説明

燃料電池電源装置

【課題】高出力を維持して小型化を図ることができる燃料電池電源装置を提供する。
【解決手段】並列に接続された燃料電池1及びキャパシタ2と、入力部が燃料電池1及びキャパシタ2と並列に接続されると共に出力部が電動機1のPDU4に接続され、燃料電池1及びキャパシタ2の出力電圧を昇圧して、該昇圧した電圧による電力をPDU4に供給する昇圧手段3と、昇圧手段3の出力部と電圧変換手段20を介して接続された二次電池21と、電圧変換手段20の作動を制御して、電圧変換手段20を介した二次電池21からPDU4への電力供給と、電圧変換手段20を介した昇圧手段3から二次電池21への電力供給による二次電池21の充電を制御する電力供給制御手段30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池及びキャパシタの並列回路から負荷に電力を供給する燃料電池電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば燃料電池車両の動力源として、燃料電池と蓄電手段(キャパシタ、二次電池等)を走行用モータと並列に接続して、燃料電池及び蓄電手段から走行用モータに電力を供給するようにした燃料電池電源装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる従来の燃料電池電源装置においては、燃料電池及び蓄電手段の出力部が走行用モータに直接接続されている。そして、燃料電池の1セルあたりの出力電圧は低いため、走行用モータの駆動に必要な高電圧を得るためには、多数のセルを多層化した燃料電池スタックを構成する必要があり、燃料電池の体積が大きくなる。
【0004】
また、高出力の走行用モータへの駆動用電力を確保するために、燃料電池の出力電力をアシストする蓄電手段の容量を大きくする必要があり、蓄電手段の体積も大きくなる。そして、このように、燃料電池及び蓄電手段の体積が共に大きくなるため、燃料電池電源装置を小型化することが難しかった。
【特許文献1】特開2006−59685号公報 (第4−5頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記背景を鑑みてなされたものであり、高出力を維持して小型化を図ることができる燃料電池電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、燃料電池と、入力部が前記燃料電池と並列に接続されると共に出力部が第1の負荷に接続され、前記燃料電池の出力電圧を昇圧して、該昇圧した電圧による電力を該第1の負荷に供給する昇圧手段と、前記昇圧手段の入力部又は出力部と並列に接続された蓄電手段と、前記昇圧手段の出力部と電圧変換手段を介して接続された二次電池と、前記電圧変換手段の作動を制御して、前記電圧変換手段を介した前記二次電池から前記第1の負荷への電力供給と、前記電圧変換手段を介した前記昇圧手段から前記二次電池への電力供給による前記二次電池の充電とを実行する電力供給制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
かかる本発明によれば、前記昇圧手段により前記燃料電池の出力電圧が昇圧され、該昇圧された電圧による電力が前記第1の負荷に供給される。そのため、前記燃料電池の出力電圧を低くすることができる。そして、これにより、前記燃料電池において多層化されるセルの個数を減少させて、前記燃料電池の体積を減少させることができる。
【0008】
また、前記蓄電手段から前記第1の負荷に電力を供給することができると共に、前記電力供給制御手段により、前記電圧変換手段を介して前記二次電池から前記第1の負荷に電力を供給する。そして、これにより、前記蓄電手段及び前記二次電池の出力電力によって、前記燃料電池から前記第1の負荷への電力供給をアシストすることができため、前記燃料電池の体積を減少させることができる。さらに、前記電力供給制御手段は、前記電圧変換手段を介した前記昇圧手段から前記二次電池への電力供給により前記二次電池を充電する。これにより、前記二次電池の充電量の確保を図ることができる。
【0009】
また、前記蓄電手段が、前記昇圧手段の入力部に並列に接続されていることを特徴とする。
【0010】
かかる本発明によれば、前記昇圧手段により、前記燃料電池の出力電圧及び前記蓄電手段の出力電圧が昇圧され、該昇圧された電圧による電力が前記第1の負荷に供給される。そのため、前記蓄電手段の出力電圧を低くして、前記蓄電手段の体積を減少させることができる。
【0011】
また、前記燃料電池から前記蓄電手段への通電を可能とすると共に、前記蓄電手段から前記燃料電池への通電を不能とする一方向通電手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
かかる本発明によれば、前記一方向通電手段により前記蓄電手段から前記燃焼電池への通電を不能とすることにより、前記燃料電池の端子間電圧よりも前記蓄電手段の端子間電圧を高く維持することが可能となる。そして、これにより、前記燃料電池の作動状態に拘らずに前記蓄電手段の充電量が多い状態を維持することができる。
【0013】
また、前記燃料電池及び前記蓄電手段から、前記昇圧手段を介して前記第1の負荷に供給される第1の電力を検知する電力検知手段を備え、前記電力供給制御手段は、前記第1の電力が所定電力以上であるときに、前記二次電池から前記電圧変換手段を介して前記第1の負荷に第2の電力を供給することを特徴とする。
【0014】
かかる本発明によれば、前記電力供給制御手段は、前記燃料電池及び前記蓄電手段から前記昇圧手段を介して前記第1の負荷に供給される前記第1の電力が、前記所定電力以上となり、前記燃料電池及び前記蓄電手段からの電力供給だけでは、前記第1の負荷への電力供給が不足するおそれがあるときに、前記電圧変換手段を作動させて前記二次電池から前記第1の負荷に前記第2の電力を供給する。これにより、前記第1の負荷への電力供給が不足することを抑制することができる。
【0015】
また、前記燃料電池及び前記蓄電手段から、前記昇圧手段を介して前記第1の負荷に供給される第1の電力を検知する電力検知手段を備え、前記電力供給制御手段は、前記第1の電力の増加率が所定レベル以上となったときに、前記二次電池から前記電圧変換手段を介して前記第1の負荷に第2の電力を供給することを特徴とする。
【0016】
かかる本発明によれば、前記電力供給制御手段は、前記燃料電池及び前記蓄電手段から前記昇圧手段を介して前記第1の負荷に供給される前記第1の電力の増加率が前記所定レベル以上となり、前記第1の電力の増加に対する前記燃料電池の応答遅れにより、前記燃料電池及び前記蓄電手段からの電力供給だけでは、前記第1の負荷への電力供給が不足するおそれがあるときに、前記電圧変換手段を作動させて前記二次電池から前記第1の負荷に前記第2の電力を供給する。これにより、前記第1の負荷への電力供給が不足することを抑制することができる。なお、前記燃料電池の出力電圧を検知する電圧検知手段を備え、前記電力供給制御手段は、前記燃料電池の出力電圧が所定レベル以下になったときにも、前記二次電池から前記電圧変換手段を介して前記第1の負荷に第2の電力を供給するようにしてもよい。
【0017】
また、前記燃料電池の出力電圧を検知する電圧検知手段を備え、前記電力供給制御手段は、前記燃料電池の出力電圧が所定電圧以上であるときに、前記燃料電池から前記電圧変換手段を介して前記二次電池に電力を供給することにより、前記二次電池を充電することを特徴とする。
【0018】
かかる本発明によれば、前記電力供給制御手段は、前記燃料電池の出力電圧が所定電圧以上であって、前記燃料電池及び前記蓄電手段から前記第1の負荷への電力供給が少ないときに、前記電圧変換手段を作動させて前記燃料電池から前記二次電池に電力を供給することにより、前記二次電池を充電する。これにより、前記燃料電池及び前記蓄電手段の電力供給の負担が軽い状況にあるときに、前記二次電池を充電して、その後の前記第1の負荷への電力供給の増加に備えることができる。
【0019】
また、前記二次電池が、前記燃料電池を作動させるための補機を少なくとも含む第2の負荷に接続されて、前記二次電池から該第2の負荷に電力が供給されることを特徴とする。
【0020】
かかる本発明において、前記蓄電手段として、例えばキャパシタを用いた場合、充電量の増減による前記二次電池の出力電圧の変動幅は、前記蓄電手段よりも小さくなる。そのため、前記燃料電池の補機を少なくとも含む前記第2の負荷に、前記蓄電手段ではなく前記二次電池から電力供給することで、前記第2の負荷の入力電圧変動幅の仕様を狭くすることができる。そして、これにより、前記第2の負荷の小型化とコストダウンを図ることができる。
【0021】
また、車両に搭載され、前記第1の負荷は該車両の動力源である電動機であることを特徴とする。
【0022】
かかる本発明によれば、前記二次電池による前記電動機への電力供給のアシストを行うことにより、前記燃料電池及び前記蓄電手段の体積を減少させることができるため、前記車両の電源スペースを小さくすることができる。
【0023】
また、車両に搭載され、前記第1の負荷は、前記車両の車軸と連結された電動機であって、前記車両の動力源であると共に前記車両の減速時に発電機として作動して回生電力を出力し、前記昇圧手段は、前記電動機から前記蓄電手段に通電する機能を有して、前記電力供給制御手段は、前記昇圧手段を介して前記回生電力を前記蓄電手段に供給する第1の充電と、前記電圧変換手段を介して前記回生電力を前記二次電池に供給する第2の充電とを実行することを特徴とする。
【0024】
かかる本発明によれば、前記電動機の回生電力により前記蓄電手段と前記二次電池を充電することによって、前記蓄電手段と前記二次電池の充電量を効率良く確保することができる。
【0025】
また、前記回生電力を検知する回生電力検知手段を備え、前記電力供給制御手段は、該回生電力検知手段により検知される前記回生電力のレベルに応じて、前記第1の充電により前記蓄電手段に供給する回生電力と、前記第2の充電により前記二次電池に供給する回生電力の分配割合を決定することを特徴とする。
【0026】
かかる本発明によれば、前記電動機の回生電力のレベルに応じて、例えば、前記回生電力のレベルが小さいときは、前記第1の充電のみを実行して前記蓄電手段のみを充電し、前記回生電力のレベルが大きいときには、前記第1の充電と前記第2の充電とを、回生電力を所定の分配割合としてを実行する等の充電態様が可能となる。この際、前記第1の充電と前記第2の充電のために、それぞれの最適な回生出力電圧値に調整される。
【0027】
また、前記蓄電手段がキャパシタであることを特徴とする。
【0028】
かかる本発明によれば、出力電圧範囲が広いキャパシタを前記燃焼電池と並列に直結することにより、前記燃料電池を広い出力電圧範囲で使用することができる。また、キャパシタの内部抵抗は、二次電池等の他の種類の蓄電手段よりも低いため、キャパシタの充放電を速やかに行って、前記燃焼電池の出力を効率良くアシストすることができる。
【0029】
また、前記昇圧手段の出力部と並列に接続されると共に、前記燃料電池を作動させるための補機を少なくとも含む第2の負荷に接続されて、前記蓄電手段から前記第2の負荷に電力が供給されることを特徴とする。
【0030】
かかる本発明によれば、前記昇圧手段による出力電圧を制御することによって、前記蓄電手段の電力出力と充電を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。
【0032】
[第1の実施形態]図1〜図5を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は第1の実施形態における燃料電池電源装置の全体構成図、図2は図1に示した燃料電池電源装置による電力供給の態様を示した説明図、図3〜図4は燃料電池自動車の走行状態に応じた電力供給の態様の説明図、図5は燃料電池自動車の走行状態に応じた回生電力の回収態様の説明図である。
【0033】
図1を参照して、第1の実施の形態の燃料電池電源装置A1は、燃料電池車両(本発明の車両に相当する)に搭載されるものである。そして、燃料電池電源装置A1は、燃料電池1、燃料電池1と並列に接続された電気二重層キャパシタ2(本発明の蓄電手段に相当する。以下、単にキャパシタ2という)、入力部が燃料電池1及びキャパシタ2に接続されると共に、出力部がPDU(Power Drive Unit)4を介して電動機5(本発明の第1の負荷に相当する)に接続された昇圧手段3(Voltage Boost Unit)、及び入力部が昇圧手段3に接続されると共に出力部が二次電池21(本第1の実施形態では、リチウムイオンバッテリを使用)に接続された電圧変換手段20を備えている。
【0034】
また、燃料電池電源装置A1は、燃料電池1の作動を制御する燃料電池制御手段10と、昇圧手段3及び電圧変換手段20の作動を制御して、燃料電池1とキャパシタ2と二次電池21から電動機5への電力供給と、キャパシタ2及び二次電池21の充電とを行う電力供給制御手段30とを備えている。
【0035】
なお、燃料電池制御手段10と電力供給制御手段30は、マイクロコンピュータ(図示しない)に燃料電池電源装置の制御プログラムを実行させることにより構成される。また、燃料電池制御手段10は、燃料電池1に備えられた各種センサ、及びキャパシタ2に備えられた各種センサと接続され、これらのセンサから出力される検出信号を入力して、燃料電池1及びキャパシタ2の作動状態を検知する。
【0036】
燃料電池制御手段10に備えられた電力検知手段11は、燃料電池1に備えられた電圧センサ及び電流センサ(図示しない)の検出信号と、キャパシタ2に備えられた電圧センサ及び電流センサ(図示しない)の検出信号とにより、燃料電池1から出力される電力とキャパシタ2から出力される電力を検知する。また、電圧検知手段12は、燃料電池1に備えられた電圧センサの検出信号により、燃料電池1の出力電圧を検知する。
【0037】
また、二次電池21には、燃料電池1に反応ガスである空気を供給するためのポンプ等の補機22(本発明の第2の負荷に相当する)が接続されている。さらに、燃料電池1と昇圧手段3及びキャパシタ2との間には、燃料電池1への電流の流入を禁止するためのダイオード6(本発明の一方向通電手段に相当する)が接続されている。なお、ダイオードではなく、トランジスタ等の他の整流素子を用いることにより、または、キャパシタ2を降圧手段(ダウンコンバータ)を介して燃料電池1に接続することにより、燃料電池1への電流の流入を禁止してもよい。
【0038】
次に、図2(a)を参照して、燃料電池1は、例えば燃料電池スタックを250個直列に接続して構成され、出力電圧が約225V(出力電流0A)〜180V(出力電流210A)の範囲で変動するものである。また、キャパシタ2は電気二重層キャパシタであり、出力電圧が200Vを中心とした範囲(約下限154V〜上限243Vの範囲)で変動するものである。また、二次電池21の出力電圧は約290V〜350Vの範囲で変動する。
【0039】
昇圧手段3は、定格100kwで昇圧比1.5〜2.4のDC/DCコンバータである。このDC/DCコンバータは、少なくとも昇圧機能を有し、降圧機能は必要に応じて付加される。また、電圧変換手段20は、定格10kwで昇圧比1.36〜1.70の双方向DC/DCコンバータである。そして、電力供給制御手段30(図1参照)は、燃料電池1及びキャパシタ2からの出力電力を昇圧手段3で昇圧した電力P1のみでは、電動機5に対する電力供給が不足するときに、二次電池21からの出力電力を電圧変換手段20で昇圧した電力P2を供給して、電動機5への電力供給をアシストする。
【0040】
図2(b)は、燃料電池1が停止した状態から車両が走行を開始するときの、電動機5への総供給電力(図中a)、二次電池21の出力電力(図中b)、燃料電池1の出力電力(図中c)、キャパシタ2の出力電力(図中d)の変化を示したものであり、縦軸が電力(Pw)に設定され、横軸が時間(t)に設定されている。
【0041】
図中t0で車両が走行を開始するときは、先ず、キャパシタ2の出力電力dと二次電池21の出力電力bにより電動機5が駆動される。また、二次電池21の出力電力により補機22(図1参照)が作動して燃料電池1が起動すると、燃料電池1の出力電力cが次第に上昇する。一方、キャパシタ2の出力電力は次第に減少し、t1でほぼゼロとなる。また、二次電池21の出力電力も次第に減少し、t2でほぼゼロとなる。そして、以後は、主として燃料電池1の出力電力により電動機5が駆動される。
【0042】
次に、図3(a)、図3(b)、図4(a)、図4(b)を参照して、車両の状態に応じた燃料電池1、キャパシタ2、及び二次電池21の電力出力の制御の態様について説明する。
【0043】
図3(a)は燃料電池1の起動時における電力出力の態様を示している。燃料電池1の起動時、電力供給制御手段30は、昇圧手段3を介してキャパシタ2からPDU4に電力P3を供給すると共に、電圧変換手段20を介して二次電池21からPDU4に電力P4を供給する。
【0044】
この場合、キャパシタ2からの供給電力P3と二次電池21からの供給電力P4とにより、電動機5が駆動される。そのため、二次電池21によりアシストされる電力P4に相当する容量分について、キャパシタ2の容量を減少させて、キャパシタ2の体積を減少させることができる。
【0045】
また、二次電池21から補機22(図1参照)に電力が供給されて補機22が作動を開始し、燃料電池1への反応ガスの供給が開始されて燃料電池1が起動する。
【0046】
次に、図3(b)は車両が平坦路を走行している場合のように、低負荷の状態で電動機5が作動しているときの電力出力の態様を示している。低負荷の状態では、燃料電池1から供給される電力P5のみによって、電動機5の要求電力を満たすことができる。そのため、電力供給制御手段30は、電圧変換手段20の作動を停止し、昇圧手段3を負荷の大きさに応じて作動又は停止させる。このように、燃料電池1からの供給電力P3のみによって電動機5を作動させることにより、高燃費を維持して車両を走行させることができる。
【0047】
次に、図4(a)は車両が登坂路を走行している場合のように、高負荷の状態で電動機5が作動しているときの電力出力の態様を示している。高負荷の状態では、燃料電池1及びキャパシタ2から供給される電力P6のみによっては電動機5の要求電力を満たすことができなくなる。
【0048】
そこで、電力供給制御手段30は、電力検知手段11により検知される燃料電池1及びキャパシタ2から供給される電力P6(本発明の第1の電力に相当する)が、予め設定された所定電力以上となったときに、電圧変換手段20を作動させる。そして、二次電池21からの出力電力を電圧変換手段20で昇圧した電力P7(本発明の第2の電力に相当する)を供給して、電動機5への電力供給をアシストする。
【0049】
これにより、PDU4から電動機5に供給される電力が増加して、電動機5に供給される電力の不足が生じることを防止することができる。そして、この場合、二次電池21によりアシストされる電力P7に相当する容量分について、燃料電池1及びキャパシタ2の容量を減少させて、燃料電池1及びキャパシタの体積を減少させることができる。
【0050】
なお、電力検知手段11により検知される燃料電池1及びキャパシタ2から供給される電力P6の増加率が所定レベル以上となったときに、電圧変換手段20を作動させるようにしてもよい。これにより、電力P6の急増に対して燃料電池1の出力電力の増加が遅れるときに、二次電池21の出力電力P7によりアシストして、電動機5に対する電力供給が不足することを防止することができる。
【0051】
次に、図4(b)は走行していた車両が停止したときの電力出力の態様を示している。車両が停止しているときは、電動機1が停止して燃料電池1の出力電力が減少し、これに応じて燃料電池1の出力電圧が上昇する。
【0052】
そこで、電力供給制御手段30は、電圧検知手段12により検知される燃料電池1の出力電圧が予め設定された所定電圧以上となり、燃料電池1の出力に余裕がある状態となっているときに、電圧変換回路20を作動させ、昇圧手段3及び電圧変換手段20を介して、二次電池21を充電する。
【0053】
これにより、二次電池21の残容量を十分のものとして、その後の車両の走行に備えることができる。
【0054】
また、電動機5は、車両が減速する際には発電機として機能し、電力供給制御手段30は、車両の減速時に電動機5で生じる回生電力を回収して、該回生電力によりキャパシタ2を充電する第1の充電及び二次電池2を充電する第2の充電を実行する。なお、電力供給制御手段30は、PDU4に備えられた電圧センサ及び電流センサ(図示しない)により、電動機5の回生電力を検知する。このように、電動機5の回生電力を検知する構成が、本発明の回生電力検知手段に相当する。
【0055】
図5(a)は、車両が緩やかに減速しているときのように、電動機5の回生電力が小さいときの該回生電力による充電態様を示している。回生電力が小さいときは、電力供給制御手段30は、電圧変換手段20を介した二次電池21への電力供給を停止し、昇圧手段3を直結(スルー)の状態とする。これにより、電動機5の回生電力G1を、入力インピーダンスが低いキャパシタ2に効率良く充電することができる。
【0056】
次に、図5(b)は車両が高速走行状態から減速した場合のように、電動機5の回生電力が大きいときの該回生電力による充電状態を示している。この場合、電力供給制御手段30は、電動機5の回生電力をG2とG3に分配する。そして、電力供給制御手段30は、回生電力G2を昇圧手段3を介してキャパシタ2に供給してキャパシタ2を充電し、回生電力G3を電圧変換手段20を介して二次電池21に供給して二次電池21を充電する。
【0057】
電力供給制御手段30は、回生電力G2とG3の分配割合を、二次電池21の残充電容量、キャパシタ2の残充電容量、電動機5の回生電力の大きさ等に基づいて決定する。そして、電圧変換手段20により二次電池21に供給する電力を制限することにより、回生電力G2とG3の分配割合を制御する。
【0058】
なお、第1の実施の形態では、本発明のキャパシタとして電気二重層キャパシタを示したが、本発明キャパシタの仕様はこれらに限定されず、他の仕様のキャパシタを用いてもよい。
【0059】
[第2の実施形態]次に、図6(a)を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の燃料電池電源装置A2は、上述した第1の実施形態の燃料電池電源装置A1のキャパシタ2を、二次電池50(本発明の蓄電手段に相当する。本第2の実施形態では、リチイムイオンバッテリを使用している。)に置き換えたものである。なお、第1の実施形態の燃料電池電源装置A1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
第2の実施形態の燃料電池電源装置A2においても、上述した第1の実施形態の燃料電池電源装置A1と同様の作用効果を得ることができる。二次電池50は、例えば、燃料電池1の動作電圧範囲が約180V〜225Vであるときには、65セルのリチウムイオンバッテリを直列に接続して構成される。ここで、二次電池50においては、下限電圧を下回る放電を行なうと、活物質や集電箔の劣化が生じるおそれがある。
【0061】
そのため、二次電池50の出力電圧の監視を行ない、燃料電池1と接続された昇圧手段3により、燃料電池1及び二次電池50の電流出力を制限する制御を行って、二次電池50の出力電圧が下限電圧よりも低くなることを防止することが望ましい。
【0062】
さらに、第2の実施形態の燃料電池電源装置A2によれば、高圧補機(高電圧の供給により動作する補機であり、燃料電池1の補機を含む。本発明の第2の負荷に相当する)51を二次電池50と並列に接続することにより、DC/DCコンバータ等の電圧変換回路を介することなく、二次電池50から高圧補機51に電力を供給することができる。そのため、効率良く高圧補機51を動作させることができ、燃費向上を図ることができる。
【0063】
[第3の実施形態]次に、図6(b)を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態の燃料電池電源装置A3は、上述した第1の実施形態の燃料電池電源装置A1におけるキャパシタ50に変えて、二次電池60(本発明の蓄電手段に相当する。本第3の実施形態では、リチイムイオンバッテリを使用している)を昇圧手段3の出力部に並列に接続したものである。なお、第1の実施形態の燃料電池電源装置A1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
また、昇圧手段3及びPDU4と二次電池60との間にコンタクタ61が設けられ、二次電池60には高圧補機62(高電圧の供給により動作する補機であり、燃料電池1の補機を含む。本発明の第2の負荷に相当する)が接続されている。ここで、二次電池21と二次電池60とは動作電圧範囲の設定が相違し、二次電池60の動作電圧範囲が、二次電池21の動作電圧範囲よりも高くなっている。
【0065】
例えば、燃料電池1の動作電圧範囲が約180V〜225Vのときには、二次電池21は72セルのリチイムイオンバッテリを直列に接続して構成され、二次電池60は116セルのリチウムイオンバッテリを直列に接続して構成される。
【0066】
第3の実施形態の燃料電池電源装置A3によれば、燃料電池1の出力電力のアシストを二次電池21のみで行なうときは、昇圧手段3からPDU4への出力電圧を400V以上に制御すると共に、電圧変換手段20からPDU4への出力電圧も400V以上に制御すればよい。
【0067】
また、二次電池21と二次電池60の双方により、燃料電池1の出力電力のアシストを行なうときには、昇圧手段3からPDU4への出力電圧を400V未満に制御すると共に、電圧変換手段20からPDU4への出力電圧も400V未満に制御することで、二次電池60の出力電力を任意に制御することができる。
【0068】
一方、電動機5の回生電力により、二次電池21のみを充電するときは、コンタクタ61を開状態(PDU4と二次電池60間が遮断された状態)とし、PDU4を介して電動機5から二次電池21に電力供給すればよい。
【0069】
また、電動機5の回生電力により、二次電池21と二次電池60の双方を充電するときには、コンタクタ61を閉状態(PDU4と二次電池60間が導通した状態)とし、PDU4から二次電池60への出力電圧を400V以上にすればよい。
【0070】
第3の実施形態の燃料電池電源装置A3によれば、DC/DCコンバータ等の電圧変換回路を介することなく、二次電池60からPDU4に効率良く電力を供給することができる。そのため、燃料電池1の発電を停止して車両を走行させる時に、燃費の向上を図ることができる。
【0071】
また、高圧補機62が、DC/DCコンバータ等の電圧変換回路を介さずに二次電池60に接続されているため、二次電池60から出力される電力により高圧補機62を効率良く動作させることができる。
【0072】
なお、上述した第1〜第3の実施形態では、本発明の燃料電池電源装置を車両の駆動源として備えた例を示したが、電気負荷に対して燃料電池の出力電力を供給する構成の燃料電池電源装置であれば、本発明の適用が可能である。
【0073】
また、上述した第1〜第3の実施形態では、本発明の第1の負荷として電動機5を示し、本発明の第2の負荷として燃料電池1の補機22を示したが、本発明の第1の負荷及び第2の負荷は、車両に備えられた空調機器やオーディオ等の電装品や、バッテリ等であってもよい。また、燃料電池1の補機としては、燃料電池1に反応ガスである空気を供給するポンプや、燃料電池1の電解質膜を保湿するための加湿器、燃料電池1のラジエータの水冷循環ポンプ等が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施形態における燃料電池電源装置の構成図。
【図2】図1に示した燃料電池電源装置による電力供給の態様を示した説明図。
【図3】燃料電池自動車の走行状態に応じた電力供給の態様の説明図。
【図4】燃料電池自動車の走行状態に応じた電力供給の態様の説明図。
【図5】燃料電池自動車の走行状態に応じた回生電力の回収態様の説明図。
【図6】本発明の第2の実施形態及び第3の実施形態における燃料電池電源装置の構成図。
【符号の説明】
【0075】
1…燃料電池、2…キャパシタ(蓄電手段)、3…昇圧手段、4…PDU、5…電動機(第1の負荷)、10…燃料電池制御手段、11…電力検知手段、12…電圧検知手段、20…電圧変換手段、21…二次電池、22…補機(第2の負荷)、30…電力供給制御手段、50…二次電池(蓄電手段)、51…高圧補機(第2の負荷)、60…二次電池(蓄電手段)、61…コンタクタ、62…高圧補機(第2の負荷)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
入力部が前記燃料電池と並列に接続されると共に出力部が第1の負荷に接続され、前記燃料電池の出力電圧を昇圧して、該昇圧した電圧による電力を該第1の負荷に供給する昇圧手段と、
前記昇圧手段の入力部又は出力部と並列に接続された蓄電手段と、
前記昇圧手段の出力部と電圧変換手段を介して接続された二次電池と、
前記電圧変換手段の作動を制御して、前記電圧変換手段を介した前記二次電池から前記第1の負荷への電力供給と、前記電圧変換手段を介した前記昇圧手段から前記二次電池への電力供給による前記二次電池の充電とを実行する電力供給制御手段とを備えたことを特徴とする燃料電池電源装置。
【請求項2】
前記蓄電手段が、前記昇圧手段の入力部に並列に接続されていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池電源装置
【請求項3】
前記燃料電池から前記蓄電手段への通電を可能とすると共に、前記蓄電手段から前記燃料電池への通電を不能とする一方向通電手段を備えたことを特徴とする請求項2記載の燃料電池電源装置。
【請求項4】
前記燃料電池及び前記蓄電手段から、前記昇圧手段を介して前記第1の負荷に供給される第1の電力を検知する電力検知手段を備え、
前記電力供給制御手段は、前記第1の電力が所定電力以上であるときに、前記二次電池から前記電圧変換手段を介して前記第1の負荷に第2の電力を供給することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の燃料電池電源装置。
【請求項5】
前記燃料電池及び前記蓄電手段から、前記昇圧手段を介して前記第1の負荷に供給される第1の電力を検知する電力検知手段を備え、
前記電力供給制御手段は、前記第1の電力の増加率が所定レベル以上となったときに、前記二次電池から前記電圧変換手段を介して前記第1の負荷に第2の電力を供給することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の燃料電池電源装置。
【請求項6】
前記燃料電池の出力電圧を検知する電圧検知手段を備え、
前記電力供給制御手段は、前記燃料電池の出力電圧が所定電圧以上であるときに、前記燃料電池から前記電圧変換手段を介して前記二次電池に電力を供給することにより、前記二次電池を充電することを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項記載の燃料電池電源装置。
【請求項7】
前記二次電池が、前記燃料電池を作動させるための補機を少なくとも含む第2の負荷に接続されて、前記二次電池から該第2の負荷に電力が供給されることを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか1項記載の燃料電池電源装置。
【請求項8】
車両に搭載され、前記第1の負荷は該車両の動力源である電動機であることを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか1項記載の燃料電池電源装置。
【請求項9】
車両に搭載され、
前記第1の負荷は、前記車両の車軸と連結された電動機であって、前記車両の動力源であると共に前記車両の減速時に発電機として作動して回生電力を出力し、
前記昇圧手段は、前記電動機から前記蓄電手段に通電する機能を有して、
前記電力供給制御手段は、前記昇圧手段を介して前記回生電力を前記蓄電手段に供給する第1の充電と、前記電圧変換手段を介して前記回生電力を前記二次電池に供給する第2の充電とを実行することを特徴とする請求項2から請求項7のうちいずれか1項記載の燃料電池電源装置。
【請求項10】
前記回生電力を検知する回生電力検知手段を備え、
前記電力供給制御手段は、該回生電力検知手段により検知される前記回生電力のレベルに応じて、前記第1の充電により前記蓄電手段に供給する回生電力と、前記第2の充電により前記二次電池に供給する回生電力の分配割合を決定することを特徴とする請求項9記載の燃料電池電源装置。
【請求項11】
前記蓄電手段がキャパシタであることを特徴とする請求項1から請求項10のうちいずれか1項記載の燃料電池電源装置。
【請求項12】
前記蓄電手段が、前記昇圧手段の出力部と並列に接続されると共に、前記燃料電池を作動させるための補機を少なくとも含む第2の負荷に接続されて、前記蓄電手段から前記第2の負荷に電力が供給されることを特徴とする請求項1記載の燃料電池電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−271775(P2008−271775A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62972(P2008−62972)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】