現像装置及びこれを用いた画像形成装置
【課題】下流現像剤担持体におけるトナーコートを長期間にわたって均一に安定させることができる現像装置及びこれを用いた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】現像剤担持体41Aと現像剤担持体41Bに近接する位置にトナー撹拌部材43Cを配置し、現像剤担持体41Bの反発磁極N2、N3の上流側である磁極N3の近傍までを現像容器4の壁49によって覆い、その上端が磁極N3の法線方向の磁束密度が最大となる位置以下であり、法線方向の磁束密度の半値となる位置以上とする。
【解決手段】現像剤担持体41Aと現像剤担持体41Bに近接する位置にトナー撹拌部材43Cを配置し、現像剤担持体41Bの反発磁極N2、N3の上流側である磁極N3の近傍までを現像容器4の壁49によって覆い、その上端が磁極N3の法線方向の磁束密度が最大となる位置以下であり、法線方向の磁束密度の半値となる位置以上とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体表面に形成された静電潜像を可視化する現像装置及びこれを適用した電子写真方式による複写機、レーザープリンタ、ファクシミリ及び印刷装置などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置では、像担持体上に一様帯電を行った後、アナログ露光または半導体レーザーないしはLEDなどの光源により画像露光し、上記像担持体上に静電潜像を形成する。
【0003】
その後、静電潜像を現像装置により現像剤像として可視化し、直接ないしは中間転写体を介して転写材にこの現像剤像を転写する。そして、転写材を分離し、定着装置を通して定着された画像を出力する。
【0004】
近年、このような電子写真方式の画像形成装置の高速化が進んでいるが、高速化に対する現像装置としては、2成分磁気ブラシを用いた現像装置の現像スリーブを複数にすることで現像機会の増加を狙ったものが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、小型化した複数の現像スリーブを有する現像装置が提案されている(特許文献2参照)。さらに、複数の2成分現像を用いた現像スリーブを有する現像装置が提案されている(特許文献3、4参照)。
【0006】
図10に、複数の現像スリーブを有する現像装置の概略構成図を示す。この現像装置において、上流現像スリーブ11は感光ドラム1の回転方向R1の上流側に回転可能に位置し、下流現像スリーブ12は感光ドラム1の回転方向R1の下流側に回転可能に配置されている。この場合、上流現像スリーブ11の回転方向R11及び下流現像スリーブ12の回転方向R12は同一である。なお、S1、S2、N1、N2は、上流及び下流現像スリーブ11、12の磁極を示す。
【0007】
キャリアを有する2成分現像剤の流れを図11に示す。即ち、2成分現像剤は2つの現像スリーブ11、12の近接部で上流から下流に受け渡され、感光ドラム1に面した現像スリーブ11、12の周上に搬送される。
【0008】
2成分現像剤は主にキャリアでトナーが帯電されるので、搬送するのみで良いが、主に現像スリーブが帯電に寄与する磁性1成分現像剤を用いた場合は、現像スリーブ上に安定な薄層コートにしてトナーの帯電を十分にする必要がある。このため、下流現像スリーブ12での現像剤の流れは図12の矢印のようになり、2成分現像剤を用いた場合とは明らかに異なる。
【0009】
図中、19は上流現像スリーブ11の表面に均一層厚に現像剤をコートするための磁性ブレードである。上流現像スリーブ11は下流現像スリーブ12の現像剤層厚規制部材を兼ね、省スペースで小型であるものの、キャリアを用いた2成分現像のように現像剤を均一にコートすることが困難である。
【0010】
特に、カートリッジ方式ではなく現像剤を随時補給していく補給系で複数の現像スリーブを用いた現像装置は高速機に向いているものの、高速機の現像装置としては耐久性、安定性が要求されるため、さらに現像剤を均一にコートすることが困難となる。
【0011】
磁性1成分現像剤を用い、上流現像スリーブ11が下流現像スリーブ12の現像剤層厚規制部材を兼ねる現像装置においては、領域Z付近(図10参照)のトナー量、トナー密度が下流現像スリーブ12上のトナーコート層のトナー量と帯電量に特に敏感である。
【0012】
また、2成分現像剤の場合と異なり、耐久時や朝一の電源投入時で領域Zの状態が変化したり、低温、低湿環境や高温、高湿環境で変動してコート不良や帯電不良を起こす。ひどい場合は領域Zでトナー塊を形成してスリーブが融着したり、コートが不均一でむらになることもある。
【0013】
そこで、下流現像スリーブ12のN2極において、法線方向磁力の最大位置を現像容器の壁で覆うことで、トナーの下流現像スリーブ12への搬送力を維持しつつ、領域Zへの過剰なトナーの圧迫を防ぐものが提案されている(特許文献5参照)。
【0014】
さらに、高速機においては、耐久中の現像スリーブの高速回転に伴う昇温、機械的なシェアによりトナー劣化を起こしやすい。結果として耐久における濃度低下、画質劣化を引き起こす。
【0015】
このため、現像スリーブの高速化に伴って、図13に示すような現像装置が提案されている。即ち、下流現像スリーブ12の感光ドラム1の表面に対向しない部分に反発極である磁極N2、N3を設け、現像容器18に、両磁極N2、N3の法線方向の最大位置をすべて壁20で覆うことで、トナー劣化の低減を図っている(特許文献6参照)。
【0016】
これは、反発極を形成することで、領域Zでの現像剤の圧縮を低減する効果があり、トナーの層厚規制部での機械的なシェアを減らすようにしている。
【0017】
このような上流現像スリーブ11が下流現像スリーブ12の現像剤層厚規制部材を兼ねる複数現像系において、上流現像スリーブ11で感光ドラム1上に形成されたトナー像は、下流現像スリーブ12でさらに現像される。このため、最終画像濃度は下流側の現像部で決まる。
【0018】
即ち、下流現像スリーブ12のトナーが劣化した場合は、結果として濃度薄となる。そして、領域Zで上流現像スリーブ11は下流現像スリーブ12とは逆方向に移動するため、トナーは特に機械的なシェアを受けやすい。
【0019】
したがって、上流及び下流現像スリーブ11、12が高速回転をする場合、トナーの劣化が顕著となり濃度薄となる。そこで、下流現像スリーブ12に反発極を形成することで、反発極間で下流現像スリーブ12上のトナーは全部ではないが、6割ほどは下流現像スリーブ12から自然に引き剥がされる。
【0020】
これにより、下流現像スリーブ12上に連れまわっていたトナーを減らすことができ、連れまわりがないために、領域Zでのトナー圧縮を低減でき、トナー劣化が抑制され、濃度が維持される。
【0021】
【特許文献1】特開平03−204084号公報
【特許文献2】特開平03−5579号公報
【特許文献3】特開平09−80919号公報
【特許文献4】特開平04−069690号公報
【特許文献5】特開2003−255709号公報
【特許文献6】特開2005−258200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、従来例では、反発極である磁極N2−N3間のゼロガウス近傍でトナーが引き剥がされるが、磁極N2、N3を壁20で覆うと、そこに引き剥がされたトナーが溜まってしまう。また、上流及び下流現像スリーブ11、12の高速回転による昇温に加え、壁20とのメカニカルなシェアによってトナー劣化を促進してしまう。
【0023】
このため、下流現像スリーブ12におけるトナーコートを長期間にわたって均一で安定させることができない恐れがある。
【0024】
本発明の技術的課題は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、下流現像剤担持体におけるトナーコートを長期間にわたって均一に安定させることができる現像装置及びこれを用いた画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前記目的を達成するため、本発明に係る代表的な現像装置の構成は、前記現像剤を収納する現像容器と、トナー像が形成される像担持体に近接して配設され、前記像担持体の回転方向の上流側及び下流側で同一方向に回転する上流側の現像剤担持体及び下流側の現像剤担持体と、前記上流側及び下流側の現像剤担持体の近傍に設けられ、前記現像剤を攪拌する攪拌手段とを備え、前記上流側の現像剤担持体は、前記下流側の現像剤担持体の現像剤層厚規制部材を兼ね、前記上流側及び下流側の現像剤担持体に、複数の磁極を備えた第1及び第2の磁性部材が配置され、前記第1の磁性部材は、前記下流側の現像剤担持体に面する第1の磁極を有し、前記第2の磁性部材は、前記像担持体に面する第2の磁極と、前記上流側の現像剤担持体に面する第3の磁極と、前記下流側の現像剤担持体の回転方向に沿って前記第2の磁極の下流側で、かつ前記第3の磁極の上流側に配設された同じ極性の第4の磁極及び第5の磁極を有する現像装置において、前記攪拌手段は、前記上流側及び下流側の現像剤担持体に近接する位置に配設され、前記第4及び第5の磁極のうち、上流側に位置する磁極の近傍までを前記現像容器の壁で覆い、その上端が前記第4及び第5の磁極のうち、上流側に位置する磁極の法線方向の磁束密度が最大となる位置以下であり、法線方向の磁束密度の半値となる位置以上であることを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る代表的な画像形成装置の構成は、前記現像装置と、前記像担持体を画像情報に応じて露光する露光手段と、前記トナー像を転写材に転写する転写手段と、前記トナー像が転写された前記転写材に前記トナー像を定着する定着装置と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、高速機においても下流現像剤担持体におけるトナーコートを長期間にわたって均一に安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るデジタルモノクロ画像形成装置の構成図である。図2は、図1の画像形成装置における現像装置の構成図である。なお、本実施の形態に記載されている構成要素の寸法、材質及び形状、その他の相対配置、数値等は、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0029】
[実施形態1]
図1において、画像形成装置100は、画像形成を行うもので、リーダー部200が接続されているか、一体化されている。リーダー部200は、外部情報を画像信号に変える装置である。外部の画像原稿を読み取る画像装置やパソコン等である。そして、画像装置に読み取られた原稿画像の輝度信号やパソコン等から転送された画像信号は画像形成装置100に送信される。
【0030】
画像形成装置100は、像担持体としての感光体ドラム1を備え、帯電工程、潜像形成工程、現像工程、転写工程及び定着工程を基本とする画像形成工程が実施される。
【0031】
帯電工程、潜像形成工程、現像工程において、感光体ドラム1上にはリーダー部200からの画像情報に基づいてトナー像が形成される。転写工程は感光体ドラム1から転写材Pにトナー像を転写する。定着工程は転写材Pにトナー像を定着させる。
【0032】
具体的には、画像形成装置100は、帯電手段としての帯電器2を有し、この帯電器2は帯電工程において、帯電バイアスを印加して感光体ドラム1の表面を所定の電位に一様に帯電する。また、画像形成装置100は、潜像形成工程において、リーダー部200からの画像情報に応じてレーザー光Lを照射するレーザー書き込みユニットの露光手段3を有する。
【0033】
帯電工程において、一様に所定電位に帯電された感光体ドラム1を潜像形成工程、即ち露光工程でレーザー光Lを照射することによって、照射部分の感光体ドラム1の表面電位が変化し静電潜像を形成する。
【0034】
画像形成装置100は、現像手段として磁性1成分トナーを内包した現像装置40を有し、この現像装置40には同一方向に回転する2つの現像剤担持体(現像スリーブ)41A、41Bが設けられている。そして、現像剤担持体41A、41Bによって感光体ドラム1上に形成された潜像部分に現像剤が転移され、感光体ドラム1にトナー像が形成される。
【0035】
このような現像剤担持体41A、41Bは感光体ドラム1に近接して配設されており、現像剤担持体41Aは感光体ドラム1の回転方向の上流側に位置し、現像剤担持体41Bは感光体ドラム1の回転方向の下流側に位置している。
【0036】
現像装置40によって感光体ドラム1上に形成されるトナー像は、効率の良い転写を行うためにポスト帯電器5によって帯電され、転写工程にて、転写手段である転写ローラ61によって顕在化されたトナー像を中間転写体である中間転写ベルト62に転写する。
【0037】
そして、中間転写ベルト62上に転写されたトナー像が、転写ローラ63によって所望の転写材Pに転写される。転写材P上に形成されたトナー像は、定着工程にて定着手段である定着装置7によって定着される。
【0038】
以上の画像形成工程において、感光体ドラム1上に残留したトナー等はクリーナ81によって清掃され、中間転写ベルト62上に残留したトナー等はクリーナ82によって清掃される。そして、前に形成されたトナー像を除去した後に次の画像形成が実施される。
【0039】
感光体ドラム1は直径108mmのa−Si感光体を用いている。アルミニウム等の導電性ドラム基体と、その外周面に形成した感光層(光導電層)で構成された正帯電極性の感光体(ポジ感光体)であり、矢印の方向に例えば800mm/secのプロセススピード(周速)で回転駆動されている。
【0040】
帯電器2は2本の放電ワイヤーとグリッド線から構成されるコロナ帯電器であって、不図示の電源により放電ワイヤーに所定の電圧が印加されると放電動作が行われ、感光体ドラム1の外周面が+200〜+600V程度の範囲で均一に帯電される。本実施の形態では、感光体ドラム1の表面電位(帯電電位)は+500Vとしている。
【0041】
画像情報は、リーダー部200に設置された画像処理部によって所定の画像処理が施され、リーダー部200の読み取り動作に同期して露光手段3に転送される。
【0042】
露光手段3から発光されるレーザー光Lによって、感光体ドラム1の表面電位は+50〜+500V程度の範囲に露光される。つまり、レーザー光Lによって、感光体ドラム1の帯電電位が+500Vから下げられる。負帯電性(ネガ)トナーを用いた場合は、正規現像方式で潜像が形成される。
【0043】
現像装置40に内包する現像剤は、負帯電性の磁性1成分トナーである。現像装置40の現像剤担持体41A、41Bは、マグネットを内包し、感光体ドラム1とそれぞれ一定の間隔に保たれている。そして、矢印の方向に回転しながら現像剤を拘束し、不図示の現像バイアスによって感光体ドラム1上に現像剤が移動し、所望の濃度の画像形成が行われる。
【0044】
ポスト帯電器5では、放電ワイヤーにバイアスが印加され、定電流制御により放電動作が行われ、感光体ドラム1方向に電流が流れる。これにより、トナー像の電荷が増加し、通常画像形成時には、感光体ドラム1上に形成されたトナー像の中間転写ベルト62への転写をアシストする。通常の画像形成時の帯電バイアスとしては、DC成分にAC成分(Vpp1〜5kV)を重畳させ、−100〜−200μA程度の定電流制御を行っている。
【0045】
中間転写ベルト62は、感光体ドラム1の転写部を含む領域に渡って平坦に保持された中間転写体であり、感光体ドラム1上のトナー像が転写される。
【0046】
中間転写ベルト62は、3つのローラ64A、64B、64Cにより循環移動可能となっており、感光体ドラム1の回転に同期し、通常画像形成時には、感光体ドラム1の回転速度(周速)と同一の速度で矢印方向に沿って循環移動する。
【0047】
感光体ドラム1上に形成されたトナー像を中間転写ベルト62上に転写する一次転写手段として、転写ローラ61が中間転写ベルト62の感光体ドラム1との対向面の裏側転写部に設けられている。
【0048】
この転写ローラ61は、中心の導電性支持体と、その外周に形成された中抵抗の弾性層とで構成される。本実施の形態における転写ローラ61は、抵抗が1×107Ω、直径16mmの導電性ゴムローラである。
【0049】
転写ローラ61の導電性支持体に不図示の電源より、トナー像と逆極性の所定の一次転写バイアス、本実施の形態ではプラス側のバイアスを印加して、中間転写ベルト62に感光体ドラム1上に形成されたトナー像の転写を行う。
【0050】
中間転写ベルト62に転写、担持されたトナー像を所望の転写材Pに転写する二次転写手段として、転写ローラ63が中間転写ベルト62の駆動ローラ64Bとの対向表側に設けられている。
【0051】
この転写ローラ63は、中心の導電性支持体と、その外周に形成された中抵抗の弾性層とで構成される。本実施の形態における転写ローラ63は、抵抗が1×108Ω、直径24mmの導電性ゴムローラである。
【0052】
この転写ローラ63の導電性支持体に不図示の電源よりトナー像と逆極性の所定の二次転写バイアス、本実施の形態では、プラス側のバイアスを印加して、中間転写ベルト62に形成されたトナー像の転写材Pへの転写を行う。
【0053】
トナー像が転写された転写材Pは、定着装置7に搬送される。そして、転写材P上のトナー像は、定着装置7の定着ローラ71と加圧ローラ72間の定着ニップ部において転写材Pを加熱、加圧することで熱定着される。その後、トナー像が定着された転写材Pは、外部に排出され、一連の画像形成が終了する。
【0054】
次に、現像装置40をより詳細に説明する。図2〜4において、現像装置40は現像剤を収納する現像容器4を有する。現像剤担持体41A、41Bは感光体ドラム1に近接し、感光体ドラム1の回転方向に沿って現像容器4の開口部に配置されている。
【0055】
現像剤担持体41A、41Bは互いに同一方向に回転され、感光体ドラム1の回転方向に対して上流側に位置する現像剤担持体41Aは、層厚規制ブレード42によってトナーのコート厚が規制される。
【0056】
現像容器4内には、現像容器4のトナーを撹拌して現像剤担持体41A、41B側に搬送する攪拌手段のトナー撹拌部材43A、43B、43C、43Dを有する。そして、現像容器4内のトナー量を検知するトナー量検知センサ44を備えている。
【0057】
トナー(磁性1成分トナー)は、ネガトナーで、重量平均粒径は5.0〜7.5μm程度である。樹脂は少なくともスチレンアクリル樹脂またはポリエステル樹脂のいずれか一方から成り、磁性体を60〜90重量部程度入れており、比透磁率が1.5〜2.0程度となっている。また、外添剤として、0.5〜1.5%(重量%)程度のSiO2を含有している。
【0058】
現像容器4の上部には、現像容器4内に補給するトナーを収納したトナー補給容器45が設けられている。現像時に現像容器4内のトナーの量が所定量より減少したことをトナー量検知センサ44で検知した場合には、トナー補給容器45内のトナーが現像容器4内に補給される。
【0059】
トナー補給は、トナー補給容器45の補給口に設けられたマグネットローラ46Aを制御装置300からの制御信号によって回転させることによって行われる。
【0060】
トナー補給は、マグネットローラ46Aの磁力によってトナー補給容器45内のトナーをマグネットローラ46A表面に引き付け、マグネットローラ46Aを回転させる。マグネットローラ46Aと対向配置したトナー規制板43Bとの間の所定のギャップ(隙間)で、マグネットローラ46A表面に担持されるトナーの量を規制する。
【0061】
そして、マグネットローラ46A表面に一定量担持されたトナーを、マグネットローラ46Aに当接されたトナー掻き取り板46Cによって掻き取り、現像容器4内へ落下させる。これによって、現像容器4内へトナーが補給され、トナー撹拌部材43A〜43Dによって新旧トナーが混合撹拌される。
【0062】
現像剤担持体41A、41Bは、それぞれ非磁性部材である直径32mmと直径25mmのAl表面にフェノール樹脂と結晶性グラファイトおよびカーボンをある重量比割合で混合して、150℃環境で硬化させた膜を用いる。
【0063】
膜の厚さは安定かつ均一な膜を形成するために、20μm程度とした。Bを樹脂の重量、Pを樹脂以外のものの重量(結晶性グラファイト+カーボン)とすると、この場合はP/B比は1/2とした。
【0064】
また、現像剤担持体41A、41Bの帯電特性をトナーに対して最適にするために4級アンモニウム塩を20部程度含有するフェノール樹脂を用いた。第4級アンモニウム塩化合物は、添加されるとフェノール樹脂中に均一に分散され、加熱硬化して被覆を形成する際にフェノール樹脂組成物自身が負帯電性を有する物質へと変化する。従って、このような材料を用いて形成された被覆層を有する現像剤担持体を用いれば、現像剤を若干低めに帯電させることが可能となる。
【0065】
現像剤担持体41A内には、複数の磁極(第1の磁極)を備えた固定マグネットローラ(第1の磁性部材)47Aが固定配置されている。また、現像剤担持体41B内にも、複数の磁極(第2の磁極、第3の磁極、第4の磁極、第5の磁極)を備えた固定マグネットローラ(第2の磁性部材)47Bが固定配置されている。
【0066】
即ち、現像剤担持体41A内の固定マグネットローラ47Aは、磁場パターンを有する磁極N1、N2、N3、N4、S1、S2、S3、S4が配置されている。また、現像剤担持体41B内の固定マグネットローラ47Bは、磁場パターンを有する磁極N1、N2、N3、S1、S2が配置されている。
【0067】
現像剤担持体41A、41Bは、感光体ドラム1の回転速度(プロセススピード)に対して50〜150%の速度で回転し、現像位置での現像剤担持体41A、41Bと感光体ドラム1間のギャップは150〜400μmである。固定マグネットローラ47Aの磁力によって現像剤担持体41A上に担持されるトナーは、層厚規制ブレード42でコート厚が規制される。
【0068】
一方、固定マグネットローラ47Bの磁力によって現像剤担持体41B上に担持されるトナーは、現像剤担持体41Aでコート厚が規制される。なお、現像剤担持体41Aと現像剤担持体41B間のギャップは200〜400μmである。
【0069】
現像剤担持体41A、41Bには、図示しない現像バイアス電源から直流バイアスと交流バイアス(Vpp1〜2kV、周波数1〜4kHz程度)を重畳した現像バイアスが印加される。これにより、トナーを感光体ドラム1側に飛翔させて静電潜像を非接触現像する。
【0070】
ここで、本実施形態における現像装置40の現像剤担持体41A、41Bとトナー撹拌部材43C及び現像容器壁49との関係について詳細に説明する。
【0071】
現像剤担持体41A上に担持されるトナーは、層厚規制ブレード42でコート厚が規制されるのに対し、現像剤担持体41B上に担持されるトナーは現像剤担持体41Aによってコート厚が規制される。
【0072】
よって、特許文献5、6のように現像剤担持体41Bのトナー層厚規制を現像剤担持体41Aが兼ねる場合には、領域Zのトナー挙動が現像剤担持体41Bのコート性に大きな影響を及ぼす。このため、現像剤担持体41Bに磁極N2(第4の磁極)、磁極N3(第5の磁極)という反発する磁極を設け、それらの最大磁力部を現像容器壁49で覆うことで領域Zへのトナー侵入量を制限するという思想が従来は存在していた(図5)。
【0073】
しかし、図5に示すような構成にはいくつかの問題があるため、高速化対応を考えた場合に現像剤担持体41Bのコート性を長期間にわたって維持できない。領域Zへのトナー侵入量を制限するために反発磁極N2、N3を現像容器壁49で覆うと、領域Yに現像剤が溜まってしまい、現像剤担持体41Bの高速回転による昇温に加え、現像容器壁49とのメカニカルなシェアによって剤劣化を促進してしまう。
【0074】
また、従来の撹拌部材の位置では領域Zに撹拌部材が入り込まないため、トナーが動かない領域(デットゾーン)が存在し、トナー凝集が起こりやすい状況を作っていた。
【0075】
そこで、撹拌部材43Cを現像剤担持体41A、41BとのギャップがGA=GBとなるよう最近接する位置に配置する。そして、現像容器壁49を反発極の上流側であるN3極近傍までしか設けないようにすることで剤循環を良くし、コート性を長期にわたって維持することを可能にした。
【0076】
本実施の形態では、撹拌部材43Cと現像剤担持体41A、41Bとの隙間を1〜10mm程度とし、現像剤担持体41Bと現像容器壁49の隙間を1〜5mm程度とした。
【0077】
まず、反発磁極に対する壁の位置および撹拌部材の位置についての検討を行った。本実験では、図6に示すようなマグネットパターンを有するマグネットローラを下流側の現像剤担持体41Bに用い、コート性、剤循環、耐久変動、環境変動について検討した。検討結果を図7に示す。
【0078】
なお、コート性とは、現像剤担持体41A、41Bの表面に所定のトナー層が形成されるかどうかである。トナー量は、現像剤担持体41A、41B表面の一定面積のトナー量を吸引することで判別できる。また、量だけでなくマグネットローラの磁力とトナーの比透磁率との関係から現像剤担持体上に形成される磁気的な穂立ちの高さや密度なども意味する。
【0079】
現像剤担持体41Bのコート性は、搬送されるトナーに対して、現像剤担持体41Aの磁力と現像剤担持体41Bの磁力、現像剤担持体41A、41Bのギャップによって規制される。つまり、トナーの搬送量と磁気規制力の関係によって決定される。
【0080】
そのため、トナーの搬送量が多いか、十分に磁気的にトナー量を規制できない場合、現像剤担持体の回転方向にトナー量ムラが発生してしまう。本実施形態では、現像剤担持体41Bのトナー量は約0.5〜1.0mg/cm2を目標値とした。
【0081】
次に「剤循環」について述べる。剤循環とは、現像剤担持体や容器壁に対するトナーへの圧、並びにトナー同士の圧を極力抑え、トナーの移動スピードを速くし、かつ時間に対して安定することである。
【0082】
つまり、トナーがある特定箇所で滞ると、パッキングが発生してトナーの劣化につながる。本実施形態では、領域X、Y、Zの3ポイントにおいてトナーの挙動を観察した。領域Xにおけるポイントは、磁極N3−S2極間でトナーが滞留していないかである。
【0083】
領域Yにおけるポイントは、反発磁極N2、N3で剥ぎ取られたトナーが滞留していないかである。領域Zにおけるポイントは、過剰なトナーが侵入してきていないか、現像剤担持体41Aによって現像剤担持体41B上からカットされたトナーなどが滞留していないかである。
【0084】
次に「耐久変動」について述べる。耐久変動で起こることは、トナー劣化による濃度の低下や、流動性の低下による凝集塊の発生などである。現像剤担持体の高速回転による昇温に加え、領域X、Y、Zなどでメカニカルなシェアを受けると外添剤がトナーに埋め込まれ、帯電能や流動性の低下を招く。
【0085】
これにより、トナーの搬送性も落ち、現像剤担持体41B上のトナー量、トナー帯電量の低下につながり、現像性が落ちて濃度低下してしまう。
【0086】
最後に「環境変動」について述べる。環境変動としては、高温高湿環境下でのブロッキングや低湿環境下での帯電不良、トナーコートムラに伴う画像ムラが挙げられる。
【0087】
領域Zへ過剰にトナーが侵入すると、トナーが詰まり、急激な圧力がトナー自身にかかることで、トナーが粉体としてではなく、固体状態として現像剤担持体41A、41B間を通過してしまうため、不均一でムラのあるコートとなる。
【0088】
そして、極端な場合には、現像剤担持体41A、41Bはその抵抗で回転しなくなってしまう。これをブロッキング現象と呼んでいる。また、低湿環境下ではトナーが帯電しやすいため、搬送されるトナーが循環しているトナーか滞留しているトナーかなどの違いで、帯電性や搬送性が異なって静電凝集やコートムラにつながりやすい。
【0089】
以上の観点で検討を行った結果、従来例である実験0では、初期のコート性は問題なかったものの、耐久によって現像スリーブ41B上のトナー量、トナー帯電量が低下してしまった。
【0090】
これは、反発磁極N2、N3を現像容器壁49で覆っているため、剥ぎ取られたトナーが領域Y部に溜まってしまい、現像剤担持体41A、41Bの高速回転により劣化が促進されてしまったためである。また、撹拌作用が領域Z部に及ばないため、デットゾーンとして高温高湿環境下で長期に使用した場合、ブロッキングが発生する可能性があることがわかった。
【0091】
実験1−1では、現像容器壁49の位置はそのままでトナー撹拌部材43Cの位置を現像剤担持体41A、41Bに最近接する位置に配置した。その結果、実験0に対しては良化したものの、十分な結果は得られなかった。攪拌をこのような位置に配置することで良化傾向にはあるが、現像容器壁49の位置が従来のままでは不十分である。
【0092】
実験1−2では、現像容器壁49の位置を反発磁極の上流側である磁極N3近傍まで開け、トナー撹拌部材43Cの位置を現像剤担持体41A、41Bに最近接する位置に配置した。
【0093】
このような構成にすることで領域Yにおいて反発磁極N2、N3で剥ぎ取られたトナーがトナー撹拌部材43Cによって循環し、新しいトナーが供給されるため、長期にわたってコート性が維持され、耐久による劣化や環境変動による不良もなかった。
【0094】
このことから、反発磁極N2、N3は現像容器壁49で覆わず、反発磁極N2、N3で剥ぎ取られたトナーをトナー撹拌部材43Cで循環することによる効果が得られた。さらに、N3極近傍の剤挙動を観察したところ、磁極N2−N3間のゼロガウス帯と磁極N3の最大磁束密度位置との間でトナーが剥ぎ取られていることがわかった。よって、現像容器壁49の上端は磁極N3の最大磁束密度位置以下とすることが重要である。
【0095】
実験1−3では、トナー撹拌部材43Cの位置は実験1−1や1−2と同様で、壁の位置を磁極N3よりもさらに上流にした。初期のコート性は問題なかったものの、耐久変動、環境変動は実験1−2より悪い結果となった。
【0096】
剤の挙動を確認したところ、領域Yや領域Zでは攪拌の効果が発揮されていたが、領域Xでトナーの滞留が観察された。
【0097】
これは、磁極N3の磁力が及ばない位置に壁がないために、磁極N3−S2間の磁力が小さい部分にトナーが入ってしまったからである。このことから、領域Xに対する現像容器壁49のシール性を維持するために、壁の上端は磁極N3の磁力の及ぶ範囲、つまり磁極N3の磁力が半値となる位置以上にすべきであることがわかった。
【0098】
現像容器壁49と反発磁極N2、N3の位置関係を磁束密度との関係からまとめた図8を示す。反発磁極N2、N3によってゼロガウス帯が形成されていることがわかる。
【0099】
これにより剥ぎ取られるトナーがスリーブ−壁間で滞留しないように、少なくとも磁極N3の最大磁束密度位置までは現像容器壁49を空ける必要がある。
【0100】
また、磁極N3−S2間には磁力の小さい領域Xが存在するため、この部分で滞留が起こらないように現像容器壁49の上端は少なくとも磁極N3のピークの半値となる位置以上とすべきである。
【0101】
以上のことから、現像容器壁49の上端を磁極N3の最大磁束密度位置以下、磁極N3の磁束密度がピークの半値となる位置以上とする。そして、トナー撹拌部材43Cの位置を現像剤担持体41A、41Bに最近接する位置にすることで、長期間にわたって現像剤担持体41Bのコート性を維持することができた。
【0102】
[実施形態2]
以下、本発明の第2の実施形態について、具体的に説明する。本実施形態は、実施形態1と同様の構成とし、トナー撹拌部材43Cの直径を変えることにより、トナーの循環性を向上させるものである。
【0103】
現像容器壁49の上端と磁極N3の相対位置は変えずにトナー撹拌部材43Cの径を変えることで最近接位置がどこにあるべきか検討を行った。その結果が図9である。
【0104】
実験2−1は、トナー撹拌部材43Cの直径を現像剤担持体41B程度とし、現像剤担持体41Bとの最近接位置が磁極N2、N3の間にくるものである。この場合は、領域Yや領域Zに撹拌領域が良好な剤循環となっていた。
【0105】
実験2−2では直径が小さく、現像剤担持体41Bとの最近接位置が磁極N2よりも上となっているものである。この場合、領域Zでの撹拌作用は果たすものの、領域Yへの撹拌作用が十分ではなく、滞留を招いていた。
【0106】
また、高温高湿環境下ではトナー撹拌部材43Cにトナーが固まってくっつき、肉団子状になってしまっていた。これは、径が小さくて角速度が速いことにより、トナーとの摩擦が促進されたためであると考えられる。よって、径を小さくして撹拌部材の数を増やすことも得策とは言えない。
【0107】
実験2−3は、トナー撹拌部材43Cの直径を現像剤担持体41Bの倍以上とし、現像剤担持体41Bとの最近接部が磁極N3よりも下にくるものである。
【0108】
この場合、領域Yへの撹拌作用は良好なものの、径が大きいために曲率が小さく、領域Zへの撹拌作用が十分ではなかった。
【0109】
以上より、トナー撹拌部材43Cの最近接位置を反発磁極N2、N3の間にすることで領域Yと領域Zへの撹拌作用を最大化することができることがわかった。
【0110】
また、現像容器壁49は領域Yを覆わずかつ領域Xを覆う位置が最適である。つまり、現像容器壁49の上端は反発極の上流側であるN3極の最大磁束密度の位置以下であり半値となる位置以上となる。
【0111】
また、撹拌部材43Cは領域Zへ撹拌作用を及ぼすように現像剤担持体41A、41Bに最近接する位置に配置し、その現像剤担持体41Bとの最近接位置がトナーの溜まり易い磁極N2−N3間にするのが良い。これにより、領域Z及び反発磁極で剥ぎ取られた領域Yのトナーを効率良く循環させ、劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の構成図である。
【図2】図1に示す画像形成装置における現像装置の構成図である。
【図3】図2の現像装置の要部拡大図である。
【図4】図3の現像装置の説明図である。
【図5】下流側現像剤担持体の磁極位置、現像容器壁及びトナー撹拌部材の最適な位置関係を説明する図である。
【図6】下流側現像剤担持体の固定マグネットローラのパターンを説明する図である。
【図7】実施形態1の検討結果を示す図である。
【図8】下流側現像剤担持体の磁極位置と現像容器壁の最適な位置関係を説明する図である。
【図9】実施形態2の検討結果を示す図である。
【図10】従来の現像装置の構成図である。
【図11】現像装置のキャリアを有する2成分現像剤の流れ図である。
【図12】現像装置の1成分現像剤の流れ図である。
【図13】従来の他の現像装置の構成図である。
【符号の説明】
【0113】
1 感光体ドラム
2 帯電器
3 露光手段
5 ポスト帯電器
7 定着装置
62 中間転写ベルト
40 現像装置
41A、41B 現像剤担持体
43A〜43D トナー攪拌部材
47A、47B 固定マグネットローラ
49 現像容器壁
N1〜N4、S1〜S4 磁極
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体表面に形成された静電潜像を可視化する現像装置及びこれを適用した電子写真方式による複写機、レーザープリンタ、ファクシミリ及び印刷装置などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置では、像担持体上に一様帯電を行った後、アナログ露光または半導体レーザーないしはLEDなどの光源により画像露光し、上記像担持体上に静電潜像を形成する。
【0003】
その後、静電潜像を現像装置により現像剤像として可視化し、直接ないしは中間転写体を介して転写材にこの現像剤像を転写する。そして、転写材を分離し、定着装置を通して定着された画像を出力する。
【0004】
近年、このような電子写真方式の画像形成装置の高速化が進んでいるが、高速化に対する現像装置としては、2成分磁気ブラシを用いた現像装置の現像スリーブを複数にすることで現像機会の増加を狙ったものが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、小型化した複数の現像スリーブを有する現像装置が提案されている(特許文献2参照)。さらに、複数の2成分現像を用いた現像スリーブを有する現像装置が提案されている(特許文献3、4参照)。
【0006】
図10に、複数の現像スリーブを有する現像装置の概略構成図を示す。この現像装置において、上流現像スリーブ11は感光ドラム1の回転方向R1の上流側に回転可能に位置し、下流現像スリーブ12は感光ドラム1の回転方向R1の下流側に回転可能に配置されている。この場合、上流現像スリーブ11の回転方向R11及び下流現像スリーブ12の回転方向R12は同一である。なお、S1、S2、N1、N2は、上流及び下流現像スリーブ11、12の磁極を示す。
【0007】
キャリアを有する2成分現像剤の流れを図11に示す。即ち、2成分現像剤は2つの現像スリーブ11、12の近接部で上流から下流に受け渡され、感光ドラム1に面した現像スリーブ11、12の周上に搬送される。
【0008】
2成分現像剤は主にキャリアでトナーが帯電されるので、搬送するのみで良いが、主に現像スリーブが帯電に寄与する磁性1成分現像剤を用いた場合は、現像スリーブ上に安定な薄層コートにしてトナーの帯電を十分にする必要がある。このため、下流現像スリーブ12での現像剤の流れは図12の矢印のようになり、2成分現像剤を用いた場合とは明らかに異なる。
【0009】
図中、19は上流現像スリーブ11の表面に均一層厚に現像剤をコートするための磁性ブレードである。上流現像スリーブ11は下流現像スリーブ12の現像剤層厚規制部材を兼ね、省スペースで小型であるものの、キャリアを用いた2成分現像のように現像剤を均一にコートすることが困難である。
【0010】
特に、カートリッジ方式ではなく現像剤を随時補給していく補給系で複数の現像スリーブを用いた現像装置は高速機に向いているものの、高速機の現像装置としては耐久性、安定性が要求されるため、さらに現像剤を均一にコートすることが困難となる。
【0011】
磁性1成分現像剤を用い、上流現像スリーブ11が下流現像スリーブ12の現像剤層厚規制部材を兼ねる現像装置においては、領域Z付近(図10参照)のトナー量、トナー密度が下流現像スリーブ12上のトナーコート層のトナー量と帯電量に特に敏感である。
【0012】
また、2成分現像剤の場合と異なり、耐久時や朝一の電源投入時で領域Zの状態が変化したり、低温、低湿環境や高温、高湿環境で変動してコート不良や帯電不良を起こす。ひどい場合は領域Zでトナー塊を形成してスリーブが融着したり、コートが不均一でむらになることもある。
【0013】
そこで、下流現像スリーブ12のN2極において、法線方向磁力の最大位置を現像容器の壁で覆うことで、トナーの下流現像スリーブ12への搬送力を維持しつつ、領域Zへの過剰なトナーの圧迫を防ぐものが提案されている(特許文献5参照)。
【0014】
さらに、高速機においては、耐久中の現像スリーブの高速回転に伴う昇温、機械的なシェアによりトナー劣化を起こしやすい。結果として耐久における濃度低下、画質劣化を引き起こす。
【0015】
このため、現像スリーブの高速化に伴って、図13に示すような現像装置が提案されている。即ち、下流現像スリーブ12の感光ドラム1の表面に対向しない部分に反発極である磁極N2、N3を設け、現像容器18に、両磁極N2、N3の法線方向の最大位置をすべて壁20で覆うことで、トナー劣化の低減を図っている(特許文献6参照)。
【0016】
これは、反発極を形成することで、領域Zでの現像剤の圧縮を低減する効果があり、トナーの層厚規制部での機械的なシェアを減らすようにしている。
【0017】
このような上流現像スリーブ11が下流現像スリーブ12の現像剤層厚規制部材を兼ねる複数現像系において、上流現像スリーブ11で感光ドラム1上に形成されたトナー像は、下流現像スリーブ12でさらに現像される。このため、最終画像濃度は下流側の現像部で決まる。
【0018】
即ち、下流現像スリーブ12のトナーが劣化した場合は、結果として濃度薄となる。そして、領域Zで上流現像スリーブ11は下流現像スリーブ12とは逆方向に移動するため、トナーは特に機械的なシェアを受けやすい。
【0019】
したがって、上流及び下流現像スリーブ11、12が高速回転をする場合、トナーの劣化が顕著となり濃度薄となる。そこで、下流現像スリーブ12に反発極を形成することで、反発極間で下流現像スリーブ12上のトナーは全部ではないが、6割ほどは下流現像スリーブ12から自然に引き剥がされる。
【0020】
これにより、下流現像スリーブ12上に連れまわっていたトナーを減らすことができ、連れまわりがないために、領域Zでのトナー圧縮を低減でき、トナー劣化が抑制され、濃度が維持される。
【0021】
【特許文献1】特開平03−204084号公報
【特許文献2】特開平03−5579号公報
【特許文献3】特開平09−80919号公報
【特許文献4】特開平04−069690号公報
【特許文献5】特開2003−255709号公報
【特許文献6】特開2005−258200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、従来例では、反発極である磁極N2−N3間のゼロガウス近傍でトナーが引き剥がされるが、磁極N2、N3を壁20で覆うと、そこに引き剥がされたトナーが溜まってしまう。また、上流及び下流現像スリーブ11、12の高速回転による昇温に加え、壁20とのメカニカルなシェアによってトナー劣化を促進してしまう。
【0023】
このため、下流現像スリーブ12におけるトナーコートを長期間にわたって均一で安定させることができない恐れがある。
【0024】
本発明の技術的課題は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、下流現像剤担持体におけるトナーコートを長期間にわたって均一に安定させることができる現像装置及びこれを用いた画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前記目的を達成するため、本発明に係る代表的な現像装置の構成は、前記現像剤を収納する現像容器と、トナー像が形成される像担持体に近接して配設され、前記像担持体の回転方向の上流側及び下流側で同一方向に回転する上流側の現像剤担持体及び下流側の現像剤担持体と、前記上流側及び下流側の現像剤担持体の近傍に設けられ、前記現像剤を攪拌する攪拌手段とを備え、前記上流側の現像剤担持体は、前記下流側の現像剤担持体の現像剤層厚規制部材を兼ね、前記上流側及び下流側の現像剤担持体に、複数の磁極を備えた第1及び第2の磁性部材が配置され、前記第1の磁性部材は、前記下流側の現像剤担持体に面する第1の磁極を有し、前記第2の磁性部材は、前記像担持体に面する第2の磁極と、前記上流側の現像剤担持体に面する第3の磁極と、前記下流側の現像剤担持体の回転方向に沿って前記第2の磁極の下流側で、かつ前記第3の磁極の上流側に配設された同じ極性の第4の磁極及び第5の磁極を有する現像装置において、前記攪拌手段は、前記上流側及び下流側の現像剤担持体に近接する位置に配設され、前記第4及び第5の磁極のうち、上流側に位置する磁極の近傍までを前記現像容器の壁で覆い、その上端が前記第4及び第5の磁極のうち、上流側に位置する磁極の法線方向の磁束密度が最大となる位置以下であり、法線方向の磁束密度の半値となる位置以上であることを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る代表的な画像形成装置の構成は、前記現像装置と、前記像担持体を画像情報に応じて露光する露光手段と、前記トナー像を転写材に転写する転写手段と、前記トナー像が転写された前記転写材に前記トナー像を定着する定着装置と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、高速機においても下流現像剤担持体におけるトナーコートを長期間にわたって均一に安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るデジタルモノクロ画像形成装置の構成図である。図2は、図1の画像形成装置における現像装置の構成図である。なお、本実施の形態に記載されている構成要素の寸法、材質及び形状、その他の相対配置、数値等は、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0029】
[実施形態1]
図1において、画像形成装置100は、画像形成を行うもので、リーダー部200が接続されているか、一体化されている。リーダー部200は、外部情報を画像信号に変える装置である。外部の画像原稿を読み取る画像装置やパソコン等である。そして、画像装置に読み取られた原稿画像の輝度信号やパソコン等から転送された画像信号は画像形成装置100に送信される。
【0030】
画像形成装置100は、像担持体としての感光体ドラム1を備え、帯電工程、潜像形成工程、現像工程、転写工程及び定着工程を基本とする画像形成工程が実施される。
【0031】
帯電工程、潜像形成工程、現像工程において、感光体ドラム1上にはリーダー部200からの画像情報に基づいてトナー像が形成される。転写工程は感光体ドラム1から転写材Pにトナー像を転写する。定着工程は転写材Pにトナー像を定着させる。
【0032】
具体的には、画像形成装置100は、帯電手段としての帯電器2を有し、この帯電器2は帯電工程において、帯電バイアスを印加して感光体ドラム1の表面を所定の電位に一様に帯電する。また、画像形成装置100は、潜像形成工程において、リーダー部200からの画像情報に応じてレーザー光Lを照射するレーザー書き込みユニットの露光手段3を有する。
【0033】
帯電工程において、一様に所定電位に帯電された感光体ドラム1を潜像形成工程、即ち露光工程でレーザー光Lを照射することによって、照射部分の感光体ドラム1の表面電位が変化し静電潜像を形成する。
【0034】
画像形成装置100は、現像手段として磁性1成分トナーを内包した現像装置40を有し、この現像装置40には同一方向に回転する2つの現像剤担持体(現像スリーブ)41A、41Bが設けられている。そして、現像剤担持体41A、41Bによって感光体ドラム1上に形成された潜像部分に現像剤が転移され、感光体ドラム1にトナー像が形成される。
【0035】
このような現像剤担持体41A、41Bは感光体ドラム1に近接して配設されており、現像剤担持体41Aは感光体ドラム1の回転方向の上流側に位置し、現像剤担持体41Bは感光体ドラム1の回転方向の下流側に位置している。
【0036】
現像装置40によって感光体ドラム1上に形成されるトナー像は、効率の良い転写を行うためにポスト帯電器5によって帯電され、転写工程にて、転写手段である転写ローラ61によって顕在化されたトナー像を中間転写体である中間転写ベルト62に転写する。
【0037】
そして、中間転写ベルト62上に転写されたトナー像が、転写ローラ63によって所望の転写材Pに転写される。転写材P上に形成されたトナー像は、定着工程にて定着手段である定着装置7によって定着される。
【0038】
以上の画像形成工程において、感光体ドラム1上に残留したトナー等はクリーナ81によって清掃され、中間転写ベルト62上に残留したトナー等はクリーナ82によって清掃される。そして、前に形成されたトナー像を除去した後に次の画像形成が実施される。
【0039】
感光体ドラム1は直径108mmのa−Si感光体を用いている。アルミニウム等の導電性ドラム基体と、その外周面に形成した感光層(光導電層)で構成された正帯電極性の感光体(ポジ感光体)であり、矢印の方向に例えば800mm/secのプロセススピード(周速)で回転駆動されている。
【0040】
帯電器2は2本の放電ワイヤーとグリッド線から構成されるコロナ帯電器であって、不図示の電源により放電ワイヤーに所定の電圧が印加されると放電動作が行われ、感光体ドラム1の外周面が+200〜+600V程度の範囲で均一に帯電される。本実施の形態では、感光体ドラム1の表面電位(帯電電位)は+500Vとしている。
【0041】
画像情報は、リーダー部200に設置された画像処理部によって所定の画像処理が施され、リーダー部200の読み取り動作に同期して露光手段3に転送される。
【0042】
露光手段3から発光されるレーザー光Lによって、感光体ドラム1の表面電位は+50〜+500V程度の範囲に露光される。つまり、レーザー光Lによって、感光体ドラム1の帯電電位が+500Vから下げられる。負帯電性(ネガ)トナーを用いた場合は、正規現像方式で潜像が形成される。
【0043】
現像装置40に内包する現像剤は、負帯電性の磁性1成分トナーである。現像装置40の現像剤担持体41A、41Bは、マグネットを内包し、感光体ドラム1とそれぞれ一定の間隔に保たれている。そして、矢印の方向に回転しながら現像剤を拘束し、不図示の現像バイアスによって感光体ドラム1上に現像剤が移動し、所望の濃度の画像形成が行われる。
【0044】
ポスト帯電器5では、放電ワイヤーにバイアスが印加され、定電流制御により放電動作が行われ、感光体ドラム1方向に電流が流れる。これにより、トナー像の電荷が増加し、通常画像形成時には、感光体ドラム1上に形成されたトナー像の中間転写ベルト62への転写をアシストする。通常の画像形成時の帯電バイアスとしては、DC成分にAC成分(Vpp1〜5kV)を重畳させ、−100〜−200μA程度の定電流制御を行っている。
【0045】
中間転写ベルト62は、感光体ドラム1の転写部を含む領域に渡って平坦に保持された中間転写体であり、感光体ドラム1上のトナー像が転写される。
【0046】
中間転写ベルト62は、3つのローラ64A、64B、64Cにより循環移動可能となっており、感光体ドラム1の回転に同期し、通常画像形成時には、感光体ドラム1の回転速度(周速)と同一の速度で矢印方向に沿って循環移動する。
【0047】
感光体ドラム1上に形成されたトナー像を中間転写ベルト62上に転写する一次転写手段として、転写ローラ61が中間転写ベルト62の感光体ドラム1との対向面の裏側転写部に設けられている。
【0048】
この転写ローラ61は、中心の導電性支持体と、その外周に形成された中抵抗の弾性層とで構成される。本実施の形態における転写ローラ61は、抵抗が1×107Ω、直径16mmの導電性ゴムローラである。
【0049】
転写ローラ61の導電性支持体に不図示の電源より、トナー像と逆極性の所定の一次転写バイアス、本実施の形態ではプラス側のバイアスを印加して、中間転写ベルト62に感光体ドラム1上に形成されたトナー像の転写を行う。
【0050】
中間転写ベルト62に転写、担持されたトナー像を所望の転写材Pに転写する二次転写手段として、転写ローラ63が中間転写ベルト62の駆動ローラ64Bとの対向表側に設けられている。
【0051】
この転写ローラ63は、中心の導電性支持体と、その外周に形成された中抵抗の弾性層とで構成される。本実施の形態における転写ローラ63は、抵抗が1×108Ω、直径24mmの導電性ゴムローラである。
【0052】
この転写ローラ63の導電性支持体に不図示の電源よりトナー像と逆極性の所定の二次転写バイアス、本実施の形態では、プラス側のバイアスを印加して、中間転写ベルト62に形成されたトナー像の転写材Pへの転写を行う。
【0053】
トナー像が転写された転写材Pは、定着装置7に搬送される。そして、転写材P上のトナー像は、定着装置7の定着ローラ71と加圧ローラ72間の定着ニップ部において転写材Pを加熱、加圧することで熱定着される。その後、トナー像が定着された転写材Pは、外部に排出され、一連の画像形成が終了する。
【0054】
次に、現像装置40をより詳細に説明する。図2〜4において、現像装置40は現像剤を収納する現像容器4を有する。現像剤担持体41A、41Bは感光体ドラム1に近接し、感光体ドラム1の回転方向に沿って現像容器4の開口部に配置されている。
【0055】
現像剤担持体41A、41Bは互いに同一方向に回転され、感光体ドラム1の回転方向に対して上流側に位置する現像剤担持体41Aは、層厚規制ブレード42によってトナーのコート厚が規制される。
【0056】
現像容器4内には、現像容器4のトナーを撹拌して現像剤担持体41A、41B側に搬送する攪拌手段のトナー撹拌部材43A、43B、43C、43Dを有する。そして、現像容器4内のトナー量を検知するトナー量検知センサ44を備えている。
【0057】
トナー(磁性1成分トナー)は、ネガトナーで、重量平均粒径は5.0〜7.5μm程度である。樹脂は少なくともスチレンアクリル樹脂またはポリエステル樹脂のいずれか一方から成り、磁性体を60〜90重量部程度入れており、比透磁率が1.5〜2.0程度となっている。また、外添剤として、0.5〜1.5%(重量%)程度のSiO2を含有している。
【0058】
現像容器4の上部には、現像容器4内に補給するトナーを収納したトナー補給容器45が設けられている。現像時に現像容器4内のトナーの量が所定量より減少したことをトナー量検知センサ44で検知した場合には、トナー補給容器45内のトナーが現像容器4内に補給される。
【0059】
トナー補給は、トナー補給容器45の補給口に設けられたマグネットローラ46Aを制御装置300からの制御信号によって回転させることによって行われる。
【0060】
トナー補給は、マグネットローラ46Aの磁力によってトナー補給容器45内のトナーをマグネットローラ46A表面に引き付け、マグネットローラ46Aを回転させる。マグネットローラ46Aと対向配置したトナー規制板43Bとの間の所定のギャップ(隙間)で、マグネットローラ46A表面に担持されるトナーの量を規制する。
【0061】
そして、マグネットローラ46A表面に一定量担持されたトナーを、マグネットローラ46Aに当接されたトナー掻き取り板46Cによって掻き取り、現像容器4内へ落下させる。これによって、現像容器4内へトナーが補給され、トナー撹拌部材43A〜43Dによって新旧トナーが混合撹拌される。
【0062】
現像剤担持体41A、41Bは、それぞれ非磁性部材である直径32mmと直径25mmのAl表面にフェノール樹脂と結晶性グラファイトおよびカーボンをある重量比割合で混合して、150℃環境で硬化させた膜を用いる。
【0063】
膜の厚さは安定かつ均一な膜を形成するために、20μm程度とした。Bを樹脂の重量、Pを樹脂以外のものの重量(結晶性グラファイト+カーボン)とすると、この場合はP/B比は1/2とした。
【0064】
また、現像剤担持体41A、41Bの帯電特性をトナーに対して最適にするために4級アンモニウム塩を20部程度含有するフェノール樹脂を用いた。第4級アンモニウム塩化合物は、添加されるとフェノール樹脂中に均一に分散され、加熱硬化して被覆を形成する際にフェノール樹脂組成物自身が負帯電性を有する物質へと変化する。従って、このような材料を用いて形成された被覆層を有する現像剤担持体を用いれば、現像剤を若干低めに帯電させることが可能となる。
【0065】
現像剤担持体41A内には、複数の磁極(第1の磁極)を備えた固定マグネットローラ(第1の磁性部材)47Aが固定配置されている。また、現像剤担持体41B内にも、複数の磁極(第2の磁極、第3の磁極、第4の磁極、第5の磁極)を備えた固定マグネットローラ(第2の磁性部材)47Bが固定配置されている。
【0066】
即ち、現像剤担持体41A内の固定マグネットローラ47Aは、磁場パターンを有する磁極N1、N2、N3、N4、S1、S2、S3、S4が配置されている。また、現像剤担持体41B内の固定マグネットローラ47Bは、磁場パターンを有する磁極N1、N2、N3、S1、S2が配置されている。
【0067】
現像剤担持体41A、41Bは、感光体ドラム1の回転速度(プロセススピード)に対して50〜150%の速度で回転し、現像位置での現像剤担持体41A、41Bと感光体ドラム1間のギャップは150〜400μmである。固定マグネットローラ47Aの磁力によって現像剤担持体41A上に担持されるトナーは、層厚規制ブレード42でコート厚が規制される。
【0068】
一方、固定マグネットローラ47Bの磁力によって現像剤担持体41B上に担持されるトナーは、現像剤担持体41Aでコート厚が規制される。なお、現像剤担持体41Aと現像剤担持体41B間のギャップは200〜400μmである。
【0069】
現像剤担持体41A、41Bには、図示しない現像バイアス電源から直流バイアスと交流バイアス(Vpp1〜2kV、周波数1〜4kHz程度)を重畳した現像バイアスが印加される。これにより、トナーを感光体ドラム1側に飛翔させて静電潜像を非接触現像する。
【0070】
ここで、本実施形態における現像装置40の現像剤担持体41A、41Bとトナー撹拌部材43C及び現像容器壁49との関係について詳細に説明する。
【0071】
現像剤担持体41A上に担持されるトナーは、層厚規制ブレード42でコート厚が規制されるのに対し、現像剤担持体41B上に担持されるトナーは現像剤担持体41Aによってコート厚が規制される。
【0072】
よって、特許文献5、6のように現像剤担持体41Bのトナー層厚規制を現像剤担持体41Aが兼ねる場合には、領域Zのトナー挙動が現像剤担持体41Bのコート性に大きな影響を及ぼす。このため、現像剤担持体41Bに磁極N2(第4の磁極)、磁極N3(第5の磁極)という反発する磁極を設け、それらの最大磁力部を現像容器壁49で覆うことで領域Zへのトナー侵入量を制限するという思想が従来は存在していた(図5)。
【0073】
しかし、図5に示すような構成にはいくつかの問題があるため、高速化対応を考えた場合に現像剤担持体41Bのコート性を長期間にわたって維持できない。領域Zへのトナー侵入量を制限するために反発磁極N2、N3を現像容器壁49で覆うと、領域Yに現像剤が溜まってしまい、現像剤担持体41Bの高速回転による昇温に加え、現像容器壁49とのメカニカルなシェアによって剤劣化を促進してしまう。
【0074】
また、従来の撹拌部材の位置では領域Zに撹拌部材が入り込まないため、トナーが動かない領域(デットゾーン)が存在し、トナー凝集が起こりやすい状況を作っていた。
【0075】
そこで、撹拌部材43Cを現像剤担持体41A、41BとのギャップがGA=GBとなるよう最近接する位置に配置する。そして、現像容器壁49を反発極の上流側であるN3極近傍までしか設けないようにすることで剤循環を良くし、コート性を長期にわたって維持することを可能にした。
【0076】
本実施の形態では、撹拌部材43Cと現像剤担持体41A、41Bとの隙間を1〜10mm程度とし、現像剤担持体41Bと現像容器壁49の隙間を1〜5mm程度とした。
【0077】
まず、反発磁極に対する壁の位置および撹拌部材の位置についての検討を行った。本実験では、図6に示すようなマグネットパターンを有するマグネットローラを下流側の現像剤担持体41Bに用い、コート性、剤循環、耐久変動、環境変動について検討した。検討結果を図7に示す。
【0078】
なお、コート性とは、現像剤担持体41A、41Bの表面に所定のトナー層が形成されるかどうかである。トナー量は、現像剤担持体41A、41B表面の一定面積のトナー量を吸引することで判別できる。また、量だけでなくマグネットローラの磁力とトナーの比透磁率との関係から現像剤担持体上に形成される磁気的な穂立ちの高さや密度なども意味する。
【0079】
現像剤担持体41Bのコート性は、搬送されるトナーに対して、現像剤担持体41Aの磁力と現像剤担持体41Bの磁力、現像剤担持体41A、41Bのギャップによって規制される。つまり、トナーの搬送量と磁気規制力の関係によって決定される。
【0080】
そのため、トナーの搬送量が多いか、十分に磁気的にトナー量を規制できない場合、現像剤担持体の回転方向にトナー量ムラが発生してしまう。本実施形態では、現像剤担持体41Bのトナー量は約0.5〜1.0mg/cm2を目標値とした。
【0081】
次に「剤循環」について述べる。剤循環とは、現像剤担持体や容器壁に対するトナーへの圧、並びにトナー同士の圧を極力抑え、トナーの移動スピードを速くし、かつ時間に対して安定することである。
【0082】
つまり、トナーがある特定箇所で滞ると、パッキングが発生してトナーの劣化につながる。本実施形態では、領域X、Y、Zの3ポイントにおいてトナーの挙動を観察した。領域Xにおけるポイントは、磁極N3−S2極間でトナーが滞留していないかである。
【0083】
領域Yにおけるポイントは、反発磁極N2、N3で剥ぎ取られたトナーが滞留していないかである。領域Zにおけるポイントは、過剰なトナーが侵入してきていないか、現像剤担持体41Aによって現像剤担持体41B上からカットされたトナーなどが滞留していないかである。
【0084】
次に「耐久変動」について述べる。耐久変動で起こることは、トナー劣化による濃度の低下や、流動性の低下による凝集塊の発生などである。現像剤担持体の高速回転による昇温に加え、領域X、Y、Zなどでメカニカルなシェアを受けると外添剤がトナーに埋め込まれ、帯電能や流動性の低下を招く。
【0085】
これにより、トナーの搬送性も落ち、現像剤担持体41B上のトナー量、トナー帯電量の低下につながり、現像性が落ちて濃度低下してしまう。
【0086】
最後に「環境変動」について述べる。環境変動としては、高温高湿環境下でのブロッキングや低湿環境下での帯電不良、トナーコートムラに伴う画像ムラが挙げられる。
【0087】
領域Zへ過剰にトナーが侵入すると、トナーが詰まり、急激な圧力がトナー自身にかかることで、トナーが粉体としてではなく、固体状態として現像剤担持体41A、41B間を通過してしまうため、不均一でムラのあるコートとなる。
【0088】
そして、極端な場合には、現像剤担持体41A、41Bはその抵抗で回転しなくなってしまう。これをブロッキング現象と呼んでいる。また、低湿環境下ではトナーが帯電しやすいため、搬送されるトナーが循環しているトナーか滞留しているトナーかなどの違いで、帯電性や搬送性が異なって静電凝集やコートムラにつながりやすい。
【0089】
以上の観点で検討を行った結果、従来例である実験0では、初期のコート性は問題なかったものの、耐久によって現像スリーブ41B上のトナー量、トナー帯電量が低下してしまった。
【0090】
これは、反発磁極N2、N3を現像容器壁49で覆っているため、剥ぎ取られたトナーが領域Y部に溜まってしまい、現像剤担持体41A、41Bの高速回転により劣化が促進されてしまったためである。また、撹拌作用が領域Z部に及ばないため、デットゾーンとして高温高湿環境下で長期に使用した場合、ブロッキングが発生する可能性があることがわかった。
【0091】
実験1−1では、現像容器壁49の位置はそのままでトナー撹拌部材43Cの位置を現像剤担持体41A、41Bに最近接する位置に配置した。その結果、実験0に対しては良化したものの、十分な結果は得られなかった。攪拌をこのような位置に配置することで良化傾向にはあるが、現像容器壁49の位置が従来のままでは不十分である。
【0092】
実験1−2では、現像容器壁49の位置を反発磁極の上流側である磁極N3近傍まで開け、トナー撹拌部材43Cの位置を現像剤担持体41A、41Bに最近接する位置に配置した。
【0093】
このような構成にすることで領域Yにおいて反発磁極N2、N3で剥ぎ取られたトナーがトナー撹拌部材43Cによって循環し、新しいトナーが供給されるため、長期にわたってコート性が維持され、耐久による劣化や環境変動による不良もなかった。
【0094】
このことから、反発磁極N2、N3は現像容器壁49で覆わず、反発磁極N2、N3で剥ぎ取られたトナーをトナー撹拌部材43Cで循環することによる効果が得られた。さらに、N3極近傍の剤挙動を観察したところ、磁極N2−N3間のゼロガウス帯と磁極N3の最大磁束密度位置との間でトナーが剥ぎ取られていることがわかった。よって、現像容器壁49の上端は磁極N3の最大磁束密度位置以下とすることが重要である。
【0095】
実験1−3では、トナー撹拌部材43Cの位置は実験1−1や1−2と同様で、壁の位置を磁極N3よりもさらに上流にした。初期のコート性は問題なかったものの、耐久変動、環境変動は実験1−2より悪い結果となった。
【0096】
剤の挙動を確認したところ、領域Yや領域Zでは攪拌の効果が発揮されていたが、領域Xでトナーの滞留が観察された。
【0097】
これは、磁極N3の磁力が及ばない位置に壁がないために、磁極N3−S2間の磁力が小さい部分にトナーが入ってしまったからである。このことから、領域Xに対する現像容器壁49のシール性を維持するために、壁の上端は磁極N3の磁力の及ぶ範囲、つまり磁極N3の磁力が半値となる位置以上にすべきであることがわかった。
【0098】
現像容器壁49と反発磁極N2、N3の位置関係を磁束密度との関係からまとめた図8を示す。反発磁極N2、N3によってゼロガウス帯が形成されていることがわかる。
【0099】
これにより剥ぎ取られるトナーがスリーブ−壁間で滞留しないように、少なくとも磁極N3の最大磁束密度位置までは現像容器壁49を空ける必要がある。
【0100】
また、磁極N3−S2間には磁力の小さい領域Xが存在するため、この部分で滞留が起こらないように現像容器壁49の上端は少なくとも磁極N3のピークの半値となる位置以上とすべきである。
【0101】
以上のことから、現像容器壁49の上端を磁極N3の最大磁束密度位置以下、磁極N3の磁束密度がピークの半値となる位置以上とする。そして、トナー撹拌部材43Cの位置を現像剤担持体41A、41Bに最近接する位置にすることで、長期間にわたって現像剤担持体41Bのコート性を維持することができた。
【0102】
[実施形態2]
以下、本発明の第2の実施形態について、具体的に説明する。本実施形態は、実施形態1と同様の構成とし、トナー撹拌部材43Cの直径を変えることにより、トナーの循環性を向上させるものである。
【0103】
現像容器壁49の上端と磁極N3の相対位置は変えずにトナー撹拌部材43Cの径を変えることで最近接位置がどこにあるべきか検討を行った。その結果が図9である。
【0104】
実験2−1は、トナー撹拌部材43Cの直径を現像剤担持体41B程度とし、現像剤担持体41Bとの最近接位置が磁極N2、N3の間にくるものである。この場合は、領域Yや領域Zに撹拌領域が良好な剤循環となっていた。
【0105】
実験2−2では直径が小さく、現像剤担持体41Bとの最近接位置が磁極N2よりも上となっているものである。この場合、領域Zでの撹拌作用は果たすものの、領域Yへの撹拌作用が十分ではなく、滞留を招いていた。
【0106】
また、高温高湿環境下ではトナー撹拌部材43Cにトナーが固まってくっつき、肉団子状になってしまっていた。これは、径が小さくて角速度が速いことにより、トナーとの摩擦が促進されたためであると考えられる。よって、径を小さくして撹拌部材の数を増やすことも得策とは言えない。
【0107】
実験2−3は、トナー撹拌部材43Cの直径を現像剤担持体41Bの倍以上とし、現像剤担持体41Bとの最近接部が磁極N3よりも下にくるものである。
【0108】
この場合、領域Yへの撹拌作用は良好なものの、径が大きいために曲率が小さく、領域Zへの撹拌作用が十分ではなかった。
【0109】
以上より、トナー撹拌部材43Cの最近接位置を反発磁極N2、N3の間にすることで領域Yと領域Zへの撹拌作用を最大化することができることがわかった。
【0110】
また、現像容器壁49は領域Yを覆わずかつ領域Xを覆う位置が最適である。つまり、現像容器壁49の上端は反発極の上流側であるN3極の最大磁束密度の位置以下であり半値となる位置以上となる。
【0111】
また、撹拌部材43Cは領域Zへ撹拌作用を及ぼすように現像剤担持体41A、41Bに最近接する位置に配置し、その現像剤担持体41Bとの最近接位置がトナーの溜まり易い磁極N2−N3間にするのが良い。これにより、領域Z及び反発磁極で剥ぎ取られた領域Yのトナーを効率良く循環させ、劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の構成図である。
【図2】図1に示す画像形成装置における現像装置の構成図である。
【図3】図2の現像装置の要部拡大図である。
【図4】図3の現像装置の説明図である。
【図5】下流側現像剤担持体の磁極位置、現像容器壁及びトナー撹拌部材の最適な位置関係を説明する図である。
【図6】下流側現像剤担持体の固定マグネットローラのパターンを説明する図である。
【図7】実施形態1の検討結果を示す図である。
【図8】下流側現像剤担持体の磁極位置と現像容器壁の最適な位置関係を説明する図である。
【図9】実施形態2の検討結果を示す図である。
【図10】従来の現像装置の構成図である。
【図11】現像装置のキャリアを有する2成分現像剤の流れ図である。
【図12】現像装置の1成分現像剤の流れ図である。
【図13】従来の他の現像装置の構成図である。
【符号の説明】
【0113】
1 感光体ドラム
2 帯電器
3 露光手段
5 ポスト帯電器
7 定着装置
62 中間転写ベルト
40 現像装置
41A、41B 現像剤担持体
43A〜43D トナー攪拌部材
47A、47B 固定マグネットローラ
49 現像容器壁
N1〜N4、S1〜S4 磁極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を収納する現像容器と、トナー像が形成される像担持体に近接して配設され、前記像担持体の回転方向の上流側及び下流側で同一方向に回転する上流側の現像剤担持体及び下流側の現像剤担持体と、前記上流側及び下流側の現像剤担持体の近傍に設けられ、前記現像剤を攪拌する攪拌手段とを備え、前記上流側の現像剤担持体は、前記下流側の現像剤担持体の現像剤層厚規制部材を兼ね、前記上流側及び下流側の現像剤担持体に、複数の磁極を備えた第1及び第2の磁性部材が配置され、前記第1の磁性部材は、前記下流側の現像剤担持体に面する第1の磁極を有し、前記第2の磁性部材は、前記像担持体に面する第2の磁極と、前記上流側の現像剤担持体に面する第3の磁極と、前記下流側の現像剤担持体の回転方向に沿って前記第2の磁極の下流側で、かつ前記第3の磁極の上流側に配設された同じ極性の第4の磁極及び第5の磁極を有する現像装置において、
前記攪拌手段は、前記上流側及び下流側の現像剤担持体に近接する位置に配設され、前記第4及び第5の磁極のうち、上流側に位置する磁極の近傍までを前記現像容器の壁で覆い、その上端が前記第4及び第5の磁極のうち、上流側に位置する磁極の法線方向の磁束密度が最大となる位置以下であり、法線方向の磁束密度の半値となる位置以上であることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記攪拌手段と前記下流側の現像剤担持体の最近接部が、前記第4の磁極の法線方向の磁束密度が最大となる位置と前記第5の磁極の法線方向の磁束密度が最大となる位置との間にあることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の現像装置と、前記像担持体を画像情報に応じて露光する露光手段と、前記トナー像を転写材に転写する転写手段と、前記トナー像が転写された前記転写材に前記トナー像を定着する定着装置と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
現像剤を収納する現像容器と、トナー像が形成される像担持体に近接して配設され、前記像担持体の回転方向の上流側及び下流側で同一方向に回転する上流側の現像剤担持体及び下流側の現像剤担持体と、前記上流側及び下流側の現像剤担持体の近傍に設けられ、前記現像剤を攪拌する攪拌手段とを備え、前記上流側の現像剤担持体は、前記下流側の現像剤担持体の現像剤層厚規制部材を兼ね、前記上流側及び下流側の現像剤担持体に、複数の磁極を備えた第1及び第2の磁性部材が配置され、前記第1の磁性部材は、前記下流側の現像剤担持体に面する第1の磁極を有し、前記第2の磁性部材は、前記像担持体に面する第2の磁極と、前記上流側の現像剤担持体に面する第3の磁極と、前記下流側の現像剤担持体の回転方向に沿って前記第2の磁極の下流側で、かつ前記第3の磁極の上流側に配設された同じ極性の第4の磁極及び第5の磁極を有する現像装置において、
前記攪拌手段は、前記上流側及び下流側の現像剤担持体に近接する位置に配設され、前記第4及び第5の磁極のうち、上流側に位置する磁極の近傍までを前記現像容器の壁で覆い、その上端が前記第4及び第5の磁極のうち、上流側に位置する磁極の法線方向の磁束密度が最大となる位置以下であり、法線方向の磁束密度の半値となる位置以上であることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記攪拌手段と前記下流側の現像剤担持体の最近接部が、前記第4の磁極の法線方向の磁束密度が最大となる位置と前記第5の磁極の法線方向の磁束密度が最大となる位置との間にあることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の現像装置と、前記像担持体を画像情報に応じて露光する露光手段と、前記トナー像を転写材に転写する転写手段と、前記トナー像が転写された前記転写材に前記トナー像を定着する定着装置と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−72160(P2010−72160A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237617(P2008−237617)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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