説明

画像形成装置

【課題】本発明は、互いに異なる色の現像剤の混色による複数の画像間の色変化を抑制することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置10は、画像出力装置400と、画像処理装置200とを有する。画像出力装置400は、感光体ドラム422と、互いに異なる色の現像剤が収納された現像カートリッジ462Y、462M、462C、462Kと、異なる色の現像剤が付着し、付着した現像剤を感光体ドラム422に搬送し、残量した現像剤が剥離されるとの動作が繰り返される現像ロール456を有する。画像処理装置200は、異なる色の現像剤の混色に応じて画像信号の色特性を変更する色変換特性変更手段212を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる色の現像剤を収納する収納部を有し、各色の現像剤像を像担持体上に形成し、異なる色の現像剤像を順次転写媒体に転写する画像形成装置であって、複数の現像剤収納部に収納された現像剤をそれぞれ付着し、付着した現像剤を前記像担持体に搬送した後、残留した現像剤が剥離されるとの動作が繰り返される1つの搬送部材を有する画像形成装置の出願がなされているが知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−20599号公報
【0004】
この画像形成装置においては、搬送部材である現像ロールが各色の現像剤で共通して用いられ、しかも現像後の現像剤が現像ロールから剥離され現像剤収容部に回収される際、現像ロール、及びその周辺に残留した現像剤が次の色の現像剤付着時に混入することにより混色が発生する。
【0005】
混色に対しては、異なる色のトナーを収容する現像装置を有し、各色のトナー像を像担持体上に形成し、異なる色のトナー像を順次転写媒体に転写する画像形成装置であって、転写後に像担持体上に残ったトナーを回収し、回収したトナーを現像装置に供給して再利用する画像形成装置において、画像形成装置の動作を制御する制御部を有し、該制御部は割り込み信号により自己診断モードを開始し、前記自己診断モードは前記現像装置内のトナーの混色状態の検出を含む画像形成装置の診断を行う画像形成装置が知られている(特許文献1)。
【0006】
【特許文献2】特開2004−20599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、現像装置内のトナーの混色状態が特定レベル以上の場合に、トナーの一部入れ替えモードを実行することで、トナーのリフレッシュを可能とするものでありリフレッシュした後、次のリフレッシュまでの間は、混色の進行により画像出力を行うにつれ出力画像の色変化が生じることがあった。
【0008】
本発明の目的は、1つの現像ロールを各色現像剤で共通で用いる画像形成装置において、互いに異なる色の現像剤の混色による複数の画像間の色変化を抑制することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る本発明は、画像を出力する画像出力手段と、入力画像信号を出力画像信号に変換して前記画像出力手段に出力する画像処理手段と、を有し、前記画像出力手段は、少なくとも潜像を保持する像保持体と、前記像保持体に保持された潜像を現像するために用いられる互いに異なる色の現像剤が収納された複数の現像剤収納部と、前記複数の現像剤収納部に収納された現像剤をそれぞれ付着し、付着した現像剤を前記像担持体に搬送した後、残留した現像剤が剥離されるとの動作が繰り返される1つの搬送部材と、を有し、前記画像処理手段は、互いに異なる色の現像剤の混色に応じて画像信号の色変換特性を変更する変更手段を有する画像形成装置である。
【0010】
請求項2に係る本発明は、前記変更手段は、画像出力に用いられる色の現像剤に他の色の現像剤が混入する量を予測して、画像信号における各色成分を増減させるように色変換特性を変更する請求項1記載の画像形成装置である。
【0011】
請求項3に係る本発明は、前記変更手段は、色変換特性を、初期状態で画像信号による混色を発生させ、この画像信号による混色が、現像剤の混合が進むにつれて減少するように変更する請求項1又は2記載の画像形成装置である。
【0012】
請求項4に係る本発明は、前記変更手段は、前記搬送部材に現像剤が付着し剥離された回数、出力された画像の数、及び画像データの積算値の少なくともいずれか1つに応じて色変換特性を変更する請求項1乃至3いずれか記載の画像形成装置である。
【0013】
請求項5に係る本発明は、前記変更手段は、1つのジョブを通じて出力される複数の画像間の色変化を抑制するように色変換特性を変更する請求項1乃至4いずれか記載の画像形成装置である。
【0014】
請求項6に係る本発明は、用紙の総面積中の現像剤が付着する部分の面積の比率である画像面積率を演算する演算手段と、前記演算手段で演算された画像面積率が予め定められた画像面積率よりも小さい場合に、前記予め定められた画像面積率と前記演算手段で演算された画像面積率のとの差分に応じた画像を、前記画像出力手段に出力させる出力制御手段と、を有する請求項1乃至5いずれか記載の画像形成装置である。
【0015】
請求項7に係る本発明は、出力画像データ、現像剤カートリッジから現像剤収容部へ供給した現像剤量、若しくは現像剤供給時間の少なくともいずれか1つを積算する積算手段と、所定の画像出力回数若しくは、所定の前記搬送部材に現像剤が付着し剥離された回数における、前記積算手段で積算された積算値が、所定の予め定められた基準値よりも小さい場合に、前記予め定められた基準値と前記積算値との差分に応じた画像を、前記画像出力手段に出力させる出力制御手段と、をさらに有する請求項1乃至5いずれか記載の画像形成装置である。
【0016】
請求項8に係る本発明は、前記画像処理手段に画像信号を入力する画像信号入力手段をさらに有する請求項1乃至7いずれか記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る本発明によれば、互いに異なる色の現像剤の混色による複数の画像間の色変化を抑制することができる画像形成装置を提供することができ、特に、混色に対して、画像信号の色変換特性を変更することで出力画像の色変化を抑制することができる画像形成装置を提供することができる。
【0018】
請求項2に係る本発明によれば、他色の現像剤の混入量を予測し画像信号を変更することにより、出力画像の色変化をより高精度に抑制することができる画像形成装置を提供することができる。
【0019】
請求項3に係る本発明によれば、色変換特性を、初期状態で画像信号による混色を発生させ、この画像信号による混色が、現像剤の混合が進むにつれて減少するように変更することにより、初期状態から混色が進んだ状態までの間の出力画像の色変化をより抑制することができる画像形成装置を提供することができる。
【0020】
請求項4に係る本発明によれば、搬送部材に現像剤が付着し剥離された回数、出力された画像の数、及び画像データの積算値の少なくともいずれか1つに応じて色変換特性を変更することにより、出力画像の色変化をより高精度に抑制することができる。
【0021】
請求項5に係る本発明によれば、1つのジョブを通じて出力される複数の画像間の色変化を抑制するように色変換特性を変更することにより、ジョブの最初から最後までの出力画像の色変化を抑制することが可能となる画像形成装置を提供することができる。
【0022】
請求項6に係る本発明によれば、用紙の総面積中の現像剤が付着する部分の面積の比率である画像面積率を演算する演算手段と、前記演算手段で演算された画像面積率が予め定められた画像面積率よりも小さい場合に、前記予め定められた画像面積率と前記演算手段で演算された画像面積率のとの差分に応じた画像を、前記画像出力手段に出力させることにより、現像剤の混色状態を回復することができる画像形成装置を提供することができる。
【0023】
請求項7に係る本発明によれば、所定の画像出力回数若しくは、所定の前記搬送部材に現像剤が付着し剥離された回数における、前記積算手段で積算された積算値が、所定の予め定められた基準値よりも小さい場合に、前記予め定められた基準値と前記積算値との差分に応じた画像を、前記画像出力手段に出力させることにより、現像剤の混色状態を回復することができる画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の適用される実施形態に係る画像形成装置10が示されている。画像形成装置10は、画像処理手段として用いられる画像処理装置200と、画像出力手段として用いられる画像出力装置400とを有する。
【0025】
画像処理装置200は、パーソナルコンピュータ等の外部機器ならなる画像入力装置5から入力される入力画像信号を、出力画像信号に変換して画像出力装置400に出力するために用いられ、前段色変換手段210と、後段色変換手段214と、フィルタ手段216と、出力階調補正手段218とを有する。なお、この実施形態に係る画像形成装置10は、画像入力装置5を有せず、画像形成装置10外部の画像入力装置5から画像信号が入力されるようになっているが、画像形成装置10自体が、例えば、イメージスキャナ等からなる画像入力装置5を有し、この画像入力装置5から画像処理装置200に入力画像信号が入力されるようにしても良い。
【0026】
前段色変換手段210は、画像入力装置5から入力されたRGBデータからなる入力画像信号を、デバイス非依存であり、均等色空間の一つであるL*a*b*色空間データからなる信号に変換する。
【0027】
後段色変換手段214は、前段色変換手段210からのL*a*b*色空間データからなる信号を、画像出力装置400の特性に応じたYMCKデータからなる信号に変換する。
【0028】
フィルタ手段216はデジタルフィルタからなり、後段色変換手段214からの信号をフィルタ処理する。
【0029】
出力階調補正手段218は、フィルタ手段216から出力される信号にスクリーン処理をしたり、画像出力装置400の温度湿度環境や経時劣化等の状態に応じた画像補正をしたり等の階調処理をし、階調処理した信号を画像出力装置400に出力する。
【0030】
図2には、画像出力装置400が示されている。
画像出力装置400は、画像出力装置本体412を有し、画像出力装置本体412内の例えば略中央部に現像装置452が配置されている。現像装置452は、現像装置本体454と、現像ロール456と、層厚規制部材458と、現像ロール収容壁460と、現像カートリッジ462Y、462M、462C、及び462Kと、現像剤収納容器466Y、466M、466C、及び466Kとを有し、互いに異なる色の現像剤として用いられる4色の現像剤によって後述する感光体ドラム422が保持する静電潜像を現像して可視化する。
【0031】
現像装置本体454は、回転軸464を中心として、画像出力装置本体412に回転可能に支持され、現像装置本体454内には、現像カートリッジ462Y、462M、462C、及び462Kと、現像剤収納容器466Y、466M、466C、及び466Kとが着脱可能に装着されている。現像装置本体454が回転軸464を中心に回転すると、現像カートリッジ462Y、462M、462C、462Kが順次に現像ロール456に対向する位置に移動して、現像ロール456に対向する位置に移動した現像カートリッジ462から現像ロール456に現像剤を供給することが可能な状態となる。
【0032】
現像カートリッジ462Yと現像剤収納容器466Yとにはイエローの現像剤が収納され、現像カートリッジ462Mと現像剤収納容器466Mとにはマゼンタの現像剤が収納され、現像カートリッジ462Cと現像剤収納容器466Cとにはシアンの現像剤が収納され、現像カートリッジ462Kと現像剤収納容器466Kとには黒の現像剤が収納されている。
【0033】
現像剤収納容器466Y、466M、466C、466Kは、現像カートリッジ462Y、462M、462C、462Mに補給する未使用の現像剤が収納された未使用現像剤収納部と、現像ロール456に供給され、現像がなされた後に現像ロール456から剥離した(回収した)現像剤を収容する回収現像剤収納部とを、それぞれが有している。回収現像剤収納部に回収された現像剤は、繰り返し現像ロール456に供給され感光体ドラム422に形成された潜像の現像に用いられる。
現像カートリッジ462Yと現像剤収納容器466Y、現像カートリッジ462Mと現像剤収納容器466M、現像カートリッジ462Cと現像剤収納容器466C、及び現像カートリッジ462Kと現像剤収納容器466とは、それぞれが一体として、感光体ドラム422に保持された潜像を現像するために用いられる互いに異なる色の現像剤が収納された複数の現像剤収納部として用いられる。
【0034】
なお、現像カートリッジ462Y、462M、462C、462Kが収納している現像剤は、例えば非磁性トナー及び磁性キャリアを有する2成分現像剤であり、磁性キャリアの周囲に非磁性トナーが付着するようにされている。
【0035】
現像ロール456は、現像カートリッジ462Y、462M、462C、462K等に収納された現像剤をそれぞれ付着し、付着した現像剤で感光体ドラム422に形成された潜像の現像を行った後に、残留した現像剤が剥離されるとの動作が繰り返される1つの搬送部材として用いられていて、感光体ドラム422に対向する部分が露出するように開口された現像ロール収容壁460内に収容されていて、感光体ドラム422との間に所定の隙間を形成しつつ、磁力によって保持したそれぞれの色の現像剤を感光体ドラム422に供給する。
【0036】
層厚規制部材458は、例えば現像ロール456に対して所定の間隔(ギャップ)をあけて設けられた例えばアルミニウム(導電性部材)からなる回転可能なロール状の部材であり、現像ロール456の表面に付着した(現像ロール456が保持した)現像剤の層厚(高さ又は量)を規制する。
【0037】
現像装置452近傍には、少なくとも潜像を保持する像保持体として用いられる感光体ドラム422が配置されている。感光体ドラム422の正面側には、感光体ドラム422を一様帯電する例えば帯電ロールからなる帯電装置472が設けられている。また、感光体ドラム422には、感光体ドラム422の回転方向の帯電装置472よりも上流側に感光体用クリーナ474が当接している。感光体用クリーナ474は、転写後に感光体ドラム422に残留する現像剤を掻き取る。
【0038】
現像装置452の、例えば側方には、帯電装置472により帯電された感光体ドラム422に、レーザ光などの光線により潜像を書き込む光書き込み装置476が配置されている。また、感光体ドラム422に対して後述する転写ベルト424を介して接するようにして、1次転写ロール442が設けられている、1次転写ロール442は、現像装置452によって可視化された現像剤像を、転写位置で転写ベルト424に対して転写するために用いられる。
【0039】
また、画像出力装置本体412内には、感光体ドラム422に接するように、転写ベルト424が設けられている。転写ベルト424は、例えば、3個等、複数の支持ロール426に巻き渡されており、複数の支持ロール426のうちの一つの駆動ローラにより駆動されて周回する。転写ベルト424には、感光体ドラム422上のトナー画像が転写され、このトナー画像が転写ベルト424の周回によって、例えば画像出力装置本体412内に形成された搬送路428へと搬送される。
【0040】
搬送路428は、例えば画像出力装置本体412の底部近傍に設けられた給紙トレイ430から、例えば画像出力装置本体412の上側の部分が兼用される排紙トレイ432まで略垂直方向に形成されていて、搬送路428に沿って用紙搬送方向上流側から順に、レジストロール436、2次転写ロール438、及び定着装置434が設けられている。2次転写ロール438は、支持ロール426の1つに、搬送路428を介して接触していて、搬送路428内を搬送中の用紙に、転写ベルト424からトナー画像を転写するために用いられる。
【0041】
レジストロール436は、画像形成がなされるタイミングに合致するように、用紙を転写ベルト424と2次転写ロール438とが接する部分に供給するために用いられる。また、定着装置434は、2次転写ロール438によって用紙に転写されたトナー画像を、加熱と加圧とによって用紙に定着するために用いられる。定着装置434によって、トナー画像が転写された用紙は、搬送路428中を進み、排紙トレイ32に送出される。
【0042】
以上のように構成され画像出力装置400では、感光体ドラム422は、図2中において反時計回りに回転し、感光体ドラム422の表面が帯電装置472によって均一に帯電され、均一に帯電された感光体ドラム422の表面に光書き込み装置476によってレーザ光により走査され、感光体ドラム422の表面に潜像が形成される。この際、光書き込み装置476は、外部装置で作成された画像データや、スキャナを有する場合、そのスキャナで読み取られた画像データに基づいて制御され、これらの画像データに対応した潜像を形成するように光書き込みをなす。
【0043】
光書き込み装置476によって書き込まれた感光体ドラム422表面の潜像は、現像装置452によって現像される、すなわち、現像ロール456と接触、又は近接する位置において、感光体ドラム422表面の電荷により現像ロール456からからトナーが引きつけられ、このトナーによって潜像がトナー画像として現像される。感光体ドラム422上に形成されたトナー画像は、感光体ドラム422の回転に伴って、転写ベルト424に対向する位置まで運ばれ、1次転写ロール442によって転写ベルト424に転写(一次転写)される。
トナー画像が転写された後の感光体ドラム422の表面は、感光体用クリーナ474により清掃され、再度、帯電装置472に到達し、帯電装置472によって、再び帯電される。以後これを繰り返して、転写ベルト424上に、用紙1枚に相当するトナー画像を形成する。
【0044】
多色画像の形成にあっては、一つの色のトナー画像が転写ベルト424上に転写された後、現像装置本体454を、回転軸464を中心に回転させて、他の色の現像剤カートリッジ462を現像ロール456に対向させ、その他の色のトナーを、現像ロール456を用いて感光体ドラム422に供給することによって、感光体ドラム422の表面に他の色のトナー画像を形成する。そして、この他の色のトナー画像が、1次転写ロール442によって、転写ベルト424表面に転写される。
【0045】
そして、転写ベルト424の表面に、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、黒の4色が重ねられたトナー画像が、2次転写ロール438によって搬送路428中を搬送中の用紙に転写される。転写後、転写ベルト上に残留している残トナーは、転写ベルト424に対し接離可能に取り付けられている転写ベルトクリーナ427が、清掃時のみ転写ベルト424に接触することで清掃される。
【0046】
図3乃至図5には、本発明の適用される実施形態で出力される画像の画像出力枚数に応じた色変動が示されており、特に図3には、L*a*b*色空間におけるa*b*平面への投影図が、図4には、a*L*平面への投影図が、図5には、b*L*平面への投影図が示されている。また、図3乃至図5では、出荷時の状態にあり、未使用の状態にある現像剤収納容器466Y、466M、466C、466Kを画像出力装置400に装着してA4サイズ1枚目に出力された画像の出力が○で、A4サイズ500枚目の画像の出力が×で示されている。
【0047】
より具体的には、図3乃至図5には、230グラムの現像剤それぞれ収納された現像剤収納容器466Y、466M、466C、466Kを用いて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の画像面積率がぞれぞれ20%であるA4サイズ画像を出力した際の、1枚目の画像におけるイエロー単色画像、マゼンタ単色画像、シアン単色画像、及び黒単色画像の測色データと、同条件で499枚のA4サイズ画像を出力した後の、500枚目の出力におけるイエロー単色画像、マゼンタ単色画像、シアン単色画像、及び黒単色画像の測色データとが示されている。
また、図3乃至図5には、マゼンタの現像剤とシアンの現像剤とで形成される画像であるブルー(B)の画像と、シアンの現像剤とイエローの現像剤とで形成される画像あるGグリーン(G)の画像と、イエローの現像剤とマゼンタの現像剤とで形成される画像であるレッド(R)画像との単色画像についても、先述のイエロー、マゼンタ、シアン、黒と同条件で画像を出力した場合における1枚目の測色データと、500枚目の測色データとが示されている。
【0048】
図3乃至図5に示されるように、Y、M、C、K、B、G、及びRともに、1枚目の出力と500枚目の出力とで測色データが変化している。これは、画像出力装置400で画像が出力される際に、現像ロール456がイエロー現像剤、マゼンタ現像剤、シアン現像剤、及び黒現像剤で共通して用いられ、しかも、現像ロール456の表面に残留した現像剤が、現像剤収納容器466Y、466M、466C、466Kの回収現像剤収納部にそれぞれ回収され、現像剤が回収される際に、それぞれの回収現像剤収納部に他の色の現像剤が混入して、この他の色の現像剤が混入した現像剤が次の画像出力に用いられることを原因としている。
【0049】
図6及び図7には、画像出力枚数に応じたイエロー単色画像、マゼンタ単色画像、シアン単色画像、及び黒単色画像の色差変動が示されており、図6には出力される画像面積率が5%である場合の各画像の色差変動が、図7には出力される画像の画像面積率が20%である場合の各画像の色差変動が示されている。
より具体的には、図6及び図7には、横軸に出力された画像の枚数(プリント枚数)が示され、縦軸は、測定に先立ち最初に出力した各単色ベタ画像(画像面積率が100%)のパッチ画像を基準とした、各枚数の画像の出力が完了した後に出力した各単色ベタのパッチ画像との色差が示されている。
【0050】
図6と図7とを比較して分かるように、画像面積率が高い図6に示す場合の色差変動が、図7に示す画像面積率が低い場合の色差変動よりも小さくなっている。これは、画像面積率が高く高密度な画像なほど、多くの現像剤が消費され、現像カートリッジ462等内から他の色の現像剤が混入した現像剤がより多く排出されて、これに伴い混色のない現像剤が、新たに現像剤収納容器466の未使用現像剤収納部から供給されるため、現像カートリッジ462内等に収納された現像に混入している他の色の現像剤の比率が低くなるためである。
【0051】
図8には、本発明の実施形態に係る画像形成装置10が示されている。
この本発明の実施形態に係る画像形成装置10は、先述の本発明の適用される実施形態に係る画像形成装置10が有する構成に加えて、画像面積率演算手段310と、出力制御手段312とを有し、画像処理装置200に色変換特性変更手段212が備えられている。以下で特に説明する以外の部分については、本発明の実施形態に係る画像形成装置10は、先述の本発明が適用される画像形成装置10と同一である。
【0052】
色変換特性変更手段212は、互いに異なる色の現像剤の混色による複数の画像間の色変化を抑制するように、画像出力の回数に応じて画像信号の色変換特性を変更する変更手段として用いられていて、現像剤の混色に対応する画像信号の色変換処理を、前段色変換手段210から入力された、L*a*b*データに対して行う。すなわち、前段色変換手段210から入力されたL*a*b*データは、例えば、1つのプリントジョブで出力される画像の数(プリンタ枚数)に応じて、そのプリンタジョブで出力される各画像に生じる現像剤の混色を予測し、その予測に応じて、1つのプリントジョブを通じて出力される画像間の色変化を抑制するようにL*a*b*の色変換を行う。
【0053】
例えば、先述の図3乃至図5に示す出力条件と同条件である、画像面積率が20%の画像をA4の用紙に500枚連続して画像を出力するとの条件を例とすると、例えばイエローのベタ画像(画像面積率が100%)相当の画像データ(L*: 87.59、a*:−8.79、b*:95.03)が入力された場合、1枚目を出力するための色補正では、出力される画像の色測値が500枚目(図3乃至図5における×を参照)の値であるL*: 80.61、a*:−3.35、b*:83.12となるように画像信号を色変換する。また、2枚目は、1枚目と500枚目の色変化量に対して、
(全プリント枚数−現在のプリント枚数)÷全プリント枚数
の重み付け平均をした量の画像信号の補正をする。また、500枚目は入力されたL*a*b*データは、その値であるL*: 87.59、a*:−8.79、b*:95.03をそのまま出力する。
【0054】
以上のように画像出力の回数に応じて画像信号の色変換特性を変更することにより、現像剤の混合が進行していない1枚目の画像は、混色が進んだ500枚目相当の画像データで、混色が進行していない現像剤を用いて現像され、500枚目の画像のL*a*b*相当のイエローベタ画像が出力される。また、500枚目は画像データの補正がなされないものの、混色が進んだ現像剤で画像が出力されることによって、1枚の目の画像と同じく500枚目のL*a*b*相当のイエローベタ画像が得られる。
【0055】
色変換特性の変更がn枚目の画像データの画像信号を式で示すと、
L*=L*−(L*−L*500)×(T−n)÷500
a*=a*−(a*−a*500)×(T−n)÷500
b*=b*−(b*−b*500)×(T−n) ÷500
但し、n:プリント枚目、T:全プリント枚数
となる。
【0056】
実際には、L*a*b*空間で等間隔となるような複数のYMCKパッチ画像を混色前、混色後の現像剤を用いて画像出力し、それぞれの現像剤を用いた複数パッチ画像のL*a*b*を測定するとの処理がなされる。すなわち、同じ画像データごとに混色前と混色後のL*a*b*の変化量を事前に求めておき、変換係数(式中、L*−L*500、a*−a*500、b*−b*500に相当)として、上述の式を用いて色補正処理を行う。
【0057】
以上のように、色変換特性変更手段212では、画像出力に用いられる色の現像剤に他の色の現像剤が混入する量を予測して、画像信号における各色成分を増減させるように色変換特性を変更するとともに、画像信号の色変換特性を、初期状態で混色を発生させ、この画像信号による混色が、互いに異なる色の現像剤の混合が進むにつれて減少するように変更している。また、本発明の実施形態に係る画像形成装置10では、出力された画像の数に応じて画像信号の色変換特性を変更しているが、色変換特性変更手段212で、現像ロール456に現像剤が付着し剥離された回数、出力された画像の数、及び画像データの積算値の少なくともいずれか1つに応じて画像信号の色変換特性を変更するようにしても良い。
【0058】
色変換特性変更手段212で色変換特性の変更がなされた信号は、先述の本発明が適用される画像形成装置10と同様に、後段色変換手段214で画像出力装置400の特性に応じたYMCKデータに変換され、フィルタ手段216でフィルタ処理され、出力階調補正手段218でスクリーン処理や、画像出力装置400の温度湿度環境や経時劣化等の状態に応じた画像補正がなされ、YMCKデータとして画像出力装置400に送られる。
ここで、先述の本発明が適用される実施形態に係る画像形成装置10では、出力階調補正手段218から画像出力装置400に対してだけ信号が出力されたのに対して、この本発明の実施形態に係る画像形成装置10では、画像出力装置400と併せて、画像面積率演算手段310に対しても出力階調補正手段218から画像信号の出力がなされる。
【0059】
画像面積率演算手段310は、用紙の総面積中の現像剤が付着する部分の面積の比率である画像面積率を演算する演算手段として用いられ、入力される画像データを基に、例えば、5枚の画像出力(5プリント)ごとに、その間に出力される画像のA4サイズ換算の面積率を計算する。そして、求めた画像面積率を、出力制御手段312に出力する。
【0060】
出力制御手段312は、画像面積率演算手段310で演算された画像面積率が予め定められた画像面積率よりも小さい場合に、この予め定められた画像面積率と画像面積率演算手段310で演算された画像面積率のとの差分に応じて、画像出力装置400に、予め定められた画像面積比率よりも大きい画像面積率の画像を出力させる出力制御手段として用いられている。例えば、予め定められた画像面積率が20%である場合、画像面積率演算手段310で演算された画像面積率が20%より小さい場合、予め定められた画像面積率であり、目標となる画像面積率である20%と、画像面積率演算手段310で演算された面積率との差分にプリント枚数(ここでは5枚)を乗じた値に相当するトナーバンド画像の出力を画像出力装置400に指示する。
【0061】
出力制御手段312からの画像出力指示があった場合、画像出力装置400では、現像剤像を転写ベルトに転写した後、用紙に転写することなく、転写ベルトクリーナ427によって除去される。
【0062】
以上のように、一定の枚数の出力画像における画像面積比率が予め定めた値よりも小さい場合に、出力制御手段312が画像出力装置400に予め定められた画像面積比率よりも画像面積比率が高い画像を出力させるため、他の色の現像剤が混入された状態にある現像カートリッジ462内等に収納された現像剤が、現像カートリッジ462内等から排出されて、現像カートリッジ462内等に現像剤収納容器466の未使用現像剤収納部から他の色の現像剤が混入していない現像剤が補充される。このため、現像カートリッジ462内の現像剤中に混入した他の色の現像剤の比率が低下し、現像剤に他の色の現像剤が混入することによる色変動が抑制される。
【0063】
以上で説明をした本発明の実施形態に係る画像形成装置10では、色変換特性変更手段212は、1つのジョブを通じて出力される複数の画像間の色変化を抑制するように、画像信号の色変換特性を変更するものであったが、色変化を抑制しようとする画像出力の範囲(先述の計算式におけるTの値)を、1つジョブとすることに替えて、ユーザによって入力された任意の出力枚数や、現像剤を交換するまでに出力可能な総出力数としてもよい。また、以上の説明では、出力される画像面積率が20%である場合を例として説明をしたが、出力される画像面積率ごとに異なる係数を用いるものとし、ユーザが出力をしようとしている画像の面積率を選択し、入力することができるようにしても良い。また、その画像の出力がなされるなる前までに出力された過去の画像の画像面積率を基に、その出力画像で基準とされる画像面積率を定めても良い。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上述べたように、本発明は、複写機、ファクシミリ装置、コピー機等の画像形成装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の適用される実施形態に係る画像形成装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の適用される実施形態に係る画像形成装置が有する画像出力装置を示す側面図である。
【図3】本発明の適用される実施形態で出力される画像の画像出力枚数に応じた色変動を示す第1のグラフである。
【図4】本発明の適用される実施形態で出力される画像の画像出力枚数に応じた色変動を示す第2のグラフである。
【図5】本発明の適用される実施形態で出力される画像の画像出力枚数に応じた色変動を示す第3のグラフである。
【図6】本発明の適用される実施形態で出力される画像の画像面積率と色変動との関係を説明する第1のグラフである。
【図7】本発明の適用される実施形態で出力される画像の画像面積率と色変動との関係を説明する第2のグラフである。
【図8】本発明の実施形態に係る画像形成装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0066】
10 画像形成装置
200 画像処理装置
212 色変換特性変換手段
214 後段色変換手段
310 画像面積率演算手段
312 出力制御手段
400 画像出力装置
422 感光体ドラム
452 現像装置
456 現像ロール
462 現像カートリッジ
466 現像剤収納容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を出力する画像出力手段と、
入力画像信号を出力画像信号に変換して前記画像出力手段に出力する画像処理手段と、
を有し、
前記画像出力手段は、
少なくとも潜像を保持する像保持体と、
前記像保持体に保持された潜像を現像するために用いられる互いに異なる色の現像剤が収納された複数の現像剤収納部と、
前記複数の現像剤収納部に収納された現像剤をそれぞれ付着し、付着した現像剤を前記像担持体に搬送した後、残留した現像剤が剥離されるとの動作が繰り返される1つの搬送部材と、
を有し、
前記画像処理手段は、互いに異なる色の現像剤の混色に応じて画像信号の色変換特性を変更する変更手段を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記変更手段は、画像出力に用いられる色の現像剤に他の色の現像剤が混入する量を予測して、画像信号における各色成分を増減させるように色変換特性を変更する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記変更手段は、色変換特性を、初期状態で画像信号による混色を発生させ、この画像信号による混色が、現像剤の混合が進むにつれて減少するように変更する請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記変更手段は、前記搬送部材に現像剤が付着し剥離された回数、出力された画像の数、及び画像データの積算値の少なくともいずれか1つに応じて色変換特性を変更する請求項1乃至3いずれか記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記変更手段は、1つのジョブを通じて出力される複数の画像間の色変化を抑制するように色変換特性を変更する請求項1乃至4いずれか記載の画像形成装置。
【請求項6】
用紙の総面積中の現像剤が付着する部分の面積の比率である画像面積率を演算する演算手段と、
前記演算手段で演算された画像面積率が予め定められた画像面積率よりも小さい場合に、前記予め定められた画像面積率と前記演算手段で演算された画像面積率のとの差分に応じた画像を、前記画像出力手段に出力させる出力制御手段と、
を有する請求項1乃至5いずれか記載の画像形成装置。
【請求項7】
出力画像データ、現像剤カートリッジから現像剤収容部へ供給した現像剤量、若しくは現像剤供給時間の少なくともいずれか1つを積算する積算手段と、
所定の画像出力回数若しくは、所定の前記搬送部材に現像剤が付着し剥離された回数における、前記積算手段で積算された積算値が、所定の予め定められた基準値よりも小さい場合に、前記予め定められた基準値と前記積算値との差分に応じた画像を、前記画像出力手段に出力させる出力制御手段と、
をさらに有する請求項1乃至5いずれか記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記画像処理手段に画像信号を入力する画像信号入力手段をさらに有する請求項1乃至7いずれか記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−237087(P2009−237087A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81006(P2008−81006)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】