説明

画像処理装置

【課題】垂直化変換及び平行化変換の両変換を保つ画像を生成することができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】実施形態の画像処理装置は、複数の撮像部と、校正部と、を備える。複数の撮像部は、それぞれの光学中心を結ぶベースラインベクトルと平面の法線ベクトルとが直交するように配され、重複する領域を撮像する。校正部は、撮像された複数の画像を校正して、前記複数の画像それぞれのレンズ歪みが補正され、前記複数の画像の間で、対応する画像内の位置が水平に一致され、かつ平面に垂直な面に合わせられた複数の校正画像を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、左右に並べた(視点の異なる)2台のカメラ(ステレオカメラ)により撮像された2枚の画像(ステレオ画像)を用いて、人間が立体として知覚できる3D画像を生成する技術が知られている。3D画像を生成するためには、2枚の画像の対応する位置が水平に一致している必要がある。このため、上述したような技術では、2枚の画像それぞれのエピポーラ線が平行となり、かつ高さが一致するような画像変換(以下、平行化変換と称する)を行い、3D画像を生成する。ここで、エピポーラ線とは、一方のカメラの注目点と光学中心を結ぶ直線が他方のカメラにおいて投影される一意に定まった直線を言う。なお、一方のカメラの注目点を考えた場合、この注目点は、他方のカメラの一意に定まった直線上のいずれかに投影される。
【0003】
また従来から、通常のレンズよりも画角が広い広角レンズを有するカメラにより撮像された画像の歪みを除去する技術が知られている。このようなカメラは、例えば車両のバックカメラなどに用いられるが、一般的に近接した物体の撮像に用いられるため俯角を付けた状態で固定されることが多い。この結果、撮像された画像からレンズ歪みを除去しても空間的に垂直に立つ物体が垂直に投影されないことがある。このため、上述したような技術では、画像内の物体が平面に対して垂直になるような画像変換(以下、垂直化変換と称する)を行い、画像の歪みを除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-102620号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】A.Fusiello et al., “A Compact Algorithm for rectification of stereo pairs”, Machine Vision and Applications,2000.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような垂直化変換及び平行化変換の両変換を画像に対して行うと、通常、いずれか一方の変換が保たれなくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の画像処理装置は、複数の撮像部と、校正部と、を備える。複数の撮像部は、それぞれの光学中心を結ぶベースラインベクトルと平面の法線ベクトルとが直交するように配され、重複する領域を撮像する。校正部は、撮像された複数の画像を校正して、前記複数の画像それぞれのレンズ歪みが補正され、前記複数の画像の間で、対応する画像内の位置が水平に一致され、かつ平面に垂直な面に合わせられた複数の校正画像を得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本実施形態の画像処理装置の構成例を示すブロック図。
【図2】図2は、本実施形態の第1、第2撮像部の配置手法例の説明図。
【図3】図3は、本実施形態の第1、第2撮像部の車両への配置手法例の説明図。
【図4】図4は、本実施形態の第1、第2撮像部の車両への配置手法例の説明図。
【図5】図5は、本実施形態のレンズ歪み補正前の画像例を示す図。
【図6】図6は、本実施形態のレンズ歪み補正後の第1校正画像例を示す図。
【図7】図7は、本実施形態のステレオ校正パラメータの算出手法例の説明図。
【図8】図8は、本実施形態の平行化変換前の左画像及び右画像例を示す図。
【図9】図9は、本実施形態の平行化変換左画像及び平行化変換右画像例を示す図。
【図10】図10は、本実施形態の垂直化変換パラメータの算出手法例の説明図。
【図11】図11は、本実施形態の俯角の算出手法例の説明図。
【図12】図12は、本実施形態の調整変換パラメータの算出手法例の説明図。
【図13】図13は、本実施形態の校正前の右画像及び左画像例を示す図。
【図14】図14は、本実施形態の第2校正右画像及び第2校正左画像例を示す図。
【図15】図15は、本実施形態の画像処理例を示すフローチャート図。
【図16】図16は、変形例1の画像処理装置の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本発明にかかる画像処理装置の実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態では、撮像部が2つの場合を例に取り説明するが、これに限定されるものではなく、2つ以上であればいくつであってもよい。
【0010】
図1は、本実施形態の画像処理装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、画像処理装置1は、第1撮像部10と、第2撮像部20と、表示部30と、取得部40と、校正部50と、生成部80と、表示制御部90とを、備える。
【0011】
第1撮像部10及び第2撮像部20は、それぞれの光学中心を結ぶベースラインベクトルと平面の法線ベクトルとが直交するように配され、重複する領域を撮像する。なお本実施形態では、第1撮像部10及び第2撮像部20が、それぞれ広角画像を撮像する広角カメラである場合を例に取り説明するが、これに限定されるものではない。第1撮像部10及び第2撮像部20は、例えば、それぞれ100度以上の画角を有するものとする。
【0012】
図2は、第1撮像部10及び第2撮像部20の配置手法の一例を示す説明図である。X1軸、Y1軸、及びZ1軸は、第1撮像部10のカメラ座標系を示す軸であり、X2軸、Y2軸、及びZ2軸は、第2撮像部20のカメラ座標系を示す軸である。ここで、第1撮像部10の光学中心11がX1軸、Y1軸、及びZ1軸の原点に設定されており、Z1軸は、第1撮像部10の光軸方向と一致するように設定され、X1軸、Y1軸は、それぞれ、画像の横方向、縦方向に平行するように設定されている。同様に、第2撮像部20の光学中心21がX2軸、Y2軸、及びZ2軸の原点に設定されており、Z2軸は、第2撮像部20の光軸方向と一致するように設定され、X2軸、Y2軸は、それぞれ、画像の横方向、縦方向に平行するように設定されている。そして、第1撮像部10及び第2撮像部20は、それぞれの光学中心11、21を結ぶベースラインベクトル102が平面104の法線ベクトル106と直交するように配置される。つまり、第1撮像部10及び第2撮像部20は、ベースラインベクトル102が平面104と平行になるように配置される。
【0013】
図3及び図4は、第1撮像部10及び第2撮像部20の車両110への配置手法の一例を示す説明図である。図3は、第1撮像部10及び第2撮像部20が配置された車両110の正面図の一例を示し、図4は、第1撮像部10及び第2撮像部20が配置された車両110の平面図の一例を示す。
【0014】
図3及び図4に示すように、第1撮像部10及び第2撮像部20を車両110に配置する場合、第1撮像部10及び第2撮像部20は、それぞれの光学中心11、21を結ぶベースラインベクトル102が、路面112(図2の平面104に相当)と平行になるように、かつ車両110と平行になるように配置される。なお、第1撮像部10及び第2撮像部20は、車両110に俯角をつけた状態で配置(固定)されているものとする。
【0015】
ここで、車両110に配置された第1撮像部10及び第2撮像部20と路面112との関係は、車両110の走行中の動きや車両積載物の重みなどにより変化する。但し本実施形態では、ベースラインベクトル102が車両110と平行になるように第1撮像部10及び第2撮像部20を車両110に配置しているため、上述の変化が最も大きい車両110のピッチングに相当する運動を、ベースラインベクトル102を回転軸とする運動に相当させることができる。このため本実施形態によれば、車両110の動きや積載物の重みなどの変化があっても、第1撮像部10及び第2撮像部20の配置条件を満たすことができる。
【0016】
なお本実施形態では、第1撮像部10及び第2撮像部20の光軸を平行に一致させるような平行ステレオ配置は要求されないため、低コストで第1撮像部10及び第2撮像部20を車両110に配置することができる。
【0017】
表示部30は、人間が立体として知覚できる3D画像を表示するものであり、例えば、ディスプレイにレンチキュラーレンズなどの光線制御子が配された液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は有機ELディスプレイなどの3次元ディスプレイにより実現できる。
【0018】
取得部40は、第1撮像部10及び第2撮像部20により撮像されたステレオ画像を取得する。なお以下では、ステレオ画像のうち第1撮像部10に撮像された画像を右画像と称し、第2撮像部20により撮像された画像を左画像と称する。
【0019】
校正部50は、取得部40により取得された右画像及び左画像を校正して、右画像及び左画像それぞれのレンズ歪みが補正され、右画像及び左画像の間で、対応する画像内の位置が水平に一致され、かつ平面に垂直な面に合わせられた校正右画像及び校正左画像を得る。校正部50は、第1校正部60と、第2校正部70とを、含む。
【0020】
第1校正部60は、取得部40により取得された右画像及び左画像それぞれのレンズ歪みを校正して、第1校正右画像及び第1校正左画像を得る。なお、以下では、右画像及び左画像をそれぞれ区別する必要がない場合は、単に画像と称する場合があり、第1校正右画像及び第1校正左画像それぞれ区別する必要がない場合は、単に第1校正画像と称する場合がある。
【0021】
例えば、第1校正部60は、画像のレンズ歪みをRadial歪みモデル及びTangential歪みモデルを用いて表現し、当該レンズ歪みを校正(補正)する。この場合、レンズ歪みパラメータをK=(K,K,K,K,K)、レンズ歪みなしの正規化画像座標をX=(x,y)、レンズ歪みありの正規化座標をX(x,y)とすると、第1校正部60は、レンズ歪みありの正規化座標Xを、数式(1)で表現する。
【0022】
【数1】

【0023】
但し、r=x+yであり、dxは、数式(2)により表される。
【0024】
【数2】

【0025】
そして第1校正部60は、レンズ歪みありの画像座標Xを、レンズ歪みありの正規化画像座標Xを用いて、数式(3)で表現し、当該レンズ歪みを補正する。
【0026】
【数3】

【0027】
但し、(f,f)は、焦点距離を有効画素間隔で割った値であり、(c,c)は、画像中心である。なお、f、f、c、c、及びKは、予め第1撮像部10及び第2撮像部20のキャリブレーション作業を行って求めておく。
【0028】
図5は、レンズ歪み補正前の画像の一例を示す図であり、図6は、レンズ歪み補正後の第1校正画像の一例を示す図である。図5に示すレンズ歪み補正前の画像では、線分201及び線分202がレンズ歪みにより曲線となっているが、図6に示すレンズ歪み補正後の第1校正画像では、レンズ歪みが補正され、線分201及び線分202が直線に校正されている。
【0029】
第2校正部70は、第1校正部60により校正された第1校正右画像及び第1校正左画像の間で対応する画像内の位置を水平に一致させるとともに、各画像内の物体を平面に対して垂直にする校正を行い、第2校正右画像及び第2校正左画像を得る。第2校正部70は、第1算出部72と、第2算出部74と、変換部76とを、含む。
【0030】
第1算出部72は、第1校正部60により校正された第1校正右画像及び第1校正左画像(ステレオ画像)の間で対応する画像内の位置を水平に一致させる平行化変換を行うためのステレオ校正パラメータを算出する。つまり、第1算出部72は、第1校正右画像及び第1校正左画像内でエピポーラ線が全て水平になり、かつ第1校正右画像及び第1校正左画像間で対応する位置の水平位置を一致させる平行化変換を行うためのステレオ校正パラメータを算出する。なお、エピポーラ線とは、一方のカメラの注目点と光学中心を結ぶ直線が他方のカメラにおいて投影される一意に定まった直線を言う。
【0031】
以下では、第1撮像部10(右画像)のステレオ校正パラメータをWs1、第2撮像部20(左画像)のステレオ校正パラメータをWs2と称するが、それぞれ区別する必要がない場合は、単にステレオ校正パラメータWと称する場合がある。なお、ステレオ校正パラメータWは、3行3列の射影変換行列で表現される。
【0032】
ここでは、ステレオ校正パラメータWの算出手法について、2通りの方法を説明するが、第1算出部72は、いずれの方法を用いてステレオ校正パラメータWを算出してもよい。
【0033】
まず、1つ目の方法について説明する。1つ目の方法では、第1算出部72は、第1撮像部10及び第2撮像部20それぞれの外部パラメータ及び内部パラメータを用いて、ステレオ校正パラメータWを算出する。ここで、外部パラメータは、ワールド座標からの回転行列及び並進ベクトルなどが該当し、内部パラメータは、第1撮像部10及び第2撮像部20それぞれの焦点距離を有効画素間隔で割った値や画像中心などが該当する。
【0034】
図7は、ステレオ校正パラメータWの算出手法の一例を示す説明図である。図7に示す例では、第1算出部72は、画像面310に投影される第1撮像部10の右画像を、平行化変換により仮想的に平行配置でかつ第1撮像部10及び第2撮像部20の両撮像部で同一の画像面305に投影される画像312に変換するためのステレオ校正パラメータWs1を算出する。同様に、第1算出部72は、画像面320に投影される第2撮像部20の左画像を、平行化変換により仮想的に平行配置でかつ画像面305に投影される画像322に変換するためのステレオ校正パラメータWs2を算出する。
【0035】
第1撮像部10及び第2撮像部20の座標軸などは、図2と同様である。つまり、第1撮像部10の実際のカメラ座標系がX1軸、Y1軸、及びZ1軸であり、第2撮像部20の実際のカメラ座標系を示す軸がX2軸、Y2軸、及びZ2軸である。ここで、実際のカメラ座標系とは、平行化変換前のカメラ座標系を言う。なお本実施形態では、前述したように、第1撮像部10及び第2撮像部20の平行ステレオ配置は要求されていないため、光軸方向であるZ1軸及びZ2軸が平行である必要はない。また、Xw、Yw、Zw軸は、ワールド座標系の座標軸を示す。
【0036】
具体的に説明すると、第1算出部72は、第1撮像部10及び第2撮像部20の実際のカメラ座標系(X1軸、Y1軸、Z1軸)、(X2軸、Y2軸、Z2軸)を、ベースラインベクトル102が第1撮像部10及び第2撮像部20のカメラ座標系の水平軸(Xc1軸及びXc2軸)と平行になるように、仮想的に回転する。この際、第1算出部72は、第1撮像部10及び第2撮像部20の配置が仮想的に平行となるように、Zc1軸及びZc2軸の方向、並びにYc1軸及びYc2軸の方向を一致させる。これにより、第1算出部72は、第1撮像部10の仮想のカメラ座標系の座標軸(Xc1,Yc1,Zc1)、第2撮像部20の仮想のカメラ座標系の座標軸(Xc2,Yc2,Zc2)を算出する。よって、ワールド座標系の座標軸(Xw、Yw、Zw)から第1撮像部10の仮想のカメラ座標系の座標軸(Xc1,Yc1,Zc1)と第2撮像部20の仮想のカメラ座標系の座標軸(Xc2,Yc2,Zc2)とへ変換する回転行列は同じとなる。また第1算出部72は、画像面を第1撮像部10及び第2撮像部20とで同一とするため、両撮像部の内部パラメータを合わせた仮想的な内部パラメータをそれぞれ作成する。
【0037】
そして第1算出部72は、第1撮像部10の実際のカメラ座標系の座標軸を仮想のカメラ座標系の座標軸へ回転する回転行列と第1撮像部10の仮想的な内部パラメータなどを用いて、画像面310に投影される右画像を画像312に変換する射影変換行列(ステレオ校正パラメータWs1)を算出(推定)する。同様に第1算出部72は、第2撮像部20の実際のカメラ座標系の座標軸を仮想のカメラ座標系の座標軸へ回転する回転行列と第2撮像部20の仮想的な内部パラメータなどを用いて、画像面320に投影される右画像を画像322に変換する射影変換行列(ステレオ校正パラメータWs2)を算出(推定)する。
【0038】
次に、2つ目の方法について説明する。2つ目の方法では、第1算出部72は、第1撮像部10により撮像された右画像及び第2撮像部20により撮像された左画像それぞれの画像上に対応する対応点を8組以上求め、求めた対応点の組からステレオ校正パラメータWを算出する。この場合、第1算出部72は、求めた対応点の組から基礎行列を計算し、計算した基礎行列から各画像のエピ極点の方向を推定し、推定したエピ極点が水平方向となるように各画像を回転する。そして第1算出部72は、エピ極点が水平方向に無限遠に写像するように各画像に射影変換を施し、両画像の対応する特徴点が同じ高さとなるように再び射影変換を施す。ここでは、第1算出部72は、右画像及び左画像から平行化変換された画像を得るまでに、回転変換を1回と射影変換を2回行っているが、これらの変換は射影変換1回で表せるため、これをステレオ校正パラメータWsiとする。但し、iは1又は2を表す。
【0039】
図8は、平行化変換前の左画像及び右画像の一例を示す図であり、図9は、平行化変換後の平行化変換左画像及び平行化変換右画像の一例を示す図である。但し、第1算出部72により算出されたステレオ校正パラメータWを用いた平行化変換は、後述の変換部76により行われる。図8に示す例では、左画像420の注目点422は、対応する右画像410の注目点412と水平線上に存在していない。一方、図9に示す例では、平行化変換により互いの画像の対応する注目点が水平線上に存在するように変換されており、平行化変換左画像520の注目点522と対応する平行化変換右画像510の注目点512とが、水平線上に存在している。
【0040】
第2算出部74は、第1算出部72により校正された第1校正右画像及び第1校正左画像のそれぞれを画像内の物体が平面に対して垂直になるように垂直化変換を行うための垂直化変換パラメータを算出する。以下では、第1撮像部10及び第2撮像部20をそれぞれ区別する必要がない場合は、単に撮像部と称する場合がある。なお、垂直化変換パラメータWは、3行3列の射影変換行列で表現される。
【0041】
図10は、垂直化変換パラメータWの算出手法の一例を示す説明図である。図10に示す例では、第2算出部74は、第1撮像部10の右画像610及び第2撮像部20の左画像620を、第1撮像部10の光学中心11及び第2撮像部20の光学中心21を中心として、第1撮像部10及び第2撮像部20の光軸が水平になるように仮想的に回転することにより、垂直化変換右画像612及び垂直化変換左画像622へ変換するための垂直化変換パラメータWを算出する。
【0042】
具体的に説明すると、第2算出部74は、数式(4)により垂直化変換パラメータWを算出する。
【0043】
【数4】

【0044】
ここで、Aは、垂直化変換後の仮想的な撮像部の内部パラメータであり、Aは、平行化変換後の仮想的な撮像部の内部パラメータである。なお、AとAとを同一の値としてもよいし、新たな値に設定してもよい。Rは、平行化変換後の仮想的な撮像部のカメラ座標系から垂直化変換後の仮想的な撮像部のカメラ座標系へ変換する回転行列であり、数式(5)により表される。
【0045】
【数5】

【0046】
ここで、αは俯角を示す。ここでは、俯角αの算出(推定)手法について、3通りの方法を説明するが、第2算出部74は、いずれの方法を用いて俯角αを算出してもよい。
【0047】
まず、1つ目の方法について説明する。1つ目の方法では、第2算出部74は、右画像610及び左画像620(ステレオ画像)間の平面104に対する射影変換行列から平面104の法線ベクトル106を推定する。図2で説明した第1撮像部10及び第2撮像部20の配置であると、法線ベクトル106は、第1撮像部10のXc1及び第2撮像部20のXc2軸には成分を持たない。これにより、第2算出部74は、俯角αを算出することができる。
【0048】
次に、2つ目の方法について説明する。2つ目の方法では、第2算出部74は、画像上の水平線の位置と撮像部の内部パラメータとを用いて推定する。ここで、水平線の位置をyh、内部パラメータの光学中心を(cx,cy)で示すと、第2算出部74は、図10に示すように、撮像部の焦点距離ΔFと水平線から光学中心までの距離ΔY(cx−yh)とから、数式(6)により俯角αを推定する。
【0049】
【数6】

【0050】
次に、3つ目の方法について説明する。3つ目の方法では、第2算出部74は、空間的に垂直に立つ物体を画像上で垂直となるように変換する。
【0051】
図11は、俯角αの算出手法の一例を示す説明図である。図11に示すように、第2算出部74は、垂直に立つ物体712が端の部分に映るように置かれた画像710に対して、俯角αを0度から少し変化させた(撮像部を仮想的に回転させた)画像720を後述の変換部76で説明する方法で生成する。そして第2算出部74は、生成した画像720で物体712が垂直に投影されていない場合には、再び俯角αを変化させた画像を生成し、最終的に物体712が垂直に投影された画像730を得る。第2算出部74は、画像730を生成するために使用した俯角αを正解値として採用する。
【0052】
なお、第2算出部74は、俯角αを変化させる代わりに、画像710、画像720上の水平線の位置yhを変化させながら数式(6)により俯角αを算出するようにしてもよい。この場合、第2算出部74は、その後、物体712が垂直に投影されるように水平線を上下させればよい。
【0053】
また、第2算出部74は、画像内の物体を平面に対して垂直に校正した画像の水平線位置が予め指定された水平線位置となるように垂直方向の平行移動を行うための調整変換パラメータを算出して、垂直化変換パラメータに加えるようにしてもよい。具体的には、第2算出部74は、垂直化変換前後で水平線の位置が変わらないように垂直方向の平行移動を行うための調整変換パラメータを垂直化変換パラメータに加えるようにしてもよい。
【0054】
図12は、調整変換パラメータSの算出手法の一例を示す説明図である。図12に示すように、第2算出部74は、垂直変換前の画像810に対して撮像部を仮想的に回転させて画像820を生成する。但し、撮像部を仮想的に回転させるだけでは、被写体を適切な位置に表示することが難しい。そこで第2算出部74は、画像820に投影される水平線(図示省略)の位置が、画像810の水平線816とずれないように画像面を移動させることにより、画像830のように、画像810の水平線816と画像830の水平線816との位置を一致させ、被写体が画像に適切に投影されるように調整変換パラメータSを算出する。そして第2算出部74は、算出した調整変換パラメータSを垂直化変換パラメータWに加える。
【0055】
ここで、調整変換パラメータSと垂直化変換パラメータWとは、数式(7)に示す関係がある。
【0056】
【数7】

【0057】
但し、調整変換パラメータSは、数式(8)により表される。
【0058】
【数8】

【0059】
ここで、Δdiffは、数式(9)により求められる。
【0060】
【数9】

【0061】
但し、W−1は、数式(10)により表される。また、yhは水平線816の画像の縦位置である。
【0062】
【数10】

【0063】
なお、水平線位置が垂直化変換前後で変化しないようにするには、第2算出部74は、数式(4)により算出される垂直化変換パラメータWではなく数式(7)により算出される垂直化変換パラメータWを用いるとよい。
【0064】
変換部76は、第1算出部72により算出されたステレオ校正パラメータW及び第2算出部74により算出された垂直化変換パラメータWを用いて、第1校正部60により校正された第1校正右画像及び第1校正左画像に対して画像変換を行い、第2校正右画像及び第2校正左画像を得る。
【0065】
なお、変換部76が画像変換に用いる変換パラメータWsviは、数式(11)により表される。但し、iは1又は2を表す。
【0066】
【数11】

【0067】
また、変換パラメータWsviと画像座標の関係は数式(12)により表され、変換部76は、線形補間やバイキュービック補間などを用いて画像を作成する。
【0068】
【数12】

【0069】
なお第2校正部70は、ステレオ校正パラメータW及び垂直化変換パラメータWを算出せずに、直接、変換パラメータWsviを算出することもできる。この場合、第2校正部70は、前述のステレオ校正パラメータWの1つ目の算出手法において、第1撮像部10及び第2撮像部20の実際のカメラ座標系の水平軸(Xc1軸及びXc2軸)を光軸方向に一致させ、その後、垂直軸(Yc1軸及びYc2軸)を平面の法線ベクトルの方向と一致させる。また第2校正部70は、Zch軸が、それぞれXch軸及びYch軸のいずれにも直交するように定める。但し、hは1又は2を表す。この結果推定されるステレオ校正パラメータWsiは、垂直化された条件も満たしているため、変換パラメータWsviと同義となる。
【0070】
図13は、校正前の右画像及び左画像の一例を示す図であり、図14は、第2校正後の第2校正右画像及び第2校正左画像の一例を示す図である。図13に示す例では、左画像920及び右画像910(ステレオ画像)の間で対応する画像内の位置が水平に一致しておらず、また、画像内の人間が路面に対して垂直になっていない。一方、図14に示す例では、第2校正(平行化変換及び垂直化変換)により互いの画像の対応する注目点が水平線上に存在するように変換されており、第2校正左画像1020の注目点1022と対応する第2校正右画像1010の注目点1012とが、水平線上に存在している。また、画像内の人間が路面に対して垂直になっている。このように第2校正部70による校正により、ステレオ画像を平行化したまま垂直物体が垂直になるように投影された画像が生成される。
【0071】
生成部80は、第2校正部70により校正された第2校正右画像及び第2校正左画像から、3D画像を生成する。
【0072】
表示制御部90は、生成部80により生成された3D画像を表示部30に表示させる。
【0073】
図15は、本実施形態の画像処理装置1で行われる画像処理の手順の流れの一例を示すフローチャート図である。
【0074】
まず、それぞれの光学中心を結ぶベースラインベクトルと平面の法線ベクトルとが直交するように配された第1撮像部10及び第2撮像部20は、重複する領域の画像を撮像する(ステップS100)。
【0075】
続いて、取得部40は、第1撮像部10及び第2撮像部20により撮像されたステレオ画像(第1撮像部10により撮像された右画像及び第2撮像部20により撮像された左画像)を取得する(ステップS102)。
【0076】
続いて、第1校正部60は、取得部40により取得された右画像及び左画像それぞれのレンズ歪みを補正(校正)して、第1校正右画像及び第1校正左画像を得る(ステップS104)。
【0077】
続いて、第1算出部72は、第1校正部60により校正された第1校正右画像及び第1校正左画像(ステレオ画像)の間で対応する画像内の位置を水平に一致させる平行化変換を行うためのステレオ校正パラメータを算出する(ステップS106)。
【0078】
続いて、第2算出部74は、第1校正部60により校正された第1校正右画像及び第1校正左画像のそれぞれを画像内の物体が平面に対して垂直になるように垂直化変換を行うための垂直化変換パラメータを算出する(ステップS108)。この際、第2算出部74は、画像内の物体を平面に対して垂直に校正した画像の水平線位置が予め指定された水平線位置となるように垂直方向の平行移動を行うための調整変換パラメータを算出して、垂直化変換パラメータに加えるようにしてもよい。
【0079】
続いて、変換部76は、第1算出部72により算出されたステレオ校正パラメータ及び第2算出部74により算出された垂直化変換パラメータを用いて、第1校正部60により校正された第1校正右画像及び第1校正左画像に対して画像変換を行う(ステップS110)。
【0080】
続いて、生成部80は、変換部76により画像変換が行われた第2校正右画像及び第2校正左画像から、3D画像を生成する(ステップS112)。
【0081】
続いて、表示制御部90は、生成部80により生成された3D画像を表示部30に表示させる(ステップS114)。
【0082】
以上のように本実施形態では、第1撮像部10及び第2撮像部20が、それぞれの光学中心を結ぶベースラインベクトルと平面の法線ベクトルとが直交するように配されている。このため、第1撮像部10及び第2撮像部20の配置が幾何学的に平行化及び垂直化の要件を満たしており、画像(ステレオ画像)に対して垂直化変換及び平行化変換の両変換を行っても両変換を保つことができる。これにより、垂直化変換及び平行化変換後のステレオ画像から3D画像を直接的に作成することができ、人間が知覚しやすい3D画像を高速に生成することができる。
【0083】
なお、平行化変換及び垂直化変換を実現するため、ステレオカメラの画像から視差を推定し、推定した視差から画像を合成して3D画像を作成する手法も考えられるが、この場合、視差を推定するため画像間の対応位置を計算する必要がある。画像間の対応位置は、基準画像(一方のステレオ画像)上に設定された注目点に対して、参照画像(他方のステレオ画像)のエピポーラ線上を探索し、注目点と最も類似性の高い位置を求めることによって得られるが、一般的にエピポーラ線は、基準画像上の設定した注目点の位置によって異なる。このため、エピポーラ線は注目点毎に求めなくてはならず、計算コストが多くなってしまう。
【0084】
これに対し、本実施形態では、視差を推定する必要がないため、人間が知覚しやすい3D画像を高速に生成することができる。
【0085】
また例えば、本実施形態の画像処理装置1を、車両に搭載したバックカメラのモニタの映像を3次元ディスプレイの機能を搭載したナビゲージョン画面に表示する周辺監視装置に適用すれば、運転者は後方の様子を3次元的に確認可能となり、後進時の安全性の向上に寄与することができる。特に本実施形態の画像処理装置1では、垂直化変換が行われているため、空間的に垂直に立つ物体は画像上に垂直に投影され、障害物のまでの距離や物体の種類等が容易に感知できる。
【0086】
(変形例1)
上記実施形態では、レンズ歪みを補正し、変換パラメータWsvi(ステレオ校正パラメータW及び垂直化変換パラメータW)を算出して平行化変換及び垂直化変換を行う場合を例に取り説明した。変形例1では、これらの変換結果を利用することにより、変換パラメータWsviを算出せずに、レンズ歪みの補正、平行化変換、及び垂直化変換を1度の変換で行う例について説明する。以下では、上記実施形態との相違点の説明を主に行い、上記実施形態と同様の機能を有する構成要素については、第1実施形態と同様の名称・符号を付し、その説明を省略する。
【0087】
図16は、変形例1の画像処理装置101の構成の一例を示すブロック図である。図16に示すように、変形例1の画像処理装置101では、校正部150の処理内容、及びテーブル記憶部152を更に備える点が上記実施形態の画像処理装置1と相違する。
【0088】
テーブル記憶部152は、第1撮像部10により撮像された右画像及び第2撮像部20により撮像された左画像の画像上の位置を示す画像位置情報と、第2校正右画像及び第2校正左画像それぞれの画像上の位置を示す校正画像位置情報と、を対応付けた位置情報テーブルを記憶する。即ち、テーブル記憶部152は、レンズ歪み補正前のステレオ画像の画像上の位置を示す画像位置情報と、レンズ歪み補正、平行化変換、及び垂直化変換後のステレオ画像の画像上の位置を示す画像位置情報と、を対応付けた位置情報テーブルを記憶する。テーブル記憶部152は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカードなどの磁気的、光学的、又は電気的に記憶可能な既存の記憶装置の少なくともいずれかにより実現できる。なお、位置情報テーブルは、校正部150が校正を行って作成してもよいし、予め作成されていてもよい。
【0089】
校正部150は、テーブル記憶部152に記憶されている位置情報テーブルを用いて、第1撮像部10により新たに撮像された右画像及び第2撮像部20により新たに撮像された左画像を校正して、レンズ歪み補正、平行化変換、及び垂直化変換後の校正右画像及び校正左画像を得る。
【0090】
変形例1によれば、位置情報テーブルを用いることにより、変換パラメータWsviを算出せずに、レンズ歪みの補正、平行化変換、及び垂直化変換を1度の変換で行うことができるため、計算コストを抑えることができる。
【0091】
(変形例2)
上記実施形態では、第2校正右画像及び第2校正左画像から生成した3D画像を表示部30に表示する例について説明したが、3D画像から、画像同士の対応位置を求めることによって視差を推定し、推定した視差から立体物の検出を行ったり、画像パタンを用いて物体の認識を行ったりしてもよい。また、第2校正右画像及び第2校正左画像の少なくとも一方をそのまま表示部30に表示してもよい。この場合、表示部30は3次元ディスプレイである必要はなく、通常のディスプレイであればよい。
【0092】
上記各実施形態及び上記各変形例の画像処理装置は、CPU(Central Processing Unit)などの制御装置と、ROMやRAMなどの記憶装置と、HDDやSSDなどの外部記憶装置と、3次元ディスプレイなどの表示装置と、広角カメラなどの撮像装置等を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現可能となっている。また上記各実施形態及び上記各変形例の画像処理装置の上述した各部をソフトウェア的に実現してもハードウェア的にも実現してもよい。
【0093】
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【0094】
以上説明したとおり、上記実施形態及び上記各変形例によれば、垂直化変換及び平行化変換の両変換を保つ画像を生成することができる。
【符号の説明】
【0095】
1、101 画像処理装置
10 第1撮像部
20 第2撮像部
30 表示部
40 取得部
50、150 校正部
60 第1校正部
70 第2校正部
72 第1算出部
74 第2算出部
76 変換部
80 生成部
90 表示制御部
152 テーブル記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重複する領域を撮像する複数の撮像部と、
撮像された複数の画像を校正して、前記複数の画像それぞれのレンズ歪みが補正され、前記複数の画像の間で、対応する画像内の位置が水平に一致され、かつ平面に垂直な面に合わせられた複数の校正画像を得る校正部と、
を備え、
前記複数の撮像部は、それぞれの光学中心を結ぶベースラインベクトルと平面の法線ベクトルとが直交するように配されている
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記校正部は、
前記複数の画像それぞれのレンズ歪みを校正して、複数の第1校正画像を得る第1校正部と、
前記複数の第1校正画像の間で、対応する画像内の位置を水平に一致させるとともに各画像内の物体を平面に対して垂直にする校正を行い、複数の第2校正画像を得る第2校正部と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第2校正部は、前記複数の撮像部を仮想的に回転させて前記複数の第1校正画像の各画像内の物体を平面に対して垂直に校正し、更に、前記画像の水平線位置が予め指定された水平線位置となるように垂直方向の平行移動を行うことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記複数の画像それぞれの画像上の位置を示す画像位置情報と、前記複数の校正画像それぞれの画像上の位置を示す校正画像位置情報と、を対応付けた位置情報テーブルを記憶するテーブル記憶部を更に備え、
前記校正部は、前記位置情報テーブルを用いて、前記複数の画像を校正して前記複数の校正画像を得ることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記複数の第2校正画像の少なくともいずれか、又は前記複数の第2校正画像に基づく立体画像を表示する表示部を更に備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−68923(P2012−68923A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213575(P2010−213575)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】