説明

炊飯器

【課題】鍋を誘導加熱する加熱コイルの駆動回路の消費電力を低減すること。
【解決手段】駆動回路11を介して半導体スイッチング素子5をオンオフ制御し、入力電流検出回路12の出力値が少なくとも二つ以上設定された電流設定値になるように半導体スイッチング素子5のオン時間を制御し、交流電源7を直流電源に変換する第一の直流電源回路24と、第一の直流電源回路24の出力電圧より低い電圧にする第二の直流電源回路28を有し、電流設定値が所定値以上のときは、第一の直流電源回路24の出力電圧を半導体スイッチング素子5のゲート端子の最大定格電圧より低い第一の電圧設定値25にし、電流設定値が所定値より低いときは第一の電圧設定値25より低い第二の電圧設定値26に設定することにより、入力電流の電流設定値に応じて、駆動回路11に供給する出力電圧を増減し、駆動回路11の消費電力を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般家庭で使用する誘導加熱を利用した炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の誘導加熱式炊飯器には,鍋を誘導加熱する加熱コイルと,前記加熱コイルをオンオフする通電制御素子(半導体スイッチング素子)と、前記通電制御素子を駆動するドライブ回路(駆動回路)と、前記ドライブ回路に電源電流を供給する第一の電源回路と、前記第一の電源回路を降圧して、制御手段(制御部)や操作部に電源電流を供給する第二の電源回路を有し、電源電圧変更手段により第一の電源回路の出力電圧を切り替えるようにし、電源電圧変更手段は加熱シーケンスを実行していない待機状態では第一の電源回路の出力電圧の設定値を第一の電圧設定値からそれより低く設定した第二の電圧設定値に切り替えるように構成するものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような構成にすることで、加熱シーケンスを実行していない待機状態では第一の電源回路の電源電圧が第一の電圧設定値より低い第二の電圧設定値にすることができ、第一の電源電圧が下がったことにより、第一の電源回路より電源電流を供給されるドライブ回路の消費電力を低減でき、待機電力を抑えることができると記述されている。
【0004】
また、一般的な技術として、半導体スイッチング素子の起動時やターンオン時の半導体スイッチング素子の損失を抑えるために、半導体スイッチング素子のゲート端子への入力電流を制限する抵抗値を大きくする方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−156147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、加熱シーケンスを実行しているときには、第一の電源回路の電源電圧は高いほうの第一の電圧設定値となっており、加熱シーケンス実行時の駆動回路や第二の電源回路の消費電力を低減することはできないという課題を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、半導体スイッチング素子のオン時間が短いときは第一の直流電源回路の出力電圧を半導体スイッチング素子のゲート端子がオンできる保証がある電圧まで低下させ、加熱シーケンスを実行しているときも駆動回路や第二の直流電源回路の消費電力を低減することで、低消費電力で炊飯できる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、鍋を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルに接続し、前記加熱コイルを導通、遮断する半導体スイッチング素子を有するインバータ回路と,交流電源を整流し前記インバータ回路に電力供給する整流回路と、前記半導体スイッチング素子のゲート端子をオンオフする駆動回路と、前記駆動回路を介して前記半導体スイッチング素子をオンオフ制御する制御部と、前記交流電源から整流回路に供給される入力電流に相当する電圧を出力する入力電流検出回路と、前記交流電源を直流電源に変換する第一の直流電源回路と、前記第一の直流電源回路より電源電圧を
供給され、前記第一の直流電源回路の出力電圧より低い電圧にする第二の直流電源回路を有し、
前記制御部は前記第二の直流電源回路より電源電圧を供給され、前記入力電流検出回路の出力値が電流設定値になるように前記半導体スイッチング素子のオン時間を制御し、前記制御部は前記電流設定値を少なくとも二つ以上有し、
前記第一の直流電源回路は複数の出力電圧を有し、
前記駆動回路は前記第一の直流電源回路より所定の出力電圧を供給され、前記制御部のオンオフ信号をうけて半導体スイッチング素子のゲート端子に電圧を出力し、前記制御部は前記電流設定値が所定値以上ときは、前記第一の直流電源回路の出力電圧を、前記半導体スイッチング素子のゲート端子の最大定格電圧より低い第一の電圧設定値にし、前記電流設定値が所定値より低いときは第一の直流電源回路の出力電圧を第一の電圧設定値より低い第二の電圧設定値に設定するものである。
【0009】
入力電流の電流設定値が所定値より低い時は、第二の電圧設定値になっているため、例えば半導体スイッチング素子の一例であるIGBTのコレクタ−エミッタ間の飽和電圧は第一の電圧設定値のときよりも高くなるが、入力電流が低いためコレクタ電流自体が低くなり、IGBTの定常損失の上昇もわずかである。駆動回路への電源電圧も低くなり、消費電力も低減できる。あわせて第二の直流電源回路の消費電力も低減できる。
【0010】
また入力電流の電流設定値が低い時は、ターンオン電圧が発生するときもある。このときは、IGBTのゲート端子への入力電圧を低くすることでターンオン時の突入電流を低くすることができ、ターンオン損失を低減できる。
【0011】
入力電流の電流設定値が所定値以上の時は、加熱コイルに流れる電流も増え、半導体スイッチング素子のコレクタ電流も大きくなる。しかし、第一の直流電源回路の出力電圧が第一の電圧設定値になっているので、駆動回路を介してIGBTのゲート端子に入力される電圧が高くなり、IGBTのコレクタ−エミッタ間の飽和電圧は第二の電圧設定値のときよりも低くなり、IGBTの定常損失を低減できる。
【0012】
つまり、半導体スイッチング素子の損失は大きくターンオン損失、定常損失、ターンオフ損失に分類されるが、半導体スイッチング素子に流れる電流の大きさによって、これら三つの損失の比率が変化する。半導体スイッチング素子に流れる電流の大きさは交流電源から整流回路に供給される入力電流とほぼ比例関係であるので、入力電流の電流設定値の大きさに応じて駆動回路と第二の直流電源回路に電源供給する第一の直流電源回路の出力電圧の電圧設定値を設定することで鍋を誘導加熱しているときも駆動回路と第二の直流電源回路の消費電力を低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の炊飯器は、交流電源から供給される入力電流の電流設定値に応じて、第一の直流電源回路の出力電圧を切り替えて、半導体スイッチング素子を駆動するための駆動回路と制御部を動作させる第二の直流電源回路の消費電力を低減することができるので、鍋を誘導加熱しているときも消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の主要部ブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における炊飯器の要部断面構成図
【図3】本発明の実施の形態1における第一の直流電源回路の主要部ブロック図
【図4】本発明の実施の形態1における炊飯器の交流電源から供給される入力電流と半導体スイッチング素子に流れるコレクタ電流のピーク値の関係を示したグラフ
【図5】本発明の実施の形態1における炊飯器の半導体スイッチング素子を構成するIGBTのコレクタ−エミッタ間電圧とコレクタ電流の関係を示したグラフ
【図6】本発明の実施の形態1における炊飯器の半導体スイッチング素子のオン時間と半導体スイッチング素子に流れるコレクタ電流の関係を示したグラフ
【図7】本発明の実施の形態1における(a)は温度検知部が検知した鍋底温度のタイムチャート(b)は入力電流設定部が設定した電流設定値のタイムチャート(c)は第一の直流電源回路の出力電圧のタイムチャート
【図8】本発明の実施の形態2における炊飯器の主要部ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は鍋を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルに接続し、前記加熱コイルを導通、遮断する半導体スイッチング素子を有するインバータ回路と,交流電源を整流し前記インバータ回路に電力供給する整流回路と、前記半導体スイッチング素子のゲート端子をオンオフする駆動回路と、前記駆動回路を介して前記半導体スイッチング素子をオンオフ制御する制御部と、前記交流電源から整流回路に供給される入力電流に相当する電圧を出力する入力電流検出回路と、前記交流電源を直流電源に変換する第一の直流電源回路と、前記第一の直流電源回路より電源電圧を供給され、前記第一の直流電源回路の出力電圧より低い電圧にする第二の直流電源回路を有し、
前記制御部は前記第二の直流電源回路より電源電圧を供給され、前記入力電流検出回路の出力値が電流設定値になるように前記半導体スイッチング素子のオン時間を制御し、前記制御部は前記電流設定値を少なくとも二つ以上有し、
前記第一の直流電源回路は複数の出力電圧を有し、
前記駆動回路は前記第一の直流電源回路より所定の出力電圧を供給され、前記制御部のオンオフ信号をうけて半導体スイッチング素子のゲート端子に電圧を出力し、前記制御部は前記電流設定値が所定値以上ときは、前記第一の直流電源回路の出力電圧を、前記半導体スイッチング素子のゲート端子の最大定格電圧より低い第一の電圧設定値にし、前記電流設定値が所定値より低いときは第一の直流電源回路の出力電圧を第一の電圧設定値より低い第二の電圧設定値に設定することにより、入力電流の電流設定値が所定値より低い時は、第二の電圧設定値になっているため、例えば半導体スイッチング素子の一例であるIGBTのコレクタ−エミッタ間の飽和電圧は第一の電圧設定値のときよりも高くなるが、入力電流が低いためコレクタ電流自体が低くなり、IGBTの定常損失の上昇もわずかである。駆動回路への電源電圧も低くなり、消費電力も低減できる。あわせて第二の直流電源回路の消費電力も低減できる。
【0016】
また入力電流の電流設定値が低い時は、ターンオン電圧が発生するときもある。このときは、IGBTのゲート端子への入力電圧を低くすることでターンオン時の突入電流を低くすることができ、ターンオン損失を低減できる。
【0017】
入力電流の電流設定値が所定値以上の時は、加熱コイルに流れる電流も増え、半導体スイッチング素子のコレクタ電流も大きくなる。しかし、第一の直流電源回路の出力電圧が第一の電圧設定値になっているので、駆動回路を介してIGBTのゲート端子に入力される電圧が高くなり、IGBTのコレクタ−エミッタ間の飽和電圧は第二の電圧設定値のときよりも低くなり、IGBTの定常損失を低減できる。
【0018】
つまり、半導体スイッチング素子の損失は大きくターンオン損失、定常損失、ターンオフ損失に分類されるが、半導体スイッチング素子に流れる電流の大きさによって、これら三つの損失の比率が変化する。半導体スイッチング素子に流れる電流の大きさは交流電源から整流回路に供給される入力電流とほぼ比例関係であるので、入力電流の電流設定値の大きさに応じて駆動回路と第二の直流電源回路に電源供給する第一の直流電源回路の出力電圧の電圧設定値を設定することで鍋を誘導加熱しているときも駆動回路と第二の直流電源回路の消費電力を低減することができる。
【0019】
第2の発明は、特に、第1の発明の炊飯器に、操作部と、前記操作部に従って鍋を誘導加熱する炊飯シーケンスまたは保温シーケンスと、前記炊飯シーケンスおよび前記保温シーケンスを停止している待機状態を制御部は判別し、
前記炊飯シーケンスでは、第一の電流設定値と第一の電流設定値より低い値の第二の電流設定値を使用し、前記保温シーケンスでは前記第二の電流設定値より低い値の第三の電流設定値を使用し、
前記制御部は、炊飯シーケンスと判別したときは第一の直流電源回路の出力電圧を第一の電圧設定値に設定し、保温シーケンスまたは待機状態と判別したときは第一の直流電源回路の出力電圧を第二の電圧設定値に設定することにより、保温シーケンスと待機状態での駆動回路と第二の直流電源回路の消費電力を低減できる。特に保温シーケンスでは炊飯シーケンスに比べ、鍋の温度を低くして保温するため、入力電流も低く、半導体スイッチング素子の損失も低くてすむ。
【0020】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の第一の直流電源電圧の出力電圧を検出する電圧検出回路の検出電圧が第一の所定値より高いかどうかを判定する第一の判定値と前記第一の判定値よりも低い第二の所定値を判定する第二の判定値を有し、制御部は半導体スイッチング素子のオン時間が所定時間より短いときに電圧検出回路の出力電圧が第二の判定値より低いと前記半導体スイッチング素子をオフし、前記半導体スイッチング素子のオン時間が所定時間以上のときに前記電圧検出回路の検出電圧が前記第一の判定値より低いと前記半導体スイッチング素子をオフすることにより、駆動回路への電源電圧が低下し、半導体スイッチング素子の損失が過大になることを抑えることができるので、安全な誘導加熱式炊飯器を提供できる。
【0021】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の半導体スイッチング素子を冷却するための冷却ファンを有し、前記冷却ファンへの電力は第一の直流電源回路より供給され、前記冷却ファンのオンオフ制御は制御部で行うことにより、入力電流が低く前記半導体スイッチング素子が低損失の時は、第一の直流電源回路の出力電圧を第二の電圧設定値にして低くしているので、冷却ファンの回転数または風量が減少しても、十分に半導体スイッチング素子を冷却できる。従って、交流電源から供給される入力電流が低いときは半導体スイッチング素子に流れる通電電流も小さくなり、第一の直流電源回路の出力電圧を第二の電圧設定値に低くできるので、駆動回路の消費電力と第二の直流電源回路の消費電力と冷却ファンの消費電力を低減することができる。
【0022】
また、入力電流が大きくなり、半導体スイッチング素子に流れる通電電流が大きい時は、第一の直流電源回路の出力電圧を第一の電圧設定値に高くしているので、半導体スイッチング素子に大電流が流れ損失が大きくなっても、冷却ファンの回転数が上がり風量も増えるので半導体スイッチング素子を十分に冷却できる。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の主要部ブロック図を示すものである。
【0025】
図1において、鍋1は特に図示していないが、磁性金属や非磁性金属を複数用いた積層体で構成されている。
【0026】
加熱コイル2は、特に図示していないが鍋1の底面の中央部に対向した第一の加熱コイ
ルと、鍋1の底面のコーナー部に対向した第二の加熱コイルで構成される。この第一の加熱コイルと第二の加熱コイルは電気的に直列接続している。第一の加熱コイルは渦巻き状の形状をしており、鍋1の底面中央部に一定の距離で配置される。第二の加熱コイルは第一の加熱コイルの同心円状の外側に配置され、鍋1の底面のコーナー部に一定の距離をおいて配置されている。加熱コイル2は複数の銅線を束ねたリッツ線を更に20数本で撚った線で構成されており、高周波電流が流れた時の電流分布を均一にしている。
【0027】
インバータ回路3は、コンデンサ4と半導体スイッチング素子5とダイオード6で構成されている。インバータ回路3は、半導体スイッチング素子5をオンオフして、後述する加熱コイル2とコンデンサ3で構成される共振回路の加熱コイル2に高周波電力を供給し、鍋1を誘導加熱する。
【0028】
コンデンサ4は、図1に示すように加熱コイル2に並列接続している。本実施例では高周波電流が流れても損失の少ないポリプロピレンコンデンサを使用している。
【0029】
半導体スイッチング素子5は、MOSFETやIGBTなどの半導体素子で構成されている。MOSFETやIGBTは耐圧が高く、高周波のスイッチングが可能で、ゲート端子に電圧を印加することで大電流を流すことができるので、パワートランジスタに比べ省電力で大電流を流すことができるという利点がある。なお、本実施例では、この半導体素子にIGBTを使用している。
【0030】
ダイオード6は、半導体スイッチング素子5の電流方向とは逆方向に電流が流れるように並列接続されている。
【0031】
一般的にこのようなインバータ回路の構成は、加熱コイル2とコンデンサ3で並列共振回路を構成しているため、1石電圧共振形インバータといわれている。
【0032】
交流電源7は、炊飯器に電力を供給するもので、電源周波数は、東日本地域では50Hz、西日本地域では60Hzとなっている。
【0033】
整流回路8は、ダイオードブリッジ9、コイル10、コンデンサ36で構成されている。ここで、コンデンサ36の容量は数μFと小さく、加熱コイル2に電流を流すとリプルが生じる。本実施例では、このリプル電圧波形は交流電源7を全波整流した時の電圧波形と同じとなる。
【0034】
駆動回路11は、特に図示しないがNPNトランジスタとPNPトランジスタで構成されたプッシュプル回路で構成されている。
【0035】
入力電流検出回路12は、交流電源7から整流回路8への電流経路に接続されている。特に図示しないが、カレントトランスと、このカレントトランスが出力する交流電流を整流平滑する整流平滑回路で構成されており、入力電流に相当するアナログ電圧を、制御部13を構成するマイクロコンピュータ14のAD変換ポートに出力する。
【0036】
制御部13は、マイクロコンピュータ14、同期信号発生回路15などにより構成されている。
【0037】
マイクロコンピュータ14は、多数のカウンタ機能やタイマー機能やメモリ機能を利用して、オン時間設定部16、パルス発生部17、入力電流設定部18、シーケンス設定部19、第一の直流電源電圧設定部20などを構成している。
【0038】
オン時間設定部16は最小オン時間Ton1と最大オン時間Ton4の範囲内でオン時間を設定する。なお、本実施の形態では、インバータ回路3起動時は、Ton1からスタートし徐々にオン時間を長くしていく。
【0039】
パルス発生部17は同期信号発生回路15の同期信号を検知すると設定されたオン時間のハイパルスを駆動回路11に出力する。マイクロコンピュータ14は8MHz発振子と32.728kHz発振子で動作する。従って、マイクロコンピュータ14で構成されるパルス発生部17のハイパルス幅の最小設定単位は、8MHz発振子で設定される最小周期である0.125μs単位で制御される。つまり、オン時間設定部16が出力データ(8bit)を1digit変更すると、パルス発生部17のハイパルス幅が0.125μs変化するようになっている。
【0040】
入力電流設定部18は、マイクロコンピュータ14のメモリを利用して、シーケンス設定部19が設定するシーケンスごとに複数の電流設定値が記憶されている。本実施の形態の誘導加熱式炊飯器では、第一の電流設定値21(本実施の形態ではIin1とする)、第一の電流設定値21より低い値の第二の電流設定値22(本実施の形態ではIin2とする)、第二の電流設定値22より低い値の第三の電流設定値23(本実施の形態ではIin3とする)が記憶されている。
【0041】
シーケンス設定部19は、使用者が設定した操作に従って、炊飯シーケンスや保温シーケンスを設定する。また、炊飯シーケンスも保温シーケンスも動作していない時は待機状態を設定する。
【0042】
第一の直流電源電圧設定部20は、第一の直流電源回路24が出力する電圧を設定するために第一の電圧設定値25と第二の電圧設定値26を記憶しており、入力電流設定部18の設定した電流設定値に基づいて、第一の直流電源回路24の出力電圧を設定する。本実施の形態では、第一の電流設定値21と第二の電流設定値22のときは第一の電圧設定値25を設定し、第三の電流設定値23のときは第二の電圧設定値26を設定するようにしている。
【0043】
同期信号発生回路15は、コンパレータや抵抗分圧回路などで構成され、(C2)端子を所定の比率で抵抗分圧した電圧と、(CE)端子を所定の比率で抵抗分圧した電圧をコンパレータによって比較し、(C2)端子の分圧電圧の方が高いときにハイ信号をマイクロコンピュータ14に出力し、(C2)端子の分圧電圧の方が低いときにロー信号をマイクロコンピュータ14に出力する。
【0044】
第一の直流電源回路24は、特に図示しないが、スイッチング電源で構成され、交流電源7を半波整流した電圧を、マイクロコンピュータ14で構成された第一の直流電源電圧設定部20の設定した出力電圧になるように直流電源に変換している。交流電源7入力直後は、半導体スイッチング素子5を駆動しないので、第一の直流電源電圧設定部20は第二の電圧設定値26を設定値として第一の直流電源回路24に出力し、第一の直流電源回路24は出力電圧が10Vになるように制御する。
【0045】
なお、本実施の形態では、半導体スイッチング素子5を構成するIGBTのゲート端子の遮断電圧のバラつき保証値は6Vである。つまり、ゲート端子に6V以上の電圧をオンすればIGBTのエミッタ−コレクタ間がオンする。10Vにしているのは、この遮断電圧がバラついても十分にIGBTのコレクタ−エミッタ間電圧がオンするからである。つまり第二の電圧設定値26は、ゲート端子の遮断電圧より高くすることが重要である。
【0046】
ここで、上記で簡単に説明した駆動回路11の動作について、もう少し詳しく説明する
。駆動回路11は、マイクロコンピュータ14が構成するパルス発生部17の出力がハイの間、第一の直流電源回路24の電源電圧を利用して、半導体スイッチング素子5を構成するIGBTのゲート端子に電圧を印加し、IGBTのコレクタ−エミッタ間をオンし、パルス発生部17がロー出力している間はIGBTのゲート端子の電圧を0Vにして、IGBTのコレクタ−エミッタをオフにする。なお、これは一例でプッシュプル回路を構成する部品はMOSFETなどで構成しても構わない。また、駆動回路11へ電圧出力する第一の直流電源回路24の出力電圧はオン時間設定部16が設定したオン時間により第一の直流電源電圧設定部20が設定した電圧となる。
【0047】
また、第一の直流電源回路24は、冷却ファン27を駆動するための電源も供給している。本実施の形態では、特に図示していないが、ファン駆動回路としてトランジスタやMOSFETをマイクロコンピュータ14でオンオフ制御することで、冷却ファン27を駆動したり停止したりすることができる。
【0048】
第二の直流電源回路28で、NPNトランジスタ29と定電圧ダイオード30と抵抗31とコンデンサ32からなるエミッタフォロア回路で構成されており、第一の直流電源回路24を約5Vに降圧している。第二の直流電源回路28は、マイクロコンピュータ14や零電圧同期信号出力回路33などの電源となっている。
【0049】
零電圧同期信号出力回路33は、特に図示していないが、交流電源7の(u)極が抵抗を介してトランジスタのベース端子に接続している。このトランジスタのコレクタ端子は交流電源7からスイッチング電源を介して生成される第二の直流電源回路28と、抵抗を介して接続しており、(u)極の電位がもう一方の極より高いときにローを、低いときにハイをマイクロコンピュータ14に出力する。マイクロコンピュータ14はこの出力信号に同期して、所定時間後に入力電流検出回路12の出力電圧を入力し、入力電流設定部18が設定した電流設定値と比較して、オン時間設定部16でオン時間の設定を行う。設定されたオン時間は次の同期信号のときに更新される。第一の直流電源電圧設定部20は、設定された電流設定値に基づいて第一の直流電源回路24の出力電圧を第一の電圧設定値22または第二の電圧設定値23に設定する。またマイクロコンピュータ14は零電圧同期信号出力回路33の出力信号に同期して、現在時刻の表示や、炊飯制御に関する処理などを開始する。
【0050】
操作部34は、複数のモーメンタリスイッチで構成されている。各スイッチが使用者により押されると、マイクロコンピュータ14はスイッチが押されたことを検出し、各スイッチに応じて、所定の炊飯動作や保温動作をおこなう。
【0051】
表示部35は、LCDと、赤、緑、橙などの複数のLEDで構成されている。マイクロコンピュータ14は、炊飯中や保温中などの炊飯器の状態に応じて、LCDの表示内容や点灯するLEDを設定している。LCDの表示内容としては、現在時刻の表示や、炊飯終了までの時間の表示、保温経過時間の表示などがある。
【0052】
図2は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の要部断面構成図を示すものである。図面を簡潔にするために、電気的接続のためのリード線や、部品を固定するためのネジは省略している。
【0053】
図2において、炊飯器のボディ(本体)41には、その上面を覆う蓋42が開閉自在に設置されている。ボディ41の収納部43は、その底部と側面部に加熱コイル2を配設し、加熱コイル2の外周側に放射状にフェライトコア44を配設する。加熱コイル2は鍋1の底部の中心の略真下に中心を有する巻き線である。
【0054】
鍋1は、ステンレス、鉄、銅などの磁性体によって形成される。鍋1は、上端開口部に外側にせり出したフランジ45を有し、フランジ45を収納部43の上端から浮き上がった状態で載置することにより、収納部43に着脱自在に収納される。従って、鍋1は収納時に、収納部43との間に隙間を有する。
【0055】
鍋1の温度を検出する温度検出部51はサーミスタで構成され、鍋1の底部の略中心に配置されている。サーミスタは温度で抵抗値が変わるので、このサーミスタと所定の抵抗値を有する抵抗で分圧回路を構成し、所定の電圧をこの分圧回路の両端に供給することで、サーミスタの抵抗値をアナログ電圧に変換できる。図1に示したマイクロコンピュータ14は、内蔵されたAD変換器を用いてこのアナログ電圧から温度を推定する。
【0056】
蓋42は、蓋加熱板46、蓋加熱ヒータ47、第一の回路基板48を備えている。蓋加熱板46はステンレスなどの金属で形成され、蓋42に着脱自在に設定されている。
【0057】
蓋加熱ヒータ47は蓋42に内蔵され、蓋加熱板46を加熱する。なお、蓋加熱ヒータ47は図1には特に図示していない。
【0058】
第一の回路基板48は、スイッチ、LCD、マイクロコンピュータ14などで構成されている。
【0059】
炊飯器のボディ(本体)41には、また、第二の回路基板49、巻き取り式の電源コード収納部50、冷却ファン27が配されている。
【0060】
第二の回路基板49は、特に図示しないが、半導体スイッチング素子5を構成するIGBT、コンデンサ4,ダイオードブリッジ9、チョークコイル10、コンデンサ36などが搭載されている。
【0061】
巻き取り式の電源コード収納部50はストッパーとばねを用いて電源コードを巻き取ることを可能にしている。電源コードは、交流電源7に接続して、炊飯器に電源を供給する。電源コード収納部50は、第二の回路基板49にリード線を介して電気的に接続している。
【0062】
冷却ファン27は、第二の回路基板49、特に半導体スイッチング素子5からの発熱を排熱・空冷するもので、DCブラシレスモータの回転子にファンを取り付けたファンモータで構成されている。冷却ファン27は図1に示したように、第一の直流電源回路24より電源供給され、マイクロコンピュータ14でオンオフ制御される。
【0063】
第一の回路基板48と第二の回路基板49は、特に図示しないが、リード線で電気的に接続しており、マイクロコンピュータ14内部に構成されたオン時間設定部16、パルス発生部17により、半導体スイッチング素子5をオンオフ制御し、加熱コイル2に高周波電流を供給する。加熱コイル2は高周波電流が流れると交番磁界を発生させ、この交番磁界により鍋1に渦電流が流れ,鍋1が発熱する。
【0064】
以上のように,本実施例の炊飯器は、鍋1を誘導加熱し、鍋1内の調理物を加熱調理する。ここで調理物は、炊飯前の米と水又は炊き上がったご飯等である。
【0065】
図3は、本発明の第1の実施の形態における第一の直流電源回路の主要部ブロック図を示すものである。
【0066】
図3において、半波整流平滑回路61はダイオード62とコンデンサ63を用いて交流
電源7を半波整流平滑し、約141Vの直流電圧に変換している。ただし、これは一例でダイオードブリッジを用いて交流電源7を全波整流平滑してもかまわない。
【0067】
スイッチング電源64は半端整流平滑回路61から電源供給を受けて約7Vから約20Vの直流電圧を出力する。特に図示していないが、スイッチング電源64は、MOSFETなどのパワー半導体素子と、このパワー半導体素子を所定の電流値の範囲内でオンオフ制御する制御回路で構成されたパワー半導体内蔵制御回路65とコイル66と平滑用のコンデンサ67とコンデンサ67の電圧が所定の設定値になるようにパワー半導体内蔵制御回路65をフィードバック制御するため出力電圧検出回路68で構成されている。
【0068】
パワー半導体内蔵制御回路65は内蔵されたMOSFETを所定の電流値の範囲内でオンオフ制御することにより、コイル66を介してコンデンサ67を充電している。
【0069】
出力電圧検出回路68は、特に図示していないがフォトカプラと約20Vのツェナーダイオードと約10Vのツェナーダイオードで構成され、この二つのツェナーダイオードを切り替えることでフィードバック制御する出力電圧を切り替えている。たとえば、約20Vの出力電圧を設定するときはフォトカプラとツェナーダイオードを直列接続する。コンデンサ67の電圧が20Vを超えてくると20V用のツェナーダイオードが通電しフォトカプラがオンしてパワー半導体内蔵制御回路65に出力電圧が20Vを超えたことを送信する。パワー半導体内蔵制御回路65はこの信号を受けると、内蔵されたMOSFETのスイッチング動作をオフし、コンデンサ67への電力供給が停止し、電圧降下し、20Vより低くなると20V用のツェナーダイオードは通電しなくなりフォトカプラがオフしてパワー半導体内蔵制御回路65に出力電圧が20Vより低くなったこと送信する。パワー半導体内蔵制御回路9はこの信号を受けると、内蔵されたMOSFETのスイッチング動作を開始しコイル66を介してコンデンサ67を充電する。10Vの出力電圧に設定する場合は、フォトカプラと10V用のツェナーダイオードを直列接続することで同様の動作をすることができる。なお、本実施の形態の出力電圧検出回路68は、請求項3に示している電圧検出回路とはことなるものである。この電圧検出回路については、あとで説明するものである。
【0070】
つまり、本実施の形態では、半波整流平滑回路61の出力電圧約141Vをスイッチング電源64が約10Vまたは約20Vの直流電圧に降圧している。
【0071】
制御部13はマイクロコンピュータ14と、図1では特に示していなかったが、出力電圧検出回路68の検出電圧を切り替えるためのトランジスタ69を有している。
トランジスタ69はマイクロコンピュータ14で構成した直流電源電圧設定部20の設定した電圧設定値に従い、オンオフすることで第一の直流電源電圧回路24の出力電圧を切り替える。
【0072】
第二の直流電源回路28は図1と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0073】
本実施の形態の誘導加熱式炊飯器のマイクロコンピュータ14は、トランジスタ69にハイまたはローを出力して、第一の直流電源回路24を構成する出力電圧検出回路68の検知電圧の設定値を切り替える。本実施の形態では、マイクロコンピュータ14は第一の直流電源回路24の出力電圧を約20Vに設定するときにはトランジスタ69にロー信号を出力し、第一の直流電源回路24の出力電圧を約10Vに設定するときにはトランジスタ68にハイ信号を出力する。
【0074】
図4は、本発明の第1の実施の形態の炊飯器の交流電源7から供給される入力電流Iinと半導体スイッチング素子5に流れるコレクタ電流Icのピーク値の関係を示したグラ
フである。
【0075】
図4に示しているように、入力電流Iinが大きくなるほどコレクタ電流Icが大きくなる。つまり、入力電流が第三の電流設定値23のように小さい時は半導体スイッチング素子5を構成するIGBTのゲート端子の電圧を低くしてコレクタ−エミッタ間電圧が上がってもコレクタ電流Icが小さいのでスイッチング損失はそれほど大きくならない。
【0076】
図5は、本発明の第1の実施の形態の炊飯器の半導体スイッチング素子5を構成するIGBTのコレクタ−エミッタ間電圧Vceとコレクタ電流Icの関係を示したグラフで、(a)はIGBTのゲート端子電圧が10V、(b)はIGBTのゲート端子電圧が15V、(c)はIGBTのゲート端子電圧が20Vのときのグラフである。
【0077】
図5に示しているように、ゲート端子電圧によってコレクタ−エミッタ間電圧とコレクタ電流は変動する。図4に示すように入力電流が大きくなるほどコレクタ電流が大きくなることを考慮すると、入力電流が小さい時は半導体スイッチング素子5を構成するIGBTのゲート端子の電圧を低くしてコレクタ−エミッタ間電圧が上がってもスイッチング損失はそれほど大きくならないと判断できる。
【0078】
図6は、本発明の第1の実施の形態の炊飯器の半導体スイッチング素子5のオン時間Tonと半導体スイッチング素子5に流れるコレクタ電流Icの関係を示したグラフである。
【0079】
図6に示しているように、オン時間が長くなるほどコレクタ電流が大きくなる。つまり、Ton1のようにオン時間が短いときは半導体スイッチング素子5を構成するIGBTのゲート端子の電圧を低くしてコレクタ−エミッタ間電圧が上がってもスイッチング損失はそれほど大きくならない。
【0080】
図7は、本発明の第1の実施の形態の炊飯器の温度検知部のタイムチャートと入力電流設定部が設定する電流設定値と第一の直流電源回路24の出力電圧のタイムチャートを示している。(a)は温度検知部が検知した鍋底温度のタイムチャートを示している。(b)は入力電流設定部が設定した電流設定値のタイムチャートを示している。(c)は第一の直流電源回路24の出力電圧のタイムチャートを示している。
【0081】
図7(b)の電流設定値のタイムチャートは、縦軸で電流設定値を示し、横軸に、この電流設定値で半導体スイッチング素子をオンオフし加熱コイルに高周波電流を流す期間を示している。
【0082】
図1から図7を用いて、本実施の形態の炊飯器の動作を説明する。
【0083】
図7のS0において、図2に示した炊飯器の蓋内に配置された第一の回路基板48に実装された複数のモーメンタリスイッチ(操作部34)のうち、炊飯スタートを意味するモーメンタリスイッチを押すと、図1に示したマイクロコンピュータ14が操作部34の信号を検知し、シーケンス設定部19が炊飯シーケンスを設定し炊飯シーケンスを開始する。S0以前の状態は炊飯器が待機している状態であり、第一の直流電源回路24の出力電圧は第二の電圧設定値23(約10V)に設定されている。
【0084】
炊飯シーケンスは複数のサブシーケンスから構成されている。本実施の形態では、前炊き行程、炊飯量判定行程、沸騰維持行程、追い炊き行程で構成されている。
【0085】
S0からS2までの期間は前炊き行程に該当する。前炊き行程では、S0からS1の期
間にお米に水が吸収されやすい温度まで、入力電流設定部18はシーケンス設定部19の信号を受けて第二の電流設定値22(Iin2)を設定する。第二の電流設定値22が設定されると第一の直流電源電圧設定部20が第一の電圧設定値25を設定する。その後、半導体スイッチング素子5のオン時間はTon1を初期値にして、徐々にオン時間を大きくし、入力電流検出回路12の出力電圧が第二の電流設定値22(Iin2)になるようにオン時間を制御する。入力電流が電流設定値22(Iin2)で動作する導通比は10秒/16秒である。
【0086】
S1で図2に示した温度検知部51が60度を検知すると、マイクロコンピュータ14は予めプログラムされた内容に従って、入力電流が電流設定値22(Iin2)で動作する導通比を可変にし、約60度の温度を、S2までの期間、維持するように制御する。
【0087】
S2からS3までの期間は炊飯量判定行程に該当する。炊飯量判定行程では、入力電流設定部18はシーケンス設定部19の出力に応じて入力電流の設定値を電流設定値21(Iin1)にする。オン時間設定部16は入力電流検出回路12の出力電圧と電流設定値21(Iin1)を比較してオン時間を長くしながら加熱コイル2に高周波電流を供給する。第一の電流設定値21(Iin1)は第二の電流設定値22(Iin2)よりも大きい電流なので加熱コイル2に供給される電流も増加し、誘導加熱量も大きくなる。つまり、鍋の温度も急激に上昇する。本実施の形態では、電流設定値21(Iin1)にして加熱コイル1の駆動を開始してから、温度検知部51が100度を検知するまでの経過時間(S2からS3までの時間)から、マイクロコンピュータ14が炊飯量を判定し、その後の沸騰維持行程における加熱コイル2を駆動する導通比、追い炊き行程における加熱コイル2を駆動する導通比を設定する。
【0088】
S3からS4までの期間は沸騰維持行程に該当する。沸騰維持行程では、入力電流設定部18はシーケンス設定部19の出力に応じて電流設定値22(Iin2)に設定し、オン時間設定部16が入力電流検出回路12の出力電圧と電流設定値22を比較して半導体スイッチング素子5のオン時間を設定し、加熱コイル2に高周波電流を流して鍋1を加熱する。本実施の形態の炊飯器では、シーケンス設定部19の指示に従い10秒/16秒の導通比で加熱コイル2を駆動する。加熱コイル2を駆動して鍋1を誘導加熱し続けると、鍋1内に残っていた水も蒸発し、鍋1の温度は100度を超え、S4では130度に達する。温度検知部51が130度を検知すると、マイクロコンピュータ14は半導体スイッチング素子5をオフして、加熱コイル2の駆動を停止するとともに沸騰維持行程を終了し、追い炊き行程に移行する。
【0089】
S4からS5までの期間は追い炊き行程に該当する。追い炊き行程では、入力電流設定部18はシーケンス設定部19の出力に応じて電流設定値22(Iin2)に入力電流の目標値を設定する。この電流設定値22(Iin2)と入力電流検出回路12の出力電圧をオン時間設定部16が比較して半導体スイッチング素子5のオン時間を設定する。パルス発生部17は同期信号発生回路15の同期信号をトリガにしてオン時間設定部16が設定した時間をハイパルスとして出力し、最終的に入力電流検出回路12の出力電圧が電流設定値22(Iin2)になるように制御する。シーケンス設定部19は電流設定値22(Iin2)で動作する期間を、2秒/16秒の導通比にしている。マイクロコンピュータ14のシーケンス設定部はS4からの経過時間を計時し、S5に達すると炊飯シーケンスを終了し、炊飯終了をブザー報知するとともに表示部35を構成する炊飯中の意味を示すLEDを消灯することで炊飯が終了したことを表示する。
【0090】
同時にS5においてマイクロコンピュータ14を構成するシーケンス設定部19は表示部35を構成する保温中の意味を示すLEDを点灯し、保温シーケンスを開始する。入力電流設定部18はシーケンス設定部19の指示に応じて入力電流の設定値を第三の電流設
定値23(Iin3)にする。第一の直流電源電圧設定部20は第三の電流設定値23(Iin3)が設定されたことを検出して第一の直流電源回路24の出力電圧が第二の電圧設定値26になるように設定する。その後、温度検知部51の温度が所定の温度より低くなるまで半導体スイッチング素子5をオフし、所定の温度より低くなったところで、再び半導体スイッチング素子5をオンオフし、入力電流検出回路12の出力電圧が第三の電流設定値23(Iin3)になるようにオン時間を制御する。第三の電流設定値23(Iin3)になるように半導体スイッチング素子5をオンオフ制御することで鍋1を誘導加熱し、この温度を維持するようにする。保温シーケンスは、炊飯シーケンスのようにお米をご飯にするためのエネルギーは必要なく、ご飯の温度を一定温度に維持するエネルギーがあれば十分なので、入力電流は炊飯シーケンスのときより小さくても十分である。
【0091】
以上のように、図7においては、入力電流の設定値が第一の電流設定値21(Iin1)、第二の電流設定値(Iin2)、第三の電流設定値(Iin3)と複数設定されている。これらの電流設定値になるように半導体スイッチング素子5をオンオフ制御するときは、半導体スイッチング素子5の起動時のオン時間をTon1にして、徐々にオン時間を長くし、入力電流検出回路12の出力電圧が所定の電流設定値になるようにしている。所定の電流設定値にすれば加熱コイル2に流れる高周波電流もほぼ一定に制御される。
【0092】
また、電流設定値が低くなったときに第一の直流電源電圧設定部が電圧設定値を低くことで、半導体スイッチング素子を駆動する駆動回路の消費電力や第二の直流電源回路の消費電力を抑えることができる。冷却ファン27の電源電圧も第一の直流電源回路24より供給されているため、冷却ファン27の回転数や風量は低下するが、通電電流が小さく半導体スイッチング素子5の損失も小さくなるので十分に冷却でき、冷却ファンの駆動電流も小さくできる。従って、シーケンス中も炊飯器の消費電力を低減することができる。
【0093】
なお、本実施の形態の誘導加熱式炊飯器は請求項1、2、4の実施の形態となる。
【0094】
また、本実施の形態の誘導加熱式炊飯器では、第一の直流電源回路24の出力電圧の設定値を切り替える電流設定値を第三の電流設定値23としていたが、第二の電流設定値22にしても構わない。このときは半導体スイッチング素子5の損失を考慮して、第一の直流電源回路の出力電圧の第二の電圧設定値26を10Vから15Vにあげておいてもよい。ただし、これは一例であり本発明を限定するものではない。また、電流設定値の数に合わせて第一の直流電源回路の電圧設定値を増やしても構わない。例えば、本実施の形態の炊飯器では三つの電流設定値が記憶されているが、それにあわせて三つの電圧設定値を記憶しておいても構わない。
【0095】
(実施の形態2)
図8は、本発明の第2の実施の形態における炊飯器の主要部ブロック図である。
【0096】
図8において、電圧検出回路81は抵抗分圧回路で構成され、アナログ電圧を出力する。このとき、第一の直流電源回路24の出力電圧が20Vのとき4Vを超えないように抵抗分圧回路の分圧比を設定している。
【0097】
制御部82は、マイクロコンピュータ83、同期信号発生回路15などで構成されている。
【0098】
マイクロコンピュータ83は、オン時間設定部16、パルス発生部17、入力電流設定部18、シーケンス設定部19、第一の直流電源電圧設定部20、第一の直流電源電圧判定部84をカウンタやメモリなどで構成している。
【0099】
第一の直流電源電圧判定部84にはマイクロコンピュータ83のメモリを利用して、第一の判定値85と第二の判定値86を記憶している。
【0100】
その他の構成は、本実施の形態1と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0101】
図8の誘導加熱式炊飯器の動作について説明する。
【0102】
本実施の形態1と同様に、操作部34で操作することによりシーケンス設定部19が炊飯シーケンスを設定し、シーケンス設定部19からの信号により入力電流設定部18が電第二の電流設定値22を設定すると、この電流設定値により第一の直流電源電圧設定部20が第一の電圧設定値25を設定する。第一の電圧設定値25が設定されたことを第一の直流電源電圧判定部84が検出し、第一の判定値85を判定値として設定する。本実施の形態の誘導加熱式炊飯器では、第一の判定値は第一の直流電源回路24の出力電圧が15V相当の値に設定されている。マイクロコンピュータ83は電圧検出回路81の出力電圧をAD変換ポートに入力し、第一の判定値85より低い値を検出すると、パルス発生部17の出力パルスを停止し、半導体スイッチング素子5をオフする。
【0103】
シーケンス設定部19の出力により入力電流設定部18が第三の電流設定値23を設定すると、第一の直流電源電圧設定部20は第二の電圧設定値26を設定する。第一の直流電源電圧判定部84はその情報を検出し、第二の判定値86を判定値として設定する。本実施の形態の誘導加熱式炊飯器では、第二の判定値86は第一の直流電源回路24の出力電圧が8V相当の値に設定されている。マイクロコンピュータ83は電圧検出回路81の出力電圧をAD変換ポートに入力し、第二の判定値86より低い値を検出すると、パルス発生部17の出力パルスを停止し、半導体スイッチング素子5をオフする。
【0104】
以上のように、入力電流設定部18が設定した電流設定値に応じて、第一の直流電源回路の出力電圧の下限値を決めることにより、半導体スイッチング素子に流れる電流により駆動回路への電源電圧を最適にすることができ、半導体スイッチング素子の損失が過大になることを抑えることができるので、安全な誘導加熱式炊飯器を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、半導体スイッチング素子をオフしている待機状態のみならず、炊飯シーケンスや保温シーケンス中も半導体スイッチング素子の損失を増やすことなく駆動回路の消費電力や制御部の電源となる第二の直流電源回路の消費電力を低減することができるので、家庭用途のみならず業務用途の炊飯器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0106】
1 鍋
2 加熱コイル
3 インバータ回路
5 半導体スイッチング素子
7 交流電源
8 整流回路
11 駆動回路
12 入力電流検出回路
13 制御部
21 第一の電流設定値
22 第二の電流設定値
23 第三の電流設定値
24 第一の直流電源回路
25 第一の電圧設定値
26 第二の電圧設定値
27 冷却ファン
28 第二の直流電源回路
34 操作部
81 電圧検出回路
82 制御部
85 第一の判定値
86 第二の判定値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルに接続し、前記加熱コイルを導通、遮断する半導体スイッチング素子を有するインバータ回路と,交流電源を整流し前記インバータ回路に電力供給する整流回路と、前記半導体スイッチング素子のゲート端子をオンオフする駆動回路と、前記駆動回路を介して前記半導体スイッチング素子をオンオフ制御する制御部と、前記交流電源から整流回路に供給される入力電流に相当する電圧を出力する入力電流検出回路と、前記交流電源を直流電源に変換する第一の直流電源回路と、前記第一の直流電源回路より電源電圧を供給され、前記第一の直流電源回路の出力電圧より低い電圧にする第二の直流電源回路を有し、
前記制御部は前記第二の直流電源回路より電源電圧を供給され、前記入力電流検出回路の出力値が電流設定値になるように前記半導体スイッチング素子のオン時間を制御し、前記制御部は前記電流設定値を少なくとも二つ以上有し、
前記第一の直流電源回路は複数の出力電圧を有し、
前記駆動回路は前記第一の直流電源回路より所定の出力電圧を供給され、前記制御部のオンオフ信号をうけて半導体スイッチング素子のゲート端子に電圧を出力し、前記制御部は前記電流設定値が所定値以上ときは、前記第一の直流電源回路の出力電圧を、前記半導体スイッチング素子のゲート端子の最大定格電圧より低い第一の電圧設定値にし、前記電流設定値が所定値より低いときは第一の直流電源回路の出力電圧を第一の電圧設定値より低い第二の電圧設定値に設定する炊飯器。
【請求項2】
操作部と、前記操作部に従って鍋を誘導加熱する炊飯シーケンスまたは保温シーケンスと、前記炊飯シーケンスおよび前記保温シーケンスを停止している待機状態を制御部は判別し、
前記炊飯シーケンスでは、第一の電流設定値と第一の電流設定値より低い値の第二の電流設定値を使用し、前記保温シーケンスでは前記第二の電流設定値より低い値の第三の電流設定値を使用し、
前記制御部は、炊飯シーケンスと判別したときは第一の直流電源回路の出力電圧を第一の電圧設定値に設定し、保温シーケンスまたは待機状態と判別したときは第一の直流電源回路の出力電圧を第二の電圧設定値に設定する請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
第一の直流電源電圧の出力電圧を検出する電圧検出回路の検出電圧が第一の所定値より高いかどうかを判定する第一の判定値と前記第一の判定値よりも低い第二の所定値を判定する第二の判定値を有し、制御部は半導体スイッチング素子のオン時間が所定時間より短いときに電圧検出回路の出力電圧が第二の判定値より低いと前記半導体スイッチング素子をオフし、前記半導体スイッチング素子のオン時間が所定時間以上のときに前記電圧検出回路の検出電圧が前記第一の判定値より低いと前記半導体スイッチング素子をオフする請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
半導体スイッチング素子を冷却するための冷却ファンを有し、前記冷却ファンへの電力は第一の直流電源回路より供給され、前記冷却ファンのオンオフ制御は制御部で行われる請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−41623(P2011−41623A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190627(P2009−190627)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】