説明

炊飯器

【課題】蓋センサーの信号に基づいて加熱電力を段階的に下げることにより、特に水分の多いおかゆ等のメニューでのふきこぼれを防止することができる炊飯器を提供すること。
【解決手段】陶磁器製の内鍋と、該内鍋を収納する内ケースと、前記内鍋を加熱する加熱手段と、蓋センサー及びセンターセンサーと、前記加熱手段の加熱状態を制御する加熱制御手段と、表示部を有する操作部とを備え、炊飯工程に少なくとも昇温工程及び炊き上げ工程を有する炊飯器において、前記加熱制御手段の制御に、前記蓋センサーの信号に基づいて消費電力量を段階的に下げるようにしてなる炊飯器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器に係り、特に炊飯用の内鍋として土鍋等の陶磁器製のものを用いる炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に炊飯器は、誘導コイル、蓋ヒータ及び側面ヒータ等の複数の加熱手段を持ち、これら加熱手段を駆使して自動的に炊飯及び保温を行いユーザーに最適なご飯等を提供する非常に便利な器具として広く知られている。
【0003】
炊飯器の工程は、お米に充分な水を吸水させる吸水工程、火力をあげてお米を炊き上げる昇温工程、お米を炊き上げる炊き上げ工程、その後のむらし工程からなる炊飯工程と、炊飯工程後の保温工程とからなり、各工程では、誘導コイル、蓋ヒータ及び側面ヒータ等の加熱手段への出力がセンターセンサー等の検出信号に基づいて制御され、最適な工程制御が行われている。
【0004】
従来炊飯用の内鍋は金属製のものが用いられており、例えば、図7に示すような加熱制御が行われる。図に基づいてその制御の概略を説明すると、その制御は、昇温工程においてステップS3で沸騰温度の検出を判断し、沸騰温度を検出すると以後の沸騰維持加熱を沸騰温度検出時の出力で行なうもので、より適切な炊飯加熱を行なうことができる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、金属製の内鍋は、熱し易く冷め易いという特性を有し、特に、炊飯後は冷め易いので保温工程時にエネルギを要する等の問題を有していた。このような金属製の内鍋の欠点を補うために本出願人は、陶磁器製の土鍋を使用すること提案している。即ち、陶磁器製のものは、熱容量が金属製のものに比べて大きいので、炊飯時の昇温速度が比較的穏やかであり、蓄熱性がよいため美味しく米飯を炊き上げることができるとともに、保温効果が高く省エネに資することができる等の利点がある。
【0006】
ところが、図7に示すような加熱制御を用いて土鍋の加熱制御を行なうと以下のようなような弊害が生じた。即ち、上記したように土鍋は蓄熱製がよいため、沸騰温度検出時の加熱出力で以後の加熱制御を行なうと土鍋の温度が沸騰温度以上になり、特に水分の多いおかゆ等のメニューではふきこぼれが発生した。
【特許文献1】特開平6−46952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、蓋センサーの信号に基づいて加熱電力を昇温工程及び炊き上げ工程において段階的に下げることにより、特に水分の多いおかゆ等のメニューでのふきこぼれを防止することができる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。
【0009】
請求項1に係る発明では、陶磁器製の内鍋と、該内鍋を収納する内ケースと、前記内鍋を加熱する加熱手段と、蓋体に設けられた蓋体の温度を検出する蓋センサー及び炊飯器本体に設けられた内鍋の温度を検出するセンターセンサーと、前記加熱手段の加熱状態を制御する加熱制御手段と、表示部を有する操作部とを備え、炊飯工程に少なくとも昇温工程及び炊き上げ工程を有する炊飯器において、前記加熱制御手段の制御に、前記蓋センサーの信号に基づいて消費電力量を段階的に下げる制御を有し、請求項2に係る発明では、前記制御は、昇温工程から炊き上げ工程にかけての制御である構成。そしてこのような構成により、土鍋の温度上昇が抑えられおかゆ等のふきこぼれがなくなる。
【0010】
請求項3に係る発明では、前記炊き上げ工程において、前記蓋センサーでの検知温度とセンターセンサーでの検知温度とが等しくなるように消費電力量を調整する構成。そしてこのような構成により、炊き上げ工程においても金属鍋同様、沸騰温度近傍での炊き上げ工程制御が可能になる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、蓋センサーにより沸騰温度以下の複数の所定温度を順次検出し、検出に応じて加熱出力を順次下げて加熱制御を行い、請求項2に係る発明では、その制御を昇温工程から炊き上げ工程にかけて行なうことにより、土鍋の蓄熱性の高さに起因した温度上昇を抑えることができ、特に水分の多いおかゆ等のメニューでのふきこぼれを防止することができる。なお、加熱出力を段階的に下げる制御は、昇温工程(昇温1工程及び昇温2工程)及び炊き上げ工程においての制御を意味する。
【0012】
請求項3に係る発明では、炊き上げ工程において、蓋センサーでの検知温度とセンターセンサーでの検知温度とを等しくなるように加熱電力を調整することにより、炊き上げ工程においても金属鍋同様、沸騰温度近傍での炊き上げ工程制御を行なうことができ、よりおいしいおかゆ等を加熱調理することができる。
【実施例】
【0013】
図1に内ケースに土鍋をセットした状態を示す炊飯器の縦断面図を示し、図2に操作パネルの正面図を示し、図3に炊飯器の制御回路部分のシステムブロック図を示し、図4に炊飯工程のタイムチャート図を示す。本発明は、水分の多いおかゆ等の炊飯に特に適しているが、ご飯等の通常の炊飯工程にも適用可能である。以下においてはおかゆ炊飯を例にして説明する。
【0014】
炊飯器は、炊飯器本体1と、この炊飯器本体1の上部開口を開閉する蓋体2とを備え、蓋体2はヒンジユニット3を介して炊飯器本体1に開閉自在に支持される。炊飯器本体1は、合成樹脂製の外ケース5を有し、この外ケース5の内部には、陶磁器製の内鍋である土鍋6が着脱自在にセットされるとともに、この土鍋6の外側には当該土鍋6の形状に沿った保護枠である内ケース7が設けられる。この内ケース7は、例えばポリエチレンテレフタレート等の耐熱性の合成樹脂製のもので、その底部中央にはサーミスタからなるセンターセンサー9を臨ませるためのセンサー挿入孔7aが形成される。
【0015】
内ケース7の上端は外ケース5の上端と肩部材8を介して一体的に結合され、外ケース5、内ケース7、及び肩部材8に囲まれた内部に空間部10が形成される。前記内ケース7の外側には、土鍋6を誘導加熱する底部誘導コイル11及び側部誘導コイル12が設けられる。これら底部誘導コイル11及び側部誘導コイル12は、内ケース7の底部、及び底部から周側部に至る湾曲部の各位置に、内ケース7の底部中央を中心として同心円状且つ直列状に設けられている。
【0016】
これら底部誘導コイル11及び側部誘導コイル12の外側には合成樹脂製のコイル支持台13が設けられており、このコイル支持台13がネジ等で内ケース7に取り付けられることにより、底部誘導コイル11及び側部誘導コイル12は図示する所定位置に位置決め固定され、コイル支持台13の外側には、磁界閉込用のフェライトコア15が設けられる。
【0017】
また、内ケース7の上部の外周側部には、側面ヒータ14が設けられる。この側面ヒータ14は、側面上ヒータ14a、側面中ヒータ14b及び側面下ヒータ14cからなり、それぞれ通常のニクロム線を内ケース7の上部の外周側部に1回巻き付けたものを上から下に並列に配置してなり、それぞれは別々に制御されるが、同時制御でもよい。この例では図4に示すようにそれぞれの工程では同じ出力で制御している。そのように側面ヒータを上下に亘り複数列にすることにより側面を広い範囲に亘ってほぼ均一に加熱することができる。
【0018】
前記土鍋6は、焼成セラミックスやガラスなどの陶磁器製のもので、この土鍋6の底部には、内ケース7の底部と当接するリング状の脚部6aが形成されている。なお、この脚部6aはリング状のものに限らず、局部的に形成したり、放射状に形成するものでも良い。
【0019】
この脚部6aは、内ケース7の底部側の底部誘導コイル11と湾曲部側の側部誘導コイル12との間に設けられるとともに、内ケース7との間に一定の隙間S1が生じるように所定高さに形成される。また、この土鍋6には、底部誘導コイル11及び側部誘導コイル12のそれぞれに対向する箇所に金属被膜からなる底部発熱体11a及び側部発熱体12aが設けられる。
【0020】
これら底部発熱体11a及び側部発熱体12aは、例えば銀ペーストなどを塗布、焼成するなどして形成される。土鍋6の脚部6aは、凹凸のある表面になっているので発熱体を形成することが難しいが、この脚部6aの形成箇所は、底部誘導コイル11及び側部誘導コイル12のいずれの対向位置から外れているため、炊飯性能への影響はない。なお、発熱体は、銅箔やステンレス製の網(ラス)などのような金属製のものを予め土鍋6の内部に一体的に埋め込んだ構成としても良い。
【0021】
炊飯スイッチが入れられると底部誘導コイル11及び側部誘導コイル12により誘起される渦電流に起因したジュール熱により前記底部発熱体11a及び側部発熱体12aが加熱され、両発熱体の加熱により土鍋6が加熱される。
【0022】
さらに、土鍋6の底部のセンターセンサー9が当接するドーム状の中央部6bは、他の部分よりも強度を損なわない程度に若干薄肉に形成されている。このように、土鍋6の中央部6bを薄肉にすることにより、底部発熱体11a及び側部発熱体12aからの熱が容易にこの薄肉の中央部6bまで伝導するので、センターセンサー9の検出精度を高めることができ、底部誘導コイル11及び側部誘導コイル12への通電電力を適切に制御することができる。
【0023】
符号18は操作部を構成する操作パネルであり、該操作パネル18には図2に示すように、各種スイッチ16、即ち、炊飯スイッチ16a、保温スイッチ16b、白米、早炊き、おかゆ等の各種メニューを設定するメニュースイッチ16c、時間を設定するタイマースイッチ16d及び設定を取り消す取消しスイッチ16e、並びに液晶表示部17が配設される。
【0024】
符号19はマイクロコンピュータが搭載されたマイコン基板、20は底部誘導コイル11及び側部誘導コイル12への通電制御を行うためのインバータ等を有する電源回路が搭載された電源基板、21は上記の各基板19、20を冷却する基板冷却用フアンである。なお、26は蒸気排出口、27は把手である。
【0025】
前記蓋体2の内面には、閉蓋時土鍋6の上方開口部を閉蓋する形態でアルミ製の内蓋24が取り付けられ、この内蓋24の上方には放熱板22が設けられる。放熱板22の上面には、蓋センサー23及び蓋ヒータ25が取り付けられる。この蓋センサー23は、サーミスタからなり土鍋6内のおかゆの温度を間接的に検知する。蓋ヒータ25は、通常のニクロム線からなるシーズヒータで放熱板22の上面に略一周蛇行して配設されており、放熱板22のほぼ全面を均一に加熱する。
【0026】
次に、炊飯及び保温制御用のマイコン制御装置100を中心とする誘導コイル11、12及び側面ヒータ14、蓋ヒータ25等の制御回路部の一例の概略を図3に示す。図中、符号40が炊飯・保温制御用のマイコン制御ユニット(CPU)であり、該マイコン制御ユニット40はマイクロコンピュータを中心とし、例えば温度検知回路部、誘導コイル駆動制御回路部、発振回路部、リセット回路部、側面ヒータ及び蓋ヒータ等駆動制御回路部、電源回路部、液晶表示部、操作スイッチ等を各々備えて構成される。
【0027】
前記土鍋6の底壁部に当接されるセンターセンサー9、或いは放熱板22に取り付けられる蓋センサー23に対応して設けられる温度検知回路48には、センターセンサー9、或いは蓋センサー23での温度検知信号が入力される。また、前記誘導コイル駆動制御回路部は、例えばパルス幅変調回路46、同期トリガー回路53、IGBT駆動回路45、IGBT50、共振コンデンサ51によって形成されている。
【0028】
前記マイコン制御ユニット40により、炊飯工程に応じた底部誘導コイル11及び側部誘導コイル12の出力値及び同出力値でのONデューティー比(例えばn秒/16秒)が選定され、前記パルス幅変調回路46等を制御することにより、土鍋6に適した均一な吸水作用と加熱ムラのない御飯の炊き上げ等の適切な加熱制御が行われる。
【0029】
なお、符号Dは前記IGBT45のフライホイールダイオード、符号55は、家庭用AC電源57との間に挿入された前記誘導コイル駆動用のダイオードブリッジを内蔵した整流回路、52はその平滑回路である。
【0030】
符号14は上述の側面ヒータ、25は蓋ヒータであり、側面ヒータ14は側面ヒータ駆動回路56により、蓋ヒータ25は蓋ヒータ駆動回路54により、それぞれ所望のデューティー比でON、OFF駆動されるようになっている。さらに、符号17は液晶、LED等の表示部、43はブザー等の報知部、16は炊飯スイッチ16a、保温スイッチ16b、タイマースイッチ16d等の各種操作スイッチ、47はクロック基準制御信号形成用の発振回路、44はリセット回路である。
【0031】
次に上述のマイコン制御ユニット40を使用して行われるおかゆの炊飯制御について、図4のタイムチャートを参照して説明する。図は炊飯工程のみを示しているが、保温工程を有していれば引き続いて保温工程が実行される。
【0032】
炊飯工程では、誘導コイル11、12の出力を所定値に上げることにより、まずお米に水を吸水させるための吸水工程が、所定時間(10分)の間メインIH、即ち、底部誘導コイル11及び側部誘導コイル12を出力70%、ONデューティー比8/16で実行される(側面ヒータ14及び蓋ヒータ25はOFF)。お米に充分な吸水が行われると、出力を急激に上げ、お米を一気に炊き上げる昇温工程が実行される。
【0033】
昇温工程は、昇温1工程及び昇温2工程の2段階からなる。昇温1工程は、蓋センサー23が第1の所定温度T1である53℃を検知するまでメインIHを出力70%、ONデューティー比16/16で、蓋ヒータ25をOFFで、側面ヒータである側面上ヒータ14a、側面中ヒータ14b及び側面下ヒータ14cのそれぞれをONデューティー比10/16の大電力で実行される。なお、安全のため40分の時間を設定することができる。この時間を設定することにより、例えば蓋センサー23の故障等で蓋センサー23が40分以内に53℃を検知しなかった場合には次の昇温2工程に移行する。必要に応じてこの昇温1工程で、昇温時間に基づいて内鍋内の米飯量である合数を判定し、米飯量の合数に応じて以後の炊き上げ工程の時間を決定するようにしてもよい。
【0034】
昇温2工程に移行すると、蓋センサー23が第2の所定温度T2である65℃を検知するまでメインIHを出力60%、ONデューティー比12/16で、蓋ヒータ25をOFFで、側面ヒータである側面上ヒータ14a、側面中ヒータ14b及び側面下ヒータ14cのそれぞれをONデューティー比10/16の昇温1工程より小さい中電力で実行される。なお、安全のため10分の時間を設定することができる。この時間を設定することにより、例えば蓋センサー23の故障等で蓋センサー23が10分以内に65℃を検知しなかった場合には次の炊き上げ工程に移行する。
【0035】
昇温2工程が終了すると、沸騰温度を維持する炊き上げ工程が、所定時間(33分)の間メインIHを出力60%、ONデューティー比3/16で、蓋ヒータ25をONデューティー比6/16で、側面ヒータである側面上ヒータ14a、側面中ヒータ14b及び側面下ヒータ14cのそれぞれをONデューティー比8/16の昇温2工程より小さい小電力で実行され、蓋センサー23での検知温度が沸騰温度Tfである100℃に維持されるように加熱制御される。なお、所定時間(33分)は、合数に応じて増減してもよい。
【0036】
炊き上げ工程後、むらし工程が実行され炊飯工程を終了する。むらし工程は、所定時間(7分)蓋ヒータ25をONデューティー比6/16で、側面ヒータである側面上ヒータ14a、側面中ヒータ14b及び側面下ヒータ14cのそれぞれをONデューティー比8/16の電力で実行される。
【0037】
次いで、土鍋6でのおかゆ炊飯制御を図5のフローチャートに基づいて説明する。各種スイッチ16のメニュースイッチ16cでおかゆ炊飯を選択し、炊飯スイッチ16aを押すと炊飯工程がスタートする。
【0038】
まずステップS1で吸水工程が実行される。吸水工程は、メインIH、即ち、底部誘導コイル11及び側部誘導コイル12を出力70%、ONデューティー比8/16で、蓋ヒータ25及び側面ヒータである側面上ヒータ14a、側面中ヒータ14b、側面下ヒータ14cのそれぞれをOFFで実行され、その後、ステップS2で10分経過したかどうかが判断される。
【0039】
ステップS2で10分経過していなければその判断が繰り返され、ステップS2で肯定判定がなされると吸水工程を終了してステップS3の昇温1工程に進む。昇温1工程では、メインIHを出力70%、ONデューティー比16/16で、蓋ヒータ25をOFFで、側面ヒータである側面上ヒータ14a、側面中ヒータ14b及び側面下ヒータ14cのそれぞれをONデューティー比10/16の大電力で実行され、その後、ステップS4で蓋センサー23が第1の所定温度T1である53℃を検知したかどうかが判断される。
【0040】
ステップS4で53℃を検知していなければその判断が繰り返され、ステップS4で肯定判定がなされると昇温1工程を終了してステップS5の昇温2工程に進む。昇温2工程では、メインIHを出力60%、ONデューティー比12/16で、蓋ヒータ25をOFFで、側面ヒータである側面上ヒータ14a、側面中ヒータ14b及び側面下ヒータ14cのそれぞれをONデューティー比10/16の昇温1工程より小さい中電力で実行され、その後、ステップS6で蓋センサー23が第2の所定温度T2である65℃を検知したかどうかが判断される。
【0041】
ステップS6で65℃を検知していなければその判断が繰り返され、ステップS6で肯定判定がなされると昇温2工程を終了してステップS7の炊き上げ工程に進む。炊き上げ工程では、メインIHを出力60%、ONデューティー比3/16で、蓋ヒータ25をONデューティー比6/16で、側面ヒータである側面上ヒータ14a、側面中ヒータ14b及び側面下ヒータ14cのそれぞれをONデューティー比8/16の昇温2工程より小さい小電力で実行され、蓋センサー23での検知温度が沸騰温度Tfである100℃に維持されるように加熱制御される。その後、ステップS8で33分経過したかどうかが判断される。
【0042】
ステップS8で33分経過していなければその判断が繰り返され、ステップS8で肯定判定がなされると炊き上げ工程を終了してステップS9のむらし工程に進む。むらし工程では、蓋ヒータ25をONデューティー比6/16で、側面ヒータである側面上ヒータ14a、側面中ヒータ14b及び側面下ヒータ14cのそれぞれをONデューティー比8/16の電力で実行され、その後、ステップS10で7分経過したかどうかが判断される。
【0043】
ステップS10で7分経過していなければその判断が繰り返され、ステップS10で肯定判定がなされるとむらし工程を終了してこの炊飯工程を終了する。そして、その後、保温工程が設定されておればその工程を実行することになる。
【0044】
上記制御は、蓋センサー23の検知温度を利用し、昇温工程から炊き上げ工程にかけての加熱出力を徐々に下げ、土鍋6の温度上昇を抑えるものである。土鍋炊飯でのセンターセンサー9の検知温度曲線は、土鍋の蓄熱性の高さから図4に示すように蓋センサー23の検知温度曲線に比べ高くなり、センターセンサー9の検知温度を利用した場合には、例え加熱出力を下げたとしてもおかゆ等のふきこぼれを防止することは難しい。それに比べ蓋センサー23は、間接的ではあるが内容物の温度に比較的近い温度を検知することができるため、土鍋でのおかゆのふきこぼれをより確実に防止することができる。なお、この例での制御は、昇温工程での検知温度をT1及びT2の2段階としているが、更に多くの段階に分け加熱出力を徐々に下げるようにしてもよい。
【0045】
ところで、炊飯工程は、昇温工程で沸騰温度Tfになるまで急激に加熱し、その後沸騰温度Tfを維持して炊き上げ工程を行なうもので、炊き上げ工程時の沸騰温度維持加熱は炊飯にとって重要な要素となっている。図5の例のものにおいても炊き上げ工程時に沸騰温度を維持する加熱は可能であるが、蓋センサー23によりおかゆ等の内容物を間接的に検知するものであるためその精度において多少問題がある。
【0046】
図6のものはこのような弊害をなくすもので、炊き上げ工程時に蓋センサー23での検知温度と、センターセンサー9での検知温度とを比較し、両温度の差がなくなるように出力を調整し、炊き上げ工程時に内容物の検知温度をより反映した加熱制御を行なうようにしたものである。図6の例について説明する。なお、ステップS7までは図5のものと同様であるためその説明を省略する。
【0047】
炊き上げ工程では、メインIHを出力60%、ONデューティー比3/16で、蓋ヒータ25をONデューティー比6/16で、側面ヒータである側面上ヒータ14a、側面中ヒータ14b及び側面下ヒータ14cのそれぞれをONデューティー比8/16の昇温2工程より小さい小電力で実行される。その後、ステップS8で蓋センサー23での検知温度Taとセンターセンサー9での検知温度Tbとが比較される。
【0048】
ステップS8でセンターセンサー9での検知温度Tbが蓋センサー23での検知温度Taより高いと判断されるとステップS9に進み、蓋ヒータ25と、側面ヒータである側面上ヒータ14a、側面中ヒータ14b及び側面下ヒータ14cのそれぞれをONにしたまま、メインIHを出力を下げ、ステップS8に戻り、再度蓋センサー23での検知温度Taとセンターセンサー9での検知温度Tbとが比較される。そして、ステップS8でセンターセンサー9での検知温度Tbが蓋センサー23での検知温度Taより依然として高いと再度判断されるとステップS9に進み、蓋ヒータ25と、側面ヒータである側面上ヒータ14a、側面中ヒータ14b及び側面下ヒータ14cのそれぞれの出力はそのまま、メインIHの出力を更に下げステップS8に戻るというようにその工程を繰り返す。即ち、メインIHの出力を徐々に下げて蓋センサー23での検知温度Taとセンターセンサー9での検知温度Tbとの差を縮めて等しくなるようにする。
【0049】
ステップS8で否定判定がされるとステップS10に進む。ステップS10に進む場合は、蓋センサー23での検知温度Taとセンターセンサー9での検知温度Tbとがほぼ等しい場合である。しかしながら、その温度が沸騰温度Tf(100℃)でない場合があるため、ステップS10でその点が判断される。なお、蓋センサー23での検知温度Taがセンターセンサー9での検知温度Tbより高くなる場合はないといってよいため、蓋センサー23での検知温度Taがセンターセンサー9での検知温度Tbより高いと判断された場合は、センサー等の異常状態であるとの判断機能を加えてもよい。
【0050】
ステップS10で蓋センサー23での検知温度Taとセンターセンサー9での検知温度Tbとが沸騰温度Tfであるかどうかが判断され、等しくないと判断されると、両者の温度差に応じてメインIHの出力を増減させ、両者の温度差がなくなるように加熱制御が繰り返される。
【0051】
ステップS10で蓋センサー23での検知温度Taとセンターセンサー9での検知温度Tbとが沸騰温度Tfと等しいと判断されると、ステップS11に進み、メインIHと蓋ヒータ25とがOFFされ、ステップS12のむらし工程に進む。なお、Ta=Tb=Tfでの加熱制御が行われることにより、土鍋全体の炊き上げ温度をほぼ均一にすることができ、ほぼ理想の炊き上げ工程を実現することができる。
【0052】
むらし工程では、蓋ヒータ25をONデューティー比6/16で、側面ヒータである側面上ヒータ14a、側面中ヒータ14b及び側面下ヒータ14cのそれぞれをONデューティー比8/16の電力で実行され、その後、ステップS13で7分経過したかどうかが判断される。ステップS13で7分経過していなければその判断が繰り返され、ステップS13で肯定判定がなされるとむらし工程を終了してこの炊飯工程を終了する。そして、その後、保温工程が設定されておればその工程を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】内ケースに土鍋をセットした状態を示す炊飯器の縦断面図
【図2】操作パネルの正面図
【図3】炊飯器の制御回路部分のシステムブロック図
【図4】炊飯工程のタイムチャート図
【図5】おかゆ炊飯のフローチャート図
【図6】おかゆ炊飯のフローチャート図
【図7】従来のおかゆ炊飯のフローチャート図
【符号の説明】
【0054】
1…炊飯器本体 2…蓋体
3…ヒンジユニット 5…外ケース
6…土鍋 6a…脚部
6b…中央部 7…内ケース
7a…センサー挿入孔 8…肩部材
9…センターセンサ 10…空間部
11…底部誘導コイル 11a…底部発熱体
12…側部誘導コイル 12a…側部発熱体
13…コイル支持台 14…側面ヒータ
15…フェライトコア 16…操作スイッチ
16a…炊飯スイッチ 16b…保温スイッチ
16c…メニュースイッチ 16d…タイマースイッチ
16e…取消しスイッチ 17…表示部
18…操作パネル 19…マイコン基板
20…電源基板 21…冷却ファン
22…放熱板 23…蓋センサー
24…内蓋 25…蓋ヒータ
26…蒸気排出口 27…把手
40…マイコン制御ユニット 43…報知部
44…リセット回路 45…IGBT駆動回路
46…パルス幅変調回路 47…発振回路
48…温度検知回路 50…IGBT
51…共振コンデンサ 52…平滑トリガー回路
53…同期トリガー回路 54…蓋ヒータ駆動回路
55…整流回路 56…側面ヒータ駆動回路
57…家庭用AC電源 100…マイコン制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陶磁器製の内鍋と、該内鍋を収納する内ケースと、前記内鍋を加熱する加熱手段と、蓋体に設けられた蓋体の温度を検出する蓋センサー及び炊飯器本体に設けられた内鍋の温度を検出するセンターセンサーと、前記加熱手段の加熱状態を制御する加熱制御手段と、表示部を有する操作部とを備え、炊飯工程に少なくとも昇温工程及び炊き上げ工程を有する炊飯器において、前記加熱制御手段の制御に、前記蓋センサーの信号に基づいて消費電力量を段階的に下げる制御を有することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記制御は、昇温工程から炊き上げ工程にかけての制御であることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記炊き上げ工程において、前記蓋センサーでの検知温度とセンターセンサーでの検知温度とが等しくなるように消費電力量を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−23134(P2008−23134A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200200(P2006−200200)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】