画像の特徴抽出方法並びに工具欠陥検査方法と工具欠陥検査装置
【課題】一定の明るさで刃面全体を見ることができ、効率良く正確に検査することができる工具欠陥検査方法と工具欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】検査対象物のワーク12を撮像してその形状の特徴線を抽出する特徴抽出方法であって、撮像した画像データをそのまま用いて、撮像素子の画素配列の縦軸方向や横軸方向若しくは斜め方向に1画素×n画素(nは自然数)の画素列をとり、その列内で前記各画素の輝度の最小値若しくは最大値となる画素を求める。その画素を検査対象物の形状の一部として抽出し、この抽出処理を画素列の方向と直交する方向に、画素列の位置を順次変えながら最小値若しくは最大値となる画素を求める。抽出した画素を繋ぎ合わせて、検査対象物の特徴線とする。
【解決手段】検査対象物のワーク12を撮像してその形状の特徴線を抽出する特徴抽出方法であって、撮像した画像データをそのまま用いて、撮像素子の画素配列の縦軸方向や横軸方向若しくは斜め方向に1画素×n画素(nは自然数)の画素列をとり、その列内で前記各画素の輝度の最小値若しくは最大値となる画素を求める。その画素を検査対象物の形状の一部として抽出し、この抽出処理を画素列の方向と直交する方向に、画素列の位置を順次変えながら最小値若しくは最大値となる画素を求める。抽出した画素を繋ぎ合わせて、検査対象物の特徴線とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、CCDカメラなどの光学式撮像装置によって検査対象物の画像を撮像する方法を用い、各種回転切削工作機械の刃物工具であるスローアウェイチップや、ドリルやタップなどの刃物工具の刃の形状検査・欠陥検査に利用可能な、画像の特徴抽出方法並びに工具欠陥検査方法と工具欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばドリル刃、タップ、バイト、フライス等の切削工具の刃先を形成するスローアウェイチップには、適宜に厚みを有する略菱形や略正方形、又は略正三角形等に形成された多種類の構造が存在する。更に、スローアウェイチップは、粉体焼結製法によって作られる製品が多く、例えば数十μm程度の微細な欠けや割れ等の欠陥が、部分的または刃全体に亘って生じる場合があり、製品検査においては、これらを確実に識別する必要があった。従って、検査工程が複雑且つ微妙な判断が求められるため、従来、目視により、不良品の抽出並びに品種の仕分けが行われていた。
【0003】
人による目視検査では、欠陥部分と周辺部分の明るさの変化が小さい検査対象物に関して、検査対象物を動かして回転させながら明るさの変化を認識し、明るさの変化が大きくなる部分を欠陥部分若しくは検査対象物の形状が変わる部分と判断している。また、光を用いた外観検査においては、平面部分や急峻な角度のある辺の部分にある欠陥部分に関して、特定方向への光の反射や光の散乱により、欠陥部分と周辺部分の明るさの変化が大きい傾向があることを利用し、明るさの差異を用いて欠陥検査を行っている。
【0004】
しかしながら、目視による種別毎の不良品の抽出では、形状が一部のみ微妙に違う多種類の製品において、微細な欠けや変形などを有する不良品や、異品種の区分けが難しいものであった。そのため、仕分けの際に微細な欠陥や不良品を見落としたりすることがあった。さらに、弧などの緩やかな形状変化がある部分にある欠陥部分に関しては、欠陥の有無にかかわらず全方向への光の反射があるため、欠陥部分と周辺部分の明るさの変化が小さい傾向があり、欠陥部分の特定が困難である。また、欠陥自身が緩やかな形状変化をとる部分については、平面部分や円弧などの緩やかな形状変化がある部分にかかわらず、欠陥部分と周辺部分の明るさの変化が小さい傾向があり、欠陥部分の特定が困難であった。
【0005】
そこで、スローアウェイチップやその他刃物工具の欠陥検査には、目視による検査の他に、画像処理による検査も行われている。例えば、特許文献1〜3に開示されたスローアウェイチップの検査装置では、レーザ光を走査させてスローアウェイチップの切刃の形状的欠陥を検出し、切刃の欠損などを判別している。また、特許文献4には、ワークの刃先稜線を異なる角度から照明しカメラの撮像方向に対して両側に位置した複数の照明装置と、照明された前記ワークを撮像可能に形成されたカメラと、カメラにより撮像されたワークの検査像を画像処理する画像処理装置とを備え、ワークの検査工程毎にカメラを配置し、ステージ上でワークを移動させ、ワークの表面と側面及び刃先を撮像し、各々所定の基準像と各検査像とを比較して欠陥を判定する工具欠陥検査方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−202476号公報
【特許文献2】特開平10−202477号公報
【特許文献3】特開平10−202478号公報
【特許文献4】特開2007−278915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、欠陥検査用の自動機械を用いて外観検査を行う検査方法の場合、スローアウェイチップなどの刃物工具の刃面部分は円弧状になっており、緩やかな形状変化がある。そのため、刃面部分へ特定の方向から光を照射すると刃面の一部だけ光り、一定の明るさで刃面全体を見ることは困難である。従って、一定の明るさで刃面全体を見るためには、多角的な方向から検査対象物へ光を照射する必要がある。
【0008】
また、CCDカメラなどの光学式撮像方法によって画像を取得する場合、刃面部分に対して、カメラの位置は特定の位置・角度となるため、一定の明るさで刃面全体を見るためには、照明を多角的に配置して刃面全体の反射光がカメラに入射することにより1つの画像で検査範囲をカバーする方法、若しくは、検査対象物を3次元方向に移動・回転させ刃面の反射面を変えながら撮像することにより複数の刃面部分の画像を合成して検査範囲をカバーする方法のいずれかを用いる。しかし、前者の方法では照明機構が大掛かりになるため高価となり、後者の方法では検査対象物の搬送機構が複雑且つ撮像枚数が多くなるため高価且つ検査時間が長くなるものであった。
【0009】
また、一定の明るさで刃面全体を見る場合、検査対象物の形状の違いや良品部分と欠陥部分の違いがあってもそれらの輝度差が小さいため、欠陥部分のみ特定することが困難である。
【0010】
その他、特許文献1〜3に開示されている検査装置では、レーザ光の走査によりスローアウェイチップの刃線の欠損を検査しているものであり、装置が複雑であり、レーザ光のスポット径以下の微細な欠損を検知することができず、走査による検査時間も長く、検査項目が少なく多品種のスローアウェイチップを効率的に検査できるものではなかった。また、特許文献4に開示された検査装置は、複数方向からの照明装置から照射された照射光をワーク検査面に照射しているので、比較的明るく均一なワーク画像を得ることができるが、基準像と各検査像とを比較して欠陥を判定するので、画像処理が複雑になり、装置が高価になり検査時間がかかるものであった。
【0011】
この発明は、上記背景技術の問題に鑑みて成されたもので、安価かつ簡単な方法で、一定の明るさで容易に画像の特徴を抽出することができる画像の特徴抽出方法を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、この発明は、上記画像の特徴抽出方法を用いて、一定の明るさで刃面全体を見ることができ、効率良く正確に検査することができる工具欠陥検査方法と工具欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、均一な照明を用い、CCDカメラ等を用いた撮像装置によって画像を取得し、その画像の輝度変化を調べることにより欠陥検査を行う画像の特徴抽出方法並びに工具欠陥検査方法と工具欠陥検査装置である。
【0014】
CCDカメラなどの撮像方法によって画像を取得する場合、良好に撮像可能な条件は、工具の刃面部分に対してカメラの位置は特定の位置、角度となるため、一定の明るさで刃面全体を見るためには、照明を多角的に配置しなければならない。均一照明の下で撮像した画像を考えると、ある画素位置の輝度値と隣接する画素の輝度値の差はわずかである。すなわち、画像内の小さな領域では緩やかな輝度変化をとる。この画像に形状の異なる部分があると、輝度変化の傾向が変わる。この発明は、この現象を利用して、検査対象物の形状の特徴に対する輝度変化の特徴を予め決め、その輝度変化の特徴と異なる輝度変化となる部分を抽出する方法を用い、欠陥の有無及び欠陥部分の形状・大きさを検出するものである。
【0015】
この発明は、検査対象物を撮像してその形状の特徴線を抽出する特徴抽出方法において、撮像した画像データを、画像処理等を施さずにそのまま用いて、撮像素子の画素配列の縦軸方向や横軸方向若しくは斜め方向に1画素×n画素(nは自然数)の画素列をとり、その列内で前記各画素の輝度の最小値若しくは最大値となる画素を求め、その画素を前記検査対象物の形状の一部として抽出し、この抽出処理を前記画素列の方向と直交する方向に、前記画素列の位置を順次変えながら前記最小値若しくは最大値となる画素を求め、抽出した画素を繋ぎ合わせて検査対象物の特徴線として抽出する画像の特徴抽出方法である。
【0016】
前記撮像素子を備えたカメラのレンズの光軸を含む平面上及びその平面と直交する平面上に複数の照明を配置して、前記検査対象物を複数の角度から照明して、前記検査対象物を前記撮像素子により撮像して、前記検査対象物の特徴線を抽出するものである。前記複数の照明は、前記検査対象物のエッジに対して斜めに対面した前記カメラレンズを中心に、その両側に複数の照明が各々等角度に配置され、前記検査対象物を前記複数の照明により照らして、前記撮像素子の撮像範囲のうちの広範囲に亘り、明るく均一な画像の撮像を可能にするものである。
【0017】
さらに、前記撮像素子により撮像した画像を、複数の画像範囲に分割し、その際、比較的輝度が均一な画像範囲に分割して、画像範囲毎に前記検査対象物の特徴線を抽出するものである。
【0018】
前記画像範囲に前記画素列を定め、前記画像範囲の端の画素から順に前記画素列と直交する方向に各画素について、現在位置の画素と次の位置の画素の輝度を求め、現在位置の画素の輝度が所定の輝度閾値より小さく次の位置の画素の輝度が前記輝度閾値より大きくなる画素と、現在位置の画素の輝度が前記輝度閾値より大きく次の位置の画素の輝度が前記輝度閾値より小さくなる画素を求め、この処理を所定画素ずつ、例えば1画素ずつ前記画素列の方向と交差する方向に移動しながらこれらの条件を満たす全ての画素を求め、求めた各画素を繋いで得られた線分の間の画素範囲を境界部分として特徴抽出する画像の特徴抽出方法である。
【0019】
前記輝度閾値は、前記輝度の最小値に所定の輝度値を加算した値、若しくは、輝度最大値から所定の輝度値を減算した値を輝度閾値として設定するものである。
【0020】
また、検査対象物を撮像してその形状の特徴線を抽出する際に、前記特徴線の画素位置がその並びの延長方向からずれて次の前記特徴線の画素が存在する場合を、形状異常の可能性有り、と判断するものである。
【0021】
前記境界部分と前記特徴線との間隔の画素数を求め、この画素数の変化を元に境界線の特徴を抽出し、前記形状異常の可能性のある前記画素位置での、前記境界部分と前記特徴線との間の画素数が所定数の閾値を超えた場合、形状異常部分と判断するものである。
【0022】
前記形状異常部分と判断した前記特徴線上の画素範囲での前記境界線間の画素数と、前記画像範囲の前記境界線間の画素数の平均値との差を求め、前記差が所定の値よりも大きい場合に、その形状異常部分を欠陥部分と確定するものである。
【0023】
またこの発明は、上記画像の特徴抽出方法を用いて、工具刃面の欠陥検査を行う欠陥検査方法である。さらに、上記画像の特徴抽出方法を用いて、工具刃面の欠陥検査を行う工具欠陥検査装置である。
【発明の効果】
【0024】
この発明の画像の特徴抽出方法並びに工具欠陥検査装置と工具欠陥検査方法によれば、簡単な撮像装置と照明装置により、画像の輝度の変化を利用してその画像の特徴抽出を行うことができる。これにより、従来、検査が困難であった形状変化の小さな検査対象物の形状の特徴や欠陥の特徴を抽出することができる。さらに、この特徴抽出方法を刃物工具に適用することにより、刃面部分及び欠陥部分の画像の撮像及び抽出が容易に可能である。特に、この発明に用いられる照明装置により工具の刃部を照明した場合、均一に照明される照明範囲が広く、最大の明るさで広範囲に均一な輝度の画像の撮像が可能である。そして、従来よりも低価格かつ汎用性の高い機能を有し、従来では自動検出困難であった形状変化の小さな形状の特徴抽出機能を備えた検査装置を実現可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の一実施形態の工具欠陥検査装置を示す概略全体構成図である。
【図2】この実施形態の工具欠陥検査装置の照明装置の一部を示す概略斜視図である。
【図3】この実施形態に用いる照明の光強度部分布を示すグラフである。
【図4】この実施形態の工具欠陥検査装置により検査されるスローアウェイチップの刃面の部分拡大図である。
【図5】この実施形態の工具欠陥検査装置により撮像されたスローアウェイチップのエッジ部の部分拡大画像である。
【図6】この実施形態の工具欠陥検査装置により検査される工具刃面の画像の模式図である。
【図7】この実施形態の工具欠陥検査装置により撮像された画像の一部の画素列の輝度を示すグラフである。
【図8】この実施形態の工具欠陥検査装置により欠陥部分と判断される画像部分の画素を示す模式図である。
【図9】この実施形態の工具欠陥検査方法における特徴抽出処理のフローチャートである。
【図10】この実施形態の工具欠陥検査方法における特徴抽出処理により欠陥部分を検出するフローチャートである。
【図11】この実施形態の工具欠陥検査方法における特徴抽出処理により欠陥部分を確定するフローチャートである。
【図12】この実施形態の工具欠陥検査方法における特徴抽出処理により抽出した境界を示す画像である。
【図13】この実施形態の工具欠陥検査方法における特徴抽出処理により検出した欠陥部分を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の画像の特徴抽出方法並びに工具欠陥検査方法と工具欠陥検査装置の一実施形態について、図面を基にして説明する。この実施形態の工具欠陥検査装置10と検査方法は、切削などに使用するドリル刃、タップ、バイト、フライス等の切削工具の刃先を形成するスローアウェイチップであるワーク12の検査に使用される。
【0027】
この工具欠陥検査装置10は、図1に示すように、後述する種々の照明装置20が設けられ、照明された検査対象であるワーク12を撮像するCCD等のカメラ14とレンズ15が、図示しない保持部材により固定されて、所定の位置に取り付けられている。さらに、カメラ14は、撮像した画像に対して所定の画像処理を施す処理プログラムが設けられたコンピュータ等の画像処理装置16に各々接続され、画像処理装置16にはその出力を表示する表示装置18が設けられている。
【0028】
ここで、ワーク12であるスローアウェイチップの外周部分である刃面12aのエッジ部分12bは、図4に示すように、拡大すると、小さな円弧形状をしている。従って、この刃面全体を均一に照明することができる照明装置20が必要であり、以下に述べるように配置されている。
【0029】
先ず、カメラ14とレンズ15は、その光軸がワーク12の表面である刃面12aに対して45°の角度に配置されている。そして、レンズ15の光軸である直線を通る垂直面(水平面と直交する平面)上に、照明装置20が配置される。ここでは、照明装置20に個々の照明を6個配置した例を示す。照明装置20の各照明の光軸の方向のなす角度は、照明20−1と照明20−2、照明20−2と照明20−3、照明20−3とカメラ14及びレンズ15、カメラ14及びレンズ15と照明20−4、照明16−4と照明16−5、及び照明16−5と照明16−6の、それぞれの間の角度は等しい角度に設定されている。さらに、図2に示すように、照明装置20の垂直方向の各光軸のなす角度と同じ角度で、照明20−6の両側に水平方向に照明20−7、照明20−8を配置する。即ち、照明20−6,20−7の光軸と刃面12aとのなす角度と、照明20−6,20−8の光軸と刃面12aとのなす角度は等しい。そして、照明20−1から照明20−8までの点灯状態と明るさを調整することにより、多種類の刃面形状に対応して均一な明るさの照明が可能となる。
【0030】
ここで、一般に照明は、図3に示すように、照明の光軸上の光強度が最大で、光軸から離れるにつれて光強度が小さくなる。従って、光強度が強く即ち明るく、均一な照明となるよう、光軸上と光軸付近の明るさの差が小さく、範囲が広い照明を用いるのが好ましい。例えば、図3に示すように、照明光の光強度分布1,2における破線h以上の光強度の範囲を用いる場合、光強度分布1の幅Aは、光強度分布2の幅Bに比べ広いため、光強度分布1となる照明を用いるのが好ましい。
【0031】
次に、この実施形態の工具欠陥検査装置10の図1、図2に示す装置により撮像した画像を用いて、ワーク12の刃面12aのエッジ部分12bの特徴及び欠陥部分を抽出する方法について説明する。一般に、ワーク12の刃面12aの撮像画像は、図5に示すように、刃面12aのエッジ部分12bや、欠陥部分が暗く、周辺部分が明るい。そこで、この画像に検査範囲を設けて、この範囲内で、刃面部分及び欠陥部分の特徴抽出を行う。
【0032】
先ず、図9に示すように、カメラ14により撮像した画像について、コンピュータ16の処理により、所定の検査範囲Aに区分けする(S1)。その区分けした検査範囲A内の画像(図6)について、画像平面内で縦軸方向であるY方向に、画像データの各画素の1ラインL毎に、その各画素の輝度Bの最小値Bmin及びその画素位置を求める。これを検査範囲A内の横方向であるX軸方向に1画素ずつ移動させながら検出し記憶する(S2)。この輝度Bの最小値Bminについてその全画素位置を繋ぐと、図6の破線で示す曲線Lbができる。この曲線Lbは刃面12aのエッジ部12bに相当する画素位置を抽出しているものであり、曲線Lbは、刃面12aのエッジ部分12bの特徴線である。
【0033】
さらに、各輝度最小値Bminに所定の輝度を加算し、閾値Bthを決める(S3)。そして、Y軸方向1ライン毎に上から下方向へ1画素ごとに輝度Bを調べ、輝度閾値Bthを挟んで、輝度閾値Bthより大きい輝度から小さい輝度に変わる画素位置B1と、輝度閾値Bthより小さい輝度から大きい輝度に変わる画素位置B2を求める(図7)。また、それらの位置を刃面12a部分及び欠陥部分の境界部分とする。これを検査範囲Aについて行い、図6に示す輝度最小値Bminの曲線上の画素位置から上下それぞれ移動した時に、最初に輝度閾値Bthと交差する境界部分の画素位置を求める。この幅は、後述するように欠陥部分については、図12に示す白抜き部分の上下方向の幅となる。それらの間隔を境界線幅Bwとして求める(S4)。さらに、境界線幅Bwの異常値を除去し、検査範囲A内の境界線幅Bwの平均値を求める。
【0034】
次に、図10に示すように、図6の輝度最小値Bminの曲線上の画素位置を左端から順に調べ、図8に示すように、右側に隣接する輝度最小値Bminの画素位置とのY軸方向の画素位置の差を求める(S5)。この差が所定の画素数n以上、例えば2画素以上ある場合、その画素位置は、「欠陥部分の可能性がある」と判断する(S6)。この状態で、画素位置を移動しながら縦方向の画素数の比較を行い、検査範囲Aの終端まで行う(S7)。
【0035】
また、「欠陥部分の可能性がある」位置での輝度最小値BminのY軸方向の画素位置と、移動先の画素位置、例えばX軸方向終端の画素列の輝度最小値BminのY軸方向の画素位置を比較する(S8)。これらのY軸方向の画素位置の差が所定の画素数m以上、例えば2画素以上ある画素列が、連続する場合、連続した個数が所定の個数p、例えばp>3画素となった場合に、「欠陥部分」と判断する(S9)。なお、上記移動先の画素位置は、適宜設定可能であり、隣接する画素列同士を比較しても良く、基準となるべき輝度最小値BminのY軸方向の画素位置をあらかじめ抽出するようにしても良い。
【0036】
さらに、図11に示すように、「欠陥部分」と判断した輝度最小値Bminの曲線上の画素範囲の左端の画素位置から順に、その画素位置での境界線幅と境界線幅の平均値との差を求める(S10)。この差が所定の値q(例えば3画素)よりも大きければ(S11)、「欠陥部分」と確定し(S12)、その境界線幅をY軸方向の長さとする。さらに、先に「欠陥部分」と判断した範囲でこの計算をし、「欠陥部分」と確定した部分がX軸方向に連続する画素数を、横方向(X軸方向)の長さとする。この方法により、欠陥の有無及び欠陥部分の大きさを求めることが可能となる。このようにして、図13の白抜き部分に示すように、連続する欠陥の位置と大きさを画素単位で検出することができる。
【0037】
この実施形態の画像の特徴抽出方法並びに工具欠陥検査装置と工具欠陥検査方法によれば、簡単なカメラ14とレンズ15、照明装置20、およびコンピュータによる画像処理装置16により、高速で正確な画像検査を行うことができる。特に、画像の輝度の変化を利用してその画像の特徴抽出を行うので、従来、検査が困難であった形状変化の小さな検査対象物の形状の特徴や欠陥の特徴を抽出することができる。さらに、この特徴抽出方法を刃物工具に適用し、刃面部分及び欠陥部分の画像の撮像及び抽出を、容易に且つ正確に行うことが可能である。
【0038】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、使用するカメラは撮像素子がCCD以外のものも用いることができ、画素単位の検出も1画素単位でなくても、複数の画素を1単位として、上述の処理を行っても良い。また、特徴抽出において、画像の輝度の最小値を検出して、その特徴線としたが、照明によっては、最大値の画素を繋いで特徴形状としても良い。
【符号の説明】
【0039】
10 工具欠陥検査装置
12 ワーク
12a 刃面
14 カメラ
15 レンズ
16 画像処理装置
18 表示装置
20 照明装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、CCDカメラなどの光学式撮像装置によって検査対象物の画像を撮像する方法を用い、各種回転切削工作機械の刃物工具であるスローアウェイチップや、ドリルやタップなどの刃物工具の刃の形状検査・欠陥検査に利用可能な、画像の特徴抽出方法並びに工具欠陥検査方法と工具欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばドリル刃、タップ、バイト、フライス等の切削工具の刃先を形成するスローアウェイチップには、適宜に厚みを有する略菱形や略正方形、又は略正三角形等に形成された多種類の構造が存在する。更に、スローアウェイチップは、粉体焼結製法によって作られる製品が多く、例えば数十μm程度の微細な欠けや割れ等の欠陥が、部分的または刃全体に亘って生じる場合があり、製品検査においては、これらを確実に識別する必要があった。従って、検査工程が複雑且つ微妙な判断が求められるため、従来、目視により、不良品の抽出並びに品種の仕分けが行われていた。
【0003】
人による目視検査では、欠陥部分と周辺部分の明るさの変化が小さい検査対象物に関して、検査対象物を動かして回転させながら明るさの変化を認識し、明るさの変化が大きくなる部分を欠陥部分若しくは検査対象物の形状が変わる部分と判断している。また、光を用いた外観検査においては、平面部分や急峻な角度のある辺の部分にある欠陥部分に関して、特定方向への光の反射や光の散乱により、欠陥部分と周辺部分の明るさの変化が大きい傾向があることを利用し、明るさの差異を用いて欠陥検査を行っている。
【0004】
しかしながら、目視による種別毎の不良品の抽出では、形状が一部のみ微妙に違う多種類の製品において、微細な欠けや変形などを有する不良品や、異品種の区分けが難しいものであった。そのため、仕分けの際に微細な欠陥や不良品を見落としたりすることがあった。さらに、弧などの緩やかな形状変化がある部分にある欠陥部分に関しては、欠陥の有無にかかわらず全方向への光の反射があるため、欠陥部分と周辺部分の明るさの変化が小さい傾向があり、欠陥部分の特定が困難である。また、欠陥自身が緩やかな形状変化をとる部分については、平面部分や円弧などの緩やかな形状変化がある部分にかかわらず、欠陥部分と周辺部分の明るさの変化が小さい傾向があり、欠陥部分の特定が困難であった。
【0005】
そこで、スローアウェイチップやその他刃物工具の欠陥検査には、目視による検査の他に、画像処理による検査も行われている。例えば、特許文献1〜3に開示されたスローアウェイチップの検査装置では、レーザ光を走査させてスローアウェイチップの切刃の形状的欠陥を検出し、切刃の欠損などを判別している。また、特許文献4には、ワークの刃先稜線を異なる角度から照明しカメラの撮像方向に対して両側に位置した複数の照明装置と、照明された前記ワークを撮像可能に形成されたカメラと、カメラにより撮像されたワークの検査像を画像処理する画像処理装置とを備え、ワークの検査工程毎にカメラを配置し、ステージ上でワークを移動させ、ワークの表面と側面及び刃先を撮像し、各々所定の基準像と各検査像とを比較して欠陥を判定する工具欠陥検査方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−202476号公報
【特許文献2】特開平10−202477号公報
【特許文献3】特開平10−202478号公報
【特許文献4】特開2007−278915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、欠陥検査用の自動機械を用いて外観検査を行う検査方法の場合、スローアウェイチップなどの刃物工具の刃面部分は円弧状になっており、緩やかな形状変化がある。そのため、刃面部分へ特定の方向から光を照射すると刃面の一部だけ光り、一定の明るさで刃面全体を見ることは困難である。従って、一定の明るさで刃面全体を見るためには、多角的な方向から検査対象物へ光を照射する必要がある。
【0008】
また、CCDカメラなどの光学式撮像方法によって画像を取得する場合、刃面部分に対して、カメラの位置は特定の位置・角度となるため、一定の明るさで刃面全体を見るためには、照明を多角的に配置して刃面全体の反射光がカメラに入射することにより1つの画像で検査範囲をカバーする方法、若しくは、検査対象物を3次元方向に移動・回転させ刃面の反射面を変えながら撮像することにより複数の刃面部分の画像を合成して検査範囲をカバーする方法のいずれかを用いる。しかし、前者の方法では照明機構が大掛かりになるため高価となり、後者の方法では検査対象物の搬送機構が複雑且つ撮像枚数が多くなるため高価且つ検査時間が長くなるものであった。
【0009】
また、一定の明るさで刃面全体を見る場合、検査対象物の形状の違いや良品部分と欠陥部分の違いがあってもそれらの輝度差が小さいため、欠陥部分のみ特定することが困難である。
【0010】
その他、特許文献1〜3に開示されている検査装置では、レーザ光の走査によりスローアウェイチップの刃線の欠損を検査しているものであり、装置が複雑であり、レーザ光のスポット径以下の微細な欠損を検知することができず、走査による検査時間も長く、検査項目が少なく多品種のスローアウェイチップを効率的に検査できるものではなかった。また、特許文献4に開示された検査装置は、複数方向からの照明装置から照射された照射光をワーク検査面に照射しているので、比較的明るく均一なワーク画像を得ることができるが、基準像と各検査像とを比較して欠陥を判定するので、画像処理が複雑になり、装置が高価になり検査時間がかかるものであった。
【0011】
この発明は、上記背景技術の問題に鑑みて成されたもので、安価かつ簡単な方法で、一定の明るさで容易に画像の特徴を抽出することができる画像の特徴抽出方法を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、この発明は、上記画像の特徴抽出方法を用いて、一定の明るさで刃面全体を見ることができ、効率良く正確に検査することができる工具欠陥検査方法と工具欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、均一な照明を用い、CCDカメラ等を用いた撮像装置によって画像を取得し、その画像の輝度変化を調べることにより欠陥検査を行う画像の特徴抽出方法並びに工具欠陥検査方法と工具欠陥検査装置である。
【0014】
CCDカメラなどの撮像方法によって画像を取得する場合、良好に撮像可能な条件は、工具の刃面部分に対してカメラの位置は特定の位置、角度となるため、一定の明るさで刃面全体を見るためには、照明を多角的に配置しなければならない。均一照明の下で撮像した画像を考えると、ある画素位置の輝度値と隣接する画素の輝度値の差はわずかである。すなわち、画像内の小さな領域では緩やかな輝度変化をとる。この画像に形状の異なる部分があると、輝度変化の傾向が変わる。この発明は、この現象を利用して、検査対象物の形状の特徴に対する輝度変化の特徴を予め決め、その輝度変化の特徴と異なる輝度変化となる部分を抽出する方法を用い、欠陥の有無及び欠陥部分の形状・大きさを検出するものである。
【0015】
この発明は、検査対象物を撮像してその形状の特徴線を抽出する特徴抽出方法において、撮像した画像データを、画像処理等を施さずにそのまま用いて、撮像素子の画素配列の縦軸方向や横軸方向若しくは斜め方向に1画素×n画素(nは自然数)の画素列をとり、その列内で前記各画素の輝度の最小値若しくは最大値となる画素を求め、その画素を前記検査対象物の形状の一部として抽出し、この抽出処理を前記画素列の方向と直交する方向に、前記画素列の位置を順次変えながら前記最小値若しくは最大値となる画素を求め、抽出した画素を繋ぎ合わせて検査対象物の特徴線として抽出する画像の特徴抽出方法である。
【0016】
前記撮像素子を備えたカメラのレンズの光軸を含む平面上及びその平面と直交する平面上に複数の照明を配置して、前記検査対象物を複数の角度から照明して、前記検査対象物を前記撮像素子により撮像して、前記検査対象物の特徴線を抽出するものである。前記複数の照明は、前記検査対象物のエッジに対して斜めに対面した前記カメラレンズを中心に、その両側に複数の照明が各々等角度に配置され、前記検査対象物を前記複数の照明により照らして、前記撮像素子の撮像範囲のうちの広範囲に亘り、明るく均一な画像の撮像を可能にするものである。
【0017】
さらに、前記撮像素子により撮像した画像を、複数の画像範囲に分割し、その際、比較的輝度が均一な画像範囲に分割して、画像範囲毎に前記検査対象物の特徴線を抽出するものである。
【0018】
前記画像範囲に前記画素列を定め、前記画像範囲の端の画素から順に前記画素列と直交する方向に各画素について、現在位置の画素と次の位置の画素の輝度を求め、現在位置の画素の輝度が所定の輝度閾値より小さく次の位置の画素の輝度が前記輝度閾値より大きくなる画素と、現在位置の画素の輝度が前記輝度閾値より大きく次の位置の画素の輝度が前記輝度閾値より小さくなる画素を求め、この処理を所定画素ずつ、例えば1画素ずつ前記画素列の方向と交差する方向に移動しながらこれらの条件を満たす全ての画素を求め、求めた各画素を繋いで得られた線分の間の画素範囲を境界部分として特徴抽出する画像の特徴抽出方法である。
【0019】
前記輝度閾値は、前記輝度の最小値に所定の輝度値を加算した値、若しくは、輝度最大値から所定の輝度値を減算した値を輝度閾値として設定するものである。
【0020】
また、検査対象物を撮像してその形状の特徴線を抽出する際に、前記特徴線の画素位置がその並びの延長方向からずれて次の前記特徴線の画素が存在する場合を、形状異常の可能性有り、と判断するものである。
【0021】
前記境界部分と前記特徴線との間隔の画素数を求め、この画素数の変化を元に境界線の特徴を抽出し、前記形状異常の可能性のある前記画素位置での、前記境界部分と前記特徴線との間の画素数が所定数の閾値を超えた場合、形状異常部分と判断するものである。
【0022】
前記形状異常部分と判断した前記特徴線上の画素範囲での前記境界線間の画素数と、前記画像範囲の前記境界線間の画素数の平均値との差を求め、前記差が所定の値よりも大きい場合に、その形状異常部分を欠陥部分と確定するものである。
【0023】
またこの発明は、上記画像の特徴抽出方法を用いて、工具刃面の欠陥検査を行う欠陥検査方法である。さらに、上記画像の特徴抽出方法を用いて、工具刃面の欠陥検査を行う工具欠陥検査装置である。
【発明の効果】
【0024】
この発明の画像の特徴抽出方法並びに工具欠陥検査装置と工具欠陥検査方法によれば、簡単な撮像装置と照明装置により、画像の輝度の変化を利用してその画像の特徴抽出を行うことができる。これにより、従来、検査が困難であった形状変化の小さな検査対象物の形状の特徴や欠陥の特徴を抽出することができる。さらに、この特徴抽出方法を刃物工具に適用することにより、刃面部分及び欠陥部分の画像の撮像及び抽出が容易に可能である。特に、この発明に用いられる照明装置により工具の刃部を照明した場合、均一に照明される照明範囲が広く、最大の明るさで広範囲に均一な輝度の画像の撮像が可能である。そして、従来よりも低価格かつ汎用性の高い機能を有し、従来では自動検出困難であった形状変化の小さな形状の特徴抽出機能を備えた検査装置を実現可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の一実施形態の工具欠陥検査装置を示す概略全体構成図である。
【図2】この実施形態の工具欠陥検査装置の照明装置の一部を示す概略斜視図である。
【図3】この実施形態に用いる照明の光強度部分布を示すグラフである。
【図4】この実施形態の工具欠陥検査装置により検査されるスローアウェイチップの刃面の部分拡大図である。
【図5】この実施形態の工具欠陥検査装置により撮像されたスローアウェイチップのエッジ部の部分拡大画像である。
【図6】この実施形態の工具欠陥検査装置により検査される工具刃面の画像の模式図である。
【図7】この実施形態の工具欠陥検査装置により撮像された画像の一部の画素列の輝度を示すグラフである。
【図8】この実施形態の工具欠陥検査装置により欠陥部分と判断される画像部分の画素を示す模式図である。
【図9】この実施形態の工具欠陥検査方法における特徴抽出処理のフローチャートである。
【図10】この実施形態の工具欠陥検査方法における特徴抽出処理により欠陥部分を検出するフローチャートである。
【図11】この実施形態の工具欠陥検査方法における特徴抽出処理により欠陥部分を確定するフローチャートである。
【図12】この実施形態の工具欠陥検査方法における特徴抽出処理により抽出した境界を示す画像である。
【図13】この実施形態の工具欠陥検査方法における特徴抽出処理により検出した欠陥部分を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の画像の特徴抽出方法並びに工具欠陥検査方法と工具欠陥検査装置の一実施形態について、図面を基にして説明する。この実施形態の工具欠陥検査装置10と検査方法は、切削などに使用するドリル刃、タップ、バイト、フライス等の切削工具の刃先を形成するスローアウェイチップであるワーク12の検査に使用される。
【0027】
この工具欠陥検査装置10は、図1に示すように、後述する種々の照明装置20が設けられ、照明された検査対象であるワーク12を撮像するCCD等のカメラ14とレンズ15が、図示しない保持部材により固定されて、所定の位置に取り付けられている。さらに、カメラ14は、撮像した画像に対して所定の画像処理を施す処理プログラムが設けられたコンピュータ等の画像処理装置16に各々接続され、画像処理装置16にはその出力を表示する表示装置18が設けられている。
【0028】
ここで、ワーク12であるスローアウェイチップの外周部分である刃面12aのエッジ部分12bは、図4に示すように、拡大すると、小さな円弧形状をしている。従って、この刃面全体を均一に照明することができる照明装置20が必要であり、以下に述べるように配置されている。
【0029】
先ず、カメラ14とレンズ15は、その光軸がワーク12の表面である刃面12aに対して45°の角度に配置されている。そして、レンズ15の光軸である直線を通る垂直面(水平面と直交する平面)上に、照明装置20が配置される。ここでは、照明装置20に個々の照明を6個配置した例を示す。照明装置20の各照明の光軸の方向のなす角度は、照明20−1と照明20−2、照明20−2と照明20−3、照明20−3とカメラ14及びレンズ15、カメラ14及びレンズ15と照明20−4、照明16−4と照明16−5、及び照明16−5と照明16−6の、それぞれの間の角度は等しい角度に設定されている。さらに、図2に示すように、照明装置20の垂直方向の各光軸のなす角度と同じ角度で、照明20−6の両側に水平方向に照明20−7、照明20−8を配置する。即ち、照明20−6,20−7の光軸と刃面12aとのなす角度と、照明20−6,20−8の光軸と刃面12aとのなす角度は等しい。そして、照明20−1から照明20−8までの点灯状態と明るさを調整することにより、多種類の刃面形状に対応して均一な明るさの照明が可能となる。
【0030】
ここで、一般に照明は、図3に示すように、照明の光軸上の光強度が最大で、光軸から離れるにつれて光強度が小さくなる。従って、光強度が強く即ち明るく、均一な照明となるよう、光軸上と光軸付近の明るさの差が小さく、範囲が広い照明を用いるのが好ましい。例えば、図3に示すように、照明光の光強度分布1,2における破線h以上の光強度の範囲を用いる場合、光強度分布1の幅Aは、光強度分布2の幅Bに比べ広いため、光強度分布1となる照明を用いるのが好ましい。
【0031】
次に、この実施形態の工具欠陥検査装置10の図1、図2に示す装置により撮像した画像を用いて、ワーク12の刃面12aのエッジ部分12bの特徴及び欠陥部分を抽出する方法について説明する。一般に、ワーク12の刃面12aの撮像画像は、図5に示すように、刃面12aのエッジ部分12bや、欠陥部分が暗く、周辺部分が明るい。そこで、この画像に検査範囲を設けて、この範囲内で、刃面部分及び欠陥部分の特徴抽出を行う。
【0032】
先ず、図9に示すように、カメラ14により撮像した画像について、コンピュータ16の処理により、所定の検査範囲Aに区分けする(S1)。その区分けした検査範囲A内の画像(図6)について、画像平面内で縦軸方向であるY方向に、画像データの各画素の1ラインL毎に、その各画素の輝度Bの最小値Bmin及びその画素位置を求める。これを検査範囲A内の横方向であるX軸方向に1画素ずつ移動させながら検出し記憶する(S2)。この輝度Bの最小値Bminについてその全画素位置を繋ぐと、図6の破線で示す曲線Lbができる。この曲線Lbは刃面12aのエッジ部12bに相当する画素位置を抽出しているものであり、曲線Lbは、刃面12aのエッジ部分12bの特徴線である。
【0033】
さらに、各輝度最小値Bminに所定の輝度を加算し、閾値Bthを決める(S3)。そして、Y軸方向1ライン毎に上から下方向へ1画素ごとに輝度Bを調べ、輝度閾値Bthを挟んで、輝度閾値Bthより大きい輝度から小さい輝度に変わる画素位置B1と、輝度閾値Bthより小さい輝度から大きい輝度に変わる画素位置B2を求める(図7)。また、それらの位置を刃面12a部分及び欠陥部分の境界部分とする。これを検査範囲Aについて行い、図6に示す輝度最小値Bminの曲線上の画素位置から上下それぞれ移動した時に、最初に輝度閾値Bthと交差する境界部分の画素位置を求める。この幅は、後述するように欠陥部分については、図12に示す白抜き部分の上下方向の幅となる。それらの間隔を境界線幅Bwとして求める(S4)。さらに、境界線幅Bwの異常値を除去し、検査範囲A内の境界線幅Bwの平均値を求める。
【0034】
次に、図10に示すように、図6の輝度最小値Bminの曲線上の画素位置を左端から順に調べ、図8に示すように、右側に隣接する輝度最小値Bminの画素位置とのY軸方向の画素位置の差を求める(S5)。この差が所定の画素数n以上、例えば2画素以上ある場合、その画素位置は、「欠陥部分の可能性がある」と判断する(S6)。この状態で、画素位置を移動しながら縦方向の画素数の比較を行い、検査範囲Aの終端まで行う(S7)。
【0035】
また、「欠陥部分の可能性がある」位置での輝度最小値BminのY軸方向の画素位置と、移動先の画素位置、例えばX軸方向終端の画素列の輝度最小値BminのY軸方向の画素位置を比較する(S8)。これらのY軸方向の画素位置の差が所定の画素数m以上、例えば2画素以上ある画素列が、連続する場合、連続した個数が所定の個数p、例えばp>3画素となった場合に、「欠陥部分」と判断する(S9)。なお、上記移動先の画素位置は、適宜設定可能であり、隣接する画素列同士を比較しても良く、基準となるべき輝度最小値BminのY軸方向の画素位置をあらかじめ抽出するようにしても良い。
【0036】
さらに、図11に示すように、「欠陥部分」と判断した輝度最小値Bminの曲線上の画素範囲の左端の画素位置から順に、その画素位置での境界線幅と境界線幅の平均値との差を求める(S10)。この差が所定の値q(例えば3画素)よりも大きければ(S11)、「欠陥部分」と確定し(S12)、その境界線幅をY軸方向の長さとする。さらに、先に「欠陥部分」と判断した範囲でこの計算をし、「欠陥部分」と確定した部分がX軸方向に連続する画素数を、横方向(X軸方向)の長さとする。この方法により、欠陥の有無及び欠陥部分の大きさを求めることが可能となる。このようにして、図13の白抜き部分に示すように、連続する欠陥の位置と大きさを画素単位で検出することができる。
【0037】
この実施形態の画像の特徴抽出方法並びに工具欠陥検査装置と工具欠陥検査方法によれば、簡単なカメラ14とレンズ15、照明装置20、およびコンピュータによる画像処理装置16により、高速で正確な画像検査を行うことができる。特に、画像の輝度の変化を利用してその画像の特徴抽出を行うので、従来、検査が困難であった形状変化の小さな検査対象物の形状の特徴や欠陥の特徴を抽出することができる。さらに、この特徴抽出方法を刃物工具に適用し、刃面部分及び欠陥部分の画像の撮像及び抽出を、容易に且つ正確に行うことが可能である。
【0038】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、使用するカメラは撮像素子がCCD以外のものも用いることができ、画素単位の検出も1画素単位でなくても、複数の画素を1単位として、上述の処理を行っても良い。また、特徴抽出において、画像の輝度の最小値を検出して、その特徴線としたが、照明によっては、最大値の画素を繋いで特徴形状としても良い。
【符号の説明】
【0039】
10 工具欠陥検査装置
12 ワーク
12a 刃面
14 カメラ
15 レンズ
16 画像処理装置
18 表示装置
20 照明装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を撮像してその形状の特徴線を抽出する特徴抽出方法において、撮像した画像データをそのまま用いて、撮像素子の画素配列の縦軸方向や横軸方向若しくは斜め方向に1画素×n画素(nは自然数)の画素列をとり、その列内で前記各画素の輝度の最小値若しくは最大値となる画素を求め、その画素を前記検査対象物の形状の一部として抽出し、この抽出処理を前記画素列の方向と直交する方向に、前記画素列の位置を順次変えながら前記最小値若しくは最大値となる画素を求め、抽出した画素を繋ぎ合わせて検査対象物の特徴線として抽出することを特徴とする画像の特徴抽出方法。
【請求項2】
前記撮像素子を備えたカメラのレンズの光軸を含む平面上及びその平面と直交する平面上に複数の照明を配置して、前記検査対象物を複数の角度から照明して、前記検査対象物を前記撮像素子により撮像して、前記検査対象物の特徴線を抽出する請求項1記載の画像の特徴抽出方法。
【請求項3】
前記複数の照明は、前記検査対象物のエッジに対して斜めに対面した前記カメラレンズを中心に、その両側に複数の照明が各々等角度に配置され、前記検査対象物を前記複数の照明により照らして、前記撮像素子の撮像範囲のうちの広範囲に亘り、明るく均一な画像の撮像を可能にする請求項2記載の画像の特徴抽出方法。
【請求項4】
前記撮像素子により撮像した画像を、複数の画像範囲に分割し、その際比較的輝度が均一な画像範囲に分割して、画像範囲毎に前記検査対象物の特徴線を抽出する請求項1記載の画像の特徴抽出方法。
【請求項5】
前記画像範囲に前記画素列を定め、前記画像範囲の端の画素から順に前記画素列と直交する方向に各画素について、現在位置の画素と次の位置の画素の輝度を求め、現在位置の画素の輝度が所定の輝度閾値より小さく次の位置の画素の輝度が前記輝度閾値より大きくなる画素と、現在位置の画素の輝度が前記輝度閾値より大きく次の位置の画素の輝度が前記輝度閾値より小さくなる画素を求め、この処理を所定画素ずつ前記画素列の方向と交差する方向に移動しながらこれらの条件を満たす全ての画素を求め、求めた各画素を繋いで得られた線分の間の画素範囲を境界部分として特徴抽出する請求項1記載の画像の特徴抽出方法。
【請求項6】
前記輝度閾値は、前記輝度の最小値に所定の輝度値を加算した値、若しくは、輝度最大値から所定の輝度値を減算した値を輝度閾値として設定する請求項5記載の画像の特徴抽出方法。
【請求項7】
検査対象物を撮像してその形状の特徴線を抽出する際に、前記特徴線の画素位置がその並びの延長方向からずれて次の前記特徴線の画素が存在する場合を、形状異常の可能性有り、と判断する請求項5又は6記載の画像の特徴抽出方法。
【請求項8】
前記境界部分と前記特徴線との間隔の画素数を求め、この画素数の変化を元に境界線の特徴を抽出し、前記形状異常の可能性のある前記画素位置での、前記境界部分と前記特徴線との間隔の画素数が所定の閾値を超えた場合、形状異常部分と判断する請求項5又は6記載の画像の特徴抽出方法。
【請求項9】
前記形状異常部分と判断した前記特徴線上の画素範囲での前記境界線間の画素数と、前記画像範囲の前記境界線間の画素数の平均値との差を求め、前記差が所定の値よりも大きい場合に、その形状異常部分を欠陥部分と確定する請求項5又は6記載の画像の特徴抽出方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9記載の画像の特徴抽出方法を用いて、工具刃面の欠陥検査を行う欠陥検査方法。
【請求項11】
請求項10の画像の特徴抽出方法を用いて、工具刃面の欠陥検査を行う工具欠陥検査装置。
【請求項1】
検査対象物を撮像してその形状の特徴線を抽出する特徴抽出方法において、撮像した画像データをそのまま用いて、撮像素子の画素配列の縦軸方向や横軸方向若しくは斜め方向に1画素×n画素(nは自然数)の画素列をとり、その列内で前記各画素の輝度の最小値若しくは最大値となる画素を求め、その画素を前記検査対象物の形状の一部として抽出し、この抽出処理を前記画素列の方向と直交する方向に、前記画素列の位置を順次変えながら前記最小値若しくは最大値となる画素を求め、抽出した画素を繋ぎ合わせて検査対象物の特徴線として抽出することを特徴とする画像の特徴抽出方法。
【請求項2】
前記撮像素子を備えたカメラのレンズの光軸を含む平面上及びその平面と直交する平面上に複数の照明を配置して、前記検査対象物を複数の角度から照明して、前記検査対象物を前記撮像素子により撮像して、前記検査対象物の特徴線を抽出する請求項1記載の画像の特徴抽出方法。
【請求項3】
前記複数の照明は、前記検査対象物のエッジに対して斜めに対面した前記カメラレンズを中心に、その両側に複数の照明が各々等角度に配置され、前記検査対象物を前記複数の照明により照らして、前記撮像素子の撮像範囲のうちの広範囲に亘り、明るく均一な画像の撮像を可能にする請求項2記載の画像の特徴抽出方法。
【請求項4】
前記撮像素子により撮像した画像を、複数の画像範囲に分割し、その際比較的輝度が均一な画像範囲に分割して、画像範囲毎に前記検査対象物の特徴線を抽出する請求項1記載の画像の特徴抽出方法。
【請求項5】
前記画像範囲に前記画素列を定め、前記画像範囲の端の画素から順に前記画素列と直交する方向に各画素について、現在位置の画素と次の位置の画素の輝度を求め、現在位置の画素の輝度が所定の輝度閾値より小さく次の位置の画素の輝度が前記輝度閾値より大きくなる画素と、現在位置の画素の輝度が前記輝度閾値より大きく次の位置の画素の輝度が前記輝度閾値より小さくなる画素を求め、この処理を所定画素ずつ前記画素列の方向と交差する方向に移動しながらこれらの条件を満たす全ての画素を求め、求めた各画素を繋いで得られた線分の間の画素範囲を境界部分として特徴抽出する請求項1記載の画像の特徴抽出方法。
【請求項6】
前記輝度閾値は、前記輝度の最小値に所定の輝度値を加算した値、若しくは、輝度最大値から所定の輝度値を減算した値を輝度閾値として設定する請求項5記載の画像の特徴抽出方法。
【請求項7】
検査対象物を撮像してその形状の特徴線を抽出する際に、前記特徴線の画素位置がその並びの延長方向からずれて次の前記特徴線の画素が存在する場合を、形状異常の可能性有り、と判断する請求項5又は6記載の画像の特徴抽出方法。
【請求項8】
前記境界部分と前記特徴線との間隔の画素数を求め、この画素数の変化を元に境界線の特徴を抽出し、前記形状異常の可能性のある前記画素位置での、前記境界部分と前記特徴線との間隔の画素数が所定の閾値を超えた場合、形状異常部分と判断する請求項5又は6記載の画像の特徴抽出方法。
【請求項9】
前記形状異常部分と判断した前記特徴線上の画素範囲での前記境界線間の画素数と、前記画像範囲の前記境界線間の画素数の平均値との差を求め、前記差が所定の値よりも大きい場合に、その形状異常部分を欠陥部分と確定する請求項5又は6記載の画像の特徴抽出方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9記載の画像の特徴抽出方法を用いて、工具刃面の欠陥検査を行う欠陥検査方法。
【請求項11】
請求項10の画像の特徴抽出方法を用いて、工具刃面の欠陥検査を行う工具欠陥検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図5】
【公開番号】特開2010−266366(P2010−266366A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118774(P2009−118774)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(591124721)立山マシン株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(591124721)立山マシン株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
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