説明

温度測定用板状体及びそれを備えた温度測定装置

【課題】静電チャック装置の載置面に単に載置するだけで、製品となる半導体ウエハそのものを使用することなく、静電チャック装置の載置面の面内温度分布や昇温特性や降温時における冷却特性を容易に最適化することが可能な温度測定用板状体及びそれを備えた温度測定装置を提供する。
【解決手段】本発明の温度測定用ウエハ(温度測定用板状体)1は、ウエハ2の表面2a全面に絶縁性接着剤3が貼着され、この絶縁性接着剤3上にヒーターエレメント4が設けられ、この絶縁性接着剤3の表面3a上のヒーターエレメント4を除く領域にウエハ2の表面2aの温度を測定するための温度測定領域5が設けられ、これらヒーターエレメント4及び温度測定領域5は絶縁膜6により被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度測定用板状体及びそれを備えた温度測定装置に関し、さらに詳しくは、半導体製造プロセスにおいて半導体ウエハ等の板状試料を載置する静電チャック装置の載置面における面内温度分布や昇温特性や降温時における冷却特性を簡便にしかもリアルタイムで評価することが可能な温度測定用板状体及びそれを備えた温度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造プロセスにおいては、素子の高集積化や高性能化に伴い、微細加工技術の更なる向上が求められている。この半導体製造プロセスの中でもエッチング技術は、微細加工技術の重要な一つであり、近年では、エッチング技術の内でも、高効率かつ大面積の微細加工が可能なプラズマエッチング技術が主流となっている。
プラズマエッチング装置等のプラズマを用いた半導体製造装置においては、従来から、試料台に簡単にウエハを取付け、固定するとともに、このウエハを所望の温度に維持する装置として静電チャック装置が使用されている。
【0003】
ところで、従来の静電チャック装置では、製品となる半導体ウエハ等の板状試料を実際に半導体製造ラインに流す際に、予め、この半導体製造ラインにおける静電チャック装置の載置面の面内温度分布や昇温特性や降温時における冷却特性を最適な値の範囲に調整する必要があり、そこで、ウエハの表面に点在する複数の凹部それぞれに熱電対の温接点を耐熱セメントにて接着・固定した温度センサー付きウエハが提案されている(特許文献1)。
この温度センサー付きウエハを用いて半導体製造ラインにおける静電チャック装置の製造条件を最適化する場合、この温度センサー付きウエハを静電チャック装置の載置面に載置し、この温度センサー付きウエハが載置された静電チャック装置を半導体製造ライン内を流す間にウエハの温度を温度センサーにてリアルタイムで測定する方法が採られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3663035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来の温度センサー付きウエハでは、静電チャック装置の製造条件を最適化するために、この温度センサー付きウエハを半導体製造ラインに実際に流してみて製造条件を最適化するという方法が採られており、したがって、温度センサー付きウエハ自体を静電チャック装置の条件最適化のために消費してしまうという問題点があった。
また、温度センサー付きウエハの加熱を、静電チャック装置に内蔵されたヒーターを用い、あるいは半導体装置のプラズマ照射または外部ヒーターを用いて行う必要があり、静電チャック装置の載置面の面内温度分布や昇温特性や降温時における冷却特性の最適値化のプロセスが煩雑になり、最適値化までに時間が掛かるという問題点があった。
【0006】
また、温度センサー付きウエハを半導体製造装置に実際に流すことなく使用する場合においても、温度センサー付きウエハの加熱を外部ヒーターを用いて行う必要があり、同様に静電チャック装置の載置面の面内温度分布や昇温特性や降温時における冷却特性の最適値化のプロセスが煩雑になり、最適値化までに時間が掛かるという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、静電チャック装置の載置面に単に載置するだけで、製品となる半導体ウエハそのものを使用することなく、静電チャック装置の載置面の面内温度分布や昇温特性や降温時における冷却特性を容易に最適化することが可能な温度測定用板状体及びそれを備えた温度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記の課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、静電チャック装置の載置面に載置する板状体の一方の主面に加熱部材を設け、かつ、この主面上の加熱部材を除く領域に、この板状体の温度を測定するための温度測定領域を設ければ、この温度測定領域の実際の温度、すなわち板状体の実際の表面温度を、サーモグラフ、光温度計、放射温度計等の非接触式温度測定装置、あるいは熱電対等の接触式温度測定装置を用いてリアルタイムで測定することができ、したがって、静電チャック装置の載置面における面内温度分布や昇温特性や降温時における冷却特性を簡便にしかもリアルタイムで評価することが可能なことを知見し、本発明を完成するに到った。
【0009】
すなわち、本発明の温度測定用板状体は、板状体の一方の主面に加熱部材を設け、かつ前記一方の主面上の前記加熱部材を除く領域の一部に、前記板状体の温度を測定するための温度測定領域を設けてなることを特徴とする。
【0010】
この温度測定用板状体では、この温度測定用板状体を静電チャック装置の載置面に載置した状態で、この温度測定用板状体に設けられた加熱部材を用いて加熱することにより、温度測定領域の実際の温度を、サーモグラフ、光温度計、放射温度計等の非接触式温度測定装置を用いてリアルタイムで測定することが可能になる。これにより、この板状体の温度測定領域における実際の表面温度をリアルタイムで測定することが可能になり、この測定値に基づき静電チャック装置の載置面における面内温度分布や昇温特性や降温時における冷却特性を簡便にしかもリアルタイムで評価することが可能になる。
【0011】
本発明の温度測定用板状体において、前記加熱部材は金属箔であり、この金属箔は前記一方の主面に絶縁性接着剤を介して接着されていることを特徴とする。
この温度測定用板状体では、加熱部材を金属箔とし、この金属箔を絶縁性接着剤を介して一方の主面に接着したことにより、加熱部材と板状体との間の熱伝達率が一定となる。
【0012】
本発明の温度測定用板状体において、前記板状体は、ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、III−V属化合物半導体、II−VI属化合物半導体のいずれか1種からなることを特徴とする。
この温度測定用板状体では、板状体をケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、III−V属化合物半導体、II−VI属化合物半導体のいずれか1種とすることにより、製品となる半導体ウエハを用いた場合と同等の静電チャック装置の載置面における評価を得ることが可能になる。
【0013】
本発明の温度測定用板状体において、前記加熱部材は、絶縁膜により被覆されていることを特徴とする。
この温度測定用板状体では、加熱部材を絶縁膜により被覆したので、加熱部材の絶縁性が良好に保持される。また、絶縁膜による被覆により、サーモグラフを用いた温度測定が可能になる。
【0014】
本発明の温度測定用板状体において、前記絶縁性接着剤は、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリイミドアミド系接着剤のいずれか1種を含むことを特徴とする。
この温度測定用板状体では、絶縁性接着剤を、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリイミドアミド系接着剤のいずれか1種を含むこととしたことにより、板状体と加熱部材との間の応力が緩和され、加熱部材が板状体から剥離する等の不具合が生じるそれがなくなる。
【0015】
本発明の温度測定用板状体において、前記温度測定領域に熱電対を接続してなることを特徴とする。
この温度測定用板状体では、温度測定領域に熱電対を接続したことにより、温度測定領域の実際の温度を、熱電対を用いてリアルタイムで直接測定することが可能になる。これにより、この板状体の温度測定領域における実際の表面温度をリアルタイムで正確に測定することが可能になる。
【0016】
本発明の温度測定装置は、本発明の温度測定用板状体を備えていることを特徴とする。
この温度測定装置では、本発明の温度測定用板状体を備えたことにより、静電チャック装置の載置面における面内温度分布や昇温特性や降温時における冷却特性を簡便にしかもリアルタイムで評価することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の温度測定用板状体によれば、板状体の一方の主面に加熱部材を設け、かつ前記一方の主面上の前記加熱部材を除く領域に、前記板状体の温度を測定するための温度測定領域を設けたので、この温度測定用板状体を静電チャック装置の載置面に載置した状態で、この温度測定用板状体を内蔵された加熱部材を用いて加熱することにより、温度測定領域の実際の温度を、サーモグラフ、光温度計、放射温度計等の非接触式温度測定装置を用いてリアルタイムで測定することができる。したがって、この温度測定領域の実際の表面温度をリアルタイムで測定することができ、この測定値に基づき静電チャック装置の載置面における面内温度分布や昇温特性や降温時における冷却特性を簡便にしかもリアルタイムで評価することができる。
【0018】
本発明の温度測定装置によれば、本発明の温度測定用板状体を備えたので、この温度測定用板状体を用いて静電チャック装置の載置面における面内温度分布や昇温特性や降温時における冷却特性を簡便にしかもリアルタイムで評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態の温度測定用板状体を示す平面図である。
【図2】図1のA−B線に沿う断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の温度測定用板状体を備えた温度測定装置を示す模式図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の温度測定用板状体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の温度測定用板状体及びそれを備えた温度測定装置を実施するための形態について、図面に基づき説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0021】
「第1の実施形態」
図1は、本発明の第1の実施形態の温度測定用ウエハ(温度測定用板状体)を示す平面図、図2は、図1のA−B線に沿う断面図である。
この温度測定用ウエハ1は、ウエハ(板状体)2の表面(一方の主面)2a全面に絶縁性接着剤3が貼着され、この絶縁性接着剤3上に略蛇行状の所定のパターンを有するヒーターエレメント(加熱部材)4が設けられている。そして、この絶縁性接着剤3の表面3a上のヒーターエレメント4を除く領域のうち所定個所(一部)には、ウエハ2の表面2aの温度を測定するための略円形状の温度測定領域5が設けられている。
【0022】
これらヒーターエレメント4及び温度測定領域5は、赤外線透過率が80%以下の絶縁膜6により被覆されている。なお、11、12はヒーターエレメント4の両端部に設けられた電圧印加用電極、13はウエハ2を位置決めするためのノッチである。
【0023】
ウエハ2は、製品となる半導体ウエハ等の板状試料であり、実際の半導体製造ラインに流れている板状試料をそのまま用いることが好ましい。
このウエハ2としては、例えば、シリコンウエハ、SiC(炭化ケイ素)ウエハ、Si(窒化ケイ素)ウエハ、GaAs、GaAsN等のIII−V属化合物半導体ウエハ、ZnSe等のII−VI属化合物半導体ウエハ等が挙げられ、製品となる半導体ウエハに合わせて適宜選択使用される。
このウエハ2の大きさや形状は、この温度測定用ウエハ1を載置する静電チャック装置に合わせて適宜選択すればよく、特に制限はない。
【0024】
絶縁性接着剤3は、耐熱性及び絶縁性を有するシート状またはフィルム状の接着剤であり、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリイミドアミド系接着剤のいずれか1種を主成分とする接着剤である。
この絶縁性接着剤3の厚みは5μm以上かつ100μm以下が好ましく、より好ましくは15μm以上かつ50μm以下である。この絶縁性接着剤3の面内の厚みのバラツキは、その厚みの10%以内であることが好ましい。
【0025】
ここで、絶縁性接着剤3の面内の厚みのバラツキが10%を超えると、ウエハ2とヒーターエレメント4との面内間隔に、絶縁性接着剤3の面内の厚みの10%を超えるバラツキが生じて、ヒータエレメント4からウエハ2に伝達される熱の面内均一性が低下し、その結果、ウエハ2の表面2aにおける面内温度が不均一となり、静電チャック装置の載置面の面内温度分布や昇温特性や降温時における冷却特性を最適化することができなくなるので、好ましくない。
【0026】
ヒーターエレメント4は、電力印加用電極11、12に所定の電圧を印加することにより発熱するもので、所定のパターンを有する非磁性金属箔からなるものである。
ここでは、1本の金属細線を蛇行させて全体形状を扇形状としたエレメント片を中心軸の回りに8枚配列し、これらを接続して1本のヒータエレメント4としてある。なお、図1のヒータエレメント4のパターンは、一例を示したものであり、対象となる半導体ウエハの処理や用途に合わせて適宜変更可能である。
【0027】
このヒータエレメント4は、厚みが300μm以下、好ましくは100μm以下の一定の厚みを有する非磁性金属箔、例えば、チタン(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属箔をフォトリソグラフィー法により、所望のヒーターパターンにエッチング加工することで形成される。
ここで、ヒータエレメント4の厚みを300μm以下とした理由は、厚みが300μmを超えると、ヒーターエレメントの線幅が細くなるためにエッチング加工の精度のばらつきが大きくなり、その結果、ウエハ2の表面の温度分布が変化し、ウエハ2の表面の温度分布を正確に測定することができなくなるからである。
【0028】
また、ヒータエレメント4を非磁性金属箔で形成すれば、この温度測定用ウエハ1を高周波雰囲気中で用いてもヒータエレメントが高周波により自己発熱せず、したがって、この温度測定用ウエハ1の面内温度を維持することが容易となるので好ましい。
【0029】
温度測定領域5は、直径2mm〜15mmの略円形状の領域であり、この温度測定領域5の温度を、サーモグラフ、光温度計、放射温度計等の非接触式温度測定装置を用いてリアルタイムで測定することが可能である。
この温度測定領域5が形成される位置は、温度測定用ウエハ1が載置される静電チャック装置の載置面の面内温度分布や昇温特性や降温時における冷却特性を正確に知るために、ウエハ2の面内温度分布を正確に表すように選択される。ここでは、ウエハ2の表面に十字形状に点在しており、各温度測定領域5は、互いに所定の間隔をおいて一列に配列している。
【0030】
絶縁膜6は、温度測定領域5の温度をサーモグラフを用いて測定することができるように設けたもので、サーモグラフによる測定が可能な耐熱性及び絶縁性を有するシート状またはフィルム状のテフロン(登録商標)、ポリイミド、ポリアミド等により構成されている。この絶縁膜6は、サーモグラフにより赤外線透過率を測定することができるものであればよく、この場合の赤外線透過率は80%以下であることが好ましい。
この絶縁膜6を用いることで、サーモグラフによる測定時に、サーモグラフの写り込みによりサーモグラフ自体の温度が測定値に影響することを防ぐことができる。また、サーモグラフを用いた温度測定では、被測定物の輻射率により温度の測定結果が変わるが、この絶縁膜6を用いることでヒータエレメント4と絶縁性接着剤3等とを同じ輻射率とすることができ、よって温度の測定精度が向上する。
【0031】
この絶縁膜6は、ここではヒーターエレメント4及び温度測定領域5全体を覆っているが、温度測定領域5の温度をサーモグラフを用いて測定することを考慮すると、温度測定領域5のみを覆った構成としてもよい。
【0032】
次に、この温度測定用ウエハ1の製造方法について説明する。
まず、製品となる半導体ウエハ等の板状試料から目的の半導体製造ラインに流されるウエハ2を選択する。
次いで、このウエハ2上に、シート状またはフィルム状の接着剤である絶縁性接着剤3を貼着する。
【0033】
次いで、この絶縁性接着剤3上に、チタン(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の非磁性金属箔を貼り付け、フォトリソグラフィー法により、所望のヒーターパターンにエッチング加工し、ヒータエレメント4とする。このエッチング加工の際に、温度測定領域5も同時に形成される。
【0034】
次いで、ヒーターエレメント4及び温度測定領域5全体を覆うように、絶縁膜6を形成する。この絶縁膜6は、サーモグラフによる測定を考慮した場合、サーモグラフ本体及びチャンバー外壁等の赤外線の写り込みを防止するために、耐熱性及び絶縁性を有するシート状またはフィルム状のテフロン(登録商標)、ポリイミド、ポリアミド等を貼着することにより形成することができる。
以上により、温度測定用ウエハ1を作製することができる。
【0035】
図3は、本実施形態の温度測定用ウエハ1を備えた温度測定装置21を示す模式図であり、この温度測定装置21は、雰囲気の種類、温度、湿度、圧力等が調節可能な密閉容器22の底部に、温度測定用ウエハ1を載置する静電チャック装置31を収納するスペース23があり、このスペース23に対向する密閉容器22の天板の外側には、表面温度を被接触にて測定することができるサーモグラフ24が設けられ、このサーモグラフ24は天板に形成された窓25を介してスペース23内に収納された静電チャック装置31の表面温度を測定することができるようになっている。
【0036】
この温度測定装置21を用いて静電チャック装置の面内温度分布や昇温特性や降温時における冷却特性等の諸特性を測定する方法について説明する。
まず、静電チャック装置31の載置面に本実施形態の温度測定用ウエハ1を載置する。
この静電チャック装置31は、円板状の静電チャック部32と、この静電チャック部32を所望の温度に冷却する厚みのある円板状の冷却ベース部33とを備えている。
この静電チャック部32は、シリコンウエハ等の板状試料を加熱するためのヒーターを内蔵していてもよい。
【0037】
次いで、この温度測定用ウエハ1を載置した静電チャック装置31を密閉容器22の底部のスペース23上に配置し、この密閉容器22内の雰囲気、温度、圧力等を調整する。例えば、真空雰囲気、温度60℃に調整する。なお、密閉容器22内に所望のガスを導入して雰囲気、温度、圧力等を調整しても良い。
【0038】
次いで、サーモグラフ24により温度測定用ウエハ1の複数の温度測定領域5の温度をリアルタイムで測定しながら、温度測定用ウエハ1のヒータエレメント4に電圧を印加し、この温度測定用ウエハ1を半導体製造プロセスにおいて到達すべき目標のウエハ温度にまで加熱する。
このサーモグラフ24による測定の結果、温度測定用ウエハ1におけるウエハ2の昇温特性が分かる。したがって、静電チャック装置31の載置面における昇温特性を、簡便にしかもリアルタイムで評価することができる。
【0039】
この温度測定用ウエハ1の温度が目標のウエハ温度に安定したころを見計らって、サーモグラフ24により温度測定用ウエハ1の複数の温度測定領域5の温度を、リアルタイムで順次測定する。
サーモグラフ24による測定の結果、温度測定用ウエハ1におけるウエハ2の面内温度分布が分かる。したがって、静電チャック装置31の載置面における面内温度分布を簡便にしかもリアルタイムで評価することができる。
【0040】
次いで、温度測定用ウエハ1のヒータエレメント4への電圧印加を遮断し、冷却ベース部33により温度測定用ウエハ1を冷却しながら、サーモグラフ24により温度測定用ウエハ1の複数の温度測定領域5の温度を、リアルタイムで順次測定する。
サーモグラフ24による測定の結果、温度測定用ウエハ1におけるウエハ2の冷却過程における冷却特性がリアルタイムで分かる。したがって、静電チャック装置31の載置面の冷却過程における冷却特性を簡便にしかもリアルタイムで評価することができる。
【0041】
この温度測定用ウエハ1を用いて静電チャック装置31の載置面の昇温過程における昇温特性及び冷却過程における冷却特性を評価した結果、静電チャック装置の設計を簡便に短時間で行うことが可能となった。
【0042】
本実施形態の温度測定用ウエハ1によれば、ウエハ2の表面2a全面に絶縁性接着剤3を貼着し、この絶縁性接着剤3上にヒーターエレメント4を設けるとともに、このヒーターエレメント4を除く領域のうち所定個所(一部)に略円形状の温度測定領域5を複数設け、これらヒーターエレメント4及び温度測定領域5を絶縁膜6にて被覆したので、温度測定領域5の表面温度の測定値に基づき静電チャック装置の載置面における面内温度分布及び降温時における冷却特性を簡便にしかもリアルタイムで評価することができる。
【0043】
本実施形態の温度測定装置21によれば、密閉容器22の底部に、温度測定用ウエハ1を載置する静電チャック装置31を収納するスペース23を設け、このスペース23に対向する密閉容器22の天板の外側にサーモグラフ24を設け、このサーモグラフ24により天板に形成された窓25を介して静電チャック装置31の表面温度を測定することとしたので、温度測定用ウエハ1を用いて静電チャック装置31の載置面における面内温度分布及び降温時における冷却特性を簡便にしかもリアルタイムで評価することができる。
このように、静電チャック装置31を簡易的に測定できるので、静電チャック装置の出荷検査や品質管理にも用いることができる。
【0044】
なお、この温度測定装置21では、密閉容器22の天板の外側にサーモグラフ24を設け、このサーモグラフ24により天板に形成された窓25を介して静電チャック装置31の表面温度を測定する構成としたが、サーモグラフ24の替わりに、光温度計、放射温度計等の非接触式温度測定装置を用いても、同様に静電チャック装置31の載置面における面内温度分布及び降温時における冷却特性を簡便にしかもリアルタイムで評価することができる。
【0045】
「第2の実施形態」
図4は、本発明の第2の実施形態の温度測定用ウエハ(温度測定用板状体)を示す断面図であり、本実施形態の温度測定用ウエハ41が第1の実施形態の温度測定用ウエハ1と異なる点は、第1の実施形態の温度測定用ウエハ1では、絶縁性接着剤3上のヒーターエレメント4を除く領域のうち所定個所(一部)に温度測定領域5を設け、これらヒーターエレメント4及び温度測定領域5を赤外線透過率が80%以下の絶縁膜6により被覆したのに対し、本実施形態の温度測定用ウエハ41では、絶縁性接着剤3の温度測定領域に当たる複数の部分を除去して、それらの部分のウエハ2の表面2aを露出させ、この露出したウエハ2の表面2aに熱電対42の温接点部43を接着固定し、これら温接点部43各々を耐熱性及び絶縁性を有する接着剤44にて封止した点である。
【0046】
この温度測定用ウエハ41では、ヒータエレメント4に電圧を印加し、この温度測定用ウエハ41を半導体製造プロセスにおいて到達すべき目標のウエハ温度にまで加熱した時に、熱電対42により温度測定用ウエハ41の複数の温度測定領域におけるそれぞれのウエハ2の表面2aの温度を、リアルタイムで順次測定することにより、静電チャック装置の載置面における面内温度分布を簡便にしかもリアルタイムで評価することができる。
【0047】
また、冷却ベース部33により温度測定用ウエハ41を冷却しながら、熱電対42により温度測定用ウエハ41の複数の温度測定領域におけるそれぞれのウエハ2の表面2aの温度を、リアルタイムで順次測定することにより、静電チャック装置の載置面の冷却過程における冷却特性を簡便にしかもリアルタイムで評価することができる。
【0048】
なお、本実施形態の温度測定用ウエハ41では、露出しているウエハ2の表面2aの複数の温度測定領域各々全部に熱電対42の温接点部43を接着剤44にて封止したこととしたが、熱電対42は、温度測定領域5各々全部に設ける必要はなく、ウエハ2の表面2aのうち必要とされる温度測定領域のみを複数個所選択して露出させ、これらの露出したウエハ2の表面2aに熱電対42の温接点部43を接着固定し、接着剤44にて封止したこととしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 温度測定用ウエハ(温度測定用板状体)
2 ウエハ(板状体)
2a 表面(一方の主面)
3 絶縁性接着剤
4 ヒーターエレメント(加熱部材)
5 温度測定領域
6 絶縁膜
11、12 電圧印加用電極
13 ノッチ
21 温度測定装置
22 密閉容器
23 スペース
24 サーモグラフ
25 窓
31 静電チャック装置
32 静電チャック部
33 冷却ベース部
41 温度測定用ウエハ(温度測定用板状体)
42 熱電対
43 温接点部
44 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体の一方の主面に加熱部材を設け、かつ前記一方の主面上の前記加熱部材を除く領域の一部に、前記板状体の温度を測定するための温度測定領域を設けてなることを特徴とする温度測定用板状体。
【請求項2】
前記加熱部材は金属箔であり、この金属箔は前記一方の主面に絶縁性接着剤を介して接着されていることを特徴とする請求項1記載の温度測定用板状体。
【請求項3】
前記板状体は、ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、III−V属化合物半導体、II−VI属化合物半導体のいずれか1種からなることを特徴とする請求項1または2記載の温度測定用板状体。
【請求項4】
前記加熱部材は、絶縁膜により被覆されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の温度測定用板状体。
【請求項5】
前記絶縁性接着剤は、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリイミドアミド系接着剤のいずれか1種を含むことを特徴とする請求項2記載の温度測定用板状体。
【請求項6】
前記温度測定領域に熱電対を接続してなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の温度測定用板状体。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項記載の温度測定用板状体を備えていることを特徴とする温度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−46035(P2013−46035A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185124(P2011−185124)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】