説明

液状樹脂組成物及び液状樹脂組成物を使用して作製した半導体装置

【課題】保存時の充填剤の沈降が少なく樹脂組成物層の厚み安定性に優れかつ弾性率が低く十分な低応力性を有する液状樹脂組成物及び該液状樹脂組成物を半導体用ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として使用することで信頼性に優れた半導体装置を提供する。
【解決手段】アクリル基を1つ有する化合物(A)、充填材(B)を含む液状樹脂組成物であって、前記化合物(A)の50℃における透過率をTaとし、0℃における透過率をTbとしたとき、TaおよびTbが下記条件式1を満たすことを特徴とする液状樹脂組成物。[条件式1:(Ta−Tb)/Ta≧0.1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状樹脂組成物及び液状樹脂組成物を使用して作製した半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製品の大容量、高速処理化及び微細配線化に伴い半導体製品作動中に発生する熱の問題が顕著になってきており、半導体製品から熱を逃がす、いわゆるサーマルマネージメントがますます重要な課題となってきている。このため半導体製品にヒートスプレッダー、ヒートシンクなどの放熱部材を取り付ける方法などが一般的に採用されているが放熱部材を接着する材料自体の熱伝導率もより高いものが望まれてきている。一方半導体製品の形態によっては、サーマルマネージメントをより効率的なものとするため半導体素子そのもの、または半導体素子を接着したリードフレームのダイパッド部にヒートスプレッダーを接着する方法や、ダイパッド部をパッケージ表面に露出させることにより放熱板としての機能を持たせる方法(例えば特許文献1)などが採用されている。また、さらにはサーマルビアなどの放熱機構を有する有機基板などに接着する場合もある。この場合も半導体素子を接着する材料に高熱伝導性が要求される。
【0003】
このように半導体装置の各部材の接着に用いられる材料(ダイアタッチペーストや放熱部材接着用材料等)に高い熱伝導性が要求されているが、これらの材料は、同時に半導体製品の基板搭載時のリフロー処理に耐える必要があり、さらには大面積の接着が要求される場合も多く構成部材間の熱膨張係数の違いによる反りなどの発生を抑制するため低応力性も併せ持つ必要がある。
【0004】
ここで通常高熱伝導性接着剤には、銀粉、銅粉などの金属フィラーや窒化アルミ、窒化ボロンなどのセラミック系フィラーなどを充填剤として有機系のバインダーに高い含有率で分散させる必要があり、バインダーの粘度が高い場合には高熱伝導性接着剤の粘度も高なる。このため溶剤あるいは反応性希釈剤を多く配合する必要があるが(例えば特許文献2)、多量の溶剤又は反応性希釈剤を含有する場合には保存中にフィラーの沈降が発生しやすく塗布安定性が悪化し、安定した接着剤層の厚みを得ることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−86273号公報
【0006】
【特許文献2】特開2006−73811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、保存時の充填剤の沈降が少なく樹脂組成物層の厚み安定性に優れかつ弾性率が低く十分な低応力性を有する液状樹脂組成物及び該液状樹脂組成物を半導体用ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として使用することで信頼性に優れた半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る液状樹脂組成物は、アクリル基を1つ有する化合物(A)、充填材(B)を含む液状樹脂組成物であって、前記化合物(A)の50℃における透過率をTaとし、0℃における透過率をTbとしたとき、TaおよびTbが下記条件式1を満たすことを特徴とする。
[条件式1:(Ta−Tb)/Ta≧0.1]
【0009】
本発明に係る液状樹脂組成物は、さらに前記化合物(A)と反応可能な官能基を1分子内に2つ以上有する化合物(C)を含むものとすることができる。
【0010】
本発明に係る液状樹脂組成物は、前記化合物(A)が一般式(1)で示されるものとすることができる。
【化1】

:水素、炭素数1〜6の炭化水素基、
:シクロヘキシレン基、
:水素、炭素数1〜6の炭化水素基。
【0011】
本発明に係る半導体装置は、前記液状樹脂組成物をダイアタッチ材料または放熱部材接着用材料として使用して作製したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液状樹脂組成物は、充填剤含有率が高くかつ塗布作業性に優れながら保存時の充填剤の沈降が少ないため樹脂組成物層の厚み安定性に優れ、図1に示すように、該樹脂組成物を半導体用ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として使用することで信頼性に優れた半導体装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る液状樹脂組成物をダイアタッチペーストとして使用し作製した半導体装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、アクリル基を1つ有する化合物(A)、充填材(B)を含み、前記化合物(A)が50℃における透過率Taとし、0℃における透過率をTbとした場合(Ta−Tb)/Taの値が0.1以上であることを特徴とする液状樹脂組成物であって、保存時の充填剤(B)の沈降が発生しにくく、樹脂組成物層の厚み安定性に優れかつ低弾性率と高接着性を示す液状樹脂組成物を提供するものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明では、50℃における透過率をTa、0℃における透過率をTbとするとき(Ta−Tb)/Taの値が0.1以上であることを特徴とするアクリル基を1つ有する化合物(A)を使用する。なお本明細書ではアクリロイル基のα位及び/又はβ位に置換基を有する官能基を含めアクリル基とする。
【0016】
本発明において化合物(A)の50℃における透過率Taは、化合物(A)を50℃環境下にて168時間放置後、25℃環境下において測定した透過率のことをいい、具体的には下記の手順で測定をおこなった透過率をいう。
【0017】
(透過率Taの測定方法)
化合物(A)をエッペンドルフピペット(エッペンドルフ社製、容量範囲0.500〜10.00μl)の目盛を3.200μlに固定して測り取り、スライドガラス(26mm×76mm、ソーダ石灰ガラス質)上に滴下した。その上にカバーガラス(18mm×18mm、ソーダ石灰ガラス質)を載せて、化合物をスライドガラスとカバーガラスで挟んだ状態(プレパラート)にした。これを10cm×20cm×5cmの真ちゅう製金属ブロック上に置き、金属ブロックごと50℃の恒温槽に入れて168時間放置した。放置後、金属ブロックごとスライドガラスを取り出し、測定器のところまで移動させた。取り出し後5分以上7分以内にプレパラートを測定器にセットしセット後5分以上7分以内に透過率測定した。本測定に使用した装置は分光光度計(島津紫外可視分光光度計 UV−160A)、測定条件は室温25±5℃、波長範囲360〜800nmと設定し450nmにおける透過率の値を透過率Taとする。なおブランクとしては化合物(A)を挟まない状態でスライドガラス上にカバーガラスを置いたものを使用した。
【0018】
また本発明において化合物(A)の0℃における透過率Tbは、化合物(A)を0℃環境下にて168時間放置後、25℃環境下において測定した透過率のことをいい、より具体的には下記の手順で測定をおこなった透過率をいう。
【0019】
(透過率Tbの測定方法)
上記の方法に準じ50℃環境下にて168時間放置後透過率を測定したサンプルを、再び金属ブロック上に置き、金属ブロックごと0℃の恒温槽に入れて168時間放置した。0℃環境下に放置後は上記Ta測定と同様にして透過率を測定し、450nmにおける透過率の値をTbとした。
【0020】
通常アクリル基を1つ有する化合物(A)は粘度が低いため反応性希釈剤として一般的に用いられるが、同時に低粘度であるために液状樹脂組成物保存時に充填材(B)の沈降が生じやすいという欠点も有する。このため本発明ではアクリル基を1つ有する化合物(A)を使用するが、50℃における透過率をTa、0℃における透過率をTbとするとき(Ta−Tb)/Taの値は0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.25以上である。(Ta−Tb)/Taの値が0.1以上であれば、樹脂組成物の保管温度である0℃以下で液状樹脂組成物自体が凝固あるいは増粘するものとなる。これにより充填材の沈降発生を抑制することが可能なものとなり、安定した品質を得ることができる。(Ta−Tb)/Taの値が0.1より小さい値の場合には液状樹脂組成物の粘度を十分に低下させることができないあるいは低温で充填材(B)の沈降が生じやすいので好ましくない。
【0021】
このような化合物としては、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールメタクリレートといったアルコキシポリアルキレングリコールアクリレート又はアルコキシポリアルキレングリコールメタクリレートで(Ta−Tb)/Taの値が0.1以上であるもの、セチルアクリレート、セチルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレートといったアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートで(Ta−Tb)/Taの値が0.1以上であるもの、また下記式(1)で示される化合物、具体的にはターシャリーブチルシクロヘキシルアクリレート、ターシャリーブチルシクロヘキシルメタクリレートといった置換シクロヘキシルアクリレート、又は置換シクロヘキシルメタクリレートで(Ta−Tb)/Taの値が0.1以上であるものが挙げられ、これらは単独でも複数種を併用しても差し支えない。
【0022】
【化1】

:水素、炭素数1〜6の炭化水素基、
:シクロヘキシレン基、

:水素、炭素数1〜6の炭化水素基。
【0023】
これらの中で特に好ましい化合物は置換シクロヘキシルアクリレート又は置換シクロヘキシルメタクリレートで(Ta−Tb)/Taの値が0.1以上であるものあり、特に好ましいのはターシャリーブチルシクロヘキシルアクリレート、ターシャリーブチルシクロヘキシルメタクリレートで(Ta−Tb)/Taの値が0.1以上であるものある。これら化合物を使用した場合0℃以下での充填材(B)の沈降を抑制することが可能で、かつ室温で効果的に粘度を低下させることが可能であるからである。
【0024】
本発明で用いられる充填材(B)は、特に限定されないが樹脂組成物硬化物の熱伝導率を高くするために、単体の熱伝導率が10W/mK以上のものが好ましい。このような充填材としては、銀粉、金粉、銅粉、アルミニウム粉、ニッケル粉、パラジウム粉などの金属粉、アルミナ粉末、チタニア粉末、アルミニウムナイトライド粉末、ボロンナイトライド粉末などのセラミック粉末が挙げられる。これらの中でも、熱伝導率の観点からより好ましいのは単体での熱伝導率が200W/mK以上の金属粉であり、特に好ましいのは、銀粉、金粉、銅粉、アルミニウム粉、ベリリウム粉からなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の充填材である。充填材は、それを含む樹脂組成物をノズルを使用して吐出する場合があるので、ノズル詰まりを防ぐために平均粒径は30μm以下が好ましく、ナトリウム、塩素などのイオン性の不純物が少ないものであることが好ましい。これら充填材のなかでも良好な熱伝導率及び酸化などへの安定性の観点からもっとも好ましいものは、銀粉である。
【0025】
ここで銀粉とは純銀または銀合金の微粉末である。銀合金としては銀を50重量%以上、好ましくは70重量%以上含有する銀−銅合金、銀−パラジウム合金、銀−錫合金、銀−亜鉛合金、銀−マグネシウム合金、銀−ニッケル合金などが挙げられる。通常電子材料用として市販されている銀粉であれば、還元粉、アトマイズ粉などが入手可能で、好ましい粒径としては平均粒径が0.5μm以上、30μm以下である。より好ましい平均粒径は1μm以上、10μm以下である。下限値以下では樹脂組成物の粘度が高くなりすぎ、上限値以上ではディスペンス時にノズル詰まりの原因となりうるからであり、電子材料用以外の銀粉ではイオン性不純物の量が多い場合があるので注意が必要である。必要により平均粒径が1μm以下の金属粉との併用も可能である。銀粉の形状としては、フレーク状、球状など特に限定されないが、好ましくはフレーク状であり、その添加量は通常樹脂組成物中70重量%以上、95重量%以下であることが好ましい。銀粉の割合が下限値より少ない場合には硬化物の熱伝導性が悪化し、上限値より多い場合には液状樹脂組成物の粘度が高くなりすぎ塗布作業性が悪化するおそれがあるためである。
【0026】
さらに本発明では前記化合物(A)と反応可能な官能基を1分子内に2つ以上有する化合物(C)を含むことが可能である。前記化合物(A)と反応可能な官能基とは例えばアクリル基、アリル基、ビニル基、マレエート基、マレイミド基、エポキシ基、オキセタン基などが挙げられる。なかでも好ましい官能基は前記化合物(A)とラジカル重合可能なアクリル基、アリル基、ビニル基、マレエート基、マレイミド基であり、特に好ましいのはアクリル基、アリル基、マレイミド基である。これら官能基は1分子内に2つ以上含まれることが好ましいが、これは官能基は1分子内に1つしかない場合には硬化物の架橋密度が上がらず機械的特性が悪化するからである。以下に好ましい化合物(C)を例示するがこれらに限定されるわけではない。
【0027】
前記化合物(A)と反応可能なアクリル基を1分子内に2つ以上有する化合物として好ましいものは、分子量が500〜10000のポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブタジエン、ブタジエンアクリロニトリル共重合体でアクリル基を有する化合物である。
【0028】
ポリエーテルとしては、炭素数が3〜6の有機基がエーテル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリエーテルポリオールとアクリル酸又はメタクリル酸およびそれらの誘導体との反応により得ることが可能である。
【0029】
ポリエステルとしては、炭素数が3〜6の有機基がエステル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリエステルポリオールとアクリル酸又はメタクリル酸およびそれらの誘導体との反応により得ることが可能である。ポリカーボネートとしては、炭素数が3〜6の有機基がカーボネート結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリカーボネートポリオールとアクリル酸又はメタクリル酸およびそれらの誘導体との反応により得ることが可能である。
【0030】
ポリアクリレート又はポリメタクリレートとしては、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリレート又はメタクリレートとの共重合体または水酸基を有するアクリレート又はメタクリレートと極性基を有さないアクリレート又はメタクリレートとの共重合体などが好ましい。これら共重合体とカルボキシ基と反応する場合には水酸基を有するアクリレート又はメタクリレート、水酸基と反応する場合にはアクリル酸又はメタクリル酸およびそれらの誘導体を反応することにより得ることが可能である。
【0031】
ポリブタジエンとしては、カルボキシ基を有するポリブタジエンと水酸基を有するアクリレート又はメタクリレートとの反応、水酸基を有するポリブタジエンとアクリル酸又はメタクリル酸及びそれらの誘導体との反応により得ることが可能であり、また無水マレイン酸を付加したポリブタジエンと水酸基を有するアクリレート又はメタクリレートとの反応により得ることも可能である。
【0032】
ブタジエンアクリロニトリル共重合体としては、カルボキシ基を有するブタジエンアクリロニトリル共重合体と水酸基を有するアクリレート又はメタクリレートとの反応により得ることが可能である。
【0033】
前記化合物(A)と反応可能なアリル基を1分子内に2つ以上有する化合物として好ましいものは、分子量が500〜10000のポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブタジエン、ブタジエンアクリロニトリル共重合体でアリル基を有する化合物、例えばしゅう酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びこれらの誘導体といったジカルボン酸及びその誘導体とアリルアルコールを反応することで得られるジアリルエステル化合物とエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールといったジオールとの反応物などである。
【0034】
前記化合物(A)と反応可能なマレイミド基を1分子内に2つ以上有する化合物として好ましいものは、例えば、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンなどのビスマレイミド化合物が挙げられる。より好ましいものは、ダイマー酸ジアミンと無水マレイン酸の反応により得られる化合物、マレイミド酢酸、マレイミドカプロン酸といったマレイミド化アミノ酸とポリオールの反応により得られる化合物である。マレイミド化アミノ酸は、無水マレイン酸とアミノ酢酸またはアミノカプロン酸とを反応することで得られ、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリメタクリレートポリオールが好ましく、芳香族環を含まないものが特に好ましい。芳香族環を含む場合にはマレイミド基を1分子内に2つ以上有する化合物として固形あるいは高粘度になり、また硬化物とした場合の弾性率が高くなりすぎるからである。
【0035】
また本発明の液状樹脂組成物の諸特性を調整するために以下の化合物を前記化合物(A)の効果を損なわない範囲で使用することも可能である。例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、1,2−シクロヘキサンジオールモノアクリレート、1,2−シクロヘキサンジオールモノメタクリレート、1,3−シクロヘキサンジオールモノアクリレート、1,3−シクロヘキサンジオールモノメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールモノアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールモノメタクリレート、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレート、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレート、1,2−シクロヘキサンジエタノールモノアクリレート、1,2−シクロヘキサンジエタノールモノメタクリレート、1,3−シクロヘキサンジエタノールモノアクリレート、1,3−シクロヘキサンジエタノールモノメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジエタノールモノアクリレート、1,4−シクロヘキサンジエタノールモノメタクリレート、グリセリンモノアクリレート、グリセリンモノメタクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ネオペンチルグリコールモノアクリレート、ネオペンチルグリコールモノメタクリレートなどの水酸基を有するアクリレート又はメタクリレートやこれら水酸基を有するアクリレート又はメタクリレートとジカルボン酸またはその誘導体を反応して得られるカルボキシ基を有するアクリレート又はメタクリレートなどが挙げられる。ここで使用可能なジカルボン酸としては、例えばしゅう酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0036】
上記以外にもメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、ターシャルブチルアクリレート、ターシャルブチルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタアクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、その他のアルキルアクリレート又はメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジンクモノアクリレート、ジンクモノメタクリレート、ジンクジアクリレート、ジンクジメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ネオペンチルグリコールアクリレート、ネオペンチルグリコールメタクリレート、トリフロロエチルアクリレート、トリフロロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピルアクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロブチルアクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロブチルメタクリレート、パーフロロオクチルアクリレート、パーフロロオクチルメタクリレート、パーフロロオクチルエチルアクリレート、パーフロロオクチルエチルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、テトラメチレングリコールジメタクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールメタクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビスメタクリルアミド、1,2−ジアクリルアミドエチレングリコール、1,2−ジメタクリルアミドエチレングリコール、ジアクリロイロキシメチルトリシクロデカン、ジメタクリロイロキシメチルトリシクロデカン、N−アクリロイロキシエチルマレイミド、N−メタアクリロイロキシエチルマレイミド、N−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−アクリロイロキシエチルフタルイミド、N−メタクリロイロキシエチルフタルイミド、n−ビニル−2−ピロリドン、スチレン誘導体、α−メチルスチレン誘導体などを使用することも可能である。
【0037】
さらに重合開始剤として熱ラジカル重合開始剤を使用することも可能である。通常熱ラジカル重合開始剤として用いられるものであれば特に限定しないが、望ましいものとしては、急速加熱試験における分解開始温度(試料1gを電熱板の上にのせ、4℃/分で昇温した時の分解開始温度)が40〜140℃となるものが好ましい。分解温度が40℃未満だと、樹脂組成物の常温における保存性が悪くなり、140℃を越えると硬化時間が極端に長くなるため好ましくない。これを満たす熱ラジカル重合開始剤の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、P−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α、α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが挙げられるが、これらは単独または硬化性を制御するため2種類以上を混合して用いることもできる。
【0038】
本発明ではカップリング剤を使用することが可能である。一般的に使用されるシランカップリング剤、チタン系カップリング剤を使用することができるが、特にS−S結合を有するシランカップリング剤は充填材(B)として銀粉を用いた場合には銀粉表面との結合も生じるため、被着体表面との接着力向上のみならず硬化物の凝集力も向上するため好適に使用することが可能である。S−S結合を有するシランカップリング剤としてはビス(トリメトキシシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)モノスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(ジメトキシメチルシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(ジブトキシメチルシリルプロピル)ポリスルフィドなどが挙げられる。S−S結合を有するシランカップリング剤以外との併用も好ましい。
【0039】
本発明の液状樹脂組成物には、必要により、消泡剤、界面活性剤、各種重合禁止剤、酸化防止剤などの添加剤を用いることができる。
【0040】
本発明の液状樹脂組成物は、例えば各成分を予備混合した後、3本ロールを用いて混練した後真空下脱泡することにより製造することができる。
【0041】
本発明の液状樹脂組成物を用いて半導体装置を製作する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、市販のダイボンダーを用いて、リードフレームの所定の部位に液状樹脂組成物をディスペンス塗布した後、チップをマウントし、加熱硬化する。その後、ワイヤーボンディングして、エポキシ樹脂を用いてトランスファー成形することによって半導体装置を製作する。またはフリップチップ接合後アンダーフィル材で封止したフリップチップBGA(Ball Grid Array)などのチップ裏面に樹脂組成物をディスペンスしヒートスプレッダー、リッドなどの放熱部品を搭載し加熱硬化するなどの使用方法も可能である。
【実施例】
【0042】
以下本発明の液状樹脂組成物について、実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例および比較例ともに下記原材料を表1に示す重量部で配合した上で3本ロールを用いて混練、脱泡することで液状樹脂組成物を得た。
【0043】
(化合物(A))
アクリル基を1つ有する化合物(A)として以下のA1〜A5を化合物を用いた。
化合物A1:ターシャリーブチルシクロヘキシルメタクリレート(日油(株)製、ブレ
ンマーTBCHMA、(Ta−Tb)/Ta=0.28、以下化合物A1)
化合物A2:メトキシポリエチレングリコールアクリレート(新中村化学工業(株)製、
NKエステルAM−90G、(Ta−Tb)/Ta=0.21、以下化合物A2)
化合物A3:2−エチルヘキシルメタクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステ
ルEH、(Ta−Tb)/Tb=0.04、以下化合物A3)
化合物A4:1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(日本化成(株)
製、CHDMMA、(Ta−Tb)/Tb=0.07、以下化合物A4)
化合物A5:2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸(共栄社化学(株)製、ライト
エステルHO-MS、(Ta-Tb)/Ta=0.02、以下化合物A5)
【0044】
(充填材(B))
充填材(B)として平均粒径7μm、タップ密度5.8g/cm3の銀粉(以下銀粉)を用いた。
【0045】
(化合物(C))
化合物Aと反応可能な官能基を分子内に2つ以上有する化合物(C)として下記化合物C1〜C5を用いた。
化合物C1:両末端水酸基のポリブタジエン(出光興産(株)製、R−45HT)140gとメタクリル酸(試薬)10.3g、ヒドロキノンモノメチルエーテル(川口化学工業(株)製、MQ−F)0.03g及びトルエン(試薬)500gをセパラブルフラスコに入れ室温で10分間攪拌することで均一な溶液とした後、パラトルエンスルホン酸一水和物(試薬)1.0gを添加しさらに5分間攪拌を行った。その後オイルバスを用いて加熱し還流下ディーンスタークトラップにて脱水を行いながら4時間反応した。室温まで冷却した後、イオン交換水を用いて5回分液洗浄を行った有機溶剤層をろ過することにより固形分を除去、エバポレータ及び真空乾燥機にて溶剤を除去し得られた生成物を化合物C1とした。(収率約92%。室温で粘ちょうな液体。重クロロホルムを用いたプロトンNMRの測定により水酸基の結合したメチレン基のプロトンの消失(4.05〜4.2ppm)、エステル結合の生成(4.45〜4.65ppm)、及び4.9〜5.05ppmの1,2−ビニル結合の積分強度と1.95〜2.15ppmの1,4−ビニル結合の積分強度(4プロトン分)の比から1,4ビニル結合の全ビニル結合(1,2−ビニル結合と1,4ビニル結合との合計)の割合が約80%であることを確認した。GPCによるスチレン換算数平均分子量は約3100であり、メタクリル酸に基づくピークが存在しないことを確認した)。
化合物C2:両末端水酸基のポリブタジエン(出光興産(株)製、R−15HT)120gとメタクリル酸(試薬)17.2g、ヒドロキノンモノメチルエーテル(川口化学工業(株)製、MQ−F)0.06g、パラトルエンスルホン酸一水和物(試薬)1.9gを用いた他は化合物A1と同様にして得られた生成物を化合物C2とした(収率約94%。室温で粘ちょうな液体。プロトンNMRの測定により化合物A1と同様に水酸基消失、エステル結合の生成、及び1,4ビニル結合の全ビニル結合(1,2−ビニル結合と1,4ビニル結合との合計)に対する割合が約80%であることを確認した。GPCによるスチレン換算数平均分子量は約1500であり、メタクリル酸に基づくピークが存在しないことを確認した)。
化合物C3:1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステル1、6HX、以下化合物C3)
化合物C4:ポリテトラメチレングリコールとマレイミド化酢酸の反応により得られたビスマレイミド化合物(分子量580、以下化合物C4)
化合物C5:シクロヘキサンジカルボン酸のジアリルエステルとポリプロピレングリコールとの反応により得られたジアリルエステル化合物(分子量1000、ただし原料として用いたシクロヘキサンジカルボン酸のジアリルエステルを約15%含む、以下化合物C5)
【0046】
(添加剤)
上記化合物(A)、充填材(B)、化合物(C)の他に下記添加剤を用いた。
ラジカル重合開始剤:ジクミルパーオキサイド(日油(株)製、パークミルD、急速加熱試験における分解開始温度:126℃)
カップリング剤1:グリシジル基を有するカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM−403E)
カップリング剤2:メタクリル基を有するカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM−503P)
カップリング剤3:ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(ダイソー(株)製、カブラス4)
【0047】
(評価試験)
上記より得られた実施例および比較例の液状樹脂組成物について以下の評価試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0048】
(沈降試験)
実施例および比較例の液状樹脂組成物30gを充填したシリンジ(10cc)を0℃に調整した恒温槽内でシリンジの先が下になるように30日間保管した。保管後の外観を目視で確認し変化がなければ○、銀粉と樹脂成分の分離が少し確認されれば△、顕著に観察されれば×とした。外観確認後の下記厚み安定性試験2に用いた。
【0049】
(厚み安定性試験1)
実施例および比較例の液状樹脂組成物30gを充填したシリンジ(充填後すぐのもの)を用いて予め厚み測定済みのシリコンチップ(15×15×0.5mm)をNiメッキした銅ヒートスプレッダー(25×25×2mm)にマウントした。マウントは、ディスペンサーを用いて表1に示す樹脂組成物を約0.02cc上記ヒートスプレッダー上に塗布した後、奥原電気株式会社製コンパクトマウンタSMT−64RHを用いて、上記シリコンチップを載せ、室温で2kgfの加重を10秒間与えて行った。試験片はシリンジセット後すぐに10個作製し、樹脂組成物を約10g廃棄後更に10個、再度樹脂組成物を約10g廃棄後10個と合計30個作製した。マウント後の試験片は150℃60分硬化した後接触型の厚み計で樹脂組成物層の厚みを測定した。(チップの4角でヒートスプレッダーからチップ表面までの高さを測定しチップの厚みを減ずることで樹脂組成物層の厚みとした)。30個作製した試験片の最大厚みと最小厚みの差が10μm以下の場合を合格とした。厚みの単位はμmである。
【0050】
(厚み安定性試験2)
上記沈降試験後のシリンジを用いた以外は厚み上記安定性試験1と同様に樹脂組成物層の厚みを測定した。30個作製した試験片の最大厚みと最小厚みの差が10μm以下の場合を合格とした。厚みの単位はμmである。
【0051】
(樹脂にじみ試験)
前記厚み安定性試験1で作製した試験片30個の樹脂にじみを光学顕微鏡にて観察した。(樹脂組成物の端からNiメッキした銅ヒートスプレッダー表面に滲み出した樹脂の1番長い部分の長さを測定)。樹脂にじみの長さが100μm以下の場合を合格とした。樹脂にじみの単位はμmである。
【0052】
(弾性率)
実施例および比較例の各液状樹脂組成物について、4×20×0.1mmのフィルム状の試験片を作製し(硬化条件150℃30分)、動的粘弾性測定機(DMA)にて引っ張りモードでの測定を行った。測定条件は以下の通りである。
測定温度:−100〜300℃
昇温速度:5℃/分
周波数:10Hz
荷重:100mN
25℃における貯蔵弾性率を弾性率とし1500MPa以下の場合を合格とした。弾性率の単位はMPaである。
【0053】
(熱伝導率)
実施例および比較例の各液状樹脂組成物を用いて直径2cm、厚さ1mmのディスク状の試験片を作製した。(硬化条件は175℃×2時間。ただし175℃までは室温から30分間かけて昇温した。)レーザーフラッシュ法(t1/2法)にて測定した熱拡散係数(α)、DSC法により測定した比熱(Cp)、JIS−K−6911準拠で測定した密度(ρ)より次式を用いて熱伝導率を算出した。熱伝導率の単位はW/mK。熱伝導率が5W/mK以上のものを合格とした。
熱伝導率=α×Cp×ρ
【0054】
(耐温度サイクル性1)
上記厚み安定性試験1後の試験片の温度サイクル処理(条件:−65℃/30分←→150℃/30分、100サイクル)前後の剥離の様子を超音波探傷装置(反射型)にて測定した。チップの面積に対する剥離面積の割合が10%未満の場合を合格とした。剥離面積の単位は%である。
【0055】
(耐温度サイクル性2)
上記厚み安定性試験2後の試験片を用いた以外は耐温度サイクル性1と同様に温度サイクル処理前後の剥離の様子を測定した。チップの面積に対する剥離面積の割合が10%未満の場合を合格とした。剥離面積の単位は%である。
【0056】
(耐リフロー性)
実施例および比較例の各液状樹脂組成物を用いて、下記のリードフレームとシリコンチップを150℃60分間硬化し接着した。さらに、封止材料(スミコンEME−G620A、住友ベークライト(株)製)を用い封止し、半導体装置を作製した。この半導体装置を用いて、30℃、相対湿度60%、168時間吸湿処理した後、IRリフロー処理(260℃、10秒、3回リフロー)を行った。処理後の半導体装置を超音波探傷装置(透過型)により剥離の程度を測定した。チップの面積に対する剥離面積の割合が10%未満の場合を合格とした。剥離面積の単位は%である。
半導体装置:QFP(14×20×2.0mm)
リードフレーム:Ni−Pd/Auめっきした銅フレーム
チップサイズ:6×6mm
樹脂組成物の硬化条件:オーブン中150℃、60分
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る液状樹脂は、低温保存時の充填剤の沈降が少なく樹脂組成物層の厚み安定性に優れかつ弾性率が低く十分な低応力性を有するため、ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として使用することで信頼性に優れた半導体装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0060】
1・・・液状樹脂組成物の硬化物層
2・・・ダイパッド
3・・・半導体素子
4・・・リード
5・・・封止材
10・・・半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル基を1つ有する化合物(A)、充填材(B)を含む液状樹脂組成物であって、
前記化合物(A)の50℃における透過率をTaとし、0℃における透過率をTbとしたとき、
TaおよびTbが下記条件式1を満たすことを特徴とする液状樹脂組成物。
[条件式1:(Ta−Tb)/Ta≧0.1]
【請求項2】
さらに前記化合物(A)と反応可能な官能基を1分子内に2つ以上有する化合物(C)を含む請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項3】
前記化合物(A)が一般式(1)で示されるものである請求項1又は2に記載の液状樹脂組成物。
【化1】

:水素、炭素数1〜6の炭化水素基、
:シクロヘキシレン基、
:水素、炭素数1〜6の炭化水素基。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物をダイアタッチ材料または放熱部材接着用材料として使用して作製したことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−16948(P2011−16948A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163376(P2009−163376)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】