説明

現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】ベタ濃度の安定性を改善し、高品位な画像を供給することが可能な現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像装置4において、現像剤供給部材20は、現像剤担持体17とニップ部Nを持って接触して回転し、ニップ部外の回転方向下流側近傍で、現像剤供給部材20に近接若しくは接触して現像剤返し部材50を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いて記録材上に画像を形成する電子写真画像形成装置に関し、特に電子写真画像形成装置に適用される現像装置及びプロセスカートリッジに関するものである。
【0002】
ここで、電子写真画像形成装置(以下、単に「画像形成装置」ともいう。)とは、電子写真画像形成方式を用いて記録材(記録媒体)に画像を形成するものである。画像形成装置の例としては、複写機、プリンタ(レーザービームプリンタ、LEDプリンタ等)、ファクシミリ装置、ワードプロセッサ、及び、これらの複合機(マルチファンクションプリンタ)などが含まれる。
【0003】
又、現像装置とは、電子写真感光体などの像担持体上の静電像を、現像剤を用いて可視像化するための装置である。
【0004】
又、プロセスカートリッジとは、電子写真感光体と、電子写真感光体に作用するプロセス手段としての帯電手段、現像手段又はクリーニング手段とを一体的にカートリッジ化し、画像形成装置本体に対して着脱可能としたものである。或いは、プロセスカートリッジとは、電子写真感光体と、電子写真感光体に作用するプロセス手段としての帯電手段、現像手段及びクリーニング手段のうち少なくとも1つとを一体的にカートリッジ化し、画像形成装置本体に対して着脱可能としたものである。或いは、プロセスカートリッジとは、電子写真感光体と、少なくとも現像手段とを一体的にカートリッジ化し、画像形成装置本体に対して着脱可能としたものである。
【背景技術】
【0005】
電子写真画像形成方式(電子写真プロセス)を用いたプリンタ等の画像形成装置では、像担持体としての電子写真感光体(以下、「感光体」という。)を一様に帯電させ、帯電した感光体を選択的に露光することによって、感光体上に静電像を形成する。感光体上に形成された静電像は、現像剤のトナーでトナー像として顕像化される。そして、感光体上に形成されたトナー像を、記録用紙、プラスチックシート等の記録材に転写し、更に記録材上に転写されたトナー像に熱や圧力を加えることでトナー像を記録材に定着させることで画像記録を行う。
【0006】
このような画像形成装置は、一般に、現像剤の補給や各種のプロセス手段のメンテナンスを必要とする。この現像剤の補給作業や各種のプロセス手段のメンテナンスを容易にするために、感光体、帯電手段、現像手段、クリーニング手段等を枠体内にまとめてカートリッジ化し、画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジとすることが実用化されている。プロセスカートリッジ方式によれば、ユーザビリティーに優れた画像形成装置を提供することができる。
【0007】
又、近年、複数色の現像剤を用いてカラー画像を形成するカラー画像形成装置が普及してきている。カラー画像形成装置としては、複数色の現像剤を用いた画像形成動作のそれぞれに対応する感光体を、トナー像が転写される被転写体の表面移動方向に沿って一列に配置した、所謂、インライン方式の画像形成装置が知られている。インライン方式のカラー画像形成装置には、複数の感光体が鉛直方向(重力方向)と交差する方向(例えば水平方向)に一列に配置されたものがある。インライン方式は、画像形成速度の高速化やマルチファンクションプリンタへの展開などの要望に対応し易いなどの点で好ましい画像形成方式である。
【0008】
又、複数の感光体を鉛直方向と交差する方向に一列に配置したインライン方式の画像形成装置として、複数の感光体を、被転写体としての中間転写体、又は、被転写体としての記録材を搬送する記録材担持体の下方に配置したものがある(特許文献1参照)。
【0009】
感光体を中間転写体や記録材担持体の下方に配置する場合、画像形成装置本体内において中間転写体や記録材担持体を間に挟む態様で、例えば定着装置と現像装置(或いは、露光装置)とを離れた位置に配置することができる。そのため、現像装置(或いは、露光装置)が定着装置の熱の影響を受け難いなどの利点がある。
【0010】
一方、上述のように感光体を中間転写体又は記録材担持体の下方に配置するような場合には、現像装置において、重力に反して現像剤担持体や現像剤供給部材へ現像剤を供給する必要が生じることがある。
【0011】
現像剤の現像剤供給部材への供給においては、現像剤供給部材の回転方向下流側で現像剤担持体と現像剤供給部材とのニップ部直後の場所に、トナーを搬送するのが最も効率が良い。それは、外周部に複数のセルを有する弾性層が設けられた現像剤供給部材において、ニップ部直後はニップ部内から出てくる弾性部が圧力から開放され、それに伴いセルが開く作用がある。このとき吸気が行われ、現像剤の吸い込みが行われる。従って、現像剤を現像剤供給部材に効率的に保持させるには、この吸い込み部にトナーを直接送り込むのが好ましい。
【0012】
しかしながら、重力に反して現像剤を供給する現像装置においては、簡易な構成で吸い込み部までトナーを多量に送り込むことは困難である。また、吸い込み部付近にトナーを送り込んだとしても、一部は吸い込まれるものの、ほとんどのトナーは現像剤供給部材の回転に伴ってトナー収容室等に戻されてしまう。
【0013】
そこで、特許文献1においては、現像剤供給部材の下側部分で現像剤を供給する技術が提案されている。特許文献1では、本願添付の図9に示すように、現像ローラ(現像剤担持体)33と供給ローラ(現像剤供給部材)31の当接部において、現像剤供給部材31は下方から上方に回転する。そして、現像剤供給部材31の下方にトナー受け部材30を設け、トナー受け部材30に受けシート32の一端を取り付けるとともに、この受けシート32を現像剤供給部材31の下方に適当な線圧で接触させている。
【0014】
このように、特許文献1には、現像供給部材31の下側部分に受けシート32を接触させる方法が開示されている。それによると、この受けシート32によって、現像剤供給部材31に付着した現像剤が重力によって落下するのを防ぎ、現像剤担持体33に供給できる現像剤が減少しないようにして、ベタ濃度の低下を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2003−173083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上述したような現像剤の供給方法では、低印字耐久を行った場合、現像される現像剤量が少ないため、現像剤供給部材31と受けシート32の間に、循環しない現像剤が多量に存在してしまう場合がある。
【0017】
つまり、現像剤供給部材31の下方にトナーが溜まるものの、低印字耐久では溜まった現像剤の消費が進まない。そのため、現像剤供給部材31の回転に伴ってその下方に現像剤が次々と供給され、現像剤が凝集してパッキングしてしまい、現像剤供給部材31へのトナー供給ムラによる濃度ムラ等の画像品質の悪化を引き起こしてしまう場合がある。
【0018】
本発明は、斯かる問題点に鑑みてなされたものであり、ベタ濃度の安定性を改善し、高品位な画像を供給することが可能な現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的は本発明に係る現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、一態様によれば、
現像剤を担持するための現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給部材と、
前記現像剤供給部材よりも下方に配置され、前記現像剤を収納する現像剤収納室と、
前記現像剤収納室に設けられ、前記現像剤収納室から前記現像剤供給部材へと現像剤を供給する搬送部材と、
を有する現像装置において、
前記現像剤供給部材は、前記現像剤担持体とニップ部を持って接触して回転し、前記ニップ部の外で且つ前記回転方向下流側近傍にて、前記現像剤供給部材に近接若しくは接触して現像剤返し部材を有することを特徴とする現像装置が提供される。
【0020】
本発明の他の態様によれば、少なくとも、像担持体と、前記像担持体に形成された静電潜像に現像剤を供給して現像を行う上記構成の現像装置とが一体化され、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成したことを特徴とするプロセスカートリッジが提供される。
【0021】
本発明の他の態様によれば、像担持体と、前記像担持体に形成された静電潜像に現像剤を供給して現像を行う上記構成の現像装置と、を備えたことを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0022】
本発明の他の態様によれば、上記構成のプロセスカートリッジが着脱可能とされたことを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、現像剤供給部材への現像剤の供給を確保し、ベタ濃度の安定性を改善し、高品位な画像を供給することが可能な現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略構成断面図である。
【図2】本発明に係る現像装置及びプロセスカートリッジの一実施例の概略構成図である。
【図3】一実施例のトナー返し部材の作用を説明する断面拡大図である。
【図4】比較例1におけるプロセスカートリッジの概略構成図である。
【図5】比較例2におけるプロセスカートリッジの概略構成図である。
【図6】本発明に係る現像装置及びプロセスカートリッジの他の実施例の概略構成図である。
【図7】他の実施例のトナー返し部材の平面図である。
【図8】他の実施例のトナー返し部材の作用を説明する断面拡大図である。
【図9】従来の現像装置及びプロセスカートリッジの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0026】
実施例1
本発明の第1の実施例について図1〜図4により説明する。
【0027】
[画像形成装置]
先ず、本発明に係る電子写真画像形成装置(画像形成装置)の全体構成について説明する。
【0028】
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、インライン方式、中間転写方式を採用したフルカラーレーザープリンタである。画像形成装置100は、画像情報に従って、記録材(例えば、記録用紙、プラスチックシート、布など)にフルカラー画像を形成することができる。画像情報は、画像形成装置本体100Aに接続された画像読み取り装置、或いは、画像形成装置本体100Aに通信可能に接続されたパーンナルコンピュータ等のホスト機器から、画像形成装置本体100Aに入力される。
【0029】
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKを有する。本実施例では、第1〜第4の画像形成部SY、SM、SC、SKは、鉛直方向と交差する方向に一列に配置されている。
【0030】
尚、本実施例では、第1〜第4の画像形成部SY、SM、SC、SKの構成及び動作は、形成する画像の色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために符号に与えた添え字Y、M、C、Kは省略して、総括的に説明する。
【0031】
即ち、本実施例では、画像形成装置100は、複数の像担持体として、鉛直方向と交差する方向に並設された4個のドラム型の電子写真感光体、即ち、感光体ドラム1を有する。感光体ドラム1は、図示矢印A方向(時計方向)に図示しない駆動手段(駆動源)により回転駆動される。感光体ドラム1の周囲には、感光体ドラム1の表面を均―に帯電する帯電手段としての帯電ローラ2、画像情報に基づきレーザーを照射して感光体ドラム1上に静電像(静電潜像)を形成する露光手段としてのスキャナユニット(露光装置)3が配置されている。又、感光体ドラム1の周囲には、静電像をトナー像として現像する現像手段としての現像ユニット(現像装置)4、転写後の感光体ドラム1の表面に残ったトナー(転写残トナー)を除去するクリーニング手段としてのクリーニング部材6が配置されている。更に、4個の感光体ドラム1に対向して、感光体ドラム1上のトナー像を記録材12に転写するための中間転写体としての中間転写ベルト5が配置されている。
【0032】
尚、本実施例では、現像ユニット4は、現像剤として非磁性一成分現像剤のトナーを用いる。又、本実施例では、現像ユニット4は、現像剤担持体としての現像ローラ(後述)を感光体ドラム1に対して接触させて反転現像を行うものである。即ち、本実施例では、現像ユニット4は、感光体ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーを、感光体ドラム1上の露光により電荷が減衰した部分(画像部、露光部)に付着させることで静電像を現像する。
【0033】
本実施例では、感光体ドラム1と、感光体ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像ユニット4及びクリーニング部材6とは、一体化され、即ち、一体的にカートリッジ化されて、プロセスカートリッジ7を形成している。プロセスカートリッジ7は、画像形成装置本体100Aに設けられた装着ガイド、位置決め部材などの装着手段を介して、画像形成装置100に着脱可能となっている。本実施例では、各色用のプロセスカートリッジ7は、全て同一形状を有しており、各色用のプロセスカートリッジ7内には、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブランク(K)の各色のトナーが収容されている。
【0034】
中間転写体としての無端状のベルトで形成された中間転写ベルト5は、全ての感光体ドラム1に当接し、図示矢印B方向(反時計方向)に循環移動(回転)する。中間転写ベルト5は、複数の支持部材として、駆動ローラ51、二次転写対向ローラ52、従動ローラ53に掛け渡されている。
【0035】
中間転写ベルト5の内周面側には、各感光体ドラム1に対向するように、一次転写手段としての、4個の一次転写ローラ8が並設されている。一次転写ローラ8は、中間転写ベルト5を感光体ドラム1に向けて押圧し、中間転写ベルト5と感光体ドラム1とが当接する一次転写部N1を形成する。そして、一次転写ローラ8に、図示しない一次転写バイアス印加手段としての一次転写バイアス電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加される。これによって、感光体ドラム1上のトナー像が中間転写ベルト5上に転写(一次転写)される。
【0036】
又、中間転写ベルト5の外周面側において二次転写対向ローラ52に対向する位置には、二次転写手段としての二次転写ローラ9が配置されている。二次転写ローラ9は、中間転写ベルト5を介して二次転写対向ローラ52に圧接し、中間転写ベルト5と二次転写ローラ9とが当接する二次転写部N2を形成する。そして、二次転写ローラ9に、図示しない二次転写バイアス印加手段としての二次転写バイアス電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加される。これによって、中間転写ベルト5上のトナー像が記録材12に転写(二次転写)される。
【0037】
更に説明すれば、画像形成時には、先ず、感光体ドラム1の表面が帯電ローラ2によって一様に帯電される。次いで、スキャナユニット3から発された画像情報に応じたレーザー光によって、帯電した感光体ドラム1の表面が走査露光され、感光体ドラム1上に画像情報に従った静電像が形成される。次いで、感光体ドラム1上に形成された静電像は、現像ユニット4によってトナー像として現像される。感光体ドラム1上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ8の作用によって中間転写ベルト5上に転写(一次転写)される。
【0038】
例えば、フルカラー画像の形成時には、上述のプロセスが、第1〜第4の画像形成部SY、SM、SC、SKにおいて順次に行われ、中間転写ベルト5上に各色のトナー像が次に重ね合わせて一次転写される。
【0039】
その後、中間転写ベルト5の移動と同期が取られて記録材12が二次転写部N2へと搬送される。中間転写ベルト5上の4色トナー像は、記録材12を介して中間転写ベルト5に当接している二次転写ローラ9の作用によって、一括して記録材12上に二次転写される。
【0040】
トナー像が転写された記録材12は、定着手段としての定着装置10に搬送される。定着装置10において記録材12に熱及び圧力を加えられることで、記録材12にトナー像が定着される。
【0041】
又、一次転写工程後に感光体ドラム1上に残留した一次転写残トナーは、クリーニング部材6によって除去、回収される。又、二次転写工程後に中間転写ベルト5上に残留した二次転写残トナーは、中間転写ベルトクリーニング装置11によって清掃される。
【0042】
尚、画像形成装置100は、所望の一つの画像形成部のみを用いて、又は、幾つか(全てではない)の画像形成部のみを用いて、単色又はマルチカラーの画像を形成することもできるようになっている。
【0043】
[プロセスカートリッジ]
次に、本実施例の画像形成装置100に装着されるプロセスカートリッジ7の全体構成について説明する。
【0044】
図2は、感光体ドラム1の長手方向(回転軸線方向)に沿って見た本実施例のプロセスカートリッジ7の概略断面(主断面)図である。
【0045】
尚、本実施例では、収容している現像剤の種類(色)を除いて、各色用のプロセスカートリッジ7の構成及び動作は実質的に同一である。
【0046】
プロセスカートリッジ7は、感光体ドラム1等を備えた感光体ユニット13と、現像ローラ17等を備えた現像ユニット4とを一体化して構成される。
【0047】
感光体ユニット13は、感光体ユニット13内の各種要素を支持する枠体としてのクリーニング枠体14を有する。クリーニング枠体14には、感光体ドラム1が図示しない軸受を介して回転可能に取り付けられている。感光体ドラム1は、図示しない駆動手段(駆動源)としての駆動モータの駆動力が感光体ユニット13に伝達されることで、画像形成動作に応じて図示矢印A方向(時計方向)に回転駆動される。本実施例にて、画像形成プロセスの中心となる感光体ドラム1は、アルミニウム製シリンダの外周面に機能性膜である下引き層、キャリア発生層、キャリア移送層を順にコーティングした有機感光体ドラム1を用いている。
【0048】
又、感光体ユニット13には、感光体ドラム1の周面上に接触するように、クリーニング部材6、帯電ローラ2が配置されている。クリーニング部材6によって感光体ドラム1の表面から除去された転写残トナーは、クリーニング枠体14内に落下、収容される。
【0049】
帯電手段である帯電ローラ2は、導電性ゴムのローラ部を感光体ドラム1に加圧接触することで従動回転する。
【0050】
ここで、帯電ローラ2の芯金には、帯電工程として、感光ドラム1に対して所定の直流電圧が印加されており、これにより感光ドラム1の表面には、一様な暗部電位(Vd)が形成される。前述のスキャナユニット3からのレーザー光によって画像データに対応して発光されるレーザー光のスポットパターンは、感光ドラム1を露光し、露光された部位は、キャリア発生層からのキャリアにより表面の電荷が消失し、電位が低下する。この結果、露光部位は所定の明部電位(Vl)、未露光部位は所定の暗部電位(Vd)の静電潜像が、感光ドラム1上に形成される。
【0051】
一方、現像ユニット4は、現像剤(トナー)80を担持するための現像剤担持体としての現像ローラ17と、現像ローラ17にトナーを供給する現像剤供給部材としてのトナー供給ローラ20と、を有している。更に、現像ユニット4は、トナー供給ローラ20よりも重力方向下方に配置され、トナー80を収納する現像剤収納室、即ち、トナー収容室18を備えている。
【0052】
また、詳しくは後述するが、トナー供給ローラ20は、現像ローラ17とニップ部Nを持って接触して回転している。更に、本実施例の現像ユニット4では、本発明の特徴部を構成する現像剤返し部材、即ち、トナー返し部材50がニップ部Nの外で且つトナー供給ローラ20の回転方向下流側近傍にて、トナー供給ローラ20に近接若しくは接触して配置されている。
【0053】
トナー収容室18内には、攪拌搬送部材22が設けられている。攪拌搬送部材22は、トナー収容室18内に収納されたトナーを攪拌すると共に、トナー供給ローラ20の上部に向けて図中矢印G方向にトナーを搬送するためのものでもある。
【0054】
現像ブレード21が現像ローラ17にカウンターで当接しており、トナー供給ローラ20によって供給されたトナーのコート量規制及び電荷付与を行っている。現像ブレード21は薄い板状部材からなり、薄板のバネ弾性を利用して当接圧力を形成し、その表面がトナー及び現像ローラ17に接触当接される。トナーは、現像ブレード21と現像ローラ17との摺擦により摩擦帯電されて電荷を付与されると同時に層厚規制される。また、本実施例においては、現像ブレード21に不図示のブレードバイアス電源から所定電圧を印加し、トナーコートの安定化を図っている。
【0055】
現像ローラ17と感光体ドラム1とは、対向部(接触部)において互いの表面が同方向(本実施例では下から上に向かう方向)に移動するようにそれぞれ回転する。
【0056】
尚、本実施例では、現像ローラ17は、感光体ドラム1に接触して配置されているが、現像ローラ17は、感光体ドラム1に対して所定間隔を開けて近接配置される構成であってもよい。
【0057】
本実施例においては、現像ローラ17に印加された所定のDCバイアスに対して、摩擦帯電によりマイナスに帯電したトナーが、感光体ドラム1に接触する現像部において、その電位差から、明部電位部にのみ転移して静電潜像を顕像化する。
【0058】
トナー供給ローラ20は、対向部において現像ローラ17の周面上に所定の接触部(ニップ部)Nを形成して配設されており、図示矢印E方向(反時計方向)に回転する。トナー供給ローラ20は、導電性芯金の外周に発泡体層を形成した弾性スポンジローラである。トナー供給ローラ20と現像ローラ17は所定の侵入量、即ち、図3にて、トナー供給ローラ20が現像ローラ17により凹状とされるその凹み量△Eを持って接触している。接触部Nにおいて互いに逆方向に移動するよう回転しており、この動作により、トナー供給ローラ20による現像ローラ17へのトナー供給及び現像残として残った現像ローラ17上のトナーの剥ぎ取りを行っている。
【0059】
トナー供給ローラ20によるトナーの搬送において、トナーをスポンジセル内に多く含ませて行うことが重要であり、そのためには、前述したように、トナー供給ローラ20のトナー吸い込み部にトナーを直接供給するのが最も効率がよい。
【0060】
尚、本実施例においては、現像ローラ17、トナー供給ローラ20は、共に外径20mmであり、トナー供給ローラ20の現像ローラ17への侵入量、即ち、トナー供給ローラ20が現像ローラ17により凹状とされるその凹み量△Eを1.5mmに設定した。
【0061】
以下、本発明の特徴であるトナー返し部材について図3を参照して説明する。
【0062】
本実施例にて、図3は、トナー供給ローラ20のトナー吸い込み部近傍の拡大概略断面図であり、攪拌搬送部材22よりトナー供給ローラ20に搬送されたトナーの動きを示している。
【0063】
攪拌搬送部材22によるトナーの搬送は、トナー供給ローラ20のトナー吸い込み部Mに向けて行われるのが最も効率がよい。そこで、本実施例は、トナー返し部材50を設置することにより、トナー吸い込み部付近に搬送されたトナーを効率よくトナー供給ローラ20内に取り込み、トナー供給ローラ20による現像ローラ17へのトナー搬送量を増やすものである。
【0064】
本実施例の特徴であるトナー返し部材50の特徴について述べる。
【0065】
攪拌搬送部材22によって図中矢印Gの軌道をもってトナー吸い込み部近傍に搬送されたトナーは、一部、吸い込み部Mに取り込まれ、多くは図中矢印F1方向に搬送される。トナー返し部材50の作用は、トナー吸い込み部M付近でトナー供給ローラ20に取り込まれずに図中矢印F1方向に流されたトナーを跳ね返して、再度トナー吸い込み部M付近にトナーを持っていくトナー循環F(F1、F2、F3を合わせた循環)を作り出すことである。この作用により、トナー吸い込み部MにトナーだまりJを形成することができ、一度攪拌搬送部材22により搬送されたトナーをトナー供給ローラ20のトナー吸い込み部Mに効率よく取り込むことが可能になるのである。
【0066】
トナー返し部材50の配置としては、ニップ部Nの外で且つトナー供給ローラ20の回転方向下流側近傍にて、トナー供給ローラ20に近接若しくは接触して配設される。本実施例においては、トナー供給ローラ20に非接触で且つ極近傍に配設されている。これは、トナー返し部材50がトナー供給ローラ20に所定の圧を持って侵入した場合、トナー供給ローラ20とトナー返し部材50とのニップ部Nの手前でトナー供給ローラ20に含まれたトナーを吐き出してしまうためである。また、トナー返し部材50がトナー供給ローラ20から離れすぎてしまうと、矢印F1方向に流れたトナーを充分ブロックできず、跳ね返す量が少なくなってしまうためである。トナー返し部材50とトナー供給ローラ20との距離は、2mm以下(0mm以上)が望ましく1mm以下(0mm以上)がより好ましい。本実施例においては0.5mmに設定した。また、トナー返し部材50のトナー返し面Hは、トナー供給ローラ20上のトナー吸い込み部Mと、トナー供給ローラ20上との高低差が最も大きくなるK点と、吸い込み部Mとの間にあることが望ましい。K点以内であれば、トナーを吸い込み部近傍に送り込み易くなり、トナーだまりJが形成され易い。
【0067】
以上述べたように、本発明においては、トナー返し部材50を適当な位置に配設することによりトナー供給ローラ20へのトナー供給を効率よく行うことができる。そのため、ベタ濃度の安定性を改善し、高品位な画像を供給することが可能な現像装置、プロセスカートリッジ、画像形成装置を提供することができる。
【0068】
〔比較例1〕
本比較例1の概略断面図を図4に示した。図4に示すように、現像装置7Aはトナー返し部材50が配設されていない。それ以外の構成は、実施例1と同様である。
【0069】
〔比較例2〕
本比較例2は、比較例1と同様に、図5に示すように、現像装置7Aはトナー返し部材50が配設されていない。更に、本比較例2では、図9を参照して上記背景技術で説明したように、現像剤供給部材(トナー供給ローラ)20の下方にトナー受け部材30を設け、トナー受け部材30に受けシート32の一端を取り付けた。更に、この受けシート32をトナー供給ローラ20の下方に適当な線圧で接触させる構成とした。それ以外の構成は、実施例1と同様である。
【0070】
〔実験〕
本発明の上記実施例、及び、上記比較例1、2の構成について、以下の2つ実験を行った。
【0071】
(1)ベタ濃度追従性評価
トナーの供給性の比較として、高印字プリントを連続した際の濃度低下量を測定するベタ濃度追従性評価を実施した。
【0072】
評価条件は、画像形成装置を評価環境25.0℃、50%Rhにて1日放置して当該環境になじませた後、100枚印字後に行った。100枚の印字テストは、画像比率5%の横線の記録画像を連続的に通紙している。その後、ベタ黒画像を連続3枚出力し、3枚目のベタ黒画像の出力先端と後端の濃度差から下記に示す評価を、X−Rite製spectordensitometer 500を用いて行った。印字テスト及び評価画像は単色で出力した。
○:ベタ黒画像において、紙先端と紙後端での濃度差が0.2未満
△:ベタ黒画像において、紙先端と紙後端での濃度差が0.2〜0.3未満
×:ベタ黒画像において、紙先端と紙後端での濃度差が0.3以上
(2)トナーパッキングの有無
トナーパッキングの評価は、耐久の終了した画像形成装置を分解し、現像室内にトナーのパッキングがあるか否かを調査し、評価した。
○:トナーパッキングなし
△:トナー凝集が発生
×:トナーパッキングが発生
耐久の条件としては、32.5℃、80%Rh環境において、間欠的に5000枚印字した。間欠的な通紙とは、印字後に待機状態を経て、次の印刷を行うという意味である。
【0073】
また、トナー凝集とは、パッキングはしていないものの、現像室内に高密度でトナーが存在している状態を示している。
【0074】
(実験結果)
以下、各実施例の設定及びその評価結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
先ず、従来技術である比較例2に対する本発明の優位性について述べる。
【0077】
本発明において、トナー供給ローラ20上のトナー吸い込み部Mへトナーだまりを形成し効率的にトナーを供給する。これにより、トナー供給ローラ20は充分にトナーを保持することが可能になり、比較例2と同様にべた濃度の追従性を確保できる。また、比較例2の受けシート32を用いておらず、原理的にトナーがパッキングすることはなく、パッキング起因のトナー供給ムラは発生しない。
【0078】
次に、比較例1に対する本発明の優位性について述べる。
【0079】
比較例1においては、トナーを攪拌搬送部材22によりトナー吸い込み部Mへと搬送できるものの、トナー供給ローラ20の回転に伴って、まだトナー供給ローラ20に取り込まれていないトナーがトナー収容室18内に戻されてしまう。そのため、充分にトナー供給ローラ20内にトナーを含ませることが困難であり、現像ローラ17へのトナー供給不足を招いてしまう。
【0080】
また、トナーパッキングは、比較例2による受けシート32を用いていないため、こちらも原理的に発生しない。
【0081】
実施例2
次に、図6を参照して、本発明に係る現像装置の第二の実施例について説明する。図6に本実施例2の特徴を示す現像装置4の概略断面図を示す。
【0082】
本実施例にて、現像装置が適用される画像形成装置は、実施例1にて説明したと同様であるので、説明を省略する。また、本実施例の現像装置は、先に説明をした実施例1の現像装置と同様の構成とされ、同じ構成及び機能をなす部材には同じ参照番号を付し、詳しい説明は実施例1の説明を援用し、ここでの再度の説明は省略する。
【0083】
本実施例における現像装置の特徴は、トナー返し部材としてシート70をトナー供給ローラ20に軽圧で接触させて、トナー返し作用を行うものである。
【0084】
次に、本実施例2の特徴であるトナー返し部材70の作用について詳細に述べる。
【0085】
トナー返し部材70は、シートで構成されており、図6に示すように、トナー供給ローラ20のトナー吸い込み部Mを覆うように設けられている。トナー返し部材70は、片端が現像容器18の内壁に固定され、逆側はトナー供給ローラ20に対して順方向当接で、且つ、軽圧で当接している。軽圧とは、トナー供給ローラ20に含まれたトナーが当接部手前で噴出さない程度を示している。本実施例においては、シート70をPETで構成した。
【0086】
尚、軽圧で当接できれば材料は、PETである必要はなく、同じ作用を得られれば他の材料で構成しても問題ない。
【0087】
また、トナー返し部材70の天井部70aは、図7に示すように複数の丸穴70bが設けられており、攪拌搬送部材22からのトナー供給を大きく妨げないよう、トナーが通過できるようになっている。
【0088】
天井部70aを通過してきたトナーは、トナー吸い込み部M付近に落ちてくる。図8に示すようにそのトナーの一部は吸い込み部Mに取り込まれるものの、多くはF1方向に搬送される。そこで、トナー返し部材70に搬送されたトナーが衝突しトナー返し部材70の面に沿って上昇し(F2)、再び吸い込み部M付近へと返される(F3)。そして、トナーだまりJが形成され、実施例1と同様、吸い込み部にトナーを供給することが可能になる。
【0089】
実施例1と異なる作用としては、トナー返し部材70がトナー供給ローラ表面に接しているため、F1の循環で流されてきたトナーをより効率よく吸い込み部Mに返すことが可能になることである。
【0090】
以上述べたように、本実施例2によるトナー返し部材70を用いることで、攪拌搬送部材22から搬送されたトナーを効率よくトナー供給ローラに保持することが可能となる。従って、ベタ濃度の安定性を改善し、高品位な画像を供給することが可能な現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することができる。
【0091】
なお、本発明の実施例の構成について、実施例1に記載された内容と同様な実験を行った。結果は、上述の通りであり、実施例1と同等の効果が得られる。
【0092】
以上、本実施例1、2について説明をした。
【0093】
前述した実施例では、カラー画像形成が可能な画像形成装置を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、モノクロ画像形成が可能な画像形成装置であっても良い。斯かる画像形成装置における現像装置に本発明の原理を適用することにより同様の効果を得ることができる。
【0094】
また前述した実施例では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば複写機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置や、記録材担持体を使用し、該記録材担持体に担持された記録材に各色のトナー像を順次重ねて転写する画像形成装置であっても良い。斯かる画像形成装置における現像装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0095】
1 感光体ドラム(像担持体)
2 帯電ローラ(帯電手段)
3 スキャナユニット(露光手段、露光装置)
4 現像ユニット(現像手段、現像装置)
5 中間転写ベルト(中間転写体)
6 クリーニング部材
7 プロセスカートリッジ
13 感光体ユニット
14 クリーニング枠体
15 現像室
17 現像ローラ(現像剤担持体)
18 トナー収容室(現像剤収納室、現像容器)
20 トナー供給ローラ(現像剤供給部材)
21 現像ブレード
22 攪拌搬送部材
50、70 トナー返し部材(現像剤返し部材)
80 トナー(現像剤)
100 画像形成装置
100A 画像形成装置本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を担持するための現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給部材と、
前記現像剤供給部材よりも下方に配置され、前記現像剤を収納する現像剤収納室と、
前記現像剤収納室に設けられ、前記現像剤収納室から前記現像剤供給部材へと現像剤を供給する搬送部材と、
を有する現像装置において、
前記現像剤供給部材は、前記現像剤担持体とニップ部を持って接触して回転し、前記ニップ部の外で且つ前記回転方向下流側近傍にて、前記現像剤供給部材に近接若しくは接触して現像剤返し部材を有することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記現像剤供給部材は、複数のセルを有する発泡体層を有しており、前記発泡体層で現像剤を搬送していることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
少なくとも、像担持体と、前記像担持体に形成された静電潜像に現像剤を供給して現像を行う請求項1又は2に記載の現像装置とが一体化され、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成したことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項4】
像担持体と、前記像担持体に形成された静電潜像に現像剤を供給して現像を行う請求項1又は2に記載の現像装置と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3に記載のプロセスカートリッジが着脱可能とされたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−211052(P2010−211052A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58329(P2009−58329)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】