説明

熱処理装置

【課題】被処理体が大型化した場合であっても、同時に処理すべき被処理体の枚数を抑える必要がない。
【解決手段】熱処理装置1はクリーンルーム1A内に設置される。この熱処理装置1は被処理体Wを収容して熱処理するための処理容器3と、処理容器3の周囲を覆う断熱材16と、断熱材16内周面に設けられたヒータ5とを有する熱処理炉2と、処理容器3の上方の炉口3aを閉塞する蓋体10と、蓋体10に保温筒11を介して吊設され被処理体Wを多段に保持する保持具12とを備えている。熱処理装置1の熱処理炉2のうち、高さ方向長さの大部分は、クリーンルーム1Aの床面F下方に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理炉を備えた熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造においては、被処理体である半導体ウエハに酸化、拡散、CVD(Chemical Vapor Deposition)などの処理を施すために、各種の熱処理装置が用いられている。そして、その一般的な熱処理装置は、下部に炉口を有し半導体ウエハを収容して熱処理するための処理容器と、この処理容器の周囲を覆うように設けられた断熱材と、断熱材の内周面に設けられ処理容器内のウエハを加熱するヒータとを有する熱処理炉と、処理容器の炉口を閉塞する蓋体と、蓋体上に載置され被処理体を多段に保持する保持具と、蓋体を昇降させる昇降機構とを備え、全体として上下方向に延びる縦型構造をとり、このような熱処理装置はクリーンルーム内に設置される。
【0003】
ところで、このような構造の熱処理装置において、近年直径450mmの大型の半導体ウエハを熱処理することが求められている。450mmの半導体ウエハを熱処理する場合、ウエハ間のピッチを大きくとることが必要となり、この場合は熱処理炉の全高がかなり大きくなる。しかしながら、クリーンルーム室内はその高さが一定に定められているため、大型の半導体ウエハを熱処理しようとすると、処理すべき枚数に制約を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−263170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、処理されるべき被処理体が大型化した場合であっても、従来のクリーンルームの室内形状を変えることなく一定の枚数の被処理体に対して熱処理を施すことができる熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、床面を有するクリーンルームに設置された熱処理装置において、上部に炉口を有し複数の被処理体を収納して熱処理するための縦型の処理容器と、処理容器の周囲を覆う断熱材と、断熱材の内周面に設けられたヒータとを有する熱処理炉と、処理容器の炉口を閉塞する蓋体と、蓋体に吊設され、複数の被処理体を多段に保持する保持具と、蓋体を昇降させて蓋体により炉口を開閉するとともに処理容器内へ保持具を搬入しかつ搬出する昇降機構とを備え、熱処理炉はクリーンルームの床面下方に設置され、昇降機構はクリーンルームの床面上方に設置されていることを特徴とする熱処理装置である。
【0007】
本発明は、熱処理炉はその高さ方向長さの30%以上がクリーンルームの床面下方に位置することを特徴とする熱処理装置である。
【0008】
本発明は、処理容器はその上部に、炉口を形成するとともにガス供給ラインが接続されたマニホルドフランジを有することを特徴とする熱処理装置である。
【0009】
本発明は、処理容器のマニホルドフランジは、クリーンルームの床面から上方へ突出することを特徴とする熱処理装置である。
【0010】
本発明は、処理容器のマニホルドフランジに、第1排気ラインが接続されていることを特徴とする熱処理装置である。
【0011】
本発明は、昇降機構はクリーンルームの床面上方に設けられた覆い体により覆われていることを特徴とする熱処理装置である。
【0012】
本発明は、熱処理炉は、その外周がヒータカバーにより覆われていることを特徴とする熱処理装置である。
【0013】
本発明は、ヒータカバーに第2排気ラインが接続されていることを特徴とする熱処理装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱処理炉がクリーンルームの床面下方に設置されるため、被処理体が大型化して被処理体の配置ピッチを大きくとり、これにより熱処理炉の全高が大きくなっても、従来のクリーンルームの室内形状を大きく変えることなく、一定の枚数の被処理体に対して熱処理を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明の実施の形態である熱処理装置を概略的に示す縦断面図。
【図2】図2は熱処理装置の熱処理炉を示す拡大詳細図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1および図2において、符号1は本発明による熱処理装置(縦型の熱処理装置)であり、この熱処理装置1は、被処理体例えば半導体ウエハWを一度に多数枚収容して酸化、拡散、減圧CVD等の熱処理を施すことができる。この熱処理装置1は全体として、床面Fを有するクリーンルーム1A内に設置されている。熱処理装置1は上部に炉口3aが形成された縦型の円筒状処理容器3と、該処理容器3の周囲を覆うように設けられた円筒状の断熱材16と、断熱材16の内周面に設けられウエハWを加熱するヒータ5とを有する熱処理炉2と、処理容器3の炉口3aを閉塞する蓋体10と、蓋体10に保温筒11を介して吊設され半導体ウエハWを多段に保持するボート(保持具)12とを備えている。
【0018】
このうち処理容器3は、内側に位置する石英製の内管3Aと、外側に位置する石英製の外管3Bとからなり、その上部に炉口3aを形成するマニホルドフランジ3bが取付けられている。
【0019】
またマニホルドフランジ3bには処理ガスや不活性ガスを供給するガス供給ライン8と、第1排気ライン8Aが接続されている。このうちガス供給ライン8の処理容器3側先端にはガスインジェクタ34が設けられ、また第1排気ライン8Aは、ストッパバルブ37を介して真空ポンプ38に接続され、処理容器3内を真空引きするようになっている。
【0020】
また断熱材16はその外周が保持体31により保持されるとともに、この保持体31の上部には固定フランジ32が固着され、固定フランジ32および保持体31は、クリーンルーム1Aの床面Fに支持構造35を介して固定されている。
【0021】
さらにまた、断熱材16を保持する保持体31は、その外周がヒータカバー45により覆われており、ヒータカバー45には第2排気ライン46が接続されている。
【0022】
第2排気ライン46はヒータカバー45内の熱気体を排気してヒータカバー45内を冷却するとともに、ガス供給ライン8から漏洩する微量の処理ガスをヒータカバー45内部から外方へ排出するようになっている。
【0023】
すなわち、ヒータカバー45は断熱体16を保持する保持体31を外方から覆うとともに、処理容器3の上部に設けられたマニホルドフランジ3bも外方から覆うようになっており、ヒータカバー45内にはマニホルドフランジ3bに接続されたガス供給ライン8から微量の処理ガスが漏洩することも考えられる。
【0024】
このような場合、ヒータカバー45に接続され図示しない真空ポンプを有する第2排気ライン46によって、ヒータカバー45内の熱気体とともに、処理ガスも外方へ排出することができる。
【0025】
ところで、上述した熱処理装置1の構成のうち、内管3Aと外管3Bとからなる処理容器3と、断熱材16と、ヒータ5とを有する熱処理炉2は、その高さ方向の大部分がクリーンルーム1Aの床面F下方に設置されている。また後述のように蓋体10を昇降させる昇降機構13は、クリーンルーム1Aの床面F上方に位置している。
【0026】
具体的には熱処理炉2は、高さ方向の大部分、例えば高さ方向長さの30%〜100%、好ましくは40%〜100%がクリーンルーム1Aの床面F下方に位置する。この場合、処理容器3上部のマニホルドフランジ3bは、クリーンルーム1Aの床面Fから上方へ突出している。
【0027】
なお、上述のように処理容器3のマニホルドフランジ3bには、処理ガスや不活性ガス等を処理容器3内に導入するガス供給ライン8及び処理容器3内のガスを排気するための第1排気ライン8Aが設けられている。ガス供給ライン8には図示しないガス供給源が接続され、第1排気ライン8Aにはストッパバルブ37を介して例えば10〜10−8Torr程度に減圧制御が可能な真空ポンプ38が接続されている。
【0028】
上述のように処理容器3は、上部が炉口3aを介して開口し、この炉口3aは蓋体10により閉塞される。またこの蓋体10は昇降機構13により昇降移動可能となっている。
【0029】
この蓋体10の下部には、上述のように保温手段である例えば保温筒11が設けられ、該保温筒11の下部には例えば直径が450mmのウエハWを多数枚例えば100〜150枚程度上下方向に所定の間隔で搭載する保持具である石英製のボート12が吊設されている。蓋体10には、ボート12をその軸心回りに回転する回転機構13Aが設けられている。ボート12は、昇降機構13により駆動される蓋体10の下降移動により処理容器3内から上方のローディングエリア25A内に搬出(アンロード)され、ウエハWの移替え後、昇降装置13により駆動される蓋体10の上昇移動によりローディングエリア25Aから処理容器3内に搬入(ロード)される。
【0030】
すなわち、図1に示すように、昇降装置13はクリーンルーム1Aの床面F上方に配置され、またクリーンルーム1Aの床面F上方には昇降装置13を覆う覆い体25が設置されている。覆い体25内は区画壁26によってローディングエリア25Aと、ウエハ移載エリア25Bに区画されている。またローディングエリア25A内は排気機構25Cにより常時排気されている。
【0031】
また覆い体25のウエア移載エリア25B外方にはロードポート28が設けられ、ロードポート28上にウエハキャリア30が載置されるとともに、ロードポート28上に載置されたウエハキャリア30がウエハ移載エリア25B内に搬入されてキャリア移載機27により移載台29まで運ばれる。次に移載台29上のウエハキャリア30からウエアWがウエハ移載機23によりウエハ移載エリア25Bからローディングエリア25Aまで移載され、その後ウエハ移載機23によってウエハWがボート12内へ挿入されるようになっている。図2において覆い体25の床面25Dは、クリーンルーム1Aの床面に直上に位置している。
【0032】
次に図2により熱処理炉2の構造について更に述べる。まず、熱処理炉2の断熱材16および断熱材16の内周面に設けられたヒータ5について述べる。断熱材16の内周面に軸方向(図示例では上下方向)に多段に形成された溝状の棚部が形成され、各棚部に沿ってヒータエレメントが配置され、このヒータエレメントによりヒータ5が構成される。また断熱材16は、例えばシリカ、アルミナあるいは珪酸アルミナを含む無機質繊維からなっている。断熱材16は、縦に二分割され、ヒータエレメントの組付を容易にしている。
【0033】
ヒータエレメントは、帯状の発熱抵抗体を波形に成形(折り曲げ加工)して成る。このコルゲートタイプ(波形)のヒータエレメントは、例えば鉄(Fe)、クロム(Cr)およびアルミニウム(Al)の合金(いわゆるカンタル材)からなっている。このヒータエレメントは、例えば肉厚が1〜2mm程度、幅が14〜18mm程度、波形部分の振幅が11〜15mm程度、波形部分のピッチpが28〜32mm程度とされている。また、ヒータエレメントの波形部分の頂角θは90度程度とされ、各頂点部(凸部または山部ともいう)はR曲げ加工が施されている。
【0034】
また熱処理後にウエハを急速降温させて処理の迅速化ないしスループットの向上を図るために、断熱材16および断熱材16を保持する保持体31の側部には、断熱材16および保持体31と処理容器3との間の空間33内に冷却媒体を導入して強制的に冷却する強制冷却ライン40が設けられている。この強制冷却ライン40はヒータカバー45、保持体31および断熱材16を貫通して設けられている。また保持体31の底部には、保持体31と処理容器3との間の空間33内を排気する第3排気ライン41が設けられ、この第3排気ライン41はヒータカバー45および保持体31を貫通して設けられている。
【0035】
なお、強制冷却ライン40から供給される冷却媒体としては、空気、窒素、水等が考えられる。
【0036】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0037】
まずウエハ移載エリア25B内の移載台29上までウエハキャリア30がキャリア移載機27により移載され、ウエハキャリア30内のウエハWがローディングエリア25A内へ移載される。次にローディングエリア25A内においてウエハ移載機23によりボート12内にウエハWが移載される。この場合、ボート12は予め蓋10により保温筒11を介して吊設されている。
【0038】
次に保温筒11を介してボート12を保持する蓋体10が、ねじ機構21により昇降する昇降機構13によって降下し、保温筒11およびボート12が処理容器3内に挿入され、その後処理容器3の炉口3aが蓋体10により閉塞される。
【0039】
次に処理容器3内が昇温され、その後高温維持された後、処理容器3内が降温される。この間、強制冷却ライン40から冷却媒体が空間33内に導入され、空間33内が第3排気ライン41により排気されてヒータ5とともに処理容器3内の温度制御が行なわれる。
【0040】
また、処理容器3内には、以下のような手順で、処理ガスが供給される。
【0041】
すなわち、まず処理容器3内を温度制御しながら、ガス供給ライン8から処理ガスが処理容器3内に供給され、ウエハWに対して所望の熱処理が施される。このとき、蓋体10に設けられている回転機構13Aによりボート12が処理容器3内で回転する。
【0042】
次に処理容器3内のガスが第1排気ライン8Aから排気され、処理容器3内が真空状態となるまで減圧される。
【0043】
このようにしてウエハWに対する所望の処理ガスによる熱処理が施され、次にウエハに対して更なる処理ガスによる熱処理が施される。
【0044】
このように処理容器3に対して上述した温度制御が繰り返され、ガス供給ライン8から別の処理ガスが処理容器3内に供給され、ウエハWに対する更なる熱処理が施される。
【0045】
ウエハWに対する熱処理が終了すると、ねじ機構21により昇降する昇降機構13によって蓋体10が上昇し、蓋体10に保温筒11を介して吊設されているボート12がローディングエリア25Aまで移動する。
【0046】
ところで上述のように、熱処理炉2はその高さ方向長さの大部分がクリーンルーム1Aの床面F下方に配置されている。このため、例えば半導体ウエハWが450mmの直径をもつ大型のウエハからなり、これに伴なって熱処理炉2の全高が大きくなっても、熱処理炉2はクリーンルーム1Aの床面F下方にあるため、床面Fから上方へ突出することはない。このため、従来のクリーンルーム1Aの室内形状を変える必要はない。また熱処理炉の全高を抑えるために、同時に熱処理すべきウエハWの枚数を抑える必要はない。
【符号の説明】
【0047】
W 半導体ウエハ(被処理体)
1 熱処理装置
2 熱処理炉
3 処理容器
3A 内管
3B 外管
3a 炉口
3b マニホルドフランジ
5 ヒータ
8 ガス供給ライン
8A 第1排気ライン
10 蓋体
11 保温筒
12 ボート
13 昇降機構
16 断熱材
25 覆い体
40 強制冷却ライン
45 ヒータカバー
46 第2排気ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面を有するクリーンルームに設置された熱処理装置において、
上部に炉口を有し複数の被処理体を収納して熱処理するための縦型の処理容器と、処理容器の周囲を覆う断熱材と、断熱材の内周面に設けられたヒータとを有する熱処理炉と、
処理容器の炉口を閉塞する蓋体と、
蓋体に吊設され、複数の被処理体を多段に保持する保持具と、
蓋体を昇降させて蓋体により炉口を開閉するとともに処理容器内へ保持具を搬入しかつ搬出する昇降機構とを備え、
熱処理炉はクリーンルームの床面下方に設置され、
昇降機構はクリーンルームの床面上方に設置されていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
熱処理炉はその高さ方向長さの30%以上がクリーンルームの床面下方に位置することを特徴とする請求項1記載の熱処理装置。
【請求項3】
処理容器はその上部に、炉口を形成するとともにガス供給ラインが接続されたマニホルドフランジを有することを特徴とする請求項1記載の熱処理装置。
【請求項4】
処理容器のマニホルドフランジは、クリーンルームの床面から上方へ突出することを特徴とする請求項3記載の熱処理装置。
【請求項5】
処理容器のマニホルドフランジに、第1排気ラインが接続されていることを特徴とする請求項2記載の熱処理装置。
【請求項6】
昇降機構はクリーンルームの床面上方に設けられた覆い体により覆われていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の熱処理装置。
【請求項7】
熱処理炉は、その外周がヒータカバーにより覆われていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか記載の熱処理装置。
【請求項8】
ヒータカバーに第2排気ラインが接続されていることを特徴とする請求項7記載の熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−38128(P2013−38128A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171183(P2011−171183)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】