説明

熱硬化性樹脂組成物、熱伝導性シート及びパワーモジュール

【課題】熱伝導性及び電気絶縁性に優れた熱伝導性シートを安定して与える熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】鱗片状窒化ホウ素及び粒子状フィラーを熱硬化性樹脂中に分散してなる熱硬化性樹脂組成物であって、前記鱗片状窒化ホウ素は、平均粒子径が5μm以上15μm以下、最大粒子径が60μm以下であり、前記粒子状フィラーは、平均粒子径が0.5μm以上6μm以下、最大粒子径が50μm以下であり、且つ粒子径が2μm以下のものを20体積%以上70体積%以下含み、前記鱗片状窒化ホウ素と前記粒子状フィラーとの体積比が30:70〜70:30であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、熱伝導性シート及びパワーモジュールに関し、特に、パワーモジュールなどの電気・電子機器の発熱部材から放熱部材へ熱を伝達させる熱伝導性シートを製造するために用いられる熱硬化性樹脂組成物、この熱硬化性樹脂組成物を用いて製造される熱伝導性シート及びパワーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワーモジュールなどの電気・電子機器の発熱部材から放熱部材へ熱を伝達させる部材には、熱伝導性及び電気絶縁性に優れていることが要求され、この要求を満たすものとして、熱伝導性及び電気絶縁性に優れた無機充填材を熱硬化性樹脂中に分散させた熱硬化性樹脂組成物を用いて製造された熱伝導性シートが広く用いられている。熱伝導性及び電気絶縁性に優れた無機充填材としては、アルミナ、窒化ホウ素(BN)、シリカ、窒化アルミニウムなどが挙げられるが、その中でも窒化ホウ素は、熱伝導性及び電気絶縁性に加えて化学的安定性にも優れており、しかも無毒性且つ比較的安価でもあるため、熱伝導性シートに広く用いられている。
【0003】
窒化ホウ素は、図4に示すように黒鉛と同様の分子構造を有している。また、一般に市販されている窒化ホウ素の結晶構造は鱗片状であるため、鱗片状窒化ホウ素とも称される。この鱗片状窒化ホウ素は熱的異方性を有しており、図5に示すように、結晶のa軸方向(面方向)の熱伝導率は、c軸方向(厚み方向)の数倍から数十倍と言われている。この鱗片状窒化ホウ素を分散させた熱硬化性樹脂組成物を用い、ドクターブレード法などの公知の方法によって熱伝導性シートを製造した場合、窒化ホウ素のa軸方向はシート面方向に配向し易いため、シート厚み方向の熱伝導性が十分に得られないという問題がある。そこで、鱗片状窒化ホウ素と共に粒子状フィラーを組み合わせて用いることにより、鱗片状窒化ホウ素のシート面方向への配向を抑制し、シート厚み方向の熱伝導性の向上を図っている。例えば、特許文献1は、鱗片状窒化ホウ素と粒子状フィラーとの体積比を30:70〜80:20とし、粒子状フィラーの平均粒子径を鱗片状窒化ホウ素の平均長径の1〜3.6倍とした熱伝導性シートを提案している。また、特許文献2は、粒子状フィラーの平均粒子径を0.1〜40μm、鱗片状窒化ホウ素の平均長径を0.1〜10μmとし、粒子状フィラーと鱗片状窒化ホウ素との体積比を70:30〜99:1とした熱伝導性シートを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4089636号公報
【特許文献2】特開2009−144072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2のように、鱗片状窒化ホウ素の平均長径、粒子状フィラーの平均粒子径、及び粒子状フィラーと鱗片状窒化ホウ素との体積比を規定しても、熱伝導性シートの熱伝導性及び/又は電気絶縁性が十分でない場合がある。つまり、鱗片状窒化ホウ素の平均長径、粒子状フィラーの平均粒子径、及び粒子状フィラーと鱗片状窒化ホウ素との体積比を規定するだけでは、鱗片状窒化ホウ素の配向を安定して制御することができず、熱伝導性及び電気絶縁性に優れた熱伝導性シートを安定して得られないという問題がある。
従って、本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、熱伝導性及び電気絶縁性に優れた熱伝導性シートを安定して与える熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、熱伝導性及び電気絶縁性に優れた熱伝導性シートを提供することを目的とする。
さらに、本発明は、熱放散性及び電気絶縁性に優れたパワーモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記のような問題を解決すべく鋭意研究した結果、鱗片状窒化ホウ素と共に配合する粒子状フィラーの粒度分布(特に、粒子径が2μm以下の微細粒子の割合)が、鱗片状窒化ホウ素の配向と密接に関連しており、鱗片状窒化ホウ素及び粒子状フィラーの粒度分布及び配合割合を詳細に規定することで、鱗片状窒化ホウ素の配向制御を安定して行い得ることを見出した。
すなわち、本発明は、鱗片状窒化ホウ素及び粒子状フィラーを熱硬化性樹脂中に分散してなる熱硬化性樹脂組成物であって、前記鱗片状窒化ホウ素は、平均粒子径が5μm以上15μm以下、最大粒子径が60μm以下であり、前記粒子状フィラーは、平均粒子径が0.5μm以上6μm以下、最大粒子径が50μm以下であり、且つ粒子径が2μm以下のものを20体積%以上70体積%以下含み、前記鱗片状窒化ホウ素と前記粒子状フィラーとの体積比が30:70〜70:30であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。
【0007】
また、本発明は、上記の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする熱伝導性シートである。
さらに、本発明は、一方の放熱部材に搭載された電力半導体素子と、前記電力半導体素子で発生する熱を外部に放熱する他方の放熱部材と、前記半導体素子で発生する熱を前記一方の放熱部材から前記他方の放熱部材に伝達する上記の熱伝導性シートとを備えることを特徴とするパワーモジュールである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱伝導性及び電気絶縁性に優れた熱伝導性シートを安定して与える熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、熱伝導性及び電気絶縁性に優れた熱伝導性シートを提供することができる。
さらに、本発明によれば、熱放散性及び電気絶縁性に優れたパワーモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態2の熱伝導性シートの断面図である。
【図2】実施の形態3のパワーモジュールの断面図である。
【図3】実施例2〜5及び比較例4〜6における、熱硬化性樹脂組成物に配合した粒子状アルミナ中の2μm以下の微細粒子の割合と、熱伝導性シートの絶縁破壊電圧及び熱伝導率との関係を表すグラフである。
【図4】窒化ホウ素の分子構造を表す図である。
【図5】窒化ホウ素の結晶構造を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物は、鱗片状窒化ホウ素及び粒子状フィラーを熱硬化性樹脂中に分散してなるものであり、鱗片状窒化ホウ素及び粒子状フィラーの粒度分布及び配合割合を詳細に規定したことを特徴とする。
本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物に用いられる鱗片状窒化ホウ素の平均粒子径は、5μm以上15μm以下、好ましくは5μm以上10μm以下である。ここで、本明細書において「平均粒子径」とは、レーザ回折・散乱法による粒度分布測定によって得られる粒子径の平均値を意味する。鱗片状窒化ホウ素の平均粒子径を上記範囲内に規定した場合、熱伝導性シート中で鱗片状窒化ホウ素が様々な方向を向いて配向する。その結果、熱伝導性シートのシート厚み方向の熱伝導性が向上する。鱗片状窒化ホウ素の平均粒子径が5μm未満であると、所望の熱伝導性を有する熱伝導性シートが得られない。一方、鱗片状窒化ホウ素の平均粒子径が15μmを超えると、熱伝導性シート中で鱗片状窒化ホウ素がシート面方向に配向し易くなる。その結果、所望の熱伝導性を有する熱伝導性シートが得られない。
【0011】
また、鱗片状窒化ホウ素の最大粒子径は、60μm以下、好ましくは50μm以下である。ここで、本明細書において「最大粒子径」とは、レーザ回折・散乱法による粒度分布測定によって得られる粒子径の最大値を意味する。鱗片状窒化ホウ素の最大粒子径を上記範囲内に規定した場合、鱗片状窒化ホウ素の間に粒子状フィラーがバランス良く充填される。その結果、熱伝導性シートのシート厚み方向の熱伝導性が向上する。鱗片状窒化ホウ素の最大粒子径が60μmを超えると、鱗片状窒化ホウ素の間に粒子状フィラーがバランス良く充填され難くなる。
【0012】
本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物に用いられる粒子状フィラーの平均粒子径は、0.5μm以上6μm以下、好ましくは1μm以上5μm以下である。ここで、本明細書において「粒子状」とは、例えば、球形状、楕円形状などの任意の形状を意味する。粒子状フィラーの平均粒子径を上記範囲内とした場合、鱗片状窒化ホウ素の間に粒子状フィラーがバランスよく充填された熱伝導性シートを得ることができる。粒子状フィラーの平均粒子径が0.5μm未満であると、熱硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり、シート状に成形することが難しくなる。一方、粒子状フィラーの平均粒子径が6μmを超えると、鱗片状窒化ホウ素の間に粒子状フィラーがバランス良く充填され難くなる。
【0013】
また、粒子状フィラーの最大粒子径は、50μm以下、好ましくは45μm以下である。粒子状フィラーの最大粒子径を上記範囲とすることにより、鱗片状窒化ホウ素の間に粒子状フィラーがバランス良く充填された熱伝導性シートを得ることができる。粒子状フィラーの最大粒子径が50μmを超えると、鱗片状窒化ホウ素の間に粒子状フィラーがバランス良く充填され難くなると共に、電気絶縁性も低下してしまう。
【0014】
また、粒子状フィラーは、粒子径が2μm以下の微細粒子を20体積%以上70体積%以下含む。ここで、本明細書において「粒子径」とは、レーザ回折・散乱法による粒度分布測定によって得られる粒子径を意味する。上記のような微細粒子を含む粒子状フィラーを用いることにより、鱗片状窒化ホウ素の間に粒子状フィラーがバランス良く充填され、鱗片状窒化ホウ素の配向を安定して制御することができる。粒子径が2μm以下の微細粒子が20体積%未満であると、熱伝導性シートの電気絶縁性が著しく低下する。一方、粒子径が2μm以下の微細粒子が70体積を超えると、粒子状フィラーの界面での熱抵抗が増加し、熱伝導性シートの熱伝導性が低下する。
【0015】
さらに、粒子状フィラーの種類としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。粒子状フィラーの例としては、溶融シリカ(SiO)、結晶シリカ(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si)などの粒子状無機フィラーが挙げられる。これらの中でも、溶融シリカ(SiO)、結晶シリカ(SiO)、酸化アルミニウム(Al)は、安価で供給安定性に優れ、しかも熱伝導率が高いため、好ましい。
【0016】
本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物において、鱗片状窒化ホウ素と粒子状フィラーとの体積比は、30:70〜70:30、好ましくは40:60〜60:40である。この範囲の体積比であれば、熱伝導率及び電気絶縁性に優れる熱伝導性シートが安定して得られる。鱗片状窒化ホウ素の割合が低すぎると、所望の熱伝導性を有する熱伝導性シートが得られない。一方、鱗片状窒化ホウ素の割合が高すぎると、熱伝導性シート中で鱗片状窒化ホウ素がシート面方向に配向し易くなるため、所望の熱伝導性が得られない。
【0017】
本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物における鱗片状窒化ホウ素及び粒子状フィラーの合計含有量は、熱伝導性シート(熱硬化性樹脂組成物の固形分)中の鱗片状窒化ホウ素及び粒子状フィラーの合計含有量が好ましくは40体積%以上70体積%以下、より好ましくは45体積%以上60体積%以下となる量である。この範囲の合計含有量であれば、熱伝導率及び電気絶縁性に優れる熱伝導性シートが安定して得られる。かかる合計含有量が40体積%未満であると、所望の熱伝導性を有する熱伝導性シートが得られないことがある。一方、かかる合計含有量が70体積%を超えると、熱伝導性シート中にボイド等の欠陥が発生し易くなり、熱伝導性シートの熱伝導性や電気絶縁性が低下することがある。
【0018】
本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物に用いられる熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。熱硬化性樹脂の例としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性などの各種物性の点でエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環脂肪族エポキシ樹脂、グリシジル−アミノフェノール系エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0019】
また、熱硬化性樹脂は、常温で液状のエポキシ樹脂と、数平均分子量が3,000以上の常温で固形のエポキシ樹脂とを含むことが好ましい。ここで、本明細書における「常温」とは25℃のことを意味する。このような2種類のエポキシ樹脂を併用することで、熱硬化性樹脂組成物のハンドリング性(特に、半硬化時のハンドリング性)が向上すると共に、熱伝導性シートの柔軟性が高まり、電気・電子機器の発熱部材や放熱部材に対する熱伝導性シートの密着性が増加する。常温で固形のエポキシ樹脂の数平均分子量が3,000未満であると、上記の効果が十分に得られない場合がある。
【0020】
常温で固形のエポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニルブタン)(ビスフェノールB)、1,1'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4−ヒドロキシフェニルエーテル、p−(4−ヒドロキシ)フェノールなどのポリフェノール類化合物のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、すなわちジグリシジルエーテルビスフェノール型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂;メチルエピクロ型エポキシ樹脂などが挙げられる。このような固形のエポキシ樹脂は、一般に市販されており、例えば、ジャパンエポキシレジン株式会社から販売されているJER E4275などを用いることができる。また、これらの固形のエポキシ樹脂は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
常温で液状のエポキシ樹脂としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。液状のエポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、O−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。このような液状のエポキシ樹脂は、一般に市販されており、例えば、ジャパンエポキシレジン株式会社から販売されているJER 828などを用いることができる。これらの液状のエポキシ樹脂は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
常温で固形のエポキシ樹脂と常温で液状のエポキシ樹脂とを併用する場合、常温で固形のエポキシ樹脂の配合割合は、常温で液状のエポキシ樹脂100質量部に対して10質量部以上60質量部以下であることが好ましい。この配合割合が、10質量部未満であると、電気・電子機器の発熱部材や放熱部材に対する熱伝導性シートの密着性の向上効果が十分に得られないことがある。一方、この配合量が60質量部を超えると、熱伝導性シートの耐熱性やハンドリング性が低下することがある。
【0023】
本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物は、上記の熱硬化性樹脂を硬化させるための硬化剤を含む。硬化剤としては、特に限定されることはなく、使用する熱硬化性樹脂の種類にあわせて適宜選択すればよい。熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、硬化剤の例としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸などの脂環式酸無水物;ドデセニル無水コハク酸などの脂肪族酸無水物;無水フタル酸、無水トリメリット酸などの芳香族酸無水物;ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒドラジドなどの有機ジヒドラジド;トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール;ジメチルベンジルアミン;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン及びその誘導体;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類;フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、ポリパラビニルフェノール、ビスフェノールA型ノボラック、キシリレン変性ノボラック、デカリン変性ノボラック、ポリ(ジ−o−ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ−m−ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ−p−ヒドロキシフェニル)メタンなどのフェノール樹脂が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、硬化剤の配合量は、使用する熱硬化性樹脂や硬化剤の種類などにあわせて適宜調整すればよく、特に限定されないが、一般的に、100質量部の熱硬化性樹脂に対して0.1質量部以上200質量部以下である。
【0024】
本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と、鱗片状窒化ホウ素及び粒子状フィラーとの界面の接着力を向上させる観点から、カップリング剤を含むことができる。カップリング剤としては、特に限定されることはなく、使用する熱硬化性樹脂や粒子状フィラーなどの種類にあわせて適宜選択すればよい。かかるカップリング剤の例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、カップリング剤の配合量は、使用する熱硬化性樹脂やカップリング剤などの種類にあわせて適宜設定すればよく、特に限定されないが、一般的に、100質量部の熱硬化性樹脂に対して0.01質量部以上5質量部以下である。
【0025】
本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物は、当該組成物の粘度を調整する観点から、溶剤を含むことができる。溶剤としては、特に限定されることはなく、熱硬化性樹脂や粒子状フィラーなどの種類にあわせて適宜選択すればよい。溶剤の例としては、トルエンやメチルエチルケトンなどが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、溶剤の配合量は、混練が可能な量であればよく、特に限定されないが、一般的に、熱硬化性樹脂と無機充填剤との合計100質量部に対して40質量部以上85質量部以下である。
【0026】
上記のような構成成分を含有する本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されることはなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物は、以下のようにして製造することができる。
まず、所定量の熱硬化性樹脂と、この熱硬化性樹脂を硬化させるために必要な量の硬化剤とを混合する。
次に、この混合物に溶剤を加えた後、鱗片状窒化ホウ素及び粒子状フィラーを加えて予備混合する。なお、熱硬化性樹脂組成物の粘度が低い場合には、溶剤を加えなくてもよい。
次に、この予備混合物を3本ロールやニーダなどを用いて混練することによって熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。なお、熱硬化性樹脂組成物にカップリング剤を配合する場合、カップリング剤は混練工程前までに加えればよい。
【0027】
上記のようにして得られる本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物は、鱗片状窒化ホウ素及び粒子状フィラーの粒度分布及び配合割合を詳細に規定したことにより、鱗片状窒化ホウ素の配向制御を安定して行うことができるため、熱伝導性及び電気絶縁性に優れた熱伝導性シートを安定して与えることができる。また、本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物は、鱗片状窒化ホウ素や粒子状フィラーのような充填材の含有量を極限まで増大させなくても、熱伝導性に優れた熱伝導性シートを与えるため、熱硬化性樹脂組成物の粘度を下げることができ、ハンドリング性が向上すると共に、表面が平坦で薄い熱伝導性シートを製造することができる。このような表面が平坦で薄い熱伝導性シートは、シート厚み方向の熱抵抗が小さく、熱伝導性が向上すると共に、発熱部材や放熱部材との接着性も良好である。
【0028】
実施の形態2.
本実施の形態の熱伝導性シートは、上記の熱硬化性樹脂組成物をシート化して硬化させたものである。
以下、本実施の形態の熱伝導性シートについて図面を用いて説明する。
図1は、本実施の形態の熱伝導性シートの断面図である。図1において、熱伝導性シート1は、熱硬化性樹脂2と、熱硬化性樹脂2中に分散された鱗片状窒化ホウ素3及び粒子状フィラー4とから構成されている。
【0029】
このような構成を有する熱伝導性シート1では、鱗片状窒化ホウ素3及び粒子状フィラー4の粒度分布及び配合割合が適切な範囲に規定されているため、鱗片状窒化ホウ素3の間に粒子状フィラー4がバランス良く充填されている。これにより、鱗片状窒化ホウ素3のシート面方向への配向を抑制することができる。
【0030】
本実施の形態の熱伝導性シート1は、上記の熱硬化性樹脂組成物を基材に塗布して乾燥させる工程と、塗布乾燥物を硬化させる工程とを含む方法によって製造することができる。
ここで、基材としては、特に限定されることはなく、例えば、銅箔や離型処理された樹脂シートやフィルムなどのような公知の基材を用いることができる。
熱硬化性樹脂組成物の塗布方法としては、特に限定されることはなく、ドクターブレード法などのような公知の方法を用いることができる。
塗布した熱硬化性樹脂組成物の乾燥は、周囲温度で行ってよいが、溶剤の揮発を促進させる観点から、必要に応じて80℃以上150℃以下に加熱してもよい。
【0031】
塗布乾燥物の硬化温度は、使用する熱硬化性樹脂の種類にあわせて適宜設定すればよく、特に限定されないが、一般的に80℃以上250℃以下である。また、硬化時間は、特に限定されないが、一般的に2分以上24時間以下である。
また、塗布乾燥物を硬化させる場合、必要に応じて加圧してもよい。この場合のプレス圧は、好ましくは0.5MPa以上50MPa以下、より好ましくは1.9MPa以上30MPa以下である。プレス圧が0.5MPa未満であると、熱伝導性シート内のボイドを十分に除去することができないことがある。一方、プレス圧が50MPaを超えると、シート形状が保持できなく、樹脂成分が流れ出してしまうことがある。また、プレス時間は、特に限定されないが、一般的に5分以上200分以下である。
【0032】
本実施の形態の熱伝導性シートをパワーモジュールなどの電気・電子機器に組み込む場合、熱硬化性樹脂組成物を発熱部材や放熱部材上に直接塗布して熱伝導性シートを作製することも可能である。また、熱硬化性樹脂が半硬化状態(Bステージ状態)にある熱伝導性シートを予め作製しておき、これを発熱部材と放熱部材との間に配置した後、所定のプレス圧で加圧しながら80℃以上250℃以下に加熱することで熱伝導性シートを作製することも可能である。これらの方法によれば、熱伝導性シートに対する発熱部材や放熱部材の接着性がより高くなる。
【0033】
上記のようにして得られる本実施の形態の熱伝導性シートは、パワーモジュールなどの電気・電子機器の発熱部材と放熱部材との間に配置することにより、発熱部材と放熱部材とを接着し、発熱部材と放熱部材との間を電気絶縁すると共に発熱部材からの熱を放熱部材へ効率良く伝達することができる。
【0034】
実施の形態3.
本実施の形態のパワーモジュールは、一方の放熱部材に搭載された電力半導体素子と、電力半導体素子で発生する熱を外部に放熱する他方の放熱部材と、半導体素子で発生する熱を一方の放熱部材から他方の放熱部材に伝達する上記の熱伝導性シートとを備える。
以下、本実施の形態のパワーモジュールについて図面を用いて説明する。
図2は、本実施の形態のパワーモジュールの断面図である。図2において、パワーモジュール10は、一方の放熱部材であるリードフレーム12に搭載された電力半導体素子13と、他方の放熱部材であるヒートシンク14と、リードフレーム12とヒートシンク14との間に配置された熱伝導性シート11とを備えている。さらに、電力半導体素子13と制御用半導体素子15との間、及び電力半導体素子13とリードフレーム12との間は、金属線16によってワイアボンディングされている。また、リードフレーム12の端部、及びヒートシンク14の外部放熱のための部分以外は封止樹脂17で封止されている。このパワーモジュール10において、熱伝導性シート11以外の部材は特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。
【0035】
このような構成を有するパワーモジュール10は、熱伝導性及び電気絶縁性に優れた熱伝導性シート11を有しているため、熱放散性及び電気絶縁性に優れている。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例により本発明の詳細を説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた鱗片状窒化ホウ素及び粒子状フィラー(アルミナ、結晶シリカ及び溶融シリカ)の特徴を表1及び2に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
(実施例1)
常温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER828:ジャパンエポキシレジン株式会社製):100質量部、メチルエチルケトン(溶剤):243質量部を攪拌混合した後、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(硬化剤、キュアゾール2PN−CN:四国化成工業株式会社製):1質量部を添加してさらに攪拌混合した。次に、この混合物に、鱗片状窒化ホウ素A−1:96質量部、粒子状アルミナB−3:168質量部を添加して予備混合した。この予備混合物を三本ロールにてさらに混練し、鱗片状窒化ホウ素及び粒子状アルミナが均一に分散された熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0040】
(実施例2)
粒子状アルミナB−3の代わりに、粒子状アルミナB−1:134質量部及び粒子状アルミナB−2:34質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。
(実施例3)
粒子状アルミナB−3の代わりに、粒子状アルミナB−1:84質量部及び粒子状アルミナB−2:84質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0041】
(実施例4)
粒子状アルミナB−3の代わりに、粒子状アルミナB−1:34質量部及び粒子状アルミナB−2:134質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。
(実施例5)
粒子状アルミナB−3の代わりに、粒子状アルミナB−1:17質量部及び粒子状アルミナB−2:151質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0042】
(実施例6)
鱗片状窒化ホウ素A−1の量を57質量部、粒子状アルミナB−3の量を236質量部、メチルエチルケトンの量を263質量部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。
(実施例7)
鱗片状窒化ホウ素A−1の量を134質量部、粒子状アルミナB−3の量を101質量部、メチルエチルケトンの量を224質量部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0043】
(実施例8)
常温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER828:ジャパンエポキシレジン株式会社製):80質量部、常温で固形のビスフェノールA/F型エポキシ樹脂(数平均分子量8,000、E4275:ジャパンエポキシレジン株式会社製)、メチルエチルケトン(溶剤):243質量部を攪拌混合した後、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(硬化剤、キュアゾール2PN−CN:四国化成工業株式会社製):1質量部を添加してさらに攪拌混合した。次に、この混合物に、鱗片状窒化ホウ素A−1:96質量部、粒子状アルミナB−3:168質量部を添加して予備混合した。この予備混合物を三本ロールにてさらに混練し、鱗片状窒化ホウ素及び粒子状アルミナが均一に分散された熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0044】
(実施例9)
粒子状アルミナB−3の代わりに粒子状結晶シリカC−1:11質量部及び粒子状結晶シリカC−2:100質量部を用い、メチルエチルケトンの量を125質量部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。
(実施例10)
粒子状アルミナB−3の代わりに粒子状結晶シリカC−1:56質量部及び粒子状結晶シリカC−2:56質量部を用い、メチルエチルケトンの量を125質量部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0045】
(実施例11)
粒子状アルミナB−3の代わりに粒子状結晶シリカC−1:111質量部を用い、メチルエチルケトンの量を125質量部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。
(実施例12)
粒子状アルミナB−3の代わりに粒子状溶融シリカD−1:93質量部を用い、メチルエチルケトンの量を125質量部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0046】
(比較例1)
鱗片状窒化ホウ素A−1の代わりに鱗片状窒化ホウ素A−3、粒子状アルミナB−3の代わりに粒子状アルミナB−2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。
(比較例2)
鱗片状窒化ホウ素A−1の代わりに鱗片状窒化ホウ素A−2、粒子状アルミナB−3の代わりに粒子状アルミナB−1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0047】
(比較例3)
鱗片状窒化ホウ素A−1の代わりに鱗片状窒化ホウ素A−3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。
(比較例4)
粒子状アルミナB−3の代わりに粒子状アルミナB−1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0048】
(比較例5)
粒子状アルミナB−3の代わりに、粒子状アルミナB−1:151質量部及び粒子状アルミナB−2:17質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。
(比較例6)
粒子状アルミナB−3の代わりに粒子状アルミナB−2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0049】
(比較例7)
鱗片状窒化ホウ素A−1の量を38質量部、粒子状アルミナB−3の量を269質量部、メチルエチルケトンの量を272質量部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。
(比較例8)
鱗片状窒化ホウ素A−1の量を153質量部、粒子状アルミナB−3の量を67質量部、メチルエチルケトンの量を214質量部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0050】
実施例1〜12及び比較例1〜8で得られた熱硬化性樹脂組成物をそれぞれ、厚み105μmの放熱部材上にドクターブレード法にて塗布した後、110℃で15分間、加熱乾燥させることによって、厚みが100μmの塗布乾燥物を得た。
次に、放熱部材上に形成した塗布乾燥物を、塗布乾燥物側が内側になるように2枚重ねた後、5MPaのプレス圧で加圧しながら120℃で20分間加熱することで半硬化(Bステージ)状態の熱伝導性シートを得た。これをさらに160℃で3時間加熱することで、完全に硬化した熱伝導性シートを(厚み200μm)を得た。
上記の2つの放熱部材に挟まれた熱伝導性シートの熱伝導性を評価するため、シート厚み方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法にて測定した。この熱伝導率の測定結果は、比較例1の熱伝導性シートで得られた熱伝導率を基準とし、各実施例又は各比較例の熱伝導性シートで得られた熱伝導率の相対値([各実施例又は各比較例の熱伝導性シートで得られた熱伝導率]/[比較例1の熱伝導性シートで得られた熱伝導率]の値)として表3及び4に示した。
【0051】
また、上記の2つの放熱部材に挟まれた熱伝導性シートの電気絶縁性を評価するため、絶縁破壊電界(BDE)を測定した。熱伝導性シートの絶縁破壊電界(BDE)は、油中で、放熱部材に挟まれた熱伝導性シートに1kV/秒の一定昇圧にて電圧を印加することにより測定された絶縁破壊電圧(BDV)を熱伝導性シートの厚みで割ることにより算出した。この絶縁破壊電界(BDE)の結果は、比較例2の熱伝導性シートで得られたBDEを基準とし、各実施例又は比較例の熱伝導性シートで得られたBDEの相対値([各実施例又は比較例の熱伝導性シートで得られたBDE]/[比較例2の熱伝導性シートで得られたBDE]の値)として表3及び4に示した。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
表3及び4の結果に示されているように、鱗片状窒化ホウ素及び粒子状フィラーの粒度分布及び配合割合を所定の範囲に規定した実施例1〜12の熱硬化性樹脂組成物は、熱伝導性及び絶縁破壊電圧の両方に優れる熱伝導性シートを与えた。これに対して、鱗片状窒化ホウ素及び粒子状フィラーの粒度分布及び配合割合が所定の範囲から外れる比較例1〜8の熱硬化性樹脂組成物は、熱伝導性又は絶縁破壊電圧が十分でない熱伝導性シートを与えた。
【0055】
ここで、上記の結果を詳細に検討するため、熱硬化性樹脂組成物に配合した粒子状アルミナ中の2μm以下の微細粒子の割合が、熱伝導性シートの絶縁破壊電圧及び熱伝導率に与える影響を示すグラフを図3に表す。
図3のグラフに示されているように、粒子状アルミナ中の2μm以下の微細粒子の割合が20体積%以上70体積%以下の範囲にあると、熱伝導性シートの熱伝導率及び絶縁破壊電圧の両方が高くなる。これに対して、粒子状アルミナ中の2μm以下の微細粒子の割合が20体積%未満であると、熱伝導性シートの絶縁破壊電圧が低下してしまう。また、粒子状アルミナ中の2μm以下の微細粒子の割合が70体積%を超えると、熱伝導性シートの熱伝導率が低下してしまう。
この結果からわかるように、熱伝導性及び電気絶縁性の両方に優れた熱伝導性シートを得るためには、鱗片状窒化ホウ素及び粒子状フィラーの粒度分布及び配合割合を適切な範囲に規定しなければならない。
【0056】
次に、実施例1〜12の熱硬化性樹脂組成物から得られた熱伝導性シートを用い、トランスファーモールド法により封止樹脂で封止して、パワーモジュールを作製した。
このパワーモジュールにおいて、リードフレームと銅のヒートシンクの中央部とに熱電対を取り付けた後、パワーモジュールを稼動させ、リードフレームとヒートシンクとの温度をそれぞれ測定した。その結果、実施例1〜12の熱硬化性樹脂組成物から得られた熱伝導性シートを用いたパワーモジュールはいずれも、リードフレームとヒートシンクとの温度差が小さく、熱放散性に優れていた。
【0057】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、熱伝導性及び電気絶縁性に優れた熱伝導性シートを安定して与える熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、熱伝導性及び電気絶縁性に優れた熱伝導性シートを提供することができる。さらに、本発明によれば、熱放散性及び電気絶縁性に優れたパワーモジュールを提供することができる。
【符号の説明】
【0058】
1、11 熱伝導性シート、2 熱硬化性樹脂、3 鱗片状窒化ホウ素、4 粒子状フィラー、10 パワーモジュール、12 リードフレーム、13 電力半導体素子、14 ヒートシンク、15 制御用半導体素子、16 金属線、17 封止樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鱗片状窒化ホウ素及び粒子状フィラーを熱硬化性樹脂中に分散してなる熱硬化性樹脂組成物であって、
前記鱗片状窒化ホウ素は、平均粒子径が5μm以上15μm以下、最大粒子径が60μm以下であり、
前記粒子状フィラーは、平均粒子径が0.5μm以上6μm以下、最大粒子径が50μm以下であり、且つ粒子径が2μm以下のものを20体積%以上70体積%以下含み、
前記鱗片状窒化ホウ素と前記粒子状フィラーとの体積比が30:70〜70:30である
ことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂組成物の固形分における前記鱗片状窒化ホウ素及び前記粒子状フィラーの合計含有量は、40体積%以上70体積%以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記粒子状フィラーは、結晶シリカ、溶融シリカ及びアルミナからなる群より選択される少なくとも1つの粒子状無機フィラーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂は、常温で液状のエポキシ樹脂と、数平均分子量が3,000以上の常温で固形のエポキシ樹脂とを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする熱伝導性シート。
【請求項6】
一方の放熱部材に搭載された電力半導体素子と、前記電力半導体素子で発生する熱を外部に放熱する他方の放熱部材と、前記半導体素子で発生する熱を前記一方の放熱部材から前記他方の放熱部材に伝達する請求項5に記載の熱伝導性シートとを備えることを特徴とするパワーモジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−178894(P2011−178894A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44480(P2010−44480)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】