画像形成装置および該装置の異常判定方法
【課題】ギャップにおける異常放電による帯電不良を的確に検知するとともに、異常の生じた画像形成ステーションを確実に特定する。
【解決手段】イエロー用帯電ローラ231Y、マゼンタ用帯電ローラ231Mおよびシアン用帯電ローラ231Cは帯電バイアス発生部230からみて並列に接続されており、交流バイアス電圧が一括して印加される。各帯電ローラに流れる電流も、異常電流検出部242により一括して検出される。イエロー用感光体、マゼンタ用感光体、シアン用感光体のうち1つだけ除電を行い、他の感光体については除電を行わないことにより、除電された感光体でのみ放電が生じうる。こうして選択的に除電を行いながら電流検出することにより、各色における異常放電の有無を個別に判定することができる。
【解決手段】イエロー用帯電ローラ231Y、マゼンタ用帯電ローラ231Mおよびシアン用帯電ローラ231Cは帯電バイアス発生部230からみて並列に接続されており、交流バイアス電圧が一括して印加される。各帯電ローラに流れる電流も、異常電流検出部242により一括して検出される。イエロー用感光体、マゼンタ用感光体、シアン用感光体のうち1つだけ除電を行い、他の感光体については除電を行わないことにより、除電された感光体でのみ放電が生じうる。こうして選択的に除電を行いながら電流検出することにより、各色における異常放電の有無を個別に判定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電潜像担持体と所定のギャップを隔てて対向配置した帯電部材に交流成分を有する帯電バイアスを印加することにより静電潜像担持体を帯電させる画像形成装置およびその異常判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所定の表面電位に帯電させた静電潜像担持体表面に静電潜像を形成し、これを顕像化することにより画像を形成する画像形成装置では、静電潜像担持体の帯電不良に起因する画像欠陥や装置の損傷を防止するため、静電潜像担持体の帯電不良を検知するための技術が従来より提案されている。例えば、特許文献1に記載の画像形成装置では、静電潜像担持体である感光体の表面に当接させた帯電ローラに交流バイアスを印加することによって感光体を帯電させており、帯電ローラに流れる帯電電流の平均値とピーク値とを比較することによって帯電電流の歪みを検出し、帯電不良の有無を判定している。
【0003】
【特許文献1】特開2004−85902号公報(例えば、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来技術は、交流バイアスを印加された帯電部材を静電潜像担持体に接触させる接触AC帯電方式の装置に対し適用可能な技術である。これとは異なる帯電方式として、静電潜像担持体に対しギャップを隔てて配置した帯電部材に交流バイアスを印加する非接触AC帯電方式があるが、非接触AC帯電方式における帯電不良を検知する技術についてはあまり提案されていない。特に、非接触AC帯電方式に固有の問題として、静電潜像担持体と帯電部材とのギャップにおいて異常放電が生じ、このような異常放電が帯電不良や装置の損傷を招くことがあるが、このような異常放電に起因する帯電不良を検知するための技術についてはこれまで十分に検討されていなかった。
【0005】
また、複数の画像形成ステーションを備えた画像形成装置においては、部品点数の削減および装置の小型化を図るために、複数の画像形成ステーション間でバイアス電源を共用することが行われている。このような場合、電流波形に基づいて異常放電を検知したとしても、異常が生じている画像形成ステーションを特定することが困難であった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、静電潜像担持体と帯電部材とを離隔配置した画像形成ステーションを複数備える画像形成装置およびその異常判定方法において、ギャップにおける異常放電による帯電不良を的確に検知するとともに、異常の生じた画像形成ステーションを確実に特定することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するため、静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体を除電する除電手段と、前記静電潜像担持体表面と所定のギャップを隔てて対向配置された帯電部材とをそれぞれ有する複数の画像形成ステーションと、前記複数の画像形成ステーションのうち少なくとも2つを一括バイアス画像形成ステーションとして、該一括バイアス画像形成ステーションのそれぞれ設けられた前記帯電部材に一括して交流成分を有する帯電バイアス電圧を印加するバイアス印加手段と、前記一括バイアス画像形成ステーションのそれぞれに設けられた前記帯電部材に流れる電流を一括して検出する電流検出手段と、前記電流検出手段の電流検出結果に基づいて、前記静電潜像担持体と前記帯電部材とのギャップにおける異常放電を検知する検知手段とを備え、前記検知手段は、前記一括バイアス画像形成ステーションのうち1つを選択画像形成ステーションとして選択し、該選択画像形成ステーションに設けられた前記除電手段を作動させる一方、前記選択画像形成ステーション以外の前記一括バイアス画像形成ステーションに設けられた前記除電手段の作動を停止させながら、各一括バイアス画像形成ステーションの前記帯電部材に前記バイアス印加手段からの前記帯電バイアス電圧を印加したときの前記電流検出手段による電流検出結果に基づいて、選択画像形成ステーションにおける前記静電潜像担持体と前記帯電部材とのギャップにおける異常放電の有無を判定することを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明では、複数の画像形成ステーションに一括して帯電バイアスを印加するとともに、帯電部材に流れる電流についても一括して検出しているため、部品点数の削減および装置の小型化を図ることができる。しかしながら、バイアスの印加および電流の検出をいずれも一括して行う構成では、異常放電に起因する異常な電流が検出されたとしてもそれがどの画像形成ステーションに起きているのかを特定することが難しい。
【0009】
本願発明者らの知見によれば、静電潜像担持体と帯電部材とのギャップにおける異常放電は、除電された状態の静電潜像担持体と、高圧の帯電バイアスが印加された帯電部材との間に大きな電位差が生じることに起因して発生する。一方、静電潜像担持体が除電されていなければ、帯電直後の電位に近い表面電位が維持されていることから帯電部材との間の電位差は小さく、放電は起こらない。
【0010】
そこで、この発明では、一括して帯電バイアスを印加された画像形成ステーションのうち1つの静電潜像担持体については除電を行う一方、他の静電潜像担持体については除電を行わないことによって、選択された1つの画像形成ステーションのみが放電発生の条件を充足することになる。したがって、この状態で異常放電が起きるか否かを判定することによって、他の画像形成ステーションからは独立して、当該画像形成ステーションのみについて異常放電の有無を個別に判定することが可能となる。また、このような判定を各画像形成ステーションについて行うことにより、異常の生じる画像形成ステーションを確実に特定することができる。
【0011】
ここで、異常放電に起因して帯電部材に流れる電流は、多くの場合パルス状の波形を有している。そこで、前記帯電部材に流れる電流に含まれるパルス状成分を検出することによって、正常な放電とは区別して異常放電の有無を的確に判定することが可能となる。
【0012】
例えば、所定の検出対象期間内に前記電流検出手段により検出されたパルスの数が所定の閾値を超えたとき、前記ギャップにおける異常放電が生じたと判定することができる。本願発明者らの実験によれば、異常放電の発生条件が充足されると、比較的高い確率で放電は繰り返し発生する。したがって、検出されたパルスの数がある閾値を超えたときに異常放電が生じたとすることで、異常放電の発生を高い確度で検知することができる。
【0013】
この発明にかかる画像形成装置では、前記一括バイアス画像形成ステーションのそれぞれに設けられた前記帯電部材は、前記バイアス印加手段からみて互いに並列に接続されるようにしてもよい。こうすることで、各帯電部材のそれぞれにバイアス印加手段からの帯電バイアス電圧が確実に印加されることになるからである。また、このような構成によれば、各帯電部材に流れる電流を個別に検出することが難しいので、本発明の効果が顕著となる。
【0014】
また、この発明は、前記複数の画像形成ステーションは、所定の方向に移動する転写媒体の移動方向に沿った互いに異なる画像形成位置で、前記静電潜像担持体上に形成した画像を前記転写媒体上に転写するように構成された画像形成装置において特に顕著な効果を奏する。このような構成の装置では、複数の画像形成ステーションによる画像形成動作が併行して行われるため、帯電部材による静電潜像担持体の帯電動作も併行して行われる。その結果、帯電動作に起因する電流が互いに重なり合うことになり、異常な電流が検出されたとしてもそれがどの画像形成ステーションに起因するものかを特定することが難しい。このような構成の装置に本発明を適用することで、異常の起きている画像形成ステーションの特定を容易にすることができる。
【0015】
なお、複数の画像ステーションを使用して画像を形成する複数動作モードと、一の画像形成ステーションを使用して画像を形成する単独動作モードとを実行可能に構成された画像形成装置においては、前記複数動作モードのみに使用される画像形成ステーションを前記一括バイアス画像形成ステーションとすることが望ましい。単独動作モードに使用される画像形成ステーションについては、当然に単独に帯電バイアスが印加される構成とする必要があるが、複数動作モードにのみ使用される画像形成ステーションについては、帯電バイアスを個別に供給する必要は必ずしもない。そこで、これらの画像形成ステーションについて、帯電バイアスを一括して印加するとともに、電流検出についても一括して行うことによって、合理的に部品点数の削減および装置の小型化を図ることができる。
【0016】
また、この発明にかかる画像形成装置の異常判定方法は、静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体表面と所定のギャップを隔てて対向配置された帯電部材とを有する画像形成ステーションを複数備えた画像形成装置の異常判定方法であって、上記目的を達成するため、少なくとも2つの画像形成ステーションを一括バイアス画像形成ステーションとして、それらに設けられた前記帯電部材に交流成分を有する帯電バイアス電圧を一括して印加し、前記一括バイアス画像形成ステーションのうち1つを選択画像形成ステーションとして、該選択画像形成ステーションについては前記静電潜像担持体の表面を前記帯電部材による帯電後に除電する一方、該選択画像形成ステーション以外の前記一括バイアス画像形成ステーションについては前記静電潜像担持体表面の除電を行わない状態で、前記一括バイアス画像形成ステーションのそれぞれに設けられた前記帯電部材に流れる電流を一括して検出し、その電流検出結果に基づいて、前記選択画像形成ステーションにおける前記静電潜像担持体と前記帯電部材とのギャップにおける異常放電の有無を判定することを特徴としている。
【0017】
このように構成された発明では、上記した画像形成装置にかかる発明と同様の原理により、各画像形成ステーションにおける異常放電の有無を的確に、しかも個別に行うことができる。
【0018】
特に、前記一括バイアス画像形成ステーションを1つずつ順番に前記選択画像形成ステーションとして選択することによって、前記一括バイアス画像形成ステーションのうちギャップにおいて異常放電を生じる画像形成ステーションを確実に特定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置における画像形成ステーションの主要部の構成を示す図である。この装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリなどを有するメインコントローラに与えられると、このメインコントローラがエンジンコントローラに制御信号を与え、これに基づき、エンジンコントローラがエンジン部EGなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0020】
この実施形態にかかる画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板やコントローラ基板などを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット2、転写ベルトユニット8および給紙ユニット7もハウジング本体3内に配設されている。また、図1においてハウジング本体3内右側には、二次転写ユニット12、定着ユニット13およびシート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット7は、ハウジング本体3に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット7および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0021】
画像形成ユニット2は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。なお、図1においては、画像形成ユニット2の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号を付し、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0022】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成されるドラム状の感光体21が設けられている。各感光体21はそれぞれ専用の駆動モータ(図示省略)に接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。また、感光体21の周囲には、その回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25、除電用光源27および感光体クリーナ28が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作が実行される。カラーモード実行時には、全ての画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8に設けた転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成する。また、モノクロモード実行時には、画像形成ステーション2Kのみを動作させてブラック単色画像を形成する。
【0023】
図3は帯電部の構成を示す図である。帯電部23は、その表面が鉄、アルミニウムまたはステンレスなどの金属材料で構成された帯電ローラ231を備えている。この帯電ローラ231の両端部には絶縁性材料で形成されたコロ234がそれぞれ取り付けられており、コロ234が感光体21の表面に当接することによって、帯電ローラ231と感光体21表面との間には一定のギャップGPが設けられている。また、この帯電ローラ231の端面にはステンレスやリン青銅などの弾性を有する導電性板材により構成された摺動端子233の一端部が摺接されるとともに、摺動端子233の他端部は帯電バイアス発生部232に接続されており、帯電バイアス発生部232からの交流帯電バイアス電圧が摺動端子233を介して帯電ローラ231に印加されている。これにより感光体21の表面を所定の表面電位に帯電させる。なお、以下の説明において特に各画像形成ステーションの帯電ローラを区別する必要があるときには、符号231の末尾にトナー色に対応するアルファベット1文字を付すこととする。例えば、ブラック画像形成ステーション2Kに設けられた帯電ローラは符号231Kにより表す。
【0024】
図1に戻って装置構成の説明を続ける。ラインヘッド29は、感光体21の軸方向(図1の紙面に対して垂直な方向X)に配列された複数の発光素子を備えており、感光体21に対向配置されている。そして、これらの発光素子から、帯電部23により帯電された感光体21の表面に向けて光Lを照射して該表面に静電潜像を形成する。
【0025】
現像部25は、その表面にトナーが担持する現像ローラ251を有する。そして、現像ローラ251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラ251に印加される現像バイアスによって、現像ローラ251と感光体21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラ251から感光体21に移動してその表面に形成された静電潜像が顕像化される。
【0026】
現像位置において顕像化されたトナー像は、感光体21の回転方向D21に搬送された後、後に詳述する転写ベルト81と各感光体21が当接する一次転写位置TR1において転写ベルト81に一次転写される。
【0027】
また、感光体21の回転方向D21の一次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体21に向けて除電用光源27および感光体21の表面に当接して感光体クリーナ28がこの順序で設けられている。除電用光源27が一次転写後の感光体21表面に除電光Leを照射することによって感光体21の表面電位をリセットし、感光体クリーナ27が感光体の表面に当接することで一次転写後に感光体21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。こうして除電されトナー除去された感光体21表面は、再び帯電ローラ231との対向位置に搬送され帯電部23により帯電されて静電潜像の形成に供される。
【0028】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラ82と、図1において駆動ローラ82の左側に配設される従動ローラ83(ブレード対向ローラ)と、これらのローラに張架され駆動ローラ82の回転により図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、カートリッジ装着時において各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kが有する感光体21各々に対して一対一で対向配置される、4個の一次転写ローラ85Y、85M、85Cおよび85Kを備えている。これらの一次転写ローラは、それぞれ一次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。
【0029】
図4は一次転写位置を示す図である。カラーモード実行時は、図4(a)に示すように全ての一次転写ローラ85Y、85M、85Cおよび85Kを画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kそれぞれが有する感光体21に押し遣り当接させて、各感光体21と転写ベルト81との間に一次転写位置TR1y、TR1m、TR1cおよびTR1kを形成する。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラ85Y等に一次転写バイアスを印加することで、各感光体21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する一次転写位置において転写ベルト81表面に転写する。すなわち、カラーモードにおいては、各色の単色トナー像が転写ベルト81上において互いに重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0030】
一方、モノクロモード実行時は、図4(b)に示すように、4個の一次転写ローラのうち、一次転写ローラ85Y、85Mおよび85Cをそれぞれが対向する画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cから離間させるとともにブラック色に対応した一次転写ローラ85Kのみを画像形成ステーション2Kに当接させることで、モノクロ用の画像形成ステーション2Kのみを転写ベルト81に当接させる。その結果、一次転写ローラ85Kと画像形成ステーション2Kとの間にのみ一次転写位置TR1kが形成される。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラ85Kに一次転写バイアスを印加することで、画像形成ステーション2Kに設けられた感光体21の表面上に形成されたブラックトナー像を、一次転写位置TR1kにおいて転写ベルト81表面に転写してモノクロ画像を形成する。
【0031】
さらに、転写ベルトユニット8は、ブラック用一次転写ローラ85Kの下流側で且つ駆動ローラ82の上流側に配設された下流ガイドローラ86を備える。この下流ガイドローラ86は、一次転写ローラ85Kが画像形成ステーション2Kの感光体21に当接して形成する一次転写位置TR1での一次転写ローラ85Kとブラック用感光体21(K)との共通接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0032】
また、下流ガイドローラ86に巻き掛けられた転写ベルト81の表面に対向してパッチセンサ89が設けられている。パッチセンサ89は例えば反射型フォトセンサからなり、転写ベルト81表面の反射率の変化を光学的に検出することにより、必要に応じて転写ベルト81上に形成されるパッチ画像の位置やその濃度などを検出する。
【0033】
給紙ユニット7は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラ79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラ79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラ対80によって給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って、駆動ローラ82と二次転写ローラ121とが当接する二次転写位置TR2に給紙される。
【0034】
二次転写ローラ121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、二次転写ローラ駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラ131と、この加熱ローラ131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が二次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラ131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラ1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラ1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラ131の周面に押し付けることで、加熱ローラ131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0035】
前記した駆動ローラ82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、二次転写ローラ121のバックアップローラとしての機能も兼ねている。駆動ローラ82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する二次転写バイアス発生部から二次転写ローラ121を介して供給される二次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラ82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、二次転写位置TR2へシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達されることに起因する画質の劣化を防止することができる。
【0036】
また、この装置では、ブレード対向ローラ83に対向してクリーナ部71が配設されている。クリーナ部71は、クリーナブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラ83に当接することで、二次転写後に転写ベルト81に残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。また、クリーナブレード711及び廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラ83と一体的に構成されている。
【0037】
なお、この実施形態においては、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kの感光体21、帯電ローラ231、現像部25、除電用光源27および感光体クリーナ28を一体的にカートリッジとしてユニット化している。そして、このカートリッジが装置本体に対し着脱可能に構成されている。また、各カートリッジには、該カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリがそれぞれ設けられている。これらの情報に基づき各カートリッジの使用履歴や消耗品の寿命が管理される。
【0038】
図5はブラック画像形成ステーション用の帯電部の電気的構成を示す図である。前記したように、帯電部23は帯電ローラおよび帯電バイアス発生部を備えている。帯電ローラ231Kは、ギャップを隔てて対向配置され芯金部が接地された感光体21との間で構成されたコンデンサとして等価的に表すことができる。帯電バイアス発生部232は、装置全体の動作を制御するCPU101により制御された交流電圧発生器2331を備えている。交流電圧発生器2331は、CPU101からの制御信号に基づき所定の周波数および振幅を有する交流電圧を発生する。この実施形態では正弦波交流電圧を発生するものとするが、矩形波や三角波など他の波形を有するものであってもよい。
【0039】
交流電圧発生器2321から発生された交流電圧はトランス2322により昇圧され、昇圧後の交流電圧が直流遮断用コンデンサ2323を介して帯電ローラ231Kに印加される。帯電ローラ231Kには抵抗器2324を介して直流電源2325からの直流電圧がさらに印加されており、全体として帯電ローラ231Kには、直流電圧に正弦波交流電圧が印加されてなる帯電バイアス電圧が印加されている。帯電ローラ231Kに印加される直流電圧は、例えば(−600)V程度の負電圧であり、感光体21の帯電電位を決める。一方、帯電ローラ231Kに印加される交流電圧は、例えばピーク間電圧1500V程度、周波数1〜2kHz程度の正弦波交流電圧であり、感光体21の帯電電位には直接関係しないが、帯電ローラ231Kと感光体21とのギャップGPにおいて放電を生じさせることによって感光体21への電荷の移動を促進し、感光体21を効率よく帯電させるためのものである。
【0040】
トランス2322を介して帯電ローラ231Kに流れる帯電電流Icは、異常電流検出部241に入力されている。異常電流検出部241の構成およびその動作については後に詳述するが、それに先立って、本願発明者らが実験により得た、帯電バイアス電圧と帯電電流との関係にかかる知見について説明する。
【0041】
図6は帯電バイアス電圧と帯電電流との関係を示す図である。直流電圧および交流電圧を重畳した帯電バイアス電圧を帯電ローラ231Kに印加したとき、帯電ローラ231Kに流れる帯電電流Icは、帯電バイアスの交流成分Vacに対し90度の進み位相を有する電流成分I1と、帯電バイアスの交流成分Vacのピークに対応するタイミングで短期間のみ流れる電流成分I2とを含んでいる。このうち電流成分I1は、帯電ローラ231Kおよび感光体21からなる静電容量を充放電するための電流である。
【0042】
また、電流成分I2は、ギャップGPを隔てて帯電ローラ231Kと感光体21との間で生じる放電に起因する電流である。感光体21表面を均一に帯電させるためには、帯電ローラ231Kの軸方向(図3に示す方向X)の沿ってギャップGPの全体で均一に放電が起きていることが望ましく、このように感光体21の帯電動作が正常に行われているとき、放電に起因する電流成分I2は比較的ブロードな波形となる。したがって、これらを合成した帯電電流Icの波形は図6に示すようになる。すなわち、この実施形態のように、帯電部材と感光体とを非接触に保ち交流帯電バイアスを印加する、いわゆる非接触AC帯電方式の画像形成装置では、帯電電流Icの波形は本来的に歪んだものとなり、単に電流のピーク値と平均値のみに着目した特許文献1に記載された従来技術の異常検出方法を適用することができない。
【0043】
図7は異常放電時の帯電電流波形を示す図である。帯電ローラ231Kの表面に残る加工時の凹凸やその表面または感光体21表面へのトナーや紙粉などの付着物の付着、さらにはコロ234の表面への付着物などに起因して、ギャップGPが変動する場合がある。このようなギャップ変動が生じると、ギャップにおける放電が不均一あるいは局所的なものとなり、極めて短時間に大きな電流が帯電ローラ231に流れる。この結果、帯電電流Icの波形は鋭いパルス状の成分を含んだものとなる。このようなパルスは、図7に示すように、除電された感光体21表面と帯電バイアスを印加された帯電ローラ231Kとの電位差が最も大きくなる、帯電バイアスの交流成分Vacの一方のピーク近傍で主に発生する。言い換えれば、このパルス成分のみを抽出して検出することにより、異常放電に起因する帯電不良を検知することが可能である。
【0044】
図5に示した異常電流検出部241はこのような知見に基づいて、異常放電に起因する帯電不良を的確に検知するべく考案されたものである。すなわち、この異常電流検出部241は、帯電電流Icを電圧に変換するIV変換器としての抵抗器2411と、コンデンサ2412Cおよび抵抗器2412Rによる微分回路で構成された高域通過フィルタ2412と、フィルタ出力を電圧基準2413から出力される基準レベルVrefと比較する比較器2414と、比較器2414から出力されるパルスの数をカウントするカウンタ2415とを備えている。
【0045】
高域通過フィルタ2412は、直流成分を遮断するとともに帯電電流波形からパルス成分を抽出するために設けられている。正常な場合の帯電電流Icは、図6に示すように帯電バイアスの交流成分Vacと同じ周波数の基本波とその比較的低次の高調波成分とを主として含んでいる。したがって、高域通過フィルタ2412はこれらの周波数成分を減衰させる一方、より高い周波数成分を通過させることが求められる。少なくとも、そのカットオフ周波数を帯電バイアスの交流成分Vacの周波数より高く、さらに望ましくはその数倍程度の周波数に設定するとよい。
【0046】
図8は異常電流検出部の各部における電圧波形を示す図である。高域通過フィルタ2412の入力側に当たるノードN1における電圧波形は図8(a)に示す波形であるとき、高域通過フィルタ2412の出力側ノードN2における電圧波形は、図8(b)に示すように、急峻な変化が強調された形となる。高域通過フィルタ2412の出力信号が入力される比較器2414では、その信号レベルを予め定められた基準レベルVrefと比較し、入力信号レベルが基準レベルVrefを超えたときHレベルの信号を出力する。
【0047】
カウンタ2415は例えばDフリップフロップからなるカウンタであり、比較器2414の出力信号がLレベルからHレベルに変化したときにカウント値が1ずつインクリメントされる。カウンタ2415によるカウント値はCPU101に入力される一方、CPU101からカウンタ2415に対しては、カウント値をリセットするためのリセット信号が必要に応じて出力される。CPU101は、カウンタ2415のカウント値に基づき、以下のようにして感光体21の帯電不良の発生の有無を判定する。
【0048】
図9は帯電不良判定処理を示すフローチャートである。この処理は、ブラック画像形成ステーション2Kにおける帯電不良を検知するためのものであり、他の画像形成ステーションにおける帯電不良を検知する方法については後に説明する。この帯電不良判定処理は画像形成動作の実行に伴って実行される。画像形成動作において帯電ローラ231Kへの帯電バイアス電圧の印加が開始されると(ステップS101)、CPU101は図示しない内部タイマによる計時を開始する(ステップS102)。
【0049】
そして、タイマの計時時間が15msecに達するまで(ステップS103)、比較器2414から出力される信号に基準レベルVrefを超えるパルスが含まれるか否かを判定する(ステップS104)。パルスが検出される度に、カウンタ2415によるカウント値CBを1ずつインクリメントする(ステップS105)。なお、実際には、カウント値のインクリメントはカウンタ2415のハードウェア上にて自動的に実行されている。
【0050】
計時を開始して15msecが経過すると、その間におけるカウンタ2415のカウント値CBを定数2と比較する(ステップS106)。本願発明者らの実験によると、画像欠陥や装置の損傷を引き起こすような異常放電がいったん発生すると、ほとんどの場合、それ以後の帯電バイアス電圧の変化の数サイクルのうち多くのサイクルで同様に異常放電が起き、電流波形にはそれによるパルスが観測される。したがって、ある検出対象期間内において検出されたパルス数が2未満であれば、画像欠陥や装置の損傷につながるような異常放電は起きていないと判断してよい。そこで、カウンタ2415に対しリセット信号を出力してカウント値CBをリセットするとともに内部タイマをリセットし(ステップS107)、ステップS103からの処理を繰り返す。
【0051】
検出対象期間の長さについては次のようにして決めることができる。上記したように、画像欠陥や装置の損傷につながる異常放電が発生するときには、帯電バイアス電圧の交流成分にほぼ同期したパルスが現れる。したがって、このパルスを確実に検出するためには、検出対象期間の長さは少なくとも帯電バイアス電圧の交流成分の周期より長くすることが望ましい。一方、検出対象期間が長すぎると、異常放電が発生した場合にそれを検知するまでに長い時間がかかってしまい、結果的に異常放電を収束させるまでに時間がかかることとなり画像や装置にダメージを与えてしまう。このことから、検査対象期間の長さは、帯電バイアス電圧の交流成分の数サイクル〜数十サイクル分に相当する長さとするのが適当である。この実施形態では、帯電バイアスの交流周波数を1.3kHzとしており、その20サイクル分を検出対象期間としているので、その長さは約15msecとなる。
【0052】
また、基準レベルVrefについては、帯電ローラ231Kを構成する材料やバイアス電圧の大きさなどに応じて適宜定めることができる。この実施形態における帯電ローラは金属ローラであるが、ウレタンゴムやシリコンゴムなどの樹脂材料に導電性の微粉末を分散させたゴムローラを使用することもできるが、その特性に応じて基準レベルVrefについては変更する必要がある。
【0053】
ステップS106において、カウント値CBが2以上、つまり検出対象期間内に2回以上のパルスが検出されていたときには、何らかの帯電不良が発生したものと考えられる。次に、以下のようにしてパルスの発生原因の特定を試みる。
【0054】
本願発明者らの知見によれば、帯電電流にこのようなパルス波形が現れる主な原因としては、前記したギャップにおける不均一な放電と、帯電ローラ231Kと摺動端子233との間での接触不良とがある。このような接触不良は、帯電ローラ231Kと摺動端子233との間にグリスやトナー、紙粉などの異物が挟まって導通が不安定となることによって起きる。ギャップでの不均一な放電に起因するパルスは、上記したように、帯電バイアスの交流成分の変化にほぼ同期して発生するのに対し、接触不良に起因して生じるパルスはほぼランダムに現れ、その発生頻度もはるかに高い。したがって、パルスの発生頻度からその発生原因を推定することが可能である。
【0055】
この実施形態では、検出対象期間である15msecの間における帯電バイアス電圧の変化が20サイクルであることに鑑み、1サイクル当たり2回、計40回までのパルスについてはギャップ変動に起因するものと判断することとする。また、これを超えるパルスは、接触不良に起因して生じたものと判断する。
【0056】
具体的には、検出対象期間におけるカウンタ2415のカウント値CBを判定し(ステップS108)、その値が40以下であればギャップGPの変動による異常放電に起因して生じたパルスであると判定する(ステップS111)。そして、ギャップGPの変動による帯電不良に対応するためのエラー処理#1を実行する。ここでは、帯電不良に起因する画像欠陥や異常放電による装置の損傷を防止するために画像形成動作を中止し(ステップS112)、直ちに帯電ローラ231への帯電バイアスの印加を停止する。また、所定のエラー表示1を行うことによりユーザに異常を報知する(ステップS113)。この場合のエラー表示は、ブラック画像形成ステーション2Kにおいてギャップ変動に起因する帯電不良が生じた旨を示すものである。
【0057】
一方、カウント値CBが40回を超えていた場合には、帯電ローラ231Kと摺動接点233との接触不良により生じたパルスであると判定し(ステップS121)、接触不良による帯電不良に対応するためのエラー処理#2を実行する。この場合、異常放電に起因する装置の損傷のおそれは少ないが、帯電不良による画像欠陥は生じうるので、やはり画像形成動作を中止する(ステップS122)。そして、ブラック画像形成ステーション2Kにおいて接触不良に起因する帯電不良が生じた旨を示すエラー表示2を行う(ステップS123)。
【0058】
次に、ブラック以外の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cにおける帯電不良の検出方法について説明する。前述のように、この実施形態の画像形成装置では、4色全ての画像形成ステーションを動作させてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック画像形成ステーション2Kのみを動作させてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能である。したがって、ブラック画像形成ステーションについては他の画像形成ステーションとは切り離して単独で動作することが必要であるが、他の3色の画像形成ステーション3Y、3Mおよび3Cについては単独動作が可能である必要はない。そこで、この実施形態では、帯電バイアス発生部の機能の一部をこれらの画像形成ステーション間で共通化することにより、部品点数を削減するとともに装置の小型化を図っている。また、ブラック画像形成ステーション2Kについては帯電バイアス発生部を独立して設けることにより、モノクロモードにおいて不必要なバイアスがブラック以外の画像形成ステーションの帯電ローラ231に印加されることを防止して、これらの画像形成ステーションの長寿命化が図られている。
【0059】
図10はYMC画像形成ステーション用の帯電部の電気的構成を示す図である。帯電部230の基本的な構成は図5に示すブラック画像形成ステーション用のものと同じであるが、交流電圧発生器2351およびトランス2352と、異常電流検出部242とが各色で共通化されている点が異なっている。この帯電部230では、交流電圧発生器2351から出力されトランス2352で昇圧された交流電圧は、直流遮断用のコンデンサ2353Y、2353Mおよび2353Cを介して各画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cにそれぞれ設けられた帯電ローラ231Y、231Mおよび231Cに印加されている。つまり、帯電バイアス発生部230からみて各帯電ローラ231Y、231Mおよび231Cは互いに並列接続されている。
【0060】
また、各帯電ローラ231Y、231Mおよび231Cには、それぞれ抵抗器2354Y、2354Mおよび2354Cを介して直流バイアス電圧2355Y、2355Mおよび2355Cが印加されている。こうして各帯電ローラ231Y、231Mおよび231Cには、ブラック画像形成ステーションの帯電ローラ231Kと同様に、それぞれ直流電圧に交流電圧を重畳した帯電バイアス電圧が印加される。
【0061】
トランス2352の二次側端子のうち各帯電ローラと反対側の端子には、異常電流検出部242が接続されている。この異常電流検出部242の構成はブラック画像形成ステーション用の異常電流検出部241のものと同一である。このように構成された異常電流検出部242では、各帯電ローラ231Y、231Mおよび231Cに流れる電流が一括して入力されているため、いずれかの画像形成ステーションにおいて帯電不良が発生した場合、その発生を検知することはできるが、異常の発生した画像形成ステーションを特定することができない。特に、この実施形態のようなタンデム現像型の画像形成装置では、画像形成ステーションを1つずつ順番に動作させるロータリー現像型の画像形成装置とは異なり、各画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cが併行して画像形成動作を行っているため、これらの異常を区別することができない。
【0062】
この実施形態では、以下に説明する帯電不良判定処理2を行うことによって、異常の発生を検知するだけでなくその画像形成ステーションの特定までを行いユーザに報知することによって、ユーザまたはその連絡を受けたオペレータが早期に異常の原因を知り必要な措置を取ることができるようにしている。
【0063】
図11は帯電不良判定処理2を示すフローチャートである。この処理のうち、ステップS201ないしS207については、ブラック用の帯電不良判定処理(図9)におけるステップS101ないしS107の処理と同一であるので説明を省略する。この帯電不良判定処理2では、検出対象期間内のカウント値CBが2以上であったとき(ステップS206)の動作がブラック用の帯電不良判定処理とは異なっている。すなわち、この処理では、検出対象期間内のカウント値CBが2以上であったとき、まず画像形成動作を中止し(ステップS220)、続いて帯電不良の生じている画像形成ステーションを特定しそれに対応するための異常特定処理を実行する(ステップS221)。なお、異常特定処理にはブラック画像形成ステーション2Kは無関係であるので、このときブラック画像形成ステーション2Kの動作状態をどのようにするかについては任意である。
【0064】
図12は異常特定処理を示すフローチャートである。この処理では、まず処理ループの実施回数を表す内部カウンタの値Nをリセットする(ステップS301)。そして、カウンタの値Nをインクリメントし(ステップS302)、画像形成ステーションの1つを選択する(ステップS303)。ここでは、イエロー画像形成ステーション2Yを最初に選択するものとする。そして、選択した画像形成ステーション2Yについてのみ除電用光源27を点灯させて感光体21の除電を行う一方、他の画像形成ステーション2Mおよび2Cについては露光ユニット6および除電用光源27を消灯させて、感光体21の除電が行われないようにする(ステップS304)。
【0065】
感光体21と帯電ローラ231との間の放電は、感光体21と帯電ローラ231との電位差が大きいことによって生じる。通常の画像形成動作では、除電用光源27が常に点灯しており、帯電ローラ231との対向位置に搬送されてくる感光体21の表面は常に除電された状態にある。このときの感光体21の表面電位は、その材質固有の残留電位程度の低電位である。このような低電位の感光体21と高電圧を印加された帯電ローラ231とを近接させることによりギャップでの放電が起こる。
【0066】
一方、感光体21の除電を行わなければ、感光体21表面は帯電直後の電位に近い高い直流電位が維持されている。したがって、除電していない感光体21と帯電ローラ231とのギャップでは放電が起こらない。このため、この状態で帯電ローラ231に流れる電流は、感光体21との静電容量への充放電に起因する電流のみである。このことを利用して、すなわちいずれか1つの画像形成ステーションについてのみ感光体21の除電を行うことにより、放電がどの画像形成ステーションのギャップで起こっているかを特定することができる。
【0067】
図12に戻って、先に選択したイエロー画像形成ステーション2Yについて除電をオン、他の画像形成ステーションについて除電をオフにしてから感光体21が1周するのを待つ(ステップS305)。除電オンまたはオフの状態で感光体21を1周以上回転させることにより、各感光体21の表面全体が除電された、または除電されない定常状態となる。この状態で、前記した帯電不良判定処理と同様に、検出対象期間内に発生するパルスの数をカウントする(ステップS306〜S308)。なお、ここでの検出対象期間の長さは、帯電不良判定処理におけるものと同一とする必要は必ずしもない。
【0068】
このとき、選択した画像形成ステーション2Yに異常放電が発生すれば、それに起因するパルスが検出されるはずである。また、他の画像形成ステーションに異常の原因があったとしても、除電がオフにされているためこの状態では異常に起因するパルスは現れない。このことから、このときのカウント値CBが2以上であれば(ステップS309)、帯電バイアスの印加を直ちに中止するとともに(ステップS321)、選択した画像形成ステーション2Yに異常があるものと判定し(ステップS322)、後述するエラー処理を実行する(ステップS323)。
【0069】
一方、カウント値CBが2未満であったとき、この時点で画像形成ステーション2Yには異常が起きなかったものとして、カウント値CBおよび内部タイマをリセットする(ステップS311)。そして、ここまでの処理を他の画像形成ステーション2M、2Cについても行う(ステップS312)。この過程でいずれかの画像形成ステーションで異常を示すパルスが検出されたときにはエラー処理を行う。また、Y、M、Cのいずれの画像形成ステーションにおいてもパルスが検出されなかったときには、内部カウンタの値Nをインクリメントしながらそのカウント値が所定の値(この例では3)になるまで上記処理を繰り返す(ステップS313)。すなわち、この処理では、上記の処理を3回繰り返して実行しても異常を示すパルスが検出されなかったときには、いずれの画像形成ステーションにも異常はなかったものと判定し(ステップS314)、通常の動作モードに戻る。
【0070】
こうして1つの画像形成ステーションを選択し、その画像形成ステーションのみについて実行した処理において異常を示すパルスが検出された場合には、その選択した画像形成ステーションに異常があることが判る。このようにして、異常の起きている画像形成ステーションを特定することができる。
【0071】
図13はエラー処理を示すフローチャートである。ここでのエラー処理は、異常の原因を特定するための処理と、特定された異常の内容に応じたエラー表示とである。パルスのカウント値CBに基づいて異常の原因を特定する点についてはブラック画像形成ステーションにおける処理と同様である。すなわち、カウント値CBが40以下であれば(ステップS400)、ギャップの変動に起因する異常放電が起きているものと判定し(ステップS401)、特定された画像形成ステーションと、その異常がギャップの変動に起因するものであることを示すエラー表示3を行う(ステップS402)。なお、帯電バイアスの印加は既に停止されており、異常放電が持続して装置を損傷することはない。
【0072】
また、カウント値CBが40を超えている場合には、パルスの原因は摺動接点の接触不良によるものと判定し(ステップS411)、その旨および異常の起きている画像形成ステーションを報知するためのエラー表示4を行う(ステップS412)。これにより、ユーザは異常の起きている画像形成ステーションおよび異常の原因を知ることができるので、その異常に応じた適切な措置を早期に行うことができる。
【0073】
以上のように、この実施形態では、感光体と帯電ローラとをギャップを隔てて離隔配置し、帯電ローラに交流バイアス電圧を印加することによって感光体を帯電させる非接触AC帯電方式の画像形成装置において、帯電電流に含まれるパルス状成分を抽出することによって、ギャップにおける異常放電に起因する帯電不良を検知している。こうすることにより、非接触AC帯電方式における帯電不良を的確に検知することができる。
【0074】
また、パルス成分の発生頻度に応じて、具体的にはパルスの発生頻度が第1の閾値より大きく、これより大きな第2の閾値よりも小さければギャップ変動に起因する帯電不良と判断する一方、パルスの発生頻度が第2の閾値より大きければ接触不良に起因する帯電不良と判断する。こうして帯電不良の原因を特定することにより、ユーザまたはオペレータによる異常の解消に役立てることができる。
【0075】
また、パルスの検出は、高域通過フィルタによる高周波成分の抽出および基準レベルとの比較により行っているので、簡単な構成で確実にパルスを検出することができる。
【0076】
また、単独で動作させる必要のないカラーモード用の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cについては帯電バイアス発生部の機能の一部および異常電流検出部を共通化することによって、部品点数の削減および装置の小型化を図ることが可能となっている。その一方、モノクロモードにおいて単独で動作させる必要のあるブラック画像形成ステーション2Kについては帯電バイアス発生部および異常電流検出部を独立して設けることにより、モノクロモードにおいて不必要なバイアスがブラック以外の画像形成ステーションの帯電ローラ231に印加されるのを防止するとともに、モノクロモードの実行中における帯電不良についても検知することが可能となっている。
【0077】
また、カラーモード用の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cについては、帯電不良につながるパルスが検出されたとき、画像形成ステーションを1つずつ順番に選択するとともに、選択したもの以外の画像形成ステーションについて除電をオフにした状態でパルス検出を行うことによって、異常がどの画像形成ステーションに起きているのかを特定することができる。
【0078】
以上説明したように、この実施形態においては、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kがそれぞれ本発明の「画像形成ステーション」に相当している。また、このうち本発明の「複数動作モード」に相当するカラーモードの実行のためだけに使用される画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cが本発明の「一括バイアス画像形成ステーション」に相当している。一方、この実施形態におけるモノクロモードは、本発明の「単独動作モード」に相当している。
【0079】
また、この実施形態では、各画像形成ステーションに設けられた感光体21が本発明の「静電潜像担持体」として機能している。また、この実施形態では、帯電ローラ231および帯電バイアス発生部232がそれぞれ本発明の「帯電部材」および「バイアス印加手段」として機能している。また、この実施形態では、異常電流検出部241、242が本発明の「電流検出手段」として機能している。また、この実施形態では、CPU101および中間転写ベルト81が、それぞれ本発明の「検知手段」および「転写媒体」として機能している。
【0080】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、本発明の「帯電部材」として金属製の帯電ローラ231を備えているが、金属製のもの以外に、例えば導電性微粉末を分散させたゴム製の帯電ローラを備える装置や、ローラ状以外の帯電部材を備える装置であっても、該帯電部材が静電潜像担持体に対し離隔配置され、交流成分を含む帯電バイアスを印加されるように構成された装置においては、同じような帯電電流の波形が観測される。このような装置に対して、本発明を好適に適用することができる。
【0081】
また、上記実施形態のエラー処理では、異常の内容に応じて表示されるメッセージの内容を異ならせているが、エラー処理としてはこれに限定されるものではなく、異常の生じている画像形成ステーションの種類や内容に応じて、これ以外に種々のものが考えられる。例えば、イエロー、マゼンタ、シアンのいずれかの画像形成ステーションに異常があったがブラック画像形成ステーションについては異常がないことが確認されたとき、カラーモードについては実行を禁止する一方、モノクロモードの実行のみを許可するような処理としてもよい。
【0082】
また、上記実施形態においては、画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cについて、帯電バイアス発生部の一部および異常電流検出部を共通化するようにしているが、ブラック画像形成ステーション2Kも含めてこれらを共通化するようにしてもよい。
【0083】
また、上記した実施形態では、除電用光源27からの除電光Leを照射することで感光体21表面を除電しているが、これ以外に、例えば所定の電位を付与された除電部材を当接させることによって除電するように構成されてもよい。
【0084】
また、上記した実施形態の画像形成装置は、それぞれが感光体を有する4個の画像形成ステーションが中間転写ベルト81の移動方向に沿って並べて配置された、いわゆるタンデム型の画像形成装置であるが、本発明は、回転自在の現像ロータリーに複数の現像器を装着し、これらを選択的に感光体との対向位置に位置決めして画像を形成する、いわゆるロータリー型の画像形成装置に対しても適用することができる。
【0085】
また、上記した実施形態の画像形成装置はドラム状の感光体を備える画像形成装置であるが、本発明の静電潜像担持体としては、このようなドラム状のもの以外に、例えばベルト状の感光体を使用してもよい。また、静電潜像担持体は、露光によって静電潜像を形成される感光体に限定されず、所定の表面電位に帯電させて静電潜像を形成する形式のものであれば、任意のものが使用可能である。
【0086】
さらに、上記実施形態では、YMCK4色のトナーを使用したカラー画像形成装置に本発明が適用されているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、色の種類や色数の異なる画像形成装置に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】画像形成ステーションの主要部の構成を示す図。
【図3】帯電部の構成を示す図。
【図4】一次転写位置を示す図。
【図5】ブラック画像形成ステーション用の帯電部の電気的構成を示す図。
【図6】帯電バイアス電圧と帯電電流との関係を示す図。
【図7】異常放電時の帯電電流波形を示す図。
【図8】異常電流検出部の各部における電圧波形を示す図。
【図9】帯電不良判定処理を示すフローチャート。
【図10】YMC画像形成ステーション用の帯電部の電気的構成を示す図。
【図11】帯電不良判定処理2を示すフローチャート。
【図12】異常特定処理を示すフローチャート。
【図13】エラー処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0088】
2Y,2M,2C,2K…画像形成ステーション、 21…感光体(静電潜像担持体)、 81…中間転写ベルト(転写媒体)、 101…CPU(検知手段)、 231…帯電ローラ(帯電部材)、 232…帯電バイアス発生部(バイアス印加手段)、 241,242…異常電流検出部(電流検出手段)
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電潜像担持体と所定のギャップを隔てて対向配置した帯電部材に交流成分を有する帯電バイアスを印加することにより静電潜像担持体を帯電させる画像形成装置およびその異常判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所定の表面電位に帯電させた静電潜像担持体表面に静電潜像を形成し、これを顕像化することにより画像を形成する画像形成装置では、静電潜像担持体の帯電不良に起因する画像欠陥や装置の損傷を防止するため、静電潜像担持体の帯電不良を検知するための技術が従来より提案されている。例えば、特許文献1に記載の画像形成装置では、静電潜像担持体である感光体の表面に当接させた帯電ローラに交流バイアスを印加することによって感光体を帯電させており、帯電ローラに流れる帯電電流の平均値とピーク値とを比較することによって帯電電流の歪みを検出し、帯電不良の有無を判定している。
【0003】
【特許文献1】特開2004−85902号公報(例えば、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来技術は、交流バイアスを印加された帯電部材を静電潜像担持体に接触させる接触AC帯電方式の装置に対し適用可能な技術である。これとは異なる帯電方式として、静電潜像担持体に対しギャップを隔てて配置した帯電部材に交流バイアスを印加する非接触AC帯電方式があるが、非接触AC帯電方式における帯電不良を検知する技術についてはあまり提案されていない。特に、非接触AC帯電方式に固有の問題として、静電潜像担持体と帯電部材とのギャップにおいて異常放電が生じ、このような異常放電が帯電不良や装置の損傷を招くことがあるが、このような異常放電に起因する帯電不良を検知するための技術についてはこれまで十分に検討されていなかった。
【0005】
また、複数の画像形成ステーションを備えた画像形成装置においては、部品点数の削減および装置の小型化を図るために、複数の画像形成ステーション間でバイアス電源を共用することが行われている。このような場合、電流波形に基づいて異常放電を検知したとしても、異常が生じている画像形成ステーションを特定することが困難であった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、静電潜像担持体と帯電部材とを離隔配置した画像形成ステーションを複数備える画像形成装置およびその異常判定方法において、ギャップにおける異常放電による帯電不良を的確に検知するとともに、異常の生じた画像形成ステーションを確実に特定することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するため、静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体を除電する除電手段と、前記静電潜像担持体表面と所定のギャップを隔てて対向配置された帯電部材とをそれぞれ有する複数の画像形成ステーションと、前記複数の画像形成ステーションのうち少なくとも2つを一括バイアス画像形成ステーションとして、該一括バイアス画像形成ステーションのそれぞれ設けられた前記帯電部材に一括して交流成分を有する帯電バイアス電圧を印加するバイアス印加手段と、前記一括バイアス画像形成ステーションのそれぞれに設けられた前記帯電部材に流れる電流を一括して検出する電流検出手段と、前記電流検出手段の電流検出結果に基づいて、前記静電潜像担持体と前記帯電部材とのギャップにおける異常放電を検知する検知手段とを備え、前記検知手段は、前記一括バイアス画像形成ステーションのうち1つを選択画像形成ステーションとして選択し、該選択画像形成ステーションに設けられた前記除電手段を作動させる一方、前記選択画像形成ステーション以外の前記一括バイアス画像形成ステーションに設けられた前記除電手段の作動を停止させながら、各一括バイアス画像形成ステーションの前記帯電部材に前記バイアス印加手段からの前記帯電バイアス電圧を印加したときの前記電流検出手段による電流検出結果に基づいて、選択画像形成ステーションにおける前記静電潜像担持体と前記帯電部材とのギャップにおける異常放電の有無を判定することを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明では、複数の画像形成ステーションに一括して帯電バイアスを印加するとともに、帯電部材に流れる電流についても一括して検出しているため、部品点数の削減および装置の小型化を図ることができる。しかしながら、バイアスの印加および電流の検出をいずれも一括して行う構成では、異常放電に起因する異常な電流が検出されたとしてもそれがどの画像形成ステーションに起きているのかを特定することが難しい。
【0009】
本願発明者らの知見によれば、静電潜像担持体と帯電部材とのギャップにおける異常放電は、除電された状態の静電潜像担持体と、高圧の帯電バイアスが印加された帯電部材との間に大きな電位差が生じることに起因して発生する。一方、静電潜像担持体が除電されていなければ、帯電直後の電位に近い表面電位が維持されていることから帯電部材との間の電位差は小さく、放電は起こらない。
【0010】
そこで、この発明では、一括して帯電バイアスを印加された画像形成ステーションのうち1つの静電潜像担持体については除電を行う一方、他の静電潜像担持体については除電を行わないことによって、選択された1つの画像形成ステーションのみが放電発生の条件を充足することになる。したがって、この状態で異常放電が起きるか否かを判定することによって、他の画像形成ステーションからは独立して、当該画像形成ステーションのみについて異常放電の有無を個別に判定することが可能となる。また、このような判定を各画像形成ステーションについて行うことにより、異常の生じる画像形成ステーションを確実に特定することができる。
【0011】
ここで、異常放電に起因して帯電部材に流れる電流は、多くの場合パルス状の波形を有している。そこで、前記帯電部材に流れる電流に含まれるパルス状成分を検出することによって、正常な放電とは区別して異常放電の有無を的確に判定することが可能となる。
【0012】
例えば、所定の検出対象期間内に前記電流検出手段により検出されたパルスの数が所定の閾値を超えたとき、前記ギャップにおける異常放電が生じたと判定することができる。本願発明者らの実験によれば、異常放電の発生条件が充足されると、比較的高い確率で放電は繰り返し発生する。したがって、検出されたパルスの数がある閾値を超えたときに異常放電が生じたとすることで、異常放電の発生を高い確度で検知することができる。
【0013】
この発明にかかる画像形成装置では、前記一括バイアス画像形成ステーションのそれぞれに設けられた前記帯電部材は、前記バイアス印加手段からみて互いに並列に接続されるようにしてもよい。こうすることで、各帯電部材のそれぞれにバイアス印加手段からの帯電バイアス電圧が確実に印加されることになるからである。また、このような構成によれば、各帯電部材に流れる電流を個別に検出することが難しいので、本発明の効果が顕著となる。
【0014】
また、この発明は、前記複数の画像形成ステーションは、所定の方向に移動する転写媒体の移動方向に沿った互いに異なる画像形成位置で、前記静電潜像担持体上に形成した画像を前記転写媒体上に転写するように構成された画像形成装置において特に顕著な効果を奏する。このような構成の装置では、複数の画像形成ステーションによる画像形成動作が併行して行われるため、帯電部材による静電潜像担持体の帯電動作も併行して行われる。その結果、帯電動作に起因する電流が互いに重なり合うことになり、異常な電流が検出されたとしてもそれがどの画像形成ステーションに起因するものかを特定することが難しい。このような構成の装置に本発明を適用することで、異常の起きている画像形成ステーションの特定を容易にすることができる。
【0015】
なお、複数の画像ステーションを使用して画像を形成する複数動作モードと、一の画像形成ステーションを使用して画像を形成する単独動作モードとを実行可能に構成された画像形成装置においては、前記複数動作モードのみに使用される画像形成ステーションを前記一括バイアス画像形成ステーションとすることが望ましい。単独動作モードに使用される画像形成ステーションについては、当然に単独に帯電バイアスが印加される構成とする必要があるが、複数動作モードにのみ使用される画像形成ステーションについては、帯電バイアスを個別に供給する必要は必ずしもない。そこで、これらの画像形成ステーションについて、帯電バイアスを一括して印加するとともに、電流検出についても一括して行うことによって、合理的に部品点数の削減および装置の小型化を図ることができる。
【0016】
また、この発明にかかる画像形成装置の異常判定方法は、静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体表面と所定のギャップを隔てて対向配置された帯電部材とを有する画像形成ステーションを複数備えた画像形成装置の異常判定方法であって、上記目的を達成するため、少なくとも2つの画像形成ステーションを一括バイアス画像形成ステーションとして、それらに設けられた前記帯電部材に交流成分を有する帯電バイアス電圧を一括して印加し、前記一括バイアス画像形成ステーションのうち1つを選択画像形成ステーションとして、該選択画像形成ステーションについては前記静電潜像担持体の表面を前記帯電部材による帯電後に除電する一方、該選択画像形成ステーション以外の前記一括バイアス画像形成ステーションについては前記静電潜像担持体表面の除電を行わない状態で、前記一括バイアス画像形成ステーションのそれぞれに設けられた前記帯電部材に流れる電流を一括して検出し、その電流検出結果に基づいて、前記選択画像形成ステーションにおける前記静電潜像担持体と前記帯電部材とのギャップにおける異常放電の有無を判定することを特徴としている。
【0017】
このように構成された発明では、上記した画像形成装置にかかる発明と同様の原理により、各画像形成ステーションにおける異常放電の有無を的確に、しかも個別に行うことができる。
【0018】
特に、前記一括バイアス画像形成ステーションを1つずつ順番に前記選択画像形成ステーションとして選択することによって、前記一括バイアス画像形成ステーションのうちギャップにおいて異常放電を生じる画像形成ステーションを確実に特定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置における画像形成ステーションの主要部の構成を示す図である。この装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリなどを有するメインコントローラに与えられると、このメインコントローラがエンジンコントローラに制御信号を与え、これに基づき、エンジンコントローラがエンジン部EGなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0020】
この実施形態にかかる画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板やコントローラ基板などを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット2、転写ベルトユニット8および給紙ユニット7もハウジング本体3内に配設されている。また、図1においてハウジング本体3内右側には、二次転写ユニット12、定着ユニット13およびシート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット7は、ハウジング本体3に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット7および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0021】
画像形成ユニット2は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。なお、図1においては、画像形成ユニット2の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号を付し、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0022】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成されるドラム状の感光体21が設けられている。各感光体21はそれぞれ専用の駆動モータ(図示省略)に接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。また、感光体21の周囲には、その回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25、除電用光源27および感光体クリーナ28が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作が実行される。カラーモード実行時には、全ての画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8に設けた転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成する。また、モノクロモード実行時には、画像形成ステーション2Kのみを動作させてブラック単色画像を形成する。
【0023】
図3は帯電部の構成を示す図である。帯電部23は、その表面が鉄、アルミニウムまたはステンレスなどの金属材料で構成された帯電ローラ231を備えている。この帯電ローラ231の両端部には絶縁性材料で形成されたコロ234がそれぞれ取り付けられており、コロ234が感光体21の表面に当接することによって、帯電ローラ231と感光体21表面との間には一定のギャップGPが設けられている。また、この帯電ローラ231の端面にはステンレスやリン青銅などの弾性を有する導電性板材により構成された摺動端子233の一端部が摺接されるとともに、摺動端子233の他端部は帯電バイアス発生部232に接続されており、帯電バイアス発生部232からの交流帯電バイアス電圧が摺動端子233を介して帯電ローラ231に印加されている。これにより感光体21の表面を所定の表面電位に帯電させる。なお、以下の説明において特に各画像形成ステーションの帯電ローラを区別する必要があるときには、符号231の末尾にトナー色に対応するアルファベット1文字を付すこととする。例えば、ブラック画像形成ステーション2Kに設けられた帯電ローラは符号231Kにより表す。
【0024】
図1に戻って装置構成の説明を続ける。ラインヘッド29は、感光体21の軸方向(図1の紙面に対して垂直な方向X)に配列された複数の発光素子を備えており、感光体21に対向配置されている。そして、これらの発光素子から、帯電部23により帯電された感光体21の表面に向けて光Lを照射して該表面に静電潜像を形成する。
【0025】
現像部25は、その表面にトナーが担持する現像ローラ251を有する。そして、現像ローラ251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラ251に印加される現像バイアスによって、現像ローラ251と感光体21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラ251から感光体21に移動してその表面に形成された静電潜像が顕像化される。
【0026】
現像位置において顕像化されたトナー像は、感光体21の回転方向D21に搬送された後、後に詳述する転写ベルト81と各感光体21が当接する一次転写位置TR1において転写ベルト81に一次転写される。
【0027】
また、感光体21の回転方向D21の一次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体21に向けて除電用光源27および感光体21の表面に当接して感光体クリーナ28がこの順序で設けられている。除電用光源27が一次転写後の感光体21表面に除電光Leを照射することによって感光体21の表面電位をリセットし、感光体クリーナ27が感光体の表面に当接することで一次転写後に感光体21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。こうして除電されトナー除去された感光体21表面は、再び帯電ローラ231との対向位置に搬送され帯電部23により帯電されて静電潜像の形成に供される。
【0028】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラ82と、図1において駆動ローラ82の左側に配設される従動ローラ83(ブレード対向ローラ)と、これらのローラに張架され駆動ローラ82の回転により図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、カートリッジ装着時において各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kが有する感光体21各々に対して一対一で対向配置される、4個の一次転写ローラ85Y、85M、85Cおよび85Kを備えている。これらの一次転写ローラは、それぞれ一次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。
【0029】
図4は一次転写位置を示す図である。カラーモード実行時は、図4(a)に示すように全ての一次転写ローラ85Y、85M、85Cおよび85Kを画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kそれぞれが有する感光体21に押し遣り当接させて、各感光体21と転写ベルト81との間に一次転写位置TR1y、TR1m、TR1cおよびTR1kを形成する。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラ85Y等に一次転写バイアスを印加することで、各感光体21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する一次転写位置において転写ベルト81表面に転写する。すなわち、カラーモードにおいては、各色の単色トナー像が転写ベルト81上において互いに重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0030】
一方、モノクロモード実行時は、図4(b)に示すように、4個の一次転写ローラのうち、一次転写ローラ85Y、85Mおよび85Cをそれぞれが対向する画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cから離間させるとともにブラック色に対応した一次転写ローラ85Kのみを画像形成ステーション2Kに当接させることで、モノクロ用の画像形成ステーション2Kのみを転写ベルト81に当接させる。その結果、一次転写ローラ85Kと画像形成ステーション2Kとの間にのみ一次転写位置TR1kが形成される。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラ85Kに一次転写バイアスを印加することで、画像形成ステーション2Kに設けられた感光体21の表面上に形成されたブラックトナー像を、一次転写位置TR1kにおいて転写ベルト81表面に転写してモノクロ画像を形成する。
【0031】
さらに、転写ベルトユニット8は、ブラック用一次転写ローラ85Kの下流側で且つ駆動ローラ82の上流側に配設された下流ガイドローラ86を備える。この下流ガイドローラ86は、一次転写ローラ85Kが画像形成ステーション2Kの感光体21に当接して形成する一次転写位置TR1での一次転写ローラ85Kとブラック用感光体21(K)との共通接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0032】
また、下流ガイドローラ86に巻き掛けられた転写ベルト81の表面に対向してパッチセンサ89が設けられている。パッチセンサ89は例えば反射型フォトセンサからなり、転写ベルト81表面の反射率の変化を光学的に検出することにより、必要に応じて転写ベルト81上に形成されるパッチ画像の位置やその濃度などを検出する。
【0033】
給紙ユニット7は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラ79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラ79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラ対80によって給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って、駆動ローラ82と二次転写ローラ121とが当接する二次転写位置TR2に給紙される。
【0034】
二次転写ローラ121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、二次転写ローラ駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラ131と、この加熱ローラ131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が二次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラ131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラ1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラ1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラ131の周面に押し付けることで、加熱ローラ131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0035】
前記した駆動ローラ82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、二次転写ローラ121のバックアップローラとしての機能も兼ねている。駆動ローラ82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する二次転写バイアス発生部から二次転写ローラ121を介して供給される二次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラ82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、二次転写位置TR2へシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達されることに起因する画質の劣化を防止することができる。
【0036】
また、この装置では、ブレード対向ローラ83に対向してクリーナ部71が配設されている。クリーナ部71は、クリーナブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラ83に当接することで、二次転写後に転写ベルト81に残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。また、クリーナブレード711及び廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラ83と一体的に構成されている。
【0037】
なお、この実施形態においては、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kの感光体21、帯電ローラ231、現像部25、除電用光源27および感光体クリーナ28を一体的にカートリッジとしてユニット化している。そして、このカートリッジが装置本体に対し着脱可能に構成されている。また、各カートリッジには、該カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリがそれぞれ設けられている。これらの情報に基づき各カートリッジの使用履歴や消耗品の寿命が管理される。
【0038】
図5はブラック画像形成ステーション用の帯電部の電気的構成を示す図である。前記したように、帯電部23は帯電ローラおよび帯電バイアス発生部を備えている。帯電ローラ231Kは、ギャップを隔てて対向配置され芯金部が接地された感光体21との間で構成されたコンデンサとして等価的に表すことができる。帯電バイアス発生部232は、装置全体の動作を制御するCPU101により制御された交流電圧発生器2331を備えている。交流電圧発生器2331は、CPU101からの制御信号に基づき所定の周波数および振幅を有する交流電圧を発生する。この実施形態では正弦波交流電圧を発生するものとするが、矩形波や三角波など他の波形を有するものであってもよい。
【0039】
交流電圧発生器2321から発生された交流電圧はトランス2322により昇圧され、昇圧後の交流電圧が直流遮断用コンデンサ2323を介して帯電ローラ231Kに印加される。帯電ローラ231Kには抵抗器2324を介して直流電源2325からの直流電圧がさらに印加されており、全体として帯電ローラ231Kには、直流電圧に正弦波交流電圧が印加されてなる帯電バイアス電圧が印加されている。帯電ローラ231Kに印加される直流電圧は、例えば(−600)V程度の負電圧であり、感光体21の帯電電位を決める。一方、帯電ローラ231Kに印加される交流電圧は、例えばピーク間電圧1500V程度、周波数1〜2kHz程度の正弦波交流電圧であり、感光体21の帯電電位には直接関係しないが、帯電ローラ231Kと感光体21とのギャップGPにおいて放電を生じさせることによって感光体21への電荷の移動を促進し、感光体21を効率よく帯電させるためのものである。
【0040】
トランス2322を介して帯電ローラ231Kに流れる帯電電流Icは、異常電流検出部241に入力されている。異常電流検出部241の構成およびその動作については後に詳述するが、それに先立って、本願発明者らが実験により得た、帯電バイアス電圧と帯電電流との関係にかかる知見について説明する。
【0041】
図6は帯電バイアス電圧と帯電電流との関係を示す図である。直流電圧および交流電圧を重畳した帯電バイアス電圧を帯電ローラ231Kに印加したとき、帯電ローラ231Kに流れる帯電電流Icは、帯電バイアスの交流成分Vacに対し90度の進み位相を有する電流成分I1と、帯電バイアスの交流成分Vacのピークに対応するタイミングで短期間のみ流れる電流成分I2とを含んでいる。このうち電流成分I1は、帯電ローラ231Kおよび感光体21からなる静電容量を充放電するための電流である。
【0042】
また、電流成分I2は、ギャップGPを隔てて帯電ローラ231Kと感光体21との間で生じる放電に起因する電流である。感光体21表面を均一に帯電させるためには、帯電ローラ231Kの軸方向(図3に示す方向X)の沿ってギャップGPの全体で均一に放電が起きていることが望ましく、このように感光体21の帯電動作が正常に行われているとき、放電に起因する電流成分I2は比較的ブロードな波形となる。したがって、これらを合成した帯電電流Icの波形は図6に示すようになる。すなわち、この実施形態のように、帯電部材と感光体とを非接触に保ち交流帯電バイアスを印加する、いわゆる非接触AC帯電方式の画像形成装置では、帯電電流Icの波形は本来的に歪んだものとなり、単に電流のピーク値と平均値のみに着目した特許文献1に記載された従来技術の異常検出方法を適用することができない。
【0043】
図7は異常放電時の帯電電流波形を示す図である。帯電ローラ231Kの表面に残る加工時の凹凸やその表面または感光体21表面へのトナーや紙粉などの付着物の付着、さらにはコロ234の表面への付着物などに起因して、ギャップGPが変動する場合がある。このようなギャップ変動が生じると、ギャップにおける放電が不均一あるいは局所的なものとなり、極めて短時間に大きな電流が帯電ローラ231に流れる。この結果、帯電電流Icの波形は鋭いパルス状の成分を含んだものとなる。このようなパルスは、図7に示すように、除電された感光体21表面と帯電バイアスを印加された帯電ローラ231Kとの電位差が最も大きくなる、帯電バイアスの交流成分Vacの一方のピーク近傍で主に発生する。言い換えれば、このパルス成分のみを抽出して検出することにより、異常放電に起因する帯電不良を検知することが可能である。
【0044】
図5に示した異常電流検出部241はこのような知見に基づいて、異常放電に起因する帯電不良を的確に検知するべく考案されたものである。すなわち、この異常電流検出部241は、帯電電流Icを電圧に変換するIV変換器としての抵抗器2411と、コンデンサ2412Cおよび抵抗器2412Rによる微分回路で構成された高域通過フィルタ2412と、フィルタ出力を電圧基準2413から出力される基準レベルVrefと比較する比較器2414と、比較器2414から出力されるパルスの数をカウントするカウンタ2415とを備えている。
【0045】
高域通過フィルタ2412は、直流成分を遮断するとともに帯電電流波形からパルス成分を抽出するために設けられている。正常な場合の帯電電流Icは、図6に示すように帯電バイアスの交流成分Vacと同じ周波数の基本波とその比較的低次の高調波成分とを主として含んでいる。したがって、高域通過フィルタ2412はこれらの周波数成分を減衰させる一方、より高い周波数成分を通過させることが求められる。少なくとも、そのカットオフ周波数を帯電バイアスの交流成分Vacの周波数より高く、さらに望ましくはその数倍程度の周波数に設定するとよい。
【0046】
図8は異常電流検出部の各部における電圧波形を示す図である。高域通過フィルタ2412の入力側に当たるノードN1における電圧波形は図8(a)に示す波形であるとき、高域通過フィルタ2412の出力側ノードN2における電圧波形は、図8(b)に示すように、急峻な変化が強調された形となる。高域通過フィルタ2412の出力信号が入力される比較器2414では、その信号レベルを予め定められた基準レベルVrefと比較し、入力信号レベルが基準レベルVrefを超えたときHレベルの信号を出力する。
【0047】
カウンタ2415は例えばDフリップフロップからなるカウンタであり、比較器2414の出力信号がLレベルからHレベルに変化したときにカウント値が1ずつインクリメントされる。カウンタ2415によるカウント値はCPU101に入力される一方、CPU101からカウンタ2415に対しては、カウント値をリセットするためのリセット信号が必要に応じて出力される。CPU101は、カウンタ2415のカウント値に基づき、以下のようにして感光体21の帯電不良の発生の有無を判定する。
【0048】
図9は帯電不良判定処理を示すフローチャートである。この処理は、ブラック画像形成ステーション2Kにおける帯電不良を検知するためのものであり、他の画像形成ステーションにおける帯電不良を検知する方法については後に説明する。この帯電不良判定処理は画像形成動作の実行に伴って実行される。画像形成動作において帯電ローラ231Kへの帯電バイアス電圧の印加が開始されると(ステップS101)、CPU101は図示しない内部タイマによる計時を開始する(ステップS102)。
【0049】
そして、タイマの計時時間が15msecに達するまで(ステップS103)、比較器2414から出力される信号に基準レベルVrefを超えるパルスが含まれるか否かを判定する(ステップS104)。パルスが検出される度に、カウンタ2415によるカウント値CBを1ずつインクリメントする(ステップS105)。なお、実際には、カウント値のインクリメントはカウンタ2415のハードウェア上にて自動的に実行されている。
【0050】
計時を開始して15msecが経過すると、その間におけるカウンタ2415のカウント値CBを定数2と比較する(ステップS106)。本願発明者らの実験によると、画像欠陥や装置の損傷を引き起こすような異常放電がいったん発生すると、ほとんどの場合、それ以後の帯電バイアス電圧の変化の数サイクルのうち多くのサイクルで同様に異常放電が起き、電流波形にはそれによるパルスが観測される。したがって、ある検出対象期間内において検出されたパルス数が2未満であれば、画像欠陥や装置の損傷につながるような異常放電は起きていないと判断してよい。そこで、カウンタ2415に対しリセット信号を出力してカウント値CBをリセットするとともに内部タイマをリセットし(ステップS107)、ステップS103からの処理を繰り返す。
【0051】
検出対象期間の長さについては次のようにして決めることができる。上記したように、画像欠陥や装置の損傷につながる異常放電が発生するときには、帯電バイアス電圧の交流成分にほぼ同期したパルスが現れる。したがって、このパルスを確実に検出するためには、検出対象期間の長さは少なくとも帯電バイアス電圧の交流成分の周期より長くすることが望ましい。一方、検出対象期間が長すぎると、異常放電が発生した場合にそれを検知するまでに長い時間がかかってしまい、結果的に異常放電を収束させるまでに時間がかかることとなり画像や装置にダメージを与えてしまう。このことから、検査対象期間の長さは、帯電バイアス電圧の交流成分の数サイクル〜数十サイクル分に相当する長さとするのが適当である。この実施形態では、帯電バイアスの交流周波数を1.3kHzとしており、その20サイクル分を検出対象期間としているので、その長さは約15msecとなる。
【0052】
また、基準レベルVrefについては、帯電ローラ231Kを構成する材料やバイアス電圧の大きさなどに応じて適宜定めることができる。この実施形態における帯電ローラは金属ローラであるが、ウレタンゴムやシリコンゴムなどの樹脂材料に導電性の微粉末を分散させたゴムローラを使用することもできるが、その特性に応じて基準レベルVrefについては変更する必要がある。
【0053】
ステップS106において、カウント値CBが2以上、つまり検出対象期間内に2回以上のパルスが検出されていたときには、何らかの帯電不良が発生したものと考えられる。次に、以下のようにしてパルスの発生原因の特定を試みる。
【0054】
本願発明者らの知見によれば、帯電電流にこのようなパルス波形が現れる主な原因としては、前記したギャップにおける不均一な放電と、帯電ローラ231Kと摺動端子233との間での接触不良とがある。このような接触不良は、帯電ローラ231Kと摺動端子233との間にグリスやトナー、紙粉などの異物が挟まって導通が不安定となることによって起きる。ギャップでの不均一な放電に起因するパルスは、上記したように、帯電バイアスの交流成分の変化にほぼ同期して発生するのに対し、接触不良に起因して生じるパルスはほぼランダムに現れ、その発生頻度もはるかに高い。したがって、パルスの発生頻度からその発生原因を推定することが可能である。
【0055】
この実施形態では、検出対象期間である15msecの間における帯電バイアス電圧の変化が20サイクルであることに鑑み、1サイクル当たり2回、計40回までのパルスについてはギャップ変動に起因するものと判断することとする。また、これを超えるパルスは、接触不良に起因して生じたものと判断する。
【0056】
具体的には、検出対象期間におけるカウンタ2415のカウント値CBを判定し(ステップS108)、その値が40以下であればギャップGPの変動による異常放電に起因して生じたパルスであると判定する(ステップS111)。そして、ギャップGPの変動による帯電不良に対応するためのエラー処理#1を実行する。ここでは、帯電不良に起因する画像欠陥や異常放電による装置の損傷を防止するために画像形成動作を中止し(ステップS112)、直ちに帯電ローラ231への帯電バイアスの印加を停止する。また、所定のエラー表示1を行うことによりユーザに異常を報知する(ステップS113)。この場合のエラー表示は、ブラック画像形成ステーション2Kにおいてギャップ変動に起因する帯電不良が生じた旨を示すものである。
【0057】
一方、カウント値CBが40回を超えていた場合には、帯電ローラ231Kと摺動接点233との接触不良により生じたパルスであると判定し(ステップS121)、接触不良による帯電不良に対応するためのエラー処理#2を実行する。この場合、異常放電に起因する装置の損傷のおそれは少ないが、帯電不良による画像欠陥は生じうるので、やはり画像形成動作を中止する(ステップS122)。そして、ブラック画像形成ステーション2Kにおいて接触不良に起因する帯電不良が生じた旨を示すエラー表示2を行う(ステップS123)。
【0058】
次に、ブラック以外の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cにおける帯電不良の検出方法について説明する。前述のように、この実施形態の画像形成装置では、4色全ての画像形成ステーションを動作させてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック画像形成ステーション2Kのみを動作させてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能である。したがって、ブラック画像形成ステーションについては他の画像形成ステーションとは切り離して単独で動作することが必要であるが、他の3色の画像形成ステーション3Y、3Mおよび3Cについては単独動作が可能である必要はない。そこで、この実施形態では、帯電バイアス発生部の機能の一部をこれらの画像形成ステーション間で共通化することにより、部品点数を削減するとともに装置の小型化を図っている。また、ブラック画像形成ステーション2Kについては帯電バイアス発生部を独立して設けることにより、モノクロモードにおいて不必要なバイアスがブラック以外の画像形成ステーションの帯電ローラ231に印加されることを防止して、これらの画像形成ステーションの長寿命化が図られている。
【0059】
図10はYMC画像形成ステーション用の帯電部の電気的構成を示す図である。帯電部230の基本的な構成は図5に示すブラック画像形成ステーション用のものと同じであるが、交流電圧発生器2351およびトランス2352と、異常電流検出部242とが各色で共通化されている点が異なっている。この帯電部230では、交流電圧発生器2351から出力されトランス2352で昇圧された交流電圧は、直流遮断用のコンデンサ2353Y、2353Mおよび2353Cを介して各画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cにそれぞれ設けられた帯電ローラ231Y、231Mおよび231Cに印加されている。つまり、帯電バイアス発生部230からみて各帯電ローラ231Y、231Mおよび231Cは互いに並列接続されている。
【0060】
また、各帯電ローラ231Y、231Mおよび231Cには、それぞれ抵抗器2354Y、2354Mおよび2354Cを介して直流バイアス電圧2355Y、2355Mおよび2355Cが印加されている。こうして各帯電ローラ231Y、231Mおよび231Cには、ブラック画像形成ステーションの帯電ローラ231Kと同様に、それぞれ直流電圧に交流電圧を重畳した帯電バイアス電圧が印加される。
【0061】
トランス2352の二次側端子のうち各帯電ローラと反対側の端子には、異常電流検出部242が接続されている。この異常電流検出部242の構成はブラック画像形成ステーション用の異常電流検出部241のものと同一である。このように構成された異常電流検出部242では、各帯電ローラ231Y、231Mおよび231Cに流れる電流が一括して入力されているため、いずれかの画像形成ステーションにおいて帯電不良が発生した場合、その発生を検知することはできるが、異常の発生した画像形成ステーションを特定することができない。特に、この実施形態のようなタンデム現像型の画像形成装置では、画像形成ステーションを1つずつ順番に動作させるロータリー現像型の画像形成装置とは異なり、各画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cが併行して画像形成動作を行っているため、これらの異常を区別することができない。
【0062】
この実施形態では、以下に説明する帯電不良判定処理2を行うことによって、異常の発生を検知するだけでなくその画像形成ステーションの特定までを行いユーザに報知することによって、ユーザまたはその連絡を受けたオペレータが早期に異常の原因を知り必要な措置を取ることができるようにしている。
【0063】
図11は帯電不良判定処理2を示すフローチャートである。この処理のうち、ステップS201ないしS207については、ブラック用の帯電不良判定処理(図9)におけるステップS101ないしS107の処理と同一であるので説明を省略する。この帯電不良判定処理2では、検出対象期間内のカウント値CBが2以上であったとき(ステップS206)の動作がブラック用の帯電不良判定処理とは異なっている。すなわち、この処理では、検出対象期間内のカウント値CBが2以上であったとき、まず画像形成動作を中止し(ステップS220)、続いて帯電不良の生じている画像形成ステーションを特定しそれに対応するための異常特定処理を実行する(ステップS221)。なお、異常特定処理にはブラック画像形成ステーション2Kは無関係であるので、このときブラック画像形成ステーション2Kの動作状態をどのようにするかについては任意である。
【0064】
図12は異常特定処理を示すフローチャートである。この処理では、まず処理ループの実施回数を表す内部カウンタの値Nをリセットする(ステップS301)。そして、カウンタの値Nをインクリメントし(ステップS302)、画像形成ステーションの1つを選択する(ステップS303)。ここでは、イエロー画像形成ステーション2Yを最初に選択するものとする。そして、選択した画像形成ステーション2Yについてのみ除電用光源27を点灯させて感光体21の除電を行う一方、他の画像形成ステーション2Mおよび2Cについては露光ユニット6および除電用光源27を消灯させて、感光体21の除電が行われないようにする(ステップS304)。
【0065】
感光体21と帯電ローラ231との間の放電は、感光体21と帯電ローラ231との電位差が大きいことによって生じる。通常の画像形成動作では、除電用光源27が常に点灯しており、帯電ローラ231との対向位置に搬送されてくる感光体21の表面は常に除電された状態にある。このときの感光体21の表面電位は、その材質固有の残留電位程度の低電位である。このような低電位の感光体21と高電圧を印加された帯電ローラ231とを近接させることによりギャップでの放電が起こる。
【0066】
一方、感光体21の除電を行わなければ、感光体21表面は帯電直後の電位に近い高い直流電位が維持されている。したがって、除電していない感光体21と帯電ローラ231とのギャップでは放電が起こらない。このため、この状態で帯電ローラ231に流れる電流は、感光体21との静電容量への充放電に起因する電流のみである。このことを利用して、すなわちいずれか1つの画像形成ステーションについてのみ感光体21の除電を行うことにより、放電がどの画像形成ステーションのギャップで起こっているかを特定することができる。
【0067】
図12に戻って、先に選択したイエロー画像形成ステーション2Yについて除電をオン、他の画像形成ステーションについて除電をオフにしてから感光体21が1周するのを待つ(ステップS305)。除電オンまたはオフの状態で感光体21を1周以上回転させることにより、各感光体21の表面全体が除電された、または除電されない定常状態となる。この状態で、前記した帯電不良判定処理と同様に、検出対象期間内に発生するパルスの数をカウントする(ステップS306〜S308)。なお、ここでの検出対象期間の長さは、帯電不良判定処理におけるものと同一とする必要は必ずしもない。
【0068】
このとき、選択した画像形成ステーション2Yに異常放電が発生すれば、それに起因するパルスが検出されるはずである。また、他の画像形成ステーションに異常の原因があったとしても、除電がオフにされているためこの状態では異常に起因するパルスは現れない。このことから、このときのカウント値CBが2以上であれば(ステップS309)、帯電バイアスの印加を直ちに中止するとともに(ステップS321)、選択した画像形成ステーション2Yに異常があるものと判定し(ステップS322)、後述するエラー処理を実行する(ステップS323)。
【0069】
一方、カウント値CBが2未満であったとき、この時点で画像形成ステーション2Yには異常が起きなかったものとして、カウント値CBおよび内部タイマをリセットする(ステップS311)。そして、ここまでの処理を他の画像形成ステーション2M、2Cについても行う(ステップS312)。この過程でいずれかの画像形成ステーションで異常を示すパルスが検出されたときにはエラー処理を行う。また、Y、M、Cのいずれの画像形成ステーションにおいてもパルスが検出されなかったときには、内部カウンタの値Nをインクリメントしながらそのカウント値が所定の値(この例では3)になるまで上記処理を繰り返す(ステップS313)。すなわち、この処理では、上記の処理を3回繰り返して実行しても異常を示すパルスが検出されなかったときには、いずれの画像形成ステーションにも異常はなかったものと判定し(ステップS314)、通常の動作モードに戻る。
【0070】
こうして1つの画像形成ステーションを選択し、その画像形成ステーションのみについて実行した処理において異常を示すパルスが検出された場合には、その選択した画像形成ステーションに異常があることが判る。このようにして、異常の起きている画像形成ステーションを特定することができる。
【0071】
図13はエラー処理を示すフローチャートである。ここでのエラー処理は、異常の原因を特定するための処理と、特定された異常の内容に応じたエラー表示とである。パルスのカウント値CBに基づいて異常の原因を特定する点についてはブラック画像形成ステーションにおける処理と同様である。すなわち、カウント値CBが40以下であれば(ステップS400)、ギャップの変動に起因する異常放電が起きているものと判定し(ステップS401)、特定された画像形成ステーションと、その異常がギャップの変動に起因するものであることを示すエラー表示3を行う(ステップS402)。なお、帯電バイアスの印加は既に停止されており、異常放電が持続して装置を損傷することはない。
【0072】
また、カウント値CBが40を超えている場合には、パルスの原因は摺動接点の接触不良によるものと判定し(ステップS411)、その旨および異常の起きている画像形成ステーションを報知するためのエラー表示4を行う(ステップS412)。これにより、ユーザは異常の起きている画像形成ステーションおよび異常の原因を知ることができるので、その異常に応じた適切な措置を早期に行うことができる。
【0073】
以上のように、この実施形態では、感光体と帯電ローラとをギャップを隔てて離隔配置し、帯電ローラに交流バイアス電圧を印加することによって感光体を帯電させる非接触AC帯電方式の画像形成装置において、帯電電流に含まれるパルス状成分を抽出することによって、ギャップにおける異常放電に起因する帯電不良を検知している。こうすることにより、非接触AC帯電方式における帯電不良を的確に検知することができる。
【0074】
また、パルス成分の発生頻度に応じて、具体的にはパルスの発生頻度が第1の閾値より大きく、これより大きな第2の閾値よりも小さければギャップ変動に起因する帯電不良と判断する一方、パルスの発生頻度が第2の閾値より大きければ接触不良に起因する帯電不良と判断する。こうして帯電不良の原因を特定することにより、ユーザまたはオペレータによる異常の解消に役立てることができる。
【0075】
また、パルスの検出は、高域通過フィルタによる高周波成分の抽出および基準レベルとの比較により行っているので、簡単な構成で確実にパルスを検出することができる。
【0076】
また、単独で動作させる必要のないカラーモード用の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cについては帯電バイアス発生部の機能の一部および異常電流検出部を共通化することによって、部品点数の削減および装置の小型化を図ることが可能となっている。その一方、モノクロモードにおいて単独で動作させる必要のあるブラック画像形成ステーション2Kについては帯電バイアス発生部および異常電流検出部を独立して設けることにより、モノクロモードにおいて不必要なバイアスがブラック以外の画像形成ステーションの帯電ローラ231に印加されるのを防止するとともに、モノクロモードの実行中における帯電不良についても検知することが可能となっている。
【0077】
また、カラーモード用の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cについては、帯電不良につながるパルスが検出されたとき、画像形成ステーションを1つずつ順番に選択するとともに、選択したもの以外の画像形成ステーションについて除電をオフにした状態でパルス検出を行うことによって、異常がどの画像形成ステーションに起きているのかを特定することができる。
【0078】
以上説明したように、この実施形態においては、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kがそれぞれ本発明の「画像形成ステーション」に相当している。また、このうち本発明の「複数動作モード」に相当するカラーモードの実行のためだけに使用される画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cが本発明の「一括バイアス画像形成ステーション」に相当している。一方、この実施形態におけるモノクロモードは、本発明の「単独動作モード」に相当している。
【0079】
また、この実施形態では、各画像形成ステーションに設けられた感光体21が本発明の「静電潜像担持体」として機能している。また、この実施形態では、帯電ローラ231および帯電バイアス発生部232がそれぞれ本発明の「帯電部材」および「バイアス印加手段」として機能している。また、この実施形態では、異常電流検出部241、242が本発明の「電流検出手段」として機能している。また、この実施形態では、CPU101および中間転写ベルト81が、それぞれ本発明の「検知手段」および「転写媒体」として機能している。
【0080】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、本発明の「帯電部材」として金属製の帯電ローラ231を備えているが、金属製のもの以外に、例えば導電性微粉末を分散させたゴム製の帯電ローラを備える装置や、ローラ状以外の帯電部材を備える装置であっても、該帯電部材が静電潜像担持体に対し離隔配置され、交流成分を含む帯電バイアスを印加されるように構成された装置においては、同じような帯電電流の波形が観測される。このような装置に対して、本発明を好適に適用することができる。
【0081】
また、上記実施形態のエラー処理では、異常の内容に応じて表示されるメッセージの内容を異ならせているが、エラー処理としてはこれに限定されるものではなく、異常の生じている画像形成ステーションの種類や内容に応じて、これ以外に種々のものが考えられる。例えば、イエロー、マゼンタ、シアンのいずれかの画像形成ステーションに異常があったがブラック画像形成ステーションについては異常がないことが確認されたとき、カラーモードについては実行を禁止する一方、モノクロモードの実行のみを許可するような処理としてもよい。
【0082】
また、上記実施形態においては、画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cについて、帯電バイアス発生部の一部および異常電流検出部を共通化するようにしているが、ブラック画像形成ステーション2Kも含めてこれらを共通化するようにしてもよい。
【0083】
また、上記した実施形態では、除電用光源27からの除電光Leを照射することで感光体21表面を除電しているが、これ以外に、例えば所定の電位を付与された除電部材を当接させることによって除電するように構成されてもよい。
【0084】
また、上記した実施形態の画像形成装置は、それぞれが感光体を有する4個の画像形成ステーションが中間転写ベルト81の移動方向に沿って並べて配置された、いわゆるタンデム型の画像形成装置であるが、本発明は、回転自在の現像ロータリーに複数の現像器を装着し、これらを選択的に感光体との対向位置に位置決めして画像を形成する、いわゆるロータリー型の画像形成装置に対しても適用することができる。
【0085】
また、上記した実施形態の画像形成装置はドラム状の感光体を備える画像形成装置であるが、本発明の静電潜像担持体としては、このようなドラム状のもの以外に、例えばベルト状の感光体を使用してもよい。また、静電潜像担持体は、露光によって静電潜像を形成される感光体に限定されず、所定の表面電位に帯電させて静電潜像を形成する形式のものであれば、任意のものが使用可能である。
【0086】
さらに、上記実施形態では、YMCK4色のトナーを使用したカラー画像形成装置に本発明が適用されているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、色の種類や色数の異なる画像形成装置に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】画像形成ステーションの主要部の構成を示す図。
【図3】帯電部の構成を示す図。
【図4】一次転写位置を示す図。
【図5】ブラック画像形成ステーション用の帯電部の電気的構成を示す図。
【図6】帯電バイアス電圧と帯電電流との関係を示す図。
【図7】異常放電時の帯電電流波形を示す図。
【図8】異常電流検出部の各部における電圧波形を示す図。
【図9】帯電不良判定処理を示すフローチャート。
【図10】YMC画像形成ステーション用の帯電部の電気的構成を示す図。
【図11】帯電不良判定処理2を示すフローチャート。
【図12】異常特定処理を示すフローチャート。
【図13】エラー処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0088】
2Y,2M,2C,2K…画像形成ステーション、 21…感光体(静電潜像担持体)、 81…中間転写ベルト(転写媒体)、 101…CPU(検知手段)、 231…帯電ローラ(帯電部材)、 232…帯電バイアス発生部(バイアス印加手段)、 241,242…異常電流検出部(電流検出手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体を除電する除電手段と、前記静電潜像担持体表面と所定のギャップを隔てて対向配置された帯電部材とをそれぞれ有する複数の画像形成ステーションと、
前記複数の画像形成ステーションのうち少なくとも2つを一括バイアス画像形成ステーションとして、該一括バイアス画像形成ステーションのそれぞれ設けられた前記帯電部材に一括して交流成分を有する帯電バイアス電圧を印加するバイアス印加手段と、
前記一括バイアス画像形成ステーションのそれぞれに設けられた前記帯電部材に流れる電流を一括して検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段の電流検出結果に基づいて、前記静電潜像担持体と前記帯電部材とのギャップにおける異常放電を検知する検知手段と
を備え、
前記検知手段は、前記一括バイアス画像形成ステーションのうち1つを選択画像形成ステーションとして選択し、該選択画像形成ステーションに設けられた前記除電手段を作動させる一方、前記選択画像形成ステーション以外の前記一括バイアス画像形成ステーションに設けられた前記除電手段の作動を停止させながら、各一括バイアス画像形成ステーションの前記帯電部材に前記バイアス印加手段からの前記帯電バイアス電圧を印加したときの前記電流検出手段による電流検出結果に基づいて、選択画像形成ステーションにおける前記静電潜像担持体と前記帯電部材とのギャップにおける異常放電の有無を判定する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記電流検出手段は、前記帯電部材に流れる電流に含まれるパルス状成分を検出する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、所定の検出対象期間内に前記電流検出手段により検出されたパルスの数が所定の閾値を超えたとき、前記ギャップにおける異常放電が生じたと判定する請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記一括バイアス画像形成ステーションのそれぞれに設けられた前記帯電部材は、前記バイアス印加手段からみて互いに並列に接続されている請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記複数の画像形成ステーションは、所定の方向に移動する転写媒体の移動方向に沿った互いに異なる画像形成位置で、前記静電潜像担持体上に形成した画像を前記転写媒体上に転写するように構成された請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
複数の画像ステーションを使用して画像を形成する複数動作モードと、一の画像形成ステーションを使用して画像を形成する単独動作モードとを実行可能に構成された請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記複数動作モードのみに使用される画像形成ステーションを前記一括バイアス画像形成ステーションとする画像形成装置。
【請求項7】
静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体表面と所定のギャップを隔てて対向配置された帯電部材とを有する画像形成ステーションを複数備えた画像形成装置の異常判定方法において、
少なくとも2つの画像形成ステーションを一括バイアス画像形成ステーションとして、それらに設けられた前記帯電部材に交流成分を有する帯電バイアス電圧を一括して印加し、
前記一括バイアス画像形成ステーションのうち1つを選択画像形成ステーションとして、該選択画像形成ステーションについては前記静電潜像担持体の表面を前記帯電部材による帯電後に除電する一方、該選択画像形成ステーション以外の前記一括バイアス画像形成ステーションについては前記静電潜像担持体表面の除電を行わない状態で、前記一括バイアス画像形成ステーションのそれぞれに設けられた前記帯電部材に流れる電流を一括して検出し、
その電流検出結果に基づいて、前記選択画像形成ステーションにおける前記静電潜像担持体と前記帯電部材とのギャップにおける異常放電の有無を判定する
ことを特徴とする画像形成装置の異常判定方法。
【請求項8】
前記一括バイアス画像形成ステーションを1つずつ順番に前記選択画像形成ステーションとして選択することによって、前記一括バイアス画像形成ステーションのうちギャップにおいて異常放電を生じる画像形成ステーションを特定する請求項7に記載の画像形成装置の異常判定方法。
【請求項1】
静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体を除電する除電手段と、前記静電潜像担持体表面と所定のギャップを隔てて対向配置された帯電部材とをそれぞれ有する複数の画像形成ステーションと、
前記複数の画像形成ステーションのうち少なくとも2つを一括バイアス画像形成ステーションとして、該一括バイアス画像形成ステーションのそれぞれ設けられた前記帯電部材に一括して交流成分を有する帯電バイアス電圧を印加するバイアス印加手段と、
前記一括バイアス画像形成ステーションのそれぞれに設けられた前記帯電部材に流れる電流を一括して検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段の電流検出結果に基づいて、前記静電潜像担持体と前記帯電部材とのギャップにおける異常放電を検知する検知手段と
を備え、
前記検知手段は、前記一括バイアス画像形成ステーションのうち1つを選択画像形成ステーションとして選択し、該選択画像形成ステーションに設けられた前記除電手段を作動させる一方、前記選択画像形成ステーション以外の前記一括バイアス画像形成ステーションに設けられた前記除電手段の作動を停止させながら、各一括バイアス画像形成ステーションの前記帯電部材に前記バイアス印加手段からの前記帯電バイアス電圧を印加したときの前記電流検出手段による電流検出結果に基づいて、選択画像形成ステーションにおける前記静電潜像担持体と前記帯電部材とのギャップにおける異常放電の有無を判定する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記電流検出手段は、前記帯電部材に流れる電流に含まれるパルス状成分を検出する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、所定の検出対象期間内に前記電流検出手段により検出されたパルスの数が所定の閾値を超えたとき、前記ギャップにおける異常放電が生じたと判定する請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記一括バイアス画像形成ステーションのそれぞれに設けられた前記帯電部材は、前記バイアス印加手段からみて互いに並列に接続されている請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記複数の画像形成ステーションは、所定の方向に移動する転写媒体の移動方向に沿った互いに異なる画像形成位置で、前記静電潜像担持体上に形成した画像を前記転写媒体上に転写するように構成された請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
複数の画像ステーションを使用して画像を形成する複数動作モードと、一の画像形成ステーションを使用して画像を形成する単独動作モードとを実行可能に構成された請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記複数動作モードのみに使用される画像形成ステーションを前記一括バイアス画像形成ステーションとする画像形成装置。
【請求項7】
静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体表面と所定のギャップを隔てて対向配置された帯電部材とを有する画像形成ステーションを複数備えた画像形成装置の異常判定方法において、
少なくとも2つの画像形成ステーションを一括バイアス画像形成ステーションとして、それらに設けられた前記帯電部材に交流成分を有する帯電バイアス電圧を一括して印加し、
前記一括バイアス画像形成ステーションのうち1つを選択画像形成ステーションとして、該選択画像形成ステーションについては前記静電潜像担持体の表面を前記帯電部材による帯電後に除電する一方、該選択画像形成ステーション以外の前記一括バイアス画像形成ステーションについては前記静電潜像担持体表面の除電を行わない状態で、前記一括バイアス画像形成ステーションのそれぞれに設けられた前記帯電部材に流れる電流を一括して検出し、
その電流検出結果に基づいて、前記選択画像形成ステーションにおける前記静電潜像担持体と前記帯電部材とのギャップにおける異常放電の有無を判定する
ことを特徴とする画像形成装置の異常判定方法。
【請求項8】
前記一括バイアス画像形成ステーションを1つずつ順番に前記選択画像形成ステーションとして選択することによって、前記一括バイアス画像形成ステーションのうちギャップにおいて異常放電を生じる画像形成ステーションを特定する請求項7に記載の画像形成装置の異常判定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−96534(P2008−96534A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275636(P2006−275636)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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