説明

液処理装置、液処理方法及びその液処理方法を実行させるためのプログラムを記録した記録媒体

【課題】処理液により処理した後、基板をリンス処理する際に、処理液が基板に残留することを防止でき、処理時間を短縮できる液処理方法及び液処理装置を提供する。
【解決手段】基板を処理液により処理する液処理装置10において、基板を保持する基板保持部30、40と、基板保持部30、40に保持されている基板に処理液を供給する処理液供給部70と、基板にリンス液を供給するリンス液供給部80と、基板のみが吸収する波長領域の光を発光し、発光した光を基板に照射する発光素子112とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理液により処理する液処理装置、液処理方法及びその液処理方法を実行させるためのプログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスやフラットパネルディスプレー(FPD)の製造プロセスにおいては、半導体ウェハやガラス基板等の各種の基板に処理液を供給して処理を行うプロセスが多用されている。このようなプロセスとしては、例えば、基板の表面に付着したパーティクルや、大気との接触により形成された自然酸化膜を除去するための、各種の処理液による洗浄処理等を挙げることができる。
【0003】
上記したような洗浄処理等のプロセスを基板に対して行う液処理装置としては、枚葉式の複数の液処理ユニットと、搬送装置とを備えたものが用いられている。搬送装置は、これら液処理ユニットへの基板の搬入出を行う。
【0004】
液処理ユニットは、例えば、回転載置部、処理液供給ノズル及びリンス液供給ノズルを有する(例えば特許文献1参照)。回転載置部は、基板を保持した状態で回転可能に設けられている。処理液供給ノズルは、基板に処理液を供給し、リンス液供給ノズルは、基板にリンス液を供給する。液処理ユニットは、半導体ウェハ等の基板を回転載置部に保持し、基板を回転させた状態で、例えば基板の表面に処理液を供給して処理を行う。そして、処理液による処理の後、基板を回転させた状態で基板の表面にリンス液を供給してリンス処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−38595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記した液処理装置における液処理方法においては、次のような問題がある。
【0007】
例えば半導体装置の微細化に伴って、半導体ウェハ等の各種の基板の表面に、径に対する深さの比であるアスペクト比が高い穴又はアスペクト比が高いパターンが形成されることがある。そして、このような高いアスペクト比を有する穴又はパターンが形成された基板を処理液により処理した後、リンス液により基板をリンスするリンス処理を行うことがある。
【0008】
しかし、穴又はパターンのアスペクト比が高いときは、処理液による処理の後、処理液が供給された基板にリンス液を供給しても、穴又はパターンに残留する処理液を、容易にリンス液と置換できない。従って、リンス処理の後、処理液が穴又はパターンに残留するおそれがある。そして、処理液が穴又はパターンに残留することを防止するためには、リンス処理の時間を長くしなければならない。
【0009】
また、上記した課題は、表面に高いアスペクト比を有する穴又はパターンが形成されている基板を処理液により処理した後、リンス処理する場合に限られない。アスペクト比が高くないような場合であっても、処理液が残留しやすく、リンス処理の時間を長くしなければならない場合がある。従って、上記した課題は、表面に穴又はパターンが形成されている各種の基板を処理液により処理した後、リンス処理する際に共通する課題である。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、処理液により処理した後、基板をリンス処理する際に、処理液とリンス液との置換を促進でき、処理液が基板に残留することを防止でき、処理時間を短縮できる液処理装置及び液処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の一実施例によれば、基板を処理液により処理する液処理装置において、基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部に保持されている基板に処理液を供給する処理液供給部と、前記基板にリンス液を供給するリンス液供給部と、前記基板のみが吸収する波長領域の光を発光し、発光した光を前記基板に照射する発光素子とを有する、液処理装置が提供される。
【0013】
また、本発明の他の一実施例によれば、基板を処理液により処理する液処理方法において、基板保持部に保持されている基板に、処理液供給部により処理液を供給する処理液供給工程と、処理液を供給した前記基板に、リンス液供給部によりリンス液を供給するリンス液供給工程と、リンス液を供給した前記基板を乾燥させる乾燥工程とを有し、少なくとも前記リンス液供給工程の一期間において、発光素子により発光された、前記基板のみが吸収する波長領域の光を前記基板に照射するものである、液処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、処理液により処理した後、基板をリンス処理する際に、処理液とリンス液との置換を促進でき、処理液が基板に残留することを防止でき、処理時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態に係る液処理装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】液処理ユニットの概略構成を示す断面図である。
【図3】液処理ユニットに備えられたトッププレートの底面図である。
【図4】第1の実施の形態に係る液処理方法の各工程におけるLEDの点灯状態を示すタイミングチャートである。
【図5】第1の実施の形態に係る液処理方法の各工程におけるウェハ表面の状態を模式的に示す断面図(その1)である。
【図6】第1の実施の形態に係る液処理方法の各工程におけるウェハ表面の状態を模式的に示す断面図(その2)である。
【図7】リンス液供給工程におけるウェハ表面の処理液及びリンス液の状態を模式的に示す断面図である。
【図8】第1の実施の形態の第1の変形例に係る液処理方法の各工程におけるLEDの点灯状態を示すタイミングチャートである。
【図9】第1の実施の形態の第2の変形例に係る液処理方法の各工程におけるLEDの点灯状態を示すタイミングチャートである。
【図10】第1の実施の形態の第2の変形例に係る液処理方法の各工程におけるウェハ表面の状態を模式的に示す断面図である。
【図11】第2の実施の形態に係る液処理ユニットの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。ここでは、本発明を半導体ウェハ(以下、単に「ウェハ」と記す。)の表面洗浄を行う液処理装置に適用した場合について示す。
(第1の実施の形態)
始めに、図1を参照し、本発明の第1の実施の形態に係る液処理装置の概略構成について説明する。
【0017】
図1は本実施の形態に係る液処理装置の概略構成を示す平面図である。
【0018】
この液処理装置10は、複数のウェハWを収容するウェハキャリアCを載置し、ウェハWの搬入・搬出を行う搬入出ステーション(基板搬入出部)1と、ウェハWに洗浄処理を施すための処理ステーション(液処理部)2とを備えている。搬入出ステーション(基板搬入出部)1及び処理ステーション(液処理部)2は、隣接して設けられている。
【0019】
搬入出ステーション1は、キャリア載置部11、搬送部12、受け渡し部13及び筐体14を有している。キャリア載置部11は、複数のウェハWを水平状態で収容する4個のウェハキャリアCを載置する。搬送部12は、ウェハWの搬送を行う。受け渡し部13は、ウェハWの受け渡しを行う。筐体14は、搬送部12および受け渡し部13を収容する。
【0020】
搬送部12は、搬送機構15を有している。搬送機構15は、ウェハWを保持するウェハ保持アーム15a、及びウェハ保持アーム15aを前後に移動させる機構を有している。また搬送機構15は、ウェハキャリアCの配列方向であるX方向に延在する水平ガイド17に沿って移動させる機構、垂直方向に設けられた図示しない垂直ガイドに沿って移動させる機構、水平面内で回転させる機構を有している。この搬送機構15により、ウェハキャリアCと受け渡し部13との間でウェハWが搬送される。
【0021】
受け渡し部13は、ウェハWを載置可能な載置部を複数備えた受け渡し棚20とを有している。受け渡し部13は、この受け渡し棚20を介して処理ステーション2との間でウェハWの受け渡しが行われるようになっている。
【0022】
処理ステーション2は、直方体状をなす筐体21を有している。処理ステーション2は、筐体21内には、その中央上部にウェハキャリアCの配列方向であるX方向に直交するY方向に沿って延びる搬送路を構成する搬送室21aと、搬送室21aの両側に設けられた2つのユニット室21b、21cとを有している。ユニット室21b、21cにはそれぞれ搬送室21aに沿って6個ずつ合計12個の液処理ユニット22が水平に配列されている。
【0023】
搬送室21aの内部には搬送機構24が設けられている。搬送機構24は、ウェハWを保持するウェハ保持アーム24a、及びウェハ保持アーム24aを前後に移動させる機構を有している。また、搬送機構24は、搬送室21aに設けられた水平ガイド25に沿ってY方向に移動させる機構、垂直方向に設けられた図示しない垂直ガイドに沿って移動させる機構、水平面内で回転させる機構を有している。この搬送機構24により、各液処理ユニット22に対するウェハWの搬入出を行うようになっている。
【0024】
次に、図2及び図3を参照し、本実施の形態に係る液処理装置に搭載された液処理ユニット22について説明する。図2は、液処理ユニット22の概略構成を示す断面図である。図3は、液処理ユニット22に備えられたトッププレートの底面図である。
【0025】
液処理ユニット22は、回転プレート30、保持部材40、回転駆動部50、基板昇降部材60、処理液供給機構70、リンス液供給機構80、有機溶剤供給機構90、乾燥ガス供給機構95、排気・排液部(カップ)100、トッププレート110、昇降機構120、及び制御部200を有する。
【0026】
回転プレート30は、ベースプレート31及び回転軸32を有する。ベースプレート31は、水平に設けられ、中央に円形の孔31aを有する。回転軸32は、ベースプレート31から下方に向かって延在するように設けられており、中心に孔32aが設けられた円筒状の形状を有する。
【0027】
保持部材40は、ベースプレート31に回動するように設けられており、ウェハWの端部でウェハWを保持する。
【0028】
なお、回転プレート30及び保持部材40は、本発明における基板保持部に相当する。
【0029】
回転駆動部50は、プーリ51、駆動ベルト52及びモータ53を有する。プーリ51は、回転軸32の下方側における周縁外方に配置されている。駆動ベルト52は、プーリ51に巻きかけられている。モータ53は、駆動ベルト52に連結されており、駆動ベルト52に回転駆動力を伝達することによって、プーリ51を介して回転軸32を回転させる。すなわち、回転駆動部50は、回転軸32を回転させることによって、ベースプレート31及び保持部材40を回転させる。なお、回転軸32の周縁外方にはベアリング33が配置されている。
【0030】
基板昇降部材60は、ベースプレート31の孔31a及び回転軸32の孔32a内に昇降可能に設けられており、リフトピンプレート61及びリフト軸62を有する。リフト軸62は、リフトピンプレート61から下方に延在している。リフトピンプレート61は、上面61aの周縁に複数例えば3本のリフトピン61bを有している。リフト軸62の下端にはシリンダ機構62aが接続されており、シリンダ機構62aによって基板昇降部材60を昇降させることにより、ウェハWを昇降させて搬送機構24との間でウェハWのローディング及びアンローディングが行われる。
【0031】
処理液供給機構70は、処理液供給ノズル71、処理液供給管72及び処理液供給源73を有する。処理液供給ノズル71は、処理液供給管72を介し、処理液供給源73に接続されている。処理液供給ノズル71は、処理液供給源73から処理液供給管72を介して供給された処理液を、ウェハWに供給する。処理液供給ノズル71は、ノズルアーム74に保持されている。ノズルアーム74は駆動機構75により移動駆動される。処理液供給ノズル71は、駆動機構75によりノズルアーム74を移動させることにより、ウェハWの中央上方の供給位置と退避位置との間で移動可能となっている。処理液として、例えばDHF(希フッ酸)、SC1(アンモニア過水)等を用いることができる。
【0032】
なお、処理液供給機構70は、本発明における処理液供給部に相当する。
【0033】
リンス液供給機構80は、リンス液供給ノズル81、リンス液供給管82及びリンス液供給源83を有する。リンス液供給ノズル81は、リンス液供給管82を介し、リンス液供給源83に接続されている。リンス液供給ノズル81は、リンス液供給源83からリンス液供給管82を介して供給されたリンス液を、ウェハWに供給する。リンス液供給ノズル81は、ノズルアーム84に保持されている。ノズルアーム84は駆動機構85により移動駆動される。リンス液供給ノズル81は、駆動機構85によりノズルアーム84を移動させることにより、ウェハWの中央上方の供給位置と退避位置との間で移動可能となっている。リンス液として、例えば純水を用いることができる。
【0034】
なお、リンス液供給機構80は、本発明におけるリンス液供給部に相当する。
【0035】
有機溶剤供給機構90は、有機溶剤供給ノズル91、有機溶剤供給管92及び有機溶剤供給源93を有する。有機溶剤供給ノズル91は、有機溶剤供給管92を介し、有機溶剤供給源93に接続されている。有機溶剤供給ノズル91は、有機溶剤供給源93から有機溶剤供給管92を介して供給された有機溶剤を、ウェハWに供給する。有機溶剤供給ノズル91は、処理液供給ノズル71と同様に、図示しない駆動機構により図示しないノズルアームを移動させることにより、ウェハWの中央上方の供給位置と退避位置との間で移動可能となっている。有機溶剤として、例えばIPA(イソプロピルアルコール)、HFE(ハイドロフルオロエーテル)等の、リンス液よりも表面張力が小さい各種の有機溶剤を用いることができる。
【0036】
なお、有機溶剤供給機構90は、本発明における有機溶剤供給部に相当する。
【0037】
乾燥ガス供給機構95は、乾燥ガス供給ノズル96、乾燥ガス供給管97及び乾燥ガス供給源98を有する。乾燥ガス供給ノズル96は、乾燥ガス供給管97を介し、乾燥ガス供給源98に接続されている。乾燥ガス供給ノズル96は、乾燥ガス供給源98から乾燥ガス供給管97を介して供給された乾燥ガスを、ウェハWに供給する。乾燥ガス供給ノズル96は、処理液供給ノズル71と同様に、図示しない駆動機構により図示しないノズルアームを移動させることにより、ウェハWの中央上方の供給位置と退避位置との間で移動可能となっている。乾燥ガスとして、例えば窒素(N)ガス等を用いることができる。
【0038】
排気・排液部(カップ)100は、排液カップ101、排液管102、排気カップ103及び排気管104を有する。また、排気・排液部(カップ)100は、上面に開口が設けられている。排気・排液部(カップ)100は、回転プレート30とトッププレート110とに囲繞された空間から排出される気体および液体を回収するためのものである。
【0039】
排液カップ101は、処理液、リンス液及び有機溶剤を受ける。排液管102は、排液カップ101の底部の最外側部分に接続されており、排液カップ101によって受けられた処理液を排出する。排気カップ103は、排液カップ101の外方又は下方において、排液カップ101と連通するように設けられている。排気管104は、排気カップ103の底部の最外側部分に接続されており、排気カップ103内の窒素ガスなどの気体を排気する。
【0040】
トッププレート110は、昇降可能であって、下降した状態で排気・排液部(カップ)100の上面に設けられた開口を塞ぐように設けられている。また、トッププレート110は、排気・排液部(カップ)100の上面に設けられた開口を塞ぐときに、保持部材40に保持されているウェハWを上方から覆うように設けられている。
【0041】
昇降機構120は、アーム121、昇降駆動部122を有する。昇降駆動部122は、排気・排液部(カップ)100の外方に設けられており、上下に移動できるようになっている。アーム121は、トッププレート110と昇降駆動部122とを接続するように設けられている。すなわち、昇降機構120は、アーム121を介して昇降駆動部122によりトッププレート110を昇降させる。
【0042】
トッププレート110は、中央にトッププレート110を貫通する開口部111を有する。開口部111は、トッププレート110の上方から、処理液供給ノズル71、リンス液供給ノズル81、有機溶剤ノズル91及び乾燥ガス供給ノズル96により、ウェハWに、それぞれ処理液、リンス液、有機溶剤及び乾燥ガスを供給するためのものである。
【0043】
なお、処理液供給ノズル71、リンス液供給ノズル81、有機溶剤供給ノズル91及び乾燥ガス供給ノズル96は、前述したように、トッププレート110と別体に設けられていてもよく、あるいは、トッププレート110と一体に設けられていてもよい。トッププレート110と一体に設けられている場合は、各ノズルにおいて、ノズルアーム及び駆動機構を省略することができる。
【0044】
トッププレート110の下面には、発光素子112が設けられている。発光素子112は、ウェハWのみが吸収する波長領域の光を発光し、発光した光をウェハWに照射する。図2及び図3に示すように、トッププレート110の下面には、発光素子112が、例えば等間隔で略隙間なく並べられていてもよい。
【0045】
発光素子112として、例えばLED(発光ダイオード)、半導体レーザ等を用いることが好ましい。LED(発光ダイオード)又は半導体レーザが発光する光は、所定の波長領域にピーク波長を有するため、処理液やリンス液が吸収せず、ウェハWのみが吸収する波長領域の光を発光することが容易であるからである。
【0046】
また、発光素子112として、LEDを用いると、点灯(ON)後にウェハWの温度が上昇して安定するまでの時間を短縮できる。また、LEDは、発光効率に優れている。従って、発光素子112として、LEDを用いると、消費電力を低減できる。
【0047】
ウェハWとしてシリコンウェハを用いるときは、発光素子112が発光する光として、400〜1000nmの波長領域(近赤外領域)にピーク波長を有するものが好ましく、880nmの波長にピーク波長を有することがより好ましい。ピーク波長が400nm未満の場合、シリコンの吸収率が減少するからである。また、ピーク波長が1μmを超える場合、シリコンの吸収率が減少するとともに、例えば石英等の他の材料の吸収率が増加するためである。
【0048】
また、400〜1000nmの波長領域にピーク波長を有する発光素子112用のLEDの材料として、例えばAlGaAs、GaN、GaInN、AlGaInP、ZnO等を用いることができる。
【0049】
なお、トッププレート110に設けられた発光素子112を、例えば同心円状の複数のゾーンに分割し、ゾーン毎に温度制御するようにしてもよい。これにより、ウェハWの径方向に温度勾配を発生させることができる。例えば、周縁部が中心部よりもリンス処理すべき処理液又は残渣等が多いときは、ウェハWの周縁部の温度を高くする等、ウェハWの面内でリンス処理の処理量の分布を制御することができる。
【0050】
制御部200は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるプロセスコントローラ201を有しており、液処理装置10の各構成部がこのプロセスコントローラ201に接続されて制御される構成となっている。また、プロセスコントローラ201には、工程管理者が液処理装置10の各構成部を管理するためにコマンドの入力操作などを行うキーボードや、液処理装置10の各構成部の可動状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース202が接続されている。さらに、プロセスコントローラ201には、液処理装置10で実行される各種処理をプロセスコントローラ201の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて液処理装置10の各構成部に所定の処理を実行させるための制御プログラムすなわちレシピが格納された記憶部203が接続されている。レシピは記憶部203の中の記憶媒体(記録媒体)に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0051】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース202からの指示等にて任意のレシピを記憶部203から呼び出してプロセスコントローラ201に実行させることで、プロセスコントローラ201の制御下で、LEDを含む各部材を制御し、液処理装置10での所望の処理が行われる。
【0052】
次に、図4から図6を参照し、上記した制御部200により液処理ユニット22を用いて行われる液処理方法について説明する。以下では、LEDを用いた場合を例示するが、LEDに限られず、各種の発光素子を用いることができる。
【0053】
図4は、本実施の形態に係る液処理方法の各工程におけるLEDの点灯状態を示すタイミングチャートである。図4では、LEDが点灯している状態をONで示し、LEDが消灯している状態をOFFで示す。図5及び図6は、本実施の形態に係る液処理方法の各工程におけるウェハ表面の状態を模式的に示す断面図である。
【0054】
なお、図5及び図6において、図示を容易にするため、ウェハWの断面を白抜きにより表示している。
【0055】
まず、ステップS11(搬入工程)では、搬入出ステーション1のキャリア載置部11に載置されたウェハキャリアCから搬送機構15により1枚のウェハWを取り出して受け渡し棚20の載置部に載置し、この動作を連続的に行う。受け渡し棚20の載置部に載置されたウェハWは、処理ステーション2の搬送機構24により順次搬送されて、いずれかの液処理ユニット22に搬入される。そして、液処理ユニット22において、ウェハWは、リフトピンプレート61に受け渡され、降下し、保持部材40により保持される。
【0056】
そして、次のステップS12(処理液供給工程)で常温より高い温度の処理液を使用するときは、LED112を点灯し、LED112により発光された、ウェハWのみが吸収する波長領域の光を、保持部材40に保持されているウェハWに照射する(図5(a))。これにより、ウェハWに処理液を供給する前に、ウェハWを予め加熱する。ウェハWを加熱する温度を、例えば80〜200℃とすることができる。
【0057】
なお、ウェハWを予め加熱するのは、例えばSC1やSPM等の、常温よりも温度が高い処理液を供給するときだけでよい。LED112によりウェハWを予め加熱することにより、処理液を供給する際に処理液の温度が低下することを防止できる。また、LED112により、ウェハW以外の他の部材に影響を与えることなく、ウェハWだけを加熱することができる。
【0058】
また、硫酸と過酸化水素水とを混合した処理液を基板に供給することによってレジスト膜を除去する、いわゆるSPM洗浄を行う場合には、ウェハWを予め加熱することにより、洗浄、すなわちレジスト膜の剥離を短時間で行うことができる。一方、予め加熱しないときは、ウェハWの温度が室温から上昇するため、SPM洗浄の初期から高温で処理ができず、短時間処理を行っただけでは、洗浄不足が発生する。
【0059】
次いで、ステップS12(処理液供給工程)では、保持部材40に保持されているウェハWを回転させながら、回転するウェハWに処理液供給ノズル71により処理液Tを供給する(図5(b))。
【0060】
回転駆動部50により回転プレート30を回転させることによって、保持部材40に保持されているウェハWを回転させる。そして、回転しているウェハWに、処理液供給ノズル71により、例えばDHF、SC1等の処理液Tを供給する。なお、ウェハWの回転数を、例えば1000rpmとすることができる。
【0061】
例えばウェハWに穴部Vが形成されているとき、ウェハWに処理液Tが供給されることによって、穴部V内に処理液Tが充填される。また、以下では、ウェハWに穴部Vが形成された場合を例示して説明するが、穴部Vに代え、ウェハWにレジスト膜よりなるパターンが形成された場合でも、同様である。
【0062】
なお、ステップS12(処理液供給工程)でも、必要に応じ、ステップS11(搬入工程)に引続きLEDを点灯し、LEDにより発光した光をウェハWに照射することによって、ウェハWを加熱するようにしてもよい。図4では、ステップS12において、ステップS11に引続き、一定時間LEDを点灯した後、LEDを消灯する例を示す。
【0063】
また、前述したように、トッププレート110に設けられたLED112を、例えば同心円状の複数のゾーンに分割し、ゾーン毎に温度制御する場合、処理液による処理の最初において、周縁部の温度が中心部の温度よりも高くなるように、制御してもよい。これにより、処理液がウェハWに接触した時の温度低下を防止できるのに加えて、処理液が周縁部に向けて流れていく間に処理液の温度が低下することを防止できる。
【0064】
なお、LEDによりウェハWを加熱し続けると、ウェハWの温度は、例えば熱伝導により、中心部と周縁部とで均一になる。ウェハWの温度が中心部と周縁部とで均一になったときは、LED112のゾーン制御を停止してもよい。
【0065】
次いで、ステップS13(リンス液供給工程)では、処理液Tを供給したウェハWに、リンス液供給ノズル81により、例えば純水等のリンス液Rを供給する(図5(c))。そして、リンス液Rを供給している状態で、LED112により発光された、ウェハWのみが吸収する波長領域の光をウェハWに照射する(図5(d))。これにより、処理液及びリンス液を直接加熱することなく、ウェハWのみを直接加熱することができる。ウェハWを加熱する温度を、例えば80℃とすることができる。これにより、後述するように、リンス液供給工程において、LEDにより加熱された穴部V内の処理液とウェハ表面を流れるリンス液の温度差によって対流が発生し、穴部V内の処理液がリンス液に容易に置換される(図5(e))。
【0066】
また、ウェハ表面にリンス液Rを一定時間供給して、ウェハW上の処理液をある程度排出するまでは、LED112により光を照射せず(図5(c))、ウェハ表面の処理液Tがある程度除去された後、LED112による光の照射を開始することが好ましい(図5(d))。リンス液が除去されることなく処理液が供給されたままの状態でウェハWの温度が上昇すると、処理液による処理が進んでしまったり、又は、ウェハWの面内における処理液による処理状態が均一でなくなるからである。
【0067】
また、リンス液供給工程において、少なくともLEDにより光を照射する間は、ウェハWの回転数を、処理液供給工程におけるウェハWの回転数よりも小さくすることが好ましい。
【0068】
なお、ステップS13(リンス液供給工程)では、前述したように、トッププレート110に設けられたLED112を、例えば同心円状の複数のゾーンに分割し、ゾーン毎に温度制御するようにしてもよい。これにより、ウェハWの径方向に温度勾配を発生させ、ウェハ表面に沿って径方向にも熱対流を発生させることができれば、ウェハWとリンス液との境界面により大きな動きを付けることができ、処理液とリンス液とをより容易に置換できる。
【0069】
次いで、ステップS14(乾燥工程)では、リンス液を供給したウェハWに、ウェハWを回転させた状態で、有機溶剤供給ノズル91により、例えばIPA、HFE等の有機溶剤OSを供給する(図6(a))。前述したように、有機溶剤OSは、リンス液よりも表面張力が小さい。そして、有機溶剤OSを供給する際に、LEDにより発光された、ウェハWのみが吸収する波長領域の光をウェハWに照射する(図6(b))。これにより、有機溶剤を直接加熱することなく、ウェハWのみを直接加熱することができる。そして、供給した有機溶剤により、ウェハWからリンス液を追い出して除去する。
【0070】
また、乾燥工程中の一定時間、LED112を点灯し、ウェハWを加熱することで、有機溶剤OSが温められ、表面張力を、室温における値よりも低下させることができるため、乾燥効率が向上する。また、穴部Vに代えパターンが形成されているときは、表面張力が低下することによって、パターンが倒壊することを抑制することが可能となる。
【0071】
ウェハWの回転数を、例えば300rpmとすることができる。ウェハWを加熱する温度を、例えば50℃とすることができる。
【0072】
なお、リンス液供給工程において、リンス液Rの供給中に、LEDによる光の照射を停止し、ウェハWの温度を例えば室温程度の温度まで下げてもよい。その後、乾燥工程において、ウェハWの温度が下がった状態で有機溶剤OSの供給を開始した後、ウェハ表面のリンス液が有機溶剤OSによりある程度除去されるまでは、LEDにより光を照射しなくてもよい。
【0073】
そして、ウェハWに有機溶剤OSが供給されることによって、穴部V内に充填されているリンス液Rが有機溶剤OSと置換される。
【0074】
その後、ステップS14(乾燥工程)では、有機溶剤OSを供給したウェハWに、LED112を点灯した状態で、乾燥ガス供給ノズル96により、例えばNガス等の乾燥ガスGを供給する(図6(c))。そして、LED112を点灯した状態で、有機溶剤OSを除去する。これにより、ウェハWを乾燥させる。ウェハWを加熱する温度を、例えば50℃とすることができる。
【0075】
また、ステップS14(乾燥工程)では、ウェハWの温度を常温に戻すために、途中でLEDを消灯させる(図6(d))。
【0076】
このとき、ウェハWを回転させ、振り切り乾燥させてもよい。ウェハWの回転数を、例えば300rpmとすることができる。
【0077】
そして、ウェハWが乾燥されるのに伴って、穴部V内も乾燥される。
【0078】
次いで、ステップS15(搬出工程)では、回転駆動部50のモータ53が停止され、保持部材40に保持されているウェハWの回転も停止される(図6(e))。そして、昇降機構120によって、トッププレート110がウェハWの受け渡し位置よりも上方位置に位置づけられる。その後、シリンダ機構62aによって、リフトピンプレート61が上方位置に移動させられて、ウェハWが受け渡し位置(上方位置)に上昇する。そして、搬送機構24により液処理ユニット22からウェハWを搬出し、受け渡しステージ19の受け渡し棚20に載置し、受け渡し棚20から搬送機構15によりウェハキャリアCに戻される。
【0079】
以上の一連の工程により、一枚のウェハWの処理が終了する。
【0080】
次に、図7を参照し、本実施の形態における、処理液により処理した後、基板をリンス処理する際に、処理液が基板に残留することを防止でき、処理時間を短縮できる作用効果を、比較例と対比して説明する。発光素子により発光された光を照射しない場合を、比較例とする。
【0081】
図7は、リンス液供給工程におけるウェハ表面の処理液及びリンス液の状態を模式的に示す断面図である。図7(a)は、本実施の形態について示し、図7(b)は、比較例について示す。
【0082】
液体の拡散に必要な時間τは、例えば式(1)
τ〜2×L/D (1)
ただし
L:穴部の形状により決定される一定の数
D:拡散係数
に示すように、拡散係数Dに逆比例する。
【0083】
また、溶質Aの溶媒Bに対する拡散係数DABについては、例えば式(2)
AB=7.4×10−8×(Ψ0.5×T/(μ×V0.6) (2)
ただし、
Ψ:溶媒Bの会合度
:溶媒Bの分子量
T:絶対温度
μ:溶媒Bの粘度
:標準沸点における溶質Aの分子容量
に示すWilke-Changの式で説明されるように、絶対温度Tに比例する。
【0084】
上記した一例のように、温度上昇に伴って、液体の拡散係数Dは上昇し、液体の拡散に必要な時間τは減少する。
【0085】
また、例えば、化学便覧基礎編II(平成5年9月30日丸善株式会社発行、日本化学会編)II−61頁にも示されているように、経験的にも、80℃における純水の拡散係数(6.517×10−9(m/s))は、25℃における純水の拡散係数(2.275×10−9(m/s))よりも大きい。
【0086】
比較例に係る液処理方法では、図7(b)に示すように、リンス液供給工程において、発光素子により発光された光をウェハWに照射しない。そのため、ウェハWは加熱されず、穴部Vに残留する処理液T、及び、ウェハ表面で液膜を形成するリンス液Rの温度は、相対的に低い。従って、穴部Vに残留する処理液Tと、ウェハ表面で液膜を形成するリンス液Rとが互いに拡散する拡散係数Dは相対的に小さく、拡散に要する時間τは相対的に長い。その結果、穴部Vに残留する処理液Tは、ウェハ表面のリンス液Rと容易に混合されない。
【0087】
一方、本実施の形態では、図7(a)に示すように、リンス液供給工程において、発光素子112により発光された光をウェハWに照射し、ウェハWを加熱する。そのため、穴部Vに残留する処理液Tの温度は、相対的に高くなる。従って、穴部Vに残留する処理液Tが拡散する拡散係数Dは相対的に大きく、拡散に要する時間τは相対的に短い。その結果、穴部Vに残留する処理液Tは、ウェハ表面のリンス液Rと容易に混合される。
【0088】
一例として、ウェハWを80℃に加熱した場合、加熱しない場合と比べ、拡散に要する時間τを約1/3にすることができる。
【0089】
さらに、本実施の形態では、ウェハWが加熱されると、穴部Vに残留する処理液Tの温度が上昇するため、リンス液Rとの温度差ができ、対流が起こる(図7(a))。この処理液Tの対流によって、穴部Vに残留する処理液Tとリンス液Rとの混合液は、ウェハ表面のリンス液Rと容易に置換される。
【0090】
また、発光素子としてLEDを用いる場合には、点灯後、ウェハWを迅速に昇温できる。従って、ウェハWの温度制御を精度良く行えるとともに、点灯時間を短縮できる。また、発光効率も高い。そのため、ウェハWを加熱するために要する消費電力を低減できる。
【0091】
また、発光素子がウェハWのみが吸収する波長領域の光を発光するため、周辺部材の温度上昇を防止できる。
【0092】
以上、本実施の形態によれば、少なくともリンス液供給工程において、発光素子により発光された、基板のみが吸収する波長領域の光を基板に照射し、基板を加熱する。基板が加熱されると、残留する処理液の温度が上昇するため、処理液が拡散する拡散係数が増大し、残留する処理液がリンス液と容易に混合される。さらに、加熱された処理液とウェハWの表面を流れるリンス液との温度差によって対流が発生し、穴部内又はパターン内の処理液とリンス液との混合液がリンス液に容易に置換される。従って、処理液により処理した後、基板をリンス処理する際に、処理液が基板に残留することを防止でき、処理時間を短縮できる。
(第1の実施の形態の第1の変形例)
次に、図8を参照し、本発明の第1の実施の形態の第1の変形例に係る液処理方法について説明する。
【0093】
本変形例に係る液処理方法は、搬入工程及び処理液供給工程においてLEDを点灯しない点で、第1の実施の形態に係る液処理方法と相違する。従って、本変形例に係る液処理方法を行うための液処理装置は、第1の実施の形態の液処理装置と同様にすることができ、説明を省略する。
【0094】
図8は、本変形例に係る液処理方法の各工程におけるLEDの点灯状態を示すタイミングチャートである。
【0095】
本変形例でも、第1の実施の形態と同様に、ステップS11(搬入工程)を行った後、ステップS12(処理液供給工程)〜ステップS14(乾燥工程)を行って、処理液による処理、リンス処理、乾燥処理を行う。その後、第1の実施の形態と同様にステップS15(搬出工程)を行う。ただし、本変形例では、ステップS11(搬入工程)及びステップS12(処理液供給工程)においてLEDを点灯しない。
【0096】
本変形例でも、少なくともリンス液供給工程において、発光素子により発光された、基板のみが吸収する波長領域の光を基板に照射し、基板を加熱する。基板が加熱されると、残留する処理液の温度が上昇するため、処理液が拡散する拡散係数が増大し、残留する処理液がリンス液と容易に混合される。さらに、加熱された処理液とウェハWの表面を流れるリンス液との温度差によって対流が発生し、穴部内又はパターン内の処理液とリンス液との混合液がリンス液に容易に置換される。従って、処理液により処理した後、基板をリンス処理する際に、処理液が基板に残留することを防止でき、処理時間を短縮できる。
(第1の実施の形態の第2の変形例)
次に、図9及び図10を参照し、本発明の第1の実施の形態の第2の変形例に係る液処理方法について説明する。
【0097】
本変形例に係る液処理方法は、搬入工程及び処理液供給工程においてLEDを点灯せず、また、乾燥工程において有機溶剤を供給しない点で、第1の実施の形態に係る液処理方法と相違する。従って、本変形例に係る液処理方法を行うための液処理装置は、第1の実施の形態の液処理装置と同様にすることができ、説明を省略する。ただし、本変形例においては、液処理装置は、有機溶剤供給機構90を備えていなくてもよい。
【0098】
図9は、本変形例に係る液処理方法の各工程におけるLEDの点灯状態を示すタイミングチャートである。図10は、本変形例に係る液処理方法の各工程におけるウェハ表面の状態を模式的に示す断面図である。
【0099】
なお、図10において、図示を容易にするため、ウェハWの断面を白抜きにより表示している。
【0100】
本変形例でも、第1の実施の形態と同様に、ステップS11(搬入工程)を行った後、ステップS12(処理液供給工程)〜ステップS14(乾燥工程)を行って、処理液による処理、リンス処理、乾燥処理を行う。その後、第1の実施の形態と同様にステップS15(搬出工程)を行う。ただし、本変形例では、ステップS14(乾燥工程)において有機溶剤を供給せず、LEDも点灯しない。
【0101】
ステップS14(乾燥工程)では、リンス液Rを供給したウェハWに、LED112を消灯した状態で、乾燥ガス供給ノズル96により、例えばNガス等の乾燥ガスGを供給する(図10(a))。そして、LED112を消灯した状態で、リンス液Rを除去し、乾燥させる(図10(b))。
【0102】
このとき、ウェハWを回転させ、振り切り乾燥させることが好ましい。ウェハWの回転数を、例えば1000rpmとすることができる。
【0103】
また、乾燥ガスの供給は、LEDを消灯した状態で行うことが好ましい。これにより、乾燥処理において、リンス液の蒸発に伴ってウェハ表面にウォーターマークが発生することを防止できる。
【0104】
そして、ウェハWが乾燥されるのに伴って、穴部V内も乾燥される。
【0105】
本変形例でも、少なくともリンス液供給工程において、発光素子により発光された、基板のみが吸収する波長領域の光を基板に照射し、基板を加熱する。基板が加熱されると、残留する処理液の温度が上昇するため、処理液が拡散する拡散係数が増大し、残留する処理液がリンス液と容易に混合される。さらに、加熱された処理液とウェハWの表面を流れるリンス液との温度差によって対流が発生し、穴部内又はパターン内の処理液とリンス液との混合液がリンス液に容易に置換される。従って、処理液により処理した後、基板をリンス処理する際に、処理液が基板に残留することを防止でき、処理時間を短縮できる。
(第2の実施の形態)
次に、図11を参照し、本発明の第2の実施の形態に係る液処理装置の概略構成について説明する。
【0106】
本実施の形態に係る液処理装置は、液処理ユニットにおいて、発光素子がウェハの下方に設けられている点で、第1の実施の形態に係る液処理装置と相違する。また、本実施の形態に係る液処理装置の液処理ユニット以外の部分は、第1の実施の形態に係る液処理装置と同一構造であり、説明を省略する。
【0107】
図11は、本実施の形態に係る液処理ユニット22aの概略構成を示す断面図である。
【0108】
液処理ユニット22aは、回転プレート30a、保持部材40、回転駆動部50、基板昇降部材60、処理液供給機構70、リンス液供給機構80、有機溶剤供給機構90、乾燥ガス供給機構95、排気・排液部(カップ)100、トッププレート110a、昇降機構120、及び制御部200を有する。回転プレート30a及びトッププレート110a以外の部分は、第1の実施の形態に係る液処理ユニット22と同一構造であり、説明を省略する。
【0109】
回転プレート30aは、ベースプレート31b及び回転軸32を有する。ベースプレート31bが、水平に設けられ、中央に円形の孔31aを有すること、回転軸32が、ベースプレート31bから下方に向かって延在するように設けられており、中心に孔32aが設けられた円筒状の形状を有することは、第1の実施の形態と同様である。
【0110】
ベースプレート31bの上面には、発光素子34が設けられている。発光素子34は、ウェハWのみが吸収する波長領域の光を発光し、発光した光をウェハWに照射する。第1の実施の形態で図2及び図3を用いて示したのと同様に、ベースプレート31bの上面には、発光素子34が、例えば等間隔で略隙間なく並べられていてもよい。
【0111】
なお、発光素子34の上方には、例えば石英により形成されたカバー34aが設けられていてもよい。カバー34aは、処理液から発光素子34を保護するためのものである。
【0112】
発光素子34として、第1の実施の形態における発光素子112と同様に、例えばLED(発光ダイオード)、半導体レーザ等を用いることが好ましい。LED(発光ダイオード)又は半導体レーザが発光する光は、所定の波長領域にピーク波長を有するため、処理液やリンス液が吸収せず、ウェハWのみが吸収する波長領域の光を発光することが容易であるからである。
【0113】
また、発光素子34として、LEDを用いると、点灯(ON)後にウェハWの温度が上昇して安定するまでの時間を短縮できる。また、LEDは、発光効率に優れている。従って、発光素子34として、LEDを用いると、消費電力を低減できる。
【0114】
そして、ベースプレート31bの上面に発光素子34が設けられているため、トッププレート110aの下面には、発光素子が設けられていなくてもよい。
【0115】
本実施の形態に係る液処理方法は、保持部材40に保持されているウェハWを上方からではなく下方から加熱する点を除き、第1の実施の形態に係る液処理方法、第1の実施の形態の第1の変形例に係る液処理方法、及び第1の実施の形態の第2の変形例に係る液処理方法のいずれかと同様にすることができる。
【0116】
本実施の形態でも、少なくともリンス液供給工程において、発光素子により発光された、基板のみが吸収する波長領域の光を基板に照射し、基板を加熱する。基板が加熱されると、残留する処理液の温度が上昇するため、処理液が拡散する拡散係数が増大し、残留する処理液がリンス液と容易に混合される。さらに、加熱された処理液とウェハWの表面を流れるリンス液との温度差によって対流が発生し、穴部内又はパターン内の処理液とリンス液との混合液がリンス液に容易に置換される。従って、処理液により処理した後、基板をリンス処理する際に、処理液が基板に残留することを防止でき、処理時間を短縮できる。
【0117】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0118】
例えば、処理液による処理として、レジスト膜を露光した後、例えばアルカリ性の現像液により現像する現像処理にも適用可能である。すなわち、現像処理後のリンス処理においても、本発明に係る液処理方法は適用可能である。そして、LED等の発光素子により発光された光を基板に照射し、基板を加熱することによって、現像処理した後、基板をリンス処理する際に、現像液が基板に残留することを防止でき、現像処理の時間を短縮できる。
【符号の説明】
【0119】
10 液処理装置
30 回転プレート
40 保持部材
70 処理液供給機構
80 リンス液供給機構
90 有機溶剤供給機構
112 発光素子
200 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理液により処理する液処理装置において、
基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持されている基板に処理液を供給する処理液供給部と、
前記基板にリンス液を供給するリンス液供給部と、
前記基板のみが吸収する波長領域の光を発光し、発光した光を前記基板に照射する発光素子と
を有する、液処理装置。
【請求項2】
前記基板保持部と、前記処理液供給部と、前記リンス液供給部と、前記発光素子とを制御する制御部を有し、
前記制御部は、
前記基板に、前記処理液供給部により処理液を供給し、処理液を供給した前記基板に、前記リンス液供給部によりリンス液を供給し、リンス液を供給した前記基板を乾燥させるように制御するとともに、
少なくともリンス液を供給する際の一期間において、前記発光素子により発光された光を前記基板に照射するように制御するものである、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記基板にリンス液を供給する際に、一定時間リンス液を供給した後、前記発光素子による光の照射を開始するように制御するものである、請求項2に記載の液処理装置。
【請求項4】
前記基板は、シリコン基板であり、
前記発光素子により発光された光は、400〜1000nmの波長領域にピーク波長を有するものである、請求項1から請求項3のいずれかに記載の液処理装置。
【請求項5】
前記基板に有機溶剤を供給する有機溶剤供給部を有し、
前記制御部は、
前記有機溶剤供給部を制御するものであって、
リンス液を供給した前記基板に、前記有機溶剤供給部により有機溶剤を供給し、供給した有機溶剤によりリンス液を除去した後、前記基板を乾燥させるように制御するとともに、
前記基板に有機溶剤を供給する際に、前記発光素子により発光された光を前記基板に照射するように制御するものである、請求項2又は請求項3に記載の液処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記基板に処理液を供給する前に、前記発光素子により発光された光を前記基板に照射するように制御するものである、請求項2、請求項3又は請求項5に記載の液処理装置。
【請求項7】
基板を処理液により処理する液処理方法において、
基板保持部に保持されている基板に、処理液供給部により処理液を供給する処理液供給工程と、
処理液を供給した前記基板に、リンス液供給部によりリンス液を供給するリンス液供給工程と、
リンス液を供給した前記基板を乾燥させる乾燥工程と
を有し、
少なくとも前記リンス液供給工程の一期間において、発光素子により発光された、前記基板のみが吸収する波長領域の光を前記基板に照射するものである、液処理方法。
【請求項8】
前記リンス液供給工程において、前記基板に一定時間リンス液を供給した後、前記発光素子による光の照射を開始する、請求項7に記載の液処理方法。
【請求項9】
前記基板は、シリコン基板であり、
前記発光素子により発光された光は、400〜1000nmの波長領域にピーク波長を有するものである、請求項7又は請求項8に記載の液処理方法。
【請求項10】
前記乾燥工程は、リンス液を供給した前記基板に、有機溶剤供給部により有機溶剤を供給し、供給した有機溶剤によりリンス液を除去した後、前記基板を乾燥させるものであり、
前記乾燥工程において、前記基板に有機溶剤を供給する際に、前記発光素子により発光された光を前記基板に照射する、請求項7から請求項9のいずれかに記載の液処理方法。
【請求項11】
前記処理液供給工程の前に、前記発光素子により発光された光を前記基板に照射する、請求項7から請求項10のいずれかに記載の液処理方法。
【請求項12】
コンピュータに請求項7から請求項11のいずれかに記載の液処理方法を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−138510(P2012−138510A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290973(P2010−290973)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】