説明

濃度変調コーティング

本発明は、低放射率コーティングを備えた基材を提供する。低放射率コーティングは、少なくとも1つのグレーデッドフィルム領域を含む。特定の実施形態において、少なくとも1つのグレーデッドフィルム領域は、二層型低放射率コーティングの2つの赤外反射層同士間に付与される。グレーデッドフィルム領域においては、第1の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第2の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大する。また、このような低放射率コーティングの堆積方法、および、このコーティングを備えた基材が提供される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスおよびその他の基材のためのコーティングを提供する。更に詳しくは、本発明は、低放射率コーティングを提供する。また、低放射率コーティングの堆積方法、および、このコーティングを備えた基材が提供される。
【背景技術】
【0002】
低放射率コーティングは、当外技術において周知である。それは、一般に、それぞれが2層以上の誘電層の間に配置された、1層以上の赤外反射層を含む。赤外反射層は、放射熱がコーティングを透過するのを減少させる。赤外反射層は、一般に、銀、金または銅などの導電性金属を含む。誘電層は、コーティングの可視反射を低減し、色などのコーティングのその他の特性を制御する。慣用される誘電体は、亜鉛、錫およびチタンの酸化物、並びに、窒化ケイ素などの窒化物を含む。
【0003】
製造業者は、歴史的に、各赤外反射層の各面に、単一の厚い誘電層を設けていた。米国特許第4,859,532号を参照することができ、ここに、その全内容を引用して組み入れる。しかしながら、厚い誘電層は、幾つかの点で理想よりも劣っている。例えば、誘電層内の応力は、層厚が増大するに従って、増大する。これは、窒化ケイ素など、本質的に高い応力を有する誘電フィルムにおいて、特に問題となる。更に、厚い誘電層を含む熱処理(例えば、焼入れ)可能なコーティングにおいて、曇りの形成が生じる可能性があることが見出された。米国特許出願09/728,435、発明の名称「耐曇り性透明フィルム積層体(Haze-Resistant Transparent Film Stacks)」には、この問題と、厚い誘電層を複数の薄い誘電層で置換することが記載されている。ここに、その全内容を引用して組み入れる。
【0004】
一般に、低放射率コーティングにおける誘電層は均質である。すなわち、各誘電層は、一般に、層厚の全体に渡って均一な組成を有している。均質な誘電層は、広く受け入れられるが、重大な限界を有している。例えば、全ての誘電層が均質な低放射率コーティングにおいては、接着性が制限される。これは、部分的に、均質な誘電層同士間に存在する不連続界面のためである。応力は、低放射率コーティングの各不連続界面において、積み重なる(すなわち、集中する)傾向がある。故に、このような各界面は、潜在的な層剥離箇所であり、避けることが好ましい。
【0005】
更に、全ての誘電層が均質である低放射率コーティングにおいては、光学的機会が制限される。このような性質のコーティングは、コーティングの各誘電層を均質にするという光学的制限のために、限定された色および反射防止特性しか達成できない。
【0006】
前述のように、低放射率コーティングにおける誘電フィルムの主な光学的機能は、コーティングの赤外反射フィルム(例えば、銀)の反射防止である。しかしながら、誘電フィルムは、追加の機能を付与するものであることが望ましい。(基材と第1の銀層との間に)誘電内側層と、(2つの銀層の間に)誘電中間層と、(第2の銀層よりも基材から離れて)誘電外側層とを含む二層銀(double-silver)コーティングを考えてほしい。これらの各層は、各層の内側および外側界面に役立つように、特有の特性を有することが好ましい。
【0007】
誘電内側層に関する限りにおいては、この層の内側界面は、基材に対して良好な接着性をもたらすことが好ましい。下地層はコーティングの土台として働くため、この層が基材によく付着することが保証されることが望ましい。幾つかの場合において、内側誘電層の外側界面は、銀フィルムにとって良好な成長条件を与えるものであることが好ましい。銀フィルムの導電率(ひいては、放射率)は、銀が堆積される特定表面によって変化する。よって、銀フィルムが誘電内側層上に直接付与される場合、内側層は、銀フィルムが成長するために良好な核形成表面を与えるような外側界面を有することが望ましい。この場合、この外側界面はまた、その上に重ねられる銀フィルムによく付着することが好ましい。更に、この場合における外側界面は、その上に重ねられる銀フィルムを、(特に熱処理中に)可能な限り動かないようにすることが好ましい。幾つかの場合においては、代わりに、金属ブロッカーフィルムまたはその他の非誘電フィルムを銀フィルムの下方に配置して、所望の耐性および/または光学特性および/または断熱特性を達成させることが知られている。誘電内側層は、ナトリウムイオンおよびその他の物質がガラス基材の外に拡散するのを防止することが好ましい(すなわち、ガラスをシールすることが好ましい。)。これは、第1の銀層を、下方からの腐蝕から保護するための望まれる。
【0008】
残念なことに、1種の物質の単層によって形成された内側層を用いて、これら全ての特性を最適化することは困難である。別の例として、内側層を、異なる物質の2以上の別個の層で形成し、その各物質を、所望のコーティング特性のうちの1以上を最適化するように選択することができる。しかしながら、これは、前述したように避けることが好ましいとされる更なる界面を、内側層に残すこととなる。
【0009】
誘電外側層についての状況も同様である。例えば、外側層は、その下に重なるフィルム(例えば、第2の銀層または第2のブロッカー層)によく付着する内側界面を定めることが好ましい。外側層は、コーティングの機械的および化学的耐性に貢献することが好ましい。例えば、外側層は、化学的耐性物質を含むことが好ましい。これに連帯して、外側層は、コーティングの物理的な磨耗され易さを低下させるように、滑らかな外側表面を定めることが好ましい。最後に、外側層は、(特に、熱処理中および時間外に)その下に重ねられる銀に、水分、酸素およびその他の反応性物質が拡散するのを防止するフィルムを含むことが好ましい。これは、第2の銀層を、上方からの腐蝕から保護するための望まれる。内側層と同様に、1種の物質の単層によって形成された外側層を用いて、これら全ての特性を最適化することは困難であり、更に、外側層を、異なる物質の2以上の別個の層で形成することは、避けることが好ましいとされる更なる界面を生じる。
【0010】
誘電中間層に関しては、この層に使用される誘電フィルムの特性および機能の最適化が、特に望まれる。これは、部分的に、中間層の大きな層厚のためである。(中間層は、特徴的に、内側層および外側層よりも厚い。)例えば、中間層内の応力を最小化することが特に望ましい。これは、中間層の各層の厚みを制限することによって、好ましく達成される。前述したように、誘電層内の応力は、層厚が増大するに従って、増大する傾向がある。よって、中間層の各層(または、少なくとも、応力の高い物質を含む層)の厚みを制限することによって、応力を有効に低下させることができる。
【0011】
欠陥が中間層の厚み全体に渡って成長することを防止するような、中間層を設けることが望まれる。これは、複数の誘電層を含む中間層を設けることによって達成することができる。このような中間層において、特に、隣接する層が異なる物質で形成されている場合、欠陥(例えば、ピンホールなど)は、一つの層から他の層へと広がる可能性はほとんどない。よって、複数の誘電層を含む中間層を設けることによって、欠陥が、中間層の厚み全体に成長する可能性はほとんどなくなる。
【0012】
更に、例えば熱処理中に生じ得る曇り形成に対して耐性を有する中間層を設けることが有効である。これは、好ましくは特定の物質で形成された、特に薄い誘電層を複数含む中間層を設けることによって達成することができる。この解決法は非常に有益であるが、中間層に更なる界面を生成させるという点で、理想よりも劣る。
【0013】
更に、中間層は、その下に重なるフィルム(例えば、第1の銀層または第1のブロッカー層)に、よく付着する内側界面を定めることが好ましい。これに連帯して、銀が中間層上に直接に配置される場合、中間層の外側界面は、その上に重ねられる銀層にとって良好な成長条件を与えることが好ましい。この場合、この外側界面は、その上に重ねられる銀フィルムによく付着し、上に重ねられる銀フィルムを可能な限り動かないようにすることが好ましい。
【0014】
1種の物質の単層によって形成された中間層を用いて、これら全ての特性を最適化することは極めて困難である。よって、代わりに、中間層を、異なる誘電体の複数の別個の層で形成し、その各誘電体を、1以上の特性を最適化するように選択することができる。しかしながら、これは、中間層に、避けることが好ましいとされる更なる界面を残すという点で、理想よりも劣る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記制限を最小限とし、上記特性および機能を最適化する、低放射率コーティングを提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
特定の実施形態において、本発明は、低放射率コーティングを備えた基材を提供する。この実施形態において、低放射率コーティングは、外側に向かって順に:誘電内側層と;第1の赤外反射層(例えば、日射反射性の高い物質を含む。)と;第1の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第2の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大している第1のグレーデッドフィルム領域を含み、前記第1の誘電物質と前記第2の誘電物質とは異なる物質である、濃度変調中間層と;第2の赤外反射層(例えば、日射反射性の高い物質を含む。)と;誘電外側層とを含む。
【0017】
特定の実施形態において、本発明は、低放射率コーティングを備えた基材を提供する。この実施形態において、低放射率コーティングは、外側に向かって順に:酸化錫の濃度が実質的に連続的に減少し、酸化亜鉛(または亜鉛・錫酸化物)の濃度が実質的に連続的に増大している第1のグレーデッドフィルム領域を含み、前記第1のグレーデッドフィルム領域が、酸化錫に富んだ内側領域から、酸化亜鉛(または亜鉛・錫酸化物)に富んだ外側領域にまで延びている、濃度変調内側層と;第1の赤外反射層(例えば、日射放射性の高い物質を含む。)と;誘電中間層と;第2の赤外反射層(例えば、日射放射性の高い物質を含む。)と;誘電外側層とを含む。
【0018】
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも3つの隣接したスパッタリング区画を含み、その各々が、誘電フィルムを堆積するように適合されているスパタリングラインを提供する。これらの区画の少なくとも1つが、2以上のスパッタリングターゲットを備えた変化区画であり、そのうちの少なくとも2つのターゲットが異なるスパッタリング可能物質を有している。変化区画の最初のターゲットは、先行する(すなわち、直前の)区画の最後または唯一のターゲットと同じスパッタリング可能物質を有している。変化区画の最後のターゲットは、後続の(すなわち、直後の)区画の最初または唯一のターゲットと同じスパッタリング可能物質を有している。
【0019】
特定の実施形態において、本発明は、コーテッド基材の製造方法を提供する。この実施形態において、方法は、少なくとも3つの隣接したスパッタリング区画を含み、その各々が、誘電フィルムを堆積するように適合されているスパタリングラインを用意することを含む。これらの区画の少なくとも1つが、2以上のスパッタリングターゲットを備えた変化区画であり、そのうちの少なくとも2つのターゲットが異なるスパッタリング可能物質を有している。変化区画の最初のターゲットは、先行する区画の最後または唯一のターゲットと同じスパッタリング可能物質を有している。変化区画の最後のターゲットは、後続の区画の最初または唯一のターゲットと同じスパッタリング可能物質を有している。基材がスパッタリングラインを通過するように運ばれ、ターゲットがスパッタリングされて、基材上に、グレーデッドフィルム領域を含むコーティングが堆積される。
【0020】
特定の実施形態において、本発明は、コーテッド基材の製造方法を提供する。この実施形態において、方法は、基材上に低放射率コーティングを堆積することを含み、コーティングが、外側に向かって順に:誘電内側層と;日射反射性の高い物質を含む第1の赤外反射層と;第1の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第2の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大している第1のグレーデッドフィルム領域を含み、前記第1の誘電物質と前記第2の誘電物質とは異なる物質である、濃度変調中間層と;日射反射性の高い物質を含む第2の赤外反射層と;誘電外側層とを含む。幾つかの例において、濃度変調中間層は、中間層の厚み全体に渡って実質的に均一な屈折率を有するフィルムとして堆積される。例えば、濃度変調中間層は、約1.9〜約2.2の屈折率を有するフィルムとして堆積することができる。好ましくは、濃度変調中間層は、均質な誘電層同士間の不連続な界面が存在しないフィルムとして堆積される。幾つかの例において、濃度変調中間層は、200オングストローム以上の厚みを有する均質なフィルム領域が存在しないフィルムとして堆積される。好ましくは、第1のグレーデッドフィルム領域は、第2の誘電物質が次第に増大するのに従って、第1の誘電物質の濃度が次第に減少するフィルムとして堆積される。幾つかの例において、第1の誘電物質は酸化錫であり、第2の誘電物質は酸化亜鉛であり、第1のグレーデッドフィルム領域は、酸化錫に富む内側領域から、酸化亜鉛に富む外側領域にまで延びるように堆積される。この場合、酸化錫に富む内側領域は、第1のブロッカー層の直上に堆積することができ、第1のブロッカー層は、第1の赤外反射層の直上に堆積することができる。この酸化亜鉛に富む外側領域は、少なくとも約40オングストロームの実質的に純粋な酸化亜鉛を、第2の赤外反射層の直下に含むフィルムとして堆積することができ、第2の赤外反射層は銀を含むフィルムとして堆積することができる。幾つかの例において、濃度変調中間層は、外側に向かって連続して順に:第1の誘電物質に富む第1の高濃度領域と;第1のグレーデッドフィルム領域と;第2の誘電物質に富む第2の高濃度領域と;第2の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第3の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大しており、第2の誘電物質と第3の誘電物質とは異なる物質である、第2のグレーデッドフィルム領域と;第3の誘電物質に富む第3の高濃度領域とを含むフィルムとして堆積される。この場合、第3の誘電物質を酸化亜鉛とし、第3の高濃度領域を酸化亜鉛に富んだ領域として堆積することができる。酸化亜鉛に富んだ領域は、少なくとも40オングストロームの実質的に純粋な酸化亜鉛を、第2の赤外反射層の直下に含むフィルムとして堆積することができ、第2の赤外反射層は、銀を含むフィルムとして堆積することができる。所望であれば、第1の誘電物質と第3の誘電物質とは、両方とも同じ物質とすることができ、第1の高濃度領域と第3の高濃度領域とは、両方とも同じ物質に富む領域として堆積することができる。例えば、第1の誘電物質と第3の誘電物質とを、両方とも酸化亜鉛とし、第1の高濃度領域と第3の高濃度領域とを、両方とも酸化亜鉛に富んだ領域として堆積することができる。更に、第2の誘電物質は、酸化錫、亜鉛・錫酸化物および酸化チタンからなる群より選択される酸化物として堆積することができる。幾つかの例においては、第1の高濃度領域が、実質的に第1の誘電物質からなる第1の均質フィルム領域を含むフィルムとして堆積され、第2の高濃度領域が、実質的に第2の誘電物質からなる第2の均質フィルム領域を含むフィルムとして堆積され、第3の高濃度領域が、実質的に第3の誘電物質からなる第3の均質フィルム領域を含むフィルムとして堆積される。この場合、均質フィルム領域の各々は、200オングストローム未満の厚みで堆積されることが好ましい。更に、第2の均質フィルム領域は、約180オングストローム未満の厚みで堆積されることが好ましい。幾つかの例において、濃度変調中間層は、外側に向かって連続して順に:第1の誘電物質に富む第1の高濃度領域と;第1のグレーデッドフィルム領域と;第2の誘電物質に富む第2の高濃度領域と;第2の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第3の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大しており、第2の誘電物質と第3の誘電物質とは異なる物質である、第2のグレーデッドフィルム領域と;第3の誘電物質に富む第3の高濃度領域と;第3の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第4の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大しており、第3の誘電物質と第4の誘電物質とは異なる物質である、第3のグレーデッドフィルム領域と;第4の誘電物質に富む第4の高濃度領域と;第4の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第5の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大しており、第4の誘電物質と第5の誘電物質とは異なる物質である、第4のグレーデッドフィルム領域と;第5の誘電物質に富む第5の高濃度領域とを含むフィルムとして堆積される。好ましくは、第5の誘電物質は酸化亜鉛であり、第5の高濃度領域は、酸化亜鉛に富んだ領域として堆積される。この酸化亜鉛に富んだ領域は、少なくとも約40オングストロームの実質的に純粋な酸化亜鉛を、第2の赤外反射層の直下に含むフィルムとして堆積することができ、第2の赤外反射層は、銀を含むフィルムとして、有効に堆積することができる。所望であれば、第1、第3および第5の誘電物質を、全て同じ物質とし、第1、第3および第5の高濃度領域を、全て同じ物質に富むフィルムとして堆積することができる。例えば、第1、第3および第5の誘電物質を、全て酸化亜鉛とし、第1、第3および第5の高濃度領域を、全て酸化亜鉛に富んだ領域として堆積することができる。更に、第2の誘電物質と第4の誘電物質とを、両方とも同じ物質とし、第2の高濃度領域と第4の高濃度領域とを、両方とも同じ物質に富むフィルムとして堆積することができる。例えば、第2の誘電物質と第4の誘電物質とを、両方とも、酸化錫、亜鉛・錫酸化物および酸化チタンからなる群より選択される酸化物として堆積することができる。幾つかの例において、第1の高濃度領域は、実質的に第1の誘電物質からなる第1の均質フィルム領域を含むフィルムとして堆積され、第2の高濃度領域は、実質的に第2の誘電物質からなる第2の均質フィルム領域を含むフィルムとして堆積され、第3の高濃度領域は、実質的に第3の誘電物質からなる第3の均質フィルム領域を含むフィルムとして堆積され、第4の高濃度領域は、実質的に第4の誘電物質からなる第4の均質フィルム領域を含むフィルムとして堆積され、第5の高濃度領域は、実質的に第5の誘電物質からなる第5の均質フィルム領域を含むフィルムとして堆積される。好ましくは、均質フィルム領域の各々は、200オングストローム未満の厚みで堆積される。更に、第2の均質フィルム領域および第4の均質フィルム領域は、それぞれ、約180オングストローム未満の厚みで堆積されることが好ましい。幾つかの例においては、誘電内側層は、第3の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第4の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大している第2のグレーデッドフィルム領域を含み、第3の誘電物質と第4の誘電物質とは異なる物質である濃度変調内側層として堆積される。更に(または、代わりに)、誘電外側層は、第5の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第6の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大している第3のグレーデッドフィルム領域を含み、第5の誘電物質と第6の誘電物質とは異なる物質である濃度変調外側層として堆積することができる。このような性質の幾つかの例においては、濃度変調内側層、中間層および外側層は、それぞれ、均質な誘電層同士間の不連続な界面を含まないフィルムとして堆積される。
【0021】
特定の実施形態において、本発明は、コーテッド基材の製造方法を提供する。この実施形態において、方法は、基材上に低放射コーティングを堆積することを含み、コーティングは、外側に向かって順に:酸化錫の濃度が実質的に連続的に減少し、酸化亜鉛または亜鉛・錫酸化物の濃度が実質的に連続的に増大している第1のグレーデッドフィルム領域を含み、第1のグレーデッドフィルム領域が、酸化錫に富んだ内側領域から、酸化亜鉛または亜鉛・錫酸化物に富んだ外側領域にまで延びている、濃度変調内側層と;日射放射性の高い物質を含む第1の赤外反射層と;誘電中間層と;日射放射性の高い物質を含む第2の赤外反射層と;誘電外側層とを含む。好ましくは、第1のグレーデッドフィルム領域の酸化錫に富んだ内側領域は、実質的に酸化錫からなるフィルムとして堆積される。幾つかの例においては、第1のグレーデッドフィルム領域の酸化錫に富んだ内側部分は、基材の直上に堆積される。別の例では、低放射率コーティングが、更に、基材の直上に堆積された二酸化ケイ素を含む透明下地層を含み、第1のグレーデッドフィルム領域の酸化錫に富んだ内側領域が、透明下地層の直上に堆積される。好ましくは、第1の赤外反射層は、第1のグレーデッドフィルム領域の外側領域の直上に堆積される。第1のグレーデッドフィルム領域の外側領域は、少なくとも約40オングストロームの実質的に純粋な酸化亜鉛を、第1の赤外反射層の直下に含むフィルムとして堆積することができ、第1の赤外反射層は、銀を含むフィルムとして堆積することができる。幾つかの例において、濃度変調内側層は、外側に向かって連続して順に:酸化錫に富んだ第1の高濃度領域と;第1のグレーデッドフィルム領域と;酸化亜鉛または亜鉛・錫酸化物に富んだ第2の高濃度領域と;酸化亜鉛または亜鉛・錫酸化物の濃度が実質的に連続的に減少し、酸化錫の濃度が実質的に連続的に増大している第2のグレーデッドフィルム領域と;酸化錫に富んだ第3の高濃度領域と;酸化錫の濃度が実質的に連続的に減少し、酸化亜鉛または亜鉛・錫酸化物の濃度が実質的に連続的に増大している第3のグレーデッドフィルム領域と;酸化亜鉛または亜鉛・錫酸化物に富んだ第4の高濃度領域とを含むフィルムとして堆積される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下の詳細な説明は図面を参照しながら読まれるものであり、図面においては、別の図面中の同様の要素には、同様の参照番号が付されている。図面は、一定の率で縮尺する必要のないものであり、選択された実施形態を表してはいるが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業者であれば、ここに示された実施例が、本発明の範囲内である、多くの有用な代替手段を有していることを認めるであろう。
【0023】
本発明においては、様々なサイズの基材を使用することができる。一般に、大面積基材が使用される。特定の実施形態は、少なくとも約.5メートル、好ましくは少なくとも約1メートル、おそらく更に好ましくは少なくとも約1.5メートル(例えば、約2メートル〜約4メートル)、ある場合においては少なくとも約3メートルの幅を有する基材を含む。
【0024】
本発明においては、様々な厚みの基材を使用することができる。一般に、約1〜5mmの厚みを有する基材(例えば、ガラス板)が使用される。特定の実施形態は、約2.3mm〜4.8mm、おそらく更に好ましくは約2.5mm〜4.8mmの厚みを有する基材を含む。ある場合においては、約3mmの厚みを有するガラス(例えば、ソーダ石灰ガラス)の板が使用される。
【0025】
特定の実施形態において、本発明は、低放射率コーティング40を備えた基材10を提供する。様々な基材が、本発明における使用に好適である。大部分の場合、基材は、透明物質の板状物(すなわち、透明板)である。しかしながら、基材は、透明である必要はない。大部分の適用において、基材は、ガラスや透明プラスチックなどの、透明または半透明の物質を含む。多くの場合、基材10は、ガラス板である。様々な既知のガラス種を使用することができ、ソーダ石灰ガラスが好ましいと予想される。
【0026】
特定の好ましい実施形態においては、低放射率コーティング40は、濃度変調中間層90を含む。ここで、コーティング40は、2つの赤外反射層50,150(例えば、銀を含む。)を含み、その間に濃度変調中間層90が配置される。このような特定の実施形態を、図1に例示する。図示のコーティング40は、外側に向かって順に(すなわち、基材から離れる方向に順に):誘電内側層30と;第1の赤外反射層50と;任意の第1のブロッカー層80と;濃度変調中間層90と;第2の赤外反射層150と;任意の第2のブロッカー層と;誘電外側層70とを含む。この実施形態において、内側層および外側層は、従来の均質誘電層(すなわち、非グレーデッド層)を含む、あらゆる所望の誘電フィルムで形成することができる。代わりに、内側層および外側層のうちの一方または両方が、後述するように、徐々に変化する組成を有していてもよい。
【0027】
濃度変調中間層90は、様々な形態で付与することができる。好ましくは、この中間層90は、少なくとも1つのグレーデッドフィルム領域を含む。換言すれば、濃度変調中間層の少なくとも一部は、徐々に変化する組成(例えば、基材からの距離が大きくなるにつれて、徐々に変化する組成)を有することが好ましい。中間層90に1以上のグレーデッドフィルム領域を付与することによって、コーティング40は、ひときわ優れた色範囲および反射防止特性を達成するように設計することができる。更に、グレーデッドフィルムを使用することによって、特別な光学的作用を達成することができる。更に、濃度変調中間層の徐々に変化する組成は、低い応力および良好な接着特性という点で望ましい。例えば、層剥離となり得るような不連続界面が取り除かれる。特定の好ましい実施形態において、中間層90は、誘電層同士間(例えば、均質誘電層同士間)に、不連続界面を全く含まない(すなわち、完全に不連続界面がない。)。例えば、中間層90全体は、1つの誘電物質から次の誘電物質へと滑らかに変化する、徐々に変化する組成を有するように設計することができる。
【0028】
更に詳しくは、濃度変調中間層90は、実質的に(または、少なくとも概して)連続的に減少する第1の誘電物質濃度と、実質的に(または、少なくとも概して)連続的に増大する第2の誘電物質濃度とを有する、第1のグレーデッドフィルム領域を含む。ここで、第1の誘電物質と第2の誘電物質とは、異なる物質である。このように、グレーデッドフィルム領域は、(基材からの距離が大きくなるに従って)1つの誘電物質から別の誘電物質へと変化する。第2の誘電物質の濃度が徐々に増大するに従って、第1の誘電物質の濃度は徐々に減少することが好ましい。すなわち、1つの誘電物質から別の誘電物質へ、滑らかに変化することが好ましい。このような中間層90は、(応力、接着および色並びに反射防止機会の点で)複数の別個の均質層で形成された従来の中間層よりも優れている。
【0029】
このように、中間層90は、1つの誘電物質から別の誘電物質へと(膜厚の関数として)変化する組成を有する、グレーデッドフィルム領域を含むことが望ましい。広範な様々な誘電物質を、グレーデッドフィルム領域において使用することができる。ここで、「誘電体」という用語は、1以上の金属を含む非金属化合物(すなわち、純金属でも合金でもない。)を意味するものとして使用される。特定の実施形態において、各誘電体は、薄膜として堆積されたときに概してまたは実質的に透明である、透明誘電体である。「誘電体」の定義には、あらゆる金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、金属ホウ化物およびそれらの組合せ(例えば、酸窒化物)が含まれる。更に、「金属」という用語は、全ての金属および半金属(すなわち、メタロイド)を含むと解される。有用な金属酸化物は、亜鉛、錫、インジウム、ビスマス、チタン、ハフニウム、ジルコニウムおよびそれらの混合物の酸化物を含む。適用が容易であり、低コストであることから、金属酸化物が望ましいが、既知の金属窒化物(例えば、窒化ケイ素)もまた使用可能である。当業者であれば、その他の有用な物質を熟知しているであろう。
【0030】
フィルムの徐々に変化する性質に関して、好ましい実施形態においては、各グレーデッドフィルム領域のフィルムは、被覆表面の全領域に渡って共通した様式で、徐々に変化していることが好ましい。すなわち、被覆表面上のあらゆる所定の「x,y」位置(xおよびyは、被覆表面上の互いに直交する2つの軸に沿った寸法である。)に、グレーデッドフィルム(すなわち、前述した1つの誘電体から別の誘電体への変化)が存在する。グレーデッドフィルム領域が存在する部分における「z」寸法(すなわち、膜厚寸法)の範囲は、例えば基材の表面粗さの局所的な変動によって、1つのx,y位置から別の位置に向かって僅かに変化し得る。これは、例えば、以前から存在する表面粗さを有するガラス基材の上方にコーティングをスパッタリングすることによって生じる。
【0031】
好ましくは、屈折率は、グレーデッドフィルム領域全体に渡って実質的に一定である。すなわち、グレーデッドフィルム領域は、一定の屈折率を有する1つの誘電物質から、実質的に同じ屈折率を有する別の誘電物質へと変化することが好ましい。一般に、この屈折率は、約1.9〜約2.75、好ましくは約1.9〜約2.4、更に好ましくは約1.9〜約2.2、おそらく最適には約2.0である。別の実施形態においては、グレーデッドフィルム領域のフィルムの屈折率は変化するが、1.9〜2.75、好ましくは1.9〜2.4、おそらく最適には1.9〜2.2の範囲から逸脱しない。
【0032】
特定の特に好ましい実施形態において、屈折率は、濃度変調中間層90の厚み全体に渡って実質的に一定である。ここで、中間層90の組成が、(少なくとも中間層90の一部を横切って)基材からの距離が大きくなるに従って変化したとしても、屈折率は、中間層90の厚み全体に渡って実質的に均一である。この屈折率は、一般に約1.9〜約2.75、好ましくは約1.9〜約2.4、更に好ましくは約1.9〜約2.2、おそらく最適には約2.0である。別の実施形態においては、中間層90の屈折率は変化するが、1.9〜2.75、好ましくは1.9〜2.4、おそらく最適には1.9〜2.2の範囲から逸脱しない。
【0033】
特定の好ましい実施形態において、濃度変調中間層90は、完全に酸化物フィルムまたは窒化物フィルムで形成されている。例えば、中間層90は、単一の反応性ガス種(酸化、窒化など)を用いて堆積することができる。堆積中、不純物ガスが少量存在していてもよく、中間層がごく僅かな不純物を含んでいてもよいことが認識されるであろう。中間層が完全に酸化物フィルムで形成されるように、中間層が、少なくとも1つのグレーデッドフィルム領域を含み、酸化雰囲気のみを用いて堆積されるという方法が、特に好ましい。好ましくは、中間層は、酸化錫または亜鉛・錫酸化物を含む少なくとも1つのフィルム領域を含む。酸化錫または亜鉛・錫酸化物は、両方とも、とりわけそのモルフォロジーのため、特に好ましい。
【0034】
特定の実施形態において、第1および第2の誘電物質は、酸化亜鉛,酸化錫、亜鉛・錫酸化物(例えば、Zn2SnO4)、亜鉛・アルミニウム酸化物(例えば、ZnOAl23)および酸化チタンからなる群より選択される、2種の異なる酸化物である。第1および第2の誘電物質の少なくとも一方が、酸化錫または亜鉛・錫酸化物であることが好ましい。しかしながら、別の実施形態においては、あらゆる2種の誘電物質が使用可能であることが理解されるべきである。例えば、第1および第2の誘電物質は、多くの種々の適用の要求に見合うように選択および変更することができる。
【0035】
このように、濃度変調中間層は、1つの誘電物質から別の誘電物質への変化によって特徴付けられる、少なくとも1つのグレーデッドフィルム領域を含む。幾つかの例においては、この中間層は、ただ1つのグレーデッドフィルム領域を含む。このような場合、第2の誘電体は、酸化亜鉛であることが好ましく、第1の誘電体は、酸化錫、亜鉛・錫酸化物および酸化チタンからなる群から選択される酸化物であることが好ましく、おそらく最適には酸化錫または亜鉛・錫酸化物である。一実施形態において、第1の誘電体は酸化錫であり、第1のグレーデッドフィルム領域は、酸化錫に富んだ内側領域(第1の赤外反射層50に隣接し、例えばブロッカー層80が付与されている場合はその上方にある。)から、酸化亜鉛に富んだ外側領域(第2の赤外反射層150に隣接する。)にまで延びている。ここで、酸化錫に富んだ内側領域は、第1のブロッカー層80の直上に堆積されることが好ましく、第2の赤外反射層150は、酸化亜鉛に富んだ外側領域の直上に堆積されることが好ましい。この酸化亜鉛に富んだ外側領域は、少なくとも第2の赤外反射層150が銀を含む場合は、この層150の直下に、少なくとも約40オングストロームの実質的に純粋な酸化亜鉛を含むことが望ましい。
【0036】
このように、中間層90は、酸化錫に富んだ内側領域から酸化亜鉛に富んだ外側領域まで延びた、単一のグレーデッドフィルム領域を含むことができる。この実施形態において、中間層は、少なくとも2つの高濃度領域を含む(酸化錫に富んだ内側領域が第1の高濃度領域であり、酸化亜鉛に富んだ外側領域が第2の高濃度領域である。)各高濃度領域は、所望の誘電物質が局所的に最大濃度となるフィルムの厚みである。幾つかの例において、各高濃度領域は、主濃度(すなわち、50%以上)の所望の誘電物質を有している。所望であれば、各高濃度領域は、実質的に所望の誘電物質からなるフィルムの厚みを有している。例えば、各高濃度領域は、実質的に所望の誘電物質からなる均質フィルム領域を含んでいてもよい。
【0037】
表1は、中間層90が、外側に向かって順に:(1)実質的に酸化錫からなる第1の均質フィルム領域と;(2)実質的に連続的に減少する酸化錫濃度と、実質的に連続的に増大する酸化亜鉛濃度とを有する、第1のグレーデッドフィルム領域と;(3)実質的に酸化亜鉛からなる第2の均質フィルム領域とを含む、実施形態を示している。ここで、第2の均質フィルム領域は、第2の赤外反射層150の直下に、少なくとも約40オングストロームの実質的に純粋な酸化亜鉛を含むことが望ましい。第2の赤外反射層150は、銀フィルムであることが好ましい(しかし、単に幾らかの銀を含んでいればよく、または、銀を含まない赤外反射層であってもよい。本開示のあらゆる表において同様である。)。
【0038】
ここで、記号「→」(すなわち、矢印)は、基材からの距離の増大に伴う、矢印の起点に示された誘電物質から、矢印の先端に示された誘電物質への、フィルム組成の変化(例えば、漸次的な変化)を示すために使用される。
【0039】
【表1】

【0040】
このように、特定の実施形態においては、中間層は、少なくとも1つ均質フィルム領域を含む。各均質フィルム領域のフィルムは、徐々に変化する、または、膜厚/基材からの距離の関数として変化する組成を有していない。逆に、このような領域の各々は、(所望の誘電物質の)均質な組成を有するフィルムの厚みである。好ましくは、各均質フィルム領域は、1以上のグレーデッドフィルム領域によって境界付けられている(そして、1以上のグレーデッドフィルム領域へと徐々に変化する。)。これに対して、従来の分離した均質誘電層は、他の層との2つの不連続界面によって境界付けられている。幾つかの例において、中間層90は、各々所望の誘電物質で形成された、複数の均質フィルムを含む。この場合、各均質フィルム領域は、好ましくは200オングストローム未満、おそらく更に好ましくは約180オングストローム未満、おそらく最適には約175オングストローム未満の厚みを有する。これらの厚みの限定は、応力を最小化し、接着性を最大化し、欠陥の成長を制限し、例えば熱処理中の曇りの形成を回避するために、望ましい。よって、幾つかの実施形態において、中間層90は、200オングストローム以上の厚みを有する均質フィルム領域を含まない。
【0041】
前述の記載に関わらず、中間層90は、均質フィルム領域を含む必要はない。例えば、本発明は、中間層90全体の濃度が、基材からの距離の増加に伴って終始変化している実施形態を与える。しかし、多くの実施形態において、中間層は、少なくとも1つの均質フィルム領域(例えば、第2の赤外反射層150の直下の、少なくとも約40オングストロームの実質的に純粋な酸化亜鉛)を含む。
【0042】
本発明は、幾つかの特に好ましい中間層のデザインを提供する。第1のデザインは、3つの高濃度領域の間に挟まれた2つのグレーデッドフィルム領域を含む中間層90を与える。このような実施形態を、図2に例示する。第2のデザインは、5つの高濃度領域の間に挟まれた3つのグレーデッドフィルム領域を含む中間層90を与える。このような実施形態を、図3に例示する。図2および3において、各高濃度領域は、参照符号90’で示され、矢印の列は、それぞれグレーデッドフィルム領域を示している。これら2つのデザインの各々は、特異な「二層型」低放射率コーティング(すなわち、2つの赤外反射層を有するコーティング)を生み出す。例えば、これらのデザインは、ひときわ優れた光学的特性が得られる、対称的な構成を有している。
【0043】
第1のデザインにおいて、濃度変調中間層90は、3つの高濃度領域と2つのグレーデッドフィルム領域とを含む。例えば、中間層90は、外側に向かって順に:第1の高濃度領域;第1のグレーデッドフィルム領域;第2の高濃度領域;第2のグレーデッドフィルム領域;および、第3の高濃度領域を含み得る。ここで、第1の高濃度領域は第1の誘電物質に富み、第2の高濃度領域は第2の誘電物質に富み、第3の高濃度領域は第3の誘電物質に富む。第1のグレーデッドフィルム領域は、実質的に連続的に減少する第1の誘電体濃度と、実質的に連続的に増大する第2の誘電体濃度を有する。第2のグレーデッドフィルム領域は、実質的に連続的に減少する第2の誘電体濃度と、実質的に連続的に増大する第3の誘電体濃度を有する。この実施形態において、第1の誘電体と第2の誘電体とは異なる物質であり、第2の誘電体と第3の誘電体とは異なる物質である。しかしながら、第1の誘電体と第3の誘電体とは同じ物質であってもよい。好ましくは、第1、第2および第3の誘電物質のうちの少なくとも1つは、酸化錫または亜鉛・錫酸化物である。
【0044】
このような性質の好ましい実施形態において、第3の誘電物質は酸化亜鉛であり、第3の高濃度領域は、酸化亜鉛に富んだ領域である。表2に、このようなコーティングを例示する。第2の赤外反射層150は、望ましくは少なくとも約40オングストロームの実質的に純粋な酸化亜鉛を含む、酸化亜鉛に富んだ第3の高濃度領域の直上に配置されることが好ましい。
【0045】
図2の実施形態において、第1の誘電体と第3の誘電体とを両方とも同じ物質とし、第1の高濃度領域と第3の高濃度領域とを、両方とも同じ物質に富んだ領域とすることができる。このような性質の好ましい実施形態において、第1および第3の誘電体は両方とも酸化亜鉛であり、第1および第3の高濃度領域は、両方とも酸化亜鉛に富んだ領域である。この実施形態において、第2の誘電物質は、酸化錫、亜鉛・錫酸化物、亜鉛・アルミニウム酸化物および酸化チタンからなる群より選択されることが望ましく、酸化錫または亜鉛・錫酸化物であることが好ましい。
【0046】
幾つかの例において、第1、第2および第3の高濃度領域90’は、全て、均質フィルム領域を含む。すなわち、第1の高濃度領域は、実質的に第1の誘電物質からなる第1の均質フィルム領域を含み、第2の高濃度領域は、実質的に第2の誘電物質からなる第2の均質フィルム領域を含み、第3の高濃度領域は、実質的に第3の誘電物質からなる第3の均質フィルム領域を含む。この実施形態において、各均質フィルム領域は、200オングストローム未満の厚みを有することが望ましい。これに関連して、第2の均質フィルム領域は、約180オングストローム未満の厚みを有することが望ましい。
【0047】
【表2】

【0048】
図3に示す実施形態において、濃度変調中間層90は、5つの高濃度領域と4つのグレーデッドフィルム領域とを含む。ここで、中間層90は、外側に向かって順に:第1の高濃度領域;第1のグレーデッドフィルム領域;第2の高濃度領域;第2のグレーデッドフィルム領域;第3の高濃度領域;第3のグレーデッド領域;第4の高濃度領域;第4のグレーデッド領域;および、第5の高濃度領域を含む。更に詳しくは、第1の高濃度領域は第1の誘電物質に富み、第2の高濃度領域は第2の誘電物質に富み、第3の高濃度領域は第3の誘電物質に富み、第4の高濃度領域は第4の誘電物質に富み、第5の高濃度領域は第5の誘電物質に富む。第1のグレーデッドフィルム領域は、実質的に連続的に減少する第1の誘電体濃度と、実質的に連続的に増大する第2の誘電体濃度を有する。第2のグレーデッドフィルム領域は、実質的に連続的に減少する第2の誘電体濃度と、実質的に連続的に増大する第3の誘電体濃度を有する。第3のグレーデッドフィルム領域は、実質的に連続的に減少する第3の誘電体濃度と、実質的に連続的に増大する第4の誘電体濃度を有する。第4のグレーデッドフィルム領域は、実質的に連続的に減少する第4の誘電体濃度と、実質的に連続的に増大する第5の誘電体濃度を有する。この実施形態において、第1の誘電体と第2の誘電体とは異なる物質であり、第2の誘電体と第3の誘電体とは異なる物質であり、第3の誘電体と第4の誘電体とは異なる物質であり、第4の誘電体と第5の誘電体とは異なる物質である。しかしながら、第1の誘電体と第3の誘電体とは同じ物質であってもよく、第2の誘電体と第4の誘電体とは同じ物質であってもよく、その他同様である。好ましくは、第1、第2、第3、第4および第5の誘電物質のうちの少なくとも1つは、酸化錫または亜鉛・錫酸化物である。
【0049】
このような好ましい実施形態において、第5の誘電物質は酸化亜鉛であり、第5の高濃度領域は、酸化亜鉛に富む領域である。表3は、このようなコーティングを例示する。好ましくは、第2の赤外反射層150は、少なくとも約40オングストロームの実質的に純粋な酸化亜鉛を含むことが望まれる酸化亜鉛に富む第5の高濃度領域の直上に配置された、銀を含む。
【0050】
図3の実施形態において、第1、第3および第5の誘電体を全て同じ物質とし、第1、第3および第5の高濃度領域を全て同じ物質に富んだ領域とすることができる。このような性質の好ましい実施形態においては、第1、第3および第5の誘電体は、全て酸化亜鉛である(すなわち、第1、第3および第5の高濃度領域は、全て酸化亜鉛に富む領域である。)。代わりに、または加えて、第2および第4の誘電体を両方とも同じ物質とし、第2および第4の高濃度領域を両方とも同じ物質に富むものとすることができる。例えば、第2および第4の誘電物質は、両方とも、酸化錫、亜鉛・錫酸化物、亜鉛・アルミニウム酸化物および酸化チタンからなる群より選択される酸化物とすることができ、おそらく最適には酸化錫または亜鉛・錫酸化物とすることができる。
【0051】
【表3】

【0052】
特定の実施形態において、第1、第2、第3、第4および第5の高濃度領域は、全て均質フィルム領域を含む。すなわち、第1の高濃度領域は、実質的に第1の誘電物質からなる第1の均質フィルム領域を含み、第2の高濃度領域は、実質的に第2の誘電物質からなる第2の均質フィルム領域を含み、第3の高濃度領域は、実質的に第3の誘電物質からなる第3の均質フィルム領域を含み、第4の高濃度領域は、実質的に第4の誘電物質からなる第4の均質フィルム領域を含み、第5の高濃度領域は、実質的に第5の誘電物質からなる第5の均質フィルム領域を含む。この実施形態において、各均質フィルム領域は、200オングストローム未満の厚みを有することが好ましい。これに連帯して、第2および第4の均質フィルム領域は、各々、約180オングストローム未満の厚みを有することが好ましい。
【0053】
一実施形態において、第1の誘電物質は酸化亜鉛であり、第2の誘電物質は酸化錫であり、第3の誘電物質は酸化チタン(または、亜鉛・錫酸化物)であり、第4の誘電物質は酸化錫であり、第5の誘電物質は酸化亜鉛である。別の実施形態において、第1の誘電物質は酸化亜鉛であり、第2の誘電物質は酸化チタンであり、第3の誘電物質は酸化錫(または、亜鉛・錫酸化物)であり、第4の誘電物質は酸化チタンであり、第5の誘電物質は酸化亜鉛である。更に別の実施形態において、第1の誘電物質は酸化亜鉛であり、第2の誘電物質は亜鉛・錫酸化物であり、第3の誘電物質は酸化錫(または、酸化チタン)であり、第4の誘電物質は亜鉛・錫酸化物であり、第5の誘電物質は酸化亜鉛である。更に別の実施形態において、第1の誘電物質は亜鉛・錫酸化物であり、第2の誘電物質は酸化錫であり、第3の誘電物質は酸化チタンであり、第4の誘電物質は酸化錫であり、第5の誘電物質は酸化亜鉛である。更に別の実施形態において、第1の誘電物質は亜鉛・錫酸化物であり、第2の誘電物質は酸化チタンであり、第3の誘電物質は酸化錫であり、第4の誘電物質は酸化チタンであり、第5の誘電物質は酸化亜鉛である。更に別の実施形態において、第1の誘電物質は酸化錫であり、第2の誘電物質は酸化チタンであり、第3の誘電物質は亜鉛・錫酸化物であり、第4の誘電物質は酸化チタンであり、第5の誘電物質は酸化亜鉛である。更に別の実施形態において、第1の誘電物質は酸化錫であり、第2の誘電物質は酸化チタンであり、第3の誘電物質は亜鉛・錫酸化物であり、第4の誘電物質は酸化チタンであり、第5の誘電物質は酸化亜鉛である。更なる実施形態において、第1の誘電物質は酸化錫であり、第2の誘電物質は亜鉛・錫酸化物であり、第3の誘電物質は酸化チタンであり、第4の誘電物質は酸化錫であり、第5の誘電物質は酸化亜鉛である。多くのその他のバリエーションが、当業者に明白であろう。
【0054】
特に好ましくは、コーティング40には、濃度変調中間層90が設けられる。二層型低放射率コーティングの中間層は、特徴的に比較的大きな厚みを有する。例えば、中間層は、内側層の少なくとも約2倍、且つ/または、外側層の少なくとも約2倍の厚みであることが一般的である。その結果、厚い誘電層に関連する欠点は、中間層に関して特に重大である。よって、特に応力低減の点において、前述のグレーデッドフィルム領域を中間層に設けることが、特に好ましい。
【0055】
コーティング40が濃度変調中間層90を有する様々な実施形態を記載する。この実施形態の幾つかにおいては、コーティングには、濃度変調内側層30もが設けられている。ここで、内側層は、1つの所望の誘電体の濃度が実質的に連続的に減少し、別の所望の誘電体の濃度が実質的に連続的に増大するグレーデッドフィルム領域を含む。このような実施形態において、コーティングには、濃度変調外側層が設けられていてもよい。ここで、外側層は、1つの所望の誘電体の濃度が実質的に連続的に減少し、別の所望の誘電体の濃度が実質的に連続的に増大するグレーデッドフィルム領域を含む。これらの実施形態において、濃度変調内側層、中間層および外側層は、均質な誘電層同士間の不連続界面を含まないことが好ましい。
【0056】
すなわち、本発明は、コーティング40が、濃度変調内側層30、濃度変調中間層90および濃度変調外側層70を含む、好ましい実施形態を与える。表4に、このようなコーティングを例示する。ここで、「D1」、「D2」などの語は、それぞれ、第1の誘電物質、第2の誘電物質などを示す(D1およびD2は異なる物質であり、他の同様であり、しかしながらD1とD3などは同じ物質であってもよい。)。前述のように、各矢印は、基材からの距離の増大に伴う、1つの物質(矢印の左に示す物質)から別の物質(矢印の右に示す物質)へのフィルム組成の変化である、フィルム組成勾配を示す。この実施形態は、特定の誘電物質の使用を要求するものではない。逆に、あらゆる所望の誘電体を使用することができる。しかしながら、特定の誘電体が好ましい。下地層30の全てのフィルムは、下地層が実質的に酸化膜または窒化膜などからなるように、同じ反応性ガス種(酸化または窒化など)を用いて堆積されることが好ましい。これは、特に都合の良い堆積法が許容されるため、中間層90および外側層70に対しても好ましい。特に好ましい実施形態において、コーティング40の全体(または、少なくとも内側層30、中間層90および外側層70)が、均質な誘電層同士間の不連続界面を含まない。
【0057】
【表4】

【0058】
本発明は、コーティングが特に好ましい濃度変調内側層を含む、幾つかの実施形態を与える。ここで、変調内側層は、酸化錫を含む内側領域と、酸化亜鉛、亜鉛・錫酸化物または亜鉛・アルミニウム酸化物を含む外側領域とを含む。このような幾つかの実施形態において、コーティング40は、外側に向かって順に:濃度変調内側層30;第1の赤外放射層50;任意の第1のブロッカー層80;誘電中間層90;第2の赤外反射層150;任意の第2のブロッカー層;および誘電外側層70を含む二層型低放射率コーティングである。ここで、中間層および外側層は、従来の均質誘電層を含む、あらゆる所望の誘電フィルムによって形成することができる。代わりに、中間層および外側層の一方または両方が、前述したような、徐々に変化した組成を有していてもよい。このような別の実施形態において、コーティングは、外側に向かって順に:濃度変調内側層;赤外反射層;任意のブロッカー層;および誘電外側層を含む、「単層型」低放射率コーティング(すなわち、単一の赤外反射層を含む低放射率コーティング)である。ここで、外側層は、従来の均質誘電層を含む、あらゆる所望の誘電フィルムによって形成することができる。代わりに、外側層は、徐々に変化した組成を有していてもよい。
【0059】
好ましくは、濃度変調内側層は、実質的に連続的に減少する酸化錫の濃度と、実質的に連続的に増大する酸化亜鉛、亜鉛・錫酸化物または亜鉛・アルミニウム酸化物の濃度とを有する、第1のグレーデッドフィルム領域を含む。表5に、このようなコーティングを例示する。ここで、第1のグレーデッドフィルム領域は、酸化錫に富んだ内側領域と、酸化亜鉛、亜鉛・錫酸化物または亜鉛・アルミニウム酸化物に富んだ外側領域とを有する。おそらく最適には、外側領域は酸化亜鉛に富む。このような内側層は、例えば、図5Bに示すスパッタリング装置を用いて製造することができる。このような実施形態において、赤外反射層50は、内側層の酸化亜鉛に富んだ外側領域の上に直接に堆積されることが望ましい。これに連帯して、赤外反射層50は、銀フィルムであることが望まれる一方で、この酸化亜鉛に富んだ外側領域は、少なくとも約40オングストロームの実質的に純粋な酸化亜鉛を含むことが望ましい。
【0060】
【表5】

【0061】
表5の実施形態において、酸化錫に富んだ内側領域(実質的に酸化錫からなることが好ましい)は、基材上に直接に堆積することができる。代わりに、コーティングは、更に、(好ましくは少なくとも100オングストローム、おそらく最適には約50〜100オングストロームで)基材上に直接に堆積された二酸化ケイ素である、透明下地層を含む。この場合、酸化錫に富んだ内側領域は、二酸化ケイ素上に直接に堆積されることが好ましい。このような好ましい実施形態を、表6の最初の6つのコーティングによって例示する。別の好ましい実施形態を、表6の最後の6つのコーティングによって例示するが、このコーティングにおいては、基材の直上に二酸化ケイ素が堆積され、二酸化ケイ素は酸化錫に変化し、続いて、酸化亜鉛、亜鉛・錫酸化物または亜鉛・アルミニウムに変化する。この実施形態は、コーティングに、際立った耐性の土台を付与する。
【0062】
【表6】

【0063】
特に好ましい実施形態において、本発明は、外側に向かって連続して順に:(i)酸化錫に富む第1の高濃度領域;(ii)酸化錫濃度が実質的に連続的に減少し、酸化亜鉛濃度が実質的に連続的に増大する第1のグレーデッドフィルム領域;(iii)酸化亜鉛に富む第2の高濃度領域;(iv)酸化亜鉛濃度が実質的に連続的に減少し、酸化錫濃度が実質的に連続的に増大する第2のグレーデッドフィルム領域;(v)酸化錫に富む第3の高濃度領域;(vi)酸化錫濃度が実質的に連続的に減少し、酸化亜鉛濃度が実質的に連続的に増大する第3のグレーデッドフィルム領域;および、(vii)酸化亜鉛に富む第4の高濃度領域を含む濃度変調内側層を提供する。このような内側層は、例えば、図5Aのスパッタリング装置を用いて製造することができる。
【0064】
赤外反射フィルムに関しては、銀を使用することが好ましい。他の赤外反射金属(例えば、銅、金、白金、パラジウム、ニッケルおよび合金)を使用することも可能であるが、銀は、最も低い放射率と、最良の無色性とを付与する。別の場合、赤外反射フィルムは、銀以外の物質を含むが、完全に金属であるか、または実質的に金属である(非金属物質が1原子%以下である。)。しかしながら、純粋な銀または実質的に純粋な銀(5原子%以下のその他の物質を含む。)を使用することが好ましい。これは、可能な最低の放射率が得られる。各赤外反射フィルムは、例えば、不活性雰囲気において銀ターゲットをスパッタリングすることによって堆積することができる。各赤外反射層は、それぞれ、その上および下のフィルムとの不連続な内側および外側界面を有する。例えば、二層型低放射率コーティングにおいては、第1の銀フィルムは、その下の内側層30との不連続な内側界面と、その上のフィルム(ブロッカー層80または中間層90であり得る)との不連続な外側界面とを有し、第2の銀フィルムは、その下の中間層90との不連続な内側界面と、その上のフィルム(ブロッカー層180または外側層70であり得る)との不連続な外側界面とを有する。この実施形態は、とりわけ、コーティング40に極めて低い放射率を付与するため、好ましい。
【0065】
内側層の合計物理的厚みは、200オングストローム未満であることが好ましい。各赤外反射(例えば、銀)フィルムは、約40オングストローム〜約190オングストロームの物理的厚みを有することが好ましい。コーティングが2つの赤外反射フィルムを含む実施形態においては、中間層は、約150オングストローム〜約700オングストロームの合計物理的厚みを有することが望ましい。外側層の合計物理的厚みは、コーティングが1つの赤外反射層を有するか、複数の赤外反射層を有するかに関わらず、約100オングストローム〜約300オングストロームであることが好ましい。しかしながら、このパラグラフに記載した厚み範囲は単に好ましいものであって、実際の厚みがこれらの範囲外となるような多くの実施形態も予想されることが理解されるべきである。
【0066】
特定の実施形態において、コーティングは、1以上のグレーデッドフィルム領域を含み、その各々が、亜鉛および錫の第1の酸化物から、亜鉛および錫の第2の酸化物に変化する。例えば、このようなグレーデッドフィルム領域は、基材を、次のスパッタリングターゲットを通過するように連続的に移動させることによって形成することができる:純粋なまたは実質的に純粋な錫で形成された第1のターゲット、錫含有量の高い(例えば、約40%以上の錫)亜鉛−錫材料で形成された第2のターゲット、錫含有量の低い(例えば、約20%以下の錫)亜鉛−錫材料で形成された第3のターゲット、および、純粋な、または実質的に純粋な亜鉛で形成された第4のターゲット。このようなグレーデッドフィルム領域は、内側層、中間層または外側層に使用することができる。
【0067】
本発明はまた、コーテッド基材の好ましい製造方法を提供する。一般に、その方法は、誘電内側層30、誘電中間層90および誘電外側層70を含み、そのうちの少なくとも1つがグレーデッドフィルム領域を含むコーティング40を、堆積することを含む。このような性質の様々な好適なコーティングが記載されるが、本方法は、記載されたコーティングのいずれにも広げることができる。
【0068】
本発明の方法は、(各グレーデッドフィルム領域のフィルムの組成が、突然の不連続点を有さないように)フィルム組成に急激な変化を生じることなく、グレーデッドフィルムを堆積することを含むことが好ましい。好ましくは、グレーデッドフィルムは、1つの誘電物質から次の誘電物質へと(フィルムの厚み/基材からの距離の関数として)徐々に変化するように堆積される。これは、所定のスパッタリング区画における最終のターゲットと、後続の区画における最初の(または、唯一の)ターゲットとに、共通のターゲット物質を使用し、所定のターゲット区画における最初のターゲットと、先行する区画における最終の(または、唯一の)ターゲットとに、共通のターゲット物質を使用することを含むスパッタリング法によって、達成することが望ましい。特定の実施形態において、各スパッタリング区画は、隣接する各区画とは、少なくとも1つのチャンバー壁によって分離されている。この壁は、1つの区画から次の区画へと(例えば、基材の移動経路を限定するローラーまたはその他の基材支持体上を)基材が運ばれる狭い通路を特徴的に限定する。本発明の方法は、応力が積み重なり易い(すなわち、集中し易い)不連続界面を避ける一方で、製造者が、誘電内側層、中間層および/または外側層の特性を最適化するのを可能とする。
【0069】
特定の実施形態において、方法は、基材を、少なくとも3つの隣接するスパッタリング区画であって、その各々が誘電フィルムを堆積するように適合されている(例えば、各々が、反応性スパッタリング雰囲気および/またはセラミックターゲットを含む)スパッタリング区画を通過させることを含む。ここで、「隣接するスパタリング区画」という用語は、基材がその他の区画を通過することなく、連続的に通過するスパッタリング区画を意味するものとして用いられる。これら3つの区画のうちの少なくとも1つは、2以上のスパッタリングターゲットを備え、そのうちの少なくとも2つが異なるスパッタ可能物質を有している。この区画(「変化」区画)の最初のターゲットは、先行する区画の最終の(または、唯一の)ターゲットと同じスパッタ可能物質を有している。変化区画の最終のターゲットは、後続の区画の最初の(または、唯一の)ターゲットと同じスパッタ可能物質を有している。これは、おそらく図4〜5Bを参照することによってよく理解される(変化区画におけるターゲットは、共通の(すなわち、共用の)スパッタリング雰囲気においてスパッタリングされることが理解されるべきである。)。
【0070】
図4は、濃度変調中間層90の堆積に使用可能な一つの特定のスパッタリング装置を示す。このスパッタリングターゲットの配置は、例えば、表3の1番目のコーティングにおける中間層を生成するのに使用することができる。ここで、基材は、各々が2つの亜鉛ターゲットを備えた、2つのスパッタリング区画を通過する。これら2つの区画は、全ての区画において好ましいのと同様に、酸化雰囲気を与えられていることは好ましい。中間層の最も内側の領域は、実質的に酸化亜鉛からなる第1の均質フィルム領域として堆積される。次に、基材が、第1のターゲットが亜鉛であり、第2のターゲットが錫である区画を運ばれる。基材がこの区画を(基材移動経路99に沿って)移動すると、基材は、初め比較的大量の酸化亜鉛の流れに曝され、徐々に減少する量の酸化亜鉛の流れと、徐々に増大する酸化錫の流れとに曝され、区画の終わりに近づくと、比較的大量の酸化錫の流れに曝される。よって、この区画において、第1のグレーデッドフィルム領域が堆積される。その後、基材は、2つの錫ターゲットを備えた区画を運ばれる。これら二つの区画において、実質的に酸化錫からなる第2の均質フィルム領域が堆積される。次に、基材は、第1のターゲットが錫であり、第2のターゲットが亜鉛である区画を運ばれる。この区画で第2のグレーデッドフィルム領域が堆積される。その後、基材は、各々が2つの亜鉛ターゲットを備えた、2つのスパッタリング区画を運ばれる。これら2つの区画において、実質的に酸化亜鉛からなる第3の均質フィルム領域が堆積される。そして、基材は、第1のターゲットが亜鉛であり、第2のターゲットが錫である区画を運ばれる。ここで、第3のグレーデッドフィルム領域が堆積される。その後、基材は、2つの錫ターゲットを備えた区画を運ばれる。この2つの区画において、実質的に酸化錫からなる第4の均質フィルム領域が堆積される。次に、基材は、第1のターゲットが錫であり、第2のターゲットが亜鉛である区画を運ばれる。ここで、第4のグレーデッドフィルム領域が堆積される。最後に、基材は、各々が2つの亜鉛ターゲットを備えた、2つのスパタリング区画を運ばれ、これによって、中間層の最も外側の領域が、実質的に酸化亜鉛からなる第5の均質フィルム領域として堆積される。
【0071】
このように、基材は、スパッタリングラインを運ばれる際に曝される流れの組成に関して、急激な変化に曝されない。図4は、基材が運ばれるスパッタリングラインまたはコーターの一部のみを示していることが認識されるであろう。ラインまたはコーターは、その他のスパッタリング区画(図4には示されていない)を含み、ここでコーティング40の残りの部分が堆積される。スパッタリングラインおよびコーターは周知であり、よって、特定の一般的詳細(例えば、ローラーまたはその他の基材支持体、コーターの底部など)は、ここに示さない。
【0072】
図5Aは、濃度変調内側層30の堆積に使用可能な特定の一つのスパッタリング装置を示す。このスパッタリングターゲットの配置は、例えば、次の構造を有する中間層の生成に使用することができる:酸化錫→酸化亜鉛→酸化錫→酸化亜鉛。ここで、基材は、第1のターゲットが錫であり、第2のターゲットが亜鉛であるスパッタリング区画を運ばれる。次に、基材は、第1のターゲットが亜鉛であり、第2のターゲットが錫である区画を運ばれる。そして、基材は、第1のターゲットが錫であり、第2のターゲットが亜鉛である区画を運ばれる。最後に、基材は、第1のターゲットが亜鉛であり、第2のターゲットが錫である区画を運ばれる。
【0073】
本開示の表に示したフィルム積層体は、示されたフィルムのみからなる必要なないことが理解されるべきである。逆に、示されたフィルムの間(例えば、間、下方および/または上方)に、その他のフィルムを挟んでもよい。すなわち、表のフィルムは、その配列ではあっても、連続した配列である必要はない。しかしながら、好ましい実施形態においては、示されたフィルムは連続して配列している。更に、表は、銀の赤外反射層50,150を示しているが、その他の反射物質を使用してもよいことが理解されるべきである。更に、表に示したコーティングは、ブロッカー層を含むものとして示したが、ブロッカー層は厳格に要求されるものではない。この特定の開示という目的のため、ブロッカー層80は、付与される場合には、中間層90の一部とは考えない。また、ブロッカー層180は、付与される場合は、外側層70の一部とは考えない。好ましくは、ブロッカー層が付与される場合、各ブロッカー層は、均質誘電層ではなく、金属内側領域と誘電外側領域とを有する。逆の明言がない限りは、ここに報告される厚みは、光学厚みではなく、物理的厚みである。「実質的に連続的に減少する濃度」、「実質的に連続的に増大する濃度」などの用語は、ここでは、基材からの距離の増大に伴って、1つの誘電物質から他の誘電物質へと変化することを意味するものとして用いられ、この変化は、1つの物質から他の物質へと急激に変化する不連続界面においてではなく、グレーデッドフィルム領域の厚み全体に渡って生じるものである。このような変化の各々は、必須ではないが、徐々に変化するものであることが好ましい。開示された亜鉛・錫酸化物フィルムを含む実施形態においては、錫原子は、例えば、フィルムの全金属原子に対して約5〜10原子%未満を占めるものとすることができる。開示された亜鉛・アルミニウムフィルムにおけるアルミニウムに関して、アルミニウム原子は、例えば、フィルムの全金属原子に対して約2原子%未満を占めるものとすることができる。
【0074】
本発明の好ましい実施形態を記述してきたが、本発明の精神および添付クレームの範囲を逸脱することなく、数多くの変更、応用および改良が可能であることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、本発明の特定の実施形態に係る低放射率コーティングの部分的に切断された模式的な断面側面図である。
【図2】図2は、本発明の特定の実施形態に係る低放射率コーティングの中間部分の、部分的に切断された模式的な断面側面図である。
【図3】図3は、本発明の特定の実施形態に係る低放射率コーティングの中間部分の、部分的に切断された模式的な断面側面図である。
【図4】図4は、本発明の特定の実施形態に係るスパッタリング装置の模式的な側面図である。
【図5A】図5Aは、本発明の特定の実施形態に係るスパッタリング装置の模式的な側面図である。
【図5B】図5Bは、本発明の特定の実施形態に係るスパッタリング装置の模式的な側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低放射率コーティングを備えた基材であって、前記低放射率コーティングが、外側に向かって順に、
a)誘電内側層と、
b)日射反射性の高い物質を含む第1の赤外反射層と、
c)第1の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第2の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大している第1のグレーデッドフィルム領域を含み、前記第1の誘電物質と前記第2の誘電物質とは異なる物質である、濃度変調中間層と、
d)日射反射性の高い物質を含む第2の赤外反射層と、
e)誘電外側層とを含む、基材。
【請求項2】
前記濃度変調中間層が、前記中間層の厚み全体に渡って実質的に均一な屈折率を有する請求項1記載の基材。
【請求項3】
前記屈折率が、約1.9〜約2.2である請求項2記載の基材。
【請求項4】
前記濃度変調中間層が、均質な誘電層同士間の不連続な界面を含まない請求項1記載の基材。
【請求項5】
前記濃度変調中間層が、200オングストローム以上の厚みを有する均質なフィルム領域を含まない請求項1記載の基材。
【請求項6】
前記第1のグレーデッドフィルム領域において、前記第1の誘電物質の濃度が、前記第2の誘電物質が次第に増大するのに従って、次第に減少する請求項1記載の基材。
【請求項7】
前記第1の誘電物質が酸化錫であり、前記第2の誘電物質が酸化亜鉛であり、前記第1のグレーデッドフィルム領域が、酸化錫に富む内側領域から、酸化亜鉛に富む外側領域にまで延びている請求項1記載の基材。
【請求項8】
酸化錫に富む前記内側領域が、第1のブロッカー層の直上に配置されており、前記第1のブロッカー層が、前記第1の赤外反射層の直上に配置されている請求項7記載の基材。
【請求項9】
酸化亜鉛に富む前記外側領域が、少なくとも約40オングストロームの実質的に純粋な酸化亜鉛を、前記第2の赤外反射層の直下に含み、前記第2の赤外反射層が銀を含む請求項7記載の基材。
【請求項10】
前記濃度変調中間層が、外側に向かって連続して順に、
i) 前記第1の誘電物質に富む第1の高濃度領域と、
ii) 前記第1のグレーデッドフィルム領域と、
iii)前記第2の誘電物質に富む第2の高濃度領域と、
iv) 前記第2の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第3の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大しており、前記第2の誘電物質と前記第3の誘電物質とは異なる物質である、第2のグレーデッドフィルム領域と、
v) 前記第3の誘電物質に富む第3の高濃度領域とを含む、請求項1記載の基材。
【請求項11】
前記第3の誘電物質が酸化亜鉛であり、前記第3の高濃度領域が酸化亜鉛に富んだ領域である請求項10記載の基材。
【請求項12】
酸化亜鉛に富んだ前記領域が、少なくとも40オングストロームの実質的に純粋な酸化亜鉛を、前記第2の赤外反射層の直下に含み、前記第2の赤外反射層が銀を含む請求項11記載の基材。
【請求項13】
前記第1の誘電物質と前記第3の誘電物質とが、両方とも同じ物質であり、前記第1の高濃度領域と前記第3の高濃度領域とが、両方とも同じ物質に富む請求項10記載の基材。
【請求項14】
前記第1の誘電物質と前記第3の誘電物質とが、両方とも酸化亜鉛であり、前記第1の高濃度領域と前記第3の高濃度領域とが、両方とも酸化亜鉛に富んだ領域である請求項13記載の基材。
【請求項15】
前記第2の誘電物質が、酸化錫、亜鉛・錫酸化物および酸化チタンからなる群より選択される酸化物である請求項14記載の基材。
【請求項16】
前記第1の高濃度領域が、実質的に前記第1の誘電物質からなる第1の均質フィルム領域を含み、前記第2の高濃度領域が、実質的に前記第2の誘電物質からなる第2の均質フィルム領域を含み、前記第3の高濃度領域が、実質的に前記第3の誘電物質からなる第3の均質フィルム領域を含む請求項10記載の基材。
【請求項17】
前記均質フィルム領域の各々が、200オングストローム未満の厚みを有する請求項16記載の基材。
【請求項18】
前記第2の均質フィルム領域が、約180オングストローム未満の厚みを有する請求項17記載の基材。
【請求項19】
前記濃度変調中間層が、外側に向かって連続して順に、
i) 前記第1の誘電物質に富む第1の高濃度領域と、
ii) 前記第1のグレーデッドフィルム領域と、
iii)前記第2の誘電物質に富む第2の高濃度領域と、
iv) 前記第2の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第3の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大しており、前記第2の誘電物質と前記第3の誘電物質とは異なる物質である、第2のグレーデッドフィルム領域と、
v) 前記第3の誘電物質に富む第3の高濃度領域と、
vi) 前記第3の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第4の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大しており、前記第3の誘電物質と前記第4の誘電物質とは異なる物質である、第3のグレーデッドフィルム領域と、
vii)前記第4の誘電物質に富む第4の高濃度領域と、
viii) 前記第4の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第5の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大しており、前記第4の誘電物質と前記第5の誘電物質とは異なる物質である、第4のグレーデッドフィルム領域と、
ix)前記第5の誘電物質に富む第5の高濃度領域とを含む、請求項1記載の基材。
【請求項20】
前記第5の誘電物質が酸化亜鉛であり、前記第5の高濃度領域が、酸化亜鉛に富んだ領域である請求項19記載の基材。
【請求項21】
酸化亜鉛に富んだ前記領域は、少なくとも約40オングストロームの実質的に純粋な酸化亜鉛を、前記第2の赤外反射層の直下に含み、前記第2の赤外反射層が銀を含む請求項20記載の基材。
【請求項22】
前記第1、前記第3および前記第5の誘電物質が、全て同じ物質であり、前記第1、前記第3および前記第5の高濃度領域が、全て同じ物質に富む請求項19記載の基材。
【請求項23】
前記第1、前記第3および前記第5の誘電物質が、全て酸化亜鉛であり、前記第1、前記第3および前記第5の高濃度領域が、全て酸化亜鉛の富んだ領域である請求項22記載の基材。
【請求項24】
前記第2の誘電物質と前記第4の誘電物質とが、両方とも同じ物質であり、前記第2の高濃度領域と前記第4の高濃度領域とが、両方とも同じ物質に富む請求項19記載の基材。
【請求項25】
前記第2の誘電物質と前記第4の誘電物質とが、両方とも、酸化錫、亜鉛・錫酸化物および酸化チタンからなる群より選択される酸化物である請求項24記載の基材。
【請求項26】
前記第1の高濃度領域が、実質的に前記第1の誘電物質からなる第1の均質フィルム領域を含み、前記第2の高濃度領域が、実質的に前記第2の誘電物質からなる第2の均質フィルム領域を含み、前記第3の高濃度領域が、実質的に前記第3の誘電物質からなる第3の均質フィルム領域を含み、前記第4の高濃度領域が、実質的に前記第4の誘電物質からなる第4の均質フィルム領域を含み、前記第5の高濃度領域が、実質的に前記第5の誘電物質からなる第5の均質フィルム領域を含む、請求項19記載の基材。
【請求項27】
前記均質フィルム領域の各々が、200オングストローム未満の厚みを有する請求項26記載の基材。
【請求項28】
前記第2の均質フィルム領域および前記第4の均質フィルム領域が、それぞれ、約180オングストローム未満の厚みを有する請求項27記載の基材。
【請求項29】
前記誘電内側層が、第3の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第4の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大している第2のグレーデッドフィルム領域を含む濃度変調内側層であり、前記第3の誘電物質と前記第4の誘電物質とは異なる物質である、請求項1記載の基材。
【請求項30】
前記誘電外側層が、第5の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第6の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大している第3のグレーデッドフィルム領域を含む濃度変調外側層であり、前記第5の誘電物質と前記第6の誘電物質とは異なる物質である、請求項29記載の基材。
【請求項31】
前記濃度変調内側層、中間層および外側層が、均質な誘電層同士間の不連続な界面を含まない請求項30記載の基材。
【請求項32】
低放射率コーティングを備えた基材であって、前記低放射率コーティングが、外側に向かって順に、
a)酸化錫の濃度が実質的に連続的に減少し、酸化亜鉛または亜鉛・錫酸化物または亜鉛・アルミニウム酸化物の濃度が実質的に連続的に増大している第1のグレーデッドフィルム領域を含み、前記第1のグレーデッドフィルム領域が、酸化錫に富んだ内側領域から、酸化亜鉛または亜鉛・錫酸化物または亜鉛・アルミニウム酸化物に富んだ外側領域にまで延びている、濃度変調内側層と、
b)日射放射性の高い物質を含む第1の赤外反射層と、
c)誘電中間層と、
d)日射放射性の高い物質を含む第2の赤外反射層と、
e)誘電外側層とを含む、基材。
【請求項33】
前記第1のグレーデッドフィルム領域の酸化錫に富んだ前記内側領域が、実質的に酸化錫からなる請求項32記載の基材。
【請求項34】
前記第1のグレーデッドフィルム領域の酸化錫に富んだ前記内側部分が、基材の直上に堆積されている請求項32記載の基材。
【請求項35】
前記低放射率コーティングが、更に、基材の直上に堆積された二酸化ケイ素を含む透明下地層を含み、前記第1のグレーデッドフィルム領域の酸化錫に富んだ前記内側領域が、前記透明下地層の直上に堆積されている請求項32記載の基材。
【請求項36】
前記第1の赤外反射層が、前記第1のグレーデッドフィルム領域の前記外側領域の直上に堆積されている請求項32記載の基材。
【請求項37】
前記第1のグレーデッドフィルム領域の前記外側領域が、少なくとも約40オングストロームの実質的に純粋な酸化亜鉛を、前記第1の赤外反射層の直下に含み、前記第1の赤外反射層が銀を含む請求項36記載の基材。
【請求項38】
前記濃度変調内側層が、外側に向かって連続して順に、
i) 酸化錫に富んだ第1の高濃度領域と、
ii) 前記第1のグレーデッドフィルム領域と、
iii)酸化亜鉛または亜鉛・錫酸化物に富んだ第2の高濃度領域と、
iv) 酸化亜鉛または亜鉛・錫酸化物の濃度が実質的に連続的に減少し、酸化錫の濃度が実質的に連続的に増大している第2のグレーデッドフィルム領域と、
v) 酸化錫に富んだ第3の高濃度領域と、
vi) 酸化錫の濃度が実質的に連続的に減少し、酸化亜鉛または亜鉛・錫酸化物の濃度が実質的に連続的に増大している第3のグレーデッドフィルム領域と、
vii)酸化亜鉛または亜鉛・錫酸化物に富んだ第4の高濃度領域とを含む、請求項32記載の基材。
【請求項39】
少なくとも3つの隣接したスパッタリング区画を含み、その各々が、誘電フィルムを堆積するように適合されているスパッタリングラインであって、前記区画の少なくとも1つが、2以上のスパッタリングターゲットを備え、そのうちの少なくとも2つのターゲットが異なるスパッタリング可能物質を有している変化区画であり、前記変化区画の最初のターゲットが、先行する区画の最後または唯一のターゲットと同じスパッタリング可能物質を有し、前記変化区画の最後のターゲットが、後続の区画の最初または唯一のターゲットと同じスパッタリング可能物質を有している、スパッタリングライン。
【請求項40】
コーテッド基材の製造方法であって、
a)少なくとも3つの隣接したスパッタリング区画を含み、その各々が、誘電フィルムを堆積するように適合されているスパタリングラインであって、前記区画の少なくとも1つが、2以上のスパッタリングターゲットを備え、そのうちの少なくとも2つのターゲットが異なるスパッタリング可能物質を有している変化区画であり、前記変化区画の最初のターゲットが、先行する区画の最後または唯一のターゲットと同じスパッタリング可能物質を有し、前記変化区画の最後のターゲットが、後続の区画の最初または唯一のターゲットと同じスパッタリング可能物質を有している、スパッタリングラインを用意し、
b)基材を前記スパッタリングラインを通過させるように運び、前記ターゲットをスパッタリングして、前記基材上に、グレーデッドフィルム領域を含むコーティングを堆積することを含む方法。
【請求項41】
コーテッド基材の製造方法であって、基材上に低放射率コーティングを堆積することを含み、前記コーティングが、外側に向かって順に、
a)誘電内側層と、
b)日射反射性の高い物質を含む第1の赤外反射層と、
c)第1の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第2の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大している第1のグレーデッドフィルム領域を含み、前記第1の誘電物質と前記第2の誘電物質とは異なる物質である、濃度変調中間層と、
d)日射反射性の高い物質を含む第2の赤外反射層と、
e)誘電外側層とを含む、方法。
【請求項42】
前記濃度変調中間層が、前記中間層の厚み全体に渡って実質的に均一な屈折率を有するフィルムとして堆積される請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記濃度変調中間層が、約1.9〜約2.2の屈折率を有するフィルムとして堆積される請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記濃度変調中間層が、均質な誘電層同士間の不連続な界面が存在しないフィルムとして堆積される請求項41記載の方法。
【請求項45】
前記濃度変調中間層が、200オングストローム以上の厚みを有する均質なフィルム領域が存在しないフィルムとして堆積される請求項41記載の方法。
【請求項46】
前記第1のグレーデッドフィルム領域が、前記第2の誘電物質が次第に増大するのに従って、前記第1の誘電物質の濃度が次第に減少するフィルムとして堆積される請求項41記載の方法。
【請求項47】
前記第1の誘電物質が酸化錫であり、前記第2の誘電物質が酸化亜鉛であり、前記第1のグレーデッドフィルム領域が、酸化錫に富む内側領域から、酸化亜鉛に富む外側領域にまで延びるように堆積されている請求項41記載の方法。
【請求項48】
酸化錫に富む前記内側領域が、第1のブロッカー層の直上に堆積され、前記第1のブロッカー層が、前記第1の赤外反射層の直上に堆積される請求項47記載の方法。
【請求項49】
酸化亜鉛に富む前記外側領域が、少なくとも約40オングストロームの実質的に純粋な酸化亜鉛を、前記第2の赤外反射層の直下に含むフィルムとして堆積され、前記第2の赤外反射層が銀を含むフィルムとして堆積される請求項47記載の方法。
【請求項50】
前記濃度変調中間層が、外側に向かって連続して順に、
i) 前記第1の誘電物質に富む第1の高濃度領域と、
ii) 前記第1のグレーデッドフィルム領域と、
iii)前記第2の誘電物質に富む第2の高濃度領域と、
iv) 前記第2の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第3の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大しており、前記第2の誘電物質と前記第3の誘電物質とは異なる物質である、第2のグレーデッドフィルム領域と、
v) 前記第3の誘電物質に富む第3の高濃度領域とを含むフィルムとして堆積される、請求項41記載の方法。
【請求項51】
前記第3の誘電物質が酸化亜鉛であり、前記第3の高濃度領域が酸化亜鉛に富んだ領域として堆積される請求項50記載の方法。
【請求項52】
酸化亜鉛に富んだ前記領域が、少なくとも40オングストロームの実質的に純粋な酸化亜鉛を、前記第2の赤外反射層の直下に含むフィルムとして堆積され、前記第2の赤外反射層が、銀を含むフィルムとして堆積される請求項51記載の方法。
【請求項53】
前記第1の誘電物質と前記第3の誘電物質とが、両方とも同じ物質であり、前記第1の高濃度領域と前記第3の高濃度領域とが、両方とも同じ物質に富む領域として堆積される請求項50記載の方法。
【請求項54】
前記第1の誘電物質と前記第3の誘電物質とが、両方とも酸化亜鉛であり、前記第1の高濃度領域と前記第3の高濃度領域とが、両方とも酸化亜鉛に富んだ領域として堆積される請求項53記載の方法。
【請求項55】
前記第2の誘電物質が、酸化錫、亜鉛・錫酸化物および酸化チタンからなる群より選択される酸化物である請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記第1の高濃度領域が、実質的に前記第1の誘電物質からなる第1の均質フィルム領域を含むフィルムとして堆積され、前記第2の高濃度領域が、実質的に前記第2の誘電物質からなる第2の均質フィルム領域を含むフィルムとして堆積され、前記第3の高濃度領域が、実質的に前記第3の誘電物質からなる第3の均質フィルム領域を含むフィルムとして堆積される、請求項50記載の方法。
【請求項57】
前記均質フィルム領域の各々が、200オングストローム未満の厚みで堆積される請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記第2の均質フィルム領域が、約180オングストローム未満の厚みで堆積される請求項57記載の方法。
【請求項59】
前記濃度変調中間層が、外側に向かって連続して順に、
i) 前記第1の誘電物質に富む第1の高濃度領域と、
ii) 前記第1のグレーデッドフィルム領域と、
iii)前記第2の誘電物質に富む第2の高濃度領域と、
iv) 前記第2の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第3の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大しており、前記第2の誘電物質と前記第3の誘電物質とは異なる物質である、第2のグレーデッドフィルム領域と、
v) 前記第3の誘電物質に富む第3の高濃度領域と、
vi) 前記第3の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第4の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大しており、前記第3の誘電物質と前記第4の誘電物質とは異なる物質である、第3のグレーデッドフィルム領域と、
vii)前記第4の誘電物質に富む第4の高濃度領域と、
viii) 前記第4の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第5の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大しており、前記第4の誘電物質と前記第5の誘電物質とは異なる物質である、第4のグレーデッドフィルム領域と、
ix)前記第5の誘電物質に富む第5の高濃度領域とを含むフィルムとして堆積される、請求項41記載の方法。
【請求項60】
前記第5の誘電物質が酸化亜鉛であり、前記第5の高濃度領域が、酸化亜鉛に富んだ領域として堆積される請求項59記載の方法。
【請求項61】
酸化亜鉛に富んだ前記領域が、少なくとも約40オングストロームの実質的に純粋な酸化亜鉛を、前記第2の赤外反射層の直下に含むフィルムとして堆積され、前記第2の赤外反射層が、銀を含むフィルムとして堆積される請求項60記載の方法。
【請求項62】
前記第1、前記第3および前記第5の誘電物質が、全て同じ物質であり、前記第1、前記第3および前記第5の高濃度領域が、全て同じ物質に富むフィルムとして堆積される請求項59記載の方法。
【請求項63】
前記第1、前記第3および前記第5の誘電物質が、全て酸化亜鉛であり、前記第1、前記第3および前記第5の高濃度領域が、全て酸化亜鉛に富んだ領域として堆積される請求項62記載の方法。
【請求項64】
前記第2の誘電物質と前記第4の誘電物質とが、両方とも同じ物質であり、前記第2の高濃度領域と前記第4の高濃度領域とが、両方とも同じ物質に富むフィルムとして堆積される請求項59記載の方法。
【請求項65】
前記第2の誘電物質と前記第4の誘電物質とが、両方とも、酸化錫、亜鉛・錫酸化物および酸化チタンからなる群より選択される酸化物として堆積される請求項64記載の方法。
【請求項66】
前記第1の高濃度領域が、実質的に前記第1の誘電物質からなる第1の均質フィルム領域を含むフィルムとして堆積され、前記第2の高濃度領域が、実質的に前記第2の誘電物質からなる第2の均質フィルム領域を含むフィルムとして堆積され、前記第3の高濃度領域が、実質的に前記第3の誘電物質からなる第3の均質フィルム領域を含むフィルムとして堆積され、前記第4の高濃度領域が、実質的に前記第4の誘電物質からなる第4の均質フィルム領域を含むフィルムとして堆積され、前記第5の高濃度領域が、実質的に前記第5の誘電物質からなる第5の均質フィルム領域を含むフィルムとして堆積される、請求項59記載の方法。
【請求項67】
前記均質フィルム領域の各々が、200オングストローム未満の厚みで堆積される請求項66記載の方法。
【請求項68】
前記第2の均質フィルム領域および前記第4の均質フィルム領域が、それぞれ、約180オングストローム未満の厚みで堆積される請求項67記載の方法。
【請求項69】
前記誘電内側層が、第3の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第4の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大している第2のグレーデッドフィルム領域を含み、前記第3の誘電物質と前記第4の誘電物質とは異なる物質である濃度変調内側層として堆積される、請求項41記載の方法。
【請求項70】
前記誘電外側層が、第5の誘電物質の濃度が実質的に連続的に減少し、第6の誘電物質の濃度が実質的に連続的に増大している第3のグレーデッドフィルム領域を含み、前記第5の誘電物質と前記第6の誘電物質とは異なる物質である濃度変調外側層として堆積される、請求項69記載の方法。
【請求項71】
前記濃度変調内側層、中間層および外側層が、それぞれ、均質な誘電層同士間の不連続な界面を含まないフィルムとして堆積される請求項70記載の方法。
【請求項72】
コーテッド基材の製造方法であって、基材上に低放射コーティングを堆積することを含み、前記コーティングが、外側に向かって順に、
a)酸化錫の濃度が実質的に連続的に減少し、酸化亜鉛または亜鉛・錫酸化物または亜鉛・アルミニウム酸化物の濃度が実質的に連続的に増大している第1のグレーデッドフィルム領域を含み、前記第1のグレーデッドフィルム領域が、酸化錫に富んだ内側領域から、酸化亜鉛または亜鉛・錫酸化物または亜鉛・アルミニウム酸化物に富んだ外側領域にまで延びている、濃度変調内側層と、
b)日射放射性の高い物質を含む第1の赤外反射層と、
c)誘電中間層と、
d)日射放射性の高い物質を含む第2の赤外反射層と、
e)誘電外側層とを含む、方法。
【請求項73】
前記第1のグレーデッドフィルム領域の酸化錫に富んだ前記内側領域が、実質的に酸化錫からなるフィルムとして堆積される請求項72記載の方法。
【請求項74】
前記第1のグレーデッドフィルム領域の酸化錫に富んだ前記内側部分が、基材の直上に堆積される請求項72記載の方法。
【請求項75】
前記低放射率コーティングが、更に、基材の直上に堆積された二酸化ケイ素を含む透明下地層を含み、前記第1のグレーデッドフィルム領域の酸化錫に富んだ前記内側領域が、前記透明下地層の直上に堆積される請求項72記載の方法。
【請求項76】
前記第1の赤外反射層が、前記第1のグレーデッドフィルム領域の前記外側領域の直上に堆積される請求項72記載の方法。
【請求項77】
前記第1のグレーデッドフィルム領域の前記外側領域が、少なくとも約40オングストロームの実質的に純粋な酸化亜鉛を、前記第1の赤外反射層の直下に含むフィルムとして堆積され、前記第1の赤外反射層が、銀を含むフィルムとして堆積される請求項76記載の方法。
【請求項78】
前記濃度変調内側層が、外側に向かって連続して順に、
i) 酸化錫に富んだ第1の高濃度領域と、
ii) 前記第1のグレーデッドフィルム領域と、
iii)酸化亜鉛または亜鉛・錫酸化物に富んだ第2の高濃度領域と、
iv) 酸化亜鉛または亜鉛・錫酸化物の濃度が実質的に連続的に減少し、酸化錫の濃度が実質的に連続的に増大している第2のグレーデッドフィルム領域と、
v) 酸化錫に富んだ第3の高濃度領域と、
vi) 酸化錫の濃度が実質的に連続的に減少し、酸化亜鉛または亜鉛・錫酸化物の濃度が実質的に連続的に増大している第3のグレーデッドフィルム領域と、
vii)酸化亜鉛または亜鉛・錫酸化物に富んだ第4の高濃度領域とを含むフィルムとして堆積される請求項72記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−526197(P2007−526197A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517579(P2006−517579)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/020128
【国際公開番号】WO2005/003049
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】