説明

無人搬送車の誘導装置

【課題】 走行路の誘導標識体を不要として走行路の工事費用を縮小すると共に、車輌コストを低減することができる無人搬送車の誘導装置を提供すること。
【解決手段】 屋外の見晴らしの良い走行路では、GPS信号および第1カルマンフィルタ13に基づいて、慣性航法演算部11で算出された無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)の誤差を補正し、一方、屋内あるいは遮蔽物などによりGPS信号が切れた場合には、レーザレーダ10および第2カルマンフィルタ15により、無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)の誤差を補正する。これにより、屋外および屋内を問わず如何なる場所においても、走行路に誘導標識体を必要とせずに、精度良く無人搬送車1を誘導することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車の誘導装置に関し、特に、走行路の誘導標識体を不要として走行路の工事費用を縮小すると共に、車輌コストを低減することができる無人搬送車の誘導装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2002−23847号公報(特許文献1)や特許第3378843号公報(特許文献2)には、無人搬送車に車輪の回転を検知するロータリエンコーダ等から構成される走行距離検知器と、車体の回転角度を検出するジャイロとを搭載し、製鉄所構内やコンテナヤードにおいて、無人搬送車の移動距離と進行方位とを算出しつつ、指令された走行路を走行させるための無人搬送車の誘導装置と、その位置および方位の補正装置が記載されている。
【0003】
特に、特許文献1の誘導装置は、無人搬送車の現在位置と進行方位とを高精度に算出するために、無人搬送車の車輪径を計測する車輪径センサを設け、走行距離検知器に相当する車速センサの計測信号から演算される移動距離を、車輪径センサの計測信号を得て補正している。
【0004】
また、特許文献2の補正装置は、無人搬送車の前部と後部との走行中心線上に車体幅方向の位置のズレ量を検知する方位検知器を設けると共に、無人搬送車の中央部に絶対位置情報を検知するIDタグ検知器を設け、走行路中の所定位置に、方位検知器とIDタグ検知器とに対向させて方位標識と絶対位置情報を記憶したIDタグとを設け、両検知器の検知情報から無人搬送車の方位のズレ角と絶対位置とのズレ量を演算して、無人搬送車の現在位置と方位とを補正している。
【特許文献1】特開2002−23847号公報
【特許文献2】特許第3378843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、いずれの装置の場合も、走行路に敷設された磁気標識を磁気センサで検出しつつ、進行位置や方位を認識するものなので、まず、走行路にいくつもの磁気標識を精度良く敷設しなければならない。また、走行路に敷設された磁気標識を無人搬送車に設けた磁気センサで確実に検出するために、磁気標識と磁気センサとの間隔を全走行路において一定にする必要があり、このため全走行路を平坦にしなければならない。更に、無人搬送車は、それ自体が大重量である上に積載荷重も大きいので、磁気標識が敷設された平坦な路面を維持するために耐荷重路面工事が必要となる。よって、上記装置の場合には、走行路の工事費用が膨大になるという問題点があった。特に、特許文献2では、磁気標識の他に、IDタグをも走行路に精度良く敷設する必要があり、工事費用は更に増大する。
【0006】
また、磁気センサはそれ自体が高価であるが、少なくとも無人搬送車の前後にそれぞれ設けなければならない。またこの他に、特許文献1では、傾斜センサや車輪径センサを必要とし、特許文献2では、IDタグ検知器を必要とするので、無人搬送車の車輌コストを増大させてしまうという問題点があった。
【0007】
更に、脚付きパレット上に載せられた搬送物を無人搬送車で搬送する場合には、一旦、無人搬送車の車体を低くし、その状態で無人搬送車を脚付きパレット内に潜り込ませる。その後、無人搬送車の車体を元の高さに戻すことにより、脚付きパレット上の搬送物を脚付きパレットごと持ち上げて搬送する。かかる場合、即ち無人搬送車の車体を低くした場合、磁気センサ等の各センサが路面に接触すると路面に接触したセンサが損傷するので、この事態を防ぐために、各センサの昇降装置が必要となるが、この点においても、無人搬送車の車輌コストを増大させてしまうという問題点があった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、走行路の誘導標識体を不要として走行路の工事費用を縮小すると共に、車輌コストを低減することができる無人搬送車の誘導装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために請求項1記載の無人搬送車の誘導装置は、無人搬送車の走行距離を検知する走行距離検知器と、前記無人搬送車の移動方位を検知するジャイロと、前記走行距離検知器と前記ジャイロとによる検知結果に基づいて前記無人搬送車の位置と方位とを算出する位置方位算出手段と、その位置方位算出手段により算出された位置と方位とに基づいて前記無人搬送車を走行させる走行制御手段とを備えており、更に、前記無人搬送車に搭載され、GPS信号を受信すると共に、その受信したGPS信号に基づいて前記無人搬送車の位置を検出するGPS位置検出手段と、そのGPS位置検出手段と前記位置方位算出手段とによりそれぞれ求められた位置から前記無人搬送車の位置と方位との誤差を推定するGPS誤差推定手段と、そのGPS誤差推定手段により推定された誤差に基づいて、前記位置方位算出手段により算出される前記無人搬送車の位置と方位とを補正する位置方位補正手段とを備えている。
【0010】
請求項2記載の無人搬送車の誘導装置は、請求項1記載の無人搬送車の誘導装置において、前記無人搬送車に搭載され、レーザ光を定期的に照射すると共にその照射したレーザ光の反射光を入力するレーザレーダと、そのレーザレーダにより入力された反射光に基づいて周辺物体の輪郭を認識する周辺輪郭認識手段と、その周辺輪郭認識手段によって、前のレーザ光照射時に認識された周辺物体の輪郭と後のレーザ光照射時に認識された周辺物体の輪郭とから前記無人搬送車の移動量を求め、その移動量から前記無人搬送車の位置を検出するレーザレーダ位置検出手段と、そのレーザレーダ位置検出手段と前記位置方位算出手段とによりそれぞれ求められた位置から前記無人搬送車の位置と方位との誤差を推定するレーザレーダ誤差推定手段と、GPS信号の受信状況を監視するGPS信号監視手段とを備え、前記位置方位補正手段は、そのGPS信号監視手段がGPS信号を正常に受信できないと判断した場合には、前記レーザレーダ誤差推定手段により推定された誤差に基づいて、前記位置方位算出手段により算出される前記無人搬送車の位置と方位とを補正するものである。
【0011】
請求項3記載の無人搬送車の誘導装置は、請求項2記載の無人搬送車の誘導装置において、前記GPS位置検出手段と前記レーザレーダ位置検出手段とによりそれぞれ求められた位置から前記無人搬送車の位置の誤差を推定するGPSレーザレーダ誤差推定手段と、そのGPSレーザレーダ誤差推定手段により推定された誤差に基づいて、前記レーザレーダ位置検出手段により検出される前記無人搬送車の位置を補正するレーザレーダ位置補正手段とを備えている。
【0012】
請求項4記載の無人搬送車の誘導装置は、無人搬送車の走行距離を検知する走行距離検知器と、前記無人搬送車の移動方位を検知するジャイロと、前記走行距離検知器と前記ジャイロとによる検知結果に基づいて前記無人搬送車の位置と方位とを算出する位置方位算出手段と、その位置方位算出手段により算出された位置と方位とに基づいて前記無人搬送車を走行させる走行制御手段とを備えており、更に前記無人搬送車に搭載され、レーザ光を定期的に照射すると共にその照射したレーザ光の反射光を入力するレーザレーダと、そのレーザレーダにより入力された反射光に基づいて周辺物体の輪郭を認識する周辺輪郭認識手段と、その周辺輪郭認識手段によって、前のレーザ光照射時に認識された周辺物体の輪郭と後のレーザ光照射時に認識された周辺物体の輪郭とから前記無人搬送車の移動量を求め、その移動量から前記無人搬送車の位置を検出するレーザレーダ位置検出手段と、そのレーザレーダ位置検出手段と前記位置方位算出手段とによりそれぞれ求められた位置から前記無人搬送車の位置と方位との誤差を推定するレーザレーダ誤差推定手段と、そのレーザレーダ誤差推定手段により推定された誤差に基づいて、前記位置方位算出手段により算出される前記無人搬送車の位置と方位とを補正する位置方位補正手段とを備えている。
【0013】
請求項5記載の無人搬送車の誘導装置は、請求項2から4のいずれかに記載の無人搬送車の誘導装置において、前記無人搬送車の走行路に設定された障害物発生の危険性のあるエリアを記憶する障害物エリア記憶手段と、その障害物エリア記憶手段に記憶されるエリアの中から前記位置方位算出手段により算出された位置に対応するエリアを選択する障害物エリア選択手段と、その障害物エリア選択手段により選択されたエリア内において前記レーザレーダの反射光によって障害物の存在を認識した場合に、前記走行制御手段へ障害物検知信号を出力する障害物検知手段とを備え、前記走行制御手段は、その障害物検知手段から出力される障害物検知信号を入力すると、前記無人搬送車を減速停止させるものである。
【0014】
請求項6記載の無人搬送車の誘導装置は、請求項1から5のいずれかに記載の無人搬送車の誘導装置において、前記位置方位補正手段は、前記GPS誤差推定手段または前記レーザレーダ誤差推定手段により推定された誤差に基づいて、前記位置方位算出手段により前記無人搬送車の位置と方位とを算出するための係数値を修正することにより、前記無人搬送車の位置と方位とを補正するものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の無人搬送車の誘導装置によれば、走行距離検知器とジャイロとによる検知結果に基づいて、位置方位算出手段により無人搬送車の位置と方位とが算出され、その位置と方位とに基づいて、走行制御手段により無人搬送車が走行路を走行するように誘導される。しかし、走行距離検知器とジャイロとによる検知結果には誤差が伴うので、これだけでは無人搬送車を正確に誘導できない。そこで、無人搬送車の位置は、更にGPS信号に基づいてGPS位置検出手段によっても検出され、そのGPS位置検出手段と位置方位算出手段とによりそれぞれ求められた位置から、GPS誤差推定手段によって無人搬送車の位置と方位との誤差が推定される。この推定誤差に基づいて、位置方位補正手段によって位置方位算出手段により算出される無人搬送車の位置と方位とが補正され、その補正された位置と方位とに基づいて、走行制御手段により無人搬送車が走行路を走行するように誘導される。従って、無人搬送車の誘導を高精度に行うことができるという効果がある。
【0016】
また、無人搬送車の位置と方位の算出は、走行距離検知器およびジャイロの検知結果とGPS信号とに基づいて行われるので、走行路に磁気標識やIDタグ等の標識体を敷設する必要がない。よって、これらの標識体を無人搬送車で検出する必要もないので、走行路と車体との間隔を全走行路において一定にする必要がない。従って、標識体の敷設工事が不要となり、走行路に求められる平坦度を緩和できるので、膨大な走行路の工事費用を大幅に縮小できるという効果がある。また、走行路の標識体を検出するための高価なセンサが不要となり、更にこれらのセンサを無人搬送車の車体の上下動に連動させて下降又は上昇させる昇降装置も不要となるので、無人搬送車の車体構成を簡略化して、車輌コストを低減することができるという効果がある。
【0017】
更に、本誘導装置は、走行路の加工(例えば標識体の敷設工事など)を必要としないので、既存の搬送車に本誘導装置を搭載するだけで実現できる。即ち、他方式の無人搬送車や有人搬送車に本誘導装置を搭載するだけで、走行路を加工することなく、ローコストで、本誘導装置を実現できるという効果がある。
【0018】
請求項2記載の無人搬送車の誘導装置によれば、請求項1記載の無人搬送車の誘導装置と同様の作用効果を奏する上、無人搬送車に搭載されたレーザレーダは、レーザ光を定期的に照射すると共に、その照射したレーザ光の反射光を入力する。この入力された反射光に基づいて、周辺輪郭認識手段により周辺物体の輪郭が認識され、前のレーザ光照射時に認識された周辺物体の輪郭と後のレーザ光照射時に認識された周辺物体の輪郭とから、レーザレーダ位置検出手段によって、無人搬送車の移動量が求められ、更にその移動量から無人搬送車の位置が検出される。このレーザレーダ位置検出手段と位置方位算出手段とによりそれぞれ求められた位置からレーザレーダ誤差推定手段によって無人搬送車の位置と方位との誤差が推定される。ここで、GPS信号監視手段がGPS信号を正常に受信できないと判断した場合には、レーザレーダ誤差推定手段により推定された誤差に基づいて、位置方位算出手段により算出される無人搬送車の位置と方位とが位置方位補正手段によって補正され、その補正された位置と方位とに基づいて、走行制御手段により無人搬送車が走行路を走行するように誘導される。
【0019】
よって、GPS信号が途絶えた場合やGPS信号を受信できない屋内では、GPS誤差推定手段による無人搬送車の位置と方位との誤差推定ができず、無人搬送車の位置と方位との補正を行うことができないが、かかる場合には、位置方位補正手段は、レーザレーダ誤差推定手段により推定された誤差に基づいて、位置方位算出手段により算出される無人搬送車の位置と方位とを補正するので、GPS信号を正常に受信できない場合にも、無人搬送車を高精度に誘導できるという効果がある。従って、屋内でも屋外でも、或いはGPS信号の受信困難な場所であっても、あらゆる走行路で本誘導装置を実用化できるという効果がある。
【0020】
また、レーザレーダ位置検出手段は、周辺輪郭認識手段によって、前のレーザ光照射時に認識された周辺物体の輪郭と後のレーザ光照射時に認識された周辺物体の輪郭とから無人搬送車の移動量を求め、更にその移動量から無人搬送車の位置を検出するので、走行路にレーザ光を反射させるための標識体を設置する必要がない。よって、標識体の敷設工事が不要となるので、走行路の工事費用を縮小できるという効果がある。
【0021】
請求項3記載の無人搬送車の誘導装置によれば、請求項2記載の無人搬送車の誘導装置と同様の作用効果を奏する上、GPSレーザレーダ誤差推定手段は、GPS位置検出手段とレーザレーダ位置検出手段とによりそれぞれ求められた位置から無人搬送車の位置の誤差を推定し、その推定誤差に基づいて、レーザレーダ位置補正手段により、レーザレーダ位置検出手段により検出される無人搬送車の位置が補正される。レーザレーダ位置検出手段による無人搬送車の位置の検出は、前の検出位置に基づいてなされるので、その検出位置は各回の検出時の誤差が累積されたものとなる。しかし、本レーザレーダ位置検出手段により検出される無人搬送車の位置は、GPS位置検出手段により検出された位置に基づいて、レーザレーダ位置補正手段により補正されるので、その補正によって検出位置の累積誤差を除去することができるという効果がある。正常にGPS信号が受信できる間に、該レーザレーダ位置検出手段により検出される無人搬送車の位置の補正を行っておくことにより、GPS信号が途絶えた結果、レーザレーダ位置検出手段により検出された位置に基づいて、無人搬送車の位置と方位とを補正する場合にも、その補正を誤差無く行うことができ、無人搬送車を高精度に誘導できるという効果がある。
【0022】
請求項4記載の無人搬送車の誘導装置によれば、走行距離検知器とジャイロとによる検知結果に基づいて、位置方位算出手段により無人搬送車の位置と方位とが算出され、その位置と方位とに基づいて、走行制御手段により無人搬送車が走行路を走行するように誘導される。しかし、走行距離検知器とジャイロとによる検知結果には誤差が伴うので、これだけでは無人搬送車を正確に誘導できない。そこで、無人搬送車にレーザレーダを搭載し、レーザレーダによりレーザ光を定期的に照射すると共に、その照射したレーザ光の反射光を入力する。この入力された反射光に基づいて、周辺輪郭認識手段により周辺物体の輪郭が認識され、前のレーザ光照射時に認識された周辺物体の輪郭と後のレーザ光照射時に認識された周辺物体の輪郭とから、レーザレーダ位置検出手段によって、無人搬送車の移動量が求められ、更にその移動量から無人搬送車の位置が検出される。このレーザレーダ位置検出手段と位置方位算出手段とによりそれぞれ求められた位置から、レーザレーダ誤差推定手段によって無人搬送車の位置と方位との誤差が推定される。その推定誤差に基づいて、位置方位補正手段によって位置方位算出手段により算出される無人搬送車の位置と方位とが補正され、その補正された位置と方位とに基づいて、走行制御手段により無人搬送車が走行路を走行するように誘導される。従って、無人搬送車の誘導を高精度に行うことができるという効果がある。
【0023】
また、無人搬送車の位置と方位の算出は、走行距離検知器およびジャイロの検知結果とレーザ光の反射光から認識される周辺物体の輪郭とに基づいて行われるので、走行路に磁気標識やIDタグ等の標識体を敷設する必要がない。よって、これらの標識体を無人搬送車で検出する必要もないので、走行路と車体との間隔を全走行路において一定にする必要がない。従って、標識体の敷設工事が不要となり、走行路に求められる平坦度を緩和できるので、膨大な走行路の工事費用を大幅に縮小できるという効果がある。また、走行路の標識体を検出するための高価なセンサが不要となり、更にこれらのセンサを無人搬送車の車体の上下動に連動させて下降又は上昇させる昇降装置も不要となるので、無人搬送車の車体構成を簡略化して、車輌コストを低減することができるという効果がある。
【0024】
更に、本誘導装置は、走行路の加工(例えば標識体の敷設工事など)を必要としない。即ちレーザレーダ位置検出手段は、レーザ光の反射光から認識される周辺物体の輪郭に基づいて無人搬送車の位置を検出するので、レーザ光を反射させるための特定の標識体を、走行路に設ける必要がない。よって、既存の搬送車に本誘導装置を搭載するだけで実現できる。即ち、他方式の無人搬送車や有人搬送車に本誘導装置を搭載するだけで、走行路を加工することなく、ローコストで、本誘導装置を実現できるという効果がある。
【0025】
請求項5記載の無人搬送車の誘導装置によれば、請求項2から4のいずれかに記載の無人搬送車の誘導装置と同様の作用効果を奏する上、障害物エリア選択手段によって、障害物エリア記憶手段に記憶されるエリアの中から、位置方位算出手段により算出された位置に対応するエリアが選択され、その選択されたエリア内において、障害物検知手段がレーザレーダの反射光によって障害物の存在を認識すると、走行制御手段へ障害物検知信号が出力される。走行制御手段は、かかる障害物検知信号を入力すると、無人搬送車を減速停止させるので、走行路に障害物がある場合にも、無人搬送車を安全に誘導できるという効果がある。また、万一無人搬送車の誘導を誤って、無人搬送車を走行路外へコースアウトさせることがあっても、かかる場合には障害物を検知すると、無人搬送車は減速停止するので、かかる異常事態の発生時にも、無人搬送車を安全に誘導できるという効果がある。
【0026】
請求項6記載の無人搬送車の誘導装置によれば、請求項1から5のいずれかに記載の無人搬送車の誘導装置と同様の作用効果を奏する上、位置方位補正手段は、GPS誤差推定手段またはレーザレーダ誤差推定手段により推定された誤差に基づいて、位置方位算出手段により無人搬送車の位置と方位とを算出するための係数値を修正し、これにより無人搬送車の位置と方位とを補正する。よって、位置方位算出手段による無人搬送車の位置と方位との算出を、補正を加えて、一度に行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の無人搬送車1の外観図であり、(a)はその外観正面図、(b)は外観側面図である。図1に示す通り、無人搬送車1は、その全長にわたり平らな荷台2を有し、その荷台2の下方に複数の車輪3を備えている。各車輪3は、それぞれ独立して操舵できるように構成されている。よって、無人搬送車1を前後進いずれにも同じ速度で走行させることができるし、全車輪3を同じステアリング角度に保って走行させることにより、無人搬送車1を斜行させることもできる。
【0028】
各車輪3は、荷台2に対して伸縮自在に構成されたアーム4を介して取り付けられており、そのアーム4を伸長し又は縮小することで荷台2の高さを上昇又は下降させることができる。よって、例えば搬送物を載置した脚付きパレットの下方に、荷台2を低くして潜り込ませ、荷台2を上昇させて脚付きパレットごと搬送物を持ち上げ、これを搬送することができる。
【0029】
無人搬送車1の前方及び後方には、それぞれ運転室5が設けられている。運転室5では、無人搬送車1の走行制御系が故障した場合や無人搬送車1の走行に適さない場合に、無人搬送車1を運転者によって運転できるように設けられている。
【0030】
無人搬送車1の前方にある制御盤内には、回転運動中の無人搬送車1の回転角度を検出するジャイロ6が設けられている。また、車輪3の1つには、車輪3の回転を検知するロータリエンコーダから構成される車速パルス検知器7が設けられ、その車速パルス検知器7から出力される車速パルスにより、無人搬送車1の走行距離が検出される。更に、各車輪3の支持部には、操舵角を検知するためのステアリング角度検知器8がそれぞれ設けられている。前述した通り、各車輪3はそれぞれ独立して操舵できるが、全車輪3を同じステアリング角度に保って走行させた場合は、無人搬送車1は回転運動すること無く斜行する。ジャイロ6は無人搬送車1が回転運動をしていなければ、その回転角度を検出できないので、かかる場合に、ステアリング角度検知器8によって、無人搬送車1の進行方位を検知するのである。
【0031】
無人搬送車1の前方には、人工衛星から出力されるGPS(グローバル・ポジショニング・システム)信号を受信するためのGPSアンテナ9が設けられている。このGPSアンテナ9で4機以上の人工衛星から受信したGPS信号に基づいて、無人搬送車1の広域座標系における位置(N,E)が検出される。また、無人搬送車1の前端および後端には、それぞれレーザレーダ10が配設されている。レーザレーダ10は、0.25度、0.5度、1度の中から選択した角度単位で、前方又は後方のそれぞれについて、レーザビーム(レーザ光線)を180度の範囲で走査(スキャニング)し、その反射光を入力するものである。レーザレーダ10で入力した反射光によって、レーザビームの照射エリア内の物体との距離及び方向を認識することができる。
【0032】
図2は、第1実施形態における無人搬送車1の誘導装置の制御ブロック図である。第1実施形態の誘導装置では、GPS信号を利用して無人搬送車1の誘導装置を構成している。即ち、無人搬送車1の位置及び方位の演算は、ジャイロ6、車速パルス検知器7、ステアリング角度検知器8の各出力に基づいて、慣性航法演算をして算出されるが、これには、時間ドリフト、走行路面の凹凸、検出信号の変換誤差などが含まれており、走行中に累積した誤差が無人搬送車1が認識する位置や方位に影響を及ぼし、最悪、走行路からコースアウトする恐れがある。そこで、第1実施形態の誘導装置では、GPS信号に基づいて、無人搬送車1の位置を求め、これにより位置及び方位の累積誤差を修正し、無人搬送車1を高精度に誘導するものである。
【0033】
ジャイロ6、車速パルス検知器7、ステアリング角度検知器8の各検出値は、慣性航法演算部11へ出力され、慣性航法演算部11では、これらの検出値に基づいて、広域座標系における無人搬送車1の現在位置及び進行方位(N,E,θ)が算出される。算出された位置及び方位(N,E,θ)は、まず、走行操舵制御部12へ出力される。走行操舵制御部12には、走行路のコースデータを記憶した走行路データ記憶部12aが設けられており、これに記憶される走行路のコースデータと、無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)とに基づいて、無人搬送車1の走行が制御され、無人搬送車1が走行路を誘導される。
【0034】
また、慣性航法演算部11で算出された位置及び方位(N,E,θ)は、GPS信号で求められた現在位置(N,E)と比較され、その差が第1カルマンフィルタ13へ出力される。第1カルマンフィルタ13では、係る入力に基づいて、位置及び方位(N,E,θ)の誤差を推定し、これを慣性航法演算部11へ出力する。慣性航法演算部11では、第1カルマンフィルタ13から入力した推定誤差に基づいて、ジャイロ6、車速パルス検知器7、ステアリング角度検知器8の各検出値のスケールファクタ(係数)を修正し、慣性航法演算で算出される無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)を補正する。補正された無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)は、走行操舵制御部12へ出力されて、無人搬送車1の誘導に使用されると共に、再度、GPS信号で求められた現在位置(N,E)と比較される。
【0035】
以上の通り、第1実施形態の無人搬送車1の誘導装置では、ジャイロ6、車速パルス検知器7、ステアリング角度検知器8の各検出値に基づいて算出された無人搬送車1の位置及び方位は、GPS信号に基づいて補正されるので、算出された位置及び方位に誤差が累積することが無く、よって、無人搬送車1を高精度に誘導することができる。
【0036】
また、無人搬送車1の位置及び方位の算出は、ジャイロ6、車速パルス検知器7、ステアリング角度検知器8の各検出値に基づいて行われ、その算出された位置及び方位の補正は、GPS信号に基づいて行われるので、走行路に磁気標識やIDタグ等の標識体を敷設する必要がない。よって、これらの標識体を無人搬送車1で検出する必要もないので、走行路と車体との間隔を全走行路において必ずしも一定にする必要がない。従って、標識体の敷設工事が不要となり、走行路に求められる平坦度を緩和できるので、膨大な走行路の工事費用を大幅に縮小できる。
【0037】
更に、走行路の標識体を検出するための高価なセンサが不要となり、更にこれらのセンサを無人搬送車1の車体の上下動に連動させて下降又は上昇させる昇降装置も不要となるので、無人搬送車1の車体構成を簡略化して、車輌コストを低減することができる。また、本誘導装置は、走行路の加工(例えば標識体の敷設工事など)を必要としないので、既存の搬送車に本誘導装置を搭載するだけで実現できる。即ち、他方式の無人搬送車や有人搬送車に本誘導装置を搭載するだけで、走行路を加工することなく、ローコストで実現することができる。
【0038】
図3は、第2実施形態における無人搬送車1の誘導装置の制御ブロック図である。第2実施形態の誘導装置では、GPS信号に代えて、レーザレーダ10を利用して無人搬送車1の誘導装置を構成している。以下、前記した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0039】
第2実施形態の誘導装置は、無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)の算出機能の他に、障害物検知機能を有している。まず、位置及び方位(N,E,θ)の算出機能について説明する。進行方向のレーザレーダ10を180度の範囲でスキャニングし、その反射光を輪郭フレーム演算部14へ出力する。輪郭フレーム演算部14では、入力した反射光に基づいて、建物、電柱、木などの走行路周辺にもともと存在する周辺物体の位置を輪郭フレームとして捉え、これを輪郭フレーム記憶部14aに記憶する。そして、現在のスキャンで得られた周辺物体の輪郭フレームと、1スキャン前の輪郭フレームとの変位量を求め、これを広域座標系(GPSの座標系)に変換して、無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)を算出する。
【0040】
輪郭フレーム演算部14で算出された無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)は、慣性航法演算部11で算出された位置及び方位(N,E,θ)と比較され、その差が第2カルマンフィルタ15へ出力される。第2カルマンフィルタ15では、係る入力に基づいて、位置及び方位(N,E,θ)の誤差を推定し、これを慣性航法演算部11へ出力する。慣性航法演算部11では、第2カルマンフィルタ15から入力した推定誤差に基づいて、ジャイロ6、車速パルス検知器7、ステアリング角度検知器8の各検出値のスケールファクタ(係数)を修正し、慣性航法演算で算出される無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)を補正する。補正された無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)は、走行操舵制御部12へ出力されて、無人搬送車1の誘導に使用されると共に、再度、輪郭フレーム演算部14で算出された現在位置(N,E,θ)と比較される。
【0041】
以上の通り、第2実施形態の無人搬送車1の誘導装置では、ジャイロ6、車速パルス検知器7、ステアリング角度検知器8の各検出値に基づいて算出された無人搬送車1の位置及び方位は、レーザレーダ10の反射光に基づいて算出された位置及び方位(N,E,θ)に基づいて補正されるので、位置及び方位の累積誤差を極力抑えて、無人搬送車1を高精度に誘導することができる。
【0042】
また、無人搬送車1の位置及び方位の算出は、ジャイロ6、車速パルス検知器7、ステアリング角度検知器8の各検出値に基づいて行われ、その算出された位置及び方位の補正は、レーザレーダ10の反射光に基づいて算出された位置及び方位(N,E,θ)に基づいて行われるので、走行路に磁気標識やIDタグ等の標識体を敷設する必要がない。レーザレーダ10の反射光により作成される輪郭フレームは、特定の標識体の輪郭フレームではなく、走行路の周辺にもともと存在する周辺物体の輪郭フレームだからである。よって、これらの標識体を無人搬送車1で検出する必要もないので、走行路と車体との間隔を全走行路において必ずしも一定にする必要がない。従って、標識体の敷設工事が不要となり、走行路に求められる平坦度を緩和できるので、膨大な走行路の工事費用を大幅に縮小できる。
【0043】
更に、走行路の標識体を検出するための高価なセンサが不要となり、更にこれらのセンサを無人搬送車1の車体の上下動に連動させて下降又は上昇させる昇降装置も不要となるので、無人搬送車1の車体構成を簡略化して、車輌コストを低減することができる。また、本誘導装置は、走行路の加工(例えば標識体の敷設工事など)を必要としないので、既存の搬送車に本誘導装置を搭載するだけで実現できる。即ち、他方式の無人搬送車や有人搬送車に本誘導装置を搭載するだけで、走行路を加工することなく、ローコストで実現することができる。
【0044】
次に、第2実施形態の誘導装置における障害物検知機能を説明する。予め走行路と連動したエリアであって、障害物発生の危険性のある障害物エリアを障害物エリア記憶部16aへ記憶しておく。この障害物エリアは、走行路からの距離と角度範囲とを定めて、障害物エリア記憶部16aへ記憶される。障害物検知部16では、慣性航法演算部11で算出され補正された無人搬送車1の位置に応じて、該当する障害物エリアを選択する。障害物検知部16は、レーザレーダ10の反射光によって、選択された障害物エリア内に物体を認識した場合には、それを障害物と判断して障害物検知信号16bを走行操舵制御部12へ出力する。走行操舵制御部12では、かかる障害物検知信号16bを入力すると、無人搬送車1を減速させた後に停止制御する。よって、走行路に障害物がある場合にも無人搬送車1を安全に誘導することができる。また、万一無人搬送車1の誘導を誤って、走行路外へコースアウトさせることがあっても、障害物を検知すると無人搬送車1は減速し停止するので、かかる異常事態の発生時にも、無人搬送車1を安全に誘導することができる。
【0045】
図4は、第3実施形態における無人搬送車1の誘導装置の制御ブロック図である。第3実施形態の誘導装置は、前述した第1及び第2実施形態の誘導装置を組み合わせて構成される。以下、前記した第1又は第2実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0046】
第3実施形態の誘導装置では、衛星信号監視部17によりGPS信号の受信状況が確認され、その受信状況に応じて、無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)の誤差補正を、GPS信号又はレーザレーダ10のいずれかで行うように、スイッチSW1,SW2の接続が切り替えられる。
【0047】
具体的には、GPS信号を正常に受信できる場合には、スイッチSW1をオンし、スイッチSW2をオフして、無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)の誤差補正を、第1実施形態のように、GPS信号に基づいて行うように制御する。一方、GPS信号を受信できる衛星数が4機未満となった場合、GPS信号の基準基地局からの無線による補正信号が切れた場合、衛星の精度劣化度が著しくなった場合の何れかの場合には、衛星信号監視部17は、GPS信号が途絶えた(正常に受信できない)と判断して、スイッチSW1をオフし、スイッチSW2をオンして、無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)の誤差補正を、第2実施形態のように、レーザレーダ10の反射光に基づいて行うように制御する。
【0048】
なお、GPS信号に基づく誤差推定は、第1カルマンフィルタ13により行われ、レーザレーダ10の反射光に基づく誤差推定は、第2カルマンフィルタ15により行われる。また、スイッチSW1,SW2は、連動して切り替えられるスイッチであり、一方がオンされると、他方はオフされる。
【0049】
以上の通り第3実施形態の誘導装置によれば、屋外の見晴らしの良い走行路では、GPS信号に基づいて、慣性航法演算部11で算出された無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)の誤差を補正し、一方、屋内あるいは遮蔽物などによりGPS信号が切れた場合には、レーザレーダ10により無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)の誤差を補正する。これにより、屋外および屋内を問わず如何なる場所においても、走行路に誘導標識体を必要とせずに、精度良く無人搬送車1を誘導することができるのである。
【0050】
ここで、図5を参照して、レーザレーダ10の反射光に基づいて算出される、即ち輪郭フレーム演算部14で算出される無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)のキャリブレーション(補正)について説明する。図5は、該キャリブレーションを説明するために、図4の第3実施形態の誘導装置の一部を抜粋した図である。図5に示すように、該キャリブレーションは、衛星信号監視部17によりGPS信号を正常に受信できると判断されている場合に、即ちスイッチSW1がオン(スイッチSW2はオフ)されている場合に実行される。
【0051】
第1実施形態の誘導装置の場合と同様に、無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)は、ジャイロ6、車速パルス検知器7、ステアリング角度検知器8の各検出値に基づいて慣性航法演算部11により算出され、それがGPS信号で求められた現在位置(N,E)に基づいて補正され、その補正された無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)に基づいて、走行操舵制御部12により無人搬送車1が走行路を誘導される。
【0052】
係る制御と並行して、該キャリブレーションが繰り返し行われる。即ち、進行方向のレーザレーダ10をスキャニングし、その反射光に基づいて、輪郭フレーム演算部14で算出された無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)と、GPS信号で求められた無人搬送車1の位置(N,E)とが比較され、その差が第1カルマンフィルタ13へ出力される。第1カルマンフィルタ13では、係る入力に基づいて、位置及び方位(N,E,θ)の誤差を推定し、これを輪郭フレーム演算部14へ出力する。輪郭フレーム演算部14では、第1カルマンフィルタ13から入力した推定誤差に基づいて、自己が算出した無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)をキャリブレーション(補正)する。
【0053】
該キャリブレーションをGPS信号が正常に受信できる間、繰り返し実行して、輪郭フレーム演算部14で算出される無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)の累積誤差を除去しておく。これにより、GPS信号を正常に受信できなくなって、レーザレーダ10に基づいて無人搬送車1を誘導する必要が生じた場合にも、輪郭フレーム演算部14で算出される無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)に累積誤差の無い状態から、無人搬送車1の誘導を開始することができるので、該誘導を高精度に行うことができる。なお、レーザレーダ10による誘導後、GPS信号が正常に受信できる状態となった場合には、該キャリブレーションが再度実行されるので、レーザレーダ10による誘導時に累積した誤差も、この時点で除去することができる。
【0054】
以上、各実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0055】
例えば、第2及び第3実施形態の誘導装置におけるレーザレーダ10に基づく位置及び方位(N,E,θ)の算出では、輪郭フレーム演算部14によって、現在のスキャンで得られた周辺物体の輪郭フレームと、1スキャン前の輪郭フレームとの変位量を求め、これを広域座標系(GPSの座標系)に変換して、無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)を算出した。
【0056】
しかし、これに代えて、走行路の周辺物体の輪郭フレームをその広域座標系の位置と共に予め記憶しておき、この輪郭フレームと、レーザレーダ10のスキャニングで得られた輪郭フレームとを比較して、無人搬送車1の現在位置及び進行方位(N,E,θ)を算出するようにしても良い。かかる場合には、無人搬送車1の位置を、予め記憶される輪郭フレームに基づいて、その都度、修正することができるので、算出される現在位置の累積誤差を除去して、無人搬送車1を高精度に誘導することができる。
【0057】
また、輪郭フレーム演算部14で比較する輪郭フレームは、現在のスキャンと1スキャン前のもとに必ずしも限られるものではなく、例えば1スキャン前と2スキャン前との輪郭フレームを比較して、或いは、1スキャン前と3スキャン前との輪郭フレームを比較して、無人搬送車1の位置及び方位(N,E,θ)を算出するようにしても良い。
【0058】
更に、慣性航法演算部11における位置及び方位(N,E,θ)の補正は、ジャイロ6、車速パルス検知器7、ステアリング角度検知器8の各検出値のスケールファクタ(係数)を修正することにより行われたが、第1又は第2カルマンフィルタ13,15から出力される推定誤差に基づいて、他の方式により補正するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施形態の無人搬送車の外観図であり、(a)はその外観正面図、(b)は外観側面図である。
【図2】第1実施形態における無人搬送車の誘導装置の制御ブロック図である。
【図3】第2実施形態における無人搬送車の誘導装置の制御ブロック図である。
【図4】第3実施形態における無人搬送車の誘導装置の制御ブロック図である。
【図5】輪郭フレーム演算部で算出される位置及び方位のキャリブレーションを説明するために、図4の一部を抜粋した図である。
【符号の説明】
【0060】
1 無人搬送車
6 ジャイロ
7 車速パルス検知器(走行距離検知器)
8 ステアリング角度検知器
9 GPSアンテナ(GPS位置検出手段)
10 レーザレーダ
11 慣性航法演算部(位置方位算出手段、位置方位補正手段)
12 走行操舵制御部(走行制御手段)
13 第1カルマンフィルタ(GPS誤差推定手段)
14 輪郭フレーム演算部(周辺輪郭認識手段、レーザレーダ位置検出手段、レーザレーダ位置補正手段)
15 第2カルマンフィルタ(レーザレーダ誤差推定手段)
16 障害物検知部(障害物検知手段、障害物エリア選択手段)
16a 障害物エリア記憶部(障害物エリア記憶手段)
16b 障害物検知信号
17 衛星信号監視部(GPS信号監視手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人搬送車の走行距離を検知する走行距離検知器と、前記無人搬送車の移動方位を検知するジャイロと、前記走行距離検知器と前記ジャイロとによる検知結果に基づいて前記無人搬送車の位置と方位とを算出する位置方位算出手段と、その位置方位算出手段により算出された位置と方位とに基づいて前記無人搬送車を走行させる走行制御手段とを備えた無人搬送車の誘導装置において、
前記無人搬送車に搭載され、GPS信号を受信すると共に、その受信したGPS信号に基づいて前記無人搬送車の位置を検出するGPS位置検出手段と、
そのGPS位置検出手段と前記位置方位算出手段とによりそれぞれ求められた位置から前記無人搬送車の位置と方位との誤差を推定するGPS誤差推定手段と、
そのGPS誤差推定手段により推定された誤差に基づいて、前記位置方位算出手段により算出される前記無人搬送車の位置と方位とを補正する位置方位補正手段とを備えていることを特徴とする無人搬送車の誘導装置。
【請求項2】
前記無人搬送車に搭載され、レーザ光を定期的に照射すると共にその照射したレーザ光の反射光を入力するレーザレーダと、
そのレーザレーダにより入力された反射光に基づいて周辺物体の輪郭を認識する周辺輪郭認識手段と、
その周辺輪郭認識手段によって、前のレーザ光照射時に認識された周辺物体の輪郭と後のレーザ光照射時に認識された周辺物体の輪郭とから前記無人搬送車の移動量を求め、その移動量から前記無人搬送車の位置を検出するレーザレーダ位置検出手段と、
そのレーザレーダ位置検出手段と前記位置方位算出手段とによりそれぞれ求められた位置から前記無人搬送車の位置と方位との誤差を推定するレーザレーダ誤差推定手段と、
GPS信号の受信状況を監視するGPS信号監視手段とを備え、
前記位置方位補正手段は、そのGPS信号監視手段がGPS信号を正常に受信できないと判断した場合には、前記レーザレーダ誤差推定手段により推定された誤差に基づいて、前記位置方位算出手段により算出される前記無人搬送車の位置と方位とを補正するものであることを特徴とする請求項1記載の無人搬送車の誘導装置。
【請求項3】
前記GPS位置検出手段と前記レーザレーダ位置検出手段とによりそれぞれ求められた位置から前記無人搬送車の位置の誤差を推定するGPSレーザレーダ誤差推定手段と、
そのGPSレーザレーダ誤差推定手段により推定された誤差に基づいて、前記レーザレーダ位置検出手段により検出される前記無人搬送車の位置を補正するレーザレーダ位置補正手段とを備えていることを特徴とする請求項2記載の無人搬送車の誘導装置。
【請求項4】
無人搬送車の走行距離を検知する走行距離検知器と、前記無人搬送車の移動方位を検知するジャイロと、前記走行距離検知器と前記ジャイロとによる検知結果に基づいて前記無人搬送車の位置と方位とを算出する位置方位算出手段と、その位置方位算出手段により算出された位置と方位とに基づいて前記無人搬送車を走行させる走行制御手段とを備えた無人搬送車の誘導装置において、
前記無人搬送車に搭載され、レーザ光を定期的に照射すると共にその照射したレーザ光の反射光を入力するレーザレーダと、
そのレーザレーダにより入力された反射光に基づいて周辺物体の輪郭を認識する周辺輪郭認識手段と、
その周辺輪郭認識手段によって、前のレーザ光照射時に認識された周辺物体の輪郭と後のレーザ光照射時に認識された周辺物体の輪郭とから前記無人搬送車の移動量を求め、その移動量から前記無人搬送車の位置を検出するレーザレーダ位置検出手段と、
そのレーザレーダ位置検出手段と前記位置方位算出手段とによりそれぞれ求められた位置から前記無人搬送車の位置と方位との誤差を推定するレーザレーダ誤差推定手段と、
そのレーザレーダ誤差推定手段により推定された誤差に基づいて、前記位置方位算出手段により算出される前記無人搬送車の位置と方位とを補正する位置方位補正手段とを備えていることを特徴とする無人搬送車の誘導装置。
【請求項5】
前記無人搬送車の走行路に設定された障害物発生の危険性のあるエリアを記憶する障害物エリア記憶手段と、
その障害物エリア記憶手段に記憶されるエリアの中から前記位置方位算出手段により算出された位置に対応するエリアを選択する障害物エリア選択手段と、
その障害物エリア選択手段により選択されたエリア内において前記レーザレーダの反射光によって障害物の存在を認識した場合に、前記走行制御手段へ障害物検知信号を出力する障害物検知手段とを備え、
前記走行制御手段は、その障害物検知手段から出力される障害物検知信号を入力すると、前記無人搬送車を減速停止させるものであることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の無人搬送車の誘導装置。
【請求項6】
前記位置方位補正手段は、前記GPS誤差推定手段または前記レーザレーダ誤差推定手段により推定された誤差に基づいて、前記位置方位算出手段により前記無人搬送車の位置と方位とを算出するための係数値を修正することにより、前記無人搬送車の位置と方位とを補正するものであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の無人搬送車の誘導装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−209567(P2006−209567A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22408(P2005−22408)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】