説明

熱処理炉及び熱処理装置

【課題】ウエハを均一に加熱することができ、かつヒータエレメントの寿命を伸ばすこと。
【解決手段】熱処理炉2は被処理体Wを収容して熱処理するための処理容器3と、該処理容器3の周囲を覆う断熱材16と、断熱材16内周面16aに設けられ被処理体Wを加熱するヒータ5とを備えている。上記ヒータ5は、円筒状の断熱材16の内周面16aに沿ってスパイラル状に配置されたヒータエレメント18を有している。ヒータエレメント18は帯状のものを波形に曲げ加工してなり、外側に突出する谷部18aと内側へ突出する山部18bとを有するコルゲート型のヒータエレメントからなる。谷部18aは谷部支持ピン部材20aにより支持され、山部18bは山部支持ピン部材20bにより支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理炉及び該熱処理炉を備えた熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造においては、被処理体である半導体ウエハに酸化、拡散、CVD(Chemical Vapor Deposition)などの処理を施すために、各種の熱処理装置が用いられている。そして、その一般的な熱処理装置は、半導体ウエハを収容して熱処理するための処理容器と、この処理容器の周囲を覆う円筒状の断熱材と、断熱材の内周面に設けられウエハを加熱するヒータとを含む熱処理炉を備えている。
【0003】
上記ヒータとしては、例えばバッチ処理が可能な熱処理装置の場合でいうと、円筒状の断熱材の内壁面に沿って配置され支持体により支持されるヒータエレメントが用いられ、炉内を例えば800〜1000℃程度に高温に加熱することができる。また、上記断熱材としては、例えばセラミックファイバ等からなる断熱材料を円筒状に焼成してなるものが用いられ、輻射熱および伝導熱として奪われる熱量を減少させて効率のよい加熱を助長することができる。上記支持体としては、例えばセラミック製のものが用いられ、上記ヒータエレメントを熱膨張および熱収縮可能に所定のピッチで支持するようになっている。
【0004】
ところで、円筒状の断熱材の内周面に設けられるヒータエレメントは、断熱材の内周面を縦方向に2つに分離した場合の各半周面毎に設けられ、断熱材の内周面の一方の領域と、他方の領域に設けられたヒータエレメントは各々独立している。
【0005】
そして各ヒータエレメントは、円周方向に延び多段に設けられた複数の円周部と、各円周部を接続するとともに上下方向に延びる接続部とを有している。
【0006】
従来より、このような構成からなるヒータエレメントを断熱材の内周面の全域に設けることはむずかしく、この場合はウエハを均一に加熱することもむずかしい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−263170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、断熱材の内周面全域にヒータエレメントを配置することによりウエハを均一に加熱することができ、かつヒータエレメントに対する応力集中を避けることができる熱処理炉及び熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、被処理体を収容して熱処理する処理容器と、該処理容器の周囲を覆う円筒状の断熱材と、該断熱材の内周面に沿って配置されたヒータとを備え、このヒータは断熱材の内周面に沿ってスパイラル状に配置され、外側に突出する谷部と、内側に突出する山部とを有するコルゲート型の帯状ヒータエレメントを有することを特徴とする熱処理炉である。
【0010】
本発明は、ヒータエレメントの谷部は、断熱材に埋込まれた抜け止め用の谷部支持ピン部材により支持され、ヒータエレメントの山部は、断熱材に埋込まれた倒れ防止用の山部支持ピン部材により支持されていることを特徴とする熱処理炉である。
【0011】
本発明は、谷部支持ピン部材および山部支持ピン部材は、各々U字状体を有し、U字状体の両端部に、断熱材と係合してU字状体の抜けを防止する抜け止め部を設けたことを特徴とする熱処理炉である。
【0012】
本発明は、ヒータエレメントの谷部頂部および山部頂部はいずれも折曲線により形成され、谷部頂部の折曲線および山部頂部の折曲線は、ヒータエレメントの幅方向に対して傾斜することを特徴とする熱処理炉である。
【0013】
本発明は、上記円筒状の断熱材の内周面に、縦方向に延びるスリットが形成されていることを特徴とする熱処理炉である。
【0014】
本発明は、下部が炉口として開放され被処理体を収容して熱処理するための熱処理炉と、上記炉口を閉塞する蓋体と、該蓋体上に載置され被処理体を多段に保持する保持具と、保持具および蓋体を昇降させて蓋体の開閉と上記処理容器内への保持具の搬入搬出を行う昇降機構と備え、前記熱処理炉は、被処理体を収容して熱処理する処理容器と、該処理容器の周囲を覆う円筒状の断熱材と、該断熱材の内周面に沿って配置されたヒータとを備え、このヒータは断熱材の内周面に沿ってスパイラル状に配置され、外側に突出する谷部と、内側に突出する山部とを有するコルゲート型の帯状ヒータエレメントを有することを特徴とする熱処理装置である。
【0015】
本発明は、ヒータエレメントの谷部は、断熱材に埋込まれた抜け止め用の谷部支持ピン部材により支持され、ヒータエレメントの山部は、断熱材に埋込まれた倒れ防止用の山部支持ピン部材により支持されていることを特徴とする熱処理装置である。
【0016】
本発明は、谷部支持ピン部材および山部支持ピン部材は、各々U字状体を有し、U字状体の両端部に、断熱材と係合してU字状体の抜けを防止する抜け止め部を設けたことを特徴とする熱処理装置である。
【0017】
本発明は、ヒータエレメントの谷部頂部および山部頂部はいずれも折曲線により形成され、谷部頂部の折曲線および山部頂部の折曲線は、ヒータエレメントの幅方向に対して傾斜することを特徴とする熱処理装置である。
【0018】
本発明は、上記円筒状の断熱材の内周面に、縦方向に延びるスリットが形成されていることを特徴とする熱処理装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ヒータは円筒状の断熱材の内周面に沿ってスパイラル状に配置されたコルゲート型の帯状ヒータエレメントを有するので、断熱材の内周面の全域に渡ってヒータエレメントを配置することができ、ウエハを均一に加熱することができる。またヒータエレメントに加熱、冷却の際に応力集中する部分をなくすことができ、ヒータエレメントの寿命を全体として伸ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明の実施の形態である熱処理装置を概略的に示す縦断面図。
【図2】図2は断熱材とヒータエレメントを示す拡大横断面図。
【図3】図3(a)は断熱材とヒータエレメントを示す拡大縦断面図、図3(b)はその変形例を示す拡大縦断面図。
【図4】図4はヒータエレメントの設置状態を示す図。
【図5】図5は断熱材の内周面に設けられたヒータエレメントを示す斜視図。
【図6】図6(a)−(k)は谷部支持ピンおよび山部支持ピンを示す図。
【図7】図7はスリットが形成された断熱材を示す図。
【図8】図8は縦方向に2分割された断熱材を示す図。
【図9】図9(a)(b)はヒータエレメントの山部を保持する倒れ防止板を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を基に詳述する。図1は本発明の実施の形態である熱処理装置を概略的に示す縦断面図、図2は断熱材とヒータエレメントを示す拡大横断面図、図3は断熱材とヒータエレメントを示す拡大縦断面図、図4はヒータエレメントの設置状態を示す図、図5は断熱材の内周面に設けられたヒータエレメントを示す斜視図である。
【0022】
図1において、符号1は半導体製造装置の一つである縦型の熱処理装置であり、この熱処理装置1は、被処理体、例えば半導体ウエハWを一度に多数枚収容して酸化、拡散、減圧CVD等の熱処理を施すことができる縦型の熱処理炉2を備えている。この熱処理炉2は、ウエハWを収容して熱処理するための円筒状の処理容器3と、該処理容器3の周囲を覆う円筒状の断熱材16と、断熱材16の内周面16aに沿って設けられたヒータ5とを備えている。
【0023】
上記熱処理装置1は、断熱材16を設置するためのベースプレート6を備えている。このベースプレート6には処理容器3を下方から上方に挿入するための開口部7が形成されており、この開口部7にはベースプレート6と処理容器3との間の隙間を覆うように図示しない断熱材が設けられている。
【0024】
上記処理容器3は、石英製となっており、上端が閉塞され、下端が炉口3aとして開口された縦長の円筒状に形成されている。処理容器3の開口端には外向きのフランジ3bが形成され、該フランジ3bが図示しないフランジ押えを介して上記ベースプレート6に支持されている。図示例の処理容器3は、下側部に処理ガスや不活性ガス等を処理容器3内に導入する導入ポート(導入口)8及び処理容器3内のガスを排気するための図示しない排気ポート(排気口)が設けられている。導入ポート8にはガス供給源が接続され、排気ポートには例えば10〜10−8Torr程度に減圧制御が可能な真空ポンプを備えた排気系が接続されている。
【0025】
処理容器3の下方には、処理容器3の下端開口部(炉口)3aを閉塞する上下方向に開閉可能な蓋体10が図示しない昇降機構により昇降移動可能に設けられている。この蓋体10の上部には、炉口の保温手段である例えば保温筒11が載置され、該保温筒11の上部には例えば直径が300mmのウエハWを多数枚例えば100〜150枚程度上下方向に所定の間隔で搭載する保持具である石英製のボート12が載置されている。蓋体10には、ボート12をその軸心回りに回転する回転機構13が設けられている。ボート12は、蓋体10の下降移動により処理容器3内から下方のローディングエリア15内に搬出(アンロード)され、ウエハWの移替え後、蓋体10の上昇移動により処理容器3内に搬入(ロード)される。
【0026】
上記ヒータ5は、図2〜図5に示すように、円筒状の断熱材16の内周面16aに沿ってスパイラル状に配置された帯状ヒータエレメント18を有し、この帯状ヒータエレメント18は外側(断熱材16側)に突出する谷部18aと、内側(処理容器3の中心側)に突出する山部18bとを有するコルゲート型の材料からなっている。そしてヒータエレメント18の谷部18aの頂部および山部18bの頂部は、いずれも折曲線58により形成され、谷部18aの頂部および山部18bの頂部を形成する折曲線58はヒータエレメント18の幅方向(長手方向Lに直交する方向)Lに対して傾斜し、かつ断熱材16の軸線方向Lに対して一致している。断熱材16は、例えばシリカ、アルミナあるいは珪酸アルミナを含む無機質繊維からなっている。
【0027】
またヒータエレメント18は、上述のようにヒータエレメント18の材料を折曲線58を介して折り曲げ波形に成形(折り曲げ加工)して成る。このコルゲートタイプ(波形)のヒータエレメント18は、例えば鉄(Fe)、クロム(Cr)およびアルミニウム(Al)の合金からなっている。このヒータエレメント18は、例えば肉厚が1〜2mm程度、幅が14〜18mm程度、波形部分の振幅が11〜15mm程度、波形部分のピッチpが28〜32mm程度とされている。また、ヒータエレメント18の谷部18aおよび山部18bの頂角θは90度程度とされ、谷部18aの頂部および山部18bの頂部はR曲げ加工が施されている。
【0028】
断熱材16の内周面は平滑に形成され、この断熱材16内周面16aには、上記ヒータエレメント18の谷部18aを適宜間隔で径方向に移動可能に且つ断熱材16内側へ脱落ないし脱出しないように保持する抜け止め用の谷部支持ピン部材20aと、ヒータエレメント18の山部18bを倒れないよう保持する倒れ防止用の山部支持ピン部材20bとが設けられている。
【0029】
なお、断熱材16の内周面16aと、ヒータエレメント18との間にはヒータエレメント18の熱膨張収縮及び半径方向の移動を許容し得る十分な隙間が設けられており、またこれらの隙間により強制冷却時の冷却流体がヒータエレメント18の背面に回り込み、ヒータエレメント18を効果的に冷却できるようになっている。
【0030】
谷部支持ピン部材20aと山部支持ピン部材20bは、いずれもU字状体20Aと、U字状体20Aの両端に形成され断熱材16に係合して抜けを防止する抜け止め部20Bとを有している。この場合、谷部支持ピン部材20aおよび山部支持ピン部材20bの抜け止め部20Bは、断熱材16内に止まって断熱材16と係合している(図3(a)参照)。しかしながら谷部支持ピン部材20aおよび山部支持ピン部材20bの抜け止め20Bが断熱材16から外方へ突出して断熱材16外面と係合してもよい(図3(b)参照)。
【0031】
ところで谷部支持ピン部材20aおよび山部支持ピン部材20bは、いずれもヒータエレメント18と同一の材料からなる。
【0032】
次に谷部支持ピン部材20aおよび山部支持ピン部材20bの形状について図6(a)〜(k)により詳述する。
【0033】
図6(a)に示すように、谷部支持ピン部材20aおよび山部支持ピン部材20bは、いずれも同一形状をなし、U字状体20Aと、U字状体20Aの両端部に設けられ断熱材16と係合する抜け止め部20Bとからなり、U字状体20Aにより谷部18aあるいは山部18bを支持するようになっている。そして抜け止め部20BはU字状体20Aの両端部から内側に折曲がって形成されている。
【0034】
なお谷部支持ピン部材20aは、ヒータエレメント18のすべての谷部18aに対して設けられ、この谷部18aを支持して谷部18aの脱落を防止し、山部支持ピン部材20bはヒータエレメント18の山部18bに対して2−3箇置きに設けられ、山部18bの下方への倒れを防止している。
【0035】
次に図6(b)〜図6(k)により、谷部支持ピン部材20aおよび山部支持ピン部材20bの変形例について説明する。
【0036】
谷部支持ピン部材20aおよび山部支持ピン部材20bの抜け止め部20Bが、U字状体20Aの両端部から内側に折れ曲げられて形成され、一対の抜け止め部20Bは互いに重なり合っている(図6(b)参照)。
【0037】
谷部支持ピン部材20aおよび山部支持ピン部材20bの抜け止め部20Bが、U字状体20Aの両端部に別部品を接合し、あるいは別部品をかしめることにより形成されている(図6(c)(d)参照)。
【0038】
谷部支持ピン部材20aおよび山部支持ピン部材20bの抜け止め部20Bが、U字状体20Aの両端部をつぶすことにより形成されている(図6(e)(f)参照)。
【0039】
谷部支持ピン部材20aおよび山部支持ピン部材20bの抜け止め部20Bが、U字状体20Aの両端部を互いに対向する方向外方へ折曲げることにより形成されている(図6(g)参照)。
【0040】
谷部支持ピン部材20aおよび山部支持ピン部材20bの抜け止め部20Bが、U字状体20Aの両端部を各々対向する方向外方へ折曲げ、更に90°折曲げることにより形成されている(図6(h)参照)。
【0041】
谷部支持ピン部材20aおよび山部支持ピン部材20bの抜け止め部20Bが、U字状体20Aの両端部を各々2回連続して折曲げることにより形成されている(図6(i)参照)。
【0042】
谷部支持ピン部材20aおよび山部支持ピン部材20bの抜け止め部20Bが、U字状体20Aの両端部をコイル状に巻くことにより形成されている(図6(j)参照)。
【0043】
谷部支持ピン部材20aおよび山部支持ピン部材20bの抜け止め部20Bが、U字状体20Aの両端部を対向する方向外側へ折曲げたり、同一方向へ折曲げることにより形成されている(図6(k)参照)。
【0044】
ところで断熱材16の形状を保持すると共に断熱材16を補強するために、図1に示すように、断熱材16の外周面は金属製例えばステンレス製の外皮(アウターシェル)28で覆われている。また、ヒータ外部への熱影響を抑制するために、外皮28の外周面は水冷ジャケット30で覆われている。断熱材16の頂部にはこれを覆う上部断熱材31が設けられ、この上部断熱材31の上部には外皮28の頂部(上端部)を覆うステンレス製の天板32が設けられている。
【0045】
熱処理後にウエハWを急速降温させて処理の迅速化ないしスループットの向上を図るために、断熱材16には断熱材16と処理容器3との間の空間33内の雰囲気を外部に排出する排熱系35と、上記空間33内に常温(20〜30℃)の冷却流体を導入して強制的に冷却する強制冷却手段36とが設けられている。上記排熱系35は、例えば断熱材16の上部に設けられた排気口37と、該排気口37と図示しない工場排気系とを結ぶ図示しない排熱管とから主に構成されている。排熱管には図示しない排気ブロワ及び熱交換器が設けられている。
【0046】
上記強制冷却手段36は、上記断熱材16と外皮28の間に高さ方向に複数形成された環状流路38と、各環状流路38から断熱材16の中心斜め方向へ冷却流体を吹き出して上記空間33の周方向に旋回流を生じさせるよう断熱材16に設けられた冷却流体吹出し孔40とを有している。上記環状流路38は、断熱材16の外周面に帯状又は環状の断熱材41を貼り付けるか、或いは断熱材16の外周面を環状に削ることにより形成されている。上記冷却流体吹出し孔40は、断熱材16における上下に隣接するヒータエレメント18間にこれを半径方向の内外に貫通するように形成されていることが好ましい。このように冷却流体吹出し孔40をヒータエレメント18間に設けることにより、ヒータエレメント18に邪魔されることなく冷却流体を上記空間33に噴出することができる。
【0047】
上記外皮28の外周面には、各環状流路38に冷却流体を分配供給するための共通の1本の供給ダクト49が高さ方向に沿って設けられ、外皮28には供給ダクト49内と各環状流路38とを連通する連通口が形成されている。供給ダクト49には冷却流体(空気、窒素)を吸引し、圧送供給する図示しない冷却流体供給源(例えば送風機)が開閉バルブを介して接続されている。
【0048】
ところで、断熱材16の内周面16aにスパイラル状に配置されたヒータエレメント18の両端には、端子部22a、22bが設けられ、これら端子部22a、22bは断熱材16、外皮28および水冷ジャケット30を貫通して外方へ延びている。
【0049】
また断熱材16と処理容器3との間の空間33には、温度センサ50が設けられ、温度センサ50からの信号は制御部51に送られる。そして制御部51が温度センサ50からの信号に基づいて電源(図示せず)を作動させ、この電源からヒータエレメント18に対して必要な電力を供給して、空間33内の温度制御を行なうようになっている。
【0050】
また図7に示すように、断熱材16の内周面16aに縦方向に延びる複数のスリット60が設けられている。このため加熱、冷却の際、断熱材16が熱膨張あるいは熱収縮しても、断熱材16に加わる熱膨張あるいは熱収縮をこのスリット60により吸収することができ、断熱材16に過度の力が加わることはない。
【0051】
ここで断熱材16の縦方向は、円筒状の断熱材16の軸線方向に一致し、断熱材16の横方向は断熱材16の軸線方向に直交する方向に一致する。
【0052】
また、図8に示すように、断熱材16を縦方向に二分割され境界面61を介して互いに接する一方の断熱材16Aと他方の断熱材16Bとから構成してもよい。図8において、断熱材16がこのような構成をもつため、加熱、冷却の際、断熱材16が熱膨張あるいは熱収縮しても断熱材16の熱膨張あるいは熱収縮をこの二分割された一方の断熱材16Aと他方の断熱材16Bとの間の境界面61により吸収することができ、断熱材16に過度の力が加わることはない。
【0053】
なお、上記実施の形態において、断熱材16が二分割されている例を示したが、これに限らず断熱材16を三分割、四分割、あるいは更なる数に分割してもよい。
【0054】
以上のようにヒータ5は円筒状の断熱材16の内周面に沿ってスパイラル状に配置されたコルゲート状の帯状ヒータエレメント18を有するので、断熱材16の内周面16a全域に渡ってヒータエレメント18を配置することができ、ウエハWを均一に加熱することができる。またヒータエレメント18に上下方向に延びる接続部を設ける必要はなく、加熱、冷却の際の応力集中を防ぐことができる。
【0055】
次に図9(a)(b)により倒れ防止板62について説明する。上記実施の形態において、ヒータエレメント18の山部18bを山部支持ピン部材20bにより支持した例を示したが、これに限らず、山部支持ピン部材20bの代わりに倒れ防止板62により山部18bを支持してもよい。
【0056】
図12(a)は倒れ防止板の部分的斜視図、(b)は倒れ防止板の概略的斜視図である。断熱材16に断熱材16の内周面に設けられたヒータエレメント18の山部18bを下方に倒れないように支持するための倒れ防止板62が設けられている。この倒れ防止板62は、例えばセラミック製の長方形の板からなり、その長手方向の一端にはこれを断熱材に突き刺して固定するための先鋭部62aが形成されていることが好ましい。この倒れ防止板62がヒータエレメント18の山部18bの下部を水平に支持することにより、ヒータエレメント18の倒れや垂れ下がりを防止することができる。
【0057】
なお上記実施の形態において、ヒータエレメント18を断熱材16の平滑な内周面16aに設けた例を示したが、断熱材16の内周面16aにスパイラル状の溝を設け、このスパイラル状の溝内にヒータエレメント18を設けてもよい。
【0058】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の設計変更が可能である。例えば、処理容器としては、導入管部及び排気管部を有する耐熱金属、例えばステンレス鋼製の円筒状のマニホールドを下端部に接続してなるものであってもよく、また、二重管構造であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
W 半導体ウエハ(被処理体)
1 縦型熱処理装置
2 熱処理炉
3 処理容器
3a 炉口
5 ヒータ
16 断熱材
16a 内周面
16A 一方の断熱材
16B 他方の断熱材
18 ヒータエレメント
20a 谷部支持ピン部材
20b 山部支持ピン部材
20A U字状体
20B 抜け止め部
61 境界面
62 倒れ防止板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を収容して熱処理する処理容器と、
該処理容器の周囲を覆う円筒状の断熱材と、
該断熱材の内周面に沿って配置されたヒータとを備え、
このヒータは断熱材の内周面に沿ってスパイラル状に配置され、外側に突出する谷部と、内側に突出する山部とを有するコルゲート型の帯状ヒータエレメントを有することを特徴とする熱処理炉。
【請求項2】
ヒータエレメントの谷部は、断熱材に埋込まれた抜け止め用の谷部支持ピン部材により支持され、ヒータエレメントの山部は、断熱材に埋込まれた倒れ防止用の山部支持ピン部材により支持されていることを特徴とする請求項1記載の熱処理炉。
【請求項3】
谷部支持ピン部材および山部支持ピン部材は、各々U字状体を有し、U字状体の両端部に、断熱材と係合してU字状体の抜けを防止する抜け止め部を設けたことを特徴とする請求項2記載の熱処理炉。
【請求項4】
ヒータエレメントの谷部頂部および山部頂部はいずれも折曲線により形成され、谷部頂部の折曲線および山部頂部の折曲線は、ヒータエレメントの幅方向に対して傾斜することを特徴とする請求項1記載の熱処理炉。
【請求項5】
上記円筒状の断熱材の内周面に、縦方向に延びるスリットが形成されていることを特徴とする請求項1記載の熱処理炉。
【請求項6】
下部が炉口として開放され被処理体を収容して熱処理するための熱処理炉と、
上記炉口を閉塞する蓋体と、
該蓋体上に載置され被処理体を多段に保持する保持具と、
保持具および蓋体を昇降させて蓋体の開閉と上記処理容器内への保持具の搬入搬出を行う昇降機構と備え、
前記熱処理炉は、
被処理体を収容して熱処理する処理容器と、
該処理容器の周囲を覆う円筒状の断熱材と、
該断熱材の内周面に沿って配置されたヒータとを備え、
このヒータは断熱材の内周面に沿ってスパイラル状に配置され、外側に突出する谷部と、内側に突出する山部とを有するコルゲート型の帯状ヒータエレメントを有することを特徴とする熱処理装置。
【請求項7】
ヒータエレメントの谷部は、断熱材に埋込まれた抜け止め用の谷部支持ピン部材により支持され、ヒータエレメントの山部は、断熱材に埋込まれた倒れ防止用の山部支持ピン部材により支持されていることを特徴とする請求項6記載の熱処理装置。
【請求項8】
谷部支持ピン部材および山部支持ピン部材は、各々U字状体を有し、U字状体の両端部に、断熱材と係合してU字状体の抜けを防止する抜け止め部を設けたことを特徴とする請求項7記載の熱処理装置。
【請求項9】
ヒータエレメントの谷部頂部および山部頂部はいずれも折曲線により形成され、谷部頂部の折曲線および山部頂部の折曲線は、ヒータエレメントの幅方向に対して傾斜することを特徴とする請求項6記載の熱処理装置。
【請求項10】
上記円筒状の断熱材の内周面に、縦方向に延びるスリットが形成されていることを特徴とする請求項6記載の熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−4904(P2013−4904A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137428(P2011−137428)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】