説明

画像形成装置の制御方法及びその画像形成装置の制御方法を用いた画像形成装置

【課題】 中抜けが起きない範囲で現像剤の劣化とカブリを最小限に抑えることができる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 潜像担持体(感光体ドラムY,M,C,K)と現像装置(3Y,3M,3C,3K)をそれぞれ個別に駆動可能な駆動装置を備えた中間転写方式の画像形成装置(カラープリンタ1)の制御方法において、潜像担持体と中間転写体(中間転写ベルト50)とが接触して回転駆動している接触走行時間に基づいて現像装置の駆動時間を決定する。具体的には、潜像担持体と中間転写体が接触して駆動し始めてから、潜像担持体と中間転写体の少なくとも一方が停止するまでの時間を接触走行時間として計測し、この接触走行時間から所定時間を差し引いて現像装置の第1の最小駆動時間(最小駆動時間A1)を決定し、この接触走行時間内における現像装置の駆動時間が、第1の最小駆動時間を下回らないように現像装置を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ、これらの複合機等の電子写真方式の画像形成装置に関し、詳しくは、感光体ドラムや中間転写ベルトの駆動モータと現像モータの駆動タイミングの制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置では、現像剤の劣化と感光体ドラムの駆動開始時及び停止時のカブリ現象(トナーが供給過剰となり感光体ドラム表面に飛び散って地汚れを起こしてしまう現象)を最小限にするために、主電源をONした装置(画像形成装置)の立ち上がり時や、紙詰まりジャムからの復旧時、中間転写ベルト上のパッチを読む光学センサの校正時(発光素子の光量調整時)などには、感光体ドラム(潜像担持体)と中間転写ベルト(中間転写体)が駆動している間、現像装置の駆動を停止する制御を行っている。
【0003】
しかし、感光体ドラムに潤滑剤を塗布する場合、現像装置が駆動していれば余分な潤滑剤を現像剤の穂で掻き取るため、中間転写ベルトに必要以上の潤滑剤が移動することはないが、感光体ドラムと中間転写ベルトが駆動し、現像装置は駆動しないという状態になると、感光体ドラム上の潤滑剤が中間転写ベルトに移動して、中間転写ベルトの摩擦係数を下げ、中間転写ベルトに転写されたトナー像が部分的に離脱する中抜け(虫喰い)現象が発生する原因となる。
【0004】
逆に、中抜け現象が発生しないようにするためには、少なくとも感光体ドラムと中間転写ベルトが接触して駆動している間は現像装置を駆動させていればよいが、その場合は現像剤に必要以上にストレスをかけていることになる。その上、感光体ドラムの駆動開始時と駆動終了時には現像バイアスと感光体電位の立ち上げ、立ち下げのタイミングのズレにより、カブリが発生してしまう。このため、従来の画像形成装置では、感光体ドラムを駆動してから現像装置を駆動し始め、現像装置が停止してから感光体ドラムの駆動も停止させる制御を行っている。
【0005】
例えば、特許文献1には、感光体ユニットが新品か否かを検知する検知手段を設け、この検知手段で感光体ユニットを新品と検知したとき、潤滑剤塗布手段による塗布動作を実施し、感光体駆動用モータの電流値を検出して感光体トルクを測定し、塗布動作時間を決定する画像形成装置が開示されている(特許文献1の図2参照)。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の発明では、現像装置の駆動時間が中間転写ベルトの摩擦係数に影響を及ぼすという知見はなく、感光体ユニットが新品か否かと感光体トルクで塗布動作時間を決定しており、感光体ドラムに塗布した潤滑剤が中間転写ベルトに移動してしまい、中間転写ベルトの摩擦係数が部分的に下がることによる中抜け(虫喰い)現象を効果的に防止することができないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、前記従来の画像形成装置の問題を解決するべく、感光体ドラム(潜像担持体)と中間転写ベルト(中間転写体)が接触して駆動する時間を用いて、現像装置の駆動時間を決定することで、中抜けが起きない範囲で現像剤の劣化とカブリを最小限に抑えることができる画像形成装置の制御方法及びその画像形成装置の制御方法を用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の画像形成装置の制御方法の発明は、表面に潜像を担持して回転駆動する潜像担持体と、この潜像担持体上の潜像をトナーによりトナー像に現像する現像装置と、前記潜像担持体に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置と、前記潜像担持体の表面と接触して回転駆動し、前記現像装置で現像された潜像担持体上のトナー像が転写される中間転写体と、前記潜像担持体と前記現像装置をそれぞれ個別に駆動可能な駆動装置と、を備えた中間転写方式の画像形成装置の制御方法において、前記潜像担持体と前記中間転写体とが接触して回転駆動している接触走行時間に基づいて現像装置の駆動時間を決定することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の画像形成装置の制御方法の発明は、請求項1に記載の画像形成装置の制御方法において、潜像担持体と中間転写体が接触して駆動し始めてから、潜像担持体と中間転写体の少なくとも一方が停止するまでの時間を接触走行時間として計測し、この接触走行時間から所定時間を差し引いて現像装置の第1の最小駆動時間を決定し、接触走行時間内における現像装置の駆動時間が、第1の最小駆動時間を下回らないように現像装置を駆動することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の画像形成装置の制御方法の発明は、請求項2に記載の画像形成装置の制御方法において、潜像担持体と中間転写体が接触して駆動し始めてから、潜像担持体と中間転写体の少なくとも一方が停止するまでの時間を接触走行時間として計測し、この接触走行時間の計測を所定回繰り返し、それら接触走行時間の平均値を算出し、算出した平均値に所定係数を掛けて現像装置の第2の最小駆動時間を決定し、この第2の最小駆動時間が第1の最小駆動時間を超える場合は、現像装置の駆動時間を延長して次回の接触走行時間内における現像装置の駆動時間が、第2の最小駆動時間を下回らないように現像装置を駆動することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の画像形成装置の制御方法の発明は、請求項1に記載の画像形成装置の制御方法において、潜像担持体と中間転写体が接触して駆動しており、現像装置が停止した時点から現像停止走行時間を計測し、この現像停止走行時間が所定時間を経過した場合は、停止していた現像装置を駆動することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の画像形成装置の制御方法の発明は、請求項1に記載の画像形成装置の制御方法において、潜像担持体と中間転写体が接触して駆動し、現像装置が停止している現像停止走行時間を累積して計測し、その現像停止走行累積時間が所定時間を超過した場合は、停止していた現像装置を駆動することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の画像形成装置の制御方法の発明は、請求項5に記載の画像形成装置の制御方法において、現像停止走行累積時間は、現像装置の連続駆動時間が所定時間を超過した場合にクリアされることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の画像形成装置の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成装置の制御方法を用いることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の画像形成装置の発明は、請求項7に記載の画像形成装置において、新品時に、潜像担持体の表面の摩擦係数が、中間転写体の表面の摩擦係数よりも0.2以上小さいことを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の画像形成装置の発明は、請求項7又は8に記載の画像形成装置において、現像装置に供給されるトナーには、潤滑剤塗布装置で塗布する潤滑剤と同成分からなる物質が含まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明は、前記のようであって、請求項1の発明によれば、表面に潜像を担持して回転駆動する潜像担持体と、この潜像担持体上の潜像をトナーによりトナー像に現像する現像装置と、前記潜像担持体に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置と、前記潜像担持体の表面と接触して回転駆動し、前記現像装置で現像された潜像担持体上のトナー像が転写される中間転写体と、前記潜像担持体と前記現像装置をそれぞれ個別に駆動可能な駆動装置と、を備えた中間転写方式の画像形成装置の制御方法において、前記潜像担持体と前記中間転写体とが接触して回転駆動している接触走行時間に基づいて現像装置の駆動時間を決定するので、現像装置を駆動させて現像剤の穂により過剰な潤滑剤を掻き取ることができ、中抜け現象を確実に防止することができる。また、中抜けが起きない範囲で現像剤の劣化とカブリを最小限に抑えることができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、請求項1に記載の画像形成装置の制御方法において、潜像担持体と中間転写体が接触して駆動し始めてから、潜像担持体と中間転写体の少なくとも一方が停止するまでの時間を接触走行時間として計測し、この接触走行時間から所定時間を差し引いて現像装置の第1の最小駆動時間を決定し、接触走行時間内における現像装置の駆動時間が、第1の最小駆動時間を下回らないように現像装置を駆動するので、潤滑剤が移動可能な潜像担持体と中間転写体とが接触して回転駆動している接触走行時間に基づいて現像装置を駆動すべき最小駆動時間を確実に確保することができ、中抜け現象を確実に防止することができると共に、中抜けが起きない範囲で現像剤の劣化とカブリを最小限に抑えることができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、請求項2に記載の画像形成装置の制御方法において、潜像担持体と中間転写体が接触して駆動し始めてから、潜像担持体と中間転写体の少なくとも一方が停止するまでの時間を接触走行時間として計測し、この接触走行時間の計測を所定回繰り返し、それら接触走行時間の平均値を算出し、算出した平均値に所定係数を掛けて現像装置の第2の最小駆動時間を決定し、この第2の最小駆動時間が第1の最小駆動時間を超える場合は、現像装置の駆動時間を延長して次回の接触走行時間内における現像装置の駆動時間が、第2の最小駆動時間を下回らないように現像装置を駆動するので、小サイズ紙が連続して出力された場合でも対応することができ、中抜け現象を確実に防止することができると共に、中抜けが起きない範囲で現像剤の劣化とカブリを最小限に抑えることができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、請求項1に記載の画像形成装置の制御方法において、潜像担持体と中間転写体が接触して駆動しており、現像装置が停止した時点から現像停止走行時間を計測し、この現像停止走行時間が所定時間を経過した場合は、停止していた現像装置を駆動するので、現像装置及び潜像担持体と中間転写体の駆動制御を簡易にして中抜け現象を確実に防止することができると共に、中抜けが起きない範囲で現像剤の劣化とカブリを最小限に抑えることができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、請求項1に記載の画像形成装置の制御方法において、潜像担持体と中間転写体が接触して駆動し、現像装置が停止している現像停止走行時間を累積して計測し、その現像停止走行累積時間が所定時間を超過した場合は、停止していた現像装置を駆動するので、より確実に潜像担持体から中間転写体への潤滑剤の移動を防止することができ、中抜け現象を確実に防止することができると共に、中抜けが起きない範囲で現像剤の劣化とカブリを最小限に抑えることができる。
【0022】
請求項6の発明によれば、請求項5に記載の画像形成装置の制御方法において、現像停止走行累積時間は、現像装置の連続駆動時間が所定時間を超過した場合にクリアされるので、現像剤に掛かる機械的ストレスを軽減することができる。
【0023】
請求項7の発明によれば、請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成装置の制御方法を用いるので、前記効果を画像形成装置において発揮することができる。
【0024】
請求項8の発明によれば、請求項7に記載の画像形成装置において、新品時に、潜像担持体の表面の摩擦係数が、中間転写体の表面の摩擦係数よりも0.2以上小さいので、通常潤滑剤が潜像担持体や中間転写体へ行き渡らず安定しない新品の状態でも中抜け現象を防止することができる。
【0025】
請求項9の発明によれば、請求項7又は8に記載の画像形成装置において、現像装置に供給されるトナーには、潤滑剤塗布装置で塗布する潤滑剤と同成分からなる物質が含まれているので、現像装置で余剰な潤滑剤を回収する際に、現像剤に潤滑剤が混入することのリスクが少なく、副作用がない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例に係る画像形成装置の内部構造の概略を正面視で示す構成説明図である。
【図2】同上のイエロー用の作像ユニット付近を拡大して示す鉛直断面図である。
【図3】従来の駆動モータと現像モータの駆動タイミングの制御の説明図である。
【図4】感光体ドラムの摩擦係数の測定方法を説明するための説明図である。
【図5】本発明の実施例に係る駆動モータと現像モータの駆動タイミングの制御の説明図である。
【図6】駆動モータと現像モータの駆動タイミングの制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態について説明する。
【0028】
[画像形成装置]
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の内部構造の概略を正面視で示す構成説明図である。図中の符号1は、本発明の画像形成装置の一実施の形態として例示する4連タンデム型中間転写方式の画像形成装置であり、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーからフルカラーの画像を形成するカラープリンタである。このカラープリンタ1は、装置全体の筐体である装置本体10と、この装置本体10の上部に配置され、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーに対応した4つのトナー容器を収容するトナー容器収容部2と、装置本体10の中央に配置され、前記4色のトナーからそれぞれの単色トナー像を形成する作像部3と、この作像部3の下方に配置され、作像部3のそれぞれの潜像担持体に静電潜像を書き込む露光部4と、作像部3の上方に配置され、作像部3で形成したトナー画像をシート材に転写する転写部5と、この転写部5の上方の一側面寄りに配置され、転写部5で転写されたトナー像をシート材に定着する定着部6と、装置本体10の最下部に配置され、被転写材であるシート材を転写部5に給紙する給紙部7と、装置本体10の上面に形成され、定着部6で画像が定着されたシート材をスタックする排紙部8などから構成されている。
【0029】
トナー容器収容部2は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれの新規トナーを個別に収容する4つのトナー容器2Y,2M,2C,2Kを備え、このトナー容器2Y,2M,2C,2Kは、それぞれ装置本体10から着脱自在に構成されており、後述の対応する各現像装置へ新規トナーを供給する機能を有している。各トナー容器に収容されている新規トナーが無くなると、装置本体10からトナー容器ごと外して新規のトナー容器と交換される。
【0030】
作像部3は、前記4色のトナーに対応する潜像担持体である4つの感光体ドラムY,M,C,Kを中心とする4つの作像ユニット3Y,3M,3C,3Kを備えており、各作像ユニット3Y,3M,3C,3Kでは、対応するトナー容器2Y,2M,2C,2Kから供給されるイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーを使用して、それぞれ単色のトナー像が形成される。なお、作像ユニットの詳細構成は後述する。
【0031】
露光部4は、半導体レーザ(LD)や発光ダイオード(LED)などの図示しないレーザ光源や回転駆動可能なポリゴンミラー、fθレンズなどを有し、レーザ光源で発するレーザ光をポリゴンミラー、fθレンズなどで偏向・集光・走査して感光体ドラムY,M,C,Kに照射し、一様に所定の極性に帯電させた感光体ドラムY,M,C,Kの外周表面を露光して帯電レベルを変化させ、静電潜像を形成する露光装置40から構成されている。
【0032】
転写部5は、中間転写体として半導電性の樹脂を基体とする離型層などが設けられた多層構造の無端ベルトからなる中間転写ベルト50と、この中間転写ベルト50を支持・張架する4つの支持ローラ51,52,53,54と、前記4つの感光体ドラムY,M,C,Kとそれぞれ中間転写ベルト50を挟んで対向する4つの1次転写ローラ55などから構成されている。この支持ローラ51は、駆動手段として図示しない駆動モータの駆動力が伝達可能に構成され、中間転写ベルト50を図の矢印A方向に回転駆動する駆動ローラとなっており、その他の支持ローラ52,53,54は、従動ローラとなっている。勿論、支持ローラ51,52,53,54のいずれか1つが駆動ローラとなっていればよい。この駆動ローラ51と中間転写ベルト50を挟んで対向する位置には、2次転写ローラ56が設けられ、この2次転写ローラ56は、中間転写ベルト50を挟んで駆動ローラ51に圧接されており、駆動ローラ51と2次転写ローラ56との間に2次転写ニップが形成されている。また、支持ローラ52と中間転写ベルト50を挟んで対向する位置には、中間転写ベルト50をクリーニングするクリーニングユニット57が設けられており、支持ローラ52は、このクリーニングユニット57のバックアップローラとしての機能を有している。
【0033】
各1次転写ローラ55は、空隙放電を考慮し、各感光体ドラムY,M,C,Kと中間転写ベルト50を挟んで当接する正対位置から中間転写ベルト50の移動方向下流側へ少しずらした位置に配設され、図示しないバイアス電源に接続されている接触方式の転写バイアス(転写電圧)印加手段である。これらの1次転写ローラ55は、図示しない接離機構により中間転写ベルト50の内周面と接離可能に構成されており、この接離機構に押圧されて各感光体ドラムY,M,C,Kへ圧接されることによりそれぞれ1次転写ニップを形成し、これらの各1次転写ニップにおいて各感光体ドラム上のトナー像と逆極性の1次転写バイアスが印加されて転写電界が形成され、クーロン力によりトナー像を引き寄せて各感光体ドラムから中間転写ベルト50の外周表面にトナー像を転写する仕組みとなっている。
なお、転写バイアス印加手段として、転写チャージャを用いた非接触方式のものでもよいが、本実施の形態では、転写チリの発生が少ない1次転写ローラが採用されている。
【0034】
2次転写ローラ56は、図示しない付勢手段により駆動ローラ51の外周において中間転写ベルト50に圧接され、2次転写ニップを形成するよう構成されており、図示しないバイアス電源に接続され、トナー像と逆極性の2次転写バイアスを印加する接触方式の転写バイアス印加手段となっている。また、駆動ローラ51が転写バイアス印加手段となっていてもよく、その場合、転写するトナー像とは同極性の転写バイアスを印加することになる。
【0035】
クリーニングユニット57は、中間転写ベルト50の外周表面に付着した転写残トナーをクリーニングブレードで掻き取って回収し、ファーブラシ等で離型剤を塗布するクリーニング装置であり、回収した転写残トナーは、クリーニングユニット57内から図示しない搬送手段により図示しない廃トナータンクまで搬送され、廃棄される。
【0036】
また、中間転写ベルト50の外周表面に対向して、図示しない光学センサが取り付けられており、この光学センサは、中間転写ベルト50上のトナー付着量に応じて出力し、その出力値を用いて、画像濃度の調整が行われる。
【0037】
定着部6は、無端状ベルトからなる定着ベルト60と、この定着ベルト60と図示しない付勢手段により付勢されて圧接可能な加圧ローラ61などから構成され、この定着ベルト60は、定着ベルト60を回転駆動する駆動ローラである定着ローラと、内部にハロゲンヒータからなる加熱手段を有して定着ベルト60を加熱する加熱ローラと、に張架され、定着ベルト60と加圧ローラ61とが定着ローラ外周で圧接されて密着し、定着ニップが形成される。そして、この定着ニップにおいて、搬送されてきたシート材に熱と圧力が加えられ、転写部5で転写されたトナー像がシート材に定着される。
【0038】
給紙部7は、所定の大きさのシート材(コピー用紙や葉書などの紙に限られず、OHPシートなどの樹脂シートを含むシート状のものを指す)を収容・ストックする給紙カセット70と、図示しない制御手段の制御信号に基づいて回転駆動し、シート材を搬送路Rに送り出すピックアップローラ71などが備えられている。各給紙カセット70は、底板が付勢手段で上方へ付勢され、収容するシート材の束をピックアップローラ71へ圧接する仕組みとなっている。また、搬送路Rには、シート材を搬送する複数の搬送ローラ対72、シート材の2次転写ニップへの搬送のタイミングを調整するレジストローラ対73などが設けられている。
【0039】
排紙部8は、装置本体10の上面に形成された排紙トレイ80と、この排紙トレイ80に装置本体10からシート材を排紙する排紙ローラ対81などを備え、定着部6を通過したシート材が排紙ローラ対81から排紙されて排紙トレイ80上に集積されるようになっている。
【0040】
[作像ユニット]
次に、カラープリンタ1の作像ユニットの構成について説明する。
図2は、図1のイエロー用の作像ユニット付近を拡大して示す鉛直断面図である。前述のように、カラープリンタ1は、中間転写ベルト50の下面に沿って表面移動方向上流側からイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順番に4つの作像ユニット3Y,3M,3C,3Kが配設されている(図1参照)。これらの作像ユニット3Y,3M,3C,3Kは、使用するトナーの色が相違するだけで略同様な構成となっているので、最上流に配設されたイエロー用の作像ユニット3Yを例に挙げて説明し、他は説明を省略する。
【0041】
図2に示すように、イエロー用の作像ユニット3Yは、回転駆動する感光体ドラムYを中心として、感光体ドラムYの外周表面に電荷を与えて一様に帯電させる帯電装置30Yと、感光体ドラムY上に形成された静電潜像に(イエロー色の)トナーを供給してトナー像に現像する現像装置31Yと、感光体ドラムYの外周表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置32Yと、1次転写後も感光体ドラムY上に残留・付着する残留トナーをクリーニングするクリーニング装置33Yと、などから構成され、それらが一体化されてプロセスカートリッジを構成し、カラープリンタ1から着脱可能となっている。また、帯電装置30Yと現像装置31Yとの間には、露光装置40(図1参照)からレーザ光が通過・照射されるスペースとして露光領域が設けられ、現像装置31Yと潤滑剤塗布装置32Yとの間が、1次転写ローラ55と対向し、転写が行われる前述の1次転写ニップとなっている。
【0042】
感光体ドラムYは、直径30mm程度のアルミニウム製の中空円筒基体の外周表面上に有機感光層が形成され、更にその感光層の上にポリカーボネイト系の樹脂で保護層が形成されたローラ形状の有機感光体[OPC(Organic Photoconductors)]であり、前記駆動ローラ51と共通の駆動手段である図示しない駆動モータにより図の矢印方向に回転駆動可能となっている。なお、感光層と保護層との間に中間層を設けてもよく、直径も30〜90mm程度であれば適用可能である。
【0043】
帯電装置30Yは、5〜100μm程度の微小ギャップをもって感光体ドラムYと近接して対向配置され、感光体ドラムYの外周表面を所定の極性に一様に帯電させる帯電部材としての帯電ローラ30Yaと、この帯電ローラ30Yaの外周表面に回転しながら接触して付着するトナーをクリーニングする帯電クリーニング部材30Ybなどから構成されている。
【0044】
この帯電ローラ30Yaは、直径10mmの中空円柱上の導電性芯金の外周面に、高分子型イオン導電剤が分散する熱可塑性樹脂組成物(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン及びその共重合体等)を被覆形成し、その表面を硬化剤により硬化皮膜処理したものが用いられている。また、前述の感光体ドラムYとの微小ギャップの好ましい範囲は、30〜65μmであり、本実施例に係る帯電装置では、50μmに設定されている。
【0045】
なお、帯電ローラ30Yaの表面には、ゴムなどの変形し易い部材を使用することも可能であるが、変形し易いと感光体ドラムYとの微小ギャップの均一な維持が困難であり、帯電ローラ30Yaの中央が撓んで感光体ドラムYと接触し、トナー像に乱れを生じる可能性があるので、非接触帯電方式を採用する場合には、撓みが少ない硬質の部材を用いることが望ましい。
【0046】
また、本実施例に係る帯電ローラ30Yaは、図示しない電源に接続されて所定の電圧が印加可能となっており、前記微小ギャップにおいて放電することにより感光体ドラムYの外周表面を均一に帯電するよう構成されている。印加する電圧は、本実施例では、直流成分である700VのDC電圧に交流成分である周波数が2kHz、ピークツーピーク電圧が2kVの矩形波のAC電圧を重畳した交番電圧が用いられている。このように、帯電ローラ30Yaに印加する印加電圧として前記のような交番電圧を印加することにより、微小ギャップの変動による帯電電位のばらつきなどの影響が抑制されて均一な帯電が可能となるため好ましい。
【0047】
現像装置31Yは、2成分現像剤を用いた2軸搬送方式の現像装置であり、主にトナーと磁性キャリアからなる粉体状の2成分現像剤を収容する装置全体の筐体である現像ケース31Yaと、現像剤を担持して感光体ドラム上の静電潜像にトナーを供給する現像剤担持体である現像ローラ31Ybと、この現像ローラ31Ybに現像剤を撹拌しながら帯電させて供給する2本の搬送スクリュー31Ycと、現像ローラ31Ybに所定間隔の間隙を介して対向配置され、現像ローラ31Ybに担持される現像剤の層厚を規制する層厚規制部材であるドクタブレード31Ydと、2成分現像剤のトナー濃度を検知する濃度検知手段である図示しない濃度センサなど、から主に構成されている。
【0048】
また、現像ローラ31Ybは、現像ケース31Yaに固定された永久磁石であるマグネットMYと、このマグネットMYに外嵌されて図の矢印法方向に図示しない駆動手段である現像モータで駆動されて回転可能な現像スリーブSYと、から構成され、マグネットMYの磁力で現像スリーブSY上に担持された現像剤が、現像スリーブSYの回転に伴って、感光体ドラムYと近接対向する現像領域に搬送され、感光体ドラムY上の静電潜像に供給される。静電潜像に供給されなかった現像剤は、更なる現像スリーブSYの回転に伴ってマグネットMYの反発域に達し、現像ケース31Ya内に落下して搬送スクリュー31Ycによって再度現像ローラ31Ybに供給される。
【0049】
潤滑剤塗布装置32Yは、装置全体の筐体である潤滑剤塗布ケース32Yaと、この潤滑剤塗布ケース32Ya内に収容された直方体状のステアリン酸亜鉛からなる固形潤滑剤32Ybと、この固形潤滑剤32Ybを回転しながら掻き取って感光体ドラムYの外周表面に塗布するブラシローラ32Ycと、このブラシローラ32Ycへ固形潤滑剤32Ybを押圧するコイルスプリングを有した加圧手段32Ydなどから構成され、加圧手段32Ydで押圧された固形潤滑剤32Ybを少しずつブラシローラ32Ycで回転しながら掻き取って感光体ドラムYの外周表面に塗布するようになっている。
【0050】
この固形潤滑剤32Ybは、乾燥した固体疎水性潤滑剤を用いることが可能であり、ステアリン酸亜鉛の他にも、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉄、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸銅、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸マグネシウムなどのステアリン酸基を持つものを用いることができる。また、同じ脂肪酸基であるオレイン酸亜鉛、オレイン酸マンガン、オレイン酸鉄、オレイン酸コバルト、オレイン酸鉛、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸銅、や、パルチミン酸、亜鉛パルチミン酸コバルト、パルチミン酸銅、パルチミン酸マグネシウム、パルチミン酸アルミニウム、パルチミン酸カルシウムを用いてもよい。他にも、カプリル酸鉛、カプロン酸鉛、リノレン酸亜鉛、リノレン酸コバルト、リノレン酸カルシウム、及びリコリノレン酸カドミウム等の脂肪酸、脂肪酸の金属塩なども使用できる。さらに、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ろう、オオバ油、みつろう、ラノリンなどのワックス等も使用することができる。
【0051】
ブラシローラ32Ycは、ブラシ繊維の太さが細すぎると、感光体ドラムYの外周表面に当接したときに毛倒れを起こし易くなり、逆にブラシ繊維が太すぎると繊維の密度を高くすることができなくなる。また、ブラシ繊維の密度が低いと感光体ドラムYの表面に当接するブラシ繊維の本数が少ないため、潤滑剤を均一に塗布することができず、逆にブラシ繊維の密度が高すぎると繊維と繊維の隙間が小さくなり、掻き取った潤滑剤の粉体の付着量が減るため、塗布量が不足してしまう。そこで、ブラシローラ32Ycのブラシ繊維の太さは、3〜8デニール[D]が好ましく、ブラシ繊維の密度は2万〜10万本/inch2が好ましい。
【0052】
クリーニング装置33Yは、感光体ドラムYに当接し1次転写後も感光体ドラムYの外周表面に付着する1次転写残トナーを掻き取ってクリーニングするクリーニングブレード33Yaと、このクリーニングブレード33Yaを感光体ドラムYに所定圧で圧接する圧接手段33Ybと、クリーニングブレード33Yaで掻き取った残留トナーを図示しない廃トナーボトルなどへ搬送する搬送スクリュー33Ycなど、から構成されている。
【0053】
(作像ユニットの動作)
次に、作像ユニットの動作について図2を用いて説明する。
先ず、帯電ローラ30Yaにより感光体ドラムYの外周表面を均一に所定の極性に帯電させ、この帯電ローラ30Yaより感光体ドラムYの回転方向下流域において、露光部4から画像情報に基いてレーザ光が照射され、一様に帯電させた感光体ドラムYの表面電位が照射された部分だけ低下することにより感光体ドラムY上に静電潜像が形成される。そして、前述のように現像装置31Yで静電潜像がトナー像化(現像)され、このトナー像は、感光体ドラムYの回転に伴って1次転写ニップに移動して行き、そこで、1次転写ローラ55から1次転写バイアスが印加され、クーロン力により中間転写ベルト50表面へトナー像が移動して転写される。また、1次転写後も感光体ドラムYの外周表面に付着する1次転写残トナーが、クリーニング装置33Yでクリーニングされ、再度の画像形成に備えられる。
【0054】
(画像形成動作)
次に、カラープリンタ1の画像形成動作について図1及び図2を用いて説明する。
先ず、前述のように、作像ユニット3Yにおいてイエローの単色トナー像が感光体ドラムY上に形成される。続いて、1次転写ニップまで感光体ドラムYを回転させ、そこで、1次転写ローラ55により、トナーの極性とは逆極性(例えば、プラス)の1次転写バイアスが印加され、静電引力により中間転写ベルト50にイエロー単色のトナー像が転写される。これと同様に、その他の作像ユニット3M,3C,3Kにおいても単色トナー像の画像形成が行われると共に、中間転写ベルト50の回転のタイミングに合わせてイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの順番で1次転写が行われ中間転写ベルト50上に重畳されて、フルカラーのトナー像が形成される。
【0055】
一方、給紙部7から搬送されてきたシート材がレジストローラ対73により転写とのタイミングが調整されて2次転写ニップに送られる。そこで、2次転写ローラ56により2次転写バイアスが印加され、静電引力により中間転写ベルト50上のフルカラーのトナー像がシート材上に転写される。次に、この未定着のトナー像を表面に担持したシート材が定着部6の定着ニップに送られ、熱と圧力が加えられて定着される。このように、シート材に画像が定着された後、排紙ローラ対81でシート材が排紙部8に排出されてスタックされる。また、2次転写後の中間転写ベルト50の表面に転写後も付着する転写残トナーは、クリーニングユニット57により除去され、再度の画像形成動作に備えられる。そして、クリーニングユニット57で除去された転写残トナーは、図示しない廃トナータンクなどに運ばれ廃棄される。
【0056】
(駆動タイミングの制御)
次に、従来の駆動モータと現像モータの駆動タイミングの制御について図3を用いて説明する。
従来の一般的な制御では、現像剤の劣化を防ぐため、駆動モータ(駆動ローラ及び各感光体ドラムを駆動する駆動手段、以下同じ)の駆動開始時刻T10よりも少しだけ遅れた時刻T11に現像モータの駆動を開始する。作像が終了した後、時刻T12に現像モータを停止し、感光体ドラム表面の除電などのジョブエンド動作を行ってから時刻T13に駆動モータを停止する。T20、T21、T22、T23は、2回目の作像動作であり、1回目のT10,T11,T12,T13にそれぞれ対応している。図示はしていないが、3回目の作像動作は、T30,T31,T32,T33、n回目の作像動作は、Tn0,Tn1,Tn2,Tn3というように、それぞれ1回目のT10,T11,T12,T13に対応して前述の制御が繰り返される。
【0057】
ここで示したタイミングは一度に何枚プリントを行うか、トナー濃度調整動作の有無、画像濃度調整動作の有無、センサの構成動作の有無などによって、異なった値をとり得る。本実施例に係るカラープリンタ1の制御においては、現像立ち上げ動作に1秒、現像立ち下げ動作に3秒、プリントに1秒、連続プリントの紙間が0.5秒、画像濃度調整動作に10秒かかるため、一度に一枚しかプリントを行わず、画像濃度調整動作も行わない場合は時間T12−T11=立ち上げ1秒+立ち下げ3秒+プリント1秒=5秒となるが、一度に100枚のプリントを行いジョブエンドに画像濃度調整動作を行う場合はT12−T11=立ち上げ1秒+立ち下げ3秒+プリント1秒×100枚+紙間0.5秒×99枚+画像濃度調整10秒=163.5秒となり、大きく異なる。
【0058】
また、ジョブエンドに中間転写ベルトに対向する光学センサの校正動作を行う場合、通常は中間転写ベルト上にトナーが存在しない状態で校正動作を行うため、現像モータを回す必要がない。したがって、従来の制御では、この動作は図3のT12〜T13の間に行われる。つまり、現像モータは停止しているが、駆動モータは駆動している状態で行われる。本実施例のプリンタ1の制御では、この動作に20秒かかる。光学センサの校正を行わない場合は、感光体ドラムの除電などの動作だけで済み、T13−T12は3秒であるが、光学センサの校正を行う場合は、光学センサの校正を行わない場合よりもT13−T12が20秒長くなって23秒となる。
【0059】
(回転時間と摩擦係数及び中抜け現象の関係)
次に、駆動モータと現像モータの回転時間とそれぞれの摩擦係数及び中抜け現象の関係について以下の実験を通して考察する。図4は、感光体ドラムの摩擦係数の測定方法を説明するための説明図である。
【0060】
感光体ドラムの摩擦係数の測定方法は、図4に示すように、オイラーベルト方式にて測定した。即ち、ベルトとして中厚の上質紙を紙すきが長手方向になるようにして感光体ドラムのドラム円周1/4に張架し、ベルトの一方に0.98N(100gf)の荷重を掛け、他方にフォースゲージであるデジタルプッシュプルゲージを設置して、ベルトが移動した時点でのデジタルプッシュプルゲージが計測する荷重を読み取って、次式(数1)に代入して算出した。なお、中厚の上質紙としてRICOH Type6000 70Wを使用した。
【0061】
【数1】

但し、μ:静止摩擦係数、F:測定値
【0062】
また、中間転写ベルトの摩擦係数の測定方法は、白綿布JISL-0803綿3号を使用してHEIDON トライボギア ミューズTYPE:94i−IIにて測定を行った。
【0063】
<実験1>
駆動モータと現像モータを両方駆動し、中間転写ベルト、感光体ドラム、現像ローラをそれぞれ回転させた状態で150秒間空回しを行った後、中間転写ベルト、感光体ドラムの各摩擦係数を計測したところ、中間転写ベルトの摩擦係数は0.4であり、感光体摩擦係数は0.13であった。この状態でプリントを行っても出力画像に中抜けは発生しなかった。この150秒間の駆動モータと現像モータの空回し後のプリント動作は、100枚連続プリント後のプリント動作を実験的に作り出したものである。
【0064】
<実験2>
駆動モータを駆動させ、中間転写ベルト及び感光体ドラムを回転させ、現像モータは駆動させずに20秒間の空回しを行った後、中間転写ベルト、感光体ドラムの各摩擦係数を計測したところ、中間転写ベルトの摩擦係数が0.24であり、感光体ドラムの摩擦係数が0.13であった。この状態でプリントを行うと出力画像に中抜けが発生した。この駆動モータのみの20秒間の空回し後のプリント動作は、光学センサの校正動作直後のプリント動作を実験的に作り出したものである。
【0065】
<実験3>
駆動モータを駆動させて中間転写ベルト及び感光体ドラムを連続回転させ、現像モータで現像ローラを5秒間空回しした後、4秒間停止させる動作を10回繰り返した後、中間転写ベルト、感光体ドラムの各摩擦係数を計測したところ、中間転写ベルトの摩擦係数は0.35であり、感光体ドラムの摩擦係数は0.13であった。この状態でプリントを行っても中抜けは発生しなかった。この一連の動作は、1枚プリントだけ出力するプリント動作を10回繰り返した状態に相当する。
【0066】
以上の実験により、プリント動作の状況によって現像モータの駆動時間と駆動モータの駆動時間の関係は大きく変化し、それによって中間転写ベルトの摩擦係数も大きく変化してしまい、出力画像の中抜け現象に大きな影響を及ぼすことが分かる。特に、実験2から現像モータが停止しているため現像剤の穂による過剰な潤滑剤の除去が行われること無く、中間転写ベルトと感光体ドラムの接触走行により感光体ドラムから潤滑剤が中間転写ベルトへ移行し、中間転写ベルトの表面の摩擦抵抗が下がったものと推測される。しかし、従来の制御では、現像剤劣化防止のために現像モータの駆動時間をできる限り少なくするように制御することは考えられているものの、駆動モータの駆動時間によって現像モータの駆動時間を延長するよう制御して過剰な潤滑剤の移行を防止するという発想はなく、実験2からも分かるように、光学センサの校正動作直後のプリント動作においては、出力画像の中抜け現象を防ぐことができない。
【0067】
次に、本発明の実施例に係る駆動モータと現像モータの駆動タイミングの制御について説明する。
【実施例】
【0068】
前述の感光体ドラムから中間転写ベルトへ過剰な潤滑剤が移行して、中間転写ベルトの表面の摩擦係数が下がり、中抜け現象を引き起こしてしまう問題は、現像モータを駆動させて現像ローラを空転させ、現像ローラが担持する現像剤の穂により過剰な潤滑剤を掻き取ることで解決できる。よって、本実施例に係る制御では、駆動モータを駆動させて潜像担持体である感光体ドラムと中間転写体である中間転写ベルトを駆動させ、この時間を駆動時間t(接触走行時間)として計測し、この駆動時間tから現像剤の劣化防止を考慮して実験等で求められた所定時間X(本実施例では、4秒)を差し引いて現像装置の最小駆動時間A1(第1の最小駆動時間)を決定する。そして、次回のプリント時において感光体ドラムから中間転写ベルトとの駆動時間t内における現像装置の駆動時間が、最小駆動時間A1を下回らないように現像装置を駆動する。つまり、感光体ドラムと中間転写ベルトが駆動している時間のうち最小駆動時間A1だけは、必ず現像装置が駆動しているようにする、そうすれば、余分な潤滑剤は、現像ローラの空転時に現像ローラが担持する現像剤の穂により掻き取ることができるからである。
【0069】
以上のように制御すれば、通常は中抜けが起こらない制御を行うことができる。しかし、感光体ドラムと中間転写ベルトの駆動時間tから所定時間を差し引いて現像装置の最小駆動時間A1を決定する場合は、駆動時間tが短い場合に、現像装置の駆動時間が極端に短くなる可能性がある。例えば、A4用紙より小さい小サイズ紙を通紙して出力する場合、駆動時間tに対する現像装置の最小駆動時間A1が相対的に小さくなり、感光体ドラム上の潤滑剤が中間転写ベルトへ過剰に移行するのを防げない可能性がある。
【0070】
したがって、A4サイズ以上の長さの通紙に関しては前述の制御でよいが、それよりも駆動時間tが短くなることがある場合は、次のように制御する。先ず、前記と同様に、駆動モータを駆動させて潜像担持体である感光体ドラムと中間転写体である中間転写ベルトを駆動させ、この時間を駆動時間tn(n回目の接触走行時間)として計測するが、この駆動時間tnの計測を所定回(本実施例では3回)繰り返し、それら駆動時間t1〜t3の平均値ta[ta=(t1+t2+t3)/3]を算出する。次に、算出した平均値taに所定の割合である所定係数Xを掛けて現像装置の最小駆動時間A2(第2の最小駆動時間)を決定する。そして、この最小駆動時間A2が前述の最小駆動時間A1を超えた場合は、次回(n+1回目)のプリント時に現像装置の駆動時間を延長して駆動時間tn+1内における現像装置の駆動時間が、最小駆動時間A2を下回らないように現像装置を駆動する。つまり、過去所定回数の駆動モータの駆動時間の平均値に対する過去所定回数の現像モータの駆動時間の平均値が一定値を超えた場合も現像モータの駆動時間を延長する。なお、所定係数Xの設定方法は後述する。
【0071】
具体的に説明すると、図5に示すように、本発明の実施例に係る制御では、時刻T12において現像モータが停止したタイミングから時間を計測し始め、所定時間aが経過した後も駆動モータが回転していれば現像モータの駆動を再び開始するよう制御する。この所定時間aは、前記実験3のように駆動モータを連続で駆動させた状態で、現像モータを間欠駆動させる実験を行い、その後のプリントでの中抜け現象の有無を確かめることで求めることができる。実験における一回の現像モータの駆動時間は、1枚プリント時の現像モータの駆動時間に設定するのが好ましい。現像モータを停止させる時間を変えて実験を行い、中抜け現象が発生しない停止時刻を求めることで所定時間aが求まり、本実施例のプリンタ1では、a=4秒であった。
【0072】
本実施例ではジョブエンド後の動作について言及しているが、ジョブエンド後動作に限らず、画像形成装置の主電源ON時や各種調整動作の際にも本実施例に係る制御を適用することができる。駆動モータが駆動し、中間転写ベルト及び感光体ドラムが回転している状態で、現像ローラが停止していれば、時刻をカウントアップしていき、所定時間aを超えたら現像ローラを駆動させる。時刻のカウントアップは、感光体ドラムが一度停止しても、再び現像モータが停止した状態で駆動モータが駆動し始めれば、前の値をクリアせずに累積保存するものとする。
【0073】
また、駆動モータが駆動した状態で、現像モータが駆動していない時刻のカウントアップは、現像剤へ過度のストレスが掛からないように所定時間b以上に長く現像モータが連続で駆動すればクリアされるものとする。ここで、所定時間bは、1枚だけプリントした時の現像モータの駆動時間に設定されている。
【0074】
さらに、過去所定回数の駆動モータの駆動時間の平均値に対する過去所定回数の現像モータの駆動時間の平均値が一定値を超えた場合も現像モータの駆動時間を延長する。即ち、n回目の現像モータの駆動時間Tdm(n)=(Tn2−Tn1)+(Tn5−Tn4)、n回目の駆動モータの駆動時間Tom(n)=Tn3−Tn0とすると、(Tdm(n)+Tdm(n−1)+・・・+Tdm(n−C))/(Tom(n)+Tom(n−1)+・・・+Tom(n−C))が所定値Xを超えた場合、n+1回目の作像においては、駆動モータ停止命令が出てから現像モータを停止させ、除電などの処理を行って駆動モータを停止させる。ここで、Cは平均を取る回数であり、本実施例に係る制御では、3回としている。所定値(所定係数)Xは、実験3と同等な実験により、駆動モータの回転9秒に対して、現像モータを5秒回転させていれば中抜けは起こらないことから、X=5/9としている。
【0075】
フローチャートで説明すると、図6に示すように、プリント終了をトリガーとして、駆動モータが駆動している状態(感光体ドラムと中間転写ベルトとが接触して回転走行している状態)で現像モータが停止すると同時に現像停止走行時間のカウントアップが開始される。そして、step1において、駆動モータの停止命令が同時に出ているかどうかを確認し、駆動モータ停止命令が出ている場合は、除電やバイアス立ち下げなどの停止準備動作を行って駆動モータを停止する。
step1の時点で現像モータが駆動している場合は、現像モータを停止させてから、除電やバイアス立ち下げなどの停止準備動作を行って駆動モータを停止する。
駆動モータが停止されたら、現像停止走行時間のカウントアップも停止し、計測した時間を現像停止走行時間として保存する。このとき、この現像停止走行時間はクリアされるまで累積して加算されて現像停止走行累積時間として保存されたうえで全ての工程が終了する。
【0076】
また、step1において、駆動モータの停止命令が出ていない場合は、step2において、現像停止走行累積時間が所定時間a(本実施例では、4秒)を超えているかどうかを判断する。現像停止走行累積時間が所定時間aを超えるか、駆動モータの停止命令が出るまでは、step1、step2間をループする。
【0077】
そして、step2において、現像停止走行累積時間が所定時間aを超えた場合には、現像モータの駆動を再開すると共に、現像停止走行時間のカウントアップを停止し、計測した時間を累積して加算して現像停止走行累積時間として保存する。そのうえ、現像モータの駆動時間のカウントアップを開始し、step3において、現像モータの駆動時間が、所定時間bを超えた場合には現像停止走行累積時間がクリアされてstep1に戻るが、現像モータの連続駆動時間が所定時間bを超えない場合は、現像停止走行時間は、累積された現像停止走行累積時間のままstep1に戻り、駆動モータの停止命令が出るまでループする。
【0078】
以上のように、駆動モータと現像モータの駆動タイミングを制御することにより、余分な潤滑剤を現像ローラの空転時に現像ローラが担持する現像剤の穂により掻き取ることで感光体ドラムから中間転写ベルトへ過剰な潤滑剤の移行を抑え、中間転写ベルトの表面抵抗が下がることを防いで、中抜け現象を防止することができるのに加え、現像装置の駆動時間を最小限にすることにより、現像剤に掛かるストレスを軽減して、現像剤の劣化とカブリを抑えることができる。
【0079】
しかし、前述の制御は、画像形成装置を継続的に使用して感光体ドラムと中間転写ベルト上の潤滑剤量が安定した際に有効であるが、画像形成装置が新品の状態では感光体ドラム、中間転写ベルト上の潤滑剤量が安定せず、制御によって中抜けを防止することが難しい。そのため、新品の感光体ドラムの摩擦係数が中間転写ベルトの摩擦係数よりも小さければ、新品の状態でも中抜け現象を防止できるため好ましい。具体的には、前記実験3などの実験結果から新品時に潜像担持体である感光体ドラムの表面の摩擦係数が、中間転写体である中間転写ベルトの表面の摩擦係数よりも0.2以上小さいと前述の制御によって中抜けを防止することができる。
【0080】
また、本実施例に係る制御では、感光体ドラムに塗布し過ぎた潤滑剤を、現像装置で回収することで、必要以上の潤滑剤が中間転写ベルトに移動することを防いでいるが、潤滑剤が現像剤に混入した場合、帯電異常が増えたり、現像剤との相性によっては凝集体を形成してしまったりするなどの副作用がある。そのため、あらかじめ潤滑剤の成分を含む系を現像剤として使用すれば、現像剤に潤滑剤が混入することのリスクが少なく、副作用なく回収することができるため好ましい。つまり、本発明の実施の形態に係る現像装置で使用するトナーには、潤滑剤塗布装置で塗布する潤滑剤と同成分からなる物質が含まれていればよい。潤滑剤が全く含まれていない現像剤が0.01%の潤滑剤を回収すると、帯電特性が劇的に変化してしまうが、潤滑剤の成分を元々0.1%含でいる現像剤が0.01%の潤滑剤を回収しても、大きな変化なく使用することができるからである。
【0081】
なお、この発明の実施の形態に係る画像形成装置として4連タンデム型の中間転写方式のカラープリンタ1を例に挙げて説明したが、必ずしもこのようなものに限られず、例えば、モノクロ用のプリンタやファクシミリ(FAX)などにも本発明を適用することができる。特に、潜像担持体である感光体ドラムと中間転写体である中間転写ベルトを1つの駆動モータで駆動する場合を例に挙げて説明したが、両者を別々に駆動するようにしても本発明が成立することは明らかである。例えば、カラープリンタにおいて白黒モードでプリントする場合に、Y,M,Cの感光体ドラムと中間転写ユニットを離間させ、駆動を止めておく制御が知られているが、この場合にも本発明は適用可能である(2色モードプリントのときも同様)。また、現像装置として2成分現像方式の現像装置を例示したが、1成分現像方式の現像装置であっても適用可能である。要するに、潜像担持体と、現像装置と、潤滑剤塗布装置と、中間転写体と、潜像担持体と現像装置をそれぞれ個別に駆動可能な駆動装置を備えた中間転写方式の画像形成装置には適用することができる。
【0082】
そして、実施の形態の説明におけるトナー容器収容部、露光部、転写部、定着部、給紙部、排紙部、作像部などは、あくまでも一例を示したものであって、他の公知の装置・手段などの構成を採用することができる。その場合でも、前記課題に対して同様の作用効果を奏することは明らかである。また、図面で示した各構成部材の形状や構造等も、あくまでも好ましい一例を示すものであり、特許請求の範囲内で適宜設計変更可能であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0083】
1 カラープリンタ(画像形成装置)
Y,M,C,K 感光体ドラム(潜像担持体)
3Y,3M,3C,3K 作像ユニット
30Y 帯電装置
31Y 現像装置
31Yb 現像ローラ(現像剤担持体)
32Y 潤滑剤塗布装置
5 転写部
50 中間転写ベルト(中間転写体)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特開2005−181742号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に潜像を担持して回転駆動する潜像担持体と、この潜像担持体上の潜像をトナーによりトナー像に現像する現像装置と、前記潜像担持体に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置と、前記潜像担持体の表面と接触して回転駆動し、前記現像装置で現像された潜像担持体上のトナー像が転写される中間転写体と、前記潜像担持体と前記現像装置をそれぞれ個別に駆動可能な駆動装置と、を備えた中間転写方式の画像形成装置の制御方法において、
前記潜像担持体と前記中間転写体とが接触して回転駆動している接触走行時間に基づいて現像装置の駆動時間を決定することを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項2】
前記潜像担持体と前記中間転写体が接触して駆動し始めてから、前記潜像担持体と前記中間転写体の少なくとも一方が停止するまでの時間を接触走行時間として計測し、
この接触走行時間から所定時間を差し引いて現像装置の第1の最小駆動時間を決定し、前記接触走行時間内における前記現像装置の駆動時間が、第1の最小駆動時間を下回らないように前記現像装置を駆動することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項3】
前記潜像担持体と前記中間転写体が接触して駆動し始めてから、前記潜像担持体と前記中間転写体の少なくとも一方が停止するまでの時間を接触走行時間として計測し、
この接触走行時間の計測を所定回繰り返し、それら接触走行時間の平均値を算出し、算出した平均値に所定係数を掛けて現像装置の第2の最小駆動時間を決定し、この第2の最小駆動時間が前記第1の最小駆動時間を超える場合は、前記現像装置の駆動時間を延長して次回の接触走行時間内における前記現像装置の駆動時間が、第2の最小駆動時間を下回らないように前記現像装置を駆動することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項4】
前記潜像担持体と前記中間転写体が接触して駆動しており、前記現像装置が停止した時点から現像停止走行時間を計測し、この現像停止走行時間が所定時間を経過した場合は、停止していた現像装置を駆動することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項5】
前記潜像担持体と前記中間転写体が接触して駆動し、前記現像装置が停止している現像停止走行時間を累積して計測し、その現像停止走行累積時間が所定時間を超過した場合は、停止していた現像装置を駆動することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項6】
前記現像停止走行累積時間は、前記現像装置の連続駆動時間が所定時間を超過した場合にクリアされることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成装置の制御方法を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
新品時に、前記潜像担持体の表面の摩擦係数が、中間転写体の表面の摩擦係数よりも0.2以上小さいことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記現像装置に供給されるトナーには、前記潤滑剤塗布装置で塗布する潤滑剤と同成分からなる物質が含まれていることを特徴とする請求項7又は8に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−154055(P2011−154055A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13696(P2010−13696)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】