測定装置
本発明は、半導体ウエハなどの基板の表面に形成された薄膜の厚みなどを測定する測定装置に関するものである。本発明の測定装置は、物質にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段(40)と、マイクロ波照射手段(40)にマイクロ波を供給するマイクロ波源(45)と、物質から反射した、又は物質を透過したマイクロ波の振幅又は位相を検出する検出手段(47)と、検出手段(47)により検出されたマイクロ波の振幅又は位相に基づいて物質の構造を解析する解析手段(48)とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質の厚さなどを測定する測定装置に係り、特に半導体ウエハなどの基板の表面に形成された薄膜の厚さなどを測定する測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体デバイスの高集積化に伴う配線の微細化及び多層化の要求によって、半導体ウエハなどの基板の表面の平坦化が要求されている。即ち、配線の微細化によって、光リソグラフィに用いる光の波長としてより短いものを使用するようになり、このような短波長の光は基板上の焦点位置での許容される高低差がより小さくなる。したがって、焦点位置での高低差が小さいこと、即ち基板表面の高い平坦度が必要となってくる。このため、化学機械研磨(CMP)により半導体ウエハの表面の凹凸を除去してその表面を平坦化することが行われている。この化学機械研磨を行うCMP装置では、研磨対象となる半導体ウエハを研磨パッドに押圧し、研磨パッドの上面に研磨液を供給しながら半導体ウエハを研磨パッドに摺接することで研磨が行われる。
【0003】
上記化学機械研磨においては、所定時間の研磨を行った後に所望の位置で研磨を終了する必要がある。例えば、CuやAlなどの金属配線の上部にSiO2等の絶縁層(この後の工程で絶縁層の上に更に金属などの層を形成するため、このような絶縁層は層間膜と呼ばれる。)を残したい場合がある。このような場合、研磨を必要以上に行うと下層の金属膜が表面に露出してしまうので、層間膜を所定の膜厚だけ残すように研磨を終了する必要がある。
【0004】
また、半導体ウエハ上に予め所定パターンの配線用の溝を形成しておき、その中にCu(又はCu合金)を充填した後に、表面の不要部分を化学機械研磨(CMP)により除去する場合がある。Cu層をCMPプロセスにより研磨する場合、配線用溝の内部に形成されたCu層のみを残して半導体ウエハからCu層を選択的に除去することが必要とされる。即ち、配線用の溝部以外の箇所では、SiO2などからなる絶縁膜(非金属膜)が露出するまでCu層を除去することが求められる。
【0005】
この場合において、過剰研磨となって、配線用の溝内のCu層を絶縁膜と共に研磨してしまうと、回路抵抗が上昇し、半導体ウエハ全体を廃棄しなければならず、多大な損害となる。逆に、研磨が不十分で、Cu層が絶縁膜上に残ると、回路の分離がうまくいかず、短絡が起こり、その結果、再研磨が必要となり、製造コストが増大する。このような事情は、Cu層に限らず、Al層等の他の金属膜を形成し、この金属膜をCMPプロセスで研磨する場合も同様である。
【0006】
このため、従来から、光学式センサを有する測定装置を用いて、被研磨面に形成された絶縁層(絶縁膜)や金属層(金属膜)の膜厚を測定し、CMPプロセスの加工終点を検出することがなされている。この種の測定装置では、研磨中にレーザービームや白色光を半導体ウエハに照射し、半導体ウエハ上に成膜された絶縁膜や金属膜からの反射光を測定することで研磨工程の終点を検知する。また、他のタイプの測定装置では、研磨中に可視光線を半導体ウエハに照射し、半導体ウエハ上に成膜された絶縁膜や金属膜からの反射光を分光器で解析することで研磨工程の終点を検知する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した測定装置では、光源と半導体ウエハWとの間に研磨パッドなどの障害物があると、光源から照射されるレーザービームや可視光線を半導体ウエハWに到達させることができない。したがって、レーザービームや可視光線を透過させるための透過窓(通孔又は透明な窓)を研磨パッドに設ける必要がある。このため、研磨パッドの加工工程数が増え、消耗品としての研磨パッドのコストが高くなる。また、上記測定装置では、半導体ウエハからの反射光が不安定であり、正確な膜厚測定が難しいという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、障害物に通孔などの透過窓を設けることなく、物質の厚さなどの構造を精度良く測定することができる測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、物質にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と、前記マイクロ波照射手段にマイクロ波を供給するマイクロ波源と、前記物質から反射した、又は前記物質を透過したマイクロ波の振幅又は位相を検出する検出手段と、前記検出手段により検出されたマイクロ波の振幅又は位相に基づいて前記物質の構造を解析する解析手段とを備えたことを特徴とする測定装置である。
【0010】
本発明の好ましい一態様は、前記解析手段は、前記物質の反射係数、定在波比、および表面インピーダンスの少なくとも1つを算出することを特徴とする。
本発明の好ましい一態様は、前記解析手段は、前記物質の厚さ、内部欠陥、誘電率、導電率、および透磁率の少なくとも1つを解析することを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様は、基板を研磨パッドに摺接させて前記基板を研磨する研磨装置において、前記研磨パッドを有する研磨テーブルと、前記基板を保持して前記研磨パッドに押圧するトップリングと、前記基板上に形成された膜の厚さを測定する測定装置とを備え、前記測定装置は、前記膜にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と、前記マイクロ波照射手段にマイクロ波を供給するマイクロ波源と、前記膜から反射した、又は前記膜を透過したマイクロ波の振幅又は位相を検出する検出手段と、前記検出手段により検出されたマイクロ波の振幅又は位相に基づいて前記膜の厚さを測定する解析手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい一態様は、複数の前記マイクロ波照射手段を前記トップリングに埋設し、複数の前記マイクロ波照射手段のうちの1つを前記基板の中心部に対応する位置に配置し、他の前記マイクロ波照射手段を前記基板の中心部から半径方向において離間した位置に配置したことを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい一態様は、渦電流センサ、光学センサ、前記研磨パッドと前記基板との間の摩擦力を検知する摩擦検知センサ、及び、前記トップリング又は前記研磨テーブルのトルクを測定するトルクセンサの少なくとも1つを更に備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様は、基板の表面に膜を成膜するCVD装置において、内部に基板が配置される容器と、前記容器に原料ガスを供給するガス供給手段と、前記基板を加熱するヒータと、前記基板上に形成された膜の厚さを測定する測定装置とを備え、前記測定装置は、前記膜にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と、前記マイクロ波照射手段にマイクロ波を供給するマイクロ波源と、前記膜から反射した、又は前記膜を透過したマイクロ波の振幅又は位相を検出する検出手段と、前記検出手段により検出されたマイクロ波の振幅又は位相に基づいて前記膜の厚さを測定する解析手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の他の態様は、物質に直線偏波又は円偏波を照射する照射手段と、前記物質からの反射波を受信する少なくとも2つの受信手段と、前記物質からの反射波の振幅及び位相を検出する少なくとも2つの検出手段と、前記検出手段により検出された反射波の振幅及び位相に基づいて反射波の偏波状態の変化を解析して前記物質の厚さを測定する解析手段とを備えたことを特徴とする測定装置である。
【0016】
本発明の好ましい態様は、前記解析装置は、前記物質の誘電率、導電率、透磁率、および屈折率を更に測定することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記物質は多層膜であることを特徴とする。
【0017】
本発明の他の態様は基板を研磨パッドに摺接させて前記基板を研磨する研磨装置において、前記研磨パッドを有する研磨テーブルと、前記基板を保持して前記研磨パッドに押圧するトップリングと、前記基板の表面に形成された物質の厚さを測定する測定装置とを備え、前記測定装置は、物質に直線偏波又は円偏波を照射する照射手段と、前記物質からの反射波を受信する少なくとも2つの受信手段と、前記物質からの反射波の振幅及び位相を検出する少なくとも2つの検出手段と、前記検出手段により検出された反射波の振幅及び位相に基づいて反射波の偏波状態の変化を解析して前記物質の厚さを測定する解析手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明の好ましい態様は、前記照射手段は前記研磨テーブル内に配置されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記物質は多層膜であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、測定すべき物質とマイクロ波照射手段との間に障害物(例えば研磨パッド)が存在しても、マイクロ波はこの障害物を透過(貫通)して物質(例えば基板)に到達するので、障害物に通孔などの透過窓を設ける必要がない。したがって、障害物に透過窓を形成するための加工が不要となり、製作コストを低減することができる。また、本発明によれば、研磨液などの影響を受けることなく物質の厚さなどを良好に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の測定装置の実施形態について図面を参照して説明する。
図1Aは本発明に係る測定装置の原理について説明するための図である。
図1Aに示すように、被測定物である物質Sにマイクロ波(入射波I)を照射すると、物質Sの表面からマイクロ波が反射する。物質Sから反射したマイクロ波(以下、反射波Rという)は、物質Sの構造(厚さや物性など)に依存した振幅や位相を有している。したがって、反射波Rの振幅及び位相の少なくとも1つを検出することによって、物質Sの構造を解析することができる。ここで、物質の構造としては、物質の厚さ、空隙などの内部欠陥、誘電率、導電率、透磁率などが挙げられる。
【0021】
例えば、研磨又はめっきなど工程に伴って物質Sの厚さが変化すると、この物質Sからの反射波Rの振幅は、物質Sの厚さに依存して変化する。したがって、物質Sからの反射波Rの振幅を検出することによって物質Sの厚さの変化が監視できる。この場合、物質Sの厚さと反射波Rの振幅との関係を予めデータとして保有しておけば、物質Sからの反射波Rの振幅を測定することによって物質Sの絶対的な厚さを測定することができる。
【0022】
マイクロ波は電磁波の一種であり、ここでは、周波数帯域が300MHz〜300GHz、波長が1m〜1mmの電磁波をいう。反射波Rから読み取ることができる情報としては振幅及び位相があり、この振幅及び位相から反射係数(入射波Iに対する反射波Rの振幅の比)、物質の表面インピーダンス(物質の表面に依存したインピーダンス)、定在波比(伝送線路上の電圧の最大値と最小値との比)などの各種情報を得ることができる。また、入射波Iの周波数(f)と反射波Rの周波数(f±Δf)との間に変化が生じた場合、この周波数の変化量(Δf)は物質の厚さなどの構造に比例すると考えられるため、周波数の変化量を測定することによっても物質Sの構造を解析することができる。
【0023】
次に、図1Bを参照して反射波の振幅と物質の厚さとの関係を説明する。図1Bは、異なる膜厚(th1<th2<th3)を有する3つの多結晶シリコンにマイクロ波を照射し、それぞれの多結晶シリコンからの反射波の振幅を測定した結果を示すグラフ図である。なお、振幅を示す単位として電力(dbm)を使用している。
【0024】
図1Bから、多結晶シリコンの膜厚が薄い場合は振幅が小さく、多結晶シリコンの膜厚が厚い場合は振幅が大きくなることが分かる。このように、マイクロ波(反射波)の振幅と物質の厚さとの間にはほぼ一定の関係が成立するため、マイクロ波(反射波)の振幅を検出することによって物質の厚さを測定することができる。
【0025】
物質Sに照射するマイクロ波は単一の周波数を有するものに限らず、異なる周波数を重畳させたマイクロ波でもよく、周波数可変手段を用いて周波数を時間的に変化させてもよい。マイクロ波の周波数は、物質Sの種類に応じて適宜選択することが好ましい。これによって、物質Sの構造を正確に検知することができる。さらに、マイクロ波は物質Sを透過(貫通)するので、反射波Rだけでなく、物質Sを透過したマイクロ波(以下、透過波Pという)によっても物質Sの構造を検知することができる。
【0026】
マイクロ波を用いた測定装置の利点として次の点が挙げられる。
(1)マイクロ波の伝達媒体は空気でよい。
(2)非接触および非破壊で物質の特性を評価することができる。
(3)検知距離が長い(マイクロ波を用いた測定装置による検知距離が35mmであるのに対して、渦電流センサを用いた検知距離は最大で4mm)。ここで、検知距離とは、アンテナ(マイクロ波照射手段)と物質との間の距離をいい、要求される検知感度を考慮して適切な検知距離が決定される。
(4)アンテナと物質との間に障害物があっても、マイクロ波はこの障害物を透過(貫通)して物質に到達するので、障害物に通孔などを形成する必要がない。
(5)一般に、アンテナは小型であるので、測定装置をCMP装置などに容易に組み入れることができる。
(6)集束センサなどを用いて物質の微小領域にマイクロ波を集束することができるため、物質の厚さなどを精密に測定することができる。
【0027】
次に、本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えた研磨装置(CMP装置)について図2を参照して説明する。図2は本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えた研磨装置を示す断面図である。
【0028】
図2に示すように、研磨装置は、上面に研磨パッド10が貼設された研磨テーブル20と、被研磨物である半導体ウエハ(基板)Wを保持して研磨パッド10の上面に押圧するトップリング30とを備えている。研磨パッド10の上面は、被研磨物である半導体ウエハWと摺接する研磨面を構成している。なお、微細な砥粒(CeO2等からなる)を樹脂等のバインダで固めた固定砥粒板の上面を研磨面として構成することもできる。
【0029】
研磨テーブル20は、その下方に配置されるモータ21に連結されており、矢印で示すようにその軸心回りに回転可能になっている。また、研磨テーブル20の上方には研磨液供給ノズル22が設置されており、この研磨液供給ノズル22から研磨パッド10上に研磨液Qが供給されるようになっている。
【0030】
トップリング30は、トップリングシャフト31に連結されており、このトップリングシャフト31を介してモータ及び昇降シリンダ(図示せず)に連結されている。これによりトップリング30は、矢印で示すように昇降可能且つトップリングシャフト31回りに回転可能となっている。また、トップリング30はその下面にポリウレタン等の弾性マット32を備えており、この弾性マット32の下面に、被研磨物である半導体ウエハWが真空等によって吸着、保持される。なお、トップリング30の下部外周部には、半導体ウエハWの外れ止めを行うガイドリング33が設けられている。
【0031】
このような構成により、トップリング30は自転しながら、その下面に保持した半導体ウエハWを研磨パッド10に対して任意の圧力で押圧することができるようになっている。そして、研磨パッド10と半導体ウエハWとの間に研磨液Qを存在させた状態で、半導体ウエハWの被研磨面(下面)が平坦に研磨される。
【0032】
研磨テーブル20には、マイクロ波を半導体ウエハWの被研磨面に向けて照射するアンテナ(マイクロ波照射手段)40が埋設されている。このアンテナ40は、トップリング30に保持された半導体ウエハWの中心位置に配置されており、導波管41を介して本体部(ネットワークアナライザ)42に接続されている。
【0033】
図3は本発明の第1の実施形態に係る測定装置を示す概略図である。
図3に示すように、本発明に係る測定装置は、アンテナ40と、導波管41を介してアンテナ40に接続される本体部42とを備えている。なお、導波管41は短い方が好ましく、アンテナ40と本体部42とを一体的に構成してもよい。本体部42は、マイクロ波を生成してアンテナ40にマイクロ波を供給するマイクロ波源45と、マイクロ波源45により生成されたマイクロ波(入射波)と半導体ウエハWの被研磨面から反射したマイクロ波(反射波)とを分離させる分離器46と、分離器46により分離された反射波を受信して反射波の振幅及び位相を検出する検出部47と、検出部47により検出された反射波の振幅及び位相に基づいて半導体ウエハWの構造を解析する解析部48とを備えている。なお、分離器46としては、方向性結合器が好適に用いられる。
【0034】
アンテナ40は導波管41を介して分離器46に接続されている。マイクロ波源45は分離器46に接続され、マイクロ波源45により生成されたマイクロ波は、分離器46および導波管41を介してアンテナ40に供給される。マイクロ波はアンテナ40から半導体ウエハWに向けて照射され、研磨パッド10を透過(貫通)して半導体ウエハWに到達する。半導体ウエハWからの反射波は再び研磨パッド10を透過した後、アンテナ40により受信される。
【0035】
反射波はアンテナ40から導波管41を介して分離器46に送られ、分離器46によって入射波と反射波とが分離される。分離器46には検出部47が接続されており、分離器46により分離された反射波は検出部47に送信される。検出部47では反射波の振幅及び位相が検出される。反射波の振幅は電力(dbm又はW)もしくは電圧(V)の値として検出され、反射波の位相は検出部47に内蔵された図示しない位相計測器により検出される。なお、位相計測器を設けずに反射波の振幅のみを検出部で求めるようにしてもよく、また、反射波の位相のみを位相計測器で求めるようにしてもよい。
【0036】
解析部48では、検出部47によって検出された反射波の振幅及び位相に基づいて半導体ウエハW上に成膜された金属膜や非金属膜などの膜厚が解析される。解析部48には制御部50が接続されており、解析部48で得られた膜厚の値に基づいて研磨工程の終点が制御部50によって検知される。
【0037】
なお、マイクロ波のスポット径を集束させる集束センサをアンテナ40に設けてもよい。これによって、アンテナ40から照射されるマイクロ波を半導体ウエハW上の微小領域に照射することができる。また、アンテナ40と半導体ウエハWとの距離(検知距離)は、測定感度の観点から短い方が好ましいが、マイクロ波源45の出力を上げることにより、測定感度を保ちつつ検知距離を長くすることもできる。
【0038】
半導体ウエハWに照射されるマイクロ波の周波数は、半導体ウエハW上に成膜された物質(金属膜又は非金属膜)の種類に応じて適宜選択することが好ましい。この場合、異なる周波数のマイクロ波を生成する複数のマイクロ波源を設け、物質の種類に応じて使用すべきマイクロ波源を切り替えるようにしてもよい。また、マイクロ波源45に周波数可変手段を設けてマイクロ波の周波数を変化させるようにしてもよい。なお、周波数可変手段は、例えば、関数発生器を用いて周波数を変化させる構成とすることができる。
【0039】
図4Aは図2に示す研磨装置の概略平面図であり、図4Bは半導体ウエハの被研磨面を示す模式図である。図5Aは半導体ウエハの被研磨面の各領域における膜厚の測定値の経時的変化を示すグラフ図であり、図5Bは膜厚の測定値の集束範囲を説明するための図である。
【0040】
本実施形態では、図4B示すように、半導体ウエハWの中心部を含む5つの領域Z1,Z2,Z3,Z4,Z5における膜厚が測定される。図4Aに示すように、トップリング30及び研磨テーブル20は互いに独立して回転するため、半導体ウエハWに対するアンテナ40の位置が研磨工程中に変化する。このような場合でも、アンテナ40は半導体ウエハWの中心位置に配置されているため、このアンテナ40は研磨テーブル20の回転に伴って必ず半導体ウエハWの特定の領域、すなわち半導体ウエハWの中心部に位置する領域Z3を通ることになる。したがって、半導体ウエハWの定点(中心部の領域Z3)における膜厚が監視され、正確な研磨レートを得ることができる。
【0041】
図5Aに示すように、各領域Z1,Z2,Z3,Z4,Z5における膜厚の測定値(膜厚値)M1,M2,M3,M4,M5は、研磨工程が進むにつれて次第に集束する。また、図5Bに示すように、制御部50(図2及び図3参照)には、領域Z3における膜厚の測定値M3に対して所定の上限値U及び下限値Lが設定されている。そして、制御部50は、領域Z1,Z2,Z3,Z4,Z5における膜厚の測定値が、上限値Uから下限値Lまでの範囲内に総て集束したときは、半導体ウエハWの被研磨面全体が均一に研磨されたと判断するようになっている。このように、各領域における膜厚の測定値が所定の範囲内に集束した後に研磨工程を終了させることにより、平坦な被研磨面を確保することができる。なお、半導体ウエハW上の膜が所望の厚さとなった場合には、制御部50により研磨工程が停止される。
【0042】
ここで、研磨工程の経過時間に基づいて研磨工程の終点を決定することもできる。この例について図6を参照して説明する。図6は膜厚の経時的変化(研磨レート)を示すグラフ図である。
図6に示すように、研磨工程開始後、ある程度時間が経過すると、膜厚の変化が微小となる。制御部50(図2及び図3参照)は膜厚の変化が微小となった時点(t1)を検知して基準時間T1(t0〜t1)を設定する。さらに、基準時間T1に所定の係数を加算、減算、乗算、又は除算(四則演算)することにより補助時間T2(t1〜t2)を求める。そして、制御部50は、基準時間T1に補助時間T2を加算した時間(T1+T2)を経過した時(t2)に、研磨工程を終了させる。
【0043】
このようにすることで、研磨レートの変化が微小であるために加工終点の検知が困難な場合でも、基準時間T1および補助時間T2を求めることによって、研磨工程の終点を決定することができる。なお、上記係数は、金属膜や非金属膜の種類から決定されることが好ましい。
【0044】
ここで、研磨テーブル20に、研磨パッド10の温度を調整する温度調整手段を設けることもできる。例えば、研磨テーブル20の上面に流体流路を形成し、この流体流路に高温の流体又は低温の流体を供給するように構成してもよい。この場合、制御部50は、測定装置の測定値に基づいて流体の供給を制御するようにすることが好ましい。このような構成によれば、研磨液Qと金属膜又は非金属膜との化学反応が促進又は抑制され、研磨レートを制御することができる。また、制御部50は、測定装置の測定値に基づいて研磨テーブル20及びトップリング30の相対速度を制御するようにしてもよい。
【0045】
また、研磨テーブル20の上部に、研磨パッド10と半導体ウエハWとの間に生じる摩擦力を検出する応力センサ(摩擦検知センサ)を配置することが好ましい。或いは、トップリング30又は研磨テーブル20のトルクを測定するトルクセンサを設けることが好ましい。この場合、トルクセンサとしては、トップリング30又は研磨テーブル20を回転させるモータの電流を測定する電流センサが好適に用いられる。一般に、半導体ウエハWの被研磨面が平坦に研磨されると、研磨パッド10と半導体ウエハWとの間に生じる摩擦力は小さくなる。したがって、応力センサやトルクセンサの出力値が所定の値以下にまで低下した後に制御部50を介して研磨工程を終了させれば、半導体ウエハWの被研磨面の平坦度を確保することができる。なお、本実施形態に係る測定装置に加えて、半導体ウエハに成膜された金属膜の膜厚を計測する渦電流センサ又は光学センサなどを設けてもよい。
【0046】
図7Aは第1の実施形態に係る測定装置を備えた研磨装置の他の構成例を示す断面図であり、図7Bは図7Aに示すトップリングの拡大断面図である。なお、特に説明しない構成及び動作については、図2に示す研磨装置と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0047】
図7Aに示す研磨装置においては、複数のアンテナ40A,40B,40C,40D,40Eがトップリング30に設けられており、それぞれのアンテナ40A,40B,40C,40D,40Eからマイクロ波が半導体ウエハWに向けて照射される。これらのアンテナ40A,40B,40C,40D,40Eは、本体部42(図2参照)にそれぞれ接続されている。
【0048】
図7Bに示すように、アンテナ40Cは半導体ウエハWの中心部に配置されている。アンテナ40B,40Dは、アンテナ40C(半導体ウエハWの中心)から半径方向に距離dだけ離間した位置にそれぞれ配置され、アンテナ40A,40Eは、アンテナ40B,40Dから半径方向に距離dだけ離間した位置にそれぞれ配置されている。このように、アンテナ40B,40D及びアンテナ40A,40Eは、半導体ウエハWの半径方向において互いに異なる位置に配置されている。
【0049】
図7Aに示す研磨装置においても、各アンテナ40A,40B,40C,40D,40Eによって半導体ウエハWの5つの領域Z1,Z2,Z3,Z4,Z5(図4B参照)における膜厚が測定される。なお、トップリング30及び研磨テーブル20の両方にアンテナを設けることもできる。この場合には、一方の側に配置されたアンテナから半導体ウエハWに向けてマイクロ波を照射し、反対側に配置されたアンテナにより半導体ウエハWを透過(貫通)したマイクロ波(透過波)を受信させる。そして、透過波の振幅及び位相を計測することで半導体ウエハW上の薄膜の膜厚を測定することができる。
【0050】
アンテナの設置場所は、研磨テーブル20やトップリング30に限定されず、例えば、ガイドリング33に設置することもできる。この場合、上記測定装置を、半導体ウエハWのトップリング30からの飛び出しを検知するセンサとして使用することもできる。また、研磨テーブル20の径方向外側にアンテナを設置してもよい。この場合には、研磨工程中及び研磨工程後にトップリング30の一部を研磨テーブル20からはみ出させ(オーバーハングさせ)、アンテナから半導体ウエハWの下面(被研磨面)にマイクロ波を照射する。
【0051】
図8は本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えた電解研磨装置を示す断面図である。
図8に示すように、電解研磨装置は、上方に開口して内部に電解液100を保持する電解槽101と、電解槽101の上方に配置され半導体ウエハWを着脱自在に下向きに保持する基板保持部102とを有している。電解槽101は有底円筒状の形状を有している。
【0052】
電解槽101は、モータ(図示せず)の駆動に伴って回転する軸部103に直結され、底部には、電解液100中に浸漬されてカソードとなる平板状の陰極板(加工電極部)104が水平に配置されている。この陰極板104の上面には、不織布タイプの研磨具105が貼り付けられている。軸部103の回転に伴って電解槽101及び研磨具105は一体に回転するようになっている。
【0053】
基板保持部102は、回転速度が制御可能な回転機構と研磨圧力が調整可能な上下動機構とを備えた支持ロッド107の下端に連結され、この下面に、例えば真空吸着方式で半導体ウエハWを吸着保持するようになっている。
【0054】
基板保持部102には、半導体ウエハWの表面に形成された金属膜を陽極(アノード)にする電気接点(給電電極)108が設けられている。この電気接点108は、支持ロッド107に内蔵されたロール摺動コネクタ(図示せず)および配線109aにより電源としての整流器110の陽極端子へ結線され、陰極板104は、配線109bを介して整流器110の陰極端子に結線される。電解槽101の上方に位置して、この内部に電解液100を供給する電解液供給部111が配置されている。
【0055】
基板保持部102には、本実施形態に係る測定装置を構成するアンテナ40が埋設されており、このアンテナ40から半導体ウエハWに向けてマイクロ波が照射されるようになっている。マイクロ波は半導体ウエハWの下面に形成された金属膜で反射し、反射したマイクロ波(反射波)はアンテナ40により受信され、導波管41を介して本体部42に送られる。そして、本体部42に内蔵された解析部48(図3参照)により金属膜の膜厚が測定される。本体部42には制御部50が接続されており、この制御部50を介して上記解析部48により測定された膜厚の値に応じて研磨レートの制御及び研磨加工の終点検知が行われる。なお、図8に示す測定装置(アンテナ40及び本体部42)は、図3に示す測定装置と同様の構成を有している。
【0056】
この電解研磨装置における研磨動作について説明する。
電解液供給部111から電解槽101内に電解液100を供給し、この電解液100が電解槽101からオーバーフローする状態で電解槽101と研磨具105とを一体に回転させる。一方、Cu膜などの金属膜が形成された半導体ウエハWを基板保持部102で下向きに吸着保持しておく。この状態で、半導体ウエハWを電解槽101とは反対方向に回転させながら下降させ、この半導体ウエハWの下面を、所定の圧力で研磨具105の表面に接触させ、同時に、整流器110により陰極板104と電気接点108との間に直流、又は、パルス電流を流す。これにより、半導体ウエハW上の金属膜は平坦化されながら研磨される。研磨工程中、金属膜の膜厚は測定装置により測定され、金属膜が所望の膜厚となったときに、制御部50を介して研磨工程が停止される。
【0057】
なお、図8に示す電解研磨装置は、触媒を用いた超純水電解研磨として用いることができる。この場合、電解液100の代わりに超純水などの500μS/cmの液体を用い、研磨具105の代わりにイオン交換体を用いる。他の運転方法は、前述の電解研磨と同じである。
【0058】
図9は本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えたドライエッチング装置を示す断面図である。このドライエッチング装置は、真空容器200と、この真空容器200内に所定のガスを供給するガス供給装置201と、真空ポンプ202と、高周波電源203に接続された電極205を備えている。これにより、真空容器200内にガス供給装置201より所定のガスを導入しつつ、排気装置としての真空ポンプ202により排気を行い、真空容器200内を所定の圧力に保ちながら、電極205に高周波電源203から高周波電力を供給し、真空容器200内にプラズマを発生させることで、電極205上に載置された半導体ウエハWに対してエッチング処理を行うように構成されている。
【0059】
電極205の基台206には、本実施形態に係る測定装置を構成するアンテナ40が埋設されており、このアンテナ40から半導体ウエハWに向けてマイクロ波が照射されるようになっている。マイクロ波は半導体ウエハWの上面に形成された金属膜又は非金属膜などの薄膜で反射し、反射したマイクロ波(反射波)はアンテナ40により受信され、導波管41を介して本体部42に送られる。そして、本体部42に内蔵された解析部48(図3参照)により薄膜の膜厚が測定される。本体部42には制御部50が接続されており、この制御部50を介して上記解析部48により測定された膜厚の値に応じて加工レートの制御及び加工の終点検知が行われる。なお、図9に示す測定装置(アンテナ40及び本体部42)は、図3に示す測定装置と同様の構成を有している。また、本発明に係る測定装置は、ドライエッチング装置に限らず、ウエットエッチング装置などの他のエッチング装置にも用いることができる。
【0060】
図10は本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えためっき装置を示す断面図である。
図10に示すように、本実施形態におけるめっき装置は、上方に開口し内部にめっき液301を保持する円筒状のめっき槽302と、半導体ウエハWを着脱自在に下向きに保持する基板テーブル304を有する上下動可能なヘッド部(基板保持部)306とを備えている。めっき槽302の上方は密閉カバー308で覆われており、これによってめっき液301の上方に密閉空間310が形成されている。この密閉空間310は密閉カバー308に取付けられた排気経路312を介して減圧手段としての真空ポンプ314に接続されており、該真空ポンプ314の駆動によって上記密閉空間310内を減圧することが可能となっている。
【0061】
めっき槽302の内部に保持されためっき液301中には、水平に配置された平板状のアノード322が浸漬されている。半導体ウエハWの下面(めっき面)には導電層が形成されており、この導電層はその周縁部にカソード電極との接点を有している。電解めっきにおいては、めっき液中のアノード(陽極電極)322と半導体ウエハWの導電層(陰極電極)との間に所定の電圧を印加することにより、半導体ウエハWの導電層の表面にめっき膜(金属膜)を形成している。
【0062】
めっき槽302の底部中央には、上方に向けためっき液301の噴流を形成するためのめっき液供給手段としてのめっき液噴出管330が設けられている。このめっき液噴出管330はめっき液供給管331を介してめっき液調整タンク334に接続されており、このめっき液供給管331の途中に、二次側の圧力を調整する制御弁335が介装されている。この制御弁335を介してめっき液噴出管330からめっき槽302の内部に所定流量のめっき液301が噴出される。また、めっき槽302の上部外側には、めっき液受け332が配置されており、このめっき液受け332はめっき液戻り管336を介してめっき液調整タンク334に接続されている。めっき液戻り管336の途中にはバルブ337が介装されている。
【0063】
めっき液噴出管330から噴出され、めっき槽302をオーバーフローしためっき液301は、めっき液受け332で回収され、めっき液戻り管336を介してめっき液調整タンク334に流入する。めっき液調整タンク334において、めっき液301の温度調整、各種成分の濃度計測と調整が行われた後、ポンプ340の駆動に伴って、めっき液調整タンク334からフィルタ341を通してめっき液301がめっき液噴出管330に供給される。
【0064】
ヘッド部(基板保持部)306には、本実施形態に係る測定装置を構成するアンテナ40が埋設されており、このアンテナ40から半導体ウエハWに向けてマイクロ波が照射されるようになっている。マイクロ波は半導体ウエハWの下面に形成される金属膜で反射し、反射したマイクロ波(反射波)はアンテナ40で受信された後、導波管41を介して本体部42に送られる。そして、本体部42に内蔵された解析部48(図3参照)により金属膜の膜厚が測定される。本体部42には制御部50が接続されており、この制御部50を介して上記解析部48により測定された膜厚の値に応じて加工レートの制御及び加工の終点検知が行われる。なお、図10に示す測定装置(アンテナ40及び本体部42)は、図3に示す測定装置と同様の構成を有している。
【0065】
図11は本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えたCVD装置を示す断面図である。
図11に示すように、CVD装置は、容器400と、この容器400内に原料ガスを供給するガス供給ヘッド401と、容器400に接続される排気装置としての真空ポンプ402と、半導体ウエハWを加熱する加熱源403とを備えている。半導体ウエハWは加熱源403の上面に載置されている。
【0066】
容器400内には、堆積物の原料としての原料ガスがガス供給ヘッド401から供給され、同時に、加熱源403により半導体ウエハWが加熱される。これにより、原料ガスに励起エネルギーが付与され、半導体ウエハWの上面に生成物(薄膜)が堆積する。生成物の堆積に伴って発生する副生成物は、真空ポンプ402により容器400内から排気される。
【0067】
加熱源403には、本実施形態に係る測定装置を構成するアンテナ40が埋設されており、このアンテナ40から半導体ウエハWに向けてマイクロ波が照射されるようになっている。マイクロ波は半導体ウエハWの上面に形成される薄膜で反射し、反射したマイクロ波(反射波)はアンテナ40で受信され、導波管41を介して本体部42に送られる。そして、本体部42に内蔵された解析部48(図3参照)により半導体ウエハWに堆積した薄膜の膜厚が測定される。本体部42には制御部50が接続されており、この制御部50を介して上記解析部48により測定された膜厚の値に応じて加工レートの制御及び加工の終点検知が行われる。なお、図11に示す測定装置(アンテナ40及び本体部42)は、図3に示す測定装置と同様の構成を有している。
【0068】
図12は本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えたPVD装置を示す断面図である。
図12に示すように、PVD装置(スパッタリング装置)は、容器500と、この容器500内に配置されるターゲット(陰極)501と、このターゲット501に対向して配置される基板保持部(陽極)502と、ターゲット501と基板保持部502との間に電圧を印加する電源503と、容器500内にアルゴンガスを供給するガス供給装置504と、容器500に接続される排気装置としての真空ポンプ505とを備えている。半導体ウエハWは基板保持部502の上面に載置されている。
【0069】
真空ポンプ505により容器500内に高真空が形成され、同時に容器500内にガス供給装置504からアルゴンガスが供給される。電源503によりターゲット501と基板保持部502との間に電圧が印加されると、電界によりアルゴンガスがプラズマ状態となる。アルゴンイオンは電界により加速されてターゲット501に衝突する。ターゲット501を構成する金属原子はアルゴンイオンによってたたき出され、ターゲット501に対向して配置される半導体ウエハWに付着し、これにより、半導体ウエハW上に薄膜が形成される。
【0070】
基板保持部502には、本実施形態に係る測定装置を構成するアンテナ40が埋設されており、このアンテナ40から半導体ウエハWに向けてマイクロ波が照射されるようになっている。マイクロ波は半導体ウエハWの上面に堆積した薄膜で反射し、反射したマイクロ波(反射波)はアンテナ40により受信され、導波管41を介して本体部42に送られる。そして、本体部42に内蔵された解析部48(図3参照)により半導体ウエハW上に堆積した薄膜の膜厚が測定される。本体部42には制御部50が接続されており、この制御部50を介して上記解析部48により測定された膜厚の値に応じて加工レートの制御及び加工の終点検知が行われる。なお、図12に示す測定装置(アンテナ40及び本体部42)は、図3に示す測定装置と同様の構成を有している。
【0071】
次に、エリプソメトリを利用した本発明の第2の実施形態に係る測定方法及び測定装置について説明する。
エリプソメトリとは、被測定物からの反射波の偏波状態の変化を解析することにより、被測定物の厚さ、誘電率、透磁率、導電率、屈折率などを計測する方法である。この原理について図13を参照して説明する。図13に示すように、光線などの電磁波を被測定物Sに斜めに入射させると、電磁波は被測定物Sで反射し、入射波Iと反射波Rとを含む入射面が形成される。入射波Iとして直線偏波を用いた場合、この直線偏波の電界ベクトルEは、入射面に平行なp成分(p偏波)と入射面に垂直なs成分(s偏波)とに分解することができる。直線偏波は被測定物Sに反射してp偏波とs偏波との間で振幅及び位相が変化し、その結果として直線偏波は図13に示すような楕円偏波となる。この振幅及び位相の変化(偏波状態の変化)は被測定物Sの特性(構造)によって異なるため、偏波状態の変化を解析することによって被測定物Sの厚さや屈折率などを測定することができる。
【0072】
このエリプソメトリを利用した測定装置の利点として、次の点が挙げられる。
(i)被測定物は、金属、非金属であってもよく、被測定物の種類に応じて測定装置を代える必要がない。
(ii)上記測定装置を膜厚測定装置としてCMP装置に組み込む場合、研磨パッドに光路のための通孔を設ける必要がなく、研磨プロセスに影響を与えない。
(iii)直線偏波に振幅変調をかけることにより、計測速度を例えば1msecにまで高速にすることができる。
(iv)発信源にレーザを使用しないので、測定装置のメンテナンスが容易になる。
【0073】
次に、本実施形態に係る測定方法および測定装置について詳細に説明する。
被測定物に照射される電磁波としてはマイクロ波が用いられる。より好ましくは、周波数帯域が30〜300GHz、波長が10〜1mmであるミリ波が用いられる。また、S/Nを高めるため、及び高速計測のために、振幅変調した電磁波を用いることが好ましい。本実施形態では、被測定物に照射される電磁波は直線偏波または円偏波であり、これらは被測定物に対して斜めに入射される。直線偏波の場合は、電界ベクトルの方向が入射面に垂直な面に対して右回りまたは左回りに45度傾けられたものを用いる。
【0074】
一般に、エリプソメトリ法では、反射波を受信する受信検出器(受信アンテナ及び検出器)をその軸心回りに例えば2度間隔で0度から360度まで回転させることで各方位(角度)における反射波(楕円偏波)の振幅及び位相を検出する。しかしながら、この方法では、計測時間が長くなるという問題がある。そこで、本実施形態では、受信検出器を2つ用い、受信方位を0度及び45度に固定する。受信アンテナは偏波依存性の高いものが使用され、0度方位及び45度方位にある楕円偏波の直線偏波成分が2つの受信アンテナによって受信される。そして、以下の計算式によって反射波(楕円偏波)のp偏波の反射係数とs偏波の反射係数との比を算出する。
【0075】
p偏波の反射係数Rp=|Rp|・exp(j・φp)・・・(1)
s偏波の反射係数Rs=|Rs|・exp(j・φs)・・・(2)
p偏波の反射係数RpとS偏波の反射係数Rsとの比は次の式で定義される。
RP/RS=|RP/RS|・exp(j・(φP−φS))・・・(3)
≡tanΨ・exp(jΔ)
tanΨ:振幅比 Δ:位相差
【0076】
このように、p偏波の反射係数とs偏波の反射係数との比RP/RSはΨ(プサイ)及びΔ(デルタ)によって表すことができる。そして、Ψ及びΔは入射角や被測定物の厚さなどによって決定されるので、Ψ及びΔを測定すれば、逆推定により被測定物の厚さ、誘電率、透磁率、導電率、屈折率などを求めることができる。
【0077】
次に、本実施形態に係る測定装置について図14を参照して説明する。図14は本発明の第2の実施形態に係る測定装置を示す概略図である。なお、本実施形態は、測定装置をCMP装置に組み込んだ例を示すものであり、特に説明しないCMP装置の構成及び動作は図2に示す研磨装置と同様である。
【0078】
図14に示すように、測定装置は、ミリ波を発生させるミリ波源60と、ミリ波の振幅を変調させる振幅変調器61と、ミリ波源60で発生したミリ波を直線偏波に変換する偏波器62と、直線偏波を半導体ウエハWに照射する送信アンテナ(照射手段)63と、半導体ウエハWから反射した楕円偏波を受信する2個の受信アンテナ64A,64Bと、2個の受信アンテナ64A,64Bにそれぞれ接続される2つの検出器65A,65Bと、検出器65A,65Bからの信号を増幅させるプリアンプ66と、ノイズを含む信号から所定の信号を検出するロックインアンプ67と、ロータリジョイント70と、検出信号を解析して半導体ウエハWの膜厚などを求める解析装置71とを備えている。
【0079】
送信アンテナ63は研磨テーブル20の中に配置されており、トップリング30に保持された半導体ウエハWの中心部に近接して配置されている。直線偏波(ミリ波)は送信アンテナ63から研磨パッド10上の半導体ウエハWに向けて斜めに照射される。直線偏波は研磨パッド10に斜めに入射し、研磨パッド10を通過して半導体ウエハWに到達する。被測定物は、研磨パッド10と、半導体ウエハWの下面に形成された多層薄膜である。測定対象となる薄膜としては、例えば、絶縁膜(SiO2,Poly−Si)、金属膜(Cu,W(タングステン))、バリヤ膜(Ti,TiN,Ta,TaN)などが挙げられる。
【0080】
ミリ波源60としては、Gunn発振器、またはGunn発振器とマルチプライヤとを組み合わせたものが用いられる。あるいは、ミリ波源60としてマイクロ波発振器とマルチプライヤとを組み合わせたものを用いてもよい。偏波器62としては、偏波依存性を持つ導波管を使用する。被測定物に照射する直線偏波の指向性を高めるために、送信アンテナ63としてピラミダルホーンアンテナを用いることが好ましい。直線偏波に代えて円偏波を用いる場合には、受信アンテナ64A,64Bとしてコニカルホーンアンテナを用いる。検出器65A,65Bとしては、ショットキー・バリヤー・ビーム・リード・ダイオードを用いたものや、ミキサーとショットキー・バリヤー・ビーム・リード・ダイオードとの組み合わせたものを用いる。
【0081】
入射波と反射波とを含む入射面に対して垂直な方向をX軸とすると、半導体ウエハWに照射されるミリ波は、その電界ベクトルの方向が進行方向に垂直な面内でX軸に対して右回りまたは左回りに45度傾いている直線偏波である。なお、半導体ウエハWに照射されるミリ波として円偏波を用いてもよい。この場合は、上述した偏波器62に代えて円偏波器が用いられる。
【0082】
直線偏波は1個の送信アンテナ63から半導体ウエハWに斜めに照射され、その表面および多層薄膜の各界面で反射する。半導体ウエハWからの反射波は2個の受信アンテナ64A,64Bによって受信される。この受信アンテナ64A,64BはX軸に対して方位角0度,45度にそれぞれ傾けられ、方位角0度,45度における楕円偏波の直線偏波成分が各検出器65A,65Bによって検出される。このように受信アンテナ64A,64B及び検出器65A,65Bをそれぞれ2つ用いることで、p偏波の振幅とs偏波の振幅との比Ψ、及びp偏波とs偏波との間の位相差Δを研磨中に同時に検出することができる。検出された信号は、プリアンプ66、ロックインアンプ67、及びロータリジョイント70を経由して解析装置71に送られる。そして、解析装置71によってΨ及びΔの値に基づいてニュートン法などを用いて半導体ウエハW上の膜厚が求められ、膜厚と相関関係がある指標を用いて研磨工程の終点を求める。
【0083】
このように、p偏波の振幅とs偏波の振幅との比Ψ、及びp偏波とs偏波との間の位相差Δを同時に測定することで、研磨パッド10の減少量や研磨によるウエハ上の酸化膜や金属膜などの薄膜の厚みの減少量を求めることができる。また、位置が固定された2つの受信アンテナ64A,64Bを用いることで、Ψ及びΔの両パラメータの検出精度を上げることができる。なお、4つの受信アンテナを方位角90度、45度、0度、−45度にそれぞれ傾けた状態で配置してもよい。この場合も、それぞれの受信アンテナに4つの検出器を接続する。これら4つの受信アンテナ及び4つの検出器を備えることで、差動検出により同相成分(ノイズを含む)を除去できるため、S/N比を向上させることができる。また、差動出力を和信号で割り算することにより、電磁波強度の変動や半導体ウエハWの反射率の変動を相殺することができる。
【0084】
上述したように、被測定物からの反射波の偏波状態を解析することで、ドレッシング(コンディショニング)による研磨パッド10の厚みの変化や、誘電体である酸化膜の厚みの変化、金属膜の厚みの変化を研磨中に測定することができる。本実施形態では、研磨パッドも被測定物の一つであるが、研磨パッドはウレタン発泡体であるのでミリ波は研磨パッドを透過することができる。したがって、研磨パッド越しの多層薄膜の厚さを測定することができる。本実施形態の測定装置の被測定対象物は、絶縁膜(SiO2,Poly−Si)、金属膜(Cu,W(タングステン))、バリヤ膜(Ti,TiN,Ta,TaN)などである。例えば、周波数100GHzのミリ波を用いる場合、以下の式により厚さが225nm以下Cu膜の厚さが測定可能である。
【数1】
μ:透磁率 σ:導電率
【0085】
従来の光学式の測定装置は、Cu膜の厚さが30nm以下であれば測定することができる。しかしながら、半導体製造工程が進むにつれて多層膜の厚さが厚くなる。したがって、研磨工程を制御するためには、膜厚が厚くなった場合であってもこの膜厚を測定することが必要となる。かかる観点からも、本実施形態の測定装置は従来の光学式の測定装置よりも優位性を持っている。
【0086】
このように、本発明に係る測定装置は、研磨装置のみならず、半導体ウエハの表面に金属膜や非金属膜を形成するめっき装置、CVD装置、PVD装置などにも用いることができる。
【0087】
本発明によれば、従来にはなかった全く新しい手法により、物質の構造を測定することが可能となる。特に、半導体ウエハ上に形成されたCu、Al、Au、Wなどの金属膜、SiOCなどのバリヤ下膜、Ta、TaN、Ti、TiN、WNなどのバリヤ膜、SiO2などの酸化膜、多結晶シリコン、BPSG膜(boro phospho silicate glass)、又はTEOS膜(tetra ethoxy silane)などの膜厚を測定することができる。また、研磨加工終点を正確に測定しつつ研磨が行える(in-situ)ので、研磨工程を一旦停止して膜厚を測定する従来の方法(ex-situ)に比べてトータルのプロセス工数を短縮することができる。また、シャロートレンチ(STI)、層間絶縁膜(ILD、IMD)、Cu、W等が成膜された基板に対して研磨を行うCMP装置やこれらを成膜するめっき装置、CVD装置において、すべてのプロセスに対してプロセス終点を検出することが可能となる。
【0088】
以上説明したように、本発明によれば、測定すべき物質とマイクロ波照射手段との間に障害物(例えば研磨パッド)が存在しても、マイクロ波はこの障害物を透過(貫通)して物質(例えば基板)に到達するので、障害物に通孔などの透過窓を設ける必要がない。したがって、障害物に透過窓を形成するための加工が不要となり、製作コストを低減することができる。また、本発明によれば、研磨液などの影響を受けることなく物質の厚さなどを良好に測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、半導体ウエハなどの基板の表面に形成された薄膜の厚みなどを測定する測定装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1Aは本発明に係る測定装置の原理について説明するための図であり、図1Bは反射波の振幅と膜厚との関係を説明するためのグラフ図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えた研磨装置を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る測定装置を示す概略図である。
【図4】図4Aは図2に示す研磨装置の概略平面図であり、図4Bは半導体ウエハの被研磨面を示す模式図である。
【図5】図5Aは半導体ウエハの被研磨面の各領域における膜厚の測定値の経時的変化を示すグラフ図であり、図5Bは膜厚の測定値の集束範囲を説明するための図である。
【図6】膜厚の経時的変化(研磨レート)を示すグラフ図である。
【図7】図7Aは本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えた研磨装置の他の構成例を示す断面図であり、図7Bは図7Aに示すトップリングの拡大断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えた電解研磨装置を示す断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えたドライエッチング装置を示す断面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えためっき装置を示す断面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えたCVD装置を示す断面図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えたPVD装置を示す断面図である。
【図13】エリプソメトリの原理を説明するための図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る測定装置を備えた研磨装置を示す概略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質の厚さなどを測定する測定装置に係り、特に半導体ウエハなどの基板の表面に形成された薄膜の厚さなどを測定する測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体デバイスの高集積化に伴う配線の微細化及び多層化の要求によって、半導体ウエハなどの基板の表面の平坦化が要求されている。即ち、配線の微細化によって、光リソグラフィに用いる光の波長としてより短いものを使用するようになり、このような短波長の光は基板上の焦点位置での許容される高低差がより小さくなる。したがって、焦点位置での高低差が小さいこと、即ち基板表面の高い平坦度が必要となってくる。このため、化学機械研磨(CMP)により半導体ウエハの表面の凹凸を除去してその表面を平坦化することが行われている。この化学機械研磨を行うCMP装置では、研磨対象となる半導体ウエハを研磨パッドに押圧し、研磨パッドの上面に研磨液を供給しながら半導体ウエハを研磨パッドに摺接することで研磨が行われる。
【0003】
上記化学機械研磨においては、所定時間の研磨を行った後に所望の位置で研磨を終了する必要がある。例えば、CuやAlなどの金属配線の上部にSiO2等の絶縁層(この後の工程で絶縁層の上に更に金属などの層を形成するため、このような絶縁層は層間膜と呼ばれる。)を残したい場合がある。このような場合、研磨を必要以上に行うと下層の金属膜が表面に露出してしまうので、層間膜を所定の膜厚だけ残すように研磨を終了する必要がある。
【0004】
また、半導体ウエハ上に予め所定パターンの配線用の溝を形成しておき、その中にCu(又はCu合金)を充填した後に、表面の不要部分を化学機械研磨(CMP)により除去する場合がある。Cu層をCMPプロセスにより研磨する場合、配線用溝の内部に形成されたCu層のみを残して半導体ウエハからCu層を選択的に除去することが必要とされる。即ち、配線用の溝部以外の箇所では、SiO2などからなる絶縁膜(非金属膜)が露出するまでCu層を除去することが求められる。
【0005】
この場合において、過剰研磨となって、配線用の溝内のCu層を絶縁膜と共に研磨してしまうと、回路抵抗が上昇し、半導体ウエハ全体を廃棄しなければならず、多大な損害となる。逆に、研磨が不十分で、Cu層が絶縁膜上に残ると、回路の分離がうまくいかず、短絡が起こり、その結果、再研磨が必要となり、製造コストが増大する。このような事情は、Cu層に限らず、Al層等の他の金属膜を形成し、この金属膜をCMPプロセスで研磨する場合も同様である。
【0006】
このため、従来から、光学式センサを有する測定装置を用いて、被研磨面に形成された絶縁層(絶縁膜)や金属層(金属膜)の膜厚を測定し、CMPプロセスの加工終点を検出することがなされている。この種の測定装置では、研磨中にレーザービームや白色光を半導体ウエハに照射し、半導体ウエハ上に成膜された絶縁膜や金属膜からの反射光を測定することで研磨工程の終点を検知する。また、他のタイプの測定装置では、研磨中に可視光線を半導体ウエハに照射し、半導体ウエハ上に成膜された絶縁膜や金属膜からの反射光を分光器で解析することで研磨工程の終点を検知する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した測定装置では、光源と半導体ウエハWとの間に研磨パッドなどの障害物があると、光源から照射されるレーザービームや可視光線を半導体ウエハWに到達させることができない。したがって、レーザービームや可視光線を透過させるための透過窓(通孔又は透明な窓)を研磨パッドに設ける必要がある。このため、研磨パッドの加工工程数が増え、消耗品としての研磨パッドのコストが高くなる。また、上記測定装置では、半導体ウエハからの反射光が不安定であり、正確な膜厚測定が難しいという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、障害物に通孔などの透過窓を設けることなく、物質の厚さなどの構造を精度良く測定することができる測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、物質にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と、前記マイクロ波照射手段にマイクロ波を供給するマイクロ波源と、前記物質から反射した、又は前記物質を透過したマイクロ波の振幅又は位相を検出する検出手段と、前記検出手段により検出されたマイクロ波の振幅又は位相に基づいて前記物質の構造を解析する解析手段とを備えたことを特徴とする測定装置である。
【0010】
本発明の好ましい一態様は、前記解析手段は、前記物質の反射係数、定在波比、および表面インピーダンスの少なくとも1つを算出することを特徴とする。
本発明の好ましい一態様は、前記解析手段は、前記物質の厚さ、内部欠陥、誘電率、導電率、および透磁率の少なくとも1つを解析することを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様は、基板を研磨パッドに摺接させて前記基板を研磨する研磨装置において、前記研磨パッドを有する研磨テーブルと、前記基板を保持して前記研磨パッドに押圧するトップリングと、前記基板上に形成された膜の厚さを測定する測定装置とを備え、前記測定装置は、前記膜にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と、前記マイクロ波照射手段にマイクロ波を供給するマイクロ波源と、前記膜から反射した、又は前記膜を透過したマイクロ波の振幅又は位相を検出する検出手段と、前記検出手段により検出されたマイクロ波の振幅又は位相に基づいて前記膜の厚さを測定する解析手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい一態様は、複数の前記マイクロ波照射手段を前記トップリングに埋設し、複数の前記マイクロ波照射手段のうちの1つを前記基板の中心部に対応する位置に配置し、他の前記マイクロ波照射手段を前記基板の中心部から半径方向において離間した位置に配置したことを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい一態様は、渦電流センサ、光学センサ、前記研磨パッドと前記基板との間の摩擦力を検知する摩擦検知センサ、及び、前記トップリング又は前記研磨テーブルのトルクを測定するトルクセンサの少なくとも1つを更に備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様は、基板の表面に膜を成膜するCVD装置において、内部に基板が配置される容器と、前記容器に原料ガスを供給するガス供給手段と、前記基板を加熱するヒータと、前記基板上に形成された膜の厚さを測定する測定装置とを備え、前記測定装置は、前記膜にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と、前記マイクロ波照射手段にマイクロ波を供給するマイクロ波源と、前記膜から反射した、又は前記膜を透過したマイクロ波の振幅又は位相を検出する検出手段と、前記検出手段により検出されたマイクロ波の振幅又は位相に基づいて前記膜の厚さを測定する解析手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の他の態様は、物質に直線偏波又は円偏波を照射する照射手段と、前記物質からの反射波を受信する少なくとも2つの受信手段と、前記物質からの反射波の振幅及び位相を検出する少なくとも2つの検出手段と、前記検出手段により検出された反射波の振幅及び位相に基づいて反射波の偏波状態の変化を解析して前記物質の厚さを測定する解析手段とを備えたことを特徴とする測定装置である。
【0016】
本発明の好ましい態様は、前記解析装置は、前記物質の誘電率、導電率、透磁率、および屈折率を更に測定することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記物質は多層膜であることを特徴とする。
【0017】
本発明の他の態様は基板を研磨パッドに摺接させて前記基板を研磨する研磨装置において、前記研磨パッドを有する研磨テーブルと、前記基板を保持して前記研磨パッドに押圧するトップリングと、前記基板の表面に形成された物質の厚さを測定する測定装置とを備え、前記測定装置は、物質に直線偏波又は円偏波を照射する照射手段と、前記物質からの反射波を受信する少なくとも2つの受信手段と、前記物質からの反射波の振幅及び位相を検出する少なくとも2つの検出手段と、前記検出手段により検出された反射波の振幅及び位相に基づいて反射波の偏波状態の変化を解析して前記物質の厚さを測定する解析手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明の好ましい態様は、前記照射手段は前記研磨テーブル内に配置されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記物質は多層膜であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、測定すべき物質とマイクロ波照射手段との間に障害物(例えば研磨パッド)が存在しても、マイクロ波はこの障害物を透過(貫通)して物質(例えば基板)に到達するので、障害物に通孔などの透過窓を設ける必要がない。したがって、障害物に透過窓を形成するための加工が不要となり、製作コストを低減することができる。また、本発明によれば、研磨液などの影響を受けることなく物質の厚さなどを良好に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の測定装置の実施形態について図面を参照して説明する。
図1Aは本発明に係る測定装置の原理について説明するための図である。
図1Aに示すように、被測定物である物質Sにマイクロ波(入射波I)を照射すると、物質Sの表面からマイクロ波が反射する。物質Sから反射したマイクロ波(以下、反射波Rという)は、物質Sの構造(厚さや物性など)に依存した振幅や位相を有している。したがって、反射波Rの振幅及び位相の少なくとも1つを検出することによって、物質Sの構造を解析することができる。ここで、物質の構造としては、物質の厚さ、空隙などの内部欠陥、誘電率、導電率、透磁率などが挙げられる。
【0021】
例えば、研磨又はめっきなど工程に伴って物質Sの厚さが変化すると、この物質Sからの反射波Rの振幅は、物質Sの厚さに依存して変化する。したがって、物質Sからの反射波Rの振幅を検出することによって物質Sの厚さの変化が監視できる。この場合、物質Sの厚さと反射波Rの振幅との関係を予めデータとして保有しておけば、物質Sからの反射波Rの振幅を測定することによって物質Sの絶対的な厚さを測定することができる。
【0022】
マイクロ波は電磁波の一種であり、ここでは、周波数帯域が300MHz〜300GHz、波長が1m〜1mmの電磁波をいう。反射波Rから読み取ることができる情報としては振幅及び位相があり、この振幅及び位相から反射係数(入射波Iに対する反射波Rの振幅の比)、物質の表面インピーダンス(物質の表面に依存したインピーダンス)、定在波比(伝送線路上の電圧の最大値と最小値との比)などの各種情報を得ることができる。また、入射波Iの周波数(f)と反射波Rの周波数(f±Δf)との間に変化が生じた場合、この周波数の変化量(Δf)は物質の厚さなどの構造に比例すると考えられるため、周波数の変化量を測定することによっても物質Sの構造を解析することができる。
【0023】
次に、図1Bを参照して反射波の振幅と物質の厚さとの関係を説明する。図1Bは、異なる膜厚(th1<th2<th3)を有する3つの多結晶シリコンにマイクロ波を照射し、それぞれの多結晶シリコンからの反射波の振幅を測定した結果を示すグラフ図である。なお、振幅を示す単位として電力(dbm)を使用している。
【0024】
図1Bから、多結晶シリコンの膜厚が薄い場合は振幅が小さく、多結晶シリコンの膜厚が厚い場合は振幅が大きくなることが分かる。このように、マイクロ波(反射波)の振幅と物質の厚さとの間にはほぼ一定の関係が成立するため、マイクロ波(反射波)の振幅を検出することによって物質の厚さを測定することができる。
【0025】
物質Sに照射するマイクロ波は単一の周波数を有するものに限らず、異なる周波数を重畳させたマイクロ波でもよく、周波数可変手段を用いて周波数を時間的に変化させてもよい。マイクロ波の周波数は、物質Sの種類に応じて適宜選択することが好ましい。これによって、物質Sの構造を正確に検知することができる。さらに、マイクロ波は物質Sを透過(貫通)するので、反射波Rだけでなく、物質Sを透過したマイクロ波(以下、透過波Pという)によっても物質Sの構造を検知することができる。
【0026】
マイクロ波を用いた測定装置の利点として次の点が挙げられる。
(1)マイクロ波の伝達媒体は空気でよい。
(2)非接触および非破壊で物質の特性を評価することができる。
(3)検知距離が長い(マイクロ波を用いた測定装置による検知距離が35mmであるのに対して、渦電流センサを用いた検知距離は最大で4mm)。ここで、検知距離とは、アンテナ(マイクロ波照射手段)と物質との間の距離をいい、要求される検知感度を考慮して適切な検知距離が決定される。
(4)アンテナと物質との間に障害物があっても、マイクロ波はこの障害物を透過(貫通)して物質に到達するので、障害物に通孔などを形成する必要がない。
(5)一般に、アンテナは小型であるので、測定装置をCMP装置などに容易に組み入れることができる。
(6)集束センサなどを用いて物質の微小領域にマイクロ波を集束することができるため、物質の厚さなどを精密に測定することができる。
【0027】
次に、本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えた研磨装置(CMP装置)について図2を参照して説明する。図2は本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えた研磨装置を示す断面図である。
【0028】
図2に示すように、研磨装置は、上面に研磨パッド10が貼設された研磨テーブル20と、被研磨物である半導体ウエハ(基板)Wを保持して研磨パッド10の上面に押圧するトップリング30とを備えている。研磨パッド10の上面は、被研磨物である半導体ウエハWと摺接する研磨面を構成している。なお、微細な砥粒(CeO2等からなる)を樹脂等のバインダで固めた固定砥粒板の上面を研磨面として構成することもできる。
【0029】
研磨テーブル20は、その下方に配置されるモータ21に連結されており、矢印で示すようにその軸心回りに回転可能になっている。また、研磨テーブル20の上方には研磨液供給ノズル22が設置されており、この研磨液供給ノズル22から研磨パッド10上に研磨液Qが供給されるようになっている。
【0030】
トップリング30は、トップリングシャフト31に連結されており、このトップリングシャフト31を介してモータ及び昇降シリンダ(図示せず)に連結されている。これによりトップリング30は、矢印で示すように昇降可能且つトップリングシャフト31回りに回転可能となっている。また、トップリング30はその下面にポリウレタン等の弾性マット32を備えており、この弾性マット32の下面に、被研磨物である半導体ウエハWが真空等によって吸着、保持される。なお、トップリング30の下部外周部には、半導体ウエハWの外れ止めを行うガイドリング33が設けられている。
【0031】
このような構成により、トップリング30は自転しながら、その下面に保持した半導体ウエハWを研磨パッド10に対して任意の圧力で押圧することができるようになっている。そして、研磨パッド10と半導体ウエハWとの間に研磨液Qを存在させた状態で、半導体ウエハWの被研磨面(下面)が平坦に研磨される。
【0032】
研磨テーブル20には、マイクロ波を半導体ウエハWの被研磨面に向けて照射するアンテナ(マイクロ波照射手段)40が埋設されている。このアンテナ40は、トップリング30に保持された半導体ウエハWの中心位置に配置されており、導波管41を介して本体部(ネットワークアナライザ)42に接続されている。
【0033】
図3は本発明の第1の実施形態に係る測定装置を示す概略図である。
図3に示すように、本発明に係る測定装置は、アンテナ40と、導波管41を介してアンテナ40に接続される本体部42とを備えている。なお、導波管41は短い方が好ましく、アンテナ40と本体部42とを一体的に構成してもよい。本体部42は、マイクロ波を生成してアンテナ40にマイクロ波を供給するマイクロ波源45と、マイクロ波源45により生成されたマイクロ波(入射波)と半導体ウエハWの被研磨面から反射したマイクロ波(反射波)とを分離させる分離器46と、分離器46により分離された反射波を受信して反射波の振幅及び位相を検出する検出部47と、検出部47により検出された反射波の振幅及び位相に基づいて半導体ウエハWの構造を解析する解析部48とを備えている。なお、分離器46としては、方向性結合器が好適に用いられる。
【0034】
アンテナ40は導波管41を介して分離器46に接続されている。マイクロ波源45は分離器46に接続され、マイクロ波源45により生成されたマイクロ波は、分離器46および導波管41を介してアンテナ40に供給される。マイクロ波はアンテナ40から半導体ウエハWに向けて照射され、研磨パッド10を透過(貫通)して半導体ウエハWに到達する。半導体ウエハWからの反射波は再び研磨パッド10を透過した後、アンテナ40により受信される。
【0035】
反射波はアンテナ40から導波管41を介して分離器46に送られ、分離器46によって入射波と反射波とが分離される。分離器46には検出部47が接続されており、分離器46により分離された反射波は検出部47に送信される。検出部47では反射波の振幅及び位相が検出される。反射波の振幅は電力(dbm又はW)もしくは電圧(V)の値として検出され、反射波の位相は検出部47に内蔵された図示しない位相計測器により検出される。なお、位相計測器を設けずに反射波の振幅のみを検出部で求めるようにしてもよく、また、反射波の位相のみを位相計測器で求めるようにしてもよい。
【0036】
解析部48では、検出部47によって検出された反射波の振幅及び位相に基づいて半導体ウエハW上に成膜された金属膜や非金属膜などの膜厚が解析される。解析部48には制御部50が接続されており、解析部48で得られた膜厚の値に基づいて研磨工程の終点が制御部50によって検知される。
【0037】
なお、マイクロ波のスポット径を集束させる集束センサをアンテナ40に設けてもよい。これによって、アンテナ40から照射されるマイクロ波を半導体ウエハW上の微小領域に照射することができる。また、アンテナ40と半導体ウエハWとの距離(検知距離)は、測定感度の観点から短い方が好ましいが、マイクロ波源45の出力を上げることにより、測定感度を保ちつつ検知距離を長くすることもできる。
【0038】
半導体ウエハWに照射されるマイクロ波の周波数は、半導体ウエハW上に成膜された物質(金属膜又は非金属膜)の種類に応じて適宜選択することが好ましい。この場合、異なる周波数のマイクロ波を生成する複数のマイクロ波源を設け、物質の種類に応じて使用すべきマイクロ波源を切り替えるようにしてもよい。また、マイクロ波源45に周波数可変手段を設けてマイクロ波の周波数を変化させるようにしてもよい。なお、周波数可変手段は、例えば、関数発生器を用いて周波数を変化させる構成とすることができる。
【0039】
図4Aは図2に示す研磨装置の概略平面図であり、図4Bは半導体ウエハの被研磨面を示す模式図である。図5Aは半導体ウエハの被研磨面の各領域における膜厚の測定値の経時的変化を示すグラフ図であり、図5Bは膜厚の測定値の集束範囲を説明するための図である。
【0040】
本実施形態では、図4B示すように、半導体ウエハWの中心部を含む5つの領域Z1,Z2,Z3,Z4,Z5における膜厚が測定される。図4Aに示すように、トップリング30及び研磨テーブル20は互いに独立して回転するため、半導体ウエハWに対するアンテナ40の位置が研磨工程中に変化する。このような場合でも、アンテナ40は半導体ウエハWの中心位置に配置されているため、このアンテナ40は研磨テーブル20の回転に伴って必ず半導体ウエハWの特定の領域、すなわち半導体ウエハWの中心部に位置する領域Z3を通ることになる。したがって、半導体ウエハWの定点(中心部の領域Z3)における膜厚が監視され、正確な研磨レートを得ることができる。
【0041】
図5Aに示すように、各領域Z1,Z2,Z3,Z4,Z5における膜厚の測定値(膜厚値)M1,M2,M3,M4,M5は、研磨工程が進むにつれて次第に集束する。また、図5Bに示すように、制御部50(図2及び図3参照)には、領域Z3における膜厚の測定値M3に対して所定の上限値U及び下限値Lが設定されている。そして、制御部50は、領域Z1,Z2,Z3,Z4,Z5における膜厚の測定値が、上限値Uから下限値Lまでの範囲内に総て集束したときは、半導体ウエハWの被研磨面全体が均一に研磨されたと判断するようになっている。このように、各領域における膜厚の測定値が所定の範囲内に集束した後に研磨工程を終了させることにより、平坦な被研磨面を確保することができる。なお、半導体ウエハW上の膜が所望の厚さとなった場合には、制御部50により研磨工程が停止される。
【0042】
ここで、研磨工程の経過時間に基づいて研磨工程の終点を決定することもできる。この例について図6を参照して説明する。図6は膜厚の経時的変化(研磨レート)を示すグラフ図である。
図6に示すように、研磨工程開始後、ある程度時間が経過すると、膜厚の変化が微小となる。制御部50(図2及び図3参照)は膜厚の変化が微小となった時点(t1)を検知して基準時間T1(t0〜t1)を設定する。さらに、基準時間T1に所定の係数を加算、減算、乗算、又は除算(四則演算)することにより補助時間T2(t1〜t2)を求める。そして、制御部50は、基準時間T1に補助時間T2を加算した時間(T1+T2)を経過した時(t2)に、研磨工程を終了させる。
【0043】
このようにすることで、研磨レートの変化が微小であるために加工終点の検知が困難な場合でも、基準時間T1および補助時間T2を求めることによって、研磨工程の終点を決定することができる。なお、上記係数は、金属膜や非金属膜の種類から決定されることが好ましい。
【0044】
ここで、研磨テーブル20に、研磨パッド10の温度を調整する温度調整手段を設けることもできる。例えば、研磨テーブル20の上面に流体流路を形成し、この流体流路に高温の流体又は低温の流体を供給するように構成してもよい。この場合、制御部50は、測定装置の測定値に基づいて流体の供給を制御するようにすることが好ましい。このような構成によれば、研磨液Qと金属膜又は非金属膜との化学反応が促進又は抑制され、研磨レートを制御することができる。また、制御部50は、測定装置の測定値に基づいて研磨テーブル20及びトップリング30の相対速度を制御するようにしてもよい。
【0045】
また、研磨テーブル20の上部に、研磨パッド10と半導体ウエハWとの間に生じる摩擦力を検出する応力センサ(摩擦検知センサ)を配置することが好ましい。或いは、トップリング30又は研磨テーブル20のトルクを測定するトルクセンサを設けることが好ましい。この場合、トルクセンサとしては、トップリング30又は研磨テーブル20を回転させるモータの電流を測定する電流センサが好適に用いられる。一般に、半導体ウエハWの被研磨面が平坦に研磨されると、研磨パッド10と半導体ウエハWとの間に生じる摩擦力は小さくなる。したがって、応力センサやトルクセンサの出力値が所定の値以下にまで低下した後に制御部50を介して研磨工程を終了させれば、半導体ウエハWの被研磨面の平坦度を確保することができる。なお、本実施形態に係る測定装置に加えて、半導体ウエハに成膜された金属膜の膜厚を計測する渦電流センサ又は光学センサなどを設けてもよい。
【0046】
図7Aは第1の実施形態に係る測定装置を備えた研磨装置の他の構成例を示す断面図であり、図7Bは図7Aに示すトップリングの拡大断面図である。なお、特に説明しない構成及び動作については、図2に示す研磨装置と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0047】
図7Aに示す研磨装置においては、複数のアンテナ40A,40B,40C,40D,40Eがトップリング30に設けられており、それぞれのアンテナ40A,40B,40C,40D,40Eからマイクロ波が半導体ウエハWに向けて照射される。これらのアンテナ40A,40B,40C,40D,40Eは、本体部42(図2参照)にそれぞれ接続されている。
【0048】
図7Bに示すように、アンテナ40Cは半導体ウエハWの中心部に配置されている。アンテナ40B,40Dは、アンテナ40C(半導体ウエハWの中心)から半径方向に距離dだけ離間した位置にそれぞれ配置され、アンテナ40A,40Eは、アンテナ40B,40Dから半径方向に距離dだけ離間した位置にそれぞれ配置されている。このように、アンテナ40B,40D及びアンテナ40A,40Eは、半導体ウエハWの半径方向において互いに異なる位置に配置されている。
【0049】
図7Aに示す研磨装置においても、各アンテナ40A,40B,40C,40D,40Eによって半導体ウエハWの5つの領域Z1,Z2,Z3,Z4,Z5(図4B参照)における膜厚が測定される。なお、トップリング30及び研磨テーブル20の両方にアンテナを設けることもできる。この場合には、一方の側に配置されたアンテナから半導体ウエハWに向けてマイクロ波を照射し、反対側に配置されたアンテナにより半導体ウエハWを透過(貫通)したマイクロ波(透過波)を受信させる。そして、透過波の振幅及び位相を計測することで半導体ウエハW上の薄膜の膜厚を測定することができる。
【0050】
アンテナの設置場所は、研磨テーブル20やトップリング30に限定されず、例えば、ガイドリング33に設置することもできる。この場合、上記測定装置を、半導体ウエハWのトップリング30からの飛び出しを検知するセンサとして使用することもできる。また、研磨テーブル20の径方向外側にアンテナを設置してもよい。この場合には、研磨工程中及び研磨工程後にトップリング30の一部を研磨テーブル20からはみ出させ(オーバーハングさせ)、アンテナから半導体ウエハWの下面(被研磨面)にマイクロ波を照射する。
【0051】
図8は本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えた電解研磨装置を示す断面図である。
図8に示すように、電解研磨装置は、上方に開口して内部に電解液100を保持する電解槽101と、電解槽101の上方に配置され半導体ウエハWを着脱自在に下向きに保持する基板保持部102とを有している。電解槽101は有底円筒状の形状を有している。
【0052】
電解槽101は、モータ(図示せず)の駆動に伴って回転する軸部103に直結され、底部には、電解液100中に浸漬されてカソードとなる平板状の陰極板(加工電極部)104が水平に配置されている。この陰極板104の上面には、不織布タイプの研磨具105が貼り付けられている。軸部103の回転に伴って電解槽101及び研磨具105は一体に回転するようになっている。
【0053】
基板保持部102は、回転速度が制御可能な回転機構と研磨圧力が調整可能な上下動機構とを備えた支持ロッド107の下端に連結され、この下面に、例えば真空吸着方式で半導体ウエハWを吸着保持するようになっている。
【0054】
基板保持部102には、半導体ウエハWの表面に形成された金属膜を陽極(アノード)にする電気接点(給電電極)108が設けられている。この電気接点108は、支持ロッド107に内蔵されたロール摺動コネクタ(図示せず)および配線109aにより電源としての整流器110の陽極端子へ結線され、陰極板104は、配線109bを介して整流器110の陰極端子に結線される。電解槽101の上方に位置して、この内部に電解液100を供給する電解液供給部111が配置されている。
【0055】
基板保持部102には、本実施形態に係る測定装置を構成するアンテナ40が埋設されており、このアンテナ40から半導体ウエハWに向けてマイクロ波が照射されるようになっている。マイクロ波は半導体ウエハWの下面に形成された金属膜で反射し、反射したマイクロ波(反射波)はアンテナ40により受信され、導波管41を介して本体部42に送られる。そして、本体部42に内蔵された解析部48(図3参照)により金属膜の膜厚が測定される。本体部42には制御部50が接続されており、この制御部50を介して上記解析部48により測定された膜厚の値に応じて研磨レートの制御及び研磨加工の終点検知が行われる。なお、図8に示す測定装置(アンテナ40及び本体部42)は、図3に示す測定装置と同様の構成を有している。
【0056】
この電解研磨装置における研磨動作について説明する。
電解液供給部111から電解槽101内に電解液100を供給し、この電解液100が電解槽101からオーバーフローする状態で電解槽101と研磨具105とを一体に回転させる。一方、Cu膜などの金属膜が形成された半導体ウエハWを基板保持部102で下向きに吸着保持しておく。この状態で、半導体ウエハWを電解槽101とは反対方向に回転させながら下降させ、この半導体ウエハWの下面を、所定の圧力で研磨具105の表面に接触させ、同時に、整流器110により陰極板104と電気接点108との間に直流、又は、パルス電流を流す。これにより、半導体ウエハW上の金属膜は平坦化されながら研磨される。研磨工程中、金属膜の膜厚は測定装置により測定され、金属膜が所望の膜厚となったときに、制御部50を介して研磨工程が停止される。
【0057】
なお、図8に示す電解研磨装置は、触媒を用いた超純水電解研磨として用いることができる。この場合、電解液100の代わりに超純水などの500μS/cmの液体を用い、研磨具105の代わりにイオン交換体を用いる。他の運転方法は、前述の電解研磨と同じである。
【0058】
図9は本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えたドライエッチング装置を示す断面図である。このドライエッチング装置は、真空容器200と、この真空容器200内に所定のガスを供給するガス供給装置201と、真空ポンプ202と、高周波電源203に接続された電極205を備えている。これにより、真空容器200内にガス供給装置201より所定のガスを導入しつつ、排気装置としての真空ポンプ202により排気を行い、真空容器200内を所定の圧力に保ちながら、電極205に高周波電源203から高周波電力を供給し、真空容器200内にプラズマを発生させることで、電極205上に載置された半導体ウエハWに対してエッチング処理を行うように構成されている。
【0059】
電極205の基台206には、本実施形態に係る測定装置を構成するアンテナ40が埋設されており、このアンテナ40から半導体ウエハWに向けてマイクロ波が照射されるようになっている。マイクロ波は半導体ウエハWの上面に形成された金属膜又は非金属膜などの薄膜で反射し、反射したマイクロ波(反射波)はアンテナ40により受信され、導波管41を介して本体部42に送られる。そして、本体部42に内蔵された解析部48(図3参照)により薄膜の膜厚が測定される。本体部42には制御部50が接続されており、この制御部50を介して上記解析部48により測定された膜厚の値に応じて加工レートの制御及び加工の終点検知が行われる。なお、図9に示す測定装置(アンテナ40及び本体部42)は、図3に示す測定装置と同様の構成を有している。また、本発明に係る測定装置は、ドライエッチング装置に限らず、ウエットエッチング装置などの他のエッチング装置にも用いることができる。
【0060】
図10は本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えためっき装置を示す断面図である。
図10に示すように、本実施形態におけるめっき装置は、上方に開口し内部にめっき液301を保持する円筒状のめっき槽302と、半導体ウエハWを着脱自在に下向きに保持する基板テーブル304を有する上下動可能なヘッド部(基板保持部)306とを備えている。めっき槽302の上方は密閉カバー308で覆われており、これによってめっき液301の上方に密閉空間310が形成されている。この密閉空間310は密閉カバー308に取付けられた排気経路312を介して減圧手段としての真空ポンプ314に接続されており、該真空ポンプ314の駆動によって上記密閉空間310内を減圧することが可能となっている。
【0061】
めっき槽302の内部に保持されためっき液301中には、水平に配置された平板状のアノード322が浸漬されている。半導体ウエハWの下面(めっき面)には導電層が形成されており、この導電層はその周縁部にカソード電極との接点を有している。電解めっきにおいては、めっき液中のアノード(陽極電極)322と半導体ウエハWの導電層(陰極電極)との間に所定の電圧を印加することにより、半導体ウエハWの導電層の表面にめっき膜(金属膜)を形成している。
【0062】
めっき槽302の底部中央には、上方に向けためっき液301の噴流を形成するためのめっき液供給手段としてのめっき液噴出管330が設けられている。このめっき液噴出管330はめっき液供給管331を介してめっき液調整タンク334に接続されており、このめっき液供給管331の途中に、二次側の圧力を調整する制御弁335が介装されている。この制御弁335を介してめっき液噴出管330からめっき槽302の内部に所定流量のめっき液301が噴出される。また、めっき槽302の上部外側には、めっき液受け332が配置されており、このめっき液受け332はめっき液戻り管336を介してめっき液調整タンク334に接続されている。めっき液戻り管336の途中にはバルブ337が介装されている。
【0063】
めっき液噴出管330から噴出され、めっき槽302をオーバーフローしためっき液301は、めっき液受け332で回収され、めっき液戻り管336を介してめっき液調整タンク334に流入する。めっき液調整タンク334において、めっき液301の温度調整、各種成分の濃度計測と調整が行われた後、ポンプ340の駆動に伴って、めっき液調整タンク334からフィルタ341を通してめっき液301がめっき液噴出管330に供給される。
【0064】
ヘッド部(基板保持部)306には、本実施形態に係る測定装置を構成するアンテナ40が埋設されており、このアンテナ40から半導体ウエハWに向けてマイクロ波が照射されるようになっている。マイクロ波は半導体ウエハWの下面に形成される金属膜で反射し、反射したマイクロ波(反射波)はアンテナ40で受信された後、導波管41を介して本体部42に送られる。そして、本体部42に内蔵された解析部48(図3参照)により金属膜の膜厚が測定される。本体部42には制御部50が接続されており、この制御部50を介して上記解析部48により測定された膜厚の値に応じて加工レートの制御及び加工の終点検知が行われる。なお、図10に示す測定装置(アンテナ40及び本体部42)は、図3に示す測定装置と同様の構成を有している。
【0065】
図11は本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えたCVD装置を示す断面図である。
図11に示すように、CVD装置は、容器400と、この容器400内に原料ガスを供給するガス供給ヘッド401と、容器400に接続される排気装置としての真空ポンプ402と、半導体ウエハWを加熱する加熱源403とを備えている。半導体ウエハWは加熱源403の上面に載置されている。
【0066】
容器400内には、堆積物の原料としての原料ガスがガス供給ヘッド401から供給され、同時に、加熱源403により半導体ウエハWが加熱される。これにより、原料ガスに励起エネルギーが付与され、半導体ウエハWの上面に生成物(薄膜)が堆積する。生成物の堆積に伴って発生する副生成物は、真空ポンプ402により容器400内から排気される。
【0067】
加熱源403には、本実施形態に係る測定装置を構成するアンテナ40が埋設されており、このアンテナ40から半導体ウエハWに向けてマイクロ波が照射されるようになっている。マイクロ波は半導体ウエハWの上面に形成される薄膜で反射し、反射したマイクロ波(反射波)はアンテナ40で受信され、導波管41を介して本体部42に送られる。そして、本体部42に内蔵された解析部48(図3参照)により半導体ウエハWに堆積した薄膜の膜厚が測定される。本体部42には制御部50が接続されており、この制御部50を介して上記解析部48により測定された膜厚の値に応じて加工レートの制御及び加工の終点検知が行われる。なお、図11に示す測定装置(アンテナ40及び本体部42)は、図3に示す測定装置と同様の構成を有している。
【0068】
図12は本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えたPVD装置を示す断面図である。
図12に示すように、PVD装置(スパッタリング装置)は、容器500と、この容器500内に配置されるターゲット(陰極)501と、このターゲット501に対向して配置される基板保持部(陽極)502と、ターゲット501と基板保持部502との間に電圧を印加する電源503と、容器500内にアルゴンガスを供給するガス供給装置504と、容器500に接続される排気装置としての真空ポンプ505とを備えている。半導体ウエハWは基板保持部502の上面に載置されている。
【0069】
真空ポンプ505により容器500内に高真空が形成され、同時に容器500内にガス供給装置504からアルゴンガスが供給される。電源503によりターゲット501と基板保持部502との間に電圧が印加されると、電界によりアルゴンガスがプラズマ状態となる。アルゴンイオンは電界により加速されてターゲット501に衝突する。ターゲット501を構成する金属原子はアルゴンイオンによってたたき出され、ターゲット501に対向して配置される半導体ウエハWに付着し、これにより、半導体ウエハW上に薄膜が形成される。
【0070】
基板保持部502には、本実施形態に係る測定装置を構成するアンテナ40が埋設されており、このアンテナ40から半導体ウエハWに向けてマイクロ波が照射されるようになっている。マイクロ波は半導体ウエハWの上面に堆積した薄膜で反射し、反射したマイクロ波(反射波)はアンテナ40により受信され、導波管41を介して本体部42に送られる。そして、本体部42に内蔵された解析部48(図3参照)により半導体ウエハW上に堆積した薄膜の膜厚が測定される。本体部42には制御部50が接続されており、この制御部50を介して上記解析部48により測定された膜厚の値に応じて加工レートの制御及び加工の終点検知が行われる。なお、図12に示す測定装置(アンテナ40及び本体部42)は、図3に示す測定装置と同様の構成を有している。
【0071】
次に、エリプソメトリを利用した本発明の第2の実施形態に係る測定方法及び測定装置について説明する。
エリプソメトリとは、被測定物からの反射波の偏波状態の変化を解析することにより、被測定物の厚さ、誘電率、透磁率、導電率、屈折率などを計測する方法である。この原理について図13を参照して説明する。図13に示すように、光線などの電磁波を被測定物Sに斜めに入射させると、電磁波は被測定物Sで反射し、入射波Iと反射波Rとを含む入射面が形成される。入射波Iとして直線偏波を用いた場合、この直線偏波の電界ベクトルEは、入射面に平行なp成分(p偏波)と入射面に垂直なs成分(s偏波)とに分解することができる。直線偏波は被測定物Sに反射してp偏波とs偏波との間で振幅及び位相が変化し、その結果として直線偏波は図13に示すような楕円偏波となる。この振幅及び位相の変化(偏波状態の変化)は被測定物Sの特性(構造)によって異なるため、偏波状態の変化を解析することによって被測定物Sの厚さや屈折率などを測定することができる。
【0072】
このエリプソメトリを利用した測定装置の利点として、次の点が挙げられる。
(i)被測定物は、金属、非金属であってもよく、被測定物の種類に応じて測定装置を代える必要がない。
(ii)上記測定装置を膜厚測定装置としてCMP装置に組み込む場合、研磨パッドに光路のための通孔を設ける必要がなく、研磨プロセスに影響を与えない。
(iii)直線偏波に振幅変調をかけることにより、計測速度を例えば1msecにまで高速にすることができる。
(iv)発信源にレーザを使用しないので、測定装置のメンテナンスが容易になる。
【0073】
次に、本実施形態に係る測定方法および測定装置について詳細に説明する。
被測定物に照射される電磁波としてはマイクロ波が用いられる。より好ましくは、周波数帯域が30〜300GHz、波長が10〜1mmであるミリ波が用いられる。また、S/Nを高めるため、及び高速計測のために、振幅変調した電磁波を用いることが好ましい。本実施形態では、被測定物に照射される電磁波は直線偏波または円偏波であり、これらは被測定物に対して斜めに入射される。直線偏波の場合は、電界ベクトルの方向が入射面に垂直な面に対して右回りまたは左回りに45度傾けられたものを用いる。
【0074】
一般に、エリプソメトリ法では、反射波を受信する受信検出器(受信アンテナ及び検出器)をその軸心回りに例えば2度間隔で0度から360度まで回転させることで各方位(角度)における反射波(楕円偏波)の振幅及び位相を検出する。しかしながら、この方法では、計測時間が長くなるという問題がある。そこで、本実施形態では、受信検出器を2つ用い、受信方位を0度及び45度に固定する。受信アンテナは偏波依存性の高いものが使用され、0度方位及び45度方位にある楕円偏波の直線偏波成分が2つの受信アンテナによって受信される。そして、以下の計算式によって反射波(楕円偏波)のp偏波の反射係数とs偏波の反射係数との比を算出する。
【0075】
p偏波の反射係数Rp=|Rp|・exp(j・φp)・・・(1)
s偏波の反射係数Rs=|Rs|・exp(j・φs)・・・(2)
p偏波の反射係数RpとS偏波の反射係数Rsとの比は次の式で定義される。
RP/RS=|RP/RS|・exp(j・(φP−φS))・・・(3)
≡tanΨ・exp(jΔ)
tanΨ:振幅比 Δ:位相差
【0076】
このように、p偏波の反射係数とs偏波の反射係数との比RP/RSはΨ(プサイ)及びΔ(デルタ)によって表すことができる。そして、Ψ及びΔは入射角や被測定物の厚さなどによって決定されるので、Ψ及びΔを測定すれば、逆推定により被測定物の厚さ、誘電率、透磁率、導電率、屈折率などを求めることができる。
【0077】
次に、本実施形態に係る測定装置について図14を参照して説明する。図14は本発明の第2の実施形態に係る測定装置を示す概略図である。なお、本実施形態は、測定装置をCMP装置に組み込んだ例を示すものであり、特に説明しないCMP装置の構成及び動作は図2に示す研磨装置と同様である。
【0078】
図14に示すように、測定装置は、ミリ波を発生させるミリ波源60と、ミリ波の振幅を変調させる振幅変調器61と、ミリ波源60で発生したミリ波を直線偏波に変換する偏波器62と、直線偏波を半導体ウエハWに照射する送信アンテナ(照射手段)63と、半導体ウエハWから反射した楕円偏波を受信する2個の受信アンテナ64A,64Bと、2個の受信アンテナ64A,64Bにそれぞれ接続される2つの検出器65A,65Bと、検出器65A,65Bからの信号を増幅させるプリアンプ66と、ノイズを含む信号から所定の信号を検出するロックインアンプ67と、ロータリジョイント70と、検出信号を解析して半導体ウエハWの膜厚などを求める解析装置71とを備えている。
【0079】
送信アンテナ63は研磨テーブル20の中に配置されており、トップリング30に保持された半導体ウエハWの中心部に近接して配置されている。直線偏波(ミリ波)は送信アンテナ63から研磨パッド10上の半導体ウエハWに向けて斜めに照射される。直線偏波は研磨パッド10に斜めに入射し、研磨パッド10を通過して半導体ウエハWに到達する。被測定物は、研磨パッド10と、半導体ウエハWの下面に形成された多層薄膜である。測定対象となる薄膜としては、例えば、絶縁膜(SiO2,Poly−Si)、金属膜(Cu,W(タングステン))、バリヤ膜(Ti,TiN,Ta,TaN)などが挙げられる。
【0080】
ミリ波源60としては、Gunn発振器、またはGunn発振器とマルチプライヤとを組み合わせたものが用いられる。あるいは、ミリ波源60としてマイクロ波発振器とマルチプライヤとを組み合わせたものを用いてもよい。偏波器62としては、偏波依存性を持つ導波管を使用する。被測定物に照射する直線偏波の指向性を高めるために、送信アンテナ63としてピラミダルホーンアンテナを用いることが好ましい。直線偏波に代えて円偏波を用いる場合には、受信アンテナ64A,64Bとしてコニカルホーンアンテナを用いる。検出器65A,65Bとしては、ショットキー・バリヤー・ビーム・リード・ダイオードを用いたものや、ミキサーとショットキー・バリヤー・ビーム・リード・ダイオードとの組み合わせたものを用いる。
【0081】
入射波と反射波とを含む入射面に対して垂直な方向をX軸とすると、半導体ウエハWに照射されるミリ波は、その電界ベクトルの方向が進行方向に垂直な面内でX軸に対して右回りまたは左回りに45度傾いている直線偏波である。なお、半導体ウエハWに照射されるミリ波として円偏波を用いてもよい。この場合は、上述した偏波器62に代えて円偏波器が用いられる。
【0082】
直線偏波は1個の送信アンテナ63から半導体ウエハWに斜めに照射され、その表面および多層薄膜の各界面で反射する。半導体ウエハWからの反射波は2個の受信アンテナ64A,64Bによって受信される。この受信アンテナ64A,64BはX軸に対して方位角0度,45度にそれぞれ傾けられ、方位角0度,45度における楕円偏波の直線偏波成分が各検出器65A,65Bによって検出される。このように受信アンテナ64A,64B及び検出器65A,65Bをそれぞれ2つ用いることで、p偏波の振幅とs偏波の振幅との比Ψ、及びp偏波とs偏波との間の位相差Δを研磨中に同時に検出することができる。検出された信号は、プリアンプ66、ロックインアンプ67、及びロータリジョイント70を経由して解析装置71に送られる。そして、解析装置71によってΨ及びΔの値に基づいてニュートン法などを用いて半導体ウエハW上の膜厚が求められ、膜厚と相関関係がある指標を用いて研磨工程の終点を求める。
【0083】
このように、p偏波の振幅とs偏波の振幅との比Ψ、及びp偏波とs偏波との間の位相差Δを同時に測定することで、研磨パッド10の減少量や研磨によるウエハ上の酸化膜や金属膜などの薄膜の厚みの減少量を求めることができる。また、位置が固定された2つの受信アンテナ64A,64Bを用いることで、Ψ及びΔの両パラメータの検出精度を上げることができる。なお、4つの受信アンテナを方位角90度、45度、0度、−45度にそれぞれ傾けた状態で配置してもよい。この場合も、それぞれの受信アンテナに4つの検出器を接続する。これら4つの受信アンテナ及び4つの検出器を備えることで、差動検出により同相成分(ノイズを含む)を除去できるため、S/N比を向上させることができる。また、差動出力を和信号で割り算することにより、電磁波強度の変動や半導体ウエハWの反射率の変動を相殺することができる。
【0084】
上述したように、被測定物からの反射波の偏波状態を解析することで、ドレッシング(コンディショニング)による研磨パッド10の厚みの変化や、誘電体である酸化膜の厚みの変化、金属膜の厚みの変化を研磨中に測定することができる。本実施形態では、研磨パッドも被測定物の一つであるが、研磨パッドはウレタン発泡体であるのでミリ波は研磨パッドを透過することができる。したがって、研磨パッド越しの多層薄膜の厚さを測定することができる。本実施形態の測定装置の被測定対象物は、絶縁膜(SiO2,Poly−Si)、金属膜(Cu,W(タングステン))、バリヤ膜(Ti,TiN,Ta,TaN)などである。例えば、周波数100GHzのミリ波を用いる場合、以下の式により厚さが225nm以下Cu膜の厚さが測定可能である。
【数1】
μ:透磁率 σ:導電率
【0085】
従来の光学式の測定装置は、Cu膜の厚さが30nm以下であれば測定することができる。しかしながら、半導体製造工程が進むにつれて多層膜の厚さが厚くなる。したがって、研磨工程を制御するためには、膜厚が厚くなった場合であってもこの膜厚を測定することが必要となる。かかる観点からも、本実施形態の測定装置は従来の光学式の測定装置よりも優位性を持っている。
【0086】
このように、本発明に係る測定装置は、研磨装置のみならず、半導体ウエハの表面に金属膜や非金属膜を形成するめっき装置、CVD装置、PVD装置などにも用いることができる。
【0087】
本発明によれば、従来にはなかった全く新しい手法により、物質の構造を測定することが可能となる。特に、半導体ウエハ上に形成されたCu、Al、Au、Wなどの金属膜、SiOCなどのバリヤ下膜、Ta、TaN、Ti、TiN、WNなどのバリヤ膜、SiO2などの酸化膜、多結晶シリコン、BPSG膜(boro phospho silicate glass)、又はTEOS膜(tetra ethoxy silane)などの膜厚を測定することができる。また、研磨加工終点を正確に測定しつつ研磨が行える(in-situ)ので、研磨工程を一旦停止して膜厚を測定する従来の方法(ex-situ)に比べてトータルのプロセス工数を短縮することができる。また、シャロートレンチ(STI)、層間絶縁膜(ILD、IMD)、Cu、W等が成膜された基板に対して研磨を行うCMP装置やこれらを成膜するめっき装置、CVD装置において、すべてのプロセスに対してプロセス終点を検出することが可能となる。
【0088】
以上説明したように、本発明によれば、測定すべき物質とマイクロ波照射手段との間に障害物(例えば研磨パッド)が存在しても、マイクロ波はこの障害物を透過(貫通)して物質(例えば基板)に到達するので、障害物に通孔などの透過窓を設ける必要がない。したがって、障害物に透過窓を形成するための加工が不要となり、製作コストを低減することができる。また、本発明によれば、研磨液などの影響を受けることなく物質の厚さなどを良好に測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、半導体ウエハなどの基板の表面に形成された薄膜の厚みなどを測定する測定装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1Aは本発明に係る測定装置の原理について説明するための図であり、図1Bは反射波の振幅と膜厚との関係を説明するためのグラフ図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えた研磨装置を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る測定装置を示す概略図である。
【図4】図4Aは図2に示す研磨装置の概略平面図であり、図4Bは半導体ウエハの被研磨面を示す模式図である。
【図5】図5Aは半導体ウエハの被研磨面の各領域における膜厚の測定値の経時的変化を示すグラフ図であり、図5Bは膜厚の測定値の集束範囲を説明するための図である。
【図6】膜厚の経時的変化(研磨レート)を示すグラフ図である。
【図7】図7Aは本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えた研磨装置の他の構成例を示す断面図であり、図7Bは図7Aに示すトップリングの拡大断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えた電解研磨装置を示す断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えたドライエッチング装置を示す断面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えためっき装置を示す断面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えたCVD装置を示す断面図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る測定装置を備えたPVD装置を示す断面図である。
【図13】エリプソメトリの原理を説明するための図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る測定装置を備えた研磨装置を示す概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と、
前記マイクロ波照射手段にマイクロ波を供給するマイクロ波源と、
前記物質から反射した、又は前記物質を透過したマイクロ波の振幅又は位相を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出されたマイクロ波の振幅又は位相に基づいて前記物質の構造を解析する解析手段とを備えたことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記解析手段は、反射係数、定在波比、および表面インピーダンスの少なくとも1つを算出することを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記解析手段は、前記物質の厚さ、内部欠陥、誘電率、導電率、および透磁率の少なくとも1つを解析することを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
基板を研磨パッドに摺接させて前記基板を研磨する研磨装置において、
前記研磨パッドを有する研磨テーブルと、
前記基板を保持して前記研磨パッドに押圧するトップリングと、
前記基板上に形成された膜の厚さを測定する測定装置とを備え、
前記測定装置は、
前記膜にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と、
前記マイクロ波照射手段にマイクロ波を供給するマイクロ波源と、
前記膜から反射した、又は前記膜を透過したマイクロ波の振幅又は位相を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出されたマイクロ波の振幅又は位相に基づいて前記膜の厚さを解析する解析手段とを備えたことを特徴とする研磨装置。
【請求項5】
複数の前記マイクロ波照射手段を前記トップリングに埋設し、複数の前記マイクロ波照射手段のうちの1つを前記基板の中心部に対応する位置に配置し、他の前記マイクロ波照射手段を前記基板の中心部から半径方向において離間した位置に配置したことを特徴とする請求項4に記載の研磨装置。
【請求項6】
渦電流センサ、光学センサ、前記研磨パッドと基板との間の摩擦力を測定する摩擦検知センサ、及び前記トップリング又は前記研磨テーブルのトルクを測定するトルクセンサの少なくとも1つを更に備えたことを特徴とする請求項4に記載の研磨装置。
【請求項7】
基板の表面に膜を形成するCVD装置において、
内部に基板が配置される容器と、
前記容器に原料ガスを供給するガス供給手段と、
前記基板を加熱するヒータと、
前記基板上に形成された膜の厚さを測定する測定装置とを備え、
前記測定装置は、
前記膜にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と、
前記マイクロ波照射手段にマイクロ波を供給するマイクロ波源と、
前記膜から反射した、又は前記膜を透過したマイクロ波の振幅又は位相を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出されたマイクロ波の振幅又は位相に基づいて前記膜の厚さを測定する解析手段とを備えたことを特徴とするCVD装置。
【請求項8】
物質に直線偏波又は円偏波を照射する照射手段と、
前記物質からの反射波を受信する少なくとも2つの受信手段と、
前記物質からの反射波の振幅及び位相を検出する少なくとも2つの検出手段と、
前記検出手段により検出された反射波の振幅及び位相に基づいて反射波の偏波状態の変化を解析して前記物質の厚さを測定する解析手段とを備えたことを特徴とする測定装置。
【請求項9】
前記解析装置は、前記物質の誘電率、導電率、透磁率、および屈折率を更に測定することを特徴とする請求項8に記載の測定装置。
【請求項10】
前記物質は多層膜であることを特徴とする請求項8に記載の測定装置。
【請求項11】
基板を研磨パッドに摺接させて前記基板を研磨する研磨装置において、
前記研磨パッドを有する研磨テーブルと、
前記基板を保持して前記研磨パッドに押圧するトップリングと、
前記基板の表面に形成された物質の厚さを測定する測定装置とを備え、
前記測定装置は、
物質に直線偏波又は円偏波を照射する照射手段と、
前記物質からの反射波を受信する少なくとも2つの受信手段と、
前記物質からの反射波の振幅及び位相を検出する少なくとも2つの検出手段と、
前記検出手段により検出された反射波の振幅及び位相に基づいて反射波の偏波状態の変化を解析して前記物質の厚さを測定する解析手段とを備えたことを特徴とする研磨装置。
【請求項12】
前記照射手段は前記研磨テーブル内に配置されていることを特徴とする請求項11に記載の研磨装置。
【請求項13】
前記物質は多層膜であることを特徴とする請求項11に記載の研磨装置。
【請求項1】
物質にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と、
前記マイクロ波照射手段にマイクロ波を供給するマイクロ波源と、
前記物質から反射した、又は前記物質を透過したマイクロ波の振幅又は位相を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出されたマイクロ波の振幅又は位相に基づいて前記物質の構造を解析する解析手段とを備えたことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記解析手段は、反射係数、定在波比、および表面インピーダンスの少なくとも1つを算出することを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記解析手段は、前記物質の厚さ、内部欠陥、誘電率、導電率、および透磁率の少なくとも1つを解析することを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
基板を研磨パッドに摺接させて前記基板を研磨する研磨装置において、
前記研磨パッドを有する研磨テーブルと、
前記基板を保持して前記研磨パッドに押圧するトップリングと、
前記基板上に形成された膜の厚さを測定する測定装置とを備え、
前記測定装置は、
前記膜にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と、
前記マイクロ波照射手段にマイクロ波を供給するマイクロ波源と、
前記膜から反射した、又は前記膜を透過したマイクロ波の振幅又は位相を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出されたマイクロ波の振幅又は位相に基づいて前記膜の厚さを解析する解析手段とを備えたことを特徴とする研磨装置。
【請求項5】
複数の前記マイクロ波照射手段を前記トップリングに埋設し、複数の前記マイクロ波照射手段のうちの1つを前記基板の中心部に対応する位置に配置し、他の前記マイクロ波照射手段を前記基板の中心部から半径方向において離間した位置に配置したことを特徴とする請求項4に記載の研磨装置。
【請求項6】
渦電流センサ、光学センサ、前記研磨パッドと基板との間の摩擦力を測定する摩擦検知センサ、及び前記トップリング又は前記研磨テーブルのトルクを測定するトルクセンサの少なくとも1つを更に備えたことを特徴とする請求項4に記載の研磨装置。
【請求項7】
基板の表面に膜を形成するCVD装置において、
内部に基板が配置される容器と、
前記容器に原料ガスを供給するガス供給手段と、
前記基板を加熱するヒータと、
前記基板上に形成された膜の厚さを測定する測定装置とを備え、
前記測定装置は、
前記膜にマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と、
前記マイクロ波照射手段にマイクロ波を供給するマイクロ波源と、
前記膜から反射した、又は前記膜を透過したマイクロ波の振幅又は位相を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出されたマイクロ波の振幅又は位相に基づいて前記膜の厚さを測定する解析手段とを備えたことを特徴とするCVD装置。
【請求項8】
物質に直線偏波又は円偏波を照射する照射手段と、
前記物質からの反射波を受信する少なくとも2つの受信手段と、
前記物質からの反射波の振幅及び位相を検出する少なくとも2つの検出手段と、
前記検出手段により検出された反射波の振幅及び位相に基づいて反射波の偏波状態の変化を解析して前記物質の厚さを測定する解析手段とを備えたことを特徴とする測定装置。
【請求項9】
前記解析装置は、前記物質の誘電率、導電率、透磁率、および屈折率を更に測定することを特徴とする請求項8に記載の測定装置。
【請求項10】
前記物質は多層膜であることを特徴とする請求項8に記載の測定装置。
【請求項11】
基板を研磨パッドに摺接させて前記基板を研磨する研磨装置において、
前記研磨パッドを有する研磨テーブルと、
前記基板を保持して前記研磨パッドに押圧するトップリングと、
前記基板の表面に形成された物質の厚さを測定する測定装置とを備え、
前記測定装置は、
物質に直線偏波又は円偏波を照射する照射手段と、
前記物質からの反射波を受信する少なくとも2つの受信手段と、
前記物質からの反射波の振幅及び位相を検出する少なくとも2つの検出手段と、
前記検出手段により検出された反射波の振幅及び位相に基づいて反射波の偏波状態の変化を解析して前記物質の厚さを測定する解析手段とを備えたことを特徴とする研磨装置。
【請求項12】
前記照射手段は前記研磨テーブル内に配置されていることを特徴とする請求項11に記載の研磨装置。
【請求項13】
前記物質は多層膜であることを特徴とする請求項11に記載の研磨装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2007−528585(P2007−528585A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516836(P2006−516836)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008467
【国際公開番号】WO2004/111572
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008467
【国際公開番号】WO2004/111572
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]