説明

物体情報取得装置及び方法

【課題】十分なSN比で、物体内部深さ方向における異なるレベル面の物体情報を比較的簡便且つ高速に取得することができる物体情報取得装置及び方法を提供する。
【解決手段】物体の内部の情報を取得するための物体情報取得装置は、テラヘルツ波を出力可能で出力強度を変化できる電磁波発生手段6と、電磁波を物体に照射する照射手段と、走査手段と、電磁波を物体に照射する検出手段7を含む。走査手段は、照射される電磁波と物体の相対位置を変化させる。検出手段7は、物体と電磁波が相互作用することで物体を透過もしくは反射した電磁波を検出する。物体情報取得装置は、走査手段で相対位置を変化させる動作と電磁波発生手段6で電磁波強度を段階的に変化させる動作を組み合わせて、物体の所望領域内で、内部深さ方向に異なるレベル面の断層情報を、検出手段7で検出される信号に基づいて取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を用いて物体の情報を取得する画像取得装置などの物体情報取得装置、及びその方法に関する。特には、ミリ波からテラヘルツ波領域(30GHz乃至30THz)の高周波電磁波を用いて物体の性状、形状などを観察する画像取得装置、及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波からテラヘルツ(THz)波にかけた電磁波(周波数30GHz乃至30THzの電磁波で、本明細書では、単にテラヘルツ(THz)波ともいう)を用いた非破壊なセンシング技術が開発されてきている。この周波数帯の電磁波の応用分野として、X線に代わる安全な透視検査を行うイメージング技術がある。また、物質内部の吸収スペクトルや複素誘電率を求めて、結合状態などの物性を調べる分光技術、生体分子の解析技術、キャリヤ濃度や移動度を評価する技術なども開発されている。
【0003】
更には、このTHz波を用いる透視検査装置を、空港の税関などにおいて、荷物、人間の衣服や体内などに隠された禁止薬物や危険物などを検査するのに用いる試みが検討されている。特に、人体に対しては、X線を照射して検査することは被爆の問題があるため、THz波を用いた方法が有効と考えられている。こうした技術に関する提案として、人体にTHz波を照射し、その反射光をモニターして禁止薬物などを所持していないかを判別する探知装置が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
THz波発生手段としては、特許文献1に開示されている様に、基板上に成膜した光伝導膜に電極を兼ねたアンテナを備えた光伝導スイッチ素子を好適に用いることができる。光伝導膜としては、GaAs基板上に低温で成長したLT-GaAsを用いることができる。また、CO2レーザやQC(量子カスケード)レーザもTHz波発生源として利用される。ただし、後者のレーザの場合は、広い周波数範囲に亘る検査物体固有の吸収スペクトルは得られず、波長の異なる複数のTHz波発生源が必要である。
【特許文献1】特開2005-265793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のTHz波を用いる探知装置においては、人体全体を照射するために大きなTHz波出力パワーが必要であり、前記背景技術の所で述べたTHz波の光源と検出器の組み合わせでは、SN比が十分とは言い難い。また、積分時間を長くすることなどが必要で、効率的かつ短時間な検査は容易ではない。また、衣服や靴など、厚みのある物の中に隠された物体については、物の内部の深さ方向における映像の分布を検出することについて触れられていないため、検査が困難になる。
【0006】
特に、靴底に関しては、照射する手段がないため、靴の中に隠した所持品については調べることができない。従来は靴を脱いで検査する手法がとられていたが、これでは、手間がかかるとともに、X線では分からない様な禁止薬物、樹脂製の危険物等については十分な検査ができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、物体の内部の情報を取得するための本発明の第1のタイプの物体情報取得装置は、電磁波発生手段と、照射手段と、走査手段と、検出手段を含む。電磁波発生手段は、30GHz乃至30THzの周波数領域の一部の周波数成分を含む電磁波を出力可能で出力強度を変化できる。照射手段は、前記電磁波を物体に照射する。走査手段は、前記照射される電磁波と物体の相対位置を変化させる。検出手段は、物体と前記電磁波が相互作用することで物体を透過もしくは反射した電磁波を検出する。更に、物体情報取得装置は、走査手段により前記相対位置を変化させる動作と電磁波発生手段により電磁波の強度を変化させる動作を適宜組み合わせて、次の様な物体情報取得動作を実行可能に構成されている。すなわち、情報を取得すべき物体の領域内において、物体の内部深さ方向に関して異なるレベル面の断層情報を、検出手段で検出される信号に基づいて取得する。
【0008】
また、上記課題に鑑み、物体の内部の情報を取得するための本発明の第2のタイプの物体情報取得装置は、電磁波発生手段と、照射手段と、走査手段と、検出手段と、遅延手段を含む。電磁波発生手段は、30GHz乃至30THzの周波数領域の一部の周波数成分を含む電磁波を出力可能である。照射手段は、前記電磁波を物体に照射する。走査手段は、前記照射される電磁波と物体の相対位置を変化させる。検出手段は、物体と前記電磁波が相互作用することで物体を透過もしくは反射した電磁波を検出する。遅延手段は、電磁波発生手段の電磁波を出力するタイミングと検出手段の電磁波を検出するタイミングとの間の遅延時間を変化させる。更に、物体情報取得装置は、走査手段により前記相対位置を変化させる動作と遅延手段により遅延時間を変化させる動作を適宜組み合わせて、次の様な物体情報取得動作を実行可能に構成されている。すなわち、情報を取得すべき物体の領域内において、物体の内部深さ方向に関して異なるレベル面の断層情報を、検出手段で検出される信号に基づいて取得する。
【0009】
また、上記課題に鑑み、物体の内部の情報を取得するための本発明の第3のタイプの物体情報取得装置は、電磁波発生手段と、電磁波分岐手段と、照射手段と、走査手段と、遅延手段と、電磁波結合手段と、検出手段を含む。電磁波発生手段は、30GHz乃至30THzの周波数領域の一部の周波数成分を含む電磁波を出力可能である。電磁波分岐手段は、前記電磁波を参照光と物体光に分岐する。照射手段は、物体光を物体に照射する。走査手段は、前記照射される物体光と物体の相対位置を変化させる。遅延手段は、参照光と物体光の何れか一方または両方の光路上に配置されて参照光と物体光との間の相対的な遅延時間を変化させる。電磁波結合手段は、物体と前記物体光が相互作用することで物体を透過または反射した物体光と遅延手段によって物体光に対して相対的な遅延時間を与えられた参照光とを結合する。検出手段は、電磁波結合手段で結合された参照光と物体光の干渉信号を検出する。更に、物体情報取得装置は、走査手段により前記相対位置を変化させる動作と遅延手段により遅延時間を変化させる動作を適宜組み合わせて、次の様な物体情報取得動作を実行可能に構成されている。すなわち、情報を取得すべき物体の領域内において、物体の内部深さ方向に関して異なるレベル面の断層情報を、検出手段で検出される信号に基づいて取得する。
【0010】
また、上記課題に鑑み、物体の内部の情報を取得するための本発明の物体情報取得方法は、第1出力ステップと、第1走査ステップと、第1検出ステップと、第2出力ステップと、第2走査ステップと、第2検出ステップと、断層情報取得ステップを含む。第1出力ステップでは、30GHz乃至30THzの周波数領域の一部の周波数成分を含む電磁波を第1の出力パワーで出力する。第1走査ステップでは、前記第1の出力パワーの電磁波を物体の存在領域に相対位置を変化させながら照射する。第1検出ステップでは、物体と前記第1の出力パワーの電磁波が相互作用することで物体を透過もしくは反射した電磁波を検出する。第2出力ステップでは、前記第1出力ステップで出力した電磁波を第2の出力パワーで出力する。第2走査ステップでは、前記第2の出力パワーの電磁波を物体の存在領域に相対位置を変化させながら照射する。第2検出ステップでは、物体と前記第2の出力パワーの電磁波が相互作用することで物体を透過もしくは反射した電磁波を検出する。断層情報取得ステップでは、第1検出ステップで検出された信号と第2検出ステップで検出された信号に、両者の変化分の演算処理を含む処理を施して、情報を取得すべき物体の領域内において、物体の内部深さ方向に関して所定のレベル面の断層情報を取得する。この物体情報取得方法は、本発明の前記第1のタイプの物体情報取得装置で実行可能な第1のタイプの情報取得方法の一例である。なお、上記出力、走査、検出の各ステップは3以上の数に増やしてもよい。
【0011】
また、上記課題に鑑み、物体の内部の情報を取得するための本発明の物体情報取得方法は、出力ステップと、走査ステップと、検出ステップと、断層情報取得ステップを含む。出力ステップでは、30GHz乃至30THzの周波数領域の一部の周波数成分を含む電磁波を出力する。走査ステップでは、前記電磁波を物体の存在領域に相対位置を変化させながら照射する。検出ステップでは、前記走査ステップにおける各走査箇所で固定して、前記電磁波の出力パワーを所定の出力パワーから変化させて、変化させる毎に、物体と電磁波が相互作用することで物体を透過もしくは反射した電磁波を検出する。断層情報取得ステップでは、検出ステップで検出された信号に対して、変化分の演算処理を含む処理を施して、情報を取得すべき物体の領域内において、物体の内部深さ方向に関して少なくとも1つのレベル面の断層情報を取得する。この物体情報取得方法は、本発明の前記第1のタイプの物体情報取得装置で実行可能な第2のタイプの情報取得方法の一例である。
【0012】
また、上記課題に鑑み、物体の内部の情報を取得するための本発明の物体情報取得方法は、第1出力ステップと、第1走査ステップと、第1検出ステップと、第2出力ステップと、第2走査ステップと、第2検出ステップと、断層情報取得ステップを含む。第1出力ステップでは、30GHz乃至30THzの周波数領域の一部の周波数成分を含む電磁波を所定の出力パワーで出力する。第1走査ステップでは、前記第1出力ステップの電磁波を物体の存在領域に相対位置を変化させながら照射する。第1検出ステップでは、第1走査ステップにおける各走査箇所で、前記電磁波を出力するタイミングと電磁波を検出するタイミングとの間の遅延時間を第1の時間に設定して物体と電磁波が相互作用することで物体を透過もしくは反射した電磁波を検出する。第2出力ステップでは、前記第1出力ステップで出力した電磁波を前記所定の出力パワーで出力する。第2走査ステップでは、第2出力ステップの電磁波を物体の存在領域に相対位置を変化させながら照射する。第2検出ステップでは、第2走査ステップにおける各走査箇所で、前記電磁波を出力するタイミングと電磁波を検出するタイミングとの間の遅延時間を第2の時間に設定して物体と電磁波が相互作用することで物体を透過もしくは反射した電磁波を検出する。断層情報取得ステップでは、第1検出ステップで検出された信号と第2検出ステップで検出された信号とを夫々処理して、情報を取得すべき物体の領域内において、物体の内部深さ方向に関して異なるレベル面の断層情報を取得する。この物体情報取得方法は、本発明の前記第2のタイプの物体情報取得装置で実行可能な第1のタイプの情報取得方法の一例である。なお、上記出力、走査、検出の各ステップは3以上の数に増やしてもよい。
【0013】
また、上記課題に鑑み、物体の内部の情報を取得するための本発明の物体情報取得方法は、出力ステップと、走査ステップと、検出ステップと、断層情報取得ステップを含む。出力ステップでは、30GHz乃至30GHz乃至30THzの周波数領域の一部の周波数成分を含む電磁波を所定の出力パワーで出力する。走査ステップでは、前記電磁波を物体の存在領域に相対位置を変化させながら照射する。検出ステップでは、走査ステップにおける各走査箇所で、電磁波を出力するタイミングと電磁波を検出するタイミングとの間の遅延時間を所定の時間から段階的に変化させて、変化させる毎に、物体と電磁波が相互作用することで物体を透過もしくは反射した電磁波を検出する。断層情報取得ステップでは、検出ステップで検出された信号を処理して、情報を取得すべき物体の領域内において、物体の内部深さ方向に関して少なくとも1つのレベル面の断層情報を取得する。この物体情報取得方法は、本発明の前記第2のタイプの物体情報取得装置で実行可能な第2のタイプの情報取得方法の一例である。
【0014】
また、上記課題に鑑み、物体の内部の情報を取得するための本発明の物体情報取得方法は、第1出力ステップと、第1走査ステップと、第1検出ステップと、第2出力ステップと、第2走査ステップと、第2検出ステップと、断層情報取得ステップを含む。第1出力ステップでは、30GHz乃至30THzの周波数領域の一部の周波数成分を含む電磁波を所定の出力パワーで出力する。第1走査ステップでは、前記第1出力ステップの電磁波から分岐された物体光を物体の存在領域に相対位置を変化させながら照射する。第1検出ステップでは、第1走査ステップにおける各走査箇所で、電磁波から分岐された参照光と物体光との間の遅延時間を第1の時間に設定する。そして、物体と物体光が相互作用することで物体を透過または反射した物体光と相対的な遅延時間を与えられた参照光とを結合して生じる参照光と物体光の干渉信号を検出する。第2出力ステップでは、前記第1出力ステップで出力した電磁波を前記所定の出力パワーで出力する。第2走査ステップでは、第2出力ステップの電磁波から分岐された物体光を物体の存在領域に相対位置を変化させながら照射する。第2検出ステップでは、第2走査ステップにおける各走査箇所で、電磁波から分岐された参照光と物体光との間の遅延時間を第2の時間に設定する。そして、物体と物体光が相互作用することで物体を透過もしくは反射した物体光と相対的な遅延時間を与えられた参照光とを結合して生じる参照光と物体光の干渉信号を検出する。断層情報取得ステップでは、第1検出ステップで検出された信号と第2検出ステップで検出された信号とを夫々処理して、情報を取得すべき物体の領域内において、物体の内部深さ方向に関して異なるレベル面の断層情報を取得する。この物体情報取得方法は、本発明の前記第3のタイプの物体情報取得装置で実行可能な第1のタイプの情報取得方法の一例である。なお、上記出力、走査、検出の各ステップは3以上の数に増やしてもよい。
【0015】
また、上記課題に鑑み、物体の内部の情報を取得するための本発明の物体情報取得方法は、出力ステップと、走査ステップと、検出ステップと、断層情報取得ステップを含む。出力ステップでは、30GHz乃至30THzの周波数領域の一部の周波数成分を含む電磁波を所定の出力パワーで出力する。走査ステップでは、出力ステップの電磁波から分岐された物体光を物体の存在領域に相対位置を変化させながら照射する。検出ステップでは、走査ステップにおける各走査箇所で、電磁波から分岐された参照光と物体光との間の相対的な遅延時間を所定の時間から変化させる。そして、変化させる毎に、物体と物体光が相互作用することで物体を透過もしくは反射した物体光と相対的な遅延時間を与えられた参照光とを結合して生じる参照光と物体光の干渉信号を検出する。断層情報取得ステップでは、検出ステップで検出された信号を処理して、情報を取得すべき物体の領域内において、物体の内部深さ方向に関して少なくとも1つのレベル面の断層情報を取得する。この物体情報取得方法は、本発明の前記第3のタイプの物体情報取得装置で実行可能な第2のタイプの情報取得方法の一例である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、必要な領域のみを比較的透過力のあるTHz波ビームで走査することと、THz波の強度を段階的に変化させることを適宜組み合わせて、物体の断層像等の断層情報を取得する。または、必要な領域のみを比較的透過力のあるTHz波ビームで走査することと、上記遅延時間を変化させて検出手段により電磁波の到達時間の違い、強度などを検出することを適宜組み合わせて、物体の断層像等の断層情報を取得する。従って、THz波ビームを適当に収束することができ、十分なSN比で、物体内部深さ方向における異なるレベル面の透過画像、反射画像などの物体情報を比較的簡便且つ高速に取得することができ、表面には見えない様な物でも検査できることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態を説明する。本発明による物体情報取得装置ないし方法を靴底センサ装置ないし方法として適用した一実施形態を図1に示す。本実施形態の画像取得装置である靴底センサ装置では、図1(a)に示す様に、靴1を履いた人3は、例えば、通路に置かれたセンサ装置2の上に載って静止する。このセンサ装置2は、通路の上に設置するだけでもよいし、床に埋め込んで段差のない形にしてもよい。
【0018】
図1(b)は、本実施形態の靴底センサ装置2の内部構造の概略を示す。装置の表面9においては、テラヘルツ波に対して透明な樹脂材料(ポリエチレン等)などの部材の上に、検知手段である圧力センサ(不図示)が貼り付けてある。圧力センサは、物体が存在する部分の圧力変化をもとに、物性情報を取得すべき物体の領域を検知する。これにより、人3が載った領域4を足型などとして検知できる様になっている。人3が装置の表面9に載ったことを感知すると、電磁波発生手段であるテラヘルツ波発生器6が、圧力センサで感知した領域4に亘って2次元的に走査しながらテラヘルツ波ビーム8を照射する。この電磁波発生手段は、30GHz乃至30THzの周波数領域の一部の周波数成分を含む電磁波を出力可能である。例えば、約6mmφのスポット5のテラヘルツ波が、領域4にある靴底に照射され、その反射波が検出器(検出手段)7に入射して検出される。この反射波が生じる理由は、靴底ないしその内部における媒質の境界でテラヘルツ波が反射する性質に依る。尚、ここでは、圧力センサで感知した領域4のみを2次元的に走査するとしたが、圧力センサなどの照射必要領域を検知する手段は省いて、走査領域を所定のものに固定する様にしてもよい。
【0019】
テラヘルツ波の2次元走査を行って照射電磁波と物体の相対位置を変化させる走査手段としては、2次元的に振動する2軸のガルバノミラー、MEMS(Micro
Electro Mechanical Systems)ミラーなどを用いることができる。2次元走査されて靴1で反射される反射波を検出器7に導くために、適当な大きさの面積を有する光学系を装置表面9と検出器7との間に設けてもよい。また、検出器7の受光面積は、2次元走査波の反射波を確実に受光するのに十分な大きさに設定するとよい。
【0020】
本実施形態の靴底センサ装置2の動作例のフローチャートを図2に示す。人(検査物体)が装置の表面9に載らない状態で圧力がないときには、テラヘルツ波発生器6がテラヘルツ波を発生させず、待機状態にある。圧力センサが圧力を感知するとテラヘルツ波が発生されるが、発生出力パワーは段階的に増大ないし変化できる様になっており、最初は、例えば、最低出力パワー(N=1)となっている。テラヘルツ波の発生器6としては、パラメトリック発生器、後進行波管、量子カスケードレーザ、共鳴トンネルダイオード、光伝導素子などを用いることができる。
【0021】
テラヘルツ波の出力パワーとしては、例えば、量子カスケードレーザでは最大30mWである。また、典型的には、テラヘルツ波出力パワーNの1ステップとして、100μW刻みで出力パワーを増大させることができる。勿論、これに限るものではない。出力パワーの調整は、量子カスケードレーザを用いた場合には、注入電流の大きさ、パルス駆動のデューティー比などで行う。その他の発生器では、発生器の前に置いたアッテネータで調整してもよい。
【0022】
最初の出力パワーの時、及びテラヘルツ波の出力パワーを1ステップずつ段階的に変化させる毎に、テラヘルツ波ビームを2次元的に走査して、検出器7で得られる信号を適当に処理することで靴底内部の各レベル面の断層像の情報を取得する。この様に、例えば、第1の出力パワーで出力する第1出力ステップと、この電磁波を物体に照射する第1走査ステップと、第2の出力パワーで出力する第2出力ステップと、この電磁波を物体に照射する第2走査ステップを実行する。そして、断層情報取得ステップで、物体の内部深さ方向に関して所定のレベル面の断層情報を取得する。このとき、特定の薬物等に対する反応については、その反応特性を予め記憶させておいて、これと取得情報との比較を行い、一致したという反応があった場合にはその時点で警告を発する様にしてもよい。
【0023】
本実施形態において、反射波を検出する場合は、物体(ここでは靴1)内部の深さ方向の各レベル面の断層画像情報は、例えば、次の様にして取得する。或る出力パワーレベルのテラヘルツ波ビームを物体に対して走査して、各走査箇所における反射光の信号を検出器7で検出し記憶しておく。次に、出力パワーレベルを1ステップ増加させたテラヘルツ波ビームを発生させ、同じく走査するときに、各走査箇所における反射光の信号を検出器7で検出し記憶する。このとき、レベルを1ステップ増加させたテラヘルツ波ビームは物体内に1段階深く浸透し、物体内部の各レベル面からの反射光信号の数が1段階前に検出した数より増えることになる。そして、各走査箇所において、後者の信号と前者の信号の変化分の演算処理を行い、この演算処理した結果を走査箇所と対応させてプロットする。こうすれば、後者のテラヘルツ波ビームの物体への浸透レベル面における断層画像情報を得ることができる。この処理を、例えば、出力パワーレベルを1ステップ増加させてビーム走査を完了する毎に行えば、物体内部の深さ方向に異なるレベル面の複数の断層画像情報を得ることができる。ここでは、例えば、各レベル面の各走査箇所に対応する複数のTHzパルス波信号のピークの時間差(これは物体内部の媒質の屈折率差により生じる)或いは強度差(これは物体内部の媒質の吸収係数差により生じる)により、イメージングを行う。このイメージングの手法は、他の形態の情報取得方法でも用いることができる。
【0024】
THz波の発振周波数については、調べたい特定の薬物等に対して吸収の大きい周波数帯で設定しておくこともできる。このとき、テラヘルツ波出力パワーは最小の出力から始めて、反応がなかった場合には、出力パワーNを1ステップずつ増大させて次第に深い内部方向のレベル面について、同様にテラヘルツ波の2次元画像を取得して特定物の存否を調べる。
【0025】
図3は、テラヘルツ波出力パワーの増大とともに変化する断層画像の例を示す。(a)は、靴底に刻まれた凹凸パターン30が見えることを示している。更に出力パワーを増していくと、(b)の様に側面を構成する靴の縁31が観察される。靴底に何らかのものを隠してある場合には、(c)の符号32の様な靴とは関係のない異形のものが観測される。更に出力パワーを増加させると、(d)の様な足型33が見られる。この(d)の様な状態まで反応異常がなければ、正常ということで検査が終了する(図2のフローチャート参照)。ただし、検査終了前に人が動き、足型が変動した場合には、やはり警告を発する様になっていてもよい。
【0026】
一方、図3(c)の符号32の様な異形のものが発見された場合には、最初に用いていた周波数とは異なる別の周波数を持つテラヘルツ波を、テラヘルツ波発生器から符号32の部分のみに照射させて反射特性を見る様にしてもよい。例えば、最初に用いていたテラヘルツ波の周波数をf1、異形のものが発見されたのちに照射するテラヘルツ波の波長をf2とする。そうすると、或る特定の検査したい物質のスペクトル特性が図4の様な場合に、f1とf2の透過率の比を計算することで特定物質を同定することができる。スペクトル特性が特定の条件を満たした場合には、特定物質を保持しているとして警告を発して検査が終了となる。こうした構成では、前記電磁波発生手段は、30GHz乃至30THzの周波数領域内の単一周波数で発振するコヒーレント光源を異なる周波数で少なくとも2つ備えることになる。この場合、その少なくとも1つの周波数を、検知すべき禁止薬物等の特定物質が特徴的に有する吸収スペクトルの1つの周波数に相当する様に設定するのが良い。
【0027】
この様にすることで、別の要因で出力変動などが起こった場合の誤動作をなくすことができる。この様な特定周波数におけるTHz波領域のスペクトルは指紋スペクトルと言われ、禁止薬物などにおいて物質固有のものである。この情報をデータベースとして装置に記憶させて、情報検出毎に対応付ければ、どの様な物質があるかということも分かる。なお、異形のものを、見た像より、ナイフや銃などの禁止所持品であると同定できる場合には、f2の周波数を照射する前に警告を発して終了することができる。すなわち、図3(c)の符号32の様な異形のものが発見された所で、発信手段により警告を発して検査を終了としてもよい(図2のフローチャート参照)。これは、靴底とは誘電率の異なる物質が隠されている場合に、その反射強度が異なるので形状取得できることに基づく。この様に、物体内部に含まれる検査対象となる物体の存在は、形状で判断することもできるし、装置内にデータベースとして有しているスペクトル情報と比較することで判断することもできる。場合に応じて、適宜選択すればよい。
【0028】
ところで、物体の透過波を検出する場合は、物体内部深さ方向の各レベル面の断層画像情報は、例えば、次の様にして取得する。或る出力パワーレベルのテラヘルツ波ビームを走査して、各走査箇所における透過光の信号を検出器で検出し記憶しておく。次に、出力パワーレベルを1ステップ減少させたテラヘルツ波ビームを発生させ、同じく走査したときに、各走査箇所における透過光の信号を検出器で検出し記憶する。そして、各走査箇所において、前者の信号と後者の信号の演算処理を行って、この演算の処理結果を走査箇所と対応させてプロットすれば、テラヘルツ波ビームが透過する側から遠い方の物体内部のレベル面から順に断層画像情報を得ることができる。なぜなら、出力パワーレベルを減少させることで、内部の吸収などを経て物体を透過して出て来る反射光パルスが、透過する側から遠い方の物体内部のレベル面からのものから順に、減るからである。こうした処理を、例えば、出力パワーレベルを1ステップ減少させてビーム走査を完了する毎に行えば、物体内部深さ方向に異なるレベル面の複数の断層画像情報を得ることができる。以上の反射光または透過光を検出する物体情報取得方法の形態は、本発明の上記第1のタイプの物体情報取得装置で実行可能な第1のタイプの情報取得方法に係るものである。
【0029】
なお、フェムト秒レーザを光伝導スイッチ素子に照射してテラヘルツ波パルスを発生する方法では、周波数範囲がブロードになるので、発振波長を特定のものに決定しなくてもよい。また、この場合は、各走査で、検出器に入射させるフェムト秒レーザの遅延時間を所定のものに設定しておいて、それに対応する物体内部のレベル面からの信号情報を取得する。そして、電磁波発生手段の電磁波を出力するタイミングと検出手段の電磁波を検出するタイミングとの間の上記遅延時間の所定値を変えることで、物体内部の異なるレベル面からの信号情報を取得する。この間、物体に照射するテラヘルツ波ビームの出力は全走査において一定にしておく。このことは、物体からの反射波と透過波の何れを検出する場合も同じである。なぜなら、透過波にも、物体内部の各レベル面で反射されて透過してくる信号波が、異なる伝搬遅延時間でもって、含まれているからである。検出器では、各走査において、そうした異なる伝搬遅延時間の反射波または透過波パルス光のうちの1つを、フェムト秒レーザの遅延時間を調整して検出して、物体内部の各レベル面の画像情報を取得することができる。この様に、例えば、遅延時間を第1の時間に設定して物体からの電磁波を検出する第1検出ステップと、遅延時間を第2の時間に設定して物体からの電磁波を検出する第2検出ステップを実行する。そして、断層情報取得ステップで、物体の内部深さ方向に関して所定のレベル面の断層情報を取得する。この物体情報取得方法の形態は、本発明の上記第2のタイプの物体情報取得装置で実行可能な第1のタイプの情報取得方法に係るものである。
【0030】
電磁波分岐手段と遅延手段と電磁波結合手段と検出手段を含む実施形態も可能である。ここでは、電磁波分岐手段は、電磁波を参照光と物体光に分岐し、遅延手段は、参照光と物体光の少なくとも一方の光路上に配置されて参照光と物体光との間の相対的な遅延時間を変化させる。そして、電磁波結合手段は、物体と物体光が相互作用することで物体を透過または反射した物体光と遅延手段によって物体光に対して相対的な遅延時間を与えられた参照光とを結合する。検出手段は、こうして結合された参照光と物体光の干渉信号を検出する。この様な検出を、異なる遅延時間に設定した状態で複数回行い、夫々の検出ステップで検出された信号に基づいて、情報を取得すべき物体の領域内において、物体の内部深さ方向に関して異なるレベル面の断層情報を取得することができる。この物体情報取得方法の形態は、本発明の前記第3のタイプの物体情報取得装置で実行可能な第1のタイプの情報取得方法に係るものである。
【0031】
上記実施形態では、上記の様にして靴を脱がずに簡便に危険物質等を保持していないかを検査することができる。
【0032】
尚、上記説明では、全体的に物体を走査して1つのレベル面の断層画像情報を取得後に、テラヘルツ波の出力パワーを変化させて再び全体的に走査して次のレベル面の断層画像情報を取得し、必要なら、これを繰り返す方式を述べた。しかし、他の方式も可能である。例えば、各走査箇所において、照射するテラヘルツ波の出力パワーを段階的に変化させて、その点の各レベル面の画像情報を取得する。そして、次に、隣接する走査箇所に移って同様にテラヘルツ波の出力パワーを変化させて、その点の各レベル面の画像情報を取得し、これを繰り返して、最後に適当な処理を行うことで複数のレベル面の全体的な断層画像情報を得る方式も可能である。この物体情報取得方法の形態は、本発明の上記第1のタイプの物体情報取得装置で実行可能な第2のタイプの情報取得方法に係るものである。勿論、前記走査手段による前記相対位置を変化させる動作と、電磁波発生手段により電磁波の強度を変化させる動作を組み合わせて、物体の内部深さ方向に関して異なるレベル面の断層情報を取得することもできる。
【0033】
テラヘルツ波パルスを用い、上記遅延時間を制御して検出器側で各レベル面の断層画像情報を取得する場合も、各走査箇所において、遅延時間を段階的に変化させてその点の各レベル面の画像情報を取得する方式を採用することができる。この物体情報取得方法の形態は、本発明の上記第2のタイプの物体情報取得装置で実行可能な第2のタイプの情報取得方法に係るものである。
【0034】
電磁波分岐手段と電磁波結合手段を用い参照光と物体光の干渉信号を検出する場合も、各走査箇所において、遅延時間を段階的に変化させてその点の各レベル面の画像情報を取得する方式を採用することができる。この物体情報取得方法の形態は、本発明の上記第3のタイプの物体情報取得装置で実行可能な第2のタイプの情報取得方法に係るものである。
【0035】
上記実施形態によれば、十分なSN比で、深さ方向における物体の透過画像または反射画像を比較的簡便且つ高速に取得することができ、表面には見えない様な物についても検査できることになる。また、電磁波発生手段として小型化可能なデバイスを用いる場合、装置全体の構成も比較的単純で小型化できる。これにより、THzイメージング装置などの画像取得装置は、その適用範囲が広がり、空港、各種交通機関、物流などにおける物品検査などに工業製品として導入できる様になる。
【実施例1】
【0036】
以下に、より具体的な実施例を図に沿って説明する。
【0037】
(実施例1)
図5は、本発明による実施例1の画像取得装置である靴底センサ装置の具体的構成を示す。図5において、50は、比較的出力の高い(μWオーダー以上)コヒーレントな連続波THz波の発生器であり、ここではAlGaAs/GaAs系の量子カスケードレーザを用いている。ただし、これに限るものではない。例えば、非線形光学結晶を用いたパラメトリック発振器、後進行波管などでもよい。発振周波数が約3THzで、液体窒素温度に冷却することで30mWの出力を発生することができる。ここから発生したTHz波を、放物面ミラー51、52でビーム径が12mm程度の平行光にコリメートし、レンズ53、54を用いて検査物体となる靴59の底に集光して照射する。このとき、支持面で支持される靴59の底に対して2次元的に符号60の様に走査するために、2次元偏向器である2軸のガルバノミラー56を用いる。
【0038】
靴底で反射されたTHz波は、レンズ55、反射ミラー57を介してTHz波検出器58で検出される。検出器58では、検出信号に基づいて、靴59の内部深さ方向の各レベル面の2次元断層イメージを合成する。本実施例では、検出器として、DLATGS(Deuterated L-Alanine doped TriGlycene
Sulphate)結晶などによる焦電検出器を用いた。しかし、これに限らず、ボロメータ、ショッキーダイオード、ゴーレイセル等を用いることもできる。
【0039】
ここで、既に説明した図2のフローチャートにある様に、1つの走査像情報を取得した後、THz波の出力パワーNを1ステップ(1単位)毎に徐々に上昇させていく。ここでは、1つの走査像情報を取得する1つのサイクル毎に、100μWの間隔で出力パワーを上げていき、典型的には、20W程度まで増加させて靴底の検査を終える。この様なビーム走査による方法では、THz波パワーを集光して用いるため、物質に対する透過性が向上し(すなわち、出力パワーが増加する毎に物質への浸透深さが大きくなり)、また取得イメージのSN比が向上する。ここでも、各レベル面における走査像の取得は、例えば、1ステップ異なる出力パワーで得られた検出信号間の演算処理した情報を各走査箇所において取り、これを走査箇所に対応してプロットすることで行われる。
【0040】
本実施例でも、THz波は、検査に必要な領域且つ必要な時間のみ照射するので、消費電力や検査の時間が低減できる。この様にして、既に上記実施形態のところで説明した様に、靴底に隠された物体の情報(形状、同定など)について検査することができる。
【0041】
(実施例2)
図6は、本発明による実施例2を示す。本実施例では、支持面上の靴底などの有無及び存在領域を、圧力でなく、光を用いて検知する。すなわち、ここでは、物性情報を取得すべき物体の領域を検知する検知手段が、物体を置いた部分に光を照射して反射像を取得する手段を含む。なお、図6では、図5の実施例1と同機能の部分の番号は省略されており、その説明も省く。
【0042】
本実施例において、靴底の光による検知手段として、THz光学系と同軸のものを用いる。ハロゲンランプ等の光源62から発生した光は、ITO(インジウム錫酸化物)ミラー63を透過してTHz光学系に入射し、靴底に照射される。靴底で反射された光は、同じくITOミラー64を透過して光検出器65に入射する。このとき、支持面上の或るポイントを光で常にモニターしておき、反射物として靴が支持面上に到来した場合には、ガルバノミラーを使った光のビーム走査で靴底の存在する位置を特定し、2次元像を取得する。
【0043】
この後、THz波発生器からのTHz波は、検知された靴底の範囲内のみを2次元的に走査することで、靴底内部の情報を複数の断層画像として取得する。ここでは、ITOミラー63、64は、光透過性が高いが、THz波に対しては反射率が高いという性質を利用している。光による靴底の位置の特定については、支持面を全面照射して反射光をCCDで検出する方法などで行ってもよい。
【0044】
本実施例では、同軸で光を照射することが可能なので、光とTHz波を同時に出力させながら、光イメージとTHz波イメージを同時に取得できる。このとき、THz波が回折しやすいために両者の伝播状態が異なり、焦点位置に違いがある場合があるので、補正が必要なこともある。そのときには、THz波と光では誘電率の異なる材料を伝播する領域に配置する方策などが考えられる。本実施例では、圧力センサが物体の支持面にないので、物体に照射されるTHz波がこうしたもので減衰させられることを避けることができる。
【0045】
ここで用いるTHz波及び光の走査においては、実施例1と同様に12mmΦのビームを用いても良いが、イメージ取得スピードを向上させるために、線幅6mm、長さ50mmの線状の扁平ビームとすることもできる。この場合は、レンズ54、55をシリンドリカルレンズにするなどして、ビーム変換をすればよい。こうした走査は他の実施例でも用いることができる。
【0046】
(実施例3)
図7は、本発明による実施例3を示す。本実施例は、これまでのコヒーレントTHz光源ではなく、THz波パルスを用いた広帯域光源を使用する例である。
【0047】
これは、図7に示す様なテラヘルツ時間領域測定系(THz-TDS)により構成することができる。図7の構成において、100フェムト秒の超短パルスを発生するレーザ70からの波長800nmの光を、ハーフミラー85、発振器81で駆動されるチョッパ71を通してGaAsなどの結晶表面にダイポールアンテナを形成した光伝導素子72に照射する。光伝導素子72では、アンテナのギャップに10Vの電圧を印加しておくことで、テラヘルツ波が発生する。このテラヘルツ波は、放物面鏡73、ミラー74を介して物体の支持面75に照射され、その上に置かれた靴底(不図示)で散乱されたテラヘルツ波が、同様にミラー76、放物面鏡77を介して発生側と同様の光伝導素子78に照射される。一方、光伝導素子78の反対側の面には、フェムト秒レーザ70からの光からハーフミラー85で分岐され、遅延光学系84、86、87とミラー88を経てきた超短パルスが照射されている。そして、その遅延時間を遅延光学系84、86、87により変化させることで、靴底の内部の各レベル面で反射されて来たテラヘルツ波の信号波形情報の取得を行う。その他も、通常のTHz-TDS装置と同様であり、アンプ79及びミキサー80を通して送られてきた信号をロックインアンプ82及びPC83で処理する。物体内部の複数のレベル面における2次元イメージ像を取得するには、実施例1と同様にミラー74を動かしてテラヘルツ波を靴底に対して走査させればよい。
【0048】
本実施例では、テラヘルツ波パルスが支持面75を通して靴底に照射され、物体内部の複数のレベル面からの散乱波を検出してイメージングする。この場合には、上記実施形態のところで述べた様に、物体内部の深さ方向の各レベル面からのTHz波が光伝導素子78に到達する時間が異なることを利用する。すなわち、光伝導素子78の上記反対側の面に到達する光の遅延時間を遅延光学系84、86、87により変化させることにより、到達時間の異なる位置のテラヘルツ波の変動情報を取得する。こうして、物体内部の深さ方向の各レベル面に対応した2次元イメージ像を複数取得できることになる。
【0049】
従って、本実施例の方式では、図2のフローチャートにおいて、Nをテラヘルツ波発生出力強度ではなく、遅延光学系の遅延時間に置き換えて考えればよい。この遅延時間の1単位として、例えば1psとすれば、数100μm毎の物体内部の深さ方向の各レベル面の情報を取得することに相当する(ただし、靴底の材質による)。
【0050】
本実施例では、周波数広帯域のテラヘルツ波による測定を行うので、特徴的な禁止薬物等の検査を行う際にも、複数の光源を用いずに簡便に検査を行えるというメリットがある。
【0051】
(実施例4)
図8は、本発明による実施例4を示す。本実施例は、干渉計を備えた物体情報取得装置に係り、特に、テラヘルツ波領域を用いる物体情報取得技術にOCT(Optical
Coherence Tomography)を適用した例に関する。図8において、本実施例の装置は、電磁波発生部91、電磁波分岐部93、電磁波遅延部97、電磁波結合部98、電磁波検出部99、情報取得手段である信号処理部100、制御部101を含む。
【0052】
電磁波発生部91では、励起光92として30THz以上の周波数の電磁波を光伝導素子に照射してテラヘルツ波を発生させる方法が用いられる。励起光92は、光伝導素子が例えばGaAsから構成されている場合は、波長800nm(周波数375THz)の電磁波を用いるのが好ましい。OCTにおいて深さ分解能向上には広帯域スペクトルが必要なので、図8に示すように光伝導素子のテラヘルツ波発生側から励起光92を照射する。このような構成により、基板でのテラヘルツ波の吸収を無視できるようになり、広帯域なスペクトルが得られることが知られている。ここで、もちろん、半導体素子に励起光92を照射してテラヘルツ波を発生させる方法を用いてもよいが、この場合も、同様の理由からテラヘルツ波発生側から励起光92を照射する構成を採用する。この電磁波発生部91では、テラヘルツ波発生に用いた励起光92が電磁波発生部91の表面で反射または散乱し、発生したテラヘルツ波と同軸に出射される。
【0053】
電磁波発生部91から出射した電磁波は、この電磁波は反射して励起光92は通す光学素子102で反射され、電磁波分岐部93によって物体光94と参照光95に分けられる。電磁波分岐部93には、テラヘルツ帯ではワイヤーグリッドが好適に用いられる。
【0054】
物体光94はミラー103で反射され、レンズ104によってサンプル(物体)96に集光される。サンプル96で反射した物体光94は、レンズ106で平行光に変換され、ミラー105で反射された後、電磁波結合部98に達する。
【0055】
一方、参照光95はミラー107で反射されて電磁波遅延部97に入射する。電磁波遅延部97では、制御部101によって制御される遅延時間が参照光95に与えられる。物体光94に対して相対的な遅延時間が与えられた参照光95は電磁波遅延部97から出射してミラー108で反射され、電磁波結合部98に達する。
【0056】
電磁波遅延部97には、図9のようなテラヘルツ波透過体110を備えた回転可能な回転体が好適に用いられる。テラヘルツ波透過体110は、回転軸112回りの回転に伴ってテラヘルツ波95の遅延時間を変化できるように、回転軸112回りの場所によって厚みと屈折率の少なくとも一方が異なっている。電磁波遅延部97には、このようなテラヘルツ波透過体を複数備えてもよい。電磁波遅延部97にはリトロリフレクタを使用することもできるが、次のような理由で図9に示す如き電磁波遅延部97を用いるのがより好ましい。テラヘルツ波はmmオーダーの平行ビームにすると回折によって広がってしまうので、電磁波遅延部97の電磁波の透過する部分は10mm程度の大きさを持つことが望ましい。しかし、こうした大きさでは、その分、重量が増加するので、リトロリフレクタでは高速で精度の良い遅延時間の走査が容易ではなくなってくる。これに対して、図9のような回転体を用いると、例えば6000rpm等の回転速度でも安定で高速な走査が可能になる。しかも、往復駆動ではなく回転駆動であるため精度の良い走査が可能になる。
【0057】
テラヘルツ波透過体110の厚みとしては、例えば、回転方向に沿って2mmから10mmまで連続的に厚みを変化させる。ここでテラヘルツ波透過体110の部材として例えばポリエチレンを使用すると、ポリエチレンのテラヘルツ帯の屈折率は1.5程度なので、遅延量の走査幅は4mm程度になる。これにより、例えば屈折率2のサンプルの情報を取得する場合、深さ方向の走査幅は1mm程度、分解能は数10μm程度となる。このような回転体は、上述したように電磁波遅延部97に複数設けてもよい。テラヘルツ波透過体110には、テラヘルツ波の透過率が高い一方で励起光92の透過率が低い部材が用いられる。このような部材として、例えばテフロン(登録商標)やポリエチレンを使用できる。例えば、高密度ポリエチレンは、2mm厚で、800nmの励起光に対し10%程度の透過率となるが、一方、1THzから2THz領域のテラヘルツ波に対しては2mm厚で70%から90%程度の透過率を持つ。従って、こうした材料を用いると、参照光95と同じ光路を辿る可視または赤外光の強度をテラヘルツ波に対して相対的に大きく減少させることができる。
【0058】
物体光94と参照光95は電磁波結合部98において結合させられた後、レンズ109によって電磁波検出部99へ集光される。電磁波検出部99では、結合した物体光94と参照光95の電磁波強度が干渉信号として検出される。電磁波検出部99としては、例えばDLATGS検出器、ゴーレイセル、ボロメータなどを用いることができる。
【0059】
電磁波検出部99には、テラヘルツ波の他に電磁波発生部91で反射または散乱された励起光92がテラヘルツ波と同様の経路を辿って到達する。この励起光92は、テラヘルツ-OCTにおいてノイズとして働くため物体の深さ方向の分解能を低下させてしまう。しかしながら本実施例では、電磁波遅延部97において励起光92の強度の減少率がテラヘルツ波の強度の減少率に比して大きいので、電磁波検出部99で検出される励起光92の干渉信号成分を小さくできる。従って、深さ方向の分解能を高くすることが可能である。もちろん、電磁波分岐部93、電磁波結合部98、電磁波検出部99、レンズ104、106、109、ミラー103、105、107、108などにこのようなフィルタ機能を付加する方法を用いてもよい。装置に含まれている光学素子にこのような機能を付加することにより、新たにフィルタ素子を付加する場合より、テラヘルツ波の損失を小さくでき、また、装置の素子数を抑えることができる。例えば、フィルタ素子として新たに2mm厚のポリエチレン板を付加すると、1THzから2THz領域のテラヘルツ波の損失が本実施例の場合と比較して10%から30%程度増加してしまう。
【0060】
励起光92の検出強度をテラヘルツ波の検出強度に対して相対的に減少させる方法としては、光学素子の表面構造により励起光92とテラヘルツ波を分離する構成を採用してもよい。具体的には、電磁波遅延部97、電磁波分岐部93、電磁波結合部98、電磁波検出部99、レンズ、ミラーなどの光学素子の表面に、励起光92の波長に対応したグレーティングや粗面を設ける。グレーティングや粗面粗さのサイズは、例えば、約1μmピッチにすることができる。テラヘルツ波の波長は例えば300μm程度なので、このようなサイズのグレーティングや粗面はテラヘルツ波には殆ど影響を与えない。よって、励起光92とテラヘルツ波を効率的に分離することが可能となる。この様に、装置の少なくとも1つの光学素子について、30GHz乃至30THzにある少なくとも一部の電磁波と、30THz以上にある少なくとも一部の電磁波とに対する透過または反射特性が異なるようにして、励起光を低減できる。
【0061】
本実施例で示した測定装置は、空港等での荷物検査などに適用することができる。図10(a)は鞄122の概略図であり、図10(b)は、鞄の皮革120の間隙に薬物121を隠匿している例を示す。ここで本実施例に示した装置を使用し、上記実施形態及び実施例1乃至3に示したのと同様の方法で鞄にテラヘルツ波を照射すれば、テラヘルツ波は皮革120ないし薬物121の表面で反射される。この反射波は、参照光と干渉して反射位置を特定できるので、断層画像を取得して隠匿薬物を発見することが可能となる。深さ方向情報と共に、ビーム走査もしくは物体走査によって深さと垂直な面内の情報も取得できるような構成であるのがより望ましい。
【0062】
以上説明したように、本実施例の干渉計を備えた物体情報取得装置は励起光に起因するノイズを低減することができるので、深さ方向の分解能の高い断層イメージングが可能となる。しかも、装置に新たに光学素子を追加すること無く励起光の干渉成分を減少させる機能を付加しているので、装置を構成する素子数を抑えてコンパクトな構成とできる。
【0063】
以上の実施例では、主に靴底や鞄の内部を検査する画像取得装置としての実施例を説明してきたが、手持ちの荷物内部や物流品の箱内部などの検査などについても、本発明を同様に適用することができる。その場合、得たい物体内部の深さ方向の情報に応じて、THz波の強度を最適化させることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の物体情報取得装置の実施形態の概要を説明する図。
【図2】本発明の物体情報取得装置の実施形態及び実施例の動作を説明するフローチャート。
【図3】靴底の断層像の様子を示す図。
【図4】物質の透過スペクトルの例を説明する図。
【図5】本発明の実施例1による物体情報装置を示す図。
【図6】本発明の実施例2による物体情報装置を示す図。
【図7】本発明の実施例3による物体情報装置を示す図。
【図8】本発明の実施例4による物体情報装置を示す図。
【図9】電磁波遅延手段の他の例を示す図。
【図10】鞄の皮革の間隙に薬物を隠匿している例を説明する図。
【符号の説明】
【0065】
1、30、59、96、120、121、122・・物体(靴、靴底、皮革、薬物、鞄)
2・・物体情報取得装置(画像取得装置)
4・・情報を取得すべき物体の領域(靴底のある領域)
5・・走査箇所(THz波のスポット)
6、50、72、91・・電磁波発生手段(THz波発生器、光伝導素子、電磁波発生部)
7、58、99・・検出手段(THz波検出器、電磁波検出部)
56、74・・走査手段(可動ミラー)
62・・検知手段(光発生器)
65・・検知手段(光検出器)
78・・検出手段(光伝導素子)
84、97、110・・遅延手段(遅延光学系、電磁波遅延部、テラヘルツ波透過体)
93・・電磁波分岐手段(電磁波分岐部)
94・・物体光
95・・参照光
98・・電磁波結合手段(電磁波結合部)
100・・情報取得手段(信号処理部)
101・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の内部の情報を取得するための装置であって、
30GHz乃至30THzの周波数領域の一部の周波数成分を含む電磁波を出力可能で出力強度を変化できる電磁波発生手段と、前記電磁波を物体に照射する照射手段と、前記照射される電磁波と物体の相対位置を変化させる走査手段と、物体と前記電磁波が相互作用することで物体を透過もしくは反射した電磁波を検出する検出手段を含み、
走査手段により前記相対位置を変化させる動作と電磁波発生手段により電磁波の強度を変化させる動作を組み合わせて、情報を取得すべき物体の領域内において、物体の内部深さ方向に関して異なるレベル面の断層情報を、検出手段で検出される信号に基づいて取得することを特徴とする物体情報取得装置。
【請求項2】
前記電磁波発生手段は、30GHz乃至30THzの周波数領域内の単一周波数で発振するコヒーレント光源を異なる周波数で少なくとも2つ備えることを特徴とする請求項1記載の画像取得装置。
【請求項3】
物体の内部の情報を取得するための装置であって、
30GHz乃至30THzの周波数領域の一部の周波数成分を含む電磁波を出力可能な電磁波発生手段と、前記電磁波を物体に照射する照射手段と、前記照射される電磁波と物体の相対位置を変化させる走査手段と、物体と前記電磁波が相互作用することで物体を透過もしくは反射した電磁波を検出する検出手段と、電磁波発生手段の電磁波を出力するタイミングと検出手段の電磁波を検出するタイミングとの間の遅延時間を変化させる遅延手段を含み、
走査手段により前記相対位置を変化させる動作と遅延手段により遅延時間を変化させる動作を組み合わせて、情報を取得すべき物体の領域内において、物体の内部深さ方向に関して異なるレベル面の断層情報を、検出手段で検出される信号に基づいて取得することを特徴とする物体情報取得装置。
【請求項4】
物体の内部の情報を取得するための装置であって、
30GHz乃至30THzの周波数領域の一部の周波数成分を含む電磁波を出力可能な電磁波発生手段と、前記電磁波を参照光と物体光に分岐する電磁波分岐手段と、物体光を物体に照射する照射手段と、前記照射される物体光と物体の相対位置を変化させる走査手段と、参照光と物体光の少なくとも一方の光路上に配置されて参照光と物体光との間の相対的な遅延時間を変化させる遅延手段と、物体と前記物体光が相互作用することで物体を透過または反射した物体光と遅延手段によって物体光に対して相対的な遅延時間を与えられた参照光とを結合する電磁波結合手段と、電磁波結合手段で結合された参照光と物体光の干渉信号を検出する検出手段を含み、
走査手段により前記相対位置を変化させる動作と遅延手段により遅延時間を変化させる動作を組み合わせて、情報を取得すべき物体の領域内において、物体の内部深さ方向に関して異なるレベル面の断層情報を、検出手段で検出される信号に基づいて取得することを特徴とする物体情報取得装置。
【請求項5】
前記遅延手段は、前記電磁波を透過する回転可能な透過体を含み、前記透過体において前記電磁波が透過する領域の厚さと屈折率の少なくとも一方が変化するように透過体を回転して遅延時間を変化させることを特徴とする請求項3または4に記載の物体情報取得装置。
【請求項6】
当該物体情報取得装置に含まれる少なくとも1つの光学素子は、30GHz乃至30THzの周波数領域にある少なくとも一部の電磁波と、30THz以上の周波数領域にある少なくとも一部の電磁波とに対する透過または反射特性が異なることを特徴とする請求項1乃至5に記載の物体情報取得装置。
【請求項7】
前記取得した物体の内部深さ方向のレベル面の断層情報から、物体内部に含まれる検査対象となる物体の存在を検知して、その存在を知らせる信号を発する発信手段を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の物体情報取得装置。
【請求項8】
前記断層情報を取得すべき物体の領域を検知する検知手段を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の物体情報取得装置。
【請求項9】
物体の内部の情報を取得するための方法であって、
30GHz乃至30THzの周波数領域の一部の周波数成分を含む電磁波を第1の出力パワーで出力する第1出力ステップと、前記第1の出力パワーの電磁波を物体の存在領域に相対位置を変化させながら照射する第1走査ステップと、物体と前記第1の出力パワーの電磁波が相互作用することで物体を透過もしくは反射した電磁波を検出する第1検出ステップと、前記第1出力ステップで出力した電磁波を第2の出力パワーで出力する第2出力ステップと、前記第2の出力パワーの電磁波を物体の存在領域に相対位置を変化させながら照射する第2走査ステップと、物体と前記第2の出力パワーの電磁波が相互作用することで物体を透過もしくは反射した電磁波を検出する第2検出ステップと、第1検出ステップで検出された信号と第2検出ステップで検出された信号に対して、両者の変化分の演算処理を含む処理を施して、情報を取得すべき物体の領域内において、物体の内部深さ方向に関して所定のレベル面の断層情報を取得する断層情報取得ステップを含むことを特徴とする物体情報取得方法。
【請求項10】
物体の内部の情報を取得するための方法であって、
30GHz乃至30THzの周波数領域の一部の周波数成分を含む電磁波を所定の出力パワーで出力する第1出力ステップと、前記第1出力ステップの電磁波を物体の存在領域に相対位置を変化させながら照射する第1走査ステップと、前記第1走査ステップにおける各走査箇所で、前記電磁波を出力するタイミングと電磁波を検出するタイミングとの間の遅延時間を第1の時間に設定して物体と前記電磁波が相互作用することで物体を透過もしくは反射した電磁波を検出する第1検出ステップと、前記第1出力ステップで出力した電磁波を前記所定の出力パワーで出力する第2出力ステップと、前記第2出力ステップの電磁波を物体の存在領域に相対位置を変化させながら照射する第2走査ステップと、前記第2走査ステップにおける各走査箇所で、前記電磁波を出力するタイミングと電磁波を検出するタイミングとの間の遅延時間を第2の時間に設定して物体と前記電磁波が相互作用することで物体を透過もしくは反射した電磁波を検出する第2検出ステップと、第1検出ステップで検出された信号と第2検出ステップで検出された信号とを夫々処理して、情報を取得すべき物体の領域内において、物体の内部深さ方向に関して異なるレベル面の断層情報を取得する断層情報取得ステップを含むことを特徴とする物体情報取得方法。
【請求項11】
物体の内部の情報を取得するための方法であって、
30GHz乃至30THzの周波数領域の一部の周波数成分を含む電磁波を所定の出力パワーで出力する第1出力ステップと、前記第1出力ステップの電磁波から分岐された物体光を物体の存在領域に相対位置を変化させながら照射する第1走査ステップと、前記第1走査ステップにおける各走査箇所で、前記第1出力ステップの電磁波から分岐された参照光と前記物体光との間の相対的な遅延時間を第1の時間に設定して、物体と前記物体光が相互作用することで物体を透過もしくは反射した物体光と前記相対的な遅延時間を与えられた参照光とを結合して生じる参照光と物体光の干渉信号を検出する第1検出ステップと、前記第1出力ステップで出力した電磁波を前記所定の出力パワーで出力する第2出力ステップと、前記第2出力ステップの電磁波から分岐された物体光を物体の存在領域に相対位置を変化させながら照射する第2走査ステップと、前記第2走査ステップにおける各走査箇所で、前記第2出力ステップの電磁波から分岐された参照光と前記物体光との間の相対的な遅延時間を第2の時間に設定して、物体と前記物体光が相互作用することで物体を透過もしくは反射した物体光と前記相対的な遅延時間を与えられた参照光とを結合して生じる参照光と物体光の干渉信号を検出する第2検出ステップと、第1検出ステップで検出された信号と第2検出ステップで検出された信号とを夫々処理して、情報を取得すべき物体の領域内において、物体の内部深さ方向に関して異なるレベル面の断層情報を取得する断層情報取得ステップを含むことを特徴とする物体情報取得方法。
【請求項12】
物体の内部の情報を取得するための方法であって、
30GHz乃至30THzの周波数領域の一部の周波数成分を含む電磁波を出力する出力ステップと、前記電磁波を物体の存在領域に相対位置を変化させながら照射する走査ステップと、走査ステップにおける各走査箇所で、前記電磁波の出力パワーを所定の出力パワーから変化させて、変化させる毎に、物体と前記電磁波が相互作用することで物体を透過もしくは反射した電磁波を検出する検出ステップと、検出ステップで検出された信号に対して、変化分の演算処理を含む処理を施して、情報を取得すべき物体の領域内において、物体の内部深さ方向に関して少なくとも1つのレベル面の断層情報を取得する断層情報取得ステップを含むことを特徴とする物体情報取得方法。
【請求項13】
物体の内部の情報を取得するための方法であって、
30GHz乃至30THzの周波数領域の一部の周波数成分を含む電磁波を所定の出力パワーで出力する出力ステップと、前記電磁波を物体の存在領域に相対位置を変化させながら照射する走査ステップと、走査ステップにおける各走査箇所で、前記電磁波を出力するタイミングと電磁波を検出するタイミングとの間の遅延時間を所定の時間から変化させて、変化させる毎に、物体と前記電磁波が相互作用することで物体を透過もしくは反射した電磁波を検出する検出ステップと、検出ステップで検出された信号を処理して、情報を取得すべき物体の領域内において、物体の内部深さ方向に関して少なくとも1つのレベル面の断層情報を取得する断層情報取得ステップを含むことを特徴とする物体情報取得方法。
【請求項14】
物体の内部の情報を取得するための方法であって、
30GHz乃至30THzの周波数領域の一部の周波数成分を含む電磁波を所定の出力パワーで出力する出力ステップと、前記出力ステップの電磁波から分岐された物体光を物体の存在領域に相対位置を変化させながら照射する走査ステップと、走査ステップにおける各走査箇所で、前記出力ステップの電磁波から分岐された参照光と前記物体光との間の相対的な遅延時間を所定の時間から変化させて、変化させる毎に、物体と前記物体光が相互作用することで物体を透過もしくは反射した物体光と前記相対的な遅延時間を与えられた参照光とを結合して生じる参照光と物体光の干渉信号を検出する検出ステップと、検出ステップで検出された信号を処理して、情報を取得すべき物体の領域内において、物体の内部深さ方向に関して少なくとも1つのレベル面の断層情報を取得する断層情報取得ステップを含むことを特徴とする物体情報取得方法。
【請求項15】
前記断層情報取得ステップにおいて、物体内部に含まれる検査対象となる物体の存在を検知したとき、その存在を知らせる信号を発する発信ステップを含むことを特徴とする請求項9乃至14のいずれかに記載の物体情報取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−116439(P2008−116439A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186382(P2007−186382)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】