画像処理装置およびその方法
【課題】 印刷物の正反射光の色付きを抑制する。
【解決手段】 画像処理装置は、複数の有色色材と無色色材を用いて画像を記録する。無色色材のドット配置が異なり、無色色材の色材量に対応する、複数のドット配置を示す情報をメモリに格納する。画素ごとに、複数の有色色材それぞれの色材量および無色色材の色材量を示す色材量データを入力する。入力した色材量データが示す無色色材の色材量に基づき、画素における正反射光の色付きが無彩色に近づくよう、複数のドット配置の中から無色色材のドット配置を決定する。
【解決手段】 画像処理装置は、複数の有色色材と無色色材を用いて画像を記録する。無色色材のドット配置が異なり、無色色材の色材量に対応する、複数のドット配置を示す情報をメモリに格納する。画素ごとに、複数の有色色材それぞれの色材量および無色色材の色材量を示す色材量データを入力する。入力した色材量データが示す無色色材の色材量に基づき、画素における正反射光の色付きが無彩色に近づくよう、複数のドット配置の中から無色色材のドット配置を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の正反射光の色付きを制御する画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
記録紙やフィルムなどのシート状の記録媒体に、文字や画像などの情報を記録する記録装置には様々な方式がある。記録媒体に色材を付着させて文字や画像を形成する方式の代表として、インクを吐出する記録ヘッドを用いるインクジェット方式が知られている。
【0003】
インクジェット方式の記録装置によって光沢紙に画像を記録し、写真画質の画像を形成する写真印刷が普及した。インクジェット方式の記録装置には、水に溶解し易い染料を色材に用いる染料インクが広く利用されている。染料インクは、溶媒に溶解した色材が記録媒体の繊維質の内部に浸透し易い。従って、画像記録後も記録媒体の表面形状が維持され易く、記録媒体の光沢が記録画像の光沢として維持される。つまり、光沢に優れた記録媒体に染料インクを用いて画像を記録すれば、光沢に優れた画像が得られる。言い換えれば、染料インクを用いるインクジェット方式の記録装置は、記録媒体の光沢の向上により、容易に画像に光沢を与えることができる。
【0004】
一方、印刷物に対する耐光性や耐水性の要求がある。染料インクは、色材の染料分子が光によって分解し記録画像の色が褪色し易い(耐光性が低い)。また、染料インクで印刷した印刷物は、水に濡れると繊維質に浸透した染料分子が水に溶解し画像に滲みが発生する(耐水性が低い)。耐光性や耐水性の問題を解決するため、近年、色材に顔料を用いる顔料インクの利用が増加した。溶媒中に分子状態で存在する染料と異なり、顔料は、数10nmから数μmの粒子として溶媒中に存在する。つまり、顔料インクの色材粒子は大きく、耐光性が高い印刷物が得られる。
【0005】
顔料インクは耐光性、耐水性の面で優れる反面、記録画像の正反射光に付いた色が画像品質上の問題になる場合がある。正反射光は、例えば記録画像の表面に映り込んだ照明の像として観察者に認識される。正反射光(および、正反射光に近い角度の拡散光)に色が付き、印刷物に映り込んだ照明の像が照明本来と異なる色として観察されると、画像を観察する際の邪魔になり、とくに写真印刷された画像に好ましくない。正反射光に色が付く原因として、ブロンズ現象や薄膜干渉が知られている。
【0006】
図1によりブロンズ現象を説明する。光源からの入射光104は、記録媒体101上に記録された色材102に反射される。正反射光103は、入射光104の入射角θと同じ角度θの方向に反射する光である。色材102の反射率は光の波長に依存するため、入射光104の分光分布と正反射光103の分光分布が異なり、色が付いた正反射光103が認識される。これがブロンズ現象であり、色材102に固有の色が正反射光103に付く。とくに、シアン色材によってマゼンタ色が付くことが知られている。
【0007】
図2により薄膜干渉を説明する。光源からの入射光207に対する正反射光には、記録媒体201上に記録された色材203の表面で反射された正反射光204と、色材203と下層の色材202の界面で反射された正反射光205が存在する。二つの正反射光204、205の光路長には色材203の厚さ分の差があり、二つの正反射光204、205に位相差が生じる。その結果、二つの正反射光204、205が干渉し、観察される正反射光に色が付く。これが薄膜干渉である。
【0008】
ブロンズ現象や薄膜干渉は、印刷物の表面付近の材質に依存し、表面付近の構造によっても発生の程度が異なる。この構造とは、例えば記録媒体の表面を占めるインクの割合(被覆率)である。つまり、印刷物の表面は、色または階調によって異なる構造や材質で構成されるから、色または階調によって正反射光の色が異なることになる。その結果、複数の色によって構成される画像からの正反射光は、画像位置により異なる色として観察され、画像の観察者に違和感を与える。
【0009】
この問題を解決する方法として、画像にイエローインクをオーバコートする技術がある(特許文献1)。また、画像の記録領域の全域に無色透明な色材を含むインク(クリアインク)をオーバコートする技術がある(特許文献2)。
【0010】
特許文献1の手法は、例えばシアンを再現する際にイエローインクを追加するなど、色再現に不要なインクを混色する。色再現に不要なインクの混色は、彩度の低下を招き、色再現範囲(色域)を縮小させる。
【0011】
特許文献2の手法におけるクリアインクのオーバコートは、色再現には影響しないが、ブロンズ現象を抑制できるとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004-181688号公報
【特許文献2】特開2003-132350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、印刷物の正反射光の色付きを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記の目的を達成する一手段として、以下の構成を備える。
【0015】
本発明にかかる画像処理は、複数の有色色材と無色色材を用いて画像を記録する際に、前記無色色材のドット配置が異なり、前記無色色材の色材量に対応する、複数のドット配置を示す情報をメモリに格納し、画素ごとに、前記複数の有色色材それぞれの色材量および前記無色色材の色材量を示す色材量データを入力し、前記入力した色材量データが示す前記無色色材の色材量に基づき、前記画素における正反射光の色付きが無彩色に近づくよう、前記複数のドット配置の中から前記無色色材のドット配置を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、印刷物の正反射光の色付きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ブロンズ現象を説明する図。
【図2】薄膜干渉を説明する図。
【図3】画素と画素を構成するセルの関係を示す図。
【図4】インデックスパターンとドットのオンオフの関係を示す図。
【図5】正反射光に色が付く原因を説明する図。
【図6】クリア色材の厚さによって正反射光の色が変化する様子を説明する図。
【図7】クリア色材の厚さが局所的に変動する例を説明する図。
【図8】実施例の画像処理装置の構成例を説明するブロック図。
【図9】色分解LUTの一例を説明する図。
【図10】印刷データのフォーマット例を説明する図。
【図11】CLインク用のインデックスパターンの一例を説明する図。
【図12】プロセスカラーのインク量とインデックスパターンとの対応例を説明する図。
【図13】CLインクのドット配置の組み合わせ例を説明する図。
【図14】CLインクのドット配置と、プロセスカラーのインデックスパターンを決定するドット配置部の処理を説明するフローチャート。
【図15】ドット配置が異なるCLインクのドット配置を並置させる場合のドット配置部の処理を説明するフローチャート。
【図16】記録ヘッドと記録パターンを模式的に示す図。
【図17】実施例2の画像処理装置の構成例を説明するブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる実施例の画像処理を図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
以下では、着色剤(色材)を含まずに実質的に無色透明な色材を含むインクのドット配置を領域ごとに変更して、局所的な正反射光の色付きを制御し、大局的な正反射光の色付きを抑制する方法を説明する。「局所的な正反射光の色付き」「大局的な正反射光の色付き」とは、正反射光の色付きが観察のスケールに依存するからである。つまり「大局的な正反射光の色付き」は、人間が正反射光の色付きを認識できるスケール以上において平均化された色付きである。また「局所的な正反射光の色付き」は、人間が正反射光の色付きを認識できないスケール(数10μm程度)で平均化された色付きである。また、以下では、着色剤を含む色材を「有色色材」、無色透明な色材を「クリア色材(または無色色材)」、クリア色材を含むインクを「クリアインク」と呼ぶ場合がある。
【0020】
「画素」は階調表現が可能な最少単位の画像であり、多値データの画像処理(例えばカラーマッチング、色分解、ガンマ補正、ハーフトーン処理など)が対象にする最少単位の画像である。また、ハーフトーン処理において、一画素は例えば2×4セルで構成されるインデックスパターンに対応し、各セルは、画像記録装置が記録可能な最小単位である「ドット」の形成/非形成(以下、オンオフ)を定義する。上記のカラーマッチング、色分解、ガンマ補正における「画像データ」は画素の集合を表し、各画素は、例えば各色8ビットの階調値を有する画像データである。従って、上記のハーフトーン処理は、各色8ビットの階調値を有する画素の画像データを、例えば各色九階調を有するデータ(インデックスパターン)に変換する。
【0021】
図3により画素と画素を構成するセルの関係を示す。図3(a)は2×2の四画素を表し、図3(b)は図3(a)に示す四画素と、2×4セルのインデックスパターンの対応を表す。なお、図3には画素やセルの解像度の一例を示すが、画素やセルの解像度は、それに限定されない。
【0022】
図4によりインデックスパターンとドットのオンオフの関係を示す。インデックスパターンは画素当りのインクの供給量(以下、インク量)によって決定され、図4(a)はインク量64に、図4(b)はインク量128にそれぞれ対応するドット配置例である。インク量は一画素中に配置するオンドットの数を表す尺度であり、例えば、インク量0は一画素中にオンドットを配置しない状態を表し、インク量255は一画素の中の全ドット(図4の例では八つのドット)をオンにする状態を表す。なお、ドットがオンの場合はインクを吐出して記録媒体上にドットを形成し、ドットがオフの場合はインクを吐出しない(記録媒体上にドットを形成しない)。
【0023】
[正反射光の色付き]
図5により正反射光に色が付く原因を説明する。図5は、記録媒体501上に色材502、クリア色材503が重なった試料を示す。試料面の法線に対してある角度θ傾いた方向から光504が照射されると、クリア色材503の表面で正反射光505が反射され、クリア色材503と色材502の界面で正反射光506が反射される。これら正反射光505、506の間には式(1)に示す光路差Lがあり、正反射光505、506の間の位相差φは式(2)で表される。
L = 2nd・cosθ …(1)
ここで、nはクリア色材503の屈折率、
dはクリア色材503の厚さ、
θは光504の入射角。
φ = 2π/λ×L
= 2π・2nd・cosθ/λ …(2)
ここで、λは光504の波長。
【0024】
一方の正反射光の位相を0とすると、その振幅はcos0、つまり1である。また、他方の正反射光は位相がφずれているから、その振幅はcosφ=cos(4πnd・cosθ/λ)である。従って、二つの正反射光505、506の振幅の平均値Amは式(3)で表される。また、反射光の強度Iは、振幅の二乗に比例するから式(4)で表される。
Am = 1/2・{1+ cos(4πnd・cosθ/λ)} …(3)
I = 1/4・{1+ cos(4πnd・cosθ/λ)}2 …(4)
【0025】
入射光504の振幅を1と仮定すれば、反射光の強度Iは反射率と言い換えることが可能である。従って、正反射光の三刺激値XYZと膜厚dには式(5)の関係が成立する。
X = K∫S(λ)・1/4・{1 + cos(4πnd・cosθ/λ)}2x(λ)dλ
Y = K∫S(λ)・1/4・{1 + cos(4πnd・cosθ/λ)}2y(λ)dλ …(5)
Z = K∫S(λ)・1/4・{1 + cos(4πnd・cosθ/λ)}2z(λ)dλ
ここで、S(λ)は光504の分光分布、
x(λ)y(λ)z(λ)はCIEXYZ表色系の等色関数、
積分範囲は可視光の波長範囲(一般に380nmから780nm)、
Kは比例定数。
【0026】
式(5)が示すように、クリア色材503の厚さdによって正反射光の色が変化する。なお、説明を簡単にするために、多重反射、色材502内の反射、屈折率の波長分散から生じる波長選択的な反射に関する説明は割愛したが、それらを考慮しても、クリア色材503の厚さdによって正反射光の色が変化することはいうまでもない。
【0027】
[正反射光の色付き制御の概要]
図6によりクリア色材の厚さによって正反射光の色が変化する様子を説明する。図6は、記録媒体の表面をシアン色材で100%被覆し、さらにインク量を0から255まで変化させたクリア色材でオーバコートした画像の正反射光の色を測定し、測定結果の色度abをab平面にプロットしたグラフである。クリア色材でオーバコートした画像の正反射光の色度abが図6に示すような軌跡を描くのは、クリア色材の厚さがクリアインク(以下、CLインク)のインク量(以下、CLインク量)によって変化するからである。
【0028】
図7A to 7Dによりクリア色材の厚さが局所的に変動する例を説明する。インデックスパターンの領域においてCLインクが量128の場合のCLインクのドット配置を図7Aに、図7AのX-X断面を図7Bに示す。図7Bに示すように、クリア色材のドットの重なりにより、CLインク量0に相当する色付き(図6に示す色付きS)、CLインク量128に相当する色付き(同、色付きT)、CLインク量255に相当する色付き(同、色付きR)が発生する。
【0029】
また、図7CはCLインクが量128の場合のCLインクの別のドット配置を示し、図7CのX-X断面を図7Dに示す。この場合は、図7Dに示すように、CLインク量0に相当する色付き(図6に示す色付きS)、CLインク量128に相当する色付き(同、色付きT)が発生し、CLインク量255に相当する色付き(同、色付きR)は発生しない。
【0030】
そこで、図7Aに示すように、クリア色材のドットが重なるようなドット配置を用いれば、局所的な正反射光の色付きS、T、Rが混在して、大局的な正反射光の色付きが軽減されると考えられる。つまり、インデックスパターン領域においてクリア色材のドットをできるだけ近づけることで領域内のクリア色材の厚さを変化させ、複数色の正反射光を混在させて、大局的な正反射光の色付きを軽減させる。
【0031】
ここで、上述の大局的な正反射光の色付きを軽減させることの可能なCLインク量について説明する。インデックスパターン領域においてクリア色材のドットが一つの場合、ドット同士を重ねることができないため、クリア色材の厚さが十分に変化するとは言えない。逆に、インデックスパターン領域においてクリア色材のドットが五つ以上の場合、ドット同士の重なりが多くなり過ぎて、クリア色材の厚さを適正に変化させられるとは言えない。以上から、大局的な正反射光の色付きを軽減させるのに適しているのは、インデックスパターン領域においてクリア色材のドットが二つ以上、四つ以下の場合である。さらに、局所的な正反射光の色付きS、T、Rを発生させることのできる最も好適なCLインク量は、四つのドットの重なる領域からクリア色材の無い領域までの厚さを実現できる、クリア色材のドットが四つの場合である。
【0032】
[装置の概要]
図8のブロック図により実施例の画像処理装置の構成例を説明する。記録装置940は、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKの色材(顔料)を含む四種類のプロセスカラーインクと、クリア色材を含むCLインクによって印刷を行う。つまり、記録ヘッド912は、これら五種のインクを吐出する。
【0033】
●プリンタドライバ
プリンタドライバ930は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)であるホスト装置920のオペレーティングシステム(OS)上で動作するプログラムである。ホスト装置920の画像入力部901は、印刷指示とともに、ホスト装置920の外部から印刷すべき画像データを入力したり、ホスト装置920上で稼働するアプリケーションによって作成された、印刷すべき画像データを入力する。
【0034】
プリンタドライバ930のカラーマッチング部902は、入力される画像データ(例えばsRGBデータ)が再現する色域を、記録装置940の色域に写像する。例えば、sRGBに相当する色域を有するモニタに表示される色と、記録装置940が再現する色のマッチングを図る。
【0035】
色分解部903は、色分解ルックアップテーブル(LUT)904を参照して、カラーマッチング後の画像データを記録装置940が使用する色材に対応する画像データ(例えばCMYKデータおよびCLデータなどの色材量データ)に色分解する。図9により色分解LUT904の一例を説明する。色分解LUT904は、例えば入力信号値RGBに対応する出力信号値CMYKCLを格納する。なお、各出力信号値C、M、Y、K、CLはそれぞれ対応するインクのインク量に相当する。CLインク量は、入力信号値RGBに依らずにクリア色材の厚みを最も変化させることができる値に固定する。例えば、インデックスパターン領域においてクリア色材のドットが四つ打ち込まれる値である「128」にする。なお、CLインク量は、クリア色材の厚みを変化させることができる値であれば「128」に限らない。
【0036】
ガンマ補正部905は、一次元LUTを用いて、色分解部903が出力する各色のインク量ごとに階調変換(ガンマ補正)を行い、記録装置940の階調特性を線形に補正する。ハーフトーン(HT)処理部906は、ガンマ補正部905が出力する例えば各色8ビットのインク量を、例えば誤差拡散法を用いて各色4ビットに量子化する。なお、誤差拡散法は、注目画素の値と拡散誤差の和(入力値I)と予め設定した閾値を比較して、例えば下式のように、量子化後の階調値(出力値O)を決定する。そして、入力値と出力値の差分を誤差として後続の画素に拡散する。つまり、拡散誤差は、HT処理済みの画素から伝播された誤差の累積値である。
if (I < 16) O = 0;
if (16 ≦ I < 48) O = 1;
if (48 ≦ I < 80) O = 2;
if (80 ≦ I < 112) O = 3;
if (112 ≦ I < 144) O = 4;
if (144 ≦ I < 176) O = 5;
if (176 ≦ I < 208) O = 6;
if (208 ≦ I < 240) O = 7;
else O = 8; …(6)
【0037】
このようにHT処理後のインク量は0-8の9ステップで表されるが、以下では説明を容易にするために、各ステップのインク量を0、32、64、96、128、160、192、224、255として説明する。
【0038】
印刷データ作成部907は、HT処理部906が出力するHT処理後のインク量を所定フォーマットの印刷データにして記録装置940に出力する。図10により印刷データのフォーマット例を説明する。
【0039】
図10に示すように、印刷データは、印刷制御情報および印刷イメージ情報(印刷画像データ)から構成される。印刷制御情報は、印刷に使用すべきメディアを示す「メディア情報」、印刷の品位を示す「品位情報」、および、給紙方法などを示す「その他印刷情報」を有する。メディア情報は、印刷に使用すべき記録紙の種類として例えば普通紙、光沢紙、コート紙、マット紙などの何れかを示す。品位情報は、高速印刷、高品位印刷などを規定する。なお、印刷制御情報は、プリンタドライバ930が提供するユーザインタフェイスによってユーザが指定した内容に基づき構成される。印刷イメージ情報には、HT処理部906が出力する画像データが記述される。
【0040】
上記では、プリンタドライバ930がHT処理を行い、HT処理後の画像データを組み込んだ印刷データを作成する例を説明した。しかし、プリンタドライバ930がHT処理前の画像データを組み込んだ印刷データを出力し、記録装置940がHT処理を行ってもよい。
【0041】
●記録装置
記録装置940のドット配置部909は、プリンタドライバ930から受信した印刷データに含まれる印刷イメージ情報から各画素のインク量を取得する。そして、取得したインク量に基づいて、画素ごとにドット配置を決定する。プロセスカラーインクについては、インク量に対応するインデックスパターンをインデックスパターンテーブル908から選択する。具体的には、図12(a)から図12(i)が各プロセスカラーインクのインク量0、32、64、96、128、160、192、224、255に対応する。また、CLインクについては、インク量CLに対応する、ドット同士が重なり合うドット配置のインデックスパターンを選択する。
【0042】
CLインク用のインデックスパターンの一例を説明する。図11(a)はインク量CL=128に対応するインデックスパターンを示す。図11(a)のインデックスパターンはCLインクのドット配置とインク量とが固定であり、色付きS、T、R(図6参照)を発生する。
【0043】
ここで、ドット配置は、前述したように、複数の異なるドット配置を用意し、各ドット配置の正反射光の色付きは予め測定されている。そして、正反射光の色付きを抑制する効果が高い、言い換えれば、正反射光の色が無彩色に近付く、ドット配置を決定すればよい。
【0044】
ドット配置部909による各画素のインク量に対応するドット配置の選択が終了すると、選択されたドット配置やインデックスパターンを示すインデックスパターンデータがマスクデータ変換部910に入力される。
【0045】
上記では、CLインクのドット配置とインク量が固定の例を説明したが、固定でなくともよい。まず、同一のCLインク量で異なるドット配置の例について説明する。前述したように、図7(c)は、図7(a)と同一のCLインク量128でドット配置を変更した例である。図7(d)のX-X断面図に示すとおり、図7(c)のドット配置においてもCLインク量0に相当する色付き(図6に示す色付きS)、CLインク量128に相当する色付き(同、色付きT)が混在しする。つまり、同一のCLインク量であっても、図7(a)のドット配置と図7(c)のドット配置では、混在する正反射光の色の割合が異なる。この違いを利用して、異なるドット配置を組み合わせて並置する例を図13(a)に示す。図13(a)に示すように、例えば、左上および右下のドット配置は図7(a)のドット配置にして、右上および左下のドット配置は図7Cのドット配置にする。
【0046】
以上のように、同一のCLインク量であっても、異なるドット配置を複数のパターン用意し、組み合わせることでクリア色材の厚みの変化の幅が広がり、より多くの異なる色付きの正反射光を混在させて大局的な正反射光の色付きを軽減させることが可能となる。つまり、図13(a)は異なるドット配置を並列に配置した場合のドット配置例を示し、図13(a)によりCLインクのインデックスパターンの組み合わせ例を説明する。図13(a)は2×2画素領域におけるインデックスパターンの組み合わせを示し、図13(a)はCL=128に対応し、図11(a)のインデックスパターンと図11(b)のインデックスパターンを組み合わせたドット配置である。なお、図11(b)のインデックスパターンは図7(c)のドット配置に対応し、色付きS、Tを発生する。
【0047】
●ドット配置部
次に、図14のフローチャートにより、CLインクのドット配置と、プロセスカラーのインデックスパターンを決定するドット配置部909の処理を説明する。
【0048】
ドット配置部909は、プリンタドライバ930から受信した印刷データに含まれる印刷イメージ情報から2×2画素領域を選択し、2×2画素領域の各画素のインク量を取得する(S1401)。次に、ドット配置部909は、リードオンリメモリ(ROM)などのメモリに格納された2×2画素領域に対応する複数のインデックスパターンを読み込む(S1402)。
【0049】
次に、ドット配置部909は、2×2画素領域から一つの画素(注目画素)を選択し(S1403)、注目画素のインク量の一つを選択し(S1404)、選択したインク量がCLインクのインク量か否かを判定する(S1405)。
【0050】
CLインクのインク量を選択した場合、ドット配置部909は、ステップS1402で読み込んだインデックスパターンの、CLインク量に対応する複数のドット配置の中から、注目画素のCLインクのドット配置を選択する(S1406)。なお、ドット配置の選択は上述したように、正反射光の色付きを抑制する効果が高い、言い換えれば、正反射光の色が無彩色に近付く、ドット配置を選択する。一方、プロセスカラーインクのインク量を選択した場合、ドット配置部909は、そのインク量に応じたインデックスパターン(図12(a)から図12(i)の何れか)を選択する(S1407)。
【0051】
次に、ドット配置部909は、注目画素の各インク量に対応するドット配置およびインデックスパターンの選択が完了したか否かを判定し(S1408)、未了であれば処理をステップS1404に戻す。そして、注目画素の各インク量に対応するドット配置およびインデックスパターンの選択が完了した場合は、2×2画素領域の全画素についてステップS1404からS1408の処理を行ったか否かを判定する(S1409)。
【0052】
ステップS1404からS1408の処理が未了の画素があれば、ドット配置部909は、処理をステップS1403に戻して、2×2画素領域の各画素・各インク量に対応するドット配置およびインデックスパターンを選択する。2×2画素領域の各画素・各インクに対応するドット配置およびインデックスパターンが決定すると、印刷データの印刷イメージ情報に含まれる全画素の処理が終了したか否かを判定する(S1410)。
【0053】
処理が未了の画素があれば、ドット配置部909は、処理をステップS1401に戻して、全画素の処理が終了するまでステップS1401からS1410を繰り返す。そして、各画素のインク量に対応するドット配置およびインデックスパターンが決定すると、ドット配置部909は、印刷イメージ情報に対応するインデックスパターンデータを、後述するマスクデータ変換部910に出力する(S1411)。
【0054】
●ドット配置の変形例
上記では、CLインク量を128に固定する例を示した。以下ではさらに、色分解LUT904で求めたプロセスカラーインクの総量に応じてCLインク量を変化させる例を示す。カラーマッチング部902の処理までは、CLインク量を固定する場合と同様であるため、説明を省略する。また、ガンマ補正部905、HT処理部906、印刷データ作成部907の処理は、CLインク量を固定する場合と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
以下では、プロセスカラーインクの総量に応じてCLインク量を変化させる場合の色分解部903の処理とドット配置部909の処理について説明する。
【0056】
(色分解部)
色分解部903は、図9に示す色分解LUT904を参照して、カラーマッチング後の画像データを記録装置940が使用する色材に対応する画像データ(例えばCMYKデータおよびCLデータなどの色材量データ)に色分解する。
【0057】
次に、色分解部903は、下式(7)を用いて、プロセスカラーインクの総量Inkを求める。
Ink = (C + M + Y + K); …(7)
【0058】
そして、式(7)で求めた総量Inkを基に、下式(8)によってCLインク量を決定する。
if (Ink < 256) CL = 128;
if (256 ≦ Ink < 512) CL = 96;
else CL = 64; …(8)
【0059】
なお、上述の例では、プロセスカラーインクの総量に応じてCLインク量を決定したが、プロセスカラーインクの総量のみではなく打込量を考慮してCLインク量を決定してもよい。ここでいう打込量とは、記録媒体の単位面積当りに単位時間当りに記録できるインク量である。例えば、記録媒体の吸水特性や色材に含まれる水分量、印刷モードによって決まる打込量Maxを予め装置に記憶しておき、下式(9)を用いてCLインク量を算出してもよい。
Ink = (C + M + Y + K);
if (128 < Max - Ink) CL = 128;
if (96 < Max - Ink) CL = 96;
if (64 < Max - Ink) CL = 64;
if (32 < Max - Ink) CL = 32;
else CL = 0; …(9)
【0060】
(ドット配置部)
ドット配置部909は、プリンタドライバ930から受信した印刷データに含まれる印刷イメージ情報から2×2画素領域を選択し、2×2画素領域の各画素のインク量を取得する。
【0061】
取得した各インク量のうち、プロセスカラーインクのインク量については、インク量の値に対応するインデックスパターン(図12(a)から図12(i)の何れか)を選択する。なお、図12(a)から図12(i)はそれぞれ、インク量0、32、64、96、128、160、192、224、255に対応する。
【0062】
一方、CLインクについては、式(7)(8)または式(9)により求めたCLインク量に応じて図11(a)から図11(d)の何れかに示すドット配置を選択する。図11(a)と図11(b)はCLインク量128に、図11(c)はCLインク量96に、図11(d)はCLインク量64に対応するドット配置を示す。図11(c)と図11(d)に示すドット配置はどちらも、ドット同士が近付くようにドットを配置することで、色付きが異なる局所的な正反射光を発生させ、大局的な正反射光の色付きを軽減させる。
【0063】
各画素のインク量に対応するドット配置およびインデックスパターンが決定すると、ドット配置部909は、印刷イメージ情報に対応するインデックスパターンデータをマスクデータ変換部910に出力する。
【0064】
さらに、色付きが異なる局所的な正反射光を混在させて大局的な正反射光の色付きを軽減させる例としてプロセスカラーインク量に応じたCLインク量で複数のドット配置を組み合わせる例について説明する。図13(b)、図13(c)に、CLインク量が96と64の場合のCLインクのドット配置の組み合わせ例を示す。図13(b)はCL=96に対応するドット配置の組み合わせ例、図13(c)はCL=64に対応するドット配置の組み合わせ例である。
【0065】
図15のフローチャートにより、ドット配置が異なるCLインクのドット配置を並置させる場合のドット配置部909の処理を説明する。なお、図14に示した処理と同様の処理には同一符号を付し、当該処理の詳細説明を省略する場合がある。
【0066】
ドット配置部909は、プリンタドライバ930から受信した印刷データに含まれる印刷イメージ情報から2×2画素領域を選択し、2×2画素領域の各画素のインク量を取得する(S1401)。次に、ドット配置部909は、ROMなどのメモリに格納された2×2画素領域に対応する複数のインデックスパターンを読み込む(S1402)。
【0067】
次に、ドット配置部909は、ステップS1401で読み込んだ各画素のCLインク量の中から代表CLインク量を決定する(S1501)。代表CLインク量は、正反射光の色付き低減効果を重視して、2×2画素領域内で最大のCLインク量とする。なお、代表CLインク量の決定方法は、上記の一例に限定されないことは言うまでもない。例えば、色分解部903が上述した打込量Maxを考慮してCLインク量を決定した場合は、記録媒体の表面でのインクの溢れを考慮して、2×2画素領域内で最小のCLインク量を代表CLインク量にしてもよい。
【0068】
次に、ドット配置部909は、代表CLインク量に対応するドット配置の組み合わせを選択する(S1502)。つまり、ステップS1501で決定した代表CLインク量を基に、ROMなどのメモリに格納された2×2画素領域に対応する複数のドット配置の組み合わせから、代表CLインク量に対応するドット配置の組み合わせを選択する。
【0069】
例えば、メモリには図13(a)、図13(b)、図13(c)の三つのドット配置の組み合わせが記録されており、ステップS1501で決定した代表CLインク量が128の場合は図13(a)のドット配置の組み合わせが選択される。また、代表CLインク量が96の場合は図13(b)の、代表CLインク量が64の場合は図13(c)のドット配置の組み合わせが選択される。
【0070】
ステップS1403以降の処理は、図14に示すステップS1403からS1411の処理と同様のため説明を省略する。ただし、ステップS1501とS1502において、2×2画素領域におけるCLインクのドット配列の組み合わせが決定されるので、図14に示すステップS1405とS1406の処理は存在しない。
【0071】
なお、ドット配列の組み合わせは、2×2画素領域に限らず、例えば、4×4画素領域や4×2画素領域などの複数画素分の領域でもよい。
【0072】
●マスクデータ変換部
ドット配置部909により決定されたインデックスパターン(ドットのオンオフ)をヘッド駆動回路911に入力すれば、画像入力部901が入力した画像データが表す画像を記録することが可能である。しかし、インクジェット方式の記録装置がマルチパス記録を採用する場合、記録ヘッド912の各走査において形成するドットをマルチパス記録に合わせる必要がある。また、本実施例においては、プロセルカラーインクによって画像を記録し、さらにCLインクを重ねる必要がある。つまり、マスクデータ変換部910は、マルチパス記録およびCLインクの重畳に合わせてドットの記録を制御する。
【0073】
図16により記録ヘッドと記録パターンを模式的に示す。記録ヘッド701は、簡単のために、20個のノズルを有するとする。ノズルは、図16に示すように、第一から第五のノズル群に分割され、各ノズル群は四つのノズルを含む。
【0074】
マスクパターン702の黒セルは各ノズルが記録を行うドットに対応し、第一から第四のノズル群が記録するパターンは互いに補完の関係にある。例えば4×4セルに対応する領域にべた画像を形成する場合、第一の記録走査703から第四の記録走査706において、それぞれ第一から第四のノズル群により四つずつのドットが記録されて4×4セルに対応する領域の画像が形成される。言い換えれば、各ノズル群が記録するパターンを重ねると4×4セルに対応する領域の記録が完成する。
【0075】
各記録走査が終了する度に、記録紙はノズル群の高さずつ搬送される。従って、記録紙の同一領域(各ノズル群の高さに対応する領域)の画像は、四回の記録走査703から706によって完成する。複数回の記録走査において複数のノズル群によって記録紙の同一領域の画像を形成することにより、ノズル特有のばらつきや記録媒体の搬送精度のばらつきなどを低減させる効果がある。
【0076】
また、第五のノズル群はCLインクを吐出し、第五の記録走査707において第五のノズル群によりCLインクを吐出することにより、CL色材を色材の最上層に配置する。
【0077】
このように、CLインクのインデックスパターンの組み合わせを制御することで、印刷物の正反射光の色付きを制御し、印刷物の正反射光の色付きを抑制することができる。
【実施例2】
【0078】
以下、本発明にかかる実施例2の画像処理を説明する。なお、実施例2において、実施例1と略同様の構成については、同一符号を付して、その詳細説明を省略する。
【0079】
実施例1においては、ドット配置部909において、例えば2×2画素領域の平均的な色材量に基づきCLインクのドット配置の組み合わせを決定する処理を説明した。実施例2においては、CLインクについては予め解像度を下げ、解像度が下げられたCLインク量からドット配置を決定する例を説明する。
【0080】
図17のブロック図により実施例2の画像処理装置の構成を説明する。解像度変換部913は、カラーマッチング後の画像データ(RGB値)の解像度を例えば1/2に下げて、2×2画素を一画素にする。なお、解像度変換には、バイリニア法、バイキュービック法、ニアレストネイバー法などを用いればよい。
【0081】
CLインク量決定部914は、色分解LUT904を参照して、解像度変換部913から入力されるRGB値に対応する、CMYKインクそれぞれののインク量を得る。次に、実施例1と同様に、CMYKの各インク量から式(7)(8)を用いてCLインク量を決定する。CLインクHT処理部915は、入力されるCLインク量を誤差拡散処理して9レベルの階調値に変換する。印刷データ作成部907は、実施例1と同様に印刷データを出力するが、印刷イメージ情報には、CMYKの画像データおよび解像度を下げて生成されたCL色材の画像データが組み込まれる。
【0082】
ドット配置部909は、実施例1と同様に、プロセスカラーインクのインデックスパターンを決定するとともに、2×2画素単位のCLインク量からCLインクのドット配置を決定する。
【0083】
[その他の実施例]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の正反射光の色付きを制御する画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
記録紙やフィルムなどのシート状の記録媒体に、文字や画像などの情報を記録する記録装置には様々な方式がある。記録媒体に色材を付着させて文字や画像を形成する方式の代表として、インクを吐出する記録ヘッドを用いるインクジェット方式が知られている。
【0003】
インクジェット方式の記録装置によって光沢紙に画像を記録し、写真画質の画像を形成する写真印刷が普及した。インクジェット方式の記録装置には、水に溶解し易い染料を色材に用いる染料インクが広く利用されている。染料インクは、溶媒に溶解した色材が記録媒体の繊維質の内部に浸透し易い。従って、画像記録後も記録媒体の表面形状が維持され易く、記録媒体の光沢が記録画像の光沢として維持される。つまり、光沢に優れた記録媒体に染料インクを用いて画像を記録すれば、光沢に優れた画像が得られる。言い換えれば、染料インクを用いるインクジェット方式の記録装置は、記録媒体の光沢の向上により、容易に画像に光沢を与えることができる。
【0004】
一方、印刷物に対する耐光性や耐水性の要求がある。染料インクは、色材の染料分子が光によって分解し記録画像の色が褪色し易い(耐光性が低い)。また、染料インクで印刷した印刷物は、水に濡れると繊維質に浸透した染料分子が水に溶解し画像に滲みが発生する(耐水性が低い)。耐光性や耐水性の問題を解決するため、近年、色材に顔料を用いる顔料インクの利用が増加した。溶媒中に分子状態で存在する染料と異なり、顔料は、数10nmから数μmの粒子として溶媒中に存在する。つまり、顔料インクの色材粒子は大きく、耐光性が高い印刷物が得られる。
【0005】
顔料インクは耐光性、耐水性の面で優れる反面、記録画像の正反射光に付いた色が画像品質上の問題になる場合がある。正反射光は、例えば記録画像の表面に映り込んだ照明の像として観察者に認識される。正反射光(および、正反射光に近い角度の拡散光)に色が付き、印刷物に映り込んだ照明の像が照明本来と異なる色として観察されると、画像を観察する際の邪魔になり、とくに写真印刷された画像に好ましくない。正反射光に色が付く原因として、ブロンズ現象や薄膜干渉が知られている。
【0006】
図1によりブロンズ現象を説明する。光源からの入射光104は、記録媒体101上に記録された色材102に反射される。正反射光103は、入射光104の入射角θと同じ角度θの方向に反射する光である。色材102の反射率は光の波長に依存するため、入射光104の分光分布と正反射光103の分光分布が異なり、色が付いた正反射光103が認識される。これがブロンズ現象であり、色材102に固有の色が正反射光103に付く。とくに、シアン色材によってマゼンタ色が付くことが知られている。
【0007】
図2により薄膜干渉を説明する。光源からの入射光207に対する正反射光には、記録媒体201上に記録された色材203の表面で反射された正反射光204と、色材203と下層の色材202の界面で反射された正反射光205が存在する。二つの正反射光204、205の光路長には色材203の厚さ分の差があり、二つの正反射光204、205に位相差が生じる。その結果、二つの正反射光204、205が干渉し、観察される正反射光に色が付く。これが薄膜干渉である。
【0008】
ブロンズ現象や薄膜干渉は、印刷物の表面付近の材質に依存し、表面付近の構造によっても発生の程度が異なる。この構造とは、例えば記録媒体の表面を占めるインクの割合(被覆率)である。つまり、印刷物の表面は、色または階調によって異なる構造や材質で構成されるから、色または階調によって正反射光の色が異なることになる。その結果、複数の色によって構成される画像からの正反射光は、画像位置により異なる色として観察され、画像の観察者に違和感を与える。
【0009】
この問題を解決する方法として、画像にイエローインクをオーバコートする技術がある(特許文献1)。また、画像の記録領域の全域に無色透明な色材を含むインク(クリアインク)をオーバコートする技術がある(特許文献2)。
【0010】
特許文献1の手法は、例えばシアンを再現する際にイエローインクを追加するなど、色再現に不要なインクを混色する。色再現に不要なインクの混色は、彩度の低下を招き、色再現範囲(色域)を縮小させる。
【0011】
特許文献2の手法におけるクリアインクのオーバコートは、色再現には影響しないが、ブロンズ現象を抑制できるとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004-181688号公報
【特許文献2】特開2003-132350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、印刷物の正反射光の色付きを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記の目的を達成する一手段として、以下の構成を備える。
【0015】
本発明にかかる画像処理は、複数の有色色材と無色色材を用いて画像を記録する際に、前記無色色材のドット配置が異なり、前記無色色材の色材量に対応する、複数のドット配置を示す情報をメモリに格納し、画素ごとに、前記複数の有色色材それぞれの色材量および前記無色色材の色材量を示す色材量データを入力し、前記入力した色材量データが示す前記無色色材の色材量に基づき、前記画素における正反射光の色付きが無彩色に近づくよう、前記複数のドット配置の中から前記無色色材のドット配置を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、印刷物の正反射光の色付きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ブロンズ現象を説明する図。
【図2】薄膜干渉を説明する図。
【図3】画素と画素を構成するセルの関係を示す図。
【図4】インデックスパターンとドットのオンオフの関係を示す図。
【図5】正反射光に色が付く原因を説明する図。
【図6】クリア色材の厚さによって正反射光の色が変化する様子を説明する図。
【図7】クリア色材の厚さが局所的に変動する例を説明する図。
【図8】実施例の画像処理装置の構成例を説明するブロック図。
【図9】色分解LUTの一例を説明する図。
【図10】印刷データのフォーマット例を説明する図。
【図11】CLインク用のインデックスパターンの一例を説明する図。
【図12】プロセスカラーのインク量とインデックスパターンとの対応例を説明する図。
【図13】CLインクのドット配置の組み合わせ例を説明する図。
【図14】CLインクのドット配置と、プロセスカラーのインデックスパターンを決定するドット配置部の処理を説明するフローチャート。
【図15】ドット配置が異なるCLインクのドット配置を並置させる場合のドット配置部の処理を説明するフローチャート。
【図16】記録ヘッドと記録パターンを模式的に示す図。
【図17】実施例2の画像処理装置の構成例を説明するブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる実施例の画像処理を図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
以下では、着色剤(色材)を含まずに実質的に無色透明な色材を含むインクのドット配置を領域ごとに変更して、局所的な正反射光の色付きを制御し、大局的な正反射光の色付きを抑制する方法を説明する。「局所的な正反射光の色付き」「大局的な正反射光の色付き」とは、正反射光の色付きが観察のスケールに依存するからである。つまり「大局的な正反射光の色付き」は、人間が正反射光の色付きを認識できるスケール以上において平均化された色付きである。また「局所的な正反射光の色付き」は、人間が正反射光の色付きを認識できないスケール(数10μm程度)で平均化された色付きである。また、以下では、着色剤を含む色材を「有色色材」、無色透明な色材を「クリア色材(または無色色材)」、クリア色材を含むインクを「クリアインク」と呼ぶ場合がある。
【0020】
「画素」は階調表現が可能な最少単位の画像であり、多値データの画像処理(例えばカラーマッチング、色分解、ガンマ補正、ハーフトーン処理など)が対象にする最少単位の画像である。また、ハーフトーン処理において、一画素は例えば2×4セルで構成されるインデックスパターンに対応し、各セルは、画像記録装置が記録可能な最小単位である「ドット」の形成/非形成(以下、オンオフ)を定義する。上記のカラーマッチング、色分解、ガンマ補正における「画像データ」は画素の集合を表し、各画素は、例えば各色8ビットの階調値を有する画像データである。従って、上記のハーフトーン処理は、各色8ビットの階調値を有する画素の画像データを、例えば各色九階調を有するデータ(インデックスパターン)に変換する。
【0021】
図3により画素と画素を構成するセルの関係を示す。図3(a)は2×2の四画素を表し、図3(b)は図3(a)に示す四画素と、2×4セルのインデックスパターンの対応を表す。なお、図3には画素やセルの解像度の一例を示すが、画素やセルの解像度は、それに限定されない。
【0022】
図4によりインデックスパターンとドットのオンオフの関係を示す。インデックスパターンは画素当りのインクの供給量(以下、インク量)によって決定され、図4(a)はインク量64に、図4(b)はインク量128にそれぞれ対応するドット配置例である。インク量は一画素中に配置するオンドットの数を表す尺度であり、例えば、インク量0は一画素中にオンドットを配置しない状態を表し、インク量255は一画素の中の全ドット(図4の例では八つのドット)をオンにする状態を表す。なお、ドットがオンの場合はインクを吐出して記録媒体上にドットを形成し、ドットがオフの場合はインクを吐出しない(記録媒体上にドットを形成しない)。
【0023】
[正反射光の色付き]
図5により正反射光に色が付く原因を説明する。図5は、記録媒体501上に色材502、クリア色材503が重なった試料を示す。試料面の法線に対してある角度θ傾いた方向から光504が照射されると、クリア色材503の表面で正反射光505が反射され、クリア色材503と色材502の界面で正反射光506が反射される。これら正反射光505、506の間には式(1)に示す光路差Lがあり、正反射光505、506の間の位相差φは式(2)で表される。
L = 2nd・cosθ …(1)
ここで、nはクリア色材503の屈折率、
dはクリア色材503の厚さ、
θは光504の入射角。
φ = 2π/λ×L
= 2π・2nd・cosθ/λ …(2)
ここで、λは光504の波長。
【0024】
一方の正反射光の位相を0とすると、その振幅はcos0、つまり1である。また、他方の正反射光は位相がφずれているから、その振幅はcosφ=cos(4πnd・cosθ/λ)である。従って、二つの正反射光505、506の振幅の平均値Amは式(3)で表される。また、反射光の強度Iは、振幅の二乗に比例するから式(4)で表される。
Am = 1/2・{1+ cos(4πnd・cosθ/λ)} …(3)
I = 1/4・{1+ cos(4πnd・cosθ/λ)}2 …(4)
【0025】
入射光504の振幅を1と仮定すれば、反射光の強度Iは反射率と言い換えることが可能である。従って、正反射光の三刺激値XYZと膜厚dには式(5)の関係が成立する。
X = K∫S(λ)・1/4・{1 + cos(4πnd・cosθ/λ)}2x(λ)dλ
Y = K∫S(λ)・1/4・{1 + cos(4πnd・cosθ/λ)}2y(λ)dλ …(5)
Z = K∫S(λ)・1/4・{1 + cos(4πnd・cosθ/λ)}2z(λ)dλ
ここで、S(λ)は光504の分光分布、
x(λ)y(λ)z(λ)はCIEXYZ表色系の等色関数、
積分範囲は可視光の波長範囲(一般に380nmから780nm)、
Kは比例定数。
【0026】
式(5)が示すように、クリア色材503の厚さdによって正反射光の色が変化する。なお、説明を簡単にするために、多重反射、色材502内の反射、屈折率の波長分散から生じる波長選択的な反射に関する説明は割愛したが、それらを考慮しても、クリア色材503の厚さdによって正反射光の色が変化することはいうまでもない。
【0027】
[正反射光の色付き制御の概要]
図6によりクリア色材の厚さによって正反射光の色が変化する様子を説明する。図6は、記録媒体の表面をシアン色材で100%被覆し、さらにインク量を0から255まで変化させたクリア色材でオーバコートした画像の正反射光の色を測定し、測定結果の色度abをab平面にプロットしたグラフである。クリア色材でオーバコートした画像の正反射光の色度abが図6に示すような軌跡を描くのは、クリア色材の厚さがクリアインク(以下、CLインク)のインク量(以下、CLインク量)によって変化するからである。
【0028】
図7A to 7Dによりクリア色材の厚さが局所的に変動する例を説明する。インデックスパターンの領域においてCLインクが量128の場合のCLインクのドット配置を図7Aに、図7AのX-X断面を図7Bに示す。図7Bに示すように、クリア色材のドットの重なりにより、CLインク量0に相当する色付き(図6に示す色付きS)、CLインク量128に相当する色付き(同、色付きT)、CLインク量255に相当する色付き(同、色付きR)が発生する。
【0029】
また、図7CはCLインクが量128の場合のCLインクの別のドット配置を示し、図7CのX-X断面を図7Dに示す。この場合は、図7Dに示すように、CLインク量0に相当する色付き(図6に示す色付きS)、CLインク量128に相当する色付き(同、色付きT)が発生し、CLインク量255に相当する色付き(同、色付きR)は発生しない。
【0030】
そこで、図7Aに示すように、クリア色材のドットが重なるようなドット配置を用いれば、局所的な正反射光の色付きS、T、Rが混在して、大局的な正反射光の色付きが軽減されると考えられる。つまり、インデックスパターン領域においてクリア色材のドットをできるだけ近づけることで領域内のクリア色材の厚さを変化させ、複数色の正反射光を混在させて、大局的な正反射光の色付きを軽減させる。
【0031】
ここで、上述の大局的な正反射光の色付きを軽減させることの可能なCLインク量について説明する。インデックスパターン領域においてクリア色材のドットが一つの場合、ドット同士を重ねることができないため、クリア色材の厚さが十分に変化するとは言えない。逆に、インデックスパターン領域においてクリア色材のドットが五つ以上の場合、ドット同士の重なりが多くなり過ぎて、クリア色材の厚さを適正に変化させられるとは言えない。以上から、大局的な正反射光の色付きを軽減させるのに適しているのは、インデックスパターン領域においてクリア色材のドットが二つ以上、四つ以下の場合である。さらに、局所的な正反射光の色付きS、T、Rを発生させることのできる最も好適なCLインク量は、四つのドットの重なる領域からクリア色材の無い領域までの厚さを実現できる、クリア色材のドットが四つの場合である。
【0032】
[装置の概要]
図8のブロック図により実施例の画像処理装置の構成例を説明する。記録装置940は、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKの色材(顔料)を含む四種類のプロセスカラーインクと、クリア色材を含むCLインクによって印刷を行う。つまり、記録ヘッド912は、これら五種のインクを吐出する。
【0033】
●プリンタドライバ
プリンタドライバ930は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)であるホスト装置920のオペレーティングシステム(OS)上で動作するプログラムである。ホスト装置920の画像入力部901は、印刷指示とともに、ホスト装置920の外部から印刷すべき画像データを入力したり、ホスト装置920上で稼働するアプリケーションによって作成された、印刷すべき画像データを入力する。
【0034】
プリンタドライバ930のカラーマッチング部902は、入力される画像データ(例えばsRGBデータ)が再現する色域を、記録装置940の色域に写像する。例えば、sRGBに相当する色域を有するモニタに表示される色と、記録装置940が再現する色のマッチングを図る。
【0035】
色分解部903は、色分解ルックアップテーブル(LUT)904を参照して、カラーマッチング後の画像データを記録装置940が使用する色材に対応する画像データ(例えばCMYKデータおよびCLデータなどの色材量データ)に色分解する。図9により色分解LUT904の一例を説明する。色分解LUT904は、例えば入力信号値RGBに対応する出力信号値CMYKCLを格納する。なお、各出力信号値C、M、Y、K、CLはそれぞれ対応するインクのインク量に相当する。CLインク量は、入力信号値RGBに依らずにクリア色材の厚みを最も変化させることができる値に固定する。例えば、インデックスパターン領域においてクリア色材のドットが四つ打ち込まれる値である「128」にする。なお、CLインク量は、クリア色材の厚みを変化させることができる値であれば「128」に限らない。
【0036】
ガンマ補正部905は、一次元LUTを用いて、色分解部903が出力する各色のインク量ごとに階調変換(ガンマ補正)を行い、記録装置940の階調特性を線形に補正する。ハーフトーン(HT)処理部906は、ガンマ補正部905が出力する例えば各色8ビットのインク量を、例えば誤差拡散法を用いて各色4ビットに量子化する。なお、誤差拡散法は、注目画素の値と拡散誤差の和(入力値I)と予め設定した閾値を比較して、例えば下式のように、量子化後の階調値(出力値O)を決定する。そして、入力値と出力値の差分を誤差として後続の画素に拡散する。つまり、拡散誤差は、HT処理済みの画素から伝播された誤差の累積値である。
if (I < 16) O = 0;
if (16 ≦ I < 48) O = 1;
if (48 ≦ I < 80) O = 2;
if (80 ≦ I < 112) O = 3;
if (112 ≦ I < 144) O = 4;
if (144 ≦ I < 176) O = 5;
if (176 ≦ I < 208) O = 6;
if (208 ≦ I < 240) O = 7;
else O = 8; …(6)
【0037】
このようにHT処理後のインク量は0-8の9ステップで表されるが、以下では説明を容易にするために、各ステップのインク量を0、32、64、96、128、160、192、224、255として説明する。
【0038】
印刷データ作成部907は、HT処理部906が出力するHT処理後のインク量を所定フォーマットの印刷データにして記録装置940に出力する。図10により印刷データのフォーマット例を説明する。
【0039】
図10に示すように、印刷データは、印刷制御情報および印刷イメージ情報(印刷画像データ)から構成される。印刷制御情報は、印刷に使用すべきメディアを示す「メディア情報」、印刷の品位を示す「品位情報」、および、給紙方法などを示す「その他印刷情報」を有する。メディア情報は、印刷に使用すべき記録紙の種類として例えば普通紙、光沢紙、コート紙、マット紙などの何れかを示す。品位情報は、高速印刷、高品位印刷などを規定する。なお、印刷制御情報は、プリンタドライバ930が提供するユーザインタフェイスによってユーザが指定した内容に基づき構成される。印刷イメージ情報には、HT処理部906が出力する画像データが記述される。
【0040】
上記では、プリンタドライバ930がHT処理を行い、HT処理後の画像データを組み込んだ印刷データを作成する例を説明した。しかし、プリンタドライバ930がHT処理前の画像データを組み込んだ印刷データを出力し、記録装置940がHT処理を行ってもよい。
【0041】
●記録装置
記録装置940のドット配置部909は、プリンタドライバ930から受信した印刷データに含まれる印刷イメージ情報から各画素のインク量を取得する。そして、取得したインク量に基づいて、画素ごとにドット配置を決定する。プロセスカラーインクについては、インク量に対応するインデックスパターンをインデックスパターンテーブル908から選択する。具体的には、図12(a)から図12(i)が各プロセスカラーインクのインク量0、32、64、96、128、160、192、224、255に対応する。また、CLインクについては、インク量CLに対応する、ドット同士が重なり合うドット配置のインデックスパターンを選択する。
【0042】
CLインク用のインデックスパターンの一例を説明する。図11(a)はインク量CL=128に対応するインデックスパターンを示す。図11(a)のインデックスパターンはCLインクのドット配置とインク量とが固定であり、色付きS、T、R(図6参照)を発生する。
【0043】
ここで、ドット配置は、前述したように、複数の異なるドット配置を用意し、各ドット配置の正反射光の色付きは予め測定されている。そして、正反射光の色付きを抑制する効果が高い、言い換えれば、正反射光の色が無彩色に近付く、ドット配置を決定すればよい。
【0044】
ドット配置部909による各画素のインク量に対応するドット配置の選択が終了すると、選択されたドット配置やインデックスパターンを示すインデックスパターンデータがマスクデータ変換部910に入力される。
【0045】
上記では、CLインクのドット配置とインク量が固定の例を説明したが、固定でなくともよい。まず、同一のCLインク量で異なるドット配置の例について説明する。前述したように、図7(c)は、図7(a)と同一のCLインク量128でドット配置を変更した例である。図7(d)のX-X断面図に示すとおり、図7(c)のドット配置においてもCLインク量0に相当する色付き(図6に示す色付きS)、CLインク量128に相当する色付き(同、色付きT)が混在しする。つまり、同一のCLインク量であっても、図7(a)のドット配置と図7(c)のドット配置では、混在する正反射光の色の割合が異なる。この違いを利用して、異なるドット配置を組み合わせて並置する例を図13(a)に示す。図13(a)に示すように、例えば、左上および右下のドット配置は図7(a)のドット配置にして、右上および左下のドット配置は図7Cのドット配置にする。
【0046】
以上のように、同一のCLインク量であっても、異なるドット配置を複数のパターン用意し、組み合わせることでクリア色材の厚みの変化の幅が広がり、より多くの異なる色付きの正反射光を混在させて大局的な正反射光の色付きを軽減させることが可能となる。つまり、図13(a)は異なるドット配置を並列に配置した場合のドット配置例を示し、図13(a)によりCLインクのインデックスパターンの組み合わせ例を説明する。図13(a)は2×2画素領域におけるインデックスパターンの組み合わせを示し、図13(a)はCL=128に対応し、図11(a)のインデックスパターンと図11(b)のインデックスパターンを組み合わせたドット配置である。なお、図11(b)のインデックスパターンは図7(c)のドット配置に対応し、色付きS、Tを発生する。
【0047】
●ドット配置部
次に、図14のフローチャートにより、CLインクのドット配置と、プロセスカラーのインデックスパターンを決定するドット配置部909の処理を説明する。
【0048】
ドット配置部909は、プリンタドライバ930から受信した印刷データに含まれる印刷イメージ情報から2×2画素領域を選択し、2×2画素領域の各画素のインク量を取得する(S1401)。次に、ドット配置部909は、リードオンリメモリ(ROM)などのメモリに格納された2×2画素領域に対応する複数のインデックスパターンを読み込む(S1402)。
【0049】
次に、ドット配置部909は、2×2画素領域から一つの画素(注目画素)を選択し(S1403)、注目画素のインク量の一つを選択し(S1404)、選択したインク量がCLインクのインク量か否かを判定する(S1405)。
【0050】
CLインクのインク量を選択した場合、ドット配置部909は、ステップS1402で読み込んだインデックスパターンの、CLインク量に対応する複数のドット配置の中から、注目画素のCLインクのドット配置を選択する(S1406)。なお、ドット配置の選択は上述したように、正反射光の色付きを抑制する効果が高い、言い換えれば、正反射光の色が無彩色に近付く、ドット配置を選択する。一方、プロセスカラーインクのインク量を選択した場合、ドット配置部909は、そのインク量に応じたインデックスパターン(図12(a)から図12(i)の何れか)を選択する(S1407)。
【0051】
次に、ドット配置部909は、注目画素の各インク量に対応するドット配置およびインデックスパターンの選択が完了したか否かを判定し(S1408)、未了であれば処理をステップS1404に戻す。そして、注目画素の各インク量に対応するドット配置およびインデックスパターンの選択が完了した場合は、2×2画素領域の全画素についてステップS1404からS1408の処理を行ったか否かを判定する(S1409)。
【0052】
ステップS1404からS1408の処理が未了の画素があれば、ドット配置部909は、処理をステップS1403に戻して、2×2画素領域の各画素・各インク量に対応するドット配置およびインデックスパターンを選択する。2×2画素領域の各画素・各インクに対応するドット配置およびインデックスパターンが決定すると、印刷データの印刷イメージ情報に含まれる全画素の処理が終了したか否かを判定する(S1410)。
【0053】
処理が未了の画素があれば、ドット配置部909は、処理をステップS1401に戻して、全画素の処理が終了するまでステップS1401からS1410を繰り返す。そして、各画素のインク量に対応するドット配置およびインデックスパターンが決定すると、ドット配置部909は、印刷イメージ情報に対応するインデックスパターンデータを、後述するマスクデータ変換部910に出力する(S1411)。
【0054】
●ドット配置の変形例
上記では、CLインク量を128に固定する例を示した。以下ではさらに、色分解LUT904で求めたプロセスカラーインクの総量に応じてCLインク量を変化させる例を示す。カラーマッチング部902の処理までは、CLインク量を固定する場合と同様であるため、説明を省略する。また、ガンマ補正部905、HT処理部906、印刷データ作成部907の処理は、CLインク量を固定する場合と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
以下では、プロセスカラーインクの総量に応じてCLインク量を変化させる場合の色分解部903の処理とドット配置部909の処理について説明する。
【0056】
(色分解部)
色分解部903は、図9に示す色分解LUT904を参照して、カラーマッチング後の画像データを記録装置940が使用する色材に対応する画像データ(例えばCMYKデータおよびCLデータなどの色材量データ)に色分解する。
【0057】
次に、色分解部903は、下式(7)を用いて、プロセスカラーインクの総量Inkを求める。
Ink = (C + M + Y + K); …(7)
【0058】
そして、式(7)で求めた総量Inkを基に、下式(8)によってCLインク量を決定する。
if (Ink < 256) CL = 128;
if (256 ≦ Ink < 512) CL = 96;
else CL = 64; …(8)
【0059】
なお、上述の例では、プロセスカラーインクの総量に応じてCLインク量を決定したが、プロセスカラーインクの総量のみではなく打込量を考慮してCLインク量を決定してもよい。ここでいう打込量とは、記録媒体の単位面積当りに単位時間当りに記録できるインク量である。例えば、記録媒体の吸水特性や色材に含まれる水分量、印刷モードによって決まる打込量Maxを予め装置に記憶しておき、下式(9)を用いてCLインク量を算出してもよい。
Ink = (C + M + Y + K);
if (128 < Max - Ink) CL = 128;
if (96 < Max - Ink) CL = 96;
if (64 < Max - Ink) CL = 64;
if (32 < Max - Ink) CL = 32;
else CL = 0; …(9)
【0060】
(ドット配置部)
ドット配置部909は、プリンタドライバ930から受信した印刷データに含まれる印刷イメージ情報から2×2画素領域を選択し、2×2画素領域の各画素のインク量を取得する。
【0061】
取得した各インク量のうち、プロセスカラーインクのインク量については、インク量の値に対応するインデックスパターン(図12(a)から図12(i)の何れか)を選択する。なお、図12(a)から図12(i)はそれぞれ、インク量0、32、64、96、128、160、192、224、255に対応する。
【0062】
一方、CLインクについては、式(7)(8)または式(9)により求めたCLインク量に応じて図11(a)から図11(d)の何れかに示すドット配置を選択する。図11(a)と図11(b)はCLインク量128に、図11(c)はCLインク量96に、図11(d)はCLインク量64に対応するドット配置を示す。図11(c)と図11(d)に示すドット配置はどちらも、ドット同士が近付くようにドットを配置することで、色付きが異なる局所的な正反射光を発生させ、大局的な正反射光の色付きを軽減させる。
【0063】
各画素のインク量に対応するドット配置およびインデックスパターンが決定すると、ドット配置部909は、印刷イメージ情報に対応するインデックスパターンデータをマスクデータ変換部910に出力する。
【0064】
さらに、色付きが異なる局所的な正反射光を混在させて大局的な正反射光の色付きを軽減させる例としてプロセスカラーインク量に応じたCLインク量で複数のドット配置を組み合わせる例について説明する。図13(b)、図13(c)に、CLインク量が96と64の場合のCLインクのドット配置の組み合わせ例を示す。図13(b)はCL=96に対応するドット配置の組み合わせ例、図13(c)はCL=64に対応するドット配置の組み合わせ例である。
【0065】
図15のフローチャートにより、ドット配置が異なるCLインクのドット配置を並置させる場合のドット配置部909の処理を説明する。なお、図14に示した処理と同様の処理には同一符号を付し、当該処理の詳細説明を省略する場合がある。
【0066】
ドット配置部909は、プリンタドライバ930から受信した印刷データに含まれる印刷イメージ情報から2×2画素領域を選択し、2×2画素領域の各画素のインク量を取得する(S1401)。次に、ドット配置部909は、ROMなどのメモリに格納された2×2画素領域に対応する複数のインデックスパターンを読み込む(S1402)。
【0067】
次に、ドット配置部909は、ステップS1401で読み込んだ各画素のCLインク量の中から代表CLインク量を決定する(S1501)。代表CLインク量は、正反射光の色付き低減効果を重視して、2×2画素領域内で最大のCLインク量とする。なお、代表CLインク量の決定方法は、上記の一例に限定されないことは言うまでもない。例えば、色分解部903が上述した打込量Maxを考慮してCLインク量を決定した場合は、記録媒体の表面でのインクの溢れを考慮して、2×2画素領域内で最小のCLインク量を代表CLインク量にしてもよい。
【0068】
次に、ドット配置部909は、代表CLインク量に対応するドット配置の組み合わせを選択する(S1502)。つまり、ステップS1501で決定した代表CLインク量を基に、ROMなどのメモリに格納された2×2画素領域に対応する複数のドット配置の組み合わせから、代表CLインク量に対応するドット配置の組み合わせを選択する。
【0069】
例えば、メモリには図13(a)、図13(b)、図13(c)の三つのドット配置の組み合わせが記録されており、ステップS1501で決定した代表CLインク量が128の場合は図13(a)のドット配置の組み合わせが選択される。また、代表CLインク量が96の場合は図13(b)の、代表CLインク量が64の場合は図13(c)のドット配置の組み合わせが選択される。
【0070】
ステップS1403以降の処理は、図14に示すステップS1403からS1411の処理と同様のため説明を省略する。ただし、ステップS1501とS1502において、2×2画素領域におけるCLインクのドット配列の組み合わせが決定されるので、図14に示すステップS1405とS1406の処理は存在しない。
【0071】
なお、ドット配列の組み合わせは、2×2画素領域に限らず、例えば、4×4画素領域や4×2画素領域などの複数画素分の領域でもよい。
【0072】
●マスクデータ変換部
ドット配置部909により決定されたインデックスパターン(ドットのオンオフ)をヘッド駆動回路911に入力すれば、画像入力部901が入力した画像データが表す画像を記録することが可能である。しかし、インクジェット方式の記録装置がマルチパス記録を採用する場合、記録ヘッド912の各走査において形成するドットをマルチパス記録に合わせる必要がある。また、本実施例においては、プロセルカラーインクによって画像を記録し、さらにCLインクを重ねる必要がある。つまり、マスクデータ変換部910は、マルチパス記録およびCLインクの重畳に合わせてドットの記録を制御する。
【0073】
図16により記録ヘッドと記録パターンを模式的に示す。記録ヘッド701は、簡単のために、20個のノズルを有するとする。ノズルは、図16に示すように、第一から第五のノズル群に分割され、各ノズル群は四つのノズルを含む。
【0074】
マスクパターン702の黒セルは各ノズルが記録を行うドットに対応し、第一から第四のノズル群が記録するパターンは互いに補完の関係にある。例えば4×4セルに対応する領域にべた画像を形成する場合、第一の記録走査703から第四の記録走査706において、それぞれ第一から第四のノズル群により四つずつのドットが記録されて4×4セルに対応する領域の画像が形成される。言い換えれば、各ノズル群が記録するパターンを重ねると4×4セルに対応する領域の記録が完成する。
【0075】
各記録走査が終了する度に、記録紙はノズル群の高さずつ搬送される。従って、記録紙の同一領域(各ノズル群の高さに対応する領域)の画像は、四回の記録走査703から706によって完成する。複数回の記録走査において複数のノズル群によって記録紙の同一領域の画像を形成することにより、ノズル特有のばらつきや記録媒体の搬送精度のばらつきなどを低減させる効果がある。
【0076】
また、第五のノズル群はCLインクを吐出し、第五の記録走査707において第五のノズル群によりCLインクを吐出することにより、CL色材を色材の最上層に配置する。
【0077】
このように、CLインクのインデックスパターンの組み合わせを制御することで、印刷物の正反射光の色付きを制御し、印刷物の正反射光の色付きを抑制することができる。
【実施例2】
【0078】
以下、本発明にかかる実施例2の画像処理を説明する。なお、実施例2において、実施例1と略同様の構成については、同一符号を付して、その詳細説明を省略する。
【0079】
実施例1においては、ドット配置部909において、例えば2×2画素領域の平均的な色材量に基づきCLインクのドット配置の組み合わせを決定する処理を説明した。実施例2においては、CLインクについては予め解像度を下げ、解像度が下げられたCLインク量からドット配置を決定する例を説明する。
【0080】
図17のブロック図により実施例2の画像処理装置の構成を説明する。解像度変換部913は、カラーマッチング後の画像データ(RGB値)の解像度を例えば1/2に下げて、2×2画素を一画素にする。なお、解像度変換には、バイリニア法、バイキュービック法、ニアレストネイバー法などを用いればよい。
【0081】
CLインク量決定部914は、色分解LUT904を参照して、解像度変換部913から入力されるRGB値に対応する、CMYKインクそれぞれののインク量を得る。次に、実施例1と同様に、CMYKの各インク量から式(7)(8)を用いてCLインク量を決定する。CLインクHT処理部915は、入力されるCLインク量を誤差拡散処理して9レベルの階調値に変換する。印刷データ作成部907は、実施例1と同様に印刷データを出力するが、印刷イメージ情報には、CMYKの画像データおよび解像度を下げて生成されたCL色材の画像データが組み込まれる。
【0082】
ドット配置部909は、実施例1と同様に、プロセスカラーインクのインデックスパターンを決定するとともに、2×2画素単位のCLインク量からCLインクのドット配置を決定する。
【0083】
[その他の実施例]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の有色色材と無色色材を用いて画像を記録する画像処理装置であって、
前記無色色材のドット配置が異なり、前記無色色材の色材量に対応する、複数のドット配置を示す情報を格納する記憶手段と、
画素ごとに、前記複数の有色色材それぞれの色材量および前記無色色材の色材量を示す色材量データを入力する入力手段と、
前記入力した色材量データが示す前記無色色材の色材量に基づき、前記画素における正反射光の色付きが無彩色に近づくよう、前記複数のドット配置の中から前記無色色材のドット配置を決定する第一の決定手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
さらに、前記画素ごとに、前記色材量データが示す前記複数の有色色材の色材量それぞれから前記複数の有色色材それぞれのドット配置を決定する第二の決定手段を有することを特徴とする請求項1に記載された画像処理装置。
【請求項3】
さらに、前記第一の決定手段により決定された無色色材の第一のドット配置と、前記複数のドット配置に含まれる、前記第一のドット配置とは異なる第二のドット配置とを組み合わせて、複数の画素に対する前記無色色材のドット配置を決定する第三の決定手段を有することを特徴とする請求項1に記載された画像処理装置。
【請求項4】
複数の有色色材と無色色材を用いて画像を記録する画像処理方法であって、
前記無色色材のドット配置が異なり、前記無色色材の色材量に対応する、複数のドット配置を示す情報をメモリに格納し、
画素ごとに、前記複数の有色色材それぞれの色材量および前記無色色材の色材量を示す色材量データを入力し、
前記入力した色材量データが示す前記無色色材の色材量に基づき、前記画素における正反射光の色付きが無彩色に近づくよう、前記複数のドット配置の中から前記無色色材のドット配置を決定することを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
コンピュータを請求項1から請求項3の何れか一項に記載された画像処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項1】
複数の有色色材と無色色材を用いて画像を記録する画像処理装置であって、
前記無色色材のドット配置が異なり、前記無色色材の色材量に対応する、複数のドット配置を示す情報を格納する記憶手段と、
画素ごとに、前記複数の有色色材それぞれの色材量および前記無色色材の色材量を示す色材量データを入力する入力手段と、
前記入力した色材量データが示す前記無色色材の色材量に基づき、前記画素における正反射光の色付きが無彩色に近づくよう、前記複数のドット配置の中から前記無色色材のドット配置を決定する第一の決定手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
さらに、前記画素ごとに、前記色材量データが示す前記複数の有色色材の色材量それぞれから前記複数の有色色材それぞれのドット配置を決定する第二の決定手段を有することを特徴とする請求項1に記載された画像処理装置。
【請求項3】
さらに、前記第一の決定手段により決定された無色色材の第一のドット配置と、前記複数のドット配置に含まれる、前記第一のドット配置とは異なる第二のドット配置とを組み合わせて、複数の画素に対する前記無色色材のドット配置を決定する第三の決定手段を有することを特徴とする請求項1に記載された画像処理装置。
【請求項4】
複数の有色色材と無色色材を用いて画像を記録する画像処理方法であって、
前記無色色材のドット配置が異なり、前記無色色材の色材量に対応する、複数のドット配置を示す情報をメモリに格納し、
画素ごとに、前記複数の有色色材それぞれの色材量および前記無色色材の色材量を示す色材量データを入力し、
前記入力した色材量データが示す前記無色色材の色材量に基づき、前記画素における正反射光の色付きが無彩色に近づくよう、前記複数のドット配置の中から前記無色色材のドット配置を決定することを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
コンピュータを請求項1から請求項3の何れか一項に記載された画像処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【図3】
【図6】
【図9】
【図14】
【図15】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図17】
【図6】
【図9】
【図14】
【図15】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−101531(P2012−101531A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213382(P2011−213382)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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