説明

温圧計

【課題】一個の計測器で温度及び圧力を表示できるうえに、高精度で、暗闇の中でも視認しやすく、計測対象物から離れた地点で、計測対象物の温度及び圧力の夫々の計測結果を保存したり、また、その計測結果を用いて、装置を自動制御したりすることが可能な温圧計を提供することを目的とする。
【解決手段】計測対象物の温度を感知し、該感知した温度に応じた抵抗値に変換する温度センサ20を備え、その抵抗値をデジタル値に変換することで、感知した温度を温度表示部2aに表示すると共に、前記抵抗値を電流値に変換して外部に出力してなり、さらに、前記計測対象物の圧力を感知し、該感知した圧力に応じた電圧値に変換する圧力センサ30を備え、その電圧値をデジタル値に変換することで、感知した圧力を圧力表示部2bに表示すると共に、その電圧値を電流値に変換して外部に出力することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種ガス等の気体や液体等の流体を収容する容器内又はその配管等の流体収容部内における流体の温度と圧力を一個の計測器で測定する温圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の温圧計として、各種ガス等の気体や液体等の流体(以下、計測対象物という)の温度及び圧力の計測結果を、円形メータの左半側に圧力計の目盛と指針が配置され、右半側に温度計の目盛と指針が配置されてなる指示計に表示するものが知られている(特許文献1、図1参照)。
【0003】
このような温圧計の指示計は、アナログ表示であるため、精度が低いうえに、暗闇の中では、非常に視認し難いという問題があった。さらには、上記温圧計は、単に、計測対象物の温度及び圧力の計測結果を表示させるだけの機能しかなく、計測対象物から離れた地点(遠隔地)で、計測対象物の計測結果を保存したり、また、その計測結果を用いて、装置を自動制御したり、ということができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3121723号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、一個の計測器で温度及び圧力を表示できるうえに、高精度で、暗闇の中でも視認しやすく、さらには、一個の計測器で、計測対象物から離れた地点(遠隔地)で、計測対象物の温度及び圧力の夫々の計測結果を保存したり、また、その計測結果を用いて、装置を自動制御したりすることが可能な温圧計を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の温圧計は、計測対象物の温度及び圧力を計測する温圧計において、前記計測対象物の温度を感知し、該感知した温度に応じた抵抗値に変換する温度センサ20と、前記抵抗値を電圧値に変換する第1の電圧変換部21と、前記電圧値をA/D変換する第1のA/D変換部26と、該第1のA/D変換部26の出力値を表示する温度表示部2aと、前記第1の電圧変換部21で変換した電圧値を電流値に変換し、外部に送出する第1の電流伝送部24と、を備え、さらに、
前記計測対象物の圧力を感知し、該感知した圧力に応じた電圧値に変換する圧力センサ30と、該圧力センサ30で変換した電圧値を電流値に変換し、外部に送出する第2の電流伝送部33と、該第2の電流伝送部33で変換した電流値を電圧値に変換する第2の電圧変換部34と、該第2の電圧変換部34で変換した電圧値をA/D変換する第2のA/D変換部36と、該第2のA/D変換部36の出力値を表示する圧力表示部2bと、を備えてなることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明の温圧計は、請求項1に記載の温圧計において、第1の増幅部23をさらに備え、前記第1の増幅部23は、前記第1の電圧変換部21で変換した電圧値を増幅してなることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明の温圧計は、請求項2に記載の温圧計において、前記第1の増幅部23の出力値のオフセット調整を行うオフセット調整部VR1と、該出力値のスパン調整を行うスパン調整部VR3と、をさらに備えてなることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明の温圧計は、請求項2又は3に記載の温圧計において、前記第1の増幅部23の出力値のリニアライズ補正を行うリニアライズ補正部VR2をさらに備えてなることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明の温圧計は、請求項1〜4のいずれかに記載の温圧計において、前記温度表示部2aのゼロ調整を行う第1の表示ゼロ調整部VR6と、前記温度表示部2aのスパン調整を行う第1の表示スパン調整部VR7と、をさらに備えてなることを特徴とする温圧計。
【0011】
請求項6に係る発明の温圧計は、請求項1〜5のいずれかに記載の温圧計において、第2の増幅部32をさらに備え、前記第2の増幅部32は、前記圧力センサ30で変換した電圧値を増幅してなることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明の温圧計は、請求項1〜6のいずれかに記載の温圧計において、前記圧力表示部2bのゼロ調整を行う第2の表示ゼロ調整部VR14と、前記圧力表示部2bのスパン調整を行う第2の表示スパン調整部VR15と、をさらに備えてなることを特徴とする。
【0013】
請求項8に係る発明の温圧計は、請求項1〜7のいずれかに記載の温圧計において、前記圧力センサ30の近傍に放熱フィン3を設けてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明の温圧計によれば、計測対象物の温度を温度センサ20で感知し、その感知した温度を、温度表示部2aに表示しえるようにデジタル値に変換し、計測対象物の圧力を圧力センサ30で感知し、その感知した圧力を、圧力表示部2bに表示しえるようにデジタル値に変換しているから、一個の計測器で温度及び圧力を計測できると共に、デジタル表示されるため、高精度であり、暗闇の中でも視認しやすい。
【0015】
また、計測対象物の温度を温度センサ20で感知し、その感知した温度に応じた電流値を外部に出力し、計測対象物の圧力を圧力センサ30で感知し、その感知した圧力に応じた電流値を外部に出力するから、計測対象物から離れた地点(遠隔地)であっても、外部に出力される電流値を用いることにより、計測対象物の温度及び圧力の計測結果を夫々保存することができる。さらには、その外部に出力される電流値を用いることにより、夫々の電流値に応じた装置の停止又は始動等の自動制御が可能となる。
【0016】
また、本発明によれば、構成が極めて簡単で構成部品点数が少ないため、製造コストを低く抑えることができる。
【0017】
請求項2に係る発明の温圧計によれば、第1の電圧変換部21で変換した電圧値を第1の増幅部23で増幅するから、第1の電圧変換部21で変換した電圧値が、検知困難な微小な電圧値であっても、検知可能な電圧値にすることができる。
【0018】
請求項3に係る発明の温圧計によれば、オフセット調整部及びスパン調整部を設けてなるから、より高精度な電圧値を第1の増幅部23から送出させることができるため、より高精度な計測を行うことができる。
【0019】
請求項4に係る発明の温圧計によれば、リニアライズ補正部を設けてなるから、より高精度な電圧値を第1の増幅部23から送出させることができるため、より高精度な計測を行うことができる。
【0020】
請求項5に係る発明の温圧計によれば、第1の表示ゼロ調整部及び第1の表示スパン調整部を設けてなるから、温度表示部に、より高精度な表示をさせることができる。
【0021】
請求項6に係る発明の温圧計によれば、圧力センサ30で変換した電圧値を増幅するから、圧力センサ30で変換した電圧値が、検知困難な微小な電圧値であっても、検知可能な電圧値にすることができる。
【0022】
請求項7に係る発明の温圧計によれば、第2の表示ゼロ調整部及び第2の表示スパン調整部を設けてなるから、圧力表示部に、より高精度な表示をさせることができる。
【0023】
請求項8に係る発明の温圧計によれば、圧力センサ30の近傍に放熱フィン3を設けてなるから、計測対象物の計測温度の範囲が、圧力センサの耐熱温度を超えた場合に、圧力センサの破損を防止することができる。
【0024】
なお、本明細書における近傍とは、圧力センサで、計測対象物の圧力を感知する前に、計測対象物の熱が拡散できる範囲内のことであり、温度センサで計測対象物の温度を計測した後に、その計測熱を拡散できる位置に放熱フィンを設けることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)本発明に係る温圧計の一実施形態を示す正面図、(b)(a)のA部分の底面図である。
【図2】本発明に係る温圧計の一実施形態を示す側面図である。
【図3】計測対象物の温度を温度表示部に表示すると共に、感知した温度を電流値として送出するための処理を表すブロック図である。
【図4】計測対象物の圧力を圧力表示部に表示すると共に、感知した圧力を電流値として送出するための処理を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて具体的に説明する。
【0027】
まず、図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る温圧計の概略構成および動作を説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態に係る温圧計の正面図、(b)は、(a)のA部分の底面図、図2は、本発明の一実施形態に係る温圧計の側面図である。
【0028】
この温圧計1は、図1に示すように、計測対象物の温度及び圧力を一体的に表示するための温圧表示部2を有してなる。温圧表示部2は、温度を表示するための温度表示部2aと、圧力を表示するための圧力表示部2bとで構成され、夫々、7セグメントLEDで構成されてなる。
【0029】
また、温圧表示部2の下面側には、放熱フィン3が固着され、さらに、その放熱フィン3の軸心方向を貫通して、略棒状をなす感温圧力導入部4が固着されてなる。感温圧力導入部4は、図1に示すように、温度センサ20を有する温度感知部4aと、圧力を温圧計1内に導入するための圧力導入路4bから構成されてなり、圧力導入路4bは、圧力導入部株5と一体形成されてなる。
【0030】
そして、圧力導入部株5には、その外周面に、押ネジ6と、その押ネジ6を回転させるためのナット部7と、O−リング8とが挿入されてなる。押ネジ6は、計測対象物が収容されている収容容器内にあらかじめ取付けられている、特殊保護管(図示せず)内周面に形成されている雌ねじ部に螺合し、特殊保護管に温圧計1を固定させるものであり、O−リング8は、特殊保護管に温圧計1を固定させる際、シール部材として用いられるものである。
【0031】
一方、温圧表示部2の背面側には、温圧計1内に電圧を供給し、温圧計1外に電流を送出するための4芯シールドケーブル9が取り付けられている。この4芯シールドケーブル9は、図2に示すように、外部に設けられているDC電源10,12と電流信号変換器11,13に接続配線されている。この接続配線は、温圧計1の4芯シールドケーブル9が、夫々、温圧計1用の外部電源となるDC電源10,12と、温圧計1からの出力電流が入力され、電流を電圧に変換するための負荷抵抗Rが含まれている電流信号変換器11,13と、が直列に接続配線されている。
【0032】
このような接続配線をすることで、温圧計1から送出される電流信号出力線と、温圧計1へ電圧を供給する電圧供給線とが共用可能となり、2本の線で接続配線することができるため、配線数を削減できる効果がある。
【0033】
なお、図2において、DC電源10,12と電流信号変換器11,13を、夫々一対ずつ設けている理由は、計測対象物の温度及び圧力を夫々計測する際に必要だからである。また、温圧計1から送出される電流信号は、感知した温度及び圧力に応じた電流値が、夫々送出される。
【0034】
また、図2において、符号30は、圧力導入路4bから導入される圧力を感知する圧力センサであり、温圧表示部2内に設けられている。そのため、計測対象物の計測温度の範囲が、圧力センサ30の耐熱温度を超えたとしても、その熱を放熱させることで、圧力センサ30の破損を防止することが可能な放熱フィン3が、温圧表示部2の下面側に固着されている。
【0035】
以上のように構成された温圧計1の動作を説明すると、計測対象物の温度を温度感知部4a内に有してなる温度センサ20で感知し、その感知した温度を温度表示部2aに表示すると共に、その感知した温度に応じた電流値を電流信号変換器11に送出する。そして、さらに、計測対象物の圧力を圧力導入路4bから導入し、その圧力を圧力センサ30で感知すると、その感知した圧力を圧力表示部2bに表示すると共に、その感知した圧力に応じた電流値を電流信号変換器13に送出する、という動作を行うものである。
【0036】
以上の内容を踏まえ、より詳細に、計測対象物の温度及び圧力を、温圧表示部2に表示すると共に、電流信号変換器11,13に温度及び圧力に応じた、夫々の電流値を送出するための処理を、図3及び図4を用いて説明する。図3は、計測対象物の温度を温度表示部2aに表示すると共に、感知した温度を、電流信号器11に電流値として送出するための処理を表すブロック図、図4は、計測対象物の圧力を圧力表示部2bに表示すると共に、感知した圧力を、電流信号器13に電流値として送出するための処理を表すブロック図である。
【0037】
まず、図3を用いて、計測対象物の温度についての処理を説明する。図3に示すように、温度センサ20は3導線式の測温抵抗体Rsからなるもので、この測温抵抗体Rsは、温度に依存して抵抗値が変化するものである。すなわち、例えば、計測対象物の温度が0度のときに、抵抗値が100Ω、計測対象物の温度が200度のときには、抵抗値が175.86Ωと変化するものである。
【0038】
このような特性をもつ温度センサ20の測温抵抗体Rsは、図3に示すように、端子T1,T2が、第1の電圧変換部21に接続され、端子T3は、接地されている。このように接続されているのは、計測対象物の温度に依存して変化する抵抗値を電圧値に変換するためである。なお、本実施形態では温度センサ20を、3導線式の温度センサで示しているが、これに限らず2導線式または4導線式の温度センサで構成してもよい。しかし、圧力感知の精度が高い3導線式や4導線式を用いた方が好ましい。
【0039】
第1の電圧変換部21は、測温抵抗体Rsと共に、固定抵抗R1、R2、可変抵抗VR1(=オフセット調整部)で、ホイートストンブリッジ回路を形成している。そして、ホイートストンブリッジ回路が形成されている第1の電圧変換部21に、DC電源10から定電流源22を介して電圧V1が供給されている。このように、第1の電圧変換部21に電圧V1が供給されると、固定抵抗R1と測温抵抗体Rsの接続点には、数式(1)に示す電圧V2が発生する。なお、測温抵抗体Rsの抵抗値はRsとする。
(数1)
V2=Rs/(R1+Rs)×V1
【0040】
一方、固定抵抗R2と可変抵抗VR1の接続点には、数式(2)に示す電圧V3が発生する。
(数2)
V3=VR1/(R2+VR1)×V1
【0041】
そして、このように、第1の電圧変換部21に電圧V1が供給されることにより発生する電圧V2は、第1の増幅部23の反転入力に供給され、電圧V3は、非反転入力に供給される。なお、可変抵抗VR1は、第1の増幅部23の出力のオフセット調整を行うものであり、第1の増幅部23からオフセット電圧が出力されないのであれば、可変抵抗VR1は固定抵抗であってもよい。しかし、オフセット調整部、すなわち、可変抵抗を設けた方が、より高精度な電圧値を第1の増幅部23から送出させることができ、より高精度な計測を行うことができるから、可変抵抗VR1を設けた方が好ましい。
【0042】
第1の増幅部23は、非反転入力に電圧V3が供給されると共に、第1の増幅部23の出力電圧V4が可変抵抗VR2(=リニアライズ補正部)を介してフィードバックされて供給されている。そのため、第1の増幅部23の非反転入力には、数式(3)に示す電圧E1が供給されている。
(数3)
E1=V3+V4×1/VR2
【0043】
一方、反転入力には、電圧V2が固定抵抗R3を介して供給されると共に、第1の増幅部23の出力電圧V4が可変抵抗VR3(=スパン調整部)を介してフィードバックされて供給されている。そのため、第1の増幅部23の反転入力には、数式(4)に示す電圧E1が供給されている。
(数4)
E1=V2×1/R3+V4×1/VR3
【0044】
このように、第1の増幅部23の非反転入力には電圧E1が供給され、反転入力には電圧E1が供給されるから、第1の増幅部23は、数式(5)に示す電圧V4を送出する。なお、第1の増幅部23のゲインはG1とする。
(数5)
V4=|E1−E1|×G1
【0045】
そして、第1の増幅部23から送出される電圧V4は、第1の電流伝送部24に供給される。なお、可変抵抗VR2は、第1の増幅部23から送出される電圧V4のリニアライズ補正を行うものであり、可変抵抗VR3は、第1の増幅部23のスパン調整を行うものである。そのため、リニアライズ補正、スパン調整が必要なければ、可変抵抗VR2,VR3を設ける必要はない。しかし、リニアライズ補正部、スパン調整部を設けることによって、より高精度な電圧値を第1の電流伝送部24に送出することができ、それがために、より高精度な計測を行うことができるから、可変抵抗VR2,VR3を設けた方が好ましい。
【0046】
第1の電流伝送部24は、オペアンプ24aと、NPN型のトランジスタ24bから構成され、供給される電圧を電流値に変換し、その変換した電流値を電流信号変換器11へ送出する処理を行う。
【0047】
オペアンプ24aは、非反転入力に固定抵抗R4を介して電圧V4が供給されると共に、DC電源10から供給される電圧が、定電流源22と可変抵抗VR4(=出力ゼロ調整部)を介して供給されている。そのため、オペアンプ24aの非反転入力には、数式(6)に示す電圧E2が供給されている。
(数6)
E2=V4×R4/(VR4+R4)
【0048】
一方、反転入力には、オペアンプ24aの出力電圧V5が可変抵抗VR5(=出力スパン調整部)と固定抵抗R5を介してフィードバックされて供給されている。そのため、オペアンプ24aの反転入力には、数式(7)に示す電圧E2が供給されている。
(数7)
E2=V5×R5/(VR5+R5)
【0049】
このように、オペアンプ24aの非反転入力には電圧E2が供給され、反転入力には電圧E2が供給されるから、オペアンプ24aは、数式(8)に示す電圧V5を送出する。なお、オペアンプ24aのゲインはG2とする。
(数8)
V5=|E2−E2|×G2
【0050】
そして、オペアンプ24aから送出される電圧V5は、NPN型のトランジスタ24bに供給される。なお、可変抵抗VR4は、オペアンプ24aの出力ゼロ調整を行うものであり、可変抵抗VR5は、オペアンプ24aの出力スパン調整を行うものである。そのため、オペンアンプ24aの出力ゼロ調整、出力スパン調整が必要なければ、オペアンプ24aを設ける必要はない。しかし、出力ゼロ調整部、出力スパン調整部を設けた方が、より高精度な電圧V5をNPN型のトランジスタ24bに供給することができ、より高精度な計測を行うことができるから、設けた方が好ましい。
【0051】
NPN型のトランジスタ24bは、ベース(図3中の「B」)側が、オペアンプ24aの出力に、コレクタ(図3中の「C」)側が、固定抵抗R8に、エミッタ(図3中の「E」)側が、電流信号変換器11へ送出される電流信号出力線に接続されている。そして、このように接続されたNPN型のトランジスタ24bのベース側に、オペアンプ24aから送出される電圧V5が供給されると、コレクタ−エミッタ間に電流が流れるようになるから、電圧V5を電流値に変換する、すなわち、第1の電流伝送部24に供給される電圧V4を電流値に変換することができる。
【0052】
しかして、例えば、NPN型のトランジスタ24bのベース側に電圧2Vが供給されたときに、コレクタ−エミッタ間に20mAの電流が流れるように調整した場合に、温度センサ20で計測した計測対象物の温度が、例えば200度のときに電圧V5が2Vとなるように調整することにより、第1の電流伝送部24から送出される電流値が20mAとなるから、その電流値20mAを用いることにより、計測対象物から離れた地点(遠隔地)で、計測対象物の計測結果、すなわち、計測対象物の温度200度を保存することができる。さらには、計測対象物の温度が200度となった場合に、装置を停止又は始動するというような制御を実行したい場合に、その電流値20mAを用いれば、自動制御が可能となる。
【0053】
すなわち、温度に応じた電流値をあらかじめ決定しておき、その決定した電流値が第1の電流伝送部24から送出されるように調整すれば、第1の電流伝送部24から送出される電流値を計測することで、計測対象物から離れた地点(遠隔地)で、計測対象物の計測結果を保存することができ、また、その電流値を用いて、ある一定以上の電流値、すなわち、温度となった場合に装置を自動制御する、ということが可能となるというものである。
【0054】
このような処理を行う第1の電流伝送部24から送出される電流値をIとすると、その電流値Iは、電流信号変換器11を介してDC電源10から温圧計1内に、その電流値Iが供給されると、固定抵抗R6と固定抵抗R8の接続点に数式(9)に示す電圧V6が発生し、その電圧V6はオペアンプ25の非反転入力に供給される。なお、R8<<R6とする。
(数9)
V6=I×R8
【0055】
オペアンプ25は、非反転入力に固定抵抗R6を介して電圧V6が供給されると共に、DC電源10から供給される電圧が、定電流源22と可変抵抗VR6(=第1の表示ゼロ調整部)を介して供給されている。そのため、オペアンプ25の非反転入力には、数式(10)に示す電圧E3が供給されている。
(数10)
E3=V6×R6/(VR6+R6)
【0056】
一方、反転入力には、オペアンプ25の出力電圧Voが可変抵抗VR7(=第1の表示スパン調整部)、固定抵抗R7を介してフィードバックされて供給されている。そのため、オペアンプ25の反転入力には、数式(11)に示す電圧E3が供給されている。
(数11)
E3=Vo×R7/(VR7+R7)
【0057】
このように、オペアンプ25の非反転入力に電圧E3が供給され、反転入力に電圧E3が供給されるから、オペアンプ25は、数式(12)に示す電圧Voを送出する。なお、オペアンプ25のゲインはG3とする。
(数12)
Vo=|E3−E3|×G3
【0058】
そして、オペアンプ25から送出される電圧Voは、第1のA/D変換部26に供給される。なお、可変抵抗VR6は、温度表示部2aのゼロ調整を行うものであり、可変抵抗VR7は、温度表示部2aのスパン調整を行うものである。そのため、温度表示部2aのゼロ調整、スパン調整が必要なければ、オペアンプ25を設ける必要はない。しかし、ゼロ調整部、スパン調整部を設けた方が、より高精度な表示を温度表示部2aに表示させることができるため、設けた方が好ましい。
【0059】
第1のA/D変換部26は、アナログ電圧Voをデジタル値に変換して制御部27に供給する。制御部27は、供給されたデジタル値をカウントし、そのカウント結果を温度表示部2aに送出する。すると、温度表示部2aには、温度センサ20によって感知された、計測対象物の温度が表示される。
【0060】
次に、図4を用いて、計測対象物の圧力についての処理を説明する。図4に示すように、圧力センサ30は、シリコンチップの中央部を薄く加工して形成したダイヤフラム上に、ホイートストンブリッジとなるように半導体歪みゲージ抵抗R20,R21,R22,R23が形成されたものである。
【0061】
このように形成された圧力センサ30に、後述する第2の電圧変換部34から、定電流源31を介して電圧V10が供給されると、半導体歪みゲージ抵抗R20と半導体歪みゲージ抵抗R23の接続点には、電圧V11が発生し、半導体歪みゲージ抵抗R22と半導体歪みゲージ抵抗R21の接続点には、電圧V12が発生する。そして、圧力センサ30に、圧力導入路4bから導入される計測対象物の圧力が印加されると、ダイヤフラムが変形し、半導体歪みゲージ抵抗R20〜R23の抵抗値が変化する。しかして、その抵抗値の変化によって、電圧V11と電圧V12の電位差が変化する。
【0062】
上述のような特性をもつ圧力センサ30から送出される電圧V11は、第2の増幅部32の反転入力に供給され、電圧V12は、非反転入力に供給される。そのため、第2の増幅部32は、数式(13)に示す電圧V13を送出する。なお、第2の増幅部32のゲインはG4とする。
(数13)
V13=|V12−V11|×G4
【0063】
そして、第2の増幅部32から送出される電圧V13は、第2の電流伝送部33に供給される。なお、第2の増幅部32のゼロ調整及びスパン調整は、半導体歪みゲージ抵抗R20〜R23をレーザ光でカットして半導体歪みゲージ抵抗R20〜R23の抵抗値を調整するレーザトリミングを行うことによって調整されている。しかして、このような調整を行うことによって、より高精度な電圧値を第2の電流伝送部33に送出することができるため、より高精度な計測を行うことができる。
【0064】
第2の電流伝送部33は、NPN型のトランジスタ33aから構成され、供給される電圧を電流値に変換し、その変換した電流値を電流信号変換器13へ送出する処理を行う。具体的には、NPN型のトランジスタ33aのベース(図4中の「B」)側が、第2の増幅部32の出力に、コレクタ(図4中の「C」)側が、固定抵抗R10に、エミッタ(図4中の「E」)側が、電流信号変換器13へ送出される電流信号出力線に接続されている。そして、このように接続されたNPN型のトランジスタ33aのベース側に、第2の増幅部32から送出される電圧V13が供給されると、コレクタ−エミッタ間に電流が流れるようになるから、電圧V13を電流値に変換することができる。
【0065】
しかして、例えば、NPN型のトランジスタ33aのベース側に電圧2Vが供給されたときに、コレクタ−エミッタ間に20mAの電流が流れるように調整した場合に、圧力センサ30で計測した計測対象物の圧力が、例えば1MPaのときに電圧V13が2Vとなるように調整することにより、第2の電流伝送部33から送出される電流値が20mAとなるから、その電流値20mAを用いることにより、計測対象物から離れた地点(遠隔地)で、計測対象物の計測結果、すなわち、計測対象物の圧力1MPaを保存することができる。さらには、計測対象物の圧力が1MPaとなった場合に、装置を停止又は始動するというような制御を実行したい場合に、その電流値20mAを用いれば、自動制御が可能となる。
【0066】
すなわち、圧力に応じた電流値をあらかじめ決定しておき、その決定した電流値が第2の電流伝送部33から送出されるように調整すれば、第2の電流伝送部33から送出される電流値を計測することで、計測対象物から離れた地点(遠隔地)で、計測対象物の計測結果を保存することができ、また、その電流値を用いて、ある一定以上の電流値、すなわち、圧力となった場合に装置を自動制御する、ということが可能となるというものである。
【0067】
このような処理を行う第2の電流伝送部33から送出される電流値をI´とすると、その電流値I´は、電流信号変換器13を介してDC電源12から第2の電圧変換部34に供給される。
【0068】
第2の電圧変換部34は、オペアンプ34aを有し、上述の電流値I´が供給されると、その電流値を電圧値に変換するブロックである。具体的には、図4に示すように、電流値I´が第2の電圧変換部34に供給されると、固定抵抗R10とR11の接続点に数式(14)に示す電圧V14が発生する。なお、R10<<R11とする。
(数14)
V14=R10×I´
【0069】
そして、その電流値I´が供給されることにより発生した電圧V14は、オペアンプ34aの非反転入力に供給されると共に、定電流源31を介して、圧力センサ30に供給される。
【0070】
オペアンプ34aは、非反転入力に固定抵抗R11を介して電圧V14が供給される。そのため、オペアンプ34aの非反転入力には、数式(15)に示す電圧E4が供給されている。なお、数式(14)同様、R10<<R11とする。
(数15)
E4=V14
【0071】
一方、反転入力には、オペアンプ34aの出力電圧V15が固定抵抗R12,R13を介してフィードバックされて供給されている。そのため、オペアンプ34aの反転入力には、数式(16)に示す電圧E4が供給されている。
(数16)
E4=V15×R13/(R13+R12)
【0072】
このように、オペアンプ34aの非反転入力に電圧E4が供給され、反転入力に電圧E4が供給されるから、オペアンプ34aは、数式(17)に示す電圧V15を送出する。なお、オペアンプ34aのゲインはG5とする。
(数17)
V15=|E4−E4|×G5
【0073】
そして、オペアンプ34a、すなわち、第2の電圧変換部34から送出される電圧V15は、オペアンプ35の非反転入力に供給される。
【0074】
オペアンプ35は、非反転入力に固定抵抗R14を介して電圧V15が供給されると共に、オペアンプ35に供給される電源電圧V16が可変抵抗VR14(=第2の表示ゼロ調整部)を介して非反転入力に供給されている。そのため、オペアンプ35の非反転入力には、数式(18)に示す電圧E5が供給されている。
(数18)
E5=V15×VR14/(R14+VR14)+V16×R14/(VR14+R14)
【0075】
一方、反転入力には、オペアンプ35の出力電圧Vo´が可変抵抗VR15(=第2の表示スパン調整部)、固定抵抗R15を介してフィードバックされて供給されている。そのため、オペアンプ35の反転入力には、数式(19)に示す電圧E5が供給されている。
(数19)
E5=Vo´×R15/(VR15+R15)
【0076】
このように、オペアンプ35の非反転入力に電圧E5が供給され、反転入力に電圧E5が供給されるから、オペアンプ35は、数式(20)に示す電圧Vo´を送出する。なお、オペアンプ35のゲインはG6とする。
(数20)
Vo´=|E5−E5|×G6
【0077】
そして、オペアンプ35から送出される電圧Vo´は、第2のA/D変換部36に供給される。なお、可変抵抗VR14は、圧力表示部2bのゼロ調整を行うものであり、可変抵抗VR15は、圧力表示部2bのスパン調整を行うものである。そのため、圧力表示部2bのゼロ調整、スパン調整が必要なければ、オペアンプ35を設ける必要はない。しかし、ゼロ調整部、スパン調整部を設けた方が、圧力表示部2bに、より高精度な表示をさせることができるため、設けた方が好ましい。
【0078】
第2のA/D変換部36は、アナログ電圧Vo´をデジタル値に変換して制御部37に供給する。制御部37は、供給されたデジタル値をカウントし、そのカウント結果を圧力表示部2bに送出する。すると、圧力表示部2bには、圧力センサ30によって感知された、計測対象物の圧力が表示される。
【0079】
以上説明した本発明の実施形態によれば、計測対象物の温度を温度センサ20で感知し、その感知した温度を、温度表示部2aに表示しえるようにデジタル値に変換し、計測対象物の圧力を圧力センサ30で感知し、その感知した圧力を、圧力表示部2bに表示しえるようにデジタル値に変換しているから、一個の計測器で温度及び圧力を計測できると共に、デジタル表示されるため、高精度であり、暗闇の中でも視認しやすい。
【0080】
また、計測対象物の温度を温度センサ20で感知し、その感知した温度に応じた電流値を外部に出力し、計測対象物の圧力を圧力センサ30で感知し、その感知した圧力に応じた電流値を外部に出力するから、計測対象物から離れた地点(遠隔地)であっても、外部に出力される電流値を用いることにより、計測対象物の温度及び圧力の計測結果を夫々保存することができる。さらには、その外部に出力される電流値を用いることにより、夫々の電流値に応じた装置の停止又は始動等の自動制御が可能となる。
【0081】
さらに、本実施形態によれば、構成が極めて簡単で構成部品点数が少ないため、製造コストを低く抑えることができる。
【0082】
また、第1の増幅部23は、第1の電圧変換部21で変換した電圧値を増幅するから、第1の電圧変換部21で変換した電圧値が、オペアンプ23aが検知困難な微小な電圧値であっても、検知可能な電圧値にすることができる。
【0083】
さらに、第2の増幅部32は、圧力センサ30で変換した電圧値を増幅するから、圧力センサ30で検知困難な微小な電圧値であっても、検知可能な電圧値にすることができる
【0084】
なお、本明細書における装置とは、温圧計1が固定されている計測対象物が収容されている収容容器に限らず、温圧計1の計測結果をもとに制御したい装置すべてを含む概念である。
【符号の説明】
【0085】
1 温圧計
2 温圧表示部
2a 温度表示部
2b 圧力表示部
3 放熱フィン
20 温度センサ
21 第1の電圧変換部
23 第1の増幅部
24 第1の電流伝送部
26 第1のA/D変換部
30 圧力センサ
32 第2の増幅部
33 第2の電流伝送部
34 第2の電圧変換部
36 第2のA/D変換部
VR1 可変抵抗(オフセット調整部)
VR2 可変抵抗(リニアライズ補正部)
VR3 可変抵抗(スパン調整部)
VR6 可変抵抗(第1の表示ゼロ調整部)
VR7 可変抵抗(第1の表示スパン調整部)
VR14 可変抵抗(第2の表示ゼロ調整部)
VR15 可変抵抗(第2の表示スパン調整部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物の温度及び圧力を計測する温圧計において、
前記計測対象物の温度を感知し、該感知した温度に応じた抵抗値に変換する温度センサと、
前記抵抗値を電圧値に変換する第1の電圧変換部と、
前記電圧値をA/D変換する第1のA/D変換部と、
該第1のA/D変換部の出力値を表示する温度表示部と、
前記第1の電圧変換部で変換した電圧値を電流値に変換し、外部に送出する第1の電流伝送部と、を備え、さらに、
前記計測対象物の圧力を感知し、該感知した圧力に応じた電圧値に変換する圧力センサと、
該圧力センサで変換した電圧値を電流値に変換し、外部に送出する第2の電流伝送部と、
該第2の電流伝送部で変換した電流値を電圧値に変換する第2の電圧変換部と、
該第2の電圧変換部で変換した電圧値をA/D変換する第2のA/D変換部と、
該第2のA/D変換部の出力値を表示する圧力表示部と、を備えてなることを特徴とする温圧計。
【請求項2】
請求項1に記載の温圧計において、第1の増幅部をさらに備え、
前記第1の増幅部は、前記第1の電圧変換部で変換した電圧値を増幅してなることを特徴とする温圧計。
【請求項3】
請求項2に記載の温圧計において、
前記第1の増幅部の出力値のオフセット調整を行うオフセット調整部と、該出力値のスパン調整を行うスパン調整部と、をさらに備えてなることを特徴とする温圧計。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の温圧計において、
前記第1の増幅部の出力値のリニアライズ補正を行うリニアライズ補正部をさらに備えてなることを特徴とする温圧計。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の温圧計において、
前記温度表示部のゼロ調整を行う第1の表示ゼロ調整部と、前記温度表示部のスパン調整を行う第1の表示スパン調整部と、をさらに備えてなることを特徴とする温圧計。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の温圧計において、第2の増幅部をさらに備え、
前記第2の増幅部は、前記圧力センサで変換した電圧値を増幅してなることを特徴とする温圧計。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の温圧計において、
前記圧力表示部のゼロ調整を行う第2の表示ゼロ調整部と、前記圧力表示部のスパン調整を行う第2の表示スパン調整部と、をさらに備えてなることを特徴とする温圧計。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の温圧計において、
前記圧力センサの近傍に放熱フィンを設けてなることを特徴とする温圧計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−261901(P2010−261901A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114678(P2009−114678)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(509130332)株式会社第一計器製作所 (1)
【Fターム(参考)】