説明

画像処理装置及び画像処理プログラム

【課題】 対面通行道路において、停止車両検出を適切に行う。
【解決手段】 経時的に同一カメラにより同一方向を撮像した所定枚数の処理画像における各画素について、輝度情報の平均を算出することにより時間平均画像を作成する時間平均画像作成手段11と、前記時間平均画像の高輝度領域を抽出すると共に、抽出した高輝度領域と背景画像における対応領域の類似度判定を行って車両領域検出を行う車両領域検出手段12と、対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に前記処理画像についてフレーム間差分及び2値化を行って得た結果における白画素割合が閾値を超えるか否かに基づき停止車両検出を行う停止車両検出手段13とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対面通行の道路における停止車両検出を可能とする画像処理装置及びコンピュータに上記処理を行わせるための画像処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路には、一方通行道路と対面通行道路が存在している。テレビカメラにより得た画像を処理して道路監視を行う場合、一方通行道路にあっては、道路を走行する車両を後方から撮像するようにカメラを配置するため、車両のヘッドライトの影響は少なく、画像処理に障害が生じることは少ない。これに対し、対面通行道路にあってはカメラに向かって走行する車両の車線が存在し、この車線を走行する車両のヘッドライトの影響が撮像した画像に生じ、適切な画像処理を妨げることがある。
【0003】
具体的には、カメラから遠ざかるように車両が走行する側の車線を第1車線とし、カメラに対して近付くように車両が走行する側の車線を第2車線とするとき、第2車線を走行する車両のヘッドライトが第1車線の路面を照射し、第1車線に停止車両が存在するが如く見えることから、停止車両の誤検出が生じることがある。また、第2車線を複数台の車両が連なって走行すると、ヘッドライトが大きな光の玉となった如くの画像として撮像され、車両が走行しているのか或いは停止車両が存在するのか判定が困難となる。更に、ハザードランプを点滅した停止車両を検出することが困難である。
【0004】
従来の画像処理では対面通行の道路における車両検出が困難であるとして、カメラにて順次撮像される画像データを濃淡投影処理にて画像処理し、現時点の投影処理データとその前の投影処理データとの差分値の最大値を求めるとともに、車両検出をしていないときの投影差分最大値の移動平均処理を行って背景データを求め、それら投影処理データの差分最大値と背景データに基づいて車両の有無を判定するシステムが特許文献1に示されている。
【特許文献1】特開2004−185537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述のヘッドライトによる影響を考慮した停止車両検出には及んでおらず、それゆえ本発明は、対面通行道路においてヘッドライトの影響を受けた場合にも、停止車両検出を適切に行うことができる画像処理装置及び画像処理プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像処理装置は、経時的に同一カメラにより同一方向を撮像した所定枚数の処理画像における各画素について、輝度情報の平均を算出することにより時間平均画像を作成する時間平均画像作成手段と、前記時間平均画像の高輝度領域を抽出すると共に、抽出した高輝度領域と背景画像における対応領域の類似度判定を行って車両領域検出を行う車両領域検出手段と、対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に前記処理画像についてフレーム間差分及び2値化を行って得た結果における白画素割合が閾値を超えるか否かに基づき停止車両検出を行う停止車両検出手段とを具備することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る画像処理装置は、カメラから遠ざかるように車両が走行する側の第1の車線に車両領域が検出された場合に、カメラに近付くように車両が走行する側の第2の車線側へ前記車両領域を拡大し、拡大領域と元の車両領域の輝度比に基づいて前記第1の車線における車両領域が正当であるか否かを判定する正当性判定手段を具備し、車両領域の絞り込みを行うことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る画像処理装置は、対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に、フレーム間差分の2値化画像の白画素割合が閾値を超えており、閾値を超えた回数が単位時間に所定回数を超えたことを検出してハザードランプ点滅を検出するハザード点滅検出手段と、前記ハザード点滅検出手段によりハザードランプが点滅されていることが検出された場合に、対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に、フレーム間差分の2値化画像の白画素割合が閾値を超えており、時間平均画像における平均輝度が輝度閾値を超えていることを検出して、ハザードランプ点滅継続を検出するハザード点滅継続検出手段と、を具備することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る画像処理装置は、経時的に同一カメラにより同一方向を撮像した所定枚数の処理画像における各画素について、輝度情報の平均を算出することにより時間平均画像を作成する時間平均画像作成手段と、前記時間平均画像の高輝度領域を抽出すると共に、抽出した高輝度領域と背景画像における対応領域の類似度判定を行って車両領域検出を行う車両領域検出手段と、対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に、フレーム間差分の2値化画像の白画素割合が閾値を超えており、閾値を超えた回数が単位時間に所定回数を超えたことを検出してハザードランプ点滅を検出するハザード点滅検出手段と、前記ハザード点滅検出手段によりハザードランプが点滅されていることが検出された場合に、対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に、フレーム間差分の2値化画像の白画素割合が閾値を超えており、時間平均画像における平均輝度が輝度閾値を超えていることを検出して、ハザードランプ点滅継続を検出するハザード点滅継続検出手段と、を具備することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る画像処理プログラムは、プログラムを実行するコンピュータにより次の各ステップを実現させる画像処理プログラムであって、経時的に同一カメラにより同一方向を撮像した所定枚数の処理画像における各画素について、輝度情報の平均を算出することにより時間平均画像を作成する時間平均画像作成ステップと、前記時間平均画像の高輝度領域を抽出すると共に、抽出した高輝度領域と背景画像における対応領域の類似度判定を行って車両領域検出を行う車両領域検出ステップと、対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に前記処理画像についてフレーム間差分及び2値化を行って得た結果における白画素割合が閾値を超えるか否かに基づき停止車両検出を行う停止車両検出ステップとにより構成されることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る画像処理プログラムは、更に、カメラから遠ざかるように車両が走行する側の第1の車線に車両領域が検出された場合に、カメラに近付くように車両が走行する側の第2の車線側へ前記車両領域を拡大し、拡大領域と元の車両領域の輝度比に基づいて前記第1の車線における車両領域が正当であるか否かを判定する正当性判定ステップを具備し、車両領域の絞り込みを行うことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る画像処理プログラムは、更に、対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に、フレーム間差分の2値化画像の白画素割合が閾値を超えており、閾値を超えた回数が単位時間に所定回数を超えたことを検出してハザードランプ点滅を検出するハザード点滅検出ステップと、前記ハザード点滅検出ステップによりハザードランプが点滅されていることが検出された場合に、対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に、フレーム間差分の2値化画像の白画素割合が閾値を超えており、時間平均画像における平均輝度が輝度閾値を超えていることを検出して、ハザードランプ点滅継続を検出するハザード点滅継続検出ステップと、を具備することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る画像処理プログラムは、プログラムを実行するコンピュータにより次の各ステップを実現させる画像処理プログラムであって、経時的に同一カメラにより同一方向を撮像した所定枚数の処理画像における各画素について、輝度情報の平均を算出することにより時間平均画像を作成する時間平均画像作成ステップと、前記時間平均画像の高輝度領域を抽出すると共に、抽出した高輝度領域と背景画像における対応領域の類似度判定を行って車両領域検出を行う車両領域検出ステップと、対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に、フレーム間差分の2値化画像の白画素割合が閾値を超えており、閾値を超えた回数が単位時間に所定回数を超えたことを検出してハザードランプ点滅を検出するハザード点滅検出ステップと、前記ハザード点滅検出ステップによりハザードランプが点滅されていることが検出された場合に、対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に、フレーム間差分の2値化画像の白画素割合が閾値を超えており、時間平均画像における平均輝度が輝度閾値を超えていることを検出して、ハザードランプ点滅継続を検出するハザード点滅継続検出ステップと、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、経時的に同一カメラにより同一方向を撮像した所定枚数の処理画像における各画素について、輝度情報の平均を算出することにより時間平均画像を作成し、時間平均画像の高輝度領域を抽出すると共に、抽出した高輝度領域と背景画像における対応領域の類似度判定を行って車両領域検出を行うので、車両領域検出を適切に行うことができ、また、対面通行の車線毎及び上記車両領域毎に上記処理画像についてフレーム間差分及び2値化を行って得た結果における白画素割合が閾値を超えるか否かに基づき停止車両検出を行うことで、ヘッドライトによる影響に関わらず停止車両検出を適切に実行可能となる効果がある。
【0015】
また、カメラから遠ざかるように車両が走行する側の第1の車線に車両領域が検出された場合に、カメラに近付くように車両が走行する側の第2の車線側へ前記車両領域を拡大し、拡大領域と元の車両領域の輝度比に基づいて上記第1の車線における車両領域が正当であるか否かを判定するので、ヘッドライトによる影響に関わらず停止車両検出を適切に実行可能となる効果がある。
【0016】
更に、対面通行の車線毎及び車両領域毎に、フレーム間差分の2値化画像の白画素割合が閾値を超えており、閾値を超えた回数が単位時間に所定回数を超えたことを検出してハザードランプ点滅を検出し、上記ハザード点滅検出によりハザードランプが点滅されていることが検出された場合に、対面通行の車線毎及び上記車両領域毎に、フレーム間差分の2値化画像の白画素割合が閾値を超えており、時間平均画像における平均輝度が輝度閾値を超えていることを検出して、ハザードランプ点滅継続を検出するので、ヘッドライトによる影響に関わらずハザードランプ点滅を検出可能となり、停止車両検出を適切に実行できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
対面通行道路においてヘッドライトの影響があるにも拘らず、停止車両検出を適切に行うという目的を、輝度情報の平均を算出することによる時間平均画像の作成、時間平均画像の高輝度領域を抽出、抽出した高輝度領域と背景画像における対応領域の類似度判定で車両領域検出を行い、また、対面通行の車線毎及び上記車両領域毎に上記処理画像についてフレーム間差分及び2値化を行って得た結果における白画素割合の判定により実現したものである。以下添付図面を参照して本発明に係る画像処理装置及び画像処理プログラムの実施例を説明する。各図において、同一構成要素には同一符号を付し重複する説明を省略する。
【実施例1】
【0018】
図1に、本発明の実施例に係る画像処理装置1を用いて構成した画像処理システムの構成例を示す。このシステムは、テレビカメラ2により対面通行道路を一定方向から撮像し、経時的に画像信号を得て信号変換手段3へ導き、A/D変換して画素毎の輝度情報(例えば、0〜255階調)として画像処理部4へ送出し、画像処理を行って出力手段5へ出力する構成を採用している。
【0019】
画像処理部4には、時間平均画像作成手段11、車両領域検出手段12、停止車両検出手段13、正当性判定手段14、ハザード点滅検出手段15、ハザード点滅継続検出手段16が備えられている。時間平均画像作成手段11は、経時的に同一カメラ2により同一方向を撮像した所定枚数の処理画像における各画素について、輝度情報の平均を算出することにより時間平均画像を作成するものである。
【0020】
車両領域検出手段12は、上記時間平均画像の高輝度領域を抽出すると共に、抽出した高輝度領域と背景画像における対応領域の類似度判定を行って車両領域検出を行うものである。停止車両検出手段13は、対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に前記処理画像についてフレーム間差分及び2値化を行って得た結果における白画素割合が閾値を超えるか否かに基づき停止車両検出を行うものである。
【0021】
正当性判定手段14は、前述の定義に係る第2車線を走行する車両のヘッドライトが同じく前述の定義に係る第1車線の路面を照射し、第1車線に停止車両が存在するが如く見えることを原因とした停止車両の誤検出を防止するための構成であり、テレビカメラ2から遠ざかるように車両が走行する側の第1の車線に車両領域が検出された場合に、テレビカメラ2に近付くように車両が走行する側の第2の車線側へ上記車両領域を拡大し、拡大領域と元の車両領域の輝度比に基づいて上記第1の車線における車両領域が正当であるか否かを判定するものである。
【0022】
ハザード点滅検出手段15及びハザード点滅継続検出手段16は、フレーム間差分の2値化した画像に基づく、車線毎の車両の流れについての有無判定において、ハザードの点滅は明るさの大きな変化が発生するため、単純に2値化した画像の白画素の割合のみに着目すると、車両がハザードランプをつけて停止しているシーンを車両が走行しているものと(別言すれば、車両の流れありと)誤判定してしまう。このような傾向に鑑みハザード点灯の停止車両について未検出とならぬようにすべく設けられた構成であり、ハザード点滅検出手段15は、対面通行の車線毎及び上記車両領域毎に、フレーム間差分の2値化画像の白画素割合が閾値を超えており、閾値を超えた回数が単位時間に所定回数を超えたことを検出してハザードランプ点滅を検出するものであり、また、ハザード点滅継続検出手段16は、上記ハザード点滅検出手段15によりハザードランプが点滅されていることが検出された場合に、対面通行の車線毎及び上記車両領域毎に、フレーム間差分の2値化画像の白画素割合が閾値を超えており、時間平均画像における平均輝度が輝度閾値を超えていることを検出して、ハザードランプ点滅継続を検出するものである。
【0023】
停止車両検出手段13、正当性判定手段14、ハザード点滅検出手段15、ハザード点滅継続検出手段16による検出或いは判定結果により、停止車両の有無が得られ、出力制御手段17により出力手段5へ出力され、表示等がなされる。
【0024】
画像処理装置1は、例えば、図2に示されるような構成に係るワークステーション、パーソナルコンピュータ、その他の計算機として構築することが可能である。すなわち、図2の計算機は、装置を統括制御するCPU51を有し、このCPU51に上記CPU51が用いるプログラム及びデータ等の情報が記憶される主記憶装置52が接続されている。更に、CPU51には、システムバス53を介してキーボード制御部54、表示制御部55、プリンタ制御部56、インタフェース57、マウス制御部58、磁気ディスク制御部59が接続されている。キーボード制御部54には各種情報をキー入力可能なキーボード入力装置60が接続され、表示制御部55には情報を表示するためのCRT表示装置61が接続され、プリンタ制御部56には情報を印字出力するためのプリンタ装置62が接続され、インタフェース57には回線を介してテレビカメラ2から画像信号を取り込み、A/D変換して多値化ディジタルデータとするための処理部63が接続され、マウス制御部58にはポインティングディバイスであるマウス64が接続され、磁気ディスク制御部59には補助記憶装置である磁気ディスク装置65が接続されている。なお、画像処理装置1としては、CPU51、主記憶装置52、磁気ディスク制御部59、磁気ディスク装置65、インタフェース57、処理部63が少なくとも設けられる。また、必要に応じてフレキシブルディスクドライブ、磁気カード或いはICカードリーダ、MO(光磁気ディスク)ドライブ等が設けられる。
【0025】
画像処理部4に備えられる各手段は、CPU51が図3〜図6に示されるようなフローチャートに対応する画像処理プログラムを実行することにより実現することができる。当該画像処理プログラムは、例えば、磁気ディスク装置65に記憶されており、主記憶装置52へ読み出して実行することが可能となっている。なお、処理対象の画像は、テレビカメラ2より取り込んで用いるが、予め取り込み多値化ディジタルデータとして磁気ディスク装置65などに記憶しておいたものを用いることも可能である。以下、図3〜図6に示されるフローチャートに従って動作を説明する。
【0026】
CPU51は、処理部63から処理対象画像をn(例えば、30)枚取り込む(S1、S2)。n枚取り込んだ後にはステップS3以降の処理が行われ、更に1枚取り込む毎にステップS3以降の処理が行われる。
【0027】
CPU51は、処理部63から処理対象画像をn枚用いて時間平均画像を作成する(S3)。つまり、画素毎に輝度値の総和を算出し、結果を枚数nにより除した画像である時間平均画像を得る。また、n枚の画像から或いはこれとは別に背景画像を作成する(S4)。次に、ステップS3において作成した時間平均画像を予め決められプログラムに配置された輝度閾値により、2値化を行い高輝度領域を検出する(S5)。
【0028】
次に、ステップS5により検出された高輝度領域について、時間平均画像と背景画像とを比較し、類似度を計算して停止車両の有無を検出する(S6、S7)。このような比較の画像例を図7に示す。図7(a)には時間平均画像が示されており、図7(b)には背景画像が示されている。類似度の計算については、ここでは次の(式1)〜(式3)により示される正規化相関関数による演算を用い、画像の明るさの影響を受け難くテクスチャーの類似度を判定可能とするが、マッチング処理を用いるなどその他の演算によることも可能である。
【0029】
【数1】

【0030】
【数2】

【0031】
上記の(式1)〜(式3)において、類似度であるSimilarityは、−1〜+1の間の値をとる。また、類似度であるSimilarityが大きければ、2つの画像が類似することを意味する。Similarityの値が+1であれば両者は全く同じ画像であり、−1であればネガとポジの関係にある画像であることを意味する。類似度が予め決められプログラムに配置された類似度閾値より小さい場合には、停止車両の可能性ありと判定して出力を行う一方(S8)、上記類似度閾値より大きい場合には、車両なしと判定して出力を行う(S9)。
【0032】
車両ありと判定してステップS8へ進んだ場合には、車両領域毎に車両領域が第1車線にあるか第2車線にあるかを検出し(S10)、第1車線に車両領域がある場合には図4に示すフローチャートの処理へ進み、第2車線に車両領域がある場合には図5に示すフローチャートの処理へ進む。第1車線領域と第2車線領域は、予め例えば4点の座標値によって決定される矩形領域としてプログラムに配置されているものである。
【0033】
第1車線に車両領域がある場合に行われる図4に示すフローチャートの処理は、正当性判定ステップであり、テレビカメラ2から遠ざかるように車両が走行する側の第1の車線に車両領域が検出された場合に、テレビカメラ2に近付くように車両が走行する側の第2の車線側へ上記車両領域を拡大し、拡大領域と元の車両領域の輝度比に基づいて上記第1の車線における車両領域が正当であるか否かを判定するものである。
【0034】
例えば、図8に示すように当初の車両領域Daについて、矩形の領域における第2の車線側の2辺を所定の割合だけ長くして拡大領域Eaを得る(S11)。そして、当初の車両領域Daについての平均輝度Dと拡大領域Eaについての平均輝度Eとの比(E/D)を算出し(S12)、比(E/D)が予め決められプログラムに配置された輝度比閾値以上であるか否かを検出する(S13)。比(E/D)が輝度比閾値以上である場合には、第2車線を走行する車両のヘッドライトの影響であることから、車両なしとして出力を行う一方(S14)、比(E/D)が輝度比閾値を超えない場合には、図5に示す処理へ進む。なお、当初の車両領域Daについて、どのように拡大領域Eaを形成するかについては、図8は一例であり、原矩形の一辺側へ(第2の車線側へ)矩形を拡大すればよく、当初の車両領域Daの矩形が拡大領域Eaの中に入り、当初の車両領域Daの4辺周囲に拡大した領域が存在するようにしても良い。
【0035】
図5に示すフローチャートの処理は、ステップS10においてNOへ分岐し、或いはステップS13においてNOへ分岐した場合の処理であり、対面通行の車線毎及び上記車両領域毎に行われる。まず、n枚の画像について1枚目と2枚目、2枚目と3枚目、・・・についてフレーム間差分を行い(S21)、結果を所定閾値を用いて2値化し(S22)、白画素割合が予め決められプログラムに配置された白画素割合閾値以上の結果が何回であるかを求め(S23)、ステップS23にて求めた回数が予め決められプログラムに配置された出現回数閾値以上であるか否かを検出する(S24)。
【0036】
フレーム間差分を行って2値化を行った場合に、車両移動が起こっている画像においては、図9(a)に示されるように白画素数が多く、車両が停止している画像においては、図9(b)に示されるように白画素数が少ない。従って、図9(b)に示されるように白画素数が少ない2値化画像が出現回数閾値以上である場合には、停止車両がなく移動車両と判定して出力を行う一方(S25)、上記出現回数閾値より小さい場合には、停止車両ありと判定を行う(S26)。以上の通りの処理に関し画像をもって示すと、対面通行道路において停止車両があり、また、走行車両がある画像(図10(a)に示された如くの画像)が得られた場合に、図3のフローチャートにおけるステップS3の時間平均画像作成に係る処理を行うことによって図10(c)に示される如くの停止車両候補領域が抽出されることになり、また、図5のフローチャートにおけるステップS21のフレーム間差分とステップS22の2値化を行うことにより図10(b)に示される如くの走行車両による車両の流れが検出されることになり、対面通行道路において適切に停止車両検出が可能となる。
【0037】
ステップS25へ進んだ場合には、図6に示されるフローチャートの処理が行われる。この処理は、ハザードランプを点滅した停止車両を検出する処理である。ハザードランプ点滅により、或るときには図11(a)に示すような画像が得られ、対応するフレーム間差分2値化画像としては図11(b)に示されるような白画素数が少ない画像が得られ、また或るときには図12(a)に示すような画像が得られ、対応するフレーム間差分2値化画像としては図12(b)に示されるような白画素数が多い画像が得られる。白画素数の割合の変化を閾値により判定してハザードランプを点滅した停止車両を検出する。この処理では、フレーム間差分及び2値化を行い(S31)、対面通行の車線毎及び上記車両領域毎に、白画素割合を求め(S32)、対面通行の車線毎及び上記車両領域毎に前回のハザード判定においてハザードランプ点滅を行った停止車両とされたかを検出し(S33)、NOであれば、上記白画素割合が予め決められプログラムに配置された白画素割合閾値を超えており、当該閾値を超えた回数が単位時間に予め決められプログラムに配置された所定回数を超えたか否かを検出する(S34)。
【0038】
上記ステップS34においてYESとなると、ハザードランプ点滅を行った停止車両と判定して出力を行う一方(S35)、NOとなると停止車両なしと判定して出力を行う(S36)。ハザードランプ点滅を行った停止車両と判定した場合には、当該領域に対応してフラグをセットしておく。
【0039】
また、ステップS33における前回のハザード判定においてハザードランプ点滅を行った停止車両とされたかの検出の結果がYESであれば、フレーム間差分及び2値化を行いったステップS31の処理結果について、対面通行の車線毎及び上記車両領域毎に、白画素割合が予め決められプログラムに配置された白画素割合閾値を超えており、時間平均画像における平均輝度が予め決められプログラムに配置された輝度閾値を超えているか否かを検出する(S37)。
【0040】
上記ステップS37においてYESとなると、ハザードランプ点滅を継続させている停止車両と判定して出力を行う一方(S38)、NOとなるとハザードランプ点滅の停止車両がなくなったと判定して出力を行う(S39)。ハザードランプ点滅を行った停止車両なしと判定した場合には、当該領域に対応してフラグをリセットしておく。
【0041】
以上のようにして、フレーム間差分画像の2値化画像における白画素割合の変化に着目した図5に示される処理に基づいて、移動車両の判定を行うことにより停止車両の検出精度を向上させている。また、時系列的に変化の小さい領域が明瞭となる一方、時系列的に動きがある領域が不明瞭に見える(ボケる)ことに鑑み、図3に示される時間平均画像を作成することで、適切に停止車両と移動車両とを峻別できている。更に、図4に示される正当性判定ステップの処理を行うことにより、第2車線を走行する車両のヘッドライトが第1車線の路面を照射することによる停止車両の誤検出を適切に排除している。
【0042】
また、ハザードランプを点滅させた停止車両が存在する場合には、大きな輝度の変化が周期的に発生することに鑑み、フレーム間差分画像の2値化画像における白画素割合変化に着目し、図6に示される処理及び判定を行ってハザードランプを点滅させた停止車両の有無を適切に検出可能としている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る画像処理装置のブロック図。
【図2】本発明に係る画像処理装置を実現するコンピュータのブロック図。
【図3】本発明に係る画像処理装置の動作を説明するフローチャート。
【図4】本発明に係る画像処理装置の動作を説明するフローチャート。
【図5】本発明に係る画像処理装置の動作を説明するフローチャート。
【図6】本発明に係る画像処理装置の動作を説明するフローチャート。
【図7】本発明に係る画像処理装置による類似度計算処理を説明する図。
【図8】本発明に係る画像処理装置による正当性判定手段による処理を説明する図。
【図9】本発明に係る画像処理装置により処理されたフレーム間差分2値化画像を示す図。
【図10】停止車両と走行車両の存在する画像に対し、本発明に係る画像処理装置により処理されたフレーム間差分2値化画像及び時間平均画像を示す図。
【図11】ハザード点滅時の車両画像及び本発明に係る画像処理装置により処理されたフレーム間差分2値化画像を示す図。
【図12】ハザード点滅時の車両画像及び本発明に係る画像処理装置により処理されたフレーム間差分2値化画像を示す図。
【符号の説明】
【0044】
1 画像処理装置
2 テレビカメラ
3 信号変換手段
4 画像処理部
5 出力手段
11 時間平均画像作成手段
12 車両領域検出手段
13 停止車両検出手段
14 正当性判定手段
15 ハザード点滅検出手段
16 ハザード点滅継続検出手段
17 出力制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経時的に同一カメラにより同一方向を撮像した所定枚数の処理画像における各画素について、輝度情報の平均を算出することにより時間平均画像を作成する時間平均画像作成手段と、
前記時間平均画像の高輝度領域を抽出すると共に、抽出した高輝度領域と背景画像における対応領域の類似度判定を行って車両領域検出を行う車両領域検出手段と、
対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に前記処理画像についてフレーム間差分及び2値化を行って得た結果における白画素割合が閾値を超えるか否かに基づき停止車両検出を行う停止車両検出手段と
を具備することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
カメラから遠ざかるように車両が走行する側の第1の車線に車両領域が検出された場合に、カメラに近付くように車両が走行する側の第2の車線側へ前記車両領域を拡大し、拡大領域と元の車両領域の輝度比に基づいて前記第1の車線における車両領域が正当であるか否かを判定する正当性判定手段を具備し、
車両領域の絞り込みを行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に、フレーム間差分の2値化画像の白画素割合が閾値を超えており、閾値を超えた回数が単位時間に所定回数を超えたことを検出してハザードランプ点滅を検出するハザード点滅検出手段と、
前記ハザード点滅検出手段によりハザードランプが点滅されていることが検出された場合に、対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に、フレーム間差分の2値化画像の白画素割合が閾値を超えており、時間平均画像における平均輝度が輝度閾値を超えていることを検出して、ハザードランプ点滅継続を検出するハザード点滅継続検出手段と、
を具備することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
経時的に同一カメラにより同一方向を撮像した所定枚数の処理画像における各画素について、輝度情報の平均を算出することにより時間平均画像を作成する時間平均画像作成手段と、
前記時間平均画像の高輝度領域を抽出すると共に、抽出した高輝度領域と背景画像における対応領域の類似度判定を行って車両領域検出を行う車両領域検出手段と、
対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に、フレーム間差分の2値化画像の白画素割合が閾値を超えており、閾値を超えた回数が単位時間に所定回数を超えたことを検出してハザードランプ点滅を検出するハザード点滅検出手段と、
前記ハザード点滅検出手段によりハザードランプが点滅されていることが検出された場合に、対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に、フレーム間差分の2値化画像の白画素割合が閾値を超えており、時間平均画像における平均輝度が輝度閾値を超えていることを検出して、ハザードランプ点滅継続を検出するハザード点滅継続検出手段と、
を具備することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
プログラムを実行するコンピュータにより次の各ステップを実現させる画像処理プログラムであって、
経時的に同一カメラにより同一方向を撮像した所定枚数の処理画像における各画素について、輝度情報の平均を算出することにより時間平均画像を作成する時間平均画像作成ステップと、
前記時間平均画像の高輝度領域を抽出すると共に、抽出した高輝度領域と背景画像における対応領域の類似度判定を行って車両領域検出を行う車両領域検出ステップと、
対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に前記処理画像についてフレーム間差分及び2値化を行って得た結果における白画素割合が閾値を超えるか否かに基づき停止車両検出を行う停止車両検出ステップと
により構成されることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項6】
更に、カメラから遠ざかるように車両が走行する側の第1の車線に車両領域が検出された場合に、カメラに近付くように車両が走行する側の第2の車線側へ前記車両領域を拡大し、拡大領域と元の車両領域の輝度比に基づいて前記第1の車線における車両領域が正当であるか否かを判定する正当性判定ステップを具備し、
車両領域の絞り込みを行うことを特徴とする請求項5に記載の画像処理プログラム。
【請求項7】
更に、対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に、フレーム間差分の2値化画像の白画素割合が閾値を超えており、閾値を超えた回数が単位時間に所定回数を超えたことを検出してハザードランプ点滅を検出するハザード点滅検出ステップと、
前記ハザード点滅検出ステップによりハザードランプが点滅されていることが検出された場合に、対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に、フレーム間差分の2値化画像の白画素割合が閾値を超えており、時間平均画像における平均輝度が輝度閾値を超えていることを検出して、ハザードランプ点滅継続を検出するハザード点滅継続検出ステップと、
を具備することを特徴とする請求項5または6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
プログラムを実行するコンピュータにより次の各ステップを実現させる画像処理プログラムであって、
経時的に同一カメラにより同一方向を撮像した所定枚数の処理画像における各画素について、輝度情報の平均を算出することにより時間平均画像を作成する時間平均画像作成ステップと、
前記時間平均画像の高輝度領域を抽出すると共に、抽出した高輝度領域と背景画像における対応領域の類似度判定を行って車両領域検出を行う車両領域検出ステップと、
対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に、フレーム間差分の2値化画像の白画素割合が閾値を超えており、閾値を超えた回数が単位時間に所定回数を超えたことを検出してハザードランプ点滅を検出するハザード点滅検出ステップと、
前記ハザード点滅検出ステップによりハザードランプが点滅されていることが検出された場合に、対面通行の車線毎及び前記車両領域毎に、フレーム間差分の2値化画像の白画素割合が閾値を超えており、時間平均画像における平均輝度が輝度閾値を超えていることを検出して、ハザードランプ点滅継続を検出するハザード点滅継続検出ステップと、
を具備することを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−48238(P2006−48238A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225881(P2004−225881)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】