説明

画像処理装置、画像処理方法、およびプログラム

【課題】複数の画像を対象とした対応点の探索処理における精度の維持と速度の向上とを両立させることが可能な対応点探索技術を提供する。
【解決手段】次の処理が行われる。第1画像の第1領域が第1周波数成分情報に変換されるとともに、第2画像の第2領域が第2周波数成分情報に変換される。第1および第2周波数成分情報に基づき、第1領域と第2領域との相関を示す第1相関値が算出される。第1相関値に基づき、相関演算部での演算における周波数成分情報の使用が制限される周波数の使用制限範囲が設定される。第1画像に対応する第3画像の第3領域が第3周波数成分情報に変換されるとともに、第2画像に対応する第4画像の第4領域が第4周波数成分情報に変換される。第3および第4周波数成分情報のうちの使用制限範囲外の周波数に係る周波数成分情報に基づき、第3領域と第4領域との相関を示す第2相関値が算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ステレオカメラを用いて異なる視点から撮像された2つの画像を対象として、一方の画像の各画素に対し、2つの画像の間における相関(すなわち類似の度合い)が求められ、該相関に基づいて同一の部分が捉えられた点(以下「対応点」と称する)が他方の画像から検出される技術(以下「対応点探索技術」と称する)が知られている。
【0003】
この対応点探索技術については、一方の画像の各画素に対し、2つの画像の間における各周波数の正弦波の位相差の成分に基づいて投票空間上に投票が行われることで、他方の画像上の対応点が求められる技術が提案されている(例えば、特許文献1等)。また、投票時に重み付けが加えられる技術も提案されている(例えば、非特許文献1等)。更に、エピポーララインに沿った1次元の画像領域を用いた位相限定相関法による対応点の探索処理が実行されることで、演算量の低減が図られる技術も提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3468182号公報
【特許文献2】特開2008−123141号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】IEICE transactions on information and systems E87-D(1) pp.58-65(2004), KOUZUKI I(Kogakuin Univ., Tokyo, Jpn) KANEKO T(Kogakuin Univ., Tokyo, Jpn) ITO M(Kogakuin Univ., Tokyo, Jpn) "Precise and Reliable Image Shift Detection by a New Phase-Difference Spectrum Analysis (PSA) Method"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1および非特許文献1の各技術では、演算量が膨大となるため、演算に長時間を要する。また、上記特許文献2の技術では、エピポーララインに沿った一次元の画像領域には含まれない領域に対しては該技術を適用することが不可能である上に、各対応点の探索に用いられる領域(すなわちデータ量)が少な過ぎるため、対応点の探索処理における精度の低下を招く。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、複数の画像を対象とした対応点の探索処理における精度の維持と速度の向上とを両立させることが可能な対応点探索技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の態様に係る画像処理装置は、第1画像の第1領域を第1周波数成分情報に変換するとともに、第2画像の第2領域を第2周波数成分情報に変換する変換部と、前記第1および第2周波数成分情報に基づいて、前記第1領域と前記第2領域との相関を示す第1相関値を算出する相関演算部と、前記第1相関値に基づいて、前記相関演算部での演算における周波数成分情報の使用が制限される周波数の使用制限範囲を設定する制限部と、を備える。そして、該画像処理装置では、前記変換部が、前記第1画像に対応する第3画像の第3領域を第3周波数成分情報に変換するとともに、前記第2画像に対応する第4画像の第4領域を第4周波数成分情報に変換し、前記相関演算部が、前記第3および第4周波数成分情報のうちの前記使用制限範囲外の周波数に係る周波数成分情報に基づいて、前記第3領域と前記第4領域との相関を示す第2相関値を算出する。
【0009】
第2の態様に係る画像処理装置は、第1の態様に係る画像処理装置であって、前記第3画像から所定ルールに従って画素数を低減することで前記第1画像を生成するとともに、前記第4画像から前記所定ルールに従って画素数を低減することで前記第2画像を生成する生成部、を更に備える。
【0010】
第3の態様に係る画像処理装置は、第1または第2の態様に係る画像処理装置であって、前記第3および第4画像が、同一の被写体を異なる視点から捉えた複数の画像である。
【0011】
第4の態様に係る画像処理装置は、第1画像の第1領域を第1周波数成分情報に変換するとともに、第2画像の第2領域を第2周波数成分情報に変換し、前記第2画像の第3領域を第3周波数成分情報に変換するとともに、第3画像の第4領域を第4周波数成分情報に変換する変換部と、前記第1および第2周波数成分情報に基づいて、前記第1領域と前記第2領域との相関を示す第1相関値を算出する相関演算部と、前記第1相関値に基づいて、前記相関演算部での演算における周波数成分情報の使用が制限される周波数の使用制限範囲を設定する制限部と、を備える。そして、該画像処理装置では、前記相関演算部が、前記第3および第4周波数成分情報のうちの前記使用制限範囲外の周波数に係る周波数成分情報に基づいて、前記第3領域と前記第4領域との相関を示す第2相関値を算出する。
【0012】
第5の態様に係る画像処理装置は、第4の態様に係る画像処理装置であって、前記第1から第3画像が、同一の視点から同一の被写体の時間的な変化を捉えた複数の画像である。
【0013】
第6の態様に係る画像処理装置は、第1から第5の何れか1つの態様に係る画像処理装置であって、前記制限部が、前記第1相関値が大きくなるに従って、前記変換部で得られる各前記周波数成分情報のうちの最も低周波側からより広範囲の周波数に係る周波数成分情報の使用が制限されるように、前記使用制限範囲を設定する。
【0014】
第7の態様に係る画像処理装置は、第1から第6の何れか1つの態様に係る画像処理装置であって、前記制限部が、前記第1相関値が小さくなるに従って、前記変換部で得られる各前記周波数成分情報のうちの最も高周波側からより広範囲の周波数に係る周波数成分情報の使用が制限されるように、前記使用制限範囲を設定する。
【0015】
第8の態様に係る画像処理方法は、第1画像の第1領域を第1周波数成分情報に変換するとともに、第2画像の第2領域を第2周波数成分情報に変換する第1変換ステップと、前記第1および第2周波数成分情報に基づいて、前記第1領域と前記第2領域との相関を示す第1相関値を算出する第1演算ステップと、前記第1相関値に基づいて、前記相関演算部での演算における周波数成分情報の使用が制限される周波数の使用制限範囲を設定する設定ステップと、前記第1画像に対応する第3画像の第3領域を第3周波数成分情報に変換するとともに、前記第2画像に対応する第4画像の第4領域を第4周波数成分情報に変換する第2変換ステップと、前記第3および第4周波数成分情報のうちの前記使用制限範囲外の周波数に係る周波数成分情報に基づいて、前記第3領域と前記第4領域との相関を示す第2相関値を算出する第2演算ステップと、を備える。
【0016】
第9の態様に係る画像処理方法は、第1画像の第1領域を第1周波数成分情報に変換するとともに、第2画像の第2領域を第2周波数成分情報に変換する第1変換ステップと、前記第1周波数成分情報と前記第2周波数成分情報とに基づいて、前記第1領域と前記第2領域との相関を示す第1相関値を算出する第1演算ステップと、前記第1相関値に基づいて、相関演算における周波数成分情報の使用が制限される周波数の使用制限範囲を設定する設定ステップと、前記第2画像の第3領域を第3周波数成分情報に変換するとともに、第3画像の第4領域を第4周波数成分情報に変換する第2変換ステップと、前記第3および第4周波数成分情報のうちの前記使用制限範囲外の周波数の周波数成分情報に基づいて、前記第3領域と前記第4領域との相関を示す第2相関値を算出する第2演算ステップと、を備える。
【0017】
第10の態様に係るプログラムは、情報処理装置に含まれる制御部において実行されることにより、前記情報処理装置を、第1から第7の何れか1つの態様に係る画像処理装置として機能させるプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
第1から第3の何れの態様に係る画像処理装置によっても、複数の画像の間における類似の度合いを示す相関値に基づいて、該複数の画像に対応する別の複数の画像の間における類似の度合いを示す相関値を算出する際の演算量が低減されるため、複数の画像を対象とした対応点の探索処理における精度の維持と速度の向上とが両立する。
【0019】
第4および第5の何れの態様に係る画像処理装置によっても、第1画像と第2画像との間における類似の度合いを示す相関値に基づいて、第2画像と第3画像との間における類似の度合いを示す相関値を算出する際の演算量が低減されるため、複数の画像を対象とした対応点の探索処理における精度の維持と速度の向上とが両立する。
【0020】
第6および第7の何れの態様に係る画像処理装置によっても、演算量の低減による探索速度の向上が図られる。
【0021】
第8の態様に係る画像処理方法によれば、第1の態様に係る画像処理装置と同様な効果が得られる。
【0022】
第9の態様に係る画像処理方法によれば、第4の態様に係る画像処理装置と同様な効果が得られる。
【0023】
第10の態様に係るプログラムによれば、第1から第7の何れか1つの態様に係る画像処理装置と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施形態に係る情報処理システムの概略構成を示す図である。
【図2】一実施形態に係る情報処理システムの要部構成を示すブロック図である。
【図3】一実施形態に係る制御部の機能的な構成例を示す図である。
【図4】基準画像および参照画像を例示する模式図である。
【図5】第1縮小基準画像および第1縮小参照画像を例示する模式図である。
【図6】第2縮小基準画像および第2縮小参照画像を例示する模式図である。
【図7】第3縮小基準画像および第3縮小参照画像を例示する模式図である。
【図8】基準画像に対する基準点の設定態様を模式的に示す図である。
【図9】3層目に係る基準点および処理対象点の設定例を示す模式図である。
【図10】2層目に係る基準点および処理対象点の設定例を示す模式図である。
【図11】1層目に係る基準点の設定例を示す模式図である。
【図12】1層目に係る処理対象点の設定例を示す模式図である。
【図13】基準画像における基準点の設定例を示す模式図である。
【図14】参照画像における処理対象点の設定例を示す模式図である。
【図15】3層目に係る基準領域および比較領域の設定例を示す模式図である。
【図16】2層目に係る基準領域および比較領域の設定例を示す模式図である。
【図17】1層目に係る基準領域の設定例を示す模式図である。
【図18】1層目に係る比較領域の設定例を示す模式図である。
【図19】基準画像に対する基準領域の設定例を示す模式図である。
【図20】参照画像に対する比較領域の設定例を示す模式図である。
【図21】周波数と重み付け係数との関係を例示する図である。
【図22】周波数と重み付け係数との関係を例示する図である。
【図23】相関値と重み付け係数との関係を例示する模式図である。
【図24】相関値と重み付け係数との関係を例示する模式図である。
【図25】相関値と重み付け係数との関係を例示する模式図である。
【図26】相関演算で使用される投票空間を例示する図である。
【図27】相関演算における投票方法を説明するための図である。
【図28】相関演算における投票方法を説明するための図である。
【図29】一実施形態に係る対応点探索動作のフローを示すフローチャートである。
【図30】一実施形態に係る対応点探索動作のフローを示すフローチャートである。
【図31】一実施形態に係る対応点探索動作のフローを示すフローチャートである。
【図32】一変形例に係る情報処理システムの概略構成を示す図である。
【図33】一変形例に係る情報処理システムの要部構成を示すブロック図である。
【図34】T1フレーム画像を例示する模式図である。
【図35】T2フレーム画像を例示する模式図である。
【図36】T3フレーム画像を例示する模式図である。
【図37】一変形例に係る制御部の機能的な構成例を示す図である。
【図38】一変形例に係る対応点探索動作のフローを示すフローチャートである。
【図39】一変形例に係る対応点探索動作のフローを示すフローチャートである。
【図40】一変形例に係る対応点探索動作のフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
<(1)情報処理システムの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理システム1Aの概略構成を示す図であり、図2は、情報処理システム1Aの要部構成を示すブロック図である。
【0027】
情報処理システム1Aは、2眼のステレオカメラ2と、ステレオカメラ2に対してデータの送受信が可能に接続される情報処理装置3とを備える。
【0028】
2眼のステレオカメラ2には、それぞれ撮像素子を有する2つの撮像系21,22が設けられる。撮像系21,22は、所定方向に沿って離隔配置され、カメラ正面の被写体OBを、同じタイミングで異なる視点から撮像するように構成される。撮像系21,22による同じタイミングの撮像によって得られる2つの画像データ(以下「画像」と略称する)は、いわゆるステレオ画像であり、データ線CBを介して情報処理装置3に送信される。
【0029】
以下では、撮像系21の撮像によって取得される画像を「第1撮像画像」G1と称し、撮像系22の撮像によって取得される画像を「第2撮像画像」G2と称する。つまり、第1および第2撮像画像G1,G2は、同一の被写体OBが異なる視点からそれぞれ捉えられた画像の組を成す。
【0030】
ここでは、説明の複雑化を避けるために、第1撮像画像G1において被写体の或る部分が捉えられた画素の座標と、第2撮像画像G2において被写体の同一部分が捉えられた画素の座標とが、縦方向(Y方向)には略同一で且つ横方向(X方向)に異なるように撮像系21と撮像系22とが設置されているものとして説明する。
【0031】
また、説明を簡素化するために、ステレオカメラ2の収差は良好に補正されており、且つ撮像系21,22は、略平行(好ましくは完全に平行)に設定される。つまり、撮像系21,22の光軸が略平行(好ましくは完全に平行)に設定される。なお、実際のステレオカメラ2の構成が、このような条件にない場合は、第1および第2撮像画像G1,G2に対する画像処理により、同等の条件下で撮像されたステレオ画像に変換されても良い。
【0032】
情報処理装置3は、例えばパーソナルコンピュータ(パソコン)で構成され、マウスやキーボード等を含む操作部31と、液晶ディスプレイ等で構成される表示部32と、ステレオカメラ2からのデータを受信するインターフェース(I/F)部33とを備える。また、情報処理装置3は、記憶部34と入出力部35と制御部36とを有する。
【0033】
記憶部34は、例えばハードディスク等で構成され、ステレオカメラ2の撮像によって得られる第1および第2撮像画像G1,G2を記憶する。また、記憶部34には、後述される対応点探索動作を行うためのプログラムPGa等が格納される。
【0034】
入出力部35は、例えばディスクドライブを備えて構成され、光ディスク等の記憶媒体9を受け付け、制御部36との間でデータの授受を行う。
【0035】
制御部36は、プロセッサーとして働くCPU36aと、情報を一時的に記憶するメモリ36bとを有し、情報処理装置3の各部を統括的に制御する。制御部36では、記憶部34内のプログラムPGaが読み込まれて実行されることで、各種機能や各種情報処理等が実現される。なお、メモリ36bには、記憶媒体9に記憶されているプログラムデータを入出力部35を介して格納させることができる。この格納されたプログラムは、情報処理装置3の動作に適宜反映可能である。
【0036】
また、制御部36は、ステレオカメラ2で取得されたステレオ画像を構成する第1および第2撮像画像G1,G2の間において被写体の同じ部分を捉えた点を探索する一連の動作(以下「対応点探索動作」とも称する)を行う。
【0037】
更に、制御部36は、対応点探索動作によって得られる情報を用いた三角測量の原理に基づき、被写体OBの3次元空間における位置(以下「3次元位置」とも称する)を算出する。そして、表示部32では、制御部36で算出された被写体OBの3次元位置に基づいて、被写体OBを3次元的に表した画像(以下「3次元画像」とも称する)が可視的に出力される。
【0038】
<(2)対応点探索動作>
本実施形態に係る対応点探索動作では、次の2つの工程(I)(II)がこの順番で順次に行われる。
【0039】
(I)ステレオ画像を構成する第1撮像画像G1と第2撮像画像G2との組がベースとされて、解像度が複数段階に低減された画像の組が生成される。
【0040】
(II)第1撮像画像G1の各画素について、解像度が低い画像の組から順に、一方の画像の基準となる点(以下「基準点」と称する)と同じ被写体の部分を捉えた点(以下「対応点」と称する)を他方の画像から探索する処理(以下「対応点探索処理」とも称する)が行われる。各対応点探索処理では、2つの画像の間における類似の度合い(以下「相関」とも称する)が周波数成分を用いて求められ、該相関に応じて基準点に対応する対応点が検出される。なお、ここで言う「周波数成分」には、画像上における画素値の空間的な変化を表す各周波数の正弦波についての振幅と位相とが含まれる。
【0041】
工程(II)では、或る解像度の画像の組を対象とした対応点探索処理において、この或る解像度の画像の組よりも解像度が1段階低い画像の組を対象とした対応点探索処理の結果が利用される。
【0042】
更に、工程(II)では、対応点探索処理における精度の維持と速度の向上とを両立させることを目的として、或る解像度の画像の組を対象とした対応点探索処理では、この或る解像度の画像の組よりも解像度が1段階低い画像の組を対象とした対応点探索処理で求められる画像間の相関を示す値(以下「相関値」とも称する)の高低に応じて、演算に使用される周波数成分が制限される。ここでは、周波数成分の制限が、振幅に対して後述される重み付け係数が乗ぜられることで実現される。
【0043】
なお、本実施形態では、演算に使用される周波数成分の制限に資する相関値として、後述されるピーク相関値Cmaxが採用されている例を挙げて説明する。
【0044】
以下、対応点探索動作を実現するための機能的な構成、および対応点探索動作のフローについて順次に説明する。
【0045】
<(2-1)対応点探索動作に係る機能的な構成>
図3は、対応点探索動作を実行するために制御部36で実現される機能的な構成を示す図である。なお、ここでは、制御部36の機能的な構成が、プログラムPGaの実行によって実現されるものとして説明するが、専用のハードウエア構成で実現されても良い。
【0046】
図3で示されるように、制御部36は、機能的な構成として、画像取得部361、解像度変換部362、探索基準点設定部363、画像指定部364、基準視差設定部365、ウインドウ設定部366、周波数解析部367、周波数成分制限部368、相関演算部369、および対応点決定部370を有する。
【0047】
<(2-1-1)画像取得部>
画像取得部361は、同一の被写体を略同一のタイミングで撮像することで得られる第1撮像画像G1と第2撮像画像G2とを記憶部34から取得する。
【0048】
図4は、第1および第2撮像画像G1,G2の形態をそれぞれ例示する模式図である。第1および第2撮像画像G1,G2では、多数の画素がマトリックス状に配列される。具体的には、縦方向(Y方向)に第1所定数(ここでは480個)の画素が配列されるとともに、横方向(X方向)に第2所定数(ここでは640個)の画素が配列される。
【0049】
ここで、第1および第2撮像画像G1,G2では、左上の位置が原点とされ、第1および第2撮像画像G1,G2の各画素における横方向の位置がX座標で示され、縦方向の位置がY座標で示される。つまり、第1および第2撮像画像G1,G2では、各画素の位置がXYの座標(x,y)で示され、例えば、右方向(X方向)に1画素ずれるとX座標の値が1つ増加し、下方向(Y方向)に1画素ずれるとY座標の値が1つ増加する。
【0050】
また、対応点探索動作では、第1撮像画像G1が基準となる画像(以下「基準画像」とも称する)とされ、第2撮像画像G2が参照される画像(以下「参照画像」とも称する)とされる。そこで、第1撮像画像G1を基準画像G1と称し、第2撮像画像G2を参照画像G2と称する。
【0051】
なお、画像取得部361では、厳密には、基準画像G1および参照画像G2を示すデータが取得されるが、本明細書では、基準画像G1を示すデータと該データに基づいて表示される基準画像G1そのものとを「基準画像G1」と総称し、参照画像G2を示すデータと該データに基づいて表示される参照画像G2そのものとを参照画像G2と総称する。
【0052】
<(2-1-2)解像度変換部>
解像度変換部362は、基準画像G1を基準として、該基準画像G1に対して解像度を段階的に低下させた関係にある画像(以下「低解像度基準画像」とも称する)を生成する。また、解像度変換部362は、参照画像G2を基準として、該参照画像G2に対して解像度を段階的に低下させた関係にある画像(以下「低解像度参照画像」とも称する)を生成する。
【0053】
ここでは、基準画像G1および参照画像G2を対象として、それぞれ、複数の縦方向(Y方向)の画素の列(以下「垂直ライン」と称する)および複数の横方向(X方向)の画素の行(以下「水平ライン」と称する)のうち、所定の間引きルールに従って、垂直ラインおよび水平ラインが間引かれることで、低解像度基準画像および低解像度参照画像が生成される。
【0054】
ここで、所定の間引きルールとは、間引かれる垂直ラインを決定するための規則性、および/または間引かれる水平ラインを決定するための規則性を示すルールである。例えば、所定の間引きルールには、所定数の垂直ライン毎に1列の垂直ラインが間引かれる規則や、所定数の水平ライン毎に1行の水平ラインが間引かれる規則などを示すルールが含まれる。
【0055】
以下では、垂直ラインおよび水平ラインの双方が間引かれる例が示されているが、垂直ラインおよび水平ラインのうちの少なくとも一方の複数の画素からなるライン(以下「画素ライン」とも称する)が間引かれれば良い。
【0056】
基準画像G1については、まず、基準画像G1を構成する複数の垂直ラインおよび複数の水平ラインから、1列おきの垂直ラインおよび1行おきの水平ラインがそれぞれ間引かれる。このとき、縮小された低解像度の基準画像(以下「第1縮小基準画像」とも称する)G11(図5)が生成される。第1縮小基準画像G11では、縦方向に240個および横方向に320個の画素がマトリックス状に配列される。
【0057】
次に、第1縮小基準画像G11から、1列おきの垂直ラインおよび1行おきの水平ラインがそれぞれ間引かれることで、更に縮小された低解像度の基準画像(以下「第2縮小基準画像」とも称する)G12(図6)が生成される。第2縮小基準画像G12では、縦方向に120個および横方向に160個の画素がマトリックス状に配列される。
【0058】
その次に、第2縮小基準画像G12から、1列おきの垂直ラインおよび1行おきの水平ラインがそれぞれ間引かれることで、更に縮小された低解像度の基準画像(以下「第3縮小基準画像」とも称する)G13(図7)が生成される。第3縮小基準画像G13では、縦方向に60個および横方向に80個の画素がマトリックス状に配列される。
【0059】
このようにして、基準画像G1に基づいて、該基準画像G1に対応する第1〜3縮小基準画像G11〜G13が生成される。
【0060】
一方、参照画像G2については、まず、参照画像G2を構成する複数の垂直ラインおよび複数の水平ラインから、1列おきの垂直ラインおよび1行おきの水平ラインがそれぞれ間引かれる。このとき、縮小された低解像度の参照画像(以下「第1縮小参照画像」とも称する)G21(図5)が生成される。第1縮小参照画像G21では、縦方向に240個および横方向に320個の画素がマトリックス状に配列される。
【0061】
次に、第1縮小参照画像G21から、1列おきの垂直ラインおよび1行おきの水平ラインがそれぞれ間引かれることで、更に縮小された低解像度の参照画像(以下「第2縮小参照画像」とも称する)G22(図6)が生成される。第2縮小参照画像G22では、縦方向に120個および横方向に160個の画素がマトリックス状に配列される。
【0062】
その次に、第2縮小参照画像G22から、1列おきの垂直ラインおよび1行おきの水平ラインがそれぞれ間引かれることで、更に縮小された低解像度の参照画像(以下「第3縮小参照画像」とも称する)G23(図7)が生成される。第3縮小参照画像G23では、縦方向に60個および横方向に80個の画素がマトリックス状に配列される。
【0063】
このようにして、参照画像G2に基づいて、該参照画像G2に対応する第1〜3縮小参照画像G21〜23が生成される。
【0064】
換言すれば、解像度変換部362では、基準画像G1と参照画像G2との組から、第1縮小基準画像G11と第1縮小参照画像G21との組(以下「1層目の低解像度の画像の組」とも称する)、第2縮小基準画像G12と第2縮小参照画像G22との組(以下「2層目の低解像度の画像の組」とも称する)、および第3縮小基準画像G13と第3縮小参照画像G23との組(以下「3層目(最下層)の低解像度の画像の組」とも称する)が生成される。
【0065】
すなわち、解像度変換部362では、基準画像G1と参照画像G2との組が基準とされて、解像度が1段階低減された1層目の低解像度の画像の組、解像度が2段階低減された2層目の低解像度の画像の組、解像度が3段階低減された3層目(最下層)の低解像度の画像の組が生成される。
【0066】
<(2-1-3)探索基準点設定部>
探索基準点設定部363は、基準画像G1に対して、対応点探索の基準となる点(基準点)Sp1(図8)を設定する。
【0067】
例えば、まず、基準画像G1のうちの左上の画素が基準点Sp1として設定される。そして、基準点Sp1に対して参照画像G2から対応点が検出される度に、新たな基準点Sp1が設定される。
【0068】
詳細には、基準画像G1に対して、図8の矢印で示されるように、基準点Sp1が、上方向(+Y方向)から順に、左から右方向(X方向)に沿って所定画素(ここでは1画素)ずつずらされながら時間順次に設定され、各基準点Sp1に対応する対応点が、参照画像G2上で順次に検出される。
【0069】
換言すれば、基準画像G1に対し、−Y側から+Y側に向けて並ぶX軸に平行な各水平ラインに沿って、−X側から+X側に向けて基準点Sp1が時間順次に設定される。そして、1つの水平ラインに沿った基準点Sp1の設定が完了すると、1画素分+Y側に位置する次の水平ラインに沿って基準点Sp1が時間順次に設定される。
【0070】
<(2-1-4)画像指定部>
画像指定部364は、対応点の探索処理を行う対象となる画像の組(以下「処理対象画像ペア」と称する)を指定する。ここでは、或る低解像度の処理対象画像ペアについて対応点が認識される度に、この対応点が認識された或る低解像度の画像の組よりも一段階解像度が高い画像の組が、次の処理対象画像ペアとして指定される。
【0071】
例えば、まず、最下層(3層目)の低解像度の画像の組(具体的には、第3縮小基準画像G13と第3縮小参照画像G23)が、処理対象画像ペアとして指定される。次に、2層目の低解像度の画像の組(具体的には、第2縮小基準画像G12と第3縮小参照画像G22)が、処理対象画像ペアとして指定される。その次に、1層目の低解像度の画像の組(具体的には、第1縮小基準画像G11と第1縮小参照画像G21)が、処理対象画像ペアとして指定される。更にその次に、基準画像G1と参照画像G2とが、処理対象画像ペアとして指定される。
【0072】
<(2-1-5)基準視差設定部>
基準視差設定部365は、各処理対象画像ペアに対して、対応点の探索の基準となる視差(以下「基準視差」とも称する)を仮に設定する。
【0073】
具体的には、最下層(3層目)の低解像度の画像の組に対し、基準視差の初期値が仮に設定される。基準視差の初期値としては、例えば、XおよびY方向の所定値(例えばゼロ等)に設定される。
【0074】
例えば、図9で示されるように、第3縮小基準画像G13に対して、探索基準点設定部363によって設定された基準点Sp1に対応する基準点Sp13が設定されるとともに、第3縮小参照画像G23に対して演算処理の対象となる点(以下「処理対象点」とも称する)Pp23が設定される。ここでは、第3縮小基準画像G13における基準点Sp13の座標と、第3縮小参照画像G23における処理対象点Pp23の座標とのズレ量が、基準視差の初期値に相当する。
【0075】
次に、3層目の低解像度の画像の組を処理対象画像ペアとした対応点探索処理によって得られる視差が、次の処理対象画像ペアとしての2層目の低解像度の画像の組に対し、基準視差として仮に設定される。ここでは、2層目の解像度が3層目の解像度の2倍であるため、仮に視差を画素の座標のズレ量として取り扱えば、3層目に係る対応点探索処理で得られる視差に相当する画素の座標のズレ量の2倍が、2層目に設定される基準視差に相当する画素の座標のズレ量となる。
【0076】
例えば、図10で示されるように、第2縮小基準画像G12に対して、基準点Sp1に対応する基準点Sp12が設定されるとともに、第2縮小参照画像G22に対して処理対象点Pp22が設定される。ここでは、第2縮小基準画像G12における基準点Sp12の座標と、第2縮小参照画像G22における処理対象点Pp22の座標とのズレ量が、3層目の低解像度の画像の組を処理対象画像ペアとした対応点探索処理によって得られる視差に相当する。
【0077】
その次に、2層目の低解像度の画像の組を処理対象画像ペアとした対応点探索処理によって得られる視差が、次の処理対象画像ペアとしての1層目の低解像度の画像の組に対し、基準視差として仮に設定される。ここでは、1層目の解像度が2層目の解像度の2倍であるため、仮に視差を画素の座標のズレ量として取り扱えば、2層目に係る対応点探索処理で得られる視差に相当する画素の座標のズレ量の2倍が、1層目に設定される基準視差に相当する画素の座標のズレ量となる。
【0078】
例えば、図11で示されるように、第1縮小基準画像G11に対して基準点Sp1に対応する基準点Sp11が設定されるとともに、図12で示されるように、第1縮小参照画像G21に対して処理対象点Pp21が設定される。ここでは、第1縮小基準画像G11における基準点Sp11の座標と、第1縮小参照画像G21における処理対象点Pp21の座標とのズレ量が、2層目の低解像度の画像の組を処理対象画像ペアとした対応点探索処理によって得られる視差に相当する。
【0079】
更にその次に、1層目の低解像度の画像の組を処理対象画像ペアとした対応点探索処理によって得られる視差が、次の処理対象画像ペアとしての基準画像G1と参照画像G2の組に対し、基準視差として仮に設定される。ここでは、基準画像G1と参照画像G2の解像度が1層目の解像度の2倍であるため、仮に視差を画素の座標のズレ量として取り扱えば、1層目に係る対応点探索処理で得られる視差に相当する画素の座標のズレ量の2倍が、基準画像G1と参照画像G2に設定される基準視差に相当する画素の座標のズレ量となる。
【0080】
例えば、図13で示されるように、基準画像G1に対して基準点Sp1が設定されるとともに、図14で示されるように、参照画像G2に対して処理対象点Pp2が設定される。ここでは、基準画像G1における基準点Sp1の座標と、参照画像G2における処理対象点Pp2の位置の座標とのズレ量が、1層目の低解像度の画像の組を処理対象画像ペアとした対応点探索処理によって得られる視差に相当する。
【0081】
なお、ここでは、基準点Sp11,Sp12,Sp13が、基準点Sp1に対応する点であるとして説明したが、これは、基準点Sp1と、基準点Sp11,Sp12,Sp13とが、同じ被写体の部分を捉えた点であることを意味している。
【0082】
具体的には、基準画像G1の外縁と基準点Sp1との相対的な位置関係と、第1縮小基準画像G11の外縁と基準点Sp11との相対的な位置関係と、第2縮小基準画像G12の外縁と基準点Sp12との相対的な位置関係と、第3縮小基準画像G13の外縁と基準点Sp13との相対的な位置関係とが略同一(好ましくは完全同一)であることを意味している。
【0083】
<(2-1-6)ウインドウ設定部>
ウインドウ設定部366は、各基準点Sp1,Sp11〜Sp13を中心として包含するウインドウ(以下「基準領域」とも称する)W1,W11〜W13をそれぞれ設定するとともに、各処理対象点Pp2,Pp21〜Pp23を中心として包含するウインドウ(以下「比較領域」とも称する)W2,W21〜W23をそれぞれ設定する。基準領域W1,W11〜W13および比較領域W2,W21〜W23は、同一サイズの正方形の画像領域であり、例えば、縦方向および横方向にそれぞれ32画素が配列されて構成される。
【0084】
具体的には、図15で示されるように、第3縮小基準画像G13に対して、基準点Sp13を中心として包含する基準領域W13が設定されるとともに、第3縮小参照画像G23に対して、処理対象点Pp23を中心として包含する比較領域W23が設定される。
【0085】
また、図16で示されるように、第2縮小基準画像G12に対して、基準点Sp12を中心として包含する基準領域W12が設定されるとともに、第2縮小参照画像G22に対して、処理対象点Pp22を中心として包含する比較領域W22が設定される。
【0086】
また、図17で示されるように、第1縮小基準画像G11に対して、基準点Sp11を中心として包含する基準領域W11が設定されるとともに、図18で示されるように、第1縮小参照画像G21に対して、処理対象点Pp21を中心として包含する比較領域W21が設定される。
【0087】
更に、図19で示されるように、基準画像G1に対して、基準点Sp1を中心として包含する基準領域W1が設定されるとともに、図20で示されるように、参照画像G2に対して、処理対象点Pp2を中心として包含する比較領域W2が設定される。
【0088】
<(2-1-7)周波数解析部>
周波数解析部367は、画像を正弦波に係る周波数成分を示す情報に変換する処理(以下「変換処理」とも称する)を実行する。この変換処理は、各基準領域W1,W11〜W13に対して行われるとともに、各比較領域W2,W21〜W23に対して行われる。
【0089】
ここでは、周波数解析部367における変換処理が、各画像領域を対象とした公知のフーリエ変換によって実行されるものとする。ここでは、各基準領域W1,W11〜W13および各比較領域W2,W21〜W23ともに離散的に配列される各座標に対して画素値が与えられている離散関数を示すため、離散フーリエ変換が行われる。
【0090】
具体的には、変換部としての周波数解析部367によって、基準領域W13を対象とした2次元のフーリエ変換によって基準領域W13に係る正弦波の周波数成分を示す情報(以下「周波数成分情報」とも称する)が得られ、比較領域W23を対象とした2次元のフーリエ変換によって比較領域W23に係る周波数成分情報が得られる。また、基準領域W12を対象とした2次元のフーリエ変換によって基準領域W12に係る周波数成分情報が得られ、比較領域W22を対象とした2次元のフーリエ変換によって比較領域W22に係る周波数成分情報が得られる。
【0091】
また、基準領域W11を対象とした2次元のフーリエ変換によって基準領域W11に係る周波数成分情報が得られ、比較領域W21を対象とした2次元のフーリエ変換によって比較領域W21に係る周波数成分情報が得られる。更に、基準領域W1を対象とした2次元のフーリエ変換によって基準領域W1に係る周波数成分情報が得られ、比較領域W2を対象とした2次元のフーリエ変換によって比較領域W2に係る周波数成分情報が得られる。
【0092】
なお、本実施形態では、2次元画像の周波数成分を取り扱うため、各周波数は、例えば、x方向に係る周波数uと、x方向に直交するy方向に係る周波数vとが合成された周波数となる。この合成された周波数は、周波数(u,v)で示される。また、周波数解析部367における変換処理については、所謂ウェーブレット変換等、その他の方法によって実行されても良い。
【0093】
<(2-1-8)周波数成分制限部>
<(2-1-8-1)周波数成分の制限の概要>
周波数成分制限部368は、周波数解析部367で生成された周波数成分情報を所定の制限ルールに従って制限した上で、相関演算部369に対して出力する。これにより、相関演算部369における基準領域と比較領域との間における相関値を求める演算(以下「相関演算」とも称する)においては、周波数解析部367で生成された周波数成分情報のうちの一部の周波数成分情報については使用されず、残余の一部の周波数成分情報が選択的に使用されることになる。
【0094】
具体的には、1つの基準点Sp1に対して、或る処理対象画像ペアを対象とした対応点探索処理の相関演算で得られる相関値の高低に応じて、該或る処理対象画像ペアよりも解像度が1段階高い処理対象画像ペアを対象とした対応点探索処理の相関演算で使用される周波数成分情報が制限される。
【0095】
例えば、まず、第3層の基準領域W13と比較領域W23とに係る周波数成分情報に基づいて得られる基準領域W13と比較領域W23との間における相関値の高低に応じて、第2層の基準領域W12と比較領域W22とを対象とした相関演算において使用される周波数成分情報が制限される。
【0096】
次に、第2層の基準領域W12と比較領域W22とに係る周波数成分情報に基づいて得られる基準領域W12と比較領域W22との間における相関値の高低に応じて、第1層の基準領域W11と比較領域W21とを対象とした相関演算において使用される周波数成分情報が制限される。
【0097】
その次に、第1層の基準領域W11と比較領域W21とに係る周波数成分情報に基づいて得られる基準領域W11と比較領域W21との間における相関値の高低に応じて、基準領域W1と比較領域W2とを対象とした相関演算において使用される周波数成分情報が制限される。
【0098】
詳細には、以下で説明される重み付け係数の決定により、相関演算部369における相関演算での使用が制限される周波数成分情報の周波数の範囲(以下「使用制限周波数範囲」とも称する)が設定される。
【0099】
なお、以下では、或る解像度の処理対象画像ペアを基準として、解像度が1段階低い処理対象画像ペアを対象とした対応点探索処理を「前段の対応点探索処理」とも称する。また、或る解像度の処理対象画像ペアを基準として、解像度が1段階高い処理対象画像ペアを対象とした対応点探索処理を「次段の対応点探索処理」とも称する。
【0100】
ここで、重み付け係数の決定による使用制限周波数範囲の設定について説明する。
【0101】
或る対応点探索処理で得られる相関値が高い場合、次段の対応点探索処理における処理対象点の近傍に基準点に対応する対応点があると予測される。このような場合、この次段の対応点探索処理では、処理対象点からある程度離れた位置について対応点を探索する必要がない。
【0102】
なお、1つの処理対象画像ペアを成す基準領域と比較領域との間における画像のパターンの差が微小な場合、相対的に高い周波数(以下「高周波」と称する)の周波数成分よりも、相対的に低い周波数(以下「低周波」と称する)の周波数成分の方が、基準領域の周波数成分と比較領域の周波数成分との差が小さくなる。
【0103】
上記のことから、或る対応点探索処理の相関演算で得られる相関値が高い場合には、次段の対応点探索処理では処理対象点の近傍での対応点探索処理が高精度に行われれば良い。換言すれば、或る対応点探索処理で得られる相関値が高ければ高いほど、その次段の対応点探索処理における探索精度の確保に対する低周波の周波数成分の寄与度が低くなる。逆に、或る対応点探索処理で得られる相関値が低ければ低いほど、その次段の対応点探索処理における探索精度の確保に対する高周波の周波数成分の寄与度が低い。
【0104】
そこで、或る対応点探索処理では、その前段の対応点探索処理で得られる相関値が高ければ、周波数成分制限部368によって、低周波の周波数成分に対する重み付けが低減される。逆に、その前段の対応点探索処理で得られる相関値が低ければ、周波数成分制限部368によって、高周波の周波数成分に対する重み付けが低減される。
【0105】
詳細には、前段の対応点探索処理で得られる相関値が大きくなるに従って、周波数解析部367で得られる各周波数に係る周波数成分情報のうちの最も低周波側からより広範囲の周波数に係る周波数成分情報の使用が制限されるように使用制限周波数範囲が設定される。これにより、演算量の低減による探索速度の向上が図られ、対応点探索処理における精度の維持と速度の向上とが両立する。
【0106】
一方、前段の対応点探索処理で得られた相関値が小さくなるに従って、周波数解析部367で得られる各周波数に係る周波数成分情報のうちの最も高周波側からより広範囲の周波数に係る周波数成分情報の使用が制限されるように使用制限周波数範囲が設定される。これにより、演算量の低減による探索速度の向上が図られ、対応点探索処理における精度の維持と速度の向上とが両立する。
【0107】
<(2-1-8-2)周波数成分の制限方法の具体例>
次に、周波数成分制限部368における周波数成分の制限方法の具体例を説明する。
【0108】
ここでは、前段の対応点の探索処理で得られる相関値の最大値(以下「ピーク相関値」とも称する)Cmaxごとに、周波数と重み付け係数との関係(すなわち重み付けルール)を示す情報が、記憶部34等に予め記憶されている。そして、この情報が参照されつつ、周波数成分制限部368における処理が実施される。
【0109】
周波数成分制限部368では、次の処理(i)〜(iii)がこの順番で行われる。
【0110】
(i)相関演算部369における前段の対応点探索処理で得られるピーク相関値Cmaxに応じて、該ピーク相関値Cmaxに対応する重み付けルールが採用される。
【0111】
(ii)処理(i)で採用された重み付けルールに従って各周波数に係る周波数成分(具体的には振幅情報)に対して重み付け係数が乗じられる。
【0112】
(iii)処理(ii)で振幅情報に対して重み付け係数が乗ぜられた後の各周波数に係る周波数成分を示す周波数成分情報が、相関演算部369に対して出力される。
【0113】
このような流れで、周波数成分制限部368では、周波数解析部367で生成された周波数成分情報が、前段の相関演算で得られるピーク相関値Cmaxに応じた重み付けルールに従って制限される。
【0114】
図21は、或るピーク相関値Cmaxに対して設定される周波数と重み付け係数との関係(すなわち、重み付けルール)を例示する図である。
【0115】
図21では、縦軸が重み付け係数の大小を示し、横軸が周波数の大小を示す。また、太い破線の曲線LL1が、低周波の周波数成分が重視される重み付けのルール(以下「低周波重視型ルール」とも称する)についての周波数と重み付け係数との関係を示す。更に、太線で示される階段状の複数の線分LH1が、高周波の周波数成分が重視される重み付けのルール(以下「高周波重視型ルール」とも称する)についての周波数と重み付け係数との関係を示す。
【0116】
図21で示されるような重み付けルールに従った周波数成分に対する重み付けの処理では、離散的な各周波数に対して、低周波重視型ルールの重み付け係数WLOWと高周波重視型ルールの重み付け係数WHIGHのうち、相対的に低い重み付け係数が採用される。
【0117】
例えば、ここで、離散的な周波数をi(i=0〜imax)、ピーク相関値Cmaxと周波数iとの双方に対応する低周波重視型ルールの重み付け係数をWLOW(i,Cmax)、ピーク相関値Cmaxと周波数iとの双方に対応する高周波重視型ルールの重み付け係数をWHIGH(i,Cmax)とする。また、周波数iの振幅をfiとする。
【0118】
この場合、下式(1)の関係を満たす周波数iに対して、低周波重視型ルールの重み付け係数WLOW(i,Cmax)が採用され、下式(2)で示されるように、振幅fiに低周波重視型ルールの重み付け係数WLOW(i,Cmax)が乗ぜられた値が、重み付け後の振幅fiAFTERとなる。
【0119】
LOW(i,Cmax)<WHIGH(i,Cmax) ・・・(1)
iAFTER=WLOW(i,Cmax)×fi ・・・(2)
【0120】
一方、上式(1)の関係を満たさない周波数iに対しては、高周波重視型ルールの重み付け係数WHIGH(i,Cmax)が採用され、下式(3)で示されるように、振幅fiに高周波重視型ルールの重み付け係数WHIGH(i,Cmax)が乗ぜられた値が、重み付け後の振幅fiAFTERとなる。
【0121】
iAFTER=WHIGH(i,Cmax)×fi ・・・(3)
【0122】
ここでは、図21で示されるように、最も低周波側からある程度の周波数の範囲(以下「低周波側制限範囲」とも称する)RL1において、重み付け係数がゼロになるとともに、最も高周波側からある程度の周波数の範囲(以下「高周波側制限範囲」とも称する)RH1において、重み付け係数がゼロになる。そして、振幅fiにゼロの重み付け係数が乗ぜられれば、振幅fiAFTERがゼロになるため、その振幅fiAFTERを含む周波数成分は、実体を失うことになる。
【0123】
このため、重み付け係数によって、低周波側制限範囲RL1の周波数に係る周波数成分情報を相関演算で使用することが制限されるとともに、高周波側制限範囲RH1の周波数に係る周波数成分情報を相関演算で使用することが制限される。よって、ここでは、低周波側制限範囲RL1および高周波側制限範囲RH1が、使用制限周波数範囲に相当する。
【0124】
また、ここでは、前段の相関演算で得られるピーク相関値Cmaxが大ければ大きいほど、低周波側制限範囲RL1が拡げられ、該ピーク相関値Cmaxが小さければ小さいほど、高周波側制限範囲RH1が拡げられるように使用制限周波数範囲が設定される。
【0125】
図22は、図21で示される重み付けルールと比較して、低周波側制限範囲RL1が拡げられるとともに高周波側制限範囲RH1が狭められた重み付けルールを示す図である。図22で示される重み付けルールは、図21で示される重み付けルールよりも、前段の相関演算で得られるピーク相関値Cmaxが大きい場合の重み付けルールに相当する。
【0126】
なお、重み付け係数WLOW(i,Cmax),WHIGH(i,Cmax)とピーク相関値Cmaxとの関係は、テーブルの形式や定式化された関係式の形式で記憶部34に記憶されるような態様が考えられる。
【0127】
また、周波数iと重み付け係数WLOW(i,Cmax),WHIGH(i,Cmax)との関係については、図21の太い破線で描かれる曲線LL1のように、周波数iの変化とともに重み付け係数WLOW(i,Cmax),WHIGH(i,Cmax)が連続的に変化するものであっても良いし、図21の太線で描かれる階段状の複数の線分LH1のように、周波数iの変化ととともに、離散的な閾値を超える度に重み付け係数WLOW(i,Cmax),WHIGH(i,Cmax)が段階的に変化するような関係であっても良い。
【0128】
また、各周波数iについて、相関値(ここでは、ピーク相関値Cmax)と重み付け係数との関係が設定されており、前段で求められる相関値(ここでは、ピーク相関値Cmax)に応じて、各周波数iに対する重み付け係数が一義的に決まっても良い。なお、相関値と重み付け係数との関係としては、直線的な関係(図23)、曲線的な関係(図24)、相関値が閾値に到達する度に重み付け係数が段階的に切り替わるような関係(図25)のうちの何れであっても良い。
【0129】
<(2-1-8-3)周波数成分制限部からの出力>
周波数成分制限部368では、周波数解析部367で算出された周波数成分について、周波数iごとに設定される重み付け係数が振幅に乗ぜられ、重み付け後の周波数成分を示す周波数成分情報が、相関演算部369に対して出力される。つまり、周波数iごとに、上式(2),(3)で示されるような重み付け後の振幅fiAFTERの振幅情報を含む周波数成分情報が出力される。
【0130】
このとき、周波数iの振幅fiに対してゼロの重み付け係数が乗ぜられていれば、振幅fiAFTERがゼロとなり、周波数成分の実体が失われるため、その周波数iについての周波数成分情報は出力されないことになる。
【0131】
これにより、周波数解析部367で生成される周波数成分情報のうちの一部の周波数成分情報が相関演算部369における相関演算で使用されないように、周波数成分情報が制限される。
【0132】
なお、前段の相関値が得られていない場合、すなわち最下層(3層目)の低解像度の画像の組(具体的には、第3縮小基準画像G13と第3縮小参照画像G23)が、処理対象画像ペアとして指定されている場合には、周波数成分制限部368における周波数成分情報の制限は行われない。つまり、周波数解析部367における変換処理によって得られた周波数成分情報が、相関演算部369に対してそのまま出力される。
【0133】
<(2-1-9)相関演算部>
相関演算部369は、周波数成分制限部368から出力される基準領域に係る周波数成分情報と比較領域に係る周波数成分情報とに基づいて、基準領域と比較領域との間における相関値を算出する。つまり、相関演算部369では、周波数成分制限部368において重み付け係数の乗算によって制限された周波数成分情報が用いられて、基準領域と比較領域との間における相関値が算出される。
【0134】
そして、相関演算部369では、各基準点Sp1について、第3層の基準領域W13と比較領域W23との間における相関値、第2層の基準領域W12と比較領域W22との間における相関値、第1層の基準領域W11と比較領域W21との間における相関値、および基準領域W1と比較領域W2との間における相関値が順次に算出される。
【0135】
相関演算部369における相関値を算出する相関演算の方法としては、例えば、上記非特許文献1で提案されている方法「Phase-Differnce Spectrum Analysis(PSA法)」の採用が可能である。
【0136】
以下、PSA法を用いた相関演算の方法について説明する。
【0137】
ここでは、相関演算の対象となっている基準領域と比較領域との組について、該基準領域と比較領域との間における周波数(u,v)の正弦波についての位相の差(位相差)がΔθ(u,v)とされ、基準領域における基準点の位置と比較領域における対応点の位置との間におけるX方向およびY方向におけるズレ量(視差)がdxおよびdyとされる。そして、相関演算の対象となっている矩形状の基準領域と比較領域を構成するX方向およびY方向の画素数がそれぞれMおよびNとされると、下式(4)の関係が成立する。
【0138】
dy=−(N/M)×(u/v)×dx+(N/2π)×Δθ(u,v)/v ・・・(4)
【0139】
上式(4)のうち、基準領域と比較領域のサイズを示す値M,Nは設計によって定まり、各周波数(u,v)に対する位相差Δθ(u,v)は、周波数成分制限部368から入力される周波数成分情報によって得られる。このため、上式(4)に対して、設計値である値M,Nが代入されるとともに、周波数(u,v)毎に位相差Δθ(u,v)が代入されることで、各周波数(u,v)についての視差dxと視差dyとの関係を示す一次関数(以下「視差一次関数」とも称する)が得られる。
【0140】
このため、PSA法を用いた相関演算では、次の工程(A),(B)がこの順番で順次に行われることで、基準領域と比較領域との間における相関値(ここでは、ピーク相関値Cmax)が得られる。
【0141】
(A)上式(4)に従って、周波数(u,v)毎に、位相差Δθ(u,v)が、基準点と対応点とに係る視差(dx,dy)に変換されて、視差一次関数が得られる。
【0142】
(B)工程(A)で得られる各周波数(u,v)の視差一次関数に基づいて、視差dxを横軸、視差dyを縦軸とする所定サイズの空間(以下「投票空間」とも称する)の各座標に対する投票が行われる。これにより、投票空間の各座標に対する投票数の積算値の分布が得られる。このとき、投票数の積算値の最大値がピーク相関値Cmaxとして得られる。
【0143】
ここで、投票空間の各座標に対する投票について説明する。
【0144】
図26は、投票空間D369を例示する模式図である。
【0145】
図26で示されるように、投票空間D369は、縦軸と横軸とが直交する2次元の空間座標系によって構成され、その横軸は視差dxを示し、縦軸は視差dyを示す。投票空間D369のサイズは、扱われる周波数(u,v)の数や対応点を探索する対象となる領域の大きさに応じて決められれば良い。
【0146】
また、例えば、視差(dx,dy)を±1画素の範囲で0.1画素刻みで探索する場合、投票空間D369には、原点(0,0)を含む0.1画素刻みの投票可能な座標のポイント(以下「投票可能座標ポイント」とも称する)が設定される。具体的には、図26で示されるように、縦方向(dy方向)に21箇所および横方向(dx方向)に21箇所の投票可能座標ポイントがマトリックス状に設けられる。なお、図26では、各投票可能座標ポイントが、模式的に正方形の領域で示されている。
【0147】
図27および図28は、投票空間D369への投票方法を説明するための図である。
【0148】
図27で示されるように、各周波数(u,v)について、投票空間D369に、視差一次関数で示される直線(図中太線)が引かれる。そして、各周波数(u,v)について、投票空間D369を構成する多数の投票可能座標ポイントのうち、視差一次関数に係る直線が通る全ての投票可能座標ポイントに対して、投票値が与えられる。例えば、図27で示される視差一次関数に係る直線に対しては、図28で示されるような複数の投票可能座標ポイントに対して投票値が与えられる。
【0149】
各周波数(u,v)について、投票可能座標ポイントに対して投票値が与えられる際には、振幅の大小に応じた投票値が与えられる。具体的には、振幅の増大に応じて、投票値が大きくなるようにすれば良い。例えば、振幅が増大すれば増大するほど、投票値が大きくなるような態様であっても良いし、振幅に対して1以上の閾値を設け、振幅が増大する際に閾値を超える度に投票値が、1、2、3、・・・と段階的に増加するような態様であっても良い。
【0150】
そして、各周波数(u,v)について、投票空間D369への投票値の付与(すなわち投票)が順次に行われることで、投票可能座標ポイント毎に、投票値が積算される。このとき、重み付けによって振幅がゼロとなった周波数(u,v)に係る周波数成分情報については、投票空間D369への投票値の付与には利用されない。つまり、或る解像度の基準領域と比較領域との間における相関を示す相関値の算出は、その解像度の基準領域と比較領域の周波数成分情報のうち、前段のピーク相関値Cmaxに応じて設定される使用制限周波数範囲に属しない周波数の周波数成分情報に基づいて行われる。
【0151】
このような投票値の付与によって、投票空間D369における投票値の積算値(以下「投票積算値」とも称する)の分布が得られる。ここで得られる投票積算値の分布が、基準画像と参照画像との間における相関を示しており、最大の投票積算値が、ピーク相関値Cmaxとなる。なお、視差一次関数に係る直線が頻繁に交わる点の近傍の投票可能座標ポイントに付与される投票積算値が、ピーク相関値Cmaxとなる。
【0152】
相関演算部369では、投票空間D369における投票積算値の分布を示す情報が、対応点決定部370に対して出力されるとともに、ピーク相関値Cmaxを示す情報が、周波数成分制限部368に対して出力される。
【0153】
<(2-1-10)対応点決定部>
対応点決定部370は、各解像度の基準領域と比較領域の組に対し、相関演算部369で得られた投票積算値の分布を示す情報に基づいて、基準領域における基準点と比較領域における対応点とのズレ量(視差)を導出する。具体的には、投票積算値の分布のうち、最大の投票積算値すなわちピーク相関値Cmaxに対応する視差(dx,dy)が導出される。そして、対応点決定部370は、各基準点Sp11〜Sp13に対応する対応点を認識するとともに、基準領域W1と比較領域W2との間における視差(dx,dy)に基づいて、各基準点Sp1に対応する参照画像G2上の対応点を決定する。
【0154】
例えば、3層目(最下層)の低解像度に係る基準領域W13と比較領域W23との間における視差が導出される。また、2層目の低解像度に係る基準領域W12と比較領域W22との間における視差が導出される。更に、1層目の低解像度に係る基準領域W11と比較領域W21との間における視差が導出される。そして、基準領域W1と比較領域W2との間における視差が導出される。このとき、基準点Sp1に対応する参照画像G2上の対応点が決定される。
【0155】
そして、ここでは、ピーク相関値Cmaxは、各解像度について、基準点とピーク相関値Cmaxが得られた対応点との相関を示す相関値に相当する。
【0156】
なお、対応点決定部370で導出される視差は、次段の基準視差を設定するために基準視差設定部365に対して適宜出力される。また、対応点決定部370において視差が導出されたことに応答して、画像指定部364および探索基準点設定部363に対して信号が送出される。
【0157】
<(3)対応点探索動作のフロー>
図29から図31は、情報処理システム1Aにおいて実現される対応点探索動作のフローを例示するフローチャートである。例えば、ユーザーによる操作部31に対する操作に応じて、本動作フローが開始されて、図29のステップST1に進む。
【0158】
ステップST1では、画像取得部361によって、基準画像G1と参照画像G2とからなるステレオ画像が取得される。
【0159】
ステップST2では、解像度変換部362によって、基準画像G1と参照画像G2とに対して解像度の変換処理が行われる。具体的には、基準画像G1から解像度を低下させた第1〜3縮小基準画像G11〜G13が生成されるとともに、参照画像G2から解像度を低下させた第1〜3縮小参照画像G21〜G23が生成される。
【0160】
ステップST3では、探索基準点設定部363によって、基準画像G1に対して基準点Sp1が設定される。なお、ステップST3では、1つの基準点Sp1に対して参照画像G2から対応点が検出される度に、後述される図31のステップST22から戻って来て、新たな基準点Sp1が設定される。
【0161】
ステップST4では、画像指定部364によって、最下層(3層目)の低解像度の画像の組(具体的には、第3縮小基準画像G13と第3縮小参照画像G23)が、処理対象画像ペアとして指定される。
【0162】
ステップST5では、基準視差設定部365によって、第3縮小基準画像G13上に基準点Sp1に対応する基準点Sp13が設定されるとともに、第3縮小参照画像G23上に処理対象点Pp23が設定される。すなわち、ステップST4で指定された処理対象画像ペアに対して、基準視差の初期値が設定される。
【0163】
ステップST6では、ウインドウ設定部366によって、第3縮小基準画像G13に対して、基準点Sp13を中心として包含する基準領域W13が設定されるとともに、第3縮小参照画像G23に対して、処理対象点Pp23を中心として包含する比較領域W23が設定される。
【0164】
ステップST7では、周波数解析部367によって、ステップST6で設定された基準領域W13が周波数成分情報に変換されるとともに、ステップST6で設定された比較領域W23が周波数成分情報に変換される。ここで得られる周波数成分情報は、周波数成分制限部368を介して、そのまま相関演算部369に対して出力される。
【0165】
ステップST8では、相関演算部369によって、ステップST7で得られた基準領域W13に係る周波数成分情報と比較領域W23に係る周波数成分情報とに基づく相関演算が行われる。この相関演算によって、投票積算値の分布が得られるとともに、基準領域W13と比較領域W23との間の相関を示すピーク相関値Cmaxが算出される。
【0166】
ステップST9では、対応点決定部370によって、ステップST8で得られた投票積算値の分布に基づいて、ピーク相関値Cmaxに対応する視差(dx,dy)が導出されるとともに、基準点Sp13に対応する第3縮小参照画像G23上の対応点が認識される。このステップST9の処理が終了されると、図30のステップST11に進む。
【0167】
図30のステップST11では、画像指定部364によって、前段の処理対象画像ペアよりも1つ解像度が高い層に属する画像の組が、処理対象画像ペアとして指定される。
【0168】
例えば、前段の処理対象画像ペアが、3層目の解像度の画像の組である第3縮小基準画像G13と第3縮小参照画像G23であれば、2層目の解像度の画像の組である第2縮小基準画像G12と第2縮小参照画像G22とが指定される。また、前段の処理対象画像ペアが、2層目の解像度の画像の組である第2縮小基準画像G12と第2縮小参照画像G22であれば、1層目の解像度の画像の組である第1縮小基準画像G11と第1縮小参照画像G21とが指定される。更に、前段の処理対象画像ペアが、1層目の解像度の画像の組である第1縮小基準画像G11と第1縮小参照画像G21であれば、基準画像G1と参照画像G2とが指定される。
【0169】
ステップST12では、基準視差設定部365によって、直近のステップST11で指定された処理対象画像ペアに対し、基準視差が設定される。ここでは、ステップST9またはステップST17で認識される前段の視差に応じた基準視差が設定される。
【0170】
例えば、前段である3層目の解像度について認識された視差に応じて、第2縮小基準画像G12に対して、基準点Sp1に対応する基準点Sp12が設定されるとともに、第2縮小参照画像G22に対して処理対象点Pp22が設定される。また、前段である2層目の解像度について認識された視差に応じて、第1縮小基準画像G11に対して、基準点Sp1に対応する基準点Sp11が設定されるとともに、第1縮小参照画像G21に対して処理対象点Pp21が設定される。更に、前段である1層目の解像度について認識された視差に応じて、基準画像G1の基準点Sp1を基準とした処理対象点Pp2が参照画像G2上に設定される。
【0171】
ステップST13では、ウインドウ設定部366によって、直近のステップST11で指定された処理対象画像ペアに対し、直近のステップST12で設定された基準点と処理対象点とが基準とされて、基準領域と比較領域とが設定される。
【0172】
例えば、直近のステップST11で指定された処理対象画像ペアが、第2縮小基準画像G12と第2縮小参照画像G22との組であれば、直近のステップST12で設定された基準点Sp12と処理対象点Pp22とが基準とされて、第2縮小基準画像G12に対して基準領域W12が設定されるとともに、第2縮小参照画像G22に対して比較領域W22が設定される。また、直近のステップST11で指定された処理対象画像ペアが、第1縮小基準画像G11と第1縮小参照画像G21との組であれば、直近のステップST12で設定された基準点Sp11と処理対象点Pp21とが基準とされて、第1縮小基準画像G11に対して基準領域W11が設定されるとともに、第1縮小参照画像G21に対して比較領域W21が設定される。また、直近のステップST11で指定された処理対象画像ペアが、基準画像G1と参照画像G2との組であれば、基準点Sp1と直近のステップST12で設定された処理対象点Pp2とが基準とされて、基準画像G1に対して基準領域W1が設定されるとともに、参照画像G2に対して比較領域W2が設定される。
【0173】
ステップST14では、周波数解析部367によって、直近のステップST13で設定された基準領域が周波数成分情報に変換されるとともに、直近のステップST13で設定された比較領域が周波数成分情報に変換される。
【0174】
例えば、直近のステップST13で設定された基準領域W12が周波数成分情報に変換されるとともに、直近のステップST13で設定された比較領域W22が周波数成分情報に変換される。また、直近のステップST13で設定された基準領域W11が周波数成分情報に変換されるとともに、直近のステップST13で設定された比較領域W21が周波数成分情報に変換される。また、直近のステップST13で設定された基準領域W1が周波数成分情報に変換されるとともに、直近のステップST13で設定された比較領域W2が周波数成分情報に変換される。
【0175】
ステップST15では、周波数成分制限部368によって、直近のステップST14で生成された周波数成分情報が、前段の相関演算で得られたピーク相関値Cmaxに応じた重み付けルールに従って制限される。ここでは、前段の相関演算で得られるピーク相関値Cmaxに基づいて、相関演算における周波数成分情報の使用が制限される使用制限周波数範囲(例えば、低周波側制限範囲RL1や高周波側制限範囲RH1など)が設定される。そして、この使用制限周波数範囲に応じて、直近のステップST14で生成された周波数成分情報が制限された上で、相関演算部369に対して出力される。
【0176】
例えば、直近のステップST13で基準領域W12と比較領域W22とが設定されておれば、基準領域W12に係る周波数成分情報と比較領域W22に係る周波数成分情報とが使用制限周波数範囲に応じて制限された上で出力される。また、直近のステップST13で基準領域W11と比較領域W21とが設定されておれば、基準領域W11に係る周波数成分情報と比較領域W21に係る周波数成分情報とが使用制限周波数範囲に応じて制限された上で出力される。直近のステップST13で基準領域W1と比較領域W2とが設定されておれば、基準領域W1に係る周波数成分情報と比較領域W2に係る周波数成分情報とが使用制限周波数範囲に応じて制限された上で出力される。
【0177】
ステップST16では、相関演算部369によって、ステップST15で周波数成分制限部368から出力された使用制限周波数範囲外の周波数の周波数成分情報に基づいて、直近のステップST13で設定された基準領域と比較領域との間における相関演算が行われる。この相関演算によって、投票積算値の分布が得られるとともに、基準領域と比較領域との間における相関を示すピーク相関値Cmaxが算出される。
【0178】
例えば、直近のステップST15で周波数成分制限部368から基準領域W12と比較領域W22とに係る使用制限周波数範囲外の周波数の周波数成分情報が出力されていれば、基準領域W12と比較領域W22との間における、投票積算値の分布とピーク相関値Cmaxとが得られる。また、直近のステップST15で周波数成分制限部368から基準領域W11と比較領域W21とに係る使用制限周波数範囲外の周波数の周波数成分情報が出力されていれば、基準領域W11と比較領域W21との間における、投票積算値の分布とピーク相関値Cmaxとが得られる。また、直近のステップST15で周波数成分制限部368から基準領域W1と比較領域W2とに係る使用制限周波数範囲外の周波数の周波数成分情報が出力されていれば、基準領域W1と比較領域W2との間における、投票積算値の分布とピーク相関値Cmaxとが得られる。
【0179】
ステップST17では、対応点決定部370によって、ステップST16で得られた投票積算値の分布に基づいて、ピーク相関値Cmaxに対応する視差(dx,dy)が導出されるとともに、直近のステップST11で指定された処理対象画像ペアについて、基準点に対応する対応点が認識される。
【0180】
例えば、直近のステップST11で指定された処理対象画像ペアが、第2縮小基準画像G12と第2縮小参照画像G22との組であれば、第2縮小基準画像G12上の基準点Sp12に対応する第2縮小参照画像G22上の対応点が認識される。また、直近のステップST11で指定された処理対象画像ペアが、第1縮小基準画像G11と第1縮小参照画像G21との組であれば、第1縮小基準画像G11上の基準点Sp11に対応する第1縮小参照画像G21上の対応点が認識される。また、直近のステップST11で指定された処理対象画像ペアが、基準画像G1と参照画像G2との組であれば、基準画像G1上の基準点Sp1に対応する参照画像G2上の対応点が認識される。
【0181】
ステップST18では、対応点決定部370によって、直近のステップST11で指定された処理対象画像ペアよりも解像度が1段階上の層の画像の組があるか否か判定される。ここでは、解像度が1段階上の層の画像の組があれば、ステップST11に進み、解像度が1段階上の層の画像の組がなければ、ステップST19に進む。
【0182】
例えば、直近のステップST11で指定された処理対象画像ペアが、第2縮小基準画像G12と第2縮小参照画像G22との組であれば、解像度が1段階上の層の画像の組に相当する第1縮小基準画像G11と第1縮小参照画像G21との組が存在する。また、直近のステップST11で指定された処理対象画像ペアが、第1縮小基準画像G11と第1縮小参照画像G21との組であれば、解像度が1段階上の層の画像の組に相当する基準画像G1と参照画像G2との組が存在する。一方、直近のステップST11で指定された処理対象画像ペアが、基準画像G1と参照画像G2との組であれば、解像度が1段階上の層の画像の組が存在していない。
【0183】
ステップST19では、対応点決定部370によって、直近のステップST17で認識された参照画像G2上の対応点が、直近のステップST3で設定された基準点Sp1に対応する対応点として決定される。このステップST19の処理が終了されると、図31のステップST21に進む。
【0184】
図31のステップST21では、制御部36によって、直近のステップST3で設定された基準点Sp1と、直近のステップST19(図30)で決定された対応点とが関連付けられて、記憶部34に記憶される。
【0185】
ステップST22では、探索基準点設定部363によって、ステップST3において基準画像G1の全画素が基準点Sp1として既に設定されたか否かが判定される。ここで、未だに基準画像G1の全画素が基準点Sp1として設定されていなければ、図29のステップST3に進み、次の基準点Sp1の設定が行われる。一方、既に基準画像G1の全画素が基準点Sp1として設定されていれば、本動作フローが終了される。
【0186】
<(4)一実施形態のまとめ>
以上のように、一実施形態に係る情報処理システム1Aによれば、複数の画像の間における類似の度合いを示す相関値に基づいて、該複数の画像にそれぞれ対応する解像度の異なる別の複数の画像の間における相関演算の演算量が低減される。このため、複数の画像を対象とした対応点探索処理における精度の維持と速度の向上とが両立する。
【0187】
ここで言う「別の複数の画像」としては、上述したように、複数の画像の組からそれぞれ解像度を異ならせた複数の画像の組などが挙げられる。しかしながら、これに限られない。「別の複数の画像」としては、例えば、ステレオカメラ2によって、元の複数の画像とは少し異なる時刻に撮影されたステレオ画像であっても良い。
【0188】
<(5)変形例>
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0189】
<(5-1)第1変形例>
例えば、上記一実施形態では、ステレオカメラ2による撮像によって得られる基準画像G1と参照画像G2との間における対応点探索動作を挙げて説明したが、これに限られない。例えば、本願発明の技術的思想は、単眼視のカメラ、すなわち1つの視点からの撮像によって時間的に連続して得られる複数の画像の間における対応点探索動作にも適用可能である。以下、具体例を示して説明する。
【0190】
<(5-1-1)第1変形例に係る情報処理システムの構成>
図32は、第1変形例に係る情報処理システム1Bの概略構成を示す図であり、図33は、情報処理システム1Bの要部構成を示すブロック図である。
【0191】
情報処理システム1Bは、上記一実施形態に係る情報処理システム1Aと比較して、ステレオカメラ2が単眼のカメラ2Bに置換されたものであり、その他については同様な構成を有する。
【0192】
但し、情報処理システム1Bでは、カメラ2Bによる順次の撮像によって、n個(nは3以上の自然数)の撮像時刻の異なる画像GB1〜GBnが取得される。そして、このn個の画像GB1〜GBnの間で対応点探索処理が行われる。このため、制御部36で実現される各種機能や各種情報処理等が上記一実施形態に係る制御部36で実行される各種機能や各種情報処理等とは若干異なる。
【0193】
具体的には、図33で示されるように、情報処理システム1Bでは、上記一実施形態に係るプログラムPGaとは異なるプログラムPGbが記憶部34に記憶されている。そして、このプログラムPGbが制御部36によって読み込まれて実行されることで、本変形例に係る対応点探索動作の各種機能や各種情報処理が実現される。
【0194】
カメラ2Bは、例えば、地面に対して位置および姿勢が固定され、時間順次のn回の撮像を行うことで、同一の視点から同一の被写体OBBの時間的な変化を捉えたn個の画像GB1〜GBnを取得する。
【0195】
例えば、カメラ2Bが、いわゆるハイスピードカメラ等で構成されていれば、短時間で多数のフレーム画像を得ることができる。このとき、被写体OBBが動いていても、時間的に連続して得られたフレーム画像の間においては、同一の被写体OBBを捉えた部分は少ししかズレない。
【0196】
なお、このカメラ2Bで時間順次に取得されるn個の画像GB1〜GBnは、いわゆる時系列の画像であり、データ線CBを介して情報処理装置3に送信され、記憶部34に記憶される。
【0197】
以下では、カメラ2Bで時刻T1、時刻T2、時刻T3、・・・、時刻Tnの撮像によってそれぞれ得られる画像を、「T1フレーム画像」GB1、「T2フレーム画像」GB2、「T3フレーム画像」GB3、・・・、「Tnフレーム画像」GBnと称する。
【0198】
図34は、T1フレーム画像GB1の形態を例示する模式図であり、図35は、T2フレーム画像GB2の形態を例示する模式図であり、図36は、T3フレーム画像GB3の形態を例示する模式図である。図34から図36では、被写体OBBを捉えた画像領域(図中で斜線のハッチングが付された領域)が、少しずつ右方にシフトしている様子が示されている。
【0199】
また、図4で示されるように、T1〜Tnフレーム画像GB1〜GBnは、上記一実施形態に係る第1および第2撮像画像G1,G2と同様に、例えば、多数の画素がマトリックス状に配列されて構成される。具体的には、縦方向(Y方向)に第1所定数(ここでは480個)の画素が配列されるとともに、横方向(X方向)に第2所定数(ここでは640個)の画素が配列される。
【0200】
ここで、T1〜Tnフレーム画像GB1〜GBnでは、上記一実施形態に係る第1および第2撮像画像G1,G2と同様に、左上の位置が原点とされ、T1〜Tnフレーム画像GB1〜GBnの各画素における横方向の位置がX座標で示され、縦方向の位置がY座標で示される。つまり、T1〜Tnフレーム画像GB1〜GBnでは、上記一実施形態に係る第1および第2撮像画像G1,G2と同様に、各画素の位置がXYの座標(x,y)で示され、例えば、右方向(X方向)に1画素ずれるとX座標の値が1つ増加し、下方向(Y方向)に1画素ずれるとY座標の値が1つ増加する。
【0201】
<(5-1-2)第1変形例に係る対応点探索動作に係る機能的な構成>
図37は、本変形例の対応点探索動作を実行するために制御部36で実現される機能的な構成を示す図である。なお、ここでは、制御部36の機能的な構成が、プログラムPGbの実行によって実現されるものとして説明するが、専用のハードウエア構成で実現されても良い。
【0202】
図37で示されるように、制御部36は、機能的な構成として、画像取得部361B、探索基準点設定部363B、基準視差設定部365B、ウインドウ設定部366B、周波数解析部367B、周波数成分制限部368B、相関演算部369B、および対応点決定部370Bを有する。
【0203】
<(5-1-2-1)第1変形例に係る画像取得部>
画像取得部361Bは、カメラ2Bによって時間順次に取得されて記憶部34に記憶されているT1〜Tnフレーム画像GB1〜GBnから、対応点の探索処理を行う対象となる画像の組(処理対象画像ペア)を取得する。ここでは、mを自然数とすると、Tmフレーム画像GBmとT(m+1)フレーム画像GB(m+1)とからなる処理対象画像ペアについて対応点が認識されると、T(m+1)フレーム画像GB(m+1)とT(m+2)フレーム画像GB(m+2)との組が、次の処理対象画像ペアとして取得される。
【0204】
例えば、まず、T1フレーム画像GB1とT2フレーム画像GB2との組が、処理対象画像ペアとして取得される。次に、T2フレーム画像GB2とT3フレーム画像GB3との組が、処理対象画像ペアとして取得される。その次に、T3フレーム画像GB3とT4フレーム画像GB4との組が、処理対象画像ペアとして取得される。
【0205】
なお、以下では、T(m+1)フレーム画像GB(m+1)とT(m+2)フレーム画像GB(m+2)とからなる処理対象画像ペアを対象とした対応点探索処理を基準として、Tmフレーム画像GBmとT(m+1)フレーム画像GB(m+1)とからなる処理対象画像ペアを対象とした対応点探索処理を、前段の対応点探索処理と称する。逆に、Tmフレーム画像GBmとT(m+1)フレーム画像GB(m+1)とからなる処理対象画像ペアを対象とした対応点探索処理を基準として、T(m+1)フレーム画像GB(m+1)とT(m+2)フレーム画像GB(m+2)とからなる処理対象画像ペアを対象とした対応点探索処理を、次段の対応点探索処理と称する。
【0206】
また、対応点探索動作では、T1フレーム画像GB1とT2フレーム画像GB2との間における対応点探索処理が行われる場合には、T1フレーム画像GB1が基準となる画像(基準画像)GB1とされ、T2フレーム画像GB2が参照される画像(参照画像)GB2とされる。また、T2フレーム画像GB2とT3フレーム画像GB3との間における対応点探索処理が行われる場合には、T2フレーム画像GB2が基準となる画像(基準画像)GB2とされ、T3フレーム画像GB3が参照される画像(参照画像)GB3とされる。
【0207】
つまり、Tmフレーム画像GBmとT(m+1)フレーム画像GB(m+1)との間における対応点探索処理が行われる場合には、Tmフレーム画像GBmが基準となる画像(基準画像)GBmとされ、T(m+1)フレーム画像GB(m+1)が参照される画像(参照画像)GB(m+1)とされる。
【0208】
<(5-1-2-2)第1変形例に係る探索基準点設定部>
探索基準点設定部363Bは、上記一実施形態に係る探索基準点設定部363と同様に、T1フレーム画像GB1に対して、対応点探索の基準となる点(基準点)SpB1(図8)を設定する。
【0209】
例えば、まず、T1フレーム画像GB1のうちの左上の画素が基準点SpB1として設定される。次に、基準画像GB1と参照画像GB2との間、基準画像GB2と参照画像GB3との間、基準画像GB3と参照画像GB4との間、・・・、基準画像GB(n−1)と参照画像GBnとの間における対応点探索処理が順次に行われることで、基準点SpB1に対応する対応点が、各T2〜Tnフレーム画像GB2〜GBnからこの順番で検出される。そして、Tnフレーム画像GBnから対応点が検出される度に、T1フレーム画像GB1上に新たな基準点SpB1が設定される。
【0210】
<(5-1-2-3)第1変形例に係る基準視差設定部>
基準視差設定部365Bは、上記一実施形態に係る基準視差設定部365と同様に、各処理対象画像ペアに対して、対応点の探索の基準となる視差(基準視差)を仮に設定する。
【0211】
具体的には、T1フレーム画像(基準画像)GB1とT2フレーム画像(参照画像)GB2との組に対し、基準視差の初期値が仮に設定される。基準視差の初期値としては、例えば、XおよびY方向の所定値(例えばゼロ等)に設定される。
【0212】
例えば、T1フレーム画像(基準画像)GB1に対して基準点SpB1(図13)が設定されるとともに、T2フレーム画像(参照画像)GB2に対して処理対象点PpB2(図14)が設定される。ここでは、T1フレーム画像(基準画像)GB1における基準点SpB1の座標と、T2フレーム画像(参照画像)GB2における処理対象点PpB2の座標とのズレ量が、基準視差の初期値に相当する。
【0213】
次に、T1フレーム画像(基準画像)GB1とT2フレーム画像(参照画像)GB2の組を処理対象画像ペアとした対応点探索処理によって得られる視差が、次の処理対象画像ペアとしてのT2フレーム画像(基準画像)GB2とT3フレーム画像(参照画像)GB3との組に対し、基準視差として仮に設定される。
【0214】
例えば、T2フレーム画像(基準画像)GB2に対して、前段の対応点探索処理で得られた対応点が、基準点SpB2(図13)として設定されるとともに、T3フレーム画像(参照画像)GB3に対して処理対象点PpB3(図14)が設定される。ここでは、T2フレーム画像(基準画像)GB2における基準点SpB2の座標と、T3フレーム画像(参照画像)GB3における処理対象点PpB3の座標とのズレ量が、前段の対応点探索処理によって得られる視差に相当する。
【0215】
そして、T(m−1)フレーム画像(基準画像)GB(m−1)とTmフレーム画像(参照画像)GBmの組を処理対象画像ペアとした対応点探索処理によって得られる視差が、次の処理対象画像ペアとしてのTmフレーム画像(基準画像)GBmとT(m+1)フレーム画像(参照画像)GB(m+1)との組に対し、基準視差として仮に設定される。
【0216】
例えば、Tmフレーム画像(基準画像)GBmに対して、前段の対応点探索処理で得られた対応点が、基準点SpBm(図13)として設定されるとともに、T(m+1)フレーム画像(参照画像)GB(m+1)に対して処理対象点PpB(m+1)(図14)が設定される。ここでは、Tmフレーム画像(基準画像)GBmにおける基準点SpBmの座標と、T(m+1)フレーム画像(参照画像)GB(m+1)における処理対象点PpB(m+1)の座標とのズレ量が、前段の対応点探索処理によって得られる視差に相当する。
【0217】
<(5-1-2-4)第1変形例に係るウインドウ設定部>
ウインドウ設定部366Bは、上記一実施形態に係るウインドウ設定部366と同様に、Tmフレーム画像(基準画像)GBmにおいて基準点SpBmを中心として包含するウインドウ(基準領域)WBmを設定するとともに、T(m+1)フレーム画像(参照画像)GB(m+1)において処理対象点Pp(m+1)を中心として包含するウインドウ(比較領域)WB(m+1)を設定する。基準領域WBmおよび比較領域WB(m+1)は、同一サイズの正方形の画像領域であり、例えば、縦方向および横方向にそれぞれ32画素が配列されて構成される。
【0218】
<(5-1-2-5)第1変形例に係る周波数解析部>
周波数解析部367Bは、上記一実施形態に係る周波数解析部367と同様に、画像を正弦波に係る周波数成分を示す情報に変換する処理(変換処理)を実行する。この変換処理は、各基準領域WBmに対して行われるとともに、各比較領域WB(m+1)に対して行われる。なお、周波数解析部367Bにおける変換処理は、上記一実施形態に係る周波数解析部367における変換処理と同様な処理であるため、ここでは説明を省略する。
【0219】
<(5-1-2-6)第1変形例に係る周波数成分制限部>
周波数成分制限部368Bは、上記一実施形態に係る周波数成分制限部368と同様に、周波数解析部367Bで生成された周波数成分情報を所定の制限ルールに従って制限した上で、相関演算部369Bに対して出力する。これにより、相関演算部369Bにおける基準領域WBmと比較領域WB(m+1)との間における相関値を求める相関演算においては、周波数解析部367Bで生成された周波数成分情報のうちの一部の周波数成分情報については使用されず、残余の一部の周波数成分情報が選択的に使用される。
【0220】
具体的には、周波数成分制限部368Bでは、上記一実施形態に係る周波数成分制限部368と同様に、周波数解析部367Bで生成された周波数成分情報が、前段の相関演算で得られるピーク相関値Cmaxに応じた重み付けルールに従って制限される。また、周波数成分制限部368Bでは、重き付けルールに従った周波数ごとの重み付け係数の決定により、相関演算部369Bにおける相関演算での使用が制限される周波数成分情報の周波数の範囲(使用制限周波数範囲)が設定される。
【0221】
なお、周波数成分制限部368Bにおける詳細な周波数成分の制限方法および該制限方法に従った処理は、上記一実施形態に係る周波数成分制限部368における詳細な周波数成分の制限方法および該制限方法に従った処理と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0222】
<(5-1-2-7)第1変形例に係る相関演算部>
相関演算部369Bは、上記一実施形態に係る相関演算部369と同様に、周波数成分制限部368Bから出力される基準領域WBmに係る周波数成分情報と比較領域WB(m+1)に係る周波数成分情報とに基づいて、基準領域WBmと比較領域WB(m+1)とに係る投票積算値の分布を示す情報を得るとともに、基準領域WBmと比較領域WB(m+1)との間における相関値を算出する。つまり、相関演算部369Bでは、周波数解析部367Bで生成された周波数成分情報のうち、周波数成分制限部368Bにおいて重み付け係数の乗算によって制限されることで得られた一部の周波数成分情報が用いられて、基準領域WBmと比較領域WB(m+1)との間における相関値が算出される。
【0223】
なお、相関演算部369Bにおける演算処理は、上記一実施形態に係る相関演算部369における演算処理と同様なものであるため、ここでは説明を省略する。
【0224】
<(5-1-2-8)第1変形例に係る対応点決定部>
対応点決定部370Bは、上記一実施形態に係る対応点決定部370と同様に、基準領域WBmと比較領域WB(m+1)との組に対し、相関演算部369Bで得られた投票積算値の分布を示す情報に基づいて、基準領域WBmにおける基準点SpBmと比較領域WB(m+1)における対応点とのズレ量(視差)を導出する。そして、対応点決定部370Bは、導出した視差に基づいて、T1フレーム画像GB1の基準点SpB1に対応する対応点を各フレーム画像GB2〜GBnからそれぞれ決定する。
【0225】
なお、対応点決定部370Bにおける具体的な処理は、上記一実施形態に係る対応点決定部370における処理と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0226】
<(5-1-3)第1変形例に係る対応点探索動作のフロー>
図38から図40は、情報処理システム1Bにおいて実現される対応点探索動作のフローを例示するフローチャートである。例えば、ユーザーによる操作部31に対する操作に応じて、本動作フローが開始されて、図38のステップSS1に進む。
【0227】
ステップSS1では、探索基準点設定部363Bによって、基準点が設定される際に基準となる数値jが1に設定される。
【0228】
ステップSS2では、画像取得部361Bによって、処理対象画像ペアが指定される際に基準となる数値mが1に設定される。
【0229】
ステップSS3では、画像取得部361Bによって、ステップSS2で設定された数値m(=1)に従い、T1フレーム画像GB1とT2フレーム画像GB2とが処理対象画像ペアとして記憶部34から取得される。このとき、T1フレーム画像GB1が基準画像GB1とされるとともに、T2フレーム画像GB2が基準画像GB2とされる。
【0230】
ステップSS4では、探索基準点設定部363Bによって、ステップSS1またはステップSS23(図40)で直近に設定された数値jに従い、ステップSS3で取得されたT1フレーム画像(基準画像)GB1に対してj番目の基準点SpB1が設定される。
【0231】
ステップSS5では、基準視差設定部365Bによって、ステップSS3で取得されたT2フレーム画像(参照画像)GB2に対して、処理対象点PpB2が設定される。すなわち、基準視差が初期値に設定される。
【0232】
ステップSS6では、ウインドウ設定部366Bによって、T1フレーム画像(基準画像)GB1に対して、基準点SpB1を中心として包含する基準領域WB1が設定されるとともに、T2フレーム画像(参照画像)GB2に対して、処理対象点PpB2を中心として包含する比較領域WB2が設定される。
【0233】
ステップSS7では、周波数解析部367Bによって、T1フレーム画像(基準画像)GB1の基準領域WB1が周波数成分情報に変換されるとともに、T2フレーム画像(参照画像)GB2の比較領域WB2が周波数成分情報に変換される。
【0234】
ステップSS8では、相関演算部369Bによって、ステップSS7で得られた基準領域WB1に係る周波数成分情報と比較領域WB2に係る周波数成分情報とに基づく相関演算が行われる。この相関演算によって、投票積算値の分布が得られるとともに、基準領域WB1と比較領域WB2との間の相関を示すピーク相関値Cmaxが算出される。
【0235】
ステップSS9では、対応点決定部370Bによって、ステップSS8で得られた投票積算値の分布に基づいて、ピーク相関値Cmaxに対応する視差(dx,dy)が導出されるとともに、基準点SpB1に対応する参照画像GB2上の対応点が認識される。このステップSS9の処理が終了されると、図39のステップSS11に進む。
【0236】
図39のステップSS11では、画像取得部361Bによって、処理対象画像ペアを指定する際に基準となる数値mが1つ増加される。
【0237】
ステップSS12では、画像取得部361Bによって、ステップSS11で設定された数値mに従い、Tmフレーム画像GBmとT(m+1)フレーム画像GB(m+1)とが処理対象画像ペアとして記憶部34から取得される。このとき、Tmフレーム画像GBmが基準画像GBmとされるとともに、T(m+1)フレーム画像GB(m+1)が基準画像GB(m+1)とされる。なお、Tmフレーム画像GBmについては、前段の相関演算で使用するために既に記憶部34から取得されているものが、そのまま利用されても良い。
【0238】
ステップSS13では、探索基準点設定部363Bによって、ステップSS9(図38)またはステップSS19(図39)で直近に決定されたTmフレーム画像GBm上の対応点が、基準点SpBmとして設定される。
【0239】
ステップSS14では、基準視差設定部365Bによって、ステップSS12で取得されたT(m+1)フレーム画像(参照画像)GB(m+1)に対して、処理対象点PpB(m+1)が設定される。すなわち、基準視差が設定される。
【0240】
ステップSS15では、ウインドウ設定部366Bによって、Tmフレーム画像(基準画像)GBmに対して、基準点SpBmを中心として包含する基準領域WBmが設定されるとともに、T(m+1)フレーム画像(参照画像)GB(m+1)に対して、処理対象点PpB(m+1)を中心として包含する比較領域WB(m+1)が設定される。
【0241】
ステップSS16では、周波数解析部367Bによって、Tmフレーム画像(基準画像)GBmの基準領域WBmが周波数成分情報に変換されるとともに、T(m+1)フレーム画像(参照画像)GB(m+1)の比較領域WB(m+1)が周波数成分情報に変換される。
【0242】
ステップSS17では、周波数成分制限部368Bによって、直近のステップSS16で生成された周波数成分情報が、前段の相関演算で得られたピーク相関値Cmaxに応じた重み付けルールに従って制限される。ここでは、前段の相関演算で得られるピーク相関値Cmaxに基づいて、相関演算における周波数成分情報の使用が制限される使用制限周波数範囲(例えば、低周波側制限範囲RL1や高周波側制限範囲RH1など)が設定される。そして、この使用制限周波数範囲に応じて、直近のステップSS16で生成された周波数成分情報が制限された上で、相関演算部369Bに対して出力される。
【0243】
ステップSS18では、相関演算部369Bによって、ステップSS17で一部の情報が制限された、基準領域WBmに係る周波数成分情報と比較領域WB(m+1)に係る周波数成分情報とに基づく相関演算が行われる。この相関演算によって、投票積算値の分布が得られるとともに、基準領域WBmと比較領域WB(m+1)との間の相関を示すピーク相関値Cmaxが算出される。
【0244】
ステップSS19では、対応点決定部370Bによって、ステップSS18で得られた投票積算値の分布に基づいて、ピーク相関値Cmaxに対応する視差(dx,dy)が導出されるとともに、基準点SpBmに対応する参照画像GB(m+1)上の対応点が決定される。
【0245】
ステップSS20では、画像取得部361Bによって、数値(m+1)が、対応点探索処理の対象となるフレーム画像の数nに到達しているか否かが判定される。ここで、数値(m+1)が、数nに到達していなければ、ステップSS11に進み、数値(m+1)が、数nに到達するまで、ステップSS11〜SS20の処理が繰り返される。これにより、ステップSS4で設定された1つの基準点Sp1に対応する対応点が、各T2〜Tnフレーム画像GB2〜GBn上でそれぞれ決定される。一方、数値(m+1)が、数nに到達していれば、図40のステップSS21に進む。
【0246】
図40のステップSS21では、制御部36によって、直近のステップSS4で設定された基準点Sp1と、ステップSS19(図39)で決定された各対応点とが関連付けられて、記憶部34に記憶される。
【0247】
ステップSS22では、探索基準点設定部363Bによって、ステップSS4においてT1フレーム画像(基準画像)GB1の全画素が基準点SpB1として既に設定されたか否かが判定される。ここで、未だにT1フレーム画像(基準画像)GB1の全画素が基準点SpB1として設定されていなければ、ステップSS23に進む。一方、既にT1フレーム画像(基準画像)GB1の全画素が基準点SpB1として設定されていれば、本動作フローが終了される。
【0248】
ステップSS23では、探索基準点設定部363Bによって、基準点を設定する際に基準となる数値jが1つ増加されて、図38のステップSS2に進む。これにより、T1フレーム画像GB1上に設定される各基準点SpB1に対応する対応点が、各T2〜Tnフレーム画像GB2〜GBn上でそれぞれ決定される。
【0249】
<(5-1-4)第1変形例のまとめ>
以上のように、第1変形例に係る情報処理システム1Bによれば、処理対象画像ペアとしてのT(m−1)フレーム画像GB(m−1)とTmフレーム画像GBmとの間における類似の度合いを示す相関値に基づいて、次の処理対象画像ペアとしてのTmフレーム画像GBmとT(m+1)フレーム画像GB(m+1)との間における相関演算の演算量が低減される。このため、複数の画像を対象とした対応点探索処理における精度の維持と速度の向上とが両立する。
【0250】
なお、本変形例では、カメラ2Bで時間順次に取得される時系列の画像(具体的には、T1〜Tnフレーム画像GB1〜GBn)を対象とした対応点探索動作を例示して説明したが、これに限られない。例えば、同種の被写体を捉えた3以上の画像を対象として対応点探索動作が行われても良い。但し、基準視差の設定の容易さなどを考慮すると、時系列の画像を対応点探索動作の対象とする方が、各画像間における類似の度合いが高いため、好ましい。
【0251】
また、本変形例では、単純に処理対象画像ペアを構成する2つの画像の間における対応点探索処理が行われたが、これに限られない。例えば、時系列の画像(具体的には、T1〜Tnフレーム画像GB1〜GBn)で捉えられた被写体の動きが大きな場合やその動きが規則的でないような場合には、各処理対象画像ペアについて、上記一実施形態と同様に、解像度を段階的に低下させた画像の組を生成して、低解像度の画像の組から順次に対応点探索処理が行われる方が、対応点探索処理における精度の維持を図る上で好ましい。
【0252】
<(5-2)その他の変形例>
◎また、上記一実施形態では、前段の対応点の探索処理で求められた相関値(例えば、ピーク相関値Cmax)に応じて、周波数ごとの重み付け係数や使用制限周波数範囲が設定されたが、これに限られない。例えば、或る対応点の探索処理を基準として、前段よりも更に1段以上前段(例えば、前々段)の対応点の探索処理で求められる相関値も用いられて、周波数ごとの重み付け係数や使用制限周波数範囲が設定されても良い。
【0253】
具体例としては、2回以上連続して相関値(例えば、ピーク相関値Cmax)が所定値よりも高い値に維持されれば、対応点探索処理に用いられる処理対象画像ペアについては、処理対象点と対応点とのズレが少ないものと推定される。そこで、このような場合には、自動的に低周波の周波数成分に対する重み付け係数がより低減されて、低周波側制限範囲RL1が拡大されるような態様が考えられる。
【0254】
また、例えば、相関演算で使用される周波数成分情報を制限するための前段の相関値は、投票積算値の確率密度であっても良いし、投票積算値の分布において、最大投票値を示す視差(dx,dy)の周辺の1以上の視差に係る投票積算値と最大投票値との総和であっても良い。また、基準領域と比較領域との間において求められる相関値の総和に占めるピーク相関値Cmaxの割合が採用されても良い。すなわち、相関演算で使用される周波数成分情報を制限するための前段の相関値として、前段の相関演算で得られる複数の画像間の相関を示す種々の値が採用されても良い。このように、より多くの情報が加味されることで、ノイズ等の影響に拘わらず、対応点探索処理における精度の向上が図られる。
【0255】
◎また、上記一実施形態では、周波数iごとに、低周波重視型ルールの重み付け係数WLOWと高周波重視型ルールの重み付け係数WHIGHのうち、相対的に低い重み付け係数が採用されたが、これに限られない。例えば、周波数iごとに、3種類以上の重み付けルールの重み付け係数から、1つの重み付けルールに係る重み付け係数が選択されても良い。
【0256】
具体例としては、低周波重視型ルールの重み付け係数WLOWと、高周波重視型ルールの重み付け係数WHIGHとに加えて、更に、別の重み付けルールに係る重み付け係数Weが設定されても良い。この場合、周波数iごとに、低周波重視型ルールの重み付け係数WLOW、高周波重視型ルールの重み付け係数WHIGH、および別の重み付けルールに係る重み付け係数Weのうち、相対的に最も低い重み付け係数が採用される態様が考えられる。
【0257】
例えば、下式(4)の関係を満たす場合には、We(i,Cmax)が重み付け係数として採用され、下式(5)で示されるように、振幅fiにWe(i,Cmax)が乗ぜられた値が、重み付け後の振幅fiAFTERとなるような態様が考えられる。
【0258】
e(i,Cmax)<WLOW(i,Cmax)<WHIGH(i,Cmax) ・・・(4)
iAFTER=We(i,Cmax)×fi ・・・(5)
【0259】
また、重み付け係数の採用に係る別の態様として、周波数iごとに、低周波重視型ルールの重み付け係数WLOWと高周波重視型ルールの重み付け係数WHIGHとの積が重み付け係数として採用される態様も考えられる。
【0260】
◎また、上記一実施形態では、周波数iごとに、相関値に応じた使用制限周波数範囲が設定されたが、この使用制限周波数範囲には、相関値の大小に拘わらず、所定の周波数の範囲が含まれるようにしても良い。例えば、極端な低周波や高周波は、対応点探索処理の精度を向上させる上での寄与度が小さい場合が想定される。このような場合には、相関値の大小に拘わらず、所定の周波数の範囲が使用制限周波数範囲に含まれても良い。
【0261】
例えば、上記一実施形態では、3層目(最下層)の低解像度の画像の組については、前段の相関値が得られていないため、周波数成分情報に対する重み付けおよび制限が行われなかったが、これに限られない。例えば、周波数成分情報のうち、極端な低周波や高周波に係る周波数成分情報については制限されるようにしても良い。つまり、3層目(最下層)の低解像度の画像の組を対象とした相関演算において、極端な低周波や高周波に係る周波数成分情報が使用されないようにしても良い。これにより、対応点探索処理における演算速度の更なる向上が図られる。
【0262】
◎また、上記一実施形態では、重み付け係数が乗ぜられた振幅に応じた投票値の積算が行われたが、これに限られない。例えば、ゼロ以外の重み付け係数が周波数成分情報に付され、相関演算において、重み付け係数の大きさに応じた投票値が積算されるような構成が採用されても良い。
【0263】
◎また、上記一実施形態では、2つの画像の間で対応点探索が行われたが、これに限られない。本願発明の技術的思想は、3以上の複数の画像の間における対応点探索に対しても適用可能である。
【0264】
◎また、上記一実施形態では、相関演算として、PSA法が採用された例を示して説明したが、これに限られない。例えば、周波数成分制限部368から出力される周波数成分情報を用いた相関演算としては、他の投票方法や位相限定相関法(POC法)などの種々の相関演算が採用されても良い。なお、POC法が採用された場合、相関演算で使用される周波数成分情報を制限するための前段の相関値としては、例えば、前段の相関演算で得られたPOC値のピーク値等となる。
【0265】
◎また、上記一実施形態では、基準画像G1および参照画像G2から、所定の間引きルールに従って、垂直ラインおよび水平ラインが間引かれることで、第1〜3縮小基準画像G11〜G13および第1〜3縮小参照画像G21〜G23がそれぞれ生成されたが、これに限られない。例えば、所定数(例えば、4つ)の隣接画素の塊について画素値の平均値が求められて1画素とされる処理が画像全体にわたって行われることで、第1〜3縮小基準画像G11〜G13および第1〜3縮小参照画像G21〜G23がそれぞれ生成される方法も考えられる。すなわち、公知の縮小や倍率の変更等といった種々の方法によって、基準画像G1および参照画像G2から所定ルールに従って画素数が低減されることで、第1〜3縮小基準画像G11〜G13および第1〜3縮小参照画像G21〜G23が生成されても良い。
【0266】
◎また、2次元のフーリエ変換については、x方向についての一次元のフーリエ変換の結果と、y方向についてのフーリエ変換の結果とを利用して、2次元のフーリエ変換の結果を得る方法も考えられる。このような方法が採用される場合には、x方向に係る周波数成分とy方向に係る周波数成分とが別々に制限されるような構成が採用されても良い。
【0267】
◎なお、上記一実施形態および各種変形例をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【0268】
例えば、時系列のステレオ画像が取得され、各フレームのステレオ画像を構成する基準画像と参照画像とを対象とした対応点探索動作については、上記一実施形態と同様に、解像度が段階的に低減された画像の組が生成されて、低解像度の画像の組から順次に対応点探索処理が行われ、更に、上記第1変形例と同様に、時系列の基準画像(または参照画像)を対象とした対応点探索動作が行われるような構成が考えられる。
【符号の説明】
【0269】
1A,1B 情報処理システム
2 ステレオカメラ
2B カメラ
3 情報処理装置
34 記憶部
36 制御部
361,361B 画像取得部
362 解像度変換部
363,363B 探索基準点設定部
364 画像指定部
365,365B 基準視差設定部
366,366B ウインドウ設定部
367,367B 周波数解析部
368,368B 周波数成分制限部
369,369B 相関演算部
370,370B 対応点決定部
PGa,PGb プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1画像の第1領域を第1周波数成分情報に変換するとともに、第2画像の第2領域を第2周波数成分情報に変換する変換部と、
前記第1および第2周波数成分情報に基づいて、前記第1領域と前記第2領域との相関を示す第1相関値を算出する相関演算部と、
前記第1相関値に基づいて、前記相関演算部での演算における周波数成分情報の使用が制限される周波数の使用制限範囲を設定する制限部と、
を備え、
前記変換部が、
前記第1画像に対応する第3画像の第3領域を第3周波数成分情報に変換するとともに、前記第2画像に対応する第4画像の第4領域を第4周波数成分情報に変換し、
前記相関演算部が、
前記第3および第4周波数成分情報のうちの前記使用制限範囲外の周波数に係る周波数成分情報に基づいて、前記第3領域と前記第4領域との相関を示す第2相関値を算出することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記第3画像から所定ルールに従って画素数を低減することで前記第1画像を生成するとともに、前記第4画像から前記所定ルールに従って画素数を低減することで前記第2画像を生成する生成部、
を更に備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記第3および第4画像が、
同一の被写体を異なる視点から捉えた複数の画像であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
第1画像の第1領域を第1周波数成分情報に変換するとともに、第2画像の第2領域を第2周波数成分情報に変換し、前記第2画像の第3領域を第3周波数成分情報に変換するとともに、第3画像の第4領域を第4周波数成分情報に変換する変換部と、
前記第1および第2周波数成分情報に基づいて、前記第1領域と前記第2領域との相関を示す第1相関値を算出する相関演算部と、
前記第1相関値に基づいて、前記相関演算部での演算における周波数成分情報の使用が制限される周波数の使用制限範囲を設定する制限部と、
を備え、
前記相関演算部が、
前記第3および第4周波数成分情報のうちの前記使用制限範囲外の周波数に係る周波数成分情報に基づいて、前記第3領域と前記第4領域との相関を示す第2相関値を算出することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理装置であって、
前記第1から第3画像が、
同一の視点から同一の被写体の時間的な変化を捉えた複数の画像であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1つの請求項に記載の画像処理装置であって、
前記制限部が、
前記第1相関値が大きくなるに従って、前記変換部で得られる各前記周波数成分情報のうちの最も低周波側からより広範囲の周波数に係る周波数成分情報の使用が制限されるように、前記使用制限範囲を設定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1つの請求項に記載の画像処理装置であって、
前記制限部が、
前記第1相関値が小さくなるに従って、前記変換部で得られる各前記周波数成分情報のうちの最も高周波側からより広範囲の周波数に係る周波数成分情報の使用が制限されるように、前記使用制限範囲を設定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
第1画像の第1領域を第1周波数成分情報に変換するとともに、第2画像の第2領域を第2周波数成分情報に変換する第1変換ステップと、
前記第1および第2周波数成分情報に基づいて、前記第1領域と前記第2領域との相関を示す第1相関値を算出する第1演算ステップと、
前記第1相関値に基づいて、前記相関演算部での演算における周波数成分情報の使用が制限される周波数の使用制限範囲を設定する設定ステップと、
前記第1画像に対応する第3画像の第3領域を第3周波数成分情報に変換するとともに、前記第2画像に対応する第4画像の第4領域を第4周波数成分情報に変換する第2変換ステップと、
前記第3および第4周波数成分情報のうちの前記使用制限範囲外の周波数に係る周波数成分情報に基づいて、前記第3領域と前記第4領域との相関を示す第2相関値を算出する第2演算ステップと、
を備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
第1画像の第1領域を第1周波数成分情報に変換するとともに、第2画像の第2領域を第2周波数成分情報に変換する第1変換ステップと、
前記第1周波数成分情報と前記第2周波数成分情報とに基づいて、前記第1領域と前記第2領域との相関を示す第1相関値を算出する第1演算ステップと、
前記第1相関値に基づいて、相関演算における周波数成分情報の使用が制限される周波数の使用制限範囲を設定する設定ステップと、
前記第2画像の第3領域を第3周波数成分情報に変換するとともに、第3画像の第4領域を第4周波数成分情報に変換する第2変換ステップと、
前記第3および第4周波数成分情報のうちの前記使用制限範囲外の周波数の周波数成分情報に基づいて、前記第3領域と前記第4領域との相関を示す第2相関値を算出する第2演算ステップと、
を備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
情報処理装置に含まれる制御部において実行されることにより、前記情報処理装置を、請求項1から請求項7の何れか1つの請求項に記載の画像処理装置として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2011−170519(P2011−170519A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32465(P2010−32465)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】