクトが長時間化してしまうことになる。さらに、生産設備用途のインクジェットヘッドには、耐薬品性処理及び噴射量の均一化等、高価な部品や微細な加工及び調整がなされており、製造コスト等は高価になっているが、上記のノズル傷や乾燥が起これば所望の性能が出せずにインクジェットヘッドを交換せざるを得なくなり、余計なコストが発生してしまう。
【0016】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、インクジェットヘッドのインク噴射面とメンテナンス部との距離合わせを精度良く、かつ遠隔で行い得る液体噴射装置、及び液体噴射装置のメンテナンス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の液体噴射装置は、上記課題を解決するために、インクジェットヘッドを備えた液体噴射装置において、上記インクジェットヘッドのメンテナンスを行う複数のメンテナンス部を備えたメンテナンスユニットと、上記インクジェットヘッド又はメンテナンスユニットを一体に取り付けた昇降移動自在の昇降移動部材と、上記インクジェットヘッド又はメンテナンスユニットを一体に取り付けた少なくとも上記複数のメンテナンス部の対向位置にインクジェットヘッドのインク噴射面を相対的に平行移動自在の平行移動部材と、上記インクジェットヘッドのインク噴射面と各メンテナンス部との高さ方向の距離を間接的に計測する距離検出手段と、上記距離検出手段による上記インクジェットヘッドのインク噴射面と各メンテナンス部との高さ方向の距離の間接的な計測値から、上記昇降移動部材における、上記インクジェットヘッドのインク噴射面をメンテナンスするための昇降移動量を決定し、上記昇降移動部材を昇降移動させるメンテナンス位置設定手段とが設けられていることを特徴としている。
【0018】
本発明の液体噴射装置のメンテナンス方法は、上記課題を解決するために、インクジェットヘッドを備えた液体噴射装置のメンテナンス方法において、上記インクジェットヘッドのメンテナンスを行う複数のメンテナンス部を備えたメンテナンスユニットと、上記インクジェットヘッド又はメンテナンスユニットを一体に取り付けた昇降移動自在の昇降移動部材と、上記インクジェットヘッド又はメンテナンスユニットを一体に取り付けた少なくとも上記複数のメンテナンス部の対向位置にインクジェットヘッドのインク噴射面を相対的に平行移動自在の平行移動部材とを備える工程と、上記インクジェットヘッドのインク噴射面と各メンテナンス部との高さ方向の距離の間接的な計測値から、上記インクジェットヘッドのインク噴射面をメンテナンスするための昇降移動量を決定し、上記昇降移動部材を昇降移動させることを特徴としている。
【0019】
上記の発明によれば、距離検出手段にて、インクジェットヘッドのインク噴射面と各メンテナンス部との高さ方向の距離を間接的に計測する。そして、メンテナンス位置設定手段は、距離検出手段による上記インクジェットヘッドのインク噴射面と各メンテナンス部との高さ方向の距離の間接的な計測値から、上記昇降移動部材における、上記インクジェットヘッドのインク噴射面をメンテナンスするための昇降移動量を決定し、上記昇降移動部材を昇降移動させる。
【0020】
したがって、距離検出手段を用いてインク噴射面と各メンテナンス部との高さ方向の距離を間接的に計測し、メンテナンス位置設定手段にて昇降移動部材の昇降移動量を決定し、上記昇降移動部材を昇降移動させるので、インクジェットヘッドのインク噴射面とメンテナンス部との距離合わせを遠隔で行うことが可能となる。
【0021】
また、インク噴射面と各メンテナンス部との高さ方向の距離は、距離検出手段を用いて間接的に計測するので、距離検出手段にて計測することにより、現在のインク噴射面の高さ方向の位置をその都度測定することできる。また、インク噴射面を基準にして距離を測定するので、微細な調整が可能となる。
【0022】
この結果、インクジェットヘッドのインク噴射面とメンテナンス部との距離合わせを精度良く、かつ遠隔で行い得る液体噴射装置、及び液体噴射装置のメンテナンス方法を提供することができる。
【0023】
また、本発明の液体噴射装置では、前記距離検出手段は、測定対象物の対向位置に設けられて該測定対象物との距離を測定するセンサを有していることが好ましい。
【0024】
これにより、センサとして、例えば光センサ又は音センサ等を使用することができるので、液体噴射装置に容易に適用でき、かつ精度よく距離を計測することが可能となる。
【0025】
また、本発明の液体噴射装置では、前記センサは、光を発光する発光部と該発光部から出射された光の被写体からの反射光を受光する受光部とを備えることにより発光部と被写体との距離を検出する光センサであることが好ましい。
【0026】
これにより、センサとして、例えばレーザ等を用いる光センサにより、液体噴射装置に容易に適用でき、かつ精度よく距離を計測することが可能となる。
【0027】
また、本発明の液体噴射装置では、前記メンテナンスユニットは、前記複数のメンテナンス部及び基準面を並べて搭載する1つのユニットベースを備えていると共に、上記センサは、前記インクジェットヘッドのインク噴射方向であるメンテナンスユニットの基準面の対向側において昇降移動部材に取り付けられ、上記距離検出手段は、上記センサにて上記基準面との距離を測定することにより、上記インクジェットヘッドと各メンテナンス部との高さ方向の距離を演算して求めることが好ましい。
【0028】
これにより、センサを、昇降移動部材と一体に設けて、昇降移動自在の昇降移動部材と一体に移動するインクジェットヘッドと動きを同じにすることができる。この結果、各メンテナンス部の横の一定位置に基準面を並設しておくことにより、1個のセンサにて基準面との距離を測定することができる。したがって、コストの増加を最小限に留めることができる。
【0029】
また、本発明の液体噴射装置では、前記メンテナンスユニットは、前記複数のメンテナンス部及び基準面を並べて搭載する1つのユニットベースを備えていると共に、前記センサは、前記インクジェットヘッドのインク噴射方向とは逆方向であるインクジェットヘッドのインク噴射面の対向側に設けられ、上記距離検出手段は、上記センサにて上記インクジェットヘッドのインク噴射面との距離を測定することにより、上記インクジェットヘッドと各メンテナンス部との高さ方向の距離を演算して求めることが好ましい。
【0030】
これにより、インクジェットヘッドを昇降移動自在に移動させる昇降移動部材の重量が大きくなるのを防止することができる。
【0031】
また、本発明の液体噴射装置では、前記メンテナンスユニットにおける基準面と、前記各メンテナンス部における、前記インクジェットヘッドをメンテナンスするための位置との高さ方向の距離をそれぞれ予め記憶しておく第1記憶手段が設けられていることが好ましい。
【0032】
これにより、メンテナンスユニットにおける基準面と、各メンテナンス部における、インクジェットヘッドをメンテナンスするための位置との高さ方向の距離をそれぞれ予め記憶しておくことによって、調整作業に間違いが生じ難く、作業を簡素化できる。
【0033】
また、本発明の液体噴射装置では、前記センサとインクジェットヘッドのインク噴射面との高さ方向の距離を記憶する第2記憶手段が設けられていることが好ましい。
【0034】
これにより、センサとインクジェットヘッドのインク噴射面との高さ方向の距離を記憶しておくことによって、調整作業に間違いが生じ難く、作業を簡素化できる。また、センサとインクジェットヘッドのインク噴射面との高さ方向の距離を、再測定等した場合に、前回との誤差を求めることができ、インクジェットヘッドとのずれ量等の異常が検知可能となる。
【0035】
また、本発明の液体噴射装置では、前記センサにて計測した該センサと前記基準面との距離、及び上記センサと基準面との距離の計測時における昇降移動部材の前記設定された原点に対する座標を記憶する第3記憶手段を備えていることが好ましい。
【0036】
これにより、センサと基準面との距離を計測し、該距離の計測時における昇降移動部材の設定された原点に対する座標を記憶しておくことによって、該距離と昇降移動部材の座標との対応付けを行うことができる。この結果、昇降移動部材の座標に基づいて、インクジェットヘッドのインク噴射面と各メンテンス部への下降移動距離を把握することができる。したがって、調整作業の無人化及び自動処理化を実現することができる。
【0037】
また、本発明の液体噴射装置では、前記メンテナンス位置設定手段は、前記センサにて計測した該センサと前記基準面との距離と、前記第1記憶手段に記憶されている上記基準面と、前記各メンテナンス部における、前記インクジェットヘッドをメンテナンスするための位置との高さ方向の距離とから、各メンテナンス時における昇降移動部材の昇降移動量を計算することが好ましい。
【0038】
これにより、基準面と各メンテナンス部における、インクジェットヘッドをメンテナンスするための位置との高さ方向の距離を、一度計測し、計算して第1記憶手段に記憶しておくと、その後の昇降移動量の算出においては、第1記憶手段を読み出すだけになるので、昇降移動量の算出時の処理負荷を軽減することができる。
【0039】
また、本発明の液体噴射装置では、前記複数のメンテナンス部での各メンテナンス時における昇降移動部材の設定された前記原点に対する座標をそれぞれ記憶する第4記憶手段を備えていると共に、前記メンテナンス位置設定手段は、複数のメンテナンス部でのメンテナンス時における昇降移動部材の設定された原点に対する座標を上記第4記憶手段にそれぞれ記憶した後にメンテナンスを行うときには、上記第4記憶手段にそれぞれ記憶された昇降移動部材の座標を読み出すことにより、メンテナンス時における昇降移動部材の昇降移動量を計算することが好ましい。
【0040】
これにより、複数のメンテナンス部での各メンテナンス時における昇降移動部材の設定された前記原点に対する座標をそれぞれ第4記憶手段に記憶しているので、メンテナンス時における昇降移動部材の昇降移動量と昇降移動部材の座標とが対応することになる。
【0041】
この結果、昇降移動部材の座標に基づいて、インクジェットヘッドのインク噴射面と各メンテンス部への下降移動距離を把握することができる。したがって、調整作業の無人化及び自動処理化を実現することができる。
【0042】
また、本発明の液体噴射装置では、前記複数のメンテナンス部は、前記インクジェットヘッドのインク噴射面を押圧状態にして該インク噴射面に形成されているインク噴射穴を密閉するキャップ部を含んでいると共に、上記インクジェットヘッドのインク噴射面がキャップ部に対向する位置に存在するときに、前記センサが基準面に対向するように配されていることが好ましい。
【0043】
これにより、複数のメンテナンス部の中で最も使用頻度の高いキャップ部と同じ位置で、センサと基準面との距離の計測が可能になる。この結果、センサと基準面との距離の計測のための特別な移動を行う必要がない。
【0044】
また、本発明の液体噴射装置では、前記インクジェットヘッドには、第1ヘッド基準面を前記センサの対向位置に搭載したヘッドセンサ間距離計測治具が取り外し自在に設けられ、さらに、上記第1ヘッド基準面からインクジェットヘッドのインク噴射面までの高さ方向の距離を記憶する第5記憶手段が設けられていると共に、前記距離検出手段は、上記インクジェットヘッドに取り付けられたヘッドセンサ間距離計測治具に搭載された第1ヘッド基準面とセンサとの距離を該センサにて計測し、上記第1ヘッド基準面とセンサとの計測距離と、上記第5記憶手段に記憶されている、第1ヘッド基準面からインクジェットヘッドのインク噴射面までの距離とを加減算して、上記センサとインクジェットヘッドのインク噴射面との高さ方向の距離を求めると共に、該求めた高さ方向の距離を前記第2記憶手段に記憶することが好ましい。
【0045】
これにより、インクジェットヘッドの昇降移動部材への取り付け時又はインクジェットヘッドの交換時に、ヘッドセンサ間距離計測治具をインクジェットヘッドに取り付けて、センサとインクジェットヘッドのインク噴射面との高さ方向の距離を求めることができる。
【0046】
また、センサとインクジェットヘッドのインク噴射面との高さ方向の距離を求めるときに、インク噴射面に触れないで該距離を求めることができるので、インク噴射面へのダメージを発生させず、かつ正確に計測することができる。
【0047】
また、本発明の液体噴射装置では、前記距離検出手段は、前記センサにて計測した該センサと前記基準面との計測距離と、上記センサと基準面との距離の計測時における昇降移動部材の前記設定された原点に対する座標との対応位置関係の検査を定期的に行うと共に、上記検査時に求めた対応位置関係が、前記第3記憶手段に記憶されている該センサと前記基準面との距離と、センサと基準面との距離の計測時における昇降移動部材の前記設定された原点に対する座標との対応位置関係との差が許容値から外れているときには、センサ位置が異常である旨を通報することが好ましい。
【0048】
これにより、インクジェットヘッドのインク噴射面の位置において、不慮の位置ずれが発生していないか確認することができる。また、位置ずれが発生した状態で、メンテナンス動作を行い続けることによる装置破損を防止することができる。
【0049】
また、本発明の液体噴射装置では、前記距離検出手段は、前記センサにて計測した該センサと前記基準面との計測距離と、上記センサと基準面との距離の計測時における昇降・平行移動部材の前記設定された原点に対する座標との対応位置関係の検査を定期的に行うと共に、上記検査時に求めた対応位置関係が、前記第3記憶手段に記憶されている該センサと前記基準面との距離と、センサと基準面との距離の計測時における昇降・平行移動部材の前記設定された原点に対する座標との対応位置関係との差が許容値から外れているときには、センサ位置が異常である旨を通報することが好ましい。
【0050】
これにより、センサ及び基準面の位置において、不慮の位置ずれが発生していないか確認することができる。また、位置ずれが発生した状態で、メンテナンス動作を行い続けることによる装置破損を防止することができる。
【0051】
また、本発明の液体噴射装置では、前記メンテナンスユニットは、前記1つのユニットベースに複数の基準面を該ユニットベースの表面と同一平行線上に並べて搭載していると共に、前記距離検出手段は、上記センサにて上記各基準面との距離を計測すると共に、前記メンテナンス位置設定手段は、上記センサと各基準面との計測距離から上記インクジェットヘッドのインク噴射面と1つのメンテナンス部との距離を演算してそれぞれ求めたときの差により、インクジェットヘッドのインク噴射面とユニットベースとの相対傾き量を計算することが好ましい。
【0052】
これにより、メンテナンスユニットの傾きも含めた位置合わせができるので、より高精度な位置合わせが実現できる。
【0053】
また、本発明の液体噴射装置では、前記メンテナンスユニットは、少なくとも1個のメンテナンス部と基準面とを並べて搭載する複数のユニットベースを備えていると共に、上記センサは、前記インクジェットヘッドのインク噴射方向であるメンテナンスユニットの基準面の対向側において昇降移動部材に取り付けられ、上記距離検出手段は、上記センサにて上記各基準面との距離を測定することにより、上記インクジェットヘッドと各メンテナンス部との高さ方向の距離をそれぞれ演算して求めることが好ましい。
【0054】
これにより、生産装置等の構成や動作形態によって必要なユニットベースを複数備えていても、インクジェットヘッドのインク噴射面と各メンテナンス部との位置合わせを簡単に行うことができる。
【0055】
また、本発明の液体噴射装置では、前記センサとインクジェットヘッドのインク噴射面との高さ方向の距離を求めるためのヘッドセンサ間距離計測ユニットがインクジェットヘッドに対向可能に設けられていると共に、上記ヘッドセンサ間距離計測ユニットは、上記インクジェットヘッドの下降移動によりインク噴射面と当接する当接部と、上記当接部を上方向に付勢する弾性部材と、上記当接部に固定されかつ当接部の側方に延びて設けられて、センサとの距離を計測するための第2ヘッド基準面を有する第2ヘッド基準部材とを備え、さらに、上記第2ヘッド基準面と上記当接部におけるインク噴射面との当接面との高さ方向の距離を記憶する第6記憶手段が設けられていると共に、前記距離検出手段は、前記昇降移動部材を下降移動させながら上記第2ヘッド基準面とセンサとの距離を該センサにて計測したときの、上記インク噴射面の当接部への当接に伴う、センサと第2ヘッド基準面との距離の変化がなくなったときの該距離と、上記第6記憶手段に記憶されている第2ヘッド基準面と上記当接部のインク噴射面との当接面との距離との加減算により、上記センサとインクジェットヘッドのインク噴射面までの高さ方向の距離を求め、該求めた高さ方向の距離を前記第2記憶手段に記憶することが好ましい。
【0056】
これにより、センサとインクジェットヘッドのインク噴射面との高さ方向の距離を求める場合に、ヘッドセンサ間距離計測ユニットを用いることにより、ヘッドセンサ間距離計測治具等を取り付ける必要がなく、センサとインクジェットヘッドのインク噴射面との高さ方向の距離を求めることができる。
【0057】
また、人手を介さずに計測が可能となると共に、インク噴射面へのダメージを発生させずに、かつ正確に計測することができる。
【0058】
また、本発明の液体噴射装置では、前記基準面と第1ヘッド基準面又は第2ヘッド基準面とは、同一の素材かつ同一の表面仕上げがなされていることが好ましい。
【0059】
これにより、センサとインクジェットヘッドのインク噴射面との高さ方向の距離の算出、及び基準面と各メンテナンス部との高さ方向の距離の算出において、計測誤差を生じる可能性が小さくなるので、正確な計測が可能となる。
【発明の効果】
【0060】
本発明の液体噴射装置は、以上のように、インクジェットヘッドのメンテナンスを行う複数のメンテナンス部を備えたメンテナンスユニットと、上記インクジェットヘッド又はメンテナンスユニットを一体に取り付けた昇降移動自在の昇降移動部材と、上記インクジェットヘッド又はメンテナンスユニットを一体に取り付けた少なくとも上記複数のメンテナンス部の対向位置にインクジェットヘッドのインク噴射面を相対的に平行移動自在の平行移動部材と、上記インクジェットヘッドのインク噴射面と各メンテナンス部との高さ方向の距離を間接的に計測する距離検出手段と、上記距離検出手段による上記インクジェットヘッドのインク噴射面と各メンテナンス部との高さ方向の距離の間接的な計測値から、上記昇降移動部材における、上記インクジェットヘッドのインク噴射面をメンテナンスするための昇降移動量を決定し、上記昇降移動部材を昇降移動させるメンテナンス位置設定手段とが設けられているものである。
【0061】
本発明の液体噴射装置のメンテナンス方法は、以上のように、インクジェットヘッドのメンテナンスを行う複数のメンテナンス部を備えたメンテナンスユニットと、上記インクジェットヘッド又はメンテナンスユニットを一体に取り付けた昇降移動自在の昇降移動部材と、上記インクジェットヘッド又はメンテナンスユニットを一体に取り付けた少なくとも上記複数のメンテナンス部の対向位置にインクジェットヘッドのインク噴射面を相対的に平行移動自在の平行移動部材とを備える工程と、上記インクジェットヘッドのインク噴射面と各メンテナンス部との高さ方向の距離の間接的な計測値から、上記インクジェットヘッドのインク噴射面をメンテナンスするための昇降移動量を決定し、上記昇降移動部材を昇降移動させる方法である。
【0062】
それゆえ、インクジェットヘッドのインク噴射面とメンテナンス部との距離合わせを精度良く、かつ遠隔で行い得る液体噴射装置、及び液体噴射装置のメンテナンス方法を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1ないし図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0064】
本実施の形態の液体噴射装置10は、図1に示すように、インクジェットヘッド1、並びに距離検出手段、センサ及び光センサとしての距離センサ2を有しており、これらインクジェットヘッド1及び距離センサ2は、複数のメンテナンス部の対向位置等にインクジェットヘッド1の後述するインク噴射面4を平行移動させると共に、各メンテナンス部の対向位置でインクジェットヘッド1を上下方向に移動させる昇降移動部材及び平行移動部材としての3次元移動部材3に取り付けられている。詳細には、3次元移動部材3は、図1の左右及び紙面奥行き方向に移動可能な図示しないステージに搭載されており、これにより被噴射物の噴射位置への移動、及び必要な各メンテナンス位置への移動が行われるようになっている。また、上記図示しないステージは、例えば、ステージにおける退避位置である所定の位置を原点Oとして、該ステージの特定ポイントPが3次元の座標値P(X,Y,Z)として設定されている。したがって、図1に示すように、このステージに搭載された3次元移動部材3の上下方向の座標も、3次元移動部材3の例えば上端位置を基準として、例えば、座標ZRとして定まるようになっている。したがって、3次元移動部材3の座標ZRは、原点O(0,0,0)からのZ軸上での座標値を表している。
【0065】
尚、本実施の形態では、上述したように、インクジェットヘッド1及び距離センサ2は、複数のメンテナンス部の対向位置等にインクジェットヘッド1の後述するインク噴射面4を平行移動させると共に、各メンテナンス部の対向位置でインクジェットヘッド1を上下方向に移動させる昇降移動部材及び平行移動部材としての3次元移動部材3に取り付けられている。つまり、3次元移動部材3は、本発明の昇降移動部材と平行移動部材とを兼ねている。しかしながら、本発明においては、必ずしもこれに限らない。すなわち、本発明においては、昇降移動部材は、インクジェットヘッド1又は複数のメンテナンス部を備えたメンテナンスユニットのいずれかを一体に取り付けてこれらを昇降移動自在となっていれば足りる。また、平行移動部材は、インクジェットヘッド1又はメンテナンスユニットのいずれかを一体に取り付けて、少なくとも上記複数のメンテナンス部の対向位置にインクジェットヘッドのインク噴射面を相対的に平行移動自在となっていれば足りる。
【0066】
さらに、本実施の形態では、インクジェットヘッド1は3次元移動部材3に取り付けられ、3次元移動部材3が昇降移動することによって、インクジェットヘッド1が昇降移動することになっているが、本発明においては、必ずしもこれに限らず、後述する各種のメンテナンス部を搭載するメンテナンスユニット5を昇降移動させる図示しない例えばステージであってもよい。
【0067】
上記インクジェットヘッド1には、インク噴射穴4aが穿設されたインク噴射面4が設けられており、インク噴射穴4aからインクが噴射されるようになっている。尚、インクジェットヘッド1にはインクを流入する流路が形成されるがここでは図示していない。
【0068】
上記距離センサ2は、本実施の形態では、インク噴射穴4aからの液体噴射方向と同じく下方向の距離を計測するように3次元移動部材3に取り付けられている。この距離センサ2は、例えば、光を発光する図示しない発光部と、該発光部から出射された光の被写体からの反射光を受光する図示しない受光部とを備えることにより発光部と被写体との距離を検出する光センサからなっている。しかし、本発明では、必ずしもこれに限らず、例えば、測定対象物の対向位置に設けられて該測定対象物との距離を測定するセンサを用いることができる。このようなセンサの具体例としては、例えば、上述したレーザを用いた光センサ、超音波を用いたセンサ、又は撮像画像のフォーカス(ピント)を用いて測長するセンサがある。
【0069】
一方、インクジェットヘッド1におけるインク噴射穴4aと対向する位置にはメンテナンスユニット5が配置されている。このメンテナンスユニット5には、インク噴射穴4aを押し付けて密閉して、保管やインク吸引するためのキャップ部6、及びインク噴射穴4aが形成されたインク噴射面4を払拭清掃するためのワイピングブレードを備えたワイプ部7等が装備されている。
【0070】
上記キャップ部6及びワイプ部7はインクジェットヘッド1をメンテナンスするためのものであり、これらは本発明における複数のメンテナンス部を構成している。尚、メンテナンス部は、これらキャップ部6及びワイプ部7のみに限らず清掃用の布等を含んでいてもよい。
【0071】
上記キャップ部6及びワイプ部7等の複数のメンテナンス部は、ユニットベース8に取り付けられ土台を同じくしており、さらにユニットベース8には基準面9aを有する基準部材9が取り付けられている。この基準面9aは、本実施の形態のように専用の部材である基準部材9を取り付けてその上面を基準面9aとしてもよいが、基準部材9を取り付けることなく、ユニットベース8の一部を基準面9aとして使用してもよい。この基準面9aは、距離センサ2にて距離センサ2と基準面9aとの間の計測距離HRが計測される計測点となる。
【0072】
距離センサ2は、基準面9aと対向する位置に存在するときに基準面9aまでの計測距離HRが計測される。尚、各メンテナンス部のうち最も使用されることが多いのは、保管時に使用し、かつ噴射不調状態から回復するときにインクを吸引するキャップ部6である。したがって、インクジェットヘッド1のインク噴射穴4aがキャップ部6と対向する位置で距離センサ2にて計測距離HRを計測できるようにしておくことは、計測のための特別な移動を生じさせず、かつ通常のメンテナンスにおいて、計測処理を短時間で済ませることができる。したがって、基準面9aにおけるユニットベース8上の配置位置としては、図1に示すように、基準面9aの計測位置が、キャップ部6とインクジェットヘッド1が位置決めされる位置となる位置であることが望ましい。
【0073】
ところで、上記構成の液体噴射装置10においては、インクジェットヘッド1とキャップ部6及びワイプ部7等のメンテナンス部との距離合わせについては、非常に繊細な調整、管理が要求される。
【0074】
そこで、本実施の形態では、距離センサ2を備えることによって、距離センサ2にて、距離センサ2とインクジェットヘッド1のインク噴射面4との距離、及び基準面9aとキャップ部6及びワイプ部7等の各メンテナンス部との距離を求めておくことにより、自動的にかつ正確にインクジェットヘッド1のメンテナンス時の移動距離を求めることができるようになっている。
【0075】
ここで、本実施の形態では、距離センサ2では、基準面9aとの計測距離HRが計測できるのみである。したがって、インクジェットヘッド1のインク噴射面4とキャップ部6及びワイプ部7等のメンテナンス部との距離は、上記計測距離HRに基づいて、演算により求めることになる。したがって、演算のファクタとして、予め、距離センサ2の取り付け位置とインクジェットヘッド1のインク噴射面4との高さ方向の距離がどれ位あるか、及び基準面9aと各メンテナンス部との高さ方向の距離を把握しておく必要がある。
【0076】
尚、距離センサ2の取り付け位置とは、正確には、距離センサ2の図示しない発光部及び受光部の高さ方向の取り付け位置をいうが、簡略のため、距離センサ2の位置は、高さ方向において、例えば、距離センサ2のセンサ下端面2aの取り付け位置であるとして説明する。また、以下の説明では、距離センサ2のセンサ下端面2aの取り付け位置とインクジェットヘッド1のインク噴射面4との距離のことを、簡単のため、「距離センサ2とインクジェットヘッド1のインク噴射面4との距離」ということがある。
【0077】
最初に、上記距離センサ2とインクジェットヘッド1のインク噴射面4との距離を求める方法について、図2に基づいて説明する。図2は距離センサ2の取り付け位置であるセンサ下端面2aとインクジェットヘッド1の取り付け位置であるインク噴射面4とが高さ方向においてどれ位の距離があるかを求めるための装置を示す正面図である。
【0078】
図2に示すように、距離センサ2の取り付け位置であるセンサ下端面2aとインクジェットヘッド1のインク噴射面4との高さ方向の距離HH3を求めるときには、まず、インクジェットヘッド1にヘッドセンサ間距離計測治具11を取り付ける。このヘッドセンサ間距離計測治具11は、例えば、断面L字形状となっており、このヘッドセンサ間距離計測治具11の距離センサ2に対向する位置には、第1ヘッド基準面12aを有する第1ヘッド基準部材12が搭載されている。したがって、距離センサ2にて、第1ヘッド基準面12aに光を照射して、第1ヘッド基準面12aと距離センサ2のセンサ下端面2aとの間の計測距離HH1を計測する。
【0079】
尚、上記ヘッドセンサ間距離計測治具11は、インクジェットヘッド1に取り外し自在に設けられている。したがって、例えば、インクジェットヘッド1の製造時に、ヘッドセンサ間距離計測治具11をインクジェットヘッド1に取り付けて距離HH3を求め、この距離HH3を求めた後は、インクジェットヘッド1から取り外されるようになっている。
【0080】
また、距離HH3の正確な算出のため、ヘッドセンサ間距離計測治具11は、インクジェットヘッド1の製造時に、インク噴射面4の貼り付けや高さ調整工程等で位置決め用に使用する面や穴等、インク噴射面4の高さと同じ高さ関係にある箇所に沿って取り付ける必要がある。すなわち、ヘッドセンサ間距離計測治具11は、インク噴射面4の高さ方向の位置と、インク噴射面4の高さ方向の位置と、第1ヘッド基準面12aの高さ方向の位置とが互いに平行となるように取り付ける必要がある。
【0081】
第1ヘッド基準面12aと距離センサ2のセンサ下端面2aとの間の計測距離HH1が計測されると、この計測距離HH1から、第1ヘッド基準面12aとインク噴射面4との間の距離HH2を差し引いた距離HH3が、距離センサ2からインクジェットヘッド1のインク噴射面4までの距離となる。尚、距離HH2は、設計値から決まってくる値であり、ヘッドセンサ間距離計測治具11をインクジェットヘッド1に取り付けたときにその取り付け位置に基づいて計算により定まる値である。
【0082】
このようにして求めた距離HH3は、後述するように、第1記憶部25に記憶される。
【0083】
次に、複数のメンテナンス部であるキャップ部6及びワイプ部7における高さ方向の取り付け位置と基準面9aとの高さ方向の距離の求め方について、図3及び図4に基づいて説明する。
【0084】
最初に、図3に基づいて、キャップ部6と基準面9aとの高さ方向の距離HC3について説明する。図3はキャップ部6と基準面9aとの高さ方向の距離HC3を示す正面図である。
【0085】
図3に示すように、キャップ部6では、上記インクジェットヘッド1のインク噴射穴4aの保湿やインク吸引が主な用途であることから、空気等が流入せず密閉空間が得られるように、キャップ部6の先端とインク噴射面4が接触してからさらに数ミリメートル押し込まれた位置が望ましい。このため、キャップ部6におけるインク噴射面4との当接部は、ゴム13等の柔軟な部材で構成されており、また、このゴム13等は図示しないバネで支持され、押圧が加わると上下動するように構成されている。
【0086】
基準面9aからの高さで言えば、基準面9aとゴム13の上端13aとの距離HC1から必要な押し込み量HC2を引いた距離HC3が基準面9aからキャップ部6までの高さ方向の距離となる。この求めた距離HC3は、後述するように、第1記憶部25に記憶される。
【0087】
ここで、基準部材9の基準面9aまでのユニットベース8の表面からの高さ及びキャップ部6のゴム13の上端13aまでの高さは、それぞれ機構の設計値から分かる値である。すなわち、基準部材9及びキャップ部6はいずれもユニットベース8に載置されていることから、距離HC1は、引き算により求まる。
【0088】
また、押し込み量HC2は、インクジェットヘッド1が良好に噴射できるような値を実験・評価して求める値である。尚、保湿時の押し込み量HC2とインク吸引における押し込み量HC2とは、別々に設定されていてもよい。
【0089】
次に、図4に基づいて、ワイプ部7と基準面9aとの高さ方向の距離HW3について説明する。図4はワイプ部7と基準面9aとの高さ方向の距離HW3を示す正面図である。
【0090】
図4に示すように、ワイプ部7では、上記インクジェットヘッド1におけるインク噴射面4を払拭清掃することが用途であることから、払拭動作によってインク噴射面4の汚れを確実に除去でき、かつ過度の払拭圧によってインク噴射面4を傷つけないような高さが望ましい。一般的には、ゴム製のワイピングブレード14とインク噴射面4との当接位置からさらに1ミリメートル程度押し込んだ位置が望ましい。
【0091】
このため、ワイプ部7のインク噴射面4との当接部は、ワイピングブレード14等の柔軟な部材で構成され、インク噴射面4との当接によって撓み、払拭圧が発生する。基準面9aからの距離で言えば、基準面9aとワイピングブレード14の撓み前上端面14aとの高さ方向の距離HW1から必要な払拭圧すなわち撓み量HW2を引いた撓み後上端面14bの高さ方向の距離HW3が、基準面9aとワイプ部7との距離となる。
【0092】
ここで、距離HW1は、基準部材9及びワイプ部7がユニットベース8に載置されているので、機構の設計値から分かる値である。また、撓み量HW2は、インク噴射面4の汚れが良好に払拭できるような値を実験・評価して求める値である。
【0093】
以上のようにして、距離センサ2のセンサ下端面2aの取り付け位置とインクジェットヘッド1のインク噴射面4との高さ方向の距離HH3と、基準面9aとキャップ部6との距離HC3と、基準面9aとワイプ部7との距離HW3とが分かっていれば、距離センサ2と基準面9aとの計測距離HRを計測することにより、現在のインクジェットヘッド1におけるインク噴射面4の位置から複数のメンテナンス部への各位置へのメンテナンス時の下降移動距離が計算できる。
【0094】
例えば、現在のインクジェットヘッド1におけるインク噴射面4の位置からキャップ部6への昇降移動量としての下降移動距離GC、つまりインク噴射面4とキャップ部6とのギャップは、
GC=HR−(HC1−HC2)−(HH1−HH2)=HR−HC3−HH3
となる。
【0095】
また、現在のインクジェットヘッド1におけるインク噴射面4の位置からワイプ部7への昇降移動量としての下降移動距離GW、つまりインク噴射面4とワイプ部7とのギャップは、
GW=HR−(HW1−HW2)−(HH1−HH2)=HR−HW3−HH3
となる。尚、正負の符号については、距離センサ2とインクジェットヘッド1のインク噴射面4との高さ方向の計測距離HH1の関係、又は基準面9aと各メンテナンス部との高さ方向の距離HC3・HW3との関係によって変わってくるので、考慮すればよい。
【0096】
ところで、上記下降移動距離GC・GWが求まった場合において、実際のインクジェットヘッド1におけるインク噴射面4の下降移動量は、3次元移動部材3の座標として設定されることが多い。上記の距離計測において座標が関連してくるのは、距離センサ2による基準面9aの計測である。また、距離センサ2は、通常、距離計測が可能な範囲には限界があるので、基準面9aと距離センサ2との計測距離HRが計測可能範囲に入るように3次元移動部材3を移動させる必要が生じる場合もある。したがって、基準面9aの計測時における3次元移動部材3の座標ZRを、上記下降移動距離GC・GWに勘案し、キャップ部6における3次元移動部材3の座標ZCは、
ZC=ZR+GC
とし、ワイプ部7における3次元移動部材3の座標ZWは、
ZW=ZR+GW
とすればよい。
【0097】
尚、上記計測値及び設定値は後述する第1記憶部25〜第5記憶部29に格納し、必要に応じて読み出すことによって、処理の簡素化、高速化を図ることができる。
【0098】
次に、本実施の形態の制御ブロックについて、図5に基づいて説明する。図5は、上記のデータ処理、計測処理を行う制御部の一例を示すブロック図である。
【0099】
本実施の形態の制御部21には、図5に示すように、第1記憶手段としての第1記憶部25、第2記憶手段としての第2記憶部26、第3記憶手段としての第3記憶部27、第4記憶手段としての第4記憶部28、及び第4記憶手段としての第5記憶部29、並びに3次元移動部材3及び距離センサ2が接続されている。
【0100】
上記制御部21は、距離検出手段としての距離検出部22とメンテナンス位置設定手段としてのメンテナンス位置設定部23とを有している。
【0101】
上記距離検出部22は、計測距離HR計測部22aと、距離HH3検出部22bと、距離HC3検出部22cと、距離HW3検出部22dとを有している。また、メンテナンス位置設定部23は、下降移動距離GC設定部23aと、下降移動距離GW設定部23bと、3次元移動部材昇降移動部23cとを備えている。
【0102】
そして、上記制御部21は、距離センサ2の計測距離HR及び3次元移動部材3の座標等を読み込み、3次元移動部材3に対して駆動指令を与え、各第1記憶部25〜第5記憶部29のデータに基づいて計算を行い、計算結果を各第1記憶部25〜第5記憶部29に格納する。
【0103】
具体的には、第1記憶部25には、キャップ部6及びワイプ部7の基準面9aに対する高さ方向の距離HC3・HW3が記憶される。第2記憶部26には、距離センサ2とインクジェットヘッド1のインク噴射面4との高さ方向の距離HH3が記憶される。第3記憶部27には、距離センサ2で計測された計測距離HR、及び距離センサ2での基準面9aとの距離の計測時における3次元移動部材3の座標ZRが記憶される。第4記憶部28には、複数のメンテナンス部におけるメンテナンス時の3次元移動部材3の座標ZC・ZWが格納される。そして、第5記憶部29には、第1ヘッド基準面12aとインク噴射面4との赤さ方向の距離HH2が記憶される。
【0104】
続いて、上記制御部21における処理フロー例の一部を、図6及び図7に基づいて説明する。最初に、図6に基づいて、距離HH3検出部22bにおける距離HH3検出処理について説明する。図6は距離HH3検出処理を示すフローチャートである。
【0105】
図2に示す距離センサ2とインク噴射面4との高さ方向の距離HH3を求めるには、図6に示すように、まず、インクジェットヘッド1にヘッドセンサ間距離計測治具11を取り付ける(S1)。次いで、第1ヘッド基準面12aと距離センサ2との間の距離を距離センサ2にて計測し(S2)、計測距離HH1を読み込む(S3)。次に、第5記憶部29に記憶されている第1ヘッド基準面12aとインク噴射面4との高さ方向の距離HH2を読み込み(S4)、距離センサ2とインク噴射面4との高さ方向の距離HH3を計算する(S5)。その後、距離HH3を第2記憶部26に記憶する。以上で、距離センサ2とインク噴射面4との高さ方向の距離HH3が求まる。
【0106】
次に、図7に基づいて、計測距離HR計測部22a及びメンテナンス位置設定部23における下降移動距離GC設定部23a及び下降移動距離GW設定部23bにおける各メンテナンス部との距離検出処理について説明する。図7は各メンテナンス部との距離検出処理、最終的には、メンテナンス時の3次元移動部材3の座標を求めるフローチャートである。
【0107】
図7に示すように、まず、距離センサ2を基準面9aを臨む位置に移動させ(S11)、距離センサ2と基準面9aとの距離を計測する(S12)。これにより、距離センサ2の計測距離HRが読み込まれ、次いで、そのときの3次元移動部材3の座標ZRが読み込まれる(S13)。そして、S13で読み込まれた値が、第3記憶部27に記憶される(S14)。次いで、第1記憶部25に記憶されている基準面9aからキャップ部6までの高さ方向の距離HC3と、基準面9aからワイプ部7までの高さ方向の距離HW3とを読み込むと共に(S15)、第2記憶部26に記憶されている距離センサ2とインクジェットヘッド1のインク噴射面4との高さ方向の距離HH3を読み込む(S16)。次いで、各メンテナンス部における3次元移動部材3の下降移動距離GC・GWを計算し、さらに、3次元移動部材3の座標ZC・ZWを計算する(S17)。そして、計算された3次元移動部材3の座標ZC・ZWを、第4記憶部28に記憶する(S18)。
【0108】
以上で複数メンテナンス部における現在位置の3次元移動部材3の座標ZC・ZWを設定することができる。
【0109】
このように、本実施の形態の液体噴射装置10及びそのメンテナンス方法では、インクジェットヘッド1のメンテナンスを行う複数のメンテナンス部を備えたメンテナンスユニット5と、インクジェットヘッド1又はメンテナンスユニット5を一体に取り付けた昇降移動自在かつ少なくとも複数のメンテナンス部の対向位置にインクジェットヘッド1のインク噴射面4を相対的に平行移動自在の3次元移動部材3と、インクジェットヘッド1のインク噴射面4と各メンテナンス部との高さ方向の距離を間接的に計測する距離検出部22と、距離検出部22によるインクジェットヘッド1のインク噴射面4と各メンテナンス部との高さ方向の距離の間接的な計測値から、3次元移動部材3における、インクジェットヘッド1のインク噴射面4をメンテナンスするための昇降移動量を決定し、3次元移動部材3を昇降移動させるメンテナンス位置設定部23とが設けられている。
【0110】
したがって、距離検出部22を用いてインク噴射面4と各メンテナンス部との高さ方向の距離を間接的に計測し、メンテナンス位置設定部23にて3次元移動部材3の昇降移動量を決定し、3次元移動部材3を昇降移動させるので、インクジェットヘッド1のインク噴射面4とメンテナンス部との距離合わせを遠隔で行うことが可能となり、作業時間の短縮を実現することができる。
【0111】
また、インク噴射面4と各メンテナンス部との高さ方向の距離は、距離検出部22を用いて間接的に計測するので、距離検出部22にて計測することにより、現在のインク噴射面4における高さ方向の位置をその都度測定することできる。また、インク噴射面4を基準にして距離を測定するので、微細な調整が可能となる。
【0112】
さらに、目視等による設定ではないので、装置内に作業者が入り込む必要がなく装置スペースを小さくできると共に、作業者固有の誤差等も排除することができる。また、インクジェットヘッド1のインク噴射面の清掃を拭き残しや傷付きなしに良好に行うことが可能になるので、余計なコスト増が発生せず、インクジェットヘッド1の寿命も延ばせ、良好な噴射性能を保持することができる。
【0113】
この結果、インクジェットヘッドのインク噴射面とメンテナンス部との距離合わせを精度良く、かつ遠隔で行い得る液体噴射装置、及び液体噴射装置のメンテナンス方法を提供することができる。
【0114】
また、本実施の形態の液体噴射装置10では、距離検出手段は、測定対象物の対向位置に設けられて該測定対象物との距離を測定するセンサを有している。これにより、センサとして、例えば光センサ又は音センサ等を使用することができるので、液体噴射装置10に容易に適用でき、かつ精度よく距離を計測することが可能となる。
【0115】
また、本実施の形態の液体噴射装置10では、センサは、光を発光する発光部と該発光部から出射された光の被写体からの反射光を受光する受光部とを備えることにより発光部と被写体との距離を検出する光センサであることが好ましい。これにより、センサとして、例えばレーザ等を用いる光センサにより、液体噴射装置10に容易に適用でき、かつ精度よく距離を計測することが可能となる。
【0116】
また、本実施の形態の液体噴射装置10では、メンテナンスユニット5は、複数のメンテナンス部及び基準面9aを並べて搭載する1つのユニットベース8を備えていると共に、距離センサ2は、インクジェットヘッド1のインク噴射方向であるメンテナンスユニット5の基準面9aの対向側において3次元移動部材3に取り付けられ、距離検出部22は、距離センサ2にて基準面9aとの計測距離HRを測定することにより、インクジェットヘッド1と各メンテナンス部との高さ方向の距離を演算して求める。
【0117】
これにより、距離センサ2を、3次元移動部材3と一体に設けて、昇降移動自在かつ平行移動自在の3次元移動部材3と一体に移動するインクジェットヘッド1と動きを同じにすることができる。この結果、各メンテナンス部の横の一定位置に基準面9aを並設しておくことにより、1個の距離センサ2にて基準面9aとの距離を測定することができる。したがって、コストの増加を最小限に留めることができる。
【0118】
また、本実施の形態の液体噴射装置10では、メンテナンスユニット5における基準面9aと、各メンテナンス部における、インクジェットヘッド1をメンテナンスするための位置との高さ方向の距離HC3・HW3をそれぞれ予め記憶しておく第1記憶部25が設けられている。
【0119】
これにより、メンテナンスユニット5における基準面9aと、各メンテナンス部における、インクジェットヘッド1をメンテナンスするための位置との高さ方向の距離HC3・HW3をそれぞれ予め記憶しておくことによって、調整作業に間違いが生じ難く、作業を簡素化できる。
【0120】
また、基準面9aと各メンテナンス部との距離HC3・HW3を再測定等した場合に、前回との誤差を求めることができ、ずれ量、ユニットの異常等が検知可能となる。
【0121】
また、本実施の形態の液体噴射装置10では、距離センサ2とインクジェットヘッド1のインク噴射面4との高さ方向の距離HH3を記憶する第2記憶部26が設けられている。
【0122】
これにより、距離HH3を記憶しておくことによって、調整作業に間違いが生じ難く、作業を簡素化できる。また、距離HH3を、再測定等した場合に、前回との誤差を求めることができ、インクジェットヘッドとのずれ量等の異常が検知可能となる。
【0123】
また、本実施の形態の液体噴射装置10では、距離センサ2にて計測した該距離センサ2と基準面9aとの計測距離HR、及び計測距離HRの計測時における3次元移動部材3の設定された原点に対する座標ZRを記憶する第3記憶部27を備えている。
【0124】
これにより、距離センサ2と基準面9aとの計測距離HRを計測し、該計測距離HRの計測時における3次元移動部材3の座標ZRを記憶しておくことによって、該計測距離HRと3次元移動部材3の座標ZRとの対応付けを行うことができる。この結果、3次元移動部材3の座標ZRに基づいて、インク噴射面4と各メンテンス部への下降移動距離を把握することができる。したがって、調整作業の無人化及び自動処理化を実現することができる。
【0125】
また、本実施の形態の液体噴射装置10では、メンテナンス位置設定部23は、距離センサ2にて計測した該距離センサ2と基準面9aとの計測距離HRと、第1記憶部25に記憶されている基準面9aと、各メンテナンス部における、インクジェットヘッド1をメンテナンスするための位置との高さ方向の距離とから、各メンテナンス時における3次元移動部材3の下降移動距離GC・GWを計算する。
【0126】
これにより、基準面9aと各メンテナンス部における、インクジェットヘッドをメンテナンスするための位置との高さ方向の距離を、一度計測し、計算して第1記憶部25に記憶しておくと、その後の昇降移動量の算出においては、第1記憶部25を読み出すだけになるので、下降移動距離GC・GWの算出時の処理負荷を軽減することができる。
【0127】
また、本実施の形態の液体噴射装置10では、複数のメンテナンス部での各メンテナンス時における3次元移動部材3の設定された原点に対する座標ZC・ZWをそれぞれ記憶する第4記憶部28を備えていると共に、メンテナンス位置設定部23は、複数のメンテナンス部でのメンテナンス時における3次元移動部材3の座標ZC・ZWを第4記憶部28にそれぞれ記憶した後にメンテナンスを行うときには、第4記憶部28それぞれ記憶された3次元移動部材3の座標ZC・ZWを読み出すことにより、メンテナンス時における3次元移動部材3の下降移動距離GC・GWを計算する。
【0128】
これにより、複数のメンテナンス部での各メンテナンス時における3次元移動部材3の座標ZC・ZWをそれぞれ第4記憶部28に記憶しているので、メンテナンス時における3次元移動部材3の下降移動距離GC・GWと、3次元移動部材3の座標ZC・ZWが対応することになる。
【0129】
この結果、3次元移動部材3の座標ZC・ZWに基づいて、インクジェットヘッドのインク噴射面4と各メンテンス部への下降移動距離GC・GWを把握することができる。したがって、調整作業の無人化及び自動処理化を実現することができる。
【0130】
また、本実施の形態の液体噴射装置10では、複数のメンテナンス部は、インクジェットヘッド1のインク噴射面4を押圧状態にして該インク噴射面4に形成されているインク噴射穴4aを密閉するキャップ部6を含んでいると共に、インクジェットヘッド1のインク噴射面4がキャップ部6に対向する位置に存在するときに、距離センサ2が基準面9aに対向するように配されている。
【0131】
これにより、複数のメンテナンス部の中で最も使用頻度の高いキャップ部6と同じ位置で、距離センサ2と基準面9aとの距離の計測が可能になる。この結果、距離センサ2と基準面9aとの距離の計測のための特別な移動を行う必要がない。
【0132】
また、通常のメンテナンス中に基準面を計測することも可能であるので、計測中のインクジェットヘッド1のインク噴射穴4aの乾燥を防ぐことができる。
【0133】
また、本実施の形態の液体噴射装置10では、インクジェットヘッド1には、第1ヘッド基準面12aを距離センサ2の対向位置に搭載したヘッドセンサ間距離計測治具11が取り外し自在に設けられ、さらに、第1ヘッド基準面12aからインクジェットヘッド1のインク噴射面4までの高さ方向の距離HH2を記憶する第5記憶部29が設けられている。また、距離検出部22は、インクジェットヘッド1に取り付けられたヘッドセンサ間距離計測治具11に搭載された第1ヘッド基準面12aと距離センサ2と計測距離HH1を該距離センサ2にて計測し、この計測距離HH1と、第5記憶部29に記憶されている、距離HH2とを加減算して、距離センサ2とインクジェットヘッド1のインク噴射面4との高さ方向の距離HH3を求めると共に、該求めた高さ方向の距離HH3を第2記憶部26に記憶する。
【0134】
これにより、インクジェットヘッド1の3次元移動部材3への取り付け時又はインクジェットヘッド1の交換時に、ヘッドセンサ間距離計測治具11をインクジェットヘッド1に取り付けて、距離HH3を求めることができる。
【0135】
また、距離HH3を求めるときに、インク噴射面4に触れないで該距離HH3を求めることができるので、インク噴射面4へのダメージを発生させず、かつ正確に計測することができる。
【0136】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図8に基づいて説明すれば、以下の通りである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1及び実施の形態2と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1及び実施の形態2の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0137】
本実施の形態の液体噴射装置30は、図8示すように、ユニットベース8に基準面9aに加えて、第2基準面31aを有する第2基準部材31をさらに備えたものとなっている。
【0138】
すなわち、本実施の形態の液体噴射装置30では、この第2基準部材31の第2基準面31aと基準部材9の基準面9aとの複数個所を距離センサ2にて計測することにより、メンテナンスユニット5とインクジェットヘッド1との傾きを検知することができるようになっている。
【0139】
具体的には、図8に示すように、基準面9a及び第2基準面31aでの距離センサ2での計測距離HR・HR2、基準面9aと第2基準面31aとの水平距離XR、基準面9aからのキャップ部6までの水平距離XC、並びに基準面9aからワイプ部7までの水平距離XWに基づいて、キャップ部6とワイプ部7における3次元移動部材3の座標ZC・ZWを計算して使用する。これによって、非常に正確な位置合わせが実現でき、良好なメンテナンスを行うことができる。尚、基準面9a及び第2基準面31aは、ユニットベース8の表面と同一平行線上に並べて搭載されている。
【0140】
計算例を示せば、例えば、図8に示すように、基準面9aと第2基準面31aとの水平距離XRが100mmであり、基準面9aからワイプ部7までの水平距離XWが50mmである場合に、基準面9aでの計測距離HRが30mmであり、第2基準面31aでの計測距離HR2が32mmであったとき、ワイプ部7における計測値に相当する相当距離HRWは、
HRW=(32−30)×(50/100)+30=31mm
となり、この相当距離HRWを用いて、3次元移動部材3の座標ZWを、
ZW=ZR+HRW−(HW1−HW2)
として求めればよい。
【0141】
尚、実施の形態1において、基準面9aと距離センサ2の対向位置として、キャップ部6とインク噴射面4の対向位置が望ましいと述べたが、本実施の形態では、第2基準面31aと距離センサ2との対向位置としても、ワイプ部7による清掃位置にインク噴射面4がある位置に設定することによって、特別な測定箇所に移動する必要なく、ワイピングのシーケンスの冒頭に計測を行う等、処理シーケンスも特別に設ける必要もない。
【0142】
また、実稼動においては、ワイプ部7用の距離計測として第2基準面31aを使用し、キャップ部6の高さ計測用として基準面9aを使用するといった運用にも展開可能である。したがって、この場合には、ワイプ清掃時には第2基準面31aを計測し、3次元移動部材3の座標を計算した後に清掃処理を実行し、キャップ時には基準面9aを計測し、3次元移動部材3の座標を計算した後にキャップ処理を実行するといったことが実現できる。その結果、経時的に発生する3次元移動部材3の位置誤差をも相殺できるので、さらに、高精度な位置合わせが可能になる。
【0143】
このように、本実施の形態の液体噴射装置30では、メンテナンスユニット5は、1つのユニットベース8に複数の基準面9a及び第2基準面31aを該ユニットベース8の表面と同一平行線上に並べて搭載している。そして、前記距離検出部22は、距離センサ2にて基準面9a及び第2基準面31aとの計測距離HR・HR2を計測すると共に、前記メンテナンス位置設定部23は、距離センサ2と基準面9a及び第2基準面31aとの計測距離HR・HR2から上インクジェットヘッド1のインク噴射面4と1つのメンテナンス部との距離を演算してそれぞれ求めたときの差により、インクジェットヘッド1のインク噴射面4とユニットベース8との相対傾き量を計算する。そして、3次元移動部材3の移動量設定に反映させる。
【0144】
これにより、メンテナンスユニット5の傾きも含めた位置合わせができるので、より高精度な位置合わせが実現できる。
【0145】
尚、複数の基準面9a及び第2基準面31aは、インクジェットヘッド1が複数のメンテナンス部に対向したときに、それぞれ距離センサ2と対向するように配置しておけば、メンテナンス部毎の基準面9a及び第2基準面31aとして使用することが可能であり、正確な位置合わせが実現できる。
【0146】
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施の形態について図9に基づいて説明すれば、以下の通りである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1及び実施の形態2と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1及び実施の形態2の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0147】
本実施の形態の液体噴射装置40は、図9に示すように、液体噴射方向とは逆方向から距離を計測するように距離検出手段、センサ及び光センサとしての距離センサ41を配置した構成となっている。
【0148】
このようにすれば、常に、インク噴射面4を計測することができるので、インクジェットヘッド1の高さ異常を検知することができる。すなわち、インクジェットヘッド1は被噴射面に対して1mm以下という狭い間隔で液体噴射しているので、インクジェットヘッド1の高さを検知することによって、不意の高さ異常発生時においても被噴射物を破損する可能性が低くなる。
【0149】
尚、本実施の形態では、距離センサ41と基準面9aとの距離、基準面9aと各メンテナンス部との高さ方向の距離は、予め、求められているものとする。また、距離センサ41と基準面9aとの距離を測定するときには、基準面9aに基準板を片持ち梁状に取り付け、距離センサ41にて基準板の裏面までの距離を計測すればよい。さらに、基準面9aと各メンテナンス部との高さ方向の距離は、設計値により求めることができる。
【0150】
このように、本実施の形態の液体噴射装置40では、メンテナンスユニット5は、複数のメンテナンス部及び基準面9aを並べて搭載する1つのユニットベース8を備えていると共に、距離センサ41は、インクジェットヘッド1のインク噴射方向とは逆方向であるインクジェットヘッド1のインク噴射面の対向側に設けられ、前記距離検出部22は、距離センサ41にてインクジェットヘッド1のインク噴射面4との距離を測定することにより、インクジェットヘッド1と各メンテナンス部との高さ方向の距離を演算して求める。
【0151】
これにより、インクジェットヘッド1を昇降移動自在かつ平行移動自在に移動させる3次元移動部材3の重量が大きくなるのを防止することができる。
【0152】
〔実施の形態4〕
本発明のさらに他の実施の形態について図10〜図13に基づいて説明すれば、以下の通りである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1〜実施の形態3と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1〜実施の形態3の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0153】
本実施の形態の液体噴射装置50は、図10に示すように、メンテナンスユニット51a・51b等のメンテナンスユニットを複数備えたものとなっている。
【0154】
例えば、キャップ部6は、装置全体の処理として通信や噴射位置の確認等待ち時間にインクジェットヘッド1の保湿を行う目的があるので使用頻度が高いものであると共に、上記通信が終了した時点で即時噴射処理を行う必要があるため、インクジェットヘッド1の直近に配置することが望ましい。
【0155】
一方、ワイプ部7は数時間に1回といった回復メンテナンスに使用されることが多いのでインクジェットヘッド1の直近に必要というものではない。勿論、装置自体にスペースが潤沢にあった場合には、インクジェットヘッド1の直近に複数のメンテナンス部を配置すればよいが、制限がある場合には、複数のメンテナンス部の用途によっては配置場所を分ける状況も出てくる。
【0156】
そこで、このような場合においては、本実施の形態のように、1つのユニットベースに対して基準面を設けるという基本構成は有効であると共に、メンテナンスユニット51aのユニットベース52aに基準面53aと複数のメンテナンス部としてキャップ部6及び予備噴射部54aと設ける一方、メンテナンスユニット51bのユニットベース52bに基準面53bと複数のメンテナンス部としてワイプ部7とスポンジ部54bとを設けることが好ましい。
【0157】
そして、本実施の形態でも、実施の形態1及び実施の形態2で述べたと同様に、3次元移動部材3の座標ZC・ZWを設定すればよい。
【0158】
ここで、上記予備噴射部54aは、被噴射物への噴射前に予備噴射を行う噴射受け皿と噴射インクを廃液する廃液口で構成されているものである。また、スポンジ部54bは、インク噴射面4をスポンジに押し付けてインク噴射面4に残った液を吸収清掃するものである。
【0159】
尚、本発明は、これら予備噴射部54a及びスポンジ部54b等のメンテナンス部の構成に左右されるものではない。
【0160】
上記構成の液体噴射装置50においては、距離センサ2で計測された計測距離HRa・HRbに基づいて、距離センサ2とインク噴射面4との高さ方向の距離HH3が記憶されている第2記憶部26と、上記計測距離HRa・HRbから演算により求まる座標ZRが記憶されている第3記憶部27との比較により、インクジェットヘッド1のインク噴射面4の高さ異常を検知することができる。すなわち、インクジェットヘッド1が、3次元移動部材3に対して移動したことが検知できる。
【0161】
上記高さ異常を検知する処理について、図11に基づいて説明する。図11は高さ異常を検知する処理フロー例を示したものである。尚、図11は、前記図6に示すフローチャートのS1〜S6と同じ部分を有しており、この部分については説明を省略する。
【0162】
図11に示すように、S6にて距離センサ2とインク噴射面4との高さ方向の距離HH3を第2記憶部26に格納した後、計算されたインク噴射面4との高さ方向の距離HH3と第2記憶部26に格納されているインク噴射面4との高さ方向の距離HH3とを比較する(S7)。距離センサ2の測定誤差やデータ取り込み時の量子化誤差等を許容範囲として、格納されている高さデータに勘案し、今回の計測、計算結果がその範囲内に入っているかを確認する。
【0163】
範囲内であれば、正常と判断して終了する(S8)。一方、範囲外であれば、異常として上位マシンに通報する(S9)。
【0164】
尚、このインクジェットヘッド1の高さ異常を検知する処理は、例えば、1日に一回等の定期的に行えば足りる。
【0165】
次に、インクジェットヘッド1だけではなく、距離センサ2についても3次元移動部材3からの位置がずれることがある。以下では、図12に基づいて、距離センサ2の高さ異常について検出する方法を説明する。図12は距離センサ2の高さ異常を検知する処理フロー例を示したものである。
【0166】
図12に示すように、まず、距離センサ2を、基準面53a・53bを臨む位置に移動させ(S11)、基準面53a・53bを計測することにより(S12)、3次元移動部材3の座標ZRと距離センサ2の計測距離HRa・HRbが取り込まれる(S13)。
【0167】
次いで、第3記憶部27に格納されているデータを読み込む(S21)。そして、今回計測された基準面53a・53bの計測結果である計測距離HRa・HRb、及び3次元移動部材3の座標ZRa・ZRbと第3記憶部27に格納されている基準面53a・53bの計測距離HRa・HRb、並びに3次元移動部材3の座標ZRa・ZRbを比較する(S22)。そして、距離センサ2の測定誤差やデータ取り込み時の量子化誤差等を許容範囲として、格納されている高さデータに勘案し、今回の計測結果がその範囲内に入っているかを確認する。
【0168】
S22において、範囲内であれば、正常と判断して終了する(S23)。一方、S22において、範囲外であればS26で異常として上位マシンに通報する(S24)。
【0169】
これにより、インクジェットヘッド1の取り付け異常や、メンテナンスユニット51a・51bの取り付け異常や、距離センサ2の取り付け及び計測異常を検知する。したがって、インクジェットヘッド1が誤った設定値で動作することによる破損やメンテナンス不良を未然に防げる可能性が高まる。
【0170】
尚、この距離センサ2の高さ異常を検知する処理は、例えば、1日に一回等の定期的に行えば足りる。
【0171】
このように、本実施の形態の液体噴射装置50では、前記距離検出部22は、距離センサ2とインクジェットヘッド1のインク噴射面4との高さ方向の計測距離HRを求めるための計測を定期的に行うと共に、該計測距離HRと第2記憶部26に既に記憶されている値との差が許容値から外れているときには、インクジェットヘッド1のインク噴射面4の位置が異常である旨を通報する。
【0172】
これにより、インクジェットヘッド1のインク噴射面4の位置において、不慮の位置ずれが発生していないか確認することができる。また、位置ずれが発生した状態で、メンテナンス動作を行い続けることによる装置破損を防止することができる。
【0173】
また、本実施の形態の液体噴射装置50では、前記距離検出部22は、距離センサ2にて計測した該距離センサ2と基準面9aとの計測距離HRと、距離センサ2と基準面9aとの距離の計測時における3次元移動部材3の設定された原点に対する座標ZRとの対応位置関係の検査を定期的に行うと共に、検査時に求めた対応位置関係が、第3記憶部27に記憶されている該距離センサ2と基準面9aとの計測距離HRと、距離センサ2と基準面9aとの計測距離HRの計測時における3次元移動部材3の座標との対応位置関係との差が許容値から外れているときには、距離センサ2の位置が異常である旨を通報する。
【0174】
これにより、距離センサ2及び基準面9aの位置において、不慮の位置ずれが発生していないか確認することができる。また、位置ずれが発生した状態で、メンテナンス動作を行い続けることによる装置破損を防止することができる。
【0175】
また、本実施の形態の液体噴射装置50では、メンテナンスユニットは、少なくとも1個のメンテナンス部と基準面とを並べて搭載する複数のユニットベース52a・52bを備えていると共に、距離センサ2は、インクジェットヘッド1のインク噴射方向であるメンテナンスユニットの基準面53a・53bの対向側において3次元移動部材3に取り付けられ、前記距離検出部22は、距離センサ2にて基準面53a・53bとの距離HRa・HRbを測定することにより、インクジェットヘッド1と各メンテナンス部との高さ方向の距離をそれぞれ演算して求める。
【0176】
これにより、生産装置等の構成や動作形態によって必要なユニットベース52a・52bを複数備えていても、インクジェットヘッド1のインク噴射面4と各メンテナンス部との位置合わせを簡単に行うことができる。
【0177】
〔実施の形態5〕
本発明のさらに他の実施の形態について図13ないし図15に基づいて説明すれば、以下の通りである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1〜実施の形態4と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1〜実施の形態4の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0178】
前記実施の形態1では、距離センサ2とインクジェットヘッド1のインク噴射面4との距離HH3を求める場合には、ヘッドセンサ間距離計測治具11をその都度取り付ける構成を説明した。
【0179】
本実施の形態では、別例として押し当て方式の構成について、図13に基づいて説明する。図13は、距離センサ2とインクジェットヘッド1のインク噴射面4との距離HH3を自動的に求めるヘッドセンサ間距離計測ユニット60の構成図である。
【0180】
ヘッドセンサ間距離計測ユニット60は、図13に示すように、インク噴射面4が押し当てられる当接部としての当接体61と、この当接体61を弾性的に支持する例えばバネ又はゴム等からなる弾性部材62と、上記インク噴射面4の押し当てに基づいて一緒に上下動する当接体61の動きを規制するガイド部63・63と、上記一方のガイド部63に穿設されたガイド部穴63aを通して当接体61に固定され、当接体61の上下動と一体に上下動する第2ヘッド基準部材64とで構成されている。
【0181】
上記当接体61は、インク噴射面4を傷つけないような樹脂性の材料で形成され、特にインク噴射穴4aには接しないような形状の噴射面当接部61aが凹部を有して形成されている。
【0182】
上記ガイド部63・63は、当接体61の上下動によってもがたつきが生じず、正確に押し込みと平行して上下動するように公差管理されている。
【0183】
上記第2ヘッド基準部材64は、距離センサ2で計測される面である第2ヘッド基準面64aを有している。
【0184】
このような構成でインクジェットヘッド1を押し込んでいったときの様子を図14(a)(b)(c)に示すと共に、距離センサ2の計測値のグラフを図15に示す。
【0185】
まず、3次元移動部材3を下げていくと、図14(a)に示すように、インク噴射面4と当接体61の噴射面当接部61aとが近づく。このときの計測値は、図15に示すグラフのA点である。次に、さらに、下げることによって、図14(b)に示すように、インク噴射穴4aと噴射面当接部61aとが当接する。このときの計測値は、図15に示すグラフのB点である。さらに、押し下げると、図14(c)に示すように、当接体61がインク噴射面4の下げ量と同じ量だけ下がっていく。このときの計測値は、図15に示すグラフのC点である。
【0186】
このように、3次元移動部材3を段階的に下げていき、その都度、距離センサ2の計測を行い、3次元移動部材3の下げ量によっても距離センサ2の計測値が変化しなくなったときの計測距離HH4を、距離センサ2とインクジェットヘッド1のインク噴射面4との距離HH3の算出計算に利用すれば、特別な治具をその都度取り付けなくても距離HH3を求めることができる。また、定期的な計測も自動的に実行できる。
【0187】
尚、実際の距離センサ2とインクジェットヘッド1のインク噴射面4との距離HH3は、距離センサ2の計測値が変化しなくなったときの計測距離HH4から、図13に示す第3ヘッド基準面64aからインク噴射面4の当接している噴射面当接部61aまでの距離HH5を引いた値となる。
【0188】
尚、第2ヘッド基準面64aは、基準面9aとして利用してもよい。これにより、基準面を複数設ける必要がなくなる。
【0189】
このように、本実施の形態の液体噴射装置10・30・50では、距離センサ2とインクジェットヘッド1のインク噴射面4との高さ方向の距離HH3を求めるためのヘッドセンサ間距離計測ユニット60がインクジェットヘッド1に対向可能に設けられている。そして、ヘッドセンサ間距離計測ユニット60は、インクジェットヘッド1の下降移動によりインク噴射面4と当接する当接体61と、この当接体61を上方向に付勢する弾性部材62と、当接体61に固定されかつ当接体61の側方に延びて設けられて、距離センサ2との距離を計測するための第2ヘッド基準面64aを有する第2ヘッド基準部材64とを備え、さらに、第2ヘッド基準面64aと当接体61におけるインク噴射面4との当接面である噴射面当接部61aとの高さ方向の距離HH5を記憶する図示しない第6記憶手段としての第6記憶部が設けられている。
【0190】
そして、前記距離検出部22は、3次元移動部材3を下降移動させながら第2ヘッド基準面64aと距離センサ2との計測距離HH4を該距離センサ2にて計測したときの、インク噴射面4の当接体61への当接に伴う、距離センサ2と第2ヘッド基準面64aとの計測距離HH4の変化がなくなったときの該計測距離HH4と、上記第6記憶部に記憶されている距離HH5との加減算により、距離HH3を求め、該求めた高さ方向の距離HH3を前記第2記憶部26に記憶する。
【0191】
これにより、距離センサ2とインクジェットヘッド1のインク噴射面4との高さ方向の距離HH3を求める場合に、ヘッドセンサ間距離計測ユニット60を用いることにより、ヘッドセンサ間距離計測治具11等を取り付ける必要がなく、距離HH3を求めることができる。
【0192】
また、人手を介さずに計測が可能となると共に、インク噴射面4へのダメージを発生させずに、かつ正確に計測することができる。
【0193】
また、本実施の形態の液体噴射装置10・30・50では、基準面9aと第1ヘッド基準面12a又は第2ヘッド基準面64aとは、同一の素材かつ同一の表面仕上げがなされていることが好ましい。
【0194】
これにより、距離センサ2とインクジェットヘッド1のインク噴射面4との高さ方向の距離HH3の算出、及び基準面9aと各メンテナンス部との高さ方向の距離の算出において、計測誤差を生じる可能性が小さくなるので、正確な計測が可能となる。
【0195】
尚、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明は、被印刷物に対して、着色等を行う液体噴射装置に適用することができる。さらに詳しくは、インクジェットヘッドをメンテナンスする複数のメンテナンス機構を有する液体噴射装置、及び液体噴射装置のメンテナンス方法に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】本発明における液体噴射装置の実施の一形態を示すものであり、全体構成を示す正面図である。
【図2】上記液体噴射装置における、ヘッドセンサ間距離計測治具を用いて距離センサとインクジェットヘッドのインク噴射面との距離HH3を求める場合の構成を示す正面図である。
【図3】上記液体噴射装置における、基準面とキャップ部との距離HC3を求める場合の構成を示す正面図である。
【図4】上記液体噴射装置における、基準面とワイプ部との距離HW3を求める場合の構成を示す正面図である。
【図5】上記液体噴射装置における制御部の構成を示すブロック図である。
【図6】上記液体噴射装置における距離HH3検出処理を示すフローチャートである。
【図7】上記液体噴射装置における各メンテナンス部の距離検出処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明における液体噴射装置の他の実施の形態を示すものであり、ユニットベースに基準面に加えて、第2基準面を備えた構成を示す要部正面図である。
【図9】本発明における液体噴射装置のさらに他の実施の形態を示すものであり、液体噴射方向とは逆方向から距離を計測するように距離センサを配置した構成を示す正面図である。
【図10】本発明における液体噴射装置のさらに他の実施の形態を示すものであり、メンテナンスユニットを複数備えた構成を示す正面図である。
【図11】上記液体噴射装置における、インクジェットヘッド高さ異常検出処理を示すフローチャートである。
【図12】上記液体噴射装置における、距離センサ高さ異常検出処理を示すフローチャートである。
【図13】本発明における液体噴射装置のさらに他の実施の形態を示すものであり、ヘッドセンサ間距離計測ユニットの構成を示す正面図である。
【図14】(a),(b),(c)は、上記ヘッドセンサ間距離計測ユニットを用いて距離センサとインク噴射面との距離HH3を求める場合のインク噴射面とヘッドセンサ間距離計測ユニットとの位置関係を示す正面図である。
【図15】上記ヘッドセンサ間距離計測ユニットを用いて距離センサとインク噴射面との距離HH3を求める場合の距離センサの計測値と3次元移動部材の下方向移動量との関係を示すグラフである。
【図16】(a),(b)は、従来の液体噴射装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0198】
1 インクジェットヘッド
2 距離センサ(距離検出手段、センサ、光センサ)
2a センサ下端面
3 3次元移動部材(昇降移動部材・平行移動部材)
4 インク噴射面
4a インク噴射穴
5 メンテナンスユニット
6 キャップ部(メンテナンス部)
7 ワイプ部(メンテナンス部)
8 ユニットベース
9 基準部材
9a 基準面
10 液体噴射装置
11 ヘッドセンサ間距離計測治具
12a 第1ヘッド基準面
13 ゴム
14 ワイピングブレード
14a 撓み前上端面
14b 撓み後上端面
21 制御部
22 距離検出部(距離検出手段)
22a 計測距離HR計測部
22b 距離HH3検出部
22c 距離HC3検出部
22d 距離HW3検出部
23 メンテナンス位置設定部(メンテナンス位置設定手段)
23a 下降移動距離GC設定部
23b 下降移動距離GW設定部
23c 3次元移動部材昇降移動部
25 第1記憶部(第1記憶手段)
26 第2記憶部(第2記憶手段)
27 第3記憶部(第3記憶手段)
28 第4記憶部(第4記憶手段)
29 第5記憶部(第5記憶手段)
30 液体噴射装置
31a 第2基準面
40 液体噴射装置
41 距離センサ(距離検出手段、センサ、光センサ)
50 液体噴射装置
51a メンテナンスユニット
51b メンテナンスユニット
52a ユニットベース
53a 基準面
54a 予備噴射部(メンテナンス部)
52b ユニットベース
53b 基準面
54b スポンジ部(メンテナンス部)
60 ヘッドセンサ間距離計測ユニット
61 当接体(当接部)
61a 噴射面当接部
62 弾性部材
63 ガイド部
63a ガイド部穴
64 第2ヘッド基準部材
64a 第2ヘッド基準面

GC 下降移動距離(昇降移動量)
GW 下降移動距離(昇降移動量)
HC1 距離(基準面とキャップ部の上端との距離)
HC2 押し込み量
HC3 距離(キャップ部と基準面との高さ方向の距離)
HH1 計測距離
HH2 距離〔第1ヘッド基準面とインク噴射面との高さ方向の距離〕
HH3 距離(距離センサとインク噴射面との高さ方向の距離)
HH4 値〔距離センサの計測値が変化しなくなったときの値〕
HH5 距離〔第3基準面から噴射面当接部までの距離〕
HR 計測距離(センサと基準面との計測距離)
HR2 計測距離HR(センサと第2基準面との計測距離)・
HRa 計測距離
HRb 計測距離
HRW 相当距離〔ワイプ部における計測値に相当する相当距離〕
HW1 距離〔基準面とワイピングブレードの撓み前上端面との高さ方向の距離〕
HW2 撓み量
HW3 距離〔基準面とワイプ部7との高さ方向の距離〕
XC 水平距離〔基準面からのキャップ部までの水平距離〕
XR 水平距離〔基準面と第2基準面との水平距離〕
XW 水平距離〔基準面からワイプ部までの水平距離〕
ZC 座標〔キャップ部における3次元移動部材の座標〕
ZR 座標〔3次元移動部材の座標〕
ZW 座標〔ワイプ部における3次元移動部材の座標〕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドを備えた液体噴射装置において、
上記インクジェットヘッドのメンテナンスを行う複数のメンテナンス部を備えたメンテナンスユニットと、
上記インクジェットヘッド又はメンテナンスユニットを一体に取り付けた昇降移動自在の昇降移動部材と、
上記インクジェットヘッド又はメンテナンスユニットを一体に取り付けた少なくとも上記複数のメンテナンス部の対向位置にインクジェットヘッドのインク噴射面を相対的に平行移動自在の平行移動部材と、
上記インクジェットヘッドのインク噴射面と各メンテナンス部との高さ方向の距離を間接的に計測する距離検出手段と、
上記距離検出手段による上記インクジェットヘッドのインク噴射面と各メンテナンス部との高さ方向の距離の間接的な計測値から、上記昇降移動部材における、上記インクジェットヘッドのインク噴射面をメンテナンスするための昇降移動量を決定し、上記昇降移動部材を昇降移動させるメンテナンス位置設定手段とが設けられていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記距離検出手段は、測定対象物の対向位置に設けられて該測定対象物との距離を測定するセンサを有していることを特徴とする請求項1記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記センサは、光を発光する発光部と該発光部から出射された光の被写体からの反射光を受光する受光部とを備えることにより発光部と被写体との距離を検出する光センサであることを特徴とする請求項2記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記メンテナンスユニットは、前記複数のメンテナンス部及び基準面を並べて搭載する1つのユニットベースを備えていると共に、
上記センサは、前記インクジェットヘッドのインク噴射方向であるメンテナンスユニットの基準面の対向側において昇降移動部材に取り付けられ、
上記距離検出手段は、上記センサにて上記基準面との距離を測定することにより、上記インクジェットヘッドと各メンテナンス部との高さ方向の距離を演算して求めることを特徴とする請求項2又は3記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記メンテナンスユニットは、前記複数のメンテナンス部及び基準面を並べて搭載する1つのユニットベースを備えていると共に、
前記センサは、前記インクジェットヘッドのインク噴射方向とは逆方向であるインクジェットヘッドのインク噴射面の対向側に設けられ、
上記距離検出手段は、上記センサにて上記インクジェットヘッドのインク噴射面との距離を測定することにより、上記インクジェットヘッドと各メンテナンス部との高さ方向の距離を演算して求めることを特徴とする請求項2又は3記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記メンテナンスユニットにおける基準面と、前記各メンテナンス部における、前記インクジェットヘッドをメンテナンスするための位置との高さ方向の距離をそれぞれ予め記憶しておく第1記憶手段が設けられていることを特徴とする請求項4又は5記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記センサとインクジェットヘッドのインク噴射面との高さ方向の距離を記憶する第2記憶手段が設けられていることを特徴とする請求項4又は5記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記センサにて計測した該センサと前記基準面との距離、及び上記センサと基準面との距離の計測時における昇降移動部材の前記設定された原点に対する座標を記憶する第3記憶手段を備えていることを特徴とする請求項4又は5記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記メンテナンス位置設定手段は、
前記センサにて計測した該センサと前記基準面との距離と、
前記第1記憶手段に記憶されている上記基準面と、前記各メンテナンス部における、前記インクジェットヘッドをメンテナンスするための位置との高さ方向の距離とから、各メンテナンス時における昇降移動部材の昇降移動量を計算することを特徴とする請求項6記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記複数のメンテナンス部での各メンテナンス時における昇降移動部材の設定された前記原点に対する座標をそれぞれ記憶する第4記憶手段を備えていると共に、
前記メンテナンス位置設定手段は、複数のメンテナンス部でのメンテナンス時における昇降移動部材の設定された原点に対する座標を上記第4記憶手段にそれぞれ記憶した後にメンテナンスを行うときには、上記第4記憶手段にそれぞれ記憶された昇降移動部材の座標を読み出すことにより、メンテナンス時における昇降移動部材の昇降移動量を計算することを特徴とする請求項9記載の液体噴射装置。
【請求項11】
前記複数のメンテナンス部は、前記インクジェットヘッドのインク噴射面を押圧状態にして該インク噴射面に形成されているインク噴射穴を密閉するキャップ部を含んでいると共に、
上記インクジェットヘッドのインク噴射面がキャップ部に対向する位置に存在するときに、前記センサが基準面に対向するように配されていることを特徴とする請求項4記載の液体噴射装置。
【請求項12】
前記インクジェットヘッドには、第1ヘッド基準面を前記センサの対向位置に搭載したヘッドセンサ間距離計測治具が取り外し自在に設けられ、
さらに、上記第1ヘッド基準面からインクジェットヘッドのインク噴射面までの高さ方向の距離を記憶する第5記憶手段が設けられていると共に、
前記距離検出手段は、
上記インクジェットヘッドに取り付けられたヘッドセンサ間距離計測治具に搭載された第1ヘッド基準面とセンサとの距離を該センサにて計測し、
上記第1ヘッド基準面とセンサとの計測距離と、上記第5記憶手段に記憶されている、第1ヘッド基準面からインクジェットヘッドのインク噴射面までの距離とを加減算して、上記センサとインクジェットヘッドのインク噴射面との高さ方向の距離を求めると共に、該求めた高さ方向の距離を前記第2記憶手段に記憶することを特徴とする請求項7記載の液体噴射装置。
【請求項13】
前記距離検出手段は、
前記センサとインクジェットヘッドのインク噴射面との高さ方向の距離を求めるための計測を定期的に行うと共に、
計測距離と前記第2記憶手段に既に記憶されている値との差が許容値から外れているときには、インクジェットヘッドのインク噴射面の位置が異常である旨を通報することを特徴とする請求項12記載の液体噴射装置。
【請求項14】
前記距離検出手段は、
前記センサにて計測した該センサと前記基準面との計測距離と、上記センサと基準面との距離の計測時における昇降移動部材の前記設定された原点に対する座標との対応位置関係の検査を定期的に行うと共に、
上記検査時に求めた対応位置関係が、前記第3記憶手段に記憶されている該センサと前記基準面との距離と、センサと基準面との距離の計測時における昇降移動部材の前記設定された原点に対する座標との対応位置関係との差が許容値から外れているときには、センサ位置が異常である旨を通報することを特徴とする請求項8記載の液体噴射装置。
【請求項15】
前記メンテナンスユニットは、前記1つのユニットベースに複数の基準面を該ユニットベースの表面と同一平行線上に並べて搭載していると共に、
前記距離検出手段は、上記センサにて上記各基準面との距離を計測すると共に、
前記メンテナンス位置設定手段は、上記センサと各基準面との計測距離から上記インクジェットヘッドのインク噴射面と1つのメンテナンス部との距離を演算してそれぞれ求めたときの差により、インクジェットヘッドのインク噴射面とユニットベースとの相対傾き量を計算することを特徴とする請求項2又は3記載の液体噴射装置。
【請求項16】
前記メンテナンスユニットは、少なくとも1個のメンテナンス部と基準面とを並べて搭載する複数のユニットベースを備えていると共に、
上記センサは、前記インクジェットヘッドのインク噴射方向であるメンテナンスユニットの基準面の対向側において昇降移動部材に取り付けられ、
上記距離検出手段は、上記センサにて上記各基準面との距離を測定することにより、上記インクジェットヘッドと各メンテナンス部との高さ方向の距離をそれぞれ演算して求めることを特徴とする請求項2又は3記載の液体噴射装置。
【請求項17】
前記センサとインクジェットヘッドのインク噴射面との高さ方向の距離を求めるためのヘッドセンサ間距離計測ユニットがインクジェットヘッドに対向可能に設けられていると共に、
上記ヘッドセンサ間距離計測ユニットは、
上記インクジェットヘッドの下降移動によりインク噴射面と当接する当接部と、
上記当接部を上方向に付勢する弾性部材と、
上記当接部に固定されかつ当接部の側方に延びて設けられて、センサとの距離を計測するための第2ヘッド基準面を有する第2ヘッド基準部材とを備え、
さらに、上記第2ヘッド基準面と上記当接部におけるインク噴射面との当接面との高さ方向の距離を記憶する第6記憶手段が設けられていると共に、
前記距離検出手段は、
前記昇降移動部材を下降移動させながら上記第2ヘッド基準面とセンサとの距離を該センサにて計測したときの、上記インク噴射面の当接部への当接に伴う、センサと第2ヘッド基準面との距離の変化がなくなったときの該距離と、上記第6記憶手段に記憶されている第2ヘッド基準面と上記当接部のインク噴射面との当接面との距離との加減算により、上記センサとインクジェットヘッドのインク噴射面までの高さ方向の距離を求め、
該求めた高さ方向の距離を前記第2記憶手段に記憶することを特徴とする請求項7記載の液体噴射装置。
【請求項18】
前記基準面と第1ヘッド基準面又は第2ヘッド基準面とは、同一の素材かつ同一の表面仕上げがなされていることを特徴とする請求項12又は17記載の液体噴射装置。
【請求項19】
インクジェットヘッドを備えた液体噴射装置のメンテナンス方法において、
上記インクジェットヘッドのメンテナンスを行う複数のメンテナンス部を備えたメンテナンスユニットと、
上記インクジェットヘッド又はメンテナンスユニットを一体に取り付けた昇降移動自在の昇降移動部材と、
上記インクジェットヘッド又はメンテナンスユニットを一体に取り付けた少なくとも上記複数のメンテナンス部の対向位置にインクジェットヘッドのインク噴射面を相対的に平行移動自在の平行移動部材とを備える工程と、
上記インクジェットヘッドのインク噴射面と各メンテナンス部との高さ方向の距離の間接的な計測値から、上記インクジェットヘッドのインク噴射面をメンテナンスするための昇降移動量を決定し、上記昇降移動部材を昇降移動させることを特徴とする液体噴射装置のメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−439(P2010−439A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160788(P2008−160788)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】