説明

画像形成装置、画像形成方法

【課題】潜像担持体表面の移動速度の変動に起因した潜像形成位置のずれの発生を抑制して、良好な潜像形成を可能とする技術を提供する。
【解決手段】第1の方向に配設された発光素子、発光素子から発光された光を結像する第1の結像光学系、及び第1の結像光学系に対して第2の方向に配設された第2の結像光学系を有する露光ヘッドと、第2の方向に移動する潜像担持体と、第2の方向の第1の位置から第2の位置へ移動する潜像担持体の移動時間を検出する検出部と、第1の結像光学系で結像される光を発光する第1の発光素子が発光してから、結像光学系で結像される光を発光する第2の発光素子が発光するまでの時間を、検出部の検出結果に基づいて制御して、第1の結像光学系によって潜像担持体に形成される潜像と第2の結像光学系によって潜像担持体に形成される潜像とを第1方向に配設する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子から射出された光ビームを結像光学系により結像する露光ヘッド用いた画像形成装置および画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような露光ヘッドとして、複数の発光素子から射出された光ビームを、スポットとして結像するラインヘッドが知られている。例えば、特許文献1に記載のラインヘッド(同文献の露光ヘッド)では、1ライン分に相当する個数の発光素子が主走査方向に対応する方向に並んでおり、各発光素子から射出された光ビームが屈折率分布型レンズによりスポットとして結像される。そして、副走査方向に移動する潜像担持体表面に対して1ライン毎の潜像が順次形成されることで、所望の画像に対応した2次元の潜像が形成される。
【0003】
【特許文献1】特開2004−66758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、より高解像度の潜像形成を実現するために、複数の発光素子をグループ化した発光素子グループを有するラインヘッドを用いることができる。つまり、このラインヘッドでは、副走査方向に対応する方向(幅方向)の互いに異なる位置に複数の発光素子グループを配して発光素子グループ列が構成されるとともに、この発光素子グループ列が主走査方向に対応する方向(長手方向)に複数並んで設けられている。しかしながら、このように、幅方向の互いに異なる位置に複数の発光素子グループを配したラインヘッドにおいては、潜像担持体表面の移動速度が変動すると、潜像の形成位置が副走査方向にずれてしまい、良好な潜像形成が実行できない場合があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、潜像担持体表面の移動速度の変動に起因した潜像形成位置のずれの発生を抑制して、良好な潜像形成を可能とする技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、第1の方向に配設された発光素子、発光素子から発光された光を結像する第1の結像光学系、及び第1の結像光学系に対して第2の方向に配設された第2の結像光学系を有する露光ヘッドと、第2の方向に移動する潜像担持体と、第2の方向の第1の位置から第2の位置へ移動する潜像担持体の移動時間を検出する検出部と、第1の結像光学系で結像される光を発光する第1の発光素子が発光してから、結像光学系で結像される光を発光する第2の発光素子が発光するまでの時間を、検出部の検出結果に基づいて制御して、第1の結像光学系によって潜像担持体に形成される潜像と第2の結像光学系によって潜像担持体に形成される潜像とを第1方向に配設する制御部と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
また、この発明にかかる画像形成方法は、上記目的を達成するために、潜像担持体の第1の位置から第2の位置に移動する時間を検出する検出工程と、第1の結像光学系で結像される光を発光する第1の発光素子が発光した後、第2の結像光学系で結像される光を発光する第2の発光素子が発光するまでの時間を、検出工程の検出結果に基づいて制御する制御工程と、を有することを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明(画像形成装置、画像形成方法)は、潜像担持体の第1の位置から第2の位置に移動する時間を検出する。そして、第1の結像光学系で結像される光を発光する第1の発光素子が発光した後、第2の結像光学系で結像される光を発光する第2の発光素子が発光するまでの時間を、上記検出結果に基づいて制御する。したがって、第1の結像光学系に結像される光を発光する発光素子の発光から、第1の結像光学系の第2方向に配された第2の結像光学系に結像される光を発光する発光素子の発光までの間に、潜像担持体の速度に変動が生じた場合であっても、良好に潜像を形成することが可能となっている。
【0009】
また、制御部は、第1の結像光学系により結像される光を発光する第1の発光素子が発光してから、第1の結像光学系により結像される光を発光するとともに第1の発光素子の第2方向側に配された第3の発光素子が発光するまでの時間を、検出部の検出結果に基づいて制御して、第1の発光素子によって潜像担持体に形成される潜像と第3の発光素子によって潜像担持体に形成される潜像とを第1方向に配設するように、構成しても良い。このような構成では、第1の結像光学系により結像される光を発光する第1の発光素子の発光から、第1の結像光学系により結像される光を発光するとともに第1の発光素子の第2方向側に配された第3の発光素子の発光までの間に、潜像担持体の速度に変動が生じた場合であっても、良好に潜像を形成することが可能となっている。
【0010】
また、潜像担持体は第2方向に回転する感光体ドラムである画像形成装置に対しては、本発明を適用することが好適である。特に、駆動源と、駆動源からの駆動力を感光体ドラムに伝達する歯車と、を有する画像形成装置に対しては本発明を適用することが好適である。つまり、このような構成では回転速度が変動する場合がある。そこで、本発明を適用することで、感光体ドラムの回転速度変動によらず良好な潜像形成が可能となる。
【0011】
このとき、感光体ドラムの速度変動の周期に感光体ドラムの平均速度を乗じて求められる感光体ドラムの距離よりも、第1の結像光学系と第2の結像光学系との第2方向への距離が長くなるように構成することが好適である。
【0012】
なお、速度変動の周期は、感光体ドラムの単位時間あたりの回転数に歯車の歯数を乗じた値の逆数から、簡便に求めることができる。
【0013】
歯車はカップリングを介して感光体ドラムに接続される画像形成装置、あるいは、歯車と感光体ドラムとは一体的に接続される画像形成装置に対して本発明を適用することができる。これらのいずれの構成においても感光体ドラムの回転速度が変動する場合があるため、本発明により、感光体ドラムの回転速度変動によらず良好な潜像形成を実現することが好適である。
【0014】
また、検出部は、感光体ドラムの回転中心から放射状に配されたスリットを有するエンコーダディスクと、スリットを検知する光学センサとを有するように構成しても良い。かかる検出部は、感光体ドラムの位置を精度良く求めることができ、良好な潜像形成を実現するにあたって有利である。
【0015】
また、検出部は、感光体ドラムの回転中心を挟んだ感光体ドラムの径方向に配された2個の光学センサを有するように構成しても良い。このように感光体ドラムの回転中心を挟んだ感光体ドラムの径方向に2個の光学センサを配することで、感光体ドラムの回転中心に対する2個の光学センサの偏心の影響を抑制して、感光体ドラムの位置を精度良く求めることができる。
【0016】
また、第1の結像光学系で結像された光と第2の結像光学系で結像された光との潜像担持体の第2方向への距離が、画素における第2方向の該画素間距離の整数倍であるように構成しても良い。このように構成することで、発光素子の発光タイミングの制御を簡素化することができる。
【0017】
第2方向の画素間距離は、画素における第1方向の画素間距離より短いように構成しても良い。このように構成することで、第2方向へ高解像度な潜像形成を実行できる。この際、制御手段は、PWM制御により発光素子の発光を制御することで、かかる高解像度な潜像形成を比較的簡単に実現することができる。
【0018】
また、潜像担持体と、発光素子および発光素子からの光を潜像担持体に結像する結像光学系を備える露光ヘッドと、潜像担持体の位置を検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいて発光素子の発光を制御して潜像担持体に潜像を形成する制御部とを備えるように画像形成装置を構成しても良い。このように構成された画像形成装置は、潜像担持体の位置を検出する。そして、この検出結果に基づいて発光素子の発光を制御して潜像担持体に潜像を形成する。したがって、潜像担持体の速度に変動が生じた場合であっても、良好に潜像を形成することが可能となっている。
【0019】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、表面が第1方向に直交もしくは略直交する第2方向に移動する潜像担持体と、複数の発光素子をグループ化した発光素子グループを複数配したヘッド基板と、発光素子グループの発光素子が発光した光ビームを結像して潜像担持体表面にスポットを形成する結像光学系を発光素子グループ毎に設けたレンズアレイとを有するラインヘッドと、潜像担持体表面の移動に応じたタイミングで発光素子を発光させる制御手段と、潜像担持体表面の移動速度を検出する検出手段とを備え、ラインヘッドのヘッド基板では、複数の発光素子グループを第2方向の互いに異なる位置に配した発光素子グループ列が、第1方向に複数設けられ、発光素子グループの各発光素子が同時発光して形成される複数のスポットをスポットグループとしたとき、発光素子グループ列の各発光素子グループは第2方向の互いに異なる位置にスポットグループを形成し、制御手段は、検出手段が検出した潜像担持体表面の移動速度に応じて、発光素子の発光タイミングを調整することを特徴としている。
【0020】
また、この発明にかかるラインヘッドの制御方法は、上記目的を達成するために、複数の発光素子をグループ化した発光素子グループを複数配したヘッド基板と、発光素子グループの発光素子が発光した光ビームを結像して潜像担持体表面にスポットを形成する結像光学系を発光素子グループ毎に設けたレンズアレイとを有するラインヘッドの各発光素子を所定の発光タイミングで発光させて、第1方向に直交もしくは略直交する第2方向に移動する潜像担持体表面を露光する露光工程を備え、ラインヘッドのヘッド基板では、複数の発光素子グループを第2方向の互いに異なる位置に配した発光素子グループ列が、第1方向に複数設けられ、発光素子グループの各発光素子が同時発光して形成される複数のスポットをスポットグループとしたとき、発光素子グループ列の各発光素子グループは第2方向の互いに異なる位置にスポットグループを形成し、露光工程では、潜像担持体表面の移動速度を検出するとともに、該検出結果に基づいて発光素子の発光タイミングを調整することを特徴としている。
【0021】
このように構成された発明(画像形成装置、ラインヘッドの制御方法)では、潜像担持体表面の移動速度が検出されるとともに、該検出結果に基づいて発光素子の発光タイミングが調整される。したがって、潜像担持体表面の移動速度の変動に起因した潜像形成位置のずれの発生を抑制して、良好な潜像形成が可能となっている。
【0022】
また、制御手段は、潜像担持体表面の移動速度と基準速度との差に応じて発光素子の発光タイミングを調整するように構成しても良い。このような構成では、潜像担持体表面の移動速度の基準速度からのずれに応じて、発光素子の発光タイミングが調整されるため、潜像形成位置のずれを効果的に抑制することが可能となり、良好な潜像形成が可能となる。
【0023】
また、基準速度は、潜像担持体表面の移動速度の平均値であっても良い。このような構成では、潜像担持体表面の移動速度の平均値からのずれに応じて、発光素子の発光タイミングが調整されるため、潜像形成位置のずれを効果的に抑制することが可能となり、良好な潜像形成が可能となる。
【0024】
また、潜像担持体は第2方向に直交もしくは略直交する回転軸を中心として回転する感光体ドラムであり、感光体ドラムの周面が潜像担持体表面として第2方向に移動する画像形成装置に対しては、本発明を適用することが特に好適である。なぜなら、このような感光体ドラムでは回転速度にムラが発生する場合があり、かかる回転速度のムラは、潜像担持体表面としての感光体ドラム周面の移動速度の変動の原因となるからである。したがって、かかる画像形成装置に対しては、本発明を適用して、潜像担持体表面の移動速度の変動に起因した潜像形成位置のずれの発生を抑制することが好適である。
【0025】
また、検出手段は、感光体ドラムの回転軸を中心に放射状に配した複数のスリットを有するエンコーダディスクと、スリットを検知する光学センサとを有し、光学センサの検知結果に基づいて感光体ドラム周面の移動速度を検出するように構成しても良い。このような構成では、感光体ドラム周面の移動速度の検出は、該感光体ドラムの回転軸を中心に放射状に配した複数のスリットに基づいて実行される。したがって、感光体ドラム周面の移動速度の検出を高精度に実行することができる。
【0026】
また、検出手段は、感光体ドラムの回転軸を挟むようにして配された2個の光学センサを有するように構成しても良い。このような構成では、2個の光学センサが設けられている。そして、これら2個の光学センサは、感光体ドラムの回転軸を挟むようにして配されている。したがって、後述するように、2個の光学センサが回転軸に対して偏って配置された場合であっても、このような偏りの影響を抑制して良好に移動速度を検出することが可能となっている。
【0027】
また、制御手段は、潜像担持体表面の移動に応じたタイミングで発光素子を発光させることで、潜像担持体表面の画素に対してスポットを形成し、発光素子グループ列により形成される複数のスポットグループの第2方向におけるピッチは、第2方向における画素ピッチの整数倍であるように構成しても良い。なぜなら、後述するとおり、このように構成することで、発光素子の発光タイミング制御を簡素化することが可能となるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
A.用語の説明
本発明の実施形態を説明する前に、本明細書で用いる用語について説明する。
【0029】
図1および図2は、本明細書で用いる用語の説明図である。ここで、これらの図を用いて本明細書において用いる用語について整理する。本明細書では、感光体ドラム21の表面(像面IP)の搬送方向を副走査方向SDと定義し、該副走査方向SDに直交あるいは略直交する方向を主走査方向MDと定義している。また、ラインヘッド29は、その長手方向LGDが主走査方向MDに対応し、その幅方向LTDが副走査方向SDに対応するように、感光体ドラム21の表面(像面IP)に対して配置されている。
【0030】
レンズアレイ299が有する複数のレンズLSに一対一の対応関係でヘッド基板293に配置された、複数(図1および図2においては8個)の発光素子2951の集合を、発光素子グループ295と定義する。つまり、ヘッド基板293において、複数の発光素子2951からなる発光素子グループ295は、複数のレンズLSのそれぞれに対して配置されている。また、発光素子グループ295からの光ビームを該発光素子グループ295に対応するレンズLSにより像面IPに向けて結像することで、像面IPに形成される複数のスポットSPの集合を、スポットグループSGと定義する。つまり、複数の発光素子グループ295に一対一で対応して、複数のスポットグループSGを形成することができる。また、各スポットグループSGにおいて、主走査方向MDおよび副走査方向SDに最上流のスポットを、特に第1のスポットと定義する。そして、第1のスポットに対応する発光素子2951を、特に第1の発光素子と定義する。
【0031】
また、図2の「像面上」の欄に示すように、スポットグループ行SGR、スポットグループ列SGCを定義する。つまり、主走査方向MDに並ぶ複数のスポットグループSGをスポットグループ行SGRと定義する。そして、複数行のスポットグループ行SGRは、所定のスポットグループ行ピッチPsgrで副走査方向SDに並んで配置される。また、副走査方向SDにスポットグループ行ピッチPsgrで且つ主走査方向MDにスポットグループピッチPsgで並ぶ複数(同図においては3個)のスポットグループSGをスポットグループ列SGCと定義する。なお、スポットグループ行ピッチPsgrは、副走査方向SDに互いに隣接する2つのスポットグループ行SGRそれぞれの幾何重心の、副走査方向SDにおける距離である。また、スポットグループピッチPsgは、主走査方向MDに互いに隣接する2つのスポットグループSGそれぞれの幾何重心の、主走査方向MDにおける距離である。
【0032】
同図の「レンズアレイ」の欄に示すように、レンズ行LSR、レンズ列LSCを定義する。つまり、長手方向LGDに並ぶ複数のレンズLSをレンズ行LSRと定義する。そして、複数行のレンズ行LSRは、所定のレンズ行ピッチPlsrで幅方向LTDに並んで配置される。また、幅方向LTDにレンズ行ピッチPlsrで且つ長手方向LGDにレンズピッチPlsで並ぶ複数(同図においては3個)のレンズLSをレンズ列LSCと定義する。なお、レンズ行ピッチPlsrは、幅方向LTDに互いに隣接する2つのレンズ行LSRそれぞれの幾何重心の、幅方向LTDにおける距離である。また、レンズピッチPlsは、長手方向LGDに互いに隣接する2つのレンズLSそれぞれの幾何重心の、長手方向LGDにおける距離である。
【0033】
同図の「ヘッド基板」の欄に示すように、発光素子グループ行295R、発光素子グループ列295Cを定義する。つまり、長手方向LGDに並ぶ複数の発光素子グループ295を発光素子グループ行295Rと定義する。そして、複数行の発光素子グループ行295Rは、所定の発光素子グループ行ピッチPegrで幅方向LTDに並んで配置される。また、幅方向LTDに発光素子グループ行ピッチPegrで且つ長手方向LGDに発光素子グループピッチPegで並ぶ複数(同図においては3個)の発光素子グループ295を発光素子グループ列295Cと定義する。なお、発光素子グループ行ピッチPegrは、幅方向LTDに互いに隣接する2つの発光素子グループ行295Rそれぞれの幾何重心の、幅方向LTDにおける距離である。また、発光素子グループピッチPegは、長手方向LGDに互いに隣接する2つの発光素子グループ295それぞれの幾何重心の、長手方向LGDにおける距離である。
【0034】
同図の「発光素子グループ」の欄に示すように、発光素子行2951R、発光素子列2951Cを定義する。つまり、各発光素子グループ295において、長手方向LGDに並ぶ複数の発光素子2951を発光素子行2951Rと定義する。そして、複数行の発光素子行2951Rは、所定の発光素子行ピッチPelrで幅方向LTDに並んで配置される。また、幅方向LTDに発光素子行ピッチPelrで且つ長手方向LGDに発光素子ピッチPelで並ぶ複数(同図においては2個)の発光素子2951を発光素子列2951Cと定義する。なお、発光素子行ピッチPelrは、幅方向LTDに互いに隣接する2つの発光素子行2951Rそれぞれの幾何重心の、幅方向LTDにおける距離である。また、発光素子ピッチPelは、長手方向LGDに互いに隣接する2つの発光素子2951それぞれの幾何重心の、長手方向LGDにおける距離である。
【0035】
同図の「スポットグループ」の欄に示すように、スポット行SPR、スポット列SPCを定義する。つまり、各スポットグループSGにおいて、長手方向LGDに並ぶ複数のスポットSPをスポット行SPRと定義する。そして、複数行のスポット行SPRは、所定のスポット行ピッチPsprで幅方向LTDに並んで配置される。また、幅方向LTDにスポットピッチPsprで且つ長手方向LGDにスポットピッチPspで並ぶ複数(同図においては2個)のスポットをスポット列SPCと定義する。なお、スポット行ピッチPsprは、副走査方向SDに互いに隣接する2つのスポット行SPRそれぞれの幾何重心の、副走査方向SDにおける距離である。また、スポットピッチPspは、主走査方向MDに互いに隣接する2つのスポットSPそれぞれの幾何重心の、長手方向LGDにおける距離である。
【0036】
B.第1実施形態
図3は本発明を適用可能である画像形成装置の一例を示す図である。また、図4は図3の画像形成装置の電気的構成を示す図である。この装置は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。なお図3は、カラーモード実行時に対応する図面である。この画像形成装置では、ホストコンピューターなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリなどを有するメインコントローラMCに与えられると、このメインコントローラMCはエンジンコントローラECに制御信号などを与えるとともに画像形成指令に対応するビデオデータVDをヘッドコントローラHCに与える。また、このヘッドコントローラHCは、メインコントローラMCからのビデオデータVDとエンジンコントローラECからの垂直同期信号Vsyncおよびパラメータ値とに基づき各色のラインヘッド29を制御する。これによって、エンジン部EGが所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0037】
画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラMC、エンジンコントローラECおよびヘッドコントローラHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット7、転写ベルトユニット8および給紙ユニット11もハウジング本体3内に配設されている。また、図3においてハウジング本体3内右側には、2次転写ユニット12、定着ユニット13、シート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット11は、装置本体1に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット11および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0038】
画像形成ユニット7は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーションY(イエロー用)、M(マゼンダ用)、C(シアン用)、K(ブラック用)を備えている。また、各画像形成ステーションY,M,C,Kは、主走査方向MDに所定長さの表面(周面)を有する円筒形の感光体ドラム21を設けている。そして、各画像形成ステーションY,M,C,Kそれぞれは、対応する色のトナー像を、感光体ドラム21の表面に形成する。感光体ドラムは、軸方向が主走査方向MDに略平行となるように配置されている。また、各感光体ドラム21はそれぞれ専用の駆動モータに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより感光体ドラム21の表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに搬送されることとなる。また、感光体ドラム21の周囲には、回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作及びトナー現像動作が実行される。したがって、カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーションY,M,C,Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8が有する転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成するとともに、モノクロモード実行時は、画像形成ステーションKで形成されたトナー像のみを用いてモノクロ画像を形成する。なお、図3において、画像形成ユニット7の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号をつけて、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0039】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラを備えている。この帯電ローラは帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って感光体ドラム21に対して従動方向に周速で従動回転する。また、この帯電ローラは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面を帯電させる。
【0040】
ラインヘッド29は、その長手方向が主走査方向MDに対応するとともに、その幅方向が副走査方向SDに対応するように、感光体ドラム21に対して配置されており、ラインヘッド29の長手方向は主走査方向MDと略平行となっている。ラインヘッド29は、長手方向に並べて配置された複数の発光素子を備えるとともに、感光体ドラム21から離間配置されている。そして、これらの発光素子から、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に対して光が照射されて、該表面に静電潜像が形成される(露光工程)。
【0041】
現像部25は、その表面にトナーが担持する現像ローラ251を有する。そして、現像ローラ251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラ251に印加される現像バイアスによって、現像ローラ251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラ251から感光体ドラム21に移動してラインヘッド29により形成された静電潜像が顕在化される。
【0042】
このように上記現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、後に詳述する転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する1次転写位置TR1において転写ベルト81に1次転写される。
【0043】
また、この実施形態では、感光体ドラム21の回転方向D21の1次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナ27が設けられている。この感光体クリーナ27は、感光体ドラムの表面に当接することで1次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0044】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラ82と、図3において駆動ローラ82の左側に配設される従動ローラ83(ブレード対向ローラ)と、これらのローラに張架され図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、感光体カートリッジ装着時において各画像形成ステーションY,M,C,Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の1次転写ローラ85Y,85M,85C,85Kを備えている。これらの1次転写ローラ85は、それぞれ1次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。そして、後に詳述するように、カラーモード実行時は、図3に示すように全ての1次転写ローラ85Y,85M,85C,85Kを画像形成ステーションY,M,C,K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーションY,M,C,Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に1次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで上記1次転写バイアス発生部から1次転写ローラ85に1次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する1次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写してカラー画像を形成する。
【0045】
一方、モノクロモード実行時は、4個の1次転写ローラ85のうち、カラー1次転写ローラ85Y,85M,85Cをそれぞれが対向する画像形成ステーションY,M,Cから離間させるとともにモノクロ1次転写ローラ85Kのみを画像形成ステーションKに当接させることで、モノクロ画像形成ステーションKのみを転写ベルト81に当接させる。その結果、モノクロ1次転写ローラ85Kと画像形成ステーションKとの間にのみ1次転写位置TR1が形成される。そして、適当なタイミングで前記1次転写バイアス発生部からモノクロ1次転写ローラ85Kに1次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、1次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写してモノクロ画像を形成する。
【0046】
さらに、転写ベルトユニット8は、モノクロ1次転写ローラ85Kの下流側で且つ駆動ローラ82の上流側に配設された下流ガイドローラ86を備える。また、この下流ガイドローラ86は、モノクロ1次転写ローラ85Kが画像形成ステーションKの感光体ドラム21に当接して形成する1次転写位置TR1での1次転写ローラ85Kと感光体ドラム21との共通内接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0047】
駆動ローラ82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、2次転写ローラ121のバックアップローラを兼ねている。駆動ローラ82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する2次転写バイアス発生部から2次転写ローラ121を介して供給される2次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラ82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、駆動ローラ82と2次転写ローラ121との当接部分(2次転写位置TR2)へのシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達しにくく、画質の劣化を防止することができる。
【0048】
給紙ユニット11は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラ79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラ79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラ対80において給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って2次転写位置TR2に給紙される。
【0049】
2次転写ローラ121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、2次転写ローラ駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラ131と、この加熱ローラ131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が2次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラ131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラ1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラ1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラ131の周面に押し付けることで、加熱ローラ131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0050】
また、この装置では、ブレード対向ローラ83に対向してクリーナ部71が配設されている。クリーナ部71は、クリーナブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラ83に当接することで、2次転写後に転写ベルトに残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。また、クリーナブレード711及び廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラ83と一体的に構成されている。したがって、次に説明するようにブレード対向ローラ83が移動する場合は、ブレード対向ローラ83と一緒にクリーナブレード711及び廃トナーボックス713も移動することとなる。
【0051】
図5は、第1実施形態におけるラインヘッドの概略を示す斜視図である。また、図6は、図5に示したラインヘッドの幅方向断面図である。上述の通り、その長手方向LGDが主走査方向MDに対応するとともに、その幅方向LTDが副走査方向SDに対応するように、ラインヘッド29は感光体ドラム21に対して配置されている。なお、長手方向LGDと幅方向LTDは、互いに略直交する。ラインヘッド29は、ケース291を備えるとともに、かかるケース291の長手方向LGDの両端には、位置決めピン2911とねじ挿入孔2912が設けられている。そして、かかる位置決めピン2911を、感光体ドラム21を覆うとともに感光体ドラム21に対して位置決めされた感光体カバー(図示省略)に穿設された位置決め孔(図示省略)に嵌め込むことで、ラインヘッド29が感光体ドラム21に対して位置決めされる。そして更に、ねじ挿入孔2912を介して固定ねじを感光体カバーのねじ孔(図示省略)にねじ込んで固定することで、ラインヘッド29が感光体ドラム21に対して位置決め固定される。
【0052】
ケース291は、感光体ドラム21の表面に対向する位置にレンズアレイ299を保持するとともに、その内部に、該レンズアレイ299に近い順番で、遮光部材297及びヘッド基板293を備えている。ヘッド基板293は、光ビームを透過可能な材料(例えばガラス)により形成されている。また、ヘッド基板293の裏面(ヘッド基板293が有する2つの面のうちレンズアレイ299と逆側の面)には、ボトムエミッション型の有機EL(Electro-Luminescence)素子が発光素子2951として複数配置されている。これら複数の発光素子2951は、後述するように、発光素子グループ295毎にグループ化して配置されている。そして、各発光素子グループ295から射出された光ビームは、ヘッド基板293の裏面から表面へと透過して、遮光部材297へ向う。
【0053】
遮光部材297には、複数の発光素子グループ295に対して一対一で複数の導光孔2971が穿設されている。また、かかる導光孔2971は、ヘッド基板293の法線と平行な線を中心軸として遮光部材297を貫通する略円柱状の孔として穿設されている。したがって、発光素子グループ295から射出された光ビームのうち、該発光素子グループ295に対応する導光孔2971以外に向う光ビームは、遮光部材297により遮光される。こうして、1つの発光素子グループ295から出た光は全て同一の導光孔2971を介してレンズアレイ299へ向うとともに、異なる発光素子グループ295から出た光ビーム同士の干渉が遮光部材297により防止される。そして、遮光部材297に穿設された導光孔2971を通過した光ビームは、レンズアレイ299により、感光体ドラム21の表面にスポットとして結像されることとなる。
【0054】
図6に示すように、固定器具2914によって、裏蓋2913がヘッド基板293を介してケース291に押圧されている。つまり、固定器具2914は、裏蓋2913をケース291側に押圧する弾性力を有するとともに、かかる弾性力により裏蓋を押圧することで、ケース291の内部を光密に(つまり、ケース291内部から光が漏れないように、及び、ケース291の外部から光が侵入しないように)密閉している。なお、固定器具2914は、ケース291の長手方向に複数箇所設けられている。また、発光素子グループ295は、封止部材294により覆われている。
【0055】
図7は、レンズアレイの概略を示す斜視図である。また、図8は、レンズアレイの長手方向LGDの断面図である。レンズアレイ299は、レンズ基板2991有する。そして、該レンズ基板2991の裏面2991BにレンズLSの第1面LSFfが形成されるとともに、レンズ基板2991の表面2991AにレンズLSの第2面LSFsが形成される。そして、互いに対向するレンズの第1面LSFfと第2面LSFsと、これら2面に挟まれるレンズ基板2991とで、1つのレンズLSとして機能する。なお、レンズLSの第1面LSFfおよび第2面LSFsは、例えば樹脂により形成することができる。
【0056】
レンズアレイ299は、複数のレンズLSをそれぞれの光軸OAが互いに略平行となるように配置している。また、レンズアレイ299は、レンズLSの光軸OAがヘッド基板293の裏面(発光素子2951が配置されている面)に略直交するように配置されている。レンズLSは発光素子グループ295に対して一対一で設けられており、後述する発光素子グループ295の配置に対応して、複数のレンズLSが2次元的に配置されている。つまり、幅方向LTDにおいて互いに異なる位置に3個のレンズLSを配置したレンズ列LSCが、長手方向LGDに沿って複数並んでいる。
【0057】
図9はヘッド基板の裏面の構成を示す図であり、ヘッド基板の表面から裏面を見た場合に相当する。図10は各発光素子グループにおける発光素子の配置を示す図である。なお、図9において、レンズLSが二点鎖線で示されているが、これはレンズLSに対して発光素子グループ295が一対一で設けられていることを示すためのものであり、レンズLSがヘッド基板裏面に配置されていることを示すものではない。図9に示すように、幅方向LTDにおいて互いに異なる位置に3個の発光素子グループ295を配置した発光素子グループ列295Cが、長手方向LGDに沿って複数並んでいる。換言すれば、長手方向LGDに沿って複数の発光素子グループ295を並べた発光素子グループ行295Rが、幅方向LTDに3行並んでいる。このとき、長手方向LGDにおいて各発光素子グループ295が互いに重ならないように、各発光素子グループ行295Rは長手方向LGDに相互にずれている。ここで、3行の発光素子グループ行に対して、幅方向LGDの上流側から順番に符号295R_A,295R_B,295R_Cを付した。
【0058】
各発光素子グループ295において、長手方向LGDに沿って4個の発光素子2951を並べた発光素子行2951Rが、幅方向LTDに2行並んでいる(図10)。このとき、長手方向LGDにおいて各発光素子2951が互いに重ならないように、各発光素子行2951Rは長手方向LGDに相互にずれている。その結果、8個の発光素子2951が千鳥状に配置されている。また、図10に示すように、各発光素子グループ295は、対応するレンズLSの光軸OAに対して軸対称に配置さている。つまり、発光素子グループ295を構成する8個の発光素子2951は、光軸OAに対して対称に配置されている。したがって、光軸OAから比較的離れた発光素子2951からの光ビームも、収差の少ない状態で結像することが可能となっている。
【0059】
各発光素子グループ行295R_A,295R_B,295R_Cに対応して、駆動回路DC_A(各発光素子グループ行295R_A用),DC_B(各発光素子グループ行295R_B用),DC_C(各発光素子グループ行295R_C用)が設けられており、これらの駆動回路DC_A等は例えばTFT(Thin Film Transistor)により構成される(図9)。各駆動回路DC_A等は対応する発光素子グループ行295R_A等の幅方向LTDの一方側に配置されて、該発光素子グループ行295R_A等の発光素子2951と配線WLにより接続されている。駆動回路DC_A等が各発光素子2951に駆動信号を与えると、各発光素子2951は互いに等しい波長の光ビームを射出する。この発光素子2951の発光面はいわゆる完全拡散面光源であり、発光面から射出される光ビームはランバートの余弦則に従う。
【0060】
この駆動回路DCの駆動動作はビデオデータVDに基づいて制御される。つまり、メインコントローラMCは、ヘッドコントローラHCから垂直リクエスト信号VREQを受け取ると、1ページ分のビデオデータVDを生成する(図4)。また、メインコントローラMCが水平リクエスト信号HREQをヘッドコントローラHCから受け取る度に、ビデオデータVDは1ライン分ずつヘッドコントローラHCに送信される。そして、ヘッドコントローラHCは、受信したビデオデータVDに基づいて駆動回路DCを制御する。次にこれらの制御動作を実現する具体的構成について説明する。
【0061】
なお、第1実施形態では、上記した各信号、すなわちヘッドコントローラHCからメインコントローラMCへ送られるリクエスト信号VREQ、HREQおよびメインコントローラMCからヘッドコントローラHCに送られるビデオデータVDが、YMCK各色に対応して4組存在する。以下では、必要に応じて各信号にハイフンおよび色を表す符号を付すことで色の区別をする。例えば、イエロー用の垂直リクエスト信号、水平リクエスト信号およびビデオデータはそれぞれVREQ−Y、HREQ−YおよびVD−Yと表す。
【0062】
図11はメインコントローラの構成を示すブロック図である。メインコントローラMCは、外部装置から与えられる画像形成指令に含まれる画像データに必要な信号処理を行う画像処理部51と、メイン側通信モジュール52とを備えている。画像処理部51には、RGB画像データを各トナー色に対応したCMYK画像データに展開する色変換処理ブロック511が設けられている。さらに、画像処理部51には、画像処理ブロック512Y(イエロー用),512M(マゼンタ用),512C(シアン用),512K(ブラック用)が各トナー色に対応して設けられており、画像データに対して次のような信号処理が実行される。つまり、画像処理ブロック512Y等では、画像データがラインヘッド29の解像度に応じてビットマップ展開されるとともに、ビットマップ展開後のデータに対してはスクリーン処理やガンマ補正などが実行されて、ビデオデータVD−Y等が生成される。こうして、画像データは画素を最小単位とする情報に変換される。ここで、画素はラインヘッド29が形成する画像を構成する最小単位である。この一連の信号処理は垂直リクエスト信号VREQ−Yの入力毎に1ページ分の画像について実行され、生成された1ラインごとのビデオデータVD−Y等が順次メイン通信モジュール52に出力される。
【0063】
メイン側通信モジュール52では、画像処理部51から出力される4色のビデオデータVD−Y、VD−M、VD−C、VD−Kが時分割多重化されるとともに、多重化後のビデオデータVDが差動出力端子TX+,TX−を介してヘッドコントローラHCにシリアル送信される。一方、差動入力端子RX+,RX−を介してヘッドコントローラHCから時分割多重化された垂直リクエスト信号VREQ−Y,VREQ−M,VREQ−C,VREQ−Kおよび水平リクエスト信号HREQ−Y,HREQ−M,HREQ−C,HREQ−Kが入力される。これらのリクエスト信号VREQ,HREQはパラレル展開されるとともに、各色の垂直リクエスト信号VREQ(VREQ−Y等)は対応する色の画像処理ブロック512(512Y等)に入力される。
【0064】
図12はヘッドコントローラの構成を示すブロック図である。ヘッドコントローラHCは、ヘッド側通信モジュール53とヘッド制御モジュール54とを備えている。ヘッド側通信モジュール53では、ヘッド制御モジュール54から出力される4色の各リクエスト信号、すなわち垂直リクエスト信号VREQ−Y,VREQ−M,VREQ−C,VREQ−Kおよび水平リクエスト信号HREQ−Y,HREQ−M,HREQ−C,HREQ−Kが時分割多重化される。この時分割多重化されたリクエスト信号は差動出力端子TX+,TX−を介してメインコントローラMCにシリアル送信される。一方、差動入力端子RX+,RX−を介してメインコントローラMCから時分割多重化されたビデオデータVD−Y、VD−M、VD−C、VD−Kが入力される。これらのビデオデータVD−Y等はパラレル展開されて、対応する色のヘッド制御ブロック541Y等に入力される。
【0065】
ヘッド制御モジュール54では、4組のヘッド制御ブロック541Y(イエロー用),514M(マゼンタ用),514C(シアン用),514K(ブラック用)が各色に対応して設けられている。ヘッド制御ブロック541Y等は、ビデオデータVD−Y等を要求すべく各リクエスト信号VREQ−Y,HREQ−Y等を出力する一方、受け取ったビデオデータVD−Y等に基づいて対応する色のラインヘッド29の露光動作を制御する。
【0066】
図13は第1実施形態でのヘッド制御ブロック等の構成を示すブロック図である。ここではイエロー用のYヘッド制御ブロック541Yについて説明するが、他の各ブロック541M、541C、541Kもその構造は同じである。Yヘッド制御ブロック541Yには、エンジンコントローラECから与えられる同期信号Vsyncに基づきリクエスト信号VREQ−Y,HREQ−Yを生成するリクエスト信号生成部542が設けられている。リクエスト信号生成部542は、同期信号Vsyncを受信すると内部タイマのカウントを開始し、所定の待機時間が経過するとページの先頭を示す垂直リクエスト信号VREQ−Yを出力する。垂直リクエスト信号VREQ−Yの出力に続いて、リクエスト信号生成部542は、1ページの画像を構成するライン数に相当する数の水平リクエスト信号HREQ−Yを所定の間隔で繰り返し出力する。これらのリクエスト信号VREQ−Y、HREQ−Yはヘッド側通信モジュール53に送られ、他の色のリクエスト信号とともに時分割多重化されてメインコントローラMCに送信される。
【0067】
水平リクエスト信号HREQ−Yはさらに分割HREQ信号生成部543にも入力されており、分割HREQ信号生成部543は、入力されたリクエスト信号HREQ−Yを例えば16倍に逓倍して分割HREQ信号を生成する。この分割HREQ信号は発光順序制御部544に入力されており、発光順序制御部544は分割HREQ信号に基づいて、ビデオデータVD−Yを並び替える。つまり、後述するように、各発光素子グループ行295Rは、副走査スポットグループピッチPsgsだけ副走査方向SDに互いにずれた位置に、スポットグループSGを形成する(図14、図15等)。したがって、1ライン分のスポット潜像を主走査方向MDに並べて形成するためには、このようなスポットグループSGの形成位置の違いを考慮して、ビデオデータVD−Yを各駆動回路DC_A等に送信する必要がある。そこで、発光順序制御部544では、ビデオデータVD−Yは各発光素子グループ行295R_A,295R_B,295R_Cに対応したビデオデータVD−Y_A,VD−Y_B,VD−Y_Cに区別されるとともに、各発光素子グループ行295R_A,295R_B,295R_CのスポットグループSGの形成位置の違いに対応して、各ビデオデータVD−Y_A,VD−Y_B,VD−Y_Cが並び替えられる。このようにして、ページの先頭から1ラインずつ受信したビデオデータVD−Yが、駆動回路DC_A等に送信する順番に並び替えられる。なお、スポット潜像はスポットSPにより感光体ドラム表面に形成される潜像である。
【0068】
出力バッファ545は、ビデオデータVD−Y_A,VD−Y_B,VD−Y_Cをデータ転送線を介して各駆動回路DC_A,DC_B,DC_Cに供給する。この出力バッファ545は例えばシフトレジスタにより構成されている。そして、駆動回路DC_A等は、出力バッファ545から供給されたビデオデータVD−Y_A等に基づいて発光素子2951を駆動発光する。このとき、駆動回路DC_A等の駆動発光は、次に説明する発光タイミング信号生成部546から供給される発光タイミングTuに同期して行われる。
【0069】
分割HREQ信号は発光タイミング信号生成部546にも入力されており、発光タイミング信号生成部546はこの分割HREQ信号に基づいて発光タイミングTuを生成する。発光タイミング信号生成部546は各駆動回路DC_A等と発光タイミング制御線LTuを介して接続されており、発光タイミング制御線LTuのそれぞれは駆動回路間で共通化されている。発光タイミング信号生成部546は発光タイミング制御線LTuを介して各駆動回路DC_A等に発光タイミングTuを与える。そして、駆動回路DC_A等は、発光タイミングTuにおいて、予め供給されたビデオデータVD−Y_A等に基づいて対応する発光素子グループ行295R_A等の発光素子2951を駆動発光する。こうして各発光タイミングTuで発光素子2951の駆動発光が制御されることで、感光体ドラム表面の画素PXに対して各スポットSPを形成することが可能となる。そこで、かかるスポット形成動作について以下に説明する。
【0070】
図14はスポット形成動作を説明するための斜視図であり、図15は第1実施形態での発光タイミングTuにおいて感光体ドラム表面に形成されるスポットグループを示す図である。なお、図14においてレンズアレイ299の記載は省略されている。ここでは、まずスポットグループSGと画素PXとの関係について説明した後に、発光タイミングTuにおけるスポット形成について説明する。
【0071】
図14に示すように、各発光素子グループ295は、主走査方向MDにおいて互いに異なる露光領域ERにスポットグループSGを形成可能である。ここで、スポットグループSGは、発光素子グループ295の各発光素子2951が同時発光して形成される複数のスポットSPの集合である。第1実施形態では、主走査方向MDに連続する露光領域ERにスポットグループSGを形成可能である3個の発光素子グループ295は、幅方向LTDに相互にずらして配置されている。つまり、例えば、主走査方向MDに連続する露光領域ER_1,ER_2,ER3にスポットグループSG_1,SG2,SG3を形成可能である3個の発光素子グループ295_1,295_2,295_3は、幅方向LTDに相互にずらして配置されている。これら3個の発光素子グループ295は発光素子グループ列295Cを構成し、複数の発光素子グループ列295Cが長手方向LGDに沿って並ぶ。その結果、図9の説明の際にも述べたが、3行の発光素子グループ行295R_A,295R_B,295R_Cが幅方向LTDに並ぶとともに、各発光素子グループ行295R_A等は、副走査方向SDにおいて互いに異なる位置にスポットグループSGを形成する。
【0072】
図15の破線に示すように、感光体ドラム21の表面には、複数の画素PXが仮想的に設けられており、主走査方向MDに1ライン分の画素PXを並べたものが、副走査方向SDに複数ライン並んでいる。主走査方向MDにおける隣接画素間のピッチは主走査画素ピッチRmdであり、副走査方向SDにおける隣接画素間のピッチは副走査画素ピッチRsdである。これらの図では、主走査解像度および副走査解像度は何れも600dpi(dot per inch)であり、主走査画素ピッチRmdと副走査画素ピッチRsdは互いに等しい。ここで、解像度は画素の密度であり、1インチ辺りの画素数を表す。
【0073】
ところで、感光体ドラム表面における画素ピッチは、例えば用紙に形成された画像の画素ピッチから求めることができる。但し、副走査方向SDにおいて感光体ドラム表面の移動速度と用紙の搬送速度とは僅かに異なる場合があり、この場合、副走査画素ピッチは感光体ドラム表面と用紙との間で異なる。したがって、用紙に形成された画像から感光体ドラム表面での副走査画素ピッチを求める場合は、感光体ドラム表面の移動速度と用紙の搬送速度との速度比を、用紙上の画像から求まる副走査画素ピッチに乗じればよい。なお、この速度比としては、例えばプリンタ等の画像形成装置の仕様に記載の値等を用いることができる。
【0074】
図14、図15に示すとおり、各スポットグループSGでは、2個のスポット行SPRa,SPRbが副走査方向SDにスポット行ピッチPsprで並んでいる。第1実施形態では、このスポット行ピッチPsprは副走査画素ピッチRsdの整数倍(1倍)に設定されている(図15)。また、互いに異なる発光素子グループ行295Rにより形成されるスポットグループSGは、副走査方向SDにおいて互いに異なる位置にあり、これらのスポットグループSGの間の副走査方向SDにおけるピッチは、副走査スポットグループピッチPsgsとなる。この副走査スポットグループピッチPsgsは、副走査画素ピッチRsdの整数倍(160倍)に設定されている。なお、第1実施形態では、長手方向LTDにおける発光素子グループ間のピッチPegr、および長手方向LTDにおけるレンズLS間のピッチPlsrは、互いに等しいとともに、副走査画素ピッチの整数倍(160倍)となるように、ラインヘッド29は構成されている。つまり、このようにラインヘッド29を構成することで、副走査スポットグループピッチPsgsを副走査画素ピッチRsdの整数倍に簡便に設定することができる。
【0075】
このように、第1実施形態のラインヘッドでは、副走査スポットグループピッチPsgsが副走査画素ピッチRsdの整数倍に設定されているため、発光タイミングTuにおいて同時に全てのスポットSPを画素PXに対して形成することが可能である。そこで、第1実施形態では、全ての発光素子グループ295の間で、発光タイミングTuが共通化されている。したがって、各スポットSPが画素PXに対応する位置に来るタイミングTuで、各スポットSPを形成する発光素子2951の発光が切り替わる(図15)。ここで、発光の切換とは、非発光から発光への切換、および発光から非発光への切換を意味する。第1実施形態では、発光素子2951の発光がこのような発光タイミングTuで切換えられることで、各画素PXに対してスポットSPが形成されて、スポット潜像を各画素PXに形成することが可能となっている。
【0076】
図16はスポット潜像形成動作の一例を示す図である。同図は、1つの発光素子グループ295による潜像形成の様子を表している。同図の「1回目の発光タイミングTu」の欄に示すように、1回目の発光タイミングTuで発光素子2951が駆動発光されて、スポット行SPRa,SPRbの各スポットSPが形成されると、各画素PXに対してスポット潜像Lspa,Lspbが形成される。ここで、スポット潜像Lspaはスポット行SPRaにより形成される潜像であり、スポット潜像Lspbはスポット行SPRbにより形成される潜像である。次に副走査画素ピッチRsdに相当する距離だけ感光体ドラム21の表面が移動した2回目の発光タイミングTuで、発光素子2951が駆動発光されて、スポット行SPRa,SPRbの各スポットSPが形成される。こうして、「2回目の発光タイミングTu」の欄に示すように、1回目の発光タイミングTuで形成された各スポット潜像よりも副走査方向SDに1画素下流側に、新たなスポット潜像Lspa,Lspbが形成される。このように、所定の間隔で生成される発光タイミングTuに同期して各発光素子2951が発光することで、各画素PXに対してスポット潜像が形成される。また、同欄から分かるように、この潜像形成動作が実行されることで、スポット潜像Lspa,Lspbからなるライン潜像LIが形成される。このライン潜像LIは、副走査方向SDに1画素の幅を有するとともに、主走査方向MDに8画素の長さを有している。
【0077】
ところで、上述の通り、本実施形態の画像形成装置では、副走査方向SDに感光体ドラム21の表面が移動する。そして、この感光体ドラム表面の移動に応じたタイミングで、各発光素子グループ行295R_A,295R_B,295R_Cが副走査方向SDにおいて互いに異なる位置を露光して、潜像が形成される。しかしながら、この感光体ドラム表面の速度は装置内部の環境変化等の理由により変動する場合があり、その結果、潜像が良好に形成されない場合があった。
【0078】
図17は、本実施形態の画像形成装置で発生しうる潜像形成不良の一例を示す図である。同図の「ヘッド基板293」の欄では、ヘッド基板293に配置された発光素子グループ295が示されている。また、同図の「感光体ドラム21の表面」の欄は、感光体ドラム表面の移動速度に変動があった場合において、形成される潜像の様子が示されている。同図の例に示す潜像形成動作においては、まず、幅方向LTDに最上流の発光素子グループ行295R_Aにより、複数のライン潜像LI_Aが形成される。次いで、幅方向LTDにおいて発光素子グループ行295R_Aの下流側に位置する発光素子グループ行295R_Bにより、複数のライン潜像LI_Bが形成される。さらに、幅方向LTDにおいて発光素子グループ行295R_Cの下流側に位置する発光素子グループ行295R_Cにより、複数のライン潜像LI_Cが形成される。ところで、同図の例では、副走査方向SDにおいて、各ライン潜像LI_A,LI_B,LI_Cの形成位置がずれている(「感光体ドラム21の表面」の欄)。かかる形成位置ずれは、ライン潜像LI_Aを形成してからライン潜像LI_Bを形成するまでの間、あるいは、ライン潜像LI_Bを形成してからライン潜像LI_Cを形成するまでの間に、感光体ドラム表面の移動速度が変動したことにより発生する。そこで、第1実施形態では、かかる潜像形成位置のずれを抑制すべく、感光体ドラム表面の移動速度を検出するエンコーダが設けられている。
【0079】
図18はエンコーダの構成を示す斜視図である。また、図19はエンコーダの構成を示す正面図であり、感光体ドラム21の回転軸AR21の長さ方向から見た場合に相当する。なお、この回転軸AR21は、副走査方向SDに直交もしくは略直交する方向に延びており、主走査方向MDと平行もしくは略平行となる。上述したとおり、感光体ドラム21の表面SF21に対してラインヘッド29が対向配置されており、ラインヘッド29の各発光素子グループ行295Rは副走査方向SDにおいて互いに異なる位置を露光する。なお、図19では、各発光素子グループ行295Rの露光位置は、位置PS_A,PS_B,PS_Cで表されており、位置PS_A,PS_B,PS_Cはそれぞれ、発光素子グループ行295R_A,295R_B,295R_Cにより露光される。
【0080】
エンコーダECDは、略円盤状のエンコーダディスクEDと、透過型のフォトセンサSCとを有している。エンコーダディスクEDの中心部は感光体ドラム21の回転軸AR21に取り付けられており、感光体ドラム21の回転に伴ってエンコーダディスクEDも回転する。また、エンコーダディスクEDには、回転軸AXを中心として放射状に複数のスリットSLが設けられている。そして、このスリットSLがフォトセンサSCにより検知される。つまり、フォトセンサSCは、発光部SCeと受光部SCrとを有しており、発光部SCeから受光部SCrに向けて光が射出される。このフォトセンサSCは、発光素子SCeと受光部SCrとでエンコーダディスクEDを挟むようにして、配置されている。したがって、発光部SCeから射出された光のうちスリットSLを通過した光が、受光部SCrに入射する。一方、入射光を検出した受光部SCrは、エンコーダ信号Sencを出力する。したがって、このエンコーダ信号Sencの間隔を測定することで、感光体ドラム表面SF21の移動速度を検出することができる。受光部SCrが出力したエンコーダ信号Sencは、エンジンコントローラECを介して、ヘッドコントローラHCへと供給される(図13)。そして、ヘッドコントローラHCの発光タイミング信号生成部546では、このエンコーダ信号Sencに基づいて発光素子2951の発光タイミングTuが調整される。
【0081】
図20は、第1実施形態においてヘッドコントローラで実行される発光タイミングの調整動作を示す図である。同図においては、エンコーダ信号Sencおよび発光タイミングTuのそれぞれはローレベル(Low Level)のパルスとして表されている。第1実施形態では、感光体ドラム表面SF21の移動速度と理想速度(基準速度)との差に基づいて、発光タイミングが調整される。ここで、理想速度は、速度変動が無い場合の感光体ドラム表面SF21の移動速度である。具体的には、感光体ドラム表面SF21が理想速度で移動している場合におけるエンコーダ信号Sencの間隔である基準信号間隔Ts(ref)と、実際に測定されるエンコーダ信号Sencの信号間隔Ts(n)との差に基づいて、発光タイミングTuは調整される。同図においては、第1エンコーダ信号Senc(1)と第2エンコーダ信号Senc(2)との間の信号間隔Ts(1)は、基準信号間隔Ts(ref)に等しい。したがって、第1エンコーダ信号Senc(1)と第2エンコーダ信号Senc(2)との間においては、発光タイミングTuの間隔(発光間隔Tt(1))は、基準発光間隔Tt(ref)に設定される。次に、第2エンコーダ信号Senc(2)と第3エンコーダ信号Senc(3)との信号間隔Ts(2)が短かった場合は、感光体ドラム表面速度が速い方にずれたと判断されて、発光間隔Tt(2)は短く設定される。具体的には、次式
Tt(2)=(Ts(2)/Ts(ref))×Tt(ref)
に基づいて、発光間隔Tt(2)は設定される。つまり、一般化すると、第nエンコーダ信号Senc(n)と第n+1エンコーダ信号Senc(n+1)との間隔Ts(n)に対して、発光間隔Tt(n+1)は、次式
Tt(n+1)=(Ts(n)/Ts(ref))×Tt(ref)
に基づいて設定される。そして、発光タイミングTuの間隔が発光間隔Tt(n+1)となるように、発光タイミングTuは調整される。
【0082】
このように第1実施形態では、エンコーダECDにより感光体ドラム21の表面SF21(周面)の移動速度が検出されるとともに、該検出結果に基づいて発光素子2951の発光タイミングTuが調整される。したがって、感光体ドラム表面SF21の移動速度の変動に起因した潜像形成位置のずれの発生が抑制されて、良好な潜像形成が可能となっている。
【0083】
また、第1実施形態では、ヘッドコントローラHC(制御手段)は、感光体ドラム表面SF21の移動速度と理想速度(基準速度)との差に応じて発光素子2951の発光タイミングTuを調整している。したがって、感光体ドラム表面SF21の移動速度の理想速度からのずれに応じて、発光素子2951の発光タイミングTuが調整されるため、潜像形成位置のずれを効果的に抑制することが可能となり、良好な潜像形成が可能となっている。
【0084】
また、第1実施形態にかかる画像形成装置1では、潜像担持体として、回転軸AR21を中心として回転する感光体ドラム21が使用されているが、このような画像形成装置1に対しては本発明を適用することが特に好適である。なぜなら、このような感光体ドラム21では回転軸AR21を中心とする回転速度にムラが発生する場合があり、かかる回転速度のムラは、感光体ドラム表面SF21(周面)の移動速度の変動の原因となるからである。したがって、かかる画像形成装置1に対しては、本発明を適用して、感光体ドラム表面SF21の移動速度の変動に起因した潜像形成位置のずれの発生を抑制することが好適である。
【0085】
また、第1実施形態では、感光体ドラム21の回転軸AR21を中心に放射状に配した複数のスリットSLを設けたエンコーダディスクEDと、スリットSLを検知するフォトセンサSCとを有するエンコーダECDにより、感光体ドラム表面SF21の移動速度が検出される。つまり、感光体ドラム表面SF21の移動速度の検出は、該感光体ドラム21の回転軸AR21を中心に放射状に配した複数のスリットSLに基づいて実行される。したがって、感光体ドラム表面SF21の移動速度の検出を高精度に実行することが可能となっている。
【0086】
また、第1実施形態では、副走査スポットグループピッチPsgsが副走査画素ピッチRsdの整数倍に設定されているため、各発光素子グループ295の各発光素子2951の発光を、共通の発光タイミングTuにより制御することが可能となっている。よって、発光素子2951の発光タイミング制御の簡素化が図られており、第1実施形態の画像形成装置1は好適である。
【0087】
C.第2実施形態
上記第1実施形態では、副走査スポットグループピッチPsgsが副走査画素ピッチRsdの整数倍に設定されており、各発光素子グループ行295Rは同じ発光タイミングTuで発光していた。しかしながら、副走査スポットグループピッチPsgsを副走査画素ピッチRsdの非整数倍に設定することもできる。この場合は、各発光素子グループ行295R_A,295R_B,295R_Cに対して、発光タイミングTu_A,Tu_B,Tu_Cが与えられる。かかる場合について以下に説明する。
【0088】
図21は、第2実施形態でのヘッド制御ブロック等の構成を示すブロック図である。以下では、主として第1実施形態との差異点について説明し、共通部分については相当符号を付して説明を省略する。第2実施形態では同図に示すように、発光タイミング信号生成部546は、各発光素子グループ行295R_A,295R_B,295R_Cに対応した複数の発光タイミング、すなわち、発光タイミングTu_A(各発光素子グループ行295R_A用)、発光タイミングTu_B(各発光素子グループ行295R_B用)、および発光タイミングTu_C(各発光素子グループ行295R_C用)を生成する。各発光タイミングTu_A,Tu_B,Tu_Cは、対応する発光タイミング制御線LTu_A(各発光タイミングTu_A用),LTu_B(各発光タイミングTu_B用),LTu_C(各発光タイミングTu_C用)を介して、発光タイミング信号生成部546から各駆動回路DC_A,DC_B,DC_Cに供給される。そして、第2実施形態においても、ヘッドコントローラHCの発光タイミング信号生成部546では、潜像形成位置のずれの発生を抑制するために、感光体ドラム表面SF21の速度に基づいて各発光タイミングTu_A,Tu_B,Tu_Cが調整される。
【0089】
図22は、第2実施形態においてヘッドコントローラで実行される発光タイミングの調整動作を示す図である。同図においては、エンコーダ信号Sencおよび発光タイミングTuのそれぞれはローレベル(Low Level)のパルスとして表されている。第2実施形態にでは、発光タイミングTu_A,Tu_B,Tu_Cのそれぞれが、感光体ドラム表面SF21の移動速度と理想速度(基準速度)との差に基づいて調整される。なお、各発光タイミングTu_A,Tu_B,Tu_Cの調整動作は基本的には同様であるので、以下では、主として発光タイミングTu_Aの調整動作について説明することとし、他の発光タイミングTu_B,Tu_Cの調整動作の説明は相当符号を付して適宜説明を省略する。
【0090】
同図に示すように、感光体ドラム表面SF21が理想速度で移動している場合におけるエンコーダ信号Sencの間隔である基準信号間隔Ts(ref)と、実際に測定されるエンコーダ信号Sencの信号間隔Ts(n)との差に基づいて、発光タイミングTu_Aは調整される。同図においては、第1エンコーダ信号Senc(1)と第2エンコーダ信号Senc(2)との間の信号間隔Ts(1)は、基準信号間隔Ts(ref)に等しい。したがって、第1エンコーダ信号Senc(1)と第2エンコーダ信号Senc(2)との間においては、発光タイミングTu_Aの間隔(発光間隔Tt_A(1))は、基準発光間隔Tt_A(ref)に設定される。次に、第2エンコーダ信号Senc(2)と第3エンコーダ信号Senc(3)との信号間隔Ts(2)が短かった場合は、感光体ドラム表面速度が速い方にずれたと判断されて、発光間隔Tt_A(2)は短く設定される。具体的には、次式
Tt_A(2)=(Ts(2)/Ts(ref))×Tt_A(ref)
に基づいて、発光間隔Tt(2)は設定される。つまり、一般化すると、第nエンコーダ信号Senc(n)と第n+1エンコーダ信号Senc(n+1)との間隔Ts(n)に対して、発光間隔Tt_A(n+1)は、次式
Tt_A(n+1)=(Ts(n)/Ts(ref))×Tt_A(ref)
に基づいて設定される。そして、発光タイミングTu_Aの間隔が発光間隔Tt_A(n+1)となるように、発光タイミングTu_Aは調整される。
【0091】
また、他の発光タイミングTu_B,Tu_Cの発光間隔Tt_B(n+1),Tt_C(n+1)についても、同様の式
Tt_B(n+1)=(Ts(n)/Ts(ref))×Tt_B(ref)
Tt_C(n+1)=(Ts(n)/Ts(ref))×Tt_C(ref)
に基づいて設定される。
【0092】
このように第2実施形態では、エンコーダECDにより感光体ドラム21の表面SF21(周面)の移動速度が検出されるとともに、該検出結果に基づいて発光素子2951の発光タイミングTu_A,Tu_B,Tu_Cが調整される。したがって、感光体ドラム表面SF21の移動速度の変動に起因した潜像形成位置のずれの発生が抑制されて、良好な潜像形成が可能となっている。
【0093】
D.第3実施形態
ところで、上記第1・第2実施形態では、メインコントローラMCとヘッドコントローラHCとの間におけるビデオデータVDのやり取りを非同期シリアル通信で実行している。しかしながら、ビデオデータVDの通信態様はこれに限られない。
【0094】
図23は、第3実施形態における、メインコントローラ、ヘッドコントローラおよびラインヘッドの構成を示す図である。第3実施形態では、ヘッドコントローラHCは、ビデオデータVDを要求すべく、メインコントローラMCに水平同期信号Hsyncを出力する。一方、メインコントローラMCは、水平同期信号Hsyncに同期してビデオデータVDをヘッドコントローラHCに出力する。そして、ビデオデータVDを受け取ったヘッドコントローラHCにおいては、ラインヘッド29の発光素子グループ行295R_A,295R_B,295R_Cそれぞれに対応するビデオデータVD_A(発光素子グループ行295R_A用),ビデオデータVD_B(発光素子グループ行295R_B用),ビデオデータVD_C(発光素子グループ行295R_C用)が区別されるとともに、各ビデオデータVD_A等がラインヘッド29に向けて出力される。
【0095】
ラインヘッド29のヘッド基板293の裏面には、複数の発光素子グループ295が長手方向LGDに並ぶ発光素子グループ行295Rが、幅方向に3行(295R_A,295R_B,295R_C)並んで形成されている。また、ヘッド基板293の裏面には、各発光素子グループ行295R_A,295R_B,295R_Cに対して、3個の駆動回路DC_A(発光素子グループ行295R_A用),DC_B(発光素子グループ行295R_B用),DC_C(発光素子グループ行295R_C用)が設けられている。
【0096】
各発光素子グループ295では、長手方向LGDに8個の発光素子が並ぶ発光素子行2951Rが、幅方向LTDに2個並んでいる。また、各発光素子グループ行295R_A,295R_B,295R_Cの発光素子2951は、配線WLにより対応する駆動回路DC_A,DC_B,DC_Cに接続されている。したがって、各駆動回路DC_A,DC_B,DC_Cのそれぞれは、配線WLを介して対応する発光素子グループ行295R_A,295R_B,295R_Cを駆動可能である。こうして、駆動回路DC_A等からの駆動を受けた発光素子グループ295が発光して、感光体ドラム21の表面SF21にスポットグループSGが形成される。
【0097】
かかる発光素子グループ295の発光動作は、次のように制御される。まず、ヘッドコントローラHCから転送された各ビデオデータVD_A,VD_B,VD_Cは、インターフェイス回路I/Fに一時的に保持される。インターフェイス回路I/Fは、ヘッドコントローラHCから水平同期信号Hsyncを受け取ると、各ビデオデータVD_A等を駆動回路DC_A等に出力する(図23)。そして、駆動回路VD_A等は、受け取ったビデオデータVD_A等に基づいて発光素子グループ295を駆動して、スポットグループSGが形成される。このように、各発光素子2951は、水平同期信号Hsyncに同期して発光する。
【0098】
また、第3実施形態では、第1実施形態と同様に、副走査スポットグループピッチPsgsが副走査画素ピッチRsdの整数倍に設定されており、各発光素子グループ行295Rが同じタイミングで発光することで、各画素PXにスポット潜像が形成可能である。したがって、発光素子グループ行295R_A,295R_B,295R_Cを、共通の水平同期信号Hsyncに同期させて発光させることができ、制御の簡素化が図られている。
【0099】
ところで、第3実施形態においても、感光体ドラム表面SF21の移動に応じたタイミングで、各発光素子グループ行295R_A,295R_B,295R_Cが副走査方向SDの互いに異なる位置を露光して、潜像が形成される。したがって、感光体ドラム表面SF21の速度変動に起因して、潜像が良好に形成されない場合があった。そこで、第3実施形態では、エンコーダECDにより感光体ドラム表面SF21の速度が検出されるとともに、該検出結果に基づいて水平同期信号Hsyncが調整される。
【0100】
図24は、第3実施形態においてヘッドコントローラで実行される水平同期信号の調整動作を示す図である。同図においては、エンコーダ信号Sencおよび水平同期信号Hsyncのそれぞれはローレベル(Low Level)のパルスとして表されている。第3実施形態では、感光体ドラム表面SF21の移動速度と理想速度(基準速度)との差に基づいて、水平同期信号が調整される。つまり、感光体ドラム表面SF21が理想速度で移動している場合におけるエンコーダ信号Sencの間隔である基準信号間隔Ts(ref)と、実際に測定されるエンコーダ信号Sencの信号間隔Ts(n)との差に基づいて、水平同期信号Hsyncは調整される。同図においては、第1エンコーダ信号Senc(1)と第2エンコーダ信号Senc(2)との間の信号間隔Ts(1)は、基準信号間隔Ts(ref)に等しい。したがって、第1エンコーダ信号Senc(1)と第2エンコーダ信号Senc(2)との間においては、水平同期信号Hsyncの間隔(同期間隔Th(1))は、基準同期間隔Th(ref)に設定される。次に、第2エンコーダ信号Senc(2)と第3エンコーダ信号Senc(3)との信号間隔Ts(2)が短かった場合は、感光体ドラム表面速度が速い方にずれたと判断されて、同期間隔Th(2)は短く設定される。具体的には、次式
Th(2)=(Ts(2)/Ts(ref))×Th(ref)
に基づいて、同期間隔Th(2)は設定される。つまり、一般化すると、第nエンコーダ信号Senc(n)と第n+1エンコーダ信号Senc(n+1)との間隔Ts(n)に対して、同期間隔Th(n+1)は、次式
Th(n+1)=(Ts(n)/Ts(ref))×Th(ref)
に基づいて設定される。そして、水平同期信号Hsyncの間隔が同期間隔Th(n+1)となるように、水平同期信号Hsyncは調整される。こうして第3実施形態では、水平同期信号Hsyncが調整されることで、発光素子2951の発光タイミングが調整されている。
【0101】
このように第3実施形態では、エンコーダECDにより感光体ドラム21の表面SF21(周面)の移動速度が検出されるとともに、該検出結果に基づいて発光素子2951の発光タイミングが調整される。したがって、感光体ドラム表面SF21の移動速度の変動に起因した潜像形成位置のずれの発生が抑制されて、良好な潜像形成が可能となっている。
【0102】
E.第4実施形態
ところで、上記第3実施形態では、副走査スポットグループピッチPsgsが副走査画素ピッチRsdの整数倍に設定されており、各発光素子グループ行295Rは同じ発光タイミングTuで発光していた。しかしながら、副走査スポットグループピッチPsgsを副走査画素ピッチRsdの非整数倍に設定することもできる。この場合は、各発光素子グループ行295R_A,295R_B,295R_Cに対して、水平同期信号Hsync_A,Hsync_B,Hsync_Cが与えられる。かかる場合について以下に説明する。
【0103】
図25は、第4実施形態でのメインコントローラ、ヘッドコントローラおよびラインヘッドの構成を示す図である。以下では、主として第3実施形態との差異点について説明し、共通部分については相当符号を付して説明を省略する。第4実施形態では、ヘッドコントローラHCは、各発光素子グループ行295R_A,295R_B,295R_Cに対応するビデオデータを要求すべく、3種類の水平同期信号Hsync_A(発光素子グループ行295R_A用),Hsync_B(発光素子グループ行295R_B用),Hsync_C(発光素子グループ行295R_C用)をメインコントローラMCを出力する。メインコントローラMCでは、水平同期信号Hsync_Aが受信されるとビデオデータVD_AがヘッドコントローラHCに出力され、水平同期信号Hsync_Bが受信されるとビデオデータVD_BがヘッドコントローラHCに出力され、水平同期信号Hsync_Cが受信されるとビデオデータVD_CがヘッドコントローラHCに出力される。ヘッドコントローラHCは、メインコントローラMCから受け取った各ビデオデータVD_A,VD_B,VD_Cをラインヘッド29に出力する。
【0104】
ラインヘッド29では、ヘッドコントローラHCから転送された各ビデオデータVD_A,VD_B,VD_Cが、インターフェイス回路I/Fに一時的に保持される。インターフェイス回路I/Fには、先ほどの3種類の水平同期信号Hsync_A,Hsync_B,Hsync_Cが入力される。そして、インターフェイス回路I/Fでは、水平同期信号Hsync_Aが受信されるとビデオデータVD_Aが駆動回路DC_Aに出力され、水平同期信号Hsync_Bが受信されるとビデオデータVD_Bが駆動回路DC_Bに出力され、水平同期信号Hsync_Cが受信されるとビデオデータVD_Cが駆動回路DC_Cに出力される(図25)。こうして、各発光素子グループ行295R_A等は、対応する水平同期信号Hsync_A等に同期して発光する。
【0105】
ところで、第4実施形態においても、感光体ドラム表面SF21の移動に応じたタイミングで、各発光素子グループ行295R_A,295R_B,295R_Cが副走査方向SDの互いに異なる位置を露光して、潜像が形成される。したがって、感光体ドラム表面SF21の速度変動に起因して、潜像が良好に形成されない場合があった。そこで、第4実施形態においても、エンコーダECDにより感光体ドラム表面SF21の速度が検出されるとともに、該検出結果に基づいて水平同期信号Hsyncが調整される。
【0106】
図26は、第4実施形態においてヘッドコントローラで実行される水平同期信号の調整動作を示す図である。同図においては、エンコーダ信号Sencおよび水平同期信号Hsync_A,Hsync_B,Hsync_Cのそれぞれはローレベル(Low Level)のパルスとして表されている。第4実施形態にでは、水平同期信号Hsync_A,Hsync_B,Hsync_Cのそれぞれが、感光体ドラム表面SF21の移動速度と理想速度(基準速度)との差に基づいて調整される。なお、水平同期信号Hsync_A,Hsync_B,Hsync_Cの調整動作は基本的には同様であるので、以下では、主として水平同期信号Hsync_Aの調整動作について説明することとし、他の水平同期信号Hsync_B,Hsync_Cの調整動作の説明は相当符号を付して適宜説明を省略する。
【0107】
同図に示すように、感光体ドラム表面SF21が理想速度で移動している場合におけるエンコーダ信号Sencの間隔である基準信号間隔Ts(ref)と、実際に測定されるエンコーダ信号Sencの信号間隔Ts(n)との差に基づいて、水平同期信号Hsync_Aは調整される。同図においては、第1エンコーダ信号Senc(1)と第2エンコーダ信号Senc(2)との間の信号間隔Ts(1)は、基準信号間隔Ts(ref)に等しい。したがって、第1エンコーダ信号Senc(1)と第2エンコーダ信号Senc(2)との間においては、水平同期信号Hsync_Aの間隔(同期間隔Th_A(1))は、基準同期間隔Th_A(ref)に設定される。次に、第2エンコーダ信号Senc(2)と第3エンコーダ信号Senc(3)との信号間隔Ts(2)が短かった場合は、感光体ドラム表面SF21速度が速い方にずれたと判断されて、同期間隔Th_A(2)は短く設定される。具体的には、次式
Th_A(2)=(Ts(2)/Ts(ref))×Th_A(ref)
に基づいて、同期間隔Th(2)は設定される。つまり、一般化すると、第nエンコーダ信号Senc(n)と第n+1エンコーダ信号Senc(n+1)との間隔Ts(n)に対して、同期間隔Th_A(n+1)は、次式
Th_A(n+1)=(Ts(n)/Ts(ref))×Th_A(ref)
に基づいて設定される。そして、水平同期信号Hsync_Aの間隔が同期間隔Th_A(n+1)となるように、水平同期信号Hsync_Aは調整される。
【0108】
また、他の水平同期信号Hsync_B,Hsync_Cの同期間隔Th_B(n+1),Th_C(n+1)についても、同様の式
Th_B(n+1)=(Ts(n)/Ts(ref))×Th_B(ref)
Th_C(n+1)=(Ts(n)/Ts(ref))×Th_C(ref)
に基づいて設定される。こうして第4実施形態では、水平同期信号Hsync_A,Hsync_B,Hsync_Cが調整されることで、発光素子2951の発光タイミングが調整されている。
【0109】
このように第4実施形態では、エンコーダECDにより感光体ドラム21の表面SF21(周面)の移動速度が検出されるとともに、該検出結果に基づいて発光素子2951の発光タイミングが調整される。したがって、感光体ドラム表面SF21の移動速度の変動に起因した潜像形成位置のずれの発生が抑制されて、良好な潜像形成が可能となっている。
【0110】
F. 第5実施形態
ところで、画像形成装置は、主走査方向MDに1ページ分の長さを有する1本のライン潜像を副走査方向SDに順次形成して、1ページ分の2次元潜像を形成することができる。そこで、第5実施形態では、この潜像形成動作について説明する。なお、以下では、潜像形成動作の理解を容易なものとするために、感光体ドラム21周面の所定位置(図27、図28、図29中の矢印FLで示す位置)に形成される1本のライン潜像に注目して説明を行なう。
【0111】
図27、図28および図29は潜像形成動作における発光素子の発光タイミング制御の説明図であり、発光素子により潜像が順次形成される様子を平面視した場合に相当する。同図において、点線で囲まれた白丸印は消灯している発光素子2951を表し、実線で囲まれた白丸印は点灯している発光素子2951を表し、ハッチングが施された丸印はスポット潜像Lspaを表す。また、発光素子グループ295において、副走査方向SDの上流側の発光素子行に符号2951Raを付し、副走査方向SDの下流側の発光素子行に符号2951Rbを付している。
【0112】
この実施形態では、発光素子行ピッチ(発光素子行間距離)Pelr=0.1mm、レンズ行ピッチ(レンズ行間距離)Plsr=1mm、感光体周速度=100mm/sである。また、スポットグループピッチ(スポットグループ間距離)Psgsは副走査画素ピッチ(副走査画素間距離)Rsdの整数倍である一方、スポット行ピッチ(スポット行間距離)Psprは副走査画素ピッチ(副走査画素間距離)Rsdの非整数倍となっている(図示省略)。また、発光タイミング制御の理解を容易とするために、この実施形態では、レンズLS1は正立でかつ1倍の結像倍率を有するものとした。
【0113】
感光体ドラム21周面(潜像担持体の表面)の移動に伴って、ライン潜像を形成する所定位置FLは副走査方向SDに移動する。以下に説明するように、各発光素子2951は、それぞれがスポットSPを形成することができる位置に所定位置FLが来たタイミングで発光する。これにより、所定位置にライン潜像を形成することができる。具体的には次の通りである。
【0114】
図27に示すように、時刻T1(=0ms)において、副走査方向SDの最上流にあるレンズLS1により結像される光を射出する発光素子行2951Raが発光して、所定位置FLで主走査方向MDに直線状に並ぶ複数のスポット潜像Lspaが形成される。さらに、時間ΔT(=1ms)経過した時刻T1+ΔT(=1ms)において、レンズLS1により結像される光を射出する発光素子行2951Rbが発光して、所定位置FLで主走査方向MDに並ぶ複数のスポット潜像Lspbが形成される。このように、発光素子行2951Ra、2951Rbの発光を時間ΔTずらすことで、発光素子行2951Raにより形成される複数のスポット潜像Lspbと、2951Rbにより形成される複数のスポット潜像Lspbとが、所定位置FLで主走査方向MDに直線状に並ぶ。
【0115】
次に、図28に示すように、時刻T2(=10ms)においてレンズLS2により結像される光を射出する発光素子行2951Raが発光するのに続いて、時刻T2+ΔT(=11ms)においてレンズLS2により結像される光を射出する発光素子行2951Rbが発光する。こうして、所定位置FLで主走査方向MDに直線状に並ぶ複数のスポット潜像Lspa、LspbがレンズLS2により形成される。また、レンズLS1により結像される光を射出する発光素子行2951Ra(2951Rb)の発光と、レンズLS2により結像される光を射出する発光素子行2951Ra(2951Rb)の発光との間に時間差(T2−T1)を設けられている。これにより、レンズLS1により形成される複数のスポット潜像Lspa、Lspbと、レンズLS2により形成される複数のスポット潜像Lspa、Lspbとが、所定位置FLで主走査方向MDに直線状に並ぶ。
【0116】
さらに、図29に示すように、時刻T3(=20ms)においてレンズLS3により結像される光を射出する発光素子行2951Raが発光するのに続いて、時刻T3+ΔT(=21ms)においてレンズLS3により結像される光を射出する発光素子行2951Rbが発光する。こうして、主走査方向MDに直線状に並ぶ複数のスポット潜像Lspa、LspbがレンズLS3により形成される。また、レンズLS2により結像される光を射出する発光素子行2951Ra(2951Rb)の発光と、レンズLS3により結像される光を射出する発光素子行2951Ra(2951Rb)の発光との間に時間差(T3−T2)を設けられている。これにより、レンズLS1、LS2により形成される複数のスポット潜像Lspa、Lspbと、レンズLS3により形成される複数のスポット潜像Lspa、Lspbとが主走査方向MDに直線状に並ぶ。こうして、主走査方向MDに1ページの長さを有する1本のライン潜像(1ページ長さライン潜像)が形成される。
【0117】
なお、図28に示したように、スポットグループピッチPsgsは副走査画素ピッチRsdの整数倍となっているため、レンズLS2に対応する発光素子行2951Ra(2951Rb)と同時に、レンズLS1に対応する発光素子行2951Ra(2951Rb)も発光している。このレンズLS1に対応する発光素子行2951Ra(2951Rb)は、所定位置FL以外に潜像を形成するものである。また、図29でも同様に、レンズLS1、LS2、LS3それぞれに対応する発光素子行2951Ra(2951Rb)が同時に(2951Rb)発光している。一方、スポット行ピッチPsprは副走査画素ピッチRsdの非整数倍となっているため、発光素子行2951Raと発光素子行2951Rbとが同時に発光することは無い。
【0118】
ところで、感光体ドラム21の周速度が変動したことで、1ページ長さライン潜像にがたつきが生じる場合があった。例えば、時刻0msから時刻10msの間で感光体ドラム21の速度が変動した結果、時刻10msにおいて、レンズLS2のスポット形成位置を所定位置FLが過ぎてしまったり、到達していなかったりする場合があった(図27、図28)。このため、レンズLS1により形成されるスポット潜像Lspa、Lspbと、レンズLS2により形成されるスポット潜像Lspa、Lspbとが、副走査方向SDにずれてしまうことがあった。
【0119】
そこで、本実施形態では、図18、図19で示したようなエンコーダECDが感光体ドラム21周面の位置を検出して(検出工程)、ヘッド制御ブロック541Y等がエンコーダECDの検出結果に基づいて発光素子2951の発光タイミングを調整する(潜像形成工程)。具体的には、感光体ドラム21表面の位置FLが、レンズLS1(第1の結像光学系)により結像される光を発光する発光素子2951がスポットSPを形成する位置(第1の位置)から、レンズLS2(第2の結像光学系)により結像される光を発光する発光素子2951がスポットSPを形成する位置(第2の位置)まで移動する時間(時間差(T2−T1)に相当)を検出する。そして、レンズLS1により結像される光を発光する発光素子2951が発光してから、レンズLS2により結像される光を発光する発光素子2951が発光するまでの時間を、この検出結果に基づいて制御する。これにより、レンズLS1により形成される複数のスポット潜像Lspa、Lspbと、レンズLS2により形成される複数のスポット潜像Lspa、Lspbとが、所定位置FLで主走査方向MDに直線状に並ぶ。また、同様に、感光体ドラム21表面の位置FLが、レンズLS2(第1の結像光学系)により結像される光を発光する発光素子2951がスポットSPを形成する位置(第1の位置)から、レンズLS3(第2の結像光学系)により結像される光を発光する発光素子2951がスポットSPを形成する位置(第2の位置)まで移動する時間(時間差(T3−T2)に相当)を検出する。そして、レンズLS2により結像される光を発光する発光素子2951が発光してから、レンズLS3により結像される光を発光する発光素子2951が発光するまでの時間を、この検出結果に基づいて制御する。これにより、レンズLS2により形成される複数のスポット潜像Lspa、Lspbと、レンズLS3により形成される複数のスポット潜像Lspa、Lspbとが、所定位置FLで主走査方向MDに直線状に並ぶ。こうして、感光体ドラム21の周速度変動に依らず、がたつきのない1ページ長さライン潜像を形成することができ、良好な潜像形成動作が実行可能となる。
【0120】
なお、第5実施形態では、同じ発光素子グループ295に属する発光素子行2951Raの発光と発光素子行2951Rbの発光との時間差ΔTは十分に短いため、時間差ΔTの間での感光体ドラム21の速度変動は潜像の形成位置にそれほど影響しないとして、時間差ΔTについては感光体ドラム21の位置に基づく調整を行なっていない。しかしながら、時間差ΔTの間での感光体ドラム21の速度変動が潜像の形成位置に無視できない影響を与える場合は、時間差ΔTを感光体ドラム21の位置に基づいて調整しても良い。つまり、発光素子行2951Raの発光素子2951(第1の発光素子)の発光から、発光素子行2951Rbの発光素子2951(第3の発光素子)の発光までの時間を調整しても良い。これにより、発光素子行2951Raによる潜像と、発光素子行2951Rbによる潜像とが、所定位置FLで主走査方向MDに直線状に並ぶ。
【0121】
G. 第6実施形態
図30は、第6実施形態での感光体ドラムおよびラインヘッドを長手方向(主走査方向)から見た図であり、ラインヘッド29は部分的に断面で示されている。図31は、第6実施形態での感光体ドラムおよびラインヘッドを幅方向(副走査方向)から見た図である。本実施形態では、感光体ドラム21に歯車GRが設けられている。歯車GRは略円盤形状を有しており、周面に複数の歯GRtが所定ピッチで並んでいる。この歯車GRの中心が感光体ドラム21の回転軸に取り付けられており、感光体ドラム21の回転中心に対して複数の歯GRtが放射状に並んでいる。また、図31に示すように、歯車GRは、カップリング等を介さずに感光体ドラム21に対して一体的に接続されている。そして、エンジン部EG(駆動源)が歯車GRに駆動力を与える。具体的には、この駆動力は歯GRtに係合する他の歯車(図示省略)を介して伝達される。こうして感光体ドラム21が回転する。このように感光体ドラム21は歯車GRに作用する外力により回転し、感光体ドラム21周面が副走査方向SDに移動する。
【0122】
このような、歯車GRにより感光体ドラム21を駆動する構成においては、歯GRtのピッチのばらつき等に起因して、感光体ドラム21の周速度が変動する場合がある。したがって、このような構成に対しては、感光体ドラム21の位置を検出した結果に基づいて、第1のレンズLS(例えば、レンズLS1)に結像される光を照射する発光素子2951の発光から、第2のレンズLS(例えば、レンズLS2)に結像される光を照射する発光素子2951の発光までの時間差(例えば、時間差(T2−T1))を、感光体ドラム21の周面の位置に基づいて調整することが好適である。
【0123】
H. 第7実施形態
ところで、上述のような歯車GRを用いた構成で発生する感光体ドラム21周面の速度変動には、周期性が存在する。この速度変動周期は、感光体ドラム21の単位時間あたりの回転数に、歯車GRの歯GRtの数(歯数)を乗じた値の逆数から簡便に求められ、具体的には、次式
速度変動周期[s]=60/(CT21×NT)
で与えられる。ここで、値CT21は感光体ドラム21の単位時間辺りの回転数[rpm]であり、NTは歯車GRの歯数である。そして、レンズ行ピッチPlsr、すなわちレンズLS1とレンズLS2との幅方向LTDにおける距離(レンズ間距離)Plsr、あるいはレンズLS2とレンズLS3との幅方向LTDにおける距離Plsrは、速度変動周期に感光体ドラム周速度の平均値を乗じた値(感光体ドラム21の距離)よりも長いことが好適である。具体的な数値を上げると、CT21=60[rpm]で歯数=40の場合は速度変動周期=0.025[s]となる。したがって、感光体ドラム周速度の平均を94.2[mm/s]とすると、速度変動周期に感光体ドラム周速度の平均を乗じた値は、2.355[mm]となる。よって、レンズ間距離Plsrは2.36[mm]以上が好ましい。特に、速度変動周期に感光体ドラム周速度の平均を乗じた値の25〜100倍にレンズ間距離Plsrを設定すると良い。
【0124】
I.その他
このように上記実施形態では、主走査方向MD・長手方向LGDが本発明の「第1の方向」に相当し、副走査方向SD・幅方向LTDが本発明の「第2の方向」に相当し、レンズLSが本発明の「結像光学系」に相当し、感光体ドラム21が本発明の「潜像担持体」に相当し、感光体ドラム21の表面SF21(周面)が本発明の「潜像担時体の表面」に相当している。また、ヘッドコントローラHCが本発明の「制御部」相当し、エンコーダECDが本発明の「検出部」に相当し、フォトセンサSCが本発明の「光学センサ」に相当している。また、レンズLS1とレンズLS2(または、レンズLS2とレンズLS3)との関係が本発明の「第1の結像光学系」と「第2の結像光学系」との関係に相当している。また、ラインヘッド29が本発明の「露光ヘッド」に相当している。
【0125】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態のエンコーダECDでは、1つのフォトセンサSCが設けられている(図19)。しかしながら、フォトセンサSCの個数はこれに限られず、2つ或いは3つ以上であっても良い。そこで、例えば次に示すようにエンコーダECDを構成することもできる。
【0126】
図32は、エンコーダの他の構成を示す図である。以下の説明では、主として図19に示したエンコーダとの差異点について説明し、共通する部分については相当符号を付して説明を省略する。同図に示すエンコーダECDでは、2つのフォトセンサSC1,SC2が設けられている。これら2つのフォトセンサSC1,SC2は、幅方向LTDにおいて感光体ドラム21の回転軸AR21を挟むようにして配置されている。換言すれば、2つのフォトセンサSC1,SC2は、回転軸AR21を中心として略2回対称となるように配置されている。そして、各フォトセンサSC1,SC2の受光部(図示省略)が、スリットSLを通過した光を検出することで、各フォトセンサSC1,SC2の検出信号が得られる。こうして得られた各フォトセンサSC1,SC2の検出信号の和が、エンコーダ信号SencとしてエンジンコントローラECに出力される。
【0127】
このように、図32に示すエンコーダECDでは、2つのフォトセンサSC1,SC2が、幅方向LTDにおいて感光体ドラム21の回転軸AR21を挟むようにして(感光体ドラム21の径方向に)配置されるとともに、各フォトセンサSC1,SC2の検出信号の和が、エンコーダ信号SencとしてエンジンコントローラECに出力される。したがって、例えば、エンコーダECDが感光体ドラム21の回転軸AR21に偏心して取り付けられた場合であっても、各フォトセンサSC1,SC2の検出信号の和を取ることで、かかる偏心成分をキャンセルすることが可能となっている。よって、安定してエンコーダ信号Sencを得ることが可能となり、高精度に感光体ドラム表面の速度検出が可能となる。
【0128】
また、上記実施形態では、感光体ドラム表面の移動速度と理想速度との差に基づいて、発光素子の発光タイミングが調整される。しかしながら、感光体ドラム表面の移動速度と、当該移動速度の平均値との差に基づいて、発光素子の発光タイミングが調整されるように構成しても良い。具体的には、例えば、感光体ドラム表面SF21が平均速度で移動している場合におけるエンコーダ信号Sencの間隔を基準信号間隔Ts(ref)として、図20に示したような調整動作を行なうことができる。このような構成では、感光体ドラム表面の移動速度の平均値からのずれに応じて、発光素子2951の発光タイミングが調整されるため、潜像形成位置のずれを効果的に抑制することが可能となり、良好な潜像形成が可能となる。
【0129】
また、上記実施形態では、主走査解像度および副走査解像度は何れも600dpiであるが、各解像度は600dpiに限られない。特に、副走査解像度に関しては、所謂PWM(Pulse Width Modulation)制御と呼ばれるパルス幅変調制御により発光素子2951の発光時間を細分化することで、600dpi以上の解像度が比較的簡単に実現可能である。したがって、例えば、主走査解像度を600dpiとする一方で、副走査解像度を2400dpiとして副走査解像度を上げても良い。このとき、副走査解像度は主走査解像度の4倍であるので、副走査画素ピッチRsdは主走査画素ピッチRmdの4分の1となる。
【0130】
また、第1〜第4実施形態では、3個の発光素子グループ295により発光素子グループ列295Cは構成されているが、発光素子グループ列295Cを構成する発光素子グループ295の個数はこれに限られず、2個以上であれば良い。
【0131】
また、第1〜第4実施形態では、スポットグループSGは2行のスポット行SPRから構成されているが、スポットグループSGを構成するスポット行SPRの行数はこれに限られず、1行でも良いし、あるいは3行以上でも良い。
【0132】
また、第1・第2実施形態では、スポット行SPRは4個のスポットSPから構成されているが、スポット行SPRを構成するスポットSPの個数はこれに限られない。
【0133】
また、上記第1〜第4実施形態では、2行の発光素子行2951Rから発光素子グループ295は構成されているが、発光素子グループ295を構成する発光素子行2951Rの個数はこれに限られない。
【0134】
また、上記第6実施形態では、歯車GRが感光体ドラム21に一体的に接続されている。しかしながら、図33のように構成することもできる。図33は、歯車と感光体ドラムとの別の接続態様を示す図である。同図では、歯車GRがカップリングCPLを介して感光体ドラム21に接続されている。
【実施例】
【0135】
次に本発明の実施例を示すが、本発明はもとより下記の実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の趣旨に適合しうる範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0136】
図34は、本発明の実施例を示す図であり、本発明の有効性を示す図である。まず、同図上段の「潜像担持体速度ムラ」の欄について説明する。同欄に記載のグラフは、潜像担持体表面の移動速度の速度ムラを示している。つまり、このグラフでは、横軸は時刻[s]を表し、縦軸は潜像担持体表面の速度ムラを表している。なお、この速度ムラは、移動速度の平均値からのずれとして表されている。このグラフから判るように、この実施例では、潜像担持体表面の移動速度は、±2%以上の速度ムラを有している。
【0137】
次に、図34中段の「潜像形成位置(補正制御前)」の欄について説明する。同欄に記載のグラフは、上述のような速度ムラが発生した状態において、補正制御を実行せずに潜像を形成した場合の潜像形成位置を示している。ここで、補正制御とは、第1〜第4実施形態で説明したような発光タイミングの調整を行う制御である。つまり、このグラフは、横軸は画像送り方向位置[mm](副走査方向SDにおける位置に相当)を表し、縦軸は位置誤差[μm]を示している。ここで、位置誤差とは、潜像が本来形成されるべき位置と、潜像が実際に形成された位置とのずれに相当する。このグラフから判るように、補正制御が無い状態では、最大30[μm]程度の位置誤差が発生している。
【0138】
次に、図34下段の「潜像形成位置(補正制御後)」の欄について説明する。同欄に記載のグラフは、上述のような速度ムラが発生した状態において、補正制御を実行しつつ潜像を形成した場合の潜像形成位置を示している。つまり、このグラフは、横軸は画像送り方向位置[mm]を表し、縦軸は位置誤差[μm]を示している。このグラフから判るように、補正制御を実行することで、位置誤差は数[μm]に抑制されている。このように同実施例では、補正制御を実行しつつ潜像を形成することで、潜像担持体表面の速度ムラの影響を抑制して、良好に潜像形成を実行可能であることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本明細書で用いる用語の説明図。
【図2】本明細書で用いる用語の説明図。
【図3】本発明にかかる画像形成装置の一例を示す図。
【図4】図3の画像形成装置の電気的構成を示す図。
【図5】本発明にかかるラインヘッドの概略を示す斜視図。
【図6】図5に示したラインヘッドの幅方向断面図。
【図7】レンズアレイの概略を示す斜視図。
【図8】レンズアレイの長手方向LGDの断面図。
【図9】ヘッド基板の裏面の構成を示す図。
【図10】各発光素子グループにおける発光素子の配置を示す図。
【図11】メインコントローラの構成を示すブロック図。
【図12】ヘッドコントローラの構成を示すブロック図。
【図13】第1実施形態でのヘッド制御ブロック等の構成を示すブロック図。
【図14】スポット形成動作を説明するための斜視図。
【図15】第1実施形態で感光体ドラム表面に形成されるスポットグループを示す図。
【図16】スポット潜像形成動作の一例を示す図。
【図17】本実施形態の画像形成装置で発生しうる潜像形成不良の一例を示す図。
【図18】エンコーダの構成を示す斜視図。
【図19】エンコーダの構成を示す正面図。
【図20】第1実施形態における発光タイミングの調整動作を示す図。
【図21】第2実施形態でのヘッド制御ブロック等の構成を示すブロック図。
【図22】第2実施形態における発光タイミングの調整動作を示す図。
【図23】第3実施形態における、メインコントローラ等の構成を示す図。
【図24】第3実施形態における水平同期信号の調整動作を示す図。
【図25】第4実施形態でのメインコントローラ等の構成を示す図。
【図26】第4実施形態における水平同期信号の調整動作を示す図。
【図27】潜像形成動作における発光素子の発光タイミング制御の説明図。
【図28】潜像形成動作における発光素子の発光タイミング制御の説明図。
【図29】潜像形成動作における発光素子の発光タイミング制御の説明図。
【図30】第6実施形態での感光体ドラムおよびラインヘッドを示す図。
【図31】第6実施形態での感光体ドラムおよびラインヘッドを示す図。
【図32】エンコーダの他の構成を示す図。
【図33】歯車と感光体ドラムとの別の接続態様を示す図。
【図34】本発明の実施例を示す図。
【符号の説明】
【0140】
21、21Y、21K…感光体ドラム(潜像担持体)、 SF21…感光体ドラム表面(周面)、AR21…回転軸、 29…ラインヘッド、 293…ヘッド基板、 295…発光素子グループ、 295C…発光素子グループ列、 2951…発光素子、 299…レンズアレイ、 LS…レンズ(結像光学系)、 SP…スポット、 SG…スポットグループ、 MD…主走査方向(第1の方向), SD…副走査方向(第2の方向)、 LGD…長手方向(第1の方向)、 LTD…幅方向(第2の方向)、 ECD…エンコーダ(検出部)、 ED…エンコーダディスク、 SL…スリット、 SC…フォトセンサ(光学センサ)、 MC…メインコントローラ、 HC…ヘッドコントローラ(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に配設された発光素子、前記発光素子から発光された光を結像する第1の結像光学系、及び第1の結像光学系に対して第2の方向に配設された第2の結像光学系を有する露光ヘッドと、
前記第2の方向に移動する潜像担持体と、
前記第2の方向の第1の位置から第2の位置へ移動する前記潜像担持体の移動時間を検出する検出部と、
第1の結像光学系で結像される光を発光する第1の発光素子が発光してから、前記結像光学系で結像される光を発光する第2の発光素子が発光するまでの時間を、前記検出部の検出結果に基づいて制御して、前記第1の結像光学系によって前記潜像担持体に形成される潜像と前記第2の結像光学系によって前記潜像担持体に形成される潜像とを前記第1方向に配設する制御部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の結像光学系により結像される光を発光する前記第1の発光素子が発光してから、前記第1の結像光学系により結像される光を発光するとともに前記第1の発光素子の前記第2方向側に配された第3の発光素子が発光するまでの時間を、前記検出部の検出結果に基づいて制御して、前記第1の発光素子によって前記潜像担持体に形成される潜像と前記第3の発光素子によって前記潜像担持体に形成される潜像とを前記第1方向に配設する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記潜像担持体は、前記第2方向に回転する感光体ドラムである請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
駆動源と、駆動源からの駆動力を前記感光体ドラムに伝達する歯車と、を有する請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記感光体ドラムの速度変動の周期に前記感光体ドラムの平均速度を乗じて求められる前記感光体ドラムの距離よりも、前記第1の結像光学系と前記第2の結像光学系との前記第2方向への距離が長い請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記速度変動の周期は、前記感光体ドラムの単位時間あたりの回転数に前記歯車の歯数を乗じた値の逆数から求める請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記歯車はカップリングを介して前記感光体ドラムに接続される請求項4ないし6のいずれ一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記歯車と前記感光体ドラムとは一体的に接続される請求項4ないし6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記検出部は、前記感光体ドラムの回転中心から放射状に配されたスリットを有するエンコーダディスクと、前記スリットを検知する光学センサとを有する請求項3ないし8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記検出部は、前記感光体ドラムの回転中心を挟んだ前記感光体ドラムの径方向に配された2個の前記光学センサを有する請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記第1の結像光学系で結像された光と前記第2の結像光学系で結像された光との前記潜像担持体の前記第2の方向の距離は、画素における前記第2方向の該画素間距離の整数倍である請求項1ないし10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記第2方向の画素間距離は、前記画素における前記第1方向の画素間距離より短い請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記制御部は、PWM制御により前記発光素子の発光を制御する請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
潜像担持体と、発光素子および前記発光素子からの光を前記潜像担持体に結像する結像光学系を備える露光ヘッドと、前記潜像担持体の位置を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて前記発光素子の発光を制御して前記潜像担持体に潜像を形成する制御部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
潜像担持体の第1の位置から第2の位置に移動する時間を検出する検出工程と、
第1の結像光学系で結像される光を発光する第1の発光素子が発光した後、第2の結像光学系で結像される光を発光する第2の発光素子が発光するまでの時間を、前記検出工程の検出結果に基づいて制御する制御工程と、
を有することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2009−160917(P2009−160917A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265034(P2008−265034)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】