説明

無段変速機及びアクチュエータ

【課題】安価な無段変速機及びアクチュエータを提供する。
【解決手段】プーリ軸に固定され一体的に回転する固定シーブと、前記プーリ軸に沿って軸線方向移動可能に支持された可動シーブと、前記固定シーブと前記可動シーブとの間に配置されたベルトと、前記可動シーブを軸線方向に移動させてプーリ溝幅を可変するアクチュエータとを有する無段変速機であって、前記アクチュエータは、電動モータと、前記電動モータが発生した回転力を伝達する減速機構と、前記減速機構を介して前記電動モータの動力を入力するナットと、前記ナットの回転量に応じて軸線方向に変位するねじ軸と、一端を前記ねじ軸に連結し、他端を前記可動シーブに連結し揺動可能となっている揺動部材とを有し、前記アクチュエータにはセンサが設けられていないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段変速機、特に車両用のVベルト式無段変速機及びそれに用いると好適なアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されるように、電動モータと、プーリ軸に固定された固定シーブとプーリ軸に軸線方向移動可能に支持された可動シーブとを有するプーリと、電動モータの回転力により可動シーブを軸線方向に変位させてプーリ溝幅を可変するアクチュエータと、この電動モータの回転力をアクチュエータへ伝達するギヤ機構とを備えた無段変速機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−79759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、アクチュエータにセンサを設け、軸線方向変位量を測定し、その挙動を制御する旨記載されている。しかしながら、センサ自体及びその周辺部品のコスト、更にはそれらの組立コストといった点から、このような構成には改善の余地がある。
【0005】
上記に鑑み、本発明は、安価な無段変速機及び無段変速機に用いるアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)プーリ軸に回転を入力する入力軸と、前記プーリ軸に固定され一体的に回転する固定シーブと、前記プーリ軸に沿って軸線方向移動可能に支持された可動シーブと、前記可動シーブと前記固定シーブとからなる駆動側プーリと、前記固定シーブと前記可動シーブとの間に配置されたベルトと、前記ベルトを介して前記駆動側プーリと連結される従動側プーリと、前記従動側プーリに前記ベルトを介して変速された回転を出力する出力軸と、前記可動シーブを軸線方向に移動させてプーリ溝幅を可変するアクチュエータとを有する無段変速機において、
前記入力軸及び前記出力軸の回転数を検出するセンサを備え、
前記各センサで検出した前記入力軸及び出力軸の回転数により、前記アクチュエータを制御することを特徴とする無段変速機。
(2)前記アクチュエータは、電動モータと、前記電動モータが発生した回転力を伝達する減速機構と、前記減速機構を介して前記電動モータの動力を入力するナットと、前記ナットの回転量に応じて軸線方向に変位するねじ軸と、一端を前記ねじ軸に連結し、他端を前記可動シーブに連結し揺動可能となっている揺動部材とを有し、
前記アクチュエータにはセンサが設けられていないことを特徴とする(1)の無段変速機。
(3)電動モータと、前記電動モータが発生した回転力を伝達する減速機構と、前記減速機構を介して前記電動モータの動力を入力するナットと、前記ナットの回転量に応じて軸線方向に変位するねじ軸とを有し、センサが設けられていないことを特徴とするアクチュエータ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アクチュエータにセンサを設けていないため、センサ自体及びその周辺部品のコスト、更にはそれらの組立コストを抑えることができ、低コストなアクチュエータ及び無段変速機を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るアクチュエータの制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明に係るベルト式無段変速機を表すブロック図である。図2は、図1のアクチュエータの制御方法を示すフローチャートである。
【0010】
図1に示すベルト式無段変速機1は、エンジン2から伸びるクランク軸3(入力軸)と同軸に連結された駆動側プーリ4と、車輪5に動力を伝達する出力軸6と同軸に連結された従動側プーリ7と、駆動側プーリ4から従動側プーリ7に動力を伝達する無端状のVベルト8と、駆動側プーリ4へのVベルト8の巻き掛け半径を変化させるアクチュエータ9からなる。
【0011】
駆動側プーリ4は、クランク軸3に固定された固定シーブ41と、固定シーブ41に対して接近・離間可能な可動シーブ42とを備える。Vベルト8を巻き掛けるようにして固定シーブ41及び可動シーブ42間に形成されるベルト溝の幅、すなわち巻き掛け半径を変化させるために、可動シーブ42はアクチュエータ9により軸方向に駆動される。
【0012】
このアクチュエータ9は、例えば特開2009−79759号公報のように、電動モータと、電動モータが発生した回転力を伝達する減速機構と、前記減速機講を介して前記電動モータの動力を入力するナットと、前記ナットの回転量に応じて軸線方向に変位するねじ軸と、一端を前記ねじ軸に連結し、他端を可動シーブ42に連結し揺動可能となっている揺動部材とを有する。すなわち、アクチュエータ9の前記モータの回転力により、可動シーブ42が軸方向に移動し、前記巻き掛け半径が変化する。
【0013】
従動側プーリ7は、可動シーブ71と固定シーブ72とを備え、駆動側プーリ4と平行な軸線上に配置される。減速の場合、駆動側プーリ4の可動シーブ42が固定シーブ41に接近する方向へ駆動され、Vベルト8で連結された従動側プーリ7の可動シーブ71が固定シーブ72と離隔するように駆動される。これにより、駆動側プーリ4のVベルト8の巻き掛け半径が大きくなり、従動側プーリ7では巻き掛け半径が小さくなり、クランク軸3の回転速度に対して出力軸6の回転速度が低下し、減速を実現できる。増速の場合は逆となる。
【0014】
駆動側プーリ4及び従動側プーリ7により、クランク軸3から入力されたエンジンの回転は変速されて出力軸6へ出力される。出力軸6は不図示の減速機等を介して車軸に連結されており、出力軸6へ出力された回転により、車輪5が回転駆動される。
【0015】
また、駆動側プーリ4を駆動するアクチュエータ9にはセンサが設けられていない。クランク軸3及び出力軸6の回転数を検出可能な位置に入力側センサ31、出力側センサ61が設けられており、入力側センサ31及び出力側センサ61で検出したクランク軸3及び出力軸6の回転数により、図2のようにアクチュエータ9の前記モータの回転量を制御する。
【0016】
以下、この制御方法について説明する。
まず、入力側センサ31及び出力側センサ61で検出したクランク軸3及び出力軸6の回転数を制御部10(図1)に送り、これらより駆動側プーリ4及び従動側プーリ7での変速比を計算する(ステップS1)。次に、計算された変速比と要求される変速比との差を計算し(ステップS2)、アクチュエータ9の前記モータの回転量を制御する(ステップS3)。
【0017】
これにより、駆動側プーリ4及び従動側プーリ7の変速比を直接検出して制御するので、アクチュエータ9のみでセンシング及び制御を行った場合よりも、より正確な変速比の制御が可能となる。また、アクチュエータ9にセンサを設ける必要がないので、センサ自体及びその周辺部品のコスト、更にはそれらの組立コストを抑えることができ、低コストなアクチュエータ及び無段変速機を実現できる。
【0018】
なお、以上の説明では、入力側センサ31をクランク軸3の回転数を検出するものとしたが、クランク軸3と一定の変速比を有する部分の回転数を検出するものとしても良い。出力側センサ61についても同様である。また、入力側センサ31は、いわゆるエンジンの回転数測定のためのセンサとしても使用可能であり、出力側センサ61は、車速測定用のセンサとしても用いることができる。
【0019】
また、前記アクチュエータ9は、駆動側プーリ1と平行な軸線上に並列に配置することが好ましい。これにより、前記揺動部材で前記ねじ軸の軸線方向変位を可動シーブ42の軸方向変位に変換しているため、前記ナットの慣性を抑えることができ、駆動側プーリ4のプーリ幅の高速制御を容易に行える。また、前記揺動部材を介在させることで、Vベルト8の付勢力で可動シーブ42が傾いても、前記ねじ軸の傾きを招来せず、前記ねじ軸及び前記ナットの疲労寿命等の低下を制御できる。
【符号の説明】
【0020】
1 ベルト式無段変速機
2 エンジン
3 クランク軸
4 駆動側プーリ
5 車輪
6 出力軸
7 従動側プーリ
8 Vベルト
9 アクチュエータ
10 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プーリ軸に回転を入力する入力軸と、前記プーリ軸に固定され一体的に回転する固定シーブと、前記プーリ軸に沿って軸線方向移動可能に支持された可動シーブと、前記可動シーブと前記固定シーブとからなる駆動側プーリと、前記固定シーブと前記可動シーブとの間に配置されたベルトと、前記ベルトを介して前記駆動側プーリと連結される従動側プーリと、前記従動側プーリに前記ベルトを介して変速された回転を出力する出力軸と、前記可動シーブを軸線方向に移動させてプーリ溝幅を可変するアクチュエータとを有する無段変速機において、
前記入力軸及び前記出力軸の回転数を検出するセンサを備え、
前記各センサで検出した前記入力軸及び出力軸の回転数により、前記アクチュエータを制御することを特徴とする無段変速機。
【請求項2】
前記アクチュエータは、電動モータと、前記電動モータが発生した回転力を伝達する減速機構と、前記減速機構を介して前記電動モータの動力を入力するナットと、前記ナットの回転量に応じて軸線方向に変位するねじ軸と、一端を前記ねじ軸に連結し、他端を前記可動シーブに連結し揺動可能となっている揺動部材とを有し、
前記アクチュエータにはセンサが設けられていないことを特徴とする請求項1に記載の無段変速機。
【請求項3】
電動モータと、前記電動モータが発生した回転力を伝達する減速機構と、前記減速機構を介して前記電動モータの動力を入力するナットと、前記ナットの回転量に応じて軸線方向に変位するねじ軸とを有し、
センサが設けられていないことを特徴とするアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−241812(P2012−241812A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113069(P2011−113069)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】