説明

液晶表示装置

【課題】フレーム周波数の変化に対応させて、開口率を低減させることなく画素内に所望の保持容量を確保することを可能とした液晶表示装置を提供する。
【解決手段】酸化物半導体材料を用いた画素トランジスタ及び2つの容量素子を各画素に有する液晶表示装置において、一方の容量素子は、透光性を有する材料で構成し、画素の開口率を向上させる。更に透光性を有する容量素子の特性を利用して、画像の表示状態に依存して変化するフレーム周波数に対応させて容量線の電圧値を調整することで、画素内の保持容量の大きさを変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ(LCD)などのフラットパネルディスプレイが広く普及してきている。薄膜トランジスタの半導体層材料として、アモルファス(非晶質)シリコンやポリ(多結晶)シリコンを用いたものが多く使われている一方、透光性を有する金属酸化物も注目集めている。例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物などを、薄膜トランジスタのチャネル層に適用することで、開口率を向上させる技術が検討されている。また、特許文献1では、寄生容量を低減させ、薄膜の剥がれに起因する不良を防止する薄膜トランジスタを作製する技術を開示している。
【0003】
非特許文献1では、液晶表示装置の低消費電力化を図るために、動画表示と静止画表示の際のフレーム周波数を異ならせる構成について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−098305号公報
【0005】
【非特許文献1】Kazuhiko Tsuda et al.,IDW’02,pp295−298
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
静止画表示時にフレーム周波数を低くした場合(1/600Hz〜1Hz)、画像信号等の電気信号の保持時間をより長くし、より良好な静止画表示を維持するためには、画素内における保持容量が大きい方が有利である。しかし画素内において保持容量を大きくしようと設計すると、画素の開口率が低減する問題や、画素トランジスタのチャネル幅を大きくしなければならないといった問題がある。また、フリッカーノイズ(ちらつき)を防ぎ、より滑らかな動画表示を実現するため、動画表示時にはフレーム周波数を高くする(60Hz〜180Hz)。カラーシーケンシャル表示を行う場合には、更にフレーム周波数を高くする(180Hz〜480Hz)。この際、画像信号等の電気信号は素早く切り替えられるため、画素内において保持容量を大きくする必要はない。つまり静止画表示時及び動画表示時のどちらの場合に対しても、適切な保持容量を狭い面積の画素内に同時に確保することは非常に困難である。
【0007】
上述の問題に鑑み、開示する発明の一態様では、フレーム周波数の変化に対応させて、開口率を低減させることなく画素内に所望の保持容量を確保することを可能とした液晶表示装置を提供することを課題の一とする。また消費電力を低減させ、より高精細な画像表示を可能とした液晶表示装置を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、ゲート電極が走査線と電気的に接続され、ソース電極又はドレイン電極の一方となる第1の電極が信号線と電気的に接続され、ソース電極又はドレイン電極の他方となる第2の電極が画素電極と電気的に接続される画素トランジスタと、一方の電極が第2の電極と電気的に接続され、他方の電極が容量線に電気的に接続される第1の容量素子と、一方の電極が第2の電極と電気的に接続され、他方の電極が容量線に電気的に接続される第2の容量素子とを有し、第2の容量素子は、一方の電極が画素電極と同じ層で形成され、他方の電極が画素トランジスタの半導体層と同じ半導体材料で形成され、一方の電極と他方の電極との間に誘電体層が挟まれたMOSキャパシタ構造を有し、容量線の電位を調整することによって、ゲートパルスの時間間隔に応じて第2の容量素子の容量値を変化させることを特徴とする液晶表示装置である。
【0009】
また、本発明の一態様は、ゲート電極が走査線と電気的に接続され、ソース電極又はドレイン電極の一方となる第1の電極が信号線と電気的に接続され、ソース電極又はドレイン電極の他方となる第2の電極が画素電極と電気的に接続される画素トランジスタと、一方の電極が第2の電極と電気的に接続され、他方の電極が遮蔽用配線に電気的に接続される第1の容量素子と、一方の電極が第2の電極と電気的に接続され、他方の電極が容量線に電気的に接続される第2の容量素子と、ゲート電極が遮蔽用配線と電気的に接続され、ソース電極又はドレイン電極の一方となる第1の電極が、第1の容量素子の一方の電極と電気的に接続され、ソース電極又はドレイン電極の他方となる第2の電極が容量線に電気的に接続されるトランジスタとを有し、第2の容量素子は、一方の電極が画素電極と同じ層で形成され、他方の電極が画素トランジスタの半導体層と同じ半導体材料で形成され、一方の電極と他方の電極との間に誘電体層が挟まれたMOSキャパシタ構造を有し、容量線の電位を調整し、少なくとも画像表示時にトランジスタがオフとなるような電位を遮蔽用配線に供給することによって、ゲートパルスの時間間隔に応じて第2の容量素子の容量値を変化させることを特徴とする液晶表示装置である。
【0010】
また本発明の一態様において、画素電極と半導体層は、透光性を有することを特徴とする液晶表示装置である。
【0011】
また本発明の一態様において、半導体層は、酸化物半導体で構成されていてもよい。
【0012】
なお、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。また、「上」「下」の用語は説明の便宜のために用いる表現に過ぎない。
【0013】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0014】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0015】
なお、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。
【0016】
例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様により、フレーム周波数の変化に対応させて、開口率を低減させることなく画素内に所望の保持容量を確保することを可能とした液晶表示装置を得ることができる。また消費電力を低減させ、より高精細な画像表示を可能とした液晶表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】液晶表示装置の画素構成を示す回路図。
【図2】液晶表示装置の画素構成を示す上面図。
【図3】液晶表示装置の画素構成を示す断面図。
【図4】容量−電圧特性及び電圧の関係図。
【図5】容量−電圧特性。
【図6】液晶表示装置の画素構成を示す回路図。
【図7】液晶表示装置の画素構成を示す上面図。
【図8】液晶表示装置の画素構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0020】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0021】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0022】
(実施の形態1)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る液晶表示装置における画素の構成および保持容量を切り替える方法について、説明する。なお本実施の形態で説明する液晶表示装置は、画像の表示状態に合わせて容量値を変化させることができる画素を有するものである。
【0023】
図1は、液晶表示装置が有する画素の回路の一例を示す図である。
【0024】
画素110は、画素トランジスタ300、第1の容量素子10、第2の容量素子20を有する。画素トランジスタ300のゲート電極は、走査線GLと電気的に接続され、画素トランジスタ300のソース電極又はドレイン電極の一方となる第1電極は、信号線SLと電気的に接続されている。そして、第1の容量素子10の一方の電極と第2の容量素子20の一方の電極とは、電気的に接続され、画素トランジスタ300のソース電極又はドレイン電極の他方となる第2電極と、第1の容量素子10の他方の電極と、第2の容量素子20の他方の電極とは、電気的に接続されている。なお第1の容量素子10の一方の電極、及び第2の容量素子20の一方の電極は、容量線Csと電気的に接続されている。
【0025】
次いで、図1に示した画素の具体的な構成の一例を、図2及び図3を用いて説明する。図2に、画素の上面図を示す。また、図3に、図2の鎖線A1―A2における画素の断面図を示す。
【0026】
断面A1−A2において、基板500上に下地層501が形成され、下地層501上にゲート電極502、配線503、配線504、が形成されている。また、ゲート電極502、配線503、配線504を覆うように、ゲート絶縁層507が形成されている。更に、半導体層508が、ゲート電極502と重なるようにゲート絶縁層507上に形成され、半導体層509が、ゲート絶縁層507上に形成されている。また、ゲート電極502の端部と重なるように、半導体層508上にソース電極510a及びドレイン電極510bが形成され、配線504の一部に接し、ゲート絶縁層507、半導体層509上に、配線511が形成されている。なお、配線511は、ゲート絶縁層507に形成されたコンタクトホール516を介して配線504に電気的に接続されている。また、半導体層508の一部に接し、ソース電極510a、ドレイン電極510b、配線511上に絶縁層512、絶縁層513が順に形成され、絶縁層513上には画素電極514が形成されている。なお、画素電極514は、絶縁層512、絶縁層513に形成されたコンタクトホール515を介してドレイン電極510bに電気的に接続されている。
【0027】
配線504とドレイン電極510bが、ゲート絶縁層507を間に挟んで重なっている部分が第1の容量素子10として機能する。ゲート絶縁層507は誘電体層として機能する。また、半導体層509と画素電極514が、絶縁層512と絶縁層513を間に挟んで重なっている部分が第2の容量素子20として機能する。絶縁層512と絶縁層513は誘電体層として機能する。
【0028】
誘電体層を多層構造とすることで、絶縁層に形成されるピンホール等による層間ショートを防止させることができる。すなわち一つの誘電体層にピンホールが生じても、ピンホールは他の誘電体層で被覆されるため、第2の容量素子20の機能を向上させることができる。
【0029】
半導体層508及び半導体層509は、非晶質シリコン、微結晶シリコン及び多結晶シリコンを用いて形成することができる。しかしながら、低いフレーム周波数で画素を駆動する場合には、前述のシリコン系半導体材料よりもエネルギーギャップの広い半導体材料を用いることが好ましい。エネルギーギャップの広い半導体材料として、好適には酸化物半導体を用いることができる。例えば、酸化亜鉛系の酸化物半導体はエネルギーギャップが約3eVあり、可視光域において透過性に優れる。このような酸化物半導体はn型の導電性を示すものが多いが、水素等のドナーとなる不純物を低減させ、また酸素欠損に起因する欠陥を低減することでより真性半導体に近づけることができる。このような高純度化された酸化物半導体は、エネルギーギャップが広いことと相まって、トランジスタのオフ電流を十分に低減することができる。
【0030】
半導体層508に酸化物半導体を用いて画素トランジスタ300を構成することで、オフ電流を低減することができ、画素に設けた保持容量から電荷が消失してしまう割合を低減することができる。すなわち、フレーム周波数を低くした場合でも、次の書き込み期間まで保持容量に電荷を保持し続けることが可能となる。
【0031】
用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0032】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0033】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0034】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0035】
また、酸化物半導体として、InMO(ZnO)(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、InSnO(ZnO)(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0036】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0037】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0038】
また、画素トランジスタ300の半導体層508は、ゲート電極502に重なる構成を用いることが望ましい。このような構成を採用することで、基板500側から入射した光により半導体層508中の酸化物半導体が劣化するのを防ぐことができる。これにより、画素トランジスタ300の閾値電圧がシフトするなどの特性の劣化が引き起こされるのを防ぐことができる。
【0039】
画素電極514には、透光性を有する導電材料を用いることが好ましい。透光性を有する導電材料としては、酸化珪素を含む酸化インジウムスズ(ITSO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)(登録商標)、ガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)などの材料を用いることができる。なお本明細書において、透光性を有する導電材料とは可視光の透過率が75〜100%である材料を指すものとする。
【0040】
半導体層509に酸化物半導体を用いて、画素電極514に、透光性を有する導電材料を用いることで、透光性を有する第2の容量素子20を形成することが可能になる。このため、画素110の開口率を向上させることができる。第2の容量素子20の面積を、画素ピッチの7割以上、または8割以上とすることで、より開口率を向上させた液晶表示装置を実現することができる。
【0041】
次いで、図1乃至図3に示した画素が、保持容量の値を変化させる具体的な方法について説明する。
【0042】
図4(A)に、MOSキャパシタの容量(C)−電圧(Vg)特性を示す。横軸はゲート電圧Vg、縦軸は容量Cである。半導体層509と画素電極514が、絶縁層512と絶縁層513を間に挟んで重なって形成されている第2の容量素子20は、MOSキャパシタを構成している。MOSキャパシタは、図4(A)に示すように、電圧値がある一定のしきい値電圧Vthより低い場合は、容量素子として機能せず、電圧値がある一定のしきい値電圧Vth以上の場合にのみ、容量素子として機能するという特性を持つ。
【0043】
図4(B)に、動画表示期間と静止画表示期間において、容量線Csの電圧値を変化させた場合、容量線Csが取り得る電圧値の範囲の模式図を示す。ビデオデータ電圧Vviは、図4(B)に示すように、最大値Vmaxから、最小値Vminまでのある一定の範囲内の値を取る。従って、容量線Csの電圧値を、動画表示期間には、ビデオデータ電圧Vviの最大値Vmax以上に調整し、静止画表示期間には、ビデオデータ電圧Vviの最小値Vmin以下に調整する。
【0044】
図5において、第2の容量素子20のゲート電極の電圧Vgが、ビデオデータ電圧Vviの最大値Vmaxから、最小値Vminまでの値を取る場合の範囲をa、ビデオデータ電圧Vviの最小値Vmin以下の値を取る場合の範囲をb、ビデオデータ電圧Vviの最大値Vmax以上の値を取る場合の範囲をcとする。
【0045】
容量線Csの電圧値をビデオデータ電圧Vviの最大値Vmax以上に調整した場合、第2の容量素子20のゲート電極の電圧値Vgは、ビデオデータ電圧Vviの最小値Vmin以下の値を取る。図5(A)より、第2の容量素子20のゲート電極の電圧値Vgが、範囲b内のいずれかの値を取る時、第2の容量素子20の容量値は、値を取らないことがわかる。
【0046】
つまり動画表示期間には、第1の容量素子10の一方の電極、及び第2の容量素子20の一方の電極と電気的に接続される容量線Csの電圧値が、ビデオデータ電圧Vviの最大値Vmax以上の値を取るため、MOSキャパシタである第2の容量素子20は機能しないことになる。従って、画素110においては、第1の容量素子10のみが機能する。
【0047】
容量線Csの電圧値をビデオデータ電圧Vviの最小値Vmin以下に調整した場合、第2の容量素子20のゲート電極の電圧値Vgは、ビデオデータ電圧Vviの最大値Vmax以上の値を取る。図5(B)より、第2の容量素子20のゲート電極の電圧値Vgが、範囲cのいずれかの値を取る時、第2の容量素子20の容量値は、ある一定の値Caを取ることがわかる。
【0048】
つまり静止画表示期間には、第1の容量素子10の一方の電極、及び第1の容量素子10の一方の電極と電気的に接続される容量線Csの電圧値が、ビデオデータ電圧Vviの最小値Vmin以下の値を取るため、MOSキャパシタである第2の容量素子20は機能する。従って、画素110においては、第1の容量素子10及び第2の容量素子20が機能する。
【0049】
このように、上記構成によれば、容量線Csの電圧値を調整することによって、動画表示期間と、静止画表示期間の両期間で容量値の切り替えが可能になる。すなわち画像の表示状態に依存して、極端に変化するフレーム周波数の値に対応させて、その都度、画素内の容量値を、各画素に最も適するように変化させることができる。特にカラーシーケンシャル表示時のような極めて高いフレーム周波数で画素を駆動する場合では、より一層画素内の容量値を低減させることができるため、液晶表示装置の小型化、高集積化が実現される。つまり、画素に対して、効率良く所望の容量値を設定できるため、液晶表示装置全体の消費電力を低減させることが可能になる。
【0050】
また、上記構成によれば、第1の容量素子10の一方の電極、及び第2の容量素子20の一方の電極と電気的に接続される容量線Csの電圧値を調整することによって、画素全体の容量値を独立して制御できるため無駄に配線を引き回す必要はない。このため、隣接配線間の重なりに生じる寄生容量を低減させることができ、より高精細な液晶表示装置を得ることができる。また、画素トランジスタ300のチャネル幅に依存せず、適切な保持容量を画素内に確保できるため、液晶表示装置の高集積化が容易になる。
【0051】
(実施の形態2)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る液晶表示装置における別の画素の構成および保持容量を切り替える方法について、説明する。なお本実施の形態で説明する液晶表示装置は、画像の表示状態に合わせて容量値を変化させることができる画素を有するものである。
【0052】
図6は、液晶表示装置が有する画素の回路の一例を示す図である。
【0053】
画素111は、画素トランジスタ301、トランジスタ400、第1の容量素子11、第2の容量素子21を有する。画素トランジスタ301のゲート電極は、走査線GLと電気的に接続され、画素トランジスタ301のソース電極又はドレイン電極の一方となる第1電極は、信号線SLと電気的に接続されている。そして、第1の容量素子11の一方の電極とトランジスタ400のゲート電極とは、電気的に接続され、トランジスタ400のソース電極又はドレイン電極の一方となる第1電極と、第2の容量素子21の一方の電極とは、電気的に接続され、画素トランジスタ301のソース電極又はドレイン電極の他方となる第2電極と、第1の容量素子11の他方の電極と、トランジスタ400のソース電極又はドレイン電極の他方となる第2電極と、第2の容量素子21の他方の電極とは、電気的に接続されている。
【0054】
なおトランジスタ400のゲート電極及び第1の容量素子11の一方の電極は、遮蔽用配線Diと電気的に接続され、トランジスタ400のソース電極又はドレイン電極の一方となる第1電極及び第2の容量素子21の一方の電極は、容量線Csと電気的に接続されている。更に、遮蔽用配線Diには、少なくとも画像表示時にトランジスタ400がオフとなるような電位が供給されている。
【0055】
次いで、図6に示した画素の具体的な構成の一例を、図7乃至図8を用いて説明する。図7に、画素の上面図を示す。また、図8に、図7の鎖線A1―A2における画素の断面図を示す。
【0056】
断面A1−A2において、基板200上に下地層201が形成され、下地層201上にゲート電極202、配線203、配線204、配線205が形成されている。また、ゲート電極202、配線203、配線204、配線205上に、ゲート絶縁層206と半導体層207が形成されている。また、半導体層207上にソース電極208a及びドレイン電極208bが形成されている。また、半導体層207の一部に接し、ソース電極208a及びドレイン電極208b上に絶縁層209が形成されている。絶縁層209上には画素電極210が形成されている。なお、画素電極210は、絶縁層209に形成されたコンタクトホール211を介してドレイン電極208bに電気的に接続されている。
【0057】
配線204とドレイン電極208bが、ゲート絶縁層206と半導体層207を間に挟んで重なっている部分が第1の容量素子11として機能する。ゲート絶縁層206と半導体層207は誘電体層として機能する。また、半導体層207と画素電極210が、絶縁層209を間に挟んで重なっている部分が第2の容量素子21として機能する。絶縁層209は誘電体層として機能する。
【0058】
誘電体層を多層構造とすることで、絶縁層に形成されるピンホール等による層間ショートを防止させることができる。すなわち一つの誘電体層にピンホールが生じても、ピンホールは他の誘電体層で被覆されるため、第1の容量素子11の機能を向上させることができる。
【0059】
半導体層207に酸化物半導体を用いて画素トランジスタ301を構成することで、オフ電流を低減することができ、画素に設けた保持容量から電荷が消失してしまう割合を低減することができる。すなわち、フレーム周波数を低くした場合でも、次の書き込み期間まで保持容量に電荷を保持し続けることが可能となる。
【0060】
画素電極210には、透光性を有する導電材料を用いることが好ましい。透光性を有する導電材料としては、酸化珪素を含む酸化インジウムスズ(ITSO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)(登録商標)、ガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)などの材料を用いることができる。なお本明細書において、透光性を有する導電材料とは可視光の透過率が75〜100%である材料を指すものとする。
【0061】
半導体層207に酸化物半導体を用いて、画素電極210に、透光性を有する導電材料を用いることで、透光性を有する第2の容量素子21を形成することが可能になる。このため、画素111の開口率を向上させることができる。第2の容量素子21の面積を、画素ピッチの7割以上、または8割以上とすることで、より開口率を向上させた液晶表示装置を実現することができる。なお、画素ピッチとは、隣り合う信号線から信号線までの距離を一辺とし、隣り合う走査線から走査線までの距離をもう一辺として、これらの両辺に囲まれた部分の面積を示すものとする。
【0062】
次いで、図6乃至図8に示した画素が、保持容量の値を変化させる具体的な方法について説明する。
【0063】
半導体層207と画素電極210が、絶縁層209を間に挟んで重なって形成されている第2の容量素子21は、MOSキャパシタを構成している。MOSキャパシタは、図4(A)に示すように、電圧値がある一定のしきい値電圧Vthより低い場合は、容量素子として機能せず、電圧値がある一定のしきい値電圧Vth以上の場合にのみ、容量素子として機能するという特性を持つ。
【0064】
図4(B)に、動画表示期間と静止画表示期間において、容量線Csの電圧値を変化させた場合、容量線Csが取り得る電圧値の範囲の模式図を示す。ビデオデータ電圧Vviは、図4(B)に示すように、最大値Vmaxから、最小値Vminまでのある一定の範囲内の値を取る。従って、容量線Csの電圧値を、動画表示期間には、ビデオデータ電圧Vviの最大値Vmax以上に調整し、静止画表示期間には、ビデオデータ電圧Vviの最小値Vmin以下に調整する。
【0065】
なお、画素111において、遮蔽用配線Diを設置しているのは、図8における領域Bが導通するのを防ぐためである。従って、トランジスタ400のゲート電極と電気的に接続される遮蔽用配線Diには、少なくとも画像表示時には、トランジスタ400がオフとなるような電位を供給する必要がある。
【0066】
容量線Csの電圧値をビデオデータ電圧Vviの最大値Vmax以上に調整した場合、第2の容量素子21のゲート電極の電圧値Vgは、ビデオデータ電圧Vviの最小値Vmin以下の値を取る。図5(A)より、第2の容量素子21のゲート電極の電圧値Vgが、範囲b内のいずれかの値を取る時、第2の容量素子21の容量値は、値を取らないことがわかる。
【0067】
つまり動画表示期間には、第2の容量素子21の一方の電極、及びトランジスタ400のソース電極又はドレイン電極の一方となる第1電極と電気的に接続される容量線Csの電圧値が、ビデオデータ電圧Vviの最大値Vmax以上の値を取るため、MOSキャパシタである第2の容量素子21は機能しないことになる。従って、画素111においては、第1の容量素子11のみが機能する。
【0068】
容量線Csの電圧値をビデオデータ電圧Vviの最小値Vmin以下に調整した場合、第2の容量素子21のゲート電極の電圧値Vgは、ビデオデータ電圧Vviの最大値Vmax以上の値を取る。図5(B)より、第2の容量素子21のゲート電極の電圧値Vgが、範囲cのいずれかの値を取る時、第2の容量素子21の容量値は、ある一定の値Caを取ることがわかる。
【0069】
つまり静止画表示期間には、第2の容量素子21の一方の電極、及びトランジスタ400のソース電極又はドレイン電極の一方となる第1電極と電気的に接続される容量線Csの電圧値が、ビデオデータ電圧Vviの最小値Vmin以下の値を取るため、MOSキャパシタである第2の容量素子21は機能する。従って、画素111においては、第1の容量素子11及び第2の容量素子21が機能する。
【0070】
このように、上記構成によれば、容量線Csの電圧値を調整することによって、動画表示期間と、静止画表示期間の両期間で容量値の切り替えが可能になる。すなわち画像の表示状態に依存して、極端に変化するフレーム周波数の値に対応させて、その都度、画素内の容量値を、各画素に最も適するように変化させることができる。特にカラーシーケンシャル表示時のような極めて高いフレーム周波数で画素を駆動する場合では、より一層画素内の容量値を低減させることができるため、液晶表示装置の小型化、高集積化が実現される。つまり、画素に対して、効率良く所望の容量値を設定できるため、液晶表示装置全体の消費電力を低減させることが可能になる。
【0071】
また、上記構成によれば、第2の容量素子21の一方の電極、及びトランジスタ400のソース電極又はドレイン電極の一方となる第1電極と電気的に接続される容量線Csの電圧値を調整することによって、画素全体の容量値を独立して制御できるため無駄に配線を引き回す必要はない。このため、隣接配線間の重なりに生じる寄生容量を低減させることができ、より高精細な液晶表示装置を得ることができる。また、画素トランジスタ301のチャネル幅に依存せず、適切な保持容量を画素内に確保できるため、液晶表示装置の高集積化が容易になる。
【符号の説明】
【0072】
10 容量素子
11 容量素子
20 容量素子
21 容量素子
110 画素
111 画素
200 基板
201 下地層
202 ゲート電極
203 配線
204 配線
205 配線
206 ゲート絶縁層
207 半導体層
209 絶縁層
210 画素電極
211 コンタクトホール
300 画素トランジスタ
301 画素トランジスタ
400 トランジスタ
500 基板
501 下地層
502 ゲート電極
503 配線
504 配線
507 ゲート絶縁層
508 半導体層
509 半導体層
511 配線
512 絶縁層
513 絶縁層
514 画素電極
515 コンタクトホール
516 コンタクトホール
208a ソース電極
208b ドレイン電極
510a ソース電極
510b ドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極が走査線と電気的に接続され、ソース電極又はドレイン電極の一方となる第1の電極が信号線と電気的に接続され、ソース電極又はドレイン電極の他方となる第2の電極が画素電極と電気的に接続される画素トランジスタと、
一方の電極が前記第2の電極と電気的に接続され、他方の電極が容量線に電気的に接続される第1の容量素子と、
一方の電極が前記第2の電極と電気的に接続され、他方の電極が容量線に電気的に接続される第2の容量素子とを有し、
前記第2の容量素子は、前記一方の電極が前記画素電極と同じ層で形成され、前記他方の電極が前記画素トランジスタの半導体層と同じ半導体材料で形成され、前記一方の電極と前記他方の電極との間に誘電体層が挟まれたMOSキャパシタ構造を有し、
前記容量線の電位を調整することによって、ゲートパルスの時間間隔に応じて前記第2の容量素子の容量値を変化させることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
ゲート電極が走査線と電気的に接続され、ソース電極又はドレイン電極の一方となる第1の電極が信号線と電気的に接続され、ソース電極又はドレイン電極の他方となる第2の電極が画素電極と電気的に接続される画素トランジスタと、
一方の電極が前記第2の電極と電気的に接続され、他方の電極が遮蔽用配線に電気的に接続される第1の容量素子と、
一方の電極が前記第2の電極と電気的に接続され、他方の電極が容量線に電気的に接続される第2の容量素子と、
ゲート電極が前記遮蔽用配線と電気的に接続され、ソース電極又はドレイン電極の一方となる第1の電極が、前記第1の容量素子の前記一方の電極と電気的に接続され、ソース電極又はドレイン電極の他方となる第2の電極が前記容量線に電気的に接続されるトランジスタとを有し、
前記第2の容量素子は、前記一方の電極が前記画素電極と同じ層で形成され、前記他方の電極が前記画素トランジスタの半導体層と同じ半導体材料で形成され、前記一方の電極と前記他方の電極との間に誘電体層が挟まれたMOSキャパシタ構造を有し、
前記容量線の電位を調整し、少なくとも画像表示時に前記トランジスタがオフとなるような電位を前記遮蔽用配線に供給することによって、ゲートパルスの時間間隔に応じて前記第2の容量素子の容量値を変化させることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】
請求項1乃至請求項2のいずれか一において、
前記画素電極と前記半導体層は、透光性を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記半導体層は、酸化物半導体で構成されていることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−83738(P2012−83738A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200767(P2011−200767)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】