説明

物品配送システム

【課題】マルチデポの配送に対応し、各デポでの部品在庫がゼロとなることを防止し、マルチデポによる配送時間の短縮化という有利点を損なわない、配送システムを提供すること。
【解決手段】配送手段が複数存在する保管箇所の一で物品を積載し、発注元Aに配送する際、各保管箇所毎に最短経路検索で得られた経路中、所要時間が短い順に複数の経路候補を決定し、発注された物品の在庫が最も多い保管箇所を経由する配送経路を、発注品番あるいは発注元位置といった発注情報とともに、配送計画として配送計画表示手段106に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の配送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
所定の物品を所定の場所に配送する物品の配送システムにおいては、配送車両が倉庫に在庫された物品を積み込み、物品を所定場所まで配送することが行われている。一般には、シングルデポと呼ばれる単一倉庫の荷物を積んで、複数の配送先に輸送するシステムにおいて、輸送経路・時間を最短となるよう設定し、輸送量等の条件によって必要な輸送車両等の配車設定を行うシステムが知られている。
【0003】
このようなシングルデポのシステムは、すべての配送先にある特定の単一倉庫を経由して荷物を配送する。したがって、配送先の位置によっては、配送車両が配送先とは逆方向に位置する倉庫へ移動し、配送物品を車両に積み込んだ後、再び来た方向とは逆方向に位置する配送先へ移動することとなり、配送時間がより長時間となり、これにより配送コストが増加する。
【0004】
このようなシングルデポに起因する、配送コストの増加を抑制するために、特許文献1には、マルチデポと呼ばれる複数倉庫における配送計画システムが示されている。特許文献1で示された配送計画システムでは、複数存在する保管倉庫の中から、配送経路が最短となる経路を選択し、配送当日の配車計画を作成することが示されている。
【特許文献1】特開2004−59231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で示された配送計画システムによれば、従来のシングルデポでの配送システムに比較して配送時間をより短縮することができる。
【0006】
一方、配送先の要求により、配送時間の短縮がより求められる場合がある。例えば、自動車用の補修部品がその例である。顧客の要請により、故障した自動車が修理工場に入庫され、部品交換が必要となり、修理工場に部品在庫を有さない場合には、すぐさま部品販売会社に補修部品を発注し、なるべく短時間で入手する必要がある。部品入手に時間を要すれば、その間、顧客が自動車を使用できないからである。
【0007】
したがって、補修部品のように、配送時間の短縮化が優先される場合、マルチデポにおける倉庫数の数を増やすことにより、様々な位置に分散する配送先にも比較的短時間で配送が可能となる。
【0008】
一方、倉庫数を増やすことにより、倉庫の維持に係るコスト費用は当然増大するため、配送コストを圧迫する要因となる。また、車両の補修部品は部品点数は莫大であり、各倉庫でそれぞれの在庫を維持した場合、倉庫自体の維持コストを含めた保管コストは莫大なものとなってしまう。したがって、使用頻度の高い部品は各倉庫に在庫するものの、使用頻度の低い部品は、各倉庫が在庫するわけではなく、一部の倉庫が在庫することとなる。
【0009】
さらに、保管コストの削減という面では各部品の在庫数を削減することが有効である。しかしながら、在庫数によっては、配送時間帯にある特定の部品に在庫切れが生じてしまうことがある。この場合、その特定部品に関しては倉庫数が減少したことになり、マルチデポの有効性が低下する。すなわち、在庫切れが発生した後に部品発注が入った場合、配送時間の面で有利な倉庫を選択できず、他の配送時間が長くなる倉庫しか選択できなくなるためである。
【0010】
本発明は、マルチデポに対応した配送システムにおいて、各倉庫での在庫数を考慮し、各倉庫での在庫切れを抑制することによって、マルチデポの有利性を低下させない配送システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、任意の場所に位置する車両等の配送手段を互いに異なる場所に複数設定された物品の保管箇所に移動させ、保管箇所から特定の物品を搬出し、配送手段により、前記物品を任意の場所に位置する発注元に配送する物品配送システムにおいて、任意の場所に位置する発注者から発せられた発注品番情報と、発注元の位置情報を記憶する発注情報記憶取得手段と、前記複数の保管箇所における品番毎の在庫情報を記憶した在庫情報記憶手段を有し、前記在庫情報と前記発注品番情報とを照合し、前記発注品番を有する物品を在庫する保管箇所を特定在庫保管箇所として抽出する特定在庫保管箇所抽出手段を有し、前記特定在庫保管箇所が単一である場合に、前記配送手段から前記特定在庫保管箇所を経由し前記発注元にいたる経路のうち最も所要時間の短い経路を最短経路として検索する経路検索手段を有し、前記特定在庫保管箇所の位置情報と、前記最短経路と、前記発注品番情報および前記発注元の位置情報で構成される配送計画情報を表示する配送計画表示手段を有し、前記特定在庫保管箇所が複数である場合に、前記経路検索手段により、前記配送手段から前記特定在庫保管箇所を経由し前記発注元にいたる経路のうち最も所要時間の短い経路を最短経路として前記特定在庫保管箇所毎に経路検索し、複数の最短経路の所要時間で最も短い所要時間を最短所要時間とし、所要時間がこの最短所要時間から所定時間内となる最短経路が2以上である場合に、前記発注品番を有する物品在庫数がより大である特定在庫保管箇所を経由する経路を特定最短経路として選択する経路選択手段を有し、前記経路選択手段により選択された、前記特定在庫保管箇所の位置情報と、前記特定最短経路と、前記発注品番情報および前記発注元の位置情報で構成される配送計画情報を前記配送計画表示手段に表示することを特徴とする物品配送システムを示すものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明による発送システムでは、マルチデポにおける各倉庫での在庫切れを抑制し、マルチデポによる発送時間の短縮化効果を最大限に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態による配送システムを、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本発明の配送システムを示す図、図2および図3は本発明の配送システムによる配送経路を示す図である。
【0015】
本発明の配送システム101は、任意の場所に位置する車両等の配送手段Bを互いに異なる場所に複数設定された物品の保管箇所C1〜Cnに移動させ、保管箇所Cから特定の物品を搬出し、配送手段Bにより、この物品を任意の場所に位置する発注元Aに配送する。
【0016】
本発明の配送システム101は、任意の場所に位置する発注者(発注元Aに対応)から発せられた発注品番情報と、発注元の位置情報を記憶する発注情報記憶手段102と、複数の保管箇所における品番毎の在庫情報を記憶した在庫情報記憶手段103を有する。
【0017】
発注情報記憶手段102の形態としては、コンピュータあるいは携帯電話等の情報端末よりWebサーバ上に公開されたホームページより該当品番、発注元の位置情報、発注者名を入力することによりサーバ上で記憶することができる。また、発注元からの電話・FAX連絡を受けた受注担当者が受注用コンピュータに入力することにより受注サーバに記憶させてもよい。また、在庫情報記憶手段103としては、サーバ等の情報記憶手段を用いればよい。在庫情報をサーバで管理する場合、各保管箇所の在庫情報管理端末とサーバとを接続することにより、サーバ上の在庫情報を最新のものに更新ができる上で好都合である。なお、物品品番情報として、具体的な品番に代え、例えば、「A社製の製品Bに適合する部品C」といった、所望とする部品Cを特定可能な情報を用いてもよい。
【0018】
そして、特定在庫保管箇所抽出手段104により、在庫情報と発注品番情報とを照合し、発注品番を有する物品を在庫する保管箇所を特定在庫保管箇所として抽出する。この特定在庫保管箇所抽出手段104は、2種の情報の照合処理をコンピュータ上で行えばよく、その機能は、在庫情報を記憶したサーバや発注元情報を記憶したサーバのいずれか一方のサーバ内で実行させればよい。
【0019】
本発明では、特定在庫保管箇所が単一である場合、例えば、図2において保管箇所Ckが唯一の特定在庫保管場所とした場合、配送手段Bからこの保管箇所Ckを経由し発注元Aにいたる経路のうち最も所要時間の短い経路を最短経路として検索する経路検索手段105を有する。
【0020】
経路検索手段105としては、従来のカーナビゲーションシステムに搭載された最短経路検索手段を用いることができ、GPS等により特定される配送手段Bの位置情報と、保管箇所Ckと発注元の位置情報によって、経路検索に必要な出発地、経由地および到着地の3点の位置情報を得ることができる。また、カーナビゲーションシステムと同様、VICSより渋滞・交通規制等の情報を取得し、それを加味した上で最も所要時間の短い経路を最短経路として検索してもよい。この経路検索手段105は各道路の距離・所要時間情報を有し、経路検索プログラムを実行する経路検索サーバで構成することができる。
【0021】
また、検索された最短経路上に有料道路が含まれる場合、その通行料金が時間短縮に見合った料金かを加味し、この通行料金を所要時間の一部として評価し、実際の所要時間に加算してもよい。
【0022】
その後、発送計画表示手段106によって、特定在庫保管箇所の位置情報、発注品番および発注元位置情報を含む発注者情報、および配送手段から特定在庫保管箇所を経由して発注元に到達する最短経路情報で構成される配送計画情報を表示する。表示方法としてはLCD等のディスプレイ表示が一般的であるが、これに音声表示を併用することもできる。
【0023】
そして、トラック等の配送手段Bの運転者は発送計画表示手段106で表示された配送計画情報に従い、所定の経路を通って発注元Aに物品を配送すればよい。
【0024】
なお、本発明の構成は互いにネットワーク接続されたコンピュータやサーバ上でその機能を実現することができる。但し、配送手段Bは任意の場所に位置するため、発送計画表示手段106は常に運転者がその表示を確認できる配送手段B内に搭載すべきである。
【0025】
なお、その他の受注サーバ、在庫情報記憶サーバや経路検索サーバはネットワーク接続されていればその機能を発揮できるため、ある特定の場所に固定する必要はない。
【0026】
次に、本発明では、特定在庫保管箇所が複数である場合に、経路検索手段105により、配送手段Bから特定在庫保管箇所を経由し発注元にいたる経路のうち最も所要時間の短い経路を最短経路として各特定在庫保管箇所毎に経路検索する。
【0027】
これを図3で説明する。保管箇所C1、C2、C4、C5、Ck、Cnの中で、黒丸で表示した保管箇所C1、C3、C5、Ckが発注元で発注された物品を在庫した特定在庫保管場所とする。本発明では、経路検索手段105を用い、各保管場所毎に、配送手段Bから保管場所を経由し、発注元Aに至る経路のうち最も所要時間の短い経路を最短経路として検索する。
【0028】
例えば、Ckを経由する最短経路での所要時間をTk、C1を経由する最短経路での所要時間をT1、C3を経由する最短経路での所要時間をT3、C5を経由する最短経路での所要時間をT5とし、例えば、Tk<T3<T5<T1であったとすれば、最も短い所要時間を最短所要時間Tkとし、所要時間がこの最短所要時間Tkから所定時間t(t>0)内となる最短経路を求める。この所定時間tは物品を配送するにあたり、発注元が許容しうる程度の時間を設定する。
【0029】
例えば、Tk<(Tk+t)<T3<T5<T1であり、所要時間がこの最短所要時間Tkから所定時間t内にあるものがTk単一である場合、配送計画表示手段106にCkを経由した場合の最短経路情報と、発注品番情報および発注元の位置情報を含む配送計画が表示される。
【0030】
また、Tk<T3<(Tk+t)<T5<T1であり、所要時間がこの最短所要時間Tkから所定時間t内にあるものがTkとT3の複数である場合、保管箇所Ckと保管箇所C3での発注された物品在庫がより大である一方を通る最短経路を特定最短経路として、この情報を含む配送計画を配送計画表示手段106に表示する。なお、相互の部品在庫が同一である場合、最も所要時間の短い、Ckを経由する経路を特定最短経路として、その情報を含む配送計画を配送計画表示手段106に表示する。以下、Tk〜(Tk+t)内に、T5あるいはT1が入る場合も同様、それぞれの保管箇所での在庫数を比較し、最大在庫数を有する保管箇所Cを経由する最短経路を特定最短経路として選択すればよい。
【0031】
このような、経路選択は、在庫情報記憶手段103と経路検索手段105でそれぞれ得られる在庫情報と経路とから経路選択手段107を用いて行われる。経路選択手段107は具体的には、プログラムされたコンピュータによって構成される。なお、このプログラムを在庫情報記憶サーバや経路検索サーバとして機能するコンピュータにインストールされたものであっても勿論差し支えない。
【0032】
上記のような、本発明の配送システムによれば、マルチデポに対応し、各保管箇所の在庫が0となることが避けられるため、マルチデポの利点を損なうことなく、常に配送の所要時間を短縮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、様々な物品の配送に適用することができる。特に、バッテリをはじめとする自動車用の補修部品、各種機器の補修部品といった、配送時間の短縮化が要求され、かつ多品種在庫の必要上、一品種毎の在庫数が制限される物品の配送に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の配送システムを示す図
【図2】本発明の配送システムによる配送経路を示す図
【図3】本発明の配送システムをよる他の配送経路を示す図
【符号の説明】
【0035】
A 発注元
B 配送手段
C1、C2、C4、C5、Ck、Cn 保管箇所
101 配送システム
102 発注情報記憶手段
103 在庫情報記憶手段
104 特定在庫保管箇所抽出手段
105 経路検索手段
106 発送計画表示手段
107 経路選択手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の場所に位置する車両等の配送手段を互いに異なる場所に複数設定された物品の保管箇所に移動させ、前記保管箇所から特定の物品を搬出し、前記配送手段により、前記物品を任意の場所に位置する発注元に配送する物品配送システムにおいて、
任意の場所に位置する発注者から発せられた発注品番情報と、発注元の位置情報を記憶する発注情報記憶取得手段と、
前記複数の保管箇所における品番毎の在庫情報を記憶した在庫情報記憶手段を有し、
前記在庫情報と前記発注品番情報とを照合し、
前記発注品番を有する物品を在庫する保管箇所を特定在庫保管箇所として抽出する特定在庫保管箇所抽出手段を有し、
前記特定在庫保管箇所が単一である場合に、
前記配送手段から前記特定在庫保管箇所を経由し前記発注元にいたる経路のうち最も所要時間の短い経路を最短経路として検索する経路検索手段を有し、
前記特定在庫保管箇所の位置情報と、前記最短経路と、前記発注品番情報および前記発注元の位置情報で構成される配送計画情報を表示する配送計画表示手段を有し、
前記特定在庫保管箇所が複数である場合に、
前記経路検索手段により、前記配送手段から前記特定在庫保管箇所を経由し前記発注元にいたる経路のうち最も所要時間の短い経路を最短経路として前記特定在庫保管箇所毎に経路検索し、
複数の最短経路の所要時間で最も短い所要時間を最短所要時間とし、所要時間がこの最短所要時間から所定時間内となる最短経路が2以上である場合に、前記発注品番を有する物品在庫数がより大である特定在庫保管箇所を経由する経路を特定最短経路として選択する経路選択手段を有し、
前記経路選択手段により選択された、前記特定在庫保管箇所の位置情報と、前記特定最短経路と、前記発注品番情報および前記発注元の位置情報で構成される配送計画情報を前記配送計画表示手段に表示することを特徴とする物品配送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−84319(P2007−84319A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277745(P2005−277745)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】